JP2006029369A - 球帯状シール体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 相手材との摩擦において、相手材の表面を損傷させることなくシール性の低下を防ぐことができ、耐摩耗性を有する球帯状シール体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 球帯状シール体30は、円筒内面28と部分凸球面状面29と部分凸球面状面29の環状端面31及び32とにより規定された球帯状基体33と、部分凸球面状面29に一体的に形成された外層34とを備え、球帯状基体33は、圧縮された金網からなる補強材5と、補強材5の金網4の網目を充填し、かつこの補強材5と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる耐熱材とからなり、外層34は、膨張黒鉛からなる耐熱材及びこの耐熱材に混在一体化された金網からなる補強材を有した厚い内側層37と、内側では内側層37に一体化されている一方、外側では外部に露出した部分凸球面状の外面35を有すると共に膨張黒鉛からなる耐熱材のみを有した薄い外側層38とを具備している。
【選択図】 図1

Description

本発明は、自動車排気管の球面管継手に使用される球帯状シール体及びその製造方法に関する。
特公昭58−21144号公報 特開昭58−34230号公報
自動車用エンジンの排気ガスは、図14に示す様に一般的にエキゾーストマニフォールド600に導かれキャタリススティクコンバーター601、エキゾーストパイプ602、プリチャンバー603、サイレンサー604を経てテールパイプ605より大気中に放出されるが、この排気系部品は、エンジン606のロール挙動及び振動などにより繰返し応力を受ける。特に高回転で高出力エンジンの場合は、排気系部品に加わる応力はかなり大きなものとなる。したがって排気系部品の疲労破壊を招く虞がある、またエンジン振動が排気系部品を共振させ室内静粛性を悪化させる場合もある。
このような問題を解決するために、排気管の所要箇所に球面管継手を配置して応力を吸収させるなどの手段が講じられている。
この球面管継手に使用されるシール体としては、特許文献1に開示されているものがある。このシール体は耐熱性を有し、相手材とのなじみ性に優れ、また衝撃強度も著しく改善されているという利点を有する反面、乾燥摩擦条件下の摩擦においては往々にして摩擦音を発生するという欠点がある。
上記シール体の欠点を解決するものとして、特許文献2に開示されたシール体がある。このシール体は、その摺動面が変形して絡み合った金網からなる補強材と補強材の網目に充填保持された固体潤滑剤とが一体化されている平滑な面に形成されているものである。このシール体は、相手材との摩擦において相手材表面に固体潤滑剤が過度に付着しても、表面に露出した補強材が適度な薄い潤滑被膜を残して適度に掻き取る作用を発揮し、相手材との摩擦においては潤滑被膜との摩擦となり、摩擦音を生じることがないという利点を有するものである。
上記特許文献2に開示されたシール体は上記利点を有するが、過大な揺動や軸方向の過大入力が長時間連続して負荷されるような使用条件においては、該シール体の摺動面に露出した金網からなる補強材が相手材表面との摺動により摩耗し、その摩耗粉が摺動面に堆積してアブレッシブ摩耗に移行し、相手材表面を損傷させたり、粗面化させてシール性を著しく低下させる虞がある。また、アブレッシブ摩耗に移行することにより、シール体と相手材との摩擦は摩擦面に堆積した摩耗粉を介しての摩擦となり、相手材ばかりでなくシール体自体の摩耗も余儀なくされる。
本発明は前記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、相手材との摩擦において、相手材の表面を損傷させることなくシール性の低下を防ぐことができ、耐摩耗性を有する球帯状シール体及びその製造方法を提供することにある。
本発明の球帯状シール体は、円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた、とくに排気管継手に用いられるものであって、ここで、球帯状基体は、圧縮された金網からなる補強材と、この補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる耐熱材とからなり、外層は、膨張黒鉛からなる耐熱材及びこの耐熱材に混在一体化された金網からなる補強材を有した厚い内側層と、内側では内側層に一体化されている一方、外側では外部に露出した部分凸球面状の外面を有すると共に膨張黒鉛からなる耐熱材のみを有した薄い外側層とを具備しており、外側層のその外部に露出した部分凸球面状の外面は平滑な面となっている。
本発明の球帯状シール体によれば、相手材と摺接する薄い外側層の部分凸球面状の外面は、膨張黒鉛からなる耐熱材のみの平滑な面となっているので、相手材との金属同士の直接的な摺接を回避し得て相手材表面を損傷させることがなく、結果としてシール性の低下を来たすことがない。また、部分凸球面状の外面で露出した外側層は、内側では金網からなる補強材を有した内側層に混在して、斯かる金網からなる補強材によって支持されているので、相手材との摺接による相手材表面への該耐熱材の被膜の造膜性が良好に行われ、相手材の表面に薄い被膜が形成される結果、相手材との摺接において異常摩擦音の発生を極力防止できる。
本発明の球帯状シール体において、耐熱材のみからなる外側層は好ましくはその厚さが0.05mm〜0.4mmであり、この程度の厚さの外側層であると、内側層の金網からなる耐熱材によってより好ましく支持されるので、相手材との摺接による相手材表面への該耐熱材の被膜の造膜性がより良好に行われ、相手材の表面に薄い被膜が形成される結果、相手材との摺接において異常摩擦音の発生をより効果的に防止できる。
本発明の球帯状シール体は、円筒内面において球帯状基体の膨張黒鉛からなる耐熱材が露出していてもよく、斯かる球帯状シール体によれば、当該球帯状シール体が排気管の外面に固定された際には、球帯状シール体の円筒内面と排気管の外面との間の密封性が円筒内面の膨張黒鉛からなる耐熱材により高められるので、当該接触面からの排気ガスの漏洩を極力防ぐことができる。
本発明の球帯状シール体は、円筒内面において球帯状基体の金網からなる補強材が露出していもよく、斯かる球帯状シール体によれば、当該球帯状シール体を排気管の外面に嵌合固定する際には、円筒内面と排気管の外面との間の摩擦が円筒内面における金網からなる補強材により高められ、結果として球帯状シール体が排気管の外面に強固に固定されることになる。
本発明において好ましくは、球帯状基体及び外層における耐熱材の密度は1.75g/cm以上2.00g/cm以下である。球帯状基体及び外層における耐熱材の密度を1.75g/cm以上2.00g/cm以下にすることにより、球帯状シール体自体の耐摩耗性を向上させることができ、摩耗に起因する排気ガスの漏洩等の不具合を極力防止することができる。とくに、製造段階で極めて強く圧縮させて耐熱材が2.00g/cmより大きい密度になると、相手材との摺接において相手材表面への耐熱材の被膜形成が難しくなる。
円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた本発明の球帯状シール体の製造方法は、膨張黒鉛からなる耐熱シート材を準備する工程と、金属細線を織ったり、編んだりして得られる金網からなる補強材を準備し、該補強材を前記耐熱シート材に重ね合わせて重合体を形成したのち、この重合体を円筒状に捲回して筒状母材を形成する工程と、金属細線を編んで円筒状金網を形成すると共に該円筒状金網内に別途用意した膨張黒鉛からなる耐熱シート材を挿入したのち、これをローラ間に通して内部に耐熱シート材を保持した帯状金網を作製する工程と、内部に耐熱シート材を保持した帯状金網に、別途用意した膨張黒鉛からなる耐熱シート材を重ね合わせ、これらをローラ間に通して一方の面に該耐熱シート材を一体化させた外層形成部材を形成する工程と、前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材の耐熱シート材を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製する工程と、該予備円筒成形体を金型のコア外周面に挿入し、該コアを金型内に配置すると共に該金型内において予備円筒成形体をコア軸方向に圧縮成形する工程とからなり、球帯状基体は、耐熱シート材からなる耐熱材と金網からなる補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成されており、外層は、膨張黒鉛からなる耐熱材及びこの耐熱材に混在一体化された金網からなる補強材を有した厚い内側層と、内側では内側層に一体化されている一方、外側では外部に露出した部分凸球面状の外面を有すると共に膨張黒鉛からなる耐熱材のみを有した薄い外側層とを具備しており、外側層のその外部に露出した部分凸球面状の外面は平滑な面となっていることを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層には、耐熱材に混在一体化された金網からなる補強材を有した厚い内側層と、膨張黒鉛からなる耐熱材が圧縮成形によって展延された薄い外側層とが形成される上に、部分凸球面状の外面で露出した外側層が内側では金網からなる補強材を有した内側層に混在して斯かる金網からなる補強材によって支持される結果、部分凸球面状の外面は、膨張黒鉛からなる耐熱材のみを有したので、相手材との金属同士の直接的な摺接を回避し得て相手材表面を損傷させることがなく、結果としてシール性の低下を来たすことがないという効果をもたらす。また、部分凸球面状の外面を有した耐熱材の外側層は、内側の内側層の金網からなる補強材によって支持されるので、相手材との摺接による相手材表面への該耐熱材の被膜の造膜性が良好に行われ、相手材の表面に薄い被膜が形成される結果、相手材との摺接において異常摩擦音の発生を極力防止できるという効果をもたらす。
本発明の製造方法において、外側層は好ましくはその厚さが0.05mm〜0.4mmであり、斯かる外側層は、最終の圧縮工程において、膨張黒鉛からなる耐熱材が圧縮成形によって展延されることによって形成される。圧縮成形時の圧力は通常、1トン/cm〜3トン/cmの範囲で行われ、この圧力を適宜調整することにより、0.05mm〜0.4mmの厚さの外側層を形成することができる。
本発明の球帯状シール体の製造方法では、重合体を耐熱シート材を内側にしてうず巻き状に捲回して筒状母材を形成してもよく、斯かる製造方法によれば、円筒内面において球帯状基体の膨張黒鉛からなる耐熱材が露出している球帯状シール体を製造できる。
本発明の球帯状シール体の製造方法では、重合体を金網からなる補強材を内側にしてうず巻き状に捲回して筒状母材を形成してもよく、斯かる製造方法によれば、円筒内面において球帯状基体の金網からなる補強材が露出している球帯状シール体を製造できる。
本発明によれば、相手材との金属同士の直接的な摺接を回避し得て相手材表面を損傷させることがなく、結果としてシール性の低下を来たすことがない球帯状シール体及びその製造方法を提供することができる。
次に、本発明の実施の形態の例を、図に示す例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何等限定されないのである。
本発明の球帯状シール体における構成材料及び球帯状シール体の製造方法について説明する。
<耐熱シート材について>
耐熱シート材としては、膨張黒鉛が使用される。この膨張黒鉛は、米国ユニオンカーバイド社製の「グラフォイル(商品名)」あるいは日本カーボン社製の「ニカフィルム(商品名)」など、厚さが0.2mm〜1.0mmのシート状のものが使用される。
<補強材について>
補強材は、鉄系としてオーステナイト系のSUS304若しくはSUS316又はフェライト系のSUS430等のステンレス鋼線又は鉄線(JIS−G−3532)もしくは亜鉛メッキ鉄線(JIS−G−3547)、また銅系として銅−ニッケル合金(白銅)、銅−ニッケル−亜鉛合金(洋白)、黄銅、ベリリウム銅からなる線径0.10〜0.32mm程度の細線材を1本又は2本以上使用して織ったり、編んだりして形成された網目3mm〜6mm程度の金網を使用して好適である。
次に、上述した構成材料からなる球帯状シール体の製造方法について、図面に基づき説明する。
(第一工程)図3に示すように、金属細線を円筒状に編んで形成された筒状金網1をローラ2及び3間に通して所定の幅Dの帯状金網4を作製し、帯状金網4を所定の長さLに切断した補強材5又は金属細線を織ったり、編んだりすることによって直接形成される帯状金網4を所定の幅Dと長さLとに切断した補強材5を準備する。
(第二工程)図4に示すように、補強材5の幅Dに対して1.1×Dから2.1×Dの幅dを有すると共に補強材5の長さLに対して1.30×Lから2.70×Lの長さlを有するように切断された膨張黒鉛からなる耐熱シート材6を準備する。
(第三工程)後述する球帯状シール体30(図1参照)において部分凸球面状面29の軸方向の少なくとも一方の端縁側の環状端面である大径側の環状端面31に全体的に耐熱材が露出するようにすべく、図5に示すように、部分凸球面状面29の大径側の環状端面31となる補強材5の幅方向の少なくとも一方の端縁7から最大で0.1×Dから0.8×Dだけ耐熱シート材6が幅方向にはみ出すと共に端縁7からの耐熱シート材6の幅方向のはみ出し量δ1が部分凸球面状面29の小径側の環状端面32となる補強材5の幅方向の他方の端縁8からのはみ出し量δ2よりも多くなるようにすると共に補強材5の長さ方向の一方の端縁9から最大で0.30×Lから1.70×Lだけ耐熱シート材6が長さ方向にはみ出すと共に補強材5の長さ方向の他方の端縁10と当該端縁10に対応する耐熱シート材6の長さ方向の端縁11とを実質的に一致させて、補強材5と耐熱シート材6との幅方向及び長さ方向を合致させて当該補強材5と耐熱シート材6とを互いに重ね合わせた重合体12を得る。
(第四工程)重合体12を図6に示すように耐熱シート材6を内側にしてうず巻き状であって耐熱シート材6が1回多くなるように捲回して、内周側及び外周側の両方に耐熱シート材6が露出した筒状母材13を形成する。耐熱シート材6としては、筒状母材13における耐熱シート材6の巻き回数が補強材5の巻き回数よりも多くなるように、補強材5の長さLに対して1.30×Lから2.70×Lの長さlを有したものが予め準備される。筒状母材13においては、図7に示すように、耐熱シート材6は、幅方向の一方の端縁側において補強材5の一方の端縁7から幅方向にδ1だけはみ出しており、また耐熱シート材6の幅方向の他方の端縁側において補強材5の他方の端縁8から幅方向にδ2だけはみ出している。
(第五工程)前記耐熱シート材6と同様であるが、幅Dよりも小さい幅dを有すると共に筒状母材13を1回巻きできる程度の長さlを有した図8に示すような耐熱シート材6を別途用意する。一方、前記第一工程で説明したように、金属細線を編んで筒状金網1を形成したのち、これをローラ2及び3間に通して作製した帯状金網4からなる補強材5を別に準備し、図9に示すように帯状金網4内に耐熱シート材6を挿入する。一方、図8に示す耐熱シート材6と同様の寸法を有する耐熱シート材6を別途準備する。この耐熱シート材6を前記内部に耐熱シート材6を挿入保持した帯状金網4に図9に示すように重ね合わせると共にこれらを図10に示すように、ローラ15及び16間に通して一体化させ、別の耐熱シート材6と該別の耐熱シート材6を覆って配した帯状金網4からなる別の補強材5と別の耐熱シート材6とからなる外層形成部材17を形成する。
(第六工程)このようにして得た外層形成部材17を別の耐熱シート材6を外側にして前記筒状母材13の外周面に捲回し、図11に示すような予備円筒成形体18を作製する。
(第七工程)内面に円筒壁面20と円筒壁面20に連なる部分凹球面壁面21と部分凹球面壁面21に連なる貫通孔22とを備え、貫通孔22に段付きコア23を嵌挿することによって内部に円筒中空部24と該円筒中空部24に連なる球帯状中空部25とが形成された図12に示すような金型26を準備し、該金型26の段付きコア23に予備円筒成形体18を挿入する。
金型26の円筒中空部24及び球帯状中空部25に位置せしめられた予備円筒成形体18をコア軸方向に1トン/cm〜3トン/cmの圧力で圧縮成形し、図1及び図2に示すような、中央部に貫通孔27を有すると共に円筒内面28と部分凸球面状面29と部分凸球面状面29の大径側及び小径側の環状端面31及び32とにより規定された球帯状基体33と、球帯状基体33の部分凸球面状面29に一体的に形成された外層34とを備えた球帯状シール体30を作製する。
この圧縮成形により、球帯状基体33は、耐熱シート材6と金網からなる補強材5とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成されて、圧縮された金網からなる補強材5と、この補強材5の金網4の網目を充填し、かつこの補強材5と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる耐熱材とを有しており、外層34は、耐熱シート材6が圧縮された膨張黒鉛からなる耐熱材及びこの耐熱材に混在一体化された金網からなる補強材を有した厚い内側層37と、内側では内側層37に一体化されている一方、外側では外部に露出した部分凸球面状の外面35を有すると共に膨張黒鉛からなる耐熱材のみを有した薄い外側層38とを具備しており、外側層38の膨張黒鉛からなる耐熱材のみを有すると共に外部に露出した部分凸球面状の外面は平滑な面となっており、貫通孔27を規定する円筒内面28は、球帯状基体33の圧縮された耐熱シート材6が圧縮された膨張黒鉛からなる耐熱材が露出し、球帯状基体33及び外層34における耐熱材の密度が1.75g/cm以上2.00g/cm以下に形成される。
上述した方法によって作製された図1に示す球帯状シール体30において、耐熱シート材6は、内部構造を形成する金網からなる補強材5と絡み合って一体となっており、部分凸球面状の外面35は、外層形成部材17によって形成された耐熱シート材6が圧縮された膨張黒鉛からなる耐熱材のみを有した平滑な面に形成されていると共に部分凸球面状面29の大径側の環状端面31及び小径側の環状端面32は、補強材5からはみ出した耐熱シート材6が部分凸球面状面29の大径側の環状端面31及び小径側の環状端面32を形成するように曲折されかつ展延されることによって膨張黒鉛からなる耐熱材でもって形成されている。
第四工程において、重合体12を耐熱シート材6を内側にしてうず巻き状に捲回する代わりに、帯状金網4からなる補強材5を内側にしてうず巻き状に捲回して筒状母材13を形成すると、球帯状基体33の金網からなる補強材5が円筒内面28において部分的に露出している球帯状シール体30を製造することができる。
球帯状シール体30は、図13に示す排気管球面継手に組込まれて使用される。すなわち、図13に示す排気管球面継手において、エンジン側に連結された上流側排気管100の外周面には、管端部101を残してフランジ200が立設されており、管端部101には、球帯状シール体30が貫通孔27を規定する円筒内面28において嵌合されており、大径側の環状端面31において球帯状シール体30がフランジ200に当接されて着座せしめられており、上流側排気管100と相対峙して配されていると共にマフラー側に連結された下流側排気管300には、凹球面部302と凹球面部302に連接されたフランジ部303とを一体に備えた径拡大部301が固着されており、凹球面部302の内面304が球帯状シール体30の部分凸球面状の外面35に摺接されている。
図13に示す排気管球面継手において、一端がフランジ200に固定され、他端が径拡大部301のフランジ部303を挿通して配された一対のボルト400とボルト400の膨大頭部及びフランジ部303の間に配された一対のコイルバネ500とにより、下流側排気管300には、常時、上流側排気管100方向にバネ力が付勢されている。そして、排気管球面継手は、上、下流側排気管100、300に生じる相対角変位に対しては、球帯状シール体30の部分凸球面状の外面35と下流側排気管300の端部に形成された径拡大部301の凹球面部302の内面304との摺接でこれを許容するように構成されている。
次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何等限定されないのである。
<実施例1>
金属細線として線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を2本使用して網目3mmの円筒状編組金網を作製し、これをローラ間に通して帯状金網とし、これを補強材とした。耐熱シート材として厚さ0.38mmの膨張黒鉛シート(日本カーボン社製「ニカフィルム(商品名)」)を使用した。耐熱シート材をうず巻き状に一周分捲回したのち、耐熱シート材の内側に補強材を重ね合わせ、うず巻き状に捲回して最外周に耐熱シート材を位置させた筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱シート材の幅方向の両端部はそれぞれ補強材の幅方向に突出している。
上記と同様の金属細線を1本使用して、網目が3mmの円筒状編組金網を作製し、これをローラ間に通して帯状金網とした。上記と同様の耐熱シート材を別途準備し、該耐熱シート材を該帯状金網内に挿入した。上記と同様の耐熱シート材を別途準備し、該耐熱シート材を、前記内部に耐熱シート材を挿入保持した帯状金網の上に重ね合わせたのち、これらをローラ間に通して一体化した外層形成部材を作製した。
前記筒状母材の外周面に、上記外層形成部材を耐熱シート材を外側にして捲回して予備円筒成形体を作製した。この予備円筒成形体を図12に示す金型の段付きコアに挿入し、該予備円筒成形体を金型の中空部に位置させた。
金型の中空部に位置させた予備円筒成形体をコア軸方向に2トン/cmの圧力で圧縮成形し、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を作製した。
この圧縮成形により、球帯状基体は、耐熱シート材からなる耐熱材と金網からなる補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる耐熱材とを有しており、外層は、耐熱シート材が圧縮された膨張黒鉛からなる耐熱材及びこの耐熱材に混在一体化された金網からなる補強材を有した厚い内側層と、内側では内側層に一体化されている一方、外側では外部に露出した部分凸球面状の外面を有すると共に膨張黒鉛からなる耐熱材のみを有した薄い外側層とを具備しており、外側層の膨張黒鉛からなる耐熱材のみを有すると共に外部に露出した部分凸球面状の外面は平滑な面となっており、部分凸球面状の外面の大径側及び小径側の環状端面には耐熱シート材において補強材から幅方向にはみ出した部分が曲折されかつ展延されて得られた耐熱材が露出している。この球帯状シール体の球帯状基体及び外層における耐熱材の密度が1.75g/cmであり、外層の耐熱材の外側層の厚さは0.2mmであった。
<実施例2>
前記実施例1と同様にして、予備円筒成形体を作製した。この予備円筒成形体を金型の段付きコアに挿入し、該予備円筒成形体を金型の中空部に位置させた。
金型の中空部に位置させた予備円筒成形体をコア軸方向に3トン/cmの圧力で圧縮成形し、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を作製した。
この圧縮成形により、球帯状基体は、耐熱シート材からなる耐熱材と金網からなる補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる耐熱材とを有しており、外層は、耐熱シート材が圧縮された膨張黒鉛からなる耐熱材及びこの耐熱材に混在一体化された金網からなる補強材を有した厚い内側層と、内側では内側層に一体化されている一方、外側では外部に露出した部分凸球面状の外面を有すると共に膨張黒鉛からなる耐熱材のみを有した薄い外側層とを具備しており、外側層の膨張黒鉛からなる耐熱材のみを有すると共に外部に露出した部分凸球面状の外面は平滑な面となっており、部分凸球面状の外面の大径側及び小径側の環状端面には耐熱シート材において補強材から幅方向にはみ出した部分が曲折されかつ展延されて得られた耐熱材が露出している。この球帯状シール体の球帯状基体及び外層における耐熱材の密度が1.82g/cmであり、外層の耐熱材の外側層の厚さは0.08mmであった。
<比較例>
前記実施例1と同様にして、筒状母材を作製した。実施例1と同様の金属細線を1本使用して、網目が3mmの円筒状編組金網を作製し、これをローラ間に通して帯状金網としたのち、実施例1と同様の耐熱シート材を別途準備し、該耐熱シート材を該帯状金網内に挿入し、これらをローラ間に通して一体化した外層形成部材を作製した。以下、実施例1と同様にして球帯状シール体を作製した。
この圧縮成形により、球帯状基体は、耐熱シート材からなる耐熱材と金網からなる補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる耐熱材とを有しており、外層は、圧縮された膨張黒鉛からなる耐熱材と、この耐熱材に混在一体化された金網からなる補強材とを有しており、外層において外部に露出した部分凸球面状の外面は前記耐熱材と補強材とが混在した平滑な面となり、貫通孔を規定する円筒内面は、球帯状基体の圧縮された耐熱材が露出した面となり、部分凸球面状の外面の大径側及び小径側の環状端面には耐熱シート材において補強材から幅方向にはみ出した部分が曲折されかつ展延されて得られた耐熱材が露出している。この球帯状シール体の球帯状基体及び外層における耐熱材の密度が1.75g/cmであった。
次に、上述した各実施例及び比較例で得た球帯状シール体を図13に示す排気管球面継手に組み込み、該球帯状シール体と摺接した際の相手材表面の面粗度(Ry/μm)、ガス漏れ量(l/min)及び球帯状シール体の摩耗量(mm)について試験した結果を説明する。
<試験条件>
コイルばねによる押圧力(スプリングセットフォース):980.7N
揺動角度:±2.5°
揺動速度:20Hz
温度(図13に示す凹球面部302の外表面温度):室温(25℃)〜500℃
相手材(図13に示す径拡大部301の材質):SUS304
<試験方法>
室温において20Hzの揺動速度で±2.5°の揺動運動を継続しながら温度を500℃まで昇温し、その温度を保持した状態で揺動運動を継続し、揺動回数が1000000回に到達した時点での各項目について測定した。
<ガス漏れ量の測定方法>
図13に示す排気管球面継手の上流側排気管100の開口部を閉塞し、下流側排気管300側から、0.5kgf/cmの圧力で乾燥空気を流入し、継手部分(球帯状シール体30の外面35と径拡大部301の内面304との摺接部、球帯状シール体30の円筒内面28と上流側排気管100の管端部101との嵌合部及び大径側の環状端面31と上流側排気管100に立設されたフランジ200との当接部)からの漏れ量を流量計にて測定した。
試験結果を表1に示す。
Figure 2006029369
表1に示す試験結果から、実施例からなる球帯状シール体は、全ての項目において比較例からなる球帯状シール体より優れていることが判る。
以上の試験結果から、実施例の球帯状シール体は、相手材と摺接する薄い外側層の部分凸球面状の外面が膨張黒鉛からなる耐熱材のみの平滑な面となっているので、相手材との金属同士の直接的な摺接を回避し得て相手材表面を損傷させることがなく、結果としてシール性の低下を来たすことがないものである。
本発明の実施の形態の一例で製造された球帯状シール体の縦断面図である。 図1に示す球帯状シール体の一部拡大断面図である。 本発明の球帯状シール体の製造工程における補強材の形成方法の説明図である。 本発明の球帯状シール体の製造工程における耐熱材の斜視図である。 本発明の球帯状シール体の製造工程における重合体の斜視図である。 本発明の球帯状シール体の製造工程における筒状母材の平面図である。 図6に示す筒状母材の縦断面図である。 本発明の球帯状シール体の製造工程における耐熱材の斜視図である。 本発明の球帯状シール体の製造工程における帯状金網内に耐熱材を挿入すると共に更に他の耐熱材を重ね合わせた状態を示す説明図である。 本発明の球帯状シール体の製造工程における外層形成部材の形成方法の説明図である。 本発明の球帯状シール体の製造工程における予備円筒成形体の平面図である。 本発明の球帯状シール体の製造工程における金型中に予備円筒成形体を挿入した状態を示す縦断面図である。 本発明の球帯状シール体を組込んだ排気管球面継手の縦断面図である。 エンジンの排気系の説明図である。
符号の説明
1 筒状金網
4 帯状金網
5 補強材
6 耐熱シート材
12 重合体
13 筒状母材
17 外層形成部材
18 予備円筒成形体
26 金型
30 球帯状シール体

Claims (9)

  1. 円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた、とくに排気管継手に用いられる球帯状シールであって、球帯状基体は、圧縮された金網からなる補強材と、この補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる耐熱材とからなり、外層は、膨張黒鉛からなる耐熱材及びこの耐熱材に混在一体化された金網からなる補強材を有した厚い内側層と、内側では内側層に一体化されている一方、外側では外部に露出した部分凸球面状の外面を有すると共に膨張黒鉛からなる耐熱材のみを有した薄い外側層とを具備しており、外側層のその外部に露出した部分凸球面状の外面は平滑な面となっていることを特徴とする球帯状シール体。
  2. 外側層は、その厚さが0.05mm〜0.4mmである請求項1に記載の球帯状シール体。
  3. 円筒内面において球帯状基体の膨張黒鉛からなる耐熱材が露出している請求項1又は2に記載の球帯状シール体。
  4. 円筒内面において球帯状シール体の金網からなる補強材が露出している請求項1又は2に記載の球帯状シール体。
  5. 球帯状基体及び外層における耐熱材の密度が1.75g/cm以上2.00g/cm以下である請求項1から4のいずれか一項に記載の球帯状シール体。
  6. 円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた、とくに排気管継手に用いられる球帯状シールの製造方法であって、
    (a)膨張黒鉛からなる耐熱シート材を準備する工程と、
    (b)金属細線を織ったり、編んだりして得られる金網からなる補強材を準備し、該補強材を前記耐熱シート材に重ね合わせて重合体を形成したのち、この重合体を円筒状に捲回して筒状母材を形成する工程と、
    (c)金属細線を編んで円筒状金網を形成すると共に該円筒状金網内に別途用意した膨張黒鉛からなる耐熱シート材を挿入したのち、これをローラ間に通して内部に耐熱シート材を保持した帯状金網を作製する工程と、
    (d)内部に耐熱シート材を保持した帯状金網に、別途用意した膨張黒鉛からなる耐熱シート材を重ね合わせ、これらをローラ間に通して一方の面に該耐熱シート材を一体化させた外層形成部材を形成する工程と、
    (e)前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材の耐熱シート材を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製する工程と、
    (f)該予備円筒成形体を金型のコア外周面に挿入し、該コアを金型内に配置すると共に該金型内において予備円筒成形体をコア軸方向に圧縮成形する工程と、
    からなり、球帯状基体は、耐熱シート材からなる耐熱材と金網からなる補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成されており、外層は、膨張黒鉛からなる耐熱材及びこの耐熱材に混在一体化された金網からなる補強材を有した厚い内側層と、内側では内側層に一体化されている一方、外側では外部に露出した部分凸球面状の外面を有すると共に膨張黒鉛からなる耐熱材のみを有した薄い外側層とを具備しており、外側層のその外部に露出した部分凸球面状の外面は平滑な面となっていることを特徴とする球帯状シール体の製造方法。
  7. 薄い外側層は、その厚さが0.05mm〜0.4mmである請求項6に記載の球帯状シール体の製造方法。
  8. 重合体を耐熱シート材を内側にしてうず巻き状に捲回して筒状母材を形成する請求項6又は7に記載の球帯状シール体の製造方法。
  9. 重合体を金網からなる補強材を内側にしてうず巻き状に捲回して筒状母材を形成する請求項6又は7に記載の球帯状シール体の製造方法。
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