JP2004307847A - 機能性有機薄膜及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 薄膜の特性を決める要因である有機材料の化学構造と、膜の高次構造、例えば分子の結晶性、すなわち配向性とが両立した有機薄膜を得ることができ、ひいては、膜を形成する分子の主骨格部を電気的、光学的、電気光学的等の機能性を任意にもたせることができる機能性有機薄膜、更にはこのような薄膜を簡便な方法で製造することができる機能性有機薄膜の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 基板上に、 式 R−SiX123 (I)(式中、Rは、末端に官能基が置換されていてもよいπ電子共役系のユニットが複数結合してなる有機残基であり、X1、X2及びX3は、同一又は異なって、加水分解により水酸基を与える基である。)で表されるケイ素化合物を用いて成膜されてなる機能性有機薄膜により上記課題を解決する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、機能性有機薄膜及びその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、電気伝導性のような特性を有する機能性有機薄膜及びその製造方法に関する。
近年、無機材料を用いた半導体に対し、製造が簡単で加工しやすく、デバイスの大型化にも対応でき、かつ量産によるコスト低下が見込め、無機材料よりも多様な機能を有した有機化合物を合成できることから、有機材料を薄膜化し、有機光電変換素子、有機発光素子、絶縁膜、レジスト膜、非線形光学素子等の半導体デバイス等へ応用しようとする試みが盛んになされている。
なかでも、π電子共役系分子を含有する有機化合物を利用することにより、大きな移動度を有するTFTを作製できることが知られている。この有機化合物としては、代表例としてペンタセンが報告されている(例えば、IEEE Electron Device Lett.,18,606−608(1997))。ここでは、ペンタセンを用いて有機半導体層を作製し、この有機半導体層でTFTを形成すると、電界効果移動度が1.5cm2/Vsとなり、アモルファスシリコンよりも大きな移動度を有するTFTを構築することが可能であるとの報告がなされている。
しかし、上記に示すようなアモルファスシリコンよりも高い電界効果移動度を得るための有機化合物半導体層を作製する場合、抵抗加熱蒸着法や分子線蒸着法などの真空プロセスを必要とするため、製造工程が煩雑となるとともに、ある特定の条件下でしか結晶性を有する膜が得られない。また、基板上への有機化合物膜の吸着が物理吸着であるため、膜の基板への吸着強度が低く、容易に剥がれるという問題がある。更に、膜中での有機化合物の分子の配向をある程度制御するために、通常、あらかじめ膜を形成する基板にラビング処理等による配向制御が行われているが、物理吸着による成膜では、物理吸着した有機化合物と基板との界面での化合物の分子の整合性や配向性を制御できるとの報告は未だなされていない。
一方、このTFTの特性の代表的な指針となる電界効果移動度に大きな影響を及ぼす膜の規則性、結晶性については、近年、その製造が簡便なことから、有機化合物を用いた自己組織化膜が着目され、その膜を利用する研究がなされている。
自己組織化膜とは、有機化合物の一部を、基板表面の官能基と結合させたものであり、きわめて欠陥が少なく、高い秩序性すなわち結晶性を有した膜である。この自己組織化膜は、製造方法がきわめて簡便であるため、基板への成膜を容易に行うことができる。通常、自己組織化膜として、金基板上に形成されたチオール膜や、親水化処理により表面に水酸基を突出可能な基板(例えば、シリコン基板)上に形成されたケイ素系化合物膜が知られている。なかでも、耐久性が高い点で、ケイ素系化合物膜が注目されている。ケイ素系化合物膜は、従来から撥水コーティングとして使用されており、撥水効果の高いアルキル基や、フッ化アルキル基を有機官能基として有するシランカップリング剤を用いて成膜されていた。
しかし、自己組織化膜の導電性は、膜に含まれるケイ素系化合物中の有機官能基によって決定されるが、市販のシランカップリング剤には、有機官能基にπ電子共役系分子が含まれる化合物はなく、そのため自己組織化膜に導電性を付与することが困難である。したがって、TFTのようなデバイスに適した、π電子共役系分子が有機官能基として含まれるケイ素系化合物が求められている。
このようなケイ素系化合物として、分子の末端に官能基としてチオフェン環を1つ有し、チオフェン環が直鎖炭化水素基を介してケイ素原子と結合した化合物が提案されている(例えば、特許第2889768号公報:特許文献1)。更に、ポリアセチレン膜として、化学吸着法により、基板上に−Si−O−ネットワークを形成して、アセチレン基の部分を重合させるものが提案されている(例えば、特公平6−27140号公報:特許文献2)。また更に、有機材料として、チオフェン環の2、5位に直鎖炭化水素基がそれぞれ結合し、直鎖炭化水素の末端とシラノール基とが結合したケイ素化合物を用い、これを基板上に自己組織化させ、更に電界重合等により分子同士を重合させて導電性薄膜を形成し、この導電性薄膜を半導体層として使用した有機デバイスが提案されている(例えば、特許第2507153号公報:特許文献3)。更にまた、ポリチオフェンに含まれるチオフェン環にシラノール基を有するケイ素化合物を主成分とした半導体薄膜を利用した電界効果トランジスタが提案されている(例えば、特許第2725587号公報:特許文献4)。
特許第2889768号公報 特公平6−27140号公報 特許第2507153号公報 特許第2725587号公報
しかしながら、上記に提案されている化合物は、基板との化学吸着可能な自己組織化膜は作製可能であるが、TFTなどの電子デバイスに使用できる高い秩序性、結晶性、電気伝導特性を有する膜を必ずしも作製できなかった。更に、上記に提案されている化合物を有機TFTの半導体層に使用した場合、オフ電流が大きくなる問題点を有していた。これは、提案されている化合物が、いずれも分子の方向及び分子に垂直な方向に結合を有するためであると考えられる。
高い秩序性、すなわち、高い結晶性を得るためには、分子間に高い引力相互作用が働く必要がある。分子間力とは、引力項と反発項により構成されており、前者は分子間距離の6乗に、後者は分子間距離の12乗に反比例する。したがって、引力項と反発項を足し合わせた分子間力は図13に示す関係を有する。ここで、図13での極小点(図中の矢印部分)が、引力項と反発項との兼ね合いから最も分子間に高い引力が作用するときの分子間距離である。すなわち、より高い結晶性を得るためには、分子間距離を極小点にできる限り近づけることが重要である。したがって、本来、抵抗加熱蒸着法や分子線蒸着法等の真空プロセスにおいては、ある特定の条件下においてのみ、π電子共役系分子同士の分子間相互作用をうまく制御することで、高い秩序性、すなわち結晶性が得られている。このように分子間相互作用により構築される結晶性でのみ、高い電気伝導特性を発現することが可能となる。
一方、上記化合物は、Si−O−Siの2次元ネットワークを形成することで基板と化学吸着し、かつ、特定の長鎖アルキル同士の分子間相互作用による秩序性が得られる可能性はあるが、官能基である1つのチオフェン分子がπ電子共役系に寄与するのみであるため、分子間の相互作用が弱く、また電気伝導性に不可欠なπ電子共役系の広がりが非常に小さいという問題があった。仮に、上記官能基であるチオフェン分子の分子数を増やすことができたとしても、膜の秩序性を形成する因子が、長鎖アルキル部とチオフェン部との間で、分子間相互作用を整合一致させることは困難である。
更に、電気伝導特性としては、官能基である1つのチオフェン分子では、HOMO−LUMOエネルギーギャップが大きく、有機半導体層としてTFT等に使用しても、十分なキャリア移動度が得られないという課題が存在していた。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、簡便な製造方法により容易に結晶化させて膜を形成することができるとともに、得られた膜を基板表面に強固に吸着させて、物理的な剥がれを防止して、かつ、高い秩序性、結晶性、電気伝導特性を有する機能性有機薄膜を提供することを目的とする。
また、膜を構成する化合物中の分子の主骨格部に電気的、光学的、電気光学的等の機能性を任意にもたせることで、機能性有機薄膜を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、鋭意検討した結果、TFTのような電子デバイスに適応可能な有機薄膜を作製するには、Si−O−Siの2次元ネットワークを形成して、基板と強固に化学結合が可能であると同時に、その有機薄膜の秩序性(結晶性)はSi−O−Siの2次元ネットワーク上に形成した分子(ここではπ電子共役分子)の相互作用すなわち分子間力によって制御が可能であることを見いだし、本発明に至った。
かくして本発明によれば、基板上に、
式 R−SiX123 (I)
(式中、Rは、末端に官能基が置換されていてもよい基からなるπ電子共役系のユニットが複数結合してなる有機残基であり、X1、X2及びX3は、同一又は異なって、加水分解により水酸基を与える基である。)
で表されるケイ素化合物を用いて成膜されてなる機能性有機薄膜が提供される。
また、本発明によれば、基板上に、
式 R−SiX123 (I)
(式中、Rは、末端に官能基が置換されていてもよい基からなるπ電子共役系のユニットが複数結合してなる有機残基であり、X1、X2及びX3は、同一又は異なって、加水分解により水酸基を与える基である。)
で表されるケイ素化合物を用いて、化学吸着法により、機能性有機薄膜を形成することからなる機能性有機薄膜の製造方法が提供される。
更に、本発明によれば、基板上に、式
R−SiX123 (I)
(式中、Rは、末端に官能基が置換されていてもよい基からなるπ電子共役系のユニットが複数結合してなる有機残基であり、X1、X2及びX3は、同一又は異なって、加水分解により水酸基を与える基である。)
で表されるケイ素化合物に由来する第一の単分子膜と、該第一の単分子膜上に少なくとも一膜以上形成された基からなるπ電子共役系のユニットが複数結合したケイ素化合物を含む第二の単分子膜とからなる機能性有機薄膜が提供される。
また、本発明によれば、基板上に、式
R−SiX123 (I)
(式中、Rは、末端に官能基が置換されていてもよい基からなるπ電子共役系のユニットが複数結合してなる有機残基であり、X1、X2及びX3は、同一又は異なって、加水分解により水酸基を与える基である。)
で表されるケイ素化合物を用いて化学吸着法により第一の単分子膜を成膜し、該第一の単分子膜上に、化学吸着法を用いて、π電子共役系のユニットが複数結合したケイ素化合物を含む第二の単分子膜を少なくとも一膜以上形成する工程を含む機能性有機薄膜の製造方法が提供される。
本発明によれば、式(I)の化合物は、π電子共役系分子を有するケイ素化合物間で形成されるSi−O−Siの2次元ネットワーク化により、基板に化学吸着すると共に、膜の結晶化に必要な近距離力である、π電子共役系分子同士に作用する分子間相互作用が、効率的に働くため、非常に高い安定性を有し、且つ、高度に結晶化された膜を構成することができる。したがって、基板に物理吸着により作製した膜と比較して、得られた膜を基板表面に強固に吸着させて、物理的な剥がれを防止することができる。
また、有機薄膜を構成するケイ素化合物由来のネットワークと上部を構成する有機残基が直接結合しており、かつケイ素化合物由来のネットワークとπ共役系分子の分子間相互作用によって、高い秩序性(結晶性)を有する有機薄膜を形成することができる。これにより、分子平面と垂直な方向へのホッピング伝導により、キャリアの移動がスムーズに行われる。また、分子軸方向へも高い導電性が得られることで、導電性材料として、有機薄膜トランジスタ材料のみならず、太陽電池、燃料電池、センサ等に広く応用することが可能となる。
更に、本発明によれば、上記のような機能性有機薄膜を簡便に製造することが可能になる。
本発明において、機能性とは、導電性、半導体性、光励起特性、分子吸着性、感応性等の性質を意味する。
本発明の機能性有機薄膜は、基板上に形成されてなる。ここで基板としては、有機薄膜の用途により適宜選択することができる。例えば、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体、GaAs、InGaAs、ZnSe等の化合物半導体等の半導体;ガラス、石英ガラス;ポリイミド、PET、PEN、PES、テフロン(登録商標)等の絶縁性の高分子フィルム;ステンレス鋼(SUS);金、白金、銀、銅、アルミニウム等の金属;チタン、タンタル、タングステン等の高融点金属;高融点金属とのシリサイド、ポリサイド等;酸化シリコン(熱酸化シリコン、低温酸化シリコン:LTO等、高温酸化シリコン:HTO)、窒化シリコン、SOG、PSG、BSG、BPSG等の絶縁体;PZT、PLZT、強誘電体又は反強誘電体;SiOF系材料、SiOC系材料もしくはCF系材料又は塗布で形成するHSQ(hydrogen silsesquioxane)系材料(無機系)、MSQ(methyl silsesquioxane)系材料、PAE(polyarylene ether)系材料、BCB系材料、ポーラス系材料もしくはCF系材料又は多孔質材料等の低誘電体等の材料からなる基板が挙げられる。更に、いわゆるSOI基板、多層SOI基板、SOS基板等も使用できる。これら基板は単独でも、複数積層されていてもよい。
なかでも、水酸基、カルボキシル基等の活性水素を表面に突出させることができる基板又は親水化処理により活性水素を突出させることができる基板が好ましい。なお、親水化処理は、例えば、過酸化水素と濃硫酸との混合溶液中に基板を浸漬することによって行うことができる。
基板の表面には、式 R−SiX123 (I)で表されるケイ素化合物を用いて形成された膜が形成されている。この化合物は、結果的に化合物の末端がオキシ基、好ましくは−Si−O−基に変換され、表面を親水化処理する等して活性水素が突出した基板表面に結合することにより、膜状に配置できる。また、式(I)の化合物中のケイ素は、通常、隣接する式(I)の化合物中のケイ素と、オキシ基を介して結合することが可能である。
式(I)中、Rは、末端に官能基が置換されていてもよいπ電子共役系のユニットが複数結合してなる有機残基である。例えば、このユニットとしては、単環の芳香族炭化水素、単環の複素環化合物から選択される化合物に由来する基が挙げられる。
単環の芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、シメン、スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。なかでも、ベンゼンが好ましい。 単環の複素環化合物に含まれる複素原子としては、酸素、窒素及び硫黄原子が挙げられる。具体的な複素環化合物としては、フランのような酸素原子含有化合物、ピロール、ピリジン、ピリミジン、ピロリン、イミダゾリン、ピラゾリン等の窒素原子含有化合物、チオフェンのような硫黄原子含有化合物、オキサゾール、イソキサゾール等の窒素及び酸素原子含有化合物、チアゾール、イソチアゾール等の硫黄及び窒素原子含有化合物等が挙げられ、なかでも、チオフェンが特に好ましい。
単環の芳香族炭化水素、単環の複素環化合物に由来するユニットは、複数個、分岐状に結合していてもよいが、直線状に結合していることが好ましい。ユニットは、収率を考慮して、3〜10個結合していることが好ましく、更に、上記ユニットは、経済性、量産化を考慮すると、3〜8個結合していることがより好ましい。また、有機残基は、同じユニットが結合していてもよいし、すべて異なるユニット化合物が結合していてもよいし、複数種類のユニットが規則的に又はランダムな順序で結合していてもよい。
更に、ユニット間には、ビニレン基が位置していてもよい。ビニレン基を与える炭化水素としては、アルケン、アルカジエン、アルカトリエン等が挙げられる。アルケンとしては、炭素数2〜4の化合物、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。なかでも、エチレンが好ましい。アルカジエンとしては、炭素数4〜6の化合物、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン等が挙げられる。アルカトリエンとしては、炭素数6〜8の化合物、例えば、ヘキサトリエン、ヘプタトリエン、オクタトリエン等が挙げられる。
また、結合の位置は、ユニットが5員環の場合には、2,5−位、3,4−位、2,3−位、2,4−位等のいずれでもよいが、なかでも、2,5−位が好ましい。6員環の場合には、1,4−位、1,2−位、1,3−位等のいずれでもよいが、なかでも、1,4−位が好ましい。
例えば、このユニットの具体例としては、ビフェニル、ビチオフェニル、ターフェニル、ターチエニル、クォーターフェニル、クォーターチオフェン、クィンケフェニル、クィンケチオフェン、ヘキシフェニル、ヘキシチオフェン、チエニル−オリゴフェニレン(式(3)の化合物参照)、フェニル−オリゴオリゴチエニレン(式(4)の化合物参照)、ブロックコオリゴマー(式(5)又は(6)の化合物参照)に由来する1価の基、エチレン基、ジエチレン基等、あるいは上記の環状のユニット中にエチレン等の環状分子を伴わない共役二重結合を1又は2以上含む基が挙げられる。
有機残基の末端に置換することができる官能基は、例えば、式 K1−R’−SiX123 (I’)で表される置換基K1として表される。置換基K1としては、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、又は、カルボキシル基、エステル基等が挙げられる。これらの官能基のなかでも、立体障害により有機薄膜の結晶化を阻害しない官能基が好ましく、したがって、上記官能基の中でも炭素数1〜30の直鎖アルキル基が特に好ましい。また、官能基は、累積膜を作製する場合は、2層目以降に積層させる化合物と結合しうる官能基であることが好ましく、有機残基の末端に位置していることがより好ましい。そのような官能基としては、例えばアミノ基、カルボキシル基、アシル基、ホルミル基、カルボニル基、ニトロ基、ニトロソ基、アジド基、酸アジド基、酸塩化物基等が挙げられる。
また、上記官能基は、任意に、保護基で保護されていてもよい。つまり、官能基は、直接2層目以降に積層させる化合物が有する置換基と反応しうるものに限定されるわけではなく、何段階かのプロセス(例えば、脱保護等を含む)により2層目以降に積層させる化合物と反応しうる置換基に変換できるものであってもよい。このプロセスとしては、触媒反応や光変換反応等(例えば、ニッケル触媒存在下でのニトロ基からアミノ基への還元等)が挙げられる。
なお、式(I’)中、R’は、末端に官能基が置換されていること以外は、Rと同義である。
また、基板表面が親水性を有する場合、ケイ素化合物の有機残基の末端に親油性もしくは疎水性を有する置換基を挿入にすることで、基板への吸着性(基板の親水基と化合物の親水基が結合しやすくなる)を高めることができ、反応効率の向上につながる。すなわち、ケイ素化合物と親水性の基板との反応部位であるシラノール基以外の部分の親油性もしくは疎水性を高めることによって基板との反応性を向上させるという効果を有する。更に、親油性もしくは疎水性置換基を有している場合には、基板との反応溶液である非水系溶液への溶解性を向上させることもできる。
上記のように、ケイ素化合物の末端に、目的に応じて適当な官能基で置換することにより、基板上に作製した機能性有機薄膜の反応性や溶解性を調整することができる。更に、この官能基に他の化合物を結合させることにより、作製した膜の安定性を高めることができる。
このように、化合物の末端に官能基を有する構成とすることにより、機能性有機薄膜に所望の機能を付与することができる。なお、上記においては、1層目のケイ素化合物の末端に置換させる官能基について説明を行ったが、累積膜としたときの末端についても同様のことが言える。
また、X1、X2及びX3における加水分解により水酸基を与える基としては、特に限定されるものではなく、例えば、ハロゲン原子又は低級アルコキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、ヨウ素、臭素原子が挙げられる。
低級アルコキシ基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、2−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。更に、アルコキシ基の一部が、別の官能基(トリアルキルシリル基、他のアルコキシ基等)で置換されていてもよい。X1、X2及びX3は、同一であってもよいが、必ずしも全てが同一でなくてもよい。なかでも、全てが同一であることが好ましい。
式(I)のケイ素化合物の具体例としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
Figure 2004307847
Figure 2004307847
(式中、nは2〜8、mは2〜5、a+bは3〜10である。)
以下にケイ素化合物の合成方法を説明する。
式(I)で表されるケイ素化合物は、
・式 R−Li (II)で表される化合物と、 式 Y−SiX123 (III)(式中、X1、X2、X3及びYは上記と同義である。)で表される化合物とを反応させるか、又は、
・式 R−MgX (IV)(式中、R及びXは上記と同義である。)で表される化合物と、上記式(III)で表される化合物とをグリニヤール反応させることにより得ることができる。
式(II)又は(IV)の化合物は、例えば、RHで表される化合物を、アルキルリチウムと反応させて得るか、あるいはR−X(Xはハロゲン原子)で表される化合物をアルキルマグネシウムハライド又は金属マグネシウム等と反応させて得ることができる。
この反応で用いられるアルキルリチウムとしては、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等の低級(炭素数1〜4程度)アルキルリチウムが挙げられる。その使用量は化合物RH1モルに対して1〜5モルが好ましく、より好ましくは1〜2モルである。アルキルマグネシウムハライドとしてはエチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド等が挙げられる。その使用量は原料化合物R−XRH1モルに対して1〜10モルが好ましく、より好ましくは1〜4モルである。
反応温度は、例えば、−100〜150℃が好ましく、より好ましくは−20〜100℃である。反応時間は、例えば、0.1〜48時間程度である。反応は、通常、反応に影響のない有機溶媒中で行われる。反応に悪影響のない有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン等の脂肪族又は芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒等が挙げられ、これらは単独で又は混合液として用いることができる。なかでも、ジエチルエーテル、THFが好適である。反応は、任意に触媒を用いてもよい。触媒としては、白金触媒、パラジウム触媒、ニッケル触媒等、触媒として公知のものを用いることができる。
式(I)で表されるケイ素化合物の合成方法をより具体的に以下に説明する。以下の合成方法における反応温度や反応時間は上記内容と同様であり、例えば−100〜150℃、0.1〜48時間である。
以下では、単環の芳香族炭化水素の例であるベンゼンに由来するユニットと、単環の複素環化合物の例であるチオフェンに由来するユニットから構成される有機残基の前駆体の合成例を示す。ただし、チオフェンのような窒素含有複素環化合物と同様の方法で、窒素原子、酸素原子を含む複素環化合物についても、前駆体を形成することができる。
ベンゼン又はチオフェンに由来するユニットから構成される前駆体の合成方法としては、まず、ベンゼン又はチオフェンの反応部位をハロゲン化させた後に、グリニヤール反応を利用する方法が有効である。この方法を使用すれば、ベンゼンあるいはチオフェンの数を制御した前駆体を合成することができる。また、グリニヤール試薬を適用する方法以外にも、適当な金属触媒(Cu、Al、Zn、Zr、Sn等)を利用したカップリングによっても合成することができる。
更に、チオフェンについては、グリニヤール試薬を利用する方法以外に、下記合成方法を利用することができる。
すなわち、まず、チオフェンの2’位あるいは5’位をハロゲン化(例えば、クロロ化)させる。ハロゲン化させる方法としては、例えば、1当量のN−クロロスクシンイミド(N−Chlorosuccinimide:NCS)処理や、オキシ塩化燐(phosphorus oxychloride:POCl3)処理が挙げられる。このときの溶媒としては、例えばクロロホルム・酢酸(AcOH)混合液やDMFが使用できる。また、ハロゲン化したチオフェン同士を、DMF溶媒中でトリス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(tris(triphenylphosphine)Nickel:(PPh3)3Ni)を触媒として反応させることによって、結果的にハロゲン化させた部分でチオフェン同士を直接結合できる。
更に、ハロゲン化したチオフェンに対して、ジビニルスルホンを加え、カップリングさせることにより1,4−ジケトン体を形成させる。続いて、乾燥トルエン溶液中で、ローウェッソン剤(Lawesson Regent:LR)あるいはP410を加え、前者の場合一晩、後者の場合3時間程度還流させることによって、閉環反応を起こさせる。その結果、カップリングしたチオフェンの合計数よりもひとつチオフェンの数が多い前駆体を合成できる。
チオフェンの上記反応を利用して、チオフェン環の数を増加させることができる。
上記前駆体は、その合成に使用した原料と同じく、末端をハロゲン化させることができる。そのため、前駆体をハロゲン化させた後、例えばSiCl4と反応させることによって、末端にシリル基を有し、かつベンゼン又はチオフェンに由来するユニットのみからなる有機残基を備えたケイ素化合物(単純ベンゼン又は単純チオフェン化合物)を得ることができる。
一例として、ベンゼン又はチオフェンのみからなる有機残基の前駆体の合成方法と、前駆体のシリル化の方法の一例を以下の(A)〜(D)に示す。なお、下記チオフェンのみからなる前駆体の合成例では、チオフェンの3量体から6あるいは7量体への反応のみを示した。しかし、ユニット数の異なるチオフェンと反応させれば、前記6あるいは7量体以外の前駆体を形成できる。例えば、2−クロロチオフェンをカップリングした後にNCSによりクロロ化させた2−クロロビチオフェンに下記と同様の反応をさせることによって、チオフェン4あるいは5量体を形成できる。更に、チオフェン4量体をNCSによりクロロ化させれば更にチオフェン8あるいは9量体も形成することができる。
Figure 2004307847
所定数のチオフェンとベンゼン由来のユニットがそれぞれ結合した単位を直接結合することにより、ブロック型の有機残基の前駆体を得る方法としては、例えば、グリニヤール反応を使用する方法がある。なお、前駆体をSiCl4やHSi(OEt)3と反応させれば、目的のケイ素化合物を得ることができる。また、上記化合物のうち、末端アルコキシ基のシリル基を有する化合物については、比較的反応性が低いため、あらかじめ原料に結合された状態で合成できる。この場合の合成例としては、以下の方法が適用できる。
まず、単純ベンゼン又は単純チオフェン化合物のシリル基と逆末端をハロゲン化(例えば、ブロモ化)した後に、グリニヤール反応によって、シリル基と結合する官能基をハロゲンからアルコキシ基に変換させる。続いて、n−BuLi、B(O−iPr)3を付与することによって脱ブロモ化及びホウ素化できる。このときの溶媒は、エーテルが好ましい。また、ホウ素化させる場合の反応は、2段階であり、初期は反応を安定化させるために、1段階目は−78℃で行い、2段階目は−78℃から室温に徐々に温度を上昇させることが好ましい。一方で、両端にハロゲン基(例えば、ブロモ基)を有するベンゼンあるいはチオフェンを用いてグリニヤール反応からブロック型化合物の中間体を作製しておく。
この状態で、未反応のブロモ基と上記のホウ素化された化合物を、例えばトルエン溶媒中に展開させ、Pd(PPh34、Na2CO3の存在下、85℃の反応温度にて、反応を完全に進行させれば、カップリングを起こさせることが可能である。結果的に、ブロック型化合物の末端にシリル基を有するケイ素化合物を合成することができる。
このような反応を用いたケイ素化合物(E)及び(F)の合成ルートの一例を以下に示す。なお、ベンゼンあるいはチオフェンに由来するユニットの両末端にそれぞれハロゲン基(例えば、ブロモ基)及びトリクロロシリル基を有する化合物は、p−フェニレンあるいは2,5−チオフェンジイルとハロゲン化剤(例えば、NBS)との反応により両末端をハロゲン化させたのち、SiCl4と反応させ、一方をトリクロロシリル化させることにより形成することができる。
Figure 2004307847
ベンゼンあるいはチオフェンに由来するユニットとビニル基が交互に結合される前駆体の合成方法としては、例えば以下の方法が適用できる。すなわち、ベンゼンあるいはチオフェンの反応部位にメチル基を有する原料を準備した後に、その両端を2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)及びN−ブロモスクシンイミド(N―bromosuccinimide:NBS)を用いてブロモ化させる。この後、ブロモ体にPO(OEt)3を反応させ、中間体を形成させる。つづいて、末端にアルデヒド基を有する化合物と、中間体とを、例えばDMF溶媒中でNaHを用いて反応させることによって、上記の前駆体は形成できる。なお、得られた前駆体は、末端にメチル基を有するため、例えばこのメチル基を更にブロモ化させ、上記合成ルートを再度適用すれば、更にユニット数の多い前駆体を形成できる。
得られた前駆体を、例えばNBSを用いてブロモ化すれば、その部分とSiCl4とを反応させることが可能となる。よって、末端にSiCl3を有するケイ素化合物を形成できる。このような反応を用いて長さの異なる前駆体(G)〜(I)とケイ素化合物(J)の合成ルートの一例を以下に示す。
Figure 2004307847
いずれの化合物についても、所定の位置に側鎖(例えばアルキル基)を有する原料を用いることもできる。すなわち、例えば、原料として2−オクタデシルターチオフェンを用いれば、上記の合成ルートにより前駆体(A)として2−オクタデシルセクシチオフェンを得ることができる。したがって、ケイ素化合物(C)として、2−オクタデシルセクシチオフェントリクロロシランを得ることができる。同様に、所定の位置にあらかじめ側鎖を有する原料を用いれば、上記(A)〜(J)のいずれの化合物でかつ、側鎖を有する化合物を得ることができる。
また、上記合成例で使用した原料は、汎用の試薬であり、試薬メーカーより入手、利用できる。以下に原料のCASナンバー、及び、試薬メーカーとして例えばキシダ化学より入手した場合の試薬の純度を示しておく。
Figure 2004307847
このようにして得られるケイ素化合物は、公知の手段、例えば転溶、濃縮、溶媒抽出、分留、結晶化、再結晶、クロマトグラフィー等により反応溶液から単離、精製することができる。
この式(I)のケイ素化合物は、例えば、化学吸着法によって、以下のように薄膜とすることができる。
まず、式(I)のケイ素化合物をヘキサン、クロロホルム、四塩化炭素、n−ヘキサデカン等の非水系有機溶媒に溶解する。なお、式(I)において、置換基X1、X2及び/又はX3がアルコキシ基の場合、例えば、加水分解のような反応を促進する手法のために、非水系ではない溶液を使用してもよい。
この際の溶液の濃度は特に限定されるものではないが、例えば、1mM〜100mM程度が適当である。得られた溶液中に、薄膜を形成しようとする基板(好ましくは、水酸基、カルボキシル基等の活性水素を有する基板)を浸漬して引き上げる。あるいは、得られた溶液を基板表面に塗布してもよい。その後、非水系有機溶媒で洗浄し、放置するか加熱することにより乾燥して、薄膜を定着させることができる。この薄膜は、そのまま機能性有機薄膜として用いてもよいし、更に電解重合等の処理を施して用いてもよい。
上記のように形成した薄膜は、単分子膜であってもよいし、それらを積み重ねた累積膜であってもよい。
累積膜は、以下のように成膜することができる。
まず、図6(a)に示したように、基板31上に、例えば、化学吸着法により、末端に官能基(例えば、アミノ基等)を有したケイ素化合物の単分子膜を形成する。得られた基板31を、例えば、末端の官能基と反応しうる官能基(例えば、カルボキシル基等)を有した化合物(例えば、式(8)の化合物)を含む溶液中に一定時間浸漬させ、反応させることで、図6(b)に示したように、1層目の単分子膜の構造を変化させずに隣接分子との結合を有しない累積膜を形成することができる。
Figure 2004307847
なお、累積膜の製造方法は、上記に限定されるものではなく、積層させることができる一般的な手法であれば、いずれの手法でもよい。一般的な手法としては、上記の手法のほかに、あらかじめ作製した1層目の単分子膜に、電解重合処理や触媒反応等で、末端を、積層させる化合物と反応しうる官能基に変化させ、その後、積層させる化合物と反応させる手法が挙げられる。また、2層目以降に積層させる単分子膜は、例えば、式
2−R’−K3 (IV)
で表す化合物を用いて成膜することができる。式中、K2及びK3における官能基としては、上記K1と同様のものが挙げられる。
具体的には、式
R−SiX456 (V)
(式中、Rは上記と同義であり、X4〜X6のうちのひとつが加水分解により水酸基を与える基であり、他の二つは隣接分子と反応しない官能基である。)
で表される化合物を用いて成膜することができる。なお、式中、X4〜X6の加水分解により水酸基を与える基は、X1〜X3で表す基と同様のものが挙げられる。また、隣接分子と反応しない官能基としては、例えばアルキル基が挙げられる。
このような化合物としては、上記の式(8)の化合物が挙げられるが、これに限定されるものではなく、π電子共役系のユニットが含まれており、かつ、1層目の単分子膜と反応しうる官能基を有した化合物であればよい。
また、単分子膜の膜厚は、有機残基の結合個数によって適宜調整することができるが、例えば、1nm〜12nm程度、更に、経済性、量産化を考慮すると、1nm〜3.5nm程度が好ましい。単分子膜の累積膜の場合の膜厚は、単分子膜の膜厚をc、累積数をd層とした場合、膜厚はほぼc×dとなる。単分子膜ごとに異なる機能を有する膜を作製する場合には、その機能に応じて単分子膜の分子構造及び膜厚を異ならせる場合もあり、その場合の単分子累積膜の膜厚は必要に応じて適宜調整することができる。
このように、薄膜、例えば、単分子膜又は累積膜を形成することにより、式(I)のケイ素化合物が容易に自己組織化され、一定の方向にユニットを配向させた薄膜とすることができる。つまり、隣り合うユニット間距離を最小限にして、高度に結晶化された有機薄膜を得ることができ、その結果、基板表面に対して垂直方向に導電性を示す機能性有機薄膜を得ることができる。
また、隣り合う式(I)におけるケイ素がそのまま、又は酸素原子を介して架橋する場合には、例えば、Si−O−Siネットワークに制御されて、隣り合うユニット間距離が小さく、かつより高度に結晶化される。特に、ユニットが、直鎖に配置されている場合には、図1に示したように、隣り合うユニット同士は結合せずに、隣り合うユニット間距離を最小限にして、高度に結晶化された有機薄膜を得ることができる。このようなユニットの配向により、基板の表面方向に半導体特性を示す機能性有機薄膜を得ることができる。
特に、基板表面に対して、垂直方向と表面方向で、電気特性が異なる電気的異方性を有する薄膜を得ることができる。
更に、有機薄膜が累積膜である場合、図2に示すように、異なる機能を有する膜を累積することで、同一の膜において、異なる機能を膜のそれぞれの部分に分離することが可能となる。
本発明の機能性有機薄膜は、ユニット(特にヘテロ原子の有無)や官能基の種類(電子吸引型又は電子供与型の基)を選択することで、例えばTFT等の有機薄膜トランジスタ、発光素子、太陽電池、燃料電池、センサ等を構成する導電性材料、光伝導性材料(フォトコンダクタ)、非線形光学材料等を構成する薄膜として使用することができる。また、末端に官能基を保持させることにより、リガンドとして酵素等を結合させることができるため、バイオセンサとしても使用することができる。以下に、本発明の機能性有機薄膜のより具体的な適用例を記載する。
・TFTの半導体層(ソースドレイン間の領域)
・有機ELや有機リン光発光素子の電極間の膜(発光層、電子注入層、正孔注入層等)
・有機半導体レーザ(例えば、ダイオードのような電流注入型レーザ)の電極間の膜(それぞれの電極から注入されたホール及び電子を有機薄膜上で再結合させることで発光させ、得られた光を一定方向から取り出すことができる)
・太陽電池のp型及びn型材料(有機薄膜が、光励起特性を有するため、p型及びn型材料をそれぞれ薄膜とし重ねれば、p−nジャンクションを形成できるので、太陽電池を形成できる)
・燃料電池のセパレータ−
・ガスセンサの気体分子又はにおいセンサのにおい成分の吸着膜(くし型電極上に有機薄膜を設置すれば、気体分子の吸着による有機薄膜の導電性の変化により気体分子の濃度を評価するガスセンサを形成できる)
・イオンセンサのイオン感応膜
・バイオセンサ(例えば、免疫センサ)の感応膜(有機薄膜の酵素の選択性を利用する)
以下に、本発明の機能性有機薄膜及びその製造方法の実施例を説明する。
実施例1:ターフェニルトリクロロシランによる機能性有機薄膜形成
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロートを備えた500mlガラスフラスコに、ターフェニル1.5モルを四塩化炭素に溶解させた後、NBS、AIBNを加え、3時間攪拌した後に減圧濾過することによって、ブロモターフェニルを得た。続いて、攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロートを備えた500mlガラスフラスコに、金属マグネシウム0.5モル、THF(テトラヒドロフラン)300mlを仕込み、前記ブロモターフェニル0.5モルを50〜60℃にて滴下ロートから2時間かけて滴下し、滴下終了後65℃にて2時間成熟させ、グリニヤール試薬を調製した。
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロートを備えた1リットルのガラスフラスコに、SiCl4(テトラクロロシラン)1.0モル、トルエン300mlを仕込み、氷冷し、内温20℃以下にて、グリニヤール試薬を2時間かけて加え、滴下終了後、30℃にて1時間成熟を行った(グリニヤール反応)。
次いで、反応液を減圧にてろ過し、塩化マグネシウムを除いた後、ろ液よりトルエン及び未反応のテトラクロロシランをストリップし、この溶液を蒸留して、標題化合物を50%の収率で得た。
得られた化合物について、赤外吸収スペクトル測定を行ったところ、1080cm-1にSiC由来の吸収が観測され、化合物がSiC結合を有することが確認できた。
また、化合物を含む溶液の紫外−可視吸収スペクトル測定を行ったところ、波長280nmに吸収が観測された。この吸収は、分子に含まれるターフェニル分子のπ→π*遷移に起因しており、化合物がターフェニル分子を含むことが確認できた。
更に化合物の核磁気共鳴(NMR)測定を行った。得られた化合物を直接NMR測定することは、化合物の反応性が高いことより不可能であるため、化合物をエタノールと反応させ(塩化水素の発生を確認した)、末端の塩素をエトキシ基に変換した後、測定を行った。
7.95ppm〜7.35ppm(m) (13H 芳香族由来)
2.60ppm〜2.5ppm(m) (6H エトキシ基エチル基由来)
1.4ppm〜1.3ppm(m) (9H エトキシ基メチル基由来)
これらの結果から、得られた化合物が式(1)に示すターフェニルトリクロロシランであることを確認した。
このようにして作製したターフェニルトリクロロシランを用いて、機能性有機薄膜の形成を行った。
まず、石英基板を、過酸化水素と濃硫酸との混合溶液(混合比3:7)中において1時間浸漬し、石英基板表面を親水化処理した。その後、得られた基板を不活性雰囲気下において、ターフェニルトリクロロシランを非水系溶媒(例えば、n−ヘキサデカン)に溶解した10mMのターフェニルトリクロロシラン溶液に5分間浸漬させ、ゆっくりと引き上げ、溶媒洗浄を行うことで、石英基板上に膜を形成した。
膜を形成した石英基板を、紫外可視吸収分光光度計にて測定したところ、π電子共役系分子であるターフェニルの吸収波長に起因する272nmを検出した。また、エリプソメトリーによる膜厚測定から、分子長に相当する1.4nmという測定結果が得られた。これにより、石英基板上にπ電子共役系のターフェニルに由来する基を含む単分子膜が形成されていることが確認できた。
実施例2:ターチオフェントリクロロシランによる機能性有機薄膜の形成
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロートを備えた500mlガラスフラスコに、ターチオフェン1.0モルを四塩化炭素に溶解させた後、NBS、AIBNを加え、2.5時間攪拌した後に減圧濾過することによって、ブロモターチオフェンを得た。続いて、
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロートを備えた500mlガラスフラスコに、金属マグネシウム0.5モル、THF(テトラヒドロフラン)300mlを仕込み、前記ブロモターチオフェン0.5モルを50〜60℃にて滴下ロートから2時間かけて滴下し、滴下終了後65℃にて2時間成熟させ、グリニヤール試薬を調製した。
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロートを備えた1リットルのガラスフラスコにSiCl4(テトラクロロシラン)1.5モル、トルエン300mlを仕込み氷冷し、内温20℃以下にてグリニヤール試薬を2時間かけて加え、滴下終了後30℃にて1時間成熟を行った(グリニヤール反応)。
次いで、反応液を減圧にてろ過し、塩化マグネシウムを除いた後、ろ液よりトルエン及び未反応のテトラクロロシランをストリップし、この溶液を蒸留して、標題化合物を55%の収率で得た。
こうして得られた化合物について、赤外吸収スペクトル測定を行ったところ、1060cm-1にSiC由来の吸収が観測され、化合物がSiC結合を有することが確認できた。
また、化合物を含む溶液の紫外−可視吸収スペクトル測定を行ったところ、波長360nmに吸収が観測された。この吸収は、分子に含まれるターチオフェン分子のπ→π*遷移に起因しており、化合物がターチオフェン分子を含むことが確認できた。
更に化合物の核磁気共鳴(NMR)測定を行った。この化合物は、直接NMR測定することが、化合物の反応性が高いことより不可能であるため、化合物をエタノールと反応させ(塩化水素の発生を確認した)、末端の塩素をエトキシ基に交換した後に測定を行った。
7.50ppm〜7.00ppm(m) (7H チオフェン環由来)
2.60ppm〜2.5ppm(m) (6H エトキシ基エチル基由来)
1.4ppm〜1.3ppm(m) (9H エトキシ基メチル基由来)
これらの結果から、この化合物が式(2)で示されるターチオフェントリクロロシランであることを確認した。
このようにして作製したターチオフェントリクロロシランを用いて機能性有機薄膜を形成した。
実施例1と同様に、親水化処理を施した石英基板を、不活性雰囲気下において、ターチオフェントリクロロシランを非水系溶媒(例えば、n−ヘキサデカン)に溶解させた10mMのターチオフェントリクロロシラン溶液に5分間浸漬し、ゆっくりと引き上げ、溶媒洗浄を行って、石英基板上に膜を形成した。
膜を形成した石英基板を、紫外可視吸収分光光度計にて測定を行ったところ、π電子共役系分子であるターチオフェンの吸収波長に起因する357nmを検出した。また、エリプソメトリーによる、膜厚測定から、分子長に相当する1.2nmという測定結果が得られた。これにより、石英基板上にπ電子共役系分子であるターチオフェンに由来する基を含む単分子膜が確認できた。
実施例3:クオーターフェニルトリクロロシランによる機能性有機薄膜の形成
酸化膜(SiO2)を表面に有するSi基板を、過酸化水素と濃硫酸との混合溶液(混合比3:7)中において1時間浸漬し、石英基板表面を親水化処理した。
その後、不活性雰囲気下において、クオーターフェニルトリクロロシランを非水系溶媒(例えば、トルエン)に溶解させた5mMのクオーターフェニルトリクロロシラン溶液に5分間浸漬し、ゆっくりと引き上げ、溶媒洗浄を行い、Si基板上に単分子膜を形成した。
単分子膜を形成したSi基板を、X線回折装置にて測定したところ、結晶に起因する明瞭な回折ピークを確認することができた。検出された回折角より試算をした場合、面間隔:0.456nmに相当する。これにより、高度に結晶性を有する単分子膜が形成されていることがわかった。
実施例4:アミノターチオフェントリクロロシランの積層による累積機能性膜の形成
まず、前記の式(2’)の化合物であるアミノターチオフェントリクロロシランを、実施例2と同様にグリニヤール法により製造した。
このようにして作製したアミノターチオフェントリクロロシランを用いて機能性有機薄膜の形成を行った。
実施例1と同様に、親水化処理を施した石英基板を、不活性雰囲気下において、アミノターチオフェントリクロロシランを非水系溶媒(例えば、n−ヘキサデカン)に溶解させた10mMのアミノターチオフェントリクロロシラン溶液に5分間浸漬し、ゆっくりと引き上げ、溶媒洗浄を行って、石英基板上に、図6(a)に示ように、単分子膜を形成した。得られた単分子膜は、X線回折において2θ=22.7°にピークが確認され、面間隔0.39nmの結晶性を有していた。この単分子膜は、ターチオフェンを含む単分子膜とほぼ同様の結晶性を有していた。また、単分子膜の赤外測定において、波長3500〜3300cm-1にアミノ基由来の吸収が確認できた。このことより単分子膜がアミノ基を有していることを確認した。
続いて、以下の化合物
Figure 2004307847
であるターチオフェン誘導体を10mM含むトルエン溶液を調製し、前記単分子膜を前記溶液中に1時間浸漬した。次いで、単分子膜をゆっくりと引き上げ、溶媒洗浄を行うことで第二の単分子膜を第一の単分子膜上に形成させることで、図6(c)に示す累積膜を作製した。
得られた累積膜について、エリプソメトリーによる膜厚測定から、分子長に相当する2.6nmという測定結果が得られた。また、単分子膜の赤外測定において、波長3200cm-1にアミド基由来の吸収が確認された。これにより、石英基板上にアミド結合を介してπ電子共役系分子であるターチオフェンに由来する基を含む単分子膜が積層された構造を有する累積膜が形成されていることを確認した。
この実施例では、ターチオフェントリクロロシラン膜同士をアミド結合させた薄膜の例を示したが、結合種は第一と第二の単分子膜が化学結合されていればいかなる結合であってもかまわない。また、積層する化合物種についても、ここではπ電子共役系のユニットからなる有機残基のひとつであるターチオフェン由来の基を取り上げたが、π電子共役系のユニットからなる有機残基であればターチオフェン由来の基以外でもかまわない。
比較例1:ビフェニルトリクロロシランによる膜形成
実施例3と同様に親水化処理したSi基板を、不活性雰囲気下において、ビフェニルトリクロロシランを非水系溶媒(例えば、n−ヘキサデカン)に溶解させた5mMのビフェニルトリクロロシラン溶液に5分間浸漬し、ゆっくりと引き上げ、溶媒洗浄を行い、Si基板上に単分子膜を形成した。
得られた単分子膜を形成したSi基板を、X線回折装置で測定したところ、結晶に起因する明瞭な回折ピークを確認することはできなかった。これによりベンゼンの2量体であるビフェニルを含む単分子膜においては結晶性を有しないことが明白となった。
実施例5:ターチオフェントリクロロシランによる機能性有機薄膜の電気伝導度測定(基板に対して垂直方向)
ハイドープすることにより導電性(0.1〜0.2Ω・cm)を付与したSi基板を、酸化水素と濃硫酸との混合溶液(混合比3:7)中において1時間浸漬し、基板表面を親水化処理した。
その後、不活性雰囲気下において、ターチオフェントリクロロシランを非水系溶媒(例えば、n−ヘキサデカン)に溶解させた10mMのターチオフェントリクロロシラン溶液に5分間浸漬し、ゆっくりと引き上げ、溶媒洗浄を行い、基板上に膜を形成した。
得られた有機薄膜について、SPM(走査型プローブ顕微鏡)を用いて、有機薄膜の膜厚方向(基板に対して垂直方向)の電気伝導度を測定した結果、10-4S/cm以上と高い値が得られた。これにより、有機薄膜を構成する分子軸方向への導電性が得られるものと予測できる。
実施例6:クオーターチオフェントリクロロシランによる機能性有機薄膜の電気伝導度測定(基板に対して平面方向)
図3に示すように石英基板1上にAuの蒸着によって電極端子2a、2bを作製した。その後、両端子2a、2b間に所定の電圧を印加するための直流電源と、両端子2a、2b間の電流を検知するための電流計導電率測定手段4を設け、機能性有機薄膜3の電気伝導度を測定した。
このように作製した電極端子での電気伝導度測定の結果、10-5〜10-7S/cmという値を示した。
実施例1と同様の方法、すなわち過渡光電流測定法による移動度の測定の結果、クオーターチオフェントリクロロシラン有機薄膜の移動度は1×10-1cm2/Vsであった。
これらの結果より、この有機薄膜が基板に対して垂直方向に優れた導電性を有し、かつ、平面方向に優れた半導体特性を有する。つまり、垂直方向と平面方向で電気特性として異方性を有していることが明白となった。
比較例2:オクタデシルトリクロロシランを用いた薄膜の電気伝導度測定
実施例5及び6と同様にして、単分子膜を形成する材料としてオクタデシルトリクロロシランを用いた場合、膜の電気伝導度は垂直方向及び平面方向いずれも10-12S/cm以下という値を示し、電気的に絶縁体であることが明らかになった。
実施例7:ターチオフェントリクロロシランによる機能性有機薄膜の半導体特性
作製した膜の有する半導体特性を調べるため、図4に示すように、機能性有機薄膜23の両側にブロッキング電極21と対極22を備えたものを作製した。この系において、電極21−電極22間に電圧を加えた状態で、矢印に示す方向からブロッキング電極に光パルスを加えると、電極21側でキャリアが生成され、順次電極22に移動する。これを検出器24により検出すれば、キャリアの移動時間や、キャリアの分布状態より移動度を評価することができる(過渡光電流測定法)。この測定法を用いてターチオフェントリクロロシラン単分子膜の移動度を測定した結果、1×10-1cm2/Vsであった。
この結果から、ターチオフェントリクロロシランが半導体特性を有する材料として利用可能であることが示された。また、上述した(1)〜(7)の化合物についても、同様に移動度を測定したところ、同様の半導体特性を有することを確認した。
実施例8:有機薄膜トランジスタの作製
図5に示す有機薄膜トランジスタを作製するために、まず、シリコン基板10上にクロムを蒸着し、ゲート電極15を形成した。
次に、プラズマCVD法によりチッ化シリコン膜による絶縁膜16を堆積した後、クロム、金の順に蒸着を行い、通常のリソグラフィー技術によりソース電極13及びドレイン電極14を形成した。
続いて、得られた基板を、過酸化水素と濃硫酸の混合溶液(混合比3:7)中において1時間浸漬し、絶縁膜16表面を親水化処理した。その後、得られた基板を嫌気条件において、上記で得られたターチオフェントリクロロシランを非水系溶媒(例えば、n−ヘキサデカン)に溶解した20mMターチオフェントリクロロシラン溶液に5分間浸漬させ、ゆっくりと引き上げ、溶媒洗浄を行って、有機半導体層12を形成した。
得られた有機半導体層12について、紫外−可視吸収スペクトルで、波長360nmにターチオフェン吸収が見られたことより、基板(絶縁膜)表面にケイ素化合物が吸着していることを確認できた。また、エリプソメトリーによる、膜厚測定から、分子長に相当する1.2nmという測定結果が得られた。更に、X線回折において2θ=22.7°にピークが確認され、面間隔0.392nmの結晶性膜を形成していることがわかった。したがって、この結晶性膜は、例えば、図1に示すように、隣接するターチオフェン分子が規則的に形成されていると言える。つまり、絶縁膜16の表面に、シロキサン結合を介してπ電子共役系のユニットが結合されているが、隣接したケイ素化合物間においては、結合していない。実施例1で示したように、隣接するターチオフェン分子が互いの分子間相互作用によって高い秩序性を有した結晶性膜を形成できたと推察するのが妥当である。
これにより、ユニットの結合方向への導電性が高い膜を得ることができ、得られた有機薄膜トランジスタに、外部より電圧を印加したときに、隣接分子と結合していない分子間では、隣接分子間を電子が飛び移るいわゆるホッピング伝導による電子又はホール輸送が行われ、オン電流を大きくすることが可能となる。つまり、オン時には、誘起双極子間の相互作用により隣接分子間が小さいため、ホッピング伝導の起こりやすい環境になり、オン電流を高めることができる。また、隣接した有機分子間の結合がないため、外部電圧が印加されていない場合の漏れ電流は発生しない。
また、Si−O−Siの二次元ネットワークに含まれるSiと結合したπ電子共役系分子間(隣接する分子間)に結合がないため、オフ時の漏れ電流を軽減することが可能である。
上記で得られた有機薄膜トランジスタは、電界効果移動度が1×10-1cm2/Vsで、オン/オフ比が約6桁であり、良好な性能が得られた。
上記実施例より、π電子共役系のユニットを有し、かつ、水分と反応しうる官能基を有したシラノール基を有する化合物を用いて、例えば、化学吸着法により形成した単分子膜は、Si−O−Siの2次元ネットワークを形成するため、高度に自己組織化した膜を形成できる。
実施例9:2−オクチル−キンクケチオフェントリエトキシシランを用いた有機薄膜トランジスタの作製
実施例8と同様に、準備した電極付き基板を、5mMの2−オクチルーキンククインケチオフェントリエトキシシランのトルエン及び塩酸混合溶液中に一定時間(例えば10分)浸漬することによって、2−オクチル−クインケチオフェントリエトキシシラン膜を形成させることにより、有機半導体層を形成させ、有機薄膜トランジスタを形成した。形成した有機薄膜トランジスタの特性を図7に示す。この結果より形成した有機薄膜トランジスタは、電界効果移動度が1.5×10-1cm2/Vsであり、オン/オフ比が約6桁であった。
実施例10:2−ドデシル−セプチチオフェントリクロロシランを用いた有機薄膜トランジスタの作製
実施例8と同様に、準備した電極付き基板を、2mMの2−ドデシルーセプチチオフェントリエトキシシランのトルエン溶液中に一定時間(例えば5分)浸漬することによって、2−ドデシル−セプチチオフェントリクロロシラン膜を形成させ、有機半導体層を形成させることで、有機薄膜トランジスタを形成した。形成した有機薄膜トランジスタの特性を図8に示す。この結果より形成した有機薄膜トランジスタは、電界効果移動度が1.7×10-1cm2/Vsであり、オン/オフ比が約6桁であった。
実施例11:2−ヘキサデシル−クオーターフェニルトリメトキシシランを用いた有機薄膜トランジスタの作製
実施例8と同様に、準備した電極付き基板を、3mMの2−ヘキサデシルークオーターフェニルトリメトキシシランのトルエン溶液中に一定時間(例えば60分)浸漬することによって、2−ヘキサデシル−クオーターフェニルトリメトキシシラン膜を形成させることにより、有機半導体層を形成させ、有機薄膜トランジスタを形成した。形成した有機薄膜トランジスタの特性を図9に示す。この結果より形成した有機薄膜トランジスタは、電界効果移動度が1.3×10-1cm2/Vsであり、オン/オフ比が約6桁であった。
実施例12:2−ヘキサデシル−オクチフェニルトリメトキシシランを用いた有機薄膜トランジスタの作製
実施例8と同様に、準備した電極付き基板を、3mMの2−ヘキサデシルーオクチフェニルトリメトキシシラントルエン溶液中に一定時間(例えば60分)浸漬することによって、2−ヘキサデシル−オクチフェニルトリメトキシシラン膜を形成させることにより、有機半導体層を形成させ、有機薄膜トランジスタを形成した。形成した有機薄膜トランジスタの特性を図10に示す。この結果より形成した有機薄膜トランジスタは、電界効果移動度が1.6×10-1cm2/Vsであり、オン/オフ比が約6桁であった。
実施例13:有機ケイ素化合物(化E)n1=n3=2、n2=1を用いた有機薄膜トランジスタの作製
実施例8と同様に、準備した電極付き基板を、1mMの濃度で(化E)にて表される有機ケイ素化合物のTHF溶液中に一定時間(例えば15分)浸漬することによって、前記化合物薄膜を形成させた。このようにして、有機半導体層を形成させ、有機薄膜トランジスタを形成した。形成した有機薄膜トランジスタの特性を図11に示す。この結果より形成した有機薄膜トランジスタは、電界効果移動度が1.1×10-1cm2/Vsであり、オン/オフ比が約6桁であった。
実施例14:有機ケイ素化合物(化F)n4=n6=2、n5=3を用いた有機薄膜トランジスタの作製
実施例8と同様に、準備した電極付き基板を、1mMの濃度で(化F)にて表される有機ケイ素化合物のキシレン溶液中に一定時間(例えば10分)浸漬することによって、前記化合物膜を形成させた。このようにして、有機半導体層を形成させ、有機薄膜トランジスタを形成した。形成した有機薄膜トランジスタの特性を図12に示す。この結果より形成した有機薄膜トランジスタは、電界効果移動度が2.2×10-1cm2/Vsであり、オン/オフ比が約6桁であった。
本発明の機能性有機薄膜の分子配列を示す概念図である。 本発明の別の機能性有機薄膜の分子配列を示す概念図である。 本発明においてケイ素化合物を用いた膜の電気伝導度を評価するための構造を示す図である。 過渡光電流測定法によるキャリア移動度の測定を説明するための概略図である。 本発明においてケイ素化合物を用いた有機薄膜トランジスタの概略断面図である。 累積膜の成膜方法を説明するための概念図である。 本発明の第9の実施例における有機薄膜トランジスタの特性図である。 本発明の第10の実施例における有機薄膜トランジスタの特性図である。 本発明の第11の実施例における有機薄膜トランジスタの特性図である。 本発明の第12の実施例における有機薄膜トランジスタの特性図である。 本発明の第13の実施例における有機薄膜トランジスタの特性図である。 本発明の第14の実施例における有機薄膜トランジスタの特性図である。 分子間距離と分子間力との関係を説明するための図である。
符号の説明
1 石英基板
2a、2b 電極端子
3 機能性有機薄膜
4 電流計導電率測定手段
10 シリコン基板
12 有機半導体層
13 ソース電極
14 ドレイン電極
15 ゲート電極
16 絶縁膜
21 ブロッキング電極
22 対極
23 機能性有機薄膜
24 検出器
31 シリコン基板

Claims (13)

  1. 基板上に、
    式 R−SiX123 (I)
    (式中、Rは、末端に官能基が置換されていてもよいπ電子共役系のユニットが複数結合してなる有機残基であり、X1、X2及びX3は、同一又は異なって、加水分解により水酸基を与える基である。)
    で表されるケイ素化合物を用いて成膜されてなる機能性有機薄膜。
  2. 前記機能性有機膜が、基板上にシロキサン結合を介して結合されてなる請求項1に記載の機能性有機薄膜。
  3. 前記ユニットが単環の芳香族炭化水素及び単環の複素環化合物から選択され、かつ、前記有機残基が、前記ユニットが3〜10個結合してなる請求項1に記載の機能性有機薄膜。
  4. 前記有機残基が、ユニット間にビニレン基を含む請求項1に記載の機能性有機薄膜。
  5. 前記単環の芳香族炭化水素及び単環の複素環化合物がベンゼン又はチオフェン基である請求項3に記載の機能性有機薄膜。
  6. 前記X1、X2及びX3が、いずれも同種のハロゲン原子又は低級アルコキシ基である請求項1に記載の機能性有機薄膜。
  7. 前記機能性有機薄膜が、前記ケイ素化合物に由来する単分子膜の1又は複数の繰り返し膜であり、単分子膜の膜厚が1nm〜12nmである請求項1に記載の機能性有機薄膜。
  8. 前記機能性有機薄膜が、分子結晶性を有する請求項1に記載の機能性有機薄膜。
  9. 前記機能性有機薄膜が、基板表面に対し垂直方向に導電性を示し、表面方向に半導電性を示す電気的異方性を有する請求項1に記載の機能性有機薄膜。
  10. 基板上に、
    式 R−SiX123 (I)
    (式中、Rは、末端に官能基が置換されていてもよいπ電子共役系のユニットが複数結合してなる有機残基であり、X1、X2及びX3は、同一又は異なって、加水分解により水酸基を与える基である。)
    で表されるケイ素化合物を用いて、化学吸着法により、機能性有機薄膜を形成することからなる機能性有機薄膜の製造方法。
  11. 基板上に、式
    R−SiX123 (I)
    (式中、Rは、末端に官能基が置換されていてもよいπ電子共役系のユニットが複数結合してなる有機残基であり、X1、X2及びX3は、同一又は異なって、加水分解により水酸基を与える基である。)
    で表されるケイ素化合物に由来する第一の単分子膜と、該第一の単分子膜上に少なくとも一膜以上形成されたπ電子共役系のユニットが複数結合したケイ素化合物を含む第二の単分子膜とからなる機能性有機薄膜。
  12. 前記第二の単分子膜が、式
    2−R’−K3 (IV)
    (式中、R’は、π電子共役系のユニットが複数結合してなる有機残基であり、K2及びK3は官能基又は水素原子を示す。ただし、K2及びK3は同時に水素原子でない)
    で表される化合物を用いて成膜された膜である請求項11に記載の機能性有機薄膜。
  13. 基板上に、式
    R−SiX123 (I)
    (式中、Rは、末端に官能基が置換されていてもよいπ電子共役系のユニットが複数結合してなる有機残基であり、X1、X2及びX3は、同一又は異なって、加水分解により水酸基を与える基である。)
    で表されるケイ素化合物を用いて化学吸着法により第一の単分子膜を成膜し、該第一の単分子膜上に、化学吸着法を用いて、π電子共役系のユニットが複数結合したケイ素化合物を含む第二の単分子膜を少なくとも一膜以上形成する工程を含む機能性有機薄膜の製造方法。
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