JP2006036784A - 抗原としてペプチドライブラリーを用いたモチーフ特異性および状況独立性抗体の産生 - Google Patents

抗原としてペプチドライブラリーを用いたモチーフ特異性および状況独立性抗体の産生 Download PDF

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Abstract

【課題】 変化する周囲のアミノ酸またはペプチド配列の状況において修飾または非修飾の、少なくとも1つの固定アミノ酸残基に特異的なモチーフ特異性状況独立性抗体の産生法を提供する。
【解決手段】この方法は、(1)少なくとも1つの固定アミノ酸および変化する周囲のアミノ酸を特徴づけるペプチドライブラリーを構築する工程と、(2)宿主をこのペプチドライブラリーで免疫化する工程とを包含する。抗体を、この免疫化宿主の抗血清から任意選択的に単離および精製することができる。開示の方法は、修飾モチーフ(ホスホトレオニン、ホスホセリン、MAPKコンセンサス認識部位、14−3−3コンセンサス認識部位、CDKコンセンサス認識部位、およびアセチル化リジンなど)および非修飾モチーフを共に含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、変化する周囲のアミノ酸またはペプチド配列の状況において、少なくとも1つの固定アミノ酸残基に特異的なモチーフ特異性状況独立性(context−independent)抗体の産生に関する。これらの性質を有する抗体は、種々の形態の細胞調節の特徴づけならびに細胞タンパク質レベルおよびタンパク質修飾のゲノムに及ぶ変化のプロファイリングに有用である。
細胞内シグナルカスケードの標的の同定は、細胞増殖、細胞分裂、および細胞死の理解に非常に重要である。プロテインキナーゼカスケードは、細胞表面から核を含む多数の細胞区画およびシナプスなどのより遠い細胞プロセスまで情報を中継する(Karinら、Curr,Opin.Cell.Biol.、6、415〜424、1994)。いくつかのタンパク質リン酸化の標的が同定されているにもかかわらず、ほとんど(特に、細胞増殖および細胞分裂を調節するもの)が未知のままである。例えば、MAPキナーゼカスケードは、細胞増殖調節に重要な役割を果たすことが既知である(Lewisら、Adv.Cancer Res.、74、49〜139、1998、Crowleyら、Cell、77、841〜852、1994)。しかし、一握りの基質以外のMAPキナーゼカスケードの多様な作用を担うタンパク質標的は、ほとんど同定されていない(Fukunaga and Hunter、EMBO、16(8)、1921〜1993、1997、Stukengergら、Curr.Biol.、7、338〜348、1997)。
細胞シグナルタンパク質の別の例は、14−3−3タンパク質であり、これは、細胞シグナルにおける正確な役割がすでに同定されているホスホセリン結合タンパク質の系統発生的に保存されたファミリーである(Burbelo and Hall、Curr.Biol.、5(2)、95〜96、1995)。これらのタンパク質は、全脳タンパク質の大部分を占め、ras、raf、bad、cdc25などを含む広範な種々のシグナル分子に結合することが既知である(Yaffeら、Cell、91、961〜971、1997)。最近、14−3−3タンパク質は以下のモチーフRXRSXSXP(Sは、ホスホセリンであり、Xは任意のアミノ酸を表す)を有するタンパク質のリン酸化部位に特異的に結合することが示されている(Muslinら、Cell、84、889〜897、1996、Yaffeら、前出、1997)。
同様に、ヒストンは特定のリジン残基でのアセチル化によって修飾されることが長期にわたり既知である。ヒストン中のリジンのアセチル化は、タンパク質−DNA相互作用を減少させ、転写を受ける領域中のクロマチンを開かせると考えられている(Struho、Genes & Delvelopment、12、599〜606、1998)。最近、転写複合体に会合する他のタンパク質は、リジンでアセチル化されるにもかかわらず、機能の有意性は不明確であることが示されている(Imhofら、Curr.Biol.、7、689〜692、1997、Struhl、前出、1998)。
ホスホチロシンに対する抗体は、細胞内シグナル機構の同定および特徴づけに非常に価値があることが証明されている(Rossら、Nature、294、654、1981、Kozmaら、Method.Enzymol.、201、28、1991、White and Backer、Method.Enzymol.、201、65、1991、Kamps、Method.Enzymol.、201、101、1991)。この価値は、以下の2つの性質に由来する:1)タンパク質がチロシンリン酸化かするかどうかを識別する能力および2)広範な種々の異なるタンパク質と反応する能力。これらの性質は、細胞内シグナル経路の追跡および活性化チロシンキナーゼの新規の標的の同定に非常に価値があることが証明されている。
理想的には、最も有用なホスホチロシン抗体は、可能な限り一般的であるべきであり、その抗体は、全てのホスホチロシン残基の検出を可能にするために、包埋している配列タンパク質配列のホスホチロシンを独立的に認識(状況独立性)すべきである。ホスホチロシン抗体産生の最も成功したアプローチは、ヘテロ機能性または二重機能性架橋材を使用したキーホールリムペットヘモシアニンへのそれらの遊離アミノ酸を介して結合したホスホチロシンまたはホスホチラミンを利用している(Frackeltonら、Method.Enzymol.、201、79、1991、White and Backer、前出、1991、Wang、Method.Enzymol.、201、53、1991、Kamps、前出、1991)。最近産生したポリクローナルおよびモノクローナルホスホチロシン抗体は、多くの異なるタンパク質を認識するにもかかわらず、この抗体は、しばしば化合物(例えばモノヌクレオチド)を含む他のリン酸塩と交叉反応を示す(Frackeltonら、前出、1991、Kamps、前出、1991)。より重要なことは、この様式で惹起するほとんどのホスホチロシン抗体は、リン酸化アミノ酸だけでなく、ホスホチロシン周囲のアミノ酸配列にも依存して変化する配列反応性を示す。例えば、本発明者らは、ほとんどのホスホチロシン抗体が、JNKの活性化ループ中に見出されるプロリンの前のホスホチロシンを認識しないので、活性化(チロシンリン酸化)JNKと有意に反応しないことを認めている(Tanら、未公開の観察)。変化する反応の理由は、おそらく、ホスホチロシン抗原が変化する周囲のアミノ酸の状況下での免疫系に直接存在しない代わりに人工的な結合を介してKLHキャリアに不適切に結合したハプテンとして存在するという事実による。このアプローチは、ホスホチロシンと十分に反応する抗体を産生する傾向があるが、周囲のアミノ酸が抗原中に存在しないので時折阻害される。
他のアプローチでは、免疫原としてタンパク質を含む全細胞ホスホチロシンが使用され、有意に成功している(Glenney、Method.Enzymol.、201、92、1991、Wang、前出)が、得られた抗体特異性の状況依存性が慎重に同定されていないにもかかわらず、この様式で惹起された抗体は、チロシンリン酸化タンパク質の大部分と反応した。チロシンリン酸化タンパク質画分は、50%〜94%の範囲で検出されたと評価されている(Kamps、前出、1991)。
ホスホセリンおよびホスホトレオニンについての類似の抗体を産生させるための上記の技術を使用する試みは、一部成功している。現在までのところで産生されている抗体は、ホスホセリンまたはホスホトレオニンとの交叉反応性が限定されており、親和性も低いが、これはおそらくホスホトレオニンと比較してこれらのホスホアミノ酸の免疫原性が不十分であるためである(Heffetzら、Method.Enzymol.、201、44、1991)。状況依存性でかつ低親和性であることは、特に、ホスホチロシン抗体と比較した場合、現在利用可能なホスホセリンおよびホスホトレオニン抗体の利用を制限させている。
部位特異性ホスホセリンおよびホスホトレオニン抗体は、Nairnら、1982に最初に記載され、タンパク質のリン酸化研究の非常に有用なツールであることが証明されている(Czernikら、Method.Enzymol.、201、264、1991、Czernikら、Neuroprot.、6、56〜61、1995)。この型の抗体の1つの欠点は、目的の各部位につき異なる抗体を産生する必要があることである。明らかに、状況独立性様式でホスホセリンまたはホスホトレオニンを検出する抗体の開発は、セリン/トレオニンキナーゼカスケードの追跡およびその生物学的応答の規定に使用するのに望ましいであろう。同様に、状況独立性ホスホチロシン抗体の開発により、現在制限されている抗体の利用可能性が克服されるであろう。
モチーフ特異性状況独立性抗体はまた、14−3−3作用の新規の標的(すなわち、このモチーフでリン酸化された他のタンパク質)の同定およびこれらの部位をリン酸化するプロテインキナーゼの同定に有用であろう。同様に、アセチル化リジンに反応性を示す抗体は、ヒストンのアセチル化の機能的有意性を研究するための有用なツールとしての役割を果たすであろう。
さらに、このような抗体を、1つの抗体を使用して多くの異なるリン酸化基質を認識することができる、薬物スクリーニング用の高処理キナーゼアッセイなどにおけるin vitroでのリン酸化または他の酵素修飾の検出用の一般的な試薬として使用することができる。ホスホチロシン抗体は、現在、選択的で高親和性のチロシンキナーゼインヒビターのスクリーニング用の高処理キナーゼアッセイに使用されている。酵素活性を阻害する化合物または薬物は、リン酸化基質へのホスホチロシン抗体結合の減少によって決定される、それらのキナーゼ活性の阻害能力によって検出される。類似のアッセイを、上記のようにホスホセリン、ホスホトレオニンに対する抗体または他のタンパク質修飾を検出する抗体を用いて薬学的に有用な化合物についてのスクリーニングを設定することができる。
状況独立性様式において短いモチーフを検出する抗体はまた、タンパク質レベルおよびタンパク質修飾におけるゲノム中に及ぶ変化のプロファイリングに特に有用である。例えば、特定のタンパク質の薬物処理または過剰発現の結果としてのタンパク質のリン酸化におけるゲノム中に及ぶ変化をプロファイリングするための状況独立性ホスホトレオニン抗体および二次元ゲル電気泳動の使用(Patterson and Garrels、Cell Biology:A Laboratory Handbook、249〜257、1994、Academic Press)により、潜在的な薬物−タンパク質相互作用の同定に確かに有用であることが証明され、これは、過剰発現タンパク質用の新規の下流標的を示唆する。
本発明によれば、周囲のアミノ酸、ペプチド、またはタンパク質配列と独立して特定の短いアミノ酸モチーフを選択的に認識する抗体の産生法が得られる。本方法によれば、修飾された単一のアミノ酸(例えば、リン酸化セリン、リン酸化トレオニン、およびリン酸化チロシンまたはアセチル化リジン)ならびに1つまたは複数のアミノ酸の他の非修飾または修飾モチーフを認識する抗体の産生が可能である。
本方法には、特異的で高度に変性したアミノ酸モチーフ(キナーゼコンセンサス配列または他の酵素結合部位において見出されるモチーフ)を認識する高度な状況独立性抗体の産生および精製を含む。さらに、本方法を使用して高度な状況独立性ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を産生することができる。
本発明の方法によって産生された抗体は、実質的に任意の修飾または非修飾タンパク質モチーフに特異的であり得る。例えば、本方法を使用して、ホスホトレオニンのみまたはMAPK、14−3−3、またはcdkコンセンサス部位に見出されるいくつかの固定アミノ酸の状況におけるホスホトレオニンを認識する抗体を産生することができる。これを使用して、他の修飾アミノ酸(例えば、アセチル化リジン)に特異的な抗体を産生するか、状況独立性様式で1つまたは複数のアミノ酸の任意の短いモチーフを検出することができる。
さらに、本発明は、このようなタンパク質に保存されているモチーフに対するモチーフ特異性状況独立性抗体の使用によるゲノム中に及ぶ規模での巨大で多様なタンパク質集団のプロファイリング法を提供する。例えば、リン酸化特異性抗体により、薬物処理の結果としてのタンパク質リン酸化の変化についてゲノム中に及ぶプロファイリングが可能である。
本発明はまた、酵素の他の基質に共通するモチーフに対して惹起されるモチーフ特異性状況独立性抗体の使用による、既知の酵素の未知の基質の同定法を提供する。
基質内の所与のモチーフの酵素修飾の検出用の試薬としてのこのようなモチーフ特異性状況独立性抗体の使用もまた本発明に含まれる。

図面の簡単な説明
図1aは、特異的ペプチドに対して試験した場合の、実施例1のリン酸化トレオニンペプチドライブラリーに対して産生した親和性精製したポリクローナル抗体の特異性を示す表である。
図1bは、種々のホスホペプチドライブラリーに対して試験した場合の、実施例1のホスホトレオニン抗体の特異性を示す表である。
図1cは、オカダ酸で処理しているか処理していない細胞由来の細胞抽出物および他のホスホタンパク質に対する、実施例1のホスホトレオニン抗体の反応性を示すウェスタン分析である。
図1dは、固定化格子によって示した、実施例1の抗ホスホトレオニン抗体の状況独立性を示す表である。
図2aは、実施例2のリン酸化PXSPペプチドライブラリーに対して産生された、親和性精製したポリクローナル抗体の特異性を示す表である。
図2bは、オカダ酸で処理しているか処理していない細胞由来の細胞抽出物および他のホスホタンパク質に対する、実施例2のホスホPXSP抗体の反応性を示すウェスタン分析である。
図3aは、モチーフを欠くホスホペプチドまたは非ホスホペプチドに対して試験した場合の、実施例3の親和性精製したポリクローナル14−3−3抗体の反応性の欠失を示す表である。
図3bは、GST−BadおよびTPAでトランスフェクトした細胞由来の細胞抽出物に対する実施例3のホスホ14−3−3抗体の反応性を示すウェスタン分析を示す図である。
図4aは、実施例1Vのリン酸化PXTPXRライブラリーに対して産生されたモノクローナル抗体の特異性を示す表である。
図4bは、リン酸化および非リン酸化RBタンパク質に対する実施例1VのCDKコンセンサス部位モノクローナル抗体の反応性を示すウェスタン分析を示す図である。
図5aは、アセチル化BSAに対する実施例Vのアセチル化リジン抗体の特異性を示すウェスタン分析を示す図である。
図5bは、抗体を非アセチル化ペプチドライブラリーでプレインキュベートした場合のC6細胞抽出物に存在する種々のタンパク質に対する実施例Vのアセチル化リジン抗体の反応性を示すウェスタン分析を示す図である。
図5cは、抗体をアセチル化ペプチドライブラリーでプレインキュベートした場合のC6細胞抽出物に存在する種々のタンパク質に対する実施例Vのアセチル化リジン抗体の反応性を示すウェスタン分析を示す図である。
図5dは、抗体をアセチル化ペプチドライブラリーでプレインキュベートした場合のコントロールアセチル化BSAに対する実施例Vのアセチル化リジン抗体の反応性を示すウェスタン分析を示す図である。
詳細な説明
本発明は、抗原として使用されるペプチドライブラリーにおける任意の個々の配列の濃度が非常に低いので宿主における免疫応答を駆動するのに不十分であるという概念に基づく。したがって、免疫応答を駆動するのに十分に高濃度の抗原決定基のみが各配列ならびにそのペプチドバックボーンに共通の固定残基である。
各変性位置に20アミノ酸全てを示すペプチドライブラリーでの宿主の免疫化により、1つまたは複数の固定残基周囲の変化する位置での多くのまたは全てのアミノ酸に対して抗体耐性を得る。このような抗体は、周囲のアミノ酸、ペプチド、またはタンパク質配列の最も広い可能な範囲の状況で抗原決定基と反応する。モチーフの固定残基は、リン酸化または非リン酸化残基などの1つの非修飾または修飾アミノ酸であり得るか、またはコンセンサス認識部位などの複数の非修飾または修飾アミノ酸であり得る。
本明細書中で使用される、「抗体」は、Fcフラグメント、Fabフラグメント、キメラフラグメント、または他の抗原特異的抗体フラグメントを含む、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を意味する。
本明細書中で使用される、「モチーフ特異性状況独立性抗体」は、変化する周囲のペプチドまたはタンパク質配列の状況において1つまたは複数の固定アミノ酸残基に対して特異的である抗体を意味する。したがって、このような抗体特異性は、抗原が生じる状況に高度に独立している。
本明細書中で使用される、「基質」は、酵素によって特異的に認識され、作用するペプチドまたはタンパク質を含む任意の標的分子を意味する。
モチーフ特異性状況独立性抗体が本発明によって産生される一般的な方法を、以下に示す。
(1)周囲のアミノ酸と独立した特異的標的残基を含む任意のタンパク質またはペプチドと反応するモチーフ特異性抗体を、高度に変性したペプチドライブラリーの合成によって得ることができる。1つの好ましい実施形態では、ライブラリーは、XXXXXXJXXXXXXC(式中、X=システインを除く全20アミノ酸およびJ=修飾()アミノ酸(J)(例えば、ホスホトレオニン(T)またはアセチル化リジン(K))を含む。特異的標的残基を非修飾し、より短いまたはより長いライブラリーを作製し、周囲のアミノ酸の全てより少ないアミノ酸を変化させることができることが認識される。1つの好ましい実施形態では、ペプチドライブラリーは、約6〜14残基長である。好ましい実施形態では、変化した周囲状況において1つの固定アミノ酸(修飾または非修飾のいずれか)を利用する一方で、他の好ましい実施形態では、いくつかの固定アミノ酸を含むモチーフを利用することができる。同様に、ライブラリーの周囲の配列は、1つを越える位置で同時に変化することができるか、好ましい実施形態におけるように、変性分子あたりたった1つの周囲配列で変化することができ、その結果固定残基以外の全ての位置で完全に変性するライブラリーが作製される。ペプチドライブラリーを、ABIペプチド合成機および変性カップリング反応中の各アミノ酸の混合物を使用した標準的なF−Moc固相ペプチド合成によって合成することができる。
固定位置での修飾アミノ酸の組み込みは、他の修飾保護アミノ酸(例えば、脂質(例えば、ファルシニル化、イソプレニル化)で修飾されたアミノ酸または保護O結合もしくはN結合糖(例えば、グリコシル化)、メチル化、リボシル化アミノ酸、ヌクレオチド、ヌクレオチドのポリマー、ヌクレオシド、またはユビキチンなどのアミノ酸、またはアミノ酸アナログ)もまた組込むことができるので、リン酸化またはアセチル化に限定するべきではない。
固定位置での非修飾アミノ酸の組込みを、保存モチーフ(例えば、ジンクフィンガーまたは反復アルギニン残基)を模倣するために選択することができる。
(2)各変性位置での各アミノ酸の出現を可能な限り等しく産生するために、数ラウンドのアミノ酸組成の変更、合成、およびペプチド配列決定を行う。ペプチドに沿ったいくつのかの異なる位置でアミノ酸配列分析を行って各位置での無作為なアミノ酸出現を評価し、無作為表示を合成の間維持する。各位置での全アミノ酸の等しい分布を達成するために、ラウンド数を変化させることができることが当業者に認識される。
(3)好ましくは、キャリアへの共有結合による高度に多様なペプチドライブラリーを、抗原として使用する。好ましい実施形態では、フロイントアジュバント中に乳化させたキーホールリムペットヘモシアニン(KLH)をカップリング剤として使用してカップリングしたペプチドライブラリーを宿主(雌のニュージーランド白ウサギなど)に皮内注射する。免疫応答が得られるまで、完全フロイントアジュバントでの追加免疫注射を行うことができる。抗体力価を、適切な方法(モチーフ特異性ペプチドライブラリーに対するELISA)によって測定する。この様式で惹起した抗血清を、以下に概説のように、粗調製物または精製調製物において使用することができる。
(4)最も有望な宿主由来の抗血清を、例えば、protein Aで精製し、J(非修飾)ペプチドライブラリーカラムに吸着させる。好ましい実施形態では、非吸着画分(通過したもの)を、Jカラムに注ぎ、適切なpHで溶出し、透析して、適切な方法(JおよびJを抗原として使用したELISA)によってJ特異性について試験する。
(5)この様式で精製した抗体の親和性は、Jペプチドライブラリーを認識するが、Jライブラリーとは反応せず、Jと程度の高い特異性を示す。これらの抗体を、さらに、適切な方法(ELISAなど)を用いて標的修飾アミノ酸JまたはJホモログの非修飾形態に対する反応性の欠如について試験することができる。
(6)さらに、抗体を、選択したタンパク質修飾酵素インヒビター(タンパク質ホスファターゼインヒビターであるオカダ酸)で処理するか処理しない細胞から調製した細胞抽出物を用いてウェスタンブロッティングまたは別の適切な方法によって試験することができる。タンパク質修飾を増大させる処理により、抗体反応性タンパク質数および反応性の強度が増大する。J特異的抗体は、コントロール抽出物由来の比較的少数のタンパク質と反応するが、選択したインヒビターとの反応後非常に多数のタンパク質と反応する。抗体は、これらのタンパク質の不活性な非修飾変形との反応性を示さず、これは、J特異性の程度が高く、多数の異なる修飾された標的を含むタンパク質に対して広範な交叉反応性を示すことが示唆される。
(7)状況独立性の程度を、例えば、混合するか個々に試験する個々のJペプチドに対するELISA分析によってより慎重に試験することができる。このような分析により、例えば、Jの後にプロリンが存在する場合、所与のモチーフとの反応性が不十分であるかどうかを示すことができる。
(8)好ましい実施形態のように、修飾ペプチドライブラリーの固定格子(immobilized grid)を用いてJ抗体認識の状況依存性をさらに試験することができる。固定標的残基Jに加えて、Jと比較して異なる位置であるがシステインを除く20種全てのアミノ酸を含むさらなる固定アミノ酸を含むように各々の異なるライブラリーを合成する。各ペプチドライブラリーを、例えば、ELISAウェルの底部に被覆し、J抗体に暴露する。特定のアミノ酸が特定の位置に存在する場合、格子上の特定のスポットと反応しない抗体(ペプチドライブラリー)は結合しない。この分析は、Jと比較して特定の位置の特定のアミノ酸が結合を許容するか阻害するかを同定する。
あるいは、精製抗体をビーズに結合させ、修飾または非修飾ライブラリーに結合させ、非結合配列を洗浄し、結合配列を回収してアミノ酸配列決定し、ライブラリー中の各位置に存在する各アミノ酸の量を同定することができる。この情報は、アミノ酸が各位置で耐性であることを示す。
(9)好ましい実施形態の1形態として、適切なキャリア(KLHなど)をJライブラリーへカップリングし、宿主(balbCマウスなど)に注射することでモノクローナル抗体を調製する。Jペプチド−KLH結合物を、フロイントアジュバント中で乳化し、完全フロイントアジュバントでの追加免疫注射を応答が得られるまで隔週で行うことができる。
(10)抗体力価を、適切な方法(Jおよび非Jペプチドライブラリーに対するELISAなど)で測定する。高力価応答を示す宿主由来の血清を、固定非Jペプチドに吸着させ、非吸着画分を、例えばウェスタンブロッティングによって試験する。
(11)J特異的応答を示す宿主由来の脾臓を、骨髄腫細胞と融合し、ハイブリドーマクローンを選択およびスクリーニングする。各クローン由来の上清を、Jペプチドライブラリーへのその結合能力について最初にスクリーニングする。次に、ポジティブクローンを、非Jライブラリーに対するその交叉反応性についてスクリーニングする。最も高い程度のJ特異性を示すクローンを、上記の工程(5)〜(8)に記載のようにさらなる分析用に選択する。
(12)上記の(11)由来のモノクローナル抗体の過剰産生を、例えば、腹水を回収し、選択したハイブリドーマを培養するか、宿主生物(E.coliなど)にクローニングすることによって行うことができる。
本方法によって産生したモチーフ特異性状況独立性抗体を使用して、酵素の未知の基質を同定することができる。このような抗体を、目的の酵素によって認識されるモチーフ(例えば、コンセンサス部位)に対して最初に作製する。次いで、これらの抗体を使用して、同一のモチーフを含む他の未知の基質の存在についてサンプルをスクリーニングする。本方法によれば、保存基質モチーフを含む種々のカスケードにおける重要な新規の基質の迅速な検出が可能である。例えば、広範な種々のタンパク質を選択的に認識する抗体は、MAPKコンセンサスリン酸化部位でリン酸化された場合のみ、新規のMAPキナーゼ標的の検出に非常に便利である。MAPキナーゼを、細胞培養において過剰発現させ、成長因子によって活性化させ、標的基質タンパク質をリン酸化基質タンパク質を選択的に認識する抗体を用いたウェスタンブロッティングによって同定することができる(Stukenbergら、Curr.Biol.、7、338〜348、1997)。あるいは、MAPKを使用して、in vitroでcDNA発現ライブラリーをリン酸化し、MAPKコンセンサス部位抗体を使用してMAPKリン酸化基質を発現するcDNAクローンを同定することができる(Funkunaga and Hunter、EMBO、16(8)、1921〜1933、1997)。
同様に、本発明の方法によって産生した抗体を使用して、既知の基質モチーフを修飾する酵素を同定することができる。修飾(例えば、リン酸化)または非修飾(例えば、ジンクフィンガー)モチーフのいずれかに特異的なこのような抗体を使用して、目的の一定の酵素がそのモチーフを含む基質を修飾したかどうかを検出することができる。この方法により、保存モチーフ(例えば、MAPKコンセンサス部位)を含む既知のクラスの基質に対して作用する重要な新規のタンパク質の迅速な検出が可能になる。
本発明のモチーフ特異性状況独立性抗体を、保存モチーフを含む一定の基質の酵素修飾を検出するための薬物スクリーニングなどの高処理アッセイにおけるin vitroでの試薬としても使用することができる。例えば、一定のリン酸化モチーフに特異的な抗体は、そのモチーフに作用する酵素のインヒビターの迅速な検出を可能にする。薬物スクリーニングの場合、単一のモチーフ特異性抗体を使用して多くの多様な配列モチーフで作用する広範な酵素活性をアッセイすることができる。現在、ホスホチロシン抗体は、選択的な高親和性キナーゼインヒビターをスクリーニングするための高処理キナーゼアッセイにおいて使用されている。酵素活性を阻害する化合物または薬物を、リン酸化基質に結合しているホスホチロシン抗体の減少によって同定する、キナーゼ活性の阻害能力によって検出する。ホスホセリン、ホスホトレオニンについて上記のように産生した抗体または他のタンパク質修飾を検出する抗体を用いて薬学的に有用な化合物をスクリーニングするための類似のアッセイを設定することができる。
プロテインキナーゼ活性の抗体ベースの検出は、自動化高処理キナーゼアッセイに使用する上で放射性アッセイよりいくつかの利点を有する。第1に、放射性アッセイは、32−Pγ標識ATPのペプチド基質への移動を使用するための自動化が困難である。ホスホペプチドを、ホスホセルロースフィルターを使用して標識ATPから分離し、数回洗浄し、最後に液体シンチレーション法によってリン酸化を停止させる。これらの工程は時間がかかり、自動化が困難である。抗体検出により、自動化および高処理スクリーニングに十分に適切である広く一般に用いられるELISA型アッセイが可能である。
第2に、放射性アッセイは、感度を最大にするために高レベルの32−Pの組み込みを確実にするための低レベルのATPを必要とする。キナーゼアッセイにおける低レベルのATPは、プロテインキナーゼの触媒部位においてATP結合と競合する化合物に対するインヒビターの検索が偏る。このようなスクリーニングでは、この結合部位は高度に保存されているためATP結合部位に対して一貫して競合インヒビターが得られるが、これらは選択性が不十分なインヒビターである。
現在の高処理キナーゼアッセイは、典型的には、96または386ウェルプレートの下部に固定したビオチン化ペプチド基質を使用し、これはその後所望のプロテインキナーゼ、ATP、および適切なキナーゼ緩衝液とインキュベートされる。キナーゼ活性を、リン酸化ペプチド基質とのみ反応する蛍光標識リン酸特異的抗体を用いて測定する。これらのアッセイは、2つの形式である均質(洗浄工程を含まない)および不均質(洗浄工程を含む)がある。均質な蛍光アッセイは、典型的には、エネルギー受容体(例えば、アロフィコシアニン)に連結するリン酸化ペプチド基質へのランタニド標識ホスホ抗体結合を使用する。ホスホ抗体の結合の際、リン酸化ペプチド基質は、放射シグナルの頻度を変化させ、同時に蛍光共鳴エネルギー転移を可能にするように2つのフロオロフォアを十分に近づかせ、生体分子複合体の存在を示す。異なる化合物を各ウェルに添加し、化合物の基質リン酸化阻害能力を、蛍光エネルギー転移阻害によって同定する。この形式は、一般に放射性アッセイで使用されるシンチレーション近接アッセイ(scintillitation proximity assay)と類似している。他の均質アッセイには、ホスホ抗体のリン酸化基質への結合を測定するための蛍光偏光の使用が含まれる。
均質アッセイにおける重要な特徴は、工程数が限られており、自動化が容易なことである。現在、ELISAに基づく多様な不均質キナーゼアッセイも使用されている。これらのアッセイは、典型的には、96または386ウェル形式に固定したリン酸化ペプチド基質に結合する蛍光標識ホスホ抗体を利用する。この場合、非結合抗体を分離するために洗浄工程を必要とする。ウェル中に保持される蛍光標識抗体を、時間分解蛍光を用いて検出する。
このような修飾スクリーニングアッセイ用の抗体作製に使用されるモチーフは、修飾または非修飾基質モチーフのいずれかであり得る。非修飾モチーフに対して作製した抗体は、基質がその後酵素によって修飾された場合結合しない。同様に、修飾モチーフに対して作製された抗体は、酵素活性による修飾基質濃度の増加を検出することができる。
類似のアプローチを適用して、種々の他の酵素修飾を研究することができ、これには、以下に記載のプロテインキナーゼ活性またはアセチルトランスフェラーゼ活性が含まれるがこれらに限定されない。例えば、このアプローチを使用して、多くの他の型のタンパク質修飾(糖、メチル基、カルボキシル基の付加、種々の脂質の付加、ヌクレオチドもしくはヌクレオチドポリマー、ヌクレオシド、またはユビキチンなどのアミノ酸の付加が含まれるが、これらに限定されない)を認識する抗体を作製することができる。
同様に、保存モチーフを含む巨大で多様なタンパク質集団を同時にプロファイリングするために、ゲノム中に及ぶ規模でこのようなモチーフ特異性状況独立性抗体を使用することができる。特異的な2つまたは3つのアミノ酸結合部位(例えば、連続的なアルギニン残基)が(アミノ酸の無作為な分布に基づいて)400または8000残基に1回認められるはずである(1タンパク質あたり約1回または20タンパク質あたり1回のいずれかに相当する(平均タンパク質を400アミノ酸として仮定する))。したがって、起こり得る状況に独立的なこのようなモチーフに特異的な抗体により、非常に多数のタンパク質の迅速なスクリーニングが可能となる。
リン酸化特異性抗体は、薬物処理の結果としてのタンパク質のリン酸化またはこのような処理の結果としての特異的遺伝子/タンパク質の過剰発現の変化についてのゲノム中に及ぶプロファイリングが可能である。このような抗体はまた、配列決定したゲノム中の特異的タンパク質発現のプロファイリングを容易にする。
例えば、細胞周期依存性プロテインキナーゼcdc2を阻害する薬物開発が考えられる。薬物は、高親和性を有するcdk2阻害が認められているが、他のプロテインキナーゼが阻害されるかどうか、もし阻害されるのであれば、どのプロテインキナーゼが阻害されることになるかについて、化合物の特異性を試験する必要がある。
このプロセスにおける初期の工程として、化合物または誘導薬物によって阻害されるリン酸−基質の性質を試験するために、細胞株を薬物で処理して、全細胞タンパク質リン酸化に対する効果をモチーフ特異性ホスホ抗体および一般的なホスホ抗体のパネルを使用して監視することができる。
コントロールおよび薬物処理細胞から調製した細胞抽出物由来の全タンパク質を、例えば二次元ゲル(第1次元では等電点電気泳動を行い、第2次元では標準的なSDS−ポリアクリルアミドでの分子量分画を行う)を用いて分画し、ニトロセルロース膜に移し、この場合、キナーゼコンセンサス部位特異的ホスホ抗体を用いたウェスタンブロッティングによって分析することができる。
この場合、cdc2コンセンサス部位特異性抗体を用いた全細胞タンパク質の全体的な分析により、全ての潜在的なcdc2部位基質でのリン酸化を阻害する薬物の能力に関する情報が得られるであろう。インヒビターがチロシンキナーゼを阻害するようにも作用するかどうかを同定するために、異なるキナーゼコンセンサス部位に対する抗体を使用するかホスホチロシンに対する抗体を使用して他の非cdc−2基質での阻害パターン(すなわち、特異性の程度)を試験することもできる。
現在、哺乳動物細胞についての、二次元ゲルによって視覚化されたタンパク質「スポット」の大部分の同定が未知である。しかし、全てのヒト遺伝子が同定および配列決定され、対応するタンパク質が特徴づけられ、「スポット」同定されているので、本発明によるタンパク質プロファイリングによる分析はより強力な情報源となる。阻害されたタンパク質の同定により、薬物特異性が確認されるだけでなく、阻害されたさらなる「非特異性」タンパク質の同定により可能な副作用も示唆される。二次元ゲルによる多くのタンパク質「スポット」がすでに同定されている酵母などの単純で完全に配列決定されている生物において、理想的な分析を行うことができる。
以下に記載の実施例は、本発明の特に好ましい実施形態としてのみ意図され、本明細書に添付の特許請求の範囲に限定した以外は、発明の範囲を限定することを意図しない。本発明は、本明細書中で教示の方法の修正および変形が含まれることが当業者に自明である。
上記および下記の引例は、本明細書中で参考として援用される。
状況独立性ホスホトレオニン抗体
ペプチドライブラリー抗原の合成
リン酸化トレオニン残基を含む任意のタンパク質と反応する(すなわち、周囲のアミノ酸のホスホトレオニンに独立して結合する)ホスホ特異性抗体を、高度に変性させたペプチドライブラリーXXXXXXThrXXXXXXC(式中、X=システインを除く全20アミノ酸、Thr=ホスホトレオニン)の合成によって得た。
ホスホトレオニンペプチドライブラリーを、ABIペプチド合成機および変性カップリング反応中の各アミノ酸の混合物を用いた標準的なF−Moc固相ペプチド合成によって合成した。変性ペプチドを、0.085mmolのスケールでのFastMocの化学的性質を用いたABIモデル433Aペプチド合成機を用いて合成した(Fieldsら、Pept.Res.、4,、95〜101、1991(本明細書中で参考として援用される))。HBTUアミノ酸活性化を使用したFmoc/NMPの化学的性質(Dourtoglouら、Synthesis、1984、572〜574、1984、Knorrら、Tetra.Let.、30、1927〜1930、1989、Knorrら、Peptides、1988、37〜129、1989、Walter de Gruter & Co.(これらの全てが本明細書中で参考として援用される))を、全てのサイクルで使用した。0.5mmol/gで機能させた、予めロードしたFmoc−Cys(Trt)HMP(p−ヒドロキシメチルフェノキシメチル)ポリスチレン樹脂をペプチドの各変性プールに使用した。ペプチドを、各サイクル間で単一のカップリングを用いて合成したにもかかわらず、カップリング時間は、リン酸化アミノ酸を含む各位置で伸長した。最終Fmocを、合成中に取り除いた。最終的にFmoc基を取り除いた予めロードしたHMPの使用により、切断および脱保護後に遊離アミノ酸およびカルボキシ末端を含むペプチドが得られる。
各変性位置で可能な限り等しい各アミノ酸の出現を得るために、数ラウンドのアミノ酸組成の変更、合成、およびペプチド配列決定を行った。所望のペプチドプールは、各「変性」部位で等モルの19アミノ酸(Cys以外の全ての標準的なアミノ酸)を含むことであった。各保護アミノ酸の反応速度が異なるので、簡単に混合した等モル量(それぞれ、全量の約5.26%)では、各位置で等モルのペプチドが得られない。各残基での変性を最大にするために、最初に、各位置で等モルの「混合物」を用いてペプチド合成を行った。フェニルチオカルバミル−アミノ酸分析を行うことにより、各位置での相対的アミノ酸含有量が評価される。各変性位置での各アミノ酸の等しい出現を確実にするために、アミノ酸分析に基づいて、「混合物」中の各アミノ酸のモル量を調整して異なる反応速度を補正した。数ラウンドのペプチド合成後、アミノ酸分析はアミノ酸混合物を至適化する必要があり、それにより変性ペプチドが全て得られた。最適化に到達したアミノ酸混合物は以下である:G(4.6%)、A(5.6%)、V(3.3%)、L(2.5%)、I(4.25%)、S(4.4%)、T(8.4%)、F(2.25%)、Y(6.0%)、W(6.8%)、M(2.9%)、P(2.5%)、D(5.8%)、N(9.5%)、E(6.2%)、Q(9.4%)、K(6.1%)、R(6.4%)、H(3.5%)。
側鎖保護基の除去を伴う樹脂からの変性ペプチドの切断は、TFAでの処理と同時に行われる。切断混合物(Perkin Elmer、Emerville、CA、1995)は、以下からなる:0.75gフェノール、0.125ml硫化メチル、0.25ml 1,2−エタンジオール、0.5ml milliQ H2O、0.5mlチオアニソール、10ml TFA。全混合物をペプチド樹脂に添加した(約300mg)。樹脂を窒素で洗い流し、室温で3時間穏やかに撹拌した。次いで、樹脂を濾過して、ペプチドを冷(0℃)メチル−t−ブチルエーテル中に沈殿させた。エーテル画分を、遠心分離して沈殿を回収した。ペプチド沈殿物を、減圧乾燥し、質量分光法によって分析し、HPLCで精製した。
ペプチドサンプルを、アセトニトリル/水(50:50、v/v)中に懸濁し、基質として2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノン+クエン酸アンモニウムを用いたPerceptive Biosystems(Framingham、MA)MALDI−TOF質量分析計で分析した。予想通り、ペプチド混合物は、均一の生成物を示さなかった。MALDI−TOF分析により、ペプチドプールは変性され、ペプチド質量の平均質量および予想された統計的に正常な曲線を示すことが示された。
ペプチドを、Lambda−Max Model 481 Multiwavelength detector、500シリーズポンプ、および自動化勾配制御装置からなるWaters HPLC systemを用いて精製した。Vydacの半調製C18カラムを、逆相精製に使用した。2ml/分の流速で60分間の直線的勾配(10%〜100%、B)を使用した。緩衝液Aは、0.1%TFA/HO(v/v)からなり、緩衝液Bは、0.1% TFA/60% CHCN/40% HO(v/v/v)からなる。214nmで検出した。
(質量分光法で示されたように)ペプチドプールが変性していたので、HPLC精製によって均一な生成物が得られるとは期待できなかった。本方法によってペプチド混合物のベースライン分離を行わず、本方法は粗精製/脱塩工程としてのみみなした。質量分光法を行い、質量が理論上の範囲内である全ての画分をプールし凍結乾燥した。
ペプチドに沿ったいくつかの異なる位置でのアミノ酸配列分析により、各タンパク質での無作為なアミノ酸が表示され、無作為の出現が合成を通して維持されることが示された。結果は、適切な抗原として作用する非常に多様なペプチドライブラリーの産生を示した。
ウサギポリクローナル抗体の産生
異質二重機能性架橋剤(m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS))を使用して、キャリアタンパク質(KLH)へ結合させるC末端システイン残基を含む全てのペプチドを合成した。使用した結合法は製造者(Pierce)に記載の通りであるが、動物の免疫化および追加免疫用の物質を増加させるためにKLHにカップリングしたペプチドの量は10mgに増加させた。N末端およびKLHリジン残基のε−アミノ基に対する反応後に過剰なMBSを取り除くために、スケールアップにはより大きな脱塩カラム(Bio−Rad 10 DG(Cambridge、MA))の使用が必要であった。
ホスホトレオニンペプチドライブラリーを、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(250μg)に共有結合させ、フロイントアジュバントに乳化し、雌のニュージーランド白ウサギに皮内注射した。完全フロンドアジュバント(200μg)による追加免疫注射を、応答が得られるまで隔週で行った。ホスホトレオニンおよび非ホスホトレオニンペプチドライブラリーを用いたELISAによるホスホペプチド特異性免疫反応性の存在について、ウサギ血清を3週間毎にスクリーニングした。ホスホペプチドに対する抗体の力価が10に達したとき、ウサギを、2週間毎に採血する産生血液スケジュール(production bleed schedule)に従わせる。40mlの高力価の血清が得られたとき、以下に記載のように、ホスホ特異的抗体の精製を開始した。
最も有望なウサギ由来の抗血清をprotein Aで精製し、非ホスホThr/Serペプチドライブラリーカラムを通過させた。非吸着画分を、ホスホトレオニンカラムに注ぎ、低pHで溶出し、透析し、ホスホペプチドおよび非ホスホペプチドを用いたELISAによってホスホ特異性について試験した。この様式で親和性精製された抗体は、リン酸化トレオニンペプチドライブラリーを認識するが、非ホスホトレオニン/セリンライブラリーと反応せず、これは、ホスホトレオニンについての特異性の程度が高いことを示している(図1aを参照のこと)。ELISAの結果はまた、抗体はまた18の異なるホスホトレオニンペプチドの混合物と特異的に反応したが、対応するいかなる非ホスホペプチドとも反応しなかったことを示した(図1b)。抗体はまた、ホスホトレオニンについて厳密な選択性を示し、これは、38種の異なるホスホセリンペプチド(図1b)またはホスホチロシンを含むペプチドと反応しないことを示す。
本発明者らは、次に、プロテインフォスファターゼ阻害剤であるオカダ酸で処理しているか処理していない細胞由来の細胞抽出物を用いたウェスタンブロッティングによって抗体を試験した。図1cに示すように、ホスホトレオニン抗体は、コントロール抽出物由来の比較的少数のタンパク質と反応したが、オカダ酸で処理後では非常に多数のタンパク質と反応する(図1c、レーン2の高分子量の不鮮明な反応タンパク質を参照のこと)。抗体はまた、それぞれの活性化ループでのトレオニン残基でリン酸化された場合のみ、活性化形態のMAPK(ERK1)およびMKK3と特異的に反応した。抗体は、これらのタンパク質の不活性な非リン酸化形態と反応しなかった(図1c、レーン3〜6)。これらの結果は、ホスホトレオニンの特異性が高いことを示し、これは、多くの異なるトレオニンリン酸化タンパク質およびペプチドに対して広範な交叉反応性を示唆する。
状況独立性をより慎重に試験するために、上記の実験で混合した個々のトレオニンリン酸化ペプチドに対してELISA分析を行った。図1aに示すように、ホスホトレオニン抗体は、ホスホトレオニンがプロリンに隣接する場合(例えば、c−MycおよびAPP1ホスホペプチド)以外は、全てのホスホペプチドと良好に反応する(図2b)。これらの結果は、精製ウサギ抗体がホスホ特異性形態で広範な種々のホスホトレオニンと反応するが、リン酸化トレオニンがプロリンが隣接する場合はホスホペプチドとの反応は不十分であることを示す。
ホスホトレオニン抗体認識の状況依存性を、ホスホペプチドライブラリーの固定格子を用いてさらに試験した。固定ホスホトレオニンに加えて、ホスホトレオニンと比較して−4、−3、−2、−1、+1、+2、+3の位置にさらなる固定アミノ酸を含むが、システイン以外の全ての20アミノ酸を含む他の位置を有するようにそれぞれ異なるライブラリーを合成した。各ペプチドライブラリーを、ELISAウェルの底部にコートし、ホスホトレオニン抗体に暴露した。格子上の特定のスポット(ペプチドライブラリー)と反応しない抗体は、特定の位置に特定のアミノ酸が存在する場合、結合しない。この分析は、ホスホトレオニンと比較して特定の位置での特定のアミノ酸が結合を許容するか阻害するかどうかを同定する(図1d)。
結果により、ホスホトレオニン抗体が−1、−2、−3、−4および+2、+3の位置で全てのアミノ酸を許容し、+1位のプロリン以外の全てのアミノ酸と等しく十分に結合することを確認した(図1d、最初の列を参照のこと)。この結合プロフィールによって規定された反応性は、抗体が−1位でプロリンが隣接するもの以外は全てのホスホトレオニン含有配列に結合することを示す。種々の特異的ホスホトレオニン含有ペプチドを使用したさらなる分析により、これらの結果を確認した。
同一のペプチドライブラリー抗原で免疫化したいくつかの他のウサギ由来のホスホトレオニン特異的抗体を、さらに精製して特徴づけた。2つの他のウサギから得た血清から精製した抗体は、ELISAで同定したところ、広範な交叉ホスホトレオニン抗体も産生した。あるウサギでは、ホスホトレオニン後のプロリンを含むペプチドと等しく十分に反応する抗体を産生した。まとめると、これらの結果は、組み合わせペプチドライブラリーを免疫原として使用する場合、ホスホトレオニン応答の広範な状況独立性が得られることを示す。
プロテインキナーゼコンセンサス部位特異的ホスホ抗体
MAPK−コンセンサス認識部位:PXS
MAPKリン酸化の好ましい部位PXSPのペプチドライブラリーを、実質的に実施例1に記載のように合成した(図2a)。等モル量のホスホセリンおよびトレオニンとの混合物に加えて、以下の2つの他の位置のアミノ酸も固定した:−2位のプロリンおよび+1位のプロリン。このライブラリーをKLHにカップリングし、ホスホトレオニンについて記載したようにウサギに注射した。最も有望なウサギ由来のIgGをprotein Aで精製し、非ホスホThr/Serペプチドライブラリーカラムを通過させた。非吸着画分(通過したもの)を、ホスホPXSPカラムに注ぎ、低pHで溶出し、透析し、ホスホペプチドおよび非ホスホペプチドを用いたELISAによってホスホ特異性について試験した。
この様式で親和性精製した抗体は、リン酸化PXSPペプチドライブラリーと強力に反応するが、非ホスホトレオニン/セリンライブラリーとは反応しなかった(図2aを参照のこと)。ELISAの結果はまた、抗体が18の異なるホスホトレオニンペプチドの混合物と特異的に反応するが、対応するいかなる非ホスホペプチドとも反応しないことを示した(図2a)。ホスホ特異性であることに加えて、抗体は−2および+1位のプロリンに選択性を示し、この位置でプロリンを欠くリン酸化ペプチドとは反応しない(図2a)。抗体は、RBおよびcdk4ホスホペプチドと強力に反応するが、+1位にプロリンを欠くMKK3、PKCalpha、またはp70S6ホスホペプチドとは反応しなかった(図2a)。これらの抗体は、−2位にプロリンを欠くいくつかのペプチド(例えば、cdk4ホスホペプチド)と反応し、これは、この位置でプロリンが絶対に必要ではないことを示唆する。
タンパク質ホスファターゼインヒビターのオカダ酸で処理したか処理していない細胞から抽出した細胞抽出物を使用したウェスタンブロッティングによって、PXSP抗体をさらに試験した。RS 4;11細胞由来の細胞抽出物へのPXSP抗体の結合は、オカダ酸処理後に強力に促進された(図2b、レーン2の高分子量の不鮮明な反応タンパク質を参照のこと)。抗体はまた、MAPキナーゼでin vitroでリン酸化したATF−2と特異的に反応するが、このタンパク質の非リン酸化形態とは反応しない(図2b、レーン3およびレーン4)ので、多くの異なるリン酸化タンパク質およびペプチドとホスホ特異性の程度が高く、交叉反応性が広範であることが示された。
PXSP抗体認識の特異性もまた、ホスホペプチドライブラリーの固定格子を用いて試験した。上記のように、固定ホスホトレオニンまたはホスホセリンに加えて、ホスホトレオニンと相対して−1、+1、+2位に固定したアミノ酸を持つが、他の全ての位置にシステインを除く20種全てのアミノ酸を含むように各々の異なるライブラリーを合成する。
PXSP抗体は、プロリンが−1位に固定された場合ペプチドライブラリーと弱く反応したが、プロリンが−2および+1位に固定された場合ライブラリーと強力に反応した。この結合プロフィールによって定義された反応性は、予想通り、PXSP抗体がPXSPモチーフを含む配列とのみ結合する。抗血清は、SP(不純物の結果として)に対していくつかの残基反応性をさらに含むが、これは固定SPライブラリーを用いたさらなる精製によって取り除くことができる。
プロテインキナーゼコンセンサス部位特異的ホスホ抗体
14−3−3結合部位:RSXSXP
14−3−3標的を同定する抗体を、ペプチドライブラリーXXXXRSXSXPXXXXC(式中、Sはホスホセリンを示し、Xは任意のアミノ酸を表し、Cはシステインである)の合成によって得た。上記の14−3−3ホスホペプチドライブラリーを、実施例1に記載のように、ABIペプチド合成機および変性カップリング反応中のシステイン以外の各アミノ酸の混合物を用いたF−Moc固相ペプチド合成によって合成した。
14−3−3ホスホペプチドライブラリーを、KLHと結合させ、ホスホトレオニンおよびPXSPについて上記のようにウサギに注射した。最も有望なウサギ由来の抗血清を、protein Aで精製し、非ホスホ14−3−3ペプチドライブラリーカラムに吸着させた。このカラムを通過したものを、ホスホ14−3−3カラムに注ぎ、低pHで溶出し、透析し、ホスホおよび非ホスホ14−3−3ペプチドライブラリーを用いたELISAによってホスホ特異性について試験した。これらの親和性精製した14−3−3ペプチド抗体は、リン酸化14−3−3ペプチドライブラリーを認識するが、非ホスホ14−3−3ライブラリーは認識しないので、これは、ホスホ14−3−3に対する高度な特異性を示す(図3aを参照のこと)。抗体はまた、14−3−3モチーフ(ホスホ−Bad−Ser136、cdc25−Ser216を含む)を含むいくつかの異なるペプチドと強力に反応し、わずかな変異モチーフを含むホスホ−Bad−Ser112とより弱く反応した。抗体は、対応する非ホスホペプチド(図3a)ともモチーフを含まない他の多くのホスホペプチドとも全く反応しない。
ホスホ14−3−3抗体を、GST−Bad融合タンパク質でトランスフェクトしホルボールエステルTPAと処理したか処理していない細胞から調製した細胞抽出物を用いたウェスタンブロッティングによってさらに試験した。抗体は、コントロール抽出物由来の少数のタンパク質と反応した(図3b)。トランスフェクト細胞から調製した抽出物中ではBadが検出されたが、コントロール細胞からは検出されなかった。TPAは、いくつかの高分子量のタンパク質のリン酸化を誘導した(図3bの矢印)が、基底レベルのBadリン酸化が高いので、TPAでのリン酸化の増加を認めるのは困難である。これらの結果は、ホスホ14−3−3抗体がリン酸化Badおよび他のTPA刺激ホスホタンパク質を検出することができることを示す。
前記のセリン/トレオニンリン酸化ペプチドライブラリーの格子に対するELISA分析も行った。予想通り、ホスホ14−3−3抗体は、+2位のプロリンが必須である。
マウスモノクローナル抗体の産生:CDKコンセンサスリン酸化部位PXTPXR
PXT/SPXR配列は、多数の細胞周期依存性プロテインキナーゼ(cdks)のコンセンサスリン酸化部位を示す。このリン酸化モチーフを認識する抗体は、細胞周期進行の調節に重要な新規のcdk基質の同定に有用であろう。図4aに示すPXT/SPXRペプチドを、KLHにカップリングし、BALB/cマウスに注射した。フロイントアジュバントに乳化したホスホペプチド−KLH結合物(50μg)をIP注射した。完全フロイントアジュバント中の追加免疫注射(12.5〜25μg)を、応答が得られるまで3週間毎に行った。抗体力価を、免疫化ホスホペプチドライブラリーに対するELISAによって測定した。高力価応答を示すマウス由来の血清を、固定非ホスホThr/Serペプチドに吸着させ、非吸着画分をウェスタンブロットで試験した(データ示さず)。
ホスホ特異的応答を示すマウス由来の脾細胞を、骨髄腫X63Ag8.635細胞に融合し(Kearneyら、J.Immunol.、123、1548〜1550、1979)、約1,100個のハイブリドーマクローンを選択してスクリーニングした。各クローン由来の上清を、免疫化ホスホペプチドライブラリーへの結合能力について最初にスクリーニングし、次に非ホスホペプチドライブラリーに対するその交叉反応性についてスクリーニングした。最も高い程度のホスホ特異性を示す2つの異なるクローンを、さらなる分析用に選択した。クローン6B8および5A9の特異性を、図4aに示したホスホペプチドライブラリーおよびホスホペプチドを用いてさらに特徴づけた。両クローンは、ライブラリーおよび個々のペプチドを含むホスホトレオニンと特異的に反応するが、ペプチド含むホスホセリンとは有意に反応せず、これは、ホスホトレオニン選択クローンが同定されたことを示す。両クローンは、ホスホトレオニンと相対してプロリンが−2および+1位で固定された場合、ペプチドと強力に反応する。TPおよびPXTPライブラリーに対する反応性は、各ライブラリー中の400ペプチド中の1ペプチドおよび20ペプチド中の1ペプチドが固定位置に適切なアミノ酸を有するので、緩やかな特異性を示さない。両クローンは、免疫化ライブラリーに存在する各固定位置に含まれる単一のRBホスホトレオニンペプチドと強力に反応するが、対応する非ホスホペプチドとは有意に反応しない。
ウェスタン分析により、培養細胞のオカダ酸処理により両クローン6b8および5A9の結合性が劇的に増加したことが示される(図4b)。クローン6B8はまた、ウェスタンブロッティングによってcdc2リン酸化RBを検出することが示される(図4b)が、非リン酸化RBタンパク質とは反応しない。クローン5A9は、ブダペスト条約の条項に基づき、1998年9月4日にAmerican Type Culture Collectionにアクセッション番号HB−12563で寄託された。
アセチル化リジン特異的抗体
アセチル化リジンに対して特異的な反応性を示し、非アセチル化リジンに対して反応性を示さない抗体を、以下のアセチル化リジンペプチドライブラリーXXXXXXKXXXXXXC(式中、Kはアセチル化されており、Xはシステイン以外の任意のアミノ酸を示し、Cはシステインである)の合成によって得た。アセチル化リジンペプチドライブラリーを、上記のように市販の完全に保護されたアセチル化リジンを用いる標準的なF−Moc固相ペプチド合成によって合成した。
ペプチドライブラリーをKLHとカップリングし、ウサギに注射した。K−ペプチド−KLH結合物(250μg)を、上記に記載のように他のホスホペプチドライブラリー用の免疫原として使用した。最も有望なウサギ由来の血清を、protein Aで精製し、非アセチル化リジンペプチドライブラリーカラムに吸着させた。このカラムの通過物を、アセチル化リジンカラムに注ぎ、低pHで溶出し、ELISAによってホスホ特異性について試験した。
上記のように親和性精製したアセチル化リジン抗体は、アセチル化リジンペプチドライブラリーを認識するが、非アセチル化ライブラリーは認識せず、これは、ELISAで測定したところ、アセチル化リジンに対する特異性の程度が高いことを示している。この抗体はまた、0.5ngほどのアセチル化ウシ血清アルブミン(BSA)と特異的に反応するが、10μgまでの非アセチル化BSAと全く反応しなかった(図5aを参照のこと)。
さらに、抗体を、アニソマイシンで処理するか処理しない細胞から調製した細胞抽出物を用いたウェスタンブロッティングによって試験した。抗体は、C6細胞抽出物中に存在する多数の異なるタンパク質と反応する(図5b)。パネルbおよびパネルcでは、抗体を、1μgの非アセチル化ペプチドライブラリー(図5b)または1μgのアセチル化ペプチドライブラリー(図5c)とプレインキュベートした。非アセチル化ペプチドライブラリーとのプレインキュベーションにより、アセチル化コントロールタンパク質との抗体反応性に対する効果はほとんどなく、細胞抽出物中にバンドが視覚化された(図5c、レーン5〜8)。しかし、アセチル化リジンペプチドライブラリーとの抗体のプレインキュベーションにより、コントロールアセチル化BSAに結合し、細胞抽出物中に存在する多数のタンパク質に結合する抗体を完全に阻害した(図5d、レーン9〜12)。これらの結果は、アセチル化リジンに対する特異性の程度が高いことを示し、抗体が種々の周囲の配列状況におけるアセチル化リジンを含む広範囲の異なるサイズのタンパク質を認識することを示す(図5cおよび図5dのレーン1および2を比較のこと)。
特異的ペプチドに対して試験した場合の、実施例1のリン酸化トレオニンペプチドライブラリーに対して産生した親和性精製したポリクローナル抗体の特異性を示す表である。 種々のホスホペプチドライブラリーに対して試験した場合の、実施例1のホスホトレオニン抗体の特異性を示す表である。 オカダ酸で処理しているか処理していない細胞由来の細胞抽出物および他のホスホタンパク質に対する、実施例1のホスホトレオニン抗体の反応性を示すウェスタン分析である。 固定化格子によって示した、実施例1の抗ホスホトレオニン抗体の状況独立性を示す表である。 実施例2のリン酸化PXSPペプチドライブラリーに対して産生された、親和性精製したポリクローナル抗体の特異性を示す表である。 オカダ酸で処理しているか処理していない細胞由来の細胞抽出物および他のホスホタンパク質に対する、実施例2のホスホPXSP抗体の反応性を示すウェスタン分析である。 モチーフを欠くホスホペプチドまたは非ホスホペプチドに対して試験した場合の、実施例3の親和性精製したポリクローナル14−3−3抗体の反応性の欠失を示す表である。 GST−BadおよびTPAでトランスフェクトした細胞由来の細胞抽出物に対する実施例3のホスホ14−3−3抗体の反応性を示すウェスタン分析を示す図である。 実施例1Vのリン酸化PXTPXRライブラリーに対して産生されたモノクローナル抗体の特異性を示す表である。 リン酸化および非リン酸化RBタンパク質に対する実施例1VのCDKコンセンサス部位モノクローナル抗体の反応性を示すウェスタン分析を示す図である。 5Aは、アセチル化BSAに対する実施例Vのアセチル化リジン抗体の特異性を示すウェスタン分析を示す図である。5Bは、抗体を非アセチル化ペプチドライブラリーでプレインキュベートした場合のC6細胞抽出物に存在する種々のタンパク質に対する実施例Vのアセチル化リジン抗体の反応性を示すウェスタン分析を示す図である。5Cは、抗体をアセチル化ペプチドライブラリーでプレインキュベートした場合のC6細胞抽出物に存在する種々のタンパク質に対する実施例Vのアセチル化リジン抗体の反応性を示すウェスタン分析を示す図である。5Dは、抗体をアセチル化ペプチドライブラリーでプレインキュベートした場合のコントロールアセチル化BSAに対する実施例Vのアセチル化リジン抗体の反応性を示すウェスタン分析を示す図である。

Claims (4)

  1. 異なる複数のペプチドもしくは蛋白質中の単一リン酸化残基に特異的に結合することのできる特異性抗体。
  2. リン酸化された残基がホスホセリンまたはホスホスレオニンである、請求項1に記載の抗体。
  3. 異なる複数のペプチドもしくは蛋白質中の単一アセチル化リジンに特異的に結合することのできる特異抗体。
  4. リン酸化もしくはアセチル化された単一アミノ酸に特異的に結合する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の抗体の産生方法であって、
    (a)(i)リン酸化若しくはアセチル化された単一のアミノ酸及び(ii)該単一アミノ酸の周囲の複数の可変アミノ酸、を含むペプチドライブラリーを構築する工程、
    (b)宿主を前記ペプチドライブラリーで免疫化する工程、及び
    (c)前記宿主から抗血清を回収し、複数の異なるペプチドにおけるリン酸化若しくはアセチル化された単一のアミノ酸残基もしくは該残基を含む蛋白質を認識する抗体を精製する工程、
    を含む前記方法。
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