JP2006036084A - 船外機 - Google Patents

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Abstract

【課題】大型化やコストアップを抑制しつつ内燃機関を電動で始動できるようにしたハイブリッド型の船外機を提供する。
【解決手段】エンジンと電動モータ(28)をプロペラの駆動源として備えた船外機において、エンジンの出力軸たるクランクシャフト(22)と電動モータの出力軸たるロータ(32)の間に配置され、エンジンの運転時にその出力を電動モータのロータを介してプロペラに伝達する遠心クラッチ(36)と、エンジンの運転停止時に電動モータの出力をエンジンのクランクシャフトに伝達するモータ出力伝達機構(38)とを設ける。
【選択図】図2

Description

この発明は、船外機に関し、より詳しくは、内燃機関と電動モータをプロペラの駆動源として備えたハイブリッド型の船外機に関する。
従来、内燃機関と電動モータをプロペラの駆動源として備えたハイブリッド型の船外機が提案されている。内燃機関の出力と電動モータの出力のいずれかを選択的にプロペラに伝達するには、例えば特許文献1に記載されるように、電動モータの出力軸の一端に遠心クラッチを介して内燃機関の出力軸を接続すると共に、電動モータの出力軸の他端にプロペラを接続することが考えられる。これにより、内燃機関の運転時はその出力が遠心クラッチと電動モータの出力軸を介してプロペラに伝達されるため、内燃機関のみ、あるいは内燃機関と電動モータの両方でプロペラを駆動することができる。また、内燃機関の停止時は内燃機関と電動モータの接続が断たれるため、電動モータのみでプロペラを駆動することができる。
実開昭63−158493号公報(図5など)
ところで、操縦者の負担を考慮した場合、内燃機関の始動を電動で行えることが好ましい。しかしながら、上記した従来技術にあっては、内燃機関の停止時に内燃機関と電動モータの接続が断たれるため、かかる電動モータを内燃機関の始動に用いることができない。そのため、プロペラ駆動用の電動モータとは別に内燃機関始動用の電動モータを備える必要があり、船外機の大型化やコストアップを招くという不具合があった。
従ってこの発明の目的は上記した課題を解決し、大型化やコストアップを抑制しつつ内燃機関を電動で始動できるようにしたハイブリッド型の船外機を提供することにある。
上記の目的を解決するために、請求項1にあっては、内燃機関と電動モータをプロペラの駆動源として備えた船外機において、前記内燃機関の出力軸と前記電動モータの出力軸の間に配置され、前記内燃機関の運転時にその出力を前記電動モータの出力軸を介して前記プロペラに伝達する遠心クラッチと、前記内燃機関の運転停止時に前記電動モータの出力を前記内燃機関の出力軸に伝達するモータ出力伝達機構とを備えるように構成した。
また、請求項2にあっては、前記遠心クラッチが、前記電動モータの出力軸にスライド自在に取り付けられたクラッチアウターと、前記内燃機関の出力軸に固定され、前記内燃機関の運転時に前記クラッチアウターに押圧されるべきクラッチシューとからなると共に、前記モータ出力伝達機構が、前記内燃機関の出力軸に固定されたドライブプレートと、前記クラッチアウターを前記ドライブプレートに近接する方向にスライドさせ、前記クラッチアウターを前記ドライブプレートに勘合させるレバーと、前記レバーを駆動する電磁ソレノイドとからなるように構成した。
請求項1に係る船外機にあっては、内燃機関の出力軸と電動モータの出力軸の間に配置され、前記内燃機関の運転時にその出力を前記電動モータの出力軸を介してプロペラに伝達する遠心クラッチと、前記内燃機関の運転停止時に前記電動モータの出力を前記内燃機関の出力軸に伝達するモータ出力伝達機構とを備えるように構成したので、プロペラ駆動用の電動モータで内燃機関を始動させることができる。従って、内燃機関始動用の電動モータを備える必要がなく、よって船外機の大型化やコストアップを抑制しつつ内燃機関を電動で始動することができる。
また、請求項2に係る船外機にあっては、遠心クラッチが、電動モータの出力軸にスライド自在に取り付けられたクラッチアウターと、内燃機関の出力軸に固定され、前記内燃機関の運転時に前記クラッチアウターに押圧されるべきクラッチシューとからなると共に、モータ出力伝達機構が、前記内燃機関の出力軸に固定されたドライブプレートと、前記クラッチアウターを前記ドライブプレートに近接する方向にスライドさせ、前記クラッチアウターを前記ドライブプレートに勘合させるレバーと、前記レバーを駆動する電磁ソレノイドとからなるように構成したので、内燃機関を電動で始動するための構成がより簡素となり、船外機の大型化やコストアップをより効果的に抑制することができる。
以下、添付図面に即してこの発明に係る船外機を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、この発明の第1実施例に係る船外機の部分断面図である。
図1において符号10は船外機を示す。船外機10は固定機構12を介して船体14のトランサム16に固定される。
船外機10は、その上部に内燃機関(以下「エンジン」という)20を備える。エンジン20は排気量50cc程度の単気筒ガソリンエンジンであり、出力1.5kW(約2PS)を発生する。図示の如く、エンジン20はクランクシャフト(出力軸)22が鉛直方向と平行に配置され、エンジンカバー24によって覆われる。
船外機10においてエンジン20よりも鉛直方向において下方には、電動モータ28が配置される。電動モータ28は、ステータ30とロータ(出力軸)32とからなるDCブラシレスモータであり、数百Wの出力を発生する。図示の如く、電動モータ28は、ロータ32が鉛直方向と平行に配置されると共に、モータカバー34によって覆われる。
エンジン20と電動モータ28の間には、遠心クラッチ36が配置される。具体的には、エンジンのクランクシャフト22の下端と電動モータのロータ32の上端は、遠心クラッチ36を介して接続される。また、遠心クラッチ36付近には、エンジン20の運転停止時に電動モータ28の出力をエンジン20に伝達するモータ出力伝達機構38が配置される。
一方、電動モータのロータ32の下端には、ドライブシャフト40の上端が接続される。ドライブシャフト40は、図示の如く鉛直方向と平行に配置され、ドライブシャフトカバー42の内部に鉛直軸回りに回動自在に支持される。
ドライブシャフト40の下端には、プロペラ44が直接取り付けられる。プロペラ44は、側面視においてS字型を呈する筒状のプロペラカバー46によって覆われる。
図示の如く、エンジンのクランクシャフト22、遠心クラッチ36、電動モータのロータ32、ドライブシャフト40およびプロペラ44は、全て同軸上に回転中心を備える。また、エンジン20からプロペラ44に至るまでの動力伝達系には、ギヤが一切設けられない。
電動モータ28の出力(回転出力)は、ドライブシャフト40を介してプロペラ44に伝達される。また、エンジン20の出力(回転出力)は、遠心クラッチ36を介して電動モータのロータ32に伝達され、さらにドライブシャフト40を介してプロペラ44に伝達される。即ち、プロペラ44は、エンジン20の出力と電動モータ28の出力のいずれかによって鉛直軸回りに回転させられる。このように、船外機10は、エンジン20と電動モータ28をプロペラ44の駆動源として備えたハイブリッド型の船外機であり、より詳しくは、排気量50cc程度のエンジン20と出力数百Wの電動モータ28を備えた小型の船外機である。
また、船外機10においてエンジンカバー24の下方には、バーハンドル50が設けられる。バーハンドル50は、図示の如く、船体14の前方(進行方向における前方)に向けて突出され、操縦者によって操作自在とされる。ドライブシャフトカバー42は、前記した固定機構12に鉛直軸回りに回動自在に支持され、よって操縦者は、バーハンドル50を左右に揺動することによって船外機10を左右に操舵することができる。
次いで、図2以降を参照し、船外機10の各部について詳説する。
図2は、遠心クラッチ36付近の拡大断面図である。
図2に示すように、遠心クラッチ36は、電動モータのロータ32に取り付けられたクラッチアウター54と、エンジンのクランクシャフト22に固定されたクラッチシュー56とからなる。クラッチアウター54およびクラッチシュー56は、クラッチカバー58で覆われる。
図示の如く、クラッチアウター54は、クラッチシュー56を取り囲むように配置される。クラッチシュー56は、図示しないスプリングを備え、エンジン20の運転時(より詳しくは、アイドル回転数を上回る回転数で運転されているとき)に遠心力によってかかるスプリングが伸長することにより、クラッチアウター54の内壁に押圧される。これにより、エンジン20の出力が電動モータのロータ32に伝達される。
クランクシャフト22においてクラッチシュー56よりも上方には、ドライブプレート60が固定される。ドライブプレート60は平面視円形を呈し、その円周上には少なくとも1個の凸部60aが設けられる。
前記したクラッチアウター54は、具体的には、ロータ32にその軸方向にスライド自在に取り付けられると共に、スプリング62によってドライブプレート60から離間する方向に付勢される。また、クラッチアウター54の上端には、少なくとも1個の凸部54aが設けられる。
クラッチアウター54の下方には、レバー66が配置される。レバー66は、その途中に設けられた回転軸(支点)を中心としてクラッチカバー58の内部に上下方向に揺動自在に支持される。また、レバー66の一端はカム形状とされると共に、他端にはレバー66を駆動する電磁ソレノイド70が接続される。即ち、レバー66は、電磁ソレノイド70によってカム形状の端部が上下に揺動するように駆動される、より具体的には、電磁ソレノイド70が通電されたとき、レバー66のカム形状の端部が上方に駆動される。
電磁ソレノイド70が通電されると、図3に示すように、レバー66のカム形状の端部によってクラッチアウター54が上方に押し上げられ(ドライブプレート60に近接する方向にスライドさせられ)、凸部54aがドライブプレート60の凸部60aに勘合させられる。この状態で電動モータ28を駆動することにより、ロータ32の回転がクラッチアウター54とドライブプレート60を介してエンジンのクランクシャフト22に伝達される。即ち、エンジン20を、プロペラ44の駆動源たる電動モータ28で始動させることができる。
このように、前記したモータ出力伝達機構38は、ドライブプレート60と、クラッチアウター54をドライブプレート60に近接する方向にスライドさせ、クラッチアウター54をドライブプレート60に勘合させる(具体的には、クラッチアウター54の凸部54aをドライブプレート60の凸部60aに勘合させる)レバー66と、レバー66を駆動する電磁ソレノイド70とから構成される。
図2の説明を続けると、電動モータのロータ32の、遠心クラッチ36と電動モータ28(具体的にはそのステータ30)の間に位置する部位には、送風機構、具体的には、遠心ファン72が設けられる。
図において符号74は遠心ファン72の吸気口であり、符号76は遠心ファン72の排気口である。図示の如く、吸気口74は電動モータ28よりも下方に配置される一方、排気口76は電動モータ28よりも上方に配置される。具体的に説明すると、モータカバー34の下端には、鉛直方向下方に開口した吸気口74が少なくとも1箇所設けられる。また、クラッチカバー58の上端、およびエンジン20が載置されるエンジンマウント78の下端付近には、水平方向に開口した排気口76が少なくとも1箇所設けられる。
また、吸気口74に連続する空気通路80は迷路構造、具体的には、直角に2回屈曲するクランク形状とされる。
図4は、遠心ファン72の平面図である。
図4に示すように、遠心ファン72は、その上面に複数枚のフィン82を備える。フィン82は、遠心ファン72の回転方向(即ち、回転軸たるロータ32の回転方向)に関わらず常に下方から上方に向けて空気を送風するように、ロータ32を中心として放射状に配置される。
ここで、遠心ファン72を回転させることによって生じる空気の流れについて図5を参照して説明する。遠心ファン72が回転すると、先ず、吸気口74と空気通路80を介してモータカバー34の内部に空気(冷却空気)が流入する。モータカバー34の内部に流入した空気は、電動モータ28を冷却しつつモータカバー34の上部へと流れ、クラッチカバー58の内部に流入する。
クラッチカバー58の内部に流入した空気は、遠心クラッチ36を冷却しつつクラッチカバー58の上部へと流れ、さらにエンジン20(具体的にはエンジン20の潤滑油が貯留されるオイルパン84)を冷却した後に排気口76から排出される。このように、遠心ファン72によって下方から上方に向けて送風された空気によって、電動モータ28、遠心クラッチ36、エンジン20の順に冷却される。
次いで、プロペラカバー46について詳説する。
図6は、プロペラカバー46の拡大部分断面図である。また、図7は、図6のVII−VII線断面図である。
図6および図7に示すように、プロペラカバー46は複数個、具体的には略左右対称に形成された2個の部材46L,46Rからなる分割構造とされる。進行方向に向かって左側の部材46Lは、ドライブシャフトカバー42に固定される。一方、右側の部材46Rは、複数個のボルト86によって部材46Lに着脱自在とされる。尚、左側の部材46Lと右側の部材46Rは、図7に示す如く、それぞれの当接面に形成された凸部と凹部を勘合させることにより、隙間なく組み付けられる。
図6の説明に戻ると、プロペラカバー46は、前述したように側面視S字型を呈する。プロペラカバー46は、具体的には、進行方向の後方に開口部46a1を有する水平方向と平行な第1の部位46aと、第1の部位46aよりも鉛直方向下方に位置すると共に、進行方向の前方に開口部46b1を有する水平方向と平行な第2の部位46bと、第1の部位46aと第2の部位46bのそれぞれに曲線部を介して連続する鉛直方向と平行な第3の部位46cとから構成される。
図示の如く、プロペラ44は第3の部位46cの内部に配置される。プロペラ44は、船体14を前進させるときは上向きの水流を発生する方向に回転させられる一方、船体14を後進させるときは下向きの水流を発生する方向に回転させられる。以下、プロペラ44が上向きの水流を発生するときの回転を「前進回転」、下向きの水流を発生するときの回転を「後進回転」と呼ぶ。
プロペラ44が前進回転させられると、第2の部位46bの開口部46b1から水が吸入されて第1の部位46aの開口部46a1から吐出される。他方、プロペラ44が後進回転させられると、第1の部位46aの開口部46a1から水が吸入されて第2の部位46bの開口部46b1から吐出される。即ち、プロペラ44が鉛直軸回りに回転することによって発生した鉛直方向の水流は、プロペラカバー46によって水平方向の水流(推進力)に変換され、よって船体14が前方あるいは後方に推進させられる。
次いで、バーハンドル50について詳説する。
図8は、バーハンドル50の先端付近の拡大部分断面図である。
図8に示すように、バーハンドル50の先端には、スロットルグリップ90が設けられる。スロットルグリップ90は、操縦者によって回動操作自在とされ、その内部には回動角センサ92が配置される。回動角センサ92は、スロットルグリップ90の回動角を示す信号を出力する。また、スロットルグリップ90の近傍には、制御スイッチ94が設けられる。制御スイッチ94は、操縦者によって選択された5つのポジション(後述)に応じた信号を出力する。回動角センサ92と制御スイッチ94の出力は、スロットルグリップ90の内部に配置されたコントローラ96に入力される。コントローラ96は、マイクロコンピュータなどからなり、スロットルグリップ90の回動操作に応じて(即ち、回動角センサ92の出力に応じて)電動モータ28の駆動を制御する。
図9は、図8のIX−IX線断面図である。
図8および図9に示すように、スロットルグリップ90の後端付近にはプーリ100(スロットル開度調整機構)が取り付けられる。プーリ100には、エンジン20のスロットルバルブ(図示せず)に接続されたスロットルケーブル(具体的にはプッシュプルケーブル)102が捲き掛けられる。
プーリ100はスロットルグリップ90と共に回転し、スロットルケーブル102を進退(押し引き)させる。スロットルケーブル102が進退することにより、スロットルバルブが開閉させられ、エンジン20の吸入空気量、換言すれば、エンジン回転数が調整される。
図10は、船外機10の動作を示すブロック図である。
図10に示すように、制御スイッチ94は、「チャージ(CHG)」、「オン(ON)」、「オフ(OFF)」、「フォワード(FOW)」および「リバース(REV)」の5つのポジションを有し、それらのいずれかが操縦者によって選択自在とされる。
また、コントローラ96には、回動角センサ92と制御スイッチ94に加え、前記エンジン20(具体的にはエンジン20の点火プラグ(図示せず))、前記電動モータ28、前記電磁ソレノイド70、船外機10の適宜位置に搭載されたバッテリ104およびスタータスイッチ106が接続される。尚、バッテリ104は、エンジン20の点火プラグ、電動モータ28、電磁ソレノイド70、コントローラ96およびその他の補機類の動作電源として機能する。
以下、船外機10の動作について説明すると、操縦者によって「フォワード」ポジションが選択されると、コントローラ96は、プロペラ44が前進回転するように電動モータ28の駆動を制御する。以下、プロペラ44が前進回転するときの電動モータ28の回転方向を「正転」とする。
一方、「リバース」ポジションが選択されると、コントローラ96は、プロペラ44が後進回転するように電動モータ28の駆動を制御する。以下、プロペラ44が後進回転するときの電動モータ28の回転方向を「逆転」とする。
このように、「フォワード」ポジションが選択されているときと「リバース」ポジションが選択されているときとでは、電動モータ28の回転方向が逆向きとされる。尚、「フォワード」ポジションまたは「リバース」ポジションが選択されているときの電動モータ28の回転数は、回動角センサ92の出力、換言すれば、操縦者によるスロットルグリップ90の操作量に応じて変更される。
また、操縦者によって「オン」ポジションが選択されると、コントローラ96は、エンジン20の点火プラグに対して電圧の供給を開始する。そして、「オン」ポジションが選択された状態でスタータスイッチ106が操作されると、コントローラ96は電磁ソレノイド70への通電を開始すると共に、電磁ソレノイド70への通電を開始してから所定時間経過した後に電動モータ28を駆動させる。具体的には、電磁ソレノイド70への通電を開始した後、電磁ソレノイド70が動作してクラッチアウターの凸部54aとドライブプレートの凸部60aが勘合するまで待機してから、電動モータ28が正転するようにその駆動を制御する。これにより、電動モータ28の出力によってクランクシャフト22が回転させられ、よってエンジン20が始動させられる。
エンジン20の出力は、操縦者によってスロットルグリップ90が操作されてアイドル回転数を上回る回転数で運転されたとき、遠心クラッチ36などを介してプロペラ44に伝達される。このときのプロペラ44の回転は前進回転である。尚、スタータスイッチ106が操作されていないときは、エンジン20の負荷を軽減するために電動モータ28とバッテリ104の電気的な接続は断たれる。
また、操縦者によって「チャージ」ポジションが選択されると、コントローラ96は、エンジン20の運転を継続させつつ電動モータ28とバッテリ104を電気的に接続する。即ち、エンジン20の出力で電動モータのロータ32を回転させることで、電動モータ28を発電機として機能させ、バッテリ104の充電を行う。
これに対し、操縦者によって「オフ」ポジションが選択されると、コントローラ96は、エンジン20の点火プラグおよび電動モータ28への通電を断ってエンジン20と電動モータ28の運転を停止させる。
図示の如く、「オフ」ポジションは、エンジン20を始動させる「オン」ポジションと、電動モータ28を始動させる「フォワード」および「リバース」の各ポジションの間に位置するため、エンジン20と電動モータ28が同時に運転されることはない。従って、単一の操作部(即ち、スロットルグリップ90)でエンジン20と電動モータ28の回転数を調整するように構成しても、一方の操作が他方の操作に干渉することはない。
このように、操縦者は、制御スイッチ94を操作することにより、エンジン20と電動モータ28の運転と停止、および電動モータ28の回転方向を制御することができる。また、スロットルグリップ90を操作することにより、エンジン20と電動モータ28の回転数を調整することができる。
続いて、図11以降を参照し、固定機構12について詳説する。
図11は、固定機構12の拡大断面図である。
図11に示すように、固定機構12はスターンブラケット110を備える。スターンブラケット110は、ドライブシャフトカバー42の左右に一つずつ、計2つ取り付けられる(図11では右側に配置されたスターンブラケットのみ示す)。以下、右側に配置されたスターンブラケットについて説明するが、2つのスターンブラケットは左右対称であるため、以下の説明は図示しない左側のスターンブラケットにも妥当する。
スターンブラケット110は、トランサム16の後面16aに当接されるトランサム当接部110aと、トランサム16の上端から前方に向けて突出されるスライドビーム110bとを備える。スライドビーム110bは、図11に示すA−A線の断面が矩形を呈する。
また、固定機構12は、上記したスターンブラケット110に加え、スライドビーム110bにトランサム16の板厚方向(スライドビーム110bの突出方向)にスライド自在に取り付けられたスライド式ブラケット112と、スライド式ブラケット112にトランサム16の板厚方向にスライド自在に支持されたクランプ部114と、スライド式ブラケット112に設けられた回転軸を中心に揺動自在に支持された手動レバー116と、クランプ部114と手動レバー116を連結し、手動レバー116の変位をクランプ部114に伝達するリンク118とを備える。
ここで、手動レバー116の回転軸(符号120で示す)と、手動レバー116とリンク118の連結軸(符号122で示す)と、リンク118とクランプ部114の連結軸(符号124で示す)は、全て平行に配置される。具体的には、回転軸120と連結軸122,124は、全てトランサム16の板厚方向と直交させられる。
スライド式ブラケット112は、スライドビーム110bの突出方向(長手方向)と直交して配置される壁面112aと、壁面112aの下端からトランサム16と離間する方向に延設されたリンク収容部112bとを備える。リンク収容部112bは、図11のB−B線における断面が凹型を呈し、かかる凹型の溝部分にリンク118の全部と手動レバー116およびクランプ部114の一部を収容する。
図12は、スライド式ブラケット112の拡大正面図(トランサム16側から壁面112aを見た図)である。
図12に示すように、スライド式ブラケット112の上部には、スライドビーム110b(図12で図示せず)が挿通されるべき矩形の孔112cが穿設されると共に、下部にはクランプ部114(図12で図示せず)が挿通されるべき円形の孔112dが穿設される。孔112cおよび孔112dは、共にトランサム16の板厚方向と平行に穿設される。
図11の説明に戻ると、スライド式ブラケットの壁面112aに穿設された孔112cには、スライドビーム110bが挿通される。これにより、スライド式ブラケット112は、スライドビーム110bに対してその長手方向(トランサム16の板厚方向)にスライド自在とされる。
クランプ部114は、リンク118に連結されたシャフト部114aと、トランサム16の前面16bに当接されるべきトランサム当接部114bとを備える。トランサム当接部114bには、弾性材114cが取り付けられる。
クランプ部114のうち、シャフト部114aは、スライド式ブラケットの壁面112aに穿設された孔112dに挿通される。即ち、クランプ部114は、スライド式ブラケット112に、トランサム16の板厚方向にスライド自在に支持される。また、トランサム当接部114bおよびそこに取り付けられた弾性材114cは、スライド式ブラケットの壁面112aよりもトランサム16側に配置され、トランサム16の前面16bと対峙させられる。
手動レバー116は、図示の如く、側面視略V字型を呈し、その角部(頂点)がスライド式ブラケットのリンク収容部112bに設けられた回転軸120に支持される。手動レバー116において、回転軸120よりも前方に位置する部位が、操縦者が把持すべき把持部となる。
ここで、手動レバー116、リンク118およびクランプ部114の3個の部材により、軸が平行する3個の回り対偶と、それらに直交する1個のすべり対偶からなるスライダクランク機構が形成される。即ち、手動レバー116を回転軸120回りに回動させることにより、その円運動はリンク118を介してクランプ部114の直線運動へと変換される。逆に、クランプ部114の直線運動は、リンク118を介して手動レバー116の円運動に変換される。
以上を前提に、固定機構12の動作について説明する。
先ず、図11に示すように、手動レバー116を下方に操作して(回動させて)クランプ部114をトランサム16から離間させつつ(即ち、回転軸120と連結軸122を結ぶ線と、連結軸122と連結軸124を結ぶ線がなす角度を大きくすることで、回転軸120から連結軸124までの直線距離を短くしつつ)、スライド式ブラケット112をトランサム16に近接する方向にスライドさせる。
スライド式ブラケット112からトランサム16までの距離が所望の距離となったところで、図13に示す如く、手動レバー116を上方に操作してクランプ部114をトランサム16に近接する方向にスライドさせ(即ち、回転軸120と連結軸122を結ぶ線と、連結軸122と連結軸124を結ぶ線がなす角度を小さくすることで、回転軸120から連結軸124までの直線距離を増大させ)、よってトランサム当接部114bに取り付けられた弾性材114cをトランサム16の前面16bに押圧させる。
このとき、クランプ部114がトランサム16から受ける反力によってスライド式ブラケット112に傾きが生じ、スライドビーム110bと孔112cの内壁とのフリクション(摩擦力)が増大する。これにより、スライドビーム110bに対するスライド式ブラケット112の位置が固定される。
また、トランサム当接部114bには弾性材114cが取り付けられることから、かかる弾性材114cを圧縮させることで、図13に示すスライダクランク機構の死点(回転軸120、連結軸122,124の全てが同一直線上に並ぶ点。即ち、回転軸120から連結軸124までの直線距離が最長となる点)を超える位置(角度)まで手動レバー116を上方に操作する(回動させる)ことができる。
スライダクランク機構の死点を超える位置まで手動レバー116を上方に操作すると、図14に示す如く、手動レバー116においてリンク118との連結部位がリンク収容部112bの下面に当接し、よって手動レバー116の変位が終了させられる。このように、スライド式ブラケット112のうち、リンク収容部112bは、スライダクランク機構の死点を超えた位置で手動レバー116の変位を終了させるストッパとしても機能する。
ここで、弾性材114cの弾性変形量は、前記死点から手動レバー116の変位が終了するまでの間のクランプ部114の変位(スライド量)よりも大きく設定される。従って、スライド式ブラケット112からトランサム16までの距離が適正であれば、手動レバー116の変位が終了しても、弾性材114cは圧縮状態に維持される。
弾性材114cが圧縮状態に維持されれば、クランプ部114はトランサム16から常に反力を受けることとなる。手動レバー116が前記死点を超えた後は、トランサム16からの反力は手動レバー116を上方へと変位させる方向の回転力に変換されるため、手動レバー116はリンク収容部112bに当接する位置に保持される。従って、手動レバー116をその変位が終了するまで上方に操作することにより、トランサム16をスターンブラケットのトランサム当接部110aとクランプ部114とで挟持し続ける、別言すれば、船外機10をトランサム16に固定することができる。
このように、この発明の第1実施例に係る船外機10にあっては、エンジン20のクランクシャフト22と電動モータ28のロータ32の間に配置され、エンジン20の運転時にその出力をロータ32を介してプロペラ44に伝達する遠心クラッチ36と、エンジン20の運転停止時に電動モータ28の出力をクランクシャフト22に伝達するモータ出力伝達機構38とを備えるようにしたので、プロペラ駆動用の電動モータ28でエンジン20を始動させることができる。従って、エンジン始動用の電動モータを別個に備える必要がなく、よって船外機10の大型化やコストアップを抑制しつつエンジン20を電動で始動させることができる。
さらに、モータ出力伝達機構38が、クランクシャフト22に固定されたドライブプレート60と、遠心クラッチ36のクラッチアウター54をドライブプレート60に近接する方向にスライドさせ、クラッチアウター54をドライブプレート60に勘合させるレバー66と、レバー66を駆動する電磁ソレノイド70とからなるようにしたので、エンジン20を電動で始動するための構成がより簡素となり、船外機10の大型化やコストアップをより効果的に抑制することができる。
また、電動モータのロータ32の、遠心クラッチ36と電動モータ28の間に位置する部位に、ロータ32と共に回転して空気を送風する送風機構を設けるようにしたので、エンジン20と電動モータ28、さらにはそれらの間に配置された遠心クラッチ36を効率よく冷却することができる。
さらに、送風機構が、ロータ32の回転方向に関わらず、空気を鉛直方向において下方から上方に向けて送風する遠心ファン72からなる、即ち、ロータ32の回転方向に関わらず、電動モータ28、遠心クラッチ36、エンジン20の順で冷却するようにしたので、発熱量の大きなエンジン20によって冷却空気が昇温される前に電動モータ28や遠心クラッチ36を冷却することができ、よって電動モータ28と遠心クラッチ36を効率よく冷却することができる。
さらに、遠心ファン72の吸気口74が電動モータ28よりも鉛直方向において下方に配置されるようにしたので、吸気口74から吸入された新気が電動モータ28に効率よく供給され、よって電動モータ28の冷却効果をより向上させることができる。また、吸気口74に連続する空気通路80が迷路構造とされるようにしたので、電動モータ28が被水するのを防止できると共に、電動モータ28の動作音が船外機10の外部に漏洩するのを抑制することができる。
また、バーハンドル50に設けられたスロットルグリップ90に、その回動操作に応じて電動モータ28の駆動を制御するコントローラ96と、エンジン20のスロットルバルブに接続されたスロットルケーブル102を進退させてスロットル開度を調整するプーリ100とを設けるように構成したので、単一の操作部によって電動モータ28の回転数とエンジン20の回転数を調整することができる。
さらに、バーハンドル50においてスロットルグリップ90の近傍に、エンジン20と電動モータ28の始動と停止、および電動モータ28の回転方向を制御する制御スイッチ94を設けるように構成したので、調整対象(エンジン20の回転数、電動モータ28の正転回転数および逆転回転数のいずれか)を容易に切り替えることができ、よって操作性をより向上させることができる。
また、プロペラ44をドライブシャフト40の下端に取り付けてドライブシャフト40と共に鉛直軸回りに回転させると共に、側面視S字型のプロペラカバー46でプロペラ44を覆うようにしたので、エンジン20からプロペラ44に至るまでの動力伝達系からギヤを排除することができ、よって静粛性を向上させる(ギヤ音を発生させない)ようにすることができる。
さらに、プロペラカバー46が、船体14の進行方向の前方と後方に開口部46a1,46b1を備えるようにしたので、プロペラ44の回転方向に応じて船体14を前進させる方向の水流(推進力)と後進させる方向の水流(推進力)を発生させることができる。
さらに、プロペラカバー46を、左右2個の着脱自在な部材46L,46Rからなる分割構造としたので、プロペラ44の交換やメンテナンスを容易に行うことができる。
また、船外機10を船体14のトランサム16に固定する固定機構12が、トランサム16の後面16aに当接されるトランサム当接部110aおよびトランサム16の前方に突出されるスライドビーム110bを備えたスターンブラケット110と、スライドビーム110bにトランサム16の板厚方向にスライド自在に取り付けられるスライド式ブラケット112と、スライド式ブラケット112にトランサム16の板厚方向にスライド自在に支持されるクランプ部114と、スライド式ブラケット112に設けられた回転軸120を中心に揺動自在に支持される手動レバー116と、クランプ部114と手動レバー116を連結し、手動レバー116の変位をクランプ部114に伝達するリンク118とからなり、手動レバー116を操作してクランプ部114をトランサム16の前面16bに当接する位置までスライドさせ、よってスターンブラケット110のトランサム当接部110aとクランプ部114とでトランサム16を挟持するようにしたので、船体14への固定作業を容易に行うことができる。
さらに、手動レバー116、リンク118およびクランプ部114から構成されるスライダクランク機構の死点を超えた位置で手動レバー116の変位を終了させるストッパ(リンク収容部112b)を備えると共に、クランプ部114においてトランサム16の前面16bとの当接部114bに、前記死点から手動レバー116の変位が終了するまでの間のクランプ部114の変位よりも大きな弾性変形量を有する弾性材114cを取り付けるようにしたので、スライド式ブラケット112の位置合わせと手動レバー116の操作のみで船外機10を船体14に固定することができ、よって船体14への固定作業を一層容易に行うことができる。
以上の如く、この発明の第1実施例にあっては、内燃機関(エンジン20)と電動モータ(28)をプロペラ(44)の駆動源として備えた船外機(10)において、前記内燃機関の出力軸(クランクシャフト40)と前記電動モータの出力軸(ロータ32)の間に配置され、前記内燃機関の運転時にその出力を前記電動モータの出力軸を介して前記プロペラに伝達する遠心クラッチ(36)と、前記内燃機関の運転停止時に前記電動モータの出力を前記内燃機関の出力軸に伝達するモータ出力伝達機構(38)とを備えるように構成したので、プロペラ駆動用の電動モータで内燃機関を始動させることができる。従って、内燃機関始動用の電動モータを備える必要がなく、よって船外機の大型化やコストアップを抑制しつつ内燃機関を電動で始動することができる。
また、前記遠心クラッチが、前記電動モータの出力軸にスライド自在に取り付けられたクラッチアウター(54)と、前記内燃機関の出力軸に固定され、前記内燃機関の運転時に前記クラッチアウターに押圧されるべきクラッチシュー(56)とからなると共に、前記モータ出力伝達機構が、前記内燃機関の出力軸に固定されたドライブプレート(60)と、前記クラッチアウターを前記ドライブプレートに近接する方向にスライドさせ、前記クラッチアウターを前記ドライブプレートに勘合させるレバー(66)と、前記レバーを駆動する電磁ソレノイド(70)とからなるように構成したので、内燃機関を電動で始動するための構成がより簡素となり、船外機の大型化やコストアップをより効果的に抑制することができる。
尚、上記において、電動モータ28をDCブラシレスモータとしたが、他の方式のモータを使用しても良い。例えば、ブラシモータを使用する場合は、かかるブラシモータのスイッチ接点の動作を電磁ソレノイド70の動作に機械的に連動させることで、クラッチアウターの凸部54aとドライブプレートの凸部60aが勘合してから電動モータを駆動させることができ、よってコントローラ96の構成を簡素化することができる。
また、上記において、エンジン20の排気量を50cc程度とし、電動モータ28の出力を数百Wとしたが、それらは例示であって限定されるものではない。
また、エンジン20と電動モータ28を同時に運転させないようにしたが、同時に運転するようにしても良い。その場合、エンジン20の回転数と電動モータ28の回転数を別個の操作部で調整するように構成することが好ましい。
また、遠心ファン72を、ロータ32上において遠心クラッチ36と電動モータ28の間に配置したが、電動モータ28の下方に配置しても良い。
また、プロペラ44をドライブシャフト40に取り付け、鉛直軸回りに回転させるようにしたが、水平方向と平行に配置されたプロペラシャフトを設け、そこにプロペラを取り付けると共に、ドライブシャフト40の回転をベベルギヤなどで水平方向に変換してプロペラシャフトに伝達しても良い。即ち、プロペラを水平軸回りに回転させるようにしても良い。この場合、プロペラカバー46は不要となる。
また、固定機構12に代え、ねじ式のクランプ機構などを使用して船外機10を船体14に固定しても良い。
この発明の第1実施例に係る船外機の部分断面図である。 図1に示す遠心クラッチ付近の拡大断面図である。 図2と同様な遠心クラッチ付近の拡大断面図である。 図2に示す遠心ファンの平面図である。 図2と同様な遠心クラッチ付近の拡大断面図である。 図1に示すプロペラカバー付近の拡大部分断面図である。 図6のVII−VII線断面図である。 図1に示すバーハンドルの先端付近の拡大部分断面図である。 図8のIX−IX線断面図である。 図1に示す船外機の動作を示すブロック図である。 図1に示す固定機構の拡大断面図である。 図11に示すスライド式ブラケットの拡大正面図である。 図12と同様なスライド式ブラケットの拡大平面図である。 図12と同様なスライド式ブラケットの拡大平面図である。
符号の説明
10 船外機
20 エンジン(内燃機関)
22 クランクシャフト(内燃機関の出力軸)
28 電動モータ
32 ロータ(電動モータの出力軸)
36 遠心クラッチ
38 モータ出力伝達機構
44 プロペラ
54 クラッチアウター
56 クラッチシュー
60 ドライブプレート
66 レバー
70 電磁ソレノイド

Claims (2)

  1. 内燃機関と電動モータをプロペラの駆動源として備えた船外機において、前記内燃機関の出力軸と前記電動モータの出力軸の間に配置され、前記内燃機関の運転時にその出力を前記電動モータの出力軸を介して前記プロペラに伝達する遠心クラッチと、前記内燃機関の運転停止時に前記電動モータの出力を前記内燃機関の出力軸に伝達するモータ出力伝達機構とを備えることを特徴とする船外機。
  2. 前記遠心クラッチが、前記電動モータの出力軸にスライド自在に取り付けられたクラッチアウターと、前記内燃機関の出力軸に固定され、前記内燃機関の運転時に前記クラッチアウターに押圧されるべきクラッチシューとからなると共に、前記モータ出力伝達機構が、前記内燃機関の出力軸に固定されたドライブプレートと、前記クラッチアウターを前記ドライブプレートに近接する方向にスライドさせ、前記クラッチアウターを前記ドライブプレートに勘合させるレバーと、前記レバーを駆動する電磁ソレノイドとからなることを特徴とする請求項1記載の船外機。
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