JP2006038072A - 直線状整列状態が安定化された転動連結チェ−ンベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】リンク間のピンによる回動連結を転動係合とするチェ−ンベルトの直線引張り走行部に於けるリンクの弦振動を抑え、またチェ−ンベルトの直線走行部に於けるリンクに対するピンの整合度を高めると共にプーリ周りの走行部に於けるリンクに対するピンの荷重変形による滑りを許し、動力損失や磨耗っを回避する。
【解決手段】リンク間ピン転動係合チェ−ンベルトのリンクが直線状に整列した状態にあるとき互いに係合する2つのリンクの孔の縁とピンとを互いに補形にて係合させ、また両者の係合が転動方向へ滑ることを阻止し、リンクがプーリの周りに巻き付けられたとき係合から外れてリンクの孔の縁とピンの表面との間の転動係合に滑りを許すピン/リンク一部係止手段を設ける。
【選択図】 図1
【解決手段】リンク間ピン転動係合チェ−ンベルトのリンクが直線状に整列した状態にあるとき互いに係合する2つのリンクの孔の縁とピンとを互いに補形にて係合させ、また両者の係合が転動方向へ滑ることを阻止し、リンクがプーリの周りに巻き付けられたとき係合から外れてリンクの孔の縁とピンの表面との間の転動係合に滑りを許すピン/リンク一部係止手段を設ける。
【選択図】 図1
Description
本発明は、チェ−ンベルトに係り、特にチェ−ンベルトの延在方向に沿って互いに隣接して配置された第一および第二のリンクの隣接する端部が互いに重ね合わされ、該重ね合わせ部にて前記第一のリンクの端部に形成された第一の孔と該重ね合わせ部にて前記第二のリンクの端部に形成された第二の孔とを貫通してピンが通されることにより該第一および第二のリンクが互いに連結される構造のチェ−ンベルトの改良に係る。
上記の如くチェ−ンベルトの延在方向に互いに隣接して配置された各2つのリンクの端部を重ね合わせ、それらの重なり部に孔を明け、重ねられた孔にピンを通してピンにて各2つのリンクを連結する構造はチェ−ンベルトの最も基本的な構造である。チェ−ンベルトは種々のチェ−ンベルト駆動装置に於いて用いられている。チェ−ンベルトは、一対の円錐面を向かい合わせたプ−リにピンの両端にて該一対の円錐面に着座するよう掛け渡されると、一対の円錐面間の距離を変えることによりプ−リに対する巻き掛け半径を変えてプ−リ間のチェ−ンベルトによる回転動力伝達の比を変えることができるので、そのようなプ−リとの組合せにより無段変速装置を構成するのに多く使用されている。
円形断面のピンと円形輪郭の孔の嵌め合い構造に代えて、円形輪郭内にて互いに向かい合う円弧面にて互いに転動し合う一対の半月状のピンを用い、チェ−ンベルトが折れ曲りがる際のピン周りの部材の相対運動が一対の半月状ピンの向かい合った円弧面どうしの転動により支えられる構造が知られており、これは、例えば下記の特許文献1の図1に公知技術として示されている。尚、この特許文献1自身の発明は、上記の公知技術に於ける一方の半月状ピンの半周円と円形孔の間の摺動回転を、半月状から弓形の断面形状に変更された一方のピンの端部と円形から略四角形に変更された孔の直線状の一辺との間の線形摺動に置き換えたものである。
特開昭57−51044
また、下記の特許文献2には、ピンの横断面を中央部にてくびれた糸巻き形状とし、リンクの孔をピンのくびれた中央部へ向いた凸部を呈する輪郭とし、これらのくびれた中央部と凸部の間に別の球状の係止体を介装させることによりピンと補助ピンの間に転動を行わせる構造が提案されている。
特開平6−129495
上記の特許文献2に提案されている構造もそうであるが、ピンによるリンクの回動連結に於けるピンとリンクの間の係合に転動構造を組み込むためにこれまで多く行われてきたことは、上記の球状係止体の如き第三の部材をピンとリンクの孔の間に介装することであった。ピンとリンクの孔の縁の間に球状係止体の如き第三の部材を介在させれば、確かに互いに接触する部材間の相対運動に転動を取り入れ易くなるが、第三の部材の介装はそれだけ構造を複雑にし、部材の製造および組立てに要するコストが増大する。
このようにリンク間の回動連結に転動係合を取り入れるためにピンに加えて第三の部材を介装させることの製造および組立てコスト上の不利に鑑み、本件出願人と同一人は、本願発明者と同一人の発明についての特願2003−024617に於いて、第三の部材を用いることなく転動のみによるリンク間の回動連結を可能とするチェ−ンベルトとして、「チェ−ンベルトの延在方向に沿って互いに隣接して配置された第一および第二のリンクの隣接する端部が互いに重ね合わされ、該重ね合わせ部にて前記第一のリンクの端部に形成された第一の孔と該重ね合わせ部にて前記第二のリンクの端部に形成された第二の孔とを貫通してピンが通されることにより該第一および第二のリンクが互いに連結される構造のチェ−ンベルトにして、前記ピンを挟んで互いに向かい合う前記第一および第二の孔の縁は前記第一および第二のリンクが前記ピンの周りに相対的に角偏倚するとき該ピンの表面に沿って該ピンの横断面の一端部から他端部へ向けて転動する輪郭に形成されていることを特徴とするチェ−ンベルト」を提案した。
上記の先の提案になるチェーンベルトによれば、チェ−ンベルトが折れ曲がる際のピン周りの部材の相対運動は全面的にリンクの端部に形成された孔の縁とピンの間の転動運動により支持されるものとなるが、かかるチェーンベルトを一対の円錐面が向かい合わされたプーリの間に掛け渡して無段変速機として使用するとき、更に改良すべき点があることに本願発明者は気付いた。それは、リンクの連結がリンクの端部に形成された孔の縁とピンの間の転動運動により支持される構造では、孔の縁とピンとが押し合わされた状態でも両者間の転動が低抵抗にて生ずることから、前記第一および第二のリンクが直線状に整列した状態にあるプーリ間の走行中にチェ−ンベルトが環の外側または内側へ振れる弦振動を起こし易くなることである。
本発明は、かかる問題に着目し、上記の弦振動を抑制するよう先の提案になるチェーンベルトを更に改良することを第一の課題としている。
更にまた、上記の如く各一つのピンを介して互いに連結される第一および第二のリンクが該ピンの周りに相対的に角偏倚するとき、該第一および第二のリンクの孔の縁が該ピンの表面に沿って該ピンの横断面の一端部から他端部へ向けて転動する構造であるときには、該転動に伴ってピンはピンの表面に沿う方向に幾分偏倚するので、ピンはリンクの孔内にてピンの表面に沿う方向に幾分偏倚できる状態になっていなければならず、換言すれば、ピンはリンクの孔内に、チェ−ンベルトのプーリ間に延在する直線部では、その前記他端部に幾分かの隙間が残される状態で挿入されていなければならないので、各2つのリンクの孔の向かい合う縁の間に挟まれたピンの位置は安定せず、チェーンベルトがプーリに巻き付く位置に於いてピンがプーリと出会う際にピンの位置が不規則であることに起因する衝撃が生ずることである。しかし、各ピンとその両表面に当接する2つのリンクの孔の縁との間の転動係合が、上記の先願の図6や図8に示されている例の如く、転動係合の全面にわたって相互に噛み合う歯により滑りに対し規制されていると、各ピンがその両端にてプーリ上に着座し、両端にてプーリにより支えられつつその中間部にてリンクを担持してプーリの周りを回るとき、ピンはリンクから及ぼされる荷重により幾分か撓むので、そのときピンとリンクの孔との間の相互の滑り偏倚が規制され、その部分に好ましからざる摩耗が生ずる恐れがある。
本発明は、かかる問題にも着目し、上記の先の提案になるチェーンベルトを更に改良することを第二の課題としている。
上記の第一の課題を解決するものとして、本発明は、チェ−ンベルトの延在方向に沿って互いに隣接して配置された第一および第二のリンクの隣接する端部が互いに重ね合わされ、該重ね合わせ部にて前記第一のリンクの端部に形成された第一の孔と該重ね合わせ部にて前記第二のリンクの端部に形成された第二の孔とを貫通してピンが通されることにより該第一および第二のリンクが互いに連結される構造のチェ−ンベルトにして、前記ピンを挟んで互いに向かい合う前記第一および第二の孔の縁は前記第一および第二のリンクが直線状に整列した状態にあるとき前記ピンと互いに補形にて係合し、該直線状整列状態から相互に屈曲するとき前記ピンの表面に沿って該ピンの横断面の一端部から他端部へ向けて転動するようになっていることを特徴とするチェ−ンベルトを提案するものである。
前記第一の孔の縁と前記ピンの間の前記補形係合と第二の孔の縁と前記ピンの間の前記補形係合の少なくとも一方は平面どうしの係合であってよい。
更にまた、本発明は、上記の第一の課題に加えて第二の課題を解決するものとして、チェ−ンベルトの延在方向に沿って互いに隣接して配置された第一および第二のリンクの隣接する端部が互いに重ね合わされ、該重ね合わせ部にて前記第一のリンクの端部に形成された第一の孔と該重ね合わせ部にて前記第二のリンクの端部に形成された第二の孔とを貫通してピンが通されることにより該第一および第二のリンクが互いに連結される構造のチェ−ンベルトにして、前記ピンを挟んで互いに向かい合う前記第一および第二の孔の縁は前記第一および第二のリンクが直線状に整列した状態にあるとき前記ピンと互いに補形にて係合し、該直線状整列状態から相互に屈曲するとき前記ピンの表面に沿って該ピンの横断面の一端部から他端部へ向けて転動するようになっており、前記第一および第二のリンクが直線状に整列した状態にあるとき互いに係合して前記第一および第二の孔の縁と前記ピンの表面との間の転動方向への滑りを阻止し、前記第一および第二の孔の縁が前記ピンの表面に沿って該ピンの横断面の前記一端部から前記他端部へ向けて転動したとき互いの係合から外れるピン/リンク一部係止手段が設けられていることを特徴とするチェ−ンベルトを提案するものである。
上記の如きチェ−ンベルトに於いて、前記ピン/リンク一部係止手段は前記第一および第二の孔の縁と前記ピンの表面のいずれか一方に設けられた凹部と他方に設けられた凸部とからなっていてよい。特に、前記凹部はV字形であり、前記凸部は前記V字形に対し補形をなす山形であってよい。
また、上記の如きチェ−ンベルトに於いて、前記ピンは前記横断面で見て前記一端部から前記他端部へ向けて実質的に一定の厚みを有していてよいが、或は前記ピンは前記横断面で見て前記一端部からから前記他端部へ向けて厚みが漸減していてよい。
また、上記の如きチェ−ンベルトに於いて、前記第一および第二のリンクの少なくとも一方の前記孔の前記縁は該リンクのその他の部分とは別部材として形成されそこに取りつけられた縁取り部材であってよい。この場合、前記第一および第二のリンクの少なくとも一方は複数個がチェ−ンベルトの幅方向に並列に配置されているときには、前記縁取り部材は前記の並列に配置された複数個のリンクに亙って延在するピン状部材であってよい。
上記の如く、チェ−ンベルトの延在方向に沿って互いに隣接して配置された第一および第二のリンクの隣接する端部が互いに重ね合わされ、該重ね合わせ部にて前記第一のリンクの端部に形成された第一の孔と該重ね合わせ部にて前記第二のリンクの端部に形成された第二の孔とを貫通してピンが通されることにより該第一および第二のリンクが互いに連結される構造のチェ−ンベルトに於いて、前記ピンを挟んで互いに向かい合う前記第一および第二の孔の縁は前記第一および第二のリンクが直線状に整列した状態にあるとき前記ピンと互いに補形にて係合し、該直線状整列状態から相互に屈曲するとき前記ピンの表面に沿って該ピンの横断面の一端部から他端部へ向けて転動するようになっていれば、前記第一および第二のリンクが直線状に整列した状態にあるとき、該第一および第二のリンク間に引張り力が作用した状態で、前記第一のリンクと前記ピン或いは前記第二のリンクと前記ピンの間に傾動を起こさせるには、補形係合の幅方向の両端のいずれか一方を支点とし、該幅の1/2に引張り力を乗じた値を大きさとするモーメントを必要とし、チェ−ンベルトの引張り側直線状走行部には前記第一および第二のリンク間に作用する引張り力に比例して増大する横振れ抑止力が作用し、これによってチェーンベルトの直線状走行部に弦振動が生ずることが抑制される。
補形係合の構造的に最も簡単で且つ係合面に於ける面圧の大きさおよび均一性において好ましいものは、平面どうしの係合である。前記第一の孔の縁と前記ピンの間の前記補形係合と前記第二の孔の縁と前記ピンの間の前記補形係合の少なくとも一方、できれば両方が、平面どうしの係合とされれば、好ましい。
また、前記第一および第二のリンクが直線状に整列した状態にあるとき互いに係合して前記第一および第二の孔の縁と前記ピンの表面との間の転動方向への滑りを阻止し、前記第一および第二の孔の縁が前記ピンの表面に沿って該ピンの横断面の前記一端部から前記他端部へ向けて転動したとき互いの係合から外れるピン/リンク一部係止手段が設けられていれば、前記第一および第二のリンクがチェ−ンベルトの直線走行部にあって直線状に整列した状態にあるときには、前記ピン/リンク一部係止手段が係合していることにより、ピンを挟んで互いに向かい合う前記第一および第二の孔の縁と前記ピンの表面との間の転動方向への滑りが阻止され、該第一および第二のリンクに対する前記ピンの表面に沿う横方向位置は所定の位置に安定して規制される。このことは、前記第一および第二のリンクが直線状に整列した状態にあるとき、前記第一および第二の孔の縁と前記ピンとが互いに補形にて係合することを確実に達成する効果ももたらす。そして、チェ−ンベルトがプ−リに巻き掛かりはじめ、前記第一および第二のリンクの間に折れ曲りが生ずるにつれて、該第一および第二のリンクの孔の縁と前記ピンとの接触部がピン横断面の一端部より他端部へ向けて移動すると、ピン/リンク一部係止手段は外れてピンの表面に沿う前記第一および第二の孔の縁の転動には滑りが許されるようになる。従って、チェ−ンベルトの直線走行部に於いては、第一および第二のリンクに対するピンの表面に沿う横方向位置を所定の位置に安定して保持し、全てのピンがプーリと一様に出会うようにし、その後チェ−ンベルトがプ−リに巻き掛かり、両端にてプーリにより支えられたピンにその中間部にてリンクからの荷重が作用することによりピンが幾分か撓んだとしても、そのようなピンの撓みによるピンとリンク孔の縁との間の転動係合面どうしの捩れは転動係合面間の滑りにより容易に逃がされ、動力損失やこの部分に好ましいからざる摩耗が生ずるようなことは確実に回避される。
この場合、前記ピン/リンク一部係止手段が前記第一および第二の孔の縁と前記ピンの表面のいずれか一方に設けられた凹部と他方に設けられた凸部とからなっていれば、第一および第二のリンクがチェ−ンベルトの直線走行部にあって直線状に整列した状態にあり、第一および第二のリンクの孔の縁とピンとがピン横断面の一端部にて係合しているときには、凹部と凸部の嵌合によりピンとリンク孔の縁の転動係合面間の滑りは確実に阻止され、第一および第二のリンクに対するピンの表面に沿う横方向位置は所定の位置に確実に安定して規制される。そして第一および第二のリンクが直線状に整列した状態から相互に屈曲し、ピンと第一および第二の孔の縁の転動係合部がピン横断面の一端部から他端部へ向けて遷移したときには、凹部と凸部の嵌合は容易且つ確実に外れて、ピンとリンク孔の縁の転動係合面間には必要に応じて滑りが許されるようになる。
また、特に前記凹部がV字形であり、前記凸部が前記V字形に対し補形をなす山形とされていれば、各ピンとそれのよって連結された第一および第二のリンクがプーリの周りを回る位置にあり、ピンとそれを挟んで互いに向かい合う第一および第二の孔の縁がピン横断面の他端部にて転動係合していて、ピン/リンク一部係止手段が外れた状態から、ピンと第一および第二リンクが再びプーリ間の直線部へ移行し、ピンと第一および第二の孔の縁の係合部がピン横断面の他端部から一端部へ遷移することによってピン/リンク一部係止手段が再係合するとき、ピンと第一および第二の孔の縁の間の相対位置にずれが生じていても、そのようなずれは、V字形の凹部とそれに対し補形をなす山形の凸部の嵌合により案内されて整合へ向かい、各ピンとそれのよって連結された第一および第二のリンクがプーリ間の直線部に移行したときには、第一および第二のリンクに対するピンの表面に沿う横方向位置は所定の位置に確実に設定された状態となる。
前記ピンが横断面で見て一端部から他端部へ向けて実質的に一定の厚みを有するものとされれば、ピンは板材からそのまま打ち抜き等により製造できるので、その製造コストはそれだけ安くなるという利点が得られるが、また前記ピンがその横断面で見て前記一端部からから前記他端部へ向けて厚みが漸減するものとされれば、各ピンとそれのよって連結された第一および第二のリンクがプーリの周りに巻き掛けられた位置にあり、ピンとそれを挟んで互いに向かい合う第一および第二の孔の縁がピン横断面の他端部にて転動係合しているとき、ピンと第一の孔の縁との間に作用する押圧荷重およびピンと第二の孔の縁との間に作用する押圧荷重は、いずれも、それぞれピンと第一の孔の縁の当接係合の接平面およびピンと第二の孔の縁の当接係合の接平面に対しより垂直に近くなり、ピンと第一および第二の孔の縁の当接係合に当って各面に作用するしごき作用が減じられ、それだけこれら当接係合面に生ずる磨耗が低減される。
前記第一および第二のリンクの少なくとも一方の孔の縁が該リンクのその他の部分とは別部材として形成されそこに取りつけられた部材により構成されていれば、該別部材を耐圧強度の高い材料よりなるものとしておくことにより、リンク本体の製造に適した材料の選択の制限を受けることなく、孔の縁の耐圧強を高めることができる。また、前記第一および第二のリンクの少なくとも一方は複数個がチェ−ンベルトの幅方向に並列に配置されているとき、前記縁取り部材が並列に配置された複数個のリンクに亙って延在するピン状部材とされれば、リンクの孔の縁の補強をピン状部材の挿入によって簡単に行なうことができる。
添付の図1は本発明によるチェ−ンベルトをその一部に於いて一つの実施の形態について幾分解図的に示す側面図であり、図2は図1の切断面2−2によるチェ−ンベルトの断面を矢印方向に見た断面図である。
図に於いて、10はピンであり、12はピン10に対する第一のリンクであり、14はピン10に対する第二のリンクであり、これら第一および第二のリンクが、それぞれの隣接する端部の重なり部にてそれぞれに明けられた孔にピン10が通されることにより互いに回動可能に連結されている。即ち、第一のリンク12の両端部には、半月状の孔16が該リンクの長手方向の中心線18に対し対称に明けられており、同様に第二のリンク14にも、その両端部に半月状の孔20が該リンクの長手方向の中心線22に対し対称に明けられている。ピン10は孔16と20の重なり合った部分を貫通して設けられ、孔16の縁24と孔20の縁26との間に押し挟まれ、それによってリンク12と14の間に引っ張り力を伝達するようになっている。
図1にてリンク12の左方には、図示されていない同様のリンクがピン10aを介して連結されている。またリンク14の右方には、同様のリンク28がピン10bを介して連結され,更にリンク28の右下方には、同様のリンク30がピン10cを介して連結され、更にリンク30の下方には、図示されていない同様のリンクがピン10dを介して連結されている。尚、これらの図1に現れている輪郭のリンクは、それぞれただ一つではなく、同種のものが図2に示されている如くリンクの厚み方向に多数枚重ね合わされ、所要の大きさの駆動力を伝達することができるようになっている。これらのリンクよりなるチェ−ンベルトは、矢印にて示されている如く図にて右方へ移動中であり、今丁度リンク28が図には示されていないプ−リの周りに巻き掛けられつつある。
図示のチェ−ンベルトは、プ−リ間に掛け渡され、直線かまたはそれより一方の側へのみ折り曲げられる態様にて使用されるものとする。図示の状態では、第一および第二のリンク12および14はチェ−ンベルトの直線状延在部にあり、リンク14は直線状延在状態の終端にある。第一および第二のリンク12および14がチェ−ンベルトの直線状延在部にあるとき、ピン10を挟んで対向するリンク12の孔16の縁24とリンク14の孔20の縁26とは、ピン10の横断面で見て、その一端部(図1にて下端部)にて該ピンの表面と互いに補形にて係合するよう形成されている。図示の実施の形態では、補形は直線(図の紙面の厚さ方向の次元を含む3次元で見れば平面)である。この補形係合部は、リンク12の孔16の縁24とリンク14の孔20の縁26とピン10の横断面で見て、その一端(図1にて下端)から以下に説明されるピン/リンク一部係止手段が設けられているところまでの25および27の部分である。尚、補形係合部25,27は、補形係合の構造的に最も簡単で且つ係合面に於ける面圧の大きさおよび均一性において好ましいものとして、平面どうしの係合とされているが、平面どうしの係合には限られない。
そして、図示の状態からチェ−ンベルトがリンク一つ分だけ図にて右方へ移動し、リンク12がリンク14の位置に至り、リンク14がリンク28の位置に至ると、その間にリンクに12と14の間には、図示のリンク14と28の間の如き折れ曲がりが生じ、それに応じて、ピン10に対するリンク12の孔の縁24とリンク14の孔の縁26との接触部は、前記一端部(図1にて下端部)より他端部(図1にて上端部)まで移動し、図にてリンクに14と28の間に示されている状態となる。
ピン10の両側面とリンク12の孔の縁24とリンク14の孔の縁26には、チェ−ンベルトが直線状延在部にあり、ピン10を挟んで対向するリンク12の孔16の縁24とリンク14の孔20の縁26とがピン10の横断面で見てその一端部(図1にて下端部)にて該ピンの表面に補形係合する部分25,27の図に於ける上端位置に、凹部32と凸部34との嵌合よりなり、ピン10とリンク12の孔16の縁24とリンク14の孔20の縁26との転動係合の相対的位置関係を転動方向への滑りに対し規制するピン/リンク一部係止手段が設けられている。図1に示す例では、ピン10の側に凹部32が設けられ、リンク12の孔16の縁24とリンク14の孔20の縁26の側に凸部34が設けられているが、かかる凹凸の関係は逆の関係とされてもよく、即ち、ピン10の側に同様の凸部が設けられ、リンク12の孔16の縁24とリンク14の孔20の縁26の側に同様の凹部が設けられてもよい。
かかるピン/リンク一部係止手段の凹凸の輪郭は、互いに嵌合してピン10とリンク12の孔16の縁24とリンク14の孔20の縁26との補形当接係合と転動係合の相対的位置関係を転動方向への滑りに対し規制することができる凹凸輪郭であれば、任意の輪郭のものであってよいが、特に、図1に示す例に於ける如く、凹部はV字形であり、凸部は凹部V字形に対し補形をなす山形であるのが好ましく、ピン/リンク一部係止手段の凹凸輪郭がそのような輪郭とされるときには、ピンが10bや10cとして示されている如き位置に来て、凹部と凸部の間の係合が外れた後、その状態でチェーンベルトがプーリの周りを更に進行し、ピンがプーリとの係合より外れて再びチェ−ンベルトの直線状延在部に至り、ピン10を挟んで対向するリンク12の孔16の縁24とリンク14の孔20の縁26とがピン10の横断面で見て前記一端部(今度は、図1には示されていないが、図1に追加して示されたとすれば、図にて上端部)にて該ピンの表面に接し、凹部32と凸部34とが再び嵌合するとき、ピン10の凹部32とリンク12の孔16の縁24に於ける凸部34との間の整合、或はピン10の凹部32とリンク14の孔20の縁26に於ける凸部34との間の整合に狂いが生じていても、V字形とそれに対し補形をなす山形との嵌合がもたらす案内作用により、整合の狂いは容易に矯正され、凹部32と凸部34の再係合により、ピン10は再びリンクに対し正規の位置に揃えられ、その状態で図には示されていない他方のプーリへ巻き付けられる。同様の整合作用は、各ピンが該他方のプーリの周りを回った後、該他方のプーリを去って直線状延在部、即ち、図1に示す直線状延在部へ進むときにも生じるので、チェーンベルトの作動中、図1に示す直線状延在部にある各ピンは既にリンクに対し整合されており、その状態で一様にプーリの周りに巻き付けられて行く。
尚、かかるピン/リンク一部係止手段が設けられる場合には、ピン10の周りのリンク12と14の間の相対的回動に応じてピン10はリンクに対し極僅かではあるがリンクの折れ曲がりの外側方向に偏倚するので、ピンはその一端部にリンクの孔の縁に対し上記の偏倚を許す隙間36を残す寸法とされる必要がある。
リンク12の孔の縁24とリンク14の孔の縁26の図1で見た輪郭は、補形係合部25,27を除き、円弧であってよく、その曲率が、リンク12と14の間に図示の如き折れ曲がりが生ずることに応じて、ピン10に対するリンク12の孔の縁24とリンク14の孔の縁26との接触部が補形係合部25,27の上端より図1で見て上方へ移動するように定められればよい。こうしてリンク12と14の間にはピン10による回動連結が達成され、その際、リンク12とピン10の間の係合およびリンク14とピン10の間の係合は、特に補助係止体等の何らかの第三の部材を介在させなくても、いずれも転動係合となる。
図1に示した実施の形態では、ピン10はその横断面でみて一様な厚みを有するものであるが、ピン10の厚みは、図3に示されているように、チェ−ンベルトが直線状延在部にあるときリンク12の孔の縁24とリンク14の孔の縁26の補形係合部と補形係合するピンの補形係合部の上端からチェ−ンベルトがプーリの周りに巻き付けられたとき同縁24および26と接触する上端部へ向けて漸減する輪郭とされてもよい。図3に於いて、図1に示す部分に対応する部分は図1に於けると同じ符号により示されている。このようにピン10の厚みがその補形係合部の上端から上方へ向けて漸減する輪郭とされれば、チェ−ンベルトがプーリの周りに巻き付けられたとき、ピン10bについて示されている如く、ピン10bとリンク14の孔の縁26との間に作用する押圧荷重F1およびピン10bとリンク28の孔の縁24との間に作用する押圧荷重F2は、いずれも、それぞれピン10bとリンク14の孔の縁26の当接係合の接平面S1およびピン10bとリンク28の孔の縁24の当接係合の接平面S2に対しより垂直に近く作用し、ピンとリンクの孔の縁の当接係合に当って各面に作用するしごき作用が減じられ、それだけこれら当接係合面に生ずる磨耗が低減される。
図4は、本発明の更に他の一つの実施の形態を示す図1と同様の幾分解図的側面図である。図4に於いても、図1に示す部分に対応する部分は図1に於けると同じ符号により示されている。この実施の形態の於いては、第一および第二のリンク12および14の少なくとも一方(図示の例では両方)の孔の縁24、26は該リンクの本体部とは別部材として形成されそこに取りつけられた縁取り部材38、40により構成されている。リンク12および14の孔の縁とピン10の表面との接触は、上記の補形係合部を除く転動係合部に於いては、理論的には線接触であるため、これらの接触面は高い耐圧強度を要する。ピン10全体を曲げや剪断に強く且つ高い表面耐圧強度を呈するよう作ることは比較的容易であるが、リンク12や14は全体として張力に対し優れた強度を呈するように造られる必要があり、同一の材料にて同時に高い表面耐圧強度を得ることは一般に困難である。従って、ピンの表面と接するリンクの孔の縁がリンクの本体部(換言すればその他の部分)とは別部材で専ら耐圧強度を高くする観点から選択された材料により形成されそこに取りつけられた部材により構成されるようにしておくことにより、リンク本体の製造に適した材料の選択に制限されることなく、孔の縁の耐圧強度を高めることができる。
尚、縁取り部材38、40は各リンクに個別に設けられて各リンクの孔のピン10と転動接触する縁を縁取る部材であってよいが、或はまた、図5に示されている如く横方向に並んで重合された同種のリンク12または14の全体に亙って延在する円弧状断面のピン部材として設けられてもよい。前者の場合には、各縁取り部材40または42は各リンクの孔の縁に沿って焼付け、溶接等の固定手段により固定的に取り付けられなければならないが、後者の場合には、ピン状の縁取り部材40、42はピン10と共にリンク重合体の孔にただ挿入され、両端部がプーリに接触せず且つリンク重合体の両外側にあるリンクの孔より抜け落ちることのないよう、図には示されていない適当な係止手段により横方向の移動が規制されていればよい。
以上に於いては本発明をいくつかの実施の形態について詳細に説明したが、これらの実施の形態について本発明の範囲内にて種々の変更が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
10,10a,10b,10c,10d…ピン、12,14…リンク、16…リンク12の孔、18…リンク12の長手方向の中心線、20…リンク14の孔、22…リンク14の長手方向の中心線、24…リンク12の孔16の縁、25…孔16の縁の補形係合部、26…リンク14の孔20の縁、27…孔20の縁の補形係合部、28,30…リンク、32…凹部、34…凸部、36…隙間、38,40…縁取り部材
Claims (9)
- チェ−ンベルトの延在方向に沿って互いに隣接して配置された第一および第二のリンクの隣接する端部が互いに重ね合わされ、該重ね合わせ部にて前記第一のリンクの端部に形成された第一の孔と該重ね合わせ部にて前記第二のリンクの端部に形成された第二の孔とを貫通してピンが通されることにより該第一および第二のリンクが互いに連結される構造のチェ−ンベルトにして、前記ピンを挟んで互いに向かい合う前記第一および第二の孔の縁は前記第一および第二のリンクが直線状に整列した状態にあるとき前記ピンと互いに補形にて係合し、該直線状整列状態から相互に屈曲するとき前記ピンの表面に沿って該ピンの横断面の一端部から他端部へ向けて転動するようになっていることを特徴とするチェ−ンベルト。
- 前記第一の孔の縁と前記ピンの間の前記補形係合と第二の孔の縁と前記ピンの間の前記補形係合の少なくとも一方は平面どうしの係合であることを特徴とする請求項1に記載のチェ−ンベルト。
- 前記第一および第二のリンクが直線状に整列した状態にあるとき互いに係合して前記第一および第二の孔の縁と前記ピンの表面との間の転動方向への滑りを阻止し、前記第一および第二の孔の縁が前記ピンの表面に沿って該ピンの横断面の前記一端部から前記他端部へ向けて転動したとき互いの係合から外れるピン/リンク一部係止手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のチェ−ンベルト。
- 前記ピン/リンク一部係止手段は前記第一および第二の孔の縁と前記ピンの表面のいずれか一方に設けられた凹部と他方に設けられた凸部とからなっていることを特徴とする請求項3に記載のチェ−ンベルト。
- 前記凹部はV字形であり、前記凸部は前記V字形に対し補形をなす山形であることを特徴とする請求項4に記載のチェ−ンベルト。
- 前記ピンは前記横断面で見て前記一端部から前記他端部へ向けて実質的に一定の厚みを有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のチェ−ンベルト。
- 前記ピンは前記横断面で見て前記一端部からから前記他端部へ向けて厚みが漸減していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のチェ−ンベルト。
- 前記第一および第二のリンクの少なくとも一方の前記孔の前記縁は該リンクのその他の部分とは別部材として形成されそこに取りつけられた縁取り部材により構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のチェ−ンベルト。
- 前記第一および第二のリンクの少なくとも一方は複数個がチェ−ンベルトの幅方向に並列に配置されており、前記縁取り部材は前記の並列に配置された複数個のリンクに亙って延在するピン状部材であることを特徴とする請求項8に記載のチェ−ンベルト。
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JP2004217524A JP2006038072A (ja) | 2004-07-26 | 2004-07-26 | 直線状整列状態が安定化された転動連結チェ−ンベルト |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008151309A (ja) * | 2006-12-20 | 2008-07-03 | Jtekt Corp | 動力伝達チェーンおよび動力伝達装置 |
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2004
- 2004-07-26 JP JP2004217524A patent/JP2006038072A/ja not_active Withdrawn
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