JP2006008532A - 共役脂肪酸を有効成分とする運動能力改善剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 筋肉疲労の改善もしくは持久力の向上等を有する運動能力改善につながり得る食品、飲料、飼料、健康補助食品および医薬品を提供する。
【解決手段】 共役脂肪酸(共役リノール酸など)を有効成分とする運動能力改善剤(運動による筋肉疲労の改善剤、運動における持久力の向上剤等)もしくは血液性状改善剤(血液粘性低下剤、血中乳酸濃度低下剤、血中への筋肉内酵素逸脱抑制剤等)。
飲食品、健康補助食品、医薬品または飼料として用いられる、上記の運動能力改善剤もしくは血液性状改善剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、共役脂肪酸を有効成分とする運動能力改善もしくは血液性状改善剤に関するものであり、より具体的には本発明は、血液粘性低下、血中乳酸濃度低下または血中への筋肉内酵素逸脱抑制等の血液性状改善作用により、長距離走などの長時間運動に代表される持久力を必要とする有酸素運動を行う人、または職業的に激しい筋肉労働をする人、あるいは動物に対し、筋肉疲労の改善もしくは持久力の向上等を目的とする運動能力改善もしくは血液性状改善剤に関するものである。
生活が不規則である現代において、趣味として、または健康維持および生活習慣病の予防のために適度な運動をすることが重要である。平成12年に厚生省(現在の厚生労働省)は、生活習慣病およびその原因となる生活習慣等の国民の保険医療対策上重要となる課題について、2010年度を目途とした目標等を提示する「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」を定めた。
このような現状において、運動の重要性は高まっているものの、日常生活の中で健康維持や増進のために意識的に体を動かすなどの運動をしている人は増えていない。また、実際に習慣的に運動をしている人にとっては継続して運動することは苦にならないが、習慣的に運動をしていない人にとっては運動しても疲れやすく、更には持久力がなく運動を継続的に行うことが困難である。
また、激しい運動や労働を行うと、筋肉にあるグリコーゲン由来のグルコースが利用され、無酸素的な解糖反応が進行して筋肉の収縮に必要なATPが合成される。そして、その代謝産物である乳酸が蓄積して筋肉内pHの低下が起こり、筋収縮の効率が落ち、その結果、筋肉疲労に至ると考えられている。
近年では、運動能力の向上や抗疲労効果を期待する素材として、下記のように幾つかの物質が報告され、食品として利用することが提案されている。
・クレアチン:Harris, R.C. et al., Clin.Sci., 83, 367-374, 1992
・アミノ酸組成物:スズメバチの幼虫が分泌する唾液に含まれるアミノ酸類に準じて構成されたアミノ酸組成物(特開平9−249556号公報)
・イミダゾールジペプチド類:特開2002−173442号公報
・サンザシ抽出物:特開平9−266767号公報
・霊芝成分:特開平5−123135号公報
・コエンザイムQ10及びヒドロキシクエン酸類:特開2004−81010号公報
・n−3系高度不飽和脂肪酸:特開平11−239465号公報
特開平9−249556号公報 特開2002−173442号公報 特開平9−266767号公報 特開平5−123135号公報 特開2004−81010号公報 特開平11−239465号公報 Harris, R.C. et al., Clin.Sci., 83, 367-374, 1992
本発明は、筋肉疲労の改善もしくは持久力の向上等を有する運動能力改善につながり得る改善剤、それを用いた食品、飲料、飼料、健康補助食品および医薬品を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、上述目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、共役リノール酸等の共役脂肪酸に血液粘性低下、血中乳酸濃度低下または血中への筋肉内酵素逸脱抑制等の血液性状を改善する作用があること、ひいてはこれが筋肉疲労の改善または運動における持久力の向上等の運動能力改善剤作用つながり得ることを見出し、この知見を基に本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のような発明を要旨とするものである。
(1)共役脂肪酸を有効成分とする運動能力改善もしくは血液性状改善剤。
(2)上記運動能力改善が、運動による筋肉疲労の改善または運動における持久力の向上であり、上記血液性状改善が、血液粘性低下、血中乳酸濃度低下または血中への筋肉内酵素逸脱抑制である、上記(1)に記載の改善剤。
(3)共役脂肪酸が、遊離脂肪酸、その塩、エステル、脂肪酸誘導体またはそれらの2種類以上の混合物から選択される形態である、上記(1)または(2)に記載の改善剤。
(4)上記脂肪酸のエステルが、上記脂肪酸と、炭素数1〜10のアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセリンからなる群から選ばれた1種または2種以上のアルコール類とのエステルである、上記(1) 〜(3)のいずれかに記載の改善剤。
(5)上記脂肪酸の金属塩が、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩およびマグネシウム塩からなる群から選ばれた1種または2種以上の塩である、上記(1) 〜(4)のいずれかに記載の改善剤。
(6)共役脂肪酸が共役リノール酸である、上記(1) 〜(5)のいずれかに記載の改善剤。
(7)上記(1) 〜(6)のいずれかに記載された共役脂肪酸を含有してなる、運動能力改善もしくは血液性状改善作用を有する飲食品。または、上記(1) 〜(6)のいずれかに記載された共役脂肪酸を含有してなる、運動能力改善もしくは血液性状改善のために使用される、飲食品。
(8)健康補助食品として用いられる、上記(1) 〜(6)のいずれかに記載の運動能力改善もしくは血液性状改善剤。
(9)医薬品として用いられる、上記(1) 〜(6)のいずれかに記載の運動能力改善もしくは血液性状改善剤。すなわち、上記(1) 〜(6)のいずれかに記載された共役脂肪酸を含有してなる、運動能力改善もしくは血液性状改善剤。
(10)飼料として用いられる、上記(1) 〜(6)のいずれかに記載の運動能力改善もしくは血液性状改善剤。
本発明によれば、共役脂肪酸を有効成分とする運動能力改善もしくは血液性状改善剤の摂取により、血液粘性低下、血中乳酸濃度低下あるいは血中への筋肉内酵素逸脱抑制等の血液性状の改善がもたらされ、ひいては長距離走などの長時間運動に代表される持久力を必要とする有酸素運動を行う人、または職業的に激しい筋肉労働をする人あるいは動物において、筋肉疲労の改善もしくは運動における持久力の向上等の運動能力が改善され得る。
共役脂肪酸が上記のような血液性状の改善作用、ひいては筋肉疲労の改善または運動における持久力の向上等の運動能力改善剤作用を有し得るということは思いがけなかったことと解される。
本発明による改善剤は運動能力改善剤、具体的には特に、運動による筋肉疲労の改善剤または運動における持久力の向上剤であり、別の観点では、血液性状改善剤、具体的には特に、血液粘性(もしくはヘモレオロジー)低下剤、血中乳酸濃度低下剤または血中への筋肉内酵素(乳酸脱水素酵素、クレアチンキナーゼ等)の逸脱抑制剤でもある(後記実施例および図1〜5参照)。
本発明の改善剤における有効成分としての共役脂肪酸は、遊離脂肪酸、塩、エステル、脂肪酸誘導体またはそれらの2種類以上の混合物等の形態で使用される。
エステルとしては、共役脂肪酸と、炭素数1〜38のアルコール、好ましくは1〜10のアルコール(例えば脂肪族アルコール、高級アルコールなど)、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセリンからなる群から選ばれた1種または2種以上のアルコール類とのエステルが好ましく、その他ポリグリセリン(例えば、ジ−〜テトラ−グリセリン)、ステロール類(β―ステロールなど)、糖類(単糖、ニ糖、オリゴ糖(例えばトリ〜デカサッカライド))、多糖(例えば重合度11〜30)、アスコルビン酸等とのエステルなどが挙げられる。
また、脂肪酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、炭酸ナトリウム塩、塩化マグネシウム塩、複塩、錯塩等からなる群から選ばれた1種または2種以上の金属塩などの塩が挙げられる。
さらに、本発明に使用される共役脂肪酸は、上記のエステルあるいは金属塩等の塩の形態の他に、アミドやリン脂質などの任意の他の薬理学上許容される脂肪酸誘導体の形態物であってもよい。
以下、本発明を好ましい態様に基づいて更に具体的に説明する。
本発明で使用される共役脂肪酸は、好ましくは炭素数が18〜22の1種または複数種の形態の共役脂肪酸であり、共役脂肪酸の代表例は共役リノール酸である。共役リノール酸としては、通常、その主要な異性体である9cis,11trans-異性体と10trans,12cis-異性体の等量混合物を使用すればよいが、必要に応じて一方の異性体の含量の高い共役リノール酸を使用することもできる。共役脂肪酸は通常、不飽和脂肪酸(2以上の二重結合を有する)を含む油脂等の原料を既知のアルカリ共役反応を用いて共役脂肪酸含有脂肪酸の形態で得られる。この共役脂肪酸含有脂肪酸中の共役脂肪酸の含量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上の含量である。
共役リノール酸の具体例は、リノール酸含有油脂(例えば、サフラワー油、ヒマワリ油)あるいは高純度リノール酸(例えば東京化成工業(株)製(98重量%リノール酸))を原料とし、通常のアルカリ共役化反応に付すことによりリノール酸を共役リノール酸に転化する方法により得られたものである。
上記のアルカリ共役化反応は、アルカリ−有機溶媒液中にて脂肪酸を共役化して共役脂肪酸に転化する反応であり、公知の方法を用いることができる。例えば、アルカリとして水酸化カリウム、有機溶媒としてエチレングリコールを代表的に使用する方法(第34回油化学討論会講演要旨集、p171(1995)、基準油脂分析試験法2.4.16−17)、またより好ましい方法として、有機溶媒としてプロピレングリコールを使用する共役化率の向上した方法(特許第3017108号公報)等が知られており、これらの既知の方法を用いて行うことが出来る。実用的には、9cis,11trans-及び10trans,12cis-共役リノール酸の混合品が市販されており(例えばCLA-80(リノール油脂(株)製):9cis,11trans-共役リノール酸33.1%、10trans,12cis-共役リノール酸33.9%、残りは他の共役リノール酸:4%、非共役脂肪酸:29%)、これを使用することができる。また、微生物等(例えば乳酸菌)によって生産される共役リノール酸含有油脂から得られた脂肪酸の混合物であってもよい(例えば、乳酸菌を用いた米国特許第6,060,304号公報参照)。
上記のような方法により得られる共役リノール酸含有脂肪酸中の共役リノール酸含量は、一般的に5〜95%、実用的には50〜85%、好ましくは60〜85%であり、残りの成分は非共役脂肪酸である。また、上記のようにして得られる共役リノール酸含有脂肪酸中の9cis,11trans-及び10trans,12cis-両異性体の含量は、共役リノール酸の中のほとんどを占め(他の共役リノール酸異性体の含量は通常4〜5%程度)、両異性体の相互含量はほぼ等量である。
また、上記両異性体の一方の含量を高めた脂肪酸(両異性体の含有割合の異なる脂肪酸)を得るには、9cis,11trans-共役リノール酸を優先的にエステル化する方法が知られている。例えば、Candida rugosa由来のリパーゼおよびアルコール(ラウリルアルコール)を用いて共役リノール酸を9cis,11trans異性体選択的エステル化に付した後、分子蒸留、酵素反応、尿素付加を行う方法(永尾ら、JAOCS, 79, 303−308, 2002)等の既知の方法を用いて行うことができる。
上記分子蒸留は、例えば120〜190℃、0.5〜0.05mmHgの条件を用いて行うことができる。上記酵素反応は、上記リパーゼを用いた方法を必要に応じてさらに1回または複数繰り返してもよい。反応条件は任意に設定することができるが、例えば、反応混合液(アルカリ共役化で得られた共役リノール酸含有脂肪酸/ラウリルアルコール混合液)に対して酵素4〜250U/gの濃度で使用し30℃で16時間程度の条件で反応を行うことができる。上記尿素包括は、例えば分子蒸留後の分画液に5倍量メタノール、1倍量の尿素を加えて60℃まで加温することで行うことができる。
上記の方法において、酵素濃度、反応温度、反応時間等の条件を便宜調節することにより、9cis,11trans-共役リノール酸又は10trans,12cis-共役リノール酸の含量を所望に変化させた共役脂肪酸含有脂肪酸を得ることが出来る。上記の方法で得られる共役リノール酸含有脂肪酸中の9cis,11trans-共役リノール酸含量または10trans,12cis-共役リノール酸含量は、5重量%以上、好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上(例えば90%程度)含むことが出来る。この場合の共役脂肪酸含有脂肪酸中の残りの成分は他の異性体(9cis,11cis/10cis,12cis混合型、9trans,11trans/10trans,12trans混合型)、他の非共役脂肪酸、オレイン酸等である。
上記選択的エステル化法に代えてクロマトグラフィー(例えば、銀イオンカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(米国特許第6,153,774号公報)など)を用いることにより、9cis,11trans-共役リノール酸含有脂肪酸または10trans,12cis-共役リノール酸含有脂肪酸を分離、分取していずれかの異性体含量の高い共役リノール酸を得ることができる。
後記実施例の動物実験で示されるように、共役脂肪酸が血液性状(血液粘性低下、血中乳酸濃度低下、血中への筋肉内酵素逸脱抑制等)を改善する作用を有しており、ひいては運動能力改善(運動による筋肉疲労の改善または運動における持久力の向上等)につながり得ることが確認された。従って本発明において、上述のような共役脂肪酸(好ましい態様において共役リノール酸)を血液性状改善もしくは運動能力改善剤として用いることができる。本発明は、上述したような共役脂肪酸を有効成分として含んでなる血液性状改善もしくは運動能力改善用食品(飲食品、健康補助食品、飼料を包含する)、および血液性状改善もしくは運動能力改善用医薬にも関する。
本発明による飲食品の一つの形態は共役脂肪酸を含有してなるものであり、油脂製品(脂肪酸、グリセリド)の形態が好ましい。脂肪酸の形態としては、上記のようにして得られた共役脂肪酸を使用することができ、グリセリドの形態としては、上記のようにして得られた脂肪酸とグリセリンを通常の方法によりリパーゼを用いてエステル化したものを用いることができる。また、本発明においては、共役脂肪酸が他の種々のエステル、金属塩等の塩、その他の薬理学上許容される誘導体の形態またはこれらの混合物の形態であってもよいことは前記した通りである。
また、本発明による運動能力改善もしくは血液性状改善剤を用いた飲食品は、上記に例示したような共役脂肪酸含有油脂製品の形態で用いることができるほか、食用油脂組成物(植物性油脂、動物性油脂、加工油脂など)、食用乳化油脂組成物(マーガリン、マヨネーズなど)、ベーカリー製品(パン、ケーキ類)、調理食品(弁当、惣菜など)、飲料(ジュース、ソフトドリンク類)などの飲食品に混合して用いてもよい。健康補助食品としては、ソフトカプセル、タブレット等の形態で使用することができる。また、飼料としては、配合飼料への添加等の形態で使用することができる。本発明において、他の一般食品中に配合する場合は、食品等中の運動能力改善もしくは血液性状改善剤は共役脂肪酸の量として通常0.5〜20重量%程度、好ましくは1〜10重量%程度、であり、1日当たり1mg〜10g、好ましくは0.1g〜10g程度を摂取することにより、運動能力もしくは血液性状の改善が期待される。
本発明の運動能力改善もしくは血液性状改善剤を医薬品として用いる場合、その形態は特に制限されるものではなく、投与方法や適用される治療目的、形状および存在部位などの条件に応じて、注射液、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、ドリンク剤などの種々の形態を適宜選択することができる。従って、上記したような本発明の運動能力改善もしくは血液性状改善剤をそのまま医薬として用いることができるほか、必要に応じて担体、希釈剤若しくは賦形剤など通常の種々の添加物(例えば糖類、デンプン類、アルコール類、アラビアガムなど)と組み合わせて所望の医薬形態にすることができる。本発明の運動能力改善もしくは血液性状改善剤の投与量は、治療上有効量であり、治療目的などにより一概に言えないが、一般に体重60Kgの成人の場合、1日当たり上記共役脂肪酸の量として10〜5000mg、好ましくは20〜3000mgであるが、公知の運動能力改善もしくは血液性状改善剤を含む他の治療剤と併用することもできる。
なお、本明細書において、%表示は特に断りのない限り、あるいは%表示のみで明確な場合を除き重量%を意味する。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
SD系雄ラット(体重約170g)にCLA(CLA−80HG(リノール油脂(株)製;特許第3017108号公報の方法により製造、共役リノール酸含有量:80.5%、各異性体の割合:9cis,11trans-共役リノール酸37.0%、10trans,12cis-共役リノール酸38.4%)、他の共役リノール酸5%、その他の脂肪酸19.6%))を1%添加した大豆油(リノール酸等の不飽和脂肪酸を含む)含有食餌を3週間給餌した(なお、CLAの調製法の概要は後記)。運動負荷については、トレッドウィール(Tread-wheel)による自由意志走運動を採用した。食餌組成はオリエンタル酵母工業(株)製マウス・ラット用MF飼料を使用し、コントロール群は大豆油を6%とし、CLA群は大豆油5%、及びCLA1%とした。
その結果、細胞マイクロレオロジー測定機を使って全血通過時間の測定をした所、走運動トーレーニングを負荷すると、血液ヘモレオロジーは粘性を高めたが、CLA摂取群では粘性の高まりは弱く、コントロールとしての大豆油含有飼料よりも低値(約70%)であった(図1)。その為、血液はサラサラで、栄養物や酸素の供給及び疲労物質の除去も速やかに行われると推測される。また、走運動トレーニング負荷ラット群の血中乳酸濃度がCLA摂取群で低い値(コントロールに対して約75%)を示した(図2)。このことから、運動を支えるエネルギー面では、CLA摂取により、血液をサラサラに保ち、筋肉へのエネルギー源の供給を容易にし、エネルギー生産系の酵素反応の阻害物質(乳酸等)を筋肉からの速やかな除去等、筋肉のパワーの充足強化があり、筋肉疲労は改善されると考えられる。
また、運動負荷時の肝臓中の乳酸脱水素酵素(LDH)活性はCLA摂取で高くなった(非運動群に対して約131%)(図3)。
更に、運動すると、物理的及び活性酸素による化学的ストレスにより筋肉細胞が損傷を受け、筋肉細胞から筋肉機能に必要な酵素群が血液中に逸脱する現象がある。運動負荷によって主として筋肉から血中に逸脱する2種類の酵素、LDHとクレアチンキナーゼ(CK)について測定した結果、運動負荷時のCLA摂取群では低値を示し、血液の酵素逸脱は抑制されていた(コントロールに対してそれぞれ約43%、28%)(図4、5)。特に、CKは筋肉に特異的に存在する酵素であり、逸脱酵素の指標として取り扱うことが出来る。このことから、筋肉からの筋細胞から筋肉機能に必要な酵素群の逸脱を抑制する機能は運動下で長時間運動能力の減衰を抑制する効果を示し、運動の持久力を高め、運動トレーニング後の回復時間を短縮する効果があり、CLA摂取による持久力の向上効果が確認できた。
[調製例1]共役リノール酸含有脂肪酸の調製
サフラワー油を原料とし、有機溶媒としてプロピレングリコールを使用するアルカリ共役化反応(特許第3017108号)によりリノール酸を共役化し、9sis,11trans-共役リノール酸と10trans,12cis-共役リノール酸の異性体をそれぞれ等量(残りの成分は他の異性体および他の脂肪酸)含む共役リノール酸含有脂肪酸混合物を得た。これを実施例1のCLAとして用いた。
[飲食品の配合例]
マヨネーズ (重量%)
CLA 1.0
油 脂 69.0
卵 黄 15.0
食 酢 13.0
食 塩 2.0
[医薬の配合例]
CLAを粉末化し調製したCLA粉末を用い、以下の配合により常法に従って、錠剤を製造した。
(重量%)
CLA粉末 40.0
結晶セルロース 4.0
ショ糖エステル 2.0
セラック 2.6
白糖 30.0
タルク 0.1
炭酸カルシウム 0.5
乳糖 18.7
酸化チタン 0.1
プルラン 0.04
ゼラチン 1.2
グアーガム 0.2
カラメル色素 0.56
血液ヘモレオロジーに及ぼす共役リノール酸(CLA)摂取の影響を示すグラフ。 血清乳酸濃度に及ぼす共役リノール酸摂取と走運動負荷の影響を示すグラフ。 肝の乳酸脱水素酵素(LDH)活性に及ぼす共役リノール酸摂取と走運動負荷の影響を示すグラフ。 血清LDH濃度に及ぼす共役リノール酸摂取と走運動負荷の影響を示すグラフ。 血清クレアチンキナーゼ(CK)濃度に及ぼす共役リノール酸摂取と走運動負荷の影響を示すグラフ。

Claims (10)

  1. 共役脂肪酸を有効成分とする運動能力改善もしくは血液性状改善剤。
  2. 上記運動能力改善が、運動による筋肉疲労の改善または運動における持久力の向上であり、上記血液性状改善が、血液粘性低下、血中乳酸濃度低下または血中への筋肉内酵素逸脱抑制である、請求項1に記載の改善剤。
  3. 共役脂肪酸が、遊離脂肪酸、その塩、エステル、脂肪酸誘導体またはそれらの2種類以上の混合物から選択される形態である、請求項1または2に記載の改善剤。
  4. 上記脂肪酸のエステルが、上記脂肪酸と、炭素数1〜10のアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセリンからなる群から選ばれた1種または2種以上のアルコール類とのエステルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の改善剤。
  5. 上記脂肪酸の金属塩が、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩およびマグネシウム塩からなる群から選ばれた1種または2種以上の塩である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の改善剤。
  6. 共役脂肪酸が共役リノール酸である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の改善剤。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載された共役脂肪酸を含有してなる、運動能力改善もしくは血液性状改善作用を有する飲食品。
  8. 健康補助食品として用いられる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の運動能力改善もしくは血液性状改善剤。
  9. 医薬品として用いられる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の運動能力改善もしくは血液性状改善剤。
  10. 飼料として用いられる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の運動能力改善もしくは血液性状改善剤。
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