JP2005539004A - 新生児対象又は胎児対象用鎮痛剤 - Google Patents

新生児対象又は胎児対象用鎮痛剤 Download PDF

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Abstract

第一の態様では、本発明は、新生児対象及び/又は胎児対象に鎮痛をもたらす医薬を調製する際のキセノンの使用に関する。第二の態様では、本発明は、新生児対象に鎮痛をもたらす方法であって、前記対象に治療有効量のキセノンを投与することを含む方法に関する。第3の態様では、本発明は、胎児対象に鎮痛をもたらす方法であって、前記胎児対象の母親に、前記母親と胎児対象の両者にとって治療有効量のキセノンを投与することを含む方法に関する。

Description

本発明は、鎮痛の分野に関する。より詳細には、本発明は、新生児対象及び/又は胎児対象での使用に適する鎮痛剤に関する。
ヒトの胎児及び新生児が痛みの感覚を覚えることは知られている[Anand KJS et al, New Engl J Med, 317:1321-1329, 1987; Fitzgerald M, Br Med Bull, 47:667-75, 1991]。しかし、より重大な問題は、新生児の痛みが治療されないと、中枢神経系の発達に有害な影響が及ぼされ、生理的及び心理的影響が長引きかねないことである[Taddio A et al, Lancet, 349:599-603, 1997; Graham YP et al, Dev Psychopath, 11:545-565, 1999; Anand KJS et al, Biol Neonate, 77:69-82, 2000; Ruda MA et al, Science 289:628-630, 2000]。そのため、適切な鎮痛療法は、ごく若い者の麻酔管理において成人よりもいっそう重要である。
亜酸化窒素(NO)は、若年者及び年配者の臨床での鎮痛に150年間を超えて使用され続け、未だに最も一般的に使用されている鎮痛ガスである。小児外科患者にNOが使用されるのは、麻酔及び鎮痛効力が成人で見られるものと一致すると想定してのことである[Eger EI, Nitrous Oxide/N2O;Elsevier, New York, 1985]。しかし、成人で効果的な鎮痛薬が新生児でも同じ有益な効果を発揮するであろうという予想に、本発明者らの報告が、未成熟の痛み経路では侵害受容性刺激に応じて下行性抑制経路を活性化することができないために、新生児ラットには一酸化窒素(NO)が有効でないとして異議を唱えた[Fitzgerald M et al, Brain Res 389:261-70, 1986; van Praag H, Frenk H, Dev Brain Res, 64:71-76, 1991]。実験は、NOが、3週齢未満のラットでは、熱刺激[Fujinaga M et al, Anesth Analg, 91:6-10, 2000]及び炎症性刺激[Ohashi et al, Pain, 100:7-18, 2002]に対する抗侵害受容性作用がないことを示している。ヒトに拡大して推定すれば、このことは、NOが幼児期以下の対象では鎮痛剤として有効でないことを意味するはずである。キセノンの鎮痛剤としての使用にも同様の理論的根拠が当てはまると考えられる。
Anand KJS et al, New Engl J Med, 317:1321-1329, 1987 Fitzgerald M, Br Med Bull, 47:667-75, 1991 Taddio A et al, Lancet, 349:599-603, 1997 Graham YP et al, Dev Psychopath, 11:545-565, 1999 Anand KJS et al, Biol Neonate, 77:69-82, 2000 Ruda MA et al, Science 289:628-630, 2000 Eger EI, Nitrous Oxide/N2O;Elsevier, New York, 1985 Fitzgerald M et al, Brain Res 389:261-70, 1986 van Praag H, Frenk H, Dev Brain Res, 64:71-76, 1991 Fujinaga M et al, Anesth Analg, 91:6-10, 2000 Ohashi et al, Pain, 100:7-18, 2002
本発明は、上述の問題の1つ又は複数を解消する、新生児対象及び/又は胎児対象の痛みを有効に軽減することのできる鎮痛剤を提供しようと努めるものである。
第一の態様では、本発明は、新生児対象及び/又は胎児対象に鎮痛をもたらす医薬を調製する際のキセノンの使用に関する。
第二の態様では、本発明は、新生児対象に鎮痛をもたらす方法であって、前記対象に治療有効量のキセノンを投与することを含む方法に関する。
第三の態様では、本発明は、胎児に鎮痛をもたらす方法であって、前記胎児対象の母親に治療有効量のキセノンを投与することを含む方法に関する。
上述のとおり、本発明は、広い側面では、新生児対象及び/又は胎児対象におけるキセノンの鎮痛剤としての使用に関する。
より詳細には、本発明は、新生児対象に鎮痛をもたらす医薬を調製する際のキセノンの使用に関する。
驚くべきことに、キセノンは、従来技術によるそれと反対の示唆にもかかわらず、新生児に有効な鎮痛をもたらし得ることが判明した。実に、従来技術が新生児対象におけるキセノンの鎮痛剤としての使用を開示もしていなければ、提案もしていないことは注目に値する。
好ましい実施形態では、新生児対象は、生後4週間以内の哺乳動物、より詳細には、新生児対象は、生後2週間以内、さらにより詳細には、1週間以内の哺乳動物である。
さらに好ましくは、新生児対象は、ヒトである。
キセノンは、化学的に不活性な気体であり、その麻酔特性が知られて50余年になる[Lawrence JH et al, J. Physiol, 105:197-204, 1946]。これが最初に外科手術に使用されて以来[Cullen SC et al, Science, 113:580-582, 1951]、いくつかの研究グループが、キセノンは、代謝副生物がないこと、深い鎮痛、急速な開始及び回復、及び心臓血管系への影響が最小限であることを含む、優れた薬理プロフィールをもつことを示している[Lachmann B et al, Lancet, 335:1413-1415, 1990; Kennedy RR et al, Anaesth. Intens. Care, 20:66-70, 1992; Luttropp HH et al, Acta Anaesthesil. Scand. 38:121-125, 1994; Goto T et al, Anesthesiology, 86: 1273-1278, 1997; Marx T et al, Br. J. Anaesth., 78:326-327, 1997]。
最近、(急速に脳と平衡になる)キセノンがNMDAアンタゴニストであることが発見された[Franks NP et al, Nature, 396-324, 1998]。培養海馬ニューロンでの機構研究では、外科手術の麻酔状態を維持する、80%のキセノンが、NMDA活性化型電流を最高で60%減少させることがわかっている。NMDA受容体のこの強力な阻害は、薬理プロフィールの重要な特徴を一部説明するものであり、この不活性気体の麻酔効果及び鎮痛効果に寄与していそうである。
キセノンの薬剤としての用途での使用は、WO00/76545号に、キセノンの神経保護剤としての使用は、WO01/08692号に記載されており、これらの中身を参照により本明細書に援用する。どちらの特許出願も、キセノンが新生児対象又は胎児対象のための有効な鎮痛剤であるかもしれない可能性を開示していない。
キセノンなどの不活性な揮発性気体を鎮痛剤として使用することの強みは、分子が呼吸によって迅速に排出されることである。キセノンは、現在、潜在的にNOに代わる成分であると考えられている[Rossain R et al, Anesthesiology, 98:6-13, 2003]。ヒトでは、キセノンは、最小肺胞濃度(MAC)が71%atmであり[Lynch C et al, Anesthesiology, 92:865-70, 2000]、年配女性患者ではさらに低く(51%atm)[Goto T et al, Anesthesiology, 97:1129-32, 2002]、したがってNO(MAC=104%)よりも強力である[Hornbein TF et al, Anesth Analg. 61:553-6, 1982]。キセノンは、その血液気体分配係数(0.115)が非常に小さいために[Goto T et al, Anesthesiology, 86:1273-8, 1997; Rossaint R et al, Anesthesiology, 98:6-13, 2003]導入及び覚醒が速やかであり[Goto et al, Br J Anaesth 80:255-6, 1998]、催奇性の作用が全くなく[Lane GA et al, Science, 210:899-901, 1980; Burov NE et al, Anesteziol Reanimatol, 6:56-60, 1999]、環境にそれほど有害でなく[Goto T, Can J Anaesth, 49:335-8, 2002]、拡散性低酸素症のリスクが小さい方である[Calzia E et al, Anesthesiology, 90:829-3, 1999]。
出願人による研究では、様々な日週齢のラット集団の挙動及びc−Fos発現(神経活性化のマーカー)によって反映される、ホルマリン誘発性侵害受容に対するキセノンの有効性を調査した。これらの実験の詳細については、下記の実施例で概略を述べる。
簡潔には、7日齢、19日齢、28日齢、及び77日齢以上(成体)の4群のFischerラットを空気又は70%のキセノンに曝した。ホルマリン足底試験を使用して外科手術での刺激を模倣し、免疫組織化学的方法(c−Fos染色)及び挙動による方法を使用してその評価を行った。ホルマリンを投与すると、空気に曝されている間は、各日齢群で挙動にも免疫組織化学的にも典型的な侵害受容性応答が認められた。しかし、これらの応答は、キセノンによってかなり弱められた。言い換えれば、4段階の各発育段階、すなわち7日目、19日目、28日目、及び成体のFischerラットにおいて、キセノンがホルマリン注射に対して抗侵害受容性応答を示したのである。これらのデータは、(挙動に関しても免疫組織化学に関しても)23日齢未満の動物での抗侵害受容性作用に注目していない、最近報告されたNOでのデータ[Ohashi Y et al, Pain, 100:7-18, 2002]とは質が異なる。
本発明はさらに、胎児対象に鎮痛をもたらす医薬を調製する際のキセノンの使用に関する。本発明のこの実施形態では、キセノンは、分娩前又は分娩中の母親に投与することが好ましい。
出産の間、胎児は、痛み経路の活性化をもたらす機械的ストレスに曝される。本発明は、胎児対象の痛み処理経路が活性化される衝撃をキセノンの投与によって緩和できることを実証するものである。
これまで、キセノンを使用して胎児対象に鎮痛をもたらすことができたことを示す教示又は示唆が従来技術にないことは注目に値する。
好ましい一実施形態では、キセノンを1種又は複数の他の活性薬剤と併用する。その薬剤は、GABA作動性活性を促進する麻酔剤又は鎮静剤を含む任意の適切な活性薬剤でよい。そのようなGABA作動性薬剤の例には、イソフルラン、プロポフォル、及びベンゾジアゼピンが含まれる。
キセノンは、1種又は複数の他の鎮痛剤と併用してもよい。適切な鎮痛剤には、α2アドレナリン作動性アゴニスト、アヘン剤、又は非ステロイド系抗炎症薬が含まれよう。適切なα2アドレナリン作動性アゴニストの例には、クロニジン、デトミジン、メデトミジン、ブリモニジン、チザニジン、ミヴァゼロール、グアナベンツ、グアンファシン、又はデキサメデトミジンが含まれる。
本発明の医薬は、L型カルシウムチャネル遮断薬、N型カルシウムチャネル遮断薬、サブスタンスPアンタゴニスト、ナトリウムチャネル遮断薬、プリン作動性受容体遮断薬、又はこれらの組合せなど、他の活性成分を含んでもよい。
非常に好ましい本発明の一実施形態では、キセノンを吸入によって投与する。より好ましくは、キセノンは、20〜70%v/vのキセノン/空気混合物の吸入によって投与する。
別の好ましい実施形態では、医薬を液体の形態にする。非経口投与では、医薬を、他の物質、たとえば、血液と等張性の溶液にするのに十分な塩類又は単糖類を含有していてよい無菌水溶液の形態で使用してもよい。
より好ましい実施形態では、キセノンを薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と組み合わせて使用する。
治療用に許容される担体又は希釈剤は、製薬業界でよく知られており、たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co.[A. R. Gennaro Edit. 1985]に記載されている。
薬剤用担体、賦形剤、又は希釈剤の選択は、目的の投与経路及び標準の製薬の慣行に即して行ってよい。適切な担体の例には、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが含まれる。適切な希釈剤の例には、エタノール、グリセロール、及び水が含まれる。
医薬は、担体、賦形剤、若しくは希釈剤として、又はこれらに加えて、適切な任意の結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤、可溶化剤を含んでもよい。本明細書に記載の様々な異なる形態の薬剤組成物に適する賦形剤の例は、A Wade and PJ Weller編の医薬品賦形剤便覧(Handbook of Pharmaceutical Excipients)第2版(1994年)に載っている。
保存剤、安定剤、色素、さらには着香剤を薬剤組成物中に供してもよい。保存剤の例には、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp−ヒドロキシ安息香酸エステルが含まれる。抗酸化剤及び懸濁化剤を使用してもよい。
これまでのところ、キセノンを新しい麻酔剤として使用する妨げとなっている重大な問題は、コストが高いこと、使用する体積を最小限に抑えるために複雑な装置(低流量系)を要すること、並びに気体を取り出して再利用する必要があることである。別の問題は、キセノンの効力が比較的弱いことである。そのため、揮発性の一般麻酔剤を脂質乳濁液に可溶性にし、静脈内投与することが提案された[Eger RP et al, Can. J. Anaesth., 42:173-176, 1995]。液体形態にした一般麻酔剤の微小液滴を内皮注射して局所麻酔を誘導できることは、当業界で知られている[Haynes DH,米国特許第4,725,442号及び米国特許第44,622,219号]。通常、これらの微小液滴は、単分子リン脂質層でコーティングされており、生理的に適合性のある溶液中でも安定性が保たれる。同様の手法が、キセノンをそのようにして投与することを提議する最近の特許出願にも記載されている[Georgieff M,欧州特許出願第864329−A1号明細書]。
したがって、さらにより好ましい実施形態では、医薬は、脂質乳濁液の形態である。例として、静脈用製剤は、通常、気体又は揮発性の麻酔剤の溶解度を所望の臨床効果を実現するのに十分にするために、脂質乳濁液(市販のイントラリピッド(登録商標)10、イントラリピッド(登録商標)20、イントラファット(登録商標)、Lipofundin(登録商標)S、若しくはLiposyn(登録商標)乳濁液、又は溶解度を最大にするために特別に処方されたものなど)を含有している。この種の脂質乳濁液についての更なる情報は、G. Kleinberger and H. Pamperl, Infusionstherapie, 3, 108-117, 1983に載っている。
気体を溶解又は分散させる本発明の脂質相は、通常、8〜30個の炭素原子を含む飽和及び不飽和の長鎖及び中鎖脂肪酸エステルから生成する。これらの脂質は、水溶液中でリポソームを形成する。例には、魚油、並びにダイズ油、アザミ油、綿実油などの植物油が含まれる。本発明の脂質乳濁液は、通常、乳濁液中の脂質の割合が、慣例に従い5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%である水中油乳濁液である。この種の水中油乳濁液はしばしば、ダイズリン脂質などの乳化剤の存在下で調製される。
本発明のリポソームを形成する脂質は、天然でも合成でもよく、これには、コレステロール、糖脂質、スフィンゴミエリン、グルコ脂質、グリコスフィンゴ脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールが含まれる。
本発明の脂質乳濁液は、追加の成分を含んでもよい。それらには、抗酸化剤、脂質相を取り囲む水相のオスモル濃度を血液と等張性にする添加剤、又はリポソーム表面を改質する重合体が含まれよう。
脂質乳濁液にかなりの量のキセノンを加えられることは、一般に認められている。20℃かつ常圧での最も簡単な手段でさえ、乳濁液1mlあたり0.2〜10ml以上の濃度でキセノンを溶解又は分散させることができる。溶解する気体の濃度は、温度、圧力、及び脂質濃度を含むいくつかの要因に応じて変わるものである。
本発明の脂質乳濁液には、気体又は揮発性の麻酔剤を装入することができる。一般に、デバイスを乳濁液で満たし、乳濁液に浸した焼結ガラス製バブラーに、気体若しくは揮発性物質としての麻酔剤を通す。乳濁液は、選択した分圧の麻酔性の気体若しくは揮発性物質の蒸気と釣り合うようにする。気密容器に貯蔵するとき、これらの脂質乳濁液は、通常の貯蔵期間のあいだ麻酔剤が気体として放出されないだけの十分な安定性を示す。
本発明の脂質乳濁液には、キセノンが飽和レベルになるように装入することもできる。或いは、キセノンは、たとえば、乳濁液の投与によって所望の薬剤活性が得られるという条件で、それよりも低い濃度で存在してもよい。
好ましい一実施形態では、この医薬は、(大量瞬時投与又は注入による)静脈内送達、脳脊髄幹内送達(硬膜下又はクモ膜下)、又は経皮送達に適する形態である。
本発明の医薬は、経皮的に適用される軟膏又はクリーム(脂質乳濁液又はリポソーム)の形態で投与してもよい。たとえば、本発明の医薬を、ポリエチレングリコール又は液体パラフィンの水性乳濁液からなるクリームに混ぜてもよい。或いは、本発明の医薬を、白色ロウ若しくは白色軟パラフィン基剤と、必要となるかもしれない安定剤及び保存剤とからなる軟膏に1〜10重量%の濃度で混ぜてもよい。これらの軟膏又はクリームは、局所的な痛みの軽減に適し、任意選択で気密性の創傷閉じ具をしばしば用い、損傷を受けた組織に直接に適用することができる。
医薬製剤に用いる濃度は、所望の臨床効果を実現するのに必要な最低濃度でよい。医師が、個々の患者に最も適する実際の投与量を決定することは珍しくなく、その用量は、特定の患者の年齢、体重、及び応答によって様々である。当然、より多い、又はより少ない投与量範囲が正当に当てられる個々の事例があってもよく、それは、本発明の範囲内である。
本発明の医薬は、ヒトへの投与用でも動物への投与用でもよい。
したがって、本発明の医薬は、動物用医薬として使用してもよい。これに関して、本発明はさらに、新生児動物に鎮痛をもたらす動物用医薬を調製する際のキセノンの使用に関する。本発明の医薬は、獣医学的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体をさらに含むことが好ましい。
動物への使用では、本発明の医薬、又は獣医学的に許容されるその製剤は、通常、標準の獣医学の慣行に従って投与され、獣医外科が、特定の動物に最も適切な投与レジメ及び投与経路を決定することになる。
本発明の別の態様は、新生児対象に鎮痛をもたらす方法であって、前記対象に治療有効量のキセノンを投与することを含む方法に関する。
本発明のさらに別の態様は、胎児対象に鎮痛をもたらす方法であって、前記胎児対象の母親に治療有効量のキセノンを投与することを含む方法に関する。キセノンは、母親と胎児対象の両者にとって治療有効量で投与することが好ましい。
好ましい実施形態では、キセノンを、分娩前又は分娩中の母親に投与する。キセノンによって、胎児が分娩中に経験する機械的ストレスに随伴する痛みを軽減することが好ましい。
胎児への母親を介してのキセノン投与に、母親が分娩中に経験する分娩痛を軽減するという利益が付随していると有利である。すなわち、分娩前又は分娩中の母親へのキセノン投与は、胎児と母親の両者の痛みを軽減する二重効果を有する。
本発明を、以下の非限定的な実施例として、また以下の図面に即してさらに説明する。
新生児ラットでキセノンの鎮痛効力を調査した。7日目の新生児ラットは、痛み処理経路に関して、ヒトの満期胎児と発育状態が同等であることがわかっている。
空気又はキセノン(70%v/v)に曝されている状態の7日齢ラットの後足にホルマリンを注射した。90分後、動物を堵殺し、脊髄を取り出し、脊髄後角中のcFos陽性ニューロン数をカウントして、ホルマリンによって痛み処理経路が活性化された形跡を調べた。
図1では、キセノンが、ホルマリン誘発性c−Fos陽性ニューロンをほぼ完全に弱めている(空気)。比較すると、通常は成体ラットにおいて鎮痛性である用量の亜酸化窒素は、ホルマリン誘発性c−Fos陽性ニューロンを変化させなかった(図2)。
結果から、キセノンが、痛み処理を妨害して痛みシグナルが脳に伝わらないようにし、したがって、新生児集団の痛み、並びに未処置の痛みによる長期的影響が緩和されるという結論を下すことができる。
材料及び方法
一般的手順及び動物
研究プロトコルは、内務省(英国)の認可を受け、動物の苦痛及び使用する動物の数を最小限に抑えることに全力を尽くした。すべての調査にFischerラットを使用した(B & K Universal社製)。ラットに制約なしに餌と水を与え、午前6時と午後6時の間に人工照明を当てた。各動物の年齢は、以前から確立されている成長曲線(Hashimoto et al., 2002)に基づき、体重から決定した(誕生日を0日齢と定めた)。実験は、7日齢、19日齢、28日齢の子ラット、及び成体ラット(11〜12週齢)で実施した。
各日週齢群内に、「空気+ホルマリン」、「キセノン+ホルマリン」、及び「空気+生理食塩水」集団の3集団(n=3〜4)を設けた。空気+ホルマリン群では、空気に曝されている動物の左後足の足底表面に5%のホルマリンを皮下注射した。キセノン+ホルマリン群では、70%Xe/20%O/10%Nに曝されている動物に、5%のホルマリンを上述のように注射した。空気+生理食塩水群では、空気に曝されている動物に、生理食塩水を上述のように注射した。注射するホルマリン又は生理食塩水の体積は、以前に報告されているとおりに[Ohashi Y et al., Pain, 100:7-18, 2002]、各年齢群に合わせて調製し、7日齢では10μl、19日齢では15μl、28日齢では20μl、成体では50μlとした。
気体への曝露
気体に曝すための再循環系を構築して、キセノン消費を最小限に抑えた(図3)。回路に流速4l/分で気体(空気又はキセノン/酸素/窒素)を流し、所望の気体濃度に達した後、実験期間の残りの間は流速を40ml/分に落とした。二酸化炭素レベル及び湿度は、ソーダ石灰及びシリカゲルを用い、それぞれ0.6%及び50%未満に保った。気体に曝してから15分後にホルマリン又は生理食塩水を投与し、その後、動物をさらに90分間気体混合物に曝した。
侵害受容性強度スコア
ホルマリン注射後直ちに、ビデオカメラ(メガピクセル、デジタルハンディカム、ソニー社製)を、足がよく見え(テレビモニターで見ることができる)、動物の挙動が記録しやすくなるようにチャンバーの床下約50cmに配置して、60分間挙動を記録した。チャンバー及び試験待ちの子ラット用収容区域の温度は、実験の間じゅう室温に保った。
侵害受容性挙動は、7日齢の子ラットにおいて、期間ごとの屈曲、身震い、及び全身の痙攣の有(「1」)無(「0」)を評価し[Teng CJ et al, Pain, 76:337-47, 1998]、[侵害受容性スコア=T/300(ここで、Tは、注射後の連続的な300秒間の期間に示された侵害受容性挙動の時間(秒)である)]として算出した。
それよりも年配の子ラットでは、キセノン投与後、4部門の痛み挙動、すなわち、痛みなし(注射された足が絶えず床と接触していた=「0」)、気にかけている(注射された足が床にかるくもたれていた=「1」)、持ち上げている(注射された足が常に持ち上がっていた=「2」)、及び打ちつける(注射された足を打ちつけ、噛み、又は震わせていた=「3」)[Teng CJ et al, Pain, 76:337-47, 1998]に従ってスコアをつけ、[侵害受容性スコア=(T1+[T2×2]+[T3×3])/300(ここで、T1、T2、及びT3は、300秒間の期間ごとの部門1、2、又は3で過ごした時間(秒)である)]として算出した。
c−Fosの免疫組織化学染色及び定量的計数
ホルマリンを注射してから90分後、動物をペントバルビタール(100mg/kg、腹腔内)で深く麻酔にかけ、4%のパラホルムアルデヒドで灌流した。脊髄全体を取り出した。腰膨大を横向きに30μm幅に切断し、次いで以前から記載されているとおりに[Ma D et al, Br J Anaesth, 89:739-46, 2002]、c−Fosに対して染色を行った。簡潔に述べると、切片を0.3%のメタノール中H中で30分間インキュベートし、その後、0.1Mのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で3回洗浄した。その後、切片を3%のロバ血清及び0.3%のPBS中TritonX(PBT)からなる「ブロッキング溶液」中で1時間インキュベートし、続いて、1%のロバ血清を添加した1:5,000のPBT中ヤギ抗c−Fos抗体(sc-52-G、Santa Cruz Biotechnology 社製)中に入れ4℃で終夜インキュベートした。次いで、切片をPBTで3回すすぎ、1%のロバ血清を添加した1:200のPBT中ロバ抗−ヤギIgG(Vector Laboratories社製)中で1時間インキュベートした。切片を再度PBTで洗浄し、PBT中アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体(Vector Laboratories社製)中で1時間インキュベートした。切片をPBSで3回洗浄し、過酸化水素を加えた硫酸ニッケルアンモニウム添加3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)(DAB Kit, Vector Laboratories社製)で染色した。染色が完了した後、切片をPBS中ですすいだ後、蒸留水ですすぎ、固定し、100%のエタノールで脱水し、100%のキシレンで清掃し、覆いをかけた。
各動物につき3切片の顕微鏡写真に、実験処置を見ないようにした観察者がc−Fos陽性ニューロンについて得点をつけた。c−Fos陽性細胞を脊髄の機能領域に局在させる目的で、各切片をA/B(薄片I〜II又は表面区域)、C(薄片II〜IV又は固有核区域)、D(薄片V〜VI又は首区域)、及びE(薄片VII〜X又は腹側区域)に分けた[Yi DK et al, Pain, 60:257-265, 1995]。
データ解析
各動物の侵害受容性強度スコアを時間に対してプロットし、各動物の(60分間の区間の)曲線下面積(AUC)を算出した。上述の各領域について3片の代表切片の平均c−Fos陽性ニューロンを、各動物の総得点とした。侵害受容強度又はc−Fos陽性ニューロンの結果は、平均値±SEMとして報告する。統計学的分析は、分散を一方向に分析した後、Newman-Keuls検定にかけて行った。p値<0.05を統計学的に有意であるとみなした。
結果
挙動による侵害受容性応答
各日週齢部門の各集団の侵害受容性応答の時間経過を図4に示す。空気に曝されていた動物は、生理食塩水を注射した後、約2分間にわたり、注射された足に関わる非特異的な侵害受容性挙動を示した(得点1)。空気を浴びせられている各日週齢群ではそれぞれ、ホルマリン注射によって二相性の侵害受容性応答が誘発される。AUCデータを表1に示す。
空気に曝されていた7日齢のラットは、注射前の期間中、覚醒しており、活動的であった。ホルマリンを注射した後、動物は、激しい侵害受容性挙動(猛烈な足蹴り、注射された足のくねらせ、及び震わせ)を最長で50分間示したが、示された痛ましい挙動は、成体動物で見られたものほどではないように思われた。キセノンに曝されていたラットは、ホルマリン注射後の最初の2分間、軽度の侵害受容性挙動しか示さず、その後は観察期間の残り60分間、その他の動きがなかった。キセノンに曝した群のAUCは、空気に曝した群と有意に差があった(P<0.001、表1)。
空気に曝されていた19日齢の動物は、ホルマリンを注射した後、激しい侵害受容性挙動を示し、その挙動は、二相性であり、観察期間の大部分の間治まらずに続いた後、徐々に軽減した(図4:19日齢)。キセノンに曝されていた動物が示した侵害受容性挙動には、有意な減少が見られた(P<0.01)(表1)。28日齢集団では、空気に曝されていた動物が、二相性の侵害受容性挙動を示し、キセノンの存在下では、侵害受容性挙動の強度が有意に弱かった(P<0.001)(表1)。成体ラットがホルマリンに応答して示した侵害受容性挙動も、空気よりもキセノンに曝したほうが強度が弱かった(P<0.001)(表1)。
免疫組織化学による侵害受容性応答
侵害受容性刺激物質誘発性のc−Fos発現
注射部位と同側の腰部レベル脊髄のホルマリン誘発性c−Fos発現は、すべての日週齢群で増大した。キセノンに曝されていると、c−Fos発現が有意に抑制された。7日齢の子ラットでは、キセノンに曝したことによって、ホルマリンに応答してのc−Fos発現が、薄片A/Bで48%(P<0.001)、薄片Cで50%(P<0.001)、薄片Dで50%(P<0.001)、薄片Eで28%(P<0.01)に低減した。19日齢ラットでは、キセノンに応答して、平均c−Fos発現が薄片I〜IIで55%(P<0.001)、薄片III〜IVで57%(P<0.001)、及び薄片V−VIで62%(P<0.001)に抑制された。28日齢ラットでは、ホルマリンに応答してのc−Fos発現が、薄片I〜IIで34%(P<0.001)、薄片III〜IVで27%(P<0.001)、薄片V〜VIで28%(P<0.001)に低下した。成体ラットでは、キセノンによって、c−Fos発現が、薄片I〜IIで41%(P<0.001)、薄片III〜IVで45%(P<0.001)、薄片V〜VIで34%(P<0.001)に抑制された。生理食塩水の注射も、注射と同側のc−Fos発現を引き起こした。しかし、これは、ホルマリン注射によって引き起こされたものよりはるかに強度が弱かった(図5及び6)。
対照調査
キセノン自体が(亜酸化窒素での場合がそうであるように)[Hashimoto T et al, Anesthesiology, 95:463-9, 2001]c−Fos発現を引き起こし得るかどうかを試験するため、未処置の動物を、空気又はキセノン混合気体(70%Xe/20%O/10%N)に90分間曝した(図7)。これらの群の間には、脊髄のどの領域でもc−Fos陽性細胞数に差がなかった。
考察
この調査では、4段階の各発育段階、すなわち7日目、19日目、28日目、及び成体のFischerラットにおいて、キセノンがホルマリン注射に対して抗侵害受容性応答を発揮することが実証された。これらのデータは、(挙動に関しても免疫組織化学に関しても)23日齢未満の動物での抗侵害受容性作用に注目していない、最近報告されたNOでのデータ[Ohashi Y et al, Pain, 100:7-18, 2002]とは質が異なる。
様々なインビトロ調製物において、キセノン及びNOは、ニコチン性アセチルコリン受容体[Yamakura T et al, Anesthesiology, 93:1095-101, 2000]、セロトニン3A受容体[Suzuki T et al, Anesthesiology, 96:699-704, 2002]、GABA受容体[Yamakura T et al, Anesthesiology, 93:1095-101, 2000; Mennerick S et al, J. Neurosci 1998; 18:9716-26, 1998]、及びグリシン受容体[Daniels S et al, Toxicol. Lett. 100-101:71-6, 1998]で類似した効果を発揮することがわかっており、キセノン[Franks NP et al, Nature, 396:324, 1998; de Sousa SL et al, Anesthesiology, 92:1055-66, 2000]とNO[Jevtovic-Todorovic V et al, Nat Medicine, 4:460-63, 1998]は共に、NMDA受容体の阻害剤である。これまでの研究では、キセノン及びNOが無処置脊髄内の広作動域(WDR)ニューロンを抑制したことが明らかになっている[Utsumi J et al, Anesth Analg. 84:1372-6, 1997]。しかし、キセノンの方が、脊髄横切調製物中のこれらのニューロンに対して、NOに曝した後に見られたものより大きな抑制効果を示した[Miyazagi Y et al, Anesth Analg, 88:893-7, 1999]。これらの研究は、NOによって誘発される抗侵害受容性には、より上方の脊柱上中枢の関与が必要である[Fujinaga M et al, Mol Neurobiol., 25:167-89, 2002]が、キセノンは、脊髄レベルでWDRニューロンを直接に阻害して、抗侵害受容性をもたらすことを示唆している。NOは主として、脊柱上中枢からのノルアドレナリン作動性下行性抑制系ニューロンを、脊髄レベルでは、ほとんど直接的でない作用によって活性化して、侵害受容性をモジュレートする[Fujinaga M et al, Mol Neurobiol., 25:167-89, 2002]。NOによって誘発される抗侵害受容性には、脊髄領域と脊柱上領域の間の機能的な接続性が絶対的に必要であることの証拠を受けて、出願人らは、そのような接続性が発達する前、すなわち23日齢未満[Fitzgerald M et al, Brain Res 389:261-70, 1986]では、NOが抗侵害受容性を示さない[Ohashi Y et al, Pain, 100:7-18, 2002]ことを予測し、その後確認した。すなわち、キセノンとは対照的に、NOは、新生児期群の有効な抗侵害受容剤でない。
グルタミン酸受容体のNMDAサブタイプは、ホルマリンによって誘発されるものを含む、大抵の痛み炎症性モデルに対する侵害受容性応答への関与が示唆されている[Malmberg AB et al, Pain, 101:109-16, 2003]。キセノンもNOもNMDAアンタゴニストであるので、これら2種の化合物間にある抗侵害受容性の質の違いはあいまいである。NMDA受容体サブユニットの組合せが異なっていると、キセノン又はNOに対する感受性も異なるということが、説明の一例として考えられる。ヒトに内在するNMDA受容体は、NR1サブユニットとNR2若しくはNR3サブユニットの組合せからなる[Dingledine R et al, Pharmacol Rev, 51:7-61, 1999]。直接的な関連については、NR2Bサブユニットが、脊髄後角[Boyce S et al, Neuropharmacology, 38:611-23, 1999]及び前脳[Wei F et al, Nat Neuroci, 4:164-9, 2001]で侵害受容伝達を媒介するとされている。注目すべきは、NR2Bアンタゴニストは、鎮静と関連付けられており[Chizh BA et al, Neuropharmacology, 40:212-20, 2001]、キセノンは、MAC−覚醒が33%であり[Goto T et al, Anesthesiology, 93:1188-93, 2000]、NOよりも強力な鎮静催眠剤である[Lynch C et al, Anesthesiology, 92:865-70, 2000]。
これらの発見から、キセノンは、ヒトにおいてごく若いうちから、有効な抗侵害受容剤になると期待される。キセノンは、成体において著しく安全な麻酔剤ではあるが、キセノンの安全性プロフィールがすでに調べられている[Rossaint R et al, Anesthesiology, 98:6-13, 2003]。NMDAアンタゴニストを臨床で使用する際の懸念は、主にその固有の神経毒性を原因としているが[Olney JW et al, Science, 244:360-2, 1989; Olney JW et al, Science, 254:1515-8, 1991]、これは、キセノンの投与では存在しないようであり[Ma D et al, Br J Anaesth, 89:739-46, 2002]、NR2B選択的NMDAアンタゴニストと類似している[Gill R et al, J Pharmacol Exp Ther. 302:940-8, 2002]。
要するに、試験した各日週齢群にホルマリンを投与すると、注射部位と同側の典型的な侵害受容性応答が、挙動としても免疫組織化学的にも観察される。キセノンは、非常に若い動物においても、挙動及び免疫組織化学による侵害受容性応答を抑制する。NOとは異なり、キセノンの抗侵害受容作用には、脊柱上痛み処理経路と脊髄痛み処理経路間の機能的な接続性が必要でないようである。
当業者ならば、本発明の範囲及び意図から逸脱しない、記載した本発明の方法の様々な変更形態及び変形形態がわかるであろう。本発明を詳細な好ましい実施形態に即して記載してきたが、本発明を実施するための、化学又は関連分野の技術者には言うまでもない、記載した形式の様々な変更形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
表1:侵害受容性強度得点曲線(図4)から曲線下面積(AUC)(平均±SEM、n=3〜4)を算出した。

対応する日週齢群の空気+ホルマリン群に対してP<0.01、**P<0.001
ホルマリンを投与した7日齢Fischerラットの腰部レベルの脊髄横断面を、c−Fosに対して染色したものを示す図である。図1Aは、空気/ホルマリンで処理した切片を示し、図1Bは、キセノン/ホルマリンで処理した切片を示す。 ホルマリンを投与した7日齢Fischerラットの腰部レベルの脊髄横断面を、c−Fosに対して染色したものを示す図である。図2Aは、空気/ホルマリンで処理した切片を示し、図2Bは、NO/ホルマリンで処理した切片を示す。 実験装置及び気体送達閉鎖式循環回路系を示す略図である。この系は、麻酔チャンバー、ゴム製袋、空気ポンプ、及びキセノンモニター(Model 439xe、Air Product社製)からなる。 2種の副処理(空気+ホルマリン及びXe+ホルマリン)を施した7日、19日、28日齢子Fischerラット、及び成体の4年齢群の侵害受容スコア曲線を示すグラフである。縦軸は、侵害受容性強度を表す(値が低いほど侵害受容性挙動が少ない)。横軸は、ホルマリン注射後の時間(分)を示す。空気を与えられた群では、ホルマリンに対する古典的な(classical)二相性挙動応答を認めることができる。 空気(左欄)又はキセノン(右欄)を与えられた7日、19日、28日齢の新生児ラット、及び成体のホルマリン注射に対するc−Fos応答を示す、脊髄の腰髄レベルからの標本切片を示す図である。 空気(黒色の棒)又は70%キセノン/20%O/10%N(Xe)(点模様の棒)が与えられている4年齢群の動物の、ホルマリン注射に応じての腰部レベルでのc−Fos陽性細胞数(平均±SEM、n=4)、又は空気(白色の棒)が与えられている4年齢群の、生理食塩水注射に応じての細胞数を示すグラフである。対応する領域の空気+ホルマリン群に対してP<0.01、**P<0.001。キセノン+ホルマリンに対して+P<0.01、++P<0.001。左欄の図は、同側の注射に随伴するc−Fos発現を表し、反対側の注射に随伴するc−Fos発現を表す。19日齢から成体でも、脊髄切片の薄片I〜II(表面区域)、薄片II〜IV(固有核区域)、薄片V〜VI(首区域)、及び薄片VII〜X(腹側区域)を、7日齢の子ラットの5領域と同等なものとしてA/B、C、D、及びEで表す。 空気(黒色の棒)又は70%キセノン/20%O/10%N(Xe)(点模様の棒)を与えられている4年齢群の動物の腰部レベルの脊髄の切片ごとのc−Fos陽性細胞の総数(平均±SEM、n=3)を示すグラフである。対応する年齢群間に差は見られなかった。

Claims (16)

  1. 新生児対象及び/又は胎児対象に鎮痛をもたらす医薬を調製する際のキセノンの使用。
  2. 前記新生児対象が生後4週間の哺乳動物である、請求項1に記載の使用。
  3. 前記新生児対象又は胎児対象がヒトである、請求項1又は2に記載の使用。
  4. 前記キセノンが、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と組み合わせて使用される、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
  5. 前記キセノンを鎮静剤、麻酔剤、又は別の鎮痛剤と組み合わせて投与する、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
  6. 前記医薬が気体の形態である、請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
  7. 前記医薬が20〜70%v/vのキセノン/空気混合物の形態である、請求項6に記載の使用。
  8. 前記医薬が液体形態である、請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
  9. 前記医薬が脂質乳濁液の形態である、請求項8に記載の使用。
  10. 前記医薬が静脈内送達、脳脊髄幹内送達、又は経皮送達に適する形態である、請求項8又は9に記載の使用。
  11. 新生児対象に鎮痛をもたらす方法であって、前記対象に治療有効量のキセノンを投与することを含む方法。
  12. 胎児対象に鎮痛をもたらす方法であって、前記胎児対象の母親に、前記母親と前記胎児対象の両者にとって治療有効量のキセノンを投与することを含む方法。
  13. 薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と組み合わせて前記キセノンを投与する、請求項11又は12に記載の方法。
  14. 前記キセノンを20〜70%v/vのキセノン/空気混合物の形態で投与する、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
  15. 前記キセノンを脂質懸濁液の形態で投与する、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
  16. 前記キセノンを、静脈内投与、脳脊髄幹内投与、又は経皮投与する、請求項11〜13、又は15のいずれかに記載の方法。
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