JP2006014719A - 高栄養酵母および酵母製品の製造方法 - Google Patents

高栄養酵母および酵母製品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 発酵後回収された酵母中のミネラル、チアミン、核酸、タンパク質含量、呈味性が上昇した高品質の酵母製品原料の製造方法を提供する。
【解決手段】 発酵後に回収した酵母を好気状態で攪拌して、酵母中のグリコーゲンを消費させ、相対的に酵母中のミネラル、チアミン、核酸、タンパク質含量、呈味性が増加した酵母を調製することを特徴とする高栄養酵母の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、発酵後に回収した酵母から高栄養酵母を製造する方法および酵母製品の製造方法に関するものである。
ビール酵母は各種のミネラル、アミノ酸、核酸、ビタミン、糖類、脂質等を含有する良質な蛋白源であるため、発酵後に回収されたビール酵母は乾燥酵母や酵母エキスの原料とされ、医薬品や食品として用いられてきた。
一方、国内においては、副原料の使用比率が麦芽使用量の50%を超えるビール様の発泡酒(以下、発泡酒と略称する)の製造量が増加傾向にあり、平成15年には国内でビールの製造量を発泡酒製造量が上回る結果となった。
しかしながら発泡酒は、麦芽の濃度がビールに比べて低いため、麦芽に比べてミネラル、ビタミン、タンパク質含量に乏しいコーンスターチ、米、液糖等の副原料比率が高い。従って、これらの副原料が多く含まれた糖化液の発酵に使用された発泡酒酵母は、ビール酵母に比べ酵母菌体中のグリコーゲンは高いものの、ミネラル、チアミン、核酸、タンパク質含量が低い。このような発酵後回収された発泡酒酵母を原料に製造された乾燥酵母はチアミン、タンパク質含量が低く、医薬品原料として使用できない。また発酵後回収された発泡酒酵母を原料に製造された発泡酒酵母エキスは、ビール酵母エキスに比べ褐変しやすく、ミネラル、チアミン、核酸、タンパク質含量が低い。
本発明が解決しようとする課題は、添加物を加えることなく、発酵後回収された酵母中のミネラル、チアミン、核酸、タンパク質含量、呈味性が上昇した高品質の高栄養酵母の製造方法および酵母製品の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、発酵後に回収された酵母を好気状態で攪拌することにより、酵母中のグリコーゲンが消費され、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は下記に関するものである。
(1) 発酵後に回収した酵母を好気状態で攪拌して、酵母中のグリコーゲンを消費させ、相対的に酵母中のミネラル、チアミン、核酸、タンパク質含量、呈味性が増加した酵母を製造することを特徴とする高栄養酵母の製造方法。
(2) 前記発酵後に回収した酵母がビール酵母または発泡酒酵母であることを特徴とする(1)に記載された高栄養酵母の製造方法。
(3) 前記好気状態の攪拌を、発酵後に回収した酵母スラリーを循環させて行うことを特徴とする(1)または(2)に記載された高栄養酵母の製造方法。
(4) 前記好気状態の攪拌を、発酵後に回収した酵母スラリーに空気を吹き込み、攪拌を行うことを特徴とする(1)または(2)に記載された高栄養酵母の製造方法。
(5) (1)ないし(4)のいずれか1項に記載された方法により製造された高栄養酵母を原料として酵母製品を製造することを特徴とする酵母製品の製造方法。
(6) 前記酵母製品が乾燥酵母または酵母エキスであることを特徴とする(5)に記載された酵母製品の製造方法。
本発明によれば、添加物を加えることなく発泡酒酵母をビール酵母と同等の品質の高栄養酵母とし、それを原料に得られた乾燥酵母及び酵母エキスは、ビール酵母を原料にした場合と同等の品質になる。本発明により得られる発泡酒酵母は、ビール酵母と同様の用途が可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明方法の酵母の種類は、酵母製品の原料となりうる酵母であれば特に限定されないが、例えばビール酵母、発泡酒酵母、雑酒等のビール様飲料 (麦芽および大麦使用率0%)用酵母、清酒酵母、ワイン酵母、ウィスキー酵母、その他の醸造用酵母、パン酵母等を
挙げることができる。これらの酵母中、発泡酒酵母はミネラル、チアミン、核酸、タンパク質含量が低く、本発明により、ミネラル、チアミン、核酸、タンパク質含量、呈味性を上昇させることができるので好適である。
発泡酒酵母としては、例えば、Saccharomyces cerevisiae等の酵母を挙げることができる。
本発明において、発酵後に酵母を回収する方法としては、例えばビール酵母や発泡酒酵母が下面酵母の場合、ビールまたは発泡酒を発酵後に発酵槽の下部に酵母が沈殿するので、発酵槽底部から酵母をスラリーとして回収する方法がある。
また、その他の回収方法としては、ビールまたは発泡酒中に浮遊する酵母を遠心分離機や膜濾過機で分離し、ケーキ状態で回収する方法を挙げることができる。回収したケーキ状の酵母をスラリーとして、次の好気状態で攪拌する工程に供すればよい。
次いで、回収した酵母を好気状態で攪拌する。回収した酵母が好気状態で攪拌できれば、その攪拌方法は限定されない。
上述のように、発酵後に回収したスラリー状態の酵母は、例えば酵母スラリーをタンクに移送し、タンク下部から酵母スラリーを抜き出して、酵母スラリーをタンク上部から供給する循環方法により、回収酵母を好気状態で攪拌する方法が挙げられる。循環方法の場合、0.01〜3 vvm好ましくは、0.05〜0.25 vvmの流量で循環させればよい。
また、回収した酵母スラリーに空気を吹き込んで、攪拌機等の攪拌手段で攪拌し、回収酵母を好気状態で攪拌してもよい。空気は、0.001〜3 vvm、好ましくは、0.005〜0.05 vvmの流量で吹き込めばよい
この際、攪拌速度は、回収酵母が攪拌状態にあればよく、特に限定されない。また、攪拌手段も特に限定されないが、平羽根タービン、円板付きタービン、櫂型翼、プロペラ等の付いた攪拌機を挙げることができる。また、空気の吹込み手段として、ポーラススパージャー、オリフィススパージャー、ノズルスパージャー等のエアスパージャーを挙げることができる。攪拌効率を向上させるため、タンク内に邪魔板を設置しても良い。
回収酵母を好気状態で攪拌する温度は、0〜70℃、好ましくは10〜30℃の範囲で適宜選択すればよい。
回収酵母を好気状態で攪拌することにより、酵母中のグリコーゲンが消費され、相対的に酵母中のミネラル、チアミン、核酸、タンパク質含量、呈味性が増加する。特に発泡酒酵母の場合、顕著に効果が現れる。
請求項1ないし4に記載した方法により、ミネラル、チアミン、核酸、タンパク質含量、呈味性が増加した高栄養酵母が得られるので、この高栄養酵母は酵母製品の原料として好適である。
本発明における酵母製品としては、乾燥酵母または酵母エキスを挙げることができる。
乾燥酵母を製造する方法は通常の方法でよく、例えば未洗浄のまま、あるいは水やアルカリで洗浄後、スプレードライヤー、ドラムドライヤー、CDドライヤー、凍結乾燥機、減圧乾燥機等での乾燥を挙げることができる。
酵母エキスとしては、自己消化型酵母エキスおよび酵素分解型酵母エキスを挙げることができる。
自己消化型酵母エキスを製造する方法は通常の方法でよく、例えば酵母スラリーをアルカリ洗浄し、ホップ由来の苦味成分を除去した後、45〜65℃にて5〜20時間静置し、その後遠心分離した上清をスプレードライヤーにて乾燥すればよい。
酵素分解型酵母エキスを製造する方法は通常の方法でよく、例えば酵母スラリーをアルカリ洗浄し、ホップ由来の苦味成分を除去した後、加熱により酵母由来の酵素を失活させ、エキス調製に必要な酵素を添加する。酵素の至適pH、至適温度にて5〜20時間反応させ
、再度加熱により酵素を失活させた後、遠心分離上清をスプレードライヤーにて乾燥すればよい。
実施例
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
発泡酒酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いて、特開2001-333760号公報の実施例1に記載された方法に準じて発泡酒を醸造した。発酵終了後に発酵槽下部に沈殿した発泡酒酵母をスラリー状態で20tを開放タンクに採取した(水分:約85%)。発泡酒酵母スラリーを解放タンク底からポンプにて1t/minの流量で抜き出し、抜き出した発泡酒酵母スラリーをタンクトップから再度添加して循環状態とした。この循環を72時間実施した。この際、発泡酒酵母スラリーは10℃に保った。本処理後に得られた発泡酒酵母を原料に乾燥酵母を以下のようにして調製した。
すなわち、酵母スラリーをアルカリ洗浄し、ホップ由来の苦味成分を除去した後ドラムドライヤーで乾燥して、乾燥酵母を製造した。
また、通常に醸造後回収したビール酵母および発泡酒酵母そのものを原料として、上記に準じて乾燥酵母を調製した。
得られた各乾燥酵母の分析結果を表1に示す。
Figure 2006014719
表1に示した結果から明らかなように、発酵後に回収した発泡酒酵母を原料とした乾燥酵母は、グリコーゲンの含有量が高く、ミネラル、チアミン、核酸、タンパク質の含有量が低く、乾燥酵母として不向きであったが、本発明方法により調製した乾燥酵母は、グリコーゲンの含有量が低く、ミネラル、チアミン、核酸、タンパク質の含有量が高く、ビール酵母を原料とする乾燥酵母と遜色のないものであった。
発泡酒酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いて、特開2001-333760号公報の実施例1に記載された方法に準じて発泡酒を醸造した。発酵終了後に発酵槽下部に沈殿した発泡酒酵母をスラリー状態で20tを開放タンクに採取した(水分:約85%)。発泡酒酵母スラリーを解放タンク底からポンプにて1t/minの流量で抜き出し、抜き出した発泡酒酵母スラリーをタンクトップから再度添加して循環状態とした。この循環を72時間実施した。この際、発泡酒酵母スラリーは10℃に保った。本処理後に得られた発泡酒酵母を原料に自己消化型酵母エキスを調製した。
また、通常に醸造後回収したビール酵母および発泡酒酵母そのものを原料として、自己消化型酵母エキスを調製した。
得られた各自己消化型酵母エキスにつき分析と官能検査を実施した。分析結果を表2に示す。官能検査は表3に示す評価基準で行い、ブラインドで専門パネリスト9名にて行った。全パネリストの官能評価平均値を表4に示す。
Figure 2006014719
Figure 2006014719
Figure 2006014719
表2に示した結果から明らかなように、発酵後に回収した発泡酒酵母を原料とした自己消化型酵母エキスは、ミネラル、チアミン、タンパク質の含有量が低く、自己消化型酵母エキスとして不向きであったが、本発明方法により調製した自己消化型酵母エキスは、ミネラル、チアミン、タンパク質の含有量が高く、エキスの溶解色の指標となるOD470値も低く、ビール酵母を原料とする自己消化型酵母エキスと遜色のないものであった。
また表4に示した結果から明らかなように、発酵後に回収した発泡酒酵母を原料とした自己消化型酵母エキスは、発酵後に回収したビール酵母を原料とした自己消化型酵母エキスと比較すると呈味性が劣っていた。一方、本発明方法により調製した自己消化型酵母エキスの呈味性は、ビール酵母を原料とする自己消化型酵母エキスの呈味性と遜色のないものであった。
発泡酒酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いて、特開2001-333760号公報の実施例1に記載された方法に準じて発泡酒を醸造した。発酵終了後に発酵槽下部に沈殿した発泡酒酵母をスラリー状態で20tを開放タンクに採取した(水分:約85%)。発泡酒酵母スラリーを解放タンク底からポンプにて1t/minの流量で抜き出し、抜き出した発泡酒酵母スラリーをタンクトップから再度添加して循環状態とした。この循環を72時間実施した。この際、発泡酒酵母スラリーは10℃に保った。本処理後に得られた発泡酒酵母を原料に酵素分解型酵母エキスを調製した。
また、通常に醸造後回収したビール酵母および発泡酒酵母そのものを原料として、自己消化型酵母エキスを調製した。
得られた各酵素分解型酵母エキスにつき分析と官能検査を実施した。分析結果を表5に示す。官能検査は表3に示す評価基準で行い、ブラインドで専門パネリスト9名にて行った。全パネリストの官能評価平均値を表6に示す。
Figure 2006014719
Figure 2006014719
表5に示した結果から明らかなように、発酵後に回収した発泡酒酵母を原料とした酵素分解型酵母エキスは、ミネラル、チアミン、タンパク質の含有量が低く、酵素分解型酵母エキスとして不向きであったが、本発明方法により調製した酵素分解型酵母エキスは、ミネラル、チアミン、タンパク質の含有量が高く、エキスの溶解色の指標となるOD470値も低く、ビール酵母を原料とする酵素分解型酵母エキスと遜色のないものであった。
また表6に示した結果から明らかなように、発酵後に回収した発泡酒酵母を原料とした酵素分解型酵母エキスは、発酵後に回収したビール酵母を原料とした酵素分解型酵母エキスと比較すると呈味性が劣っていた。一方、本発明方法により調製した酵素分解型酵母エキスの呈味性は、ビール酵母を原料とする酵素分解型酵母エキスの呈味性と遜色のないものであった。
発泡酒酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いて、特開2001-333760号公報の実施例1に記載された方法に準じて発泡酒を醸造した。発酵終了後に発酵槽下部に沈殿した発泡酒酵母をスラリー状態で20tを開放タンクに採取した(水分:約85%)。165L/minの流量でエアーを注入し、160rpmの条件で通気攪拌を48時間行った。この際、発泡酒酵母スラリーは10℃に保った。本処理後に得られた発泡酒酵母を原料に乾燥酵母を実施例1に準じて調製した。
また、通常に醸造後回収したビール酵母および発泡酒酵母そのものを原料として、実施例1に準じて乾燥酵母を調製した。
得られた各乾燥酵母の分析結果を表7に示す。
Figure 2006014719
表7に示した結果から明らかなように、発酵後に回収した発泡酒酵母を原料とした乾燥酵母は、グリコーゲンの含有量が高く、ミネラル、チアミン、核酸、タンパク質の含有量が低く、乾燥酵母として不向きであったが、本発明方法により調製した乾燥酵母は、グリコーゲンの含有量が低く、ミネラル、チアミン、核酸、タンパク質の含有量が高く、ビール酵母を原料とする乾燥酵母と遜色のないものであった。
発泡酒酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いて、特開2001-333760号公報の実施例1に記載された方法に準じて発泡酒を醸造した。発酵終了後に発酵槽下部に沈殿した発泡酒酵母をスラリー状態で20tを開放タンクに採取した(水分:約85%)。165L/minの流量でエアーを注入し、160rpmの条件で通気攪拌を48時間行った。この際、発泡酒酵母スラリーは10℃に保った。本処理後に得られた発泡酒酵母を原料に自己消化型酵母エキスを調製した。
また、通常に醸造後回収したビール酵母および発泡酒酵母そのものを原料として、自己消化型酵母エキスを調製した。
得られた各自己消化型酵母エキスにつき分析と官能検査を実施した。分析結果を表8に示す。官能検査は表3に示す評価基準で行い、ブラインドで専門パネリスト9名にて行った。全パネリストの官能評価平均値を表9に示す。
Figure 2006014719
Figure 2006014719
表8に示した結果から明らかなように、発酵後に回収した発泡酒酵母を原料とした自己消化型酵母エキスは、チアミン、タンパク質の含有量が低く、自己消化型酵母エキスとして不向きであったが、本発明方法により調製した自己消化型酵母エキスは、チアミン、タンパク質の含有量が高く、エキスの溶解色の指標となるOD470値も低く、ビール酵母を原料とする自己消化型酵母エキスと遜色のないものであった。
また表9に示した結果から明らかなように、発酵後に回収した発泡酒酵母を原料とした自己消化型酵母エキスは、発酵後に回収したビール酵母を原料とした自己消化型酵母エキスと比較すると呈味性が劣っていた。一方、本発明方法により調製した自己消化型酵母エキスの呈味性は、ビール酵母を原料とする自己消化型酵母エキスの呈味性と遜色のないものであった。
本発明によれば、添加物を加えることなく発泡酒酵母をビール酵母と同等の品質にし、それを原料に得られた乾燥酵母及び酵母エキスは、ビール酵母を原料にした場合と同等の品質になる。本発明により得られる発泡酒酵母は、ビール酵母と同様の用途が可能となり、産業上有用性の高いものである。

Claims (6)

  1. 発酵後に回収した酵母を好気状態で攪拌して、酵母中のグリコーゲンを消費させ、相対的に酵母中のミネラル、チアミン、核酸、タンパク質含量、呈味性が増加した酵母を製造することを特徴とする高栄養酵母の製造方法。
  2. 前記発酵後に回収した酵母がビール酵母または発泡酒酵母であることを特徴とする請求項1に記載された高栄養酵母の製造方法。
  3. 前記好気状態の攪拌を、発酵後に回収した酵母スラリーを循環させて行うことを特徴とする請求項1または2に記載された高栄養酵母の製造方法。
  4. 前記好気状態の攪拌を、発酵後に回収した酵母スラリーに空気を吹き込み、攪拌を行うことを特徴とする請求項1または2に記載された高栄養酵母の製造方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載された方法により製造された高栄養酵母を原料として酵母製品を製造することを特徴とする酵母製品の製造方法。
  6. 前記酵母製品が乾燥酵母または酵母エキスであることを特徴とする請求項5に記載された酵母製品の製造方法。
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