JP2014073100A - 抗原特異的ウサギ抗体産生細胞の迅速な特定方法およびその利用 - Google Patents

抗原特異的ウサギ抗体産生細胞の迅速な特定方法およびその利用 Download PDF

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【課題】ウサギ由来の、モノクローナル抗体を包括的かつ迅速に産生するためのシステムの提供。
【解決手段】アミノ酸が修飾された抗原の修飾部位に特異的な抗体を産生する細胞の特定方法であって:(1)基体の一方の主表面に複数のウェルを有し、前記ウェルの周辺の前記主表面の少なくとも一部に抗体と結合性を有する物質の被覆層を有するマイクロウェルアレイの少なくとも一部のウェルに、被検体細胞を培養液とともに格納し;(2)被検体細胞より培養液中に産生された抗体がウェルから前記被覆層への拡散が可能な状態で被検体細胞を培養して、産生された抗体を被覆層の物質と結合させ;(3)結合した抗体をブロックした後に、修飾された抗原をさらに供与し;(4)修飾された抗原と結合した抗体を検出して、その抗体を産生する細胞を、修飾部位に特異的な抗体を産生する細胞として、特定する工程を含む、方法。
【選択図】図1−2

Description

本発明は、抗原特異的なウサギモノクローナル抗体に関する。本発明は、チップを用いたイムノスポットアッセイ(Immunospot-array assay on a chip、ISAAC)法の応用に関する。本発明は特に、リン酸化された抗原のリン酸部位に特異的に結合する抗体や、高い親和性および高い特異性を有する抗体の産生のために有用である。本発明は、ライフサイエンス分野等における研究および診断用のウサギモノクローナル抗体のハイスループット生産のための技術として期待できる。
モノクローナル抗体は、高い特異性と高い親和性を有するため、実験室での研究において特定のタンパク質を検出するためだけでなく、癌に関する治療用抗体(抗体医薬)および診断の道具としても広く利用されている。特に、ウサギモノクローナル抗体(RaMoAb)は、2つの理由のため、従来のげっ歯類の抗体と比較して、研究および診断のための理想的なモノクローナル抗体である。第1に、ウサギ抗体の抗体は一般に高い親和性および高い特異性を有する(非特許文献1〜6)。第2に、ウサギはマウスまたは他の動物において免疫原性に乏しい多くの抗原に対して抗体を産生することが知られている(非特許文献1、4、7〜11)。
RaMoAbの産生に関しては、いくつかの報告がある。形質細胞腫はウサギにおいて確立されていなかったため、そしてウサギのB細胞はインビトロでウイルスを用いて形質転換するのが難しかったため、マウスミエローマ細胞とラビットB細胞のヘテロハイブリドーマが最初に産生された。しかし、これらのヘテロハイブリドーマは非常に不安定であり、クローニングするのが難しく、そして長期間抗体を分泌することができなかった。1995年に、免疫グロブリン重および軽鎖のエンハンサーの制御下でv-ablおよびc-mycを過剰発現するダブルトランスジェニックウサギを産生することにより、形質細胞腫細胞株を確立したことが報告されているが、それでも、ハイブリドーマ法を用いるRaMoAbの産生はまだ限定されている。
一方、本発明者らは、これまでに細胞が1個1個格納できる大きさ・形状の微小ウェルを規則正しく4万5千個〜23万個程度配置したマイクロウェルアレイチップを開発し、そこにB細胞を1個ずつ配置し、抗原刺激し、B細胞の細胞内Ca2+濃度の変動や抗原のB細胞表面の抗体への結合を単一細胞レベルで解析することにより、抗原特異的B細胞を同定できることを示してきた。さらに、ウェル周囲のチップ表面を抗原でコートしたマイクロウェルアレイチップを用いることで、より簡便に抗原特異的抗体分泌細胞が検出できることを示してきた(特許文献1)。この、チップイムノスポットアッセイ(ISAAC)は、目的の抗体分泌細胞(ASC)を同定および回収するための迅速、効率的、かつハイスループットなシステムである(非特許文献12、13)。そのマイクロウェルアレイチップは、大きさおよび形状がそれぞれのウェル中の単一のリンパ球の収容に最適化された234,000ウェルまでの規則的なアレイを有し、それは単一細胞に基づいて生きた細胞を分析することを可能にする。そのISAACシステムは、ヒト末梢血リンパ球(PBL)中の抗原特異的ASCを検出し、わずか7日以内に抗原特異的ヒト抗体を産生することができた。
特開2009-34047(特許4148367)
Weller, A., Meek, J. & Adamson, E.D. Preparation and properties of monoclonal and polyclonal antibodies to mouse epidermal growth factor (EGF) receptors: evidence for cryptic EGF receptors in embryonal carcinoma cells. Development 100, 351-363 (1987). Rossi, S., et al. Rabbit monoclonal antibodies: a comparative study between a novel category of immunoreagents and the corresponding mouse monoclonal antibodies. Am J Clin Pathol 124, 295-302 (2005). Huang, Z., Zhu, W., Meng, Y. & Xia, H. Development of new rabbit monoclonal antibody to progesterone receptor (Clone SP2): no heat pretreatment but effective for paraffin section immunohistochemistry. Appl Immunohistochem Mol Morphol 14, 229-233 (2006). Mage, R.G., Lanning, D. & Knight, K.L. B cell and antibody repertoire development in rabbits: the requirement of gut-associated lymphoid tissues. Dev Comp Immunol 30, 137-153 (2006). Tao, G.Z., et al. Bispecific and human disease-related anti-keratin rabbit monoclonal antibodies. Exp Cell Res 312, 411-422 (2006). Zhu, W. & Yu, G.-L. Rabbit hybridoma. Therapeutic Monoclonal Antibodies: From Bench to Clinic (Zhiqiang An (Editor)) Hoboken, New Jersey: John Wiley & Sons(2009). Krause, R.M. The search for antibodies with molecular uniformity. Adv Immunol 12, 1-56 (1970). Bystryn, J.C., Jacobsen, J.S., Liu, P. & Heaney-Kieras, J. Comparison of cell-surface human melanoma-associated antigens identified by rabbit and murine antibodies. Hybridoma 1, 465-472 (1982). Norrby, E., Mufson, M.A., Alexander, H., Houghten, R.A. & Lerner, R.A. Site-directed serology with synthetic peptides representing the large glycoprotein G of respiratory syncytial virus. Proc Natl Acad Sci U S A 84, 6572-6576 (1987). Raybould, T.J. & Takahashi, M. Production of stable rabbit-mouse hybridomas that secrete rabbit mAb of defined specificity. Science 240, 1788-1790 (1988). Feng, L., Wang, X. & Jin, H. Rabbit monoclonal antibody: potential application in cancer therapy. Am J Transl Res 3, 269-274 (2011). Jin, A., et al. Rapid isolation of antigen-specific antibody-secreting cells using a chip-based immunospot array. Nat Protoc 6, 668-676 (2011). Jin, A., et al. A rapid and efficient single-cell manipulation method for screening antigen-specific antibody-secreting cells from human peripheral blood. Nature medicine 15, 1088-1092 (2009).
ウサギ抗体は、概して親和性および特異性が高く、他の動物において免疫原性に乏しい多くの抗原に対して免疫応答が起こり、抗体を産生することが知られている。ウサギモノクローナル抗体を包括的かつ迅速に産生するためのシステムが切望されている。
本発明者らは、今般、ISAACシステムを適用して抗原特異的抗体を分泌する単一のウサギプライマリーB細胞を検出可能なことを見出した。さらに、ウサギ-ISAACシステムにより、高い結合親和性を有する、およびリン酸部位に特異的なRaMoAbを産生する抗原特異的ASCに関する新規スクリーニングシステムを確立した。
本発明は、以下を提供する:
[1] アミノ酸が修飾された抗原の修飾部位に特異的な抗体を産生する細胞の特定方法であって:
(1) 基体の一方の主表面に複数のウェルを有し、ウェルは1つの細胞のみが入る大きさであり、前記ウェルの周辺の前記主表面の少なくとも一部に抗体と結合性を有する物質の被覆層を有するマイクロウェルアレイの少なくとも一部のウェルに、被検体細胞を培養液とともに格納し;
(2) 前記被覆層およびウェルを培養液に浸漬して、被検体細胞より培養液中に産生された抗体がウェルから前記被覆層への拡散が可能な状態で被検体細胞を培養して、産生された抗体を被覆層の物質と結合させ;
(3) 結合した抗体に、前記抗原であって修飾されていない非修飾抗原を供与することにより、非修飾抗原に結合する抗体をブロックした後に、修飾された抗原をさらに供与し;
(4) 修飾された抗原と結合した抗体を検出して、その抗体を産生する細胞を、修飾部位に特異的な抗体を産生する細胞として、特定する
工程を含む、方法。
[2] 被検体細胞が、リン酸化された抗原により免疫されたウサギ個体から回収したB細胞であり、リン酸化部位に特異的なウサギモノクローナル抗体を産生する細胞を取得するための、[1]に記載の方法。
[3] ウサギ個体の免疫から、細胞の特定までを、7日以内に終了する、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 被覆層の物質が、抗体である、[1]〜[3]のいずれか一に記載の方法。
[5] 工程(3)で供与されるリン酸化された抗原が、ビオチン標識されており、工程(4)における検出が、標識物質とストレプトアビジンとの複合体を用いて行われる、[1]〜[4]のいずれか一に記載の方法。
[6] 標識物質が、蛍光物質である、[5]に記載の方法。
[7] [1]〜[6]のいずれか一に記載の方法で特定された、細胞。
[8] 抗原に特異的な抗体を産生する細胞の特定方法であって:
(1) 基体の一方の主表面に複数のウェルを有し、ウェルは1つの細胞のみが入る大きさであり、前記ウェルの周辺の前記主表面の少なくとも一部に、抗原の被覆層を有するマイクロウェルアレイの少なくとも一部のウェルに、抗原で免疫された個体由来のB細胞を培養液とともに格納し;
(2) 前記被覆層およびウェルを培養液に浸漬して、B細胞より培養液中に産生された抗体がウェルから前記被覆層への拡散が可能な状態でB細胞を培養して、産生された抗体を被覆層の抗原と結合させ;
(3) 結合した産生抗体に、標識物質とIgG特異的抗体との複合体を供与し;
(4) 標識物質によって提示されるウェル周辺のスポットのサイズに基づいて細胞を特定する
工程を含む、方法。
[9] B細胞が、ウサギ由来である、[8]に記載の方法。
[10] ウェル周辺のスポットのサイズが小さい場合に、抗原に高い結合親和性を有する抗体であると特定する、[8]または[9]に記載の方法。
[11] [8]〜[10]のいずれか一に定義された工程を含み、特定された細胞から得られた遺伝物質を利用して形質転換された、組換えウサギモノクローナル抗体を産生する細胞。
本発明により、モノクローナル抗体(MoAb)の産生のための新規スクリーニングシステムが提供される。
本発明により提供される新規スクリーニングシステムは、高い結合親和性(10-10〜10-12M)を有するウサギモノクローナル抗体(RaMoAb)を産生することができる抗体分泌細胞(ASC)を、包括的かつ迅速にスクリーニングすることができる。従来のウサギハイブリドーマ法では、RaMoAbの安定した産生のためには、リンパ球の調製後、おおよそ5〜6ヶ月かかるのに対し、本発明によれば、リンパ球の調製後、わずか7日で目的を達成しうる。
ウサギISAACはpM未満の濃度でタンパク質を検出することができる高親和性抗体を提供することができる。現在のELISA法は、典型的にはpM(pmol/L)以上の濃度のタンパク質が検出できるが(Giljohann, D.A. & Mirkin, C.A. Drivers of biodiagnostic development. Nature 462, 461-464 (2009))、本発明によれば、より高感度な検出を可能とする超高親和性抗体が得られうる。
本発明により、エピトープの微妙な変化、または修飾されたエピトープ、例えばペプチド鎖を構成するアミノ酸が修飾された部分を認識する抗体を産生する細胞をスクリーニングすることができる。アミノ酸の修飾には、リン酸化、アセチル化、メチル化、シトルリン化、ADPリボシル化等が含まれる。修飾される個数は、1個であってもよく、複数であってもよいが、本発明により、特定の修飾部分を認識する抗体を産生する細胞をスクリーニングすることができる。実際に本発明のウサギ-ISAACシステムにより、リン酸化特異的エピトープに対する抗体を得ることができた。
リン酸化部位に対して特異的な抗体の獲得効率は、注目に値する。本発明のブロッキングプロトコルを用いることにより、獲得効率は著しく増大しうる(非ブロッキングプロトコルでは、獲得効率はわずか10%未満であるのに対し、ブロッキングプロトコルでは90%を超えうる。)。また、従来のハイブリドーマ法では、研究者はセミクローニングの後にリン酸化特異的エピトープの特異性を調べるので、おそらく90%を超えるハイブリドーマクローンについての作業が、目的外の結果となるであろう。このような、リン酸化エピトープに対する抗体スクリーニングにおける無駄な仕事は、本発明により軽減されうる。
本発明のISAACシステムにより、ハイスループットな様式で、有用な抗原特異的RaMoAbを産生できる。実際に、本発明により得られたリン酸化TAK1ペプチド特異的RaMoAbは、TNF-αにより誘導される内在性のTAK1のリン酸化を検出することができた。なお、市販の抗体はそれを検出することができなかった
本発明により、高親和性抗体を産生するASCを、イムノスポットのサイズを基準に、簡易・迅速にスクリーニングすることができる。本発明者らは、高親和性抗体のイムノスポットは、低親和性抗体のイムノスポットと比較して、より小さいD1/2値を有することを見出した。
ウサギ−ISAAC系によるIgG分泌細胞の検出。ウサギIgG+細胞をマイクロウェルアレイチップ上に配列した。個々の細胞から分泌された抗体(IgG)に関するイムノスポットが検出された(上)。次いで細胞をOregon Greenで染色した(中)。抗体のイムノスポットおよび細胞シグナルを組み合わせた(下)。矢印はIgG分泌細胞を示す。 ウサギ−ISAACシステムによる抗原特異的抗体を分泌する単一のウサギB細胞の検出。(A)免疫処置のプロトコル。フロイントの完全アジュバンドと抗原(HELもしくはKLHコンジュゲートリン酸化TAK1ペプチド(pTAK1-ペプチド))のカクテルを作製し、ウサギの皮下に注射した。初回免疫の2、4、6週後にフロイントの不完全アジュバンドと抗原のカクテルを作製し、同様に皮下に注射した。最終免疫の1週後にウサギを屠殺した。ウサギIgG+細胞をAutoMACS(Miltenyi Biotec GmbH, ドイツ)を用いて選別し、IgG+細胞画分をフローサイトメトリーで分析した(左下チャート)。プロット中の数は、ゲート中の細胞(IgG+細胞)の百分率を示す。(B)ISAACによる、HELで免疫したウサギから調製したPBL中の単一のHEL特異的ASCの検出。HEL(左上)またはBSA(右上、陰性対照)でコートしたチップを用いて、抗体の分泌を検出した。細胞をOregon Greenで染色した(中)。イムノスポットおよび細胞シグナルを組み合わせた(下)。矢印はHEL特異的ASCを示す。(C)単一ウサギリンパ球からの抗体cDNAの増幅。チップより回収した単一のウサギリンパ球より抗体重鎖(H鎖)および軽鎖(L鎖)の可変領域のcDNA(VH, VL)を単一細胞5'-RACE法により増幅した。14個中12個の細胞よりVHとVLのペアが増幅した。(D)HEL特異的RaMoAbの取得。取得したVHおよびVL cDNAをH鎖およびL鎖の発現ベクターにそれぞれ組み込み、CHO細胞に遺伝子導入し、抗体タンパク質を産生させた。培養上清中に分泌されRaMoAbの抗原特異性をHELをコートしたプレートを用いたELISAにて試験した。上清中に可溶性のHELを加えることで、プレートにコートしたHELへの抗体の結合が競合阻害されることから、HEL特異的RaMoAbが得られていることが確認された。 ISAACおよびELISPOTの検出効率の比較。抗原特異的ASCを、標識したHELを用いて、ISAACまたはELISPOTアッセイのどちらかにより検出した。陰性対照として、ASCをBSAを用いて分析した。おおよそウェルあたり100,000個およびチップあたり30,000個のウサギIgG+細胞をELISPOTおよびISAACによりそれぞれ分析した。Y軸は検出されたIgG、HEL、またはBSA特異的ASCの頻度を示す。データは2回の独立した実験の平均±標準偏差を表す。 HEL特異的RaMoAbに関する親和性の決定。様々な濃度(0.2、1、または10nM)のHEL特異的モノクローナル抗体を、0.3〜1,000nMのHELと共に4℃で一夜、平衡に達するまで保温した。次いで、平衡状態でHELに結合せず残っている遊離の抗体の濃度を、HELでコートした96ウェルプレートを用いてELISAにより測定した。X軸はHELの濃度(nM)を示し、Y軸は405nmの吸光度を示す。データは類似の結果を有する少なくとも2回の独立した実験の代表的なものである。これらのデータをスキャッチャードプロットを用いる解離定数(KD)の決定のために用いた。 高い親和性を有するRaMoAbを分泌するウサギリンパ球のISAACを用いた検出。(A)高い、および低い親和性を有する、分泌された抗体の代表的なISAACイムノスポット。(B)ISAACイムノスポットの蛍光強度の減衰曲線。個々のASCのイムノスポットに関する蛍光強度(y軸)を、距離(x軸)に対してプロットした。I1/2は、最大値の半分の蛍光強度を示す。D1/2は、I1/2の距離を示す。(C)D1/2およびKD値の関係。log(KD)(y軸)を個々のASCに関するD1/2(x軸)に対してプロットした。点線は、D1/2=60を示す。バーは、D1/2<60である抗体群またはD1/2>60である抗体群のそれぞれのKD値の平均を示す。スチューデントのt検定を用いてP値を決定した。(D)D1/2<60とD1/2>60についての、KD値と抗体頻度。各弧は、示したKD値を有する抗体の頻度を示す。円グラフの中心にある数は、分析した抗体の総数を示す。フィッシャーのt検定を用いてP値を決定した。 リン酸化TAK1ペプチド特異的ASCのリン酸化部位特異的抗体を検出するための図式的な工程。(A)ブロッキングなしの場合の手順。a)リン酸化部位非特異的な抗体の場合、およびb)リン酸化部位に特異的な抗体の場合とも、ビオチン標識リン酸化TAK1ペプチドに結合してシグナルが検出される。(B)ブロッキングありの場合の手順。マイクロウェルアレイは、あらかじめTAK1-ペプチドで処理され、次いでビオチン標識リン酸化TAK1ペプチドで処理される。a) リン酸化部位非特異的な抗体の場合、TAK1-ペプチドの非リン酸化部位が抗体へ結合する。その結果、ビオチン標識リン酸化TAK1ペプチドは結合することができず、シグナルは検出されない。b) リン酸化部位に特異的な抗体の場合、TAK1-ぺプチドはリン酸化部位を特異的に認識する抗体には結合しない。その結果、ビオチン標識リン酸化TAK1ペプチドが結合し、シグナルが検出される。(C) ブロッキング有りの手順、または無しの手順におけるリン酸化ペプチド特異的抗体取得の効果。各弧はRaMoAbの頻度を表す。濃灰リン酸化ペプチド特異的抗体の割合、薄灰は非リン酸化ペプチド特異的な抗体の割合を表す。ブロッキングなし(左)、ブロッキング有り(右)。円グラフの中心にある数は、分析した抗体の数を示す。フィッシャーのt検定を用いてP値を決定した。 リン酸化TAK1ペプチド特異的RaMoAbに関する親和性の決定。様々な濃度のリン酸化TAK1ペプチドと様々な濃度のリン酸化TAK1ペプチド特異的RaMoAbを、共に4℃で一夜、平衡に達するまで保温した。次いで、平衡状態でリン酸化TAK1ペプチドに結合せず残っている遊離の抗体の濃度を、リン酸化TAK1ペプチドでコートした96ウェルプレートを用いてELISAにより測定した。X軸はリン酸化TAK1ペプチドの濃度(nM)を示し、Y軸は405nmの吸光度を示す。データは類似の結果を有する少なくとも2回の独立した実験の代表的なものである。これらのデータをスキャッチャードプロットを用いる解離定数(KD)の決定のために用いた。 ISAACを用いたシステムで得られたpTAK1特異的RaMoAbの特徴。(A)イムノブロットにおける、pTAK1特異的RaMoAbのリン酸化されたTAK1タンパク質への結合。FLAGタグ付き野生型(WT)TAK1発現プラスミドまたはリン酸化部位を置換した変異体(T187A)の発現プラスミドを、HAタグ付きTAB1発現プラスミドと一緒にHeLa細胞に、遺伝子移入した。細胞内でTAB1タンパク質が発現することで、TAK1タンパク質がリン酸化される。全細胞溶解物をSDS−PAGEにより分離し、ISAACシステムで得られた抗体Ra_pTAK01、04、05、06、14、19、21、23、pTAK1特異的抗体またはTAB1特異的抗体を用いてイムノブロットした。(B)リン酸化された内在性のTAK1の、pTAK1特異的RaMoAbによる検出。HeLa細胞を、20ng/ml TNF−αで、表示した期間の間、刺激した。TNF-α刺激により内在性のTAK1タンパク質のリン酸化が誘導される。全細胞溶解物をSDS−PAGEにより分離し、Ra_pTAK23抗体、市販のpTAK1特異的抗体、またはTAK1特異的抗体を用いてイムノブロットした。 ELISA法における、非リン酸化ペプチドによる処理の影響。リン酸化ペプチド特異的抗体を検出するためのELISA法において、ISAAC法で有効であった事前の非リン酸化ペプチドによるブロッキングを試みた。ELISA法においては、非リン酸化ペプチドによる処理による効果がみられなかった。 ウサギおよびマウスのHEL特異的抗体を用いたHELの検出限界(LOD)。100pMから0.1nMまでの範囲のビオチン標識HELを用いて、得られた抗体の中で最も高い親和性を示したウサギまたはマウスのHEL特異的抗体を用い、HELの検出限界を調べた。ウサギ(Ra_HEL01;KD 2.63×10-12M)(左)およびマウス(KD 3.71×10-10M)(右)のHEL特異的抗体のLODは、それぞれ0.4pMおよび10pMであった。LODは、バックグラウンドシグナル+バックグラウンドシグナルの3標準偏差に等しいシグナルから濃度を外挿することにより決定した。点線はそれぞれのLODを示す。データは類似の結果を有する3回の独立した実験の代表的なものである。
本発明は、ISAAC法を用いたモノクローナル抗体の調製に関する。
本発明はまた、ウサギ-ISAAC法を初めて提供するものでもある。ウサギ-ISAACシステムによれば、ウサギPBLから、ハイブリドーマの調製や細胞培養等の工程を経ず、直接的に、抗原特異的RaMoAbを得ることができる。さらに、本発明者らの検討によると、本システムにより特定されたIgG+細胞から得た特異的抗体のcDNAは、単一のIGVH1遺伝子を優先的に用いており、またVHDJH遺伝子再構成のJHの大部分はJH4を用いているとの結果が得られた。この結果は、単一細胞レベルでウサギ-ISAACシステムによるプライマリーウサギASCの分析から得られた抗体レパートリーが、従来のハイブリドーマ法で得られた抗体レパートリーと一致していることを示している。本発明のウサギ-ISAACシステムにより得られるモノクローナル抗体の高い親和性も確認されており、ウサギ-ISAAC法は、例えば10-11〜10-12Mの親和性を有するRaMoAbを、包括的かつ迅速に産生することができるものである。
本発明は、次に述べるように、リン酸化された抗原に特異的な抗体とその産生細胞を得るために特に有用であるが、本発明は、様々な抗体とその産生細胞を得るためにも利用できる。そのような抗体には、アミノ酸が修飾された抗原(アミノ酸の修飾には、リン酸化、アセチル化、メチル化、シトルリン化、ADPリボシル化等が含まれる。)を認識する抗体が含まれる。以下では、リン酸化された抗原に特異的な抗体およびその産生細胞を例に説明することがあるが、特に記載した場合を除き、その説明は他の抗体および抗体産生細胞にも当てはまる。
I. リン酸化部位に特異的な抗体を産生する細胞の特定方法:
本発明は、リン酸化された抗原のリン酸化部位に特異的な抗体を産生する細胞の特定方法を提供する。本発明のリン酸化部位に特異的な抗体を産生する細胞の特定方法は、下記の工程を含む。
(1) 基体の一方の主表面に複数のウェルを有し、ウェルは1つの細胞のみが入る大きさであり、前記ウェルの周辺の前記主表面の少なくとも一部に抗体と結合性を有する物質の被覆層を有するマイクロウェルアレイの少なくとも一部のウェルに、被検体細胞を培養液とともに格納し;
(2) 前記被覆層およびウェルを培養液に浸漬して、被検体細胞より培養液中に産生された抗体がウェルから前記被覆層への拡散が可能な状態で被検体細胞を培養して、産生された抗体を被覆層の物質と結合させ;
(3) 結合した抗体に、前記抗原であってリン酸化されていない非リン酸化抗原を供与することにより、非リン酸化抗原に結合する抗体をブロックした後に、リン酸化された抗原をさらに供与し;
(4) リン酸化抗原と結合した抗体を検出して、その抗体を産生する細胞を、リン酸化部位に特異的な抗体を産生する細胞として、特定する。
工程(1)は、マイクロウェルアレイに、被検体細胞を播種する工程である。本発明には、マイクロウェルアレイとして、前掲特許文献1および前掲非特許文献12および13に詳細に記載されたものと同じものを用いることができる。また、当業者であれば、これらの文献を参照し、本発明のためのマイクロウェルアレイを適宜設計できる。本発明に用いることのできるマイクロウェルアレイは、典型的には多数のマイクロウェルを配したチップであり、具体的には次のようなものである。
基体の一方の主表面に複数のウェルを有し、ウェルは1つの細胞のみが入る大きさである。複数個のマイクロウェルは、同一形状として、同一間隔で縦横に配置することができる。マイクロウェルの形状は、例えば、円筒形、六角柱であり、円筒形の場合、その寸法は、例えば、直径3〜100μmであることができ、好ましくは4〜15μmである。また、深さは、例えば、3〜100μmであることができ、好ましくは4〜40μmである。1つのマイクロウェルアレイチップが有するマイクロウェルの数は、特に制限はないが、抗原特異的リンパ球の頻度が105個に1個から多い場合には約500個であるという観点から、1cm2当たり、例えば、2,000〜1,000,000個の範囲であることができる。またマイクロウェルアレイは、少なくとも前記ウェルの周辺の前記主表面の少なくとも一部に、前記ウェルに格納される細胞の少なくとも一部が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質の被覆層を有する。マイクロウェルアレイの素材は、例えばシリコン(Si)である。マイクロウェルアレイの素材は、樹脂でもよい。素材は表面処理されていてもよい。なお本明細書で「X〜Y」で範囲を表すときは、その範囲には、それぞれの両端の値XおよびYも含まれる。
本発明において、ウェルに格納される細胞(被検体細胞)は、リン酸化された抗原のリン酸化部位に特異的な抗体を産生する細胞(B細胞)を含む細胞群である。生体から、B細胞を含む末梢血リンパ球群(PBL)を得るための手段は当業者にはよく知られている。PBLからさらにB細胞を分離・純化して、本発明へ適用してもよい。B細胞の分離・純化方法もまた、当業者にはよく知られている。本発明に適用される被検体細胞は、ヒトも含め、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、マウスなどあらゆる動物種由来のものであり得る。特に好ましく適用できる細胞の例は、リン酸化された抗原により免疫されたウサギ個体から回収したB細胞である。
目的の抗原による動物の免疫は、通常の方法にしたがうことができる。必要に応じ、完全フロイントアジュバントまたは不完全フロイントアジュバントを用い、適宜、追加免疫操作を行う。免疫開始から数週間経過後、ウサギから末梢血リンパ球を分離することができる。マイクロウェルアレイチップに播種する際、細胞は、適切な培養液に、0.5〜10× 106 cells/mL程度の密度に懸濁するとよい。
さらに本発明に用いられるマイクロウェルアレイは、少なくとも前記ウェルの周辺の前記主表面の少なくとも一部に、前記ウェルに格納されるB細胞が産生する抗体と結合性を有する物質の被覆層を有する。結合性を有する物質は、典型的には、抗免疫グロブリン抗体である。
結合性物質の被覆層の形成は、基板の被覆層を形成する主表面を、結合性物質と主表面との結合性を確保するために、例えば、シランカップリング剤で表面処理し、次いで、結合性物質を含有する溶液を、シランカップリング剤処理した表面に適用することで形成できる。表面処理は、シランカップリング剤処理に限られず、タンパク質等からなる結合性物質と無機材料(例えば、シリコン材料)あるいは有機材料(例えば、ポリマー材料)からなる基板表面との結合を促進する物質であれば適宜選択して用いることができる。細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質の被覆層を有さない前記主表面の少なくとも一部は、適切なブロッキング剤でコートしてもよい。
本発明の工程(2)は、前記被覆層およびウェルを培養液に浸漬して、被検体細胞より培養液中に産生された抗体がウェルから前記被覆層への拡散が可能な状態で被検体細胞を培養して、産生された抗体を被覆層の物質と結合させる工程である。培養によって細胞が抗体を産生し、産生された抗体が培養液に放出され、ウェル内部からウェル周辺の被覆層に拡散する。拡散し、被覆層に到達した産生抗体は、被覆層を構成する結合性物質と結合する。抗体を産生しない細胞を格納したウェル周辺の被覆層では産生物質と結合性物質との結合は生じない。
培養条件は、適宜決定でき、培養時間は、被覆層を構成する結合性物質と結合した産生物質の量が、検出可能なレベルになるように適宜決定できる。尚、培養時間が長くなりすぎると、産生物質が広く拡散しすぎて、産生物質を産生する細胞を格納したウェルの特定が困難になる場合があるので、培養時間は、産生物質を産生する細胞を格納したウェルの特定が容易に行なえる範囲で適宜決定することが好ましい。ウサギ由来の抗体産生細胞を用いる場合、培養は、典型的には、30〜40℃で、1〜6時間行うことができ、より特定された条件として、37℃における3時間の培養を例示することができる。
本発明の工程(3)は、結合した抗体に、前記抗原であってリン酸化されていない非リン酸化抗原を供与することにより、非リン酸化抗原に結合する抗体をブロックした後に、リン酸化された抗原をさらに供与する工程である。
この工程では、産生され、アレイ表面の結合性物質にトラップされた抗体に対して、まず非リン酸化抗原を供与する。これにより、抗原のうちの非リン酸化部分に結合する抗体がブロックされる。次いで、リン酸化抗原を供与する。この2段階の供与により、リン酸化部位に特異的な抗体が、非リン酸化抗原には結合しないがリン酸化抗原に結合する抗体として、特定できる。
本発明者らの検討によると、本発明のウサギ-ISAACシステムによるリン酸化部位に特異的な抗体の獲得効率は注目に値する。非ブロッキングプロトコルでは、獲得効率はわずか10%未満であった。それに対し、ブロッキングプロトコルでは、効率は著しく増大した(90%を超える)。また、本発明者らの検討によると、この非リン酸化抗原によるブロッキング処理は、ELISAに代表される従来のシステムにおいては有効ではなかった(本明細書の実施例の項の参考実験1および図5参照。)。リン酸化部位に特異的な抗体を特定しようとする場合、一般には、非特異的シグナルが出やすいと考えられる。そして非特異的シグナルを抑えるための有効な手段の開発が困難であるように思われる。
工程(3)におけるブロッキング処理では、適切な培地または緩衝液に、ブロッキング剤としての非リン酸化抗原を溶解して用いることができる。処理のための条件は、当業者であれば適宜設計できるが、典型的には次のようにして行う。0.1〜1000μg/ml、好ましくは、1〜100μg/ml、より好ましくは5〜50μg/mlの濃度の非リン酸化抗原溶液を、アレイに供与し、0.1〜16時間、好ましくは0.2〜4時間、より好ましくは0.25〜2時間、必用に応じて30〜40℃に保温する。
工程(3)におけるブロッキングに続く処理では、適切な培地または緩衝液に、リン酸化抗原を溶解して用いることができる。この処理のための条件は、当業者であれば適宜設計できるが、典型的には次のようにして行う。0.1〜1000μg/ml、好ましくは、1〜100μg/ml、より好ましくは5〜50μg/mlの濃度のリン酸化抗原溶液を、アレイに供与し、0.1〜16時間、好ましくは0.2〜4時間、より好ましくは0.25〜2時間、必用に応じて30〜40℃に保温する。
ここで用いられるリン酸化抗原は、続く工程(4)で検出可能なように、ビオチンのようなタグが付されているか、または標識化されているとよい。
工程(3)により、ウェル中の細胞が産生する抗体が、非リン酸化抗原に結合性のものであれば、ウェル周囲にトラップされたその抗体には非リン酸化抗原が結合し、一方、ウェル中の細胞が産生する抗体がリン酸化抗原に特異的なのものであれば、ウェル周囲にトラップされたその抗体にはタグ化または標識化されたリン酸化抗原が結合することとなる。
本発明においては、上述したように、典型的には抗体と結合性を有する物質として抗免疫グロブリン抗体を用い、工程(1)〜(3)をこの順で実施するものであるが、抗体と結合性を有する物質としては、抗原を用いることもできる。この場合、実施のためのマイクロウェルアレイは、ウェル周辺の主表面に抗原の被覆層を有し、そしてブロッキングは、(1)の工程において用いられる培養液中に非リン酸化抗原を含ませることにより、実施される。より詳細には、下記の工程を含む方法により、実施される:
(1) 基体の一方の主表面に複数のウェルを有し、ウェルは1つの細胞のみが入る大きさであり、前記ウェルの周辺の前記主表面の少なくとも一部にリン酸化抗原の被覆層を有するマイクロウェルアレイの少なくとも一部のウェルに、被検体細胞を培養液とともに格納するが、このとき培養液が前記抗原であってリン酸化されていない非リン酸化抗原を含み、
(2) 前記被覆層およびウェルを培養液に浸漬して、被検体細胞より培養液中に産生された抗体がウェルから前記被覆層への拡散が可能な状態で被検体細胞を培養するが、このとき非リン酸化抗原に結合する抗体は前記非リン酸化抗原によりブロックされ、ブロックされない抗体を被覆層のリン酸化抗原と結合させ;
(3) リン酸化抗原と結合した抗体を検出して、その抗体を産生する細胞を、リン酸化部位に特異的な抗体を産生する細胞として、特定する。
本発明の工程(4)は、リン酸化抗原と結合した抗体を検出して、その抗体を産生する細胞を、リン酸化部位に特異的な抗体を産生する細胞として、特定する工程である。工程(3)においてビオチン標識抗原を用いた場合、検出は、標識物質とストレプトアビジンとの複合体を用いて行うことができる。この処理のための条件は、当業者であれば適宜設計できるが、典型的には次のようにして行う。0.1〜1000μg/ml、好ましくは、1〜100μg/ml、より好ましくは5〜50μg/mlの濃度の複合体溶液を、アレイに供与し、0.1〜16時間、好ましくは0.2〜4時間、より好ましくは0.25〜2時間、必用に応じて30〜40℃に保温する。
ストレプトアビジンと複合体化される標識物質としては、免疫染色や多重染色において使用される種々のものを適用できる。例えば、蛍光物質である、AMCA、Alexa Fluor 350、Marina Blue、Cascade Blue、Cascade Yellow、Pacific Blue、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 488、Qdot(R)605、FITC、PE/RD1、ECD/PE-TexasRed、PC5/SPRD/PE-Cy5、PC5.5/PE-Cy5.5、PE Alexa Fluor 750、PC7/PE-Cy7、TRITC、Cy3、Texas Red、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 700、Cy5、Cy5.5、APC、APC7/APC-Cy7、APC Alexa Fluor750が適用できる。
本発明の方法においては、ウェル内の細胞により産生された抗体がウェル周辺の被覆層に拡散し、被覆層に到達して被覆層を構成する結合性物質にトラップされ、トラップされた抗体がリン酸化部位に特異的な抗体であれば、検出可能なリン酸化抗原に結合し、このリン酸化抗原を検出する。一方、抗体を産生しないか、または非リン酸化抗原に結合性の抗体を産生する細胞のウェル周辺には、検出可能なリン酸化抗原との結合は生じず、したがって、標識物質の結合もなく、標識物質の検出はない。
標識物質が蛍光標識である場合、検出は、蛍光顕微鏡や、蛍光イメージスキャナー、イメージリーダ等を用いることができる。
本発明者らの検討によると、本発明により得られたリン酸化TAK1ペプチド特異的ウサギモノクローナル抗体は、親和性が比較的低いにも関わらず、内在性のTAK1のTNF-αに誘導されるリン酸化を検出することができた(実施例参照)。一方、市販の抗体(親和性不明)はそれを検出することができなかった。本発明のウサギ-ISAACシステムは、高い機能を有するリン酸化ペプチド特異的RaMoAbのパネルを、約1週間で調製することを可能にする。
II. 抗原に対して高い親和性を有する抗体を産生する細胞の特定方法:
本発明はまた、抗原に対して高い親和性を有する抗体を産生する細胞の特定方法を提供する。この方法は、下記の工程を含む:
(1) 基体の一方の主表面に複数のウェルを有し、ウェルは1つの細胞のみが入る大きさであり、前記ウェルの周辺の前記主表面の少なくとも一部に、抗原の被覆層を有するマイクロウェルアレイの少なくとも一部のウェルに、抗原で免疫された個体由来のB細胞を培養液とともに格納し;
(2) 前記被覆層およびウェルを培養液に浸漬して、B細胞より培養液中に産生された抗体がウェルから前記被覆層への拡散が可能な状態でB細胞を培養して、産生された抗体を被覆層の抗原と結合させ;
(3) 結合した産生抗体に、標識物質とIgG特異的抗体との複合体を供与し;
(4) 標識物質によって提示されるアレイ周辺のスポットのサイズに基づいて細胞を特定する。
ISAAC法においては、ウェル内の細胞により産生された抗原に特異的な抗体がウェル周辺の被覆層に拡散し、被覆層に到達して被覆層を構成する抗原にトラップされる。トラップされた抗体の抗原への親和性が高ければ、抗体は直ちに抗原へ結合し、ウェル周辺から遠くへ拡散することができない。したがって、高い結合親和性を有する抗体のISAACイムノスポットは、低い結合親和性を有する抗体のISAACイムノスポットと比較してより小さい。すなわち、より小さいイムノスポットを有する細胞を回収することにより高い親和性を有する抗原特異的抗体産生細胞を選択できる。
指標となるスポットの大きさとして、蛍光強度が最大強度の半分になる距離(D1/2)を算出して用いてもよい。具体的には、適切な機器を用いて各ウェル周りの蛍光強度を測定し、ウェルの端からの距離に対して、蛍光強度をプロットし、蛍光強度の減衰曲線得る。そして、蛍光強度が最大強度の半分になる距離(蛍光強度半減距離、half-distance fluorescence intensity, D1/2)を、減衰曲線から決定することができる。
本発明者らの検討によると、本発明の方法により、10-10Mより小さいKDを有する抗体と10-10Mより大きいKDを有する抗体とを区別して特定することができる。なお、本発明で抗体の親和性に関し、「KD」を表す場合は、溶液中の抗体-抗原平衡(Ab+Ag ⇔ AbAg)の条件下での、抗体の親和性を表す値であり、このKD値の決定方法は、当業者にはよく知られている。
本発明のこの方法に適用されるB細胞は、ヒトも含め、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、マウスなどあらゆる動物種由来のものであり得る。特に好ましく適用できる細胞の例は、リン酸化された抗原により免疫されたウサギ個体から回収したB細胞である。
III. 他の事項:
本発明の方法においては、いずれの場合も、工程の前、後、または途中おいて、不要な溶液を除去する工程、基板またはウェルを洗浄する工程を追加することができる。
本発明は、上記の本発明の方法で特定した細胞をウェルから回収することを含む、細胞の製造方法も提供する。個々のウェルからの目的細胞の回収は、例えば蛍光顕微鏡下で毛細管(キャピラリー)を取り付けたマイクロマニピュレーターを用いて行うことができる。回収した細胞は、培養、分析等、あらゆる目的に供することができる。本発明は、さらに、特定し、回収した細胞から、種々の遺伝情報を回収し、利用して(例えば、リン酸化抗原特異的免疫グロブリン遺伝子のmRNAを回収し、cDNAを調製し、得られたcDNAを利用して)、組換え抗体、および組換え抗体産生細胞を調製する方法も提供する。
本発明により、抗原特異的ウサギモノクローナル抗体産生のためのシステムが提供される。ウサギモノクローナル抗体は、その高い特異性および高い親和性のため、実験室での研究においてだけでなく臨床適用にも有用である。多くの研究者が、包括的かつ迅速なウサギモノクローナル抗体産生システムの確立を長い間望んできた。本発明は、チップイムノスポットアッセイの技術によるウサギプライマリーB細胞を用いる新規RaMoAb産生システムを提供するものである。このシステムによれば、免疫したウサギから末梢血リンパ球を得て、そのわずか7日以内に、10-12Mの高い結合親和性を有する抗原特異的ウサギモノクローナル抗体およびその産生細胞を特定することが可能となる。本発明のシステムは、迅速に、効率よく、高い結合親和性を有するウサギモノクローナル抗体およびリン酸化部位に特異的な抗体産生を可能とする。本発明のシステムは、ウサギモノクローナル抗体の産生における新時代をもたらし、それは様々な疾患に関する診断および療法に貢献する可能性がある。
〔ISAAC法を用いたウサギ抗体の調製〕
[材料および方法]
抗原およびペプチド
鶏卵リゾチーム(HEL;Sigma)、ウシ血清アルブミン(BSA;Wako)、ヒトTGF-β活性化キナーゼ1(TAK1)ペプチド(pTAK1-pep,DIQTHMNNKGSAA(配列番号1);Operon Biotechnologies)、TAK1のThr-187においてリン酸化されたペプチド(pTAK1-pep,DIQTHM(pT)NNKGSAA;Operon Biotechnologies)、ビオチン標識リン酸化TAK1ペプチド(DIQTHM(pT)NNKGSAAK-ビオチン;Operon Biotechnologies)、およびKLHコンジュゲートリン酸化TAK1ペプチド(Operon Biotechnologies)を用いた。なお、実施例の項および関連する記載を通じ、リン酸化TAK1ペプチドを「pTAK1-ペプチド」ということがある。
ウサギの免疫および細胞の調製
ウサギの実験は、富山大学の動物実験委員会により承認された。12〜13週齢のニュージーランドホワイトウサギ(Sankyo Lab)を、500μgの完全フロイントアジュバント(CFA,Millipore)中のHEL(Sigma)またはリン酸化TAK1ペプチドのKLHコンジュゲートで皮下免疫した。一次免疫の2、4、および6週間後に、そのウサギを500μgの不完全フロイントアジュバント(IFA,Millipore)中の一次免疫処置におけるものと同じ物質で皮下に追加免疫した。その最後の追加免疫の1週間後、末梢血リンパ球(PBL)を分離し、ウサギIgG+細胞を、ウサギIgG特異的抗体コンジュゲートマイクロビーズ(Miltenyi Biotec)により、autoMACS Proセパレーター(Miltenyi Biotec)を用いて、製造者の説明書にしたがって分離した。
マイクロウェルアレイチップによるウサギASCの検出
マイクロウェルアレイチップおよびISAAC法の詳細および説明は以前に記述された(前掲非特許文献12および13、ならびに文献25〜28)。簡潔には、そのチップの表面をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のHEL(10μg ml-1)でコートし、それを4℃で一夜保温した。その抗原溶液を除去した後、そのチップを0.01%のBiolipidure(NOF Corporation)で室温において15分間ブロッキングし、次いでそれを培地で洗浄した。次いで培地中の細胞をそのチップに配列し、ウェルの外側に残った細胞を穏やかな洗浄により除去した。そのチップ上の細胞を37℃で3時間培養した。穏やかに洗浄した後、そのチップ上に1.5μg ml-1のCy3コンジュゲートウサギIgG特異的抗体(Millipore)を添加し、それらを室温で30分間保温して抗原特異的IgG分泌を検出した。
一方、リン酸化TAK1ペプチド特異的IgG分泌を検出するためには、そのチップの表面をHELの代わりにウサギIgG特異的抗体(MP Biomedicals)(1μg ml-1)でコートすることにより、分泌されたIgGを捕捉した。チップ上での3時間の細胞培養の後、10μg ml-1のビオチン標識リン酸化TAK1ペプチドをそのチップに添加してそれらを30分間保温し、続いてCy3コンジュゲートストレプトアビジン(Sigma)を添加して30分間保温した。
場合により、10μg ml-1のTAK1-ペプチドをそのチップに添加してそれらを30分間保温した後、ビオチン標識リン酸化TAK1ペプチドを添加した。最後に、その細胞を1μM Oregon Green(Molecular Probes)を用いて室温で5分間染色した。単一の細胞から放出された抗原特異的抗体を蛍光顕微鏡(BX51WI,Olympus)の下で観察した。単一の抗原特異的ASCを個々のウェルから蛍光顕微鏡下で毛細管(Primetech)を取り付けたマイクロマニピュレーター(TransferMan NK2,Eppendorf)を用いて回収し、次いでそれらを逆転写のためにマイクロチューブに吐出した(前掲非特許文献12および13)。
抗体の産生
回収した細胞からのVHおよびVL断片に関する抗体のcDNAを、単一細胞5’-RACE法(前掲非特許文献13、ならびに文献14および15)を用いて増幅した。簡潔には、15U SuperScript(商標)III(Invitrogen)により、それぞれ0.25pmolのIgγ-RT(5’-GCGAGTAGAGGCCTGAGGAC-3’、配列番号2)およびIgκ-RT(5’-GATGCCAGTTGTTTGGGTGGT-3’、配列番号3)プライマー、1U RNase阻害剤(New England Biolabs)、0.5mMのそれぞれのdNTP、5mM DTT、0.2% Triton-X100、および1×1st strand cDNA緩衝液(Invitrogen)を用いて、55℃で1時間逆転写を実施した。cDNAの3’テイリング(3’-tailing)を、20U 末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(Roche)により、4mM MgCl2、0.5mM dGTP、50mM P-K緩衝液(25mM K2HPO4および25mM KH2PO4、pH7.0)および1U RNase阻害剤を用いて、37℃で1時間実施した。第1PCRを、dCアダプタープライマー(5’-AGCAGTAGCAGCAGTTCGATAACTTCGAATTCTGCAGTCGACGGTACCGCGGGCCCGGGATCCCCCCCCCCCCCDN-3’)(配列番号4)ならびにγ鎖およびκ鎖の定常領域(Igγ-1st:5’-CGAGTTCCAAGTCACGGTCA-3’ (配列番号5)およびIgκ-1st:5’-CTCCCAGGTGACGGTGACAT-3’ 、配列番号6)の混合物を用いて実施した。それぞれの産生物の増幅を、primeSTAR DNAポリメラーゼ(TaKaRa)を用いて、製造業者の説明書にしたがって実施した:30サイクルの、94℃で15秒間の変性、55℃で5秒間のアニーリング、および72℃で1分30秒間の伸長。次に、結果として得られたPCR産物を水で4倍希釈し、それぞれ2μlをネステッドPCRのために用いた。ネステッドPCRをアダプタープライマー(5’-AGCAGTAGCAGCAGTTCGATAA-3’)(配列番号7)およびγ鎖(Igγ-nest:5’-GCCTTTGACCAAGCAGCCCAA-3’)(配列番号8)またはκ鎖定常領域(Igκ-nest:5’-CGGGAAAGTATTTATTCGCCACA-3’)(配列番号9)に特異的なそれぞれのネステッドプライマーにより、primeSTAR DNAポリメラーゼを用いて実施した。そのPCR産物を、ウサギγまたはκ鎖に関する完全な定常領域cDNAを含有する発現ベクターの中に挿入した。その後、CHO-S細胞(Invitrogen)をその完全な抗体分子をコードするγ鎖およびκ鎖発現ベクター両方により、FreeStyle(商標)MAX CHO Expression System(Invitrogen)を用いて同時形質移入し、培養した細胞の上清を7日後に集め、次いでRaMoAbをプロテインGカラム(GE Healthcare)を用いて精製した。その組み換え抗体の抗原特異性をELISAにより調べ、その結果を可溶性抗原を抗体と一緒に添加することによる競合ELISAで確認した(前掲非特許文献13および文献26)。この研究において、IgGを分泌する細胞のみをISAACによりスクリーニングし、IgGを産生した。免疫グロブリン遺伝子のレパートリーを、IMGT/V-Questツール(http://www.imgt.org/)(文献29)により分析した。
酵素結合イムノスポットアッセイ
96ウェルフィルタープレート(MultiScreen,Millipore)をウェルあたり50μlの10μg ml-1HELでコートし、それらを培地でブロッキングした。次いで、おおよそ100,000個のウサギIgG+細胞をそれぞれのウェルに添加し、それらを37℃で24時間培養した。洗浄した後、アルカリホスファターゼコンジュゲートウサギIgG特異的抗体(Sigma)を添加し、続いて3-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ホスフェートトルイジンおよびp-ニトロブルーテトラゾリウムクロリド(Sigma)の混合物を添加してイムノスポットを検出した。陰性対照として、ウェルをBSAでコートした。
抗体親和性の決定
溶液中の抗体-抗原平衡(Ab+Ag ⇔ AbAg)の条件下で抗体の親和性(KD)を決定した(文献30および31)。簡潔には、まず様々な濃度(0.2、1、または10nM)のHEL特異的およびリン酸化TAK1ペプチド特異的モノクローナル抗体を、それぞれ0.3〜1,000nMのHELおよび1〜2,500nMのリン酸化TAK1ペプチドと共に4℃で一夜、平衡に達するまで保温した。次いで平衡状態で飽和せずに残っている遊離の抗体の濃度をELISAにより測定し、スキャッチャードプロット分析を用いてKDを計算した。この目的のため、96ウェルmaxisorp(商標)プレート(Nunc)を50μlウェル-1のPBS中5μg ml-1 HELまたは2.5μg ml-1 リン酸化TAK1ペプチドでコートし、次いでそれらをPBS中3%BSAでブロッキングした。洗浄した後、平衡状態にある抗原および抗体の混合物をそのプレートに添加し、それらを室温で1時間保温した。抗原により飽和していない抗体をアルカリホスファターゼコンジュゲートIgG特異的抗体およびp-ニトロフェニルホスフェートを用いることにより検出し、ELISAリーダーを用いて405nmの光学的吸光度を測定した。光学的吸光度から、抗原により飽和していない抗体の濃度[Abf]および抗体に結合していない抗原の濃度[Agf]を計算し、スキャッチャードプロット分析を用いてKDを決定した。
蛍光強度半減距離(half-distance fluorescence intensity)の測定
ISAACシグナルの蛍光強度半減距離(D1/2)を決定するため、ImageJソフトウェア(NIH)を用いてISAACイムノスポットのCy3の蛍光強度を測定した。Cy3強度の実測値およびウェルの端からの距離の減衰曲線をプロットした。その蛍光強度が最大強度の半分になるD1/2を、それぞれの減衰曲線から決定した。
イムノブロッティング
TAK1に対する抗体(M-579;Santa Cruz Biotechnology)、TAB1に対する抗体(C-20; Santa Cruz Biotechnology)、および抗リン酸化TAK1(Thr187)抗体(Cell Signaling Technology)を用いた。HeLa細胞を、Lipofectamine試薬(Invitrogen)を用いて、FLAGタグ付きTAK1およびHAタグ付きTAB1発現プラスミド(文献21)により形質移入した。次いでHeLa細胞を20ng ml-1TNF-αを用いて2、5、および10分間刺激した。その刺激の前または後に、細胞溶解緩衝液(25mM HEPES、pH7.7、0.3M NaCl、1.5mM MgCl2、0.2mM EDTA、0.1% Triton X-100、20mM β-グリセロホスフェート、1mMオルトバナジウム酸ナトリウム、1mMフッ化フェニルメチルスルホニル、1mMジチオスレイトール、10μg ml-1アプロチニン、および10μg ml-1ロイペプチン)でHeLa細胞形質移入体の全細胞溶解物を調製した。その細胞溶解物をSDS-PAGEにより分解し、それをImmobilon-Pナイロン膜(Millipore)に移した。その膜をBlockAce(Dainippon Pharmaceutical Co.)で処理し、おおよそ100ng ml-1の上記のような一次抗体または我々のRaMoAbで、続いてホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲートウサギIgGまたはヤギIgG特異的抗体(DAKO)でプローブ処理し(probed)、ECLシステム(GE Healthcare)を用いて抗体が結合したバンドを可視化した。
[結果]
抗原特異的抗体を分泌する単一のウサギプライマリーB細胞の検出およびウサギ-ISAACシステムによるHEL特異的RaMoAbの産生
ウサギ-ISAACシステムを確立するために、まず免疫されていないウサギを用いて、ISAACシステムの実行可能性を試験した。免疫されていないウサギのPBLからウサギIgG+リンパ球を調製した。そのウサギIgG+リンパ球を、ウサギIgGに特異的な抗体で表面をコートしたマイクロウェルアレイチップに添加することにより、単一の生きたIgG+細胞のアレイを調製した。細胞をそのチップ上で3時間培養し、ウサギIgGに特異的なCy3コンジュゲート抗体により分泌された抗体を検出した。ウェルの外側に分泌されたIgGの蛍光シグナル(イムノスポット)を蛍光顕微鏡下で観察した(図1-1上)。細胞を同定するため、細胞をチップ上でOregon Greenを用いて染色した。イムノスポット陽性ウェルにおいて細胞を検出した(図1-1中)。これらの結果は、ウサギ-ISAACシステムはプライマリーウサギリンパ球中のASCを単一細胞レベルで検出することができることを示している。
次いで抗原で免疫したウサギを用いて、ウサギ-ISAACシステムがIgG+リンパ球中の抗原特異的ASCを効率的に検出することができるかどうかを検証した。ウサギを鶏卵リゾチーム(HEL)で免疫し(図1-2A)、PBLからIgG+リンパ球を調製した。IgG+細胞をHELでコートされたチップ上に配列し、ウサギIgGに特異的なCy3コンジュゲート抗体を用いてHEL特異的ASCを検出した。HELでコートされたチップ上にトラップされた分泌抗体の非常に強いイムノスポットが観察できた(図1-2B左上)。それに対し、BSAでコートされたチップ上ではイムノスポットが全く検出されなかった(図1-2B右上)。
ウサギISAACシステムにより、おおよそ10,000個のIgG+細胞中で平均10個のHEL結合IgGのスポットを検出した(図1-3)。同じ細胞調製物を用いて同時にELISpot(Enzyme-Linked ImmunoSpot)アッセイを実施した。ELISpotアッセイ(Mabtech AB社)は、単一細胞レベルで分泌されたサイトカインを検出できる既存のシステムである。ウサギ-ISAACシステムにより検出されたHEL特異的ASCの数はELISpotアッセイにより検出されたHEL特異的ASCの数よりも約10倍高いことを見出した(図1-3)。これらの結果は、ウサギ-ISAACシステムはプライマリーウサギPBL中の抗原特異的ASCを単一細胞レベルで高い効率と感度で検出できることを実証している。
次に、ウサギ-ISAACシステムが、ウサギPBLから直接抗原特異的RaMoAbを得るために用いることができるかどうかを決定することを試みた。ウサギ-ISAACシステム中のHEL特異的IgGのイムノスポットを生み出した189個の単一細胞を回収し、免疫グロブリン重(H)および軽(L)鎖可変領域(VHおよびVL)のcDNAを増幅するために、個々の細胞を別々のマイクロチューブの中に移した。γ鎖およびκ鎖に関するプライマーによる単一細胞5’-RACE法を用いて、抗体VHおよびVLのcDNAを増幅した(文献23〜24)(図1-2C)。56ペアのVHおよびVLのcDNAが増幅され、それをHまたはL鎖の完全なウサギ免疫グロブリン定常領域のcDNAを含有する発現ベクターの中に挿入した。その後、HおよびL鎖発現ベクターの両方を一緒にCHO-S細胞の中に形質移入し、55種類の完全なRaMoAbを生産した。ELISAにより、55のRaMoAbのうちの24が、HELに特異的な抗体であることを確認した。また、スキャッチャードプロットに基づき、KDを求めた(下表および図1-4)。
次いで、IgG+細胞から得たHEL特異的抗体のcDNA配列を個別に分析した。それらを同一の配列および完全に異なる配列を有する21個のグループの中に分類することができた(下表)。
以前のウサギIGVHのレパートリーの研究(文献16〜18)と一致して、HEL特異的抗体のcDNAは単一のIGVH1遺伝子を優先的に用いていた。特に、24個得られた抗体中の22個はIGHV1S44を用いていた。これも以前のウサギJHのレパートリーの研究の頻度分析(前掲非特許文献4)と一致して、VHDJH遺伝子再構成のJHの大部分はJH4を用いていた。その限られたVHDJH再構成とは対照的に、ウサギにおけるVκJκ再構成ははるかにもっと多様であり、したがって結果としてもたらされる再構成されたκ軽鎖遺伝子は再構成された重鎖遺伝子の限られた多様性を埋め合わせることができる(前掲非特許文献4および文献19)。これらの結果は、単一細胞レベルでのウサギ-ISAACシステムによるプライマリーウサギASCの分析から得られた抗体レパートリーは、従来のハイブリドーマ法で得られた抗体レパートリーと一致していることを示している。
ISAACイムノスポットを用いる、高い結合親和性を有する抗原特異的ASCに関する新規スクリーニングシステムの確立
ウサギ抗体は一般に高い親和性および高い特異性を有する(前掲非特許文献1〜6)。したがって、次に、これらの抗体がスキャッチャードプロット分析により高い結合親和性を示すかどうかを調べたところ、その結合親和性(KD)は、HELに関して1×10-7から1×10-12Mまでの範囲であった(表1)。興味深いことに、HELによる24個の抗体の内の14個(56%)の抗体のKDは、10-11または10-12Mであると概算された。それに対し、以前にISAACにより産生されたマウスのHEL特異的抗体(前掲非特許文献13)のKD値は、10-8から10-10Mまでの範囲であった。これらの結果は、ウサギ-ISAACシステムは10-11または10-12Mの親和性を有するRaMoAbを包括的かつ迅速に産生することができることを実証している。
次に、ISAACイムノスポットを用いる高い結合親和性を有するウサギIgGに関する新規の簡単なスクリーニングシステムを確立することを試みた。最近、Adamsらは高い結合親和性(KD;1.5×10-11M)を有する抗体は、直ちに抗原へ結合し、腫瘍に浸透することを妨げられることを示した(文献20)。したがって、高い結合親和性を有する抗体のISAACイムノスポットは、低い結合親和性を有する抗体のISAACイムノスポットと比較してより小さい可能性があると予想した。この仮説を試験するため、ISAACイムノスポットの蛍光強度が最大値の半分になる距離(D1/2)を測定した(図2AおよびB)。10-10Mより小さいKDを有する抗体は、10-10Mより大きいKDを有する抗体よりも小さい円形のイムノスポットを示した(図2C)。これらの結果は、高い結合親和性を有する抗体は遠くまで広がらないことを示しており、それはAdamsらの研究(文献20)と一致していた。これらの発見は、より小さいイムノスポットを有する細胞を回収することにより高い親和性を有する抗原特異的ASCを選択できることを示している。
リン酸化部位特異的ASCに関する新規スクリーニングシステムの確立
次いでリン酸化されたペプチドに対するRaMoAbを産生するためにそのウサギ-ISAACシステムを適用した。分裂促進因子活性化プロテインキナーゼキナーゼであり、腫瘍壊死因子α(TNF-α)の刺激によりThr-187においてリン酸化されるヒトTGF-β活性化キナーゼ1(TAK1)のペプチド(TAK1-ペプチド)(文献21)を用いてウサギを免疫した。次いで、最後の追加免疫の1週間後にPBLからIgG+細胞を調製し、IgG+細胞をウサギIgG特異的抗体でコートされたチップ上に配列した。
リン酸化TAK1ペプチドで免疫したウサギが、Thr-187リン酸化部位に対する抗体だけでなくリン酸化TAK1ペプチド上の他のエピトープに対してもより多くの抗体を誘導するという問題が予想された。そのため、リン酸化TAK1ペプチドに特異的に結合するがリン酸化されていないTAK1ペプチド(TAK1-ペプチド)には結合しない抗体を産生するASCを効果的に選択するために、リン酸化部位に特異的に結合する抗体のための新規なスクリーニングシステムを確立することを試みた。まず、リン酸化TAK1ペプチド上の非リン酸化部位エピトープに対する抗体のISAACイムノスポット(図3-1A)を排除するために、細胞を配列したチップへリン酸化されていないTAK1ペプチドを供与して、ブロッキングした。次いでリン酸化TAK1ペプチドに特異的なASCを検出するために、ビオチン標識リン酸化TAK1ペプチドおよびCy3標識ストレプトアビジンを供与した(図3-1B)。
チップ上のISAACイムノスポットを有する174個の細胞を回収し、72個のVHおよびVLcDNAペアを単離した。それぞれのcDNAのペアをCHO-S細胞の中に形質移入し、64種類のRaMoAbを産生し、最終的にリン酸化TAK1ペプチドに結合する19種類のモノクローナル抗体を得た。TAK1-ペプチドでブロッキングした場合、90%を超える(19の内の18)のモノクローナル抗体が、リン酸化TAK1ペプチドに結合したが、TAK1-ペプチドには結合しなかった。これに対し、TAK1-ペプチドでのブロッキングなしでビオチン標識リン酸化TAK1ペプチドおよびCy3コンジュゲートストレプトアビジンを用いてリン酸化TAK1ペプチド特異的ASCを検出した場合には、最終的に64種類のリン酸化TAK1ペプチドに結合するモノクローナル抗体を得たが、10%未満(64の内の5)のモノクローナル抗体がリン酸化TAK1ペプチドに特異的に結合したに過ぎず、残りは非リン酸化TAK1-ペプチドにも結合した(下表、図3-1C)。
これらの結果は、そのブロッキング手順はリン酸化TAK1ペプチドに特異的に結合するがTAK1-ペプチドには結合しないモノクローナル抗体の単離に関して非常に効率的であることを示唆している。まとめると、これらの所見は、我々がブロッキングプロトコルを用いてリン酸化部位に対する抗体を産生するASCをスクリーニングすることを確立したことを実証している。
リン酸化TAK1ペプチド特異的RaMoAbの特性
次いで我々がIgG+細胞から得たリン酸化TAK1ペプチド特異的抗体のcDNA配列を個別に分析した。それらを同一の配列および完全に異なる配列を有する8のグループの中に分類することができた(下表)。
スキャッチャードプロット分析(図3-2)による結合親和性は、リン酸化TAK1ペプチドに関して1×10-6から1×10-9Mまでの範囲であった。
ウェスタン分析でリン酸化TAK1ペプチド特異的RaMoAbを評価した。TAK1をTAK1結合タンパク質1(TAB1)と共に過剰発現させると、結果としてTAK1のリン酸化がもたらされることが知られている(文献22および23)。過剰発現実験(文献21)においてリン酸化TAK1ペプチド特異的RaMoAbが、完全なTAK1分子のThr-187リン酸化部位を特異的に検出するかどうかを調べた。FLAGタグ付きTAK1およびHAタグ付きTAB1をHeLa細胞において共発現させ、その細胞溶解物をリン酸化TAK1ペプチド特異的抗体でイムノブロットした。TAB1との共発現により、TAK1のリン酸化特異的なバンドが明確に検出された(図4A左)。それに対し、アラニン置換変異体のFLAGタグ付きTAK1(T187A)では、TAB1との共発現でリン酸化は検出されなかった(図4A右)。
次に、リン酸化TAK1ペプチド特異的RaMoAbが、TNF-αにより誘導される内在性のTAK1のリン酸化を検出するかどうかを調べた。この目的のため、HeLa細胞をTNF-αで刺激し、次いで細胞溶解物をリン酸化TAK1ペプチド特異的抗体でイムノブロットした。先の実験で得たRa_pTAK23を用いたイムノブロッティングは、TNF-αで処理したHeLa細胞からの全細胞溶解物中でバンドを検出できることを実証した。以前の研究(文献21)と一致して、刺激の2〜5分後において、より早く移動するリン酸化されたTAK1のバンドが検出され、5分の時点で、追加のより遅く移動するリン酸化されたTAK1のバンドが明確に検出された(図4B)。それに対し、商業的に入手可能な抗体は、内在性のTAK1のリン酸化を検出することができなかった(図4B)。
リン酸化されたTAK1ペプチド(リン酸化TAK1ペプチド)に特異的な抗体のKD値に関して、それらの結合親和性は1×10-6〜1×10-9Mの範囲であった。未変性のタンパク質およびそれらのペプチドに対するRaMoAbの親和性に関して、ZhuおよびYuは、エストロゲン受容体αペプチドに特異的な抗体の親和性は完全なタンパク質に特異的な抗体よりも10〜100倍弱かったことを報告した(前掲非特許文献6)。本発明により得られたリン酸化TAK1ペプチド特異的RaMoAbは、親和性が比較的低いにも関わらず、内在性のTAK1のTNF-αにより誘導されるリン酸化を検出することができた。このような結果は、本発明のISAACシステムが、有用な抗原特異的RaMoAbをハイスループットな様式で産生できることを実証している。
〔参考実験1〕
上記のリン酸化ペプチド特異的な抗体を得る実験では、ISAAC法において、非リン酸化ペプチドでブロッキングする工程が有効に機能した。本実験では、同様のブロッキングを、ELISA法において行うとどうなるかを確認した。
まず抗ウサギIgG抗体を従来法によりELISAプレートにコートし、3% BSAでブロッキングした後、免疫していないウサギの血清(0週)、免疫したウサギの血清(7週)、リン酸化TAK1に特異的な抗体(0825-24)、リン酸化TAK1と非リン酸化TAK1の両方に結合する抗体(0613-16, 27)をウェルに添加した。次いで、様々な濃度の非リン酸化TAK1ペプチドを添加した後に、さらにビオチン標識リン酸化TAK1ペプチドを添加した。最後に、アルカリホスファターゼ標識ストレプトアビジン(Sigma)およびp-ニトロフェニルホスフェートにて、リン酸化TAK1に特異的な抗体を検出することを試みた。この実験の手順概略を下記のチャートに示した。
結果を図5に示した。0613-27抗体を用いた実験では、非リン酸化TAK1ペプチドを用いた効果はみられなかった。実験は2回行ったが、同様の結果が得られた。
リン酸化ペプチド特異的な抗体を特定するための従来のシステムは、非特異的シグナルが出やすいと考えられ、非特異的シグナルを抑えるための有効な手段の適用が困難であるように思われた。このことはELISA法のみならず、ELISPOT法にも当てはまると考えられる。
〔参考実験2:検出限界(LOD)を決定するためのELISA〕
得られた抗体の中で最も高い親和性を示したウサギ抗体(Ra_HEL01;KD 2.63×10-12M)または以前にISAACにより産生されたマウスのHEL特異的抗体(KD 3.71×10-10M)(前掲非特許文献13)を用い、HELの検出の限界を調べた。
96ウェルmaxisorp(商標)プレート(Nunc)を、ウェルあたり50μlのPBS中1μg ml-1のIgG特異的抗体でコートし、次いでPBS中3%BSAでブロッキングした。洗浄した後、30pMの抗体をプレートに添加し、室温で1時間保温した。プレートをPBS-Tで3回洗浄し、次いで様々な濃度(100〜0.1pM)のビオチン標識HELをそのプレートに添加し、室温で1時間保温した。0.5μg ml-1のアルカリホスファターゼ標識ストレプトアビジン(Sigma)およびp-ニトロフェニルホスフェートを用いてHELの結合を検出した。光学的吸光度を、ELISAリーダーを用いて製造業者の説明書にしたがって405nmにおいて測定した。LODを、バックグラウンドシグナル+3標準偏差に等しいシグナルから濃度を外挿することにより決定した。
結果を図6に示した。HELの検出限界は、ウサギ抗体(Ra_HEL01;KD 2.63×10-12M)は0.4pMであり、マウス抗体(KD 3.71×10-10M)は10pMであった。本発明により得られたウサギ抗体が高い感度を有することが分かった。
[実施例の項で引用した文献]
文献14. Ozawa, T., Kishi, H. & Muraguchi, A. Amplification and analysis of cDNA generated from a single cell by 5'-RACE: application to isolation of antibody heavy and light chain variable gene sequences from single B cells. Biotechniques 40, 469-470, 472, 474 passim (2006).
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文献24. Giljohann, D.A. & Mirkin, C.A. Drivers of biodiagnostic development. Nature 462, 461-464 (2009).
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文献26. Tokimitsu, Y., et al. Single lymphocyte analysis with a microwell array chip. Cytometry A 71, 1003-1010 (2007).
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文献29. Giudicelli, V., Chaume, D. & Lefranc, M.P. IMGT/V-QUEST, an integrated software program for immunoglobulin and T cell receptor V-J and V-D-J rearrangement analysis. Nucleic Acids Res 32, W435-440 (2004).
文献30. Djavadi-Ohaniance, L., Goldberg, M.E. & Friguet, B. Antibody engineering (Eds. : McCafferty J., et al.) IRL Press, Oxford, 77-96 (1996).
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本発明は、高い親和性および特異性を有するRaMoAbを約7日で調製できるという、画期的な技術革新を提供するものである。本発明は、研究のためのハイスループットなRaMoAbの生産と、その臨床応用を促進しうる。
配列番号1: ヒトTGF-β活性化キナーゼ1(TAK1)ペプチド(pTAK1-pep)
配列番号2: PCR primer Igγ-RT
配列番号3: PCR primer Igκ-RT
配列番号4: dC adopter primer
配列番号5: PCR primer Igγ-1st
配列番号6: PCR primer Igκ-1st
配列番号7: Adopter primer-nest
配列番号8: Igγ-nest
配列番号9: Igκ-nest

Claims (11)

  1. アミノ酸が修飾された抗原の修飾部位に特異的な抗体を産生する細胞の特定方法であって:
    (1) 基体の一方の主表面に複数のウェルを有し、ウェルは1つの細胞のみが入る大きさであり、前記ウェルの周辺の前記主表面の少なくとも一部に抗体と結合性を有する物質の被覆層を有するマイクロウェルアレイの少なくとも一部のウェルに、被検体細胞を培養液とともに格納し;
    (2) 前記被覆層およびウェルを培養液に浸漬して、被検体細胞より培養液中に産生された抗体がウェルから前記被覆層への拡散が可能な状態で被検体細胞を培養して、産生された抗体を被覆層の物質と結合させ;
    (3) 結合した抗体に、前記抗原であって修飾されていない非修飾抗原を供与することにより、非修飾抗原に結合する抗体をブロックした後に、修飾された抗原をさらに供与し;
    (4) 修飾された抗原と結合した抗体を検出して、その抗体を産生する細胞を、修飾部位に特異的な抗体を産生する細胞として、特定する
    工程を含む、方法。
  2. 被検体細胞が、リン酸化された抗原により免疫されたウサギ個体から回収したB細胞であり、リン酸化部位に特異的なウサギモノクローナル抗体を産生する細胞を取得するための、請求項1に記載の方法。
  3. ウサギ個体の免疫から、細胞の特定までを、7日以内に終了する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 被覆層の物質が、抗体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 工程(3)で供与されるリン酸化された抗原が、ビオチン標識されており、工程(4)における検出が、標識物質とストレプトアビジンとの複合体を用いて行われる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 標識物質が、蛍光物質である、請求項5に記載の方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法で特定された、細胞。
  8. 抗原に特異的な抗体を産生する細胞の特定方法であって:
    (1) 基体の一方の主表面に複数のウェルを有し、ウェルは1つの細胞のみが入る大きさであり、前記ウェルの周辺の前記主表面の少なくとも一部に、抗原の被覆層を有するマイクロウェルアレイの少なくとも一部のウェルに、抗原で免疫された個体由来のB細胞を培養液とともに格納し;
    (2) 前記被覆層およびウェルを培養液に浸漬して、B細胞より培養液中に産生された抗体がウェルから前記被覆層への拡散が可能な状態でB細胞を培養して、産生された抗体を被覆層の抗原と結合させ;
    (3) 結合した産生抗体に、標識物質とIgG特異的抗体との複合体を供与し;
    (4) 標識物質によって提示されるウェル周辺のスポットのサイズに基づいて細胞を特定する
    工程を含む、方法。
  9. B細胞が、ウサギ由来である、請求項8に記載の方法。
  10. ウェル周辺のスポットのサイズが小さい場合に、抗原に高い結合親和性を有する抗体であると特定する、請求項8または9に記載の方法。
  11. 請求項1〜10に定義された工程を含み、特定された細胞から得られた遺伝物質を利用して形質転換された、組換えウサギモノクローナル抗体を産生する細胞。
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