JP2006020605A - アンモニウム吸収能が強化された形質転換イネ - Google Patents

アンモニウム吸収能が強化された形質転換イネ Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、窒素源の輸送体である窒素トランスポーターの改良によって、地球環境に配慮された高い生産性を有する作物、好ましくはイネを作出することを目的としている。
【解決手段】 本発明は、アンモニウムイオンの吸収能が改善された形質転換植物に関し、より詳細には、本発明は、植物のアンモニウムトランスポーターであって、アンモニウムイオンの存在条件により発現が誘発されるアンモニウムトランスポーターの遺伝子を導入して形質転換された植物、及びその製造方法に関する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、アンモニウムイオンの吸収能が改善された形質転換植物に関し、より詳細には、本発明は、植物のアンモニウムトランスポーターであって、アンモニウムイオンの存在条件により発現が誘発されるアンモニウムトランスポーターの遺伝子を導入して形質転換された植物に関する。
地球規模での人口の増加に伴い、食料の増産の必要性がいわれてきている。国連では国際コメ年などを設けて稲作などの作物の増産を推進してきている。作物の作付け面積の拡大と同時に、作物の品種改良や作物の生産性の向上が必要とされてきている。現代では、農業技術の発達によって作物生産性が急激に上昇してきており、その一端を担っているものに化学肥料の進歩があげられる。その反面,過剰な施肥が土壌環境・地球環境を悪化させてきたことは否定しがたい事実である。今日、人類総人口の爆発的増加、地球環境の悪化が深刻と指摘される状況下で、今後の育種日標として、環境汚染を伴わずに持続的かつ限られた農地で高い生産効率を維持した作物の生産が重要であるとされている。そのため現代の農業が目指すべき理想の姿は、低施肥条件下でも高い効率を維持した持続的な作物生産であると考えられることから、効率の良い栄養源の取り込み機能を有する作物の開発が重要な課題となっている。
植物の獲得した独立栄養性は、必要なすべてのアミノ酸や核酸などの含窒素有機化合物を自ら合成できることにある。アミノ酸は炭素を中心とするカルボキシル基と窒素を中心とするアミノ基より重要な骨格が形成される。光合成によって供給される炭素の初発物質である炭酸ガスは大気中に無尽蔵にあるのに対して、窒素は根よりの吸収が唯一無二の供給手段であり、窒素の供給は光合成機能の律速過程であるといえる。
これらのことから、植物における窒素の取り込み機構の解明は重要であり、最終的には植物における窒素源の取り込みが効率的に行える作物の開発が望まれている。
Suenaga, A., Moriya, K., Sonoda, Y., Ikeda, A., Von Wiren, N., Hayakawa, T.,Yamaguchi, J. and Yamaya, T. (2003) Constitutive expression of a novel-type ammonium transporter OsAMT2 in rice plants. Plant and Cell Physiol. Vol. 44, pp. 206-211. Sonoda, Y., Ikeda, A., Saiki, S., Von Wiren, N., Yamaya, T. and Yamaguchi J. (2003) Distinct expression and function of three ammonium transporter genes (OsAMT1;1-1;3) in rice. Plant and Cell Physiol. Vol. 44, pp. 726-734. Sonoda, Y., Ikeda, A., Saiki, S., Yamaya, T. and Yamaguchi, J. (2003) Feedback regulation of the ammonium transporter genefamily AMT1 by glutamine in rice. Plant and Cell Physiol. Vol. 44, pp. 1396-1402.
植物の窒素イオンの細胞内への取り込み・細胞間への移動には、膜貫通型タンパク質である窒素トランスポーターの”能動的な輸送システム”が必要とされる。水田に代表される湛水土壌では、アンモニウムイオンは主たる窒素源として存在し、その取り込みにはアンモニウムトランスポーター(Ammonium Transporter:AMT)が機能している。そのために、本発明者らは、イネのAMTに着目して研究を行ってきた(非特許文献1〜3参照)。イネは世界的に見ても主要作物として農業的に重要であり、基礎研究からより応用に実現しやすい生物種でもある。そのため、例えば、高い窒素取り込み能が付加されたイネを開発することにより、肥料の使用を減らして環境に配慮しつつ、高い生産効率を維持できる形質転換イネの作出が可能となる。
したがって、本発明は、窒素源の輸送体である窒素トランスポーターの改良によって、地球環境に配慮された高い生産性を有する作物、好ましくはイネを作出することを目的としている。
本発明者らは、イネのアンモニウムトランスポーター1(OsAMT1)に着目して、イネなどの植物における窒素源の取り込み効率の改良を検討してきた。その結果、アンモニウムイオン(NH )の存在により発現が誘発されるAMT遺伝子を植物に導入することにより、植物の窒素源の取り込みを大きく改善させることができることを見出した。
本発明は、植物のアンモニウムトランスポーターであって、アンモニウムイオンの存在条件により発現が誘発されるアンモニウムトランスポーターの遺伝子を導入して形質転換された植物、好ましくはイネのOsAMT1;2遺伝子が導入された形質転換イネに関する。
また、本発明は、植物のアンモニウムトランスポーターであって、アンモニウムイオンの存在条件により発現が誘発されるアンモニウムトランスポーターの遺伝子を、プロモーターの下流に結合させた遺伝子構築物を、植物細胞に導入することからなる植物のアンモニウムイオンの吸収能が改善された形質転換体を製造する方法に関する。
イネのゲノムには3種類のOsAMT1遺伝子(OsAMT1;1、1:2、及び1;3)が存在していることが知られている。本発明者らは、まずこれらのAMTの機能について検討した。
これらのAMT1の発現について、窒素飢餓条件(−N)、アンモニウムイオン存在条件(+NH )、及び硝酸イオン存在条件(+NO )について検討した。これらの条件における、AMT1の茎葉部および根における遺伝子の発現をRT−PCTR法により検討した。結果を図1に図面に代わる写真で示す。図1の上段から、OsAMT1;1、OsAMT1;2、OsAMT1;3、及び陽性コントロールのアクチン(Actin)を示す。図1の左側は茎葉部(Shoot)についてであり、右側は根(Root)についてである。それぞれ左側から窒素飢餓条件(−N)、アンモニウムイオン存在条件(+NH )、及び硝酸イオン存在条件(+NO )を示す。
この結果、OsAMT1;1は茎葉部および根のいずれでも発現し、構成的な発現様式を示している(図1の上段)。これに対し、OsAMT1;2は根で特異的に発現しており、アンモニウムイオン存在下で顕著な発現促進が認められる(図1の中段)。また、OsAMT1;3も根で特異的な発現を示したが、窒素飢餓条件下で最も顕著な発現が認められる(図1下段)。
この様にイネには複数かつ発現制御の異なるAMT1群が存在し、外界のさまざまな窒素栄養環境に適応して窒素源を取り込んでいることがわかる。また、この中でOsAMT1;2遺伝子の翻訳産物は根に特異的に発現し、かつ窒素充足条件下、即ちアンモニウムイオンが存在しているときに発現し、アンモニウムイオンの取り込みに機能している。このことから、OsAMT1;2遺伝子を植物体全体で過剰に発現させることにより、土中に存在しているアンモニウムイオンを効率的に取り込むことができる形質転換体をえることが可能ではないかと考えられた。
そこで、本発明者らは、OsAMT1;2遺伝子を植物体全体で過剰に発現させることができる形質転換体を実際に作出し、そのアンモニウムイオン吸収能が強化されるか否かを検討した。
カリフラワーモザイクウイルス由来の35Sプロモーターの下流にOsAMT1;2遺伝子を融合させたキメラ遺伝子をイネに導入した、OsAMT1;2遺伝子過剰発現型形質転換イネを作成した。
OsAMT1;2遺伝子が導入された形質転換体F1を作成し、これを自家受粉させて種子を得た。この種子には、S1〜S7までの7系統のものがあった。これら形質転換体系統の導入遺伝子のコピー数は,次世代種子の遺伝子型の分離から1コピーと推定される。このOsAMT1;2遺伝子過剰発現型形質転換イネ(以下、過剰発現型イネS1〜S7と略称する。)について、アンモニウムイオン吸収能に関するデータを収集した。
まず、OsAMT1;2遺伝子の発現を過剰発現型イネのS1系統を用いてRT−PCR法により検討した。結果を図2に図面に代わる写真で示す。図2の上段はOsAMT1;2遺伝子のブロットを示し、下段は陽性コントロールのアクチンを示す。図2のレーン1は野生型イネの葉での発現を示し、レーン2は過剰発現型イネS1の葉での発現を示し、レーン3は野生型イネの根での発現を示し、レーン4は過剰発現型イネS1の根での発現を示す。
図2の結果から,過剰発現型形質転換イネの葉では,本来葉では発現しないOsAMT1;2遺伝子が発現しており,根においてはOsAMT1;2遺伝子の発現が野生型イネと比較して約3−4倍増加していることがわかる(図2のレーン4参照)。このことから,実際にOsAMT1;2遺伝子が過剰発現型イネS1において強く発現していることがわかった。
次に、これらのイネの栽培実験を行った。まず、温室における過剰発現型イネの検定に先立ち,人工気象器を用いた栽培実験を行った。
0.15mMの硫酸アンモニウムを単一窒素源としたイネ水耕液で野生型イネと過剰発現型イネS1とを3週間生育させた。その結果を図3に図面に代わる写真で示す。この結果、野生型イネと過剰発現型イネS1では表現型に顕著な差は認められず、アンモニウムイオンが希薄な状態では、過剰発現型イネS1も野生型イネと同様に生育できることがわかった。
これに対して、1.5mMの硫酸アンモニウムを単一窒素源としたイネ水耕液で同様に3週間栽培した。結果を図4に図面に代わる写真で示す。図4の左側は野生型イネの場合を示し、右側は過剰発現型イネS1の場合を示す。左端と右端は、それぞれの拡大写真である。この結果、野生型イネの葉は正常な生長を示したが、過剰発現型イネS1の葉は枯死することがわかった(図4右端参照)。この原因は、アンモニウムイオンの過剰な蓄積によるものと考えられた。そこでこれらの植物体について、葉におけるアンモニウム含量を測定した。結果を図5にグラフで示す。図5のグラフの左側は野生型の場合を示し、右側は過剰発現型イネS1の場合を示す。図5のグラフの縦軸は地上部におけるアンモニウムイオンの含量(μモル/gFW)を示す。その結果、過剰発現型イネS1の葉は、野生型イネと比較してアンモニウムイオンが約2倍蓄積していたことが明らかとなった(図5参照)。
アンモニウムイオンの含量の測定結果から、過剰発現型イネS1の葉にはアンモニウムイオンが過剰に蓄積していることが明らかとなった。このことから、過剰発現型イネS1はアンモニウムイオンの吸収量が増加したために、過剰のアンモニウムイオンが蓄積され、枯死したと考えられる。さらに、栽培期間中の水耕液中のアンモニウムイオンの量の変化を測定した。結果を図6のグラフで示す。図6の横軸は時間(時間)を示し、縦軸は水耕液中の全アンモニウムイオンの量(μg)を示す。この結果,過剰発現型イネS1では、野生型イネと比較して水耕液中のアンモニウム含量が速やかに減少していくことが明らかとなった。このことからも、過剰発現型イネS1においてはアンモニウムイオンの吸収量が増加していることが明らかとなった。
同様に、0.15mMの硫酸アンモニウムを単一窒素源として、過剰発現型イネS5系統を3週間生育させた。結果を図7に図面に代わる写真で示す。図7の左側の2本は野生型の場合であり、右側の2本は過剰発現型イネS5の場合である。S5系統の場合には、0.3mMの硫酸アンモニウムの濃度においても根の生長が阻害され、その結果、葉が枯死してしまった。この結果もアンモニウムイオンの過剰な蓄積によるものと考えられる。
そこでアンモニウムイオンの過剰蓄積による影響を検討するために、野生型イネを用いて、種々の濃度の硫酸アンモニウムでの栽培実験を行った。その結果を図8に図面に代わる写真で示す。図8の左側から2本づつ、0.15mM、1.5mM、及び5mMの硫酸アンモニウム濃度の場合をそれぞれ示す。この結果、野生型イネに高濃度のアンモニウム処理(1.5mMおよび5mMの硫酸アンモニウム処理)をした場合、根の生長阻害効果が観察された。この結果は、過剰発現型イネS5の場合と同様であり、過剰発現型イネS5においては、アンモニウムイオンの吸収能が極めて高められており、0.3mMの硫酸アンモニウム濃度であっても、アンモニウムイオンが過剰となり、その結果、根の成長が阻害されたと考えられる。
これらの結果から、過剰発現型イネにおける根の生育阻害効果は、アンモニウムの過剰蓄積によるものと考えられた。また、形質転換体イネは、系統によりアンモニウムイオンの吸収能に大きな相違が見られることがわかった。
次に、温室における過剰発現型イネの栽培実験を行った。温室における過剰発現型イネの検定には、過剰発現型イネのS5系統を用いた。過剰発現型イネS5を7週間、1/5000aポットで、窒素源として1/5000aポット当たり約0.39g含まれているポットで栽培したところ、茎葉部に顕著な生育阻害が認められたこの結果を図9に図面に代わる写真で示す。図9の左側は野生型イネの場合を示し、右側は過剰発現型イネS5の場合を示す。この実験に用いた過剰発現型イネS5は、温室において0.3mMの硫酸アンモニウムを単一窒素源としたイネ水耕液で3週間生育させた場合であっても、根の生長が阻害され、葉が枯死したものであり(図7参照)、野生型イネが正常に生育する程度のアンモニウムイオンが存在していても、アンモニウムイオンが過剰に吸収され、過剰蓄積を生起するものである。
次に、OsAMT1;2遺伝子の導入により、イネのアンモニウム同化能力に変化が生じたかどうかを検討するために、過剰発現型イネS5系統を用いて、以下の分子マーカーを用いた発現解析を行った。この実験で用いた分子マーカーは、主に根においてアンモニウム同化を担う酵素であるNADH−GOGATと、主に地上部において光呼吸時に放出されるアンモニウムの再同化に働くFd−GOGATである。結果を図10に図面に代わる写真で示す。図10の最上段はOsAMT1;2の発現を示し、上から2段目はNADH−GOGATの発現を示し、上から3段目はFd−GOGATの発現をそれぞれ示す。最下段は陽性コントロールのアクチンを示す。図10のレーン1は野生型イネの葉を示し、レーン2は過剰発現型イネS5の葉を示し、レーン3は野生型イネの根を示し、レーン4は過剰発現型イネS5の根を示す。この結果、図2で示したのと同様に、過剰発現型イネS5系統でも、OsAMT1;2遺伝子が植物体全体で過剰に発現していた(図10のレーン2及び4参照)。またNADH−GOGATの発現が根において野生型イネと比較するとおよそ3〜4倍増加しており、葉においても発現がやや増加していた。これに対して、Fd−GOGATの発現にはほとんど変化は認められなかった(図10の上から3段目参照)。
以上の結果から、過剰発現型イネは、アンモニウム吸収能が増加して過剰にアンモニウムが取り込まれるために、NADH−GOGATの発現が上昇しアンモニウムの代謝もしくは解毒化を活発におこなっているものと考えられた。
このことは、アンモニウムイオンを取り込むトランスポーターのうち、アンモニウムイオンの存在下に発現するトランスポーターの遺伝子を植物に導入することにより、アンモニウムイオンの取り込み能力を飛躍的に増大させることが示されたことになる。
即ち、本発明は、植物のアンモニウムトランスポーターであって、アンモニウムイオンの存在条件により発現が誘発されるアンモニウムトランスポーターの遺伝子を導入して形質転換された植物を提供するものである。
本発明における植物としては、窒素源としてアンモニウムイオンを取り込む植物であって、アンモニウムイオンの存在条件により発現が誘発されるアンモニウムトランスポーターを有するものであれば特に制限はないが、穀物植物などの作物となる植物が好ましい。穀物植物としては、イネ、ムギ、トウモロコシなどが挙げられるが、好ましい穀物植物としては、イネが挙げられる。
本発明におけるアンモニウムイオンの存在下に発現するアンモニウムトランスポーターの遺伝子としては、野生型においてアンモニウムイオンの存在下に発現するアンモニウムトランスポーターの遺伝子であればよく、アンモニウムイオンの存在下、及び非存在下における発現の確認試験により本発明において使用できる遺伝子あるか否かを確認することができる。本発明のアンモニウムイオンの存在下に発現するアンモニウムトランスポーターの遺伝子は、形質転換される植物由来のものが好ましいが、これに限定されるものではない。好ましい本発明の遺伝子としては、例えば、イネの場合には、OsAMT1;2遺伝子が挙げられる。当該OsAMT1;2遺伝子はイネ由来のものであるから、イネに導入すのが好ましいが、これに限定されるものではない。
本発明の形質転換植物は、植物全体の形態であってもよいが、種子や栽培可能なカルスや、場合によっては細胞の状態であってもよい。一般的には種子の形態が栽培可能な状態として好ましい。
また、本発明は、植物のアンモニウムトランスポーターであって、アンモニウムイオンの存在条件により発現が誘発されるアンモニウムトランスポーターの遺伝子を、プロモーターの下流に結合させた遺伝子構築物を、植物細胞に導入することからなる植物のアンモニウムイオンの吸収能が改善された形質転換体を製造する方法を提供する。
本発明の方法におけるプロモーターとしては、形質転換された植物において発現可能なものであれば特に制限はないが、常時発現させることを望むばあいには、強力なプロモーターを選択することができるし、条件付きで発現を制御したい場合には、条件により作動するプロモーターを選択することもできる。本発明の方法において使用されるプロモーターとしては、カリフラワーモザイクウイルス由来の35Sプロモーターや、形質転換される植物のゲノム由来の各種のプロモーターを使用することもできる。
遺伝子を導入する手法としては、公知の各種の方法を使用することができる。たとえば、カルスを形成させてエレクトロポーレーション法、パーティクルガン法、アグロバクテリウム法などによる方法、またプロトプラストを用いて、エレクトロポーレーション法やPEG法などにより遺伝子を導入することができる。
得られた形質転換体は、そのまま使用することもできるが、野生型または形質転換体同士を掛け合わせて第2世代の種子として使用するのが好ましい。
本発明の形質転換植物は、遺伝子を導入しただけでは、アンモニウムイオンの吸収能が強くなりすぎて、通常の栽培条件ではアンモニウム過剰となり枯死する場合もあるので、遺伝子導入後のスクリーニングの段階において、導入された遺伝子のコピー数を確認するなどの方法により、適度のアンモニウムイオンの吸収能を有するクローンを選別しておくことが好ましい。
アンモニウムイオンの取り込み活性は導入遺伝子の発現量とリンクしている。したがって,導入遺伝子が適度に発現した形質転換イネを選抜することにより,適度のアンモニウムイオンの吸収能を有する形質転換イネの選抜が可能である。
作物の生産性を向上させるために、多量の肥料を与える方法が行われているが、過剰の肥料は環境汚染の要因となり、最小限の肥料で最大の生産性を確保することが望まれている。本発明は、植物の窒素源となるアンモニウムイオンの吸収能を改善した新規な形質転換植物を提供するものである。本発明の形質転換植物は、遺伝子の可変により根からのアンモニウムイオンの吸収能が強化されているために、多量の肥料を必要とせず、作物の生産性を維持しつつ、環境汚染を防止することができるものである。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
RT−PCR法を用いた野生型イネにおけるOsAMT1遺伝子群の発現解析
窒素源を含まない水耕液で3週間生育させた野生型イネを実験材料として用いた。実験区として、窒素源処理を施さない実験区(−N)、0.15mMの硫酸アンモニウム処理を施した実験区(NH )および0.3mMの硝酸カリウム処理を施した実験区(NO )を設けた。それぞれの処理を2時間おこなった後,茎葉部および根より全RNAの抽出をおこない,得られた全RNAを鋳型として一本鎖cDNAの合成をおこなった。得られたcDNAを鋳型としてOsAMT1;1,OsAMT1;2およびOsAMT1;3のそれぞれ特異的なプライマーを用いてPCRをおこなった。また,イネアクチン遺伝子(RAc1; Mcelroy et al. 1990)を陽性コントロールとして用いた。これらのPCR産物は1.2%アガロースゲル電気泳動により分離し、エチジウムブロマイドによる染色により確認した。本実験で用いたプライマーを以下に示す。
OsAMT1;1プライマー
5’-AAGAAGCTCGGCCTGCTCCGC-3’
5’-TGTGCAAAAGAAAATTAAACC-3’
OsAMT1;2プライマー
5’-AACAAGCTGGGCTTGCTGCGC -3’
5’-ACTATCTTTTTCTTCCTATTA -3’
OsAMT1;3プライマー
5’-GCACATCGTGCAGATCCTGG -3’
5’-CTGATACAAACAGGACACGTC -3’
Actinプライマー
5’-CTTCATAGGAATGGAAGCTGCGGGTA -3’
5’-CGACCACCTTGATCTTCATGCTGCTA -3’
結果を図1に示す。
RT−PCR法を用いた野生型イネおよび過剰発現型イネS1におけるOsAMT1;2遺伝子の発現解析
野生型イネおよび過剰発現型イネS1を、窒素源を含まない水耕液で1週間生育させた後、0.15mMの硫酸アンモニウムを単一窒素源としたイネ水耕液に移し2週間生育させた。水耕液は2日に一度交換し、全期間を通して30℃・連続明期条件・湿度60%の人工気象器内で栽培した。実施例1と同様にRT−PCR法を用いて野生型イネおよび過剰発現型イネS1におけるOsAMT1;2およびActinの発現解析をおこなった。本実験で用いたOsAMT1;2およびActinのプライマーは実施例1で用いたプライマーと同一である。
結果を図2に示す。
0.3 mMの硫酸アンモニウム処理を施した過剰発現型イネS1の人工気象器における生育試験
窒素を含まない水耕液で一週間生育させた後、0.15mMの硫酸アンモニウムを単一窒素源としたイネ水耕液に移し2週間生育させた。水耕液は2日に一度交換し、全期間を通して30℃・連続明期条件・湿度60%の人工気象器内で栽培した。
結果を図3に示す。
3mMの硫酸アンモニウムでの過剰発現型イネS1の人工気象器における生育試験
水耕液の硫酸アンモニウムの濃度を3mMとした以外は実施例3と同様にして、剰発現型イネS1の生育試験を行った。
結果を図4に示す。
実施例4と同様にして栽培した野生型イネおよび過剰発現型イネS1の茎葉部を1mMCaCl溶液中で洗浄した後、新鮮重を測定した。その後、氷上で冷却した乳鉢・乳棒を用いて0.4mlの0.01N HCl中で磨砕した。磨砕液を1.5ml容遠心チューブに移し、15,000rpm、4℃で5分間遠心した。上清を限外フィルターに移し、4,400×g,4℃で遠心し、ろ液をサンプルとして使用した。茎葉部に含まれるアンモニウムイオン濃度をアギレント(Agilent)キャピラリー電気泳動システム(G1600A, Agilent Technologeies, Tokyo)を用いて測定した。
結果を図5に示す。
水耕液中のアンモニウムイオン濃度の変化の測定
実施例4と同様に野生型イネおよび過剰発現型イネS1を栽培した。それらの植物体を、窒素を含まない水耕液に移し3日間の窒素飢餓処理をおこなった後、0.15mMの硫酸アンモニウム処理をおこなった。硫酸アンモニウム処理開始時間を0時間とし、15分、30分、1時間、2時間、4時間後の水耕液をサンプルとした。実施例5と同様の方法を用いて,水耕液中に含まれるアンモニウムイオン濃度を測定した。
結果を図6に示す。
0.3mMの硫酸アンモニウムでの過剰発現型イネS5の人工気象器における生育試験
過剰発現型イネとしてS5系統を使用した以外は実施例3と同様にして、剰発現型イネS5の生育試験を行った。
結果を図7に示す。
各種の濃度の硫酸アンモニウムでの野生型イネの人工気象器における生育試験
硫酸アンモニウムが0.3mM、3mM、及び10mMのそれぞれの濃度の水耕液を使用して、実施例3と同様にして野生型イネの生育試験を行った。
結果を図8に示す。
0.3mMの硫酸アンモニウムでの過剰発現型イネS5の温室における生育試験
野生型イネおよび過剰発現型イネS5を、窒素を含まない水耕液で一週間生育させた後、1/5000aポットに移植し、温室内で7週間栽培した。
結果を図9に示す。
過剰発現型イネS5のアンモニア同化能力の測定
実施例6と同様に野生型イネおよび過剰発現型イネS5を栽培した。それらの植物体を、窒素を含まない水耕液に移し3日間の窒素飢餓処理をおこなった後、0.15mMの硫酸アンモニウム処理を4時間おこなった。実施例1と同様にRT−PCR法を用いて野生型イネおよび過剰発現型イネS1におけるOsAMT1;2、アンモニウム同化酵素をコードするNADH−GOGATおよびFd−GOGAT、さらに陽性コントロールであるActinの発現解析をおこなった。本実験で用いたOsAMT1;2およびActinのプライマーは実施例1で用いたプライマーと同一である。また、本実験で用いたNADH−GOGATおよびFd−GOGATのプライマーを以下に示す。
NADH−GOGATプライマー
5’- CAGATTGCATTGGTACATCT-3’
5’- TACAAAACGGCATTTCACCA-3’
Fd−GOGATプライマー
5’- TGCCACGATTTTGAGAGAAT-3’
5’- CAACAACCTGAGAAAACTAC-3’
結果を図10に示す。
本発明は、作物の生産性を維持しつつ、環境汚染を防止することができる新規な形質転換植物を提供するものであり、少量の窒素肥料又は窒素肥料なしで生育可能な植物であることから、産業上極めて有用なものである。
図1は、イネの3種類のOsAMT1遺伝子の発現について、窒素飢餓条件(−N)、アンモニウムイオン存在条件(+NH )、及び硝酸イオン存在条件(+NO )について検討した結果を示す図面に代わる写真である。 図2は、本発明の過剰発現型イネのS1系統におけるOsAMT1;2遺伝子の発現を検討した結果を示す図面に代わる写真である。 図3は、0.3mMの硫酸アンモニウムを単一窒素源としたイネ水耕液で野生型イネと、本発明の過剰発現型イネS1とを3週間生育させた結果を示す図面に代わる写真である。 図4は、3mMの硫酸アンモニウムを単一窒素源としたイネ水耕液で野生型イネと、本発明の過剰発現型イネS1とを3週間生育させた結果を示す図面に代わる写真である。 図5は、野生型イネと本発明の過剰発現型イネS1における葉におけるアンモニウム含量を測定した結果を示すグラフである。図5のグラフの左側は野生型の場合を示し、右側は過剰発現型イネS1の場合を示す。図5のグラフの縦軸は地上部におけるアンモニウムイオンの含量(μモル/gFW)を示す。 図6は、野生型イネと本発明の過剰発現型イネS1における栽培期間中の水耕液中のアンモニウムイオンの量の変化を測定した結果を示すグラフである。図6の横軸は時間(時間)を示し、縦軸は水耕液中の全アンモニウムイオンの量(μg)を示す。 図7は、0.3mMの硫酸アンモニウムを単一窒素源としたイネ水耕液で野生型イネと、本発明の過剰発現型イネS5とを3週間生育させた結果を示す図面に代わる写真である。 図8は、野生型イネを用いて、種々の濃度の硫酸アンモニウムでの栽培実験を行った結果を示す図面に代わる写真である。 図9は、0.3mMの硫酸アンモニウムを単一窒素源として野生型イネと、本発明の過剰発現型イネS5とを、温室で7週間生育させた結果を示す図面に代わる写真である。 図10は、本発明の過剰発現型イネS5系統を用いて、OsAMT1;2遺伝子の導入により、イネのアンモニウム同化能力に変化が生じたかどうかを検討した結果を示す図面に代わる写真である。図10の最上段はOsAMT1;2の発現を示し、上から2段目はNADH−GOGATの発現を示し、上から3段目はFd−GOGATの発現をそれぞれ示す。最下段は陽性コントロールのアクチンを示す。図10のレーン1は野生型イネの葉を示し、レーン2は過剰発現型イネS5の葉を示し、レーン3は野生型イネの根を示し、レーン4は過剰発現型イネS5の根を示す。
配列番号1;本発明の形質転換に使用したOsAMT1;2遺伝子の塩基配列。

Claims (5)

  1. 植物のアンモニウムトランスポーターであって、アンモニウムイオンの存在条件により発現が誘発されるアンモニウムトランスポーターの遺伝子を導入して形質転換された植物。
  2. アンモニウムトランスポーターの遺伝子が、遺伝子を導入される植物と同種の植物に由来するものである請求項1に記載の植物。
  3. アンモニウムトランスポーターの遺伝子が、イネのOsAMT1;2遺伝子である請求項1または2に記載の植物。
  4. 遺伝子が導入される植物が、イネである請求項1〜3のいずれかに記載の植物。
  5. 植物が、種子である請求項1〜4のいずれかに記載の植物。
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