JP2006037787A - 内燃機関のバルブ特性制御装置 - Google Patents

内燃機関のバルブ特性制御装置 Download PDF

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Yuji Yoshihara
裕二 吉原
Takahide Koshimizu
孝英 腰水
Fuminori Hosoda
文典 細田
Yoshiaki Miyasato
佳明 宮里
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Abstract

【課題】可変動弁機構の強制駆動を行う際に生じやすい、機関出力や機関回転速度等といった機関運転状態の変化を好適に抑制することのできる内燃機関のバルブ特性制御装置を提供する。
【解決手段】電子制御装置7は、吸気バルブ21のバルブ特性を変更可能な可変動弁機構3についてその駆動を制御する。この電子制御装置7は、機関運転状態に基づいて設定される目標バルブ特性と実際のバルブ特性との乖離が基準値を超えており、かつその基準値を超えている状態が予め設定された期間継続されている場合には可変動弁機構3に異常有りとの判定をし、この異常有りとの判定がなされたときには、可変動弁機構3を強制駆動する。この強制駆動に際して、電子制御装置7はエンジン1の吸気管1PI内に設けられたスロットル弁17が閉じていることを条件に可変動弁機構3の強制駆動を実行する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、機関バルブのバルブ特性を変更可能な可変動弁機構を備える内燃機関のバルブ特性制御装置に関する。
吸気バルブや排気バルブのリフト量や開弁期間等々、機関バルブのバルブ特性を内燃機関の運転状態に応じて変更する可変動弁機構が従来から提案されている。
例えば、バルブ特性としてリフト量を変更する装置にあっては、その時々の機関運転状態に応じて目標リフト量を求める一方、可変動弁機構の作動状態をセンサにより検出し、その検出値に基づいて実リフト量を求めるようにしている。そして、それら目標リフト量と実リフト量とが一致するように可変動弁機構を駆動制御するようにしている(例えば、特許文献1)。
ところで、この可変動弁機構にあってその可動部に異物のかみ込みや劣化油の固着等に起因する作動異常が生じると、内燃機関の運転状態に応じたバルブ特性の変更を行うことができなくなる。そこで、特許文献1に記載の装置では、以下のような態様でそのような作動異常に対処するようにしている。
この特許文献1に記載の装置では、センサによって検出された検出リフト量と目標リフト量との偏差が大きく、かつ検出リフト量の変化量が小さいといった状態が所定期間継続している場合には、可変動弁機構に作動異常が生じていると判断するようにしている。そしてこのような異常判定がなされたときには、可変動弁機構の復帰動作を行うようにしている。より具体的には、可変動弁機構の作動量を調整するオイルコントロールバルブを強制駆動するようにしている。可変動弁機構の作動異常がオイルコントロールバルブ内での異物のかみ込みに起因したものである場合には、このような強制駆動の実施によりその異物は取り除かれる可能性があり、実際に異物が除去されれば、可変動弁機構は正常復帰する。
特開2001−254637号公報
ところで、可変動弁機構が駆動されるとバルブ特性が変化するため、機関への吸入空気量が変化し、機関出力や機関回転速度等といった機関運転状態も変化するようになる。そのため、上述したような可変動弁機構の強制駆動を実施する場合にも機関運転状態は変化してしまい、例えばドライバビリティの悪化等を招くおそれがある。
本発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、可変動弁機構の強制駆動を行う際に生じやすい、機関出力や機関回転速度等といった機関運転状態の変化を好適に抑制することのできる内燃機関のバルブ特性制御装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、機関バルブのバルブ特性を変更可能な可変動弁機構についてその駆動を制御する装置であって、機関運転状態に基づいて設定される目標バルブ特性と実際のバルブ特性との乖離が基準値を超えており、かつその基準値を超えている状態が予め設定された期間継続されている場合には前記可変動弁機構に異常有りとの判定をし、この異常有りとの判定がなされたときには、前記可変動弁機構を強制駆動する内燃機関のバルブ特性制御装置において、前記内燃機関の吸気通路内に設けられたスロットル弁が閉じていることを条件に前記可変動弁機構の強制駆動を実行することをその要旨とする。
同構成によれば、目標バルブ特性と実際のバルブ特性との乖離が基準値を超えており、かつその基準値を超えている状態が予め設定された期間継続されている場合には可変動弁機構に異常有りとの判定がなされる。そのため、可変動弁機構の応答遅れに起因する目標バルブ特性と実際のバルブ特性との乖離が可変動弁機構の異常と判定されてしまうといった誤判定の発生が抑制され、可変動弁機構の作動異常がより正確に判定される。
ここで、同構成では、可変動弁機構に異常有りとの判定がなされた場合、スロットル弁が閉じていることを条件に可変動弁機構の強制駆動を実行するようにしている。すなわち、機関への吸入空気量がスロットル弁によって制限されているとき、換言すればバルブ特性を変更しても吸入空気量がそれほど変化しないときに、可変動弁機構の強制駆動が行われる。従って、可変動弁機構の強制駆動を行う際に生じやすい、機関出力や機関回転速度等といった機関運転状態の変化を好適に抑制することができるようになる。
なお、可変動弁機構によって変更されるバルブ特性としては、機関バルブのリフト量や開弁期間などが挙げられる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関のバルブ特性制御装置において、前記可変動弁機構の強制駆動は、機関運転状態がアイドル状態にあるときに実行されることをその要旨とする。また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関のバルブ特性制御装置において、前記可変動弁機構の強制駆動は、機関運転状態が減速状態にあるときに実行されることをその要旨とする。
機関運転状態がアイドル状態にあるときや減速状態にあるときには、スロットル弁の閉弁がある程度の期間継続される可能性が高い。そこで、請求項2や請求項3に記載の構成を採用することにより、吸入空気量の制限が継続されやすいときに可変動弁機構の強制駆動が実行されるようになり、同強制駆動中での機関運転状態の変化を好適に抑制することができるようになる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関のバルブ特性制御装置において、前記可変動弁機構の強制駆動に際して、該可変動弁機構は実際のバルブ特性が前記目標バルブ特性から乖離する方向に駆動されることをその要旨とする。
目標バルブ特性と実際のバルブ特性とが乖離している場合には、実際のバルブ特性を目標バルブ特性に近づけるべく可変動弁機構の可動部が移動していく過程で、その移動方向に異物のかみ込みや劣化油の固着等が生じているため、可変動弁機構に作動異常を生じさせている可能性がある。この点上記構成では、可変動弁機構の強制駆動に際して、実際のバルブ特性が目標バルブ特性から乖離する方向、すなわち異物のかみ込みや劣化油の固着等が生じている方向とは逆の方向に可変動弁機構を駆動するようにしている。そのため、異物や劣化油等の除去を効果的に行うことができるようになる。
なお、機関バルブのバルブ特性を変更可能な可変動弁機構としては、カムシャフトの軸方向にカムプロフィールが変化する3次元カムを備え、その3次元カムをカムシャフトの軸方向に移動させることにより、該3次元カムにより駆動される機関バルブのバルブ特性を変更する機構の他、請求項5に記載の発明によるように、スライダと、該スライダに対して第1スプライン機構にて係合する第1部材と、前記スライダに対して前記第1スプライン機構とはねじれ角が異なる第2スプライン機構にて係合する第2部材とを有し、カムシャフトに設けられたカムからのバルブ駆動力を前記第1部材にて受け、そのバルブ駆動力を前記スライダを介して前記第2部材から前記機関バルブへ伝達するとともに、前記スライダをその軸方向に移動することで前記第1部材と前記第2部材との間の回転位相差を変更してバルブ特性を変更する可変動弁機構を採用することもできる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の内燃機関のバルブ特性制御装置において、前記強制駆動に際しては、前記スライダが往復移動されることをその要旨とする。
同構成によれば、上記第1スプライン機構や第2スプライン機構での異物のかみ込みや劣化油の固着等に起因する可変動弁機構の作動異常を好適に復帰させることができるようになる。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の内燃機関のバルブ特性制御装置において、前記強制駆動に際しては、前記スライダがその可動範囲内の全域にかけて往復移動されることをその要旨とする。
同構成によれば、上記スライダがその可動範囲内において最大限移動されるため、上記第1スプライン機構や第2スプライン機構での異物のかみ込みや劣化油の固着等に起因する可変動弁機構の作動異常を十分に復帰させることができるようになる。また、スライダがその可動範囲内の全域にかけて往復移動されるため、異常判定の原因となった異物のみならず、今後、可変動弁機構の作動異常を引き起こす可能性のある異物も未然に除去することができるようになる。
以下、本発明に係る内燃機関のバルブ特性制御装置を具体化した一実施形態を、図1〜図9を併せ参照して説明する。
図1は、本実施形態におけるエンジン1の構成を示している。なお、本実施形態では、吸気ポートに燃料を噴射供給するポート噴射型のエンジンを想定しているが、燃焼室に燃料を直接噴射する筒内噴射型のエンジンに対しても同様に本発明は適用することができる。
<エンジンの構成>
エンジン1は、シリンダ11やピストン12等を有するエンジン本体1A、機関バルブである吸気バルブ21及び排気バルブ22等を有するシリンダヘッド1H、及びエンジン1のバルブ特性を変更する可変動弁機構3等を備えて構成されている。
エンジン本体1Aにおいて、シリンダ11の内部には、ピストン12が往復移動可能に収容されている。このピストン12は、コネクティングロッド13を介してクランクシャフトに連結されている。
シリンダ11の周囲には、エンジン1の冷却水を流通させるためのウォータジャケット11Wが形成されている。
エンジン1においては、シリンダ11の内周面、ピストン12の頂面、及びシリンダヘッド1Hにより囲まれた領域に燃焼室14が形成されている。
シリンダヘッド1Hには、吸入空気を燃焼室14内へ流入させるための吸気ポート1HI、及び排気を燃焼室14内から流出させるための排気ポート1HEが設けられている。
シリンダヘッド1Hの燃焼室14側には、混合気を点火するイグニッションプラグ15が配設されている。イグニッションプラグ15は、混合気の着火に必要な高電圧を発生するイグナイタ15Iに接続されている。
吸気ポート1HIには、エンジン1外部から燃焼室14へ吸入空気を流通させるための吸気管1PIが接続されている。これら吸気ポート1HIや吸気管1PI等によってエンジン1の吸気通路は構成されている。
吸気管1PIには、吸入空気を浄化するエアクリーナ16、及び吸入空気の流量を調整するスロットル弁17が配設されている。スロットル弁17は、スロットルモータ17Mによる弁軸の駆動を通じてその開度が変更される。
吸気ポート1HIは、シリンダヘッド1Hに配設された吸気側の機関バルブである吸気バルブ21を通じて開閉される。この吸気ポート1HIの吸気バルブ21よりも上流側には、同吸気ポート1HIへ燃料を噴射するインジェクタ18が設けられている。
排気ポート1HEには、燃焼室14からエンジン1外部へ排気を流通させるための排気管1PEが接続されている。この排気ポート1HEは、シリンダヘッド1Hに配設された排気側の機関バルブである排気バルブ22を通じて開閉される。
上記吸気バルブ21のバルブリフト量や開弁期間といったバルブ特性は、後述する可変動弁機構3の作動を通じて変更することが可能になっている。なお、以下では、吸気バルブ21が開弁している間に回転するクランク角をバルブ作用角という。ちなみに、このバルブ作用角は吸気バルブ21の開弁期間に一致するため、同バルブ作用角は可変動弁機構3によって変更されることになる。
エンジン1の各種制御は電子制御装置7によって行われる。この電子制御装置7は、エンジン1の制御に関する各種処理を実行するCPU、制御用のプログラムやその制御に必要な情報を記憶するメモリ、外部との信号の入出力を司る入力ポート及び出力ポートを備えて構成されている。電子制御装置7の入力ポートには、エンジン1の運転状態を検出する以下の各センサが接続されている。
まず、エンジン水温センサ71は、エンジン1の冷却水の温度(エンジン水温THw)を検出する。クランク角センサ72は、クランクシャフトの回転位相(クランク角CA)を検出し、この検出信号に基づいてクランクシャフトの回転速度(機関回転速度Ne)が算出される。エアフロメータ75は、エンジン1内に吸入された空気量(吸入空気量GA)を検出する。車速センサ76は、車両の駆動輪の回転速度(車速Sp)を検出する。アクセルセンサ77は、車両のアクセルペダルの操作量(アクセル操作量Accp)を検出する。そしてスロットル開度センサ78は、スロットル弁17の開度(スロットル開度TA)を検出する。
電子制御装置7の出力ポートには、イグナイタ15I、スロットルモータ17M、インジェクタ18、及び可変動弁機構3等が接続されている。そして、電子制御装置7は、これら各装置を上記各センサによって検出される機関運転状態に基づいて制御する。
<可変動弁機構の構成>
次に、可変動弁機構3の構成及び駆動態様について、図2〜図6を参照して説明する。
可変動弁機構3は、バルブ駆動機構4、同バルブ駆動機構の作動を調整するコントロールシャフト46、並びにスライドアクチュエータ50等から構成されている。このバルブ駆動機構4の構成について、図2及び図3を参照して説明する。
図2に、可変動弁機構3の配設されたエンジン1上部の断面構造を示す。
エンジン1のシリンダヘッド1Hには、クランクシャフトに駆動連結された吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が、回転可能に軸支されている。
排気カムシャフト24の下方には、ローラ26aを備えるローラロッカアーム26が配設されている。このローラ26aは、排気カムシャフト24に設けられた排気カム28に当接されており、排気カム28の回転位相に応じて同排気カム28からの押圧を受ける。
ローラロッカアーム26の一端は、シリンダヘッド1Hに固定されたラッシュアジャスタ29に支持され、もう一端は、排気バルブ22上端のタペット22aに当接されている。このローラロッカアーム26のタペット22a側の端部(タペット側端部26t)は、排気バルブ22の弁ばね22bによって付勢されている。これにより、ローラ26aは、排気カム28に常時当接される。そして排気バルブ22は、上記態様をもって配設されたローラロッカアーム26を介して排気カム28の押圧を受け、常に一定のバルブリフト量及び開弁期間で開閉される。
一方、吸気バルブ21側においては、吸気カムシャフト23に設けられた吸気カム27とローラロッカアーム25との間に可変動弁機構3の一部を構成するバルブ駆動機構4が介設されている。
ローラロッカアーム25は、ローラ25aを備えて排気カムシャフト24の下方に配設されている。このローラロッカアーム25の一端は、シリンダヘッド1Hに固定されたラッシュアジャスタ29に支持され、もう一端は、吸気バルブ21上端のタペット21aに当接されている。このローラロッカアーム25のタペット21a側の端部(タペット側端部25t)は、吸気バルブ21の弁ばね21bによって付勢されている。これにより、ローラ25aは、バルブ駆動機構4に常時当接される。
吸気バルブ21は、ローラロッカアーム25に加え、バルブ駆動機構4を介して吸気カム27の押圧が伝達されるようになっている。
バルブ駆動機構4は、シリンダヘッド1Hに固定された支持パイプ41と、同支持パイプ41に配設された入力部42及び揺動カム43とを備えて構成されている。
入力部42及び揺動カム43は、支持パイプ41上に同支持パイプ41の軸心を中心として揺動可能に配設された円筒状のハウジング42a、43aをそれぞれ備えている。なお、このバルブ駆動機構4では、エンジン1の気筒に設けられた2つの吸気バルブ21に対応して、1つの入力部42と2つの揺動カム43とが対になって設けられている。
入力部42のハウジング42aには、入力アーム42bが径方向に突出形成されている。
入力アーム42bの先端部には、吸気カム27に当接されるローラ42cが回転可能に軸支されている。また、入力アーム42bの先端部は、圧縮状態で配設されたばね44によって、ローラ42cが吸気カム27へ押しつけられるように付勢されている。
揺動カム43のハウジング43aには、出力アーム43bがその径方向に突出形成されている。この出力アーム43bの一面は、凹状に湾曲するカム面43cとなっている。
カム面43cは、ハウジング43aのベース円部分、即ち出力アーム43bが突出形成された部分以外のハウジング43aの外周面に連続して滑らかに接続されており、カム面43c及びハウジング43aのベース円部分は、ローラロッカアーム25のローラ25aに当接されている。
図3に、バルブ駆動機構4の斜視断面構造を示す。
バルブ駆動機構4には、入力部42を間に挟んで2つの揺動カム43が配設されている。
入力部42及び揺動カム43の各ハウジング42a、43aは、それぞれ中空円筒形状に形成されており、それらの内部には支持パイプ41が挿通されている。
入力部42のハウジング42a内周には、右ねじの螺旋状に形成されたヘリカルスプライン42dが形成されている。一方、揺動カム43のハウジング43a内周には、左ねじの螺旋状に形成されたヘリカルスプライン43dが形成されている。
入力部42及び2つの揺動カム43の各ハウジング42a、43aによって形成される一連の内部空間には、外周面にギアが形成されたスライダであるスライダギア45が配設されている。このスライダギア45は、略中空円柱状に形成されており、支持パイプ41上に、同支持パイプ41の軸方向に往復移動可能、且つその軸回りに相対回動可能に外嵌されている。
スライダギア45の軸方向中央部の外周面には、右ねじの螺旋状に形成されたヘリカルスプライン45aが形成されている。このヘリカルスプライン45aは、入力部42のハウジング42a内周に形成されたヘリカルスプライン42dと噛合わされている。これらヘリカルスプライン45a及びヘリカルスプライン42dによって第1スプライン機構が構成されており、第1部材である入力部42はスライダギア45に対し、この第1スプライン機構にて係合されている。
一方、スライダギア45の軸方向両端部の外周面には、左ねじの螺旋状に形成されたヘリカルスプライン45bがそれぞれ形成されている。このヘリカルスプライン45bは、揺動カム43のハウジング43a内周に形成されたヘリカルスプライン43dと噛合わされている。これらヘリカルスプライン45b及びヘリカルスプライン43dによって、第1スプライン機構とはねじれ角の異なる第2スプライン機構が構成されており、第2部材である2つの揺動カム43はスライダギア45に対し、この第2スプライン機構にて係合されている。
スライダギア45外周のヘリカルスプライン45aと各ヘリカルスプライン45bとの間には、これらヘリカルスプライン45a、45bに比して小さい外径に形成された小径部45cがそれぞれ形成されている。一方の小径部45cには、周方向に延びる長穴45dが形成されている。
支持パイプ41の内部には、その軸方向へ摺動可能に挿通されたコントロールシャフト46が設けられている。このコントロールシャフト46は、スライドアクチュエータ50の作動により、支持パイプ41に対して軸方向(矢印の方向)へ往復移動することが可能となっている。
このスライドアクチュエータ50には、電子制御装置7によって制御される駆動用モータ51や、同駆動用モータ51の回転運動を直線運動に変換してコントロールシャフト46を移動させる機構等が備えられており、駆動用モータ51の回転位相の制御を通じてコントロールシャフト46の位置は制御される。
また、スライドアクチュエータ50には、コントロールシャフト46の位置、具体的には初期位置からの移動量を検出するための位置検出センサ55が配設されており、その検出データは電子制御装置7に入力される。この位置検出センサ55によって可変動弁機構3の作動状態、すなわち可変とされる吸気バルブ21の実際のバルブ特性が検出される。なお、本実施形態では、上記位置検出センサ55によって駆動用モータ51の回転位相を検出するようにしている。
先の図3に示したコントロールシャフト46には、係止ピン46aがその径方向に突出形成されている。この係止ピン46aは、支持パイプ41に形成されたその軸方向に延びる長穴を介して、上記長穴45dに挿通されている。これにより、支持パイプ41に対するスライダギア45の回動を許容しつつも、その軸方向への往復移動に応じてスライダギア45を軸方向に移動させることができるようになっている。
以上のように構成されたバルブ駆動機構4では、スライドアクチュエータ50によるコントロールシャフト46の軸方向への移動に応じて、吸気バルブ21のバルブリフト量及びバルブ作用角といったバルブ特性を連続的に可変とすることができる。以下、図4及び図5を参照して、バルブ駆動機構4の作動態様について説明する。
まず、コントロールシャフト46を最大限までR方向(図3の矢印R方向)へ移動させた場合のバルブ駆動機構4の作動状態について、図4を参照して説明する。
図4(A)に、吸気カム27のベース円部分がバルブ駆動機構4の入力部42のローラ42cに当接しているときの状態を示す。
図4(A)の状態において、ローラロッカアーム25のローラ25aは、揺動カム43の出力アーム43bには当接されておらず、同出力アーム43bに隣接したハウジング43aのベース円部分に当接されている。
このとき、吸気バルブ21は吸気ポート1HIを閉じた状態となっている。
そして、吸気カムシャフト23が回転して吸気カム27のリフト部分が入力部42のローラ42cを押し下げると、入力部42が支持パイプ41に対して図4(A)の反時計回り方向(矢印の方向)に回動される。また、これにともなってスライダギア45及び揺動カム43が一体となって回動される。
これにより、揺動カム43の出力アーム43bに形成されたカム面43cがローラロッカアーム25のローラ25aに当接され、カム面43cの押圧によってローラ25aが押し下げられる。
図4(B)に、出力アーム43bのカム面43cがローラロッカアーム25のローラ25aに当接しているときの状態を示す。
ローラ25aがカム面43cを通じて押圧されることにより、ローラロッカアーム25がラッシュアジャスタ29との当接部を中心として揺動され、この揺動を通じて吸気バルブ21が開弁される。
コントロールシャフト46を最大限までR方向(図3の矢印R方向)へ移動させている場合、支持パイプ41の軸心回りにおける入力アーム42bと出力アーム43bとの相対位置は最も近い状態にある。これにより、吸気カム27が最大限に入力部42のローラ42cを押し下げた際におけるローラロッカアーム25のローラ25aの変位量が最大となるため、吸気バルブ21は最も大きいバルブリフト量及びバルブ作用角で開閉されるようになる。
上記バルブ駆動機構4において、コントロールシャフト46がスライドアクチュエータ50によって軸方向に変位されると、それに連動してスライダギア45も軸方向に変位される。そして、その変位に応じて、スライダギア45とスプライン係合されている入力部42及び揺動カム43がスライダギア45に対して相対回動され、入力部42と揺動カム43との間の回転位相差が変更される。
このとき、入力部42と揺動カム43とは、ヘリカルスプラインの形成方向の違いにより、互いに反対方向に回動される。このため、支持パイプ41の軸心回りにおける入力アーム42bと出力アーム43bとの相対位置が変更されるようになる。
次に、コントロールシャフト46を最大限までL方向(図3の矢印L方向)へ移動させた場合のバルブ駆動機構4の作動状態について、図5を参照して説明する。
図5(A)に、吸気カム27のベース円部分が入力部42のローラ42cに当接しているときの状態を示す。このとき、揺動カム43におけるローラ25aの当接位置は、最大限までカム面43cから離れた位置にある。
そして、吸気カムシャフト23の回転により吸気カム27のリフト部分が入力部42のローラ42cを押し下げると、揺動カム43が入力部42と一体に回動される。ただし、この場合は、上述の如く図5(A)の状態での揺動カム43におけるローラ25aの当接位置が最大限までカム面43cから離れている分、カム面43cによるローラ25aの押し下げが開始されるまでの揺動カム43の回転量が、図4に示される作動状態に比べて大きくなる。また、吸気カム27のリフト部分の押し下げにともない、ローラ25aと当接されるカム面43cの範囲も、出力アーム43bの基端側の一部のみに縮小されるようになる。このため、吸気カム27のリフト部分によるローラ42cの押し下げに応じたローラロッカアーム25の揺動量は小さくなる。
図5(B)に、出力アーム43bのカム面43cがローラロッカアーム25のローラ25aに当接しているときの状態を示す。
同図5に示されるように、ローラロッカアーム25の揺動量が小さいことにより、吸気バルブ21はより小さいバルブリフト量にて開弁されるようになる。
この場合、コントロールシャフト46を最大限までL方向(図3の矢印L方向)へ移動させているため、支持パイプ41の軸心回りにおける入力アーム42bと出力アーム43bとの相対位置は最も遠い状態にある。これにより、吸気カム27が最大限に入力部42のローラ42cを押し下げた際におけるローラロッカアーム25のローラ25aの変位量が最小となるため、吸気バルブ21は最も小さいバルブリフト量及びバルブ作用角で開閉されるようになる。
このように、可変動弁機構3(バルブ駆動機構4)においては、吸気カムシャフト23に設けられた吸気カム27からのバルブ駆動力を入力部42(第1部材)にて受け、そのバルブ駆動力をスライダギア45を介して揺動カム43(第2部材)から吸気バルブ21へ伝達するようにしている。また、スライダギア45をその軸方向に移動させて入力部42(第1部材)と揺動カム43(第2部材)との回転位相差を変更することにより、吸気バルブ21のバルブ特性が変更される。より詳細には、支持パイプ41の軸心回りにおける入力アーム42bと出力アーム43bとの相対位置を変更してローラロッカアーム25の揺動態様を変更することにより、図6に示すように、吸気バルブ21のバルブリフト量及びバルブ作用角といったバルブ特性が連続的に変更される。そしてこのようにバルブリフト量及びバルブ作用角が可変とされることにより、燃焼室14に吸入される空気量、すなわち吸入空気量は調量される。例えば、バルブリフト量及びバルブ作用角の増大を通して吸入空気量は増量される。
上述したような可変動弁機構3によるバルブ特性の変更は、電子制御装置7による制御を通じて行われる。すなわち、電子制御装置7は、吸気バルブ21のバルブ特性を機関運転状態に応じたものに設定するべく、アクセル操作量Accpや機関回転速度Neといった機関運転状態に基づいてバルブ作用角の目標値である目標作用角Pを算出する。そして、位置検出センサ55によって検出される実際のバルブ作用角である実作用角Rが目標作用角Pに近づくように上記駆動用モータ51の駆動量をフィードバック制御する。
本実施形態におけるエンジン1では、燃焼室14に導入される吸入空気量の調量が、基本的にはこうした可変動弁機構3の駆動制御を通じて行われるため、スロットル弁17は基本的に全開(設定可能な最大開度)とされている。そして、こうしたスロットル弁17の全開を通じてポンピングロスの低減を図るようにしている。ただし、機関運転状態がアイドル状態にあるとき、減速状態にあるとき、機関停止がなされたとき等のようにアクセル操作量Accpが「0」である場合には、スロットル弁17は全閉(設定可能な最小開度)とされる。
ところで、このような可変動弁機構3の可動部である第1スプライン機構や第2スプライン機構に金属くずなどの異物がかみ込まれると、同可変動弁機構3がロックされて作動異常が生じる。また、第1スプライン機構や第2スプライン機構に劣化油などが固着し始めたり、固着してしまったりすると、同可変動弁機構3の作動速度が低下するため、例えば上記フィードバック制御での応答性が低下するといった作動異常が生じる。
そこで本実施形態では、そのような可変動弁機構3の作動異常を判定し、作動異常が生じている旨判定されたときには、その作動異常を解消するための復帰動作を行うようにしている。
図7は、可変動弁機構3の作動異常を判定する処理についてその手順を示している。この処理は電子制御装置7によって所定期間毎に繰り返し実行される。
本処理が開始されるとまず、目標バルブ特性である目標作用角Pと実際のバルブ特性である実作用角Rとの乖離が基準値を超えているか否かが判定される(S100)。ここでは、目標作用角Pと実作用角Rとの差の絶対値である差ΔDが求められ、目標作用角Pに対する差ΔDの比率Hが基準値Aを超えているか否かが判定される。なお、基準値Aとしては、可変動弁機構3の作動異常を判定することのできる値が適宜設定されている。
そして、比率Hが基準値Aに満たない場合には(S100:NO)、目標バルブ特性と実際のバルブ特性との乖離が小さいため、可変動弁機構3は正常に作動していると判断され、本処理は一旦終了される。一方、比率Hが基準値Aを超えている場合には(S100:YES)、目標バルブ特性と実際のバルブ特性との乖離が大きいため、可変動弁機構3に作動異常が起きている可能性があると判断される。
ここで、可変動弁機構3の作動が正常であっても、実作用角Rが目標作用角Pに向けて変更されている途中では、実作用角Rが目標作用角Pに一致するまで、それら各作用角の間に乖離が生じる。こうしたバルブ特性の変更途中における乖離、すなわち可変動弁機構3の応答遅れに起因する乖離を、上記ステップS100では誤って判定しているおそれがある。そこで、比率Hが基準値Aを超えている旨判定された場合には、所定期間継続して比率Hが基準値Aを超えているか否かが判定される(S110)。なお、この所定期間は、ステップS100における肯定判定が、可変動弁機構3の作動異常によってなされたものなのか、応答遅れによってなされたものなのかを判別できる程度の時間が適宜設定されている。
そして、所定期間継続していない場合には(S110:NO)、目標作用角Pと実作用角Rとの大きな乖離が、バルブ特性変更中における乖離に起因するものであり、可変動弁機構3に作動異常は起きていない可能性があるとして、本処理は一旦終了される。
一方、所定期間継続して比率Hが基準値Aを超えている場合には(S110:YES)、目標作用角Pと実作用角Rとの大きな乖離が、可変動弁機構3の作動異常に起因するものであると判断され、作動異常が生じている旨判定される(S120)。この作動異常が生じている旨判定されたときには、可変動弁機構3の作動異常についてその有無を示す作動異常判定フラグFLが「1」に設定される。なお、この作動異常判定フラグFLの初期値は「0」に設定されており、ステップS100やステップS110において否定判定された時には「0」に保持される。
さて、本実施形態では、上記作動異常判定処理によって可変動弁機構3の作動異常が判定されたときには、同可変動弁機構3の復帰動作、すなわち該可変動弁機構3の強制駆動が実施される。そしてこの強制駆動を通じて、第1スプライン機構や第2スプライン機構がかみ込んでいる異物、あるいは第1スプライン機構や第2スプライン機構に固着し始めている劣化油等を除去するようにしている。
ここで、可変動弁機構3が駆動されると吸気バルブ21のバルブ特性が変化するため、機関への吸入空気量が変化し、機関出力や機関回転速度等といった機関運転状態も変化するようになる。そのため、上述したような可変動弁機構3の強制駆動を実施する場合にも機関運転状態は変化してしまい、例えばドライバビリティの悪化等を招くおそれがある。そこで、本実施形態では、可変動弁機構3に作動異常が生じている旨判定されたときに実行される可変動弁機構3の強制駆動を以下のような態様で実施するようにしている。
図8は、その強制駆動処理の手順を示している。この処理も電子制御装置7によって所定期間毎に繰り返し実行される。
本処理が開始されるとまず、作動異常判定フラグFLが「1」か否かが判定される(S200)。そして作動異常判定フラグFLが「1」ではない、すなわち「0」であるときには(S200:NO)、可変動弁機構3の作動異常は生じていないため、本処理は一旦終了される。
一方、作動異常判定フラグFLが「1」である場合には(S200:YES)、現在、スロットル弁17が全閉であり、かつ機関運転状態がアイドル状態または減速状態の少なくともいずれかであるか否かが判定される(S210)。ここでの判定は、スロットル開度TA、アクセル操作量Accp、機関回転速度Ne等といった各種パラメータに基づいて行うことができる。そして、スロットル弁17が全閉でない、または機関運転状態がアイドル状態または減速状態のいずれでもない場合には(S210:NO)、本処理は一旦終了される。
一方、スロットル弁17が全閉であり、かつ機関運転状態がアイドル状態または減速状態の少なくともいずれかである場合には(S210:YES)、可変動弁機構3の強制駆動が実行される(S220)。ここで、目標作用角Pと実作用角Rとが乖離している場合には、実際のバルブ特性を目標バルブ特性に近づけるべくスライダギア45を移動させていく過程で、その移動方向に異物のかみ込みや劣化油の固着等が生じているために、可変動弁機構3に作動異常が生じている可能性がある。そこで、ここでの強制駆動に際しては、実作用角Rが目標作用角Pから乖離する方向、すなわち異物のかみ込みや劣化油の固着等が生じている方向とは逆の方向に一旦、可変動弁機構3は駆動される。これにより、異物の除去が効果的に行われる。
また、ここでの強制駆動に際しては、上記スライダギア45がその可動範囲内の全域にかけて往復移動される、すなわちフルストロークにて往復移動されるように可変動弁機構3は駆動される。これにより、スライダギア45はその可動範囲内において最大限移動されるため、第1スプライン機構を構成するヘリカルスプライン45aとヘリカルスプライン42dとの相対移動量も最大限確保され、もってこの第1スプライン機構においてかみこまれている異物や、固着した、あるいは固着し始めている劣化油等が十分に除去される。
同様に、第2スプライン機構を構成するヘリカルスプライン45bとヘリカルスプライン43dとの相対移動量も最大限確保され、もってこの第2スプライン機構においてかみこまれている異物や、固着した、あるいは固着し始めている劣化油等が十分に除去される。従って、上記第1スプライン機構や第2スプライン機構での異物のかみ込みや劣化油の固着等に起因する可変動弁機構3の作動異常を十分に復帰させることができるようになる。また、スライダギア45がその可動範囲内の全域にかけて往復移動されるため、上記作動異常判定処理の実行に際して異常判定の原因となった異物や劣化油のみならず、今後、可変動弁機構3の作動異常を引き起こす可能性のある異物や劣化油等も未然に除去される。
そして、予め設定された回数だけスライダギア45の往復移動が実施されると、本処理は一旦終了され、実作用角Rが目標作用角Pに近づくように上記駆動用モータ51の駆動がフィードバック制御される。
このように、上記強制駆動処理では、可変動弁機構3に異常有りとの判定がなされた場合、スロットル弁17が全閉状態となっているときに該可変動弁機構3の強制駆動を実行するようにしている。すなわち、機関への吸入空気量がスロットル弁17によって制限されているとき、換言すればバルブ特性を変更しても吸入空気量がそれほど変化しないときに、可変動弁機構3の強制駆動を行うようにしている。従って、可変動弁機構3の強制駆動を行う際に生じやすい、機関出力や機関回転速度等といった機関運転状態の変化が抑制される。
また、本実施形態では、スロットル弁17の全閉条件に加え、機関運転状態がアイドル状態にあるときや減速状態にあるときに可変動弁機構3の強制駆動を実行するようにしている。このような機関運転状態では、スロットル弁17の閉弁がある程度の期間継続される可能性が高いため、吸入空気量の制限が継続されやすいときに可変動弁機構3の強制駆動が実行されるようになり、同強制駆動中での機関運転状態の変化を十分に抑制することができる。
図9は、上記作動異常判定処理、及び強制駆動処理が実施されるときの一態様について例示している。
時刻t1において、アクセル操作量Accpが増大されると、吸入空気量を増大させるべく目標作用角Pも増大される。そして、実作用角Rを目標作用角Pに一致させるべく、可変動弁機構3の駆動が制御され、実作用角Rも徐々に増大されていく。そして、可変動弁機構3に作動異常が生じていない場合には、ある程度の応答遅れをもって実作用角Rが目標作用角Pに一致する(時刻t2)。
次に、時刻t3において、アクセル操作量Accpがさらに増大されると、吸入空気量をさらに増大させるべく目標作用角Pもより増大される。そして、実作用角Rを目標作用角Pに一致させるべく、可変動弁機構3の駆動が制御される。ここで、可変動弁機構3に作動異常が生じている場合には、実作用角Rが変化しない、あるいはその変化速度が目標作用角Pの変化速度に対して過度に遅くなるため、目標作用角Pと実作用角Rとの差ΔDが徐々に大きくなり、もって目標作用角Pに対する差ΔDの比率Hも徐々に大きくなっていく。そして、比率Hが上記基準値Aを超え(時刻t4)、その状態が所定期間継続されると(時刻t5)、可変動弁機構3の作動異常が生じている旨判定され、作動異常判定フラグFLが「1」に設定される。その後、機関運転状態がアイドル状態や減速状態になるともに、スロットル弁17が全閉状態になると(時刻t6)、可変動弁機構3の強制駆動が実行される。そして予め設定された回数だけ、スライダギア45が往復移動されると(時刻t7)、可変動弁機構3の強制駆動は終了される。そして、同強制駆動が終了されると、その時点で算出されている目標作用角Pに実作用角Rが近づくように上記駆動用モータ51の駆動量はフィードバック制御される。
以上説明したように、本実施形態によれば次のような効果を得ることができる。
(1)目標作用角Pと実作用角Rの乖離が基準値を超えており、かつその基準値を超えている状態が予め設定された期間継続されている場合に、可変動弁機構3に異常有りとの判定をするようにしている。そのため、可変動弁機構3の応答遅れに起因する目標作用角Pと実作用角Rとの乖離が可変動弁機構3の異常と判定されてしまうといった誤判定の発生が抑制され、可変動弁機構3の作動異常がより正確に判定される。
(2)可変動弁機構3に異常有りとの判定がなされたときには、スロットル弁17が閉じていることを条件に同可変動弁機構3の強制駆動を実行するようにしている。従って、機関への吸入空気量がスロットル弁17によって制限されているとき、換言すればバルブ特性を変更しても吸入空気量がそれほど変化しないときに、可変動弁機構3の強制駆動が行われる。そのため、可変動弁機構の強制駆動を行う際に生じやすい、機関出力や機関回転速度等といった機関運転状態の変化を好適に抑制することができるようになる。
(3)機関運転状態がアイドル状態にあるときや減速状態にあるときには、スロットル弁17の閉弁がある程度の期間継続される可能性が高い。そこで、本実施形態では、機関運転状態がそのような状態にあるときに可変動弁機構3の強制駆動を実行するようにしている。従って、吸入空気量の制限が継続されやすいときに可変動弁機構3の強制駆動が実行されるようになり、同強制駆動中での機関運転状態の変化を好適に抑制することができるようになる。
(4)可変動弁機構3の強制駆動に際して、実作用角Rが目標作用角Pから乖離する方向に同可変動弁機構3を駆動するようにしている。そのため、異物や劣化油等の除去を効果的に行うことができるようになる。
(5)可変動弁機構3の強制駆動に際して、スライダギア45をその可動範囲内の全域にかけて往復移動させるようにしている。こうした駆動態様によれば、スライダギア45がその可動範囲内において最大限移動されるため、上記第1スプライン機構や第2スプライン機構での異物のかみ込みや劣化油の固着等に起因する可変動弁機構3の作動異常を十分に復帰させることができるようになる。また、スライダギア45がその可動範囲内の全域にかけて往復移動されるため、異常判定の原因となった異物や劣化油のみならず、今後、可変動弁機構3の作動異常を引き起こす可能性のある異物や劣化油等も未然に除去することができるようになる。
なお、上記実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・上述したように、機関への吸入空気量がスロットル弁17によって制限されているとき、換言すればバルブ特性を変更しても吸入空気量がそれほど変化しないときに可変動弁機構3の強制駆動を実施すれば、同可変動弁機構3の強制駆動を行う際に生じやすい、機関出力や機関回転速度等といった機関運転状態の変化を抑制することができる。従って、上記実施形態において、機関運転状態がアイドル状態にあるときや減速状態にあるときに可変動弁機構3の強制駆動を実行するといった条件を省略し、スロットル弁17が閉じていることを条件にして可変動弁機構3の強制駆動を実行するようにしてもよい。
なお、本発明においてスロットル弁17が閉じている状態とは、スロットル弁17が全閉となっている状態に限られるものではない。要は、機関への吸入空気量がスロットル弁17によって制限されており、バルブ特性を変更しても吸入空気量がそれほど変化しない程度にスロットル弁17が閉じている、すなわちその開度が十分に小さくされている状態であれば、スロットル弁17の全閉状態と同様な作用効果を得ることができる。従って、そのようにスロットル弁17の開度が十分に小さくなっている状態も、本発明においては実質的にスロットル弁17が閉じている状態とみなすことができる。
・上記実施形態では目標バルブ特性と実際のバルブ特性との乖離を判定するに際して、比率Hと基準値Aとの比較を行うようにしたが、その判定態様は適宜変更することができる。例えば、目標バルブ特性と実際のバルブ特性との差を所定の基準値と比較するようにしてもよい。
・上記実施形態では、可変動弁機構3の強制駆動に際して、スライダギア45をフルストロークで往復移動させるようにしたが、少なくともスライダギア45を往復移動させるようにすれば、上記第1スプライン機構や第2スプライン機構での異物のかみ込みや劣化油の固着等に起因する可変動弁機構3の作動異常を復帰させることができる。従って、例えばフルストロークよりも少ない移動量でスライダギア45を往復移動させるようにしてもよい。
・また、上記実施形態では、可変動弁機構3の強制駆動に際して、スライダギア45をフルストロークで所定の回数だけ往復移動させるようにしたが、強制駆動の態様は何らこれに限定されるものではない。要は、作動異常を起こしている可変動弁機構3が正常復帰できるような態様であればよい。
・上記実施形態では、吸気バルブ21の実際のバルブ特性を検出するために駆動用モータ51の回転位相を検出するようにしたが、要は、可変動弁機構3によって変更される吸気バルブ21のバルブ特性を検出することができればよく、例えば、コントロールシャフト46の位置、換言すればその移動量を検出するようにしてもよい。
・上記可変動弁機構3では、吸気バルブ21のバルブ作用角を増大させるとこれに伴って同吸気バルブ21のバルブリフト量も増大される。従って、上記実施形態における可変動弁機構3の制御や作動異常の判定処理等に用いるバルブ特性のパラメータとして、バルブリフト量を用いるようにしてもよい。この場合、吸気バルブ21のバルブリフト量についてその目標値である目標リフト量は、目標作用角Pの算出態様と同様な態様で求めることができる。また、吸気バルブ21のバルブリフト量についてその実際の値である実リフト量も、実作用角Rの検出態様と同様な態様で検出することができる。
・上記実施形態における可変動弁機構3は、バルブリフト量及びバルブ作用角(開弁期間)を変更可能な機構であった。ここで、吸気バルブ21のバルブ特性を変更することにより吸入空気量の調量を行う場合には、同バルブ特性のうち、バルブリフト量が主な支配要因となる。そこで、上記可変動弁機構3を、バルブリフト量のみを変更可能な可変動弁機構に変更しても本発明は同様に適用することができる。なお、この場合には、可変動弁機構の制御や上記作動異常判定処理等に用いるバルブ特性のパラメータとして上述したようなバルブリフト量を用いるようにすればよい。
・上記実施形態では、いわゆるロッカアーム式の動弁系を備えるとともに、そのロッカアームの揺動態様を変更する可変動弁機構3を備える内燃機関に本発明を適用する場合について説明したが、吸気バルブのリフト量や開弁期間を変更可能な可変動弁機構を備える内燃機関であれば、本発明は同様に適用することができる。例えば、カムシャフトの軸方向にカムプロフィールが変化する、いわゆる三次元カムを備え、この三次元カムを吸気カムシャフトの軸方向に移動させて吸気バルブのバルブ特性を変更する可変動弁機構を備える内燃機関であっても、本発明は同様に適用することができる。この場合には、三次元カムの移動量を調整するオイルコントロールバルブ等に異物のかみ込みや、劣化油の固着等が生じるおそれがあるものの、可変動弁機構の強制駆動、具体的にはオイルコントロールバルブ等といったアクチュエータの強制駆動により、そのような可変動弁機構の作動異常は復帰される。この強制駆動の際、スロットル弁が閉じていることを条件に同強制駆動を実行することにより、可変動弁機構の強制駆動を行う際に生じやすい、機関出力や機関回転速度等といった機関運転状態の変化を好適に抑制することができるようになる。ちなみに、三次元カムの移動量、換言すればその位置をセンサ等を用いて検出することにより、吸気バルブ21の実際のバルブ特性を監視することができる。また、可変動弁機構が同三次元カムを用いたものである場合には、吸気バルブを吸気カムシャフトにより直接開閉駆動する直動式の動弁系を備える内燃機関にも本発明は同様に適用することができる。
・上記実施形態やその変形例と同様な態様によって機関バルブである排気バルブ22のバルブ特性が変更される内燃機関であっても、本発明は同様に適用することができる。この場合には、吸入空気量の調量については難しいものの、該排気バルブ22のバルブ特性を変更する可変動弁機構の強制駆動を行う際に生じやすい、機関出力や機関回転速度等といった機関運転状態の変化を好適に抑制することができるようになる。また、吸気バルブ21及び排気バルブ22のバルブ特性が変更される内燃機関であっても、本発明は同様に適用することができる。
本発明にかかる内燃機関のバルブ特性制御装置を具体化した一実施形態について、その全体構成を示す構成概略図。 同実施形態における可変動弁機構の構成を示す構成図。 同実施形態におけるバルブ駆動機構の構造を示す斜視断面図。 (A)及び(B)は、同実施形態におけるバルブ駆動機構の作動態様を示す動作図。 (A)及び(B)は、同実施形態におけるバルブ駆動機構の作動態様を示す動作図。 同実施形態の可変動弁機構によるバルブリフト量及びバルブ作用角の可変設定態様を示す図。 同実施形態における作動異常判定処理の手順を示すフローチャート。 同実施形態における強制駆動処理の手順を示すフローチャート。 同実施形態において作動異常判定処理、及び強制駆動処理が実施されるときの一態様について例示するタイムチャート。
符号の説明
1…エンジン、1A…エンジン本体、1H…シリンダヘッド、1HE…排気ポート、1HI…吸気ポート、1PE…排気管、1PI…吸気管、3…可変動弁機構、4…バルブ駆動機構、7…電子制御装置、11…シリンダ、11W…ウォータジャケット、12…ピストン、13…コネクティングロッド、14…燃焼室、15…イグニッションプラグ、15I…イグナイタ、16…エアクリーナ、17…スロットル弁、17M…スロットルモータ、18…インジェクタ、21…吸気バルブ、21a…タペット、21b…弁ばね、22…排気バルブ、22a…タペット、22b…弁ばね、23…吸気カムシャフト、24…排気カムシャフト、25…ローラロッカアーム、25a…ローラ、26…ローラロッカアーム、26a…ローラ、27…吸気カム、28…排気カム、29…ラッシュアジャスタ、41…支持パイプ、42…入力部、42a…ハウジング、42b…入力アーム、42c…ローラ、42d…ヘリカルスプライン、43…揺動カム、43a…ハウジング、43b…出力アーム、43c…カム面、43d…ヘリカルスプライン、44…ばね、45…スライダギア、45a…ヘリカルスプライン、45b…ヘリカルスプライン、45c…小径部、45d…長穴、46…コントロールシャフト、46a…係止ピン、50…スライドアクチュエータ、51…駆動用モータ、55…位置検出センサ、71…エンジン水温センサ、72…クランク角センサ、75…エアフロメータ、76…車速センサ、77…アクセルセンサ、78…スロットル開度センサ。

Claims (7)

  1. 機関バルブのバルブ特性を変更可能な可変動弁機構についてその駆動を制御する装置であって、機関運転状態に基づいて設定される目標バルブ特性と実際のバルブ特性との乖離が基準値を超えており、かつその基準値を超えている状態が予め設定された期間継続されている場合には前記可変動弁機構に異常有りとの判定をし、この異常有りとの判定がなされたときには、前記可変動弁機構を強制駆動する内燃機関のバルブ特性制御装置において、
    前記内燃機関の吸気通路内に設けられたスロットル弁が閉じていることを条件に前記可変動弁機構の強制駆動を実行する
    ことを特徴とする内燃機関のバルブ特性制御装置。
  2. 前記可変動弁機構の強制駆動は、機関運転状態がアイドル状態にあるときに実行される
    請求項1に記載の内燃機関のバルブ特性制御装置。
  3. 前記可変動弁機構の強制駆動は、機関運転状態が減速状態であるときに実行される
    請求項1に記載の内燃機関のバルブ特性制御装置。
  4. 前記可変動弁機構の強制駆動に際して、該可変動弁機構は実際のバルブ特性が前記目標バルブ特性から乖離する方向に駆動される
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関のバルブ特性制御装置。
  5. 前記可変動弁機構は、スライダと、該スライダに対して第1スプライン機構にて係合する第1部材と、前記スライダに対して前記第1スプライン機構とはねじれ角が異なる第2スプライン機構にて係合する第2部材とを有し、カムシャフトに設けられたカムからのバルブ駆動力を前記第1部材にて受け、そのバルブ駆動力を前記スライダを介して前記第2部材から前記機関バルブへ伝達するとともに、前記スライダをその軸方向に移動することで前記第1部材と前記第2部材との間の回転位相差を変更してバルブ特性を変更する機構である
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関のバルブ特性制御装置。
  6. 請求項5に記載の内燃機関のバルブ特性制御装置において、
    前記強制駆動に際しては、前記スライダが往復移動される
    ことを特徴とする内燃機関のバルブ特性制御装置。
  7. 前記強制駆動に際しては、前記スライダがその可動範囲内の全域にかけて往復移動される
    請求項6に記載の内燃機関のバルブ特性制御装置。
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