本発明は、皮膚および粘膜を介した物質の吸収の増大に関する。本発明はさらに、皮膚および粘膜により吸収される能力の増大している物質、およびかかる物質を含む医薬組成物に関する。
迅速かつ強力な全身作用を成し遂げることが意図されていて、そして活性物質が、体によってわずかに吸収されるのみならず全く吸収されないか、あるいは胃腸管においてまたは肝臓での代謝により不活性化されるなら、しばしば、非経腸投与(例えば、静脈注射、筋肉注射、および皮下注射)による生物学的に活性な物質および治療上活性な物質の投与が、最も適した種類の投与とみなされる。
しかしながら、注射による投与には多くの不便さがある。例えば、滅菌済みの注射器および針、または他の機械装置の使用が必要であり、そして特に注射を繰り返す場合、疼痛、刺激、および感染が生じ得る。さらに、注射は、訓練を受けた人々によってのみ施されなければならない。
ある種の医薬は、患者に経皮(経皮的に(precutaneously))、損傷を受けていない皮膚を介して)または経粘膜(粘膜を介して)投与できると知られている。この投与は、本質的には、医薬の皮膚表面および/または粘膜表面への適用、次に該皮膚および粘膜による医薬の患者血流への透過(penetration)を含む。
皮膚または粘膜投与は、このようにして医薬の局所作用および全身作用を生み出すことが可能であるため、興味深い。この種の投与はまた、投与された医薬が直ちに作用開始することが必要な場合、非経腸投与に代わるものとして興味深いものであり得る。
非侵襲的投与はさらに、医師および患者に注射および点滴に付随する不便さおよびリスクを免れさせ、そして訓練を受けていない人、すなわち、患者自身によってでも行うことが可能である。故に、医薬のこの種の投与は、侵襲的技術より患者コンプライアンスに関係する。このことは、特に局所(局部)または経腸投与、すなわち経口または直腸経路による投与に当てはまる。
全身的に作用する物質の局所投与はさらに、物質の経口吸収が不十分であるか、胃が耐えられなくなるか、または物質が吸収後直ちに肝臓で代謝される場合と比較して、有意な利点を有する。この場合のさらなる利点は、全身作用が、経口投与に必要なものより低用量での局所投与により成し遂げられ得ることである。
しかしながら、皮膚および粘膜は、内部組織に達することが意図されている医薬の投与の際、乗り越えなければならない物理的および生理的バリアとなる。経口投与される医薬はさらに、胃腸管内の低pHおよび消化酵素に対して抵抗性でなければならない。
ゆえに、経皮投与または経粘膜投与は、皮膚または粘膜により、よく吸収される医薬のみに適している。
吸収割合および吸収率、すなわち投与量に対する吸収部分の比、および最終的には到達し得る血漿濃度、すなわち有効成分の生物学的利用能は、内部の他の因子に加えて、水中での十分な溶解性、物質の他の化学特性、および投与および吸収部位の生理環境に依存する。多くの医薬有効成分は、非常に大きく、実質的には皮膚および粘膜に浸透できない。さらに、粘膜を介した吸収は、水への溶解性が不十分であるかまたは不溶性であるため、多くの医薬有効成分には困難であり、従って、まさにこの粘膜を介した投与、例えば、経腸(経口および直腸)、鼻、口腔、膣、または尿道経路によるその投与には相いれない。
従って、医薬の経皮または経粘膜吸収を増大させる試みが成されてきた(すなわち、大量の物質が、特定の時間に皮膚または粘膜により透過しなければならない)。生物学的な膜を横切っての被吸収性の低い分子の吸収または輸送を増大させ、従って、これらの分子の生物学的利用能を増大させる物質が、吸収増強剤として知られている(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 8, 91, 1991)。
吸収増強剤は、皮膚または粘膜を介した吸収を増大させるために医薬に添加されてきた。これに付随して、これらの化合物は、皮膚または粘膜による医薬の浸透率を増大させる。
かかる吸収増強剤の例は、アルコールおよびグリコール(US−A−5,296,222)、尿素誘導体、ヒアルロン酸、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルスルホキシド(DMSO)、テルペン(DE−A−10053383)、胆汁酸塩(JP−A−59−130820)、キレート剤(Cassidy and Tidball, J. Cell. Biol. 32, 685, 1967)、界面活性剤(JP−A−4−247034,George et al., J. Infect. Dis. 136, 822, 1977)、脂肪酸の塩(US−4,476,116および6,333,046)、合成親水性および疎水性化合物、生分解性高分子化合物、およびグリシルリジン酸塩(JP−A−2−042027;US−A−6,333,046)である。
吸収増強剤の作用について、種々の機序が提案されてきた。該作用機序は、少なくともタンパク質およびペプチド医薬のための、(1)粘膜の粘性および/または弾性の低減、(2)膜バリアの流動性を増大させることによる細胞間輸送の促進、および(3)医薬の熱力学的活性の増大を含む(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 8, 91, 1991)。
しかしながら現在、市場で得ることができる吸収増強製品はほとんどない。この理由としては、粘膜の刺激と損傷、不愉快な味および臭い等に関連した効力および安全性の低さが含まれる。
問題は、例えば、製剤における吸収増強剤の増強作用と濃度との割合に関係して生じる。DMSOの場合、吸収増強作用は主にその濃度に依存し、事実50%未満の濃度では効果的でないと考えられている。さらに、これは、眼に対して不都合な作用を示し、皮膚に関しては副作用をも示す。尿素誘導体、ヒアルロン酸、N,N−ジメチルホルムアミド、および界面活性剤の吸収増強作用は、ジメチルスルホキシドと比較して低い。
全ての医薬の吸収を増大させる吸収増強剤も存在しない。それゆえ、吸収増強剤は、特定の医薬に適合しなければならない。
さらに、既知の吸収増強剤は、しばしば粘膜の刺激物であるか、あるいはその不愉快な臭いまたは味のため適当ではなく、1回の投与後でさえ疼痛および流涙をしばしば生じるか、または多数回使用した後に粘膜の刺激および炎症を生じる。このことは、例えば、フシジン酸の誘導体、胆汁酸、界面活性剤、および種々のグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)に当てはまる。
さらに、該吸収増強剤の多くが吸収組織に損傷を生じ、そして事実、該物質により引き起こされた粘膜の損傷が、吸収の改善の理由であることが示唆されている(LeCluyse and Sutton, Advanced Drug Delivery Reviews 23, 163, 1997)。
従って、経皮または経粘膜吸収の既知の増強剤は、その作用および安全性の点で適当ではない。
先行技術分野において、いわゆるトランスフェロソーム(transferosome)(DE 41 07 152、DE 41 07 153、およびDE 44 47 287)も知られている。これは、適当な有効成分の皮膚による非侵襲的投与に用いられる。トランスフェロソームは、透過力の改善により、局所使用について記載された他のリポソームとは区別される。トランスフェロソームは、通常、従来のミセル担体製剤よりずっと大きく、そのため異なる拡散法則の支配下にある。透過力の増大は、バリア、例えば、皮膚内での圧縮に打ち勝つことができるように十分な弾性(ハイパーフレキシブル)をもたせた特定の組成物により、成し遂げられる。
本発明の目的は、皮膚および粘膜による吸収が困難な物質の被吸収性を改善し、ゆえにこれらの物質の吸収率を改善することである。
これにより、本発明は、同時に多大な技術的労作および有効成分の大量消費を必要とすることなく、通常は皮膚または粘膜によりほとんど吸収されない物質だけでなく全く吸収されない物質の非侵襲的使用を可能にする。
本発明によるこの目的は、請求の範囲の発明により成し遂げられる。
本発明の目的は、皮膚および粘膜による物質の吸収を増大させる剤を、物質と結合させ、ゆえに該物質の生物学的利用能を増大させることにより、成し遂げられる。
本発明による物質と吸収増強剤の組合せは、意外なことに、皮膚および粘膜による物質(これまで、わずかに吸収されるかまたは吸収されないとされてきた)の吸収率および/または浸透を改善することを可能にする。
たとえこれまで被吸収性が低いかまたは被吸収性がないとされてきた物質であっても、皮膚または粘膜を介したまたはよる物質の吸収に対する剤の増大作用(増強作用)により、皮膚、および鼻粘膜、眼粘膜、気管/気管支/肺粘膜、直腸粘膜、生殖系の粘膜、口腔粘膜、胃腸粘膜、膣粘膜、またはその他尿管粘膜のような粘膜を介した治療、診断、または化粧用物質の投与用剤形を得ることが可能になる。
吸収を増大させる剤は、この場合、物質の生物学的利用能を増大させるための吸収増強剤として作用する。本来の吸収がわずかであり、これと付随して生物学的利用能が低いにもかかわらず、全ての治療結果で満足な吸収を成し遂げることが可能となり、かつ物質の投与量も、通常の投与量と比較して所望に応じて低減され得るか、あるいは投薬量が同じであっても、改善した作用が得られ得る。
従って、本発明は、1つの態様において、経皮または経粘膜生成物の製造方法に関し、該方法は、物質を皮膚または粘膜による物質の吸収を増大させる少なくとも1つの剤と結合させることを含む。
本発明は、さらなる態様において、皮膚または粘膜への適用の際の物質の生物学的利用能を増大させる方法を提供し、該方法は、物質を皮膚または粘膜による該物質の吸収を増大させる少なくとも1つの剤と結合させることを含む。
本発明はまた、皮膚または粘膜に適用した際、これにより吸収される物質の能力を増大させる方法に関し、これは、物質を皮膚または粘膜による該物質の吸収を増大させる少なくとも1つの剤と結合させることを含む。
本発明はさらに、皮膚または粘膜に対する物質の浸透力(透過力)を増大させる方法に関し、これは、物質を皮膚または粘膜による該物質の吸収を増大させる少なくとも1つの剤と結合させることを含む。
本発明は、さらなる態様において、本発明の方法により得られることができ、かつ増大した生物学的利用能、増大した皮膚または粘膜により吸収される能力、および/または増大した浸透力(透過力)を有する物質、ならびに該物質を1つ以上含む医薬組成物に関する。
本発明はさらに、本発明の方法により得ることができ、かつ増大した生物学的利用能、増大した皮膚または粘膜により吸収される能力、および/または増大した浸透力(透過力)を有する物質、および皮膚または粘膜に適用するため、ならびに通常、本発明を変更することなく、該物質により処置、予防、または診断される疾患の処置(予防および美容上の処置を含む)および/または診断のための該物質を含む医薬組成物の使用に関する。
本発明はさらに、患者の疾患の処置(予防および美容上の処置を含む)および/または診断方法に関し、該方法は、増大した生物学的利用能、増大した皮膚または粘膜により吸収される能力、および/または増大した浸透力(透過力)を有する物質の濃度(局所または全身の、好ましくは、全身の)が、疾患を処置、予防、および/または診断するのに十分であるように、本発明の方法により得ることができ、かつ増大した生物学的利用能、増大した皮膚または粘膜により吸収される能力、および/または増大した浸透力(透過力)を有する物質を含む医薬組成物を患者に投与することを含む。
本発明は、さらなる態様において、物質、特に医薬有効成分の粘膜、皮膚、および/または全身作用の解明方法に関し、該方法は、本発明の方法により得ることができ、かつ増大した生物学的利用能、増大した皮膚または粘膜により吸収される能力、および/または増大した浸透力(透過力)を有する物質を含む医薬組成物を、粘膜、皮膚、および/または全身上有効量で患者に投与することを含む。
本発明による吸収増強剤は、物質と共有結合または非共有結合により結合(linkage)(結合)されてもよい。結合は、好ましくは、共有結合である。
1つの実施態様において、リンカーが、物質と吸収増強剤との間に存在する。リンカーは好ましくは、物質が吸収増強剤と分離され得るように、例えば、酵素的または化学的、特にインビボの過程により分解され得る。リンカーは、1つの実施態様において、分解可能なエステルまたはカルバメート官能基、または血清中に存在するプロテアーゼのようなプロテアーゼにより認識され得るペプチドを含む。特に好ましい実施態様において、物質は、皮膚または粘膜により吸収された後、吸収増強剤から分離する。
1つの実施態様において、吸収増強剤は物質と1回よりも多く結合、すなわち、少なくとも2個、好ましくは、2から10個、より好ましくは、2から5個、なおより好ましくは、2から3個、特に2個の吸収増強剤(同一であっても異なっていてもよい)が物質と(共有結合および/または非共有結合により)結合する。これらの複数結合した吸収増強剤は、互いに離れてまたは互いに直列に、必要に応じて物質に対する直列構造物としてリンカーにより隔てられて、結合してもよい。このことは、好ましくは、吸収増強剤と1回だけ結合したものより、生物学的利用能の増大、皮膚または粘膜により吸収される能力の増大、および/または浸透力(透過力)の増大を成し遂げる。
好ましい実施態様において、吸収増強剤は、ポリペプチドまたはタンパク質である。ポリペプチドまたはタンパク質は、好ましくは、ウイルス由来配列、特に、ウイルスの表面タンパク質由来配列、またはその誘導体または一部分を含む。用語「ウイルス」は、DNAウイルス、RNAウイルス、特にアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、C型肝炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、およびヘパドナウイルスを含む。後者の例は、HBV、WHV(「ウッドチャック肝炎ウイルス」)、GSHV(「ジリス肝炎ウイルス」)、RBSHV(「アカハラリス(red-bellied squirrel)肝炎ウイルス」)、DHV(「ペキンダック肝炎ウイルス」)、およびHHV(「アオサギ肝炎ウイルス」)である。特に好ましい実施態様において、ペプチドまたはタンパク質は、肝炎ウイルス、ヘパドナウイルス、またはHIV、特に、B型肝炎ウイルス由来配列、またはその誘導体または一部分を含む。ペプチドまたはタンパク質は、好ましくは、HIV tat由来、またはヘルペスウイルスのVP22由来のアンテナペディア由来配列を含む。
好ましい実施態様において、用語「ウイルス」は、ヒト、非ヒト霊長類、または他の哺乳類、特に、哺乳類(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、およびネコ)、トリ(例えば、ニワトリ)、またはげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)に存在するウイルスを含む。
吸収増強剤として作用するポリペプチドまたはタンパク質は、好ましい実施態様において、以下の一般式:
(式中、X1、X6、X7、X9、X10、およびX12は様々であり、X2およびX5は、疎水性アミノ酸残基であり、そしてX3、X4、X8、およびX11は、親水性アミノ酸残基である)により、カバーされる配列を含む。X7は、好ましくは、親水性アミノ酸残基である。
特定の実施態様において、吸収増強剤として作用するポリペプチドまたはタンパク質はこの配列を含むが、1つまたは2つのアミノ酸残基、特に、X1からX12までの1つのアミノ酸残基がこのハイドロパチー特性(hydropathic profile)とは異なっている。
帯電基、水素結合形成基、または双極子を有するアミノ酸側鎖は、親水性に分類され得る。これと対照的に、有意な双極子を有さず、かつ水素結合形成能を有する、炭化水素特徴を有する中性有機アミノ酸側鎖は、疎水性に分類され得る。
以下の表は、Kyte and Doolittle, J. Mol. Biol. 157, 105, 1982に記載のアミノ酸側鎖のハイドロパチー指標を示す。
本発明による疎水性アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、およびメチオニンを含む。本発明による親水性アミノ酸は、グリシン、セリン、チロシン、スレオニン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、およびプロリンを含む。様々なアミノ酸残基は、上記のアミノ酸の何れかであってもよい。
X1は、好ましくは、プロリン、ヒスチジン、ロイシン、またはスレオニンであり、より好ましくは、プロリン、またはスレオニン、特にプロリンである。X2は、好ましくは、アラニン、バリン、ロイシン、またはイソロイシンであり、より好ましくは、ロイシン、またはイソロイシン、特にロイシンである。X3は、好ましくは、セリン、アスパラギン、アスパラギン酸、またはグルタミン、特にセリンである。X4は、好ましくは、セリン、グルタミン、ヒスチジン、またはプロリンであり、より好ましくは、セリン、ヒスチジン、またはプロリン、特にセリンである。X5は、好ましくは、アラニン、バリン、ロイシン、またはイソロイシンであり、より好ましくは、イソロイシン、またはバリン、特にイソロイシンである。X6は、好ましくは、フェニルアラニン、セリン、アラニン、ロイシン、メチオニン、またはバリンであり、より好ましくは、フェニルアラニン、またはバリン、特にフェニルアラニンである。X7は、好ましくは、セリン、アラニン、グリシン、アスパラギン酸、またはプロリンであり、より好ましくは、セリン、アスパラギン酸、またはプロリン、特にセリンである。X8は、好ましくは、アルギニン、ヒスチジン、またはスレオニンであり、より好ましくは、アルギニン、またはヒスチジン、特にアルギニンである。X9は、好ましくは、イソロイシン、スレオニン、メチオニン、またはバリンであり、より好ましくは、イソロイシン、またはバリン、特にイソロイシンである。X10は、好ましくは、グリシン、イソロイシン、グルタミン、アスパラギン酸、またはセリンであり、より好ましくは、グリシン、またはセリン、特にグリシンである。X11は、好ましくは、アスパラギン酸、プロリン、スレオニン、またはセリンであり、より好ましくは、アスパラギン酸、またはスレオニン、特にアスパラギン酸である。X12は、好ましくは、プロリン、リジン、メチオニン、バリン、イソロイシン、またはスレオニン、特にプロリンである。
好ましい実施態様において、吸収増強剤として作用するポリペプチドまたはタンパク質は、以下の一般式:
(式中、
X1は、様々なアミノ酸、好ましくは、プロリン、ヒスチジン、ロイシン、またはスレオニンであり、より好ましくは、プロリン、またはヒスチジン、特にプロリンであり、
X2は、疎水性アミノ酸、好ましくは、アラニン、バリン、ロイシン、またはイソロイシンであり、より好ましくは、ロイシン、またはイソロイシン、特にロイシンであり、
X6は、様々なアミノ酸、好ましくは、フェニルアラニン、セリン、アラニン、ロイシン、メチオニン、またはバリンであり、より好ましくは、フェニルアラニン、またはセリン、特にフェニルアラニンであり、
X7は、様々なアミノ酸、好ましくは、セリン、アラニン、グリシン、アスパラギン酸、またはプロリンであり、より好ましくは、セリン、またはアラニン、特にセリンであり、そして
X9は、様々なアミノ酸、好ましくは、イソロイシン、スレオニン、メチオニン、またはバリンであり、より好ましくは、イソロイシン、またはスレオニン、特にイソロイシンである)によりカバーされるアミノ酸配列を含む。
さらに好ましい実施態様において、吸収増強剤として作用するポリペプチドまたはタンパク質は、以下の一般式:
(式中、
X3は、親水性アミノ酸、好ましくは、セリン、アスパラギン、アスパラギン酸、またはグルタミン、特にアスパラギン酸、またはグルタミンであり、
X6は、様々なアミノ酸、好ましくは、フェニルアラニン、セリン、アラニン、ロイシン、メチオニン、またはバリン、特にロイシン、またはメチオニンであり、
X9は、様々なアミノ酸、好ましくは、イソロイシン、スレオニン、メチオニン、またはバリン、特にバリン、またはイソロイシンであり、
X10は、様々なアミノ酸、好ましくは、グリシン、イソロイシン、グルタミン、アスパラギン酸、またはセリン、特にアスパラギン酸、またはグルタミンであり、
X11は、親水性アミノ酸、好ましくは、アスパラギン酸、プロリン、スレオニン、またはセリン、特にセリン、またはスレオニンであり、そして
X12は、様々なアミノ酸、好ましくは、プロリン、リジン、メチオニン、バリン、イソロイシン、またはスレオニン、特にバリン、またはメチオニンである)によりカバーされるアミノ酸配列を含む。
さらに好ましい実施態様において、吸収増強剤として作用するポリペプチドまたはタンパク質は、以下の一般式:
(式中、
X12は、様々なアミノ酸、好ましくは、プロリン、リジン、メチオニン、バリン、イソロイシン、またはスレオニン、特にイソロイシン、またはスレオニンである)によりカバーされるアミノ酸配列を含む。
さらなる実施態様において、吸収増強剤として作用するポリペプチドまたはタンパク質は、下記:
のアミノ酸配列、またはそれ由来のアミノ酸配列を1つ以上含む。
最も好ましい実施態様において、吸収増強剤として作用するポリペプチドまたはタンパク質は、アミノ酸配列:
を含む。
吸収増強剤として作用し、かつ本発明に記載されるポリペプチドまたはタンパク質はまた、その誘導体、具体的には、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸欠損変異体、および/またはアミノ酸置換変異体であってもよい。アミノ酸は、好ましくは、疎水性、親水性、電気陰性度、側鎖の体積などのような、類似の特性を有するものにより置換されている(保存的置換)。保存的置換は、この点で、例えば、1のアミノ酸の別のアミノ酸での置換に関連するものであり、両アミノ酸は、以下の同一群に示されたものである:
1.小さな脂肪族、非極性またはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr(Pro、Gly)
2.負に帯電した残基およびそのアミド:Asn、Asp、Glu、Gln
3.正に帯電した残基:His、Arg、Lys
4.大きな脂肪族、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val(Cys)
5.大きな芳香族性残基:Phe、Tyr、Trp。
3個の残基は、タンパク質構造にとって特に重要であるため、括弧に入れて記載されている。Glyは、側鎖を有さない唯一の残基であり、従って、鎖の柔軟性に関する。Proは、鎖を特に制限する変わった構造を有する。Cysは、ジスルフィド結合を形成できる。
1つの実施態様において、吸収増強剤として作用し、かつ本発明に記載されるポリペプチドまたはタンパク質において、1から6個、好ましくは、1から4個、より好ましくは、1から3個、特に1から2個のアミノ酸が置換されていてもよい。
吸収増強剤として作用し、かつ本発明に記載されるポリペプチドまたはタンパク質はまた、D−アミノ酸、非古典的アミノ酸、または化学的アミノ酸類似体のような天然に存在しないアミノ酸を含んでもよい。非古典的アミノ酸および化学的アミノ酸類似体は、α−アミノ酪酸、アミノ酪酸、アミノヘキサン酸、アミノプロピオン酸、β−アラニン、γ−カルボキシグルタミン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルグアニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、P−アラニン、フルオロアミノ酸、環状メチル化フェニルアラニンなどを含むが、これらに限らない。それぞれのアミノ酸残基は、非古典的アミノ酸または化学的アミノ酸類似体により置換されていてもよい。好ましくは、このようにして、溶解性、安定性、または皮膚または粘膜による吸収を増大させることが可能となる。
吸収増強剤として作用するポリペプチドまたはタンパク質は、さらなる実施態様において、下記:
(1)P−L−S−S−I−F−S−R−I−G−D−P;
(2)P−I−S−S−I−F−S−R−I−G−D−P;
(3)P−I−S−S−I−F−S−R−T−G−D−P;
(4)H−I−S−S−I−S−A−R−T−G−D−P;
(5)L−L−N−Q−L−A−G−R−M−I−P−K;
(6)T−I−D−H−V−L−D−H−V−Q−T−M;
(7)T−I−Q−H−V−M−D−H−I−D−S−V;
(8)T−L−S−P−V−V−P−T−V−S−T−I;
(9)T−L−S−P−V−V−P−T−V−S−T−T
のアミノ酸配列の1つまたはそれ以上に対応する、ハイドロパチー特性を有するアミノ酸配列またはこれに由来する配列を含む。
本発明による用語「アミノ酸配列に対応するハイドロパチー特性」は、それぞれの場合で親水性、疎水性、または様々なアミノ酸残基と指定されるべきアミノ酸残基が、2以上のアミノ酸配列の対応する位置に存在することを意味する。
好ましい実施態様において、吸収増強剤として作用するポリペプチドまたはタンパク質は、少なくとも10個、より好ましくは、少なくとも11個、特に12個のアミノ酸残基において、このアミノ酸配列(1)から(9)のハイドロパチー特性に対応するアミノ酸配列を単独で、または2個以上のアミノ酸配列と共に含む。
吸収増強剤として作用するペプチドまたはタンパク質と結合する物質が、同じくペプチドまたはタンパク質である場合、吸収増強ポリペプチドまたはタンパク質は、N、C末端、側鎖、および/または結合すべき物質の挿入物として内部に存在(内在)してもよい。Nおよび/またはC末端に吸収増強剤を含むペプチドまたはタンパク質は、吸収増強ポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸を、結合すべきペプチドまたはタンパク質をコードする核酸と融合させ、次に、融合配列を例えば、細胞内で発現させることにより、組換え的に製造され得る。ペプチドまたはタンパク質である物質が、吸収増強剤を内部に含むものである場合のさらなる可能性は、吸収増強剤をコードする核酸を、該物質をコードする核酸に挿入することである。
本発明はまた、かかるペプチド/タンパク質構築物、およびこれらおよびその誘導体をコードする核酸に関する。
これらのペプチド/タンパク質構築物および核酸、またはその誘導体は、好ましくは、組換え構築物またはそれをコードする核酸であり、吸収増強剤として作用し、かつ本発明において記載されるポリペプチドまたはタンパク質を天然に含むペプチド/タンパク質、または核酸ではなく、ここで、用語「天然に」は、ヒトが介入することなく、天然、例えば、動物または植物で見出されるべきペプチド、タンパク質、または核酸に関する。
ペプチド/タンパク質物質の、吸収増強剤として作用するポリペプチドまたはタンパク質との該ペプチド/タンパク質物質の側鎖を介しての結合は、例えば、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、およびグルタミンのような酸性アミノ酸およびそのアミド、またはリジン、およびアルギニンのような塩基性アミノ酸を介して直接、あるいはリンカーを介して行ってもよい。
本発明により、任意の物質(天然で無機または有機)が、皮膚または粘膜による該物質の吸収を増大させる剤と結合させることが可能となる。該物質は、例えば、吸収されてもよいし、わずかに吸収されてもよいし、あるいは全く吸収されなくてもよい。該物質は、好ましくは、経皮または経粘膜吸収が改善され得る医薬有効成分である。医薬有効成分は、動物または植物供給源由来のものであってもよく(好ましくは、動物または植物供給源の純粋な物質である)、あるいは合成供給源のものであってもよい。
さらなる実施態様において、少なくとも2個、好ましくは、2から4個、より好ましくは、2から3個、特に、2個の物質(同一あるいは異なっていてもよい)が共に結合し、そしてこの結合体が、好ましくは、少なくとも1個、好ましくは、1から5個、より好ましくは、1から3個、なおより好ましくは、1または2個、特に1個の同一または異なる吸収増強剤と結合させられる。好ましい実施態様において、物質および/または吸収増強剤は、リンカーを介して結合される。この実施態様において、異なる物質からもたらされる治療、予防、および/または診断作用が、1つの化合物のみの投与により成し遂げられることを可能にする。
好ましい実施態様において、吸収増強剤と結合する物質は、その天然(すなわち、天然に存在し、かつ活性)の構造、または修飾された構造を有していてもよい。本発明による用語「修飾された構造」は、物質の任意の非天然構造を意味する。修飾された構造は、例えば、修飾されたポリペプチドまたはタンパク質を含み、その中で、天然のポリペプチドまたはタンパク質と比較して、1以上の修飾、特に、翻訳後修飾が存在しないか、および/またはさらに存在する。修飾、特に、翻訳後修飾は、グリコシル化、システイン側鎖の酸化、ジスルフィド結合およびペプチジル・プロリル結合の異性化、ヒドロキシル化、カルボキシル化、アシル化などを含むが、これらに限らない。
さらなる実施態様において、吸収増強剤と結合する物質は、経皮または経粘膜吸収前または後に、天然の物質のものに対応するか、あるいはそれより低いかまたは高い活性を有する。種々の実施態様において、経皮または経粘膜吸収前または後の物質の活性は、天然の物質の活性の100%未満、80%未満、60%未満、または50%未満である。1つの実施態様において、物質は、活性を有さない、すなわち、天然の物質と比較して、不活性である。この実施態様において、物質は、特に免疫のために利用され得る。
本発明による医薬有効成分は、下記の群:鎮痛剤、アミノ酸、食欲抑制剤、抗生物質、抗アレルギー剤、抗不整脈剤、抗コリン剤、抗うつ剤、抗糖尿病薬、解毒剤、制吐剤、抗てんかん薬、抗感染症薬、抗原、抗ヒスタミン剤およびヒスタミン、降圧剤、抗凝固剤、抗けいれん剤、抗体、抗真菌剤、抗腫瘍薬、抗炎症薬、介癬治療剤、解熱剤、防腐剤、抗癌剤、鎮咳剤(喘息治療薬)および呼吸に関連する他の剤、抗ウイルス剤および抗癌剤、抗寄生虫薬、抗不安薬、眼用医薬(抗緑内障薬を含む)、β遮断薬、画像化剤、血液因子、気管支拡張剤、シャペロン、ケモカイン、化学療法剤、コレステロール低下薬、サイトカイン、外皮用剤、診断薬、利尿薬および抗利尿薬、DNA修飾剤、酵素、栄養補助剤、線維素溶解剤、GABA拮抗剤、胃腸ホルモンおよびその誘導体、性ホルモン、グルタミン酸拮抗剤、グリシン拮抗剤、造血剤、ホルモン、催眠薬、下垂体ホルモンおよびその誘導体、視床下部ホルモンおよびその誘導体、シグナル伝達経路の阻害剤、インテグリン、インターフェロン、インターロイキン、インバースペプチド、強心剤、キナーゼ阻害剤、造影剤、避妊薬、コルチコステロイドおよびその誘導体、化粧品、ロイコトリエン、局所麻酔薬、リンホカイン、MHC/HLA分子、抗狭心症薬、抗痴呆薬または抗パーキンソン病薬、抗高脂血症薬、抗低血糖症薬、抗偏頭痛薬、モノカイン、筋弛緩剤、Mxタンパク質、麻酔薬、副腎ホルモン、膵ホルモンおよびその誘導体、副交感神経作動薬、副交感神経遮断薬、ペプチドミメティック、プラスミド、効力増大剤、プロモーター、プロスタグランジン、向精神薬、組換えタンパク質、リプレッサー、甲状腺ホルモンおよびその誘導体、鎮静薬、鎮痙薬、ステロイドホルモン、交感神経作動薬、ターミネーター、骨粗鬆症の治療剤、精神安定剤、血栓溶解剤、ワクチン、血管収縮剤、血管拡張剤、ビタミン剤、細胞接着分子などから選択される任意の生物学的に活性な物質を含み得る。
鎮痛剤は、フェンタニール、モルヒネ、トラマドール、ヒドロコデイン、メタドン、リドカイン、ジクロフェナク、パベリンなどを含むが、これらに限らない。
抗不整脈剤は、好ましくは、心臓の不整脈を処置するために心臓の興奮過程に作用する物質を含む。抗不整脈剤の種類の1例は、例えば、プロプラノロール、アルプレノロール、チモロール、ナドキソロール(nadoxolol)などのようなβ遮断薬である。
抗生物質、抗感染症薬、抗真菌剤、および抗ウイルス剤は、テトラサイクリン、テトラサイクリン様抗生物質、エリスロマイシン、2−チオピリジンN−オキシド、ハロゲン化合物(好ましくは、ヨウ素・ポリビニルピロリドン複合体のようなヨウ素含有化合物)、ペニシリン化合物のようなβラクタム化合物(例えば、ペニシリンGまたはV)、セファロスポリン、スルホンアミド化合物、アミノグリコシド化合物(例えば、ストレプトマイシン)、アンホテリシンB、5−ヨード−2−デオキシウリジン、グラミシジン、ナイスタチンなどを含むが、これらに限らない。
抗利尿薬および利尿薬は、デスモプレシン、バソプレシン、フロセミドなどを含むが、これらに限らない。
制吐剤の非制限的な例は、ピパマジン(pipamazine)、クロルプロマジン、ジメンヒドリナート、メクリジン、メトクロプラミドなどを含む。
抗ヒスタミン剤は、ヒスタミン作用を阻害する化合物を含む。この非制限的な例は、3−(2−アミノエチル)ピラゾール、シメチジン、塩酸シプロヘプタジンなどである。
降圧剤、抗狭心症薬、および血管拡張剤は、クロニジン、α−メチルドーパ、ニトログリセリン、多価アルコールのポリ硝酸塩(例えば、エリトリトール四硝酸塩、およびマンニトール六硝酸塩)、パパベリン、ジピリダモール、ニフェジピン、ジルチアゼムなどのような化合物を含むが、これらに限らない。
抗炎症薬は、ステロイドおよび非ステロイド性抗炎症剤を含むが、これらに限らない。この例は、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ベータメタゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、イブプロフェン、アスピリン、サリチル酸、フルメタゾン、フルプレドニゾロン、アミノピリン、アンチピリン、フルプロフェン、およびこれらの誘導体を含む。
鎮咳剤は、クロモグリケイトおよびその誘導体、ベクロメタゾン、ブデソニド、サルブタモール、モメタゾン、テルブタリンなどのような化合物を含むが、これらに限らない。
避妊薬は、女性患者において排卵または胎盤での受精卵の着床、あるいは男性患者において精子成熟を予防する化合物に関する。この非制限的な例は、エチニルエストラジオール, 酢酸メドロキシプロゲステロン、および抗黄体ホルモン(例えば、RU 486のような)である。
抗偏頭痛薬は、ヘパリン、ヒルジンなどを含むが、これらに限らない。
筋弛緩剤の例は、シクロベンザピリン塩酸塩、ジアゼパム、アルクロニウム、ベクロニウム、スクシニルジコリンなどを含むが、これらに限らない。
麻酔薬および局部麻酔薬は、ベンゾカイン、プロカイン、プロポキシカイン、ジブカイン、リドカイン、ナロキソン、ナルトレキソン、およびその誘導体を含むが、これらに限らない。
ペプチドミメティックおよびインバースペプチドは、ペプチドとして作用するが、典型的なペプチド構造を有さないペプチド様化合物を含む。この非制限的な例は、ペプチド類似体であり、これは、その天然ペプチドとは対照的にD−アミノ酸のみを含む。
効力増大剤は、患者の性欲を増大させる、および/または性行為を長引かせる医薬有効成分を含むが、これらに限らない。効力増大剤の例は、患者においてNO合成を増大させるもの(例えば、シルダナフィル)である。
ステロイドホルモンは、コレステロールからもたらされるホルモンである。ステロイドホルモンは、ゲスターゲン(例えば、プロゲステロン)、グルココルチコイド(例えば、コルチゾンおよびコルチゾール)、および鉱質コルチコイド(例えば、アルドステロン)を含むコルチコイド、アンドロゲン(例えば、テストステロン)およびエストロゲン(例えば、エストロンおよびエストラジオール)のような性ホルモン、およびその誘導体(例えば、デキサメタゾン、ベータメタゾン、プレドニゾロン、ベクロメタゾン、モメタゾンなど)を含むが、これらに限らない。
有効成分はまた、核酸または「アンチセンス」核酸、あるいはその誘導体であってもよい。
「アンチセンス」分子または「アンチセンス」核酸は、核酸の発現を制御、特に低減のために用いられ得る。本発明による用語「アンチセンス分子」または「アンチセンス核酸」は、オリゴリボヌクレオチド、オリゴデオキシリボヌクレオチド、修飾されたオリゴリボヌクレオチド、または修飾されたオリゴデオキシリボヌクレオチドであり、かつ、生理条件下で、特定の遺伝子を含むDNA、またはこの遺伝子のmRNAにハイブリダイズし、ゆえにこの遺伝子の転写および/またはこのmRNAの翻訳を阻害する、オリゴヌクレオチドに関する。本発明による「アンチセンス分子」はまた、その天然のプロモーターに対して逆向きで核酸またはその一部分を含む構築物を含む。核酸またはその一部分のアンチセンス転写物は、天然に存在するmRNAと2本鎖分子となり、特異的な酵素が到達し、この活性酵素においてmRNAの蓄積または翻訳が予防され得る。
好ましい実施態様において、オリゴヌクレオチドは、「修飾された」オリゴヌクレオチドである。この場合において、オリゴヌクレオチドは、例えば、その安定性または治療作用を増大させるために、その標的との結合能を損なうことなく広範な様々な方法で修飾されてもよい。本発明による用語「修飾されたオリゴヌクレオチド」は、オリゴヌクレオチドを意味し、ここで(i)そのヌクレオチドの少なくとも2個が、合成ヌクレオシド間結合(すなわち、ホスホジエステル結合ではないヌクレオシド間結合)により、結合し、および/または(ii)天然で核酸に存在しない化学基が、オリゴヌクレオチドと共有結合している。好ましい合成ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエート、アルキリホスホネート、ホスホロジチオエート、ホスフェートエステル、アルキルホスホノチオエート、ホスホルイミデート、カルバメート、炭酸塩、リン酸塩トリエステル、アセトアミド酸、カルボキシメチルエステル、およびペプチドを含む。
用語「修飾されたオリゴヌクレオチド」はまた、共有結合修飾された塩基および/または糖を有するオリゴヌクレオチド、および天然に存在しないヌクレオチドおよび/またはヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドを含む。「修飾されたオリゴヌクレオチド」は、例えば、低分子量を有し、かつ3’位置のヒドロキシル基および5’位置のリン酸基ではない有機基と共有結合する、糖残基を有するオリゴヌクレオチドを含む。修飾されたオリゴヌクレオチドは、例えば、2’−O−アルキル化リボース残基、またはアラビノースのようなリボースに代わり別の糖を含んでいてもよい。修飾されたオリゴヌクレオチドはまた、例えば、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、イソグアノシン、2−チオピリミジン、イソシチジン、普遍的塩基のような修飾された塩基および/または塩基類似体を含む。
有効成分はまた、遺伝子、遺伝子修復オリゴヌクレオチド、アプタマーオリゴヌクレオチド、3重らせん体ヌクレオチド、またはリボザイムであってもよい。
有効成分はまた、ポリペプチドまたはタンパク質、またはその誘導体であってもよい。これはさらに、化学または遺伝子により一体となって結合している多数のペプチドまたはタンパク質の結合体であってもよい。本発明により用いられるペプチドまたはタンパク質は、天然供給源からもたらされてもよいし、組換えまたは化学合成された物質であってもよい。本発明により利用されるポリペプチドまたはタンパク質は、好ましくは、単離されたものである。用語「単離タンパク質」または「単離ポリペプチド」は、タンパク質またはポリペプチドがその天然の環境から分離されることを意味する。単離タンパク質またはポリペプチドは、本質的に精製された状態であってもよい。用語「本質的に精製された」は、タンパク質またはポリペプチドが、それが天然またはインビボで共に存在する他の物質を本質的に含まないことを意味する。
本発明により利用され得るポリペプチドまたはタンパク質は、抗生物質、造血剤、抗感染症薬、抗痴呆薬、抗ウイルス剤、抗癌剤、解熱剤、鎮痛剤、抗炎症薬、抗アレルギー剤、抗うつ剤、介癬治療剤、向精神薬、強心剤、抗不整脈剤、血管拡張剤、降圧剤、抗糖尿病薬、抗凝固剤、コレステロール低下薬、骨粗鬆症の治療剤、ホルモン、ワクチンなど、および医薬有効成分としての上記ポリペプチドおよびタンパク質を含むが、これらに限らない。
特に好ましいペプチドまたはタンパク質は、サイトカイン、ペプチドホルモン、成長因子、心血管系の因子、中枢神経系および末梢神経系の因子、胃腸系の因子、免疫系の因子、酵素、およびワクチンを含む。
リンホカイン、モノカイン、造血因子などが特に好ましい。
リンホカインは、インターフェロン(例えば、α−、β−、およびγ−インターフェロン、およびIFN−α−2a、IFN−α−2b、およびIFN−α−n3を含むそのサブタイプ)、インターロイキン(例えば、インターロイキン1−17)などを含む。
「インターフェロン」は、抗ウイルス、抗増殖、および免疫調節活性のような種々の生物学的活性を有すると知られている、脊椎動物由来の糖タンパク質およびタンパク質群を一般的に含む用語である。本発明による用語「インターフェロン」は、天然および組換えタンパク質、および真核細胞、特に哺乳類細胞、ならび原核細胞で発現するタンパク質に関する。従って、用語「インターフェロン」は、IFN−βに関して、IFN−β−1aおよびIFN−β−1bの両方を含む。
インターフェロンは、2つの異なるサブタイプに分けられ得る分泌タンパク質である。
I型インターフェロンは、具体的には、インターフェロン−α多重遺伝子族のメンバー(約14〜20の異なるIFN−α分子が存在する)、IFN−τ(栄養芽細胞IFNとも呼ばれる)、およびIFN−βおよびIFN−ωを含む。I型IFN遺伝子は、9番染色体の短腕にクラスターとして存在する。
IFN−αおよびIFN−ωは、造血系の細胞により優先的に生成されるが、IFN−βは、非造血細胞、特に線維芽細胞により生成される。IFN−βは糖タンパク質(N−グリコシル化)であるが、たいていのヒトIFN−αサブタイプは、N−グリコシル化を有さない。活性型において、IFN−αおよびIFN−βは2量体を形成する。
huIFN−γ遺伝子は、3つのイントロンを含むことで、イントロンを含まないI型IFN遺伝子とは区別される。IFN−γは、II型インターフェロンに属する。IFN−γは、同じように活性型では2量体である、糖タンパク質である。IFN−γは、具体的には、CD4+ヘルパーT細胞、および実質的に全CD8+細胞で生成される。卓越した機能的類似性にもかかわらず、I型とII型インターフェロンの間の実質的な構造上の類似性は存在しない。
インターフェロンは、例えば、ウイルス性疾患、腫瘍性疾患、および免疫不全症の治療のための重要な医薬である。全身投与は、普通、静脈、皮下、または筋肉内投与で行われる。さらに局所投与剤形(例えば、腫瘍内注射および局所用ゲル)が存在する。吸収性がないことに加えて、経口使用はまた、IFN−γの場合、分子の部分的な酸不安定性により制限される。
さらに、サイトカインは、コロニー刺激因子4、ヘパリン結合神経栄養因子(HBNF)、ミッドカイン(MD)、およびサイモポエチンを含むが、これらに限らない。
本発明によるモノカインは、インターロイキン1、腫瘍壊死因子(例えば、TNF−αおよび−β)、白血病阻害因子(leucocyte-inhibiting factor)(LIF)などを含む。
本発明による造血因子は、例えば、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージ刺激因子(GM−CSF)、およびマクロファージ刺激因子(M−CSF)を含む。
抗凝固剤は、血中を循環し、凝血を制御する凝血修飾剤を含む。この非制限的な例は、I、II、III、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、およびXII因子、α1−アンチトリプシン、α2−マクログロブリン、アンチトロンビンIII、ヘパリンコファクター、カリクレイン、プラスミン、プラスミノーゲン、プロカリクレイン、タンパク質C、タンパク質S、トロンボモジュリンなどである。
ペプチドホルモンは、例えば、インシュリン、グルカゴン、成長ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、アミリン、オキシトシン、黄体形成ホルモン(LH)、カルシトニン、カルシトニン遺伝子を制御するタンパク質、カルシトニンのN末端隣接ペプチド、ソマトトロピン、ソマトスタチン、ソマトメジン、組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)、酢酸ロイプロリドなどを含む。
本発明による成長因子は、例えば、神経成長因子(NGF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、インシュリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、肝細胞成長因子(HGF)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、ヒト成長ホルモン(hGH)などを含む。
心血管系の因子は、例えば、エンドセリン、エンドセリン阻害剤、エンドセリン拮抗剤、バソプレシン(ADH)、レニン、アンギオテンシン、心房性ナトリウム利尿因子(ANP)などのような血圧、動脈硬化などを制御する因子である。
ペプチド由来ホルモンは、アクチビン、コレシストキニン(CCK)、絨毛様神経栄養因子(CNTF)、副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRFまたはCRH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ガストリン抑制ペプチド(GIP)、ガストリン放出ペプチド、グレリン、ゴナドトロピン放出因子(GnRFまたはGNRH)、成長ホルモン放出因子(GRF、GRH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCH)、インヒビンA、インヒビンB、レプチン、リポトロピン(LPH)、α−メラノサイト刺激ホルモン、β−メラノサイト刺激ホルモン、γ−メラノサイト刺激ホルモン、メラトニン、モチリン、膵ポリペプチド、副甲状腺ホルモン(PTH)、胎盤プロラクチン、プロラクチン(PRL)、プロラクチン放出阻害因子(PIF)、プロラクチン放出因子(PRF)、サイロトロピン(甲状腺刺激ホルモン、TSH)、チロキシン、トリヨードチロニン、血管作用性小腸ペプチド(VIP)などを含むが、これらに限らない。
中枢または末梢神経系の因子は、例えば、オピオイドペプチド(例えば、エンケファリン、エンドルフィン、キョートルフィン)、神経栄養因子(NTF)、甲状腺ホルモン放出ホルモン(TRH)、ニューロテンシンなどである。
エンドルフィンまたはその薬理的に活性な誘導体は、デルモルフィン、ダイノルフィン、α−エンドルフィン、β−エンドルフィン、γ−エンドルフィン、σ−エンドルフィン、[Leu5]エンケファリン、[Met5]エンケファリン、サブスタンスPなどを含むが、これらに限らない。
胃腸系の因子は、例えば、セクレチンおよびガストリンである。
免疫系の因子は、例えば、炎症および新生物を制御する因子、および抗体、走化ペプチド、またはブラジキニンのような感染微生物を攻撃する因子である。
抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。さらなる実施態様において、抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体、天然の抗体、またはコンビナトリアル技術により製造され得る合成抗体のフラグメントである。
上記の抗体、および他の結合分子は、例えば、組織同定のために用いられてもよい。抗体はまた、細胞および組織の視覚化のための特定の診断物質と結合してもよい。これはさらに、治療上使用可能な物質と結合してもよい。診断物質は、硫酸バリウム、ヨーセタム酸、イオパノ酸、カルシウムイポダート、ナトリウムジアトリゾエート、メグルミンジアトリゾエート、メトリザミド、ナトリウムチロパノエート、およびフッ素18および炭素11のようなポジトロン放出体、ヨウ素123、テクネシウム99m、ヨウ素131、およびインジウム111のようなγ放出体、フッ素およびガドリニウムのような核磁気共鳴用の核種を含む放射線診断薬を含むが、これらに限らない。
本発明による用語「治療上使用可能な物質」は、抗癌剤、放射性ヨウ素、テクネチウム、またはさらなる放射性同位体を含む化合物、毒素、細胞増殖抑制剤または細胞溶解剤などを含む、任意の治療上使用可能な分子を意味する。抗癌剤は、例えば、アミノグルテチミド、アザチオプリン、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブチル、シスプラチン、シクロホスファミド、サイクロスポリン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タキソール、エトポシド、フルオロウラシル、インターフェロン−α、ロムスチン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトタン、プロカルバジン塩酸塩、チオグアニン、硫酸ビンブラスチン、および硫酸ビンクリスチンを含む。さらなる抗癌剤は、例えば、Goodman and Gilman, “The Pharmacological Basis of Therapeutics”, 8th edition, 1990, McGraw-Hill, Inc., 特にchapter 52 (Antineoplastic Agents (Paul Calabresi and Bruce A. Chabner))に記載されている。毒素は、ヤマゴボウ抗ウイルス性タンパク質、コレラ毒素、百日咳毒素、リシン、ゲロニン、アブリン、ジフテリア外毒素、またはシュードモナス外毒素のようなタンパク質であってもよい。毒素残基はまた、コバルト60のような高エネルギー放出核種であってもよい。
さらなる実施態様において、物質は外皮用剤である。外皮用剤は、皮膚内部組織(特に、角質層より下の組織)をUV AおよびUV B範囲(好ましくは、280から400nmの範囲の発光)の紫外線のような外因子から保護する日焼け止め(例えば、p−アミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸、およびそのアルキルエステル)、美白剤(例えば、ヒドロキノン)、ビタミン(例えば、ビタミンA、C、D、E、K、ニコチン酸、チアミン、ピリドキシン、ビタミンB12、ビオチン、レチノイド、フラボノイド、パテント酸塩)、プロビタミン、酸化防止剤、顔料、着色料などのような化粧品を含む。外皮用剤はさらに、掻痒ざ瘡および紅斑に対する剤(例えば、ヒドロコルチゾン)、ざ瘡に対する剤(例えば、エリスロマイシンまたはテトラサイクリン)、単純ヘルペスに対する剤(例えば、5−ヨード−2−デオキシウリジン)、乾癬または皮膚癌に対する剤(例えば、フルオロウラシル)を含む。
さらなる実施態様において、皮膚または粘膜による物質の吸収を増大させる剤は、粒子、好ましくは、必要に応じて生分解可能なナノ粒子、必要に応じて生分解可能なマイクロ粒子、必要に応じて生分解可能なナノビーズ、必要に応じて生分解可能なマイクロビーズ、カプセル、エマルジョン、ミセル、リポソーム、非ウイルスベクターシステム、またはウイルスベクターシステムと結合、あるいは付加される。粒子は、好ましくは、非特異的または標的手段で細胞と結合し、核酸をその内部に導入することができるウイルス由来粒子(ウイルス様粒子)である。粒子は、上記の物質、具体的には、皮膚または粘膜により吸収されるべき核酸、またはペプチドまたはタンパク質を含む。この種の粒子は、例えば、WO−A 00/46376に記載されている。好ましくは、粒子は、(a)好ましくは、融合分子としてウイルスタンパク質、吸収増強剤、好ましくは、ペプチドまたはタンパク質、および適切な場合には異種性細胞特異的結合部位を含む、タンパク質コート、ならびに(b)タンパク質コートに存在し、かつウイルス特異的パッケージングシグナル配列および構造遺伝子配列を有する核酸を含む。用語「ウイルス」は、DNAウイルスおよびRNAウイルス、特に、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、C型肝炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、およびヘパドナウイルスを含む。後者の例は、HBV、WHV(「ウッドチャック肝炎ウイルス」)、GSHV(「ジリス肝炎ウイルス」)、RBSHV(「アカハラリス肝炎ウイルス」)、DHV(「ペキンダック肝炎ウイルス」)、およびHHV(「アオサギ肝炎ウイルス」)であり、HBVが好ましい。用語「構造遺伝子」は、上記のポリペプチドまたはタンパク質のようなポリペプチドまたはタンパク質をコードする任意の遺伝子を含む。
好ましい実施態様において、皮膚または粘膜による物質の吸収を増大させる剤は、吸着、非共有結合、または共有結合により、直接的またはリンカーを介して、粒子と結合、粒子合成に用いられるポリマーまたはモノマーと結合、または粒子の他の構成要素と結合していてもよい。
好ましい実施態様において、粒子は、治療、予防、または診断物質が付加され、この場合、皮膚または粘膜による物質の吸収を増大させる剤は、粒子と結合するか、または付加される。
本発明の粒子は、通常の方法により製造され得る。
本発明により、吸収増強剤、特にポリペプチドまたはタンパク質と結合している物質、特にペプチドまたはタンパク質は、好ましくは、免疫原と免疫特異的に結合する抗体の産生を誘導するための免疫原として用いられ得る。
従って、本発明はまた、抗体を産生させる方法に関し、該方法は、物質、特にペプチドまたはタンパク質(これは、本発明により吸収増強剤と結合している)の投与により、生物、特にヒトまたは動物において抗体産生を誘導させること、次に、該抗体を単離することを含む。
図面の簡単な説明
図1は、IFN−β−1a−TLM(TLM−1およびTLM−2)の経口投与の4時間および8時間後に、血清中で検出されたIFN−βの量を示す棒グラフである。N1:負の対照1(無処置動物);N2:負の対照2(飼料中にPreS1PreS2);N3:負の対照3(飼料中に市販の組換えIFN−β−1a)。
図2は、IFN−β−1a−TLM(TLM)の皮膚投与の4時間および8時間後に、血清中で検出されたIFN−βの量を示す棒グラフである。N1:負の対照1(無処置の動物);N2:負の対照2(市販の組換えIFN−β−1aの皮膚投与)。
図3は、PreS1PreS2の経口投与後のPreS1PreS2特異的抗体の検出についてのウエスタンブロット分析を示す。レーン1:チトクロムC;レーン2:PreS1PreS2;レーン3:IgG重鎖。
図4は、PreS1PreS2の皮膚投与後の血清中のPreS1PreS2の検出についてのウエスタンブロット分析を示す。レーン1:正の対照;レーン2から5:負の対照(無処置の動物);レーン6から9:PreS1PreS2で処置された動物由来の血清。
発明の詳細な説明
本発明による用語「吸収」は、体表面からの物質の取込を意味する。吸収は、特に皮膚(すなわち、経皮、経皮)または粘膜(粘膜(mucous membrane))(すなわち、経粘膜)から血流、リンパ系、および/または皮膚の下層への吸収を含み、そこから、全身への分布が可能である。吸収は、受動的な機序である拡散、あるいは活性な輸送機序により行われてもよい。
患者の皮膚または粘膜を介した吸収において、吸収増強剤と結合している物質は、好ましくは、本発明により皮膚の最外部層(角質層)に入る。好ましい実施態様において、吸収増強剤と結合している物質は、基礎層に達する。さらに好ましい実施態様において、吸収増強剤と結合している物質は、血流に放出される。
用語「増大」は、以前の状態と比較して、上昇、増強、または改善に関する。従って、例えば、用語「吸収の増大」は、吸収の上昇、すなわち、大量の物質が特定の時間、特に物質が皮膚および粘膜のような体のバリアを通過する速度が増大して、吸収されることに関する。
これは、物質が本来吸収されることができない場合に関し、そして「吸収の増大」後の物質は、吸収されることができる。これはまた、本来吸収されることが既にできた場合に関し、吸収されるべき物質の能力が、「吸収の増大」後に増強される。
用語「わずかに吸収される物質」は、物質がわずかに吸収されるだけでなく、全く吸収されないこと、特に、通常の投与量で治療上有効な濃度とならないことを意味する。
用語「生物学的利用能の増大」および「浸透力の増大」は、対応する様式で解釈されるべきである。
用語「生物学的利用能」は、放出および吸収の速度および程度、および特定の医薬製剤から医薬の治療上有効な部分の医薬の作用部位での利用能を特徴とする。これは、体液中の薬物濃度および急性薬理作用を測定することにより決定され得る。
用語「浸透力」は、物質が通り抜けることが可能な、例えば、皮膚および粘膜の性質に関する。用語「浸透力」および「透過力」は、かかるバリアを通り抜ける物質の能力に関する。
本発明による「経皮または経粘膜生成物」は、物質、特に医薬有効成分を意味し、これは本来、皮膚または粘膜によりわずかに吸収されるか、または全く吸収されないが、皮膚または粘膜により吸収されるように修飾され、従って、皮膚または粘膜への投与に適している。
本発明による「粘膜」または「粘膜」は、ヒトを含む哺乳類の任意の粘膜であってもよい。
本発明による粘膜の例は、胃腸粘膜(例えば、腸粘膜、胃粘膜)、眼粘膜、鼻粘膜、気管/気管支/肺粘膜、口腔粘膜、直腸粘膜、生殖器粘膜、膣粘膜、尿管粘膜などを含む。
粘膜は、好ましくは、鼻、口、胃腸管の粘膜である。
「経皮投与」または「経粘膜投与」は、皮膚または粘膜を介した供給を意味する。
本発明の目的上、「物質の吸収を増大させる剤」、「吸収増強剤」、または「吸収増強剤」は、バリアおよび圧縮、特に、浸透バリアによる他の物質の輸送を促進し、好ましくは、その生物学的利用能、吸収される能力、および/または浸透力(透過力)を増大させる物質または生成物である。浸透バリアは、特に、ヒトおよび動物の皮膚層、特に真皮(特に、角質層)および粘膜を含む。皮膚または粘膜による物質の吸収を増大させる剤は、好ましくは、副作用のないものである。
2つ以上の試薬の共有結合または非共有結合(結合)方法は、当業者に知られている。
「非共有」結合は、イオン相互作用、水素結合、ファンデルワールス力(疎水性相互作用)、およびある化合物の別の化合物内部への包括から生じる結合(例えば、クラウンエーテルおよびかご形化合物における)を含むが、これらに限らない。
例えば、ペプチドおよびタンパク質の共有結合は、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)またはN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)のような結合剤を使用して、またはそれ自体既知の方法である組換え技術により可能である。適当な合成方法は、例えば、“The Peptides: Analysis, Structure”, Biology, volume 1: “Methods of Peptide Bond Formation”, Gross and Meienhofer (editors), Academic Press, New York (1979)およびIzumiya et al., “Synthesis of Peptides”, Maruzen Publishing Co., Ltd., (1975)に記載されている。
本発明による核酸は、好ましくは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)である。本発明による核酸は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、rRNA、tRNA、組換え産生された分子、および化学合成された分子を含む。本発明による核酸は、1本鎖または2本鎖、および直線または共有結合した環状分子の形であってもよい。
本発明による核酸の「誘導体」は、1つまたは複数のヌクレオチド置換、欠失、および/または付加が核酸に存在することを意味している。用語「誘導体」はまた、ヌクレオチドの塩基、糖、またはリン酸への核酸の化学的誘導体化を含む。用語「誘導体」はまた、天然に存在しないヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体を含む核酸を含む。
本発明により記載される核酸は、好ましくは、単離されたものである。本発明による用語「単離核酸」は、核酸が、(i)インビトロで、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)により増幅され、(ii)クローニングにより、組換え的に産生され、(iii)例えば、ゲル電気泳動による分解および分画化により精製され、または(iv)例えば、化学合成により合成されたことを意味する。単離核酸は、組換えDNA技術による操作に利用可能な核酸である。
本発明による用語「発現」は、最も一般的な意味で用いられ、そしてRNAの産生、またはRNAおよびタンパク質の産生を含む。これはまた、核酸の部分的発現を含む。発現はさらに、一過性または安定的に生じてもよい。
本発明による用語「アミノ酸配列由来の配列」は、後者の配列の誘導体に関する。
本発明の目的上、タンパク質またはポリペプチド、またはアミノ酸配列の「誘導体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸欠損変異体、および/またはアミノ酸置換変異体を含む。
アミノ酸挿入変異体は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端の融合、および特定のアミノ酸配列での1以上のアミノ酸挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体は、アミノ酸配列の事前に決定された部位に挿入された1以上のアミノ酸残基を有するが、生じた産物の適当なスクリーニングによりランダムな挿入も可能である。アミノ酸欠損変異体は、配列から1以上のアミノ酸を除去することにより特徴付けられる。アミノ酸置換変異体は、配列における少なくとも1つの残基の除去、そしてその代わりに別の残基の挿入により区別される。修飾は、好ましくは、相同タンパク質またはポリペプチド間で保存されていないアミノ酸配列の位置に存在する。アミノ酸は、好ましくは、疎水性、親水性、電気陰性度、側鎖の量などのような類似の性質を有する他のものにより置き換えられる(保存的置換)。保存的置換は、この点で、例えば、1のアミノ酸の別のアミノ酸での置換に関連するものであり、両アミノ酸は以下の同じ群に示されたものである:
1.小さな脂肪族、非極性またはわずかに極性残基:Ala、Ser、Thr(Pro、Gly)
2.負に帯電した残基およびそのアミド:Asn、Asp、Glu、Gln
3.正に帯電した残基:His、Arg、Lys
4.大きな脂肪族、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val(Cys)
5.大きな芳香族性残基:Phe、Tyr、Trp。
3個の残基は、タンパク質構造に特に重要であるため、括弧に入れられている。Glyは、側鎖を有さない唯一の残基であり、従って、鎖に柔軟性を与える。Proは、一般的に鎖を制限する普通の構造を有する。Cysは、ジスルフィド結合を形成できる。
上記のアミノ酸変異体は、例えば、固相合成(Merrifield, 1964)および類似の方法、または組換えDNA操作のような既知のペプチド合成技術により、容易に製造され得る。既知または部分的に既知の配列を有するDNAの事前に決定した部位で置換変異を誘導する技術は、よく知られており、これは、例えば、M13変異誘発を含む。置換、挿入、または欠損を有するタンパク質を産生するためのDNA配列の操作、および例えば、生物システム(哺乳類、昆虫、植物、およびウイルスシステムのような)においてタンパク質を発現させる一般的な組換え方法は、例えば、Sambrook et al. (1989)に詳細に記載されている。
本発明によるタンパク質またはポリペプチドの「誘導体」はまた、炭水化物、脂質、および/またはタンパク質またはポリペプチドのような酵素と関連する任意の分子の1つまたは複数の置換、欠損、および/または付加を含む。
1つの実施態様において、タンパク質またはポリペプチドの「誘導体」は、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、パラミトイル化、ミリストイル化、イソプレニル化、脂質付加、アルキル化、誘導体化、保護/ブロッキング基の導入、タンパク質分解性開裂、または抗体または別の細胞リガンドとの結合から生じる修飾された類似体を含む。タンパク質またはポリペプチドの誘導体はまた、例えば、臭化シアン、トリプシン、ケモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH2、アセチル化、ホルミル化、酸化、還元での化学分解、またはツニカマイシンの存在下での代謝性合成のような他の方法により製造されてもよい。
用語「誘導体」はまた、タンパク質またはポリペプチドの機能上の化学的均等物全てに及ぶ。
本発明によるポリペプチドまたはタンパク質の一部分またはフラグメントは、それが由来するポリペプチドまたはタンパク質の機能的特性を示す。かかる機能的特性は、抗体、ポリペプチドまたはタンパク質のような他の分子との相互作用、核酸の選択的結合、および酵素活性を含む。本発明によるペプチドまたはタンパク質の一部分またはフラグメントは、好ましくは、該ペプチドまたはタンパク質由来の少なくとも6個、特に、少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、または少なくとも50個の保存的アミノ酸を含む。
本発明による用語「医薬有効成分」、「医薬的に活性な物質」、または「医薬的に活性」は、治療(予防を含む)または診断において利用され得る、任意の剤に関する。該剤は、具体的には、患者の疾患、症状、または損傷を処置(予防、緩和、治癒を含む)するために利用され得、そして所望の生物学的作用または薬理作用を有する、任意の治療剤または予防剤である。
医薬有効成分はまた、「経皮作用する皮膚科学的有効成分」または「全身作用する皮膚科学的有効成分」であってもよい。本明細書で用いられる用語「経皮作用する皮膚科学的有効成分」は、患者の皮膚に適用した場合、有益な局所作用を引き出す化学物質および生化学物質に関し、これは、性質が化粧用または治療用(例えば、皮膚疾患の緩和)であってもよい。本明細書で用いられる用語「全身作用する皮膚科学的有効成分」は、患者の皮膚に適用した場合、血流に入り、治療効果を示す化学物質および生化学物質に関する。用語「経皮作用する皮膚科学的有効成分」および「全身作用する皮膚科学的有効成分」は、多くの医薬有効成分が経皮活性および全身活性を有しているため、互いに相反するものでないことが意図されている。医薬有効成分はまた、用語「経粘膜作用する粘膜の有効成分」および「全身作用する粘膜の有効成分」が、それぞれ、上で定義された用語「経皮作用する皮膚科学的有効成分」および「全身作用する皮膚科学的有効成分」に対応する意味を有する場合、「経粘膜作用する粘膜の有効成分」または「全身作用する粘膜の有効成分」であってもよい。
医薬有効成分は、好ましくは、中性または塩の形で製剤される。医薬的に許容される塩は、遊離アミノ基またはカルボキシル基により製剤されたものを含むが、これらに限らない。酸付加塩の適当な製造方法は、HCl、HBr、H2SO4、HNO3、H3PO4などのような無機酸、および酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などのような有機酸である。カルボキシ基を有する塩を形成可能な塩基性化合物は、NaOH、KOH、NH3、Ca(OH)2、水酸化鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどを含むが、これらに限らない。
医薬的有効成分はまた、皮膚または粘膜による有効成分の透過前、透過中、または透過後に活性化され得る医薬前駆体であってもよい。
用語「医薬前駆体」は、不活性であるが、酵素、化学、または物理活性により活性形に転換され得る剤に関する。
医薬組成物は、それ自体既知の方法で製造され、そして普通は、適当な医薬的に許容される賦形剤および担体を含み得る。
用語「医薬的に許容される」は、処置された患者において、全くないかあるいはわずかに有意な刺激または毒性を生じ、生物学的活性、および有効成分の特性を破壊しないか、それと相互作用しない物質に関する。
本発明による用語「担体」は、1以上の適合可能な固体または液体充填剤、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはヒトへの投与に適したカプセル物質に関する。用語「担体」は、天然、または性質が合成である有機または無機成分に関し、ここで、該有効成分は、使用を促進するために組み合わされている。本発明の医薬組成物の有効成分は、通常、実際に所望の医薬活性を損なう相互作用が生じないようなものである。
担体は、好ましくは、石油、動物または植物由来のもの、または例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油、ひまわり油などのような合成供給源のものを含む、水または油のような滅菌済の液体である。塩溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液はまた、水性担体として用いられ得る。
賦形剤および担体の例は、アクリル系誘導体およびメタクリル酸誘導体、アルギン酸、α−オクタデンシル−ω−ヒドロキシポリ(オキシエチレン)−5−ソルビン酸のようなソルビン酸誘導体、アミノ酸およびその誘導体、特に、コリン、レシチン、およびホスファチジルコリンのようなアミン化合物、アラビアゴム、着香物質、アスコルビン酸、例えば、炭酸および重炭酸ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムのような炭酸塩、リン酸水素およびナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムのリン酸塩、カルメロースナトリウム、ジメチコン、着色剤、香味剤、緩衝剤、保存剤、増粘剤、流動化剤、ゼラチン、グルコースシロップ、モルト、コロイド状二酸化ケイ素、ハイドロメルロース、安息香酸塩、特に、安息香酸ナトリウムおよびカリウム、マクロゴール、スキムミルク粉、酸化マグネシウム、脂肪酸、およびステアリン酸およびステアリン酸塩、特にステアリン酸マグネシウムおよびカルシウム、脂肪酸エステルおよび食用脂肪酸のモノグリセリドおよびジクリセリドのような誘導体および塩、蜜ろう、黄ろう、およびモンタングリコールろうのような天然および合成ろう、塩化物、特に、塩化ナトリウム、ポリビドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、ヒマシ油、大豆油、やし油、パーム核油のような油、糖および糖誘導体、特に、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、キシロース、スクロース、デキストロース、およびセルロース、およびその誘導体のような単糖類および二糖類、セラック、スターチおよびスターチ誘導体、特に、コーンスターチ、獣脂、タルク、二酸化チタン、酒石酸、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、およびキシリトールおよびその誘導体、グリコール、エタノール、およびその混合物のような糖アルコールである。
医薬組成物はまた、好ましくは、さらに、湿潤剤、乳化剤、および/またはpH緩衝剤を含んでいてもよい。
さらなる実施態様において、医薬組成物は、さらなる吸収増強剤を含んでいてもよい。これらのさらなる吸収増強剤は、所望に応じて、組成物において等モル量の担体と取って代わってもい。かかるさらなる吸収増強剤の例は、オイカリプトール、N,N−ジエチル−m−トルアミド、ポリオキシアルキレンアルコール(例えば、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール)、N−メチル−2−ピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMA)、尿素、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどを含むが、これらに限らない(例えば、Precutaneous Pentration Enhancers, edited by Smith et al. (CRC Press, 1995)を参照)。組成物中のさらなる吸収増強剤の量は、成し遂げられるべき所望の作用に依存してもよい。
多くのタンパク質分解性酵素が、粘膜およびその周囲に存在するので、プロテアーゼ阻害剤が、ペプチドまたはタンパク質有効成分の分解を予防し、これにより生物学的利用能を増大させるために、本発明の組成物に取り込まれてもよい。プロテアーゼ阻害剤の例は、アプロチニン、ロイペプシン、ペプスタチン、α2−マクログロブリン、およびトリプシン阻害剤を含むが、これらに限らない。該阻害剤は、単独でまたは組み合わせて用いられ得る。
本発明の医薬組成物は、1以上のコーティングをほどこされてもよい。固体経口投薬剤形は、好ましくは、胃抵抗性コーティングをほどこされるか、あるいは胃抵抗性硬化軟ゼラチンカプセル剤の形である。
投薬剤形は、胃腸の特定部分で医薬的に活性な物質を放出し、これにより部位指定の供給を増強する材料を含んでいてもよい。
本明細書で記載される組成物はまた、放出の遅延した製剤として投与されてもよい(すなわち、投与後、医薬の放出の遅延をもたらす製剤)。放出の遅延したかかる製剤は、知られている。
本発明による医薬組成物は、例えば、局所、経口、経腸、頭蓋内、舌下、経鼻、口腔、経膣、眼、または尿道投与を含む、任意の経皮または経粘膜経路による投与のために製剤されてもよい。特に好ましいのは、経腸であり、なおより好ましいのは、経口投薬剤形、特に、経口剤形の胃抵抗性製剤および放出遅延製剤である。しかしながら、座剤のような直腸用医薬剤形、座剤のような経膣用医薬剤形、および鼻用スプレー剤のような鼻に適用可能な製剤も可能である。
好ましい実施態様において、医薬組成物は、物質、特に医薬有効成分(吸収増強剤と結合している)を皮膚に長期間にわたり送達させるためにパッチ混合物に取り込まれる。
医薬製剤は、錠剤、座剤、トローチ、被覆錠剤、ドロップ、液剤、懸濁剤、乳剤(好ましくは、水中油型または油中水型乳剤)、軟膏、ゲル剤、ペースト、フィルム、ジュース、シロップ、鼻用スプレー剤、膣用座剤または錠剤、カプセル剤、顆粒剤、小丸薬、微小錠剤、粉剤、直腸用座剤、直腸用カプセル剤、エアゾール、シャンプー、またはスプレーである。特に好ましいのは、所望に応じて胃抵抗性コーティングを有する硬または軟ゼラチンカプセル剤であり、さらに特に好ましいのは、硬化軟ゼラチンカプセル剤である。
本発明による医薬組成物は、胃または腸粘膜に投与するための経口製剤のような間接的用量であってもよい。しかしながら、組成物はまた、粘膜に直接投与されてもよい。
本発明による医薬組成物は、好ましくは、局所または経口投与され得る医薬である。
本発明による用語「患者」は、ヒト、非ヒト霊長類、または別の動物、特に、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ニワトリのようなトリ、またはマウスおよびラットの様なげっ歯類のような哺乳類を意味する。特に好ましい実施態様において、患者はヒトである。
本発明の医薬組成物は、好ましくは、滅菌済であり、かつ有効量で投与される。「有効量」は、単独またはさらなる用量と組み合わせて、所望の応答または所望の生理的作用を成し遂げる量に関する。特定の疾患または特定の状態の処置の場合、所望の応答は、疾患の進行の阻害に関する。これは、疾患の進行の遅延、および特に疾患の進行の停止を含む。疾患または状態の処置に対する所望の応答はまた、疾患または状態の発症を遅延または予防するものである。
有効量は、特定の医薬有効成分の活性およびその治療上有効用量により選択され得る。しかしながら、任意の活性物質が100%、すなわち、投与された用量が完全に吸収されるわけではないため、所望の用量より多少多い量を取り込むのが好ましい。例えば、生理的に活性なペプチドまたはタンパク質は、胃腸管の消化液による分解されるか、または胃腸管の酵素により加水分解される。
医薬組成物の有効量は、処置されるべき患者の状態、疾患の重症度、年齢、生理状態、身長、および体重を含む個々の患者のパラメーター、処置の持続時間、同時治療の性質(もし存在するなら)、特定の投与経路、所望の投与期間、および類似の因子のような因子に依存するだろう。
患者の応答が最初の用量で不十分である場合、より高用量(または、異なるより局所投与経路により成し遂げられる、効果的な高用量)を利用することが可能である
高用量は代わりに、製剤中の吸収増強剤の量、物質(特に、医薬有効成分)の濃度、および/またはさらなる吸収増強剤の量の増大、適用される製剤の範囲の拡大、またはその組合せにより成し遂げられることが可能である。
本発明は、以下の実施例および図面において詳細に記載されるが、これは専ら例示のためであり、制限として理解されるべきではない。本発明の範囲および添付の請求の範囲を超えることのない、さらなる実施態様は、明細書および実施例に基づき当業者に理解される。
実施例
実施例1:タンパク質発現構築物の調製および使用
a.クローニング
5’または3’末端で配列P−L−S−S−I−F−S−R−I−G−D−P(TLM)と融合したIFN−βをコードするpQe8発現ベクターを調製した。TLMを含まない対応する構築物を対照実験のため調製した。この構築物の同一性を、配列決定により確かめた。
huIFN−β特異的cDNAを含む構築物pCI−eIFNb.mvから出発し、PCRを用いて、NまたはC末端にTLM配列を含む、IFN−β特異的融合タンパク質をコードするcDNAを増幅した。フォワードプライマーは、BamH I特異的切断部位を5’末端に、およびHind III特異的切断部位を3’末端に有していた。具体的には、次のプライマー:
を用いた。
D/Bプライマーの組合せにより、5’末端にTLMをコードする配列を含むcDNAを増幅した。C/Aプライマーの組合せにより、3’末端にTLM特異的配列を含む配列を増幅した。対照実験として、5’または3’特異的部分を含まないIFN−β特異的cDNAを、C/Bプライマーの組合せにより増幅した。
それぞれのPCR産物を、PCR精製スピンカラムを用いて製造元(Quiagen)の指示に従い精製し、BamH I/Hind IIIで切断し、再度精製した。このようにして切断したフラグメントを、BamH I/Hind IIIで切断して脱リン酸化した細菌発現ベクターpQe8(Quiagen)にライゲーションした。ベクターpQe8は、全IFN−β特異的タンパク質をヘキサHis融合タンパク質として生成するよう、アミノ末端のヘキサHisタグをコードする配列を含む。
ライゲーション混合物を用いて、コンピテント細胞(DH5α)を形質転換した。プラスミドpQe8にコード化したAmp耐性により、Amp含有培地での選択を可能とした。
プラスミドDNAをこの条件下で増殖したコロニーから単離し、BamH I/Hind III切断により分析した。次に、陽性コロニーを配列決定により特徴付けた。
b.発現
IFN−β特異的融合タンパク質の生成を次のように誘導した。Amp含有LB培地200ml(CAmp=100mg/l)を、定常まで増殖させた前培養液100mlと共に播種し、37℃にてOD600が0.8となるまで拡大させた。遺伝子発現を、IPTGを最終濃度1mMとなるよう添加することで導入した(pQe8に挿入された遺伝子の発現は、lacリプレッサーの制御下で生じる)。導入開始の2〜3時間後に回収を行った。
実施例2:タンパク質の単離
PBSで2回洗浄した細菌ペレットを、50mM NaH2PO4/300mM NaCl/8mM イミダゾール、pH8.0に再懸濁し(自然精製)、そして細菌を超音波で破壊した。未破壊細菌および細菌の有機堆積物を、遠心分離により沈殿させた。上清を、50mM NaH2PO4/300mM NaCl/8mM イミダゾール、pH8.0で平衡化したNi−NTA−アガロースカラムに添加した(Ni−NTA−アガロースにより、ヘキサHis標識タンパク質を、アフィニティークロマトグラフィーにより精製可能とする)。カラムを流速1ml/分でローディングした。
カラムへ添加し、洗浄して未結合のタンパク質を取り除いた後、50mM NaH2PO4/300mM NaCl/20mM イミダゾール、pH8.0を含むバッファーを用いて、弱く結合したタンパク質を溶出した。特異的に結合したヘキサHis標識IFN−β融合タンパク質を、50mM NaH2PO4/300mM NaCl/20mM イミダゾール、pH8.0を含むバッファーと50mM NaH2PO4/300mM NaCl/250mM イミダゾール、pH8.0を含むバッファーとの直線状の勾配により溶出した。溶出したタンパク質を、215、260、および280nmでの吸収率の同時検出により検出した。溶出物を集め、1mlの分画とした。
AEKTA探査機またはAEKTA精製システムを使用して単離を行った。
さらなる精製のため、2、3ケースで逆相クロマトグラフィーを、RP18カラムを用いて行った。この目的のため、Ni−NTAカラム由来の溶出物を、RPカラムのランニングバッファー(H2O中の0.1% TFA)により1:5で希釈し、カラムから溶出した。H2O中の0.1/TFAと80% アセトニトリル/H2Oとの直線状の勾配により、溶出を行った。
タンパク質の分析:
このようにして単離したタンパク質の純度を、Laemmli SDS−PAGEにより分析した。ゲルをクーマシー染色または銀染色(Heukeshoven/Dernick法)の対象とした。
IFN−βを有する検出したタンパク質バンド(IFN−β−1b)の同一性を、ウエスタンブロッティングにより示した。タンパク質を、半乾燥方法(Kyshe/Andersen)によるエレクトロブロッティングにより、PVDF膜に移した。移したIFN−β特異的タンパク質を、IFN−β特異的ヒツジ血清を用いて標識した。ECL(Amersham)を用いたペルオキシダーゼ結合2次抗体による蛍光光度分析により、検出を行った。
このようにして、95%より高い純度のIFN−β−1bおよびTLM−IFN−β−1bを単離できた。生成物は、1Lあたり約400〜700μgであった。
95%より高い純度のTLM−IFN−β−1b、逆相クロマトグラフィーにより単離することができた。
実施例3:細胞浸透性の証明
a.細胞分画
ヒト肝臓癌細胞株huH7を、0.5μM IFN−1b特異的タンパク質の存在下、培地中で30分間インキュベートした。培地を除去した後、細胞をNa2CO3/NaHCO3バッファー、pH9.5で5秒間、次に、PBSで洗浄して、表面に結合したIFNを除去した。細胞をこすりとった後、これを穏やかな条件下でポッター型ホモジナイザーを用いて溶解した。未溶解の細胞および細胞核を、エッペンドルフ遠心機にて13000rpmにて30秒間遠心分離して除去した後、溶解物をこれとは別の遠心分離の対象とした。100000rpm(430000g)にて18分間超遠心することにより、細胞質分画とミクロソーム分画を単離することが可能であった。このようにして単離した細胞分画を、SDS−PAGEの対象とし、次に、IFN−β特異的血清を用いたウエスタンブロッティングにより分析した。
細胞成分分画のウエスタンブロッティング分析により、TLM−IFN−β−1bのみが細胞質で検出可能であるが、野生型IFNはそうでないことを示した。細胞外に加えられたTLM−IFN−β−1bの細胞質での検出により、細胞浸透性を確かめ、取込がエンドソーム関連経路により行われたという事実を強く示した。
b.免疫蛍光顕微鏡観察
ヒト肝臓癌細胞株huH7およびCOS細胞(ハムスター)を、0.5μM IFN−β−1b特異的タンパク質の存在下、培地中にて30分間インキュベートした。培地を除去した後、細胞をNa2CO3/NaHCO3バッファー、pH9.5で5秒間、次に、PBSにて洗浄することにより、表面に結合したIFNを除去した。洗浄した細胞を氷冷エタノール/DAPI(細胞核を染色するため)中で10分間固定した。次に、分画をPBST中で30分間再び水和した。10% BSAを用いて、非特異的結合部位をブロックした。huIFN−β特異的血清を用いて、IFN−βを標識した。Cy3結合2次抗体を検出用に用いた。ライカの蛍光顕微鏡を評価に用いた。
免疫蛍光顕微鏡観察により、非常に弱いバックグランドシグナルのみを生じる野生型IFNとは異なり、TLM−IFN−β−1bは、huH7およびCOS細胞において容易に検出可能であることを示した。これは事実、全ての細胞において検出可能である。TLM−IFN−β−1bは、細胞中に均一に分布し、個々の細胞成分において非特異的蓄積は観察されない。
実施例44:摂食試験による経口利用性の証明
B6マウスを一晩絶食にした。次の日の朝、IFN−β−1b特異的タンパク質溶液を含浸した計量固形飼料を動物に与えた。摂食試験終了後、固形飼料の計量により、評価すべきIFNの経口摂取の定量が可能であった。CO2で動物を犠牲にし、心穿刺により血液をEDTA血液として取り出した。細胞成分の除去後、ウエスタンブロッティングおよびhuIFN−β特異的ELISAにより血清を分析した。
ELISA値を定量IFN−β−1b摂取(飼料の量)について調整し、c/o値と関連付けた。c/o値を1に設定した。
TLM−IFN−β−1bの飼料を与えた動物(動物1〜4)および野生型IFNを与えた動物(動物5〜7)について、次の値を見出した。
この結果は、経口投与したTLM−IFN−β−1bが血清において明らかに検出可能であるが、経口投与した野生型IFNは少量のみ検出されたことを示している。
実施例5:真核生物のIFN−β−TLM特異的発現ベクターを用いた、IFN−β−1a−TLMの調製および使用
a)クローニング
ヒトIFN−β(huIFN−β)特異的cDNAを含む構築物pCI−eIFNb.mvから出発し、PCRを用いて、IFN−β−特異的融合タンパク質をコードするcDNAを増幅した。このcDNAは、細胞浸透性を与えるTLMコード配列を、C末端にてオープンリーディングフレームで含む、完全なIFN−β特異的融合タンパク質をコードする。それぞれの場合で単位複製配列が5’末端および3’末端にBamH I特異的切断部位を有するように、プライマーを設計した。
PCR産物を、PCR精製スピンカラムを用いて製造元(Quiagen)の指示に従い精製し、BamH Iで切断し、再度精製した。このようにして切断したフラグメントを、BamH Iで切断して脱リン酸化した真核細胞発現ベクターpCDNA.3.1(Invitrogen)にライゲーションした。ライゲーション混合物を用いて、コンピテント細胞(DH5α)を形質転換した。プラスミドにコード化したAmp耐性により、Amp含有培地での選択が可能であった。プラスミドDNAを、この条件下で増殖したクローンから単離し、まずBamH I切断により分析した。次に、陽性クローンを配列決定により特徴付け、その向きをチェックした。
b.発現および精製
IFN−βを天然タンパク質(IFN−β−1a)のようにグリコシル化した、IFN−β特異的タンパク質の生成を、次のように行った。
70%密集したhuH7細胞の30個のビン(T175)を、pCIFNbTLM 6μgでリポフェクチンを用いて一過性にトランスフェクションした。製造元(DOTAP、Roche)の指示に従い、トランスフェクションを行った。培地を交換し48時間後、培地を回収し、産生されたIFN−β−1a−TLMを、硫安分画(20% 飽和硫安、次に70% 飽和硫安)により濃縮した。沈殿をPBSに再懸濁し、過剰の硫安を除去するために12から18時間、PBSで透析した。次に、これを校正したSuperdex75カラムを用いて分取ゲル濾過した。huIFN−β特異的抗血清を用いたウエスタンブロット分析によりIFN−β陽性と同定した分画を合併し、さらにMonoQイオン交換カラムで精製した。20から1000mM NaClの直線状勾配により溶出を行い、40mM Tris、pH7.5および2% エタノール中で緩衝化した。ウエスタンブロット分析、銀染色SDSゲル、および分析的HPLCにより見出されたため、このようにして、90%より高い純度のIFN−β−1a−TLMを単離することが可能であった。
機能性の証明
抗ウイルス活性の測定による証明。この目的のため、HepG2.2.15細胞(安定的にHBVを産生する細胞株)を、種々の量のIFN−β−1a−TLMの存在下でインキュベートした。Taqman PCRにより、係数1000によるウイルス産物における回帰分析を観察することが可能であった(実施例8も参照)。
特異的RIAによる2’,5’−オリゴアデニル合成の導入の測定による証明。このアッセイは、IFN−βがウイルスに感染していない細胞と結合でき、ゆえに、とりわけ2’,5’−オリゴアデニルシンターゼを誘導し、これによりウイルスRNAの分解を生じさせるという事実に基づく(例えば、Takane et al., Jpn. J. Pharmacol. 90, 304-312, 2002参照)。
実施例6:摂食試験によるIFN−β−1a−TLMの経口利用性の証明
B6マウスを18時間絶食にした。試験開始時に、動物に実施例5のIFN−β−1a−TLM(TLM)104Uを含有させた、トーストしたパンの計量片(約3.5から4.5g)を与えた。負の対照として用いた動物は、無処置の対象であるか(N1)、あるいは200μM PreS1PreS2溶液 1mlを与える(負の対照 N2)か、または市販の組換えIFN−β−1a 104Uを与えた(負の対照 N3)。動物に4または8時間餌を与えた。全ての処置プロトコール(TLM−1、TLM−2、N1−1、N1−2など)について、2回別々に実験した。動物をCO2で犠牲にし、心穿刺によりEDTA血液として血液を取り出した。細胞成分を除去した後、血清を市販のhuIFN−β特異的ELISAを用いて分析した。種々の量の市販の組換えIFN−β−1a(krIFN−β−1a)を、校正プロットについて測定した。次の表1から3は、得られた測定値を表す。
表2:IFN−β−1a−TLMの経口投与後の測定値、平均値、および計算量
#餌を食べなかったので、平均の計算には含んでいない
*IFN−β活性についてアッセイした(実施例8参照)
表3:負の対照についての測定値、平均値、および計算量
ELISA値をそれぞれの実験で平均化し、血清中で検出した量を校正プロットを用いて計算した。図1において、血清中で検出したIFN−βの校正量(I.U.)を、棒グラフとしてプロットした。図1は、血清中のIFN−βの量が、IFN−β−1a−TLMの経口投与後、4時間および8時間、直接的に上昇したことを示し、それぞれ、4時間後の量は8時間後の量の約2倍であった。これとは対照的に、血清中のIFN−βの量の有意な増大は、負の対照において検出できなかった。結論として、結果は、明確な増大が、TLMをIFN−βと結合させることにより、粘膜を介したIFN−βの吸収において可能であることを示した。
実施例7:IFN−β−1a−TLMの皮膚利用能の証明
B6マウスを、皮膚を損傷しないように注意深く剃り、外部に浸透できず、かつの実施例5の4および8時間の、104U IFN−β−1a−TLM(TLM)を含浸した薄い包帯(2×6cm、2層)で管理した。無処置(N1)の対象動物、および同一条件下で市販の組換えIFN−β−1aに曝露した動物(N2)を、対照として用いた。動物をCO2で犠牲にし、心穿刺によりETDA血液として血液を採取した。細胞成分を除去した後、市販のhuIFN−β特異的ELISAを用いて、血清を分析した。種々の量の市販の組換えIFN−β−1a(krIFN−β−1a)を、校正プロットについて特定した。以下の表4および表5は、得られた測定値を示す(2測定値の平均値)。
表5:IFN−β−1a−TLM(TLM)の経皮投与後および対照(N1およびN2)についての測定値、平均値、および計算量
ELISA値をそれぞれの実験について平均化し、血清中で検出した量を、校正プロットを用いて計算した。図2において、血清中で検出されたIFN−βの計算量(I.U.)を、棒グラフにプロットした。図2は、有意な量のIFN−βは対照の血清中で検出できなかったが、増大した量のIFN−βが、IFN−β−1a−TLMの皮膚投与後、4時間および8時間それぞれで血清中に存在することを示す。従って、結果は、皮膚によるIFN−βの吸収は、TLMをIFN−βと結合させることで増大することを示す。意外なことに、試験期間中、血清中で検出可能なIFN−βの量は、係数2により増大することが分かった。このような皮下投与は典型的には貯留作用を示し、ゆえに、侵襲的投与を必要とすることなく、本発明の方法によっても達成される。
実施例8:経口摂取したIFN−β−1a−TLMの機能性の証明
HBV産生細胞株HepG2.2.15を用いて、機能性を上記のように調べた。細胞を24ウェルプレートに播種した。24時間後、培地を交換し、実施例6、表2においてアスタリスクにより同定されるマウス血清(IFN−β血清)で1:1に希釈した培地で置き換えた。無処置の細胞(N1)および無処置動物由来のマウス血清(N2)が対照となる。この方法を、24時間後、さらに24時間後に繰り返し、上清中のウイルス量をTaqman PCR(Stoeckl et al., 2003)により定量した。表6は、2回の結果の平均値として得られた値(HBVゲノム/ml)を示す。
結果は、無処置の動物が非常にわずかの抗ウイルス作用を示したにもかかわらず、ウイルスの繁殖が、IFN−β−1a−TLMで処置した実施例6の動物から得た血清に対して99.5%減少したことを示す。
実施例9:摂食試験によるPreS1PreS2の経口利用能の証明
B6マウス(9匹の動物)を、18時間絶食にした。試験開始時、200μM PreS1PreS2溶液 1mlを含浸させた、トーストしたパンの計量片(約3.5から4.5g)を動物に与えた。PreS1PreS2タンパク質は、C末端にHBV−TLMをもともと含む。動物(5匹の動物)は、負の対照として無処置のままであった。動物に8時間餌を与えた。動物をCO2で犠牲にし、心穿刺によりEDTA血液として血液を採取した。細胞成分を除去した後、PreS1PreS2特異的血清を用いてウエスタンブロット分析により血清を分析した。ウエスタンブロットは、PreS1PreS2タンパク質が9匹の動物中9の血清で検出できたが、この条件下で対照において検出できなかったことを示す。
さらに一連の実験により、PreS1PreS2タンパク質の経口摂取が、PreS1PreS2特異的抗体の産生を導き得ることまで調べた。この目的のため、動物を上記のように維持し、PreS1PreS2タンパク質を4週間にわたり14日間与えた。最初の餌の計6週間後、動物を上記のように犠牲にし、血清を得た。ブロットを調製し、シトクロムC(200ng)を1レーン、PreS1PreS2タンパク質(20ng)を1レーン、そしてIgG重鎖(マーカー)を1レーンにロードした。これらのブロットを、得られた血清と共にインキュベートした。結合した抗体を、ペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG血清2次抗体を用いて検出した。合計として、PreS1PreS2特異的抗体は、9血清のうち9つで検出できた。対照(シトクロムC)は、抗体の特異性によるどの場合においても、全くサインを示さなかった。図3は、一連の試験の2つの典型的なウエスタンブロットを示す(レーン1:シトクロムC;レーン2:PreS1PreS2;レーン3:IgG重鎖)。
実施例10:PreS1PreS2の皮膚利用能の証明
B6マウス(9匹の動物)を、皮膚を損傷しないように注意深く剃り、外部に浸透できず、かつ8時間、200μM PreS1PreS2溶液 1mlを含浸した薄い包帯(2×6cm、2層)で管理した。無処置の動物(4匹の動物)を対照とした。動物をCO2で犠牲にし、心穿刺によりEDTA血液として血液を採取した。細胞成分を除去した後、PreS1PreS2特異的血清を用いたウエスタンブロットにより、血清を分析した。
ウエスタンブロットにより、PreS1PreS2タンパク質が、9匹中8匹の血清で検出できたが、この条件下で対照では検出できなかったことを示した。図4は、一連の試験のウエスタンブロットの典型的な例を示す(レーン1:正の対照;レーン2から5:無処置動物由来の血清;レーン6から9:PreS1PreS2を皮膚投与した動物由来の血清)。
図1は、IFN−β−1a−TLM(TLM−1およびTLM−2)の経口投与の4時間および8時間後に、血清中で検出されたIFN−βの量を示す棒グラフである。
図2は、IFN−β−1a−TLM(TLM)の皮膚投与の4時間および8時間後に、血清中で検出されたIFN−βの量を示す棒グラフである。
図3は、PreS1PreS2の経口投与後のPreS1PreS2特異的抗体の検出についてのウエスタンブロット分析を示す。
図4は、PreS1PreS2の皮膚投与後の血清中のPreS1PreS2の検出についてのウエスタンブロット分析を示す。