JP2006029534A - ボルト及びその製造方法 - Google Patents

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通男 柳川
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Abstract

【課題】 優れた靭性を有しつつ、タッピング機能の強化を図ったボルト及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 下穴の表面に対して塑性変形によりめねじを形成するめねじ形成部としての凸部12aを有するボルト100において、凸部12aの表面側に、浸炭熱処理によって、薄い浸炭硬化層を設けることにより、凸部12aの表面を硬くしつつ、内部は一般的なボルトと同様の機械的性質を有するようにする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、タッピング機能を有するボルト及びその製造方法に関するものである。
通常、ボルトは、ナットなどのめねじを有する部材に締結される。しかし、コストダウンなどの目的から、ボルトにタッピング機能を備えることが要求される場合がある。しかし、ボルトには本来的に優れた延性及び靭性が要求される。従って、一般ボルトに用いられる素材の特性は、軸心部まで均一に調質熱処理できることが求められ、ねじ部の表面は軸心部と同等の硬さとなる。そのため、ボルトのねじ部の表面は、浸炭熱処理がなされるタッピングねじのねじ部の表面と比較すると、著しく硬さが低くなる。従って、ボルトにタッピング機能を持たせるために、ねじ山の形状を工夫しても、ねじ山の硬さが不十分なために、十分にタッピング機能を発揮していないのが現状である。
仮にボルトの素材として、タッピングねじに通常用いられるはだ焼鋼(浸炭用鋼:炭素量0.2%以下の機械構造用炭素鋼や合金鋼など)を採用して、浸炭焼入れ焼き戻しを行うと、機械的強度(引張り強さ)は高くなるものの、浸炭層部分は伸びが低下し、殆ど塑性変形せず、脆化してくる。そのため、締結時に締付けによる軸力が発生した場合にボルトが伸びると同時に表面に割れが発生してしまう。また、表面の亀裂を起点として、応力腐食割れや水素脆性破壊も発生する。従って、締め付けによる発生軸力が高いことが要求される部位や、繰返し応力が加わる部位への適用は困難である。なお、一般的に工具鋼に見られる過共析組織や浸炭硬化層などに見られる共析組織は硬度は高いが、引張りに対する延性及び靭性は低い。これに対して、一般構造鋼に対しては適当な焼入れ焼き戻しを行うと延性及び靭性特性が優れたものになる。ただし、焼入れのみの場合には、延性及び靭性は低い。
なお、関連する技術として、特許文献1〜3に開示されたものがある。
特開平8−338412号公報 特開2000−35016号公報 特公昭39−14383号公報
本発明の目的は、優れた延性と靭性を有しつつ、タッピング機能の強化を図ることにある。
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
すなわち、本発明のボルトは、
下穴の表面に対して塑性変形によりめねじを形成するめねじ形成部を有するボルトであって、
めねじ形成部の表面側には、浸炭熱処理により形成された薄い浸炭硬化層が設けられていることを特徴とする。
ここで、「薄い」とは、ボルト本来の機械的強度(例えば、JIS規格やISO規格を満たすこと)に影響を与えることのない範囲の厚みであることを意味する。
本発明の構成によれば、めねじ形成部の表面側には浸炭硬化層が設けられているため、めねじ形成部の硬さがねじ部の軸心の硬さよりも高い。従って、本発明のボルトによれば、優れたタッピング機能を発揮する。そして、この浸炭硬化層は薄いため、ボルト自体の延性や靭性が損なわれることもない。
ここで、ねじの表面に摩擦低減剤が塗布されることにより、トルクと軸力との関係が制御されているとよい。
また、本発明のボルトの製造方法は、
下穴の表面に対して塑性変形によりめねじを形成するめねじ形成部を有するボルトの製造方法であって、
浸炭熱処理によって、ねじ部のうち少なくともめねじ形成部を含む部分の表面に、薄い浸炭硬化層を形成する工程を有することを特徴とする。
また、本発明のボルトの製造方法は、
下穴の表面に対して塑性変形によりめねじを形成するめねじ形成部を有するボルトの製造方法であって、
浸炭熱処理を行う第1工程と、
第1工程後、第1工程における浸炭熱処理に比べて炭素濃度が低い雰囲気の下で更に浸炭熱処理を行う第2工程とを含み、
ねじ部のうち少なくともめねじ形成部を含む部分の表面に、薄い浸炭硬化層を形成することを特徴とする。
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
以上説明したように、本発明によれば、優れた延性と靭性を有しつつ、タッピング機能の強化を図ることができる。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
(ボルトの説明)
本発明は、下穴の表面に対して塑性変形によりめねじを形成するタッピング機能を有する各種ボルトに対して適用することができる。本発明の実施例の説明をするに先立って、本発明を適用することのできるボルトの一例を、図1〜図4を参照して説明する。図1は本発明の実施例に係るボルトの外観図である。なお、図1(a)はボルトの正面図であり、(b)は(a)中のAA断面図(案内ねじ部の断面図)である。図2は図1中のねじ部の一部拡大図である。図3は本発明の実施例に係るボルトのねじ部の一部拡大図(フランク(ねじ山の斜面)の拡大図)である。図4は本発明の実施例に係るボルトの使用例を示す模式的断面図である。
ボルト100は、軸部10と頭部20から構成される。そして、軸部10には、めねじに締結される通常ねじ部11と、通常ねじ部11よりも先端側に設けられる案内ねじ部12と、頭部20と通常ねじ部11との間に設けられる円筒部13が設けられる。案内ねじ部12は、先端に向かうにつれて小径となる略テーパ形状である。これにより、下穴に対してボルト100をねじ込む際には、案内ねじ部12によって軸部10が好適に下穴に導
かれ、軸部10の軸心と下穴の軸心が一致する。そして、案内ねじ部12におけるフランク(ねじ山の斜面)には、複数の箇所に、表面側に突出した凸部12aが設けられている。ボルト100を下穴にねじ込む際に、これら複数の凸部12aは、下穴の表面に対して、スエージ効果によって、塑性変形させてめねじを形成する機能を発揮する。
以上のように構成されるボルト100の使用例を、図4を参照して説明する。図4中、200は軽合金や軽金属などの軟質材からなる被締結部材であり、300は被締結部材200に固定される被固定部材である。被締結部材200には、下穴201が設けられている。この下穴201の径は、ボルト100の案内ねじ部12の先端の径よりも大きく、通常ねじ部11のおねじの外径よりも小さい。また、被固定部材300には、貫通孔301が設けられている。この貫通孔301の径は、通常ねじ部11のおねじの外径よりも僅かに大きい。
次に、ボルト100によって、被固定部材300が被締結部材200に固定される工程を説明する。まず、被締結部材200の下穴201の軸心と被固定部材300の貫通孔301の軸心がおおよそ一致するように、これらが位置決めされる。そして、被固定部材300の貫通孔301側からボルト100の軸部10が差し込まれる。貫通孔301の径よりも小径である軸部10は、貫通孔301を通り抜ける。そして、軸部10の先端側に設けられた案内ねじ部12が被締結部材200の下穴201に入り込む。この案内ねじ部12によって、軸部10の軸心と下穴201の軸心が一致し、同時に被固定部材300の貫通孔301の軸心も一致する。このようにして、被締結部材200と被固定部材300が正確に位置決めされる。
下穴201に案内ねじ部12がねじ込まれていくと、案内ねじ部12に設けられた複数の凸部12aによるスエージ効果により、下穴201の表面が塑性変形し、当該表面にめねじ202が形成される。そして、形成されためねじ202に、通常ねじ部11がねじ込まれていく。このようにして、頭部20が被固定部材300に当接するまで、ボルト100がねじ込まれる。以上の工程により、ボルト100により、被固定部材300が被締結部材200に位置決め固定される。
本実施例に係るボルト100の素材は、締め付け軸力が高い部位や、繰り返し応力が加わる部位に対しても、好適に用いられるべく、高強度ボルト用の材料が用いられる。より具体的には、引張強さが800MPa(N/mm)以上の機械的性質を有するようにしている。好適な材料の具体例としては、ボロン鋼,SCM鋼,SCr鋼及び中炭素鋼などを挙げることができる。また、ボルトの特性として、ボルトの軸部においては、軸心から表面に至るまで、いずれの部位においても硬さがほぼ同じであることが挙げられる。また、本願発明者らは、高強度ボルトの軸部においては、表面から0.05mmの部位における硬さが軸心部の硬さに対して、±30HV(ビッカース硬さ)の範囲にあれば、十分に機械的性質を満足できることを見出している。本実施例に係るボルト100は、このような要求を満足するように構成される。
以下、本発明の実施例を説明する。なお、以下に説明する各実施例におけるボルトの構造については、上述したボルト100を例にして説明する。ただし、以下に説明するように、機械的性質等については、実施例毎に異なっている。
図5〜図7を参照して、本発明の実施例1に係るボルト及びその製造方法について説明する。図5は本発明の実施例1に係るボルトのねじ表面付近の拡大断面図である。図6はボルトのねじ部において軸心の硬さに対する各部位の硬さの相対値を示すグラフである。図7はボルトのねじ部における表面側から軸心方向に向かう各部位での硬さを示すグラフ
である。
<本実施例に係るボルトの構成及び製造方法>
本実施例においては、ボルト100に対して、浸炭熱処理を行い、ボルト100の表面に、薄い浸炭硬化層14を設けるようにした。なお、この浸炭硬化層14は、案内ねじ部12(特に、案内ねじ部12に設けられた凸部12a)を硬くすることが目的であるため、この部分にのみ浸炭硬化層14を形成すれば良い。ただし、一般的な浸炭熱処理によれば、その処理の都合上、ボルト100の表面全体に浸炭硬化層が形成される。案内ねじ部12以外の部分に、浸炭硬化層が形成されても特に問題はないが、例えば、案内ねじ部12以外の箇所に浸炭防止剤を塗布しておき、案内ねじ部12にのみ、浸炭硬化層が形成されるようにしても良い。なお、浸炭熱処理自体については、タッピングねじの場合には、一般的に行われており、公知技術であるので、その説明は省略する。
ここで、従来、当業者において、ボルトに対して浸炭熱処理を行うという発想はなかった。これは、浸炭熱処理を行うと、表面硬度は増すものの、浸炭硬化層の延性が低下し、脆性が増し、ボルトとしての機能が低下してしまうため、ボルトには不適当と考えられていたからである。これに対して、本願発明者らは、様々な解析や実験を重ね、創意工夫を凝らした結果、ボルトに対して浸炭熱処理を行った場合でも、浸炭硬化層を薄くし表面硬度を抑えれば、延性や靭性が著しく損なわれることはないことを見出した。
<本実施例に係るボルトと一般的なボルト等との機械的性質の相違点>
図6には、3種類の一般的なボルトと、タッピングねじと、実施例1に係るボルトについて、ボルトの軸心の硬さを基準(0)とする各部位の硬さの相対値が示されている。図6において、横軸は軸部10における表面から軸心に向かう距離を示し、縦軸は[(各部位の硬さ)―(軸心の硬さ)]をビッカース硬さ(HV)で表したものを示している。また、図7には、調質品と、本実施例に係るボルトについて、ねじ部における表面側から軸心方向に向かう各部位でのビッカース硬さ(HV)が示されている。なお、調質品とは、一般的なボルトであり、無脱炭焼入れ焼き戻しを行ったボルトである。図7において、横軸は軸部10における表面から軸心に向かう距離を示し、縦軸はビッカース硬さ(HV)を示している。
これらのグラフから分かるように、一般的なボルトの場合には、軸心部分から表面付近に至るまで、硬さは略一定である。そして、一般的なボルトの場合には、表面付近の硬さは軸心部分に比べて低くなっているものがある。これは、浸炭現象により延性が低下することによる遅れ破壊現象を防ぐために、予め脱炭傾向にしているためである。一方、タッピングねじの場合には、軸心部分から表面に向かうにつれて、硬さが指数関数的に高くなっている。そして、表面付近ではボルトに比べて硬さが高いのに対して、軸心付近ではボルトよりも硬さが低くなっている。このように、硬さの性質に大きな違いが出る理由は、用いられる材料の特性の違い等に基づくものである。
そして、本実施例に係るボルト100の場合には、軸心部分から表面付近に至るまで、硬さが略一定である点については、一般的なボルトと同様である。しかし、本実施例に係るボルト100の場合には、表面付近の硬さが、軸心付近に比べて40〜50(HV)程度高くなっている。ただし、上記の通り、本願発明者らが見出したように、機械的性質上、高強度ボルトについては、表面から0.05mmの部位での硬さは軸心の硬さに対して±30(HV)の範囲であることが要求される。本実施例に係るボルト100は、この要求を満たしている。
以上のように、本実施例に係るボルト100は、案内ねじ部12の表面に薄い浸炭硬化層14が設けられることから、表面付近のみ硬く、表面付近以外の部分は通常のボルトと
同様の硬さとなっている。また、表面側の浸炭硬化層14が設けられていない部位の機械的性質については、一般的なボルトと同様である。従って、本実施例に係るボルト100によれば、一般的なボルトと同様に、優れた延性と靭性を発揮しつつ、表面付近のみ硬いことから、タッピング機能に優れている。このように、本実施例に係るボルト100によれば、優れた延性と靭性を有しつつ、タッピング機能の強化を図ることができる。
<延性及び靭性とタッピング機能に関する検証>
延性及び靭性を評価するために、塩酸浸漬による遅れ破壊試験を行った。具体的には、M8のフランジボルトを降伏締付けし、24時間の間隔で2週間、塩酸浸漬を繰り返した。また、ボルトは、引張り強さをJIS規格の強度区分8.8を満たすように調整したもの(引張り強さ800MPa以上)を使用した。この試験を、本実施例に係るボルトと、調質品と、材料にタッピングねじに用いられるもの(はだ焼鋼)を採用し、タッピングねじと同様の浸炭熱処理を行ったボルト(比較品)について行った。試験数はそれぞれ10本とした。その結果、比較品の場合には、全てのものについて遅れ破壊現象が発生したのに対して、本実施例に係るボルトと調質品はいずれも全く遅れ破壊現象は発生しなかった。
また、タッピング機能を評価するために、トルクと軸力との関係を測定した。図9はトルクと軸力との関係を示すグラフである。評価は、M8のタッピング機能を有するボルトに対して、下穴径が7.4mmの場合と7.5mmの場合について、それぞれトルクと軸力との関係を測定した。また、この測定を、比較例1(浸炭熱処理を行っていないタッピング機能を有するボルトに対してポリエチレン系ワックスを塗布したもの)と、本発明の実施例1に係るボルトについて行った。
図9から分かるように、比較例1に係るボルトの場合には、下穴の径が小さくなると、締付けトルクが高くなってしまう。言い換えると、トルクの増加に対する軸力の増加量が小さくなってしまう。これに対して、本実施例1に係るボルトの場合には、下穴の径が小さくなっても、締付けトルクが急激に大きくなってしまうことはない。図に示すように、下穴径が7.5mmと7.4mmの場合については、トルクの増加に対する軸力の増加量を同等にすることができた。
図8には、本発明の実施例2について示されている。本実施例では、1度浸炭熱処理を行った後に、炭素濃度の低い雰囲気下で更に浸炭熱処理を行う場合を説明する。構造自体は、上記実施例1と同様であるので、その説明は省略する。図8はボルトのねじ部において軸心の硬さに対する各部位の硬さの相対値を示すグラフである。図8には、上記実施例1で説明した図6と同様に、3種類の一般的なボルトと、タッピングねじと、実施例2に係るボルトについて、ボルトの軸心の硬さを基準(0)とする各部位の硬さの相対値が示されている。図8において、横軸は軸部10における表面から軸心に向かう距離を示し、縦軸は[(各部位の硬さ)―(軸心の硬さ)]をビッカース硬さ(HV)で表したものを示している。
本実施例においては、まず、上記実施例1の場合と同様に、ボルト100に対して、浸炭熱処理を行い、ボルト100の表面に、薄い浸炭硬化層14を設けるようにした。そして、本実施例では、浸炭熱処理により浸炭硬化層14が形成されたボルトに対して、更に、初めの浸炭熱処理に比べて炭素濃度を低くした雰囲気下で浸炭熱処理を行うようにした。
図8には、1回目の浸炭熱処理を行った後(前工程後)のボルトと、炭素濃度の低い雰囲気下で2回目の浸炭熱処理を行った後(完成品)のボルトについて、ボルトの軸心の硬
さを基準(0)とする各部位の硬さの相対値が示されている。
図8から分かるように、前工程後のボルトの場合には、上記実施例1と同様の特性を有する。ただし、本実施例の場合には、前工程後のボルトは、実施例1に係るボルトに比べて、ねじ部の表面付近の硬さが高くなるようにしている。そして、第1工程と比べ炭素濃度の低い雰囲気でかつボルト材料からみて炭素濃度の高い雰囲気下に調節した第2工程の浸炭熱処理を行うことで、ねじ部の表面付近の硬さを実施例1に係るボルトの場合と同程度にしている。なお、第1工程の浸炭熱処理と第2工程の第1工程に比べ炭素濃度の低くかつ材料に対しては炭素濃度の高い雰囲気の浸炭熱処理工程は連続して行っても良い。ただし、本実施例に係るボルトにおいては、ねじ部の表面付近にて脱炭されるために、表面側から内部に向かって、一旦硬さが高くなってから、徐々に硬さが低くなる特性を有する。ここで、浸炭は表面側から内部に向かう炭素成分の拡散現象であり、脱炭は内部から外部に向かう炭素成分の拡散現象である。なお、拡散現象はフィックの法則に従う。従って、浸炭を行った後に脱炭を行う場合のほうが、浸炭のみを行う場合に比べて、最表面の硬さが同じとすれば、前者のほうが、浸炭硬化層の硬さを高く、かつ、浸炭硬化層を薄くすることができる。以上より、本実施例に係るボルトによれば、上記実施例1に係るボルトに比べて、浸炭硬化層よりも硬さを高くすることができ、かつ、硬化層の厚みを薄くすることができる。従って、本実施例によれば、タッピング機能がより強化され、かつ、機械的性質もより一般のボルトと同等にすることができる。
以上のように、本実施例に係るボルトにおいても、上記実施例1の場合と同様に、案内ねじ部12の表面に薄い浸炭硬化層14が設けられることから、優れた延性と靭性を有しつつ、タッピング機能の強化を図ることが可能となる。更に、本実施例では、上記実施例1の場合に比べて、浸炭硬化層よりも硬さを高くすることができ、かつ、硬化層の厚みを薄くすることができる。
一般的に、自動締結機にてボルトの締結を行う場合には、締結の際のトルクを管理する必要がある。
一般的なボルトをめねじ(ナットやタップめねじ)に締結する場合のトルクを管理する式は、
T=k×d×F
で与えられる。
また、タッピング機能を有するボルトを下穴に締結する場合のトルクを管理する式は、
T=k×d×F+Td
で与えられる。ただし、Tはトルク(N・m)であり、Tdはねじ込みトルク(N・m)であり、kはトルク係数であり、dはねじの呼び径(mm)であり、Fは軸力(kN)である。なお、ねじ込みトルクとは、めねじを形成するのに必要なトルクである。
そして、一般的なボルトをめねじに対して締結する代わりに、これまで説明したタッピング機能を有するボルトを下穴に対して締結する場合であっても、トルクの管理を変更しなくても良いことが要求される場合がある。そこで、本実施例では、そのような要求に応えるべく、トルクと軸力との関係を制御した構成を説明する。
図10及び図11には本発明の実施例3について示されている。図10はトルクと軸力との関係を示すグラフである。図11は各種ボルトについて、トルクの特性をまとめた表である。
一般的なボルトをタップめねじに締結する場合と、実施例1に係るボルト(M8)を径7.5mmの下穴に締結する場合と、比較例1〜3に係るタッピング機能を有するボルト(M8)を径7.5mmの下穴に締結する場合について、トルクと軸力との測定を行った。なお、比較例1は浸炭熱処理を行っていないタッピング機能を有するボルトに対してポリエチレン系ワックスを塗布したものであり、比較例2は浸炭熱処理を行っているタッピング機能を有するボルトに対して、一般的なトルク安定剤を塗布したものであり、比較例3は浸炭熱処理を行っているタッピング機能を有するボルトに対して一般的な耐食性被膜(亜鉛鍍金+クロメート皮膜)上に何も塗布しないものである。
測定の結果は、図10及び図11に示す通りである。ただし、比較例1については、図9に示しているので、図10では省略している。また、図11では実施例1については省略している。なお、図10のグラフは、図11中の平均値を上述の管理の式に当てはめたものを示している。
図10のグラフから分かるように、一般的なボルトをタップめねじに締結する場合のトルクと軸力との相関関係に対して、実施例1及び各比較例に係るボルトを径7.5mmの下穴に締結する場合のトルクと軸力との相関関係は大きく異なっている。そのため、これらは異なるトルク管理が必要となる。
そこで、本実施例では、上記実施例1に係るボルトに対して、その表面に防錆表面処理を施した後に、摩擦低減剤を施した。摩擦低減剤は、水に、アクリルアルキッド樹脂8.0%,カルシウム石鹸1.0%,飽和脂肪酸エステル3.0%,ノニオン系界面活性剤1.0%、及び顔料0.25%が分散又は溶解されたものを使用した。
このように摩擦低減剤が塗布された、本発明の実施例4に係るボルト(M8)についても、径7.5mmの下穴に締結する場合について、トルクと軸力との測定を行った。測定の結果は、図10及び図11に示す通りである。図10から分かるように、本実施例3に係るボルトによれば、ボルトを径7.5mmの下穴に締結する場合のトルクと軸力との相関関係を、一般的なボルトをタップめねじに締結する場合のトルクと軸力との相関関係と同等にすることが可能となった。
従って、本実施例に係るボルトによれば、トルク管理を、一般的なボルトをタップめねじに締結する場合のトルク管理と同じままで行うことができる。
図1は本発明の実施例に係るボルトの外観図である。 図2は図1中のねじ部の一部拡大図である。 図3は本発明の実施例に係るボルトのねじ部の一部拡大図である。 図4は本発明の実施例に係るボルトの使用例を示す模式的断面図である。 図5は本発明の実施例1に係るボルトのねじ表面付近の拡大断面図である。 図6はボルトのねじ部において軸心の硬さに対する各部位の硬さの相対値を示すグラフである。 図7はボルトのねじ部における表面側から軸心方向に向かう各部位での硬さを示すグラフである。 図8はボルトのねじ部において軸心の硬さに対する各部位の硬さの相対値を示すグラフである。 図9はトルクと軸力との関係を示すグラフである。 図10はトルクと軸力との関係を示すグラフである。 図11は各種ボルトについて、トルクの特性をまとめた表である。
符号の説明
10 軸部
11 通常ねじ部
12 案内ねじ部
12a 凸部
13 円筒部
14 浸炭硬化層
20 頭部
100 ボルト
200 被締結部材
201 下穴
300 被固定部材
301 貫通孔

Claims (4)

  1. 下穴の表面に対して塑性変形によりめねじを形成するめねじ形成部を有するボルトであって、
    めねじ形成部の表面側には、浸炭熱処理により形成された薄い浸炭硬化層が設けられていることを特徴とするボルト。
  2. ねじの表面に摩擦低減剤が塗布されることにより、トルクと軸力との関係が制御されていることを特徴とする請求項1に記載のボルト。
  3. 下穴の表面に対して塑性変形によりめねじを形成するめねじ形成部を有するボルトの製造方法であって、
    浸炭熱処理によって、ねじ部のうち少なくともめねじ形成部を含む部分の表面に、薄い浸炭硬化層を形成する工程を有することを特徴とするボルトの製造方法。
  4. 下穴の表面に対して塑性変形によりめねじを形成するめねじ形成部を有するボルトの製造方法であって、
    浸炭熱処理を行う第1工程と、
    第1工程後、第1工程における浸炭熱処理に比べて炭素濃度が低い雰囲気の下で更に浸炭熱処理を行う第2工程とを含み、
    ねじ部のうち少なくともめねじ形成部を含む部分の表面に、薄い浸炭硬化層を形成することを特徴とするボルトの製造方法。
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