JP2006024772A - コモンモードノイズフィルタ - Google Patents

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Abstract

【課題】 対称性を確保し且つ均一な特性インピーダンスを有した同一形状の第1及び第2コイルを備えるコモンモードノイズフィルタを提供する。
【解決手段】 略同一形状の第1及び第2コイル1,2と、これらのコイル1,2を内包した絶縁層3と、絶縁層3を覆う磁性層4−1,4−2と、外部電極5−1,〜,5−4とを備えている。コイル2は、中心がコイル1から平面方向に僅かに偏心している。具体的には、第1及び第2コイル本体10,20の線分対10−1,20−1,10−2,20−2,〜,10−13,20−13を絶縁層3の第1及び第2層3−1,3−2に交互に配し、スルーホール31a,31a〜37a,37aで直列に接続した。そして、第1及び第2内側引き出し部12,22を絶縁層3の第3層3−3に並設して、コイル本体10,20にスルーホール37b,37bを介して接続した。
【選択図】図2

Description

この発明は、USB(Universal Serial Bus)規格やDVI(Digital Visual Interface)規格などの高速差動伝送路に生じるノイズを除去するためのコモンモードノイズフィルタに関するものである。
コモンモードノイズフィルタは、1対のコイルを有し、これらのコイルがコモンモードノイズに対して大きなインピーダンスを発生するインダクタとして機能することで、コモンモードノイズを阻止する素子である。
最近では、巻線タイプコモンモードノイズフィルタの他に、磁性体基板間に絶縁層と内部電極パターンとを積層して小型化及び薄型化を図ったフィルムタイプのコモンモードノイズフィルタが種々提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
図15は、特許文献1に開示されたコモンモードノイズフィルタを示す分解斜視図であり、図16は、特許文献1に開示されたコモンモードノイズフィルタを分解して示す側面図である。
これらの図に示すように、このコモンモードノイズフィルタでは、第1及び第2のコイル101、111が第1及び第2の基体121、122の一面上にスパイラル状に形成され、外部電極への引き出し部102,112がスルーホール導体103,113を介して第1及び第2の基体121、122の他面側に導かれている。また、第1のコイル101と第2のコイル111とは、第1の基体121及び第2の基体122の互いに対向する面側に配置されている。そして、非磁性絶縁層123が第1の基体121と第2の基体122との間に介設されている。なお、符号124,125は、保護層である。
一方、図17は、特許文献2に開示されたコモンモードノイズフィルタを示す斜視図であり、図18は、特許文献2に開示されたコモンモードノイズフィルタを分解して示す側面図である。
このコモンモードノイズフィルタでは、コイルパターン202とその引き出し部203とを有するコイル201を絶縁層220を挟んで第1の磁性体基板221の上側に積層し、コイルパターン212とその引き出し部213とを有するコイル211を絶縁層220を挟んでコイル201の上側に積層する。そして、各絶縁層220に、上面側から第1の磁性体基板221にまで到達する少なくとも1つの凹部220a,220bを形成し、上方から覆う磁性層223の一部を、凹部220a,220bに入り込ませると共に、第2の(上側の)磁性体基板222を非磁性の接着層224で磁性層223に接合することで、コモンモードノイズフィルタを構成している。
特開2001−160510号公報 特開2003−133135号公報
しかしながら、上記従来のコモンモードノイズフィルタでは、次のような問題がある。
まず、特許文献1に開示されたコモンモードノイズフィルタでは、図15及び図16に示すように、第1及び第2のコイル101、111を非磁性絶縁層123を介して対向させ、これら第1及び第2のコイル101、111の距離がL1に保持される。一方、外部電極への引き出し部102は、第1のコイル101の中心から下面側に引き出され、引き出し部112は第2のコイル111の中心から上面側に引き出されており、引き出し部102,112の距離L2は第1及び第2のコイル101、111の距離がL1と異なる。すなわち、第1及び第2のコイル101、111が非磁性絶縁層123を介して対称になっており、引き出し部102,112も非磁性絶縁層123を介して対称になっているが、第1及び第2のコイル101、111の線間距離L1と引き出し部102,112の線間距離L2とが異なるため、引き出し部102,112の特性インピーダンスと第1及び第2のコイル101,111の特性インピーダンスとが異なってしまう。この結果、フィルタ内で多重反射が起きて、フィルタの透過特性が劣化するおそれがある。また、このようにフィルタ内で特性インピーダンスが均一でないので、フィルタのインピーダンスを外部の電子回路のインピーダンスに整合させることが困難である。
次に、特許文献2に開示されたコモンモードノイズフィルタでは、図18に示すように、コイル201,211のコイルパターン202,212が共に絶縁層220の下側に形成され、コイル201の中心からの引き出し部203とコイル211の中心からの引き出し部213とが共に絶縁層220の上側に形成されている。このため、コイルパターン202,212間の線間距離L3と引き出し部203,213との線間距離L4が等しい。
しかし、コイルパターン202,212が中間の絶縁層220′を中心として対称となっておらず、また、引き出し部203,213も絶縁層220′を中心として対称となっていない。このため、引き出し部203とコイルパターン212との距離と、引き出し部213とコイルパターン202との距離が異なり、引き出し部203とコイルパターン212との間の電磁結合力と、引き出し部213とコイルパターン202との間の電磁結合力とが異なってしまう。この結果、フィルタ全体の特性インピーダンスにアンバランスが生じ、コモンモードノイズ発生の原因となる可能性がある。
また、引き出し部203,213の特性インピーダンスがコイルパターン202,212の特性インピーダンスと異なるので、フィルタ内で多重反射が起き、透過特性が悪くなる可能性がある。
また、上記のようにフィルタ全体の特性インピーダンスが均一でないので、外部の電子回路のインピーダンスと整合させることが困難になる。
かといって、コイルパターン202の線間のスペースにコイルパターン212を配置させて、1つの絶縁層220にコイル201,211を形成すると、これらコイル201,211のコイル長さが異なってしまう。
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、対称性を確保し且つ均一な特性インピーダンスを有した同一形状の第1及び第2コイルを備えるコモンモードノイズフィルタを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、略平面型の第1コイルと、この第1コイルと略同一形状をなしこの第1コイルと近接して並設された第2コイルと、これら第1及び第2コイルを内包した非磁性の絶縁層と、この絶縁層の外面のうち少なくとも第1及び第2コイルの面と向き合う外面を覆う磁性層とを備えるコモンモードノイズフィルタであって、第1コイルは、スパイラル状をなす第1コイル本体と、この第1コイル本体の外側端部に接続された第1外側引き出し部と、第1コイル本体の内側端部に接続された第1内側引き出し部とを有し、第2コイルは、第1コイル本体と同一のスパイラル状をなし且つ平面視においてそのn巻目(n=正整数)の線分の一部が第1コイル本体のn巻目の線分とn−1巻目の線分との間に位置するように偏心された第2コイル本体と、この第2コイル本体の外側端部に接続された第2外側引き出し部と、第2コイル本体の内側端部に接続された第2内側引き出し部とを有し、第1及び第2コイル本体は、平面視において互いに交差しないように並ぶ同一形状の2本の線分でなる線分対がスパイラル状に複数対列設され、線分対同士が同一平面上で互いに交差しないように、複数対の線分対が異なる第1及び第2の平面上に交互に配されると共に、第1の平面上の線分対とこの線分対と隣り合う第2の平面上の線分対とが1対のスルーホールを介して直列に接続されて、構成されており、第1及び第2コイルの第1及び第2外側引き出し部は、第1及び第2の平面のいずれかの平面上に並設されて、第1及び第2コイル本体の外側端部と接続されており、第1及び第2コイルの第1及び第2内側引き出し部は、第1及び第2の平面と異なる第3の平面上に並設され、1対のスルーホールを介して第1及び第2コイル本体の内側端部と接続されている構成とした。
かかる構成により、互いに逆向きの差動信号が、絶縁層内部に近接して並設された第1及び第2コイル1が流れると、これらの差動信号によって生じた磁束が絶縁層内に集中し、差動信号に対する磁性損失が低下する。また、同方向のコモンモードノイズが、第1及び第2コイルに流れると、これらのノイズによって生じた磁束が磁性層に拡散し、ノイズに対する磁性損失が増加する。ところで、略同一形状の第1コイルと第2コイルとが近接して並設された構成になっている。したがって、第1コイルと第2コイルとの対称性が保持される。しかも、第1及び第2コイルの第1及び第2内側引き出し部や第1及び第2外側引き出し部も、それぞれ同一の平面上に並設されているので、第1及び第2コイルの第1及び第2内側引き出し部の特性インピーダンスと第1及び第2外側引き出し部の特性インピーダンスと第1及び第2コイル本体の特性インピーダンスとに差が生ぜず、第1及び第2コイル全体の特性インピーダンスがほぼ均一になる。このため、第1及び第2コイル内で差動信号の多重反射がほとんど発生しない。さらに、第2コイル本体が、平面視においてそのn巻目の線分の一部が第1コイル本体のn巻目の線分とn−1巻目の線分との間に位置するように偏心されており、偏心量は小さい。したがって、第1コイルと第2コイルとの間の電磁結合性を劣化させることはない。
第1及び第2コイルの形状の一例として、請求項2の発明は、請求項1に記載のコモンモードノイズフィルタにおいて、線分対を、互いに平行な2本の直状又は折曲状の線分で構成することにより、第1及び第2コイル本体を多角形のスパイラル状に形成した構成としてある。
特に、請求項3の発明は、請求項2に記載のコモンモードノイズフィルタにおいて、線分対を、互いに平行な2本の直状の線分で構成することにより、第1及び第2コイル本体を矩形のスパイラル状に形成した構成としてある。
また、請求項4の発明は、請求項1に記載のコモンモードノイズフィルタにおいて、線分対を、2本の弧状の線分で構成することにより、第1及び第2コイル本体を円形のスパイラル状に形成した構成としてある。
また、第1及び第2コイルの第1及び第2内側引き出し部の配設位置の好例として、請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のコモンモードノイズフィルタにおいて、第1及び第2コイルの第1及び第2内側引き出し部が並設された第3の平面は、第1及び第2の平面の外側であって且つ両内側端部を有する線分対が配されている平面に近接した平面である構成とした。
ところで、第1及び第2コイルの第1及び第2外側引き出し部の配設位置は、第1及び第2の平面のいずれかであればよいが、請求項6の発明では、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のコモンモードノイズフィルタにおいて、第1及び第2コイルの第1及び第2外側引き出し部は、両外側端部を有する線分対の当該両外側端部と連続した状態で並設されている構成とした。
また、請求項7の発明では、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のコモンモードノイズフィルタにおいて、第1及び第2コイルの第1及び第2外側引き出し部は、第1及び第2の平面のうち両外側端部を有する線分対が配されていない平面上に並設され、1対のスルーホールを介して線分対の両外側端部に接続されている構成とした。
以上詳しく説明したように、この発明のコモンモードノイズフィルタによれば、略同一形状の第1コイルと第2コイルとを近接して並設して、第1コイルと第2コイルとの対称性を保持しているので、第1及び第2コイルによるコモンモードノイズの発生を抑えることができる。しかも、第1及び第2コイル本体と第1及び第2外側引き出し部と第1及び第2内側引き出し部とで構成される第1及び第2コイル全体の特性インピーダンスがほぼ均一になるので、第1及び第2コイル内で差動信号の多重反射がほとんど発生せず、この結果、差動信号をほとんど損失させることなく透過させることができる。さらに、第1及び第2コイル全体の特性インピーダンスがほぼ均一になるので、これらのコイルの偏心量を調整するだけで、外部の電子回路のインピーダンスに簡単に整合させることができる。また、この偏心量を小さく設定して、第1コイルと第2コイルとの間の電磁結合性を保持するようにしたので、所望のフィルタ特性を得ることができる。ところで、平面型の第1及び第2コイルを並設するには、上記したように、一方のコイルを他方のコイルの線間のスペースに形成する必要があり、長さが他方のコイルよりも短くなってしまう。しかし、この発明では、平面視において互いに交差しないように並ぶ同一形状の線分対をスパイラル状に複数対列設し、線分対同士が同一平面上で互いに交差しないように、複数対の線分対を異なる第1及び第2の平面上に交互に配すると共に、第1の平面上の線分対とこの線分対と隣り合う第2の平面上の線分対とを1対のスルーホールを介して直列に接続することで、同長の第1及び第2コイル本体を構成するので、長さに差がない同長の第1及び第2コイルを形成することができる。
以下、この発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の第1実施例に係るコモンモードノイズフィルタの外観図であり、図2は、このコモンモードノイズフィルタを上方より透視して第1及び第2コイルの構造を示す平面図である。なお、理解を容易にするため、図1において、第1コイルを太破線で示し、図2において、第1コイルを黒塗りで示した。
図1に示すように、この実施例のコモンモードノイズフィルタは、略平面型の第1コイル1と、この第1コイル1と略同一形状をなし第1コイル1と近接して並設された第2コイル2と、これら第1及び第2コイル1,2を内包した非磁性の絶縁層3と、絶縁層3を覆う磁性層4−1,4−2と、4本の外部電極5−1,〜,5−4とを備えている。
図2に示すように、第1コイル1は、矩形のスパイラル状をなす第1コイル本体10と、この第1コイル本体10の外側端部10aから連続して引き出された第1外側引き出し部11と、第1コイル本体10の内側端部10bに接続された第1内側引き出し部12とでなる。
一方、第2コイル2は、第1コイル本体10と同一の矩形スパイラル状をなす第2コイル本体20と、この第2コイル本体20の外側端部20aから連続して引き出された第2外側引き出し部21と、第2コイル本体20の内側端部20bに接続された第2内側引き出し部22とでなり、その中心が第1コイル1から平面方向に僅かに偏心している。
第2コイル2の第1コイル1に対する偏心量は、平面視において第2コイル本体20のn巻目(n=正整数)の線分の一部が第1コイル本体10のn巻目の線分とn−1巻目の線分との間に位置するように設定されている。例えば、第2コイル本体20の2巻目の線分20−7,20−8は、第1コイル本体10の2巻目の線分10−7,10−8と1巻目の線分10−3,10−4との間に位置するように設定されている。
また、図1に示すように、絶縁層3は、第1及び第2外側引き出し部11,21と第1及び第2内側引き出し部12,22の先端のみを露出させた状態で、第1及び第2コイル1,2全体を覆っている。
磁性層4−1,4−2は、絶縁層3の外面のうち少なくとも第1及び第2コイル1,2の面と向き合う外面、即ち絶縁層3の上面と下面とを覆っている。
外部電極5−1,〜,5−4は、内部の第1及び第2コイル1,2を外部の電子回路などに電気的に接続させる部材である。具体的には、外部電極5−1,5−2が第1コイル1の第1外側引き出し部11,第1内側引き出し部12の露出端にそれぞれ接続され、外部電極5−3,5−4が第2コイル1の第2外側引き出し部21,第2内側引き出し部22の露出端にそれぞれ接続されている。
上記のように、この実施例のコモンモードノイズフィルタは、第2コイル2を第1コイル1に対して平面方向に僅かに偏心させた構造になっているが、コイル同士の接触を避けるために、新規な工夫がなされている。
以下、第1及び第2コイル1,2の構造について詳細に説明する。
図3は、この実施例のコモンモードノイズフィルタの分解斜視図であり、図4は、絶縁層3の第1層の平面図であり、図5は、絶縁層3の第2層の平面図であり、図6は、絶縁層3の第3層の平面図である。
図2においては、 第1コイル1の第1コイル本体10は、直状の線分10−1〜10−13を連続させ、第2コイル2の第2コイル本体20も直状の線分20−1〜20−13を連続させたように見えるが、実際は、図3に示すように、互いに平行な同一形状の線分対10−n,20−n(n=1〜13)がスパイラル状に13対列設され、
絶縁層3の第1層3−1とその上の第2層3−2とに交互に配設されている。
具体的には、図5に示すように、外側から数えて奇数番目の線分対10−1,20−1、10−3,20−3〜10−13,20−13が第2の平面である第2層3−2の表面に配され、図4に示すように、偶数番目の線分対10−2,20−2、10−4,20−4〜10−12,20−12が第1の平面である第1層3−1の表面に配されている。そして、第1層3−1上の線分対とこの線分対と隣り合う第2層3−2線分対とが、第2層3−2に設けられた1対のスルーホールを介して直列に接続されている。すなわち、図5に示すように、縦向きの線分対10−1,20−1の上端部の下側にスルーホール31a,31aが設けられ、図4に示す横向きの線分対10−2,20−2の左側端部がこのスルーホール31a,31aを介して線分対10−1,20−1の上端部に接続されている。また、線分対10−2,20−2の右側端部は、線分対10−3,20−3の上端部の下側に設けられたスルーホール32a,32aを介して接続されている。以後、同様に、線分対10−3,20−3と線分対10−4,20−4と線分対10−5,20−5とが、スルーホール32b,32b及びスルーホール33a,33aを介して直列に接続され、線分対10−5,20−5、10−6,20−6〜10−13,20−13が、スルーホール34b,34b、35a,35a、35b,35b、36a,36a、36b,36b、37a,37aを介して順次巻回方向に直列に接続されている。
そして、図5に示すように、第1及び第2外側引き出し部11,21が、第2層3−2上の線分対10−1,20−1の両外側端部10a,20aから左外側に延出するように並設されている。
一方、第1及び第2内側引き出し部12,22は、図6に示すように、第1及び第2層3−1,3−2の表面とは異なる第3の平面である第3層3−3の表面上に並設されている。そして、第1及び第2内側引き出し部12,22は、その基端部の下側に設けられたスルーホール37b,37bを介して、第1及び第2コイル本体10,20の内側端部である線分対10−13,20−13の上端部10b,20bに接続されている。
図7は、第1コイル1を透視して示す平面図であり、図8は、図7の矢視A−A断面図であり、図9は、第2コイル2を透視して示す平面図である。
上記のように、第1及び第2層3−1,3−2において、13対の線分対10−1,20−1〜10−13,20−13をスルーホール31a,31a〜37a,37aを介してスパイラル状に接続すると共に、第3層3−3において、第1及び第2内側引き出し部12,22をスルーホール37b,37bを介して両内側端部10b,20bに接続し、第4層3−4を第3層3−3上に被せることで、第1及び第2コイル1,2を絶縁層3内に形成している。
すなわち、図7及び図8に示すように、外部電極5−1に接続された第1外側引き出し部11と連続する線分10−1と、線分10−2〜10−13と、外部電極5−2に接続された第1内側引き出し部12とが、スルーホール31a〜37bを介して接続されて、第1コイル1が矩形のスパイラル状に形成されている。そして、図9に示すように、外部電極5−3に接続された第2外側引き出し部21と連続する線分20−1と、線分20−2〜20−13と、外部電極5−4に接続された第2内側引き出し部22とがスルーホール31a〜37bを介して接続されて、第1コイル1と略同形であって僅かに偏心した第2コイル2が形成されている。
次に、この実施例のコモンモードノイズフィルタが示す作用及び効果について説明する。
図10は、コモンモードノイズフィルタの使用例を示す概略図である。
例えば、コモンモードノイズフィルタをパーソナルコンピュータのUSBインタフェースのフィルタとして使用する場合には、図10に示すように、USBコネクタ300とUSBコントローラ301との間に接続する。
具体的には、図1に示す外部電極5−1,5−2を、差動信号D+を通すデータライン311に接続すると共に、外部電極5−3,5−4を、差動信号D+とは逆位相の差動信号D−を通すデータライン312に接続する。なお、符号313,314は、電源Vdd及びグランドGND用のフェライトビーズインダクタである。
かかる状態で、ノーマルモード時に、差動信号D+が第1コイル1を通り、逆向きの差動信号D−が第2コイル2を通ると、第1コイル1を通る差動信号D+によって生じる磁界の向きと、第2コイル2を通る差動信号D−によって生じる磁界の向きとが逆になる。このため、磁界が絶縁層3に集中して、絶縁層3内の磁束密度が非常に大きくなり、絶縁層3外の磁性層4−1,4−2中の磁束密度は非常に小さくなる。この結果、第1及び第2コイル1,2を通る差動信号D+,D−に対する磁性損失が小さくなり、差動信号D+,D−がほとんど減衰することなく、第1及び第2コイル1,2を伝わることとなる。
一方、コモンモード時には、第1コイル1を通るノイズと第2コイル2を通るノイズの向きが同じになる。したがって、第1及び第2コイル1,2を通るノイズによって生じる磁界の向きは同じになる。このため、絶縁層3内の磁束密度は小さくなり、磁界の大部分が絶縁層3の外側の磁性層4−1,4−2に存在した状態になる。この結果、第1及び第2コイル1,2を通るノイズに対する磁性損失が大きくなり、ノイズは第1及び第2コイル1,2を伝わる間に大部分が減衰することとなる。
ところで、図15に示した従来のコモンモードノイズフィルタのように、第1及び第2外側引き出し部11,21の線間距離や第1及び第2内側引き出し部12,22の線間距離が、第1及び第2コイル本体10,20の線間距離と異なると、これらの間で特性インピーダンスが異なってしまう。この結果、ノーマルモード時に、差動信号D+,D−がこれらの接合部分で多重反射して、差動信号D+,D−の第1及び第2コイル1,2に対する透過率が著しく損なわれることとなる。しかしながら、この実施例では、図2に示したように、同一形状の第1及び第2コイル1,2を僅かに偏心させただけの構造であるので、第1及び第2外側引き出し部11,21の線間距離と第1及び第2内側引き出し部12,22の線間距離と第1及び第2コイル本体10,20の線間距離とが、全て等しい。この結果、これらの特性インピーダンスに差が生ぜず、差動信号D+,D−がこれらの接合部分で反射されることなく、第1及び第2コイル1,2を通過するので、差動信号D+,D−の第1及び第2コイル1,2に対する透過率は非常に高い。
また、第1及び第2コイル1,2を僅かに偏心させただけの構造であるので、第1及び第2コイル1,2の間の対称性が確保される。すなわち、第1内側引き出し部12と第2コイル2との間の電磁結合力は、第2内側引き出し部22と第1コイル1との間の結合力と同等であり、同様に、第1外側引き出し部11及び第1コイル本体10の部分と第2コイル2との間の電磁結合力は、第2外側引き出し部21及び第2コイル本体20の部分と第1コイル1との間の電磁結合力と同等であるので、コモンモードノイズフィルタ全体の特性インピーダンスが均一となっている。このため、コモンモードノイズフィルタ自体が、特性インピーダンスのアンバランスによるコモンモードノイズを発生するということはない。
このように、この実施例のコモンモードノイズフィルタは、接合部分で差動信号D+,D−の反射が生じない均一な特性インピーダンスを有し、しかも、第1及び第2コイル1,2の偏心量を変えるだけで、均一な特性インピーダンスの大きさを変化させることができるので、図10に示すUSBコネクタ200やUSBコントローラ201などの外部電子回路の特性インピーダンスに簡単に整合させることができる。
次に、この発明の第2実施例について説明する。
図11は、この発明の第2実施例に係るコモンモードノイズフィルタと第1実施例のコモンモードノイズフィルタを対比して示す概略平面図であり、図11(a)は第1実施例の要部を透視して示し、図11(b)は第2実施例の要部を透視して示す。なお、破線で示す線分対は、第1層3−1上に形成され、実線で示す線分対は、第2層3−2上に形成され、二点鎖線で示す線分対は、第3層3−3上に形成されていることを示す。
第2実施例のコモンモードノイズフィルタは、線分対を、互いに平行な2本の折曲状の線分で構成した点が、上記第1実施例と異なる。
すなわち、上記第1実施例では、図11(a)に示すように、直状の線分対10−1,20−1、10−2,20−2、〜、10−12,20−12、10−13,20−13を第2層3−2と第1層3−1との表面に交互に配し、隣り合う線分対を1対のスルーホール31a,31a〜37a,37aを介して順次巻回方向に直列に接続した構成としている。
これに対して、この実施例では、例えば、図11(a)に示す隣り合う直状の線分対10−1,20−1と線分対10−2,20−2を連続させて、図11(b)に示すように、L字状に折れ曲がった線分対10′−1,20′−1を構成し、この線分対
10′−1,20′−1を第2層3−2に配する。次に、隣り合う直状の線分対10−3,20−3と線分対10−4,20−4を連続させて、L字状に折れ曲がった線分対10′−2,20′−2を構成し、この線分対10′−2,20′−2を第1層3−1に配する。以降同様にして、L字状の線分対10′−3,20′−3、〜10′−7,20′−7を第2層3−2と第1層3−1との表面に交互に配し、隣り合う線分対を1対のスルーホール31a′,31a′〜36a′,36a′を介して順次巻回方向に直列に接続した構成としている。
かかる構成により、スルーホール数を第1実施例の場合に比べて半減させることができ、この結果、コモンモードノイズフィルタの電気特性を向上させることができる。
その他の構成,作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、その記載は省略する。
なお、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
上記実施例では、線分対を、同長且つの直状の線分対10−1,20−1などで構成することにより、同形の矩形スパイラル状の第1及び第2コイル本体10,20を形成したが、線分対を、互いに平行な2本の直状又は折曲状の線分で構成することにより、第1及び第2コイル本体を多角形のスパイラル状に形成することもできる。
例えば、図12に示すように、三角形の辺を成す2本の直状線分対10′−2,20′−2等を絶縁層3の第1及び第2層3−1,3−2に交互に配設することで、三角スパイラル状の第1及び第2コイル本体10′,20′を得ることができる。
また、図13に示すように、六角形の複数辺を成す2本の折曲状線分対10′′−3,20′′−3等を絶縁層3の第1及び第2層3−1,3−2に交互に配設することで、六角スパイラル状の第1及び第2コイル本体10′′,20′′を得ることもできる。
なお、図12及び図13において、極太線は第1コイル1を示し、点線で示す線分対は第1層3−1に配される線分対を示し、実線で示す線分対は第2層3−2に配される線分対を示し、二点鎖線で示す第1及び第2内側引き出し部12,22は第3層3−3に配されている。
また、上記実施例では、第1及び第2外側引き出し部11,21を、第2層3−2上の線分対10−1,20−1の両外側端部10a,20aから外側に延出するように並設したが、第1及び第2外側引き出し部11,21は、絶縁層3の第1及び第2層3−1,3−2のいずれかの表面上に並設されて、第1及び第2コイル本体10,20の外側端部10a,20aと接続されていればよい。したがって、図14に示すように、第1及び第2コイル1,2の第1及び第2外側引き出し部11,21を、第1層3−1の表面に並設し、1対のスルーホールを介して線分対10−1,20−1の両外側端部10a,20aに接続するようにしたものも、この発明の範囲に含まれる。
また、上記実施例では、第1及び第2内側引き出し部12,22を並設した第3層3−3を、第1及び第2層3−1,3−2の上方に配したが、第1及び第2内側引き出し部12,22を並設した第3層3−3を、第1及び第2層3−1,3−2の間や第1層3−1の下方に配したものを発明の範囲から除外する意ではない。
また、上記実施例では、磁性層4−1,4−2が、絶縁層3の上面と下面とを覆う構成としたが、磁性層は、絶縁層3の外面のうち少なくとも第1及び第2コイル1,2の面と向き合う外面を覆うものであればよい。したがって、磁性層4−1,4−2が、絶縁層3の上面と下面だけでなく、絶縁層3の両側面をも覆う構成のものや、絶縁層3全体を覆うものも発明の範囲に含む。
また、上記実施例では、線分対を、同長且つの直状の線分対10−1,20−1などで構成することにより、同形の矩形スパイラル状の第1及び第2コイル本体10,20を形成したが、上記実施例において、線分対である同長且つの直状の線分対10−1,20−1などを、2本の弧状の線分対にすることにより、第1及び第2コイル本体10,20を円形のスパイラル状に形成することもできる。
この発明の第1実施例に係るコモンモードノイズフィルタの外観図である。 実施例のモンモードノイズフィルタを上方より透視して第1及び第2コイルの構造を示す平面図である。 実施例のコモンモードノイズフィルタの分解斜視図である。 絶縁層の第1層の平面図である。 絶縁層の第2層の平面図である。 絶縁層の第3層の平面図である。 第1コイルを透視して示す平面図である。 図7の矢視A−A断面図である。 第1コイルを透視して示す平面図である。 コモンモードノイズフィルタの使用例を示す概略図である。 この発明の第2実施例に係るコモンモードノイズフィルタと第1実施例のコモンモードノイズフィルタを対比して示す概略平面図である。 第1変形例の要部を透視してを示す概略平面図である。 第2変形例の要部を透視してを示す概略平面図である。 第3変形例の要部を示す分解斜視図である。 第1従来例のコモンモードノイズフィルタを示す分解斜視図である。 第1従来例のコモンモードノイズフィルタを分解して示す側面図である。 第2従来例のコモンモードノイズフィルタを示す分解斜視図である。 第2従来例のコモンモードノイズフィルタを分解して示す側面図である。
符号の説明
1…第1コイル、 2…第2コイル、 3…絶縁層、 3−1…第1層、 3−2…第2層、 3−3…第3層、 4−1,4−2…磁性層、 5−1,〜,5−4…外部電極、 10…第1コイル本体、 10a,20a…外側端部、 10b,20b…内側端部、 10−1,20−1〜10−13,20−13…線分対、 11…第1外側引き出し部、 12…第1内側引き出し部、 20…第2コイル本体、 21…第2外側引き出し部、 22…第2内側引き出し部、 31a〜37a,32b〜37b…スルーホール。

Claims (7)

  1. 略平面型の第1コイルと、この第1コイルと略同一形状をなしこの第1コイルと近接して並設された第2コイルと、これら第1及び第2コイルを内包した非磁性の絶縁層と、この絶縁層の外面のうち少なくとも第1及び第2コイルの面と向き合う外面を覆う磁性層とを備えるコモンモードノイズフィルタであって、
    上記第1コイルは、スパイラル状をなす第1コイル本体と、この第1コイル本体の外側端部に接続された第1外側引き出し部と、第1コイル本体の内側端部に接続された第1内側引き出し部とを有し、
    上記第2コイルは、上記第1コイル本体と同一のスパイラル状をなし且つ平面視においてそのn巻目(n=正整数)の線分の一部が第1コイル本体のn巻目の線分とn−1巻目の線分との間に位置するように偏心された第2コイル本体と、この第2コイル本体の外側端部に接続された第2外側引き出し部と、第2コイル本体の内側端部に接続された第2内側引き出し部とを有し、
    上記第1及び第2コイル本体は、平面視において互いに交差しないように並ぶ同一形状の2本の線分でなる線分対がスパイラル状に複数対列設され、線分対同士が同一平面上で互いに交差しないように、複数対の線分対が異なる第1及び第2の平面上に交互に配されると共に、第1の平面上の線分対とこの線分対と隣り合う第2の平面上の線分対とが1対のスルーホールを介して直列に接続されて、構成されており、
    上記第1及び第2コイルの第1及び第2外側引き出し部は、上記第1及び第2の平面のいずれかの平面上に並設されて、上記第1及び第2コイル本体の外側端部と接続されており、
    上記第1及び第2コイルの第1及び第2内側引き出し部は、上記第1及び第2の平面と異なる第3の平面上に並設され、1対のスルーホールを介して上記第1及び第2コイル本体の内側端部と接続されている、
    ことを特徴とするコモンモードノイズフィルタ。
  2. 請求項1に記載のコモンモードノイズフィルタにおいて、
    上記線分対を、互いに平行な2本の直状又は折曲状の線分で構成することにより、上記第1及び第2コイル本体を多角形のスパイラル状に形成した、
    ことを特徴とするコモンモードノイズフィルタ。
  3. 請求項2に記載のコモンモードノイズフィルタにおいて、
    上記線分対を、互いに平行な2本の直状の線分で構成することにより、上記第1及び第2コイル本体を矩形のスパイラル状に形成した、
    ことを特徴とするコモンモードノイズフィルタ。
  4. 請求項1に記載のコモンモードノイズフィルタにおいて、
    上記線分対を、2本の弧状の線分で構成することにより、上記第1及び第2コイル本体を円形のスパイラル状に形成した、
    ことを特徴とするコモンモードノイズフィルタ。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のコモンモードノイズフィルタにおいて、
    上記第1及び第2コイルの第1及び第2外側引き出し部が並設された第3の平面は、上記第1及び第2の平面の外側であって且つ両上記内側端部を有する線分対が配されている平面に近接した平面である、
    ことを特徴とするコモンモードノイズフィルタ。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のコモンモードノイズフィルタにおいて、
    上記第1及び第2コイルの第1及び第2外側引き出し部は、両上記外側端部を有する線分対の当該両外側端部と連続した状態で並設されている、
    ことを特徴とするコモンモードノイズフィルタ。
  7. 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のコモンモードノイズフィルタにおいて、
    上記第1及び第2コイルの第1及び第2外側引き出し部は、上記第1及び第2の平面のうち両上記外側端部を有する線分対が配されていない平面上に並設され、1対のスルーホールを介して上記線分対の両外側端部に接続されている、
    ことを特徴とするコモンモードノイズフィルタ。
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