JP2005538348A - 個体の酸関連疾患の危険性を検出する方法 - Google Patents

個体の酸関連疾患の危険性を検出する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、被分析物であるペプシノゲンI、空腹時ガストリン−17およびヘリコバクター・ピロリ感染のマーカー(Hp−マーカー)のアッセイに基づく、個体における胃酸関連疾患の危険性を検出する方法であり、該方法は、ペプシノゲンI、空腹時ガストリン−17およびHp−マーカーのカットオフ値を選択し、該個体からのサンプル中のペプシノゲンIの濃度、空腹時ガストリン−17の濃度およびHp−マーカーの濃度または存在を検出し、そしてそのように測定した値を選択したカットオフ値と比較し、ここで、各カットオフ値かまたはそれを超えるペプシノゲンI値かつ各カットオフ値より低いHp−マーカー値と、各カットオフ値かまたはそれより低い空腹時ガストリン−17値の組み合わせは、該個体における胃酸関連疾患の危険性の上昇を示すことを含む、方法に関する。

Description

発明の詳細な説明
発明の分野
本発明は、個体における胃酸関連疾患の危険性を検出する方法、特に、腺癌の危険性と関連した胃−食道逆流性疾患およびバレット食道の危険性を検出する方法に関する。本方法は、個体がNSAID(非ステロイド性抗炎症剤)使用の結果としての潰瘍を発症する危険性、ならびに、ヘリコバクター・ピロリ根絶処置後に食道疾患を発症する危険性を測定するためにも使用できる。本発明の方法は、該個体のサンプル、特に血清サンプルから、被分析物であるペプシノゲンI、ヘリコバクター・ピロリのマーカーおよび空腹時ガストリン−17をアッセイすることに基づく。
背景技術
逆流性疾患は、胃の内容物が食道に上昇し、逆流する結果として起こり得る状態である。具体的に、逆流性疾患なる用語は、該逆流現象が食道の粘膜の損傷または炎症、例えば食道炎(esophagatis)の原因となる場合に使用する。逆流性疾患の典型的症状は胸焼けである。
広範な逆流性疾患の合併はバレット食道と呼ばれる疾患であり、該疾患は食道における種々の程度の上皮変化を伴う。逆流は食道の上皮を破壊し、それは、次に食道の腺癌の危険性の増加と関連する状態をもたらすと考えられている。
健康で、非萎縮粘膜を有する個体の胃は酸性で、通常約1から2のpHである。しかしながら、胃の酸排出は、ガストリン−17が酸の放出を刺激し、胃の酸性度の増加が、フィードバック機構およびコントロールによりG−細胞(ガストリン細胞)からのガストリン−17の放出の減少を導くという点で、ガストリン−17の放出と関係する。このガストリン−17は、タンパク質に富む食事摂取後のような刺激後に測定したガストリン−17が食事による胃の酸性の中和作用のために増加しているため、特に基底または絶食状態で得られるガストリン−17である。
本明細書に引用して包含させる公報WO96/15456は、対象の血清サンプルから被分析物ペプシノゲンIおよびガストリン−17の濃度を測定することによる癌の危険性のスクリーニング法を記載する。該公報にしたがい、このようにして測定した濃度値を、各被分析物に関する選択したカットオフ値および参照値と比較し、このようにして得られた結果を、胃の萎縮の存在とその位置、そして関連する癌の危険性の評価に使用できる。
記載の実施態様にしたがい、該試験をヘリコバクター・ピロリ抗体の試験、ならびに、血液サンプルを絶食後の朝に採血し、患者がタンパク質に富む標準食を摂取後、血液サンプルを15分間隔で2時間とる、いわゆるタンパク質刺激試験と組み合わせ得る。ガストリン−17の最大増加は、約20分後に明白である。
ヘリコバクター・ピロリは、胃粘膜の表面上皮細胞のすぐ近くの粘膜中、および細胞の間隙で成長するらせん形のグラム陰性細菌である。この細菌は、おそらく経口で人から人へと伝播する。胃粘膜上の細菌の作用は炎症反応であり、これは強い炎症性メディエーター物質の放出により補体を通して介在される。急性段階の後、炎症は慢性胃炎に変わる。慢性胃炎に罹患している患者のうち、70から90%でヘリコバクター・ピロリ感染が確証できる(Calam, J(1994) Helicobacter pylori(Review) Eur. J. Clin Invest 24: 501-510)。
本明細書に引用して包含させるWO公報WO00/67035は、血清ペプシノゲンIおよび血清ガストリン−17の濃度を定量的に測定し、得られた値と選択したカットオフおよび参照値を比較することによる、消化性潰瘍の危険性の評価法を記載する。このようにして得られた結果により、消化性潰瘍の危険性が増加した可能性を評価することが可能である。
種々の被分析物の濃度を測定する方法は当分野で既知であり、この目的のための市販のキットもある。該測定を行うためのある例示的方法が、その上WO公報96/15456に記載されている。
本発明の要約
本発明により、被分析物であるペプシノゲンI、ヘリコバクター・ピロリ感染のマーカーおよびガストリン−17、特に絶食状態で得たガストリン−17を測定することにより、個体の胃酸関連疾患の危険性を検出することが可能であることが判明した。ペプシノゲンIおよびHp−マーカー測定が、該個体が胃に非萎縮性および非胃炎性(ヘリコバクター・ピロリ感染なし)粘膜を有すると、すなわち、健康な胃体粘膜を示すカットオフ値を超えるペプシノゲンI値であり、例えば、低ヘリコバクター・ピロリ抗体力価を確証することよりヘリコバクター・ピロリ感染がない個体と確証できた測定に基づく場合、低空腹時ガストリン−17値は個体の過酸性胃および上記のような胃酸関連疾患を発症する危険性の増加を示す。
本発明に至るまでの試験において、血清中の低空腹時ガストリン−17(G−17fast)レベル(<1pmol/l)は、非常に酸性の胃(酸排出が常に高い)を示し、その胃内H濃度は、胃の前底部ガストリン細胞からのガストリン−17の放出を阻害することが確立された。ガストリン−17の血清濃度は、胃粘膜が正常で健康である対象、すなわちヘリコバクター・ピロリ抗体がなく、かつ血清ペプシノゲンIマーカーが正常である対象の、胃の酸性の間接的マーカーである。
血清中の低空腹時ガストリン−17濃度が、例えば、胃食道逆流性疾患(噴門潰瘍およびポリープを含む)、バレット食道、ヘリコバクター・ピロリ感染と関係のない十二指腸潰瘍、およびヘリコバクター・ピロリ感染根絶後に発症する胃食道逆流性疾患を特記できる、胃酸関連疾患の少なくとも2倍の上昇を示すことが試験で確立されている。
特に、本発明は、被分析物であるペプシノゲンI、空腹時ガストリン−17およびヘリコバクター・ピロリ感染のマーカー(Hp−マーカー)のアッセイに基づく個体の胃酸関連疾患の危険性を検出する方法であり、
−該個体からのサンプル中のペプシノゲンIの濃度、空腹時ガストリン−17の濃度およびHp−マーカーの濃度または存在を測定し、そして
−このようにして測定した値を各被分析物に関する選択したカットオフ値と比較し、ここで、各カットオフ値かまたはそれを超えるペプシノゲンI値かつ各カットオフ値より低いHp−マーカー値と、各カットオフ値かまたはそれより低い空腹時ガストリン−17値の組み合わせは、該個体における胃酸関連疾患の危険性の上昇を示す、
ことを含む、方法に関する。
したがって、本発明は、上記例示のような胃酸関連疾患を発症する危険性、ならびに関連する腺癌の危険性が増加した個体の同定が可能である方法を提供する。
定義の方法は、したがって、血液、血清または血漿サンプルのようなサンプルから、個体の胃の酸性を間接的に測定するのに使用できる。
発明の詳細な記載
本発明にしたがい、被分析物の測定値とカットオフ値の比較は、被分析物の測定値が、各カットオフ値より大きいか、等しいか、または小さいかどうかを確証することを目的とする。
本発明の内容において、個体または対象はヒト、またはペット、例えばイヌのような動物のような哺乳動物を意味する。
本発明は、したがって、第一段階で、少なくとも試験する個体のサンプル中のヘリコバクター・ピロリマーカー、ペプシノゲンI(PGI)および空腹時ガストリン−17を測定する方法を含む。
本発明にしたがったヘリコバクター・ピロリ感染のマーカーまたはインディケーターは、例えばヘリコバクター・ピロリ抗体であり、その値は体液サンプルから測定できる。このようなサンプルは、有利には血清サンプルであるが、唾液、尿または涙液サンプルでもあり得、例えば、市販のキットが抗体値の測定に利用可能である。ヘリコバクター・ピロリ抗体のカットオフ値は、当業者により容易に決定できる。本発明の一つの実施態様において、我々はヘリコバクター・ピロリ感染の存在または非存在を示すカットオフとして、30EIUの値を使用している。ヘリコバクター・ピロリに対する特異的抗体は、ウエスタンブロットを使用しても測定できる。
ヘリコバクター・ピロリ感染の存在を評価するための別法は、抗原それ自体の存在の測定による。このような測定は、例えば、患者からの大便サンプルで行い、酵素免疫アッセイのようなアッセイは、この目的で市販されている(例えば、Lancet 1999; 354, 30-33参照)。患者の息から抗原の存在を測定することも可能であり、二酸化炭素含量の測定の既知の技術を使用し、標識尿素からの二酸化炭素の形成はヘリコバクター・ピロリ細菌により触媒され、このアッセイのためのシステムはまた市販である(例えばNoster AB, SwedenのHeliprobe(登録商標))。他の別法は、患者の胃の内視鏡検査中に取った生検サンプル中の抗原の存在または非存在の測定である。この別法において、試験は抗原に対して陽性または陰性のいずれかであり、抗原の存在をヘリコバクター・ピロリ感染の指標としてとる。本発明の内容において、Hp−マーカーが抗原自体である場合、試験は陽性または陰性であり、感染に関するカットオフはこれらの間の境界となり、したがって0とみなすことができ、陽性試験は抗原の存在、したがって結果として異常状態を示し、陰性試験はこのマーカーのカットオフより低い値である。
ペプシノゲンおよびガストリンは好ましくは体液サンプル、特に血清、血漿または全血サンプルから、または尿、唾液または涙液サンプルから測定する。
本方法は、ペプシノゲンI被分析物の測定を含むが、本発明の実施態様により、ペプシノゲンII被分析物(PGII)の濃度をさらに測定し、PGIの代わりに、またはPGIに加えてPGI対PGII比を予定されたカットオフ値と比較すべき値として使用することも可能である。ペプシノゲンIおよびまたペプシノゲンI対II比は、胃体粘膜の萎縮の悪化に伴い直線的に減少する傾向にある。
本発明にしたがった方法において、正常と萎縮胃体粘膜の間を区別する通常のカットオフ値である、ペプシノゲンIのカットオフ値を使用する。信頼できる結果が得られた本発明の一つの実施態様にしたがい、50μg/lである血清または血漿ペプシノゲンIのカットオフ値を使用している。この値は、しばしば使用されている25μg/lのカットオフより幾分高く、試験した個体が確かに非萎縮粘膜であることを確実にするために使用できる。血清または血漿ペプシノゲンIの参照上限は130μg/lの桁であり、上限に近いまたは上限を超える値を、疾病の危険性の増加の確認として使用できる。しかしながら、当業者は具体的状態および試験する具体的集団で使用すべきカットオフ値を容易に選択できる。
同様に、ガストリンに関して、カットオフ値を決定でき、本発明にしたがい、空腹時ガストリン−17を測定する。本発明の一つの実施態様にしたがい、空腹時ガストリン−17の1pmol/lのカットオフ値が、ほとんどの目的のために適していることが判明した。このような値はまた上記の胃酸関連疾患を発症する危険性のある個体と危険性のない個体の間の差を提供するのに有効であることも証明された。
被分析物濃度の測定が関与するアッセイにおけるカットオフ値の概念は当業者に既知である。カットオフ値は、一般に、問題の試験に関する参照値(正常値)と異常値の間の限度として選択される値または一式の値を意味する。このようなカットオフ値は、方法特異的であり、被分析物濃度の測定に使用した試験法に関して選択した特異性および感受性に依存し、例えば、William J Marshall, Clinical Chemistry, Third Edition, 1995, Mosbyを参照のこと。
先に記載のように、ペプシノゲンIおよび所望によりペプシノゲンIIと、ガストリン−17の測定法は当分野で既知である。測定は通常該被分析物に対するモノまたはポリクローナル抗体を使用した免疫学的方法である。
使用する検出法は、例えば、吸光度、蛍光または発光の測定を含む。全3種の被分析物の測定を同時に、例えば、同じマイクロプレート上で、異なるウェルまたは同じウェル中で行うことも可能であり、これは特に簡便な方法を提供する。
先に記載のように、血液サンプルから、とりわけペプシノゲンI、ガストリン−17およびヘリコバクター・ピロリ抗体を測定するための、GastroPanel(Biohit Oyj, Helsinki, Finland)のような、被分析物濃度の測定に利用できる市販のキットもある。測定データを次いで、被分析物濃度から得られた結果に基づいて、診断し、さらなる処置の推奨を与えるGastroSoft(登録商標)ソフトウエアのようなソフトウエアを使用して評価できる。
図面の詳細な説明
図面において、
図1は、正常胃の、バレット陰性およびバレット陽性患者の空腹時ガストリン−17のレベルを示す。この結果から、バレット陽性患者で、55%が1pmol/lと等しいかまたはそれ以下の空腹時ガストリン−17値であるのに対し、バレット陰性患者の23%のみがこのように低いガストリン−17値であることを見ることができる。差は統計的に有意である。したがって、空腹時ガストリン−17は、正常胃の個体のグループから、胃酸関連疾患を発症する危険性のある個体を識別するマーカーである。
図2は、正常胃のバレット陰性およびバレット陽性患者の空腹時ガストリン−17のレベルを示し、そして
図3は対応する食後ガストリン−17(刺激ガストリン−17)のレベルである。空腹時ガストリン−17ではバレット陰性とバレット陽性患者の間は統計的有意差となるが、食後ガストリン−17では当てはまらないことは明白である。
実験的試験
図1から3に示す結果は、以下の試験に基づく。
試験した材料は、胃部消化不良(gastrodyspepsia)の300名の内視鏡検査した患者から成る。彼らは前向きに集め、二つの患者のグループを作った。症例は、15名の組織学的および内視鏡的に古典的長セグメントバレットと証明された患者を含む。このうち11名がヘリコバクター・ピロリ胃炎の非存在(ヘリコバクター・ピロリ IgG抗体力価<30EIU)および正常血清レベルのペプシノゲンI(50μg/l)により定義されるように正常で、健康な胃粘膜を有した。彼らはまた前庭部および胃体からの内視鏡検査生検において正常な胃組織学を有した。コントロール(126患者)は、バレット食道およびヘリコバクター・ピロリ抗体なし、かつ正常血清ペプシノゲンIの患者から成る。これらの2グループ(症例およびコントロール)を比較した。
アミド化ガストリン−17の平均空腹時レベル(G−17fast)は、患者のほうがコントロールよりも有意に低かった(P=0.045、Mann-Whithey U検体)(4.0±6.1pmol/l対2.0±3.0pmol/l)。他方、食後G−17レベル(G−17prand)は症例とコントロールの間に差はなかった。それどころか、G−17prandは、バレット−患者のほうがコントロールよりもわずかに高かった(15.7±18.2pmol/l対13.4±18.2)。
1pmol/lをカットオフ限界に設定したとき、11名のバレット患者(55%)のうち6名がこのカットオフ値より低いG−17fastレベルであり、一方この罹患率はコントロールでは126名中29名(23%)であった(P<0.05;カイ二乗検定)。
加えて、健康な、正常胃粘膜に関連して発症した十二指腸潰瘍(DU)の5名の患者がいた(これらの患者における潰瘍の病因は、正常または高い酸排出に加えて、NSAIDまたはアスピリンの使用である)。5名のDU患者のG−17fastの血清レベルは非常に低かった(0.458±0.431pmol/l);すなわち、適当な非−DU、非−バレットコントロールよりも有意に低かった。
(原文に記載なし)

Claims (7)

  1. 被分析物であるペプシノゲンI、空腹時ガストリン−17およびヘリコバクター・ピロリ感染のマーカー(Hp−マーカー)のアッセイに基づく、個体における胃酸関連疾患の危険性を検出する方法であり、
    −該個体からのサンプル中のペプシノゲンIの濃度、空腹時ガストリン−17の濃度およびHp−マーカーの濃度または存在を検出し、そして
    −そのように測定した値を各被分析物に関する選択したカットオフ値と比較し、ここで、各カットオフ値かまたはそれを超えるペプシノゲンI値かつ各カットオフ値より低いHp−マーカー値と、各カットオフ値かまたはそれより低い空腹時ガストリン−17値の組み合わせは、該個体における胃酸関連疾患の危険性の上昇を示す、
    ことを含む、方法。
  2. ヘリコバクター・ピロリマーカーがヘリコバクター・ピロリ抗体であり、その濃度をサンプルから測定する、請求項1記載の方法。
  3. ヘリコバクター・ピロリマーカーがヘリコバクター・ピロリ抗原であり、その存在をサンプル中で測定する、請求項1記載の方法。
  4. 刺激ガストリン−17値(G−17st)をさらに測定する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. 被分析物ペプシノゲンII(PGII)の濃度をさらに測定し、PGI/PGII比を比較のために作成する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
  6. 被分析物を、血清、血漿、全血、尿、唾液または涙液サンプルのような体液から、特に血清サンプルから測定する、請求項2記載の方法。
  7. 胃酸関連疾患が逆流性疾患またはバレット食道である、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
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