JP2006019164A - アルミ導電線 - Google Patents

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Abstract

【課題】 自動車の配線に用いられる軽量、且つ屈曲性に優れたアルミ導電線を提供する。
【解決手段】Feを0.10〜0.3mass%、Mgを0.03〜0.25mass%、Siを0.02〜0.06mass%含み、残部Al及び不可避不純物からなる線径0.07〜1.50mmのアルミ合金素線を撚り合せて形成した撚線と、該撚線を被覆する樹脂層とからなる引張強度が140MPa以上のアルミ導電線であって、屈曲性、導電性に優れるものである。
【選択図】なし

Description

本発明はアルミ導電線に係り、軽量で屈曲性および柔軟性に優れ、駆動部など動きを伴う部位への適用に優れ、特に自動車の配線に適したもので、ワイヤハーネスやバッテリーケーブルに用いられるアルミ導電線に関するものである。
従来、自動車の配線用電線として主にJIS C3102に規定されるような軟銅線、及びこの軟銅線に錫めっきなどを施した線を撚り合わせて撚り線導体とし、この導体に塩化ビニル、架橋ポリエチレンなどの絶縁体を被覆した電線が使用されてきた。
近年、自動車の高性能化、高機能化に伴って各種電子機器の制御回路が増加して、自動車内の配線箇所が多くなり配線による重量の増大が進む一方、それらに対する信頼性が一層高く要求されようになってきている。また配線スペースの縮減や軽量化の要求に対しては細線化により対応し、さらに環境保護気運の高まりから、リサイクルし易い自動車用電線が要求されている。
このような要求に対して、鋼線に銅を被覆した複合線を用いて、所要の導電率を得て、はんだ付着性も改良すると共に屈曲性と引張強度を高めた自動車用電線導体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
更に、銅合金線を用いることなく、硬銅素線と軟銅素線とを撚り合わせて細径化により機械的強度を確保し、併せて軽量化とリサイクル性を高めた導体断面積0.3mm以下の自動車用電線導体が知られている(例えば、特許文献2参照)。
アルミ線に亜鉛合金被覆を有する配線用導体とすることにより、電気接続上の問題の解決を図ると共に、銅線の導体を使用しないので自動車をリサイクルする際に銅の混入がなく、リサイクル鉄鋼材の品質低下が抑制される配線用電線導体が知られている(例えば、特許文献3参照)。
更に、特許文献4には、Fe、Si、Mgを含むアルミ合金細線を撚り線とした自動車用ワイヤハーネス用アルミ電線が知られている。
特開平3−184210号公報 特開平6−60739号公報 特開平6−203639号公報 特開2004−134212号公報
しかしながら、上記特許文献1、2に開示されている自動車用電線導体は、銅または銅合金を材料とした導体のため重く、更にハンダを使用して端子などと接続するために、リサイクルの際、ハンダに含まれる鉛などが環境汚染物質の一つとなり大きな問題となってきている。
次に、特許文献3で開示されている配線用電線導体は、亜鉛合金を被覆したアルミ線を導体に用いたもので、リサイクルのし易さ、および軽量化の一環として極めて有効である。しかしながら、細電線に使用されるアルミ線は、通常電気用硬アルミ線(JIS C3108)などを主としたもので、銅線の導体に比較すると屈曲性が著しく低く、自動車のドアヒンジ回りなど繰り返し開閉回数の多い部位へ適用されると、早期に破断してしまい、このような構造部位には使用できないという問題がある。
特許文献4では本発明と類似する成分組成の自動車ワイヤハーネス用アルミ電線が開示されているが、Si含有量が0.2〜1.0%と本発明と比較して多く含まれ、更にMg含有量も0.2〜1.0%と本発明より多く、本発明とは異なるものである。そのため、59%IACSを超える良好な導電率を得ることができず、さらに柔軟性についても銅の電線よりも硬く、その効果が優れているとはいえなかった。
本発明は、自動車の性能向上の観点から可能な限りの軽量化を図るために、自動車用ワイヤハーネス導体のアルミ線化について種々試験研究を行い、導電率、耐屈曲性などの導体としての特性を充分に満足すると共に、顕著な軽量化を進めることができる従来の銅線導体を用いた導電線を代替可能なアルミ導電線を提供しようとするものである。
請求項1記載の発明は、Feを0.10〜0.3mass%、Mgを0.03〜0.25mass%、Siを0.02〜0.06mass%含み、残部Al及び不可避不純物からなるアルミ合金素線を撚り合わして形成した撚線からなることを特徴とするアルミ導電線である。
請求項2記載の発明は、Feを0.10〜0.3mass%、Mgを0.03〜0.25mass%、Siを0.02〜0.06mass%含み、残部Al及び不可避不純物からなる線径0.07〜1.50mmのアルミ合金素線を撚り合せて形成した撚線と、該撚線を被覆する樹脂層とからなることを特徴とするアルミ導電線である。
請求項3記載の発明は、アルミ導電線の引張強度が140MPa以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項2記載のアルミ導電線である。
請求項4記載の発明は、導体と、該導体の外周に設けられる被覆層とを備え、該導体が請求項1乃至請求項3記載のいずれかのアルミ導電線であることを特徴とする自動車配線用電線である。
本発明に係るアルミ導電線によれば、アルミ線化により軽量化が図られ、伸線時の加工性、導電性、撚り性(撚り線加工の可否)、耐屈曲性(自動車ドアの開閉時)、柔軟性(ワイヤハーネス組付け時)、同種ならびに異種金属との接続性、及び耐熱性にも優れ、またリサイクルも銅製ワイヤハーネス導体に比べ大幅に容易となり、環境に対する有害物質の発生もなくクリーンであるなどの有用な効果を奏するものである。
図1(a)、(b)、(c)は本発明に係るアルミ導電線の実施態様の一例を示したアルミ導電線の断面図である。図1(a)、(b)、(c)において、1はアルミ導電線、2は撚り線、2aは圧縮導体撚り線、3はアルミ合金素線、4は被覆樹脂である。ここで、撚り線2、2aを構成するアルミ合金素線3の本数は、使用する機器の性能によって、決められるものである。
次に、アルミ導電線を構成するアルミ合金素線の成分組成において、先ず、Feの含有量を0.10mass%以上、0.3mass%以下(以下、mass%を%と略す)に限定する理由は、0.10%未満とした場合、強度が減少し、自動車用導電線として求められる引張強度が満たせない。また、0.3%を超えると自動車用として求められる導電率を得ることができない。従って、Feの範囲は0.10%以上、0.3%以下とした。好ましくは0.20%以上、0.25%以下である。
Siの含有量を0.02%以上、0.06%以下と限定する理由は、0.06%を超えると、所望の導電性が得られず、逆に0.02%未満を含有する場合では、屈曲性が劣るためである。従って、Siの範囲は0.02%以上、0.06%以下と限定し、好ましくは0.03%以上、0.05%以下である。
Mgの添加量を0.03%以上、0.25%以下と限定する理由は、0.25%を超えると所望の導電性が得られず、0.03%未満では屈曲性の向上が見られないためである。従って、Zrの範囲は0.03%以上、0.25%以下と限定し、好ましくは0.1%以上、0.15%以下がよい。
なお、過剰の不可避不純物の含有は導電性を低下させるために少ないほうが良く、Mn0.02%以下、Ti及びVは、その総量を0.025%以下とするのがよい。
次に、線径0.07〜1.50mmのアルミ合金素線を撚り合わせ、その上に樹脂を被覆加工したアルミ導電線の引張強度を140MPa以上と限定したのは、例えば、このアルミ導電線を自動車に組付ける作業中に、アルミ導電線と端子との接続部が破断しないためには、所定以上の引張強度を有する必要があり、140MPaの引張強度を有することにより接続部の健全性が保たれる。そのため、使用するアルミ合金素線にも少なくとも140MPa以上、望ましく160MPa以上の引張強度が必要である。なお、被覆樹脂の層はアルミ導電線の引張強度にはほとんど寄与しないことが知られている。
導電性は、自動車の車載電子機器の高度化につれ、高導電性であることが求められ、その導電率は57%IACS以上、望ましくは59%IACS以上が好ましい。
実用上、充分な屈曲性を維持しつつ、より高い柔軟性を必要とする場合には、伸線加工または撚り線加工後に、熱処理を加えることで、これらの効果を得ることが可能となる。
更に、伸線加工後に低温焼鈍を施すことで、引張強度を維持しつつも屈曲性を高めることが可能となる。その条件としては、温度80℃〜120℃、時間100〜120時間で熱処理するのがよい。
本発明で使用される被覆樹脂は、絶縁性および難燃性の面から、ポリ塩化ビニル(PVC)およびノンハロゲン樹脂が好ましい。特に、その厚みには制限はないが、工業的に見て厚すぎるのは好ましくない。撚り線の線径にもよるが、その厚みは0.10mm〜1.70mm程度が好ましい。
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
表1は本発明例と比較例におけるAl合金の成分組成を示したものである。表1に示す成分組成のAl合金を常法により溶解し、連続鋳造圧延法により線径9.5mmの荒引き線に加工した。なお、この荒引き線への加工方法は、連続鋳造圧延法に限定されるものでなく、押出法などの他の加工方法を用いてもよい。
次に、この荒引き線を線径0.9mmまで伸線加工した後、熱処理上がりの引張強度が150MPa以下となるように350℃で2時間保持の熱処理を加え、更に伸線加工を続けて線径0.32mmのアルミ合金素線を作製した。
なお、撚り線を樹脂被覆した本発明に係るアルミ導電線における引張強度、屈曲性、導電性は、用いたアルミ合金素線の諸特性に影響されることから、作製した線径0.32mmのアルミ合金素線を用いて引張強度、屈曲性、導電性の評価を行った。
引張強度は、線径0.32mmのアルミ合金素線の引張強度をJIS Z2241に準じてn=3で測定し、その平均値を求めた。
導電性についても引張強度と同様に、線径0.32mmのアルミ合金素線を20℃(±0.5℃)に保った恒温漕中で、四端子法を用い、その比抵抗を計測して導電率を算出した。なお、端子間距離は100mmとした。
屈曲性に関しては、図2に示す屈曲試験装置を用いて行った。試料5の線径0.32mmのアルミ合金素線をマンドレル6で挟み、線のたわみを抑えるため下端部に50gの錘7をつるして荷重をかけている。試料5の上端部は接続具8で固定される。
この状態で左右に30度ずつ折り曲げ、毎分100回の速さで繰り返しの折り曲げを行い、破断するまでの折り曲げ回数をそれぞれの試料について測定した。なお、折り曲げ回数は一往復を一回と数え、又マンドレル6の間隔は、試験中に試料5を圧迫しないように1mmとした。
破断の判定は、試料5の下端部に吊るした錘7が落下したときに、破断したものとした。なおマンドレル6は半径90mmの円に相当するような、円弧部をもちあわせたマンドレルで、これにより半径90mm相当の曲げ応力を加えることが可能となる。上記、測定結果を表1に合わせて記す。
総合評価は、引張強度、屈曲性及び導電性の材料特性、並びに軽量化可能性及びリサイクル性の環境特性について評価した。
屈曲性は60000回以上、引張強度は160MPa以上、導電性は導電率59%IACS以上、軽量化可能性は従来のCu製より軽くできるもの、リサイクル性は自己転回が容易なもの、これらの全てを満足する場合を「○」、材料特性は満足するが環境特性を満足しないものを「△」、材料特性を一つでも満足しないものを「×」とした。なお、特に72000回以上の屈曲性、180MPa以上の引張強度、60%IACS以上の導電性を有して環境特性も満足するものについては「◎」と記した。
Figure 2006019164
表1から明らかなように、本発明例No.1〜No.16では、屈曲性、引張強度、導電性のいずれもが優れ、アルミ合金による軽量性およびリサイクル性を充分に利用できるものである。
これに対し、従来例No.100では屈曲性などは優れているが、Cu合金製であるため重く、リサイクル性に劣った。従来例No.101は純アルミ電線なので屈曲性に劣っている。特許文献4記載の本発明例1に準拠した成分組成のアルミ合金素線である比較例No.102は、導電率が56.0%IACSと低く、その屈曲性も満足しているとはいえない。
比較例No.20では、Fe、Si、Mgの各含有量が少ないために屈曲性が大きく劣っている。Feの含有量が少ない比較例No.21,No.22においてはSi、Mg含有量がそれぞれ等しい本発明例No.2、No.3に対して屈曲性が大きく低下しているのがわかる。又、Feの含有量の多い比較例No.29、No.30では59%IACS以上の導電率が得られない。
Mgの含有量が少ない比較例No.23、No.26では屈曲性が劣り、Mgの含有量の多い比較例No.25、No.28では導電率の低下が見られるのがわかる。
Siの含有量が少ない比較例No.24では、Fe、Mg含有量の等しい本発明例No.7に比較して屈曲性が大きく低下している。Siの含有量が多い比較例No.27では導電率の低下が見られる。
(実施例2)
実施例1で作製した表1の本発明例No.1及びNo.9の線径0.32mmのアルミ合金素線を7本撚りし、ノンハロゲン樹脂を被覆して、図1(c)に示すアルミ導電線を作製し、その引張強度を実施例1と同様の方法で測定したところ、それぞれ141MPa、157MPaの値を得た。この値は、自動車への組み付け時のアルミ導電線と端子の接続部の信頼性を満足するものである。
(実施例3)
実施例1で作製した線径0.32mmの表1の本発明例No.9、従来例No.100の銅線、及び従来例No.102のAl−0.4Fe−0.3Mg−0.3Si合金線をそれぞれ7本ずつ撚り合わせ導体面積0.5mmの撚り線を作製し、さらにその線に樹脂被覆を施した上でそれぞれ30本束ね、PVCテープで結束した試料を作製し、この試料を用いて柔軟性の評価を行った。
図3は、柔軟性試験方法の説明図で、2点支持柔軟性試験冶具9の支持間隔100mmに設定された支持体の直径19mmのマンドレル10に、長さ350mmとした試料11をマンドレル上で支持し、両マンドレルの中間部を引張試験機(図示せず)を用いて下方に引張することで試料11の引抜強さを測定し、柔軟性の評価を行った。
本発明例No.9の引抜強さは14.3N、銅線の従来例No.100では13.6N、特許文献4の発明例である従来例No.102では21.6Nとなり、本発明に係るアルミ導電線の柔軟性は、ほぼ銅線のそれと同じであり、従来のアルミ導電性と比べて格段に柔軟性が向上することがわかる。
本発明に係るアルミ導電線の実施様態の一例を示すアルミ導電線の断面図で、(a)19本のアルミ合金素線からなる撚り線に樹脂被覆したアルミ導電線、(b)7本のアルミ合金素線からなる撚り線に樹脂被覆したアルミ導電線である。(c)7本のアルミ合金素線からなる圧縮導体撚り線に樹脂被覆したアルミ導電線である。 本発明で用いた屈曲性試験の説明図である。 本発明で用いた柔軟性試験方法の説明図である。
符号の説明
1 アルミ導電線
2 撚り線
2a 圧縮導体撚り線
3 アルミ合金素線
4 被覆樹脂
5 試料(アルミ合金素線)
6 マンドレル
7 錘
8 接続具
9 2点支持型柔軟性試験冶具
10 マンドレル
11 試料



Claims (4)

  1. Feを0.10〜0.3mass%、Mgを0.03〜0.25mass%、Siを0.02〜0.06mass%含み、残部Al及び不可避不純物からなるアルミ合金素線を撚り合わして形成した撚線からなることを特徴とするアルミ導電線。
  2. Feを0.10〜0.3mass%、Mgを0.03〜0.25mass%、Siを0.02〜0.06mass%含み、残部Al及び不可避不純物からなる線径0.07〜1.50mmのアルミ合金素線を撚り合せて形成した撚線と、該撚線を被覆する樹脂層とからなることを特徴とするアルミ導電線。
  3. アルミ導電線の引張強度が140MPa以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項2記載のアルミ導電線。
  4. 導体と、該導体の外周に設けられる被覆層とを備え、該導体が請求項1乃至請求項3記載のいずれかのアルミ導電線であることを特徴とする自動車配線用電線。


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