JP2006027941A - 窒化物薄膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 大規模な装置を必要とせず、様々な形状の基材上に大面積の窒化物薄膜を成膜できるゾル・ゲル法を用いた窒化物薄膜の製造方法を提供する。
【解決手段】 4族元素、遷移金属、13族元素からなる群より選ばれた元素の有機金属化合物からゾルゲル法によって得られるゲル溶液を基材にコーティングするステップと、前記コーティングされた基材を炭素蒸気が存在する還元雰囲気に配置して窒素気流中で焼成するステップとにより、4族元素、遷移金属、又は13族元素の窒化物薄膜を製造する。炭素るつぼ2を用い、基材のゲル溶液がコーティングされた面をるつぼに接触させて焼成したり、ゲル溶液がコーティングされた基材をるつぼの壁面で囲まれた空間に収容して焼成するのが有効である。
【選択図】 図4

Description

本発明は、4族元素、遷移金属、又は13族元素の窒化物薄膜を常圧で成膜する製造方法に関する。
窒化物は耐磨耗性、耐食性、高電気伝導性、熱伝導性をもつことから、各種工具の保護膜やプリント基板などの配線および放熱板などに利用されている。また、電子構造に着目して青色発行ダイオードなどへの応用も検討されており、これら技術を支えるためにも窒化物の対象物表面への成膜は重要である。
特に、NaCl型立法晶からなる窒化ジルコニウム(ZrN)は、化学的・熱的安定性に優れ、強い摩耗・酸化・腐食抵抗、高融点、高強度を持つため、耐熱材料、高強度材料などへの応用に注目されており、また、電気抵抗率が導電性窒化物の中でも小さいことから電子材料への応用も期待されている。
従来、これら窒化物薄膜の作製法には、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD法、PVD法などがあり、主としてスパッタリング法が利用されている(特許文献1乃至3参照)。
特開平6−219783号公報 特開平9−110472号公報 特開平11−251245号公報
しかしながら、上述した成膜法に用いる装置は高価であり、また、成形できる面積や形状が制限されている欠点がある。特に、スパッタリング法では、成膜面積が限られ、複雑な対象物に成膜ができないだけでなく、装置内を真空にして高密度なターゲットを必要とするため、ランイングコストがかさみ、装置購入などの初期投資も高くなる問題もある。そこで、ゾルゲル法を利用した薄膜製造方法が注目されている。
一般にゾルゲル法は大規模な装置を必要とせず、非常に簡便な方法で薄膜を作製でき、また、様々な形状や面積にも成膜ができる特徴がある。しかしながら、ゾルゲル法は一般的に酸化物膜を作製するのに有効とされており、ゾルゲル膜を還元窒化して窒化物薄膜を形成するために応用した例はない。
そこで、本発明においては、大規模な装置を必要とせず、様々な形状の基材上に大面積の窒化物薄膜を成膜できるゾル・ゲル法を用いた窒化物薄膜の製造方法を提供することを主たる課題としている。
本発明者らは、PVD,CVD等と異なり、回転遠心力を利用して膜厚を常圧で調整できるスピンコート法を利用して基材にゾルゲル膜をコーティングし、この基材にコートされたゲル膜を還元窒化し、窒化物薄膜を形成する研究を行っている。
また、還元剤として炭素るつぼを用い、この炭素るつぼを有効に利用することがゲル膜を還元窒化するために効果的であるとの知見を得ている。
本発明は、このような知見に基づき完成されたものであり、上記課題を達成するために、この発明に係る窒化物薄膜の製造方法は、4族元素、遷移金属、又は13族元素の窒化物薄膜を製造する方法であって、4族元素、遷移金属、13族元素からなる群より選ばれた元素の有機金属化合物からゾルゲル法によって得られるゲル溶液を基材にコーティングするステップと、前記コーティングされた基材を炭素蒸気が存在する還元雰囲気に配置して窒素気流中で焼成するステップとを有することを特徴としている(請求項1)。
ここで、炭素蒸気を含む還元雰囲気への配置は、基材のゲル溶液がコーティングされた面を炭素と接触させて設置したり(請求項2)、ゲル溶液がコーティングされた基材を炭素を主成分とする壁で囲まれた空間に収容することが有効である(請求項3)。例えば、炭素るつぼを利用する場合には、ゲル溶液がコーティングされた基材の面を炭素るつぼの内面に接触させたり、2つの炭素るつぼを組み合わせて形成された閉空間に基材を収容するとよい。
また、焼成の温度は、約1400℃とすることが不純物が殆どない窒化ジルコニウム膜を形成する上で好ましく(請求項4)、その際の焼成時間は、約2時間とすることが好ましい(請求項5)。
さらに、ゾルゲル膜をコーティングする基材は、酸化アルミニウム焼結板または酸化アルミニウム単結晶基板であることを好ましく(請求項6)、ゾルゲル膜の厚さを調整するために、基材へのコーティングは、スピンコート法によりゲル溶液を基材に塗布することが好ましい(請求項7)。
以上述べたように、この発明によれば、ゾルゲル法を利用すると共に還元雰囲気を適切に形成することで、窒化物薄膜を成膜することが可能となるので、常圧で成膜することが可能となり、また、簡単な装置により、任意の形状、任意の面積の基材に窒化物薄膜を形成することが可能となり、窒化物の製造コストを大幅に削減することが可能となる。さらに、上述した製法によれば、4族元素、遷移金属、13族元素のさまざまな窒化物薄膜を形成でき、また、高密度焼結体を作成する工程も不要となる。
以下、この発明の最良の実施形態を図面を参照しながら説明する。以下においては、4族元素であるZrの窒化物薄膜を製造する方法について説明する。
2.原料および実験装置
2−1 原料
原料としては、以下のものを用いた。
(1) 出発原料:ジルコニウム(IV)プロポキシド
分子式:Zr(OCH2CH2CH3)4
分子量:327.58
沸点:208 ℃/0.1mmHg
密度:1.044 g/cm3
製造業者:Aldrich Chemical Company,Inc
販売業者:和光純薬工業株式会社
(2) 溶媒:1‐プロパノール
分子式:CH3CH2CH2OH
分子量:60.10
純度:99.5%
密度:0.801〜0.806 g/cm3 (20℃)
製造販売業者:和光純薬工業株式会社
(3) 安定化剤:アセチルアセトン
分子式:CH3COCH2COCH3
分子量:100.12
純度:99.0%
密度:0.971〜0.976 g/cm3 (20℃)
製造販売業者:和光純薬工業株式会社
(4) 触媒:硝酸
分子式:HNO3
分子量:63.1
純度:61.0%
製造販売業者:和光純薬工業株式会社
2−2 実験装置
実験装置として以下のものを使用した。
(1) 粉末X線回折装置
理学電気社製Multi Flexを使用した。
X線源としてグラファイトモノクロメーターにより単色化したCuKα線を用いた。測定条件は次の通りである。
X線源:CuKα (λ=1.54178Å)
管電圧:40kV
管電流:20mA
スキャンスピード:4.00°/min
スキャンステップ:0.020°
走査軸:2θ/θ
走査範囲:10.000〜80.000°
(2) スピンコーター
ミカサ株式会社製1H−DXを使用した。
本研究では基板に溶液を塗布し成膜する際に用いた。
(3) 走査型電子顕微鏡(SEM)
日本電子株式会社製JEOL JSM−5200を使用した。なお、AuコートにはJEOL JFC−1200を使用した。
本研究では膜表面及び破断面の微細構造を観察するため用いた。
加速電圧:20kV
(4) 粘度測定装置
山一電機株式会社製VISCOMATE MODEL,VM,DD−Tを使用した。
本研究ではゾル溶液の粘度測定に用いた。
(5) シリコニット電気炉
シリコニット工業株式会社製のものを利用した。
SiC質発熱体:6本
昇温速度:5℃/min
(6) 赤外分光法(IR)
Jasco日本分光株式会社製FT/IR−5300
測定領域:400〜4000cm-1
スキャンスピード:4cm-1/min
積算回数:16
KRSスペーサー:0.05mm
(7) ラマン分光法(ラマンスペクトル)
日本分光株式会社製NRS−1000を測定装置として用いた。
レーザー光源として昭和オプトロニクス株式会社製のLD励起
グリーンレーザー(532nm)を用いて測定した。
積算回数:3回
露光時間:30sec
分光器:シングル
ビンニング(オフセット):141
ビンニング(幅):84
ビニングブロック数:1
スタート波数:100cm-1
エンド波数:1100cm-1
3.実験操作
3−1 使用した基板
以下の各基板を使用して実験を試みた。
MgO基板 (100) 10×10×0.5 mm
中住結晶ラボラトリー製
YSZ基板 (111) 10×10×0.5 mm
中住結晶ラボラトリー製
SrTiO3基板 (100) 10×10×0.5 mm
中住結晶ラボラトリー製
Al2O3基板 (R面:1012) 10×10×0.5 mm
中住結晶ラボラトリー製
Al2O3基板 (A面:1102) 10×10×0.5 mm
中住結晶ラボラトリー製
3−2 ゲル溶液の調製及び粘度測定
出発原料であるジルコニウム(IV)プロポキシド (以下Zr‐プロポキシド) に対し、図1に示した実験操作のフローチャートの順に従い、1‐プロパノール、アセチルアセトン、硝酸、水をマグネチックスターラーで撹拌しながら目的の組成になるように加え、加水分解及び重縮合反応によってゲル溶液を室温で調製した。撹拌後、溶液は冷暗所に保存した。調製した溶液は粘度測定を行った後、次の成膜工程へと移った。
ここで、ゲル溶液の組成はモル比で、Zr‐プロポキシド:アセチルアセトン:水:1‐プロパノール=1:1:5:100であり、Zr‐プロポキシド1gに対し0.1mlの硝酸を加えた。
3−3 成膜合成方法
超音波洗浄器を用いてメタノールで5min洗浄した各種基板およびアルミナ(Al2O3)焼結板上に、調製した溶液を塗布し、3000rpm‐20secスピンコートした。その後、450℃‐5minの乾燥を行い、膜厚を調整するためにこの操作を数回繰り返した後、基板を炭素るつぼ内に置き、N2気流中(300ml/min)で1200〜1400℃、0〜7hの焼成を行った。この一連の操作の中で、炭素るつぼの使用方法、基板の違い、焼成温度の変化、焼成時間の変化がZrN薄膜の合成にどのような影響を及ぼすかについて調べた。なお、焼成温度、焼成時間を変えて行った実験では単結晶基板ではなく、アルミナ焼結板を基板として用いた。
3−4 評価方法
様々な条件を用いて合成したZrN薄膜は、X線回折法(XRD)により相の同定を行い、走査型電子顕微鏡(SEM)によって薄膜表面の観察を行った。また、ラマン分光法による結晶の対称性の分析、赤外分光法(IR)によるZrN薄膜の反射率の測定も行った。図2に純粋なZrNのラマンスペクトルを示す。
4.焼成方法
4−1 成膜
本研究で行っているスピンコート法により、3000rpm‐20secのスピンコート,450℃‐5minの乾燥という最適な条件で作製した結果、基板上にきれいに薄膜形成することができた。また、肉眼では見えない程度のひび割れが若干あるが、平坦かつ緻密なものに仕上げることができた。
4−2 窒素雰囲気下での加熱
溶液を塗布した基板を炉で焼成する際、薄膜をより窒化しやすくするために炭素でできたるつぼを使用した。研究当初、図3(a),(b)に示されるように、ゲル溶液をスピンコートした基板1を、ゲル溶液を塗布した面を上にして炭素るつぼ2内に置いたり炭素るつぼ2を土台として上に載せた状態でN2気流中で焼成していたが、焼成条件をいくら変えてもZrO2になってしまい、全く窒化することができなかった。
薄膜の窒化には還元が重要な要因の一つであるため、炭素などの還元剤となるようなものを添加したゲル溶液の調製を試みた。そして、調製したゲル溶液を基板上にスピンコートした後、N2気流中で焼成するという操作を行った。この還元剤には、常温でゲル溶液に溶解することが可能なもので、なおかつ炭素の代わりとなるものでなければならないことから、樹脂を用いることにした。使用したものは、フェノール樹脂(スミライトレジンPR‐53195 住友ベークライト製)である。添加する樹脂の量は、モル比で、Zr‐プロポキシド:フェノール樹脂=2:12に相当する量を秤量し、ゲル溶液に加えた。
この溶液を用いて成膜を行ったところ、樹脂による還元作用が弱かったためか、薄膜は窒化しなかった。また、塗布回数の違いによっては、膜がぼろぼろになってしまうことがあった。
4−3 炭素るつぼの使用方法
次に、基板の置き方を変えて、図4に示されるように、ゲル溶液を塗布した面を裏返して基板1を炭素るつぼ2に置き(溶液を塗布した基板上の面と炭素るつぼとが接触するように置き)、焼成してみたところ、薄膜は若干むらがあるものの金色を呈したZrNになっていることが分かった。
また、図5のように炭素るつぼ2の中に塗布した基板1を置き、その上に小さな炭素るつぼ3をかぶせ、基板1を覆うようにふたをした状態で焼成を行った。その結果、炭素るつぼ内は強い還元雰囲気となり薄膜の窒化が確認された。
このことから、炭素るつぼは還元雰囲気を作るのに重要な役割を果たしており、炭素るつぼの使用方法を工夫することにより、よりきれいなZrN薄膜を作製できることが確認された。このような結果から、るつぼから放出されるわずかな炭素蒸気が還元窒化反応に大きく影響していると考えられる。
このように、炭素るつぼの使用が薄膜の窒化に良い作用をもたらすことから、炭素るつぼ内ではどのくらいの還元雰囲気になっているかを調べるため酸素分圧の測定を行った。測定に用いた装置の概要図を図6に示すようなものであり、炭素るつぼ内を図6−A,Bのような状態にして行った。実験で得られた測定値(電圧)と以下の式(数1)から酸素分圧を算出した。
ここで、シリコニット電気炉のアルミナ管内部の酸素分圧はPO2(I)=1.0796×10-5atmである。上記の式より炭素るつぼ内の酸素分圧を算出した結果、PO2(II)=6.9145×10-10 atmとなりアルミナ管内部でも、炭素るつぼの中だけが特に低酸素な状態になっていることが分かった。
以上の結果から、炭素るつぼを使用した方が還元雰囲気にすることができるということが判明した。
5.基板の違いによる影響
各基板のXRDパターンを図7に示す。また、各単結晶基板を用いて合成した薄膜のXRDパターンを図8に示す。基板を様々なものに変えてZrN薄膜の合成を試みた。その際、溶液の塗布回数は10回、焼成温度は1400℃、保持時間は1hに統一し実験を行った。その結果、MgO基板では高温でZrと基板のMgが反応してしまい、未知の物質が生成してしまった。YSZ基板では薄膜は窒化されずZrO2になってしまった。これはYSZ基板に含まれているイットリウムがゲル膜の方へ拡散し、ZrNの生成率を減少させたということが考えられる。SrTiO3基板を用いた場合では、ZrNを生成することができたが、XRDパターンに見られる不明なピークからも分かるように、薄膜と基板が反応してしまった。薄膜表面の色は金色であったが、くすんでいて光沢がほとんど無かった。
そこで、アルミナ板上へのZrN薄膜の作製が可能であったことから、A面とR面の2種類のAl2O3単結晶基板を用意し、薄膜形成を試みたところ、どちらの基板とも綺麗な光沢のある金色を呈したZrN薄膜が得られた。また、この2種の基板に作製したZrN薄膜のXRDパターン(図8)を見ると、A面に作製したZrN薄膜の(111)と(222)のピークがR面に作製したものよりも鋭く強く現れているのがわかる。文献のXRDパターンと近似しているのは、R面の基板に作製したZrNの方であった。溶液の塗布回数は統一しているため、基板上のZrNの量はほぼ同じである。それにもかかわらず、(111)と(222)についてのみピーク強度が強く出ている。薄膜と基板が反応したときに現れた不明なピークも見られないので、MgO基板やSrTiO3基板のときのように薄膜と基板が反応してしまったということも考えられない。薄膜と基板が反応したのならば、同じAl2O3のR面の基板の方にも何らかの影響があるはずである。
R面のAl2O3単結晶基板上のZrN薄膜のXRDパターンと比較して、A面のAl2O3単結晶基板上のZrN薄膜で見られる(111)と(222)の強いピークはZrN薄膜とA面の基板とが配向したということによるものだと考えられる。
各基板に作製した薄膜のラマンスペクトルを図9に示す。この結果によると、MgO基板に作製した薄膜以外はSrTiO3基板に作製した薄膜も含め、同じような結晶の対称性を示していることが分かった。
6.合成条件による影響
6−1 焼成温度
焼成温度を変えて成膜したXRDパターンを図10に、ラマンスペクトルを図11に示す。1200℃の焼成では、薄膜は窒化されず表面の色は無色であり、XRDパターンではZrO2とZrNOのピークが現れていた。1300、1400℃の焼成ではZrNのピークが得られ、各薄膜とも金色を呈していたが、1300℃の焼成ではZrNOなどの若干の不純物ピークも現れており、単一相になってはいなかった。また、1400℃で焼成した薄膜の方が光沢のあるものになっていた。これは、還元性の向上によるものである。
ラマンスペクトルにおいては、1300℃と1400℃で焼成した薄膜と間に、結晶の対称性についての違いはあまり見られなかったが、文献のものと比較すると200 cm-1付近に現れているピークが若干低くなってしまっている。結晶性や純度などについて劣っている可能性が考えられる。1200℃で焼成を行ったものでは、やはりZrNとは異なった結果となっていた。
この焼成温度を変えての成膜を行なった結果、1300℃以上の焼成により薄膜を窒化することが可能で、1400℃の焼成温度がZrN薄膜の作製においての最適な合成条件の一つであるということが判明した。
6−2 焼成時間
焼成温度を1400℃として保持時間を0、1、2、3、5、7hと変えて焼成を行った。そのXRDパターンを図12に、ラマンスペクトルを図13にそれぞれ示す。0hでは薄膜は無色のままで、XRDパターンにZrO2、ZrNOのピークが現れていることから、窒化が不充分であるとわかった。しかし、1h以上の焼成では全て金色を呈しており、XRDよりZrNが得られていることが判明した。また、1h以上では、焼成時間を変えても得られたZrN薄膜のXRDパターン、ラマンスペクトル共に変化がないことがわかった。また、SEM観察から焼成時間に関係なく、どの膜にも細かなひびが入っているのが見られた。
焼成時間と格子定数の関係を図14に示す。得られたZrNの格子定数は、2h保持したものがa0=4.5775Åと最も文献値に近い値を示した。他のものは、文献値と比べ、±0.0054Å程度のずれが生じていた。
以上のことから、焼成時間は2hが焼成に最も良い条件であることが分かった。
7.反射率
赤外分光法(IR)によってAl2O3単結晶基板(A面,R面)に作製したZrN薄膜の反射率を測定した。図15にその結果を示す。測定した薄膜は塗布回数10回で1300、1400℃で焼成したものである。以下の表1に作製条件の違いによる薄膜の4000cm-1で測定した反射率を示す。
どの薄膜も金と同程度の高い反射率を示しており、特にA面のAl2O3基板上に1400℃で焼成したものが最も反射率が高くなった。SEMを利用して表面を見ると、平坦で緻密な薄膜ができていることが確認でき、XRD、ラマンスペクトルよりOの混入の少ない膜であることがわかった。これにより高い反射率を示す窒化物薄膜になったものと考えられる。なお、薄膜の厚さは塗布回数によっても異なるが、およそ1μm前後であると思われる。
8.総括
以上のことから、次の結果が得られた。
(1) ゾル・ゲル法によってのZrN薄膜の合成に成功した。
(2) 炭素るつぼ内に薄膜を入れ、封じ、還元雰囲気下にすることがZrN薄膜の作製に有効であることが判明した。
(3) 焼成温度は1400℃が最も良かった。
(4) 焼成時間では、2h保持したものが最も文献値に近い格子定数が得られた。
(5) Al2O3焼結板、Al2O3単結晶基板(A面,R面)にのみZrN薄膜を合成することができた。
以上の結果から、ゾル・ゲル法によるZrN薄膜の合成において最適な合成条件は、アルミナ焼結板、A面,R面のAl2O3単結晶基板上にゲル溶液を塗布し、炭素るつぼ内で窒素気流中(300ml/min)1400℃‐2hの焼成を行うことだと判明した。また、合成したZrN薄膜は反射率が約100%と非常に高く、光沢のある金色を呈した。
尚、以上においては、窒化物薄膜としてZrNの例を挙げたが、Tiなどの他の4族元素の窒化物薄膜を製造するためにも、また、遷移金属や、Al,Gaなどの13族元素の窒化物薄膜を製造するためにも、これら元素の有機金属化合物からゾルゲル法によって得られるゲル溶液を用いて薄膜を形成し、上述のように炭素るつぼを利用して焼成するとよい。
図1は、本発明に係る窒化物薄膜の成膜工程を示すフロチャートである。 図2は、純粋なZrNのラマンスペクトルである。 図3は、当初の炭素るつぼの使用方法を示す図である。 図4は、基板を裏返して炭素るつぼに置いた状態(ゲル溶液がコーティングされた面を炭素と接触させて設置した状態)を示す図である。 図5は、2つの炭素るつぼで囲まれた空間に基板を置いた状態(ゲル溶液がコーティングされた基板を炭素を主成分とする壁で囲まれた空間に収容した状態)を示す図である。 図6は、酸素分圧の測定装置の概略図である。 図7は、各基板のXRDポターンを示す図である。 図8は、異なる基板上に作製した薄膜のXRDパターンを示す図である。 図9は、基板の違いによる薄膜のラマンスペクトルを示す図である。 図10は、焼成温度の違いによる薄膜のXRDパターンを示す図である。 図11は、焼成温度の違いによる薄膜のラマンスペクトルを示す図である。 図12は、焼成時間の違いによるZrN薄膜のXRDパターンを示す図である。 図13は、焼成時間の違いによるZrN薄膜のラマンスペクトルを示す図である。 図14は、格子定数と焼成時間との関係を示す図である。 図15は、ZrN薄膜の反射率を示す図である。

Claims (7)

  1. 4族元素、遷移金属、又は13族元素の窒化物薄膜を製造する方法において、4族元素、遷移金属、13族元素からなる群より選ばれた元素の有機金属化合物からゾルゲル法によって得られるゲル溶液を基材にコーティングするステップと、前記コーティングされた基材を炭素蒸気が存在する還元雰囲気に配置して窒素気流中で焼成するステップとを含むことを特徴とするゾルゲル法を用いた窒化物薄膜の製造方法。
  2. 前記炭素蒸気が存在する還元雰囲気への配置は、前記基材の前記ゲル溶液がコーティングされた面を炭素と接触させて設置するものであることを特徴とする請求項1記載のゾルゲル法を用いた窒化物薄膜の製造方法。
  3. 前記炭素蒸気が存在する還元雰囲気への配置は、前記ゲル溶液がコーティングされた基材を炭素を主成分とする壁で囲まれた空間に収容するものであることを特徴とする請求項1記載のゾルゲル法を用いた窒化物薄膜の製造方法。
  4. 前記焼成の温度は、約1400℃であることを特徴とする請求項1記載のゾルゲル法を用いた窒化物薄膜の製造方法。
  5. 前記焼成の時間は、約2時間であることを特徴とする請求項1記載のゾルゲル法を用いた窒化物薄膜の製造方法。
  6. 前記基材は、酸化アルミニウム焼結板または酸化アルミニウム単結晶基板であることを特徴とする請求項1記載のゾルゲル法を用いた窒化物薄膜の製造方法。
  7. 前記基材にコーティングするステップは、前記基材にスピンコート法により前記ゲル溶液を塗布するものであることを特徴とする請求項1記載のゾルゲル法を用いた窒化物薄膜の製造方法。
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