JP2006033748A - 薄膜バルク音波共振子 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境温度などの環境の変化に伴う特性の変動を抑制する薄膜バルク音波共振子(FBAR)を提供する。
【解決手段】圧電材料を含む圧電層(2)と、圧電層(2)を介して積層された一対の電極層とを含む多層構造(51)が基板上に形成された薄膜バルク音波共振子(1)であって、多層構造(51)が負の熱膨張率を有する層A(7)をさらに含む。多層構造(51)における層A(7)を配置する位置は特に限定されないが、なかでも上記一対の電極間に層A(7)が配置されていることが好ましく、層A(7)が圧電層(2)と少なくとも一方の電極層との間に配置されることがより好ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、薄膜バルク音波共振子に関する。具体的には、例えば、高周波フィルターに用いる薄膜バルク音波共振子に関する。
高周波の帯域に用いることができる共振子として、誘電体フィルター、表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)フィルター、薄膜バルク音波共振子(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)などが知られている。なかでも、薄膜バルク音波共振子(FBAR)は、シリコン(Si)やガリウム砒素(GaAs)などの半導体基板上に作製することが可能であり、他の共振子に比べて挿入損失が小さいなどの特長を有している。このため、より小型かつ高集積化された高周波回路が実現できる高周波フィルターとしての用途が期待されている。FBARを高周波フィルターに用いる場合、例えば、SiやGaAsなどの半導体基板上にZnO、AlN、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電材料を含む層を形成すればよい。形成した層の圧電特性に応じて共振する周波数の帯域を制御することができる。
具体的なFBARとしては、主に、メンブレン型、ブラッグリフレクター(Bragg reflector)型、エアーギャップ型などが知られている。これら3種類のFBARの一例を図13に示す。図13Aに示すFBAR101はメンブレン型、図13Bに示すFBAR111はブラッグリフレクター型、図13Cに示すFBAR121はエアーギャップ型のFBARである。それぞれのFBARは、圧電材料を含む圧電層104が一対の電極102および103によって狭持された構造を有しており、電極102および103を介して印加される電界に応じて圧電層104が共振することによって共振子として機能する。また、共振をより効率よく発生させるために、図13A〜図13Cに示すFBARではそれぞれ以下に示すような構成となっている。
メンブレン型のFBAR101では、基板105に、基板105を貫通する空洞107が形成されている。また、保護層(メンブレン)106が基板105と上記構造との間に配置されている。保護層106は、空洞107をエッチング法により形成する際に空洞107上に配置された上記構造を保護する役割を有している。ブラッグリフレクター型のFBAR111では、音響ミラー層108が基板105と上記構造との間に配置されている。音響ミラー層108の配置によって、音波エネルギーを電極102および103間に集中させることができる。エアーギャップ型のFBAR121では、基板105における上記構造に面している面にギャップ(陥没部)109が形成されている。これらのFBARは、例えば、特許文献1などに開示されている。
特開2002−140075号公報 米国特許公報 第5283458号
FBARは圧電材料を含む圧電層のバルクとしての振動を利用した共振子である。このため、環境温度の変化などにより圧電層が熱膨張(あるいは収縮)した場合に、共振周波数が変動するという課題がある。共振周波数の変動が大きいと、例えば、高周波フィルターとしての特性劣化につながる。このため、環境温度などの変化に対して耐性に優れる(耐環境特性に優れる)FBARが求められている。
通常、FBARに用いられる圧電材料や電極材料は、数ppm/K〜10ppm/K程度の範囲の熱膨張率を有している。また、これらの材料を複数層積層したFBARの場合、共振子全体としての共振周波数の変動は、各層における熱膨張率の合計の数倍になると考えられる。例えば、圧電材料としてAlN(熱膨張率は3.5ppm/K〜10ppm/K程度)を用いた場合、共振子全体として約26ppm/Kの共振周波数変動が発生する例が特許文献2に報告されている。おそらく、各層の積層数、電極材料の種類、素子の具体的な構成などの要因により、圧電材料の熱膨張率以上の共振周波数変動が発生していると考えられる。なお、特許文献2では、このような課題を解決する手段として、共振子の近傍にリング状のヒーターを配置し、共振子の周辺の環境を制御する方法が開示されている。
このような状況を鑑み、本発明では、使用環境温度などの環境の変化に伴う特性の変動が抑制されたFBARを提供する。
本発明の薄膜バルク音波共振子(FBAR)は、圧電材料を含む圧電層と、前記圧電層を介して積層された一対の電極層とを含む多層構造が基板上に形成された薄膜バルク音波共振子であって、前記多層構造は、負の熱膨張率を有する層Aを含むことを特徴としている。多層構造における層Aを配置する位置は特に限定されない。なかでも上記一対の電極間に層Aが配置されていることが好ましく、層Aが圧電層と少なくとも一方の電極層との間に配置されることがより好ましい。ここで、負の熱膨張率とは、熱膨張率がマイナスの値であることを意味する。
なお、多層構造は、圧電層、一対の電極層および層A以外の任意の層を含んでいてもよい。層Aの具体例については、実施の形態に後述する。
本発明によれば、負の熱膨張率を有する層Aを含むことによって、使用環境温度などの環境の変化に伴う特性(例えば、共振周波数特性など)の変動が抑制された薄膜バルク音波共振子(FBAR)を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、同一の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
図1に本発明の薄膜バルク音波共振子(FBAR)の一例を示す。図1に示すFBAR1では、圧電材料を含む圧電層2と、第1の電極層3と、第2の電極層4とを含む多層構造51が基板5上に形成されている。第1の電極層3および第2の電極層4は、一対の電極層として圧電層2を介して(圧電層2を狭持するように)積層されている。第1の電極層3および第2の電極層4を介して印加される電界に応じて圧電層2が共振することによって、FBAR1は共振子として機能できる。また、多層構造51は負の熱膨張率を有する層A7を含んでいる。
上述したように、FBARは圧電材料を含む圧電層のバルクとしての振動を利用した共振子である。このため、環境温度の変化などにより圧電層2が熱膨張(あるいは収縮)した場合に、例えば第1の電極層3と第2の電極層4との間の距離が変動するなどによって、共振周波数特性などの特性が変動する場合がある。図1に示すFBAR1では、層A7は圧電層2の膨張(あるいは収縮)を緩衝する緩衝層としての役割を果たすと考えられる。このため、多層構造51が層A7を含むことによって、例えば第1の電極層3と第2の電極層4との間の距離の変動を抑制することができ、使用環境温度などの環境の変化に伴う特性(例えば、共振周波数特性など)の変動が抑制されたFBAR1とすることができる。
本発明のFBARの構成は、例えば特開2004−64038号公報に開示されているデバイスの構成とは異なっている。特開2004−64038号公報には、圧電/電歪デバイスである微小位置決定用アクチュエータにおいて、デバイスを低熱膨張材料で被覆することによって、使用環境温度の変化が要因である位置決め精度の低下を抑制する方法が開示されている。しかしながら、上記公報に開示されている圧電/電歪デバイスは圧電材料の横振動(拡がり振動や幅振動などを含む)を利用したデバイスであり、位置決め精度の低下は圧電材料と電極材料との間の熱膨張の差が原因となって発生すると考えられる。このため、位置決め精度の低下を抑制するためには、電極を含む圧電振動子全体を低熱膨張材料で被覆する必要があり、圧電材料と電極との間に低熱膨張材料を単に配置しただけでは上記効果が得られないと考えられる。
これに対して本発明のFBARは、圧電材料の縦振動を利用したデバイスであり、特性の変動は圧電層の熱膨張(あるいは収縮)が原因となって発生すると考えられる。このため、圧電層と電極層とを含む多層構造が負の熱膨張率を有する層Aを含むことによって、圧電層の熱膨張(あるいは収縮)の影響を抑制することができる(なかでも、例えば層Aの熱膨張率を適宜選択することなどによって、圧電層の熱膨張(収縮)をキャンセルできる層Aを配置することが最も好ましい)。このような効果は、仮に層Aが上記公報に開示されている低熱膨張材料からなる場合には得ることが困難であると考えられる。
図1に示すFBAR1では、基板5に空洞6が形成されており、空洞6は基板5の厚さ方向に基板5を貫通している(即ち、空洞6は基板5に形成された貫通孔であるともいえる)。ここで、多層構造51の主面に垂直な方向から見たときに(例えば、図1Aに示す矢印Xの方向へ見たときに)、空洞6の少なくとも一部と多層構造51の少なくとも一部とが重なるように、多層構造51が基板5上に形成されている。このため、圧電層2における共振をより効率よく発生、持続させることができる。なお、本明細書における「多層構造」とは、第1の電極層3、第2の電極層4および圧電層2を含む積層体のうち、第1の電極層3および第2の電極層4によって圧電層2に電界が印加される領域を示している。具体的には、例えば、FBAR1を、その主面に垂直な方向から見たときに(例えば、図1Aに示す矢印Xの方向へ見たときに)、第1の電極層3、圧電層2および第2の電極層4が重なって見える領域を示している。空洞6は、基板5と多層構造51とを音響的に分離する役割を果たしている。
また、多層構造51は保護層(メンブレン)8をさらに含んでいる。保護層8は、多層構造51の主面に垂直な方向から見たときに、基板5の多層構造51側の主面における空洞6の開口部を覆うように配置されている。また、保護層8は、一対の電極層である第1の電極層3および第2の電極層4よりも基板5側に配置されている。保護層8を配置することによって、より特性が安定したFBAR1とすることができる。図1に示すFBAR1は、メンブレン型のFBARであるといえる。
上述したように図1に示すFBAR1では、多層構造51の主面に垂直な方向から見たときに、空洞6の少なくとも一部と多層構造51の少なくとも一部とが重なっている。なかでも、FBAR1を多層構造51の主面に垂直な方向から見たときに、多層構造51の全体が空洞6の領域内に配置されるように多層構造51が基板5上に形成されていることが好ましい。図1Aに示すFBAR1を矢印Xの方向から見た模式平面図を図2Aに示す。図2Aに示すFBAR1では、多層構造51が空洞6の領域内に配置されている。図2Bは、図1Aに示すFBAR1を図2Aの反対側から見た模式平面図である。
層A7の形状や、多層構造51の主面の面積に対する層A7の主面の面積の割合などは特に限定されない。FBARとして必要な特性に応じて任意に設定すればよい。例えば、FBAR1を多層構造51の主面に垂直な方向から見た場合に、層A7が多層構造51と同様の形状を有していてもよいし、有していなくてもよい。多層構造51よりも主面の面積が小さくてもよいし大きくてもよい。なお、FBARとしての機能を損なわない限り、多層構造51に含まれるそれぞれの層が部分的に欠落していてもよい。例えば、第1の電極層3、圧電層2および第2の電極層4から選ばれる少なくとも1つの層が、あるいは、層A7が、多層構造51の主面に垂直な方向から見た場合に、櫛形の形状、ストライプ形の形状などを有していてもよい。
多層構造51における層A7を配置する位置は特に限定されない。例えば、図1Aおよび図1Bに示すように、層A7が一対の電極層間(第1の電極層3と第2の電極層4との間)に配置されていてもよいし、図1Cおよび図1Dに示すように、層A7が一対の電極層における基板5側の電極層(第2の電極層4)と基板5との間に配置されていてもよい。なかでも、図1Aおよび図1Bに示すように、層A7が一対の電極層間に配置されている場合、圧電層2の熱膨張(あるいは収縮)の影響をより抑制することができ、環境の変化に伴うFBARの特性変動をより抑制することができる。図1Aおよび図1Bに示すFBAR1では、層A7は圧電層2と少なくとも一方の電極層との間に配置されているともいえる。
また、図1A〜図1Cに示すFBAR1では、層A7は保護層8と少なくとも一方の電極層との間に配置されているともいえる。このような構成のFBAR1では、図1Dに示すFBAR1(層A7は保護層8と基板5との間に配置されている)に比べて、特性の変動をより抑制することができる。図1Dに示すようなFBAR1では、圧電層2に比べて保護層8および第2の電極層4の厚さが十分に薄いことが好ましい。層A7が、圧電層2あるいは電極層と化学的に反応する可能性がある場合には、図1Dに示すようなFBAR1が好ましい場合がある。
多層構造51に含まれる層A7の数は特に限定されない。即ち、多層構造51は層A7を一層含んでいても複数層含んでいてもよい。例えば、圧電層2と第1の電極層3との間、および、圧電層2と第2の電極層4との間のそれぞれに層A7が配置されていてもよい。また、圧電層2の内部に層A7が配置されていてもよい。即ち、基板5側から、第2の電極層4、圧電層2、層A7、圧電層2および第1の電極層3がこの順に積層されていてもよい。
図1に示すFBAR1では、空洞6が基板5を貫通している(基板5の貫通孔である)が、空洞6の形状は特に貫通孔に限定されない。空洞6は、基板5における多層構造51とは反対側の主面に形成された陥没部であってもよいし、実施の形態2に後述するように、基板5における多層構造51側の主面に形成された陥没部であってもよい。後者の場合、エアーギャップ型のFBARであるといえる。
層A7は、層A7全体として負の熱膨張率を有する限り、その構成、構造、具体的に含まれる材料などは特に限定されない。例えば、負の熱膨張率を有する材料からなる層A7であってもよいし、負の熱膨張率を有する材料と正の熱膨張率を有する材料(あるいは熱膨張率がほぼ0である材料)とを含む層A7であってもよい。このとき、層A7が、例えば、負の熱膨張率を有する材料からなる薄膜と、正の熱膨張率を有する材料(あるいは熱膨張率がほぼ0である材料)からなる薄膜との積層膜であってもよい。また、異なる材料を複数種混合してなる層A7であってもよい。
また、層A7の厚さ方向に、熱膨張率が変化していてもよい。厚さ方向に熱膨張率が変化している層A7としては、例えば、含まれる材料の組成勾配が厚さ方向に存在する層が挙げられる。層A7をFBAR1中に配置した際に、正の熱膨張率を有する層(例えば、電極層や圧電層)と層A7とが接することになる。このとき、近接する層間の熱膨張率の差が大きい場合、環境温度の変化に伴って機械的な歪みなどによる共振子の破壊、層間剥離などが発生する可能性がある。厚さ方向に熱膨張率が変化している層A7を用いることによって、近接する層間の熱膨張率の差を小さくし、環境温度の変化に伴う機械的な歪みの発生を抑制することができる。
層A7の熱膨張率は全体として負である限り特に限定されず、例えば、−20ppm/K〜−0.1ppm/Kの範囲であり、−5ppm/K〜−0.1ppm/Kの範囲が好ましい。
負の熱膨張率を有する材料は特に限定されず、例えば、Yb−Ga−Geなどの金属間化合物(熱膨張率は、例えば、−18ppm/K〜−13ppm/K程度の範囲)や、ガラスセラミクス(例えば、(株)オハラ製のNEX(熱膨張率は、例えば、−0.8ppm/K〜−0.2ppm/K程度の範囲))を用いればよい。また、金属元素を含む複合酸化物を用いてもよく、具体的には、例えば、タングステン酸複合酸化物およびモリブデン酸複合酸化物から選ばれる少なくとも1種の材料などを用いればよい。なかでもタングステン酸複合酸化物やモリブデン酸複合酸化物は、通常の薄膜形成プロセス(例えば、RFスパッタリングなど)によって形成することが可能であり、FBARの製造プロセス中に層Aの成膜プロセスを混在させることができるため好ましい。
タングステン酸複合酸化物およびモリブデン酸複合酸化物の具体的な組成は特に限定されず、例えば、式RQ28や、式(RM)Q312、式((RM)1-x2x)(QO43によって示される組成を有する複合酸化物であればよい。ただし上記各式において、Rは、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素である。Mは、Mg、Ca、Sr、BaおよびRaから選ばれる少なくとも1種の元素である。Tは、3価のイオンとなる金属元素(例えば、Al、Sc、Lu、Y、Ga、In、Ho,Ybなど)である。Qは、WおよびMoから選ばれる少なくとも1種の元素であり、Oは酸素である。xは、式0≦x≦1を満たす数値である。なかでも、式((RM)1-x2x)(QO43によって示される組成を有する複合酸化物が好ましい。
式RQ28によって示される複合酸化物としては、例えば、ZrW28(熱膨張率が約−9ppm/K)やHfW28(熱膨張率が約−8ppm/K)などが挙げられる。しかしながら式RQ28によって示される複合酸化物は、上述した他の複合酸化物と結晶系が異なるため、上述した他の複合酸化物と混合して用いることが難しい。これに対して、式((RM)1-x2x)(QO43によって示される複合酸化物は、含まれる元素および組成(x)を制御することによって、熱膨張率を比較的容易に制御することができる。即ち、式((RM)1-x2x)(QO43によって示される複合酸化物を用いた場合、FBARを構成する材料である電極材料、基板材料、圧電材料などの種類に応じて、適宜、層A7の熱膨張率を調節することが可能である。
例えば、式T2312によって示される組成を有する酸化物(x=1)や式(RM)Q312によって示される組成を有する酸化物(x=0)は、元素T、Rおよび/またはMを選択することによって熱膨張率を制御することができる。具体的には、例えば、Al2312(xが1、TがAl、QがW)の熱膨張率は約+2ppm/Kであり、Sc2312(xが1、TがSc、QがW)の熱膨張率は約−2ppm/Kであり、Lu2312(x=1、TがLu、QがW)の熱膨張率は約−7ppm/Kである。また、例えば、(HfMg)W312(x=0、RがHf、MがMg、QがW)の熱膨張率は約−2ppm/Kである。
さらに、これらの酸化物は混合して用いることが可能である。例えば、式T2312によって示される組成を有する酸化物の場合、Tとして複数の金属元素(3価のイオンとなる金属元素)を混合することによって、例えば、(AlSc)W312、(Al1.3Sc0.7)W312、(Al1.5Sc0.5)W312、(AlY)W312、(Al0.71.3)W312、(AlLu)W312などの酸化物としてもよい。上記複数の金属元素の組成比を変化させることによって、熱膨張率を制御することができる。
また、x=0.5の場合の酸化物の例として、例えば、((HfMg)0.5Al)(WO4)3、((ZrMg)0.5Sc)(WO4)3、((HfCa)0.5Sc)(WO4)3、((ZrCa)0.5Y)(WO43、((ZryHf1-yMg)0.5Y)(WO43、((ZryHf1-yCa)0.5Lu)(WO43、((ZrMgyCa1-y0.5Al)(WO43などが挙げられる。ここで、yは、式0<y<1を満たす数値であり、yの値を変化させることによって酸化物の熱膨張率をさらに制御することができる。
以下の表1に、上述した複合酸化物の一例とその熱膨張率を示す。表1に例示する複合酸化物を1種あるいは複数種用いることによって、層A7の熱膨張率を−9ppm/Kから、ほぼ0ppm/K(ただし負の値である)まで制御することが可能である。部分的には、+2ppm/Kまで制御することもできる。
Figure 2006033748
FBAR1において、層A7以外の層に用いる材料や、層A7以外の層の構造、構成などは特に限定されない。一般的にFBARに用いる材料を用いればよく、また、一般的にFBARに用いる構造、構成などであればよい。
基板5には、例えば、半導体基板を用いればよい。具体的には、例えば、シリコン基板や、GaAsなどの化合物半導体基板を用いればよい。基板5がシリコン基板である場合、空洞6は、例えば、KOHなどを用いたエッチングにより形成することができる。なお、シリコンの熱膨張率は、約3ppm/K〜5ppm/K程度の範囲である。
第1の電極層3および第2の電極層4には、例えば、導電性に優れる材料を用いればよい。具体的には、例えば、Mo、Al、W、Au、Pt、Pd、Tiやこれらの金属の合金などを用いればよい。第1の電極層3および第2の電極層4の厚さは、例えば、100nm〜1000nmの範囲である。なお、上述した電極材料の中で、Wの熱膨張率が最も小さく約4ppm/K〜5ppm/K程度の範囲であり、Moの熱膨張率は約5ppm/K〜6ppm/K程度の範囲である。その他の電極材料の熱膨張率はこれよりも大きく、AuやAlなどの熱膨張率は一般に10ppm/Kを超える値である。
圧電層2に用いる圧電材料は特に限定されず、例えば、AlNやZnO、PZT(チタン酸ジルコン鉛)などを用いればよい。なかでも、組成の制御がより容易であることから、AlNが好ましい。圧電層2の厚さは、例えば、500nm〜3000nmの範囲である。なお、AlNの熱膨張率は、約3.5ppm/K〜10ppm/K程度の範囲である。
保護層8に用いる材料は特に限定されず、例えば、SiO2などの金属酸化物を用いればよい。SiO2は、スパッタリング法を用いて形成可能であることからより好ましい。保護層8の厚さは、例えば、100nm〜1000nm程度の範囲である。なお、これらの材料の熱膨張率は、約+0.3ppm/K〜+10ppm/K程度の範囲である。
図1に示すFBAR1の製造には、一般的にFBARの製造に用いられる方法を用いればよい。例えば、基板5に保護層8を形成した後にエッチングなどにより空洞6を形成し、その後、基板5上にスパッタリング法などにより各層を形成すればよい。各層の形成方法はスパッタリング法に限定されず、蒸着法など、一般的な薄膜の形成方法であれば応用することが可能である。なお、層A7の形成に関しては、層A7の組成を制御することが容易なことから、スパッタリング法(例えば、多元スパッタリング法)を用いることが好ましい。
図3A〜図3Fに、本発明のFBARの製造方法の一例を示す。図3A〜図3Fは、図1Aに示すFBAR1の製造方法の一例を示す模式工程図である。
最初に、図3Aに示すように、基板5上に保護層8をスパッタリング法、イオン成長法などにより形成する。次に、図3Bに示すように、基板5における保護層8が形成された主面とは反対側の主面から、エッチング(異方性エッチング)などにより空洞6を形成する。次に、図3Cに示すように、スパッタリング法などにより第2の電極層4を形成する。次に、図3D〜図3Fに示すように、スパッタリング法などにより圧電層2、層A7および第1の電極層3を順に形成する。このようにして図1Aに示すFBAR1を製造することができる。空洞6および各層の形成条件には、一般的な形成条件を用いればよい。
図1B〜図1Cに示すFBAR1を製造する際には、各層を形成する順序を変更すればよい。図1Dに示すFBAR1を製造する際には、例えば、基板5上に層A7および保護層8を形成した後に、空洞6を形成し、残る各層を形成すればよい。
層A7の形成には、例えば、RFスパッタリング法を用いればよい。このとき、例えば、層A7として形成したい酸化物をターゲットとして用いればよく、複数のターゲットを用いて層A7を形成してもよい。複数のターゲットを用いた場合、各ターゲットに印加するエネルギーをそれぞれ制御することによって、厚さ方向に組成を変化させた(熱膨張率を変化させた)層A7を形成することができる。酸化物のターゲットは、焼結法などの一般的な方法を用いて準備すればよい。
スパッタリングの雰囲気は特に限定されず、例えば、ArとO2(酸素)とを含む雰囲気下において行えばよい。基板5は必要に応じて加熱してもよく、例えば、500℃〜900℃の範囲に加熱してもよい。具体的には、電極層、保護層、圧電層などの耐熱温度や反応温度などを考慮して、基板5の加熱の有無や、基板5の加熱温度を決定すればよい。
Al2312と(HfMg)(WO4)3の2種類のターゲットを用いて2元スパッタリングを行い、((HfMg)1-xAl2x)(WO43を形成した際におけるxの値による熱膨張率の差を図4に示す。図4に示すように、Al2312と(HfMg)(WO4)3の各ターゲットに印加するエネルギーをそれぞれ制御することによって、得られる複合酸化物の組成を変化させた場合、組成の変化に伴って複合酸化物の熱膨張率が変化することがわかる。図4に示す例では、例えば、層A7の熱膨張率をほぼ0ppm/K(ただし負の値である)〜−2ppm/K程度の範囲で制御することが可能であり、部分的には+2ppm/Kまで制御することができる。
(実施の形態2)
本発明のFBARの別の一例を図5に示す。図5に示すFBAR11では、圧電材料を含む圧電層2と、第1の電極層3と、第2の電極層4とを含む多層構造51が基板5上に形成されている。第1の電極層3および第2の電極層4は、一対の電極層として圧電層2を介して(圧電層2を狭持するように)積層されている。第1の電極層3および第2の電極層4を介して印加される電界に応じて圧電層2が共振することによって、FBAR11は共振子として機能できる。また、多層構造51は負の熱膨張率を有する層A7を含んでいる。
図5に示すFBAR11では、空洞6として、基板5における多層構造51側の主面に陥没部が形成されている。このようなFBAR11においても図1に示すFBAR1と同様に、環境温度などの環境の変化に伴う特性の変化が抑制されたFBARとすることができる。図5に示すFBAR11は、エアーギャップ型のFBARといえる。
ここで、FBAR1を多層構造51の主面に垂直な方向から見たときに(例えば、図5Aに示す矢印Xの方向へ見たときに)、陥没部である空洞6の少なくとも一部と多層構造51の少なくとも一部とが重なるように、多層構造51が基板5上に形成されていればよい。エアーギャップ型のFBARは、図1に示すようなメンブレン型のFBARに比べて共振子としての強度、耐久性などをより向上させることができる。また、後述するブラッグリフレクター型のFBARに比べて共振子としての特性をより安定にすることができる。
図5Aに示すFBAR11を矢印Xの方向から見た模式平面図を図6に示す。図6に示すFBAR11では、陥没部である空洞6の少なくとも一部と多層構造51の少なくとも一部とが重なるように、多層構造51が基板5上に形成されている。層A7の形状や、多層構造51の主面の面積に対する層A7の主面の面積の割合などは、実施の形態1と同様に特に限定されない。FBARとして必要な特性に応じて任意に設定すればよい。
陥没部である空洞6の厚さ(基板5の主面からの空洞6の深さ)は、多層構造51と基板5とを音響的に分離できる限り特に限定されず、例えば、200nm〜2000nmの範囲であればよい。
多層構造51における層A7を配置する位置は特に限定されない。例えば、図5Aおよび図5Bに示すように、層A7が一対の電極層間(第1の電極層3と第2の電極層4との間)に配置されていてもよいし、図5Cに示すように、多層構造51において、層A7が一対の電極層における基板5側の電極層(第2の電極層4)と基板5との間に配置されていてもよい。なかでも、図5Aおよび図5Bに示すように、層A7が一対の電極層間に配置されている場合、圧電層2の熱膨張(あるいは収縮)の影響をより抑制することができ、環境の変化に伴うFBARの特性変動をより抑制することができる。図5Aおよび図5Bに示すFBAR11では、層A7は圧電層2と少なくとも一方の電極層との間に配置されているともいえる。
層A7や、多層構造51に含まれる各層の材料、構成などは、実施の形態1で説明したFBARにおける層A7などの各層と同様であればよい。
図5に示すFBAR11の製造には、一般的にFBARの製造に用いられる方法を用いればよい。図7A〜図7Gに、本発明のFBARの製造方法の一例を示す。図7A〜図7Gは、図5Bに示すFBAR11の製造方法の一例を示す模式工程図である。
最初に、図7Aに示すように、基板5上に凹部13をエッチング法などにより形成する。凹部13は、例えば、形成したいFBAR11において空洞6となる陥没部と同様の形状に形成すればよい。次に、図7Bに示すように、凹部13を含めた基板5上に犠牲層12を形成する。犠牲層12に用いる材料は特に限定されず、例えば、金属材料、ポリマー材料、ガラス材料などを用いればよい。
次に、図7Cに示すように、凹部13に相当する部分を残して犠牲層12をエッチングなどにより除去する。犠牲層12の一部を除去する際には、残される犠牲層12と基板5との間でできるだけ平滑に連続した表面を形成することが好ましい。このため、犠牲層12の一部を除去した後に、残された犠牲層12と基板5との表面を研磨する工程が含まれていてもよい。次に、図7D〜図7Fに示すように、第2の電極層4、圧電層2、層A7および第1の電極層3を形成する。各層の形状を決定するために、必要に応じてレジストなどを用いてもよい。最後に、図7Gに示すように、基板5上に残された犠牲層12をエッチングなどにより除去し、陥没部である空洞6を形成する。残された犠牲層12を除去する際には、犠牲層12に含まれる材料に応じて、適宜、エッチング溶液を選択すればよい。例えば、犠牲層12が金属材料を含む場合には酸を含むエッチング溶液を用いればよい。その他、例えば、犠牲層12がポリマー材料を含む場合には有機溶剤を、犠牲層12がガラス材料を含む場合にはフッ酸などガラスを侵食する材料を含むエッチング溶液を用いればよい。
このようにして図5Bに示すFBAR11を製造することができる。なお、犠牲層12を含めて各層の形成条件には、一般的な形成条件を用いればよい。また、図5Aおよび図5Cに示すFBAR11を製造する際には、各層を形成する順序を変更すればよい。
(実施の形態3)
本発明のFBARの別の一例を図8に示す。図8に示すFBAR21では、圧電材料を含む圧電層2と、第1の電極層3と、第2の電極層4とを含む多層構造51が基板5上に形成されている。第1の電極層3および第2の電極層4は、一対の電極層として圧電層2を介して(圧電層2を狭持するように)積層されている。第1の電極層3および第2の電極層4を介して印加される電界に応じて圧電層2が共振することによって、FBAR21は共振子として機能できる。また、多層構造51は負の熱膨張率を有する層A7を含んでいる。
図8に示すFBAR21では、基板5と多層構造51との間に空洞6が形成されている。このようなFBAR21においても図1に示すFBAR1と同様に、環境温度などの環境の変化に伴う特性の変化が抑制されたFBARとすることができる。図8に示すFBAR21は、図5に示すFBAR11とは構造が異なるが、エアーギャップ型のFBARといえる。
ここで、多層構造51の主面に垂直な方向から見たときに、空洞6の少なくとも一部と多層構造51の少なくとも一部とが重なるように、多層構造51が基板5上に形成されていればよい。
層A7の形状や、多層構造51の主面の面積に対する層A7の主面の面積の割合などは、実施の形態1と同様に特に限定されない。FBARとして必要な特性に応じて任意に設定すればよい。
空洞6の厚さは、多層構造51と基板5とを音響的に分断できる限り特に限定されず、例えば、200nm〜2000nmの範囲であればよい。
多層構造51における層A7を配置する位置は特に限定されない。例えば、図8Aおよび図8Bに示すように、層A7が一対の電極層間(第1の電極層3と第2の電極層4との間)に配置されていてもよいし、図8Cに示すように、多層構造51において、層A7が一対の電極層における基板5側の電極層(第2の電極層4)と基板5との間に配置されていてもよい。なかでも、図8Aおよび図8Bに示すように、層A7が一対の電極層間に配置されている場合、圧電層2の熱膨張(あるいは収縮)の影響をより抑制することができ、環境の変化に伴うFBARの特性変動をより抑制することができる。図8Aおよび図8Bに示すFBAR21では、層A7は圧電層2と少なくとも一方の電極層との間に配置されているともいえる。
層A7や、多層構造51に含まれる各層に用いられる具体的な材料などは、実施の形態1で説明したFBARと同様であればよい。
図8に示すFBAR21では、基板5および空洞6上に保護層22が配置されている。保護層22を配置することによって、空洞6の厚さの変化を抑制したり、第1の電極層3と第2の電極層4との距離の変化を抑制したりすることができる。保護層22には、例えば、SiO2などの金属酸化膜を用いればよい。保護層22の厚さは特に限定されず、例えば、100nm〜1000nm程度の範囲である。なお、保護層22は必ずしも必要ではなく、省略することができる。
図8に示すFBAR21の製造には、一般的にFBARの製造に用いられる方法を用いればよい。図9A〜図9Gに、本発明のFBARの製造方法の一例を示す。図9A〜図9Gは、図8Aに示すFBAR21の製造方法の一例を示す模式工程図である。
最初に、図9Aに示すように、基板5上に犠牲層12をスパッタリング法などにより形成する。犠牲層12は、例えば、形成したいFBAR21における空洞6と同様の形状に形成すればよい。犠牲層12の形状を決定するために、例えば、レジストを用いてもよい。次に、図9Bに示すように、基板5および犠牲層12上に保護層22をスパッタリング法などにより形成する。次に、図9C〜図9Fに示すように、第2の電極層4、層A7、圧電層2および第1の電極層3を形成する。各層の形状を決定するために、必要に応じてレジストなどを用いてもよい。最後に、図9Gに示すように、基板5上に残された犠牲層12をエッチングなどにより除去し、空洞6を形成する。
このようにして図8Aに示すFBAR21を製造することができる。犠牲層12を含め、各層の形成条件には、一般的な形成条件を用いればよい。図8Bおよび図8Cに示すFBAR21を製造する際には、各層を形成する順序を変更すればよい。
(実施の形態4)
図10に本発明のFBARの別の一例を示す。図10に示すFBAR31では、圧電材料を含む圧電層2と、第1の電極層3と、第2の電極層4とを含む多層構造51が基板5上に形成されている。第1の電極層3および第2の電極層4は、一対の電極層として圧電層2を介して(圧電層2を狭持するように)積層されている。第1の電極層3および第2の電極層4を介して印加される電界に応じて圧電層2が共振することによって、FBAR31は共振子として機能できる。また、多層構造51は負の熱膨張率を有する層A7を含んでいる。
図10に示すFBAR31では、多層構造51が音響ミラー層32をさらに含み、音響ミラー層32は一対の電極層(第1の電極層3および第2の電極層4)よりも基板5側に配置されている。このようなFBARとすることによっても、使用環境温度などの環境の変化に伴う特性(例えば、共振周波数特性など)の変動が抑制されたFBAR1とすることができる。なお、図10に示すFBAR31は、ブラッグリフレクター型のFBARであるといえる。
図10Aに示すFBAR31を矢印Xの方向から見た模式平面図を図11に示す。図11に示すように、多層構造51の主面に垂直な方向から見たときに、多層構造51の面積よりも音響ミラー層32の面積の方が大きいことが好ましい。また、同様に多層構造51の主面に垂直な方向から見たときに、音響ミラー層32の領域に多層構造51が内包されるように両者の位置関係があることが好ましい。
実施の形態1と同様に、層A7の形状や、多層構造51の主面の面積に対する層A7の主面の面積の割合などは特に限定されない。また、FBARとしての機能を損なわない限り、多層構造51に含まれるそれぞれの層が部分的に欠落していてもよい。
多層構造51における層A7を配置する位置は特に限定されない。例えば、図10Aおよび図10Bに示すように、層A7が一対の電極層間(第1の電極層3と第2の電極層4との間)に配置されていてもよいし、図10Cおよび図10Dに示すように、層A7が一対の電極層における基板5側の電極層(第2の電極層4)と基板5との間に配置されていてもよい。なかでも、図10Aおよび図10Bに示すように、層A7が一対の電極層間に配置されている場合、圧電層2の熱膨張(あるいは収縮)の影響をより抑制することができ、環境の変化に伴うFBARの特性変動をより抑制することができる。図10Aおよび図10Bに示すFBAR31では、層A7は圧電層2と少なくとも一方の電極層との間に配置されているともいえる。
また、図10A〜図10Cに示すFBAR31では、層A7は音響ミラー層32と少なくとも一方の電極層との間に配置されているともいえる。このような構成のFBAR31では、図10Dに示すFBAR31(層A7は音響ミラー層32と基板5との間に配置されている)に比べて、特性の変動をより抑制することができる。図10Dに示すようなFBAR1では、圧電層2に比べて音響ミラー層32および第2の電極層4の厚さが十分に薄いことが好ましい。層A7が、圧電層2あるいは電極層と化学的に反応する可能性がある場合には、図10Dに示すようなFBAR1が好ましい場合がある。
層A7を含め各層の具体的な材料、形状、構成などは実施の形態1で説明したFBARと同様であればよい。
音響ミラー層32には、一般的にFBARに用いられる音響ミラー層を用いればよい。具体的には、例えば、音響インピーダンスの差が互いに大きい薄膜状の材料を交互に積層した積層膜を用いればよい。このような構成にすることによって、音波エネルギーをより効率よく反射することができ、特性に優れるFBARとすることができる。
音響ミラー層32に含まれる材料としては、例えば、高音響インピーダンス膜としてW(タングステン)膜を、低音響インピーダンス膜としてSiO2膜を用いればよい。その他、互いに音響インピーダンスの差が大きい(例えば、高音響インピーダンス膜と低音響インピーダンス膜との間で3倍程度以上)材料であれば、特に限定されずにそれぞれの膜に用いることができる。各膜の厚さは、例えば、形成したいFBARの共振周波数の4分の1の波長に相当する厚さであればよい。
図10に示すFBAR31の製造には、一般的にFBARの製造に用いられる方法を用いればよい。図12A〜図12Eに、本発明のFBARの製造方法の一例を示す。図12A〜図12Eは、図10Aに示すFBAR31の製造方法の一例を示す模式工程図である。
最初に、図12Aに示すように、基板5上に音響ミラー層32をスパッタリング法などにより形成する。音響ミラー層32は、スパッタリング方以外にも蒸着法などの一般的な薄膜形成方法を用いても形成することができる。次に、図12B〜図12Eに示すように、スパッタリング法などにより第2の電極層4、圧電層2、層A7および第1の電極層3を順に形成する。このようにして図10Aに示すFBAR1を製造することができる。音響ミラー層32および各層の形成条件には、一般的な形成条件を用いればよい。
図10B〜図10Dに示すFBAR31を製造する際には、各層を形成する順序を変更すればよい。図10Dに示すFBAR31を製造する際には、例えば、基板5上に層A7を形成した後に音響ミラー層32を形成し、残る各層を形成すればよい。
以上説明したように、本発明によれば、負の熱膨張率を有する層Aをさらに含むことによって、使用環境温度などの環境の変化に伴う特性(例えば、共振周波数特性など)の変動が抑制された薄膜バルク音波共振子(FBAR)を提供することができる。本発明のFBARは、例えば、高周波フィルターやデュプレクサなどの用途に用いることができる。
本発明の薄膜バルク音波共振子の一例を模式的に示す断面図である。 図1Aに示す薄膜バルク音波共振子を主面に垂直な方向から見た模式平面図である。 本発明の薄膜バルク音波共振子の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。 本発明の薄膜バルク音波共振子の層Aに含まれる材料において、組成と熱膨張率との関係の一例を示す図である。 本発明の薄膜バルク音波共振子の別の一例を模式的に示す断面図である。 図5Aに示す薄膜バルク音波共振子を主面に垂直な方向から見た模式平面図である。 本発明の薄膜バルク音波共振子の製造方法の別の一例を模式的に示す工程図である。 本発明の薄膜バルク音波共振子のまた別の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の薄膜バルク音波共振子の製造方法のまた別の一例を模式的に示す工程図である。 本発明の薄膜バルク音波共振子のさらにまた別の一例を模式的に示す断面図である。 図10Aに示す薄膜バルク音波共振子を主面に垂直な方向から見た模式平面図である。 本発明の薄膜バルク音波共振子の製造方法のまた別の一例を模式的に示す工程図である。 従来の薄膜バルク音波共振子の一例を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1、11、21、31、101 薄膜バルク音波共振子(FBAR)
2 圧電層
3 第1の電極層
4 第2の電極層
5 基板
6 空洞
7 層A
8、22 保護層
12 犠牲層
13 凹部
32 音響ミラー層

Claims (15)

  1. 圧電材料を含む圧電層と、前記圧電層を介して積層された一対の電極層とを含む多層構造が基板上に形成された薄膜バルク音波共振子であって、
    前記多層構造は、負の熱膨張率を有する層Aを含むことを特徴とする薄膜バルク音波共振子。
  2. 前記層Aが、前記一対の電極層間に配置されている請求項1に記載の薄膜バルク音波共振子。
  3. 前記層Aが、前記圧電層と少なくとも一方の前記電極層との間に配置されている請求項1に記載の薄膜バルク音波共振子。
  4. 前記基板に空洞が形成されており、
    前記多層構造の主面に垂直な方向から見たときに、前記空洞の少なくとも一部と前記多層構造の少なくとも一部とが重なるように前記多層構造が前記基板上に形成されている請求項1に記載の薄膜バルク音波共振子。
  5. 前記空洞が前記基板の厚さ方向に前記基板を貫通しており、
    前記多層構造が保護層をさらに含み、
    前記保護層は、前記多層構造の主面に垂直な方向から見たときに、前記基板の前記多層構造側の主面における前記空洞の開口部を覆うように、かつ、前記一対の電極層よりも前記基板側に配置されている請求項4に記載の薄膜バルク音波共振子。
  6. 前記層Aが、前記保護層と少なくとも一方の前記電極層との間に配置されている請求項5に記載の薄膜バルク音波共振子。
  7. 前記空洞として、前記基板における前記多層構造側の主面に陥没部が形成されている請求項4に記載の薄膜バルク音波共振子。
  8. 前記基板と前記多層構造との間に空洞が形成されている請求項1に記載の薄膜バルク音波共振子。
  9. 前記多層構造が音響ミラー層をさらに含み、
    前記音響ミラー層は、前記一対の電極層よりも基板側に配置されている請求項1に記載の薄膜バルク音波共振子。
  10. 前記層Aが、前記音響ミラー層と少なくとも一方の前記電極層との間に配置されている請求項9に記載の薄膜バルク音波共振子。
  11. 前記層Aが、負の熱膨張率を有する金属間化合物および負の熱膨張率を有するガラスセラミクスから選ばれる少なくとも1種の材料を含む請求項1に記載の薄膜バルク音波共振子。
  12. 前記層Aが、負の熱膨張率を有する複合酸化物を含む請求項1に記載の薄膜バルク音波共振子。
  13. 前記複合酸化物が、タングステン酸複合酸化物およびモリブデン酸複合酸化物から選ばれる少なくとも1種である請求項12に記載の薄膜バルク音波共振子。
  14. 前記複合酸化物が、式((RM)1-x2x)(QO43によって示される組成を有する請求項13に記載の薄膜バルク音波共振子。
    ただし、前記式において、Rは、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素であり、Mは、Mg、Ca、Sr、BaおよびRaから選ばれる少なくとも1種の元素であり、Tは、3価のイオンとなる金属元素であり、Qは、WおよびMoから選ばれる少なくとも1種の元素であり、xは、式0≦x≦1を満たす数値である。
  15. 前記複合酸化物が、式RMg(WO43によって示される組成を有する請求項14に記載の薄膜バルク音波共振子。

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