JP2006003320A - 温度計測器 - Google Patents

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Abstract

【課題】 PVD、CVD、ドライエッチング等の工程におけるプラズマ発生環境下において、精度の高い温度計測が可能で、且つ高温域で温度計測する場合にも雰囲気を汚染することのない温度計測器を提供すること。
【解決手段】 第二の溝部に設置した可動磁石と、第三の溝部に嵌め込んだ固定磁石と、第一の溝部に嵌め込んだ強磁性体合金との組合せからなり、計測温度感知部としての前記強磁性体合金はキュリー温度が計測目標温度となるように設定され、前記強磁性体合金の温度が前記計測目標温度未満の場合には前記可動磁石と前記強磁性体合金とは磁力によって吸着し、前記強磁性体合金の温度が前記計測目標温度に達した場合には前記可動磁石は前記強磁性体合金と分離して前記固定磁石と磁力によって吸着することによって前記計測目標温度に達したことを表示することを特徴とする温度計測器。
【選択図】 図1

Description

本発明は、温度計測器に関するものである。特に、半導体デバイス等を製造するための反応炉内の基板ホルダ又は基板トレーに設置されたシリコン基板又はガラス基板の温度分布を計測するための温度計測器に関するものである。
各種半導体デバイス、フラットディスプレイパネル、薄膜光回路等は、エレクトロニクス産業の基礎となる重要なデバイスであり、これらはシリコン基板又はガラス基板上に製造される。これらの半導体デバイスやフラットディスプレイパネルの製造においては、CVD(化学気相成長)、PVD(プラズマCVD)、EB(電子ビーム)蒸着による薄膜形成技術、及びドライエッチング等による薄膜加工技術は必須の技術である。加えて、微細な精密加工が要求されるのでフォトリソグラフィ技術も不可欠な技術である。
CVD工程、PVD工程における成膜速度及び膜質、並びにドライエッチング工程におけるエッチング速度及びエッチング形状は、反応炉(以下、チャンバと記載する)内の雰囲気温度に強く依存することが知られている。チャンバ内の雰囲気温度は、基板ホルダ又は基板トレーに載置されたシリコン基板又はガラス基板の温度に反映する。それ故、薄膜を形成したとき、薄膜の厚さや特性が基板上の場所で異なっている場合には、基板上での温度が均一になっていないことが主要因である。従って、各種半導体デバイスやフラットディスプレイパネル等の品質向上、製品の歩留まり向上を図るためには、チャンバ内に設置された基板の温度管理は特に重要である。
基板ホルダ又は基板トレーに設置された基板の温度は均一であることが好ましいが、チャンバ室の大きさ、電極形状等の影響で厳密に均一にすることは難しい。しかし、少なくとも基板上の温度分布が明確になっていれば、その温度バラツキ分を考慮に入れて製作を行うことができる。そのようにバラツキ分を考慮に入れて製作すれば、結果として各種半導体デバイスやフラットディスプレイパネル等の品質向上、製品の歩留まり向上に繋がる。
従来のシリコン基板又はガラス基板の温度管理には、2種類の金属線の接合点間の温度差によって生じる熱起電力を利用して温度計測をする熱電対や被測定物が発する赤外線を捕らえて温度に変換する放射温度計が使用されている。それらの使用態様は、熱電対を用いる場合には熱電対を基板上の計測したい場所に設置し、放射温度計を用いる場合には赤外線を捕らえるカメラを計測したい基板側に向けるという態様である。
しかし、PVD、CVD、ドライエッチング等の工程においてこれらの温度計測器を使用する場合、プラズマ発生の環境下での使用となるため、以下のような問題があった。
熱電対をプラズマが発生する環境下で使用する場合には、プラズマ発生のための高周波が補償導線上に乗り、それがノイズとなり正確な温度計測ができない。また、熱電対を設置するのに場所をとり、基板上の緻密な温度計測は到底不可能である。
放射温度計をプラズマが発生する環境下で使用する場合には、熱電対のように補償導線を必要としないため、上記熱電対を使用する場合の問題はないが、放射温度計は、被測定物表面が発する赤外線を捕らえて温度計測をするものであり、被測定物と放射温度計との間でプラズマがノイズとなり正確な温度計測ができない。加えて、赤外線を捕らえるカメラを基板に対して並行にすることが難しく被計測基板が小さいため、基板全体の平均的な温度しか計測できない。
プラズマが発生する環境下においても使用できる温度計測器として、感温ラベル(例えば、特許文献1参照)やサーモペイント(例えば、特許文献2参照)がある。これらは、感熱性の素子(顔料)を耐熱性フィルムの中に密閉し、規定温度に達した場合、感温物質が変色することを利用して、温度計測を行うものであり、前述した熱電対や放射温度計のように、プラズマが発生する環境下においても温度計測が可能である。
この場合の使用態様は、感温ラベルやサーモペイントをシリコン基板又はガラス基板の所定の位置に貼り付けたり、塗布することとなる。しかし、PVD、CVD、ドライエッチング等が行われる250℃〜600℃という高温の雰囲気温度において、シリコン基板又はガラス基板の温度を前記感温ラベルやサーモペイントで検出する場合には、有機物を多用しているこれらの温度計測器では、焼損や昇華によってチャンバ内の雰囲気を汚染するという問題があった。
また、前述したように、各種半導体デバイスやディスプレイパネルの品質向上のためには、成膜速度、膜質、エッチング速度、エッチング形状等の面からシリコン基板又はガラス基板の温度管理は重要であるが、感温ラベルやサーモペイントを利用するこれらの温度計測器は、ある規定の温度を超えた場合に、感温物質の変色によって大凡の温度を推定するものであり、精度の良い温度管理を行うことができないという問題もあった。
更に、特許文献3には、真空又は減圧プラズマを使用する半導体装置の製造プロセスにおいて、ウエハの温度を直接計測することができ、且つ、プラズマによる高周波雑音及びプラズマ活性反応による発熱の影響を受けず、計測に際してパーティクル及び金属汚染を発生することなく、また、プロセス装置に特別な設備を設ける必要がない温度計測装置が開示されている。
そのための解決手段として、以下の手段が開示されている。シリコンウエハから成る基材上に、薄膜構造体を複数設ける。この薄膜構造体は、所定の幅、長さ、厚さの直方体がポジ型のフォトレジストにより構成され、その形状は履歴する温度に対して不可逆的に変化するものである。この付加逆的な変化を利用し、当該薄膜構造体の膜厚を測定することによりシリコンウエハの温度を計測するというものである。
上記手段によればシリコンウエハから成る基材の温度計測は可能と考えられる。しかし、計測可能な温度範囲は狭く、最高計測温度は、使用するフォトレジストに依存するが、耐熱性の高い感光性のポリイミド材料を使用しても400℃程度であり、計測できる最高温度が低いという問題がある。実際の工程を考えると計測できる温度範囲として室温から600℃が望ましい。
更に、上記特許文献3では、温度校正のための処理時間を、実際のプロセス処理時間と一致させるとの記載がある。これは、フォトレジストの膜厚変化は加熱温度だけではなく加熱時間にも依存するためである。従って、実際の運用に当たっては種々の加熱時間、種々の加熱温度に対してそれぞれに校正する必要がある。実際の製造工程には種々のプロセスがあり、そのプロセス毎に校正しなければならないことを考えると実際の運用は困難である。
特開2002−144454号公報 特開2002−117727号公報 特開2002−350248号公報
本発明は、以上のような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、PVD、CVD、ドライエッチング等の工程におけるプラズマ発生環境下において、基板ホルダ又は基板トレーに設置したシリコン基板又はガラス基板の精度の高い温度計測が可能で、且つ高温域で温度計測する場合にもチャンバ内の雰囲気を汚染せず、然も計測範囲が広い温度計測器を提供することである。
本発明に係る温度計測器は、シリコン基板又はガラス基板に一列に近接して形成された第一の溝部と第二の溝部と第三の溝部と、前記第一の溝部に嵌め込まれた強磁性体合金と、前記第二の溝部に配置され当該第二の溝部内で移動することが可能な可動磁石と、前記第三の溝部に嵌め込まれた固定磁石とから成る温度計測素子を有し、計測温度感知部としての前記強磁性体合金は、キュリー温度が計測目標温度となるように設定され、前記強磁性体合金の温度が前記計測目標温度未満の場合には、前記可動磁石と前記強磁性体合金とが磁力によって吸着することにより前記可動磁石が前記第二の溝部内で前記第一の溝部側に位置し、前記強磁性体合金の温度が前記計測目標温度に達した場合には、前記可動磁石と前記固定磁石とが磁力によって吸着することにより前記可動磁石が前記第二の溝部内で前記第三の溝部側に位置することで前記計測温度感知部が前記計測目標温度に達したことを表示するように構成して成ることを特徴とする。
第一の溝部、第二の溝部、及び第三の溝部は、シリコン基板又はガラス基板にフォトリソグラフィ技術とエッチング技術により形成する。第一の溝部と第二の溝部との間隔、第二の溝部と第三の溝部との間隔は、第二の溝部に設置された可動磁石の磁力が、第一の溝部に嵌め込まれた強磁性体合金及び第三の溝部に嵌め込まれた固定磁石と作用を及ぼし得る間隔とする。即ち、固定磁石と可動磁石が磁力により吸着し合う間隔、可動磁石と強磁性体材料が磁力により吸着し合う間隔である。
第一の溝部に強磁性体合金が嵌め込まれるが、当該強磁性体合金は平板状に製作されるため、平板の平面が前記第二の溝部に設置される可動磁石の動く方向に垂直となるように嵌め込まれる。即ち、シリコン基板又はガラス基板に対して垂直方向に嵌め込まれる。
第二の溝部には、可動磁石が配置される。可動磁石の形状は任意で良いが、当該第二の溝部内で可動磁石が第一の溝部側及び第三の溝部側へ可動し易い形状とする。そのため、当該第二の溝部の溝表面のエッチング後の表面粗さが、中心線平均粗さで0.8μm以下となるように、ドライエッチング条件を定める。また、可動磁石と当該第二の溝部の側壁との間には隙間が設けられる。この隙間は、可動磁石の動きが円滑となるように任意に設けられる。
第三の溝部には、固定磁石が嵌め込まれる。従って、当該第三の溝部と固定磁石との間に不必要な隙間が生じないように、当該第三の溝部の形状は固定磁石と同一であることが望ましい。また、固定磁石の磁極は、第二の溝部に設置される可動磁石と吸着し合うように設定する。即ち、固定磁石の第二溝部側の極がS(N)極なら、第二の溝部に設置される可動磁石の第三の溝部側の極はN(S)極とする。
強磁性体合金は、強磁性を有する合金であって、外から加えた磁場の向きに強く磁化し、磁場を取り去っても磁化を残す性質を有するものである。また、永久磁石は、強磁性体の一種であって残留磁化および保磁力が大であり、外部からの磁気的攪乱があっても残留磁化の強さが容易に変わらない性質を有するものである。強磁性体合金のキュリー温度とは、当該強磁性体合金の強磁性体という特性が常磁性体という特性に転移するときの温度をいい、本発明では計測目標温度に設定されている。
係る構成を有することによって、強磁性体合金の温度が計測目標温度未満の場合には、可動磁石と強磁性体合金とは磁力により吸着することにより、前記可動磁石は前記第二の溝部内で前記第一の溝部側に位置する。強磁性体合金の温度が計測目標温度に達した場合には、強磁性体合金は常磁性体へと転移するので、可動磁石は固定磁石との磁力によって強磁性体合金とは分離し、前記第二の溝部内を固定磁石側、即ち前記第二の溝部内で前記第三の溝部側へと移動し位置する。このように、可動磁石は強磁性体合金と固定磁石との磁力による相互作用によって両者の間を移動する。従って、本発明によれば、可動磁石が第二の溝部内で固定磁石側へ移動することによって、キュリー温度が計測目標温度に設定された前記強磁性体合金が当該計測目標温度に達したことを確認できる。
本発明に係る温度計測器は、シリコン基板又はガラス基板に一列に近接して形成された第一の溝部と第二の溝部と第三の溝部と、前記第一の溝部に嵌め込まれた強磁性体合金と、前記第二の溝部に配置され当該第二の溝部内で移動することが可能な可動磁石と、前記第三の溝部に嵌め込まれた固定磁石とから成る温度計測素子を前記シリコン基板又は前記ガラス基板の全面にマトリクス状に複数設け、前記温度計測素子の前記第一の溝部に嵌め込まれた前記強磁性体合金は、当該強磁性体合金のキュリー温度が計測目標温度となるように設定され、且つマトリクス状に設けられた前記複数の強磁性体合金は、当該強磁性体合金のキュリー温度が前記マトリクスの一方向に上昇する位置関係で配列され、前記強磁性体合金の温度が前記計測目標温度未満の場合には、前記可動磁石と前記強磁性体合金とが磁力によって吸着することにより前記可動磁石が前記第二の溝部内で前記第一の溝部側に位置し、前記強磁性体合金の温度が前記計測目標温度に達した場合には、前記可動磁石と前記固定磁石とが磁力によって吸着することにより前記可動磁石が前記第二の溝部内で前記第三の溝部側に位置することで前記温度計測素子が前記計測目標温度に達したことを表示するように構成して成ることを特徴とする。
温度計測素子は、第一の溝部と第二の溝部と第三の溝部とから成り、第一の溝部には強磁性体合金が嵌め込まれ、第二の溝部には可動磁石が設置され、第三の溝部には固定磁石が嵌め込まれている。第一の溝部、第二の溝部及び第三の溝部については、前述の通りである。また可動磁石、固定磁石についても前述の通りである。この温度計測素子が、シリコン基板又はガラス基板の全面にマトリクス状に形成されている。マトリクスはn行m列とする。但し、nとmは自然数である。
温度計測素子の第一の溝部に嵌め込まれる強磁性体合金のキュリー温度は、前記マトリクスの一方向に高くなるように構成されている。例えば、第1列にあるn個の強磁性体合金のキュリー温度は一方向に上昇、即ち左側から右側に向かって数度ずつ高くなるように、或いは右側から左側に向かって数度ずつ高くなるように設定することができる。第2列も同様に、第一列の最後であるn番目のキュリー温度より数度高い温度から出発して、右(左)側に向かって数度ずつ高くなるように設定することができる。この構成は一例であって、これに限定されずに任意に構成することができる。なお、複数の強磁性体合金の計測目標温度(キュリー温度)間隔は、強磁性体合金の組成を調整することによって任意に設定することが可能であり、最少で1℃である。
係る構成を有することによって、強磁性体合金の温度が計測目標温度未満の場合には、可動磁石と第一の溝部の強磁性体合金とは磁力により吸着し前記可動磁石は前記第二の溝部内で前記第一の溝部側に位置する。第一の溝部の強磁性体合金の温度が計測目標温度に達した場合には、第一の溝部の強磁性体合金は常磁性体へと転移するので、可動磁石は第三の溝部の固定磁石の磁力によって第一の溝部の強磁性体合金と分離し、固定磁石側へと移動する。即ち、可動磁石は前記第二の溝部内で前記第三の溝部側へ移動する。ここで、前記強磁性体合金のキュリー温度が前記マトリクスの一方向に上昇するように配列されているので、当該温度計測器がチャンバ内の基板ホルダ又は基板トレーに載置され温度が上昇するに従い、強磁性体合金の強磁性体から常時性体への転移は前記マトリクスの一方向に移動する。従って、可動磁石が第二の溝部内で第三の溝部側に移動した温度計測素子を確認することによって、温度計測を行うことが可能である。
また、係る構成の温度計測器を複数台、基板トレー又は基板ホルダに載置して、チャンバ内の温度のバラツキを計測することが可能となる。例えば、上記の温度計測器を前記基板トレー又は基板ホルダの中央と四隅の5箇所に載置すれば、5箇所の温度バラツキをチェックすることが可能である。
本発明に係る温度計測器は、シリコン基板又はガラス基板に一列に近接して形成された第一の溝部と第二の溝部と第三の溝部と、前記第一の溝部に嵌め込まれた強磁性体合金と、前記第二の溝部に配置され当該第二の溝部内で移動することが可能な可動磁石と、前記第三の溝部に嵌め込まれた固定磁石とから成る温度計測素子を前記シリコン基板又は前記ガラス基板にマトリクス状に複数設けた温度計測部を前記シリコン基板又はガラス基板上に複数台設けた温度計測器であって、前記温度計測部の前記温度計測素子の前記第一の溝部に嵌め込まれた前記強磁性体合金は、当該強磁性体合金のキュリー温度が計測目標温度となるように設定され、且つマトリクス状に設けられた前記複数の強磁性体合金は、当該強磁性体合金のキュリー温度が前記マトリクスの一方向に上昇する位置関係で配列され、前記強磁性体合金の温度が前記計測目標温度未満の場合には、前記可動磁石と前記強磁性体合金とが磁力によって吸着することにより前記可動磁石が前記第二の溝部内で前記第一の溝部側に位置し、前記強磁性体合金の温度が前記計測目標温度に達した場合には、前記可動磁石と前記固定磁石とが磁力によって吸着することにより前記可動磁石が前記第二の溝部内で前記第三の溝部側に位置することで前記温度計測素子が前記計測目標温度に達したことを表示するように構成して成ることを特徴とする。
シリコン基板又はガラス基板を大型のものとして、例えば当該大型のシリコン基板又はガラス基板の中央と四隅の5箇所に温度計測部を5台一括で製作しても良い。ここで、小型のシリコン基板又はガラス基板の全面に温度計測素子をマトリクス状に形成したものを温度計測器と称しているが、大型基板上に当該温度計測器を複数台製作した場合は当該温度計測器を温度計測部と称している。これは、温度計測器を複数台用意して、基板トレー又は基板ホルダの所定の位置に配置してチャンバ内の温度を計測する代わりに、温度計測部を複数台有する温度計測器一台でチャンバ内の温度を計測するものである。係る温度計測器1台で、チャンバ内の温度分布を効率良く計測することが可能となる。
本発明の温度計測器は、前記強磁性体合金が嵌め込まれた前記第一の溝部と、前記可動磁石が配置された前記第二の溝部と、前記固定磁石が嵌め込まれた前記第三の溝部とを、カバーガラスで覆い、且つ前記カバーガラスの表面と前記ガラス基板又は前記シリコン基板の表面とは同一平面内にあることを特徴とする。
ここで、第二の溝部に設置された可動磁石が動き易いように、カバーガラス内面と第二の溝部内に設置された可動磁石の上面との間には隙間を設けることが望ましい。なお、カバーガラスで覆う範囲は、基板としてシリコン基板を用い、後述する陽極接合用ガラスをカバーガラスと使用する場合は、第一〜第三の各溝部は真空に保たれて封入されるので、基板上にある複数の温度計測素子を全て覆っても良い。しかし、カバーガラスとしてガラス基板と線膨張係数を同一にしたガラスを用いガラス微粒子を堆積して固定する場合は、各溝部の空気抜きが必要となるので、マトリクス状に温度計測素子が配置されている場合は、各列毎に覆うことが望ましい。また、カバーガラスの表面とシリコン基板又はガラス基板の表面とを同一平面にするために、基板には段差部を設けても良い。
係る構成とすることで、前記強磁性体合金が嵌め込まれた前記第一の溝部と、前記可動磁石が配置された前記第二の溝部と、前記固定磁石が嵌め込まれた前記第三の溝部とから構成される温度計測素子の信頼性を向上することが可能である。即ち、第二の溝部に設置した可動磁石が当該第二の溝部から飛び出すことを防止し、温度計測器をエッチングガス中で使用中しても可動磁石、固定磁石及び強磁性体合金をエッチングガスから守ることとなる。
本発明の温度計測器は、前記カバーガラスは、陽極接合用ガラスであって、前記シリコン基板と前記カバーガラスとの接続は陽極接合法によって接合し、前記第一の溝部と前記第二の溝部と前記第三の溝部とは前記カバーガラスによって真空に封入されて成ることを特徴とする。
陽極接合用ガラスは、熱膨張特性をシリコン単結晶に一致させ、歪みの少ない陽極接合が広い温度範囲で行えるようにしたものである。陽極接合法とは、可動イオンを含むガラスとシリコンウエハや金属等を密着接合する方法であって、重ね合わせた基板を加熱して、ガラス側を軟化させ、同時にシリコン側を陽極として両者の間に高電圧を付加することにより、電気的に二重層を発生させ、静電引力により基板同士を接合する方法である。
係る構成とすることにより、カバーガラスをシリコン基板に確実且つ簡単に固定することが可能となり、温度計測器の高信頼性化及び低コスト化が達成できる。
本発明の温度計測器は、前記カバーガラスは、当該カバーガラスの線膨張係数を前記ガラス基板の線膨張係数を合わせたものであって、前記ガラス基板と前記カバーガラスとの接合は、ガラス微粒子を接合部に堆積させ、堆積した当該ガラス微粒子に熱を加えて接合して成ることを特徴とする
この場合、前記第一の溝部と前記第二の溝部と前記第三の溝部とを貫通し、前記第一の溝部内と前記第二の溝部内と前記第三の溝部内との空気が、前記第一の溝部と前記第二の溝部と前記第三の溝部と前記カバーガラスとで密閉された空間から抜け出るような貫通孔を設けることが望ましい。
貫通孔は、前記第一の溝部と前記第二の溝部と前記第三の溝部とを貫通して設けられており、前記カバーガラスによって覆われない部分が存在するようにする。貫通孔の大きさは、当該第一の溝部、第二の溝部及び第三の溝部内に残留している空気が当該貫通孔を通して、前記カバーガラスで覆われていない部分から外部に抜け出るような構成であれば特に拘らない。即ち、貫通孔の基板の厚み方向の深さは、第一〜第三の溝部の深さと同じでも良いし、貫通孔のみ浅い構造であっても構わない。
カバーガラスの線膨張係数をガラス基板の線膨張係数と合わせることは、バーガラスの原材料となるガラスを形成する際に、屈折率を調節するためのドーパントを適宜ドープすることによって実現できる。例えば、ボロンをドープすればガラスの屈折率は低くなると共に、線膨張係数は純粋石英の線膨張係数より大きくなる。
線膨張係数をガラス基板の線膨張係数と合わせたカバーガラスの固定は、ガラス微粒子を接合部に堆積させ、当該堆積したガラス微粒子を高温でガラス化することによって行うが、ここで接合部とは、カバーガラスとガラス基板を接合する場所であって、例えばカバーガラスの四隅であっても良い。
係る構成とすることで、前記固定磁石、前記可動磁石及び前記強磁性体合金に残留する空気が、前記第一の溝部と前記第二の溝部と前記第三の溝部と前記カバーガラスとで密閉された空間から抜け出ることが可能となり、温度計測中に前記カバーガラスが変形されることを防止する。
本発明に係る温度計測器は、前記計測目標温度が50℃から600℃の範囲内であることを特徴とする。PVD、CVD等の工程においては、シリコン基板又はガラス基板の温度は、成膜速度、膜質等の面から250℃〜550℃の温度範囲が最適である。また、ドライエッチング工程では、シリコン基板又はガラス基板の温度は、液体窒素で基板ホルダを冷やす場合もあるが、通常は50℃程度以上となっている。従来PVD、CVD等におけるプラズマが発生する環境下では、その温度範囲でシリコン基板又はガラス基板を計測できる温度計測器は存在しなかった。従って、本発明によれば、PVD、CVD等の工程、更にはドライエッチング工程も含めて50℃から600℃の範囲内の温度管理が可能となり、各種半導体デバイスやフラットディスプレイパネルの品質向上、歩留まり向上に寄与することとなる。
本発明に係る温度計測器は、前記強磁性体合金がCo系合金、Ni系合金、Fe系合金、Mn系合金の内から選ばれた一種であることを特徴とする。本発明によれば、本合金の組成を調整することによって、キュリー温度を250℃以上に設定することができ、高温域において使用可能な温度計測器が実現される。Co系合金としては、例えばCo−Ni合金の場合、Co:100%ではキュリー温度は1115℃であり、Ni:100%ではキュリー温度は360℃であるため、CoとNiの組成を調整することによってキュリー温度を360℃〜1115℃の範囲で設定することができる。また、Co−Pd合金の場合、キュリー温度は0℃〜1119℃の範囲で設定可能であり、Co−Pt合金の場合、キュリー温度は0℃〜1120℃の範囲で設定可能である。Ni系合金としては、例えばCu−Ni合金の場合、キュリー温度は−300℃から368℃の範囲で設定可能である。Fe系合金としては、例えばFe−Pt合金の場合、キュリー温度は300℃から500℃の範囲で設定可能であり、Fe−Ni合金の場合、キュリー温度は354℃〜612℃の範囲で設定可能である。Mn系合金としては、例えばMn−Pt合金の場合、キュリー温度は−200℃から400℃の範囲で設定可能である。
本発明に係る温度計測器は、前記可動磁石及び前記固定磁石は、急冷薄帯製造法またはメカニカルアロイング法によって製造されることを特徴とする。従って本発明によれば、均一な特性の可動磁石及び固定磁石が低コストで製造できることとなり、低コストで、信頼性のある温度計測器が実現される。
本発明に係る温度計測器は、前記強磁性体合金が急冷薄帯製造法またはメカニカルアロイング法によって製造されることを特徴とする。通常の溶解による合金の製造方法では、冷却中に成分の偏析が起こり、採取する部分によって組成が変わってしまうのに対し、本発明における急冷薄帯製造法またはメカニカルアロイング法によれば、均一な組成の合金が製造できる。従って、正確な温度計測が可能となり、信頼性のある温度計測器が実現される。
本発明に係る温度計測器は、前記強磁性体合金、前記可動磁石及び前記固定磁石は、それらの表面にセラミックスのコーティングが施されてなることを特徴とする。かかる構成を有することにより、酸化による強磁性体合金の組成の変化を防止することができ、且つ当該温度計測器をフッ素ガス中で使用しても侵食の問題が発生しない。従って、正確な温度計測が可能となり、信頼性のある温度計測器が実現される。
本発明に係る温度計測器は、シリコン基板又はガラス基板に第一、第二、及び第三の溝部を形成し、第一の溝部に計測温度感知部である強磁性体合金を固定し、第三の溝部に固定磁石を固定し、第二の溝部に可動磁石が前記第一の溝部側と前記第三の溝部側に移動可能なように配置されて一の温度計測素子が構成される。この温度計測素子を、前記シリコン基板又は前記ガラス基板の全面にマトリクス状に形成し、且つ前記強磁性体合金のキュリー温度が前記マトリクスの一方向に上昇する位置関係で配列される。前記強磁性体合金の温度が前記計測目標温度未満の場合には、前記可動磁石と前記強磁性体合金とは磁力によって吸着し前記可動磁石は前記第二の溝部内で前記第一の溝部側に位置する。前記強磁性体合金の温度が前記計測目標温度に達した場合には、前記可動磁石と前記強磁性体合金とが分離して前記可動磁石と前記固定磁石とが磁力によって吸着し前記可動磁石は前記第二の溝部内で前記第三の溝部側に移動する。従って、可動磁石の動きを認知することで温度を計測することが可能である。それ故、従来の温度計測器のように補償導線等を使用せずに温度計測ができるため、PVD、CVD、ドライエッチング等の工程におけるチャンバ内の基板の温度を計測する場合、プラズマ発生のための高周波やプラズマ中の電子、イオン、ラジカル等の影響は受けずに正確な温度計測が可能である。
また、本発明に係る温度計測器は、温度計測器を構成する材料が金属であるため、高温域での使用が可能であり、焼損や昇華によるチャンバ内雰囲気の汚染がない。従って、従来困難であったPVD、CVD等の工程における高温域(250℃以上)での温度管理が可能となり各種半導体デバイスや液晶ディスプレイパネルの品質向上、歩留まり向上に貢献する。
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、本発明の実施の形態は以下に示すものに限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本願発明の温度計測器の第一の実施の形態に係り、温度計測器の平面図である。図2は、図1の温度計測器の温度計測素子の平面図(a)と、図2(a)の温度計測素子のC−C’断面図(b)である。但し、図2(a)では、シリコン基板1は省略し、カバーガラス2の横の方向の長さは適当な部分で切り取っている。更に、図2(b)では、温度計測素子M、特に第一〜第三の溝部を強調して描いている。
図1に示すように、温度計測器Kは、シリコン基板1上にある32個の温度計測素子Mからなる。温度計測素子Mは3段に分けて配置され、上段には10個、中段には12個、下段には10個である。各段の温度計測素子Mは、それぞれ一枚のカバーガラス2で封入されている。この温度計測素子M一つで一つの温度が検知でき、温度計測器K全体で一つの温度計を構成している。
温度計測素子Mの構造を説明する。温度計測素子Mは、第一の溝部4a、第二の溝部4b、第三の溝部4c、強磁性体合金3a、可動磁石3b、固定磁石3cから構成される。
第一の溝部4aは、強磁性体合金3aが縦に嵌め込みできるようにシリコン基板1に対して垂直な方向に深く設けられている。第二の溝部4bは、当該第二の溝部4b内で可動磁石3bが第一の溝部4a側と第三の溝部4c側の両方向に移動可能なように、凹部形状に形成されている。第三の溝部4cは、固定磁石3cが嵌め込み固定できるように、固定磁石3cの平面形状に合わせて凹部形状に形成されている。第一の溝部4a、第二の溝部4b及び第三の溝部4cにはカバーガラス2が被せられる。カバーガラス2の表面とシリコン基板1の表面を同一平面にするために、第一の溝部4aと第三の溝部4cの部分には段差部8a、8bが設けられている。各溝部の深さは、この段差部8a、8bを考慮して決定されている。
段差部8a、8bと第一〜第三の溝部4a、4b、4cは、通常のフォトリソグラフィ技術とエッチング技術により製作した。第二の溝部4bを形成した後の溝底面の表面粗さは、中心線平均粗さが0.8μm以下となるように、ドライエッチング或いはウエットエッチング条件を設定して行った。これは、第二の溝部4bの溝底面の表面と可動磁石3bとの摩擦力を少なくし、可動磁石3bが第二の溝部4b内で円滑に移動できるようにするためである。更に、可動磁石3bが円滑に移動できるように、可動磁石3bの横幅は第二の溝部4bの横幅より小さめに形成されている。
強磁性体合金3aは、Co系合金で形成され、キュリー温度が計測目標温度となるように組成が調整されたものである。本実施の形態1では、1枚のシリコン基板上に32個の温度計測素子Mが形成されており、32個の強磁性体合金3aが存在する。各々の強磁性体合金3aのキュリー温度は488℃から550℃まで2℃毎に設定されている。強磁性体合金3aは急冷薄帯製造法により製造した。即ち、CoとNiを所定の量だけ秤量し、液体急冷法により薄帯状とした。シリコン基板1上の32個の温度計測素子Mは、10個の温度計測素子Mはシリコン基板1の上段に、12個の温度計測素子Mは中段に、10個の温度計測素子Mは下段に配置されている。各段の強磁性体合金のキュリー温度は、右側に向かって一方向に上昇する位置関係で配置され、その下の段は上の段に連続するように構成されている。なお、強磁性体合金3aの表面は、フッ素系ガスに侵食されないようにセラミックスコーティングを施した。
可動磁石3b及び固定磁石3cは、メカニカルアロイング法により製造した。各磁石の表面は、フッ素系ガスに侵食されないようにセラミックスコーティングを施した。また、可動磁石3bの第一及び第三の溝部4a、4c側の両端部は、第二の溝部4bの第一の溝部4a側の側面と第三の溝部4c側の側面で、強磁性体合金3a及び固定磁石3cに吸着し易いように平坦化されている。第二の溝部4bに可動磁石3bを設置したときの磁極の向きは、固定磁石3cと吸着する向きにする。即ち、可動磁石3bが強磁性体合金3aと磁力によって吸着している状態から、強磁性体合金3aが熱せられてキュリー温度に到達したときに、今度は固定磁石3cと可動磁石3bとの互いに吸着し合う磁力によって可動磁石3bが強磁性体合金3aから離れて、固定磁石3cが設置されている第三の溝部3c側へ動くように構成されている。従って、可動磁石3bと固定磁石3cの磁力の強さは、上記の動作が円滑に行われるような強さに設計されている。
シリコン基板上1には32個の温度計測素子Mが形成されているが、10個の温度計測素子Mはシリコン基板1の上段に、12個の温度計測素子Mは中段に、10個の温度計測素子Mは下段に配置されている。各段の温度計測素子Mは、それぞれ1枚のカバーガラス2で覆われている。
カバーガラス2は、熱膨張係数がシリコン基板1と略同一の陽極接合用ガラスを用いた。シリコン基板1に段差部8a、8bを設けて、陽極接合用ガラスをカバーガラス2として用い、陽極接合法によりシリコン基板1に固定した。カバーガラス2を各段の温度計測素子Mの上に固定したときに、シリコン基板1の表面とカバーガラス2の表面とは、段差がなく同一平面となるようにした。
カバーガラス2を陽極接合法で固定しているため、第一の溝部4a、第二の溝部4b及び第三の溝部4cは真空のまま封入される。
第二の溝部4bに可動磁石3bを設置し、カバーガラス2で覆ったときに、カバーガラス2と可動磁石3bとの間には隙間が形成できるように構成されている。このカバーガラス2と可動磁石3bとの隙間によって、可動磁石3bが第二の溝部4b内で円滑に動くことが可能となる。
次に、温度計測器Kの動作に付いて説明する。図3は、図1で示した温度計測器Kを9台、基板トレー5に載置したときの平面図である。それぞれの温度計測器Kは同一であって、それぞれの32個の強磁性体合金3aのキュリー温度は488℃〜550℃に設定されているものとする。基板トレー5に載置する前に、各温度計測器Kの可動磁石3bは強磁性体合金3aに吸着されているべきであって、そうでない場合は、後述するリセット法によって可動磁石3bを第二の溝部4b内で第一の溝部4a側の強磁性体合金3aに吸着させる。
各温度計測器Kを、基板トレー5に載置し、実際の工程で実現される状態に各温度計測器Kを曝す。例えば、製膜時のシリコン基板の温度を計測したいのであれば、実際に製膜時の雰囲気と同じ雰囲気に各温度計測器Kを曝す。
温度計測前は、全ての強磁性体合金3aの温度は計測目標温度(キュリー温度)未満であり、可動磁石3bは強磁性体合金3aと磁力によって吸着し、第二の溝部4b内で第一の溝部4a側に位置している。カバーガラス2を通して、この状態を視認することができる。
雰囲気温度上昇に伴って、強磁性体合金3aの温度が計測目標温度(キュリー温度)に達した場合には、強磁性体合金3aは常磁性体へと転移するため、強磁性体合金3aと可動磁石3bとの間の吸着力は低下する。従って、可動磁石3bは固定磁石3cとの間の磁力によって強磁性体合金3aと分離して固定磁石3c側に移動し、第二の溝部4b内で第三の溝部4c側に位置することになる。この状態は、カバーガラス2を通して視認することができる。その移動した可動磁石3bの組合せにおける強磁性体合金3aの計測目標温度(キュリー温度)を特定することによって、チャンバ内に設置されたシリコン基板が履歴した温度を知ることができる。基板トレー5には9個の温度測定器Kを設置しているので、9台の温度計測器Kで履歴した温度を比較することで、基板トレー5内の温度分布、或いはチャンバ内の温度分布を知ることができる。
温度計測終了後、全ての強磁性体合金3aの温度が計測目標温度(キュリー温度)未満の状態に戻った後に行う温度計測器Kのリセット方法を説明する。各温度計測器Kそれ自身にはリセット機構はないので、外部から可動磁石3bと固定磁石3cの磁力よりも強力な磁力を持つ磁石によって、強制的に可動磁石3bと固定磁石3cとを分離させ、全ての可動磁石3bを強磁性体合金3aと吸着した状態にする。このような方法により、温度計測器Kは温度計測前と同じ状態となる。
以上の実施の形態1では、強磁性体合金3a、可動磁石3b、固定磁石3cからなる温度計測素子Kの数を32とし、強磁性体合金3aのキュリー温度は488℃〜550℃の範囲で2℃毎に設定したが、組合せの数、キュリー温度の範囲、及びキュリー温度の間隔は本実施の形態に限定されるものではなく、自由に設定することができる。
(実施の形態2)
図4は本願発明の温度計測器の第二の実施の形態に係り、温度計測器の平面図である。図5は、図4の温度計測器の温度計測素子の平面図(a)と、図5(a)の温度計測素子のA−A’断面図(b)、B−B’断面図(c)である。但し、図5(a)では、シリコン基板1は省略し、カバーガラス2の横の方向の長さは適当な部分で切り取っている。更に、図5(b)、(c)では、温度計測素子Mを強調する仕方で、特に第一〜第三の溝部を強調する仕方で描いている。
実施の形態1との違いは、カバーガラス2をシリコン基板1と略同一の線膨張係数に設定したガラスで形成し、カバーガラス2とシリコン基板1との接合方法を、ガラス微粒子を接合部に堆積させ、堆積した当該ガラス微粒子に熱を加えて接合する方法を用いた点にある。
本方法でカバーガラス2をシリコン基板1に固定した場合、陽極接合法のように各溝部が真空に保たれたまま封入されることはないので、固定磁石等に残留している空気が問題となる。即ち、このまま封入してしまと、残留している空気が高温化で膨張し、カバーガラス2が変形したり、破損したりして可動磁石3bの動作が円滑でなくなるという不具合が発生する。
この不具合を解消するために貫通孔Gが設けられている。貫通孔Gは、図5(b)の断面図に示すように第一の溝部4aと第二の溝部4bと第三の溝部4cとを貫通し、カバーガラス2の上辺から一部分が飛び出した形状である。しかし、温度計測素子Mの中央部分の断面図、即ち図5(c)では、第一の溝部4aと第三の溝部4cは、それぞれ強磁性体合金3aと固定磁石3cが嵌め込まれてその上からカバーガラス2で直接に覆われている形状になっている。但し、第二の溝部4bは、当該第二の溝部4bに可動磁石3bを設置したときに、カバーガラス2と可動磁石3bのとの間に間隙ができるように構成されている。なお、貫通孔Gのシリコン基板1の厚み方向の深さは、第三の溝部4cと同じとした。
貫通孔Gにより、第一の溝部4aに嵌め込まれた強磁性体合金3aや第二の溝部4bに設置された可動磁石3bや第三の溝部4cに嵌め込まれた固定磁石3cに空気が残留していて高温で当該空気が膨張しても、当該貫通孔Gを介して外部に抜け出るようになっているので、上述した不具合は発生しない。
カバーガラス2とシリコン基板1との接合は、ガラス微粒子を接合部に堆積させ、当該堆積したガラス微粒子を高温にてガラス化することにより行った。カバーガラス2は各列毎とし、合計3枚用いた。各カバーガラス2の接合部は、カバーガラスの四隅と、第三の溝部4c側下辺の真ん中の部分の合計5箇所とした。
以上の実施の形態2の温度計測器Kを用いて、実施の形態1と同様に温計測を行うことが可能である。即ち、一台による温度計測は勿論、当該温度計測器Kを複数台基板トレーに載置し、チャンバ内の温度分布を計測することが可能である。
(実施の形態3)
図6は本願発明の温度計測器の第三の実施の形態に係り、温度計測器の平面図である。温度計測素子Mの平面図と断面図は、図5(a)、図5(b)、及び図5(c)と同様である。但し、シリコン基板1がガラス基板6に置き換わる。
温度計測素子Kの第一〜第三の溝部4a、4b、4cの各溝の形成は、基板が実施の形態1、2のシリコン基板1と異なりガラス基板6であるが、同様にフォトリソグラフィ技術とエッチング技術により形成した。
第三の実施の形態である温度計測器Kは、温度計測素子Mの数を48個としマトリクス状に配置した。マトリクスのサイズは12行4列である。
48個の温度計測素子Mの強磁性体合金のキュリー温度は、456℃〜550℃とし、2℃毎マトリクスの一方向に上昇するように配置した。即ち、左上を原点とする12行4列のマトリクスにおいて、行方向及び列方向に上昇するように配置し、各段の最後のものと次の段の最初のものは連続するようにした。強磁性体合金3aは実施の形態1、2と同じCo系合金であり、可動磁石3b、固定磁石3cについても実施の形態1と同じである。
カバーガラス2は、ガラス基板6と線膨張係数を同一にしたものを用い、接合部にガラスの微粒子を堆積させ、堆積した当該ガラス微粒子に熱を加えてガラス化することによりガラス基板6に固定した。結合部は、カバーガラスの四隅と第三の溝部側の下辺の数箇所とした。
以上の実施の形態3の温度計測器Kを用いて、実施の形態1、2と同様に温計測を行うことが可能である。即ち、一台による温度計測は勿論、当該温度計測器Kを複数台基板トレーに載置し、チャンバ内の温度分布を計測することが可能である。
(実施の形態4)
図7を用いて、本発明の第四の実施の形態である温度計測器について説明する。第四の実施の形態に係る温度計測器は、基板として大型のガラス基板7を用い、この大型のガラス基板7に、実施の形態3に相当する温度計測部を9台一体化して製作したものである。但し、各温度計測部の温度計測素子Mの数は10個とし、5行2列に配置した。温度計測素子Mの構成は、実施の形態2、3と同じである。大型のガラス基板7は、チャンバ室の広さ(横断面)に略等しい。なお、本実施の形態では、全体の名称を温度計測器と称し、これまでの実施の形態に見られる温度計測器に相当する部分を温度計測部と称している。
温度計測素子Mの第一〜第三の溝部の形成は、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術により形成した。各溝の寸法は実施の形態1、2、3と同じである。
カバーガラス2は、大型のガラス基板7と線膨張係数を同一にしたものを用い、接合部にガラスの微粒子を堆積させ、堆積した当該ガラス微粒子に熱を加えてガラス化することにより大型のガラス基板7に固定した。結合部は、カバーガラスの四隅と第三の溝部側の下辺の数箇所とした。カバーガラス2は、各温度計測部の各列毎覆うものとし、各温度計測部毎2枚、合計18枚用いた。
各温度計測部の温度計測素子Mの数は10であって、強磁性体合金3aのキュリー温度は、505℃〜550℃とし、5℃毎マトリクスの一方向に上昇するように配置した。即ち、左上を原点とする5行2列のマトリクスにおいて、行方向及び列方向に上昇するように配置し、各段の最後のものと次の段の最初のものは連続するようにした。強磁性体合金3aの組成は実施の形態1、2、3と同じCo系合金であり、可動磁石3b、固定磁石3cについても実施の形態1、2、3と同じである。
以上の実施の形態4において、大型のガラス基板7に複数台の温度計測器を一体化して形成することによって、実施の形態1、2、3と同様の機能を有する温度計測器を構成することができ、且つ当該温度計測器一台でチャンバ内の温度分布を計測することが可能である。
本発明に係る温度計測器は、各種半導体デバイス製造や液晶ディスプレイパネル製造のためのPVD、CVD、ドライエッチング等の工程におけるシリコン基板やガラス基板の温度管理、及びチャンバ内の温度管理に利用することができる。
本発明の実施の形態1の温度計測器の平面図である。 図1に示す温度計測器を構成する一つの温度計測素子の平面図(a)と(a)におけるC−C’断面図(b)である。 図1の温度計測器を基板トレー上に並べた平面図である。 本発明の実施の形態2の温度計測器の平面図である。 図4に示す温度計測器を構成する一つの温度計測素子の平面図(a)と(a)におけるA−A’断面図(b)、B−B’断面図(c)である。 本発明の実施の形態3の温度計測器の平面図である。 本発明の実施の形態4の温度計測器の平面図である。
符号の説明
1 シリコン基板
2 ガラスカバー
3a 強磁性体合金
3b 可動磁石
3c 固定磁石
4a 第一の溝部
4b 第二の溝部
4c 第三の溝部
5 基板トレー
6 ガラス基板
7 大型ガラス基板
8a、8b 段差部
K 温度計測器
G 貫通孔

Claims (12)

  1. シリコン基板又はガラス基板に一列に近接して形成された第一の溝部と第二の溝部と第三の溝部と、前記第一の溝部に嵌め込まれた強磁性体合金と、前記第二の溝部に配置され当該第二の溝部内で移動することが可能な可動磁石と、前記第三の溝部に嵌め込まれた固定磁石とから成る温度計測素子を有し、
    計測温度感知部としての前記強磁性体合金は、キュリー温度が計測目標温度となるように設定され、前記強磁性体合金の温度が前記計測目標温度未満の場合には、前記可動磁石と前記強磁性体合金とが磁力によって吸着することにより前記可動磁石が前記第二の溝部内で前記第一の溝部側に位置し、前記強磁性体合金の温度が前記計測目標温度に達した場合には、前記可動磁石と前記固定磁石とが磁力によって吸着することにより前記可動磁石が前記第二の溝部内で前記第三の溝部側に位置することで前記計測温度感知部が前記計測目標温度に達したことを表示するように構成して成ることを特徴とする温度計測器。
  2. シリコン基板又はガラス基板に一列に近接して形成された第一の溝部と第二の溝部と第三の溝部と、前記第一の溝部に嵌め込まれた強磁性体合金と、前記第二の溝部に配置され当該第二の溝部内で移動することが可能な可動磁石と、前記第三の溝部に嵌め込まれた固定磁石とから成る温度計測素子を前記シリコン基板又は前記ガラス基板の全面にマトリクス状に複数設け、
    前記温度計測素子の前記第一の溝部に嵌め込まれた前記強磁性体合金は、当該強磁性体合金のキュリー温度が計測目標温度となるように設定され、且つマトリクス状に設けられた前記複数の強磁性体合金は、当該強磁性体合金のキュリー温度が前記マトリクスの一方向に上昇する位置関係で配列され、前記強磁性体合金の温度が前記計測目標温度未満の場合には、前記可動磁石と前記強磁性体合金とが磁力によって吸着することにより前記可動磁石が前記第二の溝部内で前記第一の溝部側に位置し、前記強磁性体合金の温度が前記計測目標温度に達した場合には、前記可動磁石と前記固定磁石とが磁力によって吸着することにより前記可動磁石が前記第二の溝部内で前記第三の溝部側に位置することで前記温度計測素子が前記計測目標温度に達したことを表示するように構成して成ることを特徴とする温度計測器。
  3. シリコン基板又はガラス基板に一列に近接して形成された第一の溝部と第二の溝部と第三の溝部と、前記第一の溝部に嵌め込まれた強磁性体合金と、前記第二の溝部に配置され当該第二の溝部内で移動することが可能な可動磁石と、前記第三の溝部に嵌め込まれた固定磁石とから成る温度計測素子を前記シリコン基板又は前記ガラス基板にマトリクス状に複数設けた温度計測部を前記シリコン基板又はガラス基板上に複数台設けた温度計測器であって、
    前記温度計測部の前記温度計測素子の前記第一の溝部に嵌め込まれた前記強磁性体合金は、当該強磁性体合金のキュリー温度が計測目標温度となるように設定され、且つマトリクス状に設けられた前記複数の強磁性体合金は、当該強磁性体合金のキュリー温度が前記マトリクスの一方向に上昇する位置関係で配列され、前記強磁性体合金の温度が前記計測目標温度未満の場合には、前記可動磁石と前記強磁性体合金とが磁力によって吸着することにより前記可動磁石が前記第二の溝部内で前記第一の溝部側に位置し、前記強磁性体合金の温度が前記計測目標温度に達した場合には、前記可動磁石と前記固定磁石とが磁力によって吸着することにより前記可動磁石が前記第二の溝部内で前記第三の溝部側に位置することで前記温度計測素子が前記計測目標温度に達したことを表示するように構成して成ることを特徴とする温度計測器。
  4. 前記強磁性体合金が嵌め込まれた前記第一の溝部と、前記可動磁石が配置された前記第二の溝部と、前記固定磁石が嵌め込まれた前記第三の溝部とを、カバーガラスで覆い、且つ前記カバーガラスの表面と前記ガラス基板又は前記シリコン基板の表面とは同一平面内にあることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一に記載の温度計測器。
  5. 前記カバーガラスは、陽極接合用ガラスであって、前記シリコン基板と前記カバーガラスとの接続は陽極接合法によって接合し、前記第一の溝部と前記第二の溝部と前記第三の溝部とは前記カバーガラスによって真空に封入されて成ることを特徴とする請求項4記載の温度計測器。
  6. 前記カバーガラスは、当該カバーガラスの線膨張係数を前記ガラス基板の線膨張係数を合わせたものであって、前記ガラス基板と前記カバーガラスとの接合は、ガラス微粒子を接合部に堆積させ、堆積した当該ガラス微粒子に熱を加えて接合して成ることを特徴とする請求項4記載の温度計測器。
  7. 前記第一の溝部と前記第二の溝部と前記第三の溝部とを貫通し、前記第一の溝部内と前記第二の溝部内と前記第三の溝部内との空気が、前記第一の溝部と前記第二の溝部と前記第三の溝部と前記カバーガラスとで密閉された空間から抜け出るような貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項6記載の温度計測器。
  8. 前記計測目標温度が50℃から600℃の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか一に記載の温度計測器。
  9. 前記強磁性体合金は、Co系合金、Ni系合金、Fe系合金、Mn系合金の内から選ばれた一種であることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか一に記載の温度計測器。
  10. 前記固定磁石又は可動磁石は、急冷薄帯製造法又はメカニカルアロイング法によって製造されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか一に記載の温度計測器。
  11. 前記強磁性体合金は、急冷薄帯製造法又はメカニカルアロイング法によって製造されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか一に記載の温度計測器。
  12. 前記強磁性体合金、前記可動磁石及び前記固定磁石は、それらの表面にセラミックスのコーティングが施されて成ることを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか一に記載の温度計測器。
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