JP2006023228A - マイクロ波熱処理の分析装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 マイクロ波加熱時の有害物質脱着機構の解明に貢献する分析装置を提供する。
【解決手段】 CaO・6Al固化体からなる試料ホルダー10と、試料ホルダー10にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置20と、試料ホルダー10に配置された試料の温度を測定する温度測定機器30と、試料ホルダー10に配置された試料から発生したガスの成分を分析する分析装置50とを有する分析装置である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、マイクロ波を照射して試料から有害物質を除去する際の、試料からの脱着物を分析する装置に関する。本発明の分析装置は、例えば、マイクロ波照射によって土壌から有害物質を除去するメカニズムの解明に用いられる。
近年、ダイオキシンなどの有害物質による土壌汚染が社会問題化し、土壌の分析や有害物質の除去に対する要求が高まっている。
有害物質を含む土壌を浄化する方法としては、焼却設備を用いた高温加熱によって土壌中に含まれる有害物質を熱分解する手法が提案されている。しかしながら、焼却設備を用いた土壌の高温加熱は、手間や設備に関する負担が大きく、処理コストが増大する傾向がある。そこで、土壌の浄化コストを削減する手法の開発が求められている。
土壌の浄化コストを削減する手法として、土壌に濃度1〜95%の水酸化ナトリウム水溶液を混合し、この混合物に周波数300MHz〜30GHzのマイクロ波を直接照射することにより、有害物質を除去する手法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1によれば、マイクロ波のエネルギーによって極性分子が極短時間に激しい分子振動を起し、局所的に高温を発生させ、アルカリによる酸化分解除去が生じる。マイクロ波を用いて有害物質を除去する場合、単なる加熱による有害物質除去とは異なるメカニズムで有害物質が除去されていると推測される。
しかしながら、マイクロ波による有害物質分解のメカニズムは、現在のところ十分に解明されておらず、マイクロ波を用いた除去方法の改良や有効性の検証のために、マイクロ波による有害物質分解の解明に貢献する分析装置の開発が求められている。
特開2003−47933号公報
本発明の目的は、マイクロ波加熱時の有害物質脱着機構の解明に貢献する分析装置を提供することである。
マイクロ波加熱による有害物質脱着機構を解明する手段の一つとして、所定の温度における試料からの生成物を観察する手段が考えられる。つまり、温度と試料からの生成物との関係を分析し、その結果から機構を解明する手法である。この手法による機構解明には、試料の温度を正確に制御することが求められる。
ところが、試料の温度を正確に制御することに関して問題があった。土壌に含まれる有害物質を除去するためには、土壌を数百℃以上の高温に加熱しなければならない。マイクロ波を用いて土壌を加熱する場合、土壌中の成分によるマイクロ波吸収によって土壌の温度が上昇する。ただし、試料の量が少なすぎると、発熱量が不足し、試料の温度が十分に上昇しづらい。一方、試料の量が多いと、発熱量は多くなるものの、試料内部で温度分布が生じてしまい、試料の温度を正確に制御することが困難となる。また、試料の量が多いと、分析装置の大型化を招き、装置製造コストや設置面積の問題も招く。
本発明の分析装置においては、マイクロ波を吸収して効率よく発熱する発熱体が、試料の周囲に配置される。このため、少量の試料を用いる場合であっても、効率的に試料温度を昇温させることが可能であり、また、試料内部に生じる温度分布を少なくさせることが可能である。これらの効果を有する本発明の分析装置は、マイクロ波を用いた有害物質脱着機構の解明に貢献する。
具体的には、本発明の好ましい実施形態は以下の通りである。
(1)CaO・6Al固化体からなる試料ホルダーと、前記試料ホルダーにマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、前記試料ホルダーに配置された試料の温度を測定する温度測定機器と、前記試料ホルダーに配置された試料から発生したガスの成分を分析する分析装置とを有する分析装置である。
(2)前記試料ホルダーに配置された試料から発生したガスを前記分析装置に搬送する管に熱風を供給する熱風供給器をさらに有する、(1)に記載の分析装置である。
(3)前記分析される試料は、土壌であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の分析装置である。
本発明の分析装置を用いれば、所望する温度に試料を制御することが容易であり、本発明の分析装置はマイクロ波加熱時の有害物質脱着機構の解明に大いに貢献する。
本発明者らは、マイクロ波を用いた加熱について検討したところ、CaO・6Alの組成を有するバルク状固化体が、マイクロ波のサセプターとして有効であることを見出した。この知見に基づいて、本発明は完成された。以下、本発明について詳細に説明する。
まず、図面を用いて本発明の分析装置の概要について説明する。図1は、本発明の分析装置の一実施形態を示す断面模式図である。分析される試料は、試料ホルダー10に配置される。試料ホルダー10を構成する固化体の組成は、CaO・6Alであり、試料ホルダー10の上流方向および下流方向には、試料ホルダー10内部にガスを通過させるための孔の開いた蓋12が配置されている。なお、「上流方向」および「下流方向」とは試料ホルダー内を流通するガスの流れに関しての上流および下流である。下流方向には後述する分析装置が配置される。
試料ホルダー10には、マイクロ波照射装置20から所望のマイクロ波が照射される。マイクロ波照射装置20からのマイクロ波によって、試料の加熱、試料からの化合物の脱離、試料ホルダーの加熱が行われる。試料ホルダーに配置された試料の温度は、温度測定機器30によって測定される。試料ホルダー10内部を流通するガスは、管40を通じて試料ホルダー10に供給され、試料ホルダー10内部を流通したガスが、管42を通じて分析装置50へと搬送される。分析装置50において分析するために、ガス捕集機46が設置されてもよい。分析装置50において、流通するガスに混在する、試料に由来する成分が分析される。管40へのガスの供給および管42からのガスの排出は、他成分が混入しないように注意することが好ましい。例えば、管40および管42の出入口に、ガスチューブを備えた栓45が配置される。
分析装置には、必要に応じて他の装置が配置されてもよい。例えば、管42における結露を防止するための熱風供給器60が配置される。マイクロ波照射によって試料ホルダー10の周辺は高温に加熱されるが、試料ホルダー10から離れるにつれて温度が下がり、管42の内部で結露が生じる虞がある。結露が生じた場合、管中を流通する成分が溶解してしまい、正確な分析を阻害する虞がある。熱風供給器60は、この問題を防止する役割を果たす。熱風供給器60から供給された熱風により管42が加熱され、結露が防止される。図示するように、試料ホルダー10がアプリケーター70で覆われている場合には、アプリケーター70の一部に熱風を排出するための排出口80が形成されるとよい。また、熱風供給器60からの熱風のみでは、栓45付近における結露を防止できない虞がある場合には、管42にリボンヒーターなどの加熱器90が配置されてもよい。
本発明の分析装置は、CaO・6Alからなる試料ホルダーが用いられる。CaO・6Alは、マイクロ波による加熱効率が高いため、試料ホルダー内部に配置される試料の温度を効果的に昇温させることが可能であり、試料ホルダー内部に配置される試料の温度分布を少なくすることが可能である。また、マイクロ波の照射出力を制御することによって試料ホルダーに配置された試料の温度を、所望の温度に制御することが可能である。これらの効果を有する本発明の分析装置を用いることによって、マイクロ波加熱時に試料から放出される成分を精密に分析することが可能である。
上記説明においては、図1を用いて本発明の分析装置を説明したが、本発明の分析装置が図1に示す態様に限定されるわけではなく、他の種々の態様の分析装置も本発明の技術的範囲に含まれ得る。
続いて、本発明の分析装置の構成について、部材ごとに詳細に説明する。
試料ホルダー10はCaO・6Al固化体からなる。CaO・6Alの製造方法は、特に限定されない。CaO・6Alは、例えば、CaOとアルミナとを1:6程度のモル比で混合し、ロータリーキルンなどを用いて1500℃以上で焼成することによって製造可能である。CaO・6Alは、CaO・6Alに対応する組成の粉体を電融することによって製造されてもよい。市販されているCaO・6Alが用いられてもよい。
固化体とは、CaO・6Alからなるバルク状の発熱体を意味する。製造の容易性などを考慮すると、固化体は焼結体であることが好ましい。ただし、焼結以外の固化方法が適用可能であれば、焼結以外の手法が用いられてもよい。例えば、CaO・6Al粉末とアルミナセメントとを混ぜて、固化させる手法が用いられてもよい。
固化方法については、特に限定されない。例えば、CaO・6Alを焼結する際には、材料の種類や固化体の大きさなどの要因に応じて、焼結装置や焼結時間が決定されればよい。
固化体の形状も、特に限定されない。固化体の形状は、試料ホルダーの配置形態に応じて決定されるとよい。図1に示すような態様を採用する場合には、管40および管42の形状に応じて固化体の形状を決定するとよい。試料ホルダーが複数の固化体を組み合わせて作製される場合には、固化体の形状は試料ホルダーの一部形状とすればよい。例えば、図1に示す試料ホルダーを複数の固化体を組み合わせて作製する場合には、試料が配置される部位に相当する円筒形の固化体と、中心部にガスが流通するための孔が形成された、2枚の固化体とを準備し、これらを組み合わせればよい。
固化体の大きさも、特に限定されない。測定される試料の量に応じて、固化体の大きさが決定されればよい。分析装置の小型化を考慮すると、試料ホルダーが小さいことが好ましい。ただし、分析される試料が少なすぎると、測定誤差が大きくなる傾向がある。例えば、土壌に含まれる有害物質除去を分析する場合には、20gの土壌が配置可能な大きさを有していることが好ましい。固化体の厚さも特に限定されないが、固化体が薄すぎると発熱量が減少し、試料の温度を上昇させにくくなる虞がある。固化体の厚さは、一般的には、10〜25mm程度である。
試料ホルダーは、場合によっては、CaO・6Al以外の材料と組み合わされてもよい。例えば、CaO・6Alからなる試料ホルダーの周囲にマイクロ波を透過する断熱材が配置されてもよい。
マイクロ波照射装置20は、マイクロ波を試料ホルダー周辺に照射可能であれば、特に限定されない。例えば、マグネトロンを発振管とする0.915GHzの周波数のマイクロ波、電子レンジなどで採用されている2.45GHzの周波数のマイクロ波、ジャイラトロンを発振管とする28GHzのマイクロ波など、種々の周波数のマイクロ波が用いられうる。マイクロ波を所望の部位に誘導する、マイクロ波用光導波管が用いられてもよい。
温度測定機器30は、試料の温度を測定し、所定の温度において試料から放出される化合物を分析するために用いられる。試料の温度を測定可能であれば、温度測定機器の具体的態様については特に限定されない。例えば、図1に示すように熱電対が試料に配置されてもよいし、可能であれば試料ホルダーの熱分布を画像処理により解析し、試料ホルダーにおける温度分布が観察されてもよい。
管40および管42は、試料ホルダー10が高温になっても劣化しない耐熱性の材料から形成されることが好ましい。管の構成材料としては、例えば、石英ガラスが挙げられる。
管には試料から発生したガスを分析装置に搬送するためのガスが供給されるが、ガスは、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。ガスを管に供給する際には、他成分の混入を防止する措置が講じられることが好ましい。例えば、管の両端には不活性ガス導入用チューブを備えたシリコン栓が配置される。発生ガスを分析するには、例えば、ガスを水中でトラップするガス捕集機46を設置し、ガス捕集機で捕集されたガスを、ガスクロマトグラフや質量分析(GC−MS)などの分析装置50で分析する。分析装置は、発生する成分を分析可能であれば特に限定されない。各種市販の分析装置が用いられてもよいし、本発明に適した改良が施されてもよい。
前述のように、条件によっては、管42の内側に結露が生じ、分析精度を低下させる問題が生じることがある。この問題を解決する手段として、試料ホルダー10に配置された試料から発生したガスを、分析装置50に搬送する管に熱風を供給する熱風供給器60が挙げられる。熱風の温度は、試料の測定温度やマイクロ波の出力に応じて制御されるとよい。マイクロ波による土壌浄化を分析する場合には、熱風の温度は、通常は100〜300℃程度に制御すればよい。高温の熱風を作製するシステムとしては、電気式熱風発生装置が挙げられる。ただし、このようなシステムに限定されるわけではない。分析装置の周辺に焼却炉や加熱炉などの高温プロセスが存在する場合には、これらの熱を利用して、熱風の媒体ガスが加熱されてもよい。
分析装置の構成材であるアプリケーターの材質は、特に限定されないが、ステンレスなどの錆などの劣化が生じにくい材料であることが好ましい。
リボンヒーターなどの加熱器90を設置する場合には、加熱器90の温度は120〜150℃程度に制御すればよい。
図1に示す分析装置を用いて、ダイオキシン成分およびジベンゾフラン成分によって汚染された土壌の分析を試みた。用いた分析装置の構成は以下の通りである。
CaO・6Al粉体100質量部に対して、アルミナセメント6質量部および水8質量部を添加し、230mm×40mm×114mmの型枠に流し込んだ。24時間養生した後、この成形体を型枠から外し、電気炉にて1400℃×4時間の焼成を行った。得られたCaO・6Al固化体を、内径20mm、外形40mm、長さ40mmの円筒状に湿式加工し、その後150℃に乾燥して試料ホルダーとした。
試料ホルダーの内部に試料土壌を詰め込んだ後、試料ホルダーの両側に、内径5mmの孔を有し、外形40mm、厚さ10mmの孔の開いた蓋を配置した。
土壌が配置された試料ホルダーを、石英ガラス製の管(内径42mm)と接続し、石英ガラス上流側の端および下流側の端には、窒素ガス導入用ポリテトラフルオロエチレンチューブが配置されたシリコン栓を詰め、ガスの混入が生じないようにした。試料ホルダー内部の試料温度は、K熱電対を土壌中央に配置して測定した。
上流側のシリコン栓に配置されたポリテトラフルオロエチレンチューブから、窒素ガス(N)を2リットル/minの流量で流した。リボンヒーターの温度は150℃に設定し、電気式熱風発生装置を用いて、流量1.48m/minで300℃の熱風を分析装置に供給した。マイクロ波照射装置としては、2.45GHzのマイクロ波を照射するためには、WRJ−2タイプのステンレス製導波管を用いてマイクロ波をアプリケーターに照射した。
マイクロ波を用いた加熱による、温度変化、マイクロ波出力、試料温度の関係を図2に示す。図2に示すように、室温から510℃まで、試料の温度を徐々に上昇させることができた。つまり、本発明の分析装置を用いることによって、低温から高温まで、試料の温度と生成物との関係を正確に分析することが可能である。この効果は、各種反応のメカニズムを解明し、さらなる改良や改善を達成する上で非常に有用である。また、試料内部の温度分布を調査する目的で、同一条件で土壌試料の両端および中央に熱電対を設置したところ、中央部の温度が510℃である際に、上流部の温度は503℃、下流部の温度は506℃であった。このように、本発明の分析装置においては、試料内の温度分布が少ない。
参考までに、加熱する前の土壌中に含まれるダイオキシン成分およびジベンゾフラン成分の含有量と、510℃で加熱した後の土壌中に含まれるダイオキシン成分およびジベンゾフラン成分の含有量とを、表1に示す。マイクロ波を用いて510℃で熱処理することによって、土壌中に含まれる有害物質が除去されることがわかる。なお、分析装置は、株式会社島津製作所製GCMS−QP2010を用いた。
Figure 2006023228
本発明の分析装置は、マイクロ波加熱の際の機構解明に寄与する。また、土壌をマイクロ波加熱によって浄化する際の、最適な条件を決定する上でも、本発明の分析装置を適用することが可能である。
本発明の分析装置の一実施形態を示す断面模式図である。 マイクロ波を用いた加熱による、温度変化、マイクロ波出力、試料温度の関係を示すグラフである。
符号の説明
10…試料ホルダー、12…孔の開いた蓋、20…マイクロ波照射装置、30…温度測定機器、40…管、42…管、45…栓、46…ガス捕集機、50…分析装置、60…熱風供給器、70…アプリケーター、80…排出口、90…加熱器。

Claims (3)

  1. CaO・6Al固化体からなる試料ホルダーと、
    前記試料ホルダーにマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、
    前記試料ホルダーに配置された試料の温度を測定する温度測定機器と、
    前記試料ホルダーに配置された試料から発生したガスの成分を分析する分析装置と、
    を有する分析装置。
  2. 前記試料ホルダーに配置された試料から発生したガスを前記分析装置に搬送する管に熱風を供給する熱風供給器をさらに有する、請求項1に記載の分析装置。
  3. 前記分析される試料は、土壌であることを特徴とする、請求項1または2に記載の分析装置。
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