発明の詳細な説明
本発明は、半導体レーザ装置に関し、半導体レーザ装置は、レーザ光の出射が可能な複数の出射面を備え、第1の方向に、それに平行な第2の方向よりも大きなダイバージェンスを有する半導体レーザ素子または互いに平行に搭載される複数の個別レーザと、半導体レーザ素子または個別レーザの外部に出射面に対して間隔をあけて設けられ、少なくとも1つの反射面を有する少なくとも1つの反射手段であって、反射面は、半導体レーザ素子または各レーザから出射面を経て出射されるレーザ光の少なくとも一部を、半導体レーザ素子または個別レーザのモードスペクトルが影響されるように、半導体レーザ素子または個別レーザ内に再反射することが可能である少なくとも1つの反射手段とを有する。
かかる半導体レーザ装置は、I.Nelson, B. Chann, T. G. Walker, Opt. Lett. 25,1352 (2000)によって知られている。そこに記載される半導体レーザ装置では、外部共振器が利用され、外部共振器は、反射手段として格子が組込まれている。さらにまた、外部共振器内には、半導体レーザ素子に直接接続されて、速軸コリメートレンズがある。速軸コリメートレンズと格子との間には、望遠鏡として機能する2つのレンズが設けられている。かかる半導体レーザ装置における短所は、第一に外部共振器内の光学的構成要素が多いために、減衰が比較的高く、したがって、半導体レーザ装置の出力が比較的低くなる。さらにまた、技術水準から知られる半導体レーザ装置では、単に、半導体レーザ素子の長手方向モードまたは半導体レーザ素子の各エミッタの縦モードに影響を及ぼし得るだけである。技術水準から知られる構成では、半導体レーザ装置の横モードスペクトルは影響されない。この理由から、技術の水準から知られるこの半導体レーザ装置はエミッタごとに複数の異なる横モードを有することとなり、これらのモードが、半導体レーザ装置から出射されたレーザ光に全て寄与する。このような事実に基き、技術の水準に従った半導体レーザ装置から生じるレーザ光は集束がむしろ困難である。
技術水準に従えば、半導体レーザ素子から半導体レーザ素子の活性領域を経るモードスペクトルに影響を及ぼすことがさらに試みられている。これらの構成要素はたとえば、種々の方向における屈折率の変化を有することが可能であり、したがって、これらの種々の方向において変化する屈折率によって、それぞれの所望の横モードの拡散が促進される。さらに、たとえば種々のドーピングレベルによって、再結合のために意のままになる電子正孔対の数に影響を及ぼすことが可能であり、したがって、活性領域の異なった箇所に異なる強さのレーザ光が可能になる。それぞれの横モードを促進させる上述の方法はどちらもかなりの製造費を伴う上に、半導体装置の発光の質、出力は現実に満足できるものではない。
本発明の基礎となっている課題は、高出力で発光の質が改良された上述の型の半導体装置を提供することである。
本発明に従えば、これは反射手段の少なくとも1つの反射面が凹状に湾曲していることによって達成される。
この方法においては、前述の技術の水準と比べて、外部共振器内部の追加のレンズを不要とすることが可能であり、これは凹状に湾曲した反射面が同時に結像要素として働くからである。この凹状の湾曲によって、特に、半導体レーザ素子の比較的費用のかかる構成を不要とすることが可能である。
さらに、少なくとも1つの反射面は、対応するレーザ光の部分光を、それぞれの出射面に、これらが開口として機能するように、再反射させることが可能である。かかる方法によって、半導体レーザ素子のモードスペクトルへの影響を最も単純な手段で取り除くことが可能となる。
技術の水準におけるように、半導体レーザ装置は反射手段と半導体レーザ素子または各エミッタとの間に設けられたレンズ手段であって、少なくとも第1の方向においてレーザ光のダイバージェンスを少なくとも部分的に小さくすることが可能であるレンズ手段を含むことが可能である。
本発明に従えば、反射手段は、異なる出射面から出射する部分光を反射させることが可能である反射面を有することが可能である。またその代わりとして、反射手段が、各出射面から出射する部分光が反射することが可能な複数の反射面を有することも可能である。
本発明の好ましい実施の形態に従えば、半導体レーザ装置は、特に光偏向ユニットとして実施され、好ましくは各部分光をそれぞれ偏向可能である、特に約90°偏向可能である、ビーム変換ユニットを含む。かかるビーム変換ユニットによって、半導体レーザ装置から出射するレーザ光を、その後、より簡単に集光可能であるように変換することが可能である。
本発明の好ましい実施の形態に従えば、ビーム変換ユニットは、反射手段と半導体レーザ素子または各レーザとの間に、特に反射手段とレンズ手段との間に設けられる。外部共振器内部にこのようにビーム変換ユニットを設けることによって、分離のための空間を大きく取ることが可能となる。
半導体装置はさらにまた、 周波数2倍器を有することが可能であり、該周波数2倍器は、反射手段と半導体レーザ素子または各レーザとの間に設けられ、特に反射手段とレンズ手段との間に設けられる。その場合、特に、少なくとも半導体レーザ装置からは第2の高調波を取出すことが可能であり、モードスペクトルに影響する基本波長は、半導体レーザ素子または個別レーザに少なくとも部分的に再反射される。
さらにまた、本発明に従えば、半導体レーザ素子は、レーザ光の所望のモードの空間的広がりに対応する部分領域にのみ、電圧が印加される、または電子正孔対生成のための電流が供給されることが可能である。このような比較的容易に実施可能な手段によって、有利なことに、所望のモードのレーザ光をさらに最適化することが可能である。
本発明の更なる特徴および利点は、添付の図を参照し、以下の好適な実施の形態の記載に基き明らかになるであろう。
本発明に従った半導体レーザ装置の図1に示された実施の形態は、レーザ光は出射可能である複数の出射面(2,3,4,5)を有する半導体レーザ素子1を有する。半導体レーザ素子1は、ワイドストライプエミッタアレイ、またはいわゆるレーザダイオードバーとして実施される。図示された実施の形態においては、発光に機能する4つだけの互いに分離された出射面2,3,4,5が示されている。しかしながら、実質的にもっと多くの数の、互いに平行に間隔を空けて配置される出射面が設けられてもよい。
各出射面2,3,4,5から出射するレーザ光は、2つの部分光2a,2b;3a,3b;4a,4b;5a,5bに分割され、これら2つの部分光は出射面2,3,4,5の法線と反対方向の同じ角をなす。この部分光組2a,2b;3a,3b;4a,4b;5a,5bはそれぞれ、対応する出射面2,3,4,5に属する半導体レーザ素子1の発光する部分領域の選択されたレーザモードを表わしている。
図1から明らかなように、本発明に従った半導体レーザ装置はさらにまた、半導体レーザ素子1外に、速軸コリメータレンズとして形成されるレンズ手段6を有する。速軸は、図示されたデカルト座標系においてはY方向に対応する。速軸は、このようなワイドストライプエミッタの場合、各エミッタが互いに配置されている方向に垂直な方向である。かかる半導体レーザ素子1の速軸のダイバージェンスは、図1においてX方向に対応するそれに垂直な遅軸のものよりも実質的に大きい。
レンズ手段6の後には、半導体レーザ素子1に向けられた反射面8を有する反射手段7が、半導体レーザ素子1から適当な距離を隔てて設けられている。反射面8から部分光2a,3a,4a,5aは出射面2,3,4,5への方向に再反射される。出射面2,3,4,5には場合によっては反射防止膜が設けられ、したがって、再反射された部分光2a,3a,4a,5aは、半導体レーザ素子1のモードスペクトルが影響を受けるほど、少なくとも部分的に半導体レーザ素子1に入射することが可能である。特に、出射面2,3,4,5に関連する反射手段7の指向性、焦点距離、間隔にそれぞれ応じて、半導体レーザ素子1における一定のモードの拡散を促進することが可能である。本発明に従う半導体レーザ装置の図1に示された実施の形態においては、各出射面2,3,4,5に設けられるレーザエミッタは通常すべてが同じモードで振動するわけではなく、これは図示された部分光2a,3a,4a,5aが出射面2,3,4,5から出射する角度がそれぞれいくらか異なるからである。
反射面8の出射面2,3,4,5からの距離は、反射面8の焦点距離に実質的に対応するように選択することが可能である。特に、この距離、すなわち焦点距離の適切な選択によって、出射面2,3,4,5でのビームウェストは、それぞれの幅にほぼ相当することが可能である。
図1に従う半導体レーザ装置からの分離は、部分光2b,3b,4b,5bを介して行うことが可能である。たとえば、図1において、反射手段7の下方には、分離手段として働く、部分反射するさらなる反射手段を設けることが可能である。それに加えて、または、その代わりとして、部分光2b,3b,4b,5bの光路にも、取出された部分光のさらなる処理を容易にする光変換ユニットを設けることも可能である。
図2に示した本発明に従った実施の形態において、同じ部分については同じ参照符号が付されている。図2において、半導体レーザ素子1の各エミッタの横モードに対応する部分光2c,3c,4c,5cが示され、各部分光は、出射面2,3,4,5に対する法線に実質的に平行に、すなわち、デカルト座標系に従うZ方向に、半導体レーザ素子1から出射する。図2に設けられる反射手段9は1つの反射面を有するだけでなく、複数の反射面10,11,12,13も有する。したがって、部分光2c,3c,4c,5cのそれぞれに、該反射面10,11,12,13の1つが配されて、したがって、この実施の形態においては、出射面2,3,4,5に対応する半導体レーザ素子1の各エミッタを、同じ横モードまたは縦モードで駆動することが可能である。
各縦モードを分かりやすくするために、図2において、たとえばエタロンとして実施可能である波長選択要素14が示されている。任意の波長選択要素14によって、特定の縦モード、特に1つの縦モードを選択することが可能であり、したがって放射されたレーザ光は小さいスペクトル幅を有する。
半導体レーザ装置からの分離は、反射手段9が部分反射するよう形成されることによって達成することも可能であり、したがって反射手段9から正のZ方向にレーザ光が出射することができる。これに代えて、反射手段9によって形成される外部共振器に向いていない半導体レーザ素子の面を部分的に反射防止加工してもよく、または反射性の高いものにしなくてよく、その結果半導体レーザ素子の図2の左側において、レーザ光が負のZ方向へと出射することができる。
さらにまたそれに代わる別の実施の形態に従えば、図2左に、さらにもう1つ、反射手段9と同様の反射手段が設けられ、該反射手段が、半導体レーザ素子1から負のZ方向に出射するレーザ光を半導体レーザ素子1に再反射することができる。外部共振器はこの場合、これら2つの反射手段9によって形成され、それらの反射面は互いに向かい合っている。これらの反射手段9の1つは部分的に反射するよう形成され、したがってレーザ光は、部分的分離のためのこの反射手段を通過することが可能である。
図2において、さらに反射手段の右側には、反射手段9から正のZ方向に光が出射するとき光を変換することが可能な、光変換ユニット15が破線で示されている。光変換ユニットには、たとえば、部分光2c,3c,4c,5cの向きをそれぞれたとえば90度変化させることが可能な光偏向ユニットを設けてもよい。かかるビーム変換ユニットによって、出射するレーザ光の集束性が向上する。かかるビーム変換ユニットを図1に従った実施の形態においても利用することが可能である。
図3に従った半導体レーザ装置は、図1に対応して、法線に対してある角度で出射面2,3,4,5から出射するモードが促進されるという点において、実質的には図2におけるものとは異なる。図3に従った半導体レーザ装置において設けられる反射手段16もまた複数の反射面17,18,19,20を有する。反射手段16の図示された実施の形態において、反射手段16は実質的にX方向に向き、したがって各部分光2a,3a,4a,5aの出射面2,3,4,5と反射面17,18,19,20との間の光学路は同じになる。これに代えて、反射手段16のように、図3に破線で示された、半導体レーザ装置に同じ場所に組込むことが可能な反射手段16’を設けることも可能である。部分光2a,3a,4a,5aの拡散方向に実質的に垂直に設けられる反射手段16’については、部分光2a,3a,4a,5aの出射面2,3,4,5と反射面17,18,19,20との間の光学路は異なる。
反射手段16において、各反射面17,18,19,20はZ軸に対して傾斜している。これは反射手段16’においては該当しない。いずれにせよ、この場合、反射面の曲率半径を異ならせて形成することが必要とすることが可能である。
図3においても同様に、取出された光2b,3b,4b,5bに設けられるビーム変換ユニット15が示されている。このビーム変換ユニット15を介して入射するレーザ光を、たとえば別の集光手段を介してガラスファイバの端部に集光することが可能である。
本発明に従えば、図1および図3に従う実施の形態においても、波長選択素子を設けることが可能である。これは、図1にあるように異なって傾く部分光の場合、同じ波長を選択するには、湾曲したエタロンを必要とすることができるであろう。
本発明に従えば、さらにまた、ビーム変換ユニットは、外部共振器に、すなわち、各反射手段7,9,16,16’と半導体レーザ素子1との間、特にレンズ手段6と反射手段7,9,16,16’との間に設けることが可能である。かかる設置は、事情によっては分離のためのさらなる空間ができるという利点をもたらすことができる。
たとえば光偏向ユニットとして実施されるビーム変換ユニットは各エミッタの発光を90度偏向させる。かかる偏向の後、部分光2a,3a,4a,5aはX−Z平面に対して同じ角度をなし上方に、部分光2b,3b,4b,5bは反対向きに同じ角度をなし下方に進む。したがって、遅軸コリメーションにはシリンダミラーが適している。球面ミラーを利用すべきときには、遅軸コリメーションのためにはさらにミラーアレーが必要である。
積層されるエミッタアレーが利用されるときには、光偏向ユニットを伴う構成の場合、遅軸コリメーションのためにシリンダミラーからなる1次元アレーを利用してもよい。
さらにまた本発明に従えば、周波数2倍器、たとえば周波数2倍結晶を、外部共振器に設けることが可能である。たとえばこれは、図2においてはレンズ手段6と反射手段9との間に設けられている。この場合、反射面10,11,12,13は、基本波長はよく反射し、第2高調波は透過させることが可能である。場合によっては、レンズ手段6は、基本波長は妨げられることなく透過し、第2高調波は反射するように形成することも可能であり、したがって、第2高調波は半導体レーザ素子1に再結合されない。
本発明に従えば、半導体レーザ素子として、積層されたエミッタアレーを利用することが可能である。この場合、たとえば、2次元アレーの球面ミラーもしくはシリンダミラー、または、1次元アレーのシリンダミラーを利用することが可能である。この場合、図1に対する実施の形態に対応して、間隔と焦点距離を決定することができる。
さらにまた、レーザダイオードバーとして実施される半導体素子1に代わって、それぞれ別個の、並行して監視される複数の個別レーザを利用することも可能である。これらはシングルモードレーザとして駆動することが可能であり、個別に制御可能である。このような複数の個別レーザは、特に医療技術用途に適している。
図4から半導体レーザ素子21はレーザダイオードバーとして実施されることがわかる。この半導体レーザ素子21は複数の出射面22,23,24を有し、それらの出射面から、レーザ光25,26,27が出射可能である。さらにまた、図4に従う実施の形態においては反射手段28が設けられ、複数の互いに隣接して設けられた反射面29,30,31を有し、これらはたとえば図2従う反射面10,11,12,13のように形成される。図2に従う実施の形態におけるように、反射面29,30,31からも、レーザ光25,26,27の対応する部分が、それらに属する出射面22,23,24を介して半導体レーザ素子21に再反射される。レーザ光の図4に示された選択されたモードの場合、各レーザ光25,26,27の部分光は、反射面29,30,31のそれぞれによって、半導体レーザ素子の対向する端面32に対する法線に対してある角度をなして反射されるようにして、半導体レーザ素子21に再反射され、したがってこの反射後、これらの部分光は隣接する出射面22,23,24から出射する。このようにして、半導体レーザ素子21全体において実質的に唯一のレーザ光モードを形成することが可能となる。
たとえば、図4中央の出射面23などの各出射面には反射性の高い層33を設けてもよく、したがってこの出射面23からは半導体レーザ素子からの光はまったく出射することができない。この場合レーザ光は、この出射面で反射し、対向する端面32にてさらに反射した後、隣接する出射面22,24のいずれかを介して、半導体レーザ素子から出射する。
図4に従う実施の形態では、半導体レーザ素子21の一定の部分領域34だけに電極を設けることが可能であり、したがって、この部分領域34にのみ電圧が印加され、この部分領域34にのみ電流が流れ、電子正孔対が生成される。図4には、さらにまた部分領域35が記されており、これには電極は設けられておらず、したがって電圧を印加することができない。このような構成によって、1つまたは複数の好ましいモードの形成が最適化される。反射手段28と半導体レーザ素子21との間に、図4に図示されないレンズ手段を設けることも可能である。
本発明に従った半導体レーザ装置の第1の実施の形態の略平面図である。
本発明に従った半導体レーザ装置の第2の実施の形態の略平面図である。
本発明に従った半導体レーザ装置の第3の実施の形態の略平面図である。
本発明に従った半導体レーザ装置の第4の実施の形態の略平面図である。