図1は、本発明に係る用紙後端押え構造60が装着された後処理装置10の一実施形態の内部構造を説明するための側面視の説明図である。図1に示すように、用紙後端押え構造60を備えた後処理装置10は、複写機やファクシミリ装置、さらには各種のプリンタとして適用される画像形成装置19に隣設されるものであり、縦長の箱状を呈した筐体11内に、用紙搬送路Rに沿って用紙Pに綴り孔を穿孔するためのパンチング処理を施すパンチ部12と、このパンチ部12の下流側(図1の左方)に設けられて用紙Pを行き先別に振り分ける用紙振分け部13と、この用紙振分け部13の下部に配設され排紙された用紙Pの束(用紙束P1)を一時的に貯留するとともに、用紙束P1に対して当該用紙束P1を綴じるためのステイプル処理を施すスタック部20と、ステイプル処理後の用紙束P1に中折り処理を施す中折り処理部16とが内装されることによって構成されている。
前記筐体11外には、その背面側に立設されたジョブトレイ14と、このジョブトレイ14の下方位置に配設された汎用トレイ15と、この汎用トレイ15と対向するように筐体11の下端部に配設された中折りトレイ17とが設けられている。ジョブトレイ14および汎用トレイ15には、中折り処理が施されない用紙Pや用紙束P1が排紙されるのに対し、中折りトレイ17には、中折り処理部16における中折り処理が施された用紙束P1が排出される。
前記用紙搬送路Rは、筐体11の正面側(図1の右方)の上部に設けられた、画像形成装置19の排紙口191から排紙される用紙Pを受け継ぐための用紙受継ぎ開口111から用紙振分け部13へ向かう入口側搬送路R1と、この入口側搬送路R1に続く、用紙振分け部13に形成された環状搬送路R2と、この環状搬送路R2から上方後部に向かって分岐されたジョブトレイ向け搬送路R3と、用紙振分け部13からジョブトレイ向け搬送路R3の下部で汎用トレイ15へ向かうように分岐された汎用トレイ向け搬送路R4と、用紙振分け部13からスタック部20へ向けて垂下されたスタック部向け搬送路R5と、スタック部20内を上下に縦貫するように形成されたスタック部搬送路R6と、このスタック部搬送路R6と連通可能な状態で中折り処理部16内を斜めに貫通するように形成された中折り部内搬送路R7と、中折り処理部16内で中折り処理の施された用紙束P1を搬出するための搬出搬送路R8とからなっている。
前記用紙振分け部13には、それぞれ適所に搬送路切り換え用の切換え部材が設けられ、これらの切換え部材の所定の切り換え動作によって画像形成装置19から用紙受継ぎ開口111を介して入口側搬送路R1内に排紙された用紙Pは、予め設定された搬送路を通って目的の場所に送り込まれることになる。
前記パンチ部12は、入口側搬送路R1の上方位置に設けられている。かかるパンチ部12は、内部にパンチ刃を昇降させるパンチ機構121を有し、入口側搬送路R1に導入された用紙Pは、搬送が一時的に停止された状態でパンチ機構121の駆動によるパンチ刃の昇降で所定の位置にパンチ孔が穿孔されるようになっている。
前記用紙振分け部13は、入口側搬送路R1から送り込まれた用紙Pをスタック部向け搬送路R5へ向かわせるための退避ドラム131を有している。この退避ドラム131は、用紙Pを入口側搬送路R1からスタック部向け搬送路R5へ直接向かわせようとした場合、用紙Pが略直角に折れ曲がった状態になるのを防止して円滑にスタック部向け搬送路R5へ送り込むためのものであり、軸心回りに時計方向に向かう回転で用紙Pをその周面に沿わせることにより、用紙Pは、大きな角度変化が生じることなくスタック部向け搬送路R5に導入されるようになっている。
スタック部向け搬送路R5の略中間位置には、用紙Pをスタック部搬送路R6へ向けて押し出すガイドローラ対R51が設けられており、用紙Pは、このガイドローラ対R51の駆動により安定した定速状態でスタック部搬送路R6に導入されるようになっている。
前記ジョブトレイ14は、上下に所定間隔で並設された複数枚の単位トレイ141からなり、ジョブの種類に応じていずれかの単位トレイ141を選択し得るようになっている。この選択のために、ジョブトレイ14は、筐体11の背面部に立設された支柱112に沿って昇降可能に構成され、所望の単位トレイ141が選択されると、この単位トレイ141の基端側が前記ジョブトレイ向け搬送路R3の下流端と対向する位置に設定されるようになっている。したがって、ジョブトレイ向け搬送路R3を通って排紙された用紙Pは、予め選択された単位トレイ141に排紙されることになる。
前記汎用トレイ15は、特にジョブトレイ14での排紙先である単位トレイ141が選択されない用紙Pや用紙束P1、すなわち、汎用トレイ向け搬送路R4を通って排紙される一般的な用紙Pおよび一旦スタック部搬送路R6で所定の後処理が施された用紙束P1を受けるものであり、その基端側が汎用トレイ向け搬送路R4の下流端に対向配置されるようになっている。
前記スタック部20は、スタック部向け搬送路R5を通ってスタック部搬送路R6に順次導入された用紙Pを一時貯留して用紙束P1を形成するとともに、この形成された用紙束P1に対して端部を揃える整合処理と、用紙束P1を綴結する、いわゆるステイプル処理とを施すものである。スタック部向け搬送路R5は、下流端がスタック部搬送路R6の中間位置より若干上方位置に対向されている一方、スタック部搬送路R6の上端部は前記汎用トレイ向け搬送路R4に対向されている。
したがって、スタック部向け搬送路R5を通って一旦スタック部搬送路R6に導入された用紙Pは、ここで用紙束P1となってステイプル処理が施された後、当該用紙束P1がスタック部搬送路R6の上端部から汎用トレイ向け搬送路R4を介して汎用トレイ15に排出されることになる。
前記中折り処理部16は、スタック部20で中央部にステイプル処理が施された用紙束P1に対して、同中央部を境にして折り畳む、いわゆる中折り処理を施す部位であり、中折りユニット161が設けられている。
この中折りユニット161は、中折り部内搬送路R7の中央上部に設けられた中折りローラ対162と、中折り部内搬送路R7の下部に中折りローラ対162と対向して設けられた中折り部内搬送路R7を横断する板状の押し型163と、搬出搬送路R8の下流端に設けられた搬出ローラ対164と、この搬出ローラ対164の下流側で所定の軸回りに揺動可能に設けられた押え部材165とを備えて構成されている。
前記押し型163は、用紙束P1が中折り部内搬送路R7に搬入された状態で、ステイプル処理が施されている部分を、図略の駆動手段の駆動によって中折りローラ対162間に向けて押圧するようになされている。したがって、押し型163により中央部が押圧されて中折り状態になった用紙束P1は、中折りローラ対162の駆動で搬出搬送路R8内に引き入れられ、搬出搬送路R8、搬出ローラ対164および押え部材165を介して中折りトレイ17に排出されることになる。
以下、前記スタック部20について、図2を基に、必要に応じて図1を参照しながら説明する。図2は、スタック部20(後処理ユニット30)の一実施形態を示す概略側面図である。なお、図2においては、受けユニット40およびカバーユニット50の各幅方向(図2の紙面に直交する方向)一対の側板41の内、図2に向かって手前側のものを取り外した状態を示している。
まず、図2に示すように、スタック部20は、スタック部向け搬送路R5からの用紙Pを受ける受けユニット40と、この受けユニット40の用紙受け面に開閉自在に被せられるカバーユニット50とからなる後処理ユニット30を備えている。
前記受けユニット40は、上端部が前記汎用トレイ向け搬送路R4に対向するとともに、下端部が筐体11の図1における右方下部に位置するように長さ設定されて斜めに配された幅方向一対の側板41間に、用紙Pを受ける用紙受け板42と、この用紙受け板42上に積層されて形成した用紙束P1を前記用紙受け板に沿って上方位置と下方位置との間で昇降させる用紙昇降部材43と、各側板41間における上下方向の略中間位置に架設されたステイプル機構44と、前記用紙昇降部材43を用紙受け板42に沿って昇降させる昇降用無端ベルト45とが介設されることによって構成されている。
前記用紙受け板42は、幅方向(図2の紙面に直交する方向)に複数枚が並設されているとともに、前記昇降用無端ベルト45は、並設された用紙受け板42間の隙間に嵌り込んだ状態で配設されている。前記用紙昇降部材43は、かかる用紙受け板42間に設けられた昇降用無端ベルト45に固定され、昇降用無端ベルト45の正逆周回によって用紙受け板42に沿って昇降するようになっている。
前記ステイプル機構44(図2)は、後処理ユニット30の受けユニット40およびカバーユニット50間で前記用紙昇降部材43に支持された状態の用紙束P1に対してステイプル処理を施すものであり、ステイプル用の綴り針の供給機構や、供給された綴り針を用紙束P1に打ち込む打ち込み機構などが備えられているが、ここでは説明を省略する。
前記昇降用無端ベルト45は、図2に示すように、一対の側板41間に架設された所定個数のベルト支持ローラに掛け回され、側板41間であって長手方向の略中間位置に設けられたベルト用モータ451の駆動で周回するようになっている。前記ベルト支持ローラとしては、ベルト用モータ451の駆動軸に同心で固定された駆動ローラ452と、一対の側板41間の上端部、同下端部および一対の側板41間であって昇降用無端ベルト45を前記駆動ローラ452に巻き掛け得る位置にそれぞれ設けられた所定個数の従動ローラ453とが採用されている。
したがって、昇降用無端ベルト45は、ベルト用モータ451の正逆駆動により駆動ローラ452を介して各従動ローラ453間を正逆周回し、これによって当該昇降用無端ベルト45に連結されている用紙昇降部材43が用紙受け板42に沿って昇降することになる。
また、前記用紙昇降部材43は、図2に示すように、従動ローラ453の内の最下位に位置した最下位ローラ453aを介して受けユニット40およびカバーユニット50間の用紙束支持位置から一対の側板41間の下部の位置である退避位置へ向けて揺動し得るようになっている。そして、用紙昇降部材43が退避位置に位置することによって、スタック部搬送路R6が中折り部内搬送路R7に連通され、これによってステイプル機構44で中折り用のステイプル処理(用紙束P1の中央部がステイプルされる)が施された用紙束P1が中折り部内搬送路R7へ向かい得るようになっている。
前記カバーユニット50は、用紙Pがスタック部搬送路R6に排紙されることによって形成した用紙束P1の昇降を受けユニット40の用紙受け板42と対向してガイドするために当該受けユニット40に被せられるものであり、幅方向(図2の紙面に直交する方向)一対の側板51と、これら一対の側板51間で受けユニット40の用紙受け板42と対向するように架設された被せ板52と、前記ステイプル機構44と対向した位置に設けられた受け部53とを備えて構成されている。前記受け部53は、ステイプル機構44が用紙束P1に対してステイプル処理を施す際の受け台としての役割を果たすものであり、ここには中綴じ用のステイプラのクリンチャー部が設けられている。
かかるカバーユニット50は、最下位ローラ453aを軸支するローラ軸453b回りに回動自在に軸支され、このローラ軸453b回りに正逆回動することによってスタック部搬送路R6を閉止した、図2において実線で示す閉止姿勢と、スタック部搬送路R6を開放した、図2に二点鎖線で示す開放姿勢との間で姿勢変更可能になっている。
そして、本発明においては、図2に示すように、カバーユニット50の上端部の斜め上方であって、ガイドローラ対R51の略直下におけるスタック部向け搬送路R5の後方位置(図2の右方)に用紙後端押え構造60が設けられているとともに、この用紙後端押え構造60の上方位置であって、ガイドローラ対R51の前方のローラの前方位置に姿勢維持部材70が設けられている。
前記用紙押付け部材61は、ガイドローラ対R51を介してスタック部搬送路R6へ排紙された用紙Pの後端縁部(上縁部)を、受けユニット40の用紙受け板42へ向けて押し付けるためのものである。この押し付け状態で用紙昇降部材43が上昇されることにより、用紙束P1の上端部が姿勢維持部材70と用紙受け板42との間に誘導され、これによって直前にスタック部搬送路R6に到達した用紙Pがつぎに送られてくる用紙Pの排紙の邪魔にならないようにするためのものである。
前記姿勢維持部材70は、用紙昇降部材43の昇降動作による用紙束P1の整合処理動作において、用紙束P1の上縁部がばらけてスタック部搬送路R6からスタック部向け搬送路R5の方向に向けて逆流するのを防止するためのものであり、前記用紙押付け部材61との協働によって用紙束P1の頁狂いが防止される。
以下、図3および図4を基に、本発明に係る用紙後端押え構造60について詳細に説明する。図3は、用紙後端押え構造60の側面図である。また、図4は、図3に示す用紙後端押え構造60の斜視図であり、(イ)は、用紙押付け部材61が待機姿勢に姿勢設定された状態、(ロ)は、用紙押付け部材61が用紙押付け姿勢に姿勢設定された状態をそれぞれ示している。
用紙後端押え構造60は、図3に示すように、カバーユニット50の上端位置とガイドローラ対R51との間の空間に、用紙受け板42と対向するように設けられている。かかる用紙後端押え構造60は、図4に示すように、用紙搬送方向に直交して用紙幅方向に延びる支持軸69回りに揺動して用紙の後端部を前記用紙受け板42に押し付ける用紙押え姿勢と、この押し付けを解除して待機する待機姿勢との間で姿勢変更可能な用紙押付け部材61と、この用紙押付け部材61に前記姿勢変更を行わせるように駆動するステップモータ62と、このステップモータ62と前記用紙押付け部材61との間に介設されるギヤ機構63とを備えて構成されている。
前記支持軸69は、筐体11内の所定のフレーム間における被せ板52の直上位置で幅方向(図3の紙面に直交する方向)に延びるように架設されているとともに、前記用紙押付け部材61は、その下縁部がこの支持軸69回りに揺動自在に軸支され、これによって図3に実線でおよび図4の(イ)に示す待機姿勢S1と、図3に二点鎖線でおよび図4の(ロ)に示す用紙押え姿勢S2との間で姿勢変更可能になっている。
かかる用紙押付け部材61は、平板状の用紙押付け板611と、この用紙押付け板611の上縁部から図3における右方に突設された幅方向に長尺の上縁堰612と、同下縁部から同右方に突設された幅方向に長尺の下縁堰613と、これら上縁堰612および下縁堰613間に架設された幅方向一対の架設板614と、各架設板614の外方位置に設けられた幅方向一対の扇状部材615とを備えて構成されている。
前記一対の架設板614間には、各架設板614を貫通した状態で第1筒軸616が架設されている。そして、前記用紙押付け部材61は、このような第1筒軸616に前記支持軸69が貫通されることにより支持軸69回りに揺動可能に支持されている。
前記ステップモータ62は、その正逆駆動によって用紙押付け板611をギヤ機構63を介し待機姿勢S1と用紙押え姿勢S2との間で姿勢変更させるものであり、本実施形態においては、用紙押付け部材61の一方の端部に対応する位置においてその駆動軸621を幅方向に延ばした状態で筐体11内の所定のフレームに固定されている。
本発明において、用紙押付け板611の姿勢変更操作にステップモータ62が使用されるのは以下の理由による。すなわち、ステップモータ62は、パルス信号で駆動されるものであり、ディジタル制御系から直接駆動させることが可能であって、パルス数に比例した正確な回転角が得られることから、通常の電動モータを採用した場合に比較し、用紙押付け板611の揺動範囲に対して極めて精度の高い制御を実現することができるためである。かかるステップモータ62を採用したことにより、用紙押付け板611の揺動範囲を確保するための当り部材などを設けなくても、用紙押付け板611を待機姿勢S1と用紙押え姿勢S2との間で正確に姿勢変更させることが可能になる。
前記ギヤ機構63は、前記ステップモータ62の駆動軸621に同心で一体に取り付けられた小径ギヤ631と、この小径ギヤ631に噛合する当該小径ギヤ631より径寸法が大きい大径ギヤ632と、この大径ギヤ632に噛合する扇形ギヤ633とを備えて構成されている。
前記大径ギヤ632は、小径ギヤ631の図3における左方位置に設けられている。かかる大径ギヤ632は、用紙押付け部材61の一対の架設板614の外側位置にそれぞれ第2筒軸634と同心で一対が設けられている。第2筒軸634には、筐体11内の所定のフレーム間に架設された架設軸64が嵌入され、これによって大径ギヤ632が架設軸64回りに回転可能に軸支されている。
また、前記第2筒軸634は、前記用紙押付け部材61の扇状部材615の曲率周縁と当接するように設定位置が設定され、これによって用紙押付け部材61が支持軸69回りに揺動することにより第2筒軸634が前記曲率周縁と摺動するようになっている。
前記扇形ギヤ633は、前記一対の大径ギヤ632とそれぞれ噛合するように用紙押付け部材61に一体で一対が設けられている。かかる扇形ギヤ633は、曲率中心が前記支持軸69の軸心と同心となるように扇状部材615と一体で形成されている。したがって、図3に実線でおよび図4の(イ)に示すように、用紙押付け板611が待機姿勢S1に姿勢設定された状態で、ステップモータ62が正駆動(架設軸641を軸心回りに反時計方向に回動させる駆動)されることにより、駆動軸621の駆動回転が小径ギヤ631および各大径ギヤ632を介して各扇形ギヤ633に伝達され、各扇形ギヤ633が支持軸69回りに反時計方向に向けて回動し、これによって扇形ギヤ633と一体の用紙押付け板611は、扇形ギヤ633と一体的に反時計方向に回動して、図3に二点鎖線でおよび図4の(ロ)に示すように、用紙押え姿勢S2になる。
そして、用紙押付け板611が用紙押え姿勢S2に姿勢設定された状態で、ステップモータ62が逆駆動されると、その駆動は、駆動軸621,小径ギヤ631および大径ギヤ632を介して扇形ギヤ633に伝達され、この扇形ギヤ633の支持軸69回りの時計方向に向かう回動によって用紙押付け板611は、元の待機姿勢S1に戻される。
本発明においては、用紙押え姿勢S2における用紙押付け板611の傾斜角度を、状況に応じて予め設定することができるようになっている。具体的には、後述する制御部80に予め用紙押付け板611の傾斜角度を入力しておくことにより、用紙押付け板611が待機姿勢S1から用紙押え姿勢S2に姿勢変更するに際し、制御部80からステップモータ62に向けて用紙押付け板611の傾斜角度に対応した制御信号が出力され、この制御信号に基づくステップモータ62の駆動によって用紙押付け板611は予め入力されたとおりの傾斜角度になる。
図5は、用紙後端押え構造60の作用を示す説明図であり、(イ)は、最初の用紙Pがスタック部搬送路R6内に排紙された直後の状態、(ロ)は、スタック部搬送路R6内に排紙された用紙Pが用紙昇降部材43の下降で下がった状態、(ハ)は、スタック部の搬送路R6内で一旦下がった用紙Pが用紙昇降部材43の上昇で上がった状態、(ニ)は、つぎの用紙Pがスタック部搬送路R6に排紙されつつある状態をそれぞれ示している。
まず、図5の(イ)に示す状態では、画像形成装置19(図1)から後処理装置10へ受け渡され、入口側搬送路R1を通り、ガイドローラ対R51の駆動で後処理ユニット30のスタック部搬送路R6に排紙された用紙Pは、支持軸69上に起立した状態の待機姿勢S1に姿勢設定された用紙押付け部材61の前面側(図5の左側)に案内され、スタック部搬送路R6内で用紙受け位置に位置設定された用紙昇降部材43の当止板431によって下端縁部が支持された状態になっている。
この状態で、ベルト用モータ451(図1)が駆動され、これによる昇降用無端ベルト45の時計方向に向かう周回で用紙昇降部材43が図5の(イ)に二点鎖線で示す下方位置にまで下降される。これと同期して待機姿勢S1に姿勢設定されていた用紙押付け部材61がステップモータ62の駆動による小径ギヤ631、大径ギヤ632および扇形ギヤ633を介した用紙押付け部材61の支持軸69回りの反時計方向へ向かう回動で当該用紙押付け部材61が用紙押え姿勢S2に姿勢変更され、このときの回動による押し付け作用で用紙Pの上縁部が、図5の(ロ)に示すように、用紙受け板42へ向けて押し付けれる。
ついで、図5の(ハ)に示すように、用紙押付け部材61の用紙押え姿勢S2が維持された状態で、用紙昇降部材43が二点鎖線で示す下方位置から実線で示す元の用紙受け位置に向けて上昇させられる。この上昇によって用紙Pもスタック部搬送路R6内を上昇するが、この上昇に当り用紙Pの上縁部は用紙押え姿勢S2に姿勢設定された用紙押付け部材61によって下部誘導板72より前方(図5の左方)側に押し付けられているため、たとえ用紙Pの上端部がカール癖などでガイドローラ対R51の方向に向けて傾いていても、用紙Pは、その上縁部が下部誘導板72を越えてガイドローラ対R51に向かうことなく、用紙受け板42と姿勢維持部材70との間に入れられる。
そして、用紙Pの上端部が下部誘導板72と用紙受け板42との間に位置した状態で、ステップモータ62が逆駆動されることにより、用紙押付け部材61が支持軸69回りに時計方向へ向けて所定角度回動させられて待機姿勢S1に姿勢設定され、この状態で、図5の(ニ)に示すように、2枚目の用紙Pがスタック部搬送路R6に供給される。したがって、2枚目の用紙Pが1枚目の用紙Pより前方に嵌め込まれるようなことはない。
ついで、2枚目の用紙Pに関して、図5の(イ)〜(ニ)に示す操作が繰り返され、3枚目以降も同様の操作が繰り返されるため、スタック部搬送路R6には、頁狂いが防止された状態で用紙束P1が順次形成されていく。
そして、用紙Pがスタック部搬送路R6に供給される都度、用紙昇降部材43は、当止板431で用紙束P1の下端縁面を支持した状態で上方位置と下方位置との間を往復動(昇降)するため、これによる揺さぶり作用によって用紙束P1は、上下の縁部が揃ったいわゆる整合状態になる。
そして、最後の用紙Pがスタック部搬送路R6に供給されると、用紙昇降部材43は、ベルト用モータ451(図2)の駆動による昇降用無端ベルト45の反時計方向へ向かう周回によって用紙受け板42の上端部にまで移動し、これによって用紙束P1は、汎用トレイ向け搬送路R4を介して汎用トレイ15に向かうことになる。
このように構成された用紙後端押え構造60を有する後処理装置10には、マイクロコンピュータからなる制御部80が設けられ、この制御部80による制御で用紙後端押え構造60が適正に動作し、これによって用紙Pがスタック部内搬送路R6に円滑に導入されるとともに、導入された用紙Pに対して確実な整合処理が施されるようになっている。
図6は、制御部80による用紙束P1の整合制御を説明するためのブロック図である。この図に示すように、制御部80は、中央演算処理装置であるCPU81と、このCPU81に付設された読み出し専用のROM82と、同読み書き自在のRAM83とを備えた基本構成を有している。ROM82には、本制御を実行するためのプログラムが記憶されており、後処理装置10に電源が入れられる都度、プログラムがCPU81に読み込まれるようになっている。これに対し、RAM83は、制御に必要な一時的なデータを読み書きするために使用されるものである。
前記CPU81には、用紙受入れ判別部811と、用紙押付け指示部812と、用紙束昇降指示部813と、用紙終了判別部814とが設けられている。CPU81外には、1ジョブにおいてスタック部搬送路R6に排紙される用紙Pの枚数をカウントするカウンタ84が設けられている。
前記用紙受入れ判別部811は、用紙Pがスタック部向け搬送路R5を通過する度に用紙押付け指示部812および用紙束昇降指示部813に向けて所定の信号を出力するものである。そのために、ガイドローラ対R51の近傍適所には、用紙Pがガイドローラ対R51を介してスタック部搬送路R6へ向かうことを検出する用紙受入れセンサ801が設けられ、この用紙受入れセンサ801が用紙を検出する度に当該検出信号が用紙受入れ判別部811へ入力されるようになっている。用紙受入れ判別部811は、この検出信号が入力される度に用紙Pがスタック部搬送路R6へ受け入れられたと判別し、用紙押付け指示部812および用紙束昇降指示部813へ向けてそのことを示す信号を出力するようになっている。
前記用紙押付け指示部812は、用紙受入れセンサ801からの検出信号を得た後、用紙昇降部材43が上方位置から下方位置に下降してから(図5の(イ)に二点鎖線で表示)、ステップモータ62に向けて待機姿勢S1に姿勢設定されている用紙押付け部材61を用紙押え姿勢S2に姿勢変更させるための制御信号を出力する一方、下方位置に位置設定されていた用紙昇降部材43が上方位置に姿勢変更されたときには、ステップモータ62に向けて用紙押付け部材61を元の待機姿勢S1に姿勢変更させる(図5の(ニ)参照)ための制御信号を出力するようになっている。
そして、用紙押付け部材61にかかる動作を行わせるために、適所に昇降部材位置センサ802が設けられている(図2に示す例では、昇降部材位置センサ802はベルト用モータ451の近傍に設けられ、ベルト用モータ451の回転数を検出することによって用紙昇降部材43の高さレベルを得るようになっている)。そして、昇降部材位置センサ802の検出信号は、一旦用紙受入れ判別部811に入力され、ここでの判別結果に基く信号が用紙押付け指示部812ヘ向けて出力され、この信号を受けた用紙押付け指示部812は、ステップモータ62に対して用紙押付け部材61が所定の姿勢変更するための制御信号を出力するようになっている。
前記用紙束昇降指示部813は、用紙押付け部材61が待機姿勢S1から用紙押え姿勢S2に姿勢変更された後、ベルト用モータ451へ向けてモータ駆動の制御信号を出力するものである。そのために、用紙押付け部材61の近傍には、当該用紙押付け部材61が待機姿勢S1および用紙押え姿勢S2のいずれの姿勢になっているかを検出する押付け部材姿勢センサ803が設けられている。そして、用紙受入れ判別部811は、用紙押付け部材61が用紙押え姿勢S2に姿勢設定されていることを検出した前記付勢部材姿勢センサ803からの検出信号が入力されると、用紙束昇降指示部813に向けてそのことを示す信号を出力するようになっている。
したがって、この信号を受けた用紙束昇降指示部813は、ベルト用モータ451に対し昇降用無端ベルト45を介して用紙昇降部材43を所定距離だけ上昇させる制御信号を出力する一方、用紙押付け部材61が待機姿勢S1に姿勢設定されることにより、用紙昇降部材43を下方位置まで下降させる制御信号をベルト用モータ451へ向けて出力するようになっている。
また、本実施形態においては、制御部80はカウンタ84を有し、このカウンタ84は、用紙受入れセンサ801が用紙Pを検出する都度、その枚数をカウントするようになされている一方、画像形成装置19から後処理装置10へ排紙される用紙Pの枚数がCPU81へ入力されるようになっており、用紙受入れ判別部811は、カウンタ84がカウントした枚数が画像形成装置19からの枚数情報と一致した時点で、用紙押付け部材61を初期状態(図5の(イ))に戻す信号を用紙押付け指示部812に向けて出力するとともに、用紙昇降部材43をガイドローラ対R51近傍まで上昇させる信号を用紙束昇降指示部813へ向けて出力するようになっている。これによってスタック部搬送路R6で整合された用紙束P1は、汎用トレイ向け搬送路R4を介して汎用トレイ15へ排紙されることになる。その後、用紙昇降部材43は、初期位置(図5の(イ)において実線で表示)に戻され、つぎのジョブの用紙Pに備えられる。
以上詳述したように、本実施形態に係る用紙スタック機構は、搬送されてくる用紙Pを立設型の用紙受け板42を備えたスタック部20に一時的に貯留するように構成されたものであり、スタック部20の入口側には、用紙Pが用紙受け板42に排紙される度に用紙Pの後端部を当該用紙受け板42に押し付ける用紙後端押え構造60が設けられ、この用紙後端押え構造60は、用紙搬送方向に直交して用紙幅方向に延びる支持軸69回りに揺動して用紙Pの後端部を用紙受け板42に押し付ける用紙押え姿勢S2と、この押し付けを解除して待機する待機姿勢S1との間で姿勢変更可能な用紙押付け板611と、用紙押付け板611に姿勢変更を行わせるように駆動するステップモータ62とを備えて構成されステップモータ62と、用紙押付け板611との間には、ステップモータ62の駆動軸の回転速度を減速して用紙押付け板611に伝達するギヤ機構63が介設されてなるものである。
スタック機構をこのように構成することにより、スタック部20へ排紙された用紙Pは、その後端がステップモータ62の駆動によるギヤ機構63を介した用紙押付け板611の待機姿勢S1と用紙押え姿勢S2との間の揺動動作によって用紙受け板42に向けて押し付けられるため、たとえ排紙された用紙Pの後端が用紙受け板42からめくれ上がっているような場合であっても、当該後端のめくれ上がりが解消され、これによってつぎに排紙される用紙Pの前端と、先に排紙された用紙Pの後端とが互いに干渉するような不都合が生じることはなく、用紙受け板42に順次排紙された用紙Pは適正に積層されて用紙束P1となる。
そして、用紙押付け板611は、当該用紙押付け板611に一体的に設けられた扇形ギヤ633を介してステップモータ62からの駆動力を受けて揺動するようになっているため、従来のようなカム機構を介して駆動モータの駆動を用紙押付け板に伝達するものに比較し、用紙押付け板611の回転角度の精密な制御が可能になり、これによって用紙押付け板の揺動終点位置でのバウンドの発生を確実に抑えることができる。
したがって、従来、バ用紙押付け板611のウンドが収まるまでつぎの用紙Pのスタック部搬送路R6への導入を待機させなければならず、これによって用紙Pの搬送効率が低下するという不都合が存在したが、本実施形態では、バウンドの発生が抑えられるため、かかる不都合は生じないばかりか、ギヤ機構63で用紙押付け板611が動作されるので、用紙押付け板611による用紙の押え時および戻し時に当り部材に衝突させる必要がなく、当該衝突に起因した騒音を抑えた上で生産性を向上させることができる。
また、用紙押付け板611に揺動による姿勢変更動作を行わせるように駆動する駆動源としてステップモータ62が採用されているため、当該ステップモータ62は、パルス信号で駆動されるものであり、ディジタル制御系から直接駆動させることが可能であり、必ずしもフィードバック制御が必要ではなく、パルス数に比例した正確な回転角が得られることから、用紙押付け板611の揺動範囲に対して極めて精度の高い制御を実現することができる。
したがって、用紙押付け板611の揺動範囲を確保するための当り部材などを設ける必要がなくなり、これによって用紙押付け板611と当り部材との間で生じる耳障りな衝突音の発生を確実になくすことができる。
さらに、ステップモータ62の駆動回転は、ギヤ機構63を介して減速状態で用紙押付け板611に伝達されるため、用紙押付け板611の揺動角度に比べてステップモータ62の回転角度を大きくすることが可能になり、これによって用紙押付け板611の揺動範囲内での揺動動作の精度を向上させることができる。
また、ギヤ機構63は、ステップモータ62の駆動軸621に同心で一体に取り付けられた小径ギヤ631と、この小径ギヤ631に噛合する大径ギヤ632と、この大径ギヤ632に噛合する、用紙押付け板611と一体の扇形ギヤ633とを備えて構成されているため、ステップモータ62の駆動回転は、駆動軸621に同心で取り付けられた小径ギヤ631、この小径ギヤ631に噛合した大径ギヤ632、さらにこの大径ギヤ632に噛合した用紙押付け板611と一体の扇形ギヤ633を介して用紙押付け板611に伝達されるため、各ギヤ631,632,633を経由する毎に減速されて用紙押付け板611の揺動動作に伝達される。
そして、特に用紙押付け板611と一体の扇形ギヤ633を採用することにより、ギヤを収容するための大きな空間を確保することなくギヤ比を大きくすることが可能になり、その分用紙後端押え構造60のコンパクト化に貢献することができる。
さらに、用紙押付け板611は、ステップモータ62の駆動制御により揺動範囲が可変に構成されているため、後処理装置10の仕様や用紙Pの性状に応じて用紙押付け板611の揺動範囲を適正に調節することが可能になり、これによって用紙Pのスタック部20への排紙を状況に応じて円滑に行わせrうことができる。
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
(1)上記の実施形態においては、ギヤ機構63としてステップモータ62の駆動軸621に同心で固定された小径ギヤ631と、この小径ギヤ631に噛合する大径ギヤ632と、この大径ギヤ632に噛合する、用紙押付け板611と一体の扇形ギヤ633との3つのギヤによって構成されているが、本発明は、ギヤ機構63が3つのギヤによって構成されることに限定されるものではなく、4つ以上のギヤによって構成してもよいし、2つのギヤで構成してもよい。2つのギヤで構成する場合には、大径ギヤ632を省略して小径ギヤ631を扇形ギヤ633に直接噛合させればよい。
(2)上記の実施形態においては、用紙押付け部材61には、支持軸69が挿通される第1筒軸616が設けられているが、特に第1筒軸616を設けることなく、支持軸69を一対の架設板614に貫通することによって用紙押付け部材61を支持軸69回りに回動自在に軸支してもよい。
(3)上記の実施形態においては、用紙押付け板611に扇状部材615が設けられているが、扇状部材615は必須ではなく、特に設けなくてもよい。
(4)上記の実施形態においては、大径ギヤ632が軸支される軸として第2筒軸634が採用されているが、大径ギヤ632を軸支する軸が第2筒軸634であることに限定されるものではなく、中実の軸を採用してもよい。