JP7141622B2 - 締結用ナット - Google Patents

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Description

本発明は、ボルト、ナット締結において使用されるナットであって、締結噛合い1山目ねじ山の負荷を低減する目的を持つナットに関するものである。
様々な構造物の締結には、ボルトとナットが多く使われ、航空機・自動車・鉄道車両、工作機械・土木機械・農業機械、各種製造装置、橋梁・建築構造物などの多くは、ボルト、ナットによる締結が一般的である。しかし、ボルトが噛合い1山目で破断する事例が多く発生しており、その原因として使用中のボルトの締結噛合い1山目ねじ谷底での亀裂軸破断が指摘されている。ボルトの破断は締結そのものが分断され、その影響の大きさも問題になる。
従来方式のねじ締結部には、初期締結負荷の上に、使用時の繰り返しの外力負荷が加わることにより、断面積が最も小さく、負荷分担が最大であるボルトの噛合い1山目のねじ谷底部で疲労破壊強度が最も低くなる。多くの亀裂軸破断がこの場所で発生することが知られている。
これまでは、ボルトが破断することに対してボルト側の材質変更、熱処理などで硬度や引張強度を上げることで破断しにくくするように工夫しているが、この様な破壊靭性値の低い高強度部材のボルトねじ谷底では切り欠き感度の上昇を伴って、負荷の影響を敏感に受けていることも知られている。しかし、この様な工夫をしても従来方式ナットを使用する場合には、噛合い1山目のボルトねじ谷底への負荷集中状態は一向に変わらない。すなわち、ボルト側へのこれまでの硬度、強度向上の改良は、初期締め付け時の静的破壊強度には効果があっても、使用時の外力負荷の影響を受ける時の疲労破壊強度には破壊靱性値の影響で逆効果になることが多い。
この実情に対し、ボルト側とナット側を工夫した下記特許文献で例が示されている。特許文献1および3は、嵌合するボルトねじ山を、ボルトの引張方向へ先細状に成形し、ボルトねじ山を斜めに低く加工したことを特徴とするボルトを開示し、軸力方向に向かってボルトねじ山とナットねじ山の接触面積を順次低減し、ボルトねじ山にナットねじ山からかかる負荷を均等化して疲労寿命の改善を図る意図のものが開示されている。この成形加工はナットに対して行ってもよいことが述べられているが、何の説明も図も示されていない。特許文献4には、ボルトに嵌合するナットのねじ山の斜面の角度の一方もしくは両方をボルトの斜面の角度よりも小さくとることを特徴とするナットが開示され、引張方向に向かってボルトとナットのねじ山の接触面積を低減し、ねじ山にかかる荷重の均等化を図り疲労寿命の改善を図ったものが開示されている。
特許文献2には、ボルト素材のねじ加工部を引張力作用方向にテーパー状に成形加工し、続いて谷底径が一様のねじ加工を行うボルトの製作方法が開示されている。
特許文献5には、ボルトのピッチをナットのピッチよりも小さくした鋼製ボルトにおいて、ピッチ差を日本工業規格JIS B 0205に規定されるピッチ公差の0.5~0.8%の範囲で、ずれを設けるように設定していることを特徴とする鋼製ボルトが開示され、ねじ面の接触が同時に起こることを避け、締結が進行し、ねじ山が応力で変形した時に応力伝達位置が順次移動して負荷を全山で受ける構造が開示されている。
しかしながら、特許文献1~5は、これらのボルトやナットのねじ山に加工を施すこととなるため、ねじ形状がJISやISO等の規格外となる難点があり、さらにこれらは、基本的にボルトを対象にしており、そのねじ山加工位置は被締結物の板厚、構造などで専用部品化され、被締結物ごとに特定の寸法となる位置にボルトのねじ山成形加工を施す必要があり、これらのボルトには汎用性がない。
これらの特許文献1~5の先行技術は、ボルトのねじ山高さを低くしても各ねじ山の負荷には大きな変化はないため、ボルトの低いねじ山の斜面では、ねじ山同士の接触面積が低下し、高応力が発生することになる。特にねじ噛合い1山目ではナット側の接触面に圧痕傷発生の凹凸塑性変形の可能性があり、ナットが繰り返し使用される用途には圧痕が締結に悪影響を及ぼす恐れがある。
さらに、特許文献6~8には、ナット側に関して、特許文献6には、摩擦接合用高力ナットにおいて、ボルト、ナット、座金のセットが提案されている。このセットの第1の構造例が、同特許文献の図1、2に記載されている。ボルト、ナット、座金のセットにおいて重要なのがトルク係数のバラつきを小さくすることであると述べ、そのためにナットの座金側の端面の外周部側に座金に喰い込みやすくするための曲面状突起を形成し、内周部に後退面と環状の溝を形成する構造を提案している。座面に形成した突起と後退面によって、締結時におけるねじ部の1つ目のねじ山への応力集中が緩和され、さらに環状の溝によって、さらにその効果が高められると述べている。また、ボルト軸力はナットと座金部の接触部の潤滑性能、及びナットねじ部とボルトねじ部との潤滑性能に影響を受けるとして、効果的な潤滑剤の使用を示唆している。しかし、ナット座面の曲面状の突起が条件であり、通常の平面状座面は適用せず、またナットとしての構造、応力集中の緩和特性に本質的に関係する環状の溝の形状、特にその深さに関する記述がない。応力集中の緩和の効果は、トルク係数のばらつきの大きさで示しているが、潤滑剤、突起、後退面、溝のいずれの効果によるものか、ボルト、ナットの組み合わせの本質的な構造と特性の関係であるにもかかわらず判別できない。本来、トルク係数のバラつきは、ねじ山や座面での摩擦状態やボルト材質・硬度に由来するものであって、ナットが締結1山目の負荷集中を減じる目的とは異なる要素である。
この特許文献6のボルト、ナット構造は、ナットを回転させながら締結を進める通常のボルト、ナット締結方式とは大きく異なる目的と締結方法を採用している。ナットが回転しにくいように、ナット座面の摩擦を大きくするため、ナット座面に凸型突起を設け被締結物に食い込ませる方式としているのが特徴で、この点が特許文献6でいう、「これまでの平面の座面を持つナットを改良した」と主張する部分である。
また、このナットの第2の構造例が特許文献6の図7に記載されている。六角ナットの外周部に別部品が挿嵌されているが、この別部品は一種のスリーブ状で、内側の六角ナットに嵌合されて内側の六角ナットに対し回転できない構造であり、座金側に曲面状突起を設けているのが特徴である。想定している締結時の締結作用は第1の構造例と同じで、座面からの力はこの山形の曲面状突起部に入り、山形の曲面状突起が相手側の座面を変形させたのちに内側ナット上部のフランジ部に入る。同文献6の図7に示すような薄い上部フランジでは、締結側曲面状突起部を座屈させる力が入ったときに、フランジが開放側に曲がる恐れがある。この方式の「回転させないナット」であれば、フランジの変形はさほど問題にはならないが、ナット座面突起部もフランジも変形してしまうために、この構造のボルト、ナット、座金セットは増し締めも再使用もできない問題がある。
特許文献7には、剪断遅れ破壊防止機能ナットとして、ボルト、ナットのねじ山に働く剪断応力が一様になるようにするため、ボルトには先端部に回転放物体状の空隙、ナットにはフランジリップ付きナットの組み合わせが提案されている。
特許文献7のナットの縦断面には 上部内径側にねじ山がない部分(図1の11)が設けられていて、このねじがない深さと同じ高さのところまで、斜めのくさび型リップが入り込んでいる。このため、ねじがない窪み11の内部コーナーとねじ山外側にあるくさび型リップの最奥部の高さ方向寸法は「くさび型リップの深さの被締結物からの高さ≧ねじのない空間11の底までの高さ」となっている。特許文献7には、この時「ボルトのせん断遅れ破壊防止」が成立するとの記載がされているが、この目的があるとき、くさび型のリップはナットの最上部近傍まで入れる必要があって、このリップによってナットの剛性は不足し、繰返し入る外力負荷に対し、ナット上部の剛性不足が原因となって、ナットのリップ最奥部とボルトの上部の彫り込み(窪み11)最下部を結ぶ線上で破断する恐れが高く、耐久性に疑問がある。
また、特許文献7の図1に示されるボルト8の先端に空間5がある場合、このボルト側ねじ部先端側も軸方向に伸びることが可能であって、特許文献7の図4に示すように力のやり取りが小さくなる。このためJIS(ISO)で規定する軸力を発生・維持できないボルト、ナットになってしまうおそれもある。
特許文献8には、座金に大きなR(内側が凹んでいる球面)を持ち、ナット座面も同様のRがついたナットが提案されている。座金(ワッシャ)はナットより大きな外径を持ち、座金の下にある被締結部の面が少し傾いたり、面状態が凸凹であったり不安定な場合に、ボルトに対しナットを締めこんだ時、そのナット座面にワッシャ状基材が均一に当たる構造を示しており、被締結物表面が不安定状況でも締結が行えるとしている。しかし、座金はナットより大きな外径を持つが、中心穴径については記載されていない。締結噛み合い1山目のボルトねじ谷底への負荷低減につながる効果や構造については開示されておらず、本発明とは目的が異なるものである。
特開昭52-79163号公報 特開昭52-131060号公報 米国特許第4189975号明細書 特開昭58-160613号公報 特開2005-265150号公報 特開平5-288209号公報 特開2002-61619号公報 特開平1-182614号公報
従来方式のボルト、ナット締結において、ボルトの改良は数多く実施されてきたにもかかわらず、いまだにボルトの噛合い1山目谷底での亀裂軸破断が発生しており、その理由が噛合い1山目への過度の応力集中ということは知られてきた。しかしながらその原因の、応力が噛合い1山目に負荷集中している状況(ナットに入る力がどの様にボルトに流れ込むのか)を調べることが難しかった。
図4は、従来方式のフランジナットの一般的な締結の縦断面図である。フランジナット1のねじ山は締結側から開放側までJIS B 0205(ISO 724)で規定されるねじ山がほぼ一様に形成されている。図4において、1は従来方式のフランジナット本体、2はボルト、3は被締結物、8はナットのねじ山の締結側、8aはナットのねじ山の締結側の端面及びナット座面、9はナットのねじ山の開放側、9aはナットのねじ山の開放側の端面、14はナット座面、15は従来方式のねじ谷底、17はナットの外周部、19はナットのねじ山を示す。ナット1のねじ部にボルト2のねじ部がねじ込まれワッシャ23を挟み被締結物3を締結する。
本発明者は、従来方式のボルト、ナットで締結した場合の応力負荷分担を調べた結果、7山の場合の1山目は36.5%分担しており、2山目は20.6%、3山目以後は順次低下していることを見出した。全負荷の1/3以上が噛合い1山目に集中しており、1山目から3山目までで、全負荷の70%以上を分担している(負荷分担率;全体負荷を100%としたときの各ねじ山が負荷を分担する割合、%)。上記のように、図4は従来方式の締結状態を示し、ナット1はワッシャ23を介し被締結物3を締結している。ボルト2は下方からねじ穴を貫通してきてナットと締結する。図4-1(a)に図4と同じナット(7ねじ山)のミーゼス相当応力分布図を示している(ボルトの1山目(番号1)の左側に※マークを付けたねじ谷底に最大応力がかかり、亀裂軸破断が起こりやすい場所を示す)。ナット座面14から入った力が直近のボルトねじ山1番を押し上げる方向に向いていること、ボルトは軸力により1番山を一番強く引張るため、※部は開かれるような状態になっている。図4-2はミーゼス相当応力のベクトル図で最大主応力(引張応力)でボルトにどのような力が流れているかを表し、図4-3に同じくベクトル図で最小主応力(圧縮応力)を示し、ここではナット内の力の流れを表している。このベクトル図においても噛合い1山目に力が集中していることが見て取れる。
前記の、噛合い1山目の負荷が大きいことに対して、ナットの負荷分担するねじ山数を増加することで噛合い1山目の負担を下げられないかという案がある。これに対し従来方式ナットの7山の他に8山、9山についても同様の解析を行い負荷分担を調べた結果、開放側に山数が増えた場合の従来方式ナットは、8山ナットの場合の噛合い1山目の負荷は約1%下がり34.5%であり、9山ナットの場合では約2%低減し、噛合い1山目負荷は33.4%になることが確認された。図4-1(b)にねじ8山のミーゼス相当応力分布図、図4-1(c)にねじ山9山のミーゼス相当応力分布図を、さらにこれらの負荷分担率を7山と比較して図4-4(a)(従来方式ナット(7,8,9ねじ山の負荷分担率比較表)に表示し、これらの3つの負荷分担率の比較棒グラフを図4-4(b)に示す。従来方式では、噛合い1山目への負荷分担率は7山で36.5%、8山で34.5%、9山で33.4%である。そしてねじ山数を7山、8山、9山のいずれの場合も図4-1(a),(b),(c)中の※部のボルト側噛合い1山目ねじ谷底には過大な応力がかかっていることを示している。この結果は、従来方式ナットのねじ山数を増加させても、噛合い1山目負荷の低減効果は微々たるものであることを示している。
前記従来方式ナットの噛合い1山目への負荷集中に対し、本発明方式でナットの構造を最適化することにより、ボルト、ナット締結噛合い1山目への負荷を低減させることにより、ボルト強度最弱部である噛合い1山目谷底からの亀裂軸破断の疲労破壊寿命を向上させるナットを提供することができる。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の発明を提供する。すなわち、ナットが受ける負荷の力の流れを負荷分担の低い開放側の噛合いねじ山により多く向かわせるナット構造とすることにより、開放側3山目以後の負荷分担を増加させることにより、噛合い1山目への負荷集中を低減させるように構成したことを特徴とする構造のナットを提供する。
(1)締結用のナットであって、
A.ナットの縦断面図の形状において、ナット締結側の座面にねじの軸を中心に、上に凸形状の空間を同心円状に形成させ、該空間は直線、曲線又はそれらの組み合わせで結ばれた形状として空間を形成させた構造であり、該空間の座面からの深さをL、ナットの完全ねじ部の第1の谷底から該座面までの軸方向長さをLとしたとき、該空間の深さLを、L<L≦L+ねじ山5ピッチの長さの範囲として該空間を形成することにより;
B.ナットの縦断面図の形状において、ナットの締結部材側の座面のねじ中心側に矩形状の凹部を有する構造であって、該凹部はナット座面から垂直に立ち上がる内壁と曲線、直線またはそれらを組み合わせたコーナー部と上面とを持ち、上面の位置から該ナットの不完全ねじ部の軸方向長さとナットの2ピッチの長さを加えた軸方向長さをLaとし、また該凹部の該座面から該上面までの軸方向長さをLb、ナットのねじ谷底と該凹部の内壁までの該凹部の半径方向の長さをLhとしたとき、LbはLaの0.001倍以上1倍以下の範囲とし、またLhはLaの0.5倍以上5倍以下の範囲として該凹部をねじの中心と同心円状に形成することにより;または
C.内部にねじ山を設けたねじ軸部およびフランジ座面部を有するナット本体と少なくとも一方の端面内径側に面取り座面を持つパイプ状であるナット部品とにより構成された2部品構成のナットであって、該ナット本体の縦断面図の形状がT字状であり、該ナット本体のフランジ座面部から該ナット部品の内側の被締結物側に向けてナット本体のねじ軸部が入り込む長さを、不完全ねじ部長さs+ねじピッチ0.5山分の長さ以上、不完全ねじ部s+ねじピッチ5山分の長さ以下となるようにねじ外側面外周部に中空パイプ状の該ナット部品を配置した構造であり、該T字形状のナット本体の最下部が被締結物に接しないように、かつ該ナット部品の最上部が該T字形状ナット本体のフランジ状座面に接触し、また該ナット部品の最下部が被締結物に接触するように該ナット部品の長さを設定し、該ナット部品内径面と該ナット本体の外周面はそれぞれ回転自在とし、該ナット本体と該ナット部品をねじの中心と同心円状に形成することにより;
ナットが受ける負荷の力の流れを負荷分担の低い開放側の噛合いねじ山により多く向かわせるナット構造とすることにより、噛合い3山目以後の負荷分担を増加させることにより、噛合い1山目への負荷集中を低減させるように構成したことを特徴とする構造のナット。
(2)ナットのねじ山表面の少なくともボルトとの噛合い第1ねじ山またはそれ以外のねじ山の一部もしくは全部のボルト側ねじと接する面、またはねじ山の両側の斜面に、ダイヤモンド状炭素(DLC)膜、BN膜、WC膜、CrN膜、HfN膜、VN膜、TiN膜、TiCN膜、Al膜、ZnO膜、SiO膜、アルマイト、金属メッキ、固体潤滑層、リン酸マンガン化成処理、浸炭焼入れ、窒化処理、クロマイズド処理のいずれか、またはこれらの組み合わせを被覆してなる上記(1)に記載のナットを提供する。
(3)ナット本体とナット部品の接触面の双方または片側にダイヤモンド状炭素(DLC)膜、BN膜、WC膜、CrN膜、HfN膜、VN膜、TiN膜、TiCN膜、Al膜、ZnO膜、SiO膜、アルマイト、金属メッキ、高分子樹脂コート、固体潤滑層、リン酸マンガン化成処理、浸炭焼入れ、窒化処理、クロマイズド処理のいずれか、またはこれらの組み合わせを被覆してなる上記(1)~(2)のいずれかに記載のナット。
(4)ナットの被締結物と接する面にダイヤモンド状炭素(DLC)膜、BN膜、WC膜、CrN膜、HfN膜、VN膜、TiN膜、TiCN膜、Al膜、ZnO膜、SiO膜、アルマイト、金属メッキ、高分子樹脂コート、固体潤滑層、リン酸マンガン化成処理、浸炭焼入れ、窒化処理、クロマイズド処理のいずれか、またはこれらの組み合わせを被覆してなる上記(1)~(3)のいずれかに記載のナットを提供する。
本発明の態様(A)、(B)、(C)のナットの構造により噛合い3山目以後の開放側ねじ山にナット座面から入る力を多く向け、負荷を多く分担させることで、噛合い1山目への負荷集中を低減することができ、この効果により噛合い1山目のボルト谷底の亀裂軸破断の疲労破壊寿命の向上につながる。
この効果を得るためには、好適には「力の流れ」を開放側3山目以後に多く向かわせるナット構造とすれば良い。その方法として、ナットのねじ山形状のJIS(ISO)の基準を変えることなくナットの外形形状や構造を変えること、すなわち構造を最適化することで被締結物からナットに入った力をナットの3山目以後の開放側ねじに向かわせることができる。または、ナットを2部品構成とし、力の通る場所の構造を最適化してナットに入る応力を3山目以後の開放側のねじ山に向けることで、噛合いねじ1山目への力の負荷集中の低減を実現させることができる。
さらに前記(2)~(4)に示すナットへの表面処理を付加することにより、締結時の摩擦低減、ねじ面摺動性向上、表面の耐候性向上が図られ、使用上有用なナットを実現することができる。
上記のねじ噛合い1山目は、例えば図4-1に示す従来方式のボルト、ナットに示される1印のねじ山であり、「第1ねじ山」とする。ナットの第1ねじ山の側面はボルトの第1ねじ山の側面に負荷を与えて締結する。ナットの「第1ねじ山」は、締結側にあり、ねじ部が正常なねじ形状を有している最初の完全ねじ部とする。これに対して、上記の不完全ねじ部は、ねじの切り始めから約1ピッチと面取りを含む長さを持つ部分である。
ナットの第1ねじ山の位置は完全ねじ部の最初の1山目である。ボルト側では、ナットの第1ねじ山と噛合うボルトのねじ山がボルトの第1ねじ山となり、ボルトの第1谷底は、ボルトの第1ねじ山の締結側に位置する。
本発明のナットのねじ形状は、好適にはJIS B 0205(ISO 724)に規定されているものに準拠している。また、本発明のナットの構成は、例えばインチねじなど、従来から広く使用されているねじ形状を持つナットにおいても適用され、これらも本発明の一部である。
ボルト、ナットによる締結力の負荷分担は、初期締付け時だけでなく、ねじ締結部へ外部から力がかかる振動などの外力負荷に対しても軸力変動として初期締付け時と同じ分担率で作用する。特に負荷の厳しい第1ねじ山への負荷分担を低減しておくことは、同じ負荷分担率で合算される外力負荷(変動軸力負荷)を受ける噛合い1山目ボルトねじ谷底の疲労破壊強度の向上に効果がある。
ボルト、ナット締結部の破壊はボルトの噛合い1山目谷底で亀裂軸破断として発生することが多いが、疲労破壊強度の向上の効果があるとする初期締結負荷の低減がどの様に効果を発揮するのかを説明する。ボルトの疲労試験結果より求められるS-N線図は、疲労破壊寿命(繰り返し数Nf)と外力負荷(応力振幅σr)の関係を示すものであるが、一般的に次の実験式で示すことができる。
Nf・σr=C
ここで Nf:疲労破壊するまでの負荷の繰り返し数
σr:負荷の応力振幅
b:応力指数(一般的に3~5)
C:材料定数
ここで示すように、締結噛合い1山目のボルトねじ谷底への負荷を下げておくことは外力負荷(σr)分担を下げることにつながり、下がった負荷の応力振幅のb(一般に3~5)乗分 繰返し数Nf を大きくできる効果につながる。
一般的に物質内を伝わる力を直接見ることはできないので、物質内の力の状態、流れ方を予測する方法として有限要素解析が有用である。従来方式のボルト、ナット締結における各ねじ山負荷を分析するため、有限要素法(FEM:Finite Element Method)を活用したCAE(Computer Added Engineering)手法により、ねじ締結部のシミュレーション解析を実施し、従来方式ナットのミーゼス相当応力分布を図4-1(a),(b),(c)に示す。また、本発明の態様(A)、(B)、(C)についても同様の解析を行っている。
本解析を行う上で、ナットのねじ山の数は一般的なものとして、有効ねじ山数7を選択し、本発明の各態様においても同様としている。締結時の締結力、ナット強度も総て同一の条件を採用している。また、従来方式7山と比較するねじ山数8山,9山のナットについてもねじ山数以外は同条件としている。
本発明態様(C)ではねじ山数7山の場合の解析とねじ山数を8山とした解析を行い、それぞれ従来方式7山、8山の負荷分担を比較をしている。
図4-1に示すように、従来方式では、ねじ噛合い1山目(図4-1(a)の1印)が最も内部応力が高く、2山目(図4-1の2印)、3山目(図4-1の3印)では応力は急激に低下する。この状況を全ねじ山の負荷分担率として図4-4(a)に示し、負荷分担率の比較を棒グラフで表したものを図4-4(b)に示す。従来方式7山の締結に対しては白枠表示の棒グラフで示す。この場合、1山目に全負荷の35.6%が掛かり、2山目では20.6%、3山目では14.4%であり、この3山目までの負荷分担は実に70%以上に達する。4山目以降はそれぞれのねじ山の負荷分担率は約11~4%以下に過ぎない。ボルト1山目の谷底部(図4-1(a)の※印)は高応力となり、従来方式のナットを使用する場合に発生するボルトの亀裂軸破断は、この噛合い1山目のボルトねじ谷底から発生することが多い。
本発明の第1の態様(A)のナットの一例を示す縦断面図である。(a)ナットの断面図、(b)ナット開放側から見た平面図、(c)ナット座面側から見た平面図の例。 本発明の第1の態様(A)のナットの一例のミーゼス相当応力分布図。 本発明の第1の態様(A)のナットの一例の最大主応力(引張応力)のベクトル図。 本発明の第1の態様(A)のナットの一例の最小主応力(圧縮応力)のベクトル図。 本発明の態様(A)の一例と従来方式ナット図4-1の負荷分担率比較。 本発明の態様(A)の一例と従来方式ナット図4-1の棒グラフ。 本発明の第1の態様(A)の変形例縦断面図を示す。 本発明の第1の態様(A)の変形例縦断面図を示す。 本発明の第2の態様(B)のナットの基本形の一例を示す縦断面図。 本発明の第2の態様(B)の変形例の縦断面図。 本発明の第2の態様(B)他の変形例のミーゼス相当応力分布図。 本発明の第2の態様(B)他の変形例。 本発明の第2の態様(B)他の変形例。 本発明の第3の態様(C)のナットの一例を示す縦断面図。 本発明の第3の態様(C)のナットの一例のミーゼス相当応力分布図。 本発明の第3の態様(C)のナットの一例と従来方式との負荷分担率の数値比較表。 本発明の第3の態様(C)のナットの一例と従来方式との比較の棒グラフ。 本発明の第3の態様(C)のナットの変形例のミーゼス相当応力分布図。 本発明の第3の態様(C)のナットの変形例と従来方式との負荷分担率の数値比較表。 本発明の第3の態様(C)のナットの変形例と従来方式との比較の棒グラフ。 従来方式のフランジナットの縦断面図(a)、上からの平面図(b)、および下からの平面図(c)。 ねじ山数7山の従来方式のナットのミーゼス相当応力分布図。 ねじ山数8山の従来方式のナットのミーゼス相当応力分布図。 ねじ山数9山の従来方式のナットのミーゼス相当応力分布図。 ねじ山数7山の従来方式のナットの最大主応力(引張応力)のベクトル図。 ねじ山数7山の従来方式のナットの最小主応力(圧縮応力)のベクトル図。 従来方式のナットの負荷分担率数値表。 従来方式のナットの負荷分担率の棒グラフ。
本発明のナットは、
A.ナットの縦断面図の形状において、ナット締結側の座面にねじの軸を中心に、上に凸形状の空間を同心円状に形成させ、該空間は直線、曲線又はそれらの組み合わせで結ばれた形状として空間を形成させた構造であり、該空間の座面からの深さをL、ナットの完全ねじ部の第1ねじの谷底から該座面までの軸方向長さをLとしたとき、該空間の深さLを、L<L≦L+ねじ山5ピッチの長さの範囲として該空間を形成することにより;
B.ナットの縦断面図の形状において、ナットの締結部材側の座面のねじ中心側に矩形状の凹部を有する構造であって、該凹部はナット座面から垂直に立ち上がる内壁と曲線、直線またはそれらを組み合わせたコーナー部と上面とを持ち、上面の位置から該ナットの不完全ねじ部の軸方向長さとナットの2ピッチの長さを加えた軸方向長さをLaとし、また該凹部の該座面から該上面までの軸方向長さをLb、ナットのねじ谷底と該凹部の内壁までの該凹部の半径方向の長さをLhとしたとき、LbはLaの0.001倍以上1倍以下の範囲とし、またLhはLaの0.5倍以上5倍以下の範囲として該凹部をねじの中心と同心円状に形成することにより;または
C.内部にねじ山を設けたねじ軸部およびフランジ座面部を有するナット本体と少なくとも一方の端面内径側に面取り座面を持つパイプ状であるナット部品とにより構成された2部品構成のナットであって、該ナット本体の縦断面図の形状がT字状であり、該ナット本体のフランジ座面部から該ナット部品の内側の被締結物側に向けてナット本体のねじ軸部が入り込む長さを、不完全ねじ部長さs+ねじピッチ0.5山分の長さ以上、不完全ねじ部長さs+ねじピッチ5山分の長さ以下となるようにねじ外側面外周部に中空パイプ状の該ナット部品を配置した構造であり、該T字形状のナット本体の最下部が被締結物に接しないように、かつ該ナット部品の最上部が該T字形状ナット本体のフランジ状座面に接触し、また該ナット部品の最下部が被締結物に接触するように該ナット部品の長さを設定し、該ナット部品内径面と該ナット本体の外周面はそれぞれ回転自在とし、該ナット本体と該ナット部品をねじの中心と同心円状に形成することにより;
ナットが受ける負荷の力の流れを、負荷分担の低い開放側の噛合いねじ山により多く向かわせるナット構造とすることで、3山目以後の負荷分担を増加させることにより、噛合い1山目の最大負荷分担を低減させ、噛合い1山目への負荷集中を低減させるように構成したことを特徴とする。この特徴によって噛合い1山目への負荷の低減によりボルト疲労強度最弱部である噛合い1山目谷底からの亀裂軸破断の疲労破壊寿命を向上させることができる。
本発明の第1の態様(A)および第2の態様(B)のナットは、1部品構造であり、ナットの締結側の中央部の座面に、開放側に向かって凸状空間形成や凹部形成の加工を施して、「力の流れ」をナット座面及びナット本体の外周部を通し、ねじの開放側3山目以後に向かわせたものである。第3の態様(C)は、ナット本体とナット部品の2部品構成であり、ナット本体とナット部品を使って「力の流れ」をナットのねじの開放側3山目以後に向かわせたものである。この様な構造とすることで噛合い1山目ねじ山にかかる初期締付け負荷と外力負荷の両方の負荷分担を同時に低減させる構造を持つことを特徴とするナットを提供しうる。
本発明の各態様の説明において、ねじ山に関してはJIS B 0205(ISO 724)に準拠している。
また本発明ではねじの1ピッチを長さの基準としているが、これはボルト、ナットは同じ太さであってもねじピッチが異なるものが複数存在しているため、ここではねじ太さではなく、ねじピッチを長さの1つの基準として採用している。
以下に、第1の態様(A)の構造を代表して取り上げて締結噛合い1山目への負荷の低減について述べる。
第1の態様(A)は、ナットの縦断面図の形状において、ナット締結側の座面にねじの軸を中心に、曲線、直線またはそれらの組み合わせで結ばれた、上に凸形状の空間を同心円状に形成させた構造であり、該凸空間の座面からの深さをL、ナットの完全ねじ部の第1ねじの谷底から該座面までの軸方向長さをLとしたとき、該空間の深さLを、L<L≦L+ねじ山5ピッチの長さの範囲として該空間を形成することにより、締結時のナットのねじ山にかかる応力を開放側3山目以降のねじ山により多く向かわせて従来方式比で多くの負荷分担をさせ、ナットとボルトの締結噛合い1山目への負荷集中を低減するように構成したことを特徴とする。ここで、該空間とナットねじ山の間にある構造で内部にねじ山を持つナットのねじ軸部の太さを一定ではなく、P側からP側に繋がる軸部太さがPからPに暫次変化することも可能であって曲線、直線又はそれらの組み合わせとした形状により、P側を太く、座面側のP側を細くすることができる。
第1の態様(A)のナットの一例の縦断面図を図1に示す。図1は、ナットの縦断面図(a)とナット開放側から見た平面図(b)および座面から見た平面図(c)であり、1がナット、2がボルト、3が被締結物、4がナット座面とナット軸部最下端間の空隙、5がナット座面内の上に凸形状の空間、7がねじ軸部最下端、8がナット締結側、9がナットの開放側、9aがナット開放端、14がナット座面、17がナットの外周部、18が内部にねじ山を設けたネジ軸部、19がナットねじ山である。
締結の状況について図1を参照しながら説明する。ボルト2、ナット1で被締結物3を締結する場合、ナットの座面側中央部のねじ軸部最下端7は空隙4があるために締結時に座面からの力はねじ軸部18には直接にはかからない。空間5の外周側にあるナット座面14が、被締結物3に接しているために、締結時の被締結物3からの力は、被締結物3と接するナット座面14でやり取りされる。締結力は被締結物3からナット座面14に入り、ナット内部を通りナットのねじ山19に伝わる。この時、力はナットの内部を空間5の外周にある曲線内部に沿うように進み、その後、空間5の最深部(P近傍)を通り各ねじ山を経由してボルトに入る。P近傍から一番近いねじ山19は 図1の例では3番目のナットねじ山である。そのほかの力は4番目、5番目、6番目、7番目にも伝わっていく。このように開放側に向かった力はその相手のボルトねじ山に伝わり、内部応力を3山目以後のねじ山で多く負担している。ボルトは軸力によって噛合い1山目が最大主応力(引張応力)を受けることに変わりがないがナットの開放側で多くの力を受けることにより、1山目は相対的に負荷分担が下がる。またナットねじ軸部18の形状効果もあいまって、ボルト、ナットの噛合い1山目の負荷は従来方式の構造と比較して格段に下がる。このように開放側のねじ山3番目以後に力を向けることにより、噛合い1山目への負荷を低減することができる。
図1は、本発明の第1の態様(A)における空間5の深さの関係を説明する図であり、Pはナットのねじ軸部18にある第1の山の完全ねじ部の谷底中央に位置し、Pは空間の奥行方向の最深部に位置する。ナットの座面14からP,Pまでの距離をそれぞれL,Lとする。
図1は、ナットの中心軸を通り、ねじ山1ピッチ内の任意の1断面を示し、ナットねじ軸部18の拡大図に示す通り、ねじ軸部18の最下部7の位置にあるねじ入口には加工された面取りがあり、続いてねじの切り始めから約1ピッチの不完全ねじ部があり、その奥に完全ねじ部が繋がっている。Pはねじ1回転(360度回転)中で位置が変化するためLの座面からの距離はねじピッチ1山分+面取り長さの影響を受ける。従ってPの座面14からの距離Lは、空隙4の寸法とねじ部面取り長さと不完全ねじ部長さの合計以上の距離となる。
なお、上記態様(A)において、図1に示すように、完全ねじ部になっているナットねじ山の座面側の第1ねじ山のねじ谷中央にあるポイントPと空間5の最奥部にあるPの関係は、座面からの距離LとLにおいて、L>LとなるLの寸法を設定する。Lは、ねじにあるため360度の回転をすると1ピッチ分距離が変化するが、Lは成形加工により一定の数値となることが多い。このため、Lは少なくともLより深くするのが好適であるが、深さ上限はL+ねじ山5ピッチ分の長さとするのが適切である。図1の基本形の一例ではPより約2.4ピッチ分の長さの位置にPを設定している。
上記態様(A)において、ねじ軸部18の太さを締結側に向かって太さを変化させることも、または空間5の最奥部(P)から軸部に形状が変わったところから同じ太さで最下部7近傍まで形成することも可能である。その形状は空間5の形状と一体化させ、直線、曲線、またはその組み合わせの形状を採用することが好適である。最下部7近傍には応力集中を避ける曲線を設けることが好適である。
上に凸形状の空間を設ける加工の容易化を考慮し、上に凸形状の空間5は基本形の一例や変形例に示すように滑らかな曲線又は直線で結ばれた形状を持つ空間5が実用的構造である。上に凸形状は、本発明の態様(A)の目的を逸脱しない限り任意の形状とすることができ、第1の態様(A)の発明に含まれる。図1-5の(a),(b)は図1に対する2つの変形例であるが、主に空間5の形状と座面部内外形が異なるものである。いずれも被締結物3から入る力をナット1内部を通し、相手ボルトとの噛合いねじ山の3山以後の開放側に力を向けるものである。変形例である図1-5以外にも同様の効果を持つ形状を、製造上の要件などの諸条件によって決定することができる。
本態様(A)において重要なことはナットの座面側に形成する上に凸形状の空間5の形成である。特にその深さの選択であり、L<L≦L+ねじ山5ピッチ分の長さが成立するようにLを設定し、P近傍を通る力とボルトから引っ張られる力に対応できる強度を持つ構造のナット形状を実現すれば多くの力の流れを開放側3番目以後のねじ山に向かわせることが可能となり、噛合い1山目への負荷を低減することができる。
一般に、力が平板の外部からある1点に加わると、力はその場所から内部に大きさに比例して広がること、力は最短経路を通ること、力が曲がる時でも急角度では曲がらないこと、力は通りやすいところを通ること、力は空間を通らないことなどが知られている。ミーゼス相当応力分布、ベクトル図においてもこの力の伝わり方の特徴が明確に読み取れるものである。
この力の伝わり方を基にして、態様(A)に対応する図1-1のミーゼス相当応力分布図、図1-2の力の流れが見られる最大主応力(引張応力)のベクトル図,図1-3の最小主応力(圧縮応力)のベクトル図により力の流れが確認できる。特にベクトル図では小さな矢印がびっしり並んでおり、その向きは力の方向を示し、長さは力の大きさを示し、並び方の粗密はその場所で多くの力がそれぞれの方向に向かって流れる状況を示している。
図1-1のミーゼス相当応力分布図は上記ベクトル図を全体的な応力分布として可視化し、白黒四階調で色分けしたものである。ベクトル図(図1-2,図1-3)において矢の方向がどこを向いているかに注目すると、多くの力の向く先がナット内をねじ山に向かうが、その多くが向いているところがナットねじ山の3番、4番である。それより開放側の5,6,7番ねじ山に向かうものも多いことも見て取れる。ナットねじ山締結側については、P近傍から渦を巻くように2番、次いで1番の方向に曲がりながら伝わっている。図1-2ではボルトねじ部とボルト軸部を締結側に引張る軸力を受けているため、ナットの斜めのねじ面からボルトの斜めのねじ面に(それも強く押し付けられている片側の面に)集中して力がかかっている様子が見える。ボルト軸力が締結側に向かっているため、ねじ山1番が一番大きな引張応力を受けているが、ナットのねじ山1番、2番はねじ軸部18周囲でP近傍から曲がってきた小さな力とボルトからの引張の力の方を多く受けており、ナットねじ3番、2番、1番と強さ順に締結側に引張られている状況となっている。このため、ナットねじ1番に至っては内部応力が低いことを示す黒色が表れている。ここにはねじ軸部の形状効果が付加されている。
図1-1、図1-2、図1-3に表されている変形例の解析図において、ナットからの力は3山目以後のねじ山方向に向かって流れ、締結噛合い1山目の負荷を低減している。3山目以降の負荷分担は従来方式に比較して増加しており、7山目まで力が及んでいる。特に図1-1の応力大の領域(白色表示領域)は1,2,3番ねじ山では狭く、小さくなっており、4番、5番、6番,7番では暗いグレー(応力やや小さい)が広い領域に表れている。
従来方式における同様の図4-1、最大主応力のベクトル図4-2、最小主応力の図4-3に見られるように、従来方式ではナットの最内径側を通る力に支配された状況であることに対し、本発明の図1-1の応力分布図は、まったく異なる応力分布となっており、本発明の態様(A)は力の流れる方向を締結噛合い3山目以後に向け、噛合い1山目への負荷を低減することが明確に示されている。
これらの結果、態様(A)の一例での噛合い1山目の負荷分担率は26.3%となっている(従来方式:35.6%)。この結果を各山の負荷分担率の基準とした従来方式7山のものとの比較表を図1-4(a)に、この数値の比較棒グラフを図1-4(b)に示す。この比較を見ると、態様(A)のナットの一例は従来方式に比較して3山目以後の負荷分担が増加し、噛合い1山目の負荷分担が低減していることが読み取れる。
第1の態様(A)における凸空間構造ナットの各コーナー部に関して、各コーナーの処理は好適には次のようなものとする。部材の場所ごとに最適な応力集中緩和曲線で作られるコーナー部形状を使用することが好ましい。応力集中緩和曲線は、例えば 2次曲線(単純R、複合R,楕円など)があり、更に斜めCカットなど直線も用いることができる。
また、第1の態様(A)において、ナットの表面粗さについて、ねじ面はJIS規定に準じ、摺動する面は精級仕上げ、その他の面は中級仕上げ又は必要な面粗度でよいものとするが、後述する表面処理と整合する表面粗さが望ましい。
次いで、本発明の第2の態様(B)のナットについて説明する。
本発明のナット(B)は、ナットの縦断面図の形状において、ナットの締結部材側の座面のねじ中心側に矩形状の凹部を有する構造であって、凹部は座面から垂直に立ち上がる内壁と曲線、直線、またはそれらを組み合わせたコーナー部と上面とを持ち、上面の位置からナットの不完全ねじ部の軸方向長さとナットの2ピッチの長さを加えた軸方向長さをLaとし、また凹部の座面から上面までの軸方向長さをLb、ナットのねじ谷底と凹部の内壁までの凹部の半径方向の長さをLhとしたとき、LbはLaの0.001倍以上1倍以下の長さとし、またLhはLaの0.5倍以上5倍以下の長さとした凹部をねじの中心と同心円状に形成することを特徴とする。
ナットの座面部分にこのように凹部を設けて形成することにより、締結時にナットに入る力の流れは、被締結物に接するナット座面の全面から入り、ナット凹部の壁に沿って流れ、コーナー近傍を通り、ナットの中央部付近を開放側の3番目山以後に向かい、全てのねじ山に広く分散して流れることとなる。ボルトからナットに入る引張応力が噛合い1山目で最大であることは変わりがないが、締結時のナットのねじ山にかかる応力を開放端側のねじ山側により多く分担させることができるため、ナットとボルトの締結噛合い1山目への負荷を低減することができる。
本発明態様(B)について図面を用いて説明する。図2は、本発明の第2の態様(B)のナットの一例を示す縦断面図であり、ナット1は、ナット内径下部に凹部10を持つ構造である。凹部10には、被締結物3に接するナット座面14から垂直に立ち上がる壁11、その上に繋がる曲線に挟まれた直線を持つコーナー部12(このコーナー12にある直線はナットの締結側から2山目以降のねじ谷底を向くことが好ましい。図2は2山目谷底を向いている例を示す。)、そしてコーナー部12から繋がる上面13があって、上面13の最内径ねじ側には開放側に順次面取り加工部と不完全ねじ部があり、ねじ山19に至る線で構成される開放空間である。凹部10の寸法は、ナット1のねじ部面取り寸法+不完全ねじ部の軸方向長さsとナットの2ピッチの長さを加えた軸方向長さをLaとし、また凹部10の座面14から上面13までの軸方向長さをLb、ナット1のねじ谷底15と凹部10の内壁11までの凹部10の半径方向の長さをLhとしたとき、LbはLaの0.001倍以上1倍以下の長さとし、またLhはLaの0.5倍以上5倍以下の長さとして、凹部10をねじの中心と同心円状に形成する。
本発明の第2の態様(B)には、様々の変形例があり得る。図2-1がその第1の変形例であって、凹部10のコーナー部12が1つの応力集中緩和曲線構造であって、コーナー部12が上面13に繋がって、順次面取り、ねじ不完全部、ねじ谷底15を経て、ねじ山19へ至る構造である。凹部における寸法は、ナット1の不完全ねじ部+面取りの軸方向長さsとナットの2ピッチの長さを加えた軸方向長さをLaとし、また凹部10の座面14から上面13までの軸方向長さをLb、ナット1のねじ谷底15と該凹部10の内壁11までの凹部10の半径方向の長さをLhとしたとき、LbはLaの0.001倍以上1倍以下の長さとし、またLhはLaの0.5倍以上5倍以下の長さとして、凹部10をねじの中心と同心円状に形成する。図2-1の変形例においてLhはLaの約1.1倍の場合である。本構造とすることによって、力の流れはナット座面14からの力がナットの外周部分を流れ、開放側の3山目以後に多く向かわせることができる。またナットは加工には単純な形状であり、形状確認を含め製作容易の利点がある。
本態様(B)の基本例である図2の一例のミーゼス相当応力分布図を図2-2に示す。図2-2のミーゼス相当応力分布を注意深くみると、ナット座面14から入った力はナット座面内を斜め45度方向ねじ山に向かって流れるものが多い。座面14中央に近いところからコーナー12直線部にほぼ平行に斜め45度程度ねじ山側に向いて、ナットねじ山3番から4番に流れる力と、ナット外周の段付き付近から斜め45度程度ねじ山側に傾いたままねじ山5、6番目に向かうものが見られる。コーナー12を回りこんで上面13に平行な水平方向に締結側の1山目に流れる力は少ない。ナットのねじ山1番のねじ山の後方(ナット内部)に応力小の黒色が大きく表れている。この様な黒色部分は従来方式ナット(図4-1)には見られないもので、この黒色部分の少し開放側をコーナー12を通った力が流れていると考えられる。ナットの中で広がった力はねじ山に至ったところでボルトねじ山から引っ張られる力を受けることとなるが、多くのねじ山に力が分散された結果として噛合い1山目にかかる負荷は従来方式と比較して低減されている。
図2に示す本態様(B)の基本例において、ナット座面14から入る力をナットの開放側に向ける能力を図2-1の変形例に比較して制御しやすくできる。例えば図中符号13の上面の長さを長くして、座面内のLh長さをLaの2.0倍程度と長くしたり、コーナー12の直線部の傾きを45度より大きく傾け開放側を向くようにしたり、壁11の長さが少し短くなる構造とすることなどが変化の要素である。この様に、凹部の各要素を最適に組み合わせることで力の向きを制御することができて、噛合い1山目への負荷分担を低減できる。図示はしていないが、本態様(B)の他の変形例の場合でも噛合い1山目の負荷分担率は30%を下回る数値を示す。
態様(B)の図2の一例の場合と従来方式の負荷分担率を図2-3(a)に、従来方式ナットと比較した棒グラフを図2-3(b)に示す。棒グラフで黒枠表示が態様(B)の変形例を示す。ちなみに負荷分担率は噛合い1山目では従来方式35.6%に対し、態様(B)の一変形例では29.6%と低減している。3山目以後は態様(B)の方が増加している。
また、本態様(B)のナットの開放側の形状は例えば六角形や四角形など、従来からある締結工具を使用できる形状であってもよい。
またナット座面14あるいは凹部10の壁面11、コーナー部12、上面13に関して、表面粗さは、ねじはJIS規定に準拠する精級仕上げ、ナット座面は精級仕上げ、その他の面は粗仕上げまたは並仕上げとするのが好適であるが、表面処理と整合する表面とすることがさらに好適である。
凹部10、ナット座面14、その他の表面にあるコーナー部に関し、すべてのコーナー部には、好適には円弧、楕円の一部などの2次曲線などの応力集中緩和曲線を有する形状であることが望ましい。
次いで、本発明の第3の態様(C)について説明する。
C.内部にねじ山を設けたねじ軸部およびフランジ座面部を有するナット本体と少なくとも一方の端面内径側に面取り座面を持つパイプ状であるナット部品とにより構成された2部品構成のナットであって、該ナット本体の縦断面図の形状がT字状であり、該ナット本体のフランジ座面部から該ナット部品の内側の被締結物側に向けてナット本体のねじ軸部が入り込む長さを、不完全ねじ部長さs+ねじピッチ0.5山分の長さ以上、不完全ねじ部s+ねじピッチ5山分の長さ以下となるようにねじ外側面外周部に中空パイプ状の該ナット部品を配置した構造であり、該T字形状のナット本体の最下部が被締結物に接しないように、かつ該ナット部品の最上部が該T字形状ナット本体のフランジ状座面に接触し、また該ナット部品の最下部が被締結物に接触するように該ナット部品の長さを設定し、該ナット部品内径面と該ナット本体の外周面はそれぞれ回転自在とし、該ナット本体と該ナット部品をねじの中心と同心円状に形成することにより;
締結時のナットのねじ山にかかる応力を開放側のねじ山3山目以後により多く向かわせてナットとボルトの締結噛合い1山目への負荷集中を低減するように構成したことを特徴とする。
本発明の第3の態様(C)のナットの縦断面図を図3に例示的に示す。ナット本体1の縦断面図の形状が略T字状で、ナット本体1は内部にねじ山を設けたねじ軸部と一体化しており、ナット本体1のフランジ下面部ねじ軸部18側面に少なくとも一方の片側内径側に軸部18と干渉しないための面取り構造を持つパイプ状のナット部品6を配置した構造であり、ナット本体軸部18はナット部品6の中で回転自在であって、ナット本体1は内部にボルト2を捻じ込み、ナット部品6とは摺動面16で接触、回転摺動する。ナット本体1のねじ軸部最下部7が被締結物3に接しないように、ナット部品6の最上面22から座面14までの長さをナット本体1のフランジ座面からねじ軸部の最下部7までの長さより長くして、ナット部品6が被締結物3と接する構造を示している。ナット本体1の上方開放側外形は締結工具に合わせた形状とすることができる。ナット本体1の軸方向に内部にねじ山が設けられたねじ軸部18の太さは一定でもよく、または開放側を太く、被締結物側を細くすること、さらに軸部の長さの途中からさらに細くすることもできる。また、図3のようにナット部品6の座面20を拡大し、ナット部品6と被締結物3の締結時の面圧を下げることもできる。
ボルト2とナット本体1及びナット部品6により被締結物3を締結する場合、ナット本体1の締結側最下面7は直接被締結物3に接しないで、ナット部品6の座面20が被締結物3に接しているため、締結時の力の流れが、ナット部品6とナット本体1との接触面16を介してナット本体1の開放側に向かい、さらに各ねじ山に向かう。この時、力はナット部品6からナット本体1に入るが、その位置はナット部品6とナット本体1が触れている接触面16の最内径部近傍から多く入り、ナット本体1内をねじ山3番目以後のねじ山に向かい、広がりながら開放側のねじ山に達する。
図3に示すように、ナット本体のフランジ部からねじ軸部18に移行する曲線部分とナット部品6の内径側肩部には、望ましくはそれぞれ形状や大きさが変わることがあっても互いが干渉しない構造を維持できる応力集中緩和曲線を持たせ、ナット本体、ナット部品双方に応力集中をさせない構造とする。ねじ山の負荷分担状況は、ナット部品6とナット本体1の触れ合う面16に対応するねじ軸部18内にあるねじの軸方向高さにあるねじ山の位置の相対的な関係から変化する。
本態様(C)ではナット本体1の開放側に近いナットねじ山に力を向けることが可能であって、どのように負荷を分担させるかは、ナット1の強度、材質、ナット部品6の強度、材質、それらの形状から決めることができる。ナット部品6とナット本体1が接触する面16の高さにあるLは、L+ねじ山0.5ピッチ分の長さ≦L≦L+ねじ山5ピッチの長さの範囲内が望ましい。
ここで、Lは、図3にあるように、ナットのねじ軸部18のねじ山の締結側にある完全ねじ1番のねじ谷底にある点Pからナット座面14までの距離を示し、Pとナット座面の間には、空隙4とねじ面取りとねじ不完全部の合計の長さsがあることとする。ナット部品6の軸方向長さ、空隙4の長さ、ねじ軸部18突出量を調整することで、ナット本体1のねじ軸部18の最下端7が被締結物3に触れることがない構造とすることができる。
図3は、一例としてナットのねじ山の数を8山としている。これはねじ軸部の影響によりナットの開放側に多くの応力が流れることによる力のバランス上ナット自体の剛性向上目的によるものである。ナット本体1のねじ軸部18外周に一例として段又はテーパー又はこれらを組み合わせた形状を設けた構造である。また、図3ではナット部品6の座面20が被締結物3と接触する接触面積を増やした構造であり、ナット部品6と被締結物3が接する座面20の締結面圧を下げる効果がある。
本態様(C)には変形例が多くあるが、使用方法に関するものがある(図示はしていない)。ナット部品6を被締結物3と置き換えて、ナット本体1を被締結物3から出てくるボルト2に直接螺合し、被締結物3を締結することができる変形(使用実施)例がある。この変形例の場合、被締結物3のねじ穴をナット本体1のねじ軸部18が回転自在に入る構造として、さらに被締結物3に設ける穴の入口は図3に示すようなナット部品6の大きな応力集中緩和曲線またはそれと同等効果を持つ構造とすることで、ナット本体1をボルト2を介して直接被締結物3と締結することができる。ナット本体1と被締結物3はナット本体1のフランジ座面の面16で接触する。このような場合、ボルト2は図3に示すように被締結物側からねじ山が出てくる方向を向いていて、ナット本体1と螺合するよう設定する。このような変形例においてもナット本体の開放側ねじ山3山目以後に力を多く流せ、噛合い1山目の負荷低減を実施できる。この様な使用方法、面取り形状も本発明の一部である。この場合の利点は、態様(C)の効果に加え、部品点数の削減、軽量化、ナット突出量削減などが挙げられる。
本態様(C)のミーゼス相当応力分布図を図3-1に示す。ここでは、態様(C)ナットのFEM解析にはねじ山を8山にした構造のナット本体を使用している。これはねじ軸部の影響によりナットの開放側に多くの応力が流れることによるナット自体の剛性向上によるものである。これに従い、比較の基準の従来方式ナットはねじ8山の数値を使用する。
図3-1のミーゼス相当応力分布図では、応力の大きさを四段階色調で色分けしており、白色が応力大、黒色が応力小を示し、中間の明るいグレーは応力やや大、暗いグレーがやや小を表している。
図3-1の概要として、ナット部品6の座面20から入った力は最下部では黒色であり、上に向かって暗いグレーから明るいグレーに斜めにナット本体1に向かい、ナット本体1とナット部品6が接触する面16上下で高圧縮応力を示す白色となり、最大の応力となっているが、この部分ではナット本体1のねじ山7~8番目に白やグレーの帯状の高応力が向いていることも見える。また、ナット本体1に入った直後にナット軸部18に向かって白と明るいグレーが見えているが、この部分は引張応力を受けている。この部分を通してナットねじ山4番と3番の間、3番と2番の間のねじ谷底へ向かう白色が見える。また、ねじ山3番付近が一番多くの力を通しているように見える。さらにナット側1番では内部に黒色が見え、この1山目部分は応力が小さいことを示している。改めて全体を眺めるとねじ軸部にあるナット1のねじ山1,2,3番はボルトから引張られる力を受けている。ナットからボルトに伝わる力はボルトねじ山3番が大きく、4,5,6,7、8番まで力が掛かっていて、7、8番にも暗いグレーが見えている。ボルト側を見ればねじ山近傍で1~3番目までは白色が小さくみられるが4,5番にも淡いグレーが出ている。さらにボルトねじ山の8番まですべての長さにわたって暗いグレーが広がっている。この様にボルト内部に広く応力が拡張している様子が見られる。ナットには力が方向を持って広がっていく様子が見えている。
この態様(C)の図3-1と従来方式による図4-1を見比べると、ミーゼス相当応力分布図は全く異なる様相になっていることが読み取れる。従来方式の図4-1では締結側1番に直ぐに力が向かい、力の多くを1番で受け渡しをして、次いで2番目、3番目と順次小さくなっていき、開放側ねじ山は小さな負荷分担しかしていないことが見られる。
本発明の態様(C)と従来方式の性能比較のために態様(C)の一例と従来方式の比較を図3-2(a)負荷分担率,(b)棒グラフに示す。ここで本態様(C)の噛合い1山目の負荷分担率は22.9%であり、従来方式の34.5%とはかけ離れた数値となっている。3山目以後の数値では態様(C)の方の負荷負担率が高くなっている。この比較は双方のナットねじ山数8山で行っている。
本発明の態様(C)の7山での変形例の解析を図3-3のミーゼス相当応力分布図に、従来方式7山との比較を図3-4(a)比較数値表、図3-4(b)で比較棒グラフをそれぞれ示す。この変形例での噛合い1山目の負荷分担率は24.0%であり、従来方式の35.6%とは大きく異なることを示している。ここでは双方ともねじ山数7山で比較している。
この様に態様(C)は、ナット本体1のフランジ座面の軸方向の位置とナット本体のねじ山の位置(ねじ軸部突出量)に相関がみられ、開放側への力の流れ量の大きさ、ひいては噛合い1山目の負荷分担に影響を及ぼすことを示唆している。ちなみに図3-1と図3-3ではナット本体軸部18の突出量が変わっており、図3-1は3.5山程度に対し、図3-3では4.3山程度と異なっている。
本発明の第3の態様(C)の各部品のコーナー部や他と接触する部分は、応力集中を避けるため、ナット部品6の座面20側コーナーやナット本体と接する部分などは応力集中緩和曲線を設けることが望ましい。また、これら応力集中緩和曲線の大きさ、形状は任意に決定することが可能である。
ナット部品6の座面20の表面粗さは精級仕上げ、あるいはナット本体1とナット部品6が接する面16は双方とも精級仕上げ、ねじ面はJIS規定の面粗度、その他の表面粗さは、粗仕上げまたは並仕上げとするなど、後述する表面処理との整合性をもつように、場所により最適な面粗度とするのが好適である。
T字状ナット構造は、必ずしも厳密なT字状構造でなくてもよく、主旨を逸脱しない限り、変形構造はあり得る。例えば十字構造であってもよい。また、ナット本体上部が通常の六角形などの締結工具を使える形状を持っていることも可能であり、より好適である。
本発明においては、態様が(A),(B),(C)と異なっていても、上記のようにナットが受ける負荷の力の流れを、負荷分担の低い開放側の噛合いねじ山により多く向かわせるナット構造として、3山目以後の負荷分担を増加させることにより、噛合い1山目の最大負荷分担を低減させるように構成したナットを提供することができる。これにより、噛合い1山目への負荷の低減により、ボルトの噛合い1山目谷底からの亀裂軸破断を起こす疲労破壊寿命を延長させる目的を達成することができる。
本発明の第1~第3態様のナットは、従来から用いられてきた材料を利用することができる。材料としては、軟鋼、炭素鋼、ニッケルクロム鋼、クロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼等の合金鋼、ステンレス合金鋼、アルミ合金、ニッケル合金、チタン合金等の非鉄金属、樹脂、セラミック(酸化物、窒化物、炭化物等)等の材質、材料が好適に使用される。
ねじの形成は従来と同様の工法を採用することができて、例えば、タップによるねじ成形加工、NC(数値制御)旋盤、マシニングセンター(MC)、複合加工機(旋盤とフライスの複合加工機)、放電加工、のいずれかまたはこれらの組み合わせ、粗材製作にはプレス塑性加工、冷間・熱間・温間プレス加工、鍛造、鋳造、射出成型、精密鋳造、3Dプリンタ加工、モールディング、MIMS、あるいはそれらを組み合わせて行うことができる。ねじ山寸法、強度に関しては、各国の工業規格(日本においてはJIS B0205:2001,JIS B0216:1987,JIS B1051:2000等)に規定された形状等を採用できる。
一例として、NC旋盤による第1の態様(A)のナットの形成について説明する。外形部は冷間・温間・熱間鍛造/プレス、切削、ナットフォーマー、スイス型自動旋盤などで製作し、ナットの座側側の空間部や略矩形の凹型をNC旋盤、自動盤、等の加工機により形成した後、従来のナットのねじ山形成と同様に切削加工、研削加工、切削タップ、転造タップを用いてナットのねじ山を形成することで本発明のナットを作製することができる。あるいは、作製順序を変えて、同様の装置でタップを用いてねじ山を形成した後に、ナットの座面側に空間や略矩形の凹部を形成し、その後に外周形状を形成しても良い。
他の態様のナットの製造法もほぼ同じようになるが、例を挙げれば、部材はナット本体になる部材とナット部品になる部材に大別できる。ナットの外形及びねじ下穴の製作は、熱間/冷間/温間プレス、鍛造、切削、鋳造などを採用し、1部品型ナットや略T字状形状を作製する。通常の工具で締結作業がしやすいように六角形などの締結工具を使えるように最頭部を形成し、切削や冷間/熱間鍛造、鋳造などで作った下穴にタップを通し、ねじ山/谷を形成する。ねじ部は旋削、研削加工を施して形成しても良い。ナット部品はパイプの切断、冷間/温間/熱間鍛造、鋳造、CNC旋盤による丸棒からの連続自動切削、など、もしくはこれらの組み合わせにより製作することができる。3Dプリンタによる成形でも良い。樹脂やセラミックスなどで作る場合は射出成型、焼結などと切削、研削などの工法の組み合わせを行っても良い。ナットとナット部品が接する面の面粗度は摺動抵抗を少なくするものを選択、採用しうる。鏡面研磨面、研磨面、精密切削面、精密金型によるプレス面、マイクロショットピーニング、ガラスビーズショットなどから選択もしくは組み合わせで加工できる。また、ナット本体とナット部品の組み合わせで、ねじ中心軸周りにナット本体が回転しながら締結を進めるため、被締結物面とナットねじ中心軸が垂直に保たれるように、ナット本体とナット部品の製作を行うことが望ましい。
ナットとボルトが締結開始する以前の表面は、例えば、材質が金属の場合、削り、研磨などの面粗度を持ち、摩擦係数μも、ドライ時μ≒0.5、ウェット時でμ≒0.1であることは知られている。しかし、締結開始後、隙間が無くなり基材が強く圧着された時、潤滑剤は流出し、金属表面の酸化膜は剥離し、金属地肌が現れる。この時、特にドライ環境では金属表面で金属結合が起きるような強い圧接状態になっている。この場合、ねじ山の摩擦係数が元のままであるとは想定しにくく、摩擦係数が非線形的に上昇し、双方のねじ山が凝着する大きさまで達することがありえる。
ダイヤモンド状炭素膜であって、膜がついていない溝部で細分化され、摺動面に設けた膜が分割されている機能を持つセグメント構造ダイヤモンド状炭素(S-DLC)膜がこの様な圧力を受けながら接する基材間に成膜されている場合、膜が存在している限り、摩擦係数(μ≒0.15)が変化することなく基材同士が擦りあう状態を維持できる。この密着耐久性は、本発明者らによる多くの実験で示されている。ナットの締結側のねじ山にS-DLC膜がある場合、少なくとも締結噛合い第1ねじ山にS-DLC膜がある場合、摩擦係数の上昇の影響は少ない。
本発明の第1~3の態様(A)~(C)に係るナットにおいて、ねじ山表面の少なくともボルトとの噛合い第1ねじ山またはそれ以上のねじ山の一部もしくは全部のボルト側ねじと接する面、またはねじ山の両側の斜面に、ダイヤモンド状炭素(DLC)膜、BN膜、WC膜、CrN膜、HfN膜、VN膜、TiN膜、TiCN膜、Al膜、ZnO膜、SiO膜、アルマイト、金属メッキ、固体潤滑剤、リン酸マンガン化成処理、浸炭焼入れ、窒化処理、クロマイズド処理のいずれか、またはこれらを組み合わせた被膜を被覆して保護膜を形成するのが、スムーズな締結作動上および安定な締結を実現する上でさらに好適である。ねじ山表面は少なくとも噛合い第1ねじ山表面を含む、より開放側のねじにもDLC膜の成膜が施されていることが好ましい。DLC保護膜を形成することにより、金属表面の荒れ、剥離を抑制し、摩擦係数を安定化させ、より安定した締結をもたらし得る。好適には、DLC膜は、溝により、例えば碁盤目状に分割されたセグメント状である(S-DLC膜)。
また本発明の第1~2の態様(A),(B)はナットの被締結物と接する座面14を、あるいは、第3の態様(C)に係るナットにおいて、ナット本体とナット部品が摺動する面16、あるいは被締結物と接するナット部品の面14をダイヤモンド状炭素(DLC)膜で被覆して保護膜を形成するのが、スムーズな締結作動上および安定な締結を実現する上でさらに好適である。摺動面にDLC保護膜を形成することにより、金属表面の荒れ、剥離を抑制し、摩擦係数を安定化させ、より安定した締結をもたらし得る。好適には、DLC膜は、膜がない溝により、例えば碁盤目状に分割されたセグメント状である(S-DLC膜)。S-DLC膜であれば被膜のない溝部は油溝となり、給油された場合には座面摩擦係数の安定が図られ、締結の安定に寄与する。
前記のナット本体とナット部品が摺動する面、ナットの座面、ねじ内面にDLC膜を堆積するためには、気相堆積法(CVD又はPVD法)が好適であり、たとえば直流、交流もしくは高周波等を電源とするプラズマCVDまたはマグネトロンスパッタもしくはイオンビームスパッタ等のスパッタ法が挙げられる。DLC膜の膜厚は、ナット、ナット部品の形状、使用用途等に依存するが、通常0.01~10μmであり、更に望ましくは0.5~3μmである。
ねじ山表面、ナット、ナット部品、もしくはワッシャが相互に接触する部分、あるいは被締結物と接する面(座面)にダイヤモンド状炭素膜を成膜する効用を述べたが、ダイヤモンド状炭素膜に限定するものでなく、摩擦抵抗の低減、あるいは摩擦抵抗の変化を低減する目的で他の材料を選択することができる。例えば、BN膜、WC膜、CrN膜、HfN膜、VN膜、TiN膜、TiCN膜、Al膜、ZnO膜、SiO膜、アルマイト、金属メッキ、固体潤滑層、リン酸マンガン化成処理、浸炭焼入れ、窒化処理、クロマイズド処理、高分子樹脂コートのいずれか、またはたはこれらを組み合わせたものを選択することができる。これらの膜によって、スムーズな締結作動および安定な締結を実現する上で効果がある。
表面膜形成あるいは表面処理の種類としては、金属メッキ、高分子樹脂コート、アルマイト処理、真空蒸着、イオンプレーティング、PVD,CVDなどのプラズマ処理などを好適に適用することができる。
また、ナットやナット部品の外表面に表面処理を施し、耐候性向上、外観向上、識別表示付与、加飾、などを適宜行うことができる。
本発明によれば、ボルト、ナット締結において最大負荷を分担する噛合い1山目の負荷を下げることができ、ボルトの噛合い1山目谷底からの亀裂軸破断の疲労強度を向上させることができる特徴を持つ構造のナットを提供できる。
1 ナット、ナット本体
2 ボルト
3 被締結物
4 ナット座面14又はナット部品6の最下部20と、ねじ軸部最下端7の間の空隙
5 凸状空間 (ねじ軸部の背面曲線などを含む)
6 ナット部品
7 ねじ軸部最下端
8 ナットの締結側方向
8a ナットの締結座面
9 ナットの開放側方向
9a ナットの開放端
10 ナット内の凹部
11 ナット内の壁面(凹部の壁)
12 ナット凹部内のコーナー部
13 ナット凹部の上面
14 ナットの座面
15 ナットねじ谷底
16 ナット本体とナット部品が接触する面(摺動面)
17 ナット本体の外周部
18 ナット本体のねじ軸部
19 ナット本体のねじ山
20 ナット部品6の最下部
21 ナット本体1の外周部
22 ナット部品の最上部
23 ワッシャ
24 ナット本体のねじ軸部にあるPがナット部品に入る最短長さ(s+0.5ピッチの長さ)
25 ナット本体のねじ軸部にあるPがナット部品に入る最長長さ(s+5ピッチの長さ)
ナットねじの締結側1山目の完全ねじ部の谷底に位置するポイント
ナットの凸状空間の最奥部に位置するポイント
ナット座面14からPまでの距離
ナット座面14からPまでの距離
P ナットねじ1山のピッチ
La ナットのねじピッチ2山分と不完全ねじ部(面取りを含む)長さsの合計長さ
Lb ナット座面14からナット座面内の上面13までの長さ
Lh ナット座面内の壁面11とねじ谷底15の間の長さ
s 面取り長さとねじ不完全部長さの合計長さ

Claims (6)

  1. 締結用のナットであって、該ナットはねじ穴の軸線及び軸線方向と該軸線に垂直な半径方向とを有し、該ナットの該半径方向の該軸線側を内側、該軸線から遠ざかる方向を外側とし、該軸線方向において該ナットの被締結物側を下、その反対側を上とし、
    B.ナットの縦断面図の形状において、ナット本体部と、該ナット本体部の被締結物側にねじの軸に対する半径方向寸法が該ナット本体部より大きい締結側部とを有し、該締結側部の内側に矩形状の凹部を有する構造であって、該ナットの該締結側部は、該ナット本体部側から被締結物側に向かって、該半径方向の寸法が拡大する拡開部を含み、該凹部はナット座面から垂直に立ち上がる内壁と曲線、直線またはそれらを組み合わせたコーナー部と上面とを持ち、前記矩形状の凹部の前記コーナー部が直線部を含む形状であり、上面の位置から該ナットの不完全ねじ部の軸方向長さとナットの2ピッチの長さを加えた軸方向長さをLaとし、また該凹部の該座面から該上面までの軸方向長さをLb、ナットのねじ谷底と該凹部の内壁までの該凹部の半径方向の長さをLhとしたとき、LbはLaの0.001倍以上1倍以下の範囲とし、またLhはLaの0.5倍以上5倍以下の範囲として該凹部をねじの中心と同心円状に形成することにより(態様B);
    C.主部及び該主部の被締結物側に該半径方向寸法が該主部より大きい締結側部を有するナット本体と、少なくとも一方の端面内径側に肩部を持つパイプ状であるナット部品と、により構成された2部品構成のナットであって、該ナット本体の該締結側部は、該主部側から該被締結物側に向かって、該半径方向の寸法が拡大する拡開部を含み、該ナット本体の縦断面図の形状がT字状であり、該ナット本体の該半径方向に延在する平坦な座面から該ナット部品の内側で被締結物側に向けて該ナット本体のねじ軸部が入り込む長さを、不完全ねじ部長さs+ねじピッチ0.5山分の長さ以上、不完全ねじ部s+ねじピッチ5山分の長さ以下となるように該ねじ軸部の外側に中空パイプ状の該ナット部品を配置した構造であり、該T字形状のナット本体の最下部が被締結物に接しないように、かつ該ナット部品の該半径方向に延在する平坦な最上面のみが該T字形状ナット本体の該座面に接触し、また該ナット部品の最下面が被締結物に接触し、ナットの縦断面図において、該ナット本体の該座面から該ねじ軸部に移行する部分を含む該ねじ軸部と、該ナット部品の内側の肩部とが、いずれも応力集中緩和曲線で構成されているが、該ねじ軸部の先端部は直線でもよく、該ねじ軸部の該応力集中緩和曲線は、該ナット本体の該座面を通る半径方向の直線に外接する楕円弧であり、該ナット部品の内側面と該ねじ軸部の外側面はそれぞれ回転自在とし、該ナット本体と該ナット部品をねじの中心と同心円状に形成することにより(態様C);または
    D.ボルト穴とナット側の端面内側に肩部を持つ被締結物と組み合わせて使用され、本体部及び該本体部の被締結物側に該半径方向寸法が該本体部より大きい締結側部を有するナットであって、該ナットの該締結側部は、該本体側から該被締結物側に向かって、該半径方向の寸法が拡大する拡開部を含み、該ナットの縦断面図の形状がT字状であり、該ナットの該半径方向に延在する平坦な座面から該ナットの内側で被締結物側に向けて該ナットのねじ軸部が入り込む長さを、不完全ねじ部長さs+ねじピッチ0.5山分の長さ以上、不完全ねじ部s+ねじピッチ5山分の長さ以下となるように該ねじ軸部外側に被締結物を配置し、該T字形状のナットの最下部が被締結物に接しないように、かつ被締結物の該半径方向平面である最上面のみが該T字形状ナットの該座面に接触し、また該ナットの最下面が被締結物に接触し、ナットの縦断面図において、該ナットの該座面から該ねじ軸部に移行する部分を含む該ねじ軸部と、被締結物の内側肩部とが、いずれも応力集中緩和曲線で構成されているが、該ねじ軸部の先端部は直線でもよく、該ねじ軸部の該応力集中緩和曲線は、該ナット本体の該座面を通る半径方向の直線に外接する楕円弧であり、被締結物の内側面と該ねじ軸部の外側面はそれぞれ回転自在とし、該ナットと被締結物をねじの中心と同心円状に形成することにより(態様D);
    ナットが受ける負荷の力の流れを、負荷分担の低い開放側の噛合いねじ山により多く向かわせるナット構造とすることにより、噛合い1山目の最大負荷分担を低減させ、噛合い3山目以後の負荷分担を増加させることにより、噛合い1山目への負荷集中を低減させるように構成したことを特徴とするナット。
  2. ナットのねじ山表面の少なくともボルトとの噛合い第1ねじ山またはそれ以外のねじ山の一部もしくは全部のボルト側ねじと接する面、またはねじ山の両側の斜面に、ダイヤモンド状炭素(DLC)膜、BN膜、WC膜、CrN膜、HfN膜、VN膜、TiN膜、TiCN膜、Al膜、ZnO膜、SiO膜、アルマイト、金属メッキ、固体潤滑層、リン酸マンガン化成処理、浸炭焼入れ、窒化処理、クロマイズド処理のいずれか、またはこれらの組み合わせた被膜を被覆してなる請求項1に記載のナット。
  3. ナットとナット部品の接触摺動面にダイヤモンド状炭素(DLC)膜、BN膜、WC膜、CrN膜、HfN膜、VN膜、TiN膜、TiCN膜、Al膜、ZnO膜、SiO膜、アルマイト、金属メッキ、固体潤滑層、リン酸マンガン化成処理、浸炭焼入れ、窒化処理、クロマイズド処理、高分子樹脂コートのいずれか、またはこれらの組み合わせた被膜を被覆してなる請求項1または2に記載のナット。
  4. ナット部品の座面、ナットと被締結物が接触するナット座面にダイヤモンド状炭素(DLC)膜、BN膜、WC膜、CrN膜、HfN膜、VN膜、TiN膜、TiCN膜、Al膜、ZnO膜、SiO膜、アルマイト、金属メッキ、高分子樹脂コート、固体潤滑層、リン酸マンガン化成処理、浸炭焼入れ、窒化処理、クロマイズド処理のいずれか、またはこれらの組み合わせた被膜を被覆してなる請求項1~3のいずれか1項に記載のナット。
  5. 前記態様Bであり、ナットの縦断面図において、前記矩形状の凹部の前記コーナー部の前記直線部がねじの軸方向となす角度が45度より小さい、請求項1~4のいずれか一項に記載のナット。
  6. 前記態様C又はDであり、前記ナット本体のねじ軸部が前記入り込む長さが、不完全ねじ部長さs+ねじピッチ2山分の長さ以上、不完全ねじ部s+ねじピッチ4山分の長さ以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のナット。
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