JP2006036723A - π電子共役系分子含有ケイ素化合物及びその製造方法 - Google Patents

π電子共役系分子含有ケイ素化合物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電気材料として有用な導電特性を制御できる化合物である低分子量のπ電子共役系分子含有ケイ素化合物及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】下記式(1)
(式) A1−B−A2 (1)
{A1はSi−A111213(A11〜A13は、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、及びアルキル基から選択される基である)で表されるシリル基であり、Bは、官能基を有していてもよい、π電子共役系の化合物に由来する有機基であり、A2はSi−A212223(A21〜A23は、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、又はアルキル基から選択され、Siからの脱離反応性が、A11〜A13より低い基である)で表されるシリル基である}
で表される脱離反応性の異なるシリル基を2つ有することを特徴とするπ電子共役系分子含有ケイ素化合物により上記課題を解決する。
【選択図】なし

Description

本発明は、π電子共役系分子含有ケイ素化合物及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、電気材料として有用な導電特性を制御できる化合物である低分子量のπ電子共役系分子含有ケイ素化合物及びその製造方法に関する。
従来では、半導体デバイスの多くは、シリコン結晶のような無機材料が用いられてきた。しかしながら、無機材料ではデバイスの微細化に伴い結晶欠陥が生じ、デバイス性能に影響を及ぼし、微細加工に限界が生じている。
近年、無機材料を用いた半導体に対し、製造が簡単で加工しやすく、デバイスの大型化にも対応でき、かつ量産によるコスト低下が見込め、無機材料よりも多様な機能を有した有機化合物を合成できることから、有機化合物を用いた半導体(有機半導体)の研究開発が行われ、その成果が報告されている。
有機化合物は、化学構造や処理条件によって結晶性又は非晶性を示す。有機化合物を半導体デバイスに使用する場合、目的とする特性に適した材料を選択する必要がある。高いキャリア移動性が求められるトランジスタのようなデバイスでは、有機化合物からなる膜に一般に結晶性が要求される。有機化合物の内、分子量に分布がある高分子材料では100%完全結晶の実現は極めて困難であるので、通常低分子有機化合物がデバイスに使用される。また、デバイスの小型化や量子効果の発現のために、有機化合物からなる膜が高度に結晶化していることが望まれる。
有機半導体デバイスは、有機材料にドーピング等の処理を行わない場合、用いる接触電極材料界面からのキャリア注入によりキャリアを得ることになる。キャリア注入効率を高めるためには、電極に直接接触した有機化合物は用いる金属電極とイオン化ポテンシャルが同程度であることが要求されるため、有機化合物の種類が制限される。つまり電極上及び電極間は、キャリア注入層のような緩衝層を含む積層膜により形成された有機薄膜が最適な形態となる。
有機化合物のなかでも、π電子共役系分子を含有する有機化合物を利用することにより、大きな移動度を有するTFTを作製することができることが知られている。この有機化合物としては、代表例としてペンタセンが報告されている(例えば、IEEE Electron Device Lett.,18,606−608(1997):非特許文献1)。ここでは、ペンタセンを用いて有機半導体層を作製し、この有機半導体層でTFTを形成すると、電界効果移動度が1.5cm2/Vsとなり、アモルファスシリコンよりも大きな移動度を有するTFTを構築することが可能であるとの報告がなされている。
しかし、上記に示すようなアモルファスシリコンよりも高い電界効果移動度を得るための有機化合物半導体層を作製する場合、抵抗加熱蒸着法や分子線蒸着法等の真空プロセスを必要とするため、製造工程が煩雑となるとともに、ある特定の条件下でしか結晶性を有する膜が得られない。また、基板上への有機化合物膜の吸着が物理吸着であるため、膜の基板への吸着強度が低く、容易に剥がれるという問題がある。更に、膜中での有機化合物の分子の配向をある程度制御するために、通常、あらかじめ膜を形成する基板にラビング処理等による配向制御が行われているが、物理吸着による成膜では、物理吸着した有機化合物と基板との界面での化合物の分子の整合性や配向性を制御できるとの報告は未だなされていない。
一方、このTFTの特性の代表的な指針となる電界効果移動度に大きな影響を及ぼす膜の規則性、結晶性については、近年、その製造が簡便なことから、有機化合物を用いた自己組織化膜が着目され、その膜を利用する研究がなされている。
自己組織化膜とは、有機化合物の一部を、基板表面の官能基と結合させたものであり、きわめて欠陥が少なく、高い秩序性すなわち結晶性を有した膜である。この自己組織化膜は、製造方法がきわめて簡便であるため、基板への成膜を容易に行うことができる。通常、自己組織化膜として、金基板上に形成されたチオール膜や、親水化処理により表面に水酸基を突出可能な基板(例えば、シリコン基板)上に形成されたケイ素系化合物膜が知られている。なかでも、耐久性が高い点で、ケイ素系化合物膜が注目されている。ケイ素系化合物膜は、従来から撥水コーティングとして使用されており、撥水効果の高いアルキル基や、フッ化アルキル基を有機官能基として有するシランカップリング剤が用いて成膜されていた。
しかし、自己組織化膜の導電性は、膜に含まれるケイ素系化合物中の有機官能基によって決定されるが、市販のシランカップリング剤には、有機官能基にπ電子共役系分子が含まれる化合物はなく、そのため自己組織化膜に導電性を付与することが困難である。したがって、TFTのようなデバイスに適した、π電子共役系分子が有機官能基として含まれるケイ素系化合物が求められている。
このようなケイ素系化合物として、分子の末端に官能基としてチオフェン環を1つ有し、チオフェン環が直鎖炭化水素基を介してSiと結合した化合物が提案されている(例えば、特許第2889768号公報:特許文献1)。更に、ポリアセチレン膜として、化学吸着法により、基板上に−Si−O−ネットワークを形成して、アセチレン基の部分を重合させるものが提案されている(例えば、特公平6−27140号公報:特許文献2)。また更に、有機材料として、チオフェン環の2、5位に直鎖炭化水素基がそれぞれ結合し、直鎖炭化水素の末端とシラノール基とが結合したケイ素化合物を用い、これを基板上に自己組織化させ、更に電界重合等により分子同士を重合させて導電性薄膜を形成し、この導電性薄膜を半導体層として使用した有機デバイスが提案されている(例えば、特許第2507153号公報:特許文献3)。更にまた、ポリチオフェンに含まれるチオフェン環にシラノール基を有するケイ素化合物を主成分とした半導体薄膜を利用した電界効果トランジスタが提案されている(例えば、特許第2725587号公報:特許文献4)。
しかしながら、上記に提案されている化合物は、基板との化学吸着可能な自己組織化膜は作製可能であるが、TFT等の電子デバイスに使用できる高い秩序性、結晶性、電気伝導特性を有する膜を必ずしも作製できなかった。更に、上記に提案されている化合物を有機TFTの半導体層に使用した場合、オフ電流が大きくなる問題点を有していた。これは、提案されている化合物が、いずれも分子の方向及び分子に垂直な方向に結合を有するためであると考えられる。
高い秩序性、すなわち、高い結晶性を得るためには、分子間に高い引力相互作用が働く必要がある。分子間力とは、引力項と反発項により構成されており、前者は分子間距離の6乗に、後者は分子間距離の12乗に反比例する。したがって、引力項と反発項を足し合わせた分子間力は図7に示す関係を有する。ここで、図7での極小点(図中の矢印部分)が、引力項と反発項との兼ね合いから最も分子間に高い引力が作用するときの分子間距離である。すなわち、より高い結晶性を得るためには、分子間距離を極小点にできる限り近づけることが重要である。したがって、本来、抵抗加熱蒸着法や分子線蒸着法等の真空プロセスにおいては、ある特定の条件下においてのみ、π電子共役系分子同士の分子間相互作用をうまく制御することで、高い秩序性、すなわち結晶性が得られている。このように分子間相互作用により構築される結晶性でのみ、高い電気伝導特性を発現することが可能となる。
一方、上記化合物は、Si−O−Siの2次元ネットワークを形成することで基板と化学吸着し、かつ、特定の長鎖アルキル同士の分子間相互作用による秩序性が得られる可能性はあるが、官能基である1つのチオフェン分子がπ電子共役系に寄与するのみであるため、分子間の相互作用が弱く、また電気伝導性に不可欠なπ電子共役系の広がりが非常に小さいという問題があった。仮に、上記官能基であるチオフェン分子の分子数を増やすことができたとしても、膜の秩序性を形成する因子が、長鎖アルキル部とチオフェン部との間で、分子間相互作用を整合一致させることは困難である。
更に、電気伝導特性としては、官能基である1つのチオフェン分子では、HOMO−LUMOエネルギーギャップが大きく、有機半導体層としてTFT等に使用しても、十分なキャリア移動度が得られないという課題が存在していた。
また、末端にシリル基を有するケイ素化合物を用いて化学吸着法によって単分子が累積した膜(累積膜)を基板上に形成する場合、末端のシリル基の反応性が問題になってくる。これまでに報告された化学吸着法を利用した累積膜の調整方法としては、たとえば特許第3292205号公報(特許文献5)がある。この特許では基板と吸着反応を起こす化合物として、トリクロロシリル基を両末端に有するアルキルシラン化合物を用いている。具体的には、基板表面に単分子膜を形成した後、化合物の空気界面側に残っているトリクロロシリル基を新たな吸着反応サイトとして、単分子膜を累積することからなる累積膜の形成方法が示されている。
しかしながら、トリクロロシリル基は塩素原子の脱離反応の反応性が極めて激しいことが知られている。両末端にトリクロロシリル基を有している場合、単分子膜形成時にいずれの末端のトリクロロシリル基も加水分解反応する。その結果、このケイ素化合物は、基板との吸着反応を起こすと同時に、未反応側の末端基を次の吸着点として、二分子、三分子化を同時に生じる。ゆえに、従来の化合物による化学吸着法では、膜厚が均一で、かつ結晶配列の秩序性が高い単分子累積膜を再現性よく形成することは困難であった。膜厚が不均一で、結晶配列の秩序性が低い単分子累積膜を用いたデバイスは累積膜の間でキャリアがトラップされるために、性能の劣化が生じてしまう。
IEEE Electron Device Lett.,18,606−608(1997) 特許第2889768号公報 特公平6−27140号公報 特許第2507153号公報 特許第2725587号公報 特許第3292205号公報
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、簡便な製造方法により容易に結晶化させて膜を形成することができるとともに、得られた膜を基板表面に強固に吸着させて、物理的な剥がれを防止して、かつ、高い秩序性、結晶性、電気伝導特性を有する膜を作製するためのケイ素化合物を提供することを目的とする。
また、本発明は、累積膜を再現性よく形成しうるケイ素化合物を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、鋭意検討した結果、TFTのような電子デバイスに適応可能な有機薄膜を作製するには、Si−O−Siの2次元ネットワークを形成して、基板と強固に化学結合が可能であると同時に、その有機薄膜の秩序性(結晶性)はSi−O−Siの2次元ネットワーク上に形成した分子(ここではπ電子共役分子)の相互作用すなわち分子間力によって制御が可能であることを見いだした。加えて、両端にシリル基を有するケイ素化合物において、ケイ素に結合する基の脱離反応性を両端のシリル基で異ならせることにより、二分子、三分子化を防ぎつつ一方の末端シリル基の基板への吸着反応と、この反応終了後、更に未反応の末端シリル基により単分子膜を累積する逐次反応を制御可能であることを見いだした。
かくして本発明によれば、下記式(1)
(式) A1−B−A2 (1)
{A1はSi−A111213(A11〜A13は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、OCn2n+1(n=1〜10)で表されるアルコキシ基、及びCn2n+1(n=1〜18)で表されるアルキル基から選択される基である)で表されるシリル基であり、Bは、官能基を有していてもよい、π電子共役系の化合物に由来する有機基であり、A2はSi−A212223(A21〜A23は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、OCn2n+1(n=1〜10)で表されるアルコキシ基、及びCn2n+1(n=1〜18)で表されるアルキル基から選択され、Siからの脱離反応性が、A11〜A13より低い基である)で表されるシリル基である}
で表される脱離反応性の異なるシリル基を2つ有することを特徴とするπ電子共役系分子含有ケイ素化合物が提供される。
更に、本発明によれば、(式) B−MgX (2)
(式中、Bは置換基を有していてもよい、π電子共役系の化合物に由来する有機基であり、Xはハロゲン原子である)で示される化合物と、
(式) Y1−A1 (3)
{式中、Y1はハロゲン原子であり、A1はSi−A111213(A11〜A13は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、OCn2n+1(n=1〜10)で表されるアルコキシ基、及びCn2n+1(n=1〜18)で表されるアルキル基から選択される基である)で表されるシリル基}で示される化合物とを反応させて、
(式) B−A1 (4)
を合成し、
式(4)中、Bにハロゲン原子を結合させ、エトキシエタン又はテトラヒドロフラン(THF)の存在下で、マグネシウムやリチウム金属と反応させて
(式) MgX−B−A1 (5)
で示される化合物を合成した後、
(式) Y2−A2 (6)
{式中、Y2はハロゲン原子であり、A2はSi−A212223(A21〜A23は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、OCn2n+1(n=1〜10)で表されるアルコキシ基、又はCn2n+1(n=1〜18)で表されるアルキル基から選択され、Siからの脱離反応性が、A11〜A13より低い基である)で表されるシリル基である}で示される化合物と反応させて、
(式) A1−B−A2 (1)
で表される脱離反応性の異なるシリル基を2つ有するπ電子共役系分子含有ケイ素化合物を得ることを特徴とするπ電子共役系分子含有ケイ素化合物の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、(式) X1−B−X2 (8)
(式中、Bは、官能基を有していてもよい、π電子共役系の化合物に由来する有機基であり、X1及びX2は、それぞれ異なって、ハロゲン原子である。)で示される化合物を、マグネシウム又はリチウムからなる金属触媒を用いてグリニヤール反応剤とした後、
(式) Y1−A1 (3)
{式中、Y1はハロゲン原子、A1はSi−A111213(A11〜A13は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、OCn2n+1(n=1〜10)で表されるアルコキシ基、及びCn2n+1(n=1〜18)で表されるアルキル基から選択される基である)で表されるシリル基}で示される化合物と反応させ、下記式で表されるグリニヤール反応剤
(式) A1−B−MgX2 (9)
を得、その後、
(式) Y2−A2 (6)
{式中、Y2はハロゲン原子であり、A2はSi−A212223(A21〜A23は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、OCn2n+1(n=1〜10)で表されるアルコキシ基、又はCn2n+1(n=1〜18)で表されるアルキル基から選択され、Siからの脱離反応性が、A11〜A13より低い基である)で表されるシリル基である}で示される化合物と(式9)で示される化合物とを反応させ
(式) A1−B−A2 (1)
で表される脱離反応性の異なるシリル基を2つ有するπ電子共役系分子含有ケイ素化合物を得ることを特徴とするπ電子共役系分子含有ケイ素化合物の製造方法が提供される。
本明細書中において、単一単分子膜とは、1層の単分子膜からなる有機薄膜を意味するものとする。また、単分子累積膜(累積膜)とは、2層以上の単分子膜が累積(積層)されてなる有機薄膜を意味するものとする。
本発明のケイ素化合物は、π電子共役系分子を有するケイ素化合物間で形成されるSi−O−Siの2次元ネットワーク化により、基板に化学吸着すると共に、膜の結晶化に必要な近距離力である、π電子共役系分子同士に作用する分子間相互作用が、効率的に働くため、非常に高い安定性を有し、且つ、高度に結晶化された膜を構成することができる。したがって、基板に物理吸着により作製した膜と比較して、得られた膜を基板表面に強固に吸着させて、物理的な剥がれを防止することができる。
また、有機薄膜を構成するケイ素化合物由来のネットワークと有機基が直接結合しており、かつケイ素化合物由来のネットワークとπ共役系分子の分子間相互作用によって、高い秩序性(結晶性)を有する有機薄膜を形成することができる。これにより、分子平面と垂直な方向へのホッピング伝導により、キャリアの移動がスムーズに行われる。また、分子軸方向へも高い導電性が得られることで、導電性材料として、有機薄膜トランジスタ材料のみならず、太陽電池、燃料電池、センサ等に広く応用することが可能となる。
しかも、上記のような化合物を簡便に製造することが可能になる。
また、(式1)で示されているように、両端にシリル基を有するケイ素化合物において、ケイ素に結合する基の脱離反応性を両端のシリル基で異ならせることにより、基板への吸着及び膜表面への吸着反応等を逐次かつ選択的に再現性よく行うことができる。このことから、本発明は、従来技術に比べ、膜形状、分子の配向性が均一で更に再現性良く累積膜を形成することが可能となる。つまり、分子が膜面内方向のみならず膜厚方向に高度に秩序性よく配列した高い分子配向性を有した有機薄膜を作製することができる。
そのような有機薄膜を単分子累積膜として作製した場合、有機薄膜は、構成単位である数nm厚の単分子層の電気特性に対応して膜厚方向に異なる電気特性を有する。その結果、キャリア移動効率、電極界面における電荷注入効率等を制御できる。更には、高密度記録、高速応答及び/又は高感度の光/温度/ガスセンサデバイスに応用できる。
更に、ケイ素化合物は、自己組織化特性を有しているので、高度に結晶性及び配向性を有した有機薄膜の作製を真空中で行う必要がなく、大気中で行うことができる。このことは、製造が簡便で安価であることを意味し、よって工業プロセスとしてもメリットが大きい。
また、基板の前処理である親水化処理をパターニングして行えば、膜厚方向のみならず膜面内方向にも電気特性に異方性を付与できる。つまり、擬3次元で電気特性の異なる有機薄膜を調製することが可能となり、次世代電気デバイスへの応用も拡がる。
まず、本発明のπ電子共役系分子含有ケイ素化合物(以下、ケイ素化合物ともいう)は、(式1) A1−B−A2 で表される。
上記式中、A1はSi−A111213(A11〜A13は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、OCn2n+1(n=1〜10)で表されるアルコキシ基、及びCn2n+1(n=1〜18)で表されるアルキル基から選択される基である)で表されるシリル基である。一方、A2はSi−A212223(A21〜A23は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、OCn2n+1(n=1〜10)で表されるアルコキシ基、及びCn2n+1(n=1〜18)で表されるアルキル基から選択される基である)で表されるシリル基である。
上記式中、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられる。
上記式中、アルキル基は、n=1〜18の基が使用でき、好ましくはn=1〜10、より好ましくはn=1〜6の基である。より具体的には、メチル基、エチル基、n−又は2−プロピル基、n−,sec−又はtert−ブチル基が挙げられる。
上記式中、アルコキシ基は、n=1〜10の基が使用できる。より具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−又は2−プロポキシ基、n−,sec−又はtert−ブトキシ基が挙げられる。
アルコキシ基は、本発明の化合物の溶解性及び成膜性の観点から、n=1〜10、好ましくはn=1〜6、より好ましくはn=1〜4である。アルコキシ基の好ましい具体例として、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−又は2−プロポキシ基、n−、sec−又はtert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
アルキル基は、本発明の化合物の溶解性及び成膜性の観点から、n=1〜18、好ましくはn=1〜10、より好ましくはn=1〜6である。アルキル基の好ましい具体例として、例えば、メチル基、エチル基、n−又は2−プロピル基、n−、sec−又はtert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
アルキル基及びアルコキシ基において、nの数は、ケイ素化合物の溶解性、成膜性の観点から適宜に調整できる。また、nの数が大きくなった場合は、アルキル基及びアルコキシ基の凝集による結晶化が生じケイ素化合物の膜の絶縁性が高くなるため、該膜の導電性や半導体性を利用するデバイスへの使用は好ましくない。また、液晶性を示すケイ素化合物は、それによる膜の配向性制御が困難であるため好ましくない。
更に、A21〜A23は、A11〜A13より低いSiからの脱離反応性を有している。そのため、A1とA2とで、脱離反応性が異なっている。シリル基による基板への固定化反応は、Siに結合する基A11〜A13及びA21〜A23の脱離反応性と関係している。
脱離反応性の序列を一概に規定することはできないが、アルコキシ基及びアルキル基を1つの群と見なしたときの一般的な序列は以下の通りである。
第1群;ハロゲン原子
第2群;アルコキシ基及びアルキル基
第3群;水素原子
上記序列においては群の番号が大きくなるほど、脱離反応性は低くなる。
詳しくは、第1群においてハロゲン原子の脱離反応性は、ヨウ素、臭素、塩素の順で低下する。
第2群においてアルコキシ基及びアルキル基の脱離反応性は、炭素数が同じときは、アルコキシ基、アルキル基の順で低下するが、炭素数が異なるときは、炭素数及び立体構造に依存するために一概に規定できない。炭素数が異なるときのアルコキシ基内での序列又はアルキル基内での序列は一般に、炭素原子数が多くなるほど低くなる。また、立体構造の観点からは、アルコキシ基及びアルキル基の脱離反応性は一般に、それらの基が含有するアルキル基が第1級アルキル基、第2級アルキル基、第3級アルキル基である順に低くなる。
特定の基(例えば、X基とY基)について脱離反応性の大小関係を知りたいときは、X基とY基を有するシラン化合物、例えば、Si(X)2(Y)2を水に添加し、一定時間撹拌した後、シランを分析することによって、それらの関係を知ることができる。すなわち、水酸基に置換されている基が脱離反応性の比較的高い基と言える。X及びYの両基が水酸基に置換されている場合、又は両基が置換されていない場合は、水のpHを、一方の基が水酸基に置換されるpHに調整すればよい。
分析方法はX基、Y基及び水酸基の有無を確認できる方法であれば特に制限されず、例えば、質量分析、クロマトグラフ分析が挙げられる。
上記のような本発明のケイ素化合物が有するA11〜A13及びA21〜A23との好ましい組み合わせを以下に示す。
(1)A11〜A13はそれぞれ独立してハロゲン原子から選択され、好ましくは同時に塩素原子又は臭素原子、特に塩素原子である;A21〜A23はそれぞれ独立してアルコキシ基から選択され、好ましくは同時にメトキシ基又はエトキシ基、特にエトキシ基である。
(2)A11〜A13はそれぞれ独立してハロゲン原子から選択され、好ましくは同時に塩素原子又は臭素原子、特に塩素原子である;A21〜A23はそれぞれ独立してアルキル基から選択され、好ましくは同時にメチル基又はエチル基、特にエチル基である。
(3)A11〜A13はそれぞれ独立して炭素数1〜2のアルコキシ基から選択され、好ましくは同時にメトキシ基又はエトキシ基、特にメトキシ基である;A21〜A23はそれぞれ独立して炭素数3〜4のアルコキシ基から選択され、好ましくは同時に2−プロポキシ基、sec−又はtert−ブトキシ基、特にtert−ブトキシ基である。
(4)A11〜A13はそれぞれ独立して炭素数1〜2のアルコキシ基から選択され、好ましくは同時にメトキシ基又はエトキシ基、特にメトキシ基である;A21〜A23はそれぞれ独立して炭素数3〜4のアルキル基から選択され、好ましくは同時に2−プロピル基、sec−又はtert−ブチル基、特にtert−ブチル基である。
上記組み合わせの中で、より好ましい組み合わせは組み合わせ(1)及び(2)、特に組み合わせ(1)である。
上記組み合わせ(1)を満たす本発明の化合物の具体例を以下に示す。
Figure 2006036723
(式中、Bは式(1)のBと同様であって、後で詳述する通りである)。
上記組み合わせ(2)を満たす本発明の化合物の具体例を以下に示す。
Figure 2006036723
(式中、Bは式(1)のBと同様であって、後で詳述する通りである)。
上記組み合わせ(3)を満たす本発明の化合物の具体例を以下に示す。
Figure 2006036723
(式中、Bは式(1)のBと同様であって、後で詳述する通りである)。
なお、A21〜A23が、A11〜A13より低いSiからの脱離反応性を有しさえすれば、上記化合物に限定されない。
基板への固定化反応性は、ケイ素化合物を溶解する溶媒の種類に応じても変化する。そのため、溶媒による反応性の違いを利用して、基板への吸着反応が制御可能となる。溶媒が水の場合、プロトン濃度を変えることで、有機溶媒の場合、水酸基を有する溶媒を用いることで反応性を制御できる。
更に、上記(式1)中Bは、π電子共役系の化合物に由来する有機基である。この有機基は、導電性、光感応性等を制御可能な基(ユニット)を少なくとも1つ含むことが好ましい。例えば、単環の芳香族化合物、縮合芳香族化合物、単環の複素環化合物、縮合複素環化合物に由来する基から選択された基が挙げられる。
単環の芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン等が挙げられる。縮合芳香族化合物としては、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、オクタセン、ノナセン、アズレン、フルオレン、ピレン、アセナフテン、ペリレン、アントラキノン等が挙げられる。単環の複素環化合物としては、フラン、チオフェン、ピリジン、ピリミジン等が挙げられる。縮合複素環化合物としては、インドール、キノリン、アクリジン、ベンゾフラン等が挙げられる。
これら有機基は、任意の位置に官能基を有していてもよい。具体的な官能基としては、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、又は、カルボキシル基、エステル基等が挙げられる。これらの官能基のなかでも、立体障害により有機薄膜の結晶化を阻害しない官能基が好ましく、したがって、上記官能基の中でも炭素数1〜30の直鎖アルキル基が特に好ましい。
上記化合物の内、単環の芳香族化合物及び/又は単環の複素環化合物が2個以上結合した化合物、縮合芳香族化合物に由来する有機基が好ましい。
まず、単環の芳香族化合物及び/又は単環の複素環化合物が2個以上結合した化合物としては、ベンゼン及び/又はチオフェンに由来するユニットが2個以上結合した化合物が挙げられる。このユニットは、1〜10個結合して化合物を構成することが好ましい。上記ユニットは、結合している場合、収率、経済性、量産化を考慮すると、1〜8個結合していることがより好ましい。
これらユニットは、複数個、分岐状に結合していてもよいが、直線状に結合していることが好ましい。また、化合物は、同じユニットが結合していてもよいし、すべて異なるユニットが結合していてもよいし、複数種類のユニットが規則的に又はランダムな順序で結合していてもよい。また、結合の位置は、ユニットの構成分子がチオフェンの場合には、2,5−位、3,4−位、2,3−位、2,4−位等のいずれでもよいが、なかでも、2,5−位が好ましい。ベンゼンの場合には、1,4−位、1,2−位、1,3−位等のいずれでもよいが、なかでも、1,4−位が好ましい。
例えば、非縮合系芳香族化合物として、下記一般式(i);
Figure 2006036723
(式中、mは1〜30、好ましくは1〜8の整数である)で表されるフェニレン化合物が挙げられる。フェニレン基は、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
また、非縮合系芳香族複素環式化合物として、下記一般式(ii);
Figure 2006036723
(式中、nは1〜30、好ましくは1〜8の整数である)で表されるチオフェン化合物が挙げられる。チオフェンジイル基は、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
より具体的には、単環の芳香族化合物及び/又は単環の複素環化合物が2個以上結合した化合物の具体例として、ビフェニル、ビチオフェニル、ターフェニル(式iiiの化合物)、ターチエニル(式ivの化合物)、クォーターフェニル、クォーターチオフェン、クィンケフェニル、クィンケチオフェン、ヘキシフェニル、ヘキシチオフェン、チエニル−オリゴフェニレン(式vの化合物参照)、フェニル−オリゴオリゴチエニレン(式viの化合物参照)、ブロックコオリゴマー(式vii又はviiiの化合物参照)に由来の基が挙げられる。
Figure 2006036723
(式中、nは1〜8、mは1〜8、a+bは2〜10である。)
更に、縮合芳香族化合物としては、下記式ix〜xi
Figure 2006036723
から選択される化合物(nは0〜10)が挙げられる。式xは、アセン骨格を含む化合物であり、式xiは、アセナフテン骨格を含む化合物であり、式xiiは、ペリレン骨格を含む化合物である。
上記式xのアセン骨格を含む化合物を構成するベンゼン環の数は2〜12個であることが好ましい。特に、合成の工程数や生成物の収率を考慮すると、ベンゼン環の数が2〜9であるナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、オクタセン、ノナセンが特に好ましい。なお、上記式xでは、ベンゼン環が直線状に縮合している化合物を形式上示しているが、例えば、フェナントレン、クリセン、ピセン、ペンタフェン、ヘキサフェン、ヘプタフェン、ベンゾアントラセン、ジベンゾフェナントレン、アントラナフタセン等のように非直線状に縮合している分子も式xの化合物に含まれる。
特に好ましい有機基Bは、単環の芳香族化合物及び/又は単環の複素環化合物が2個以上結合した化合物又はアセン骨格を含む化合物に由来する基である。
更に、ユニット間には、ビニレン基が位置していてもよい。ビニレン基を与える炭化水素としては、アルケン、アルカジエン、アルカトリエン等が挙げられる。アルケンとしては、炭素数2〜4の化合物、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。なかでも、エチレンが好ましい。アルカジエンとしては、炭素数4〜6の化合物、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン等が挙げられる。アルカトリエンとしては、炭素数6〜8の化合物、例えば、ヘキサトリエン、ヘプタトリエン、オクタトリエン等が挙げられる。
有機基Bに対するA1及びA2の結合位置は、特に限定されず、結合することができる限りどこの位置でもよい。但し、累積膜の製造容易性の観点から、有機基Bに対してパラ位に、有機基Bが5員環の場合2,5位に結合していることが好ましい。
本発明の化合物の特に好適な例を下記する。
Figure 2006036723
Figure 2006036723
Figure 2006036723
以下に本発明のケイ素化合物の合成方法を説明する。
本発明のケイ素有機化合物は上記のπ電子共役系ユニットを含有する分子にシリル基を導入することによって合成可能である。シリル基の導入部位は得られる単一単分子膜又は単分子累積膜が、分子が規則的に配列される分子結晶性を確保できる限り特に制限されないが、好ましくは分子の両末端である。特に、π電子共役系ユニットが直線形状を有する場合は当該分子の両末端にシリル基を導入することが好ましい。また、芳香族炭化水素骨格含有分子が点対称性を有する場合は、一般構造式においてシリル基の導入部位の中間点が当該分子の中心点となるように、シリル基を導入することが好ましい。
芳香族炭化水素骨格含有分子のシリル化は、種々の公知の手法によって達成可能である。たとえば、(1)対応する臭素や、塩素、又はヨウ素等のハロゲン原子を有する化合物から得られるグリニヤール試薬やリチウム試薬とハロゲンやアルコキシを有する有機ケイ素化合物との反応、(2)対応する炭素−炭素多重結合を有する化合物と少なくとも一つの水素をケイ素原子上に有する有機ケイ素化合物とを塩化白金酸等の触媒存在下で加熱攪拌することによるハイドロサイレーション反応、(3)パラジウム触媒を用い、対応するビニルホウ素化合物と有機ハロゲン化ケイ素化合物をクロスカップリングさせて、置換オレフィンを合成する反応を利用できる。
より具体的には以下の方法を利用できる。
まず、第1の方法として、
(式) B−MgX (2)
(式中、Bは官能基を有していてもよい、π電子共役系の化合物に由来する有機基であり、Xはハロゲン原子である)で示される化合物と、
(式) Y1−A1 (3)
(式中、Y1はハロゲン原子であり、A1は上記と同じ)で示される化合物(例えば、テトラクロロシラン、テトラエトキシシラン)とを反応させて、
(式) B−A1 (4)
を合成し、
式(4)中、Bにハロゲン原子を結合させ、エトキシエタン又はテトラヒドロフラン(THF)の存在下で、マグネシウムやリチウム金属と反応させて
(式) MgX−B−A1又はLi−B−A1(5)
で示される化合物を合成した後、
(式) Y2−A2 (6)
(式中、Y2はハロゲン原子であり、A2は上記と同じ)で示される化合物(例えば、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン)と反応させて、ケイ素化合物を得る方法が挙げられる。
第2の方法として、
(式) X1−B−X2 (8)
(式中、Bは上記と同じであり、X1及びX2は、それぞれ異なって、ハロゲン原子である。)で示される化合物を、マグネシウム又はリチウムからなる金属触媒を用いてグリニヤール反応剤とした後、
(式) Y1−A1 (3)
(式中、Y1はハロゲン原子、A1は上記と同じ)で示される化合物と反応させ、下記式で表されるグリニヤール反応剤
(式) A1−B−MgX2 (9)
を得、その後、
(式) Y2−A2 (6)
(式中、Y2はハロゲン原子であり、A2は上記と同じ)で示される化合物と(式9)で示される化合物とを反応させて、ケイ素化合物を得る方法が挙げられる。上記第1及び2の方法中、ハロゲン原子とは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
上記合成時の反応温度は、例えば、−100〜150℃が好ましく、より好ましくは−20〜100℃である。反応時間は、工程毎に、例えば、0.1〜48時間程度である。反応は、通常、反応に影響のない有機溶媒中で行われる。反応に悪影響のない有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン等脂肪族又は芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系炭化水素等が挙げられ、これらは単独で又は混合液として用いることができる。なかでも、ジエチルエーテルとTHFが好適である。反応は、任意に触媒を用いてもよい。触媒としては、白金触媒、パラジウム触媒、ニッケル触媒等、触媒として公知のものを用いることができる。
上記第1及び2の方法において、Y1はA111213より脱離反応性が高く、Y2はA212223より脱離反応性が高いことが好ましい。特に、Y1及びY2はヨウ素原子であることが好ましい。
次に、有機基Bの前駆体として好適な、単環の芳香族化合物及び/又は単環の複素環化合物が2個以上結合した化合物又はアセン骨格を含む化合物の合成方法の一例を記載する。
(1)単環の芳香族化合物及び/又は単環の複素環化合物が2個以上結合した化合物
ベンゼン又はチオフェンのみからなる化合物の合成方法の一例を以下の(A)〜(C)に示す。なお、下記チオフェンのみからなる化合物の合成例では、チオフェンの3量体から6あるいは7量体への反応のみを示した。しかし、ユニット数の異なるチオフェンと反応させれば、前記6あるいは7量体以外の化合物を形成できる。例えば、2−クロロチオフェンをカップリングした後にNCSによりクロロ化させた2−クロロビチオフェンに下記と同様の反応をさせることによって、チオフェン4あるいは5量体を形成できる。更に、チオフェン4量体をNCSによりクロロ化させれば更にチオフェン8あるいは9量体も形成することができる。
Figure 2006036723
所定数のチオフェンとベンゼン由来のユニットがそれぞれ結合した単位を直接結合することにより、ブロック型の化合物を得る方法としては、例えば、グリニヤール反応を使用する方法がある。この場合の合成例としては、以下の方法が適用できる。
まず、単純ベンゼン又は単純チオフェン化合物の所定位置をハロゲン化(例えば、ブロモ化)した後に、n−BuLi、B(O−iPr)3を付与することによって脱ブロモ化及びホウ素化できる。このときの溶媒は、エーテルが好ましい。また、ホウ素化させる場合の反応は、2段階であり、初期は反応を安定化させるために、1段階目は−78℃で行い、2段階目は−78℃から室温に徐々に温度を上昇させることが好ましい。一方で、両端にハロゲン基(例えば、ブロモ基)を有するベンゼンあるいはチオフェンを用いてグリニヤール反応からブロック型化合物の中間体を作製しておく。
この状態で、未反応のブロモ基と上記のホウ素化された化合物を、例えばトルエン溶媒中に展開させ、Pd(PPh34、Na2CO3の存在下、85℃の反応温度にて、反応を完全に進行させれば、カップリングを起こさせることが可能である。結果的に、ブロック型の化合物を合成することができる。
このような反応を用いた化合物(D)及び(E)の合成ルートの一例を以下に示す。
Figure 2006036723
ベンゼンあるいはチオフェンに由来するユニットとビニル基が交互に結合される化合物の合成方法としては、例えば以下の方法が適用できる。すなわち、ベンゼンあるいはチオフェンの反応部位にメチル基を有する原料を準備した後に、その両端を2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)及びN−ブロモスクシンイミド(N―bromosuccinimide:NBS)を用いてブロモ化させる。この後、ブロモ体にPO(OEt)3を反応させ、中間体を形成させる。つづいて、末端にアルデヒド基を有する化合物と、中間体とを、例えばDMF溶媒中でNaHを用いて反応させることによって、上記の化合物は形成できる。なお、得られた化合物は、末端にメチル基を有するため、例えばこのメチル基を更にブロモ化させ、上記合成ルートを再度適用すれば、更にユニット数の多い化合物を形成できる。
このような反応を用いて長さの異なる化合物(F)〜(H)の合成ルートの一例を以下に示す。
Figure 2006036723
いずれの化合物についても、所定の位置に側鎖(例えばアルキル基)を有する原料を用いることもできる。すなわち、例えば、原料として2−オクタデシルターチオフェンを用いれば、上記の合成ルートにより化合物(A)として2−オクタデシルセクシチオフェンを得ることができる。同様に、所定の位置にあらかじめ側鎖を有する原料を用いれば、上記(A)〜(H)のいずれの化合物でかつ、側鎖を有する化合物を得ることができる。
また、上記合成例で使用した原料は、汎用の試薬であり、試薬メーカーより入手、利用できる。以下に原料のCASナンバー、及び、試薬メーカーとして例えばキシダ化学より入手した場合の試薬の純度を示しておく。
Figure 2006036723
(2)アセン骨格を含む化合物
アセン骨格を含む化合物の合成方法としては、例えば(1)原料化合物の所定位置の2つの炭素原子に結合する水素原子をエチニル基で置換した後に、エチニル基同士を閉環反応させ工程を繰り返す方法、(2)原料化合物の所定位置の炭素原子に結合する水素原子をトリフラート基で置換し、フラン又はその誘導体と反応させ、続いて酸化させる工程を繰り返す方法等が挙げられる。これらの方法を用いたアセン骨格の合成法の一例を以下に示す。
方法(1)
Figure 2006036723
方法(2)
Figure 2006036723
また、上記方法(2)では、アセン骨格のベンゼン環を一つずつ増やす方法であるため、例えば原料化合物の所定部分に反応性の小さな官能基あるいは保護基が含まれていても同様にアセン骨格を含む化合物を合成できる。この場合の例を以下に示す。
Figure 2006036723
なお、Ra、Rbは、炭化水素基やエーテル基等の反応性の小さな官能基あるいは保護基であることが好ましい。
また、上記方法(2)の反応式中、2つのアセトニトリル基及びトリメチルシリル基を有する出発化合物を、これら基が全てトリメチルシリル基である化合物に変更してもよい。また、上記反応式中、フラン誘導体を使用した反応後、反応物をヨウ化リチウム及びDBU(1,8−diazabicyclo[5.4.0]undec−7−ene)下で、還流させることで、出発化合物よりベンゼン環数が1つ多く、かつヒドロキシル基が2つ置換した化合物を得ることができる。
また、上記合成例で使用した原料は、汎用の試薬であり、試薬メーカーより入手、利用できる。例えばテトラセンは東京化成より純度97%以上で入手できる。
ケイ素化合物は、公知の手段、例えば転溶、濃縮、溶媒抽出、分留、結晶化、再結晶、クロマトグラフィー等により反応溶液から単離、精製することができる。
本発明のケイ素化合物によれば、単一単分子膜又は単分子累積膜のいずれかの構造を有する有機薄膜を得ることができる。単分子累積膜の場合、当該膜を構成する少なくとも2つの単分子膜が本発明のケイ素化合物から形成されていればよい。
有機薄膜が単一単分子膜の構造を有する場合、当該単分子膜がケイ素化合物から形成され、基板表面に化学吸着している。すなわち、当該有機薄膜(単分子膜)を構成するケイ素化合物は化学結合、特にシラノール結合(−Si−O−)を介して基板表面に結合され、結果として有機薄膜は化学結合を介して基板に形成(固定化)されている。
有機薄膜が単分子累積膜の構造を有する場合、当該有機薄膜を構成する少なくとも2つの単分子膜、好ましくは全ての単分子膜がケイ素化合物から形成されている。全ての単分子膜がケイ素化合物から形成されている場合、最下層の単分子膜は基板と化学結合、特にシラノール結合を介して形成され、他の単分子膜は直下の単分子膜と逐次的に化学結合、特にシラノール結合を介して形成されている。
このケイ素化合物は、例えば、以下のように有機薄膜とすることができる。
まず、ケイ素化合物をヘキサン、クロロホルム、四塩化炭素等の非水系有機溶媒に溶解する。得られた溶液(例えば、1mM〜100mM程度の濃度)中に、薄膜を形成しようとする基板を浸漬して、引き上げる。あるいは、得られた溶液を基板表面に塗布してもよい。その後、非水系有機溶媒で洗浄し、水洗し、放置するか加熱することにより乾燥して、有機薄膜を定着させる。この薄膜は、そのまま有機薄膜として用いてもよいし、更に電解重合等の処理を施して用いてもよい。
ここで基板としては、有機薄膜の用途により適宜選択することができる。例えば、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体、GaAs、InGaAs、ZnSe等の化合物半導体等の半導体;ガラス、石英ガラス;ポリイミド、PET、PEN、PES、テフロン(登録商標)等の絶縁性の高分子フィルム;ステンレス鋼(SUS);金、白金、銀、銅、アルミニウム等の金属;チタン、タンタル、タングステン等の高融点金属;高融点金属とのシリサイド、ポリサイド等;酸化シリコン(熱酸化シリコン、低温酸化シリコン:LTO等、高温酸化シリコン:HTO)、窒化シリコン、SOG、PSG、BSG、BPSG等の絶縁体;PZT、PLZT、強誘電体又は反強誘電体;SiOF系材料、SiOC系材料もしくはCF系材料又は塗布で形成するHSQ(hydrogen silsesquioxane)系材料(無機系)、MSQ(methyl silsesquioxane)系材料、PAE(polyarylene ether)系材料、BCB系材料、ポーラス系材料もしくはCF系材料又は多孔質材料等の低誘電体等の材料からなる基板が挙げられる。更に、いわゆるSOI基板、多層SOI基板、SOS基板等も使用できる。これら基板は単独でも、複数積層されていてもよい。
なかでも、水酸基、カルボキシル基等の活性水素を表面に突出させることができる基板又は親水化処理により活性水素を突出させることができる基板が好ましい。なお、親水化処理は、例えば、過酸化水素と濃硫酸との混合溶液中に基板を浸漬することによって行うことができる。
本発明のケイ素化合物は、結果的に脱離反応性の高い側の末端がオキシ基、好ましくは−Si−O−基に変換され、表面を親水化処理する等して活性水素が突出した基板表面に結合することにより、膜状に配置できる。また、ケイ素化合物中のSiは、通常、隣接するケイ素化合物中のSiと、オキシ基を介して結合することが可能である。
つまり、ケイ素化合物は、含有される基の脱離反応性が異なる2つのシリル基を有するため、それらの基(A11〜A13とA21〜A23)の脱離能を制御することにより、膜厚が均一で、かつ分子が秩序性をもって配列する分子結晶性を有する単一単分子膜及びその累積膜を再現性良く製造可能となる。すなわち、ケイ素化合物がシラノール結合を介して結合するためには、シリル基に結合する官能基が脱離して水酸基あるいはプロトンに置換される必要がある。本発明においては、選択的に一方のシリル基における脱離反応性の比較的高い基(A11〜A13)が水酸基あるいはプロトンに置換され、基板表面あるいは直下の単分子膜表面の水酸基(あるいはカルボキシル基)と反応し、シラノール結合が形成される。
他方のシリル基は脱離反応性が比較的低い基しか有さず、そのような基は水酸基あるいはプロトンに置換されないため、基板や直下の単分子膜と反応することはない。その結果、各単分子膜において化合物分子が同一方向に配列されるため、膜厚が均一で、かつ分子結晶性を有する単一単分子膜及びそれらの累積膜を形成できる。なお、両端のシリル基がいずれも脱離反応性の比較的高い基を有すると、各単分子膜において部分的に厚み方向で2分子化、3分子化するため、得られる薄膜の厚みは不均一になり、所望の分子結晶性を達成できない。
本発明のケイ素化合物は、単分子膜を積み重ねた累積膜の形成に好適に使用できる。
また、上記薄膜が単分子膜の場合、その膜厚は、有機基Bの種類によって適宜調整することができるが、例えば、1nm〜12nm程度、更に、経済性、量産化を考慮すると、1nm〜3.5nm程度が好ましい。単分子膜の累積膜の場合の膜厚は、単分子膜の膜厚をc、累積数をd層とした場合、膜厚はほぼc×dとなる。単分子膜ごとに異なる機能を有する薄膜を作製する場合には、その機能に応じて単分子膜の分子構造及び膜厚を異ならせる場合もあり、その場合の単分子累積膜の膜厚は必要に応じて適宜調整することができる。
このように、薄膜、例えば、単分子膜又は累積単分子膜を形成することにより、ケイ素化合物が容易に自己組織化され、一定の方向にユニットを配向させた薄膜とすることができる。つまり、隣り合うユニット間距離を最小限にして、高度に結晶化された有機薄膜を得ることができ、その結果、基板表面に対して垂直方向に導電性を示す有機薄膜を得ることができる。
また、隣り合う式(I)におけるSiがそのまま、又は酸素原子を介して架橋する場合には、例えば、Si−O−Siネットワークに制御されて、隣り合うユニット間距離が小さく、かつより高度に結晶化される。特に、ユニットが、直鎖に配置されている場合には、隣り合うユニット同士は結合せずに、隣り合うユニット間距離を最小限にして、高度に結晶化された材料を得ることができる。このようなユニットの配向により、基板の表面方向に半導体特性を示す有機薄膜を得ることができる。
このように、基板表面に対して、垂直方向と表面方向で、電気特性が異なる電気的異方性を有する薄膜を得ることができる。
ケイ素化合物を用いた有機薄膜の形成方法を図面を用いて簡単に説明する。
有機薄膜の形成に際しては、ケイ素化合物を用いて、LB法、ディッピング法、コート法等の方法により、当該化合物におけるA11〜A13を有するシリル基と基板表面とを反応させ1の単分子層からなる単一単分子膜を形成する。ケイ素化合物は、含有される基(A11〜A13とA21〜A23)の脱離反応性が異なる2つのシリル基を両端に有するため、脱離反応性の比較的高い基(A11〜A13)を有するシリル基が選択的に基板表面と結合する。例えば、図1は、前記構造式(a1)の化合物を用いた場合の単一単分子膜の概念図であり、脱離反応性の比較的高い塩素原子が水酸基に置換され、当該基を有するシリル基が選択的に基板1表面と結合している。図1において、基板1表面に吸着した単分子膜の空気界面の末端シリル基に結合している官能基は容易には脱離しないので、他の分子や基板との吸着反応が生じることはない。
本発明においては、脱離反応性の比較的高い基(A11〜A13)を有するシリル基を選択的に基板と結合させるために、当該脱離反応性の高い基を選択的に水酸基あるいはプロトンに置換させる。そのためには、反応条件による各基(A11〜A23)の反応性の違いを利用して、膜形成時の溶媒雰囲気及び反応温度等をかえればよい。例えば、溶媒が水の場合にはpHを変えることで、また溶媒が有機溶媒の場合では水酸化溶媒を用いることで、溶媒におけるプロトン濃度を調節し、反応性を制御できる。
例えば、A11〜A13がハロゲン原子であって、A21〜A23がアルコキシ基である有機化合物を用いて後述のLB法で単分子膜を形成する場合には、水のpHを調整することによって、A11〜A13のみを水酸基に置換できる。当該ケイ素化合物を用いて後述のディッピング法で単分子膜を形成する場合には、当該ケイ素化合物が溶解される有機溶媒に微量含有される水の存在によってA11〜A13は容易に水酸基に置換されるため、必ずしもpH等を調整する必要はない。
また例えば、A11〜A13がエトキシ基であって、A21〜A23がブトキシ基であるケイ素化合物を用いて後述のLB法で単分子膜を形成する場合には、水のpHを4程度に調整することによって、A11〜A13のみを水酸基に置換できる。
LB法(Langmuir Blodget法)では、本発明のケイ素化合物を有機溶剤に溶解し、得られた溶液をpHが調整された水面上に滴下し、水面上に薄膜を形成する。このとき、ケイ素化合物の一端のシリル基における脱離反応性の比較的高い基(A31〜A22)が加水分解によって水酸基に変換される。次いで、その状態で水面上に圧力を加え、水酸基を表面に有する基板を引き上げることによって、ケイ素化合物における脱離反応性の比較的高い基(A11〜A13)を有するシリル基を基板と結合させ、図1に示すような単一単分子膜が得られる。
またディッピング法、コート法では、ケイ素化合物を有機溶剤に溶解し、得られた溶液中に、水酸基を表面に有する基板を浸漬して、引き上げる。あるいは、得られた溶液を基体表面にコートする。このとき、有機溶剤中の微量の水によって、ケイ素化合物の一端のシリル基における脱離反応性の比較的高い基(A11〜A13)が加水分解され、水酸基に変換される。次いで、所定時間、保持することによって、ケイ素化合物における脱離反応性の比較的高い基(A11〜A13)を有するシリル基を基板と結合させ、図1に示すような単一単分子膜が得られる。
単一単分子膜を形成した後は、通常、非水系溶媒を用いて単分子膜から未反応のケイ素化合物を洗浄除去する。
単分子累積膜を形成する場合は、先に形成された単分子膜の空気界面側に存在する未反応のシリル基を吸着反応のサイトとして、本発明のケイ素化合物からなる単分子膜を累積させる。ここで使用されるケイ素化合物は既に形成されている単分子膜に用いたものと同一であってもよいし、異なるものであってもよい。単分子膜を新たに累積させるに先立って、通常は、既に形成されている単分子膜の空気界面側に存在する未反応のシリル基が有するA21〜A23基(図1中、エトキシ基)を、前述のように溶媒雰囲気及び反応温度等を調整することにより、水酸基に置換させる。例えば、先に形成された単分子膜の表面を所定のpHに調整された水と接触させればよい。具体的には、先に形成された単分子膜を、所定pHの水に浸漬するか、又は単分子膜表面に所定pHの水を滴下すればよい。これによって、未反応のシリル基を吸着反応のサイトとして、より有効に単分子膜を累積可能となる。
累積される単分子膜は前記LB法、ディッピング法、コート法と同様の方法に準じて形成される。特に、LB法を採用する場合は、使用される水を所定のpHに調整することによって、A21〜A23基(図1中、エトキシ基)を水酸基に置換可能である。なお、置換前のA21〜A23基がそれ自体、新たに形成される単分子膜の有機化合物に対してある程度の反応性を有する場合、必ずしも水酸基に置換されなければならないというわけではない。
図2は、図1において空気界面側に存在する未反応のシリル基が有するエトキシ基を水酸基に置換したときの概念図である。
図3は、2つの単分子膜からなる2層累積膜の例である。図3では、図2の単分子膜(最下層膜)上に、当該膜を構成するケイ素化合物と同一のものを用いて単分子膜が累積されているが、累積される単分子膜は最下層膜で用いた有機化合物と異なるものからなっていてもよい。
以上のプロセスを繰り返すことによって、基板上に同一もしくは異なるケイ素化合物の単分子膜を逐次、均一に調製することができる。いずれの単分子膜においても、ケイ素化合物は、脱離反応性の比較的高い基(A11〜A13)を有するシリル基が選択的に基板又はその直下の単分子膜の表面と化学結合するので、得られる薄膜は膜厚が均一で、かつ優れた分子結晶性を有する。本発明においては単分子膜が2〜20層、特に2〜10層積層されてなる累積膜を形成した場合であっても、本発明の効果を得ることができる。そのときの合計膜厚は使用される化合物分子の長さに依存するため一概に規定できるものではないが、通常4〜300nm、特に4〜100nmが適当である。
本発明の有機薄膜は、ユニット(特にヘテロ原子の有無)や官能基の種類(電子吸引型又は電子供与型の基)を選択することで、例えばTFT等の有機薄膜トランジスタ、発光素子、太陽電池、燃料電池、センサ等を構成する導電性材料、光伝導性材料(フォトコンダクタ)、非線形光学材料等を構成する薄膜として使用することができる。また、末端に官能基を保持させることにより、リガンドとして酵素等を結合させることができるため、バイオセンサとしても使用することができる。以下に、本発明の有機薄膜のより具体的な適用例を記載する。
・TFTの半導体層(ソースドレイン間の領域)
・有機EL素子や有機リン光発光素子の電極間の膜(発光層、電子注入層、正孔注入層等)
・有機半導体レーザ(例えば、ダイオードのような電流注入型レーザ)の電極間の膜(それぞれの電極から注入されたホール及び電子を有機薄膜上で再結合させることで発光させ、得られた光を一定方向から取り出すことができる)
・太陽電池のp型及びn型材料(有機薄膜が、光励起特性を有するため、p型及びn型材料をそれぞれ薄膜とし重ねれば、p−nジャンクションを形成できるので、太陽電池を形成できる)
・燃料電池のセパレータ−
・ガスセンサの気体分子又はにおいセンサのにおい成分の吸着膜(くし型電極上に有機薄膜を設置すれば、気体分子の吸着による有機薄膜の導電性の変化により気体分子の濃度を評価するガスセンサを形成できる)
・イオンセンサのイオン感応膜
・バイオセンサ(例えば、免疫センサ)の感応膜(有機薄膜の酵素の選択性を利用する)
以下に、本発明のケイ素化合物及びその製造方法を実施例により具体的に説明する。
合成例1:グリニヤール法によるトリクロロシラン−ターチオフェン−トリエトキシシラン式(a2)の製造
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗を備えた1リットルガラスフラスコに、乾燥アルゴン気流下で金属マグネシウム2モル、トルエン溶液300mlを仕込み、ターチオフェン0.5モルを10度程度にて滴下漏斗から12時間かけて滴下し、滴下終了後15℃にて4時間熟成させ、グリニヤール試薬を調整した。
還流冷却器、攪拌機、温度計、滴下漏斗を備えたフラスコに乾燥アルゴン気流下で、金属マグネシウム2モル、トルエン溶液300ml、テトラエトキシシラン2.0モルそれぞれを仕込み、得られたグリニヤール試薬を0℃に冷却しながら滴下漏斗から12時間かけて滴下し、滴下終了後室温にて2時間熟成させた。反応液を減圧ろ過して、マグネシウムを除去した後、トリエトキシシラン−ターチオフェンを得た。
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗を備えた1リットルガラスフラスコに、乾燥アルゴン気流下でテトラクロロシラン2.0モル、テトラヒドロフラン(THF)300mlを仕込み、内温25℃以下にて、得られたトリエトキシシラン−ターチオフェンを2時間かけて滴下し、滴下終了後30度にて1時間熟成を行った。次いで、反応液を減圧にてろ過し、塩化マグネシウムを除去した後、ろ液よりTHF及び未反応のテトラクロロシランをストリップし、この溶液を蒸留して、式(a2)で示される化合物を得た。
得られた化合物の機器分析の結果を示す。
1H NMR(δ CDCl3): 7.63〜7.78ppm(m,C42S)
2.20ppm(m,C25
以上の測定結果から、この化合物が式(a2)で表されるトリクロロシラン−ターチオフェン−トリエトキシシランであることを確認した。
本合成例は、上記第1の方法で合成を行った。
合成例2:トリクロロシラン−ビフェニル−トリメトキシシラン式(b10)の製造
1−ヨード−4−クロロビフェニルを攪拌機、還流冷却機、温度計、滴下漏斗を備えた1リットルガラスフラスコに、乾燥アルゴン気流下で金属リチウム2モル、THF300mlを仕込み、0.5モルを、内温−10℃にて12時間かけて滴下し、滴下終了後室温にて4時間かけて熟成させ、4−クロロ−ビフェニルリチウムを得た。
攪拌機、還流冷却機、温度計、滴下漏斗を備えた1リットルガラスフラスコに、乾燥アルゴン気流下でテトラクロロシラン3.0モル、THF300mlを仕込み、氷冷し、内温20℃以下にて、得られた4−クロロ−ビフェニルリチウムを2時間かけて滴下し、滴下終了後20℃にて反応させた。次いで、反応液を減圧ろ過し、未反応リチウムを除去した後、ろ液よりTHF及び未反応のテトラクロロシランを除き、1−トリクロロシラン−4−クロロビフェニルを得た。
得られた1−トリクロロシラン−4−クロロビフェニルを再度グリニヤール試薬とするために、同様に金属マグネシウムを、内温10℃にて反応させて、1−トリクロロシラン−4−ビフェニルマグネシウムを合成し、テトラクロロシランと反応させることで式(b10)で示される化合物を得た。
得られた化合物の機器分析の結果を示す。
IR: 1590(m),1490(m),1430(m),1120(m),700(s)cm-1(Si−Ph)
UV−Vis: 261nm(Ph)
以上の測定結果から、この化合物が式(b10)で表されるトリクロロシラン−ビフェニル−トリメトキシシランであることを確認した。
本合成例は、上記第2の方法で合成を行った。
合成例3 トリエトキシシラン−テトラセン−トリブトキシシラン式(c6)の合成
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗を備えた1リットルガラスフラスコに、乾燥アルゴン気流下で金属マグネシウム2モル、クロロホルム溶液300mlを仕込み、テトラセン0.5モルを10℃程度にて滴下漏斗から12時間かけて滴下し、滴下終了後15℃にて4時間熟成させ、グリニヤール試薬を調整した。
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗を備えた1リットルガラスフラスコに、乾燥アルゴン気流下でテトラブトキシシラン2.0モル、THF300mlを仕込み、内温25℃以下にて、得られたグリニヤール試薬を2時間かけて滴下し、滴下終了後30℃にて1時間熟成を行った。次いで、反応液を減圧にてろ過し、塩化マグネシウムを除去した後、ろ液よりTHF及び未反応のテトラブトキシシランから、トリブトキシシラン−テトラセンを得た。
還流冷却器、攪拌機、温度計、滴下漏斗を備えたフラスコに乾燥アルゴン気流下で、金属マグネシウム2モル、トルエン溶液300mlを仕込み、得られたトリブトキシシラン−テトラセンを0℃に冷却しながら滴下漏斗から12時間かけて滴下し、滴下終了後室温にて2時間熟成させ、中間体を得た。2.0モルのテトラエトキシシラン、THF300mlを仕込み、10℃に冷却しながら、中間体を8時間かけて滴下した。混合物を4時間、10℃でかき混ぜた後室温に温め、更に2時間攪拌を行った。攪拌後、加水分解し、有機層を分離、水洗し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を留去し、残りをシリカゲルカラムで分離することにより式(c6)で示される化合物を得た。
得られた化合物の機器分析の結果を示す。
1H NMR(δ CDCl3): 2.20ppm(m,C25
UV−Vis: 400−500nm(テトラセンp帯)、265nm(テトラセンβ帯)
以上の測定結果から、この化合物が式(c6)で表されるトリエトキシシラン−テトラセン−トリブトキシシランであることを確認した。テトラセン以外にもアントラセン、ペンタセン等の他のアセン系化合物においても同様の方法でケイ素化合物を製造できることを確認した。
本合成例は、上記第1の方法で合成を行った。
合成例4:n−トリオクチルシラン−クォーターチオフェンートリエトキシシラン式(a13)の製造
攪拌機、還流冷却機、温度計、滴下漏斗を備えた1リットルガラスフラスコに、乾燥アルゴン気流下でTHF300ml、テトラエトキシシランを仕込み、実施例1と同様にして得たグリニヤール試薬を、内温0℃以下にて12時間かけて滴下し、滴下終了後室温にて4時間かけて熟成させ、トリエトキシシラン−クォーターチオフェンを得た。
攪拌機、還流冷却機、温度計、滴下漏斗を備えた1リットルガラスフラスコに、乾燥アルゴン気流下でテトラオクチルシラン2.0モル、THF300mlを仕込み、氷冷し、内温25℃以下にて、グリニヤール試薬を2時間かけて滴下し、滴下終了後30℃にて1時間熟成を行った。次いで、反応液を減圧ろ過し、未反応マグネシウムを除去した後、ろ液よりTHF及び未反応のテトラオクチルシランを除き、この溶液を除去して式(a13)で示される化合物を得た。
得られた化合物の機器分析の結果を示す。
1H NMR(δ CDCl3): 7.63〜7.78(m,C42S)
IR: 2966,2893cm-1(s,C25
UV−Vis: 410nm(トルエン溶液)(チオフェン環)
以上の結果から、この化合物が(式16)で表されるn-トリオクチルシラン−クォーターチオフェン−トリエトキシシランであることが判明した。
合成例5
合成例1及び2に準拠して、トリクロロシラン−クィンケチオフェン−トリエトキシシラン、トリクロロシラン−ヘキシチオフェン−トリエトキシシラン、トリクロロシラン−トリフェニル−トリエトキシシラン、トリオクタデシルシラン−ターフェニル−トリクロロシランも製造できることを確認した。更に、同様に両末端異種官能基を有するベンゼン及びチオフェンが8まで結合したオクタチオフェンやオクタフェニレンを含むケイ素化合物も製造できることを確認した。ベンゼン及びチオフェンが9以上結合した化合物では、原料の入手が困難になり、かつ合成の収率が低下することを確認した。
実施例1
合成例6:前記式(a1)で表されるジシリル化クォーターチオフェン(以下、チオフェン(a1)という)の合成
Figure 2006036723
2,2’−ビチオフェン(492−97−7)をクロロ化させるために、酢酸中、NBS及びクロロホルムで処理し、クロロ化を行った(中間体1)。クロロ化したビチオフェン同士を、DMF溶媒中でトリス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(tris(triphenylphosphine)Nickel:(PPh3)3Ni)を触媒として反応させることによって、クロロ化させた部分でビチオフェン同士を直接結合させて、クォーターチオフェンを合成した。
1リットルガラスフラスコに、乾燥窒素気流下で、1当量のクォーターチオフェン、1当量のトリエトキシブロモシラン、(ヘキサン/ジエチルエーテル)混合溶液300mlを仕込み、1当量のt−ブチルリチウムを−78℃にて滴下漏斗から12時間かけて滴下し、滴下終了後一度室温まで温めてから、−196℃に再度冷却した。反応溶液を蒸留して、トリエトキシシリル化したクォーターチオフェンの無色液体を留分として得た。
得られたトリエトキシシリル化したクォーターチオフェンをトルエン溶媒中に溶かし、0℃で1当量のt−ブチルリチウムを10時間かけて滴下した。滴下終了後、室温にて12時間攪拌を行い、サスペンションを得た。サスペンションを1当量のテトラクロロシランを混合したトルエン溶液中に−78℃で10時間かけて滴下した。滴下終了後、冷却バスからフラスコをはずして、更に6時間攪拌を行った。
沈殿物である塩化リチウムをろ過により除去した後、減圧ろ過により式(a1)で示される化合物を得た。
得られたチオフェン(a1)の機器分析の結果を示す。
1H NMR(δ CDCl3):
7.00ppm(m,8H,C42S)
3.83ppm(m,6H,C25
1.22ppm(m,9H,C25
UV−Vis: 400nm(C42S)
以上の測定結果から、この化合物が前記式(a1)の構造を有することを確認した。
合成例6:前記式(a12)で表されるジシリル化ヘキシチオフェン(以下、チオフェン(a12)という)の合成
Figure 2006036723
合成例5で示した手法を用いて、ビチオフェンの2段階カップリングによりヘキシチオフェンの合成を行った。
1リットルガラスフラスコに、乾燥窒素気流下で、1当量のヘキシチオフェン、1当量のトリイソプロピルブロモシラン、クロロホルム溶液300mlを仕込み、1当量のt−ブチルリチウムを−60℃にて滴下漏斗から12時間かけて滴下し、滴下終了後一度室温まで温めてから、−180℃に再度冷却した。反応溶液を蒸留して、トリイソプロピルシリル化したヘキシチオフェンの無色液体を留分として得た。
得られたトリイソプロピルシリル化したヘキシチオフェンをクロロホルム溶媒中に溶かし、0℃で一当量のt−ブチルリチウムを10時間かけて滴下した。滴下終了後、室温にて12時間攪拌を行い、サスペンションを得た。サスペンションを1当量のテトラエトキシシランを混合したクロロホルム溶液中に−78℃で10時間かけて滴下した。滴下終了後、冷却バスからフラスコをはずして、更に6時間攪拌を行った。
沈殿物である塩化リチウムをろ過により除去した後、減圧ろ過によりチオフェン(a12)を得た。
得られたチオフェン(a12)の機器分析の結果を示す。
1H NMR(δ CDCl3):
7.00ppm(m,12H,C42S)
3.83ppm(m,6H,OC25
1.80ppm(m,3H,C37
1.22ppm(m,9H,OC25
0.90ppm(m,18H,C37
UV−Vis: 439nm(C42S)
以上の測定結果から、この化合物が前記式(a12)の構造を有することを確認した。
膜製造例1:チオフェン(a1)の単分子膜のみからなる単一膜、チオフェン(a12)の単分子膜のみからなる単一膜、及びチオフェン(a1)の単分子膜及びチオフェン(a12)の単分子膜からなる2層累積膜の製造
Siウエハー、石英ガラス基板を(過酸化水素水/硫酸)混合溶液中への浸漬かつ紫外光照射により親水化処理を施し、純水でよく洗浄したものを基板として用いた。調製した基板を用いて、成膜を行った。
まず、チオフェン(a1)の0.2mMトルエン溶液をpH=7の水面上に展開し、トリクロロシリル基における塩素原子の脱離に伴う基板上への吸着反応をLB法を利用して行い、チオフェン(a1)の単分子膜を調製した。
別に、チオフェン(a12)を用いたこと、及び下層水のpHを2に調整したこと以外、上記と同様の方法によって、チオフェン(a12)の単分子膜を調製した。
次に、チオフェン(a12)の0.2mMトルエン溶液をpH=2の水面上に展開し、LB法によって、上記プロセスで調製したチオフェン(a1)の単分子膜上に成膜し、累積膜を形成した。pH=2の条件下で行うことで、吸着反応はチオフェン(a1)及び(a12)のトリエトキシシリル基の加水分解により進行する。
原子間力顕微鏡(AFM)(SPA400;セイコーインスツルメンツ社製)により累積膜の表面形態を50μmサイズで観察したところ、50μmサイズで膜は均一に形成されていた。また、膜を力学的処理により切削したところ、膜厚はクォーターチオフェン及びヘキシチオフェンの分子長の和に相当する6nm程度であった。このことから、膜厚の均一な単分子2層膜が調製できていることが判った。
膜の累積状態を詳細に評価するために、チオフェン(a1)の単分子膜のみからなる単一膜及びチオフェン(a1)及び(a12)の単分子2層膜をサンプルとして、(UV−3000;島津社製)により、紫外−可視吸収スペクトル測定を行った。結果、チオフェン(a1)の単分子膜では350nm付近に、チオフェン(a1)及び(a12)の単分子2層膜では350及び410nm付近にそれぞれピーク位置を持つ吸収が観測された。以上のことから、膜の2層累積化が行えていることが判明した。
「H−7500;日立社製」による電子線回折(ED)測定に基づいて、単分子2層累積膜の結晶配列を評価した。試料として、チオフェン(a1)の単分子膜のみからなる単一膜、チオフェン(a2)の単分子膜のみからなる単一膜、及びチオフェン(a1)及び(a2)の単分子2層膜を用いた。ED測定を行うための基板は、銅メッシュシートに支持膜としてホルムバール膜を貼り付けたものに、表面親水化処理するためにSiO2を蒸着させたものを用いた。その結果、チオフェン(a1)の単分子膜では0.40及び0.34nmの面間隔に相当する回折スポット、チオフェン(a1)及び(a12)の単分子2層膜では0.40及び0.34nm、0.42及び0.36nmの面間隔に相当する回折スポットがそれぞれ観測された。これより、それぞれの単一膜だけでなく単分子2層累積膜においても結晶配列の秩序性の高い累積膜が調製できていることが判った。
膜製造例2:チオフェン(a1)の単分子膜からなる単一膜及び2層〜5層累積膜の形成
チオフェン(a1)の0.01mMトルエン溶液に、膜製造例1で示した方法で調整した親水性基板を室温で12時間浸漬させた。基板表面に存在する水酸基とトリクロロシリル基が反応し、チオフェン(a1)の分子が吸着することで最下層の単分子膜が形成された。得られた基板を有機溶媒にて洗浄して残存する未反応のチオフェン(a1)を除去した。洗浄した基板を、pH=4の純水中に浸漬して、トリエトキシシリル基を加水分解してトリヒドロキシシリル基とした。そして、チオフェン(a1)の0.01mMトルエン溶液に、ヒドロキシシリル基末端で終焉した単分子膜形成基板を、室温で12時間浸漬させた。最下層の単分子膜の膜表面に存在するヒドロキシシリル基と溶液中のトリクロロシリル基の吸着反応により、最下層の単分子膜上に第2層目の単分子膜を調製した。更に、前記した第2番目の単分子膜の累積プロセスを3度繰り返して行うことで、チオフェン(a1)の単分子膜が5層積層されてなる5層累積膜を調製した。
以下では、膜の累積数に応じた膜厚、吸収特性及び結晶配列の周期性を評価するために、AFM観察、紫外可視吸収スペクトル測定及びED測定をそれぞれ膜製造例1と同様の方法により行った。その結果、AFM観察より、累積数がひとつ増大するごとに膜厚は3nm程度ずつ大きくなり、またUV−Vis吸収スペクトル測定よりπ−π*遷移に対応する吸収の吸光度の大きさは膜厚に対して線形的に増大していたことから、均一に膜の累積化が行えていることが判った。単一単分子膜から5層累積膜のそれぞれの膜に対してED測定を行ったところ、面間隔0.40及び0.34nmの回折スポットが観測されたことから、膜の結晶配列の秩序性は膜の累積化によって低下することなく、高配向の累積膜の形成が判明した。
面内電気AFM測定に基づいて、単一膜及び2層〜5層累積膜の電気特性を評価した。
図4は測定系の概略図である。基板として、金/クロムを数10nm蒸着させて作製したくし歯型形状の電極を有するマイカを用いて、電気特性を評価した。図中、10はSPM装置系のピエゾ素子、11はカンチレバー、12は単分子膜又は累積膜、13は金/クロム電極、14はマイカ基板、15は電流計測手段である。
面内方向における電極界面からの電流特性は、累積数が増大するにしたがい良好な傾向を示し、単一膜では約10-4S・cm-1であったのに対し、5層累積膜では約40-3S・cm-1と大きな値を示した。これより、配向性の高い累積膜を調製することによって電気特性を向上させることができ、本発明の化合物を用いた単分子膜の累積化は有機デバイスの高性能化のための膜厚制御に有用な知見を与えることができる。
実施例2
合成例8:前記式(b5)で表されるジシリル化ターフェニル(以下、ターフェニル(b5)という)の合成
Figure 2006036723
1リットルガラスフラスコに、乾燥窒素気流下で、1当量のターフェニル、1当量のトリエチルブロモシラン、クロロホルム溶液300mlを仕込み、1当量のt−ブチルリチウムを−78℃にて滴下漏斗から12時間かけて滴下し、滴下終了後一度室温まで温めてから、−196℃に再度冷却した。反応溶液を蒸留して、トリエチルシリル化したターフェニルの無色液体を留分として得た。
得られたトリエチルシリル化したターフェニルをトルエン溶媒中に溶かし、0℃で一当量のt−ブチルリチウムを10時間かけて滴下した。滴下終了後、室温にて12時間攪拌を行い、サスペンションを得た。サスペンションを1当量のテトラクロロシランを混合したトルエン溶液中に−78℃で10時間かけて滴下した。滴下終了後、冷却バスからフラスコをはずして、更に6時間攪拌を行った。
沈殿物である塩化リチウムをろ過により除去した後、減圧ろ過によりターフェニル(b5)を得た。
得られたターフェニル(b5)の機器分析の結果を示す。
1H NMR(δ CDCl3):
7.30〜7.54ppm(m,12H,C66
1.49ppm(m,6H,C25
0.90ppm(m,9H,C25
UV−Vis: 261nm(Ph)
以上の測定結果から、この化合物が前記式(b5)の構造を有することを確認した。
合成例9:前記式(b8)で表されるジシリル化ターフェニル(以下、ターフェニル(b8)という)の合成>
Figure 2006036723
1リットルガラスフラスコに、乾燥窒素気流下で、1当量のターフェニル、1当量のトリ−t−ブトキシブロモシラン、クロロホルム混合溶液300mlを仕込み、1当量のt−ブチルリチウムを−78℃にて滴下漏斗から12時間かけて滴下し、滴下終了後一度室温まで温めてから、−190℃に再度冷却した。反応溶液を蒸留して、トリ−t−ブトキシシリル化したターフェニルの無色液体を留分として得た。
得られたトリ−t−ブトキシシリル化したターフェニルをトルエン溶媒中に溶かし、0℃で一当量のt−ブチルリチウムを10時間かけて滴下した。滴下終了後、室温にて12時間攪拌を行い、サスペンションを得た。サスペンションを1当量のテトラクロロシランを混合したトルエン溶液中に−80℃で10時間かけて滴下した。滴下終了後、冷却バスからフラスコをはずして、更に6時間攪拌を行った。
沈殿物である塩化リチウムをろ過により除去した後、減圧ろ過によりターフェニル(b8)を得た。
得られたターフェニル(b8)の機器分析の結果を示す。
1H NMR(δ CDCl3):
7.30〜7.54ppm(m,12H,C66
3.83ppm(m,6H,C25
1.32ppm(m,6H,OC49
1.22ppm(m,9H,C25
UV−Vis: 259nm(Ph)
以上の測定結果から、この化合物が前記式(b8)の構造を有することを確認した。
膜製造例3:ターフェニル(b5)の単分子膜及びターフェニル(b8)の単分子膜からなる2層累積膜の製造
Siウエハー、石英ガラスの(過酸化水素水/硫酸)混合溶液中への浸漬かつ紫外光照射により親水化処理を施し、純水でよく洗浄したものを基板として、成膜を行った。
ターフェニル(b5)の0.2mMトルエン溶液をpH=7、水温40℃の水面上に展開し、トリクロロシリル基における塩素原子の脱離に伴う基板表面のシラノール基への吸着反応をLB法で行い、ターフェニル(b5)の単分子膜を調製した。調製した膜を有機溶媒を用いて洗浄し、乾燥させた。ターフェニル(b5)単分子膜の原子間力顕微鏡(AFM)観察を行い、表面形状の確認、膜の力学的切削による基板/膜の高低差の確認を行い、ターフェニル(b5)単分子膜が作製できていることが判明した。また、紫外可視吸収スペクトル測定では、ターフェニルのπ−π*遷移に帰属される吸収が290nmに観測され、単分子膜はターフェニル(b5)により形成されていることを確認した。
次に、ターフェニル(b8)の0.2mMトルエン溶液をpH=4、水温40℃の水面上に展開し、LB法によって、上記プロセスで調製したターフェニル(b5)の単分子膜上に成膜し、図5(A)に示すようなシラノール結合を介した累積膜を作製した。
膜製造例1と同様の方法で原子間力顕微鏡(AFM)観察による膜表面形態観察を50μmサイズで行ったところ、50μmサイズで膜は均一に形成されていた。また、膜を力学的処理により切削したところ、膜厚はそれぞれの分子長の和に相当する4nm程度であった。このことから、膜厚の均一な2層膜が調製できていることが判った。
膜製造例1と同様の方法による電子線回折(ED)測定に基づいて、2層累積膜の結晶構造を評価した。ED測定用試料は、SiO2を蒸着させたホルムバール膜を基板として用いて行った。その結果、2層累積膜において、フェニレン部の結晶構造に起因する回折スポットが観測された。このことは、ターフェニル(b5)及び(b8)のいずれもそれぞれの単分子膜は高い秩序性をもつ結晶配列を独立に形成していることを表している。
デバイス製造例1:有機薄膜トランジスタの作製及び電気特性の評価
図6に示す有機薄膜トランジスタを作製した。
まずシリコン基板25上にクロム/金を蒸着し、ゲート電極24を作製した。次に、化学気相吸着法により酸化シリコン膜によるゲート絶縁膜23を堆積した。更に、クロム/金をマスクをかけて蒸着し、ソース電極21及びドレイン電極22を作製した。
作製した電極付の基板に対して紫外光照射を行い、ゲート絶縁膜23表面に親水化処理を施した。得られた基板を用いたこと以外、膜製造例3と同様の方法により、ターフェニル(b5)及び(b8)の単分子膜からなる2層累積膜を調製し、図6に示す有機薄膜トランジスタを得た。
トランジスタの電気特性を評価するために、電界効果移動度及びオン/オフ比を測定した。種々の負のゲート電圧を印加しながらソース/ドレイン間の電圧を変化させて流れる電流量を(4155A;HP社製)計測した。その結果、電界効果移動度は約4x10-2cm2-1-1であり、またオン/オフ比は5桁程度であることが判明した。いずれの結果も、ターフェニル(b5)又は(b8)の単分子膜のみを形成したトランジスタよりも良い特性を示した。以上の結果から、種類の異なるπ電子共役系有機化合物を用いた単分子累積膜は、膜の均一性、配向性、結晶性更には電気特性の向上の効果が認められた。
比較例1
ターフェニル(b5)及びターフェニル(b8)の代わりにターフェニリルトリエトキシシランを用いたこと以外、デバイス製造例1と同様の方法でトランジスタを作製した。
得られたトランジスタの電気特性を実施例4と同様の方法で評価した。その結果、電界効果移動度は約1×10-2cm2-1-1であり、またオン/オフ比は4桁程度であり、デバイス製造例1のトランジスタが電気特性に著しく優れていることが判った。
実施例3
合成例10:前記式(c1)で表されるジシリル化アントラセン(以下、アントラセン(c1)という)の合成
Figure 2006036723
アントラセン(120−12−7)は東京化成より入手した。
シランカップリング反応
窒素雰囲気下、100mlナスフラスコに四塩化炭素50mLに溶解させた1当量のアントラセン及びNBSを加え、AIBN存在下で1.5時間反応させた。未反応物及びHBrをろ過により除去した後、カラムクロマトグラフを用いて、1箇所のみがブロモ化された貯留物を取り出し、カラムクロマトグラフにより精製することにより、表記の1−ブロモアントラセンを得た。
1当量の1−ブロモアントラセンを30mlのTHF溶液に溶解させて、1当量のn−BuLiを0℃にて10時間かけてゆっくり滴下した。混合溶液を4時間攪拌した後に、室温まで温めた。反応生成してできた深緑溶液を、室温にて1当量のテトラエトキシシランのTHF溶液に滴下し、15時間還流し混合させた。次いで、反応液を減圧ろ過して、未反応のテトラエトキシシラン、n−BuLiを除去した後、1−トリエトキシシリルアントラセンを得た。
1当量の1−トリエトキシシリルアントラセンを30mlのTHF溶液に溶解させて、1当量のn−BuLiを0℃にて10時間かけてゆっくり滴下した。混合溶液を4時間攪拌した後に、室温まで温めた。反応生成してできた深緑溶液を、室温にて1当量のテトラクロロシランのTHF溶液に滴下し、15時間還流し混合させた。次いで、反応液を減圧ろ過して、未反応のテトラエトキシシラン、n−BuLiを除去した後、カラムクロマトグラフにより精製することにより、アントラセン(c1)を得た。
得られたアントラセン(c1)の機器分析の結果を示す。
1H NMR(δ CDCl3):
8.30〜7.40ppm(m,8H,C148
3.83ppm(m,6H,OC25
1.22ppm(m,9H,OC25
UV−Vis: 375nm(C148
以上の測定結果から、この化合物が前記式(c1)の構造を有することを確認した。
合成例11:式(d1)で表されるフッ化ターチオフェン(以下、フルオロターチオフェン(d1)という)の合成
Figure 2006036723
全ての反応は窒素雰囲気下で行った。1当量のチオフェンを触媒として亜鉛を混合した酢酸溶液中で、臭素と還流させながら混合させることで、2,3,4,5−テトラブロモチオフェンを調製した。次に、マグネシウムとトリメチルクロロシランを(2,3,4,5−テトラブロモチオフェン:マグネシウム:トリメチルクロロシラン=1:2.5:2.5)のモル比となる量のTHF溶液中に混合し、4日間超音波洗浄をかけた。得られた2,5−ジトリメチルシリル−3,4−ジブロモチオフェンをフェニルスルフォニルフッ化窒素((PhSO22NF)、n−ブチルリチウムのTHF溶液中に混合させて、−78℃にて反応させ、ジブロモをジフルオロ化した。反応後の生成物を、80℃の酢酸中、NBSで処理し、トリメチルシリル基のブロモ化を行った(中間体1)。
また、2,5−ジトリメチルシリル−3,4−ジフルオロチオフェンを−78℃にて、n−ブチルリチウム、(PhSO22NF、トリブチル塩化スズ(Bu3SnCl)で処理して2位のトリメチルシリル基のフルオロ化反応を行い、2,3,4−トリフルオロ−5−トリメチルシリル−チオフェン(中間体2)を得た。
中間体1及び2をPdCl2(PPh32及びDMFからなる混合液中、80℃で反応させて、2−トリメチルシリル−3,4,7,8,9−ペンタフルオロ−ビチオフェンを得た。得られた生成物と中間体1を前記と同様の反応機構で反応させることで、両末端がトリメチルシリル基となるターチオフェンを合成した。このターチオフェンを、THF溶液中に混合させて、ドライアイス/アセトンバスで−78℃まで冷却した後、トリフルオロアセテート銀を2当量滴下して、溶解させるために5分間攪拌を行った。
次に、2当量のヨウ素を溶解させたTHF溶液を滴下してから、8時間、−78℃で攪拌し、室温まで温めて、2−トリメチルシリル−3,4,7,8,11,12−セクシフルオロ−13−ヨード−ターチオフェンを得た。得られた生成物1当量を30mlのTHF溶液に溶解させて、1当量のn−BuLiを0℃にて10時間かけてゆっくり滴下した。混合溶液を4時間攪拌した後に、室温まで温めた。反応生成してできた溶液を、室温にて1当量のテトラクロロシランのTHF溶液に滴下し、15時間還流し混合させた。
次いで、反応液を減圧ろ過して、未反応の2−トリメチルシリル−3,4,7,8,11,12−セクシフルオロ−13−ヨード−ターチオフェン、n−BuLiを除去した後、カラムクロマトグラフにより精製することにより、フルオロターチオフェン(d1)を得た。
得られたフルオロターチオフェン(d1)の機器分析の結果を示す。
1H NMR(δ CDCl3):
1.49ppm(m,9H,CH3
UV−Vis: 365nm(C42S)
以上の測定結果から、この化合物が前記式(d1)の構造を有することを確認した。
膜製造例4:アントラセン(c1)の単分子膜及びフルオロターチオフェン(d1)の単分子膜からなる2層累積膜の製造
Siウエハー、石英ガラスの(過酸化水素水/硫酸)混合溶液中への浸漬かつ紫外光照射により親水化処理を施し、純水でよく洗浄したものを基板として、成膜を行った。
アントラセン(c1)の0.2mMトルエン溶液をpH=7、水温40℃の水面上に展開し、トリクロロシリル基における塩素原子の脱離に伴う基板表面のシラノール基への吸着反応をLB法で行い、アントラセン(c1)の単分子膜を調製した。調製した膜を有機溶媒を用いて洗浄し、乾燥させた。アントラセン(c1)単分子膜の原子間力顕微鏡(AFM)観察を行い、表面形状の確認、膜の力学的切削による基板/膜の高低差の確認を行い、アントラセン(c1)単分子膜が作製できていることが判明した。また、紫外可視吸収スペクトル測定では、アントラセンのπ−π*遷移に帰属される吸収が370nmに観測され、単分子膜はアントラセン(c1)により形成されていることを確認した。
次に、フルオロターチオフェン(d1)の0.2mMトルエン溶液をpH=4、水温40℃の水面上に展開し、LB法によって、上記プロセスで調製したアントラセン(c1)の単分子膜上に成膜し、図5(B)に示すようなシラノール結合を介した累積膜を作製した。
膜製造例1と同様の方法で原子間力顕微鏡(AFM)観察による膜表面形態観察を50μmサイズで行ったところ、50μmサイズで膜は均一に形成されていた。また、膜を力学的処理により切削したところ、膜厚はそれぞれの分子長の和に相当する3.5nm程度であった。このことから、膜厚の均一な2層膜が調製できていることが判った。
膜製造例1と同様の方法による電子線回折(ED)測定に基づいて、2層累積膜の結晶構造を評価した。ED測定用試料は、SiO2を蒸着させたホルムバール膜を基板として用いて行った。その結果、2層累積膜において、アントラセン部及びターチオフェン部の結晶構造に起因する回折スポットが観測された。このことは、アントラセン(c1)及びフルオロターチオフェン(d1)のいずれもそれぞれの単分子膜は高い秩序性をもつ結晶配列を独立に形成していることを表している。
デバイス製造例2:太陽電池の作製及び電気特性の評価
ITO基板を陽極として用いて、基板表面を紫外光照射によって親水化処理したものに、合成例10及び11で示したアントラセン(c1)及びフルオロターチオフェン(d1)の単分子の累積膜をITO基板にp型のアントラセン(c1)、その膜上にn−型のフルオロターチオフェン(d1)膜が吸着するようにLB法により調製した。このITOガラス/(c1)/(d1)膜の上に金を10-3の真空度で40nmの厚さ蒸着し、有効面積20x10mm2の太陽電池セルを得た。得られた太陽電池セルのITO電極側から500Wのキセノンランプの光を照射して、開放電圧Vo、短絡電流Io、フィルファクタFF及び光電変換効率μを測定した。結果、それぞれの値は80mV、44μA/cm2、0.45及び4.3%であった。いずれの値も、電極間にアントラセン(c1)の単分子膜のみを形成した太陽電池、電極間にフルオロターチオフェン(d1)の単分子膜のみを形成した太陽電池よりも、3〜6倍程度大きい値であった。
比較例2
アントラセン(c1)の代わりに末端シリル基を有していないアントラセンを、フルオロターチオフェン(d1)の代わりに末端シリル基を有していないフルオロターチオフェンを用いたこと以外、デバイス製造例2と同様の方法で太陽電池を作製した。
得られた太陽電池の電気特性を実施例6と同様の方法で評価した。その結果、Voc、Io、FF及びμの値はそれぞれ、45mV、13μA/cm2、0.13及び1.1%であり、デバイス製造例2の太陽電池が電気特定に著しく優れていることが判った。
本発明における、基板に形成させた最下層単分子膜の分子配列を示す概念図である。 本発明における、最下層単分子膜表面の置換基の水酸基への置換反応後の分子配列を示したものである。 本発明における、最下層単分子膜への単分子第2層膜の吸着反応後の分子配列を示したものである。 面内電気AFM測定による電導度測定を説明するための概略図である。 本発明において、種類の異なるπ電子共役系分子含有ケイ素有機化合物を用いた単分子累積膜の模式図である。 実施例で製造した有機薄膜トランジスタの概略断面図を示したものである。 分子間距離と分子間力との関係を説明するための図である。
符号の説明
1:基板、10:SPM装置系のピエゾ素子、11:カンチレバー、12:単分子膜又は単分子累積膜、13:金/クロム電極、14:マイカ基板、15:電流計測手段、20:半導体層、21:ソース電極、22:ドレイン電極、23:ゲート絶縁膜、24:ゲート電極、25:基板

Claims (9)

  1. 下記式(1)
    (式) A1−B−A2 (1)
    {A1はSi−A111213(A11〜A13は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、OCn2n+1(n=1〜10)で表されるアルコキシ基、及びCn2n+1(n=1〜18)で表されるアルキル基から選択される基である)で表されるシリル基であり、Bは、官能基を有していてもよい、π電子共役系の化合物に由来する有機基であり、A2はSi−A212223(A21〜A23は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、OCn2n+1(n=1〜10)で表されるアルコキシ基、及びCn2n+1(n=1〜18)で表されるアルキル基から選択され、Siからの脱離反応性が、A11〜A13より低い基である)で表されるシリル基である}
    で表される脱離反応性の異なるシリル基を2つ有することを特徴とするπ電子共役系分子含有ケイ素化合物。
  2. 有機基Bは、π電子共役系の化合物に由来するユニットが直鎖状に1〜8個結合してなる基である請求項1に記載のπ電子共役系分含有ケイ素化合物。
  3. 有機基Bが、単環の芳香族炭化水素、縮合多環式炭化水素、単環の複素環化合物、縮合複素環化合物、アルケン、アルカジエン、アルカトリエンに由来する基から選択された基を少なくとも一つ含む請求項1に記載のπ電子共役系分子含有ケイ素化合物。
  4. 有機基Bが、ベンゼン、チオフェン、アセン、アルケン化合物に由来する基から選択された基を少なくとも一つ含む請求項3に記載のπ電子共役系分子含有ケイ素化合物。
  5. 11〜A13が、ハロゲン原子、アルコキシ基からなり、A21〜A23が、アルコキシ基、アルキル基からなる請求項1に記載のπ電子共役系分子含有ケイ素化合物。
  6. 11〜A13が、塩素、臭素及びヨウ素原子、メトキシ基、エトキシ基から選択され、A21〜A23が、メトキシ基、エトキシ基、n−又は2−プロポキシ基、n−,sec−又はtert−ブトキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基から選択される請求項5に記載のπ電子共役系分子含有ケイ素化合物。
  7. (式) B−MgX (2)
    (式中、Bは官能基を有していてもよい、π電子共役系の化合物に由来する有機基であり、Xはハロゲン原子である)で示される化合物と、
    (式) Y1−A1 (3)
    {式中、Y1はハロゲン原子であり、A1はSi−A111213(A11〜A13は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、OCn2n+1(n=1〜10)で表されるアルコキシ基、及びCn2n+1(n=1〜18)で表されるアルキル基から選択される基である)で表されるシリル基}で示される化合物とを反応させて、
    (式) B−A1 (4)
    を合成し、
    式(4)中、Bにハロゲン原子を結合させ、エトキシエタン又はテトラヒドロフラン(THF)の存在下で、マグネシウムやリチウム金属と反応させて
    (式) MgX−B−A1 (5)
    で示される化合物を合成した後、
    (式) Y2−A2 (6)
    {式中、Y2はハロゲン原子であり、A2はSi−A212223(A21〜A23は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、OCn2n+1(n=1〜10)で表されるアルコキシ基、又はCn2n+1(n=1〜18)で表されるアルキル基から選択され、Siからの脱離反応性が、A11〜A13より低い基である)で表されるシリル基である}で示される化合物と反応させて、
    (式) A1−B−A2 (1)
    で表される脱離反応性の異なるシリル基を2つ有するπ電子共役系分子含有ケイ素化合物を得ることを特徴とするπ電子共役系分子含有ケイ素化合物の製造方法。
  8. (式) X1−B−X2 (8)
    (式中、Bは、官能基を有していてもよい、π電子共役系の化合物に由来する有機基であり、X1及びX2は、それぞれ異なって、ハロゲン原子である。)で示される化合物を、マグネシウム又はリチウムからなる金属触媒を用いてグリニヤール反応剤とした後、
    (式) Y1−A1 (3)
    {式中、Y1はハロゲン原子、A1はSi−A111213(A11〜A13は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、OCn2n+1(n=1〜10)で表されるアルコキシ基、及びCn2n+1(n=1〜18)で表されるアルキル基から選択される基である)で表されるシリル基}で示される化合物と反応させ、下記式で表されるグリニヤール反応剤
    (式) A1−B−MgX2 (9)
    を得、その後、
    (式) Y2−A2 (6)
    {式中、Y2はハロゲン原子であり、A2はSi−A212223(A21〜A23は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、OCn2n+1(n=1〜10)で表されるアルコキシ基、又はCn2n+1(n=1〜18)で表されるアルキル基から選択され、Siからの脱離反応性が、A11〜A13より低い基である)で表されるシリル基である}で示される化合物と(式9)で示される化合物とを反応させ
    (式) A1−B−A2 (1)
    で表される脱離反応性の異なるシリル基を2つ有するπ電子共役系分子含有ケイ素化合物を得ることを特徴とするπ電子共役系分子含有ケイ素化合物の製造方法。
  9. 1がA111213より脱離反応性が高く、Y2がA212223より脱離反応性が高い請求項7又は8に記載のπ電子共役系分子含有ケイ素化合物の製造方法。
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