JP2006037427A - 木造建築物の断熱壁構造およびその施工法 - Google Patents

木造建築物の断熱壁構造およびその施工法 Download PDF

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Abstract

【課題】木造住宅において、施工性が良く耐久性も高い壁を外張り断熱工法によって施工するための経済的な方法を開発する。
【解決手段】木造軸組に壁体を構成する構造用面材を張り付け、強固なL字型金物を構造用面材の上から軸組に接合する。このL字型金物は、断熱層をなす樹脂発泡体と外壁下地面材として樹脂発泡体を被覆する下地面材の重量とを支持し、この金具によって基礎に対し垂直方向へ掛かる壁体の荷重が軽減される。一方で、壁体に掛かる基礎に対して水平方向への荷重は、壁面材と樹脂発泡体と軸組とを接合する釘あるいはビス等の金物によって支持される。

【選択図】 図7

Description

本発明は、木造建築物の施工方法であり、詳しくは木造建築物における外張り断熱工事と外壁下地材の取付工事に関する発明である。
外張り断熱工法による建築物は、熱ロスの原因となる断熱層の熱橋が少ないことから冷暖房の効率が良く、省エネルギーを考慮する上で好都合な工法である。また躯体を室内と同じ安定した環境下に置くことができるので、躯体内結露も少なく躯体の持ちが良い。これが木造建築物における外張り断熱工法の利点である。
本出願人によって先に出願された木造建築物の断熱工法においては、外装下地面材であるコンクリート繊維版と断熱層となる樹脂発泡体とを組み合わせたパネルを、釘あるいはビスなどによって軸組に固定していた。外装下地面材としてコンクリート繊維版を選択した理由は、外壁の下地材として十分な強度と耐候性を備えており、かつ外装塗装下地との親和性が良く塗装が容易であった為である。
外張り断熱工法における壁の構築法については、躯体内結露の予防策するために、外壁から浸入した湿気の排出を目的として、断熱層の外側に通気層を設ける例がある。この条件を満たすよう工夫された特許文献1や特許文献2に示されるような外張り断熱工法による壁構造が、すでに先例として存在する。
特開平5−171709特許公報 特開2003−96940特許公報
しかし従来の技術において、特許文献1に見られるような方式では柱の間に断熱層を詰め込んでおり、正確には充填断熱工法に分類される。充填断熱工法は、施工性においては簡単であるが、エネルギーロスの遠因となる熱橋が断熱層に生じる難を回避しがたい。
また構造躯体を断熱層によって完全に被覆する外張り断熱工法を採用する場合、施工性の問題から使用できる断熱材は限られてくる。この工法において最も適している断熱材は硬質の樹脂発泡体であるが、樹脂発泡体からなる断熱層の上より外壁材を釘あるいはビスなどで固定した場合、外壁面材を固定する釘あるいはビスなどは密度や剛性の極めて低い樹脂発泡体を貫通して軸組と接合されるため、通常のせん断応力ではなく曲げ応力によって外壁材を支持するため、長期的には釘あるいはビスに曲げが発生する恐れがある。
経年変化が原因で発生する釘の曲げを、一般的な建築用断熱材によって防止することは非常に難しく、その変化による断熱層の破壊を回避しがたい。したがって、外壁固定時に樹脂発泡体に空けられた釘穴が経年とともに広げられ、それにより断熱性能の低下や躯体内への湿気侵入など多くの問題が発生する恐れがある。
本出願人による従来の方法においては9mm厚のコンクリート版が使用されていたが、樹脂発泡体の上からさらに重いコンクリート版を外壁に固定させる場合、その重量を支持するためにより多くの釘あるいはビスが必要となる。
本出願人による従来の方法においては、外壁に取り付けられる外装下地版は、その角についてもビスによる固定を行なっていた。これはおよそ9mm厚のコンクリート版に対しては問題無いが、より大きな重量を持つコンクリート版を使用した場合は角付近に変形が掛けられた場合、応力が大きいために固定された釘孔からコンクリート版に亀裂が発生するおそれがあり、角付近に対して釘打ちを行なうことは出来ない。この点からも、釘で固定できる箇所および釘の本数は自ずと制約を受ける事になる。
また特開2004−156433に示された、釘あるいはビスによって外装下地材の重量を支持する方法を利用した場合、固定されたコンクリート版のリブなどから経年変化によるひび割れを発生する恐れがある。コンクリート版にひび割れが発生すれば、該当箇所から雨水が壁内部に浸透し、軸組におけるカビの発生など重大な劣化をもたらす恐れがある。
以上の課題を解決するため、目的とする建築物は樹脂発泡体による外張り断熱工法に基づいて施工される。軸組の周囲に外張りされた樹脂発泡体は仮止めの後、外壁下地と断熱材の負荷を支持するL字型金具を軸組と接合させる箇所が、接合されるL字型金具の形状に合わせて切り取られる(請求項1の発明)。
L字型金具を構造用面材の上から軸組に接合させ、これによって断熱層を成す樹脂発泡体と外壁下地を成すコンクリート版の重量荷重を補助的に支持する。地表面と水平方向に掛かる荷重は、コンクリート版に打込まれた釘あるいはビスによってこれを支持する(請求項2の発明)。
軸組に接合されたL字型金具について、当該金具の上から一度切り取った樹脂発泡体小片を埋め込み、金具の肉厚と樹脂発泡体小片の復元力とによって金具を密に断熱層の下に閉じ込める。樹脂発泡体の目地を防水気密処理した後に、外壁下地材であるコンクリート版で被覆し、コンクリート版ごと樹脂発泡体を軸組に固定接合する(請求項3の発明)。
必要な箇所以外について間柱を使用することなく、壁の断熱工事と壁躯体工事を同時に行なうことが出来るために、建築物施工の材料と手間が節減できる(請求項1の発明)。
外壁下地面材に重量を持つコンクリート版を使用しているにも関わらず、外壁下地面材を固定するために断熱層を打ち抜く釘あるいはビスの本数が少なくなり、熱橋を抑えた断熱層を形成することが出来る。また釘の経年変化による曲がりを予防し、L字型金具がコンクリート版に掛かる荷重を支持する事で、外壁の破損や樹脂発泡体からなる断熱層の破損を低減させることで断熱性能を維持することができる(請求項2の発明)。
L字型金具の接合箇所について、一度切り取った樹脂発泡体小片をL字型金具の接合された欠き込み部に戻すことにより、熱橋を抑えることが出来る。またL字型金具の外壁下地面材受け部分の肉厚分の圧迫が元の小片にかかることによって、樹脂発泡体の自重を支持することが出来る。樹脂発泡体と小片、また樹脂発泡体同士に生じる隙間を密封することで、木造建築物の気密度を向上させつつ軸組への水分の浸透が防止される(請求項3の発明)。
本発明を在来工法に適用する場合、最初に基礎施工の後に土台、柱、間柱などの軸組を組み立てる。この軸組について、技術的な見地からは、目的の建築物における軸組の規格は在来規格(尺モジュール)であるかメーターモジュールであるかを問わないが、後述する面材の規格に必ず対応している必要がある。
組み立てられた軸組に対し、十分な強度と剛性をそなえた建築用面材を、軸組の屋外側より張り付け、釘あるいはビス形状の金具をもって軸組に接合する。使用される建築用面材としては、集成材やOSB面材などの木質系面材が施工性において有利だが、9mmから12mmの厚みを持つコンクリート繊維板のような無機材料系面材も考えられる。またそれらの面材が、壁面がもたらす複数の効果、例えば構造と防耐火などを同時に達成させる事を目的として、複層を成して軸組に接合されているものも同様に考えられる。ただし、軸組に接合された複数の面材から成る複層について、少なくともその一方は、必ず構造用面材であることが条件となる。なお面材の規格については軸組の規格すなわち柱の間隔が在来規格であれば短辺910mm長辺1820mmのものを、メーターモジュールであれば短辺1000mm長辺2000mmのものをそれぞれ使用する事が望ましい。耐力壁面を構成する必要が生じる場合は、該当する壁面について、建築用面材が軸組に張り付けられた後に、室内側より筋交い、接合金具などの一般的に行なわれる工法によって構成することが出来る。
軸組に接合された構造用面材の上から、板状の樹脂発泡体を隙間なく張り付け、これを糊または釘などを用いて柱への仮止めを行なう。使用される樹脂発泡体として考えられるものは、ポリスチレン、ポリウレタン、フェノールなどの合成樹脂からなる板材が挙げられ、厚みについては20mmから50mmまでのものが考えられる。ただし要求される壁の断熱性能と後述するL字型金具のサイズにより、樹脂発泡体の厚みは制約される。本実施例ではL字型金具の出が60mmのものを使用する前提で、一例として30mm厚の樹脂発泡体を使用する。樹脂発泡体に対して釘による仮止めを行なう場合は、構造用面材を被覆する板状の樹脂発泡体の一部が切り取られる点を考慮し、用いられる釘の本数は必要最小限に留め置く事が望ましい。
本実施例において使用されるL字型金具11について以下に説明を行なう。L字型金具11の形状について概観を図1に示す。材質はステンレス鋼など、錆に強くコンクリート版を支持するに十分な強度を持つものが望ましい。理想的には金具11に対して13に一例が示された断面加工部がなされているものが望ましいが、材質など強度に関する条件により、L字型金具は断面加工部13を有さずともよい。本実施例においては、金具の出部分は60mm、幅は40mmのものが一例として使用される。
図2を用いて、L字型金具11の柱15に対する接合の様子を説明する。コンクリート版などの重い外壁下地面材を固定しようと欲する柱箇所に対して、L字型金具11を軸組に強固な状態で接合出来るよう、樹脂発泡体16の一部をL字型金具11の大きさと形状に合わせて切り取り、欠き込み部18を形成させる。この時切り取られた樹脂発泡体小片19は、後の工程において欠き込み部18に戻される。また樹脂発泡体16を切り取る工程は、現場にてカッターナイフなどを用いて行なうことが出来る他、工場などで予め欠き込み部18および小片19に分離して現場に搬入する事も可能である。
樹脂発泡体16ならびにコンクリート版22の荷重を支持するL字型金具11は、柱15の位置に合わせて設けられた樹脂発泡体欠き込み部18に配置される。L字型金具11は外壁を構成するコンクリート版および樹脂発泡体の荷重を支持する必要があるため、金具接合用ビス20等によって構造用面材17を通して柱15に強固な状態で接合させる。
L字型金具11が取り付けられた欠き込み部18に、上記の工程によって一度刳り貫かれた樹脂発泡体の小片19を再度戻すことにより、コンクリート版受け部分となる金具の出箇所14を除いた金具11の全体を樹脂発泡体の下に埋める。
金具11に断面加工箇所13がある場合は、埋め込まれる小片19に対して断面加工部13の形状に合わせた切り込みを施すことで、断熱層に熱橋が生じないようにする。また、一度小片19を埋め戻した欠き込み部18と樹脂発泡体16の突き合わせ部分の両者について、断熱層への湿気の侵入を防ぎ建築物の気密度を確保するために、気密テープでもって樹脂発泡体間に生じた隙間を塞ぐ。その後樹脂発泡体からなる断熱層目地の全てに、樹脂発泡体16の外側から気密テープ21を用いた処理が施される。L字型金具11が構造用面材17の上から軸組に接合され、樹脂発泡体16に被覆され金具の出14が一部露出した様子は図3ならびに図4にて示される。
またコンクリート版22は樹脂発泡体16を屋外から被覆するように取り付けられるが、その全てが各々金具11によって支持されている必要は無い。たとえば図5に示されているが、一個の金具11により縦に積み上げられたコンクリート版二枚ないし三枚分の重量が支持されることもあり、その場合は該当するコンクリート版22には金具受け加工部24が加工される必要はない。コンクリート版22は外壁に対して縦張りあるいは横張りのいずれでも施工され得るが、縦張りで施工する場合においては、水平方向についてL字型金具11はコンクリート版22の短手方向と同じ910mm(あるいは1000mm)間隔にて柱15に接合されなければならず、必要な金具11の設置個数が増えて、本件の目的である施工手間の合理化に反する。したがってコンクリート版22はなるべく横張りで施工されることが望ましく、本実施例では一例として、金具11の接合間隔はコンクリート版の長手方向と同じ1820mm(あるいは2000mm)間隔で柱15に接合される。
コンクリート版22をL字型金具11に積載させた際、版目地の隙間が広がらぬように、金具11の上に乗せる外装用のコンクリート版についてはL字型金具11との接触箇所に対して、図5において示される切削加工箇所24を設ける。本実施例においては、切削加工部24はコンクリート版22の長手方向両端に設けられ、その切削幅は金具11幅の半分に設定した。例えば金具11の幅が50mmであるなら、切削加工部24の幅は半分の25mmとなる。また長さは樹脂発泡体16および小片19によって連続的に形成された断熱層からの金具の出14に相当し、例えば樹脂発泡体からの金具の出が20mmであった場合、コンクリート版の室内側に向けられた面から深さ20mm分切削されることになる。加工部24の深さについては、金具11の肉厚と同等とする。
L字型金具11における断熱層からの出部分14にコンクリート版22の切削加工部分24を載せ、金具11によって隙間が生じないよう注意しながら外壁下地を構成する。その様子は図5にて示される。図5に示された通り、また外壁に接合される全てのコンクリート版22のそれぞれがL字型金具11によって支持されている必要はなく、図5にて示されたように二枚ないし三枚程度のコンクリート版22が二ヶ所の金具11によりまとめて支持されることがある。その場合は金具11に直接積載されないコンクリート版22について、加工部24を設ける必要はない。
L字型金具に支持されたコンクリート版22を、柱15などの軸組に接合する。ビス23はコンクリート版22の接合と同時に、圧迫によって断熱層を形成する樹脂発泡体16を柱15などの軸組に接合する。特に金具11の設置箇所付近においては、小片19が金具11の肉厚分盛り上がっており、これを圧迫する事によって小片19の弾性変化を利用して欠き込み部18の隙間を密封させる。
ビス23がコンクリート版22と樹脂発泡体16を柱15に接合する様子は図6にて示され、また全体の構成は図7にて示される。本実施例によって構築された壁の構造は柱15の外側に構造用面材17、樹脂発泡体16、コンクリート版22の順で被覆された状態となっている。図7の構成で仕上げられた外壁に対し、コンクリート版22の上から防水を兼ねて塗装仕上げを行ない、これにより壁内内部への水と湿気の侵入を防止する。
本工法により施工される外壁の入隅および出隅箇所について、図8を用いて説明する。図8に示された通り、出隅について樹脂発泡体16およびコンクリート版22は共に外壁下面に段を生じないよう、隙間なく構造用面材17を被覆している。樹脂発泡体とコンクリート版とは突出し部分を交互に被覆し、雨などの浸入を防ぐよう配置される。この際L字型金具11は可能な限りコンクリート版22の端付近でこれを支持するよう、最も外側の柱に接合される。入隅においても、樹脂発泡体16およびコンクリート版22の突出し部分は交互に配置される。入隅に最も近い柱に接合されたL字型金具11によって支持され、ともに構造用面材17を被覆する。
使用されるL字型金具。左から順に斜視図、正面図、側面図。 L字型金具の取り付け概要図。斜視図と垂直断面図。 L字型金具の接合概要概観図。図2の斜視図と対応。 L字型金具の接合箇所断面図。左から順に水平断面図、垂直断面図。 コンクリート版架設の概要斜視図。 コンクリート版取り付け接合の概要。左から順に水平断面図、垂直断面図。 壁構造の斜視概要図。 出隅ならびに入隅の水平断面模式図。左が出隅図、右が入隅図。
符号の説明
11 L字型金具
12 ビス孔
13 断面加工部位
14 L字出箇所
15 柱
16 樹脂発泡体
17 構造用面材
18 樹脂欠き込み部
19 樹脂小片
20 L字型金具接合用釘
21 気密テープ
22 コンクリート版
23 コンクリート版接合用ビス
24 金具受け切削加工部

Claims (3)

  1. 重量を持った外壁下地面材が断熱層を被覆しており、耐力壁箇所を除いて原則的に間柱を置かない軸組に固定された外張り断熱工事がなされている点を特徴とする、木造建築物の壁構造およびその施工法。
  2. 壁体を構成する樹脂発泡体ならびに外装下地面材の重量が、軸組に接合されたL字形状の接合金具ならびに釘あるいはビスなどの金具によって支持されており、外装下地面材に打ち込む釘などの本数が削減されている点を特徴とする、木造建築物の壁構造およびその施工法。
  3. 軸組に接合されるL字型金物について、接合されたL字金具の上から一度切り取った樹脂発泡体小片を埋め込むことで、金具自身の肉厚と樹脂発泡体小片の復元力を利用することにより、金具を断熱層の下に密に閉じ込めて熱橋の発生を抑えつつ樹脂発泡体の自重をL字型金物にて支持できるよう工夫を凝らした点を特徴とする、木造建築物の壁構造およびその施工法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN102444215A (zh) * 2011-09-15 2012-05-09 济南大学 一种玻璃纤维网格布增强发泡石膏外墙保温板及其制作方法
CN102797299A (zh) * 2012-07-11 2012-11-28 江苏尼高科技有限公司 纤维增强复合材料保温板及其制备方法

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