JP3699857B2 - ラッチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、地震等による振動により家具等の扉が開き出し、収納物が落下等することを防止するために用いるのに適したラッチの提供に関する。
【0002】
【従来の技術】
地震等の振動による家具等の扉の開き出しを防止する技術として、本出願人が先に開示した特願平8−269741記載のロック装置がある。
【0003】
かかる装置は、固定体と移動体のいずれか一方に設けられた固定フック部を有するフック受けと、固定体と移動体の他方に設けられた回動可能な可動フック部を有するフック本体と、常時はこのフック本体の可動フック部を固定フック部から離隔する方向に付勢し、かつ、所定以上の振動に伴って可動フック部の固定フック部に引っ掛かる位置までの回動を許容する付勢手段とを備えている。
【0004】
したがって、かかる装置によれば、地震等により所定以上の振動が作用した場合に、前記可動フック部を回動させて固定フック部に引っ掛けることができ、これにより、移動体、典型的には家具の扉の移動を阻止し、収納物の家具内からの落下を防止することが可能とされる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、前記ロック装置にあっては、相互に引っ掛かりあった固定フック部と可動フック部との引っ掛かり状態が、可動フック部の固定フック部から離隔する向きへの回動により単純に解かれてしまう。このことから、かかる可動フック部を回動させるような所定の振動が一旦作用された場合には、両フック部の引っ掛かり状態を維持できるようにする手法が別途望まれるところであった。
【0006】
また、前記所定の振動が、可動フック部を回動させる向きの振動でないとかかる可動フック部を固定フック部に引っ掛けることができない不都合があった。
【0007】
しかるにまた、本出願人は、地震等の振動による家具等の扉の開き出しを防止する技術として、特願平7−222831記載のストッパーを開示している。
【0008】
かかるストッパーは、扉の内側に設けられるロックノブと、このロックノブから離れたロック解除位置からロック位置までスライド可能に保持されたロックプレートと、所定以上の振動によりロックプレートに作用し、自重により当該ロックプレートを前記ロック位置にスライドさせるウエイトとを備えている。
【0009】
したがって、かかるストッパーによれば、地震等により所定以上の振動が作用した場合に、前記ロックプレートをスライドさせて扉の移動を阻止し、収納物の家具内からの落下を防止することが可能とされる。
【0010】
しかるに、かかるストッパーは、前記ロック状態を作りだすため、先ず、前記ウエイトが前記振動によりこのウエイトの自重をロックプレートに作用させる位置まで移動することを要し、かつ、当該ウエイトがロックプレートのスライド寸法分、当該スライド方向に一緒に移動することを要するものであった。
【0011】
このため、前記振動が作用されてからロックプレートがロック位置に至るまでの時間を、単純には短縮させ難いものであった。
【0012】
そこで、この発明は、第一に、所定の振動が作用された場合に、可動側の移動を阻止するラッチにおいて、当該移動の阻止状態を維持できるようにすることを目的とする。また、第二に、所定以上の大きさの振動が作用された場合には、その振動が特定の向きでない場合であっても、前記可動側の移動を阻止できるようにすることを目的とする。
また、第三に、前記第二の目的を達成しつつ、所定の振動が作用された場合に移動されるウエイトを利用した扉等の可動側の移動阻止をなすラッチにおいて、当該振動が作用されてから可動側の移動を阻止するロック状態が作り出されるまでの応答時間を短縮させることに適した構造を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、この発明にあっては、ラッチを、固定側と可動側のいずれか一方に組み付けられるフック具と、固定側と可動側のいずれか他方に組み付けられる引掛具とからなるラッチであって、前記フック具が、地震等による所定の振動によって移動可能な球状をなすウエイトを収めるケース体と、当該ケース体に、当該ケース体から突き出されるように、回動可能に組み付けられ、かつ、前記振動により移動されるウエイトに当接される当接部を有し、この当接部を前記ケース体内に収めたフック手段とを備えており、前記振動により移動される前記ウエイトの当接に伴って前記フック手段が回動され、かつ、前記可動側の移動に伴って前記引掛具に掛合する構成としてあると共に、前記ケース体には移動前の前記ウエイトの一部を収める張り出し部が形成してあり、しかも、この張り出し部を構成する左右両側板が当該張り出し部の奥側に向けて次第に近接する構成としてあると共に、当該張り出し部を構成する上板が当該奥側に向けて次第に下方に傾斜されている構成のものとした。
【0014】
かかる構成によれば、前記ウエイトは、上下方向の揺れが作用した場合には、前記上板に案内されて、また、左右方向の揺れが作用した場合には、左右両側板に案内されて、フック手段の側に無理なく移動される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。
【0016】
(第一の実施の形態)
先ず、ラッチを、固定側Sと可動側Mのいずれか一方に組み付けられるフック具Fと、固定側Sと可動側Mのいずれか他方に組み付けられる引掛具Jとからなるラッチであって、前記フック具Fが、ケース体10と、当該ケース体10に当該ケース体10から突き出されるように回動可能に組み付けられるフック手段20とを備えていると共に、前記引掛具Jが、フック具Fの側に突き出す突片41と、当該突片41の基部側に先端を向けるように当該突片41から設けられた湾曲状をなす掛合爪42と、前記掛合爪42の側に向けて前記突片41から突き出す弾性片43とを有しており、前記地震等の所定の振動により前記フック手段20が回動され、かつ、固定側Sから離れ出す向きの可動側Mの移動に伴って、当該フック具Fのフック手段20の掛合端21aを、前記掛合爪42の先端側と弾性片43との間から、前記掛合爪42の湾曲部42bの内側42b’に前記弾性片43を弾性変形させながら入り込ませる構成としてある構成とすることが、この発明の典型的な実施の形態の一つとされる。
【0017】
かかる構成によれば、前記弾性片43により、掛合爪42の湾曲部42bの内側42b’に入り込ませた前記フック具Fのフック手段20の掛合端21aをかかる湾曲部42bの内側42b’で保持することができ、これにより、所定の振動が作用した場合における、固定側Sから離れる向きの可動側Mの移動を一層確実に阻止することができる。
【0018】
(第二の実施の形態)
次いで、前記第一の実施の形態にかかるラッチにおけるフック具を構成するケース体10に、地震等の所定の振動により移動されるウエイト30が収められていると共に、フック具Fを構成するフック手段20が、前記振動により移動されるウエイト30に当接される当接部24を有しており、前記振動により移動される前記ウエイト30の当接に伴って前記フック手段20が回動される構成とすることが、この発明の典型的な実施の形態の一つとされる。
【0019】
かかる構成によれば、地震等による所定の振動が作用されない場合には、前記ウエイト30が移動されず、したがって、前記フック具Fのフック手段20と前記引掛具Jとが掛合されることがなく、固定側Sから離れ出す向きの可動側Mの移動を妨げないようにすることができる。
【0020】
また、地震等による所定の振動が作用された場合には、前記ウエイト30が移動され、このウエイト30が前記フック手段20の当接部24に当接して、当該フック手段20を前記引掛具Jに掛合可能に回動させ、可動側Mの移動により掛合させる。これにより、かかる振動が作用された場合における固定側Sから離れ出す向きへの可動側Mの移動を阻止することができる。
【0021】
特に、かかるウエイト30の移動は、特定の向きの揺れ以外の揺れによっても移動されるように必要に応じて調整可能なことから、例えば、図4における上下方向あるいは左右方向の揺れのいずれにおいても前記当接部24に当接させる向きに移動させるようにすることができ、特定の向きの振動が作用された場合に限定されることなく、可動側Mの移動の阻止をなすことができる。
【0022】
(第三の実施の形態)
また、ラッチを、固定側Sに組み付けられるフック具Fと、可動側Mに組み付けられる引掛具Jとからなるラッチであって、前記フック具Fが、地震等による所定の振動によって移動可能なウエイト30を収めるケース体10と、当該ケース体10に、当該ケース体10から突き出されるように、回動可能に組み付けられ、かつ、前記振動により移動されるウエイト30に当接される当接部24を有し、この当接部24を前記ケース体10内に収めたフック手段20とを備えており、前記振動により移動される前記ウエイト30の当接に伴って前記フック手段20が回動され、かつ、前記可動側Mの移動に伴って前記引掛具Jに掛合する構成とすることが、この発明の最良の実施の形態の一つとされる。
【0023】
かかる構成によっても、地震等による所定の振動が作用されない場合には、前記ウエイト30が移動されず、したがって、前記フック具Fのフック手段20と前記引掛具Jとが掛合されることがなく、固定側Sから離れ出す向きの可動側Mの移動を妨げないようにすることができる。
【0024】
また、地震等による所定の振動が作用された場合には、前記ウエイト30が移動され、このウエイト30が前記フック手段20の当接部24に当接して、当該フック手段20を前記引掛具Jに掛合可能に回動させ、可動側Mの移動により掛合させる。これにより、かかる振動が作用された場合における固定側Sから離れ出す向きへの可動側Mの移動を阻止することができる。
【0025】
また特に、かかるウエイト30の移動は、特定の向きの揺れ以外の揺れによっても移動されるように必要に応じて調整可能なことから、例えば、図4における上下方向あるいは左右方向の揺れのいずれにおいても前記当接部24に当接させる向きに移動させるようにすることができ、特定の向きの振動が作用された場合に限定されることなく、可動側Mの移動の阻止をなすことができる。
【0026】
以上に説明した第一、第二、第三の実施の形態によれば、食器棚、本棚、吊り戸棚などの家具の扉などを可動側Mとし、かかる家具本体を固定側Sとすることにより、前記地震等による所定の振動が作用された場合に、かかる扉などが開いて収納物が落下等しないようにすることができる。また、かかる振動が作用されない場合には、かかる扉等の開閉操作に支障を生じることがない。
【0027】
なお、前記ウエイト30の重さ、形状、このウエイト30の移動されるケース体10の内面の形状などを適宜調整することにより、このウエイト30が移動されるために必要な所定の振動の大きさを設定することができる。地震の振動による家具の扉の開き出しを阻止する目的でこの実施の形態にかかるラッチを用いる場合には、かかる所定の振動の大きさは、典型的には、通常の家具の扉の開閉に伴う振動以上の振動であって、家具本体内に収納される収納物が家具本体内から落下する程度の振動とされる。より具体的には、ウエイト30を重くしたり、ウエイト30とケース体10との接触面積、接触抵抗を高めるように当該ウエイト30等の形状を調整することにより、ウエイト30が移動される必要がある所定の振動の大きさを設定しておくことができる。
【0028】
また、特に第二および第三の実施の形態にあっては、前記ウエイト30の当接により前記フック手段20を回動させて前記引掛具Jとの掛合をなすことから、ウエイト30の移動量に比し、このウエイト30の移動、当接により回動されるケース体10から突き出されているフック手段20の回動量を大きくさせることができる。つまり、前記所定の振動に作用によりウエイト30がわずかに移動された段階で、前記フック手段20を前記引掛具Jに掛合させるに十分な寸法回動させるようにすることができる。すなわち、この実施の形態にかかるラッチは、前記所定の振動が作用されてから、可動側Mの開き出しを阻止するロック状態が作り出されるまでの応答時間を短縮させるのに適している。
【0029】
また、前記ケース体10、フック手段20、引掛具Jの三点より構成することができ、簡易かつ低廉に前記機能を備えたラッチを構成することができる特長を有する。
【0030】
(より具体的な実施の形態)
次いで、図1ないし図11に示されるこの発明のより具体的な実施の形態について、説明する。
【0031】
なお、ここで図1は、ラッチの構成を理解し易いように、ラッチの構成部品を分解して斜視の状態として示している。
【0032】
図2は、固定側Sの開口Hを可動側Mの構成材Maが塞いだ状態におけるフック具Fと、引掛具Jの取り付け状態を、縦断面の状態で示している。
【0033】
また、図3は、所定の振動が作用してフック具Fが回動された状態を、側方から見て示している。(引掛具Jは縦断面の状態で示している。)また、図4は、図3の状態を図3の下方から見て示している。
【0034】
また、図5は、所定の振動が作用して、可動側Mの構成材Maが固定側Sの開口Hからやや離れ出した状態を側方から見て示している。(引掛具Jは縦断面の状態で示している。)
【0035】
また、図6は、可動側Mの構成材Maが固定側Sの開口Hからさらに離れ出した状態を側方から見て示している。(引掛具Jは縦断面の状態で示している。)また、図7は、図6の状態を図6の下方から見て示している。
【0036】
また、図8は、フック具Fを固定側Sの構成材Saへの取付面11側から見た状態で示しており、図9は、かかるフック具Fを引掛具Jに向き合った側から見た状態で示している。
【0037】
さらに、図10は、引掛具Jを掛合爪42が設けられている側から見た状態で、また、図11は、フック具Fに向き合う側から見た状態でそれぞれ示している。
【0038】
この実施の形態にかかるラッチは、鉛直方向に板面を沿わせる可動側Mの構成材Maにおける固定側Sにある面に組み付けられる引掛具Jと、この可動側Mの構成材Maにより塞がれる開口Hを形成する水平方向に板面を沿わせる固定側Sの構成材Saの下面に組み付けられるフック具Fとを備えている。
【0039】
前記フック具Fは、上面を前記固定側Sの構成材Saの下面への取付面11としたケース体10と、このケース体10に回動可能に組み付けられるフック手段20とを備えている。
【0040】
ケース体10は、一側部を開口12とさせている。そして、この開口12を構成する両側板における上部側であって、当該開口近傍位置に、一対の軸穴13を備えている。
【0041】
一方、前記フック手段20は、前記ケース体10から突き出されるアーム21と、このアーム21を下部から突き出させると共に、上部に軸穴23を備えたアーム21の支持体22とを備えている。フック手段20は、前記ケース体10の軸穴13と前記支持体22の軸穴23とに差し通される軸15により、支持体22の上部側を回動中心としてアーム21の先端を上下方向に移動させるように当該ケース体10に組み付けられている。
【0042】
支持体22は、前記ケース体10の開口12を塞ぐ幅を備えている。また、支持体22の下面は、前記上部側を回動中心とした回動に際してケース体10の下面に干渉しないように、前記軸15を中心とした円弧に沿った弧状の面22aとして構成してある。
【0043】
ケース体10内には、球状をなすウエイト30が収められている。ケース体10の開口12と反対の側には、移動前の当該ウエイト30の一部を収める張り出し部14が形成してある。張り出し部14を構成する左右両側板14a、14aは、当該張り出し部14の奥側に向けて次第に近接する構成としてあると共に、当該張り出し部14を構成する上板14bも当該奥側に向けて次第に下方に傾斜されており、この張り出し部14において前記ウエイト30は、左右両側部と上部とを当該張り出し部14の内面に接しさせた状態で収められる。この結果、この実施の形態にあっては、特に、図2における上下方向の揺れが作用した場合には、前記上板14bに案内されて、また、図4における上下方向の揺れが作用した場合には、左右両側板14a、14aに案内されて、かかるウエイト30はフック手段20の側に無理なく移動される。
【0044】
また、前記フック手段20は、下端部にケース体10の前記開口12の下端縁12aに突き当たる突き出し部25を備えている。この実施の形態にあっては、前記軸15を通る垂線上、あるいは、当該垂線に対してフック手段20の重心がケース体10の外方側に位置する構成としてある。したがって、フック手段20は自重により常には前記突き出し部25を前記開口12の下端縁12aに突き当てた位置にあるものとされ、この位置を前記軸15を中心とした回動開始前の位置Bとする。この回動開始前の位置Bにおいて、前記アーム21はその下面を前記ケース体10の下側外側面と略同面に位置させる。
【0045】
フック手段20の前記支持体22における前記ケース体10内においてウエイト30に向き合った側がウエイト30の当接部24とされる。当該当接部24は、前記下側の弧状の面22aと支持体22の上部から当該支持体22の下部側に向けて外広がり状に傾斜する傾斜面22bにより、当該ウエイト30の側に張り出すように形成されている。
【0046】
また、前記アーム21の先端は、このアーム21が先端を上方に移動させた際に、前記引掛具Jに掛合される掛合端21aとしてある。この実施の形態にあっては、かかるアーム21の先端に、当該アーム21の回動方向に略直交する向きに軸線を位置させる、断面略円形状をなす掛合バー21bを、当該掛合バー21bの両端が前記アーム21の両側にそれぞれ突き出されるように設けて、かかる掛合端21aを形成している。
【0047】
以上の構成を備えるフック具Fは、前記ケース体10の上部両側において、外向きに突き出す取付片16に設けた取付穴16aに下方からネジ17を差し入れ、このネジ17を前記固定側Sの構成材Saに止着することにより、当該構成材Saに取り付けられる。
【0048】
次いで、前記引掛具Jは、可動側Mの構成材Maの面に沿った取付板部40と、この取付板部40の上端部から略水平方向に突き出す板状の突片41と、この突片41の基部側に先端を向けるように、当該突片41の先端から設けられた湾曲状をなす掛合爪42とを備えている。
【0049】
引掛具Jの掛合爪42は、中央部に設けられた割欠部42aにより左右に区分されている。この割欠部42aは、前記フック具Fのアーム21が前記回動に伴って入り込める幅に構成してある。
【0050】
また、前記突片41には、当該突片41の基部側から先端側に向けて延びる一対の割溝41a、41aと、この割溝41aにおける当該突片41の先端側の端部を相互に連通させる割溝41bとにより区分された弾性片43を備えている。この弾性片43は、前記割欠部42aの間において前記掛合爪42の先端側に向けて突き出すように、基部側から先端側に向けて傾斜した板片状に構成としてある。
【0051】
そして、この実施の形態にあっては、前記取付板部40に、取付穴40aが設けてあり、この取付穴40aにネジ40bを差し入れ、このネジ40bを前記可動側Mの構成材Maに止着することにより、前記掛合爪42を下側にし、かつ、前記突片41をフック具Fの側に向けて突き出すように、かかる引掛具Jを前記構成材に組み付けることができる構成としてある。
【0052】
より具体的には、この実施の形態にあっては、可動側Mの構成材Maが固定側Sの構成材Saの開口Hを塞いだ閉じ込み状態において、前記突片41の上面を固定側Sの構成材Saの下面に添わせる位置に、前記引掛具Jが取り付けている。
【0053】
この実施の形態に係るラッチは以上の構成を備えることから、前記固定側Sの構成材Saに対し、フック手段20が上方に向けて回動された際に、このフック手段20の前記掛合端21aを構成する掛合バー21bが、前記引掛具Jの掛合爪42の先端を通過し、かつ、前記アーム21が前記引掛具Jの掛合爪42の割欠部42aを通る位置にフック手段20の組み付けをなすことにより、以下のように機能する。
【0054】
先ず、振動が全く作用されないか、前記ウエイト30を移動させるに足る振動が作用されない場合には、前記ウエイト30は移動されず、したがって、前記フック手段20は前記回動開始前の位置Bに留まる。したがって、当該フック手段20と前記引掛具Jとは掛合されず、固定側Sから離れ出す向きへの可動側Mの移動を自由になすことができる。(図2)
【0055】
次いで、前記ウエイト30を移動させる大きさの振動が作用されると、ケース体10の内奥側にあったウエイト30が開口12側に移動される。このようにウエイト30が移動されると、当該ウエイト30が前記支持体22の当接部24に当接され、当該支持体22を開口12側に押し出す。この押し出しを受けたフック手段20は、支持体22の上部で前記軸15により回動可能に組み付けられているので、この軸15を中心にアーム21の掛合端21aを上方に移動させるように回動される。
【0056】
このように上方に移動されたアーム21は、前記割欠部42aを通って移動され、このアーム21の左右両側に突き出される前記掛合バー21bの端部をそれぞれ、当該割欠部42aにより区分された一対の掛合爪42の先端部側方に位置させる。(図3および図4)
【0057】
この段階で、前記振動により可動側Mの構成材Maが固定側Sから離れ出す向きに移動されると、前記引掛具Jも前記フック具Fから離れる向きに移動されることになるので、前記アーム21の掛合端21aを構成する掛合バー21bはそれぞれ掛合爪42の湾曲部42b側に移動される。より具体的には、当該掛合爪42の前記突片41に向き合った側には、当該掛合爪42の先端側から湾曲部42b側に向けて当該掛合爪42の肉厚を大きくする傾斜面42cが設けてあり、前記掛合バー21bはこの傾斜面42cに案内されて前記湾曲部42b側にスムースに移動される。
【0058】
この状態から、さらに前記振動により可動側Mの構成材Maが固定側Sから離れ出す向きに移動されると、前記アーム21の先端位置される掛合バー21bの中央部が弾性片43の先端に突き当たるに至る。ここで、この実施の形態にあっては、前記弾性片43の先端と前記掛合爪42の間の最小の間隔が、前記掛合バー21bの径よりも小さくなる構成としてある。したがって、このように掛合バー21bの中央部に突き当てられた弾性片43は、可動側M部材の移動に伴って徐々に上方に弾性変形されるに至る。(図5)そして、かかる掛合バー21bが前記掛合爪42の湾曲部42b内側42b’に入り込んだ位置で、当該弾性片43の先端を掛合バー21bが乗り越える構成としてあり、この乗り越え位置で当該弾性片43は弾性復帰され、再び、前記掛合爪42の先端と弾性片43の先端との間隔が掛合バー21bの径よりも小さくなるに至る。(図6および図7)
【0059】
この結果、この実施の形態にかかるラッチによれば、前記掛合バー21bの両端部が前記掛合爪42の湾曲部42bの内側42b’に入り込んだ状態を保持させることができ、この状態まで固定側Sから離れ出す向きに移動された可動側Mの構成材Maが、前記振動によりさらに固定側Sから離れ出す向きに移動される事態を確実に阻止することができる。
【0060】
なお、前記掛合爪42の湾曲部42b内側42b’に掛合バー21bの両端を保持させた保持状態は、可動側Mを固定側Sに近付ける向きに再度移動させることにより解くことができる。すなわち、かかる移動により掛合バー21bを前記弾性片43に押し付けて、再び当該弾性片43を弾性変形させ、当該弾性片43の先端と掛合爪42との間を広げて、両者の間から掛合バー21bを抜き出すことができる。
【0061】
【発明の効果】
この発明にかかるラッチによれば、ウエイトの移動は、特定の向きの揺れ以外の揺れによっても移動されるように必要に応じて調整可能なことから、上下方向あるいは左右方向の揺れのいずれにおいても当該ウエイトを前記当接部に当接させる向きに移動させるようにすることができ、特定の向きの振動が作用された場合に限定されることなく、可動側の移動の阻止をなすことができる。
【0062】
さらに、前記ウエイトの当接により前記フック手段を回動させて前記引掛具との掛合をなすことから、ウエイトの移動量に比し、このウエイトの移動、当接により回動されるケース体から突き出されているフック手段の回動量を大きくさせることができる。つまり、前記所定の振動に作用によりウエイトがわずかに移動された段階で、前記フック手段を前記引掛具に掛合させるに十分な寸法回動させるようにすることができる。すなわち、この実施の形態にかかるラッチは、前記所定の振動が作用されてから、可動側の開き出しを阻止するロック状態が作り出されるまでの応答時間を短縮させるのに適している。
【0063】
また、前記ケース体、フック手段、引掛具の三点よりラッチを構成することができるので、地震等の所定の振動が作用された際の可動側の移動を阻止する機能を備えたラッチを、簡易かつ低廉に提供することができる特長を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラッチの分解斜視図
【図2】ラッチの使用状態を示す縦断面図(回動開始前の位置B)
【図3】ラッチの使用状態を示す側面図
【図4】ラッチの使用状態を示す底面図
【図5】ラッチの使用状態を示す側面図
【図6】ラッチの使用状態を示す側面図
【図7】ラッチの使用状態を示す底面図
【図8】フック具Fの平面図
【図9】フック具Fの側面図
【図10】引掛具Jの底面図
【図11】引掛具Jの側面図
【符号の説明】
S 固定側
M 可動側
F フック具
J 引掛具
10 ケース体
20 フック手段
24 当接部
30 ウエイト
Claims (1)
- 固定側と可動側のいずれか一方に組み付けられるフック具と、固定側と可動側のいずれか他方に組み付けられる引掛具とからなるラッチであって、
前記フック具が、地震等による所定の振動によって移動可能な球状をなすウエイトを収めるケース体と、
当該ケース体に、当該ケース体から突き出されるように、回動可能に組み付けられ、かつ、前記振動により移動されるウエイトに当接される当接部を有し、この当接部を前記ケース体内に収めたフック手段とを備えており、
前記振動により移動される前記ウエイトの当接に伴って前記フック手段が回動され、かつ、前記可動側の移動に伴って前記引掛具に掛合する構成としてあると共に、
前記ケース体には移動前の前記ウエイトの一部を収める張り出し部が形成してあり、しかも、この張り出し部を構成する左右両側板が当該張り出し部の奥側に向けて次第に近接する構成としてあると共に、当該張り出し部を構成する上板が当該奥側に向けて次第に下方に傾斜されていることを特徴とするラッチ。
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