これらの概念が、核酸をテンプレートとする低分子の合成を可能にするためにまとめられた(例えば、GartnerおよびLiu(2001)J.AM.CHEM.Soc.123:6961−6963を参照のこと)が、目的の分子のより効率的な合成、選択、増幅、および進化を可能にするための、これらの核心技術の改善に関する継続的な必要性が、まだある。
(発明の要旨)
本発明は、目的の分子の、テンプレートに指向する合成、選択、増幅、および進化の範囲を拡張する種々の方法および組成物を提供する。核酸をテンプレートとする合成の間、核酸テンプレート内にコードされる情報は、2つ以上の反応物を、反応の近傍内に集めるために使用される。これらの方法は、例えば、従来の組み合わせ化学(combinational chemistry)を用いて作製することがこれまで可能でなかった低分子およびポリマーライブラリの作製を可能にする。
1つの局面において、本発明は、「オメガ」もしくは「Ω」型構造を有するテンプレートを用いて、核酸をテンプレートとする合成を行う方法を提供する。この型のテンプレートは、距離依存性の核酸をテンプレートとする反応が、その結合する反応単位から遠く離れた塩基によってコードされることを可能にする。本方法は、(i)コドンを含有する第一オリゴヌクレオチドに結合する第一反応単位を含むテンプレート、および(ii)このコドンにアニーリングし得るアンチコドンを含有する第二オリゴヌクレオチドに結合する第二反応単位を含む移動単位、を提供する工程を包含する。このコドンおよび/もしくはアンチコドンは、互いに間隙を介する第一および第二領域を含む。次いで、このオリゴヌクレオチドは、互いにアニーリングされて、この反応単位を反応の近傍内に集める。これらの間隙を介する領域を有するオリゴヌクレオチドが互いにアニールする場合、コドン(もしくは、アンチコドン)は、対応するアンチコドン(もしくはコドン)にアニーリングしないオリゴヌクレオチドのループを形成する。次いで、共有結合を形成する反応がこの反応単位の間に引き起こされて、反応産物を生成する。
1つの実施形態において、少なくとも1つの反応単位が、その対応するオリゴヌクレオチドの末端領域の近くに結合される。別の実施形態において、コドンもしくはアンチコドンは、その対応する反応単位から1塩基よりも離れて(例えば、10塩基、20塩基、30塩基もしくはそれより離れて)配置される。第一の間隙を介する領域は、代表的に、その対応するオリゴヌクレオチドの末端の近くに直接配置される。この間隙を介する領域は、好ましくは、例えば、3、4、もしくは5ヌクレオチドを含むが、他の実施形態(例えば、5ヌクレオチドより多い)もまた想定される。第二領域は、例えば、その対応する反応単位から少なくとも20塩基、もしくは少なくとも30塩基離れて配置され得る。より特別には、この反応単位に最も近いこの第二領域の末端は、例えば、その反応単位に結合するオリゴヌクレオチドの末端から、少なくとも10塩基、20塩基、30塩基もしくはそれより離れて配置され得る。テンプレートは、付加的な(例えば、2、3、4もしくは4より多い)コドンを含み、この場合、対応する数の移動単位がテンプレートにアニーリングし得、必要に応じて、複数工程の、もしくは代替的な合成を可能にする。
別の局面において、本発明は、「T」型構造を有するテンプレートを用いて核酸をテンプレートとする合成を行う方法を提供する。このT構造は、2つの核酸をテンプレートとする反応が、単一の工程で単一のテンプレート上で生じることを可能にする。本方法は、(i)コドンを含有する第一オリゴヌクレオチドに結合する第一反応単位(例えば、骨格分子)を含むテンプレート、および(ii)このコドンにアニーリングし得るアンチコドンを有する第二オリゴヌクレオチドに結合する第二反応単位を含む移動単位、を提供する工程を包含する。第一反応単位は、好ましくは、テンプレートの第一オリゴヌクレオチドの近位末端および遠位末端の中間の付加部位に共有結合される。合成の間、このテンプレートのオリゴヌクレオチドおよび移動単位は、互いにアニーリングされて、これら反応単位を反応の近傍内に集め、そしてこれらの反応単位の間に共有結合形成を引き起こす。
T型構造の1つの実施形態において、テンプレートはまた、第二の、異なる移動単位の第二の、異なるアンチコドン配列にアニーリングし得る第二の、異なるコドンを含む。この実施形態において、第一のコドンは、この結合部位に対して近位に配置され、そして第二のコドン(存在する場合)は、この結合部位に対して遠位に配置される。第二のコドンにアニーリングし得る第二の、異なるアンチコドン配列を有する第三のオリゴヌクレオチドに結合する第三の反応単位を含有する第二の移動単位が提供される場合、この第二の移動単位は、第二のコドン位置でテンプレートと結合し得る。したがって、第一および第二の移動単位がテンプレートと結合される場合、第一の移動単位の第一のアンチコドンは、テンプレートの第一のコドンにアニーリングし、そして第二の移動単位の第二のアンチコドンは、テンプレートの第二のコドンにアニーリングする。このシステムは、単一の工程において単一のテンプレート上で、2つの反応が同時に、もしくは連続的に生じることを可能にする。
別の局面において、本発明は、テンプレートによる合成において、反応物間の反応選択性を増加させるための一連の方法を提供する。
1つのアプローチにおいて、本方法は、テンプレートおよび少なくとも2つの移動単位を提供する工程を包含する。このテンプレートは、所定のコドン配列を含有する第一のオリゴヌクレオチドに結合する第一の反応単位を含有する。この第一の反応単位は、このコドン配列にアニーリングし得るアンチコドン配列を含有する第二のオリゴヌクレオチドに結合する第二の反応単位を含有する。第二の移動単位は、第二の反応単位と異なる第三の反応単位を含有する。しかし、この第三の反応単位は、コドン配列にアニーリングし得るアンチコドン配列を欠く第三のオリゴヌクレオチドに結合する。テンプレートおよび移動単位は、第一のオリゴヌクレオチドへの第二のオリゴヌクレオチドのアニーリングを可能にする条件下で混合され、それによって、第三の反応単位と第一の反応単位との間の共有結合形成に対して第二の反応単位と第一の反応単位との間の共有結合形成を増強する。
この方法は、第二および第三の反応単位が第一の反応単位とそれぞれ独立に反応し得る場合、特に役に立ち得る。さらに、本方法はまた、第二および第三の反応単位が互いに反応し得る場合、例えば、互いに改変もしくは不活性化する場合に、役に立ち得る。したがって、この型の方法は、一連の別の互換性のない反応が、同じ溶液中で生じることを可能にする(例えば、第二の反応単位と第三の反応単位との間の反応が、第二の反応単位と第一の反応単位との間の反応と互換性のない場合)。本方法は、第一の反応単位と第三の反応単位との間の共有結合形成に対して少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、もしくは少なくとも50倍、第一の反応単位と第二の反応単位との間の共有結合形成を増強し得る。集合的に、これらの利点は、ワンポット系列化された(one−pot ordered)複数工程での合成を可能にする。ここで、反応の順序は、テンプレートオリゴヌクレオチドの配列によってプログラムされる。したがって、少なくとも2、3、4、5、6、もしくはそれより多数の反応の順序は、これらの反応が、従来のテンプレートによらない化学反応を用いることによって互いに干渉する場合でさえも、単一の溶液中で1つの系列化された様式で生じ得る。
1つの実施形態において、テンプレート、第一の移動単位、および/もしくは第二の移動単位は、捕獲可能部分、例えば、ビオチン、アビジン、もしくはストレプトアビジンに結合する。捕獲可能部分が存在する場合、本方法は、反応混合物から反応産物を濃縮する方法として、この捕獲可能部分を捕獲する工程を包含し得る。
別のアプローチにおいて、本方法は、(i)第一のコドン配列および第二のコドン配列を有する第一のオリゴヌクレオチドを含有するテンプレート、(ii)第一の移動単位、(iii)第二の移動単位、および(iv)第三の移動単位、を提供する工程を包含する。この第一の移動単位は、第一のコドン配列にアニーリングし得る第一のアンチコドン配列を含有する第二のオリゴヌクレオチドに結合する第一の反応単位を含有する。第二の移動単位は、第二のコドン配列にアニーリングし得る第二のアンチコドン配列を含有する第三のオリゴヌクレオチドに結合する第二の反応単位を含有する。第三の移動単位は、第一もしくは第二のコドン配列にアニーリングし得るアンチコドン配列を欠く第四のオリゴヌクレオチド配列に結合する第三の反応単位を含有する。テンプレート、第一の移動単位、第二の移動単位、および第三の移動単位は、次いで、(i)第一のコドン配列への第一のアンチコドン配列のアニーリング、および(ii)第二のコドン配列への第二のアンチコドン配列のアニーリングを可能にし、それによって、第三の反応単位と第一の反応単位との間の共有結合形成、および/もしくは第三の反応単位と第二の反応単位との間の共有結合形成を増強する条件下で混合される。この型の反応は、核酸をテンプレートとする合成による非天然ポリマーの生成に、特に有用であり得る。
1つの実施形態において、テンプレートは、捕獲可能部分、例えば、ビオチン、アビジン、もしくはストレプトアビジンに結合する。この捕獲可能部分はまた、第一および第二の反応単位がテンプレートにアニーリングされる場合、この第一の反応単位と第二の反応単位との間の反応から得られた反応産物であり得る。捕獲可能部分が存在する場合、本方法は、反応混合物から反応産物を濃縮する方法として、この捕獲可能部分を捕獲する工程を包含し得る。
したがって、この型の反応はまた、第三の反応単位が第一および/もしくは第二の反応単位と反応し得る場合にも役に立つ。言いかえると、第一の反応単位と第三の反応単位との間の反応、および/もしくは第二の反応単位と第三の反応単位との間の反応は、第一の反応単位と第二の反応単位との間の反応と非互換性であり得る。本方法は、第一の反応単位と第三の反応単位との間の共有結合形成に対して少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、もしくは少なくとも50倍、第一の反応単位と第二の反応単位との間の共有結合形成を増強し得る。
別の局面において、本発明は、立体選択的な、核酸をテンプレートとする合成を行うための一連の方法を提供する。この合成の立体選択性は、特定のテンプレート、特定の移動単位、特定の反応単位、特定のハイブリダイズされたテンプレートおよび移動単位、特定の立体選択的触媒、または上記の組み合わせの選択の結果として生じ得る。結果として得られた産物は、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%、立体化学的に純粋であり得る。
一般的に、本方法は、(i)必要に応じて反応単位に結合する第一のオリゴヌクレオチドを含有するテンプレート、および(ii)それぞれが反応単位に結合する第二のオリゴヌクレオチドを含有する、1つ以上の移動単位、を提供する工程を包含する。第一のオリゴヌクレオチドと第二のオリゴヌクレオチドとのアニーリングは、少なくとも2つの反応単位を反応の近傍へと導き、そして反応させて、反応産物を生成する。ここで、この反応産物はキラル中心を含み、そしてそのキラル中心において、少なくとも60%、より好ましくは、少なくとも80%、そしてより好ましくは、少なくとも95%、立体化学的に純粋である。この方法は、1つの反応単位がテンプレートに結合し、そして他の反応単位が移動単位に結合する場合に達成され得ると予期される。また、この方法が、テンプレートが反応単位を提供しない場合、そして2つの移動単位が、それらがテンプレートにアニーリングする場合に反応の近傍内へと入って反応産物を生成する2つの反応単位を提供する場合に、達成され得ることが予期される。
1つのアプローチにおいて、本方法は、少なくとも2つのテンプレート、および少なくとも1つの移動単位を提供する工程を包含する。1つのテンプレートは、第一の立体化学構造を含む第一の反応単位に結合する第一のオリゴヌクレオチドを含有し、他のテンプレートは、第二の、異なる立体化学構造を有する別の第一の反応単位に結合する別の第一のオリゴヌクレオチドを含有する。この移動単位は、テンプレートの第一のオリゴヌクレオチドの配列に相補的な配列を含む第二のオリゴヌクレオチドに結合する第二の反応単位を含有する。次いで、移動単位の第二の反応単位が第一の立体化学構造の第一の反応単位かもしくは第二の立体化学構造の第一の反応単位のいずれかに優先的に反応して、反応産物を生成することを可能にする条件下で、第一のオリゴヌクレオチドと第二のオリゴヌクレオチドとがアニーリングされる。
結果として得られた反応産物は、特定の立体化学構造を有し得る。1つの実施形態において、立体化学構造、もしくはテンプレートの第一のオリゴヌクレオチドの高分子構造は、第一の反応単位の中のどれが第二の反応単位と反応するかを決定する。
第二のアプローチにおいて、本方法は、少なくとも1つのテンプレート、および少なくとも2つの移動単位を提供する工程を包含する。テンプレートは、第一の反応単位に結合する第一のオリゴヌクレオチドを含有する。1つの移動単位は、第一の立体化学構造を有する第二の反応単位に結合する第二のオリゴヌクレオチドを含有し、他の移動単位は、第二の、異なる立体化学構造を有する第二の反応単位に結合する別の第二のオリゴヌクレオチドを含有する。第二のオリゴヌクレオチドの配列は、第一のオリゴヌクレオチドの配列に相補的である。次いで、テンプレートの第一の反応単位が第一の立体化学構造の第二の反応単位かもしくは第二の立体化学構造を有する第二の反応単位のいずれかに優先的に反応して、反応産物を生成することを可能にする条件下で、第一のオリゴヌクレオチドと第二のオリゴヌクレオチドとがアニーリングされる。
結果として得られた反応産物は、特定の立体化学構造を有し得る。1つの実施形態において、立体化学構造、もしくは第二のオリゴヌクレオチドの高分子構造は、第二の反応単位の中のどれが第一の反応単位と反応するかを決定する。
第三のアプローチにおいて、本方法は、少なくとも1つのテンプレート、および少なくとも2つの移動単位を提供する工程を包含する。ここで、移動単位の1つ、もしくは必要に応じて両方は、一対の反応単位(この対の1つの反応単位は、第一の立体化学構造を有し、そしてこの対の他の反応単位は、第二の、異なる立体化学構造を有する)を含む。テンプレートは、第一のコドン配列および第二のコドン配列を含む第一の反応単位を含有する。移動単位の第一の対の1つの移動単位は、第二のオリゴヌクレオチド(第一の立体化学構造を有する第一の反応単位に結合する第一のアンチコドン配列を有する)を含む。移動単位の第一の対の他の移動単位は、別の第二のオリゴヌクレオチド(第一の反応単位の第二の立体化学構造に結合する)を含む。第二の移動単位は、第三のオリゴヌクレオチド(第二の反応単位に結合する第二のアンチコドン配列を有する)を含む。テンプレート、移動単位の第一の対、および第二の移動単位は、アニーリングされて、移動単位の第一の対のメンバーが第二の反応単位に優先的に反応して反応産物を生成することを可能にする。結果として得られた反応産物は、特定の立体化学構造を有し得る。
1つの実施形態において、立体化学構造、もしくは第二のオリゴヌクレオチドの高分子構造は、移動単位の第一の対のメンバーの中のどれが優先的に反応して、反応産物を生成するかを決定する。
1つの実施形態において、本方法は、1つのテンプレート、および少なくとも二対の移動単位を提供する工程を包含する。テンプレートは、第一のオリゴヌクレオチドおよび第二のコドン配列を含有する。第一の対の1つの移動単位は、第一の立体化学構造を有する第一の反応単位に結合する第一のアンチコドン配列を含む第二のオリゴヌクレオチドを含有する。第一の対の別の移動単位は、第二の、異なる立体化学構造を有する第一の反応単位に結合する第一のアンチコドン配列を含む第二のオリゴヌクレオチドを含有する。移動単位の第二の対の1つの移動単位は、第一の立体化学構造を有する第二の反応単位に結合する第二の、異なるアンチコドン配列を有する第三のオリゴヌクレオチドを含有する。第二の対の他の移動単位は、第二の、異なる立体化学構造を有する第二の反応単位に結合する第二のアンチコドン配列を有する第三のオリゴヌクレオチドを含有する。テンプレート、移動単位の第一の対、および移動単位の第二の対は、アニーリングされて、移動単位の第一の対のメンバーが移動単位の第二の対のメンバーに優先的に反応して、反応産物を生成することを可能にする。
1つの実施形態において、立体化学構造、もしくは第二のオリゴヌクレオチドの高分子構造は、移動単位の第一の対のメンバーの中のどれが優先的に反応して反応産物を生成するかを決定する。加えて、立体化学構造もしくは第三のオリゴヌクレオチドの高分子構造は、移動単位の第二の対のメンバーの中のどれが優先的に反応して反応産物を生成するかを決定する。
別の局面において、本発明は、テンプレートによる合成反応の産物を濃縮する方法を提供する。本方法は、対応する複数のオリゴヌクレオチド(各オリゴヌクレオチドは、結合する反応産物を示すヌクレオチド配列を含む)に結合する複数の反応産物を含有する、分子の第一のライブラリを提供する工程を包含する。第一のライブラリ中の反応産物の一部分は、予め選択された部分に結合し得る。次いで、第一のライブラリは、結合部分に結合し得る反応産物がそうすることを可能にする条件下で、結合部分に曝される。未結合の反応産物は除去され、次いで、結合した反応産物は結合部分から溶出されて、結合部分に結合された反応産物に関して、第一のライブラリに対して少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも50倍に濃縮された、分子の第二のライブラリを作製する。
1つの実施形態において、結合部分、例えば標的生体分子(例えばタンパク質)は、固体支持体上に固定化される。別の実施形態において、第二のライブラリは、結合部分に結合する産物に関して、少なくとも100倍、もしくは少なくとも1,000倍濃縮される。さらに、ライブラリを結合部分に曝露する工程、未結合の反応産物を除去する工程、および結合した反応産物を溶出する工程が(例えば、一回、二回、三回、もしくはより多くの回数)繰り返され得ることが予期される。これらの工程の繰り返しは、好ましくは、結合部分に結合する反応産物に関して、少なくとも1000倍、少なくとも10,000倍、もしくは、より好ましくは、少なくとも100,000倍濃縮された、第二のライブラリを作製する。
1つの実施形態において、選択されたライブラリメンバーに結合されたオリゴヌクレオチドは、反応産物を予め選択された結合部分によって結合可能にさせた第一の反応単位を同定する、第一の配列を含む。好ましくは、このオリゴヌクレオチドはまた、反応産物を予め選択された結合部分によって結合可能にさせた第二の反応単位を同定する第二の配列を含む。選択されたライブラリメンバーに結合されたオリゴヌクレオチドをシークエンシングすることによって、どんな反応物が互いに反応して反応産物を生成したかを決定することが可能である。したがって、このアプローチを用いて、反応の過程から、選択されたライブラリメンバーの構造を推論することが可能である。
本方法は、濃縮された反応産物に結合するオリゴヌクレオチドを増幅する工程、および好ましくは、増幅されたオリゴヌクレオチドの配列を決定する工程を、さらに包含する。さらに、反応産物は、このオリゴヌクレオチドの配列内にコードされた情報を用いることによって、さらに特徴化され得る。例えば、このオリゴヌクレオチドの配列が決定され得、次いで、この配列から、どんな反応単位が反応して反応産物を生成したかを決定することが可能である。同様のアプローチを用いて、反応産物を生成する新しい化学反応の存在を同定することが可能である。
別の局面において、本発明は、新しい化学反応の存在を同定するための種々の方法を提供する。1つのアプローチは、対応する複数のオリゴヌクレオチドに(各オリゴヌクレオチドは、結合する反応産物を示すヌクレオチド配列を含む)結合する複数の反応産物を含有する、分子のライブラリを提供する工程を包含する。次いで、その対応するオリゴヌクレオチドに結合する特定の反応産物が選択され、そして特徴化される。この反応産物の特徴化、および反応して反応産物を生成した反応単位の同定に続いて、反応産物を生成するのに必要な、1つ以上の新しい化学反応を同定することが可能である。
1つの実施形態において、本方法は、反応産物の選択の後、その対応するオリゴヌクレオチドを増幅する工程を、さらに包含する。次いで、増幅されたオリゴヌクレオチドは、どんな反応単位が反応して反応産物を生成したかを同定するために、シークエンシングされ得る。オリゴヌクレオチドはまた、より多くの選択された反応産物の調製に使用するために、増幅され得る。1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、突然変異させられ得、そして、結果として得られた突然変異したオリゴヌクレオチドは、第二世代のライブラリの作製に使用され得る。
第二のアプローチは、(i)テンプレート、および(ii)第一の移動単位、を提供する工程を包含する。テンプレートは、コドンを含む第一のオリゴヌクレオチドに結合する第一の反応単位を含有する。移動単位は、このコドンにアニーリングし得るアンチコドンを含む第二のオリゴヌクレオチドに結合する第二の反応単位を含有する。オリゴヌクレオチドは、アニーリングされて、第一および第二の反応単位を反応の近傍へと導く。共有結合形成反応が反応単位の間に生じて、反応産物を生成する。次いで、反応産物が特徴化され、そして、テンプレートによってコードされた、反応して反応産物を生成した第一および第二の反応単位を同定するための情報を用いて、反応産物を生成するのに必要な新しい化学反応が同定される。本方法はまた、その特徴化の前に反応産物を選択する工程を包含する。
第三のアプローチにおいて、本発明は、少なくとも(i)テンプレート、(ii)第一の移動単位、および(iii)第二の移動単位、を提供する工程を包含する。第一の移動単位は、第一のオリゴヌクレオチドに結合する第一の反応単位を含む。第二の移動単位は、第二のオリゴヌクレオチドに結合する第二の反応単位を含む。テンプレートは、第一および第二のオリゴヌクレオチドにアニーリングし得る配列を含む。本方法の間、このオリゴヌクレオチドはテンプレートにアニーリングされて、これらの反応単位を反応の近傍に導き、そして共有結合形成反応が反応単位の間に生じて反応産物を生成する。次いで、例えば、テンプレートによってコードされた、互いに反応して反応産物を生成した第一および第二の反応単位を同定するための情報を用いて、反応産物が特徴化される。この特徴化に基づいて、次いで、反応産物を生成するのに必要な1つ以上の新しい化学反応を同定することが可能である。本方法はまた、その特徴化の前に反応産物を選択する工程を包含する。
本発明の方法は、少数のテンプレートおよび移動単位に対して有用であるが、多数のテンプレート(例えば、10、50、100、1000、もしくはそれより多数)および各コドンに対する移動単位(例えば、10、20、30、50、もしくはそれより多数)の使用は、分子の大きなライブラリの合成を可能にし、これは、増幅によって生じる感受性を使用して、同時にスクリーニングされ得る。
(定義)
本明細書中で使用される場合、用語「結合する」は、2つ以上の基、部分、化合物、モノマーなどの間(between)、もしくはそれらの中(among)での相互作用を説明する。2つ以上の実体が、本明細書中で記載されるように、互いに「結合する」場合、それらは、直接的もしくは間接的な共有結合性または非共有結合性相互作用によって連結される。好ましくは、この結合は、共有結合性である。共有結合は、例えば(しかし、限定ではない)、アミド、エステル、炭素−炭素、ジスルフィド、カルバメート、エーテル、チオエーテル、尿素、アミン、もしくは炭酸連結を通してであり得る。この共有結合はまた、リンカー部分、例えば、光開裂性リンカーであり得る。望ましい非共有結合性相互作用としては、水素結合、ファンデルワールス相互作用、双極−双極相互作用、πスタッキング相互作用、疎水性相互作用、磁気相互作用、静電気的相互作用などが挙げられる。また、2つ以上の実体もしくは薬剤は、同じ組成物中に共に存在することによって、互いに「結合」し得る。
本明細書中で使用される場合、用語「生物学的高分子」とは、ポリヌクレオチド(例えば、RNA、DNA、RNA/DNAハイブリッド)、タンパク質、ペプチド、脂質、もしくは多糖体を指す。生物学的高分子は、天然に生じ得るか、もしくは非天然に生じ得る。好ましい実施形態において、生物学的高分子は、約5,000ダルトンより大きい分子量を有する。
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」、もしくは「オリゴヌクレオチド」とは、ヌクレオチドのポリマーを指す。このポリマーとしては(限定ではなく)、天然ヌクレオシド(すなわち、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジン)、ヌクレオシドアナログ(例えば、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、イノシン、ピロロ−ピリミジン、3−メチルアデノシン、5−メチルシチジン、C5−ブロモウリジン、C5−フルオロウリジン、C5−ヨードウリジン、C5−プロピニル−ウリジン、C5−プロピニル−シチジン、C5−メチルシチジン、7−デアザアデノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニン、および2−チオシチジン)、化学的に改変された塩基、生物学的に改変された塩基(例えば、メチル化された塩基)、インターカレートされた塩基、改変された糖(例えば、2’−フルオロリボース、リボース、2’−デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソース)、または改変されたリン酸基(例えば、ホスホロチオエート、および5’−N−ホスホラミダイト連結)が挙げられる。核酸およびオリゴヌクレオチドはまた、改変された主鎖(例えば、ロックト(locked)核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、トレオース核酸(TNA)、および増幅技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応、もしくは非酵素性テンプレート指向性複製)を用いた増幅反応のためのテンプレートとして働き得る任意の他のポリマー)を有する塩基の他のポリマーを含む。
本明細書中で使用される場合、用語「低分子」とは、実験室で合成されたか、もしくは天然で見られるかのいずれかである、10,000グラム/モルより小さい(必要に応じて、5,000グラム/モルより小さい、そして必要に応じて、2,000グラム/モルより小さい)分子量を有する有機化合物を指す。
本明細書中で使用される場合、用語「低分子足場」もしくは「分子足場」とは、少なくとも1つの、機能付与に適切な部位もしくは化学的部分を有する化学的化合物を指す。この低分子足場はもしくは分子足場は、2、3、4、5、もしくはそれより多くの機能付与に適切な部位もしくは化学的部分を有し得る。これらの機能付与部位は、当業者によって理解されるように、保護もしくは遮蔽され得る。この部位はまた、基本となる環状構造および主鎖上に見られ得る。
本明細書中で使用される場合、用語「移動単位」とは、例えば(限定ではないが)、基礎的要素(building block)、モノマー、モノマー単位、分子足場、もしくはテンプレート介在性化学合成に有用な他の反応物を含む反応単位に結合するアンチコドン配列を有するオリゴヌクレオチドを含有する分子、を指す。
本明細書中で使用される場合、用語「テンプレート」とは、少なくとも1つの、テンプレート介在性化学合成に適切なコドン配列を有するオリゴヌクレオチドを含有する分子、を指す。このテンプレートは、必要に応じて、(i)複数のコドン配列、(ii)増幅手段(例えば、PCRプライマー結合部位もしくはそれに相補的な配列)、(iii)それらに結合する反応単位、(iv)(i)と(ii)との組み合わせ、(v)(i)と(iii)との組み合わせ、(vi)(ii)と(iii)との組み合わせ、または(i)と(ii)と(iii)との組み合わせ、を含み得る。
用語「コドン」および「アンチコドン」とは、本明細書中で使用される場合、転移ユニットを、テンプレート媒介性化学合成の間にテンプレートにアニールさせる、それぞれ、テンプレートおよび転移ユニットにおける相補的オリゴヌクレオチド配列をいう。
詳細な説明全体をとおして、組成物が、特定の成分を有する(having)か、含む(including)か、または含む(comprising)と記載される場合、あるいはプロセスが特定のプロセス工程を有する(having)か、含む(包含する)(including)か、または含む(包含する)(comprising)と記載される場合、本発明の組成物はまた、その記載される成分から本質的になるか、またはその記載される成分からなること、および本発明のプロセスはまた、その記載されたプロセシング工程から本質的になるか、またはその記載されたプロセシング工程からなることが予測される。さらに、工程の順序または特定の行為を行う順序は、本発明が実施可能である限り、重要ではないことが理解されるべきである。さらに、2以上の工程または行為が、同時に行われ得る。
(発明の特定の実施形態の説明)
本明細書中に記載される核酸テンプレート合成は、広い種々の化合物(例えば、合成低分子および非天然ポリマー)の生成、選択、増幅および進化を可能にする。核酸テンプレート合成において、DNAまたは多の核酸によりコードされる情報は、反応生成物の合成に翻訳される。その核酸テンプレートは、代表的には、反応性ウイルスと結合する相補的アンチコドン配列にアニールする複数のコード領域を含み、それによって、配列特異的様式で反応性ユニットをともに結合して、反応生成物を作製する。核酸ハイブリダイゼーションは配列特異的であるので、核酸テンプレート反応の結果は、対応する反応生成物への特定の核酸配列の翻訳である。
図1に示されるように、相補的なオリゴヌクレオチドの配列特異的オリゴマー形成を触媒するような一本鎖核酸テンプレートの能力が、示された(Inoueら(1981)J.Am.Chem.Soc.103,7666;Inouら(1984)J.Mol.Biol.178,669−76)。この発見のすぐ後に、DNAテンプレートまたはRNAテンプレートが相補的なDNAまたはRNAの、モノヌクレオチド、ジヌクレオチド、トリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドのオリゴマー化を触媒し得ることが見出された(Inoueら(1981)J.Am.Chem.Soc.103,7666;Orgelら(1995)Acc.Chem.Res.28,109−118;Remboldら(1994)J.Mol.Evol.38,205;Rodriguezら(1991)J.Mol.Evol.33,477;Chenら(1985)J.Mol.Biol.181,271)。DNAテンプレートまたはRNAテンプレートは、種々の非天然核酸アナログ(ペプチド核酸(Bohlerら(1995)Nature 376,578)、ホスホロチオネート含有核酸(Herrleinら(1995)J.Am.Chem.Soc.117,10151−10152)、ホスホロセレネート含有核酸(Xuら(2000)J.Am.Chem.Soc.122,9040−9041;Xuら(2001)Nat.Biotechnol.19,148−152)、およびホスホロアミデート含有核酸(Lutherら(1998)Nature 396,245−8)、非リボース核酸(Bolliら(1997)Chem.Biol.4,309−20)、およびリン酸結合がアミノエチル基で置き変えられたDNAアナログ(Gatら(1998)Biopolymers 48,19−28)を含む)の形成を加速することを示した。核酸テンプレートはまた、ヌクレオチドアナログの間のアミンのアシル化を触媒し得る(Bruickら(1996)Chem.Biol.3,49−56)。
しかし、核酸テンプレートが、種々の非天然核酸アナログの形成を加速することが証明されているものの、ほとんど全てのこれらの反応は、天然の核酸骨格の構造と密接に似ている遷移状態を通って進行するように設計されており(図1)、代表的に、ヌクレオチド単位の間の同じ六結合骨格間隔を保持する産物が得られた。この設計の動機は、おそらく、核酸テンプレートによって提供される速度の増強が、反応基の正確なアライメントに依存し、そしてこのアライメントの正確さは、反応物および産物がDNA骨格およびRNA骨格の構造を擬態する場合、最大となるという仮定である。核酸テンプレート合成が、核酸骨格に類似する産物のみを生成し得るという仮定を支持する証拠は、有機合成における周知のマクロ環化の困難性に起因する(Illuminatiら(1981)Acc.Chem.Res.14,95−102;Woodwardら(1981)J.Am.Chem.Soc.103,3210−3213)。分子内対応物と比較して分子内の閉環反応の速度の増強は、急速に減少することが公知である。なぜならば、回転可能な結合が反応基の間に付加され、その結果可撓性の14炭素リンカーを有する結合反応物は、いかなる速度の加速もほとんど生じないからである(Illuminatiら(1981)前出)。
目的の合成分子は、一般的に核酸骨格に類似しないので、核酸配列を合成低分子へと翻訳するための核酸テンプレート合成の使用は、核酸テンプレート様式において核酸および核酸アナログ以外の合成分子が合成され得る場合のみ、広範に有用である。重要なことには、本明細書中で示されるように、核酸テンプレート合成は、実際は、一般的な現象であり、種々の反応のために使用され得、多様な範囲の化合物(具体的には、核酸もしくは核酸アナログではない化合物、ならびに核酸もしくは核酸アナログに類似していない化合物を含む)を生成するために調整される。より具体的には、本発明は、天然の生体ポリマーを超えて、化合物のライブラリーを増幅および進化させる能力を伸ばす。任意の構造の化合物を合成する能力により、新規の骨格および側鎖構造に、広範な化学官能基を取りこむその独自の遺伝的コードを研究者が書くことが可能となり、この能力は、2、3例をあげると、新規の触媒、薬物および高分子の開発を可能にする。例えば、遺伝的選択によるこれらの分子の直接的な増幅および進化は、活性、バイオアベイラビリティー、溶解性または熱安定性、もしくは天然のタンパク質および核酸形成ブロックの限定されたセットを用いて達成することが、困難であるかまたは不可能である、他の物理的特定(例えば、蛍光、スピン標識化または感光性)を有する、人工的な触媒の全く新しいファミリーの発見を可能にする。同様に、変異および選択の繰り返されたサイクルによって合成低分子を増幅し、そして直接進化させるような発達方法は、伝統的な合理的な設計またはコンビナトリアルスクリーニング薬物発見方法によって単離されたものより優れた特性を有する、新規のリガンドまたは薬物の単離を可能にする。さらに、このアプローチを材料科学において重要なポリマーの同定および開発に適用することは、新たなプラスチックまたは他のポリマーの進化を可能にする。
一般的に、本明細書中で行われる核酸テンプレート合成は、以下を包含する 1)必要に応じて、反応性単位と会合した、1つ以上の核酸テンプレートを提供する工程;および2)1つ以上の核酸テンプレートと、反応性単位と会合したアンチコドンを含む1以上の移動単位とを接触させる工程。移動単位のアンチコドンは、核酸テンプレートにハイブリダイズするように設計される。本発明の特定の実施形態において、移動単位は、アンチコドン単位のハイブリダイゼーション能力および反応単位の化学的官能基を取り込んだ1つの部分を含む。これらの移動単位が、配列特異的様式において核酸テンプレートにハイブリダイズされた後、移動単位および/または核酸テンプレート上に存在する反応性単位は、反応生成物と反応しこれを生成するように反応的に近位にされる。好ましくは、一旦反応性単位が、反応生成物または反応生成物の中間体を生成するために反応されると、移動単位のオリゴヌクレオチド部分が除去される。重要なことに、核酸テンプレートの配列は、結合した化合物およびそれによるその構造の合成履歴(synthetic history)をデコードするために、後に決定され得る。この方法は、1分子を一度に合成するために使用され得、そしてコンビナトリアル方法を用いて、数千から数百万の化合物を合成するために使用され得る。
一実施形態において、テンプレート分子は、必要に応じて、任意の移動単位との相互作用の前に、反応性単位と結合される。従って、図2に示されるように、そのテンプレートは、直接またはリンカーを介してかのいずれかで、反応性単位に共有結合することによって接続され得る。あるいは、そのテンプレートは、非共有結合によって接続され得る。例えば、そのテンプレートは、一般に、分子上の固定された位置においてビオチン化され得、アビジン部分もしくはストレプトアビジン部分と結合した反応性単位と安定に相互作用し得る。合成が容易であるように、その反応性単位は、好ましくは、図2に示されるように、いくつかの実施形態において、そのテンプレートの5’末端もしくはその付近に配置される。他の実施形態において、反応性単位の配置は、そのテンプレートの内部位置に、または3’末端に反応性単位を配置することが好ましい。そのテンプレート分子はまた、移動単位のアンチコドンにアニールし得る少なくとも1つのコドンを含む。合成の間に、その移動単位は、コドンにアニールし、その反応性単位をそのテンプレートの反応性単位と反応的に近位にされて、反応生成物を精製する。
別の実施形態において、図3に示されるように、そのテンプレートは、最初、反応性単位とは結合しないが、2つの移動単位とともに配置された少なくとも2つの反応性単位の核酸テンプレート合成を可能にする。そのテンプレート分子は、少なくとも2つのコドンを含み、その各々は、各移動単位内に配置された異なるアンチコドンにアニールし得る。各移動単位におけるアンチコドンは、テンプレート中の対応するコドンにアニールして、各移動単位の反応性単位を互いに反応的に近位になり、反応生成物を生成する。
別の実施形態において、図4に示されるように、そのテンプレートは、一緒になって、同時または連続的にかのいずれかで、配列特異的様式にて複数の移動単位になる。各アニールした移動単位上の反応性単位は、次いで、重合プロセスにおいて互いに反応されて、ポリマーを生成する。このアプローチを使用して、種々の非天然ポリマーを生成することが可能である。重合は、段階的プロセスであってもよいし、同時プロセス(それによって、アニールしたモノマーの全てが、一反応シーケンスにおいて反応される)であってもよい。
(I.テンプレートの考慮事項)
核酸テンプレートが、相補的オリゴヌクレオチドへ連結される配列特異的に漸増する反応物質によって、明らかな構造的要件なしに、広範な種々の化学反応を指向し得る。議論されるように、その核酸媒介性形式は、従来の合成アプローチを使用してできなかった反応を可能にする。合成の間に、テンプレートは、1以上の移動単位にハイブリダイズまたはアニールして、反応生成物の合成を指向し、この反応生成物は、テンプレート合成の特定の工程の間に、テンプレートと結合したままである。次いで、反応生成物は、特定の基準(例えば、予め選択された標的分子に結合する能力)に基づいて、選択またはスクリーニングされる。一旦反応生成物が同定されると、その結合したテンプレートは配列決定されて、その反応生成物の合成履歴がデコードされ得る。さらに、以下により詳細に議論されるように、そのテンプレートは、別の化合物または化合物のライブラリーの合成をもたらすように、進化され得る。
((i)テンプレート形式)
そのテンプレートは、核酸配列、例えば、DNA、RNA、DNAとRNAのハイブリッド、またはDNAおよびRNAの誘導体に基づき得、そして一本鎖または二本鎖であり得る。特定のテンプレートの設計は、企図される核酸テンプレート合成の型に依存して変化し得る。
図5は、本発明の実施において有用であり得る種々のテンプレートを示す。図5A〜Cは、2つの移動単位の相補的なアンチコドンとの相互作用のための2つのコドンを含むテンプレートの模式図である。これらのテンプレートは、合成の開始時に反応性単位がテンプレートに連結されない核酸テンプレート合成の型において使用され得る;例えば、2つの移動単位が、テンプレートにアニールして、それらの反応性単位を反応的に近位にし、反応生成物を作製する場合。1つのこのような例が重合である。にもかかわらず、そのテンプレートは、移動単位のアニール前に、反応性単位と結合され得る。図5D〜Fは、核酸テンプレート合成の型において使用され得るテンプレートの模式図であり、ここで1つの反応性単位は、例えば、1つの移動単位がテンプレートにアニールして、その反応性単位を、テンプレートに連結される他の反応性単位と反応的に近位にし、反応生成物を作製する場合、合成開始時にテンプレートに連結される。
図5Aは、5’方向から3’方向において、第1のプライマー結合部位(PBS1)またはそれらに相補的な配列、第1の移動単位のアンチコドン配列にアニールする第1のコドン(C1)をコードするヌクレオチド配列、第2の異なる移動単位のアンチコドン配列にアニールする第2のコドン(C2)をコードするヌクレオチド配列、ならびに第2のプライマー結合部位(PBS2)またはそれらに相補的な配列をコードするヌクレオチド配列を含むテンプレートを示す。そのプライマー結合部位は、選択肢的ではあるが、いくつかの実施形態において、テンプレートのPCRベースの増幅を容易に得るために好ましい。以下でより詳細に議論されるように、そのC1配列は、第2の移動単位のアンチコドン配列との交差反応性を最小にするように選択され、そのC2配列は、第1の移動単位のアンチコドン配列との交差反応性を最小にするように選択される。図5Aに示されるように、そのC1配列およびC2配列は、1以上の介在塩基によって分離される。言い換えると、C1配列およびC2配列は、互いに直接隣接していない。核酸テンプレート合成の間に、第1の移動単位および第2の移動単位の両方は、同時にテンプレートに結合され得る。
図5Bは、C1とC2との間に配置される介在塩基が存在しないことを除いて、図5Aに示されるテンプレートと類似のテンプレートを示す。言い換えると、C1配列およびC2配列は、直接互いに隣接する。図5Aのテンプレートについて、核酸テンプレート型合成の間、第1の移動単位と第2の移動単位の両方が、同時に、テンプレートに結合し得る。
図5Cは、C1の配列がC2の配列と重複することを除いて、図5Aおよび5Bに示されるテンプレートと類似するテンプレートを示す。図5Aおよび5Bのテンプレートとは異なり、核酸テンプレート型合成の間、第1の移動単位および第2の移動単位は、ともに、同時にテンプレートに結合し得ない。このように、テンプレートが合成の開始の前に反応性単位と会合しない限り、第3のコドンが、通常存在し、その結果2つの反応性単位は、同時にテンプレートにアニールし得、反応が進行し得る。この型のテンプレートは、反応産物の合成への段階的な合成を必要とし得る。例えば、C1に対するアンチコドンを有する移動単位が最初に添加され、ハイブリダイズされ、反応し、次いで、C2に対するアンチコドンを有する移動単位が添加される前に除去される。
図5D〜5Fは、テンプレートが、テンプレートに会合する(例えば、共有結合される)反応性単位(R)を含むことを除いて、図5Aに示されるテンプレートと類似のテンプレートを示す。しかし、図5Bおよび図5Cの両方に示されるテンプレートがまた図、5D〜5Fに示されるように、対応するテンプレートと会合する反応性単位(R)を含み得ることが理解される。テンプレートが反応性単位と会合する程度まで、テンプレートのヌクレオチド配列は、さらに、テンプレートと会合する反応性単位を独特に同定するヌクレオチドの配列または配列タグを含む。テンプレート媒介合成に続いて、反応性単位は、反応産物を作製するために、反応において関係するテンプレートに実際に結合する反応性単位は、配列タグの配列を読むことによって同定され得る。
図5Dにおいて、Rは、5’末端の近位(例えば、テンプレートの5’末端またはテンプレートの5’末端の下流)の位置においてテンプレートに連結される。図5Eにおいて、Rは、5’末端と3’末端との間の位置においてテンプレートに連結される。この特定の場合において、Rは、C1とC2との間に配置され、以下にさらに詳細に考察されるT型テンプレート構造の例を表す。図5Fにおいて、Rは、3’末端の近位(例えば、テンプレートの3’末端またはテンプレートの3’末端の上流)の位置においてテンプレートに連結される。
図5A〜Fに示されるテンプレートの各々が、1つ以上の制限エンドヌクレアーゼ部位を含み得ることが企図される。例えば、図5Aを参照して、テンプレートは、(i)PBS1とC1との間、(ii)C1とC2との間、および(iii)C2とPBS2との間の配置される制限エンドヌクレアーゼ部位を含み得る。制限エンドヌクレアーゼ部位は、PBS1配列、C1配列、C2配列、PBS2配列、またはこれらの任意の組み合わせを置換するための種々の配列を容易に導入するために、核酸カセットの使用を容易にする。
さらに、テンプレートはまた、移動単位と会合する1つ以上の反応性単位と相互作用し得る反応性単位において終結する一端にヘアピンループを組み込み得る。例えば、DNAテンプレートは、5’−アミノ酸で終結するヘアピンループを含み得、この5’−アミノ酸は、保護されていても保護されてなくても良い。アミノ基は、非天然高分子の形成のための開始点として作用し得るか、または他の移動単位の反応性単位による引き続く改変のための低分子足場に結合するために改変され得る。
テンプレートの長さは、企図される核酸テンプレート型合成の型に依存して、非常に変化し得る。例えば、特定の実施形態において、テンプレートは、10〜10,000ヌクレオチド長、20〜1,000ヌクレオチド長、20〜400ヌクレオチド長、40〜1,000ヌクレオチド長、または40〜400ヌクレオチド長であり得る。テンプレートの長さは、もちろん、例えば、コドンの長さ、ライブラリーの複雑性、反応産物の複雑性および/またはサイズ、スペーサー配列の使用などに依存する。
(ii)コドン利用
テンプレート配列が本発明の範囲を超えていくことなく、多くの方法で設計され得ることが企図される。例えば、コドンの長さは、決定されなければならず、コドン配列が設定されなければならない。2つのコドン長が使用される場合、4つの天然の塩基を使用すると、16個のみの可能な組み合わせが、ライブラリーをコードする際に使用されるために利用可能である。コドンの長さが3に増加する(タンパク質をコードする際に自然数(number Nature)を使用する)場合、可能な組み合わせの数が64に増加する。可能な組み合わせの数が64に増加する。コドンの長さが4に増加する場合、可能な組み合わせの数は、256に増加する。コドンの長さを決定する際に考慮される他の因子は、ミスマッチ、フレームシフト、ライブラリーの複雑性などがある。コドンの長さが特定の点まで増加するので、ミスマッチの数は、減少する;しかし、過剰に長いコドンは、ミスマッチの塩基対にも関わらずハイブリダイズする。
コドンの長さが変動し得るものの、コドンは、2〜50ヌクレオチド、2〜40ヌクレオチド、2〜30ヌクレオチド、2〜20ヌクレオチド、2〜15ヌクレオチド、2〜10ヌクレオチド、3〜50ヌクレオチド、3〜40ヌクレオチド、3〜30ヌクレオチド、3〜20ヌクレオチド、3〜15ヌクレオチド、3〜10ヌクレオチド、4〜50ヌクレオチド、4〜40ヌクレオチド、4〜30ヌクレオチド、4〜20ヌクレオチド、4〜15ヌクレオチド、4〜10ヌクレオチド、5〜50ヌクレオチド、5〜40ヌクレオチド、5〜30ヌクレオチド、5〜20ヌクレオチド、5〜15ヌクレオチド、5〜10ヌクレオチド、6〜50ヌクレオチド、6〜40ヌクレオチド、6〜30ヌクレオチド、6〜20ヌクレオチド、6〜15ヌクレオチド、6〜10ヌクレオチド、7〜50ヌクレオチド、7〜40ヌクレオチド、7〜30ヌクレオチド、7〜20ヌクレオチド、7〜15ヌクレオチド、7〜10ヌクレオチド、8〜50ヌクレオチド、8〜40ヌクレオチド、8〜30ヌクレオチド、8〜20ヌクレオチド、8〜15ヌクレオチド、8〜10ヌクレオチド、9〜50ヌクレオチド、9〜40ヌクレオチド、9〜30ヌクレオチド、9〜20ヌクレオチド、9〜15ヌクレオチド、9〜10ヌクレオチドの範囲であり得る。しかし、コドンは、好ましくは、3ヌクレオチド長、4ヌクレオチド長、5ヌクレオチド長、6ヌクレオチド長、7ヌクレオチド長、8ヌクレオチド長、9ヌクレオチド長、または10ヌクレオチド長である。
1つの実施形態において、テンプレートに使用されるコドンのセットは、移動単位の適切なアンチコドンのみがテンプレートのコドン部位にアニールすることを確実にするために、コドンセット内の任意の2つのコドン間のミスマッチの数を最大にする。さらに、テンプレートが、1つのコドンセットの全てのメンバーと異なるコドンセットの全てのコドンとの間にミスマッチを有し、アンチコドンが間違ったコドンセットに不注意に結合しないことを確実にすることが重要である。例えば、コドンn塩基長の選択に関して、特定のコドンセット内のコドンの各々(例えば、図5AのC1)は、kミスマッチによって互いに異なり、そして1つのコドンセットのコドンの全て(例えば、図5AのC1)は、他のコドンセットの全てのコドン(例えば、図5AのC1)とmミスマッチによって異なる。テンプレートの使用に適切な種々のコドンセットについての、n、k、およびmについての例示的な値を表1に要約する。
適切なアルゴリズムを使用して、同じセット内の任意の2つのコドン間のミスマッチを最大化するコドンのセットを作製することが可能であり、ここでコドンは、任意の2つのコドン間に少なくともkミスマッチを有するn塩基長である。任意の2つのコドン間において、少なくともkマッチが存在しなければならないので、n−(k−1)塩基の任意の2つのサブコドンが少なくとも1つのミスマッチを有さなければならない。これは、任意の(n,k)コドンセットについて4
n−k+1の条件を設定する。このようなアルゴリズムは、好ましくは、長さn−(k−1)の4
n−k+1の可能なサブコドンで開始し、次いで、常にkミスマッチを維持する塩基についてk−1塩基を追加する全ての組み合わせを試験する。全ての可能な(n,k)セットは、n≦6について作製され得る。n>6について、コドンの4
n−k+1の上限は、適合し得ず、実行可能なコドンの「完全な」パッキングは、数学的に不可能である。同じコドンセット内のコドン間に少なくとも1つのミスマッチkが存在することに加えて、1つのコドンセットの全てのコドンと別のコドンセットの全てのコドンとの間に少なくとも1つのミスマッチmも存在する。このアプローチを使用して、異なるセットのコドンは、コドンが反復されないように作製され得る。
例として、4つ(n=5、k=3、m=1)のセット(それぞれ、64コドンを有する)は、異なるコドンセット内の任意の2つのコドン間の少なくとも1つのミスマッチおよび同じセットのコドン間の少なくとも3つのミスマッチを常に有するように選択され得る。
同様に、以下に示すような、4つの(n=6、k=4、m=2)セット(それぞれ、64コドンを有する)は、異なるコドンセット内の任意の2つのコドン間の少なくとも2つのミスマッチおよび同じセットのコドン間の少なくとも4つのミスマッチを常に有するように選択され得る。
コドンはまた、GC含有量に対する制御を増加し、従って、コドンおよびアンチコドンの融点に対する制御を増加するように選択され得る。GC含有量 対 AT含有量のおいて幅広い範囲を有するコドンセットは、異なる融点に起因して、異なる効率でアニールする)試薬を生じ得る。異なる(n,k)セット間のGC含有量をスクリーニングすることによって、コドンセットについてのGC含有量は、最適化され得る。例えば、4つの(6,4,2)コドンセットは、表6〜9に記載され、各々が、同一のGC含有量を有する(すなわち、50%GC含有量)を有する40コドンを含む。各位置においてこれらの40コドンのみを使用することによって、理論的に全ての試薬が、匹敵する融点を有し、ライブラリー合成に影響し得るアニーリングにおける潜在的なバイアスを除く。反応発見系のような特定の適用について適切な多数のミスマッチを維持するより長いコドンはまた、このアプローチを使用して選択され得る。例えば、低いGCコドンを高いGCコドンにマッチさせながら、2つの(6,4)セットを一緒に組み合わせることによって、64コドンを有する(12,8)セット(全てが50%GC含有量を有する)が、反応発見選択における使用ならびに複数のマッチが有利であり得る他の適用のために作製され得る。これらのコドンは、反応発見についての機能的群の組み合わせの30×30マトリクスをコードするための必要条件を満足する。
図6Aに示されるように、アンチコドンがコドンにのみ結合することが意図されるものの、アンチコドンはまた、相補的な配列が存在する場合、テンプレート上の意図しない配列に結合し得る。このように、アンチコドンは、図6Bに示されるように、非コドン配列に不注意に結合し得る。あるいは、図6Cおよび6Dに示されるように、アンチコドンは、部分的に1つのコドンにそして部分的に別のコドン(図6C)にまたは非コドン配列(図6D)にアニーリングすることによって、フレーム外で(out−of−frame)不注意に結合し得る。最後に、図6Eに示されるように、アンチコドンは、間違ったコドンにインフレームで結合し得、問題は、各コドンを区別する少なくとも一塩基の違いを必要とすることによって上記に記載されるコドンセットによってアドレスされる。現実に、非コード配列およびフレーム外結合の問題(図6B〜D)は、リボソームによって避けられる。しかし、本明細書中に記載される核酸テンプレート型方法は、リボソームの忠実度を利用しない。従って、図6B〜Dのように、間違ったアニーリングを避けるために、テンプレートは、アンチコドンに相補的な配列が、インフレームのコドン位置で排他的に見いだされるように設計され得る。例えば、コドンは、特定の塩基(例えば、「G」)で開始するかまたは終了するように設計され得る。塩基がテンプレートにおける全ての他の位置から削除される(すなわち、全ての他の位置が、T、CおよびAに制限される)場合、テンプレートの完全なコドン配列のみが、インフレームコドン配列にある。同様に、コドンは、その配列が独特であり、それ以外でテンプレート中に見られないように十分に長くなるように設計され得る。
核酸テンプレート型合成が、高分子を作製するために使用される場合、スペーサー配列はまた、フレームシフトを妨げるために、コドン間に配置され得る。さらに好ましくは、各高分子サブユニットをコードするテンプレートの塩基(高分子の「遺伝子コード」)が、表10から選択されて、フレーム外アニーリングの可能性を除外するかまたは最小化し得る。これらの遺伝子コードは、望ましくないフレームシフトした、核酸テンプレート型高分子翻訳を減少し、そして予期される融点の範囲およびフレーム外アニーリングの間に生じるミスマッチの最小数において異なる。
(表10:フレーム外アニーリングを除外する核酸テンプレート型高分子のための代表的な遺伝子コード)
ここで、V=A、C、またはG、S=CまたはG、W=AまたはT、N=A、C、G、またはT。
現実に、開始コドンおよび終止コドンは、特に、高分子合成の文脈において、非コドンへの間違ったアンチコドンのアニーリングを制限するため、および成長する高分子の過剰な伸長を妨げるために有用である。例えば、開始コドンは、低分子足場を有する移動単位または高分子合成に使用するための開始モノマー単位にアニールし得る;開始モノマー単位は、図9Aに示されるように、光不安定性保護基によってマスクされ得る。終止コドンは、高分子合成を終了するために使用される場合、合成に使用される任意の他のコドンと矛盾するべきではなく、他のコドンと同じ一般形式であるべきである。一般的に、終止コドンは、さらなる結合のための反応性基を提供しないことによって重合を停止するモノマー単位をコードし得る。例えば、停止モノマー単位は、図9Aに示されるように、第一級アミンよりもむしろアセトアミドのようなブロックされた反応性基を含み得る。他の実施形態において、停止モノマー単位は、重合を終了させ、そして得られる高分子の精製を促進するビオチン化末端を含み得る。
(iii)テンプレート構造
先に考察されるように、企図される核酸テンプレート型合成の型に依存して、テンプレートは、特定の反応性単位とさらに会合し得る(例えば、共有結合し得る)。核酸テンプレート型合成において有用な種々のテンプレートが図7A〜7Gに示され、「らせんの末端」または「E」テンプレート(図7A〜Cを参照のこと)、「ヘアピン」または「H」テンプレート(図7Dを参照のこと)、「オメガ」または「Ω」テンプレート(図7E〜Fを参照のこと)、または「T」テンプレート(図7Gを参照のこと)として称されるテンプレートを含む。
図7A〜Cは、アニールされたテンプレート上の反応性単位(Aによって示される)および移動単位(Bによって示される)が、1塩基によって(図7A)、10塩基によって(図7B)、および20塩基によって(図7C)、分離されているE型テンプレート構造を示す。図7Dは、H型のテンプレート構造を示し、ここで、反応性単位がテンプレート(Aによって示される)に結合し、そしてテンプレートは、折り畳まれて、複数の分子内結合によって安定化されたヘアピンを作り出す。示されるように、アニールされたテンプレート上の反応性単位(Aによって示される)および移動単位(Bによって示される)は、1塩基によって分離される。図7E〜Fは、オメガ型のテンプレート構造を示し、ここで、反応性単位Bを有する移動単位に対するコドンが、10個の介在するテンプレート塩基(図7E)または20個の塩基(図7E)によってテンプレート上の反応性単位Aから分離される。図7Eにおいて、オメガテンプレートは、3塩基不変領域(Ω−3)を含み、そして移動単位がテンプレートにアニールする場合、7塩基ループを作製する。図7Fにおいて、オメガテンプレートは、5塩基不変領域(Ω−5)を含み、そして移動単位がテンプレートにアニールする場合、15塩基ループを作り出す。ループは、移動単位としてより大きくなると、テンプレートの不変領域からさらに離れるコドンにアニールする。図7Gは、T型テンプレート構造を示し、ここで、アニールされたテンプレート上の反応性単位(Aによって示される)および移動単位(Bによって示される)は、1塩基によって分離される。図7Gにおいて、反応性単位Aは、テンプレートの5’末端および3’末端の中間の位置で結合する。この構造を使用して、反応性単位が、テンプレートの5’末端の少なくとも10塩基、20塩基、30塩基、50塩基、60塩基、70塩基またはそれ以上の下流の位置、および/またはテンプレートの3’末端の少なくとも10塩基、20塩基、30塩基、50塩基、60塩基、70塩基またはそれ以上の上流の位置でテンプレートに結合され得る。
E型テンプレート構造およびH型のテンプレート構造が、核酸媒介化学合成を促進する能力は、実施例1に詳細に記載される。しかし、核酸媒介合成を実行する結果として、特定の反応(距離依存性反応と呼ばれる)が、テンプレート上のアニールされた反応性単位および移動単位が少数の塩基で分離された場合でさえ、効率的に進行しないことを発見した。E型テンプレートおよびH型のテンプレートを使用する場合、特定の距離依存性反応が、テンプレートの反応性末端においてテンプレート塩基によってのみコードされ得る。新たなΩ型のテンプレートが、E型およびH型のテンプレート(図5を参照のこと)を用いて経験され得る距離依存性問題を克服する。さらに、アニールされた反応性単位間の二本鎖核酸の存在は、一本鎖テンプレートが必要とされるので、テンプレート型反応の効率を大きく減少し得ることを発見した。これは、たとえテンプレートが複数の反応をコードするために十分な塩基を含み得るとしても、E構造またはH構造を使用する単一核酸テンプレート型工程において2つ以上の反応を実行することを妨げ得る。新規なT型テンプレートが、E型およびH型のテンプレートで経験し得るこの問題を克服する(実施例5を参照のこと)。
(Ωテンプレート)
Ω構造によって、距離依存性反応が、テンプレートの反応性末端から離れたヌクレオチド塩基によって効率的に指向され得、それらの距離依存性を効率的に克服する。例として、Ω構造において、テンプレートの5塩基は、テンプレートの5’末端において一定に保持される(図7Fを参照のこと)。移動単位は、それらの3’末端において、相補的な5塩基を含むが、そうでなければ、テンプレート遠位コード領域に相補的な配列を含む。これによって、移動単位が、テンプレートの遠位コード領域にアニールし得ながら、距離依存性反応が進行することを通常妨げる多数のテンプレート塩基をループではずす(looping out)ことによって近位に移動単位の反応性基をなお置換し得る。オメガ構造は、テンプレートの末端に相補的な移動単位の5塩基が室温でテンプレートにそれら事自体によってアニールするには不十分であるので、配列特異性を保持する。
この型のテンプレート構造の有用性は、例えば、核酸テンプレート型還元的アミノ化反応において明らかである。これらの反応は、強く距離依存性であり、アニールされるアミン基とアルデヒド基との間に1つより多くの塩基の距離を有するヘアピン構造またはらせんの末端構造を使用して反応が試みられる場合、非常に少ない産物が生成される。対照的に、反応末端から20塩基離れたテンプレートの領域が試薬を補充するために使用される場合でさえ、オメガ構造を使用して、産物を効率的に形成する(実施例5を参照のこと)。移動単位のコード領域がミスマッチである場合、テンプレートの末端に相補的な移動単位の末端における5塩基の存在にも関わらず、生成物は、観察されない。
距離依存性核酸媒介反応が、テンプレートの反応性末端から離れた塩基によってコードされ得ることによって、オメガ構造は、テンプレートのいずれかにおいてコードされ得る反応の型を拡張する。
(Tテンプレート)
T構造によって、単一のテンプレートが、2つの距離依存性反応をコードし得、さらに、テンプレートが、単一の溶液または「ワンポット」で2つの異なるヌクレオチド−テンプレート型反応を受け得る。この構造を使用して、テンプレートは、テンプレートの末端よりも中心に位置する塩基の非ワトソン−クリック面を介して、分子足場を提示し得る。これによって、2つの移動単位は、テンプレートに結合された反応性単位のいずれかの側にアニールし得、そして2つのヌクレオチド−テンプレート型変換の生成物を与えるように、同時にまたは連続的な工程のいずれかで反応し得る。予期されるように、距離依存性反応は、反応性基が近位である場合、この構造を許容する。従って、T型構造によって、2つの配列特異的核酸テンプレート型反応が、1つの溶液中で1つのテンプレートで(すなわち、一工程で)行われ得る。標的構造を合成するために必要とされる別々のDNAテンプレート型工程の数を減少させることに加えて、この構造は、合成ライブラリーにおける構造的複雑性を構築するために通常使用される3つ以上の構成成分の反応を可能にし得る。
オメガ構造およびT構造は、他のテンプレート構造でより少ない工程で実行され得る幅広い範囲のテンプレート媒介反応を可能にし、距離依存性反応において特に有用である。利用可能な構造の多様性は、(特に、低分子の合成のための)テンプレートの反応性単位の配置において有意な可撓性を提供する。反応性単位(例えば、分子足場を含む)が、テンプレートに沿った任意の部位(5’末端(例えば、らせんの末端の構造、オメガ構造)、3’末端(らせんの末端の構造、オメガ構造)、ヘアピンループの末端(ヘアピン構造)、またはテンプレートの中間(例えば、T構造)を含む)でテンプレートと会合し得る。好ましくは、分子足場は、テンプレートに共有結合される。しかし、特定の実施形態において、分子足場は、他の反応性単位と同様に、分子足場が非共有結合(ここで、水素結合)相互作用のみを介して、テンプレートに会合される移動単位を使用して、テンプレートにもたらされ得る。しかし、特定の状況下において、分子足場または別の反応性単位をテンプレートに共有結合させて、T型またはE型テンプレート構造を作製することが有利であり得る。距離依存性でない反応について、テンプレートに沿った分子足場の位置は、移動単位によってテンプレートにもたらされる反応性単位が、たとえ足場および反応性基が多くの塩基によって分離されるとしても、足場と反応し得るので、より可撓性である。
(iv)テンプレート合成
テンプレートは、当該分野で周知の方法論を使用して、合成され得る。例えば、核酸配列は、核酸配列を調製するために当該分野で公知の任意の方法を使用して調製され得る。これらの方法としては、インビボおよびインビトロの方法(PCR、プラスミド調製、エンドヌクレアーゼ消化、固相合成(例えば、自動化合成器を使用する)、インビトロ転写、鎖分離などを含む)が挙げられる。合成に続いて、テンプレートは、所望の場合、当該分野で公知の標準的なカップリング化学を使用して、目的の反応性単位と会合し得る(例えば、共有結合または非共有結合)。
例として、例えば、実施例9Cにおいて考察されるように、示されるオリゴヌクレオチドカセットを使用して、ワンポットモジュール連結反応を介してテンプレートのライブラリーを作製することが可能である。詳細には、単一の反応溶液において、全ての移動単位アニーリング領域を表す短いオリゴヌクレオチドを一緒にT4 DNAリガーゼと組み合わせることが可能である。オリゴヌクレオチド末端の配列設計に起因して、所望の構築されたテンプレートライブラリーは、連結が完了した場合、可能な生成物のみである。この戦略は、nmテンプレートのライブラリーを組み立てるために、2n×mの短いオリゴヌクレオチドを必要とし、nは、1つのコドン位置当たりの異なる配列の数を示し、mは、ライブラリーのメンバー当たりのコドンの数を示す。従って、コドン当たり64の可能な配列を有する2つのコドンテンプレートについて、2×64×2(256)個のオリゴヌクレオチドが、642(4096)テンプレートのライブラリーを構築するために必要とされる。83員の大環状フマルアミドライブラリーについてのテンプレートのワンポットアセンブリが図9Bにおいて考察される。所望のテンプレートライブラリーの優れた収率は、4時間の連結反応から生じた。連結に続いて、T7エキソヌクレアーゼは、非コードテンプレート鎖を分解するために添加された(所望のコード鎖は、その非天然の5’−アミノエチレングリコールリンカーによって保護される)。この手順は、約6時間で、20nmolの5’官能基化単鎖テンプレートライブラリー(数千のDNAテンプレート型ライブラリー合成および選択のための十分な材料)を提供し得る。各テンプレートの末端において不変の10塩基プライマー結合領域は、この構築された材料から1,000分子(10−21mol)の少なさのテンプレートのPCR増幅を許容するのに十分であった。
テンプレートを合成するための別のアプローチは、図8に示される。特に、図8は、5’→3’方向に、低分子反応物、ヘアピンループ、アニーリング領域、コード領域、およびプライマー結合部位を含むテンプレートを作製するためのプロトコルを示す。この型のプロトコルは、種々のテンプレート(特に、本発明の実施において有用なH型のテンプレート)を合成するために使用され得る。
多数の種々のテンプレートを合成するための効率的な方法は、「スプリット−プール」技術を使用することである。オリゴヌクレオチドは、標準的な3’→5’化学を使用して合成される。最初に、不変の3’末端が合成される。次いで、これは、n個の異なる容器に分割され、ここで、nは、テンプレートのその位置において現れる異なるコドンの数である。各容器について、n個の異なるコドンのうちの1つが、不変の3’末端の(成長する)5’末端で合成される。従って、各容器は、5’から3’に、不変の3’末端に結合される異なるコドンを含む。次いで、n個の容器がプールされ、その結果、単一の容器が、不変の3’末端に結合されたn個の異なるコドンを含む。コドンの5’末端に隣接する任意の一定の塩基が、ここで合成される。次いで、このプールは、m個の異なる容器に分割され、ここで、mは、テンプレートの次(さらに5’側)の位置に現れる異なるコドンの数である。異なるコドンは、m個の容器の各々において(成長するオリゴヌクレオチドの5’末端において)合成される。得られるオリゴヌクレオチドは、単一の容器中にプールされる。分割、合成、およびプールは、必要とされる場合、繰り返されて、オリゴヌクレオチドの全てのコドンおよび不変領域を合成する。
(II.移動単位)
移動単位は、アンチコドン配列および反応性単位を含むオリゴヌクレオチドを含む。アンチコドンは、テンプレート内に存在するコドンに相補的であるように設計される。テンプレートに使用される配列ならびにコドンの長さは、アンチコドンの設計する際に考慮する必要がある。テンプレートに使用されるコドンに相補的である任意の分子が、使用され得る(天然ヌクレオチドまたは非天然ヌクレオチドを含む)。特定の他の実施形態において、コドンは、自然界で見出される1つ以上の塩基(すなわち、チミジン、ウラシル、グアニジン、シトシン、およびアデニン)を含む。従って、アンチコドンは、塩基、糖および任意のリン酸基を有する通常自然界で見出される1つ以上のヌクレオチドを含み得る。あるいは、塩基は、通常自然界で見出される糖−リン酸骨格でない骨格(例えば、非天然ヌクレオチド)を介して連結され得る。
上で考察されるように、アンチコドンは、移動単位を形成するために反応性単位の特定の型に関連する。この反応性単位は、異なる実体を表し得るか、またはアンチコドン単位の機能性の一部であり得る。特定の実施形態において、各々のアンチコドン配列は、1つのモノマー型に関連する。例えば、アンチコドン配列ATTAGは、イソブチル側鎖を有するカルバメート残基に関連し得、そしてアンチコドン配列CATAGは、フェニル側鎖を有するカルバメート残基に関連し得る。モノマー単位に対するアンチコドンのこの1対1のマッピングは、合成に使用される核酸テンプレートを配列決定することによって、ライブラリーの任意の高分子をデコードすることを可能にし、そして元の高分子の配列を知ることによって、同じ高分子または関連高分子を合成することを可能にする。テンプレートの配列を変化する(例えば、変異させる)ことによって、異なるモノマー単位が置かれ、それによって関連高分子の合成を可能にし、これは、引き続いて選択され、そして進化され得る。特定の好ましい実施形態において、いくつかのアンチコドンは、自然界におけるのと同様に、1つのモノマー単位をコードし得る。
特定の他の実施形態において、高分子ライブラリーよりもむしろ低分子ライブラリーが、作製される場合、アンチコドンは、一般的に、低分子骨格を改変するために使用される反応単位または反応物と結合する。特定の実施形態において、この反応物は、反応物を低分子足場んも反応性の近位に来させるのに十分長いリンカーを介してアンチコドンと結合する。このリンカーは、好ましくは、分子間反応を可能にし、そして分子内反応を最小化する長さおよび組成物である。この反応物は、核酸テンプレート型合成(実施例2、4および7を参照のこと)において利用され得、そして化学分野において公知の任意の化学基、触媒(例えば、有機金属化合物)、または反応性部分(例えば、求電子基、求核基)であり得る広い範囲の反応によって実証されるような種々の試薬を含む。
さらに、移動単位における、アンチコドンと反応性単位(例えば、モノマー単位または反応物)との間の会合は、共有結合または非共有結合であり得る。この関連は、共有結合を介し得、そして特定の実施形態において、共有結合は、切断可能であり得る。
従って、アンチコドンは、リンカー部分を介して反応物と関連し得る(実施例3を参照のこと)。連結は、光、酸化、加水分解、酸への曝露、塩基への曝露、還元などによって切断され得る。Fruchtelら(1996)、ANGEW.CHEM.INT.ED.ENGL.35:17は、本発明の実施において有用な種々の連結を記載する。リンカーは、低分子足場と反応物の接触を促進し、そして特定の実施形態において、所望の反応に依存して、脱離基としてDNAを位置づける(「自動切断」ストラテジー)か、あるいは「スカーレス」リンカーストラテジー(これは、化学官能基を有する追加の原子を置き残す(leving behid)ことなく生成物を生じる)または「有用なスカー」ストラテジー(リンカー部分がリンカー切断に続く後の工程において官能基化するために置き残される)を介してテンプレートに反応性基を連結し得る。
「自動切断可能」リンカーストラテジーに関して、DNA反応性基の結合は、反応の自然な結果として切断される。「スカーレス」リンカーストラテジーにおいて、1つの反応性基のDNAテンプレート型反応は、第2の反応性基を介して結合されたリンカーの切断が続き、化学官能基を提供し得るさらなる原子を置き残すことなく生成物を生じる。あるいは、「有用なスカー」は、リンカー切断の結果として、有用な原子および/または化学基を導入することが有利であり得るという理論において使用され得る。特に、「有用なスカー」は、リンカーの切断に続いて、置き残され、引き続く工程において官能基化され得る。
アンチコドンおよび反応性単位(モノマー単位または反応物)はまた、非共有相互作用(例えば、イオン性、静電性、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、πスタッキングなど、およびこれらの組み合わせ)を介して結合され得る。1例を挙げると、アンチコドンは、ビオチンに結合し得、そしてモノマー単位は、ストレプトアビジンに結合され得る。ビオチンに結合するストレプトアビジンの傾向は、アンチコドンとモノマー単位との間の非共有結合を導いて移動単位を形成する。
テンプレートへの移動単位の特異的なアニーリングによって、多くの従来の有機合成に使用される濃度よりも低い濃度で移動単位を使用することが可能になる。従って、移動単位は、サブミリモル濃度(例えば、100μM未満、10μM未満、1μM未満、100nM未満、または10nM未満)で使用され得る。
(III.化学反応)
種々の化合物および/またはライブラリーは、本明細書中に記載される方法を使用して調製され得る。特定の実施形態において、核酸またはそのアナログでなく、似てもいない化合物が、本発明の方法に従って合成される。特定の他の実施形態において、タンパク質、ペプチドまたはそのアナログでなく、似てもいない化合物が、本発明の方法に従って合成される。
(i)低分子合成のためのカップリング反応
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される方法を使用して、低分子のような化合物を作製することが可能である。これらの低分子は、天然の産物様、非高分子、および/または非オリゴマーであり得る。低分子における実質的な目的は、多くの薬学的調製物における活性成分としてのその使用に一部起因するが、これらはまた触媒、材料、または添加物などとして使用され得る。
本発明の方法を用いた低分子の合成において、進化可能なテンプレートもまた提供される。このテンプレートは、低分子が構築される際の低分子足場を含み得るか、または低分子足場がテンプレートに添加され得る。低分子足場は、官能基化のための部位を有する任意の化学物質であり得る。例えば、低分子足場は、環を作製する原子に結合する官能基化可能基を有する環系(例えば、コレステロール中で見出されるABCDステロイド環系)を含み得る。別の例において、低分子は、モルヒネ、エポシロンまたはセファロスポリン抗生物質のような薬剤の内在構造であり得る。低分子足場において官能基化される部位または基は、当該分野で公知の方法および保護基を用いて保護され得る。低分子足場において使用される保護基は、互いに直交し得、保護基は、一度に1つずつ除去され得る。
この実施形態において、移動単位は、改変において使用するためか、または低分子足場から除去するためのリアクタントもしくは構築ブロックと会合する抗コドンを含む。このリアクタントまたは構築ブロックは、例えば、求電子物質(例えば、アセチル、アミド、酸クロリド、エステル、ニトリル、イミン)、求核基(例えば、アミン、ヒドロキシル基、チオール)、触媒(例えば、有機金属触媒)、または側鎖であり得る。移動単位は、ハイブリダイゼーション条件下でテンプレートに接触させる。オリゴヌクレオチドアニーリングの結果として、付着したリアクタントまたは構築ブロックは、低分子足場上の部位と反応される。特定の実施形態において、低分子テンプレート上の保護基は、官能化されるべき部位から同時に除去され、移動単位のリアクタントは、足場上の所望の位置のみに反応する。
反応条件、リンカー、リアクタントおよび官能化される部位は、分子間反応を回避し、分子間反応を促進するように選択される。テンプレートと移動単位との連続または同時の接触は、合成される特定の化合物に依存して使用され得る。特別な目的の特定の実施形態において、化合物の多工程合成は、複雑な化合物の多工程を促進するように、テンプレートが2つ以上の移動単位と連続して接触される工程を提供する。
足場上の部位が改変された後、新たに合成された低分子は、その合成がコードされたテンプレートとの会合を保持する。テンプレートの配列をデコードすることは、合成のヒストリーのデコンヴォルーションを可能にし、それによって低分子の構造をデコンヴォルーションし得る。このテンプレートはまた、所望の低分子をより多く作製するために増幅され得、そして/またはこのテンプレートは関連する低分子を作製するために進化(変異)され得る。低分子はまた、精製またはスクリーニングのためにテンプレートから切断され得る。
((ii)高分子合成のためのカップリング反応)
特定の実施形態において、高分子(特に、非天然の高分子)は、本発明の方法に従って調製される。本発明の方法および系を用いて作製され得る非天然の高分子は、任意の非天然高分子を含む。例示的な非天然高分子としては、ペプチド核酸(PNA)ポリマー、ポリカルバメート、ポリウレア、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリアルキレン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリカルボネート、非天然の立体化学を有するポリペプチド、非天然のアミノ酸を有するポリペプチド、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。特定の実施形態において、高分子は、少なくとも10、25、75、100、125、150以上のモノマー単位を含む。本発明の系を用いて合成される高分子は、触媒、製薬、金属キレート剤、触媒などとして使用され得る。
特定の非天然高分子の調製において、アンチコドンに接着されたモノマー単位、および本発明において使用されるモノマー単位は、互いに結合して高分子を形成し得る任意のモノマーまたはオリゴマーであり得る。モノマー単位は、カルバメート、D−アミノ酸、非天然のアミノ酸、PNA、尿素、ヒドロキシ酸、エステル、カルボネート、アクリレート、エーテルなどであり得る。特定の実施形態において、図4において示されるように、モノマー単位は、このモノマー単位を、成長(growing)高分子鎖に連結させるために使用される2つの反応基を有する。好ましくは、2つの反応基は同じではなく、モノマー単位は、方向センスにある高分子(例えば、1端は、求電子基であり、そして他端が求核基であり得る)に組み込まれ得る。反応基としては、エステル、アミド、カルボン酸、活性化カルボニル基、酸塩化物、アミン、ヒドロキシル基、チオールなどが挙げられ得るが、これらに限定されない。特定の実施形態において、反応基は遮蔽されるか、または保護され(Greeneら(1999)Protective Groups in Organic Shynthesis,3rd Edition Wiley)、その結果、反応基が脱保護される、所望の時まで重合化は生じ得ない。一旦モノマー単位が、核酸テンプレートに沿って集められると、重合化配列の開始は、重合工程および脱保護化工程のカスケードを生じ、ここで、重合化工程は、実質的な重合化工程において使用される反応基の脱保護化を生じる。
重合化されるモノマー単位は、核酸テンプレートに沿った幾何学に依存する2つ以上の単位を含み得る。重合化されるモノマー単位は、核酸テンプレートに沿って、そして特に、そのコードするアンチコドンおよび任意のスペーサー配列によって空けられた距離を横切って伸縮可能でなければない。特定の実施形態において、モノマー単位は、2つのモノマー(例えば、ジカルバメート、ジウレア、ジペプチドなど)を実際に含む。なお他の実施形態において、モノマー単位は、3つ以上のモノマーを実際に含む。例えば、実施例9Cは、各モノマー単位が4つのPNA分子を含む、PNAベースの高分子の合成を開示する。
このモノマー単位は、当該分野において公知の任意の化学基を含み得る。反応化学基(特に、重合化、ハイブリダイゼーションなどと干渉する反応基)は、公知の保護基を用いてマスクされる(Greeneら(1999)前出)。一般に、これらの反応基を遮蔽するために使用される保護基は、重合化工程で使用される基の保護で使用される基に直交する。
特定の環境において、化学反応の型は、重合化プロセスのフィデリティーに影響し得ることが発見されている。例えば、化学反応に無関係な距離(例えば、反応単位が介在性塩基によって空間を空けて配置される場合に効率的に生じる反応(例えば、アミンアシル化反応))は、高分子鎖の特定の位置で間違ったモノマーの偽取り込みを生じ得る。対照的に、距離に依存する(例えば、さらなる反応単位が介在性塩基によって空間を空けて配置される効率を下げる反応(例えば、還元性アミノ化反応))であるテンプレート媒介性合成について化学反応を選択することによって、重合化プロセスのフィデリティーを制御し得る。実施例9は、テンプレート媒介性合成の間、重合化プロセスのフィデリティーを増大させるために距離依存性化学反応を使用する効果を詳細に考察する。
(iii)官能基の形質転換
核酸−テンプレート合成は、(i)アンマスク(unmask)されているか、または(ii)カップリング反応において使用される官能基に相互転換されるかのいずれかである、官能基形質転換をもたらすように使用され得る。ライブラリーの配列−プログラムされたサブセット内の反応性基を連続的に露出または作製することによって、核酸−テンプレート官能基の相互転換は、ライブラリーの多様性を連続的なアンマスキング(unmasking)によって生成し得る。連続的なアンマスキングアプローチは、分子間の非テンプレート反応様式において、核酸(例えば、単純なアルキルハライド)に連結され得る能力を通常欠いているリアクタントを、テンプレートの配列特異的サブセットと反応させることによってライブラリーを構築することを可能にするという主要な利点をもたらす。この利点は、生成され得る構造型を有意に増加させる。
本発明の1つの実施形態は、反応単位に存在する官能基の脱保護またはアンマスキングを含む。この実施形態に従って、核酸テンプレートは、保護された官能基を含む反応単位と会合する。転移単位(テンプレートコドン領域に相補的なオリゴヌクレオチドおよび保護基を除去し得る試薬を含む)は、テンプレートにアニーリングし、そして試薬は保護基と反応し、反応単位から除去される。反応単位をさらに官能化するために、次いで、露出された官能基は核酸に連結しない試薬に供される。いくつかの実施形態において、反応単位は2つ以上の保護官能基を含む。さらに他の実施形態において、保護基は、転写単位に連結された試薬と繰り返しアニーリングすることによって連続的に除去される直交性(orthogonal)保護基である。
本発明の別の実施形態は、反応単位上に存在する官能基の相互作用に関する。この実施形態に従って、反応を触媒し得る試薬と会合する転写単位は、反応単位を有するテンプレートにアニールされる。核酸に連結されない試薬は、反応物に添加され、そして転写単位試薬は、未結合の試薬と反応単位との間の反応を触媒し、新しい官能化反応単位を得る。いくつかの実施形態において、反応単位は、異なる転写単位結合試薬への反復曝露によって連続的に相互作用される2つ以上の官能基を含む。
(iv)反応条件
核酸テンプレート型反応は、水溶液または非水溶液(例えば、有機)、あるいは1つ以上の水溶液および非水溶液の混合物において生じ得る。水溶液において、反応は、約2〜約12、または好ましくは約2〜約10、またはより好ましくは約4〜約10のpH範囲で実施され得る。好ましくは、DNA−テンプレート型化学において使用される反応は、高塩基性条件(例えば、役pH>12、pH>10)または高酸性条件(例えば、pH<1、pH<2、pH<4)を必ずしも必要としない。なぜなら、非常に厳しい条件は、合成される核酸テンプレートおよび/または分子(例えば、重合体、または低分子)の分解または改変をもたらし得る。水溶液は、1つ以上の無機塩(NaCl、Na2SO4、KCl、Mg+2、Mn+2などが挙げられるが、これらに限定されない)を種々の濃度で含み得る。
核酸−テンプレート型反応にとって適切な有機溶媒としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:塩化メチレン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、および有機アルコール(メタノールおよびエタノールが挙げられる)。有機溶媒中の反応成分の定量的溶解を可能にするために、第四級アンモニウム塩(例えば、長鎖テトラアルキルアンモニウム塩)が添加され得る(Jostら(1989)NUCLEIC ACIDS RES.17:2143;Mel’nikovら(1999)LANGMUIR 15:1923−1928)。
核酸−テンプレート型反応は、触媒(例えば、同種触媒、異種触媒、相転移触媒および不斉触媒)を必要とし得る。他の実施形態において、触媒は必要とされない。核酸に連結しない、さらなる補助試薬(accessory reagent)の存在が、いくつかの実施形態において好ましい。有用な補助試薬としては、例えば、以下が挙げられ得る:酸化剤(例えば、NaIO4);還元剤(例えば、NaCNBH3);活性化剤(例えば、EDC、NHS、およびスルホ−NHS);遷移金属(例えば、ニッケル(例えば、Ni(NO3)2)、ロジウム(例えば、RhCl3)、ルテニウム(例えば、RuCl3)、銅(例えば、Cu(NO3)2)、コバルト(例えば、CoCl2)、鉄(例えば、Fe(NO3)3)、オスミウム(例えば、OsO4)、チタニウム(例えば、TiCl4またはチタニウムテトライソプロポキシド(titanium tetraisopropoxide)、パラジウム(例えば、NaPdCl4)、またはLn;遷移金属リガンド(例えば、ホスフィン、アミンおよびハライド);ルイス酸;およびルイス塩基。
好ましくは、反応条件は、使用した反応単位およびオリゴヌクレオチドの性質を適切にするために最適化される。
(v)化学反応の種類
合成ポリマー、低分子または他の化合物について公知の化学反応が、核酸−テンプレート型反応において使用され得る。従って、以下に列挙されるような反応が使用され得る:March’s Advanced Organic Chemistry,Organic Reactions,Organic Syntheses,有機の教科書、雑誌(例えば、Journal of the American Chemical Society,Journal of Organic Chemistry, Tetrahedronなど)、およびCarruther’s Some Modern Methods of Organic Chemistry。好ましくは、選択された反応は、核酸(例えば、DNAまたはRNA)と適合するか、またはテンプレートとして使用される改変された核酸と比較される。
核酸−テンプレート化学において有用な反応としては、例えば、以下が挙げられる:置換反応、炭素−炭素結合形成反応、除去反応、アシル化反応、および付加反応。本発明において有用な脂肪族求核置換反応の例示(限定ではない)としては、例えば、SN2反応、SN1反応SNi反応、アリル転移、脂肪族三方晶系炭素(aliphatic trigonal carbon)での求核置換、およびビニル炭素(vinylic carbon)での求核置換。
酸素求核基での特定の脂肪族求核置換反応としては、例えば、アルキルハライドの加水分解、gen−ジハライドの加水分解、1,1,1−トリハライドの加水分解、アルキルエステルまたは無機酸の加水分解、ジアゾケトンの加水分解、アセタールおよびエノールエーテルの加水分解、エポキシドの加水分解、アシルハライドの加水分解、無水物の加水分解、カルボキシエステルの加水分解、アミドの加水分解、アルキルハライドのアルキル化(Williamson反応)、エポキシド形成、無機エステルでのアルキル化、ジアゾ化合物でのアルキル化、アルコールの脱水、エステル交換反応、エポキシドのアルコーリシス、オニウム塩でのアルキル化、シランのヒドロキシル化反応、アシルハライドのアルコーリシス、無水物のアルコーリシス、カルボン酸のエステル化、カルボキシエステルのアルコーリシス(エステル交換反応)、アミドのアルコーリシス、カルボン酸塩のアルキル化、無水酢酸とエーテルの分割、ジアゾ化合物でのカルボン酸のアルキル化、カルボン酸のアシルハライドでのアシル化、カルボン酸のカルボン酸でのアシル化、オキソニウム塩の形成、過酸化物およびヒドロペルオキシドの調製、無機エステル(例えば、ナイトレート、ニトレート、スルホネート)の調製、アミノからのアルコールの調製、ならびに混合した有機−無機無水物の調製。
硫黄求核基での特定の脂肪族求核置換反応(酸素アナログよりもより求核の傾向がある)としては、例えば、チオールを形成するためのアルキル炭素でのSHによる攻撃、チオエーテルを形成するためのアルキル炭素でのSによる攻撃、アシル炭素でのDHまたはSRによる攻撃、ジスルフィドの形成、Bunte塩の形成、硫酸塩のアルキル化、およびアルキルチオシアネートの形成が挙げられる。
窒素求核剤での脂肪族求核置換としては、例えば、アミンのアルキル化、アミンのN−アリール化、アミノ基によるヒドロキシの置換、アミノ基転移、アミド基転移、ジアゾ化合物でのアミンのアルキル化、エポキシのアミノ化、オキセタン(oxetan)のアミノ化、アジリジンのアミノ化、アルカンのアミノ化、イソシアニドの形成、アシルハライドによるアミノのアシル化、無水物によるアミンのアシル化、カルボン酸によるアミンのアシル化、カルボキシエステルによるアミンのアシル化、アミドによるアミンのアシル化、他の酸誘導体によるアミンのアシル化、アミンおよびイミドのN−アルキル化もしくはN−アリール化、アミドおよびイミドのN−アシル化、エポキシドからのアジリジンの形成、ニトロ化合物の形成、アジドの形成、イソシアネートおよびイソチオシアネートの形成、ならびにアゾキシ化合物の形成が挙げられる。
ハロゲン求核剤での脂肪族求核置換反応としては、例えば、アルキル炭素での攻撃、ハライド交換、硫酸のエステルおよび硫酸からのアルキルハライドの形成、エポキシドからのハロヒドリンの形成、ヨウ化リチウムでのカルボキシエステルの切断、ジアゾケトンのα−ハロケトンへの転換、アミンのハライドへの転換、t−アミンのシアンアミドへの転換(von Braum反応)、カルボン酸からのアシルハライドの形成、ならびに酸誘導体からのアシルハライドの形成が挙げられる。
求核剤として水素を用いた脂肪族求核置換反応としては、例えば、アルカリハライドの還元、トシレート、他のスルホネートおよび類似の化合物の還元、アルコールの水素化分解、エステルの水素化分解(Barton−McCombie反応)、ニトリルの水素化分解、ハロゲンによるアルコキシルの置換、エポキシドの還元、カルボキシエステルの還元的切断、C−N結合の還元、脱硫化、アシルハライドの還元、カルボン酸、エステルおよび無水物のアルデヒドへの還元、ならびにアミドのアルデヒドへの還元が挙げられる。
特定の炭酸求核剤は、本発明の特定の実施形態において使用するにはあまりにも求核性および/または塩基性であり得るが、炭素求核剤を用いる脂肪族求核置換反応としては、例えば、以下が挙げられる:シランとのカップリング、アルキルハライドのカップリング(Wurtz反応)、基I(IA)およびII(IIA)有機金属試薬とアルキルハライドおよびスルホネートエステルとの反応、有機カプレートとアルキルハライドおよびスルホネートエステルとの反応、他の有機金属試薬とアルキルハライドよびスルホネートエステルとの反応、ハライド基質とのアリルカップリングおよびプロパギルカップリング、硫酸のエステルおよび硫酸、スルホキシド、およびスルホンと有機金属試薬のカップリング、アルコールを含んだカップリング、カルボン酸エステルと有機金属試薬とのカップリング、エステル結合を含む化合物と有機金属試薬との反応、エポキシドと有機金属試薬の反応、アジリジンとの有機金属試薬との反応、活性水素を保持する炭素でのアルキル化、ケトン、ニトリル、およびカンボン酸エステルのアルキル化、カルボン酸塩のアルキル化、ヘテロ原子に対するα位置でのアルキル化(1,3−ジチアン(dithianes)のアルキル化)、ジヒドロ−1,3−オキサジンのアルキル化(アルデヒド、ケトンおよびカルボン酸のMeyer合成)、トリアルキルボランでのアルキル化、アルキニル炭素でのアルキル化、ニトリルの調製、アルデヒドおよびケトンへのアルキルハライドの変換、カルボン酸およびそれらの誘導体へのアルキルハライド、アルコール、またはアルカンの変換、有機金属化合物を用いたケトンへのアシルハライドの変換、有機金属化合物を用いたケトンへの無水物、カルボン酸エステルまたはアミドの変換、アシルハライドのカップリング、活性水素を保持する炭素でのアシル化、カルボン酸エステルによるカルボン酸エステルのアシル化(Claisen−Dieckmann縮合)、カルボン酸エステルを用いたケトンおよびニトリルのアシル化、カルボン酸塩のアシル化、アシルシアニドの調製、ならびにジアゾケトン、ケトン脱カルボニル化。
スルホニルの硫黄原子での求核攻撃を含む反応もまた、本発明において使用され得、そして、その反応としては、例えば、以下が挙げられる:硫酸誘導体の加水分解(OHによる攻撃)、硫酸エステルの形成(ORの攻撃)、スルホアミドの形成(窒素の攻撃)、スルホニルハライドの形成(ハライドの攻撃)、塩化スルホニルの還元(水素による攻撃)、およびスルホンの調製(炭素による攻撃)。
芳香族求電子置換反応はまた、ヌクレオチド−テンプレート化学において使用され得る。水素交換反応は、求電子剤として水素を使用する芳香族求電子反応の例である。窒素求電子を使用する芳香族求電子置換反応は、例えば、以下が挙げられる:ニトロ化およびニトロ−脱水素化、ニトロソ−脱水素化のニトロソ化、ジアゾニウムカップリング、ジアゾニウム基の直接的導入、およびアミノ化またはアミノ脱水素化。硫黄求電子剤でのこの型の反応としては、例えば、以下が挙げられる:スルホン化、スルホ−脱水素化、ハロスルホン化、ハロスルホ−脱水素化、硫化およびスルホニル化。ハロゲン求電子剤を用いる反応としては、例えば、以下が挙げられる:ハロゲン化、およびハロ−脱水素化。炭素求電子剤での芳香族求電子置換反応としては、例えば、以下が挙げられる:フリーデル−クラフツアルキル化、アルキル脱水素化、フリーデル−クラフツアリル化(Scholl反応)、フリーデル−クラフツアシル化、二置換ホルムアミドでのホルミル化、ジンクシアニドおよびHClでのホルミル化(Gatterman反応)、クロロホルムでのホルミル化(Reimer−Tiemann反応)、他のホルミル化、ホルミル−脱水素化、カルボニルハライドでのカルボキシル化、二酸化炭素でのカルボキシル化(Kolbe−Schmitt反応)、イソシアネートでのアミド化、N−アルキルカルバモイル−脱水素化、ヒドロキシアルキル化、ヒドロキシル−脱水素化、アルデヒドおよびケトンのシクロ脱水(cyclodehydration)、ハロアルキル化、ハロ−脱水素化、アミノアルキル化、アミドアルキル化、ジアルキルアミノアルキル化、ジアルキルアミノ−脱水素化、チオアルキル化、ニトリルとのアシル化(Hoesch反応)、シアン化およびシアノ−脱水素化。酸素求電子剤を用いる反応としては、例えば、ヒドロキシル化およびヒドロキシ−脱水素化が挙げられる。
再転位反応としては、例えば、以下が挙げられる:フリース転移、ニトロ基の移動、ニトロソ基の移動(Fischer−Hepp再転位)、アリールアゾ基の移動、ハロゲンの移動(Orton再転位)、アルキル基の移動など。芳香族環上の他の反応としては、フリーデル−クラフトアルキル化の除去、芳香族アルデヒドの脱炭酸化、芳香族酸の脱炭酸化、Jacobsen反応、脱酸素化、脱スルホン化、ハイドロ−脱スルホン化、脱ハロゲン化、ハイドロ−脱ハロゲン化、および有機金属化合物の加水分解。
脂肪族求電子置換反応もまた、有用である。SE1、SE2(前)、SE2(後)、SEi、付加−除去、および周期的なメカニズムを用いる反応が、本発明において使用され得る。離脱基として水素を用いるこの型の反応としては、例えば、水素交換(デューテリオ−脱水素化、重水素化)、二重結合の移動、およびケト−エノール互変が挙げられる。水素求電子剤との反応としては、例えば、アルデヒドおよびケトンのハロゲン化、カルボン酸およびアシル−ハライドの水素化、ならびにスルホキシドおよびスルホンの水素化が挙げられる。窒素求電子剤との反応としては、例えば、脂肪族ジアゾニウムカップリング、活性水素を有する炭素でのニトロソ化、ジアゾ化合物の直接的形成、アジドアミドへのアミノの転換、活性化部位での直接的アミノ化、ならびにニトレン(nitrene)による挿入が挙げられる。硫黄またはセレニウムとの反応としては、例えば、ケトンおよびカルボン酸エステルのスルフェニル化、スルホン化およびセレニル化が挙げられる。カルボン求電子との反応としては、例えば、脂肪族炭素でのアシル化、β−ケトエステルまたはケトンへのアルデヒドの転換、シアン化、シアノ−脱水素化脱水素化、アルカンのアルキル化、Stork enamine反応、および炭素による挿入が挙げられる。金属求電子剤との反応としては、例えば、有機金属化合物での金属化、金属および強塩基での金属化、ならびにシリルエノールエーテルへのエノレートの転換が挙げられる。離脱基として金属を用いる脂肪族求電子置換反応としては、例えば、水素による金属の置換、有機金属試薬と酸素との反応、有機金属試薬と過酸化物との反応、トリアルキルボランのボーレートへの転換、Grignard試薬の硫化化合物への転換、ハロ−脱金属化、有機金属化合物のアミンへの転換、有機金属化合物のケトンへの転換、金属でのトランスメタル化(transmetalation)、金属ハライドでの金属転移、有機金属化合物での金属転移、アルキルハライドの還元、メタロ−脱ハロゲン化、有機金属化合物由来の金属によるハロゲンの置換、脂肪酸の脱カルボキシル化、アルコキシドの切断、アシル基によるカルボキシル基の置換、βケトエステルおよびβ−ジケトンの塩基性切断、ハロホルム(haloform)反応、非エノール化ケトンの切断、Haller−Bauer反応、アルカンの切断、脱シアン化、およびヒドロ−脱シアン化が挙げられる。窒素での求電子置換反応としては、例えば、ジアゾ化、ヒドラジンのアジドへの転換、N−ニトロ化、N−ニトロソ−脱水素化、アゾ化合物へのアミンの転換、N−ハロゲン化、N−ハロ−脱水素化、一酸化炭素とのアミンの反応、ならびに二酸化炭素とのアミンの反応が挙げられる。
芳香族求核置換反応はまた、本発明において使用され得る。SNAr機構、SN1機構、ベンジン(benzyne)機構、SRN1機構または他の機構によって進行する反応が、例えば、使用され得る。酸素求核剤での芳香族求核置換反応としては、例えば、ヒドロキシ−脱ハロゲン化、スルホネート塩のアルカリ融合、およびORまたはOArの置換が挙げられる。硫化求核剤での反応は、例えば、SHまたはSRの置換が挙げられる。窒素求核剤を用いる反応としては、例えば、NH2、NHR、またはNR2の置換、およびアミノ基によるヒドロキシ基の置換が挙げられる。ハロゲン求核での反応としては、例えば、ハロゲンの導入が挙げられる。求核剤としてハロゲンを用いる芳香族求核置換反応としては、例えば、フェノールおよびフェノールエステルおよびフェノールエーテルの還元、ならびにハライド化合物およびニトロ化合物の還元が挙げられる。炭素求核剤での反応としては、例えば、Rosenmund−von Braun反応、アリールハライド、エーテルおよびカルボキシルエステルと有機金属化合物とのカップリング、活性化ハロゲンを含む炭素でのアリール化、アリールのカルボン酸、それらの誘導体、アルデヒド、およびケトンへの転換、ならびにUllmann反応が挙げられる。離脱基としてハロゲンを用いる反応としては、例えば、窒素複素環のアルキル化、アリール化、およびアミン化が挙げられる。離脱基としてN2+を用いる反応としては、例えば、ハロゲン−脱ジアゾ化、硫黄含有基による置換、ヨウ素−脱ジアゾ化、ならびにSchiemann反応が挙げられる。再転位反応としては、例えば、von Richter再置換、Sommelet−Hauser再置換、アリールヒドロキシアミンの再置換、ならびにSmiles再置換が挙げられる。
フリーラジカルを含む反応もまた、使用され得るが、ヌクレオチド−テンプレート型化学において使用されるフリーラジカル反応は、ヌクレオチドテンプレートの改変または切断を回避するように注意深く選択されるべきである。限定ではなく、フリーラジカル置換反応が、本発明において使用され得る。特定のフリーラジカル置換反応としては、例えば、以下が挙げられる:ハロゲンによる置換、アルキルカーボンでのハロゲン化、アリルハロゲン化、ベンジンハロゲン化、アルデヒドのハロゲン化、脂肪族炭素でのヒドロキシル化、芳香族炭素でのヒドロキシル化、カルボン酸へのアルデヒドの酸化、環状エーテルの形成、ヒドロペルオキシドの形成、過酸化物の形成、アシル酸化、アシルオキシ−脱水素化、クロロスルホン化、アルカンのニトロ化、アミドへのアルデヒドの直接的転換、アルキル炭素でのアミド化およびアミノ化、感受性(susceptible)位置での単純カップリング、アルキンのカップリング、ジアゾニウム塩による芳香族化合物のアリール化、ジアゾニウム塩による活性化アルケンのアリール化(Meerweinアリール化)、有機パラジウム化合物によるアルケンのアリール化およびアリキル化(Heck反応)、ビニルチン化合物によるアルケンのアリール化およびアルキル化(Stille反応)、過酸化物による芳香族化合物のアルキル化およびアリール化、芳香族化合物の光化学アリール化、アルキル化、アシル化、ならびに窒素複素環のカルバルコキル化(carbalkoxylation)。N2+が離脱基である特定の反応としては、例えば、水素によるジアゾニウムの置換、クロリンもしくはブロミンによるジアゾニウム基の置換、ニトロ−脱ジアゾ化、硫黄含有基によるジアゾニウム基の置換、ジアゾニウム塩によるアリール二量化、ジアゾニウムのメチル化、ジアゾニウム塩のビニル化、ジアゾ塩のアリール化、ならびにジアゾニウム塩のアルデヒド、ケトンまたはカルボン酸への転換が挙げられる。離脱基として金属を用いるフリーラジカル置換としては、例えば、Grignard試薬のカップリング、ボランのカップリング、および他の有機金属試薬のカップリングが挙げられる。離脱基としてハロゲンを用いる反応が含まれる。種々の離脱基を用いる他のフリーラジカル置換反応としては、例えば、Raney Nickelを用いる脱硫酸化、有機リチウム化合物へのスルフィドの転換、脱カルボキシル二量体化(decarboxylative dimerization(Kolbe反応))、Hunsdiecker反応、脱カルボキシアリール化、ならびにアルデヒドおよびアシルハライドの脱カルボニル化が挙げられる。
炭素−炭素多重結合への付加を含む反応もまた、ヌクレオチド−テンプレート型化学において使用される。付加反応において使用され得る任意の機構としては、例えば、求電子付加、求核付加、フリーラジカル付加、および環状機構が挙げられる。結合された系への付加を含む反応もまた、使用され得る。シクロプロパン環への付加もまた、利用され得る。特定の反応としては、例えば、以下が挙げられる:異性化、水素ハライドの付加、二重結合の水和、三重結合の水和、アルコールの付加、カルボン酸の付加、H2Sおよびチオールの付加、アンモニウムおよびアミンの付加、アミドの付加、ヒドラジン酸の付加、二重結合および三重結合の水素化、二重結合および三重結合の他の還元、結合された系の二重結合および三重結合の還元、芳香族環の水素化、シクロプロパンの還元切断、ハイドロボレーション、他のハイドロメタレーション(hydrometalation)、アルカンの付加、アルケンおよび/またはアルキンのアルケンおよび/アルケンへの付加(例えば、pi−カチオン環化反応、ヒドロ−アルケニル付加)、エン(ene)反応、Michael反応、カルボニルに結合していない二重結合および三重結合への有機金属の付加、アルキンへの2つのアルキル基の付加、活性化二重結合への有機金属化合物の1,4−付加、活性化二重結合へのボランの付加、活性化二重結合へのスズおよび水銀の付加、活性化二重結合および三重結合のアシル化、アルコール、アミン、カルボキシエステル、アルデヒドなどの付加、二重結合および三重結合のカルボニル化、ハイドロカルボキシル化、ハイドロホルミル化、アルデヒドの付加、HCNの付加、シランの付加、ラジカル付加、ラジカル環化、二重結合および三重結合のハロゲン化(ハロゲン、ハロゲンの付加)、ハロラクトン化、次亜ハロゲン酸および次亜ハロゲン酸塩の付加(ハロゲン、酸素の付加)、硫化化合物の付加(ハロゲン、硫黄の付加)、ハロゲンおよびアミノ基の付加(ハロゲン、窒素の付加)、NOXおよびNO2Xの付加(ハロゲン、窒素の付加)、XN3の付加(ハロゲン、窒素の付加)、アルキルハライドの付加(ハロゲン、炭素の付加)、アシルハライドの付加(ハロゲン、炭素の付加)、ヒドロキシル化(酸素、酸素の付加)(例えば、OsO4との非対称ジヒドロキシル化反応)、芳香族環のジヒドロキシル化、エポキシ化(酸素、酸素の付加)(例えば、Sharpless非対称エポキシ化)、ジエンの光酸化(酸素、酸素の付加)、ヒドロキシスルホニル化(酸素、硫黄の付加)、オキシアミノ化(oxyamination)(酸素、窒素の付加)、ジアミノ化(diamination)(窒素、窒素の付加)、アジリジンのホルミル化(窒素の付加)、アミノスルホン化(窒素、硫黄の付加)、アシルアシルオキシレーション(acylacyloxylation)およびアシルアミド化(酸素、炭素、または窒素、炭素の付加)、1,3−二極性付加(酸素、窒素、炭素の付加)、Diels−Alder反応、ヘテロ原子Diels−Alder反応、全炭素3 +2シクロ付加、アルケンの二量体化、二重結合および三重結合へのカルベンおよびカルベノイドの付加、アルケンの三量体化および四量体化、ならびに他の環付加反応。
炭素−炭素多重結合への付加を含む反応に加えて、炭素−ヘテロ多重結合への付加反応は、ヌクレオチド−テンプレート型化学において使用され得る。例示的な反応としては、例えば、以下が挙げられる:アルデヒドおよびケトンへの水の付加(ヒドレートの形成)、炭素−窒素二重結合の加水分解、脂肪族ニトロ化合物の加水分解、ニトリルの加水分解、アルデヒドおよびケトンへのアルコールおよびチオールの付加、アルコールの還元アルキル化、イソシアネートへのアルコールの付加、ニトリルのアルコーリシス、キサトエートのホルミル化、カルボニル化合物へのH2Sおよびチオールの付加、亜硝酸付加生成物の形成、アルデヒドおよびケトンへのアミンの付加、アルデヒドへのアミドの付加、アンモニウムまたはアミンの還元アルキル化、Mannich反応、イソシアネートへのアミンの付加、ニトリルへのアンモニウムまたはアミンの付加、二硫化炭素および二酸化炭素へのアミンの付加、カルボニル化合物へのヒドラジン誘導体の付加、オキシムの形成、アルデヒドのニトリルへの転換、アルデヒドおよびケトンからのgem−ジハライドのホルミル化、アルデヒドおよびケトンのアルコールへの還元、炭素−窒素二重結合の還元、ニトリルのアミンへの還元、ニトリルのアルデヒドへの還元、Grignard試薬または有機リチウム試薬のアルデヒドおよびケトンへの付加、他の有機金属のアルデヒドおよびケトンへの付加、アルデヒドおよびケトンへのトリアルキルアリルシランの付加、アルデヒドへの結合されたアルケンの付加(Baylis−Hillman反応)、Reformatsky反応、有機金属化合物を用いるカルボン酸塩のケトンへの転換、酸誘導体へのGrignard試薬の付加、CO2およびCS2への有機金属化合物の付加、C=N化合物への有機金属化合物の付加、C=N化合物へのカルベンおよびジアゾアルカンの付加、ニトリルおよびイソシアネートへのGrignard試薬の付加、Aldol反応、Mukaiyama Aldolおよび関連反応、カルボキシエステルまたはアミドとアルデヒドまたはケトンとの間のAldol型反応、Knoevenagel反応(例えば、Nef反応、Favorskii反応)、Petersonアルケニル反応、CO2およびCS2への活性化水素化合物の付加、Perkin反応、Darzenグリシド酸エステル濃縮物、Tollen反応、Witting反応、Tebbeアルキル化、Petasisアルケニル化、代替的アルケニル化、Thorpe反応、Thorpe−Ziegler反応、シランの付加、シアノヒドリン形成、HCNのC=N結合およびC=N結合への付加、Prin反応、ベンゾイン濃縮物、C=O化合物、C=S化合物、C=N化合物へのラジカルの付加、Ritter反応、アルデヒドおよびケトンアシル化、アルデヒドへのアルデヒドの付加、イソシアネートへのイソシアネートの付加(カルボジイミドのホルミル化)、ニトリルへのカルボン酸塩の転換、アルデヒドおよびケトンからのエポキシドのホルミル化、エピスルフィドおよびエピスルフォンのホルミル化、β−ラクトンおよびオキサンのホルミル化(例えば、Paterno−Buchi反応)β−ラクタムのホルミル化など。イソシアネートへの付加を含む反応としては、イソシアネートへの水の付加、Passerini反応、Ug反応、ならびにメタル化アルジミンのホルミル化が挙げられる。
除去反応(α除去、β除去およびγ除去を含む)、ならびに押し出し反応(extrusion reaction)は、ヌクレオチドテンプレート化学を使用して行われ得るが、使用される試薬および条件の強度が考慮されるべきである。好ましい除去反応は、E1、E2、E1cB、またはE2C機構を通る反応を含む。例示的な反応としては、例えば、水素が一方の面から除去される反応(例えば、アルコールの脱水、エーテルをアルケンへ切断すること、Chugaev反応、エステル分解、四級水酸化アンモニウムの切断、強塩基での四級アンモニウム塩の切断、アミン酸化物の切断、ケト−イリドの熱分解、トルエン−p−スルホニルヒドラゾン(solfonylhydrazone)の分解、スルホキシドの切断、セレノキシドの分解、スルホンの分解、アルキルハライドの脱水素ハロゲン化(dehydrogalogenation)、アシルハライドの脱水素ハロゲン化、スルホニルハライドの脱水素ハロゲン化、ボランの除去、アルケンからアルキンへの変換、アシルハライドの脱カルボニル化)、いずれの脱離原子も水素でない反応(例えば、ビシナルジオールの脱酸素、環式チオカーボネート(thionocarbonate)の切断、エポキシドからエピスルフィドおよびアルケンへの変換、Ramberg−Backlund反応、アジリジンからアルケンへの変換、ビシナルジハライドの脱ハロゲン化、α−ハロアシルハライドの脱ハロゲン化、ならびにハロゲンおよびヘテロ基の除去)、断片化反応(fragmentation reaction)(すなわち、炭素が、正の脱離基または電子除去(electrofiige)である反応(例えば、γアミノハライドおよびγ−ヒドロキシルハライドの断片化、1,3−ジオールの断片化、β−ヒドロキシカルボン酸の脱カルボキシル化、β−ラクトンの脱カルボキシル化、α,β−エポキシヒドラゾンの断片化、架橋二環式(briged bicycic)化合物からのCOの除去、および架橋に環式化合物からのCO2の除去)、C≡NまたはC≡N結合が形成される反応(例えば、アルドキシムまたは類似の化合物の脱水、ケトキシムからニトリルへの変換、非置換アミドの脱水、およびN−アルキルホルムアミドからイソシアニドへの変換)、C=O結合が形成される反応(例えば、β−ヒドロキシアルケンの熱分解)、ならびにN=N結合が形成される反応(例えば、ジアゾアルケンを得るための除去)が挙げられる。押し出し反応は、例えば、ピラゾリンからN2の押し出し、ピラゾールからN2の押し出し、トリアゾリンからN2の押し出し、COの押し出し、CO2の押し出し、SO2の押し出し、Story合成、および2倍の押し出しによるアルケン合成が挙げられる。
再配置(例えば、求核基再配置、求電子基再配置、プロトン向性(prototropic)再配置、およびフリーラジカル再配置を含む)はまた、ヌクレオチドテンプレート化学を使用して行われ得る。1,2再配置および非−1,2再配置の両方が、行われ得る。例示的な反応としては、以下が挙げられる:例えば、R、H、およびArの炭素間移動(例えば、Wagner−Meerwein反応および関連する反応、Pinacol再配置、環拡大反応、環縮小反応、アルデヒドおよびケトンの酸触媒再配置、ジエンオン(dienone)−フェノール再配置、Favorskii再配置、Arndt−Eistert合成、アルデヒドの承認(homologation)、およびケトンの承認)、他の基の炭素間移動(例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノなどの移動;ホウ素の移動;およびNeber再配置)、RおよびArの炭素−窒素間移動(例えば、Hofinaun再配置、Curtius再配置、Lossen再配置、Schmidt再配置、Beckman再配置、Stieglits再配置、および関連する再配置)、RおよびArの炭素−酸素間移動(例えば、Baeyer−Villiger再配置、およびヒドロペルオキシドの再配置)、窒素−炭素間移動、酸素−炭素間移動、および硫黄−炭素間移動(例えば、Stevens再配置、およびWittig再配置)、ホウ素−炭素間移動(例えば、ボランからアルコールへの変換(1級または他)、ボランからアルデヒドへの変換、ボランからカルボン酸への変換、ビニルボラン(vinylic borane)からアルケンへの変換、ボランおよびアセチリドからのアルケンの形成)、電子環開閉再配置(electrocyclic rearrangement)(例えば、シクロブテンおよび1,3−シクロヘキサジエンの再配置、またはスチルベンからフェナントレンへの変換);シグマトロピー再配置(例えば、水素の(1,j)シグマトロピー移動、炭素の(1,j)シグマトロピー移動、ビニルシクロプロパンからシクロペンテンへの変換、Cope再配置、Claisen再配置、Fischerインドール合成、(2,3)シグマトロピー再配置、およびベンジジン再配置)、他の環再配置(例えば、アルケンの複分解、ジ−π−メタン再配置および関連する再配置、ならびにHofmann−Loffler反応および関連する反応)、ならびに非環式再配置(例えば、ヒドリドシフト、Chapman再配置、Wallach再配置、およびジオトロピック(dyctropic)再配置)。
酸化反応および還元反応はまた、ヌクレオチドテンプレート化学を使用して行われ得る。例示的な反応は、例えば、直接的電子移動、ヒドリド移動、水素原子移動、エステル中間体の形成、置換機構、または付加−除去機構を含み得る。例示的な酸化としては、以下が挙げられる:例えば、水素の除去(例えば、六員環の芳香族化、炭素−炭素二重結合を得る脱水、アルコールからアルデヒドおよびケトンへの酸化または脱水素、フェノールおよび芳香族アミンからキノンへの酸化、ケトンの酸化的開裂、アルデヒドの酸化的開裂、アルコールの酸化的開裂、オゾン分解、二重結合および芳香族環の酸化的開裂、芳香族側鎖の酸化、酸化的脱炭酸、ならびにビス脱炭酸(bisdecarboxylation))、水素の酸素での置換を含む反応(例えば、メチレンからカルボニルへの酸化、メチレンからOH、CO2R、もしくはORへの酸化、アリールメタンの酸化、エーテルからカルボン酸エステルへの酸化、ならびに関連する反応、芳香族炭化水素からキノンへの酸化、アミンもしくはニトロ化合物からアルデヒド、ケトンもしくはジハライドへの酸化、1級アルコールからカルボン酸もしくはカルボン酸エステルへの酸化、アルケンからアルデヒドもしくはケトンへの酸化、アミンからニトロ化合物およびヒドロキシアミンへの酸化、1級アミン、オキシム、アジド、イソシアネート、またはニトロソ(notroso)化合物、からニトロ化合物への酸化、チオールおよび他の硫黄化合物からスルホン酸への酸化)、酸素が基質に付加される反応(例えば、アルケンからα−ジケトンへの酸化、3級アミンからアミンオキシドへの酸化、チオエステルからスルホキシドおよびスルホンへの酸化、ならびにカルボン酸からペルオキシ酸への酸化)、ならびに酸化的カップリング反応(例えば、カルバノイン(carbanoin)に関連するカップリング、シリルエノールエーテルもしくはリチウムエノレートの二量体化、ならびにチオールからジスルフィドへの酸化)。
例示的な還元反応としては、例えば、以下が挙げられる:水素による酸素の置換を含む反応、(例えば、カルボニルから、アルデヒドおよびケトンにおけるメチレンへの還元、カルボン酸からアルコールへの還元、アミドからアミンへの還元、カルボン酸エステルからエーテルへの還元、環式無水物からラクトン、および酸誘導体からアルコールへの還元、カルボン酸エステルからアルコールへの還元、カルボン酸およびカルボン酸エステルからアルカンへの還元、エポキシドの完全な還元、ニトロ化合物からアミンへの還元、ニトロ化合物からヒドロキシルアミンへの還元、ニトロソ化合物およびヒドロキシルアミンからアミンへの還元、オキシムから1級アミンまたはアジリジンへの還元、アジドから1級アミンへの還元、窒素化合物の還元、ならびにスルホニルハライドおよびスルホン酸からチオールへの還元)、基質からの酸素の除去(例えば、アミンオキシドおよびアゾキシ化合物の還元;スルホキシドおよびスルホンの還元、ヒドロペルオキシドおよびペルオキシドの還元、ならびに脂肪族ニトロ化合物からオキシムまたはニトリルへの還元)、開裂を含む還元(例えば、アミンおよびアミドの脱アルキル、アゾ化合物、アゾキシ化合物、およびヒドラゾ化合物からアミンへの還元、ならびにジスルフィドからチオールへの還元)、還元的カップリング反応(例えば、アルデヒドおよびケトンから1,2−ジオールへの2分子還元、アルデヒドまたはケトンからアルケンへの2分子還元、アシロインエステル縮合、ニトロ化合物からアゾキシ化合物への還元、ならびに日ロ化合物からアゾ化合物への還元)、ならびに有機基質が酸化されかつ還元される反応(例えば、Cannizzaro反応、Tishchenko反応、Punimerer再配置、およびWillgerodt反応)。
((vi)立体選択性)
核酸のキラル性質は、核酸テンプレート合成が、核酸に存在するキラル基を超えるキラル基の補助なしで、立体選択性を進行させ得、それにより、配列のみならず、立体化学的情報もまた、テンプレートから生成物へ移る可能性を引き起こす。以前の研究により、核酸テンプレートのキラリティーが、(L)−ヌクレオチドよりも、(D)−ヌクレオチドのテンプレート指向性連結についての優先性を誘導し得ることが実証された(Kozlovら(2000)ANGEW.CHEM.INT.ED.39:4292−4295;Balliら(1997)A.CHEM.BIOL.4:309−320)。
核酸テンプレート合成の間に、核酸テンプレート移動単位、触媒または前述のものの組み合わせのキラリティーを、核酸骨格に似ていない反応生成物に移すことが可能である。いくつかの実施形態において、キラル中心を有する反応性単位は、テンプレートと関連づけられ、その移動単位と関連づけられた反応性単位は、アキラルである一方で、他の実施形態においては、その移動単位の反応性単位はキラルであり、そのテンプレートの反応性単位はアキラルである。あるいは、両方の反応性単位は、キラル中心を有し得る。これらの場合の各々において、そのテンプレートのキラリティーは、キラル反応性単位の立体異性体のうちのどちらが、他の反応性単位と優先的に(すなわち、より高い速度定数で)反応するかを指示する。
有用なテンプレート構成としては、H型、E型、Ω型、およびT型の構成が挙げられる。1以上のテンプレートまたは移動単位ヌクレオチドは、非ヌクレオチドリンカーで置き換えられ得るが、反応性単位に最も近いヌクレオチドの置換は、立体選択性の喪失を引き起こし得る。好ましくは、5以上の連続する芳香族ヌクレオチドは、反応性単位に隣接し、より好ましくは、6以上の連続する芳香族ヌクレオチドが、反応性単位に隣接する。
高塩濃度において、(5−Me−C)G反復に富む二本鎖DNA配列は、通常の右巻きらせん(B−形態)よりむしろ、左巻きらせん(Z−形態)を採り得る。DNAテンプレート合成の間に、Z−形態におけるテンプレート−移動単位複合体は、反応性単位の一方の立体異性体との優先的な反応を引き起こす一方、B−形態におけるテンプレート−移動単位複合体は、反応性単位の他方の立体異性体との優先的な反応を引き起こす。従って、いくつかの実施形態において、高濃度(例えば、少なくとも2.5M、または少なくとも5M)の塩(例えば、塩化ナトリウム(NaCl)または硫酸ナトリウム(Na2SO4)が、DNAテンプレート合成の間に使用される。他の実施形態において、塩濃度は低い(例えば、100mM以下)かまたは全く存在しない。DNAテンプレート立体特異的反応の原理は、実施例6においてより詳細に議論される。
((vii)他の不適合な反応)
核酸テンプレート合成の間に、オリゴヌクレオチドは、関与する反応が交差反応性であり、よって伝統的な合成条件下では不適合であるとしても、同じ溶液内でいくつかの異なる型の合成反応を同時に指向し得ることが発見された(実施例7を参照のこと)。結果として、核酸テンプレート合成は、合成ライブラリー前駆体を複数の反応型の生成物へ1ポットで多様化することを可能にする。
一実施形態において、単一の反応性単位と関連づけられた1以上のテンプレートが、2以上の移動単位(各々、テンプレート反応性単位と反応し得る異なる試薬と関連づけられる)に曝される。他の実施形態において、単一の試薬と関連づけられた1以上の移動単位は、2以上のテンプレート(各々、その試薬と反応し得る異なる反応性単位と関連づけられる)に曝される。核酸テンプレート合成の条件下で、単一溶液中に、通常の合成反応において、互いに交差反応する複数の反応性単位(テンプレートおよび/または移動単位に結合される)を有することが可能である。本明細書中に記載される核酸テンプレート化学は、濃度効果に起因して、互いと反応しない、非常に低い反応物濃度を利用する。それらの局所的濃度が、反応を引き起こすように増大されるのは、反応物が、そのテンプレートへの移動単位におけるオリゴヌクレオチドのアニーリングをもたらした場合のみである。いくつかの実施形態において、単一の付属的試薬(すなわち、核酸にも核酸アナログにも連結されない試薬)(例えば、還元剤、酸化剤、または活性化剤)が、反応系に添加される。他の実施形態において、付属的試薬は添加されない。全ての場合において、相補的オリゴヌクレオチドと関連づけられる(すなわち、相補的コドン/アンチコドン配列を含む)、反応性単位および試薬は、反応して反応生成物を形成し、このことは、核酸テンプレート合成が単一の官能基を複数の異なる型の生成物へ指向する選択的1ポット変換能力を実証する。
別の実施形態において、テンプレートおよび移動単位は、上記のように提供されるが、そのテンプレート反応性単位および移動単位試薬は、複数の異なる反応型を使用して互いに反応する。いくつかの実施形態において、複数の異なる付属的試薬は、反応系に添加される。繰り返すと、相補的テンプレート/移動単位配列から得られた反応生成物のみが、適切な量で形成される。
特定の実施形態において、複数の移動単位試薬は、各テンプレート反応性単位と反応し得、移動単位試薬のいくつかは、互いに交差反応し得る。いくつかの異なる交差反応正官能基の存在下ですら、相補的テンプレート/移動単位配列から得られた反応生成物のみが、適切な量で形成される。これらの知見は、種々の付属的試薬を要する、有意に異なる速度の反応が、テンプレートおよび試薬がともに、いくつかの異なる交差反応性官能基を含む場合ですら、同じ溶液中で核酸テンプレート合成によって指向され得ることを示す。核酸テンプレートが、非テンプレート反応を、適切な速度での進行から排除する濃度において複数の反応を指向する能力は、単一溶液中で、空間的に離れたセットの反応を模倣する。
((viii)新たな化学反応の同定)
本発明の別の局面において、図12に例示されるように、核酸テンプレート合成は、2以上の反応性単位の間の以前は未知の化学反応を発見するために使用され得る。反応の発見を容易にするために、複数のテンプレートが合成され、各々、異なるオリゴヌクレオチドに連結される異なる反応性単位を含む。各テンプレートオリゴヌクレオチドは、コード領域(これは、テンプレートに結合される反応性単位を同定する)、およびアニーリング領域を含む。いくつかの実施形態において、他の配列は、例えば、PCRプライマー部位を含むテンプレートオリゴヌクレオチドに含まれる。複数の移動単位もまた調製され、各々、異なるオリゴヌクレオチドに連結される異なる試薬を含む。
新たな結合形成反応について試験するために、1以上のテンプレートが、テンプレートに対する移動単位のハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、1以上の移動単位と合わされる。いくつかの実施形態において、非DNA連結付属分子は、その反応系に添加される(例えば、活性化剤または触媒)。他の実施形態において、反応条件(例えば、反応持続時間、温度、溶媒、およびpHを含む)を、異なる速度にて、かつ異なる条件下で進行する反応を選択するために変化させる。
粗反応混合物を、次いで、特定の反応生物について選択する。その反応生成物は、好ましくは、ヌクレオチド配列が、その反応生成物を生成した結合形成反応をコードするそれぞれのテンプレートとなお関連づけられる。いくつかの実施形態において、その移動単位は、捕捉可能な分子(例えば、ビオチン)とカップリングされる。反応生成物の作製および選択後、その関連づけられたテンプレートを、ストレプトアビジンでビオチンを捕捉することにより選択し得る。一実施形態において、そのストレプトアビジンは、固相に(例えば、磁性ビーズに連結することによって)固定化される。その選択されたテンプレートは、次いで、PCRにより増幅されて、DNA配列決定に供され、反応性単位および試薬の正体を決定する。別の実施形態において、上記のアプローチにより明らかにされる反応は、水性溶媒および有機溶媒の両方において、伝統的な反応分析方法(例えば、薄層クロマトグラフィー、NMR、HPLC、および質量分析を含む)を使用して、非DNAテンプレート形式において特徴付けられる。
理論的には、発見された反応のうちのいくつかは、効率的に進めるためにそのDNAテンプレートのいくつかの局面を必要とすることがあり得る。しかし、この系において発見された反応の、全てではないとしても、大部分が、代表的な非DNAテンプレート合成濃度(例えば、約0.1M)で行われる場合、DNAテンプレートの非存在下で生じる。このように発見された反応はまた、DNAテンプレート低分子ライブラリー合成に本質的に十分適している。この実施形態の図示による例は、末端アルキンと1つのアルケンとの間の新たなパラジウム媒介性カップリング反応の発見を記載している実施例12に見られる。
((ix)生成物ライブラリーの調製)
伝統的なライブラリー合成と核酸テンプレートライブラリー合成との間の主な事実上の差異は、各操作の規模である。スクリーニングおよび化合物同定に必要とされる材料の量に起因して、伝統的なコンビナトリアル合成は、代表的には、1つのライブラリーメンバーにつき、nmol〜μmol規模で進められる。対照的に、核酸テンプレートライブラリー合成は、各核酸連結合成分子のごくわずかな量(例えば、約10−20mol)しか、選択およびPCR増幅に必要とされないので、fmol〜pmol規模で行われ得る。規模におけるこの非常に大きな差異は、核酸テンプレートライブラリーの単一溶液形式と合わせて、核酸テンプレートライブラリー合成に必要な材料の調製を有意に単純化する。
ライブラリーは、本明細書中に記載されるテンプレート媒介性合成を介して生成され得る。例えば、そのテンプレートは、1以上の反応性単位(例えば、足場分子)を含み得る。しかし、各場合において、そのテンプレートは、オリゴヌクレオチドと関連づけられた特定の反応性単位を同定するコード配列を含む。テンプレートのライブラリーは、最初に、上記のリンカーを介してデコードオリゴヌクレオチドに結合された試薬を使用して、1以上の核酸テンプレート結合形成反応に供される。その状況に依存して、そのテンプレートライブラリーは、結合形成反応の複数の反復に供され得る。ここで各中間体生成物は、その後の回の反応の前に精製される。他の環境において、その中間体生成物は、反応反復の間に精製されない。好ましくは、20未満の結合形成反応が、ライブラリーを作製するために必要とされる。他の実施形態において、10未満の結合形成反応工程しか、必要とされず、より好ましくは、完全なライブラリーを作製するために、3〜7の間の工程しか必要とされない。
最終回の核酸テンプレート結合形成反応が行われた後に、必要であれば、付属的試薬が添加されて、反応生成物上の曝された反応性官能基が保護され得る。いくつかの実施形態において、付属的試薬は、反応生成物とのその後の反応(例えば、環化反応)を開始するために添加される。テンプレートオリゴヌクレオチドに結合される反応生成物の得られたライブラリーは、次いで、精製され、そして/または本明細書中で議論されるように選択される。この分野の当業者に理解されるように、低分子もしくはポリマーのライブラリーは、本明細書中に議論される原理を使用して合成され得る。
類似のアプローチを使用すると、反応性単位と最初に関連づけられていないテンプレートオリゴヌクレオチドのライブラリーから、非天然ポリマーのライブラリーを作製することが可能である。この場合、そのテンプレートは、2以上のコドンをコードし、これらのコドンは、モノマー単位に結合した対応するアンチコドンにアニールされる場合に、そのモノマー単位を配列特異的様式で一緒になる。その移動単位は、次いで、各移動単位上のアンチコドンをテンプレート上の相補的コドンにハイブリダイズさせる条件下でテンプレートに接触される。テンプレートに沿った、そのモノマー単位の重合は、次いで、ポリマーを生成する。その重合は、段階的であってもよいし、隣接するモノマー間での1つの反応が、次のモノマーの結合をもたらす1つの大きな反応において形成される鎖と本質的に同時であってもよい。いくつかの実施形態において、その官能基または各モノマーの基は、保護され、そして重合前に脱保護されなければならない。新たに合成されたポリマーは、次いで、アンチコドンおよびテンプレートから切断され得、本明細書中に記載されるように、所望の活性または特性について選択され得る。DNAテンプレートポリマー合成反応は、実施例9Aおよび9Cにおいてより詳細に記載される。
(IV.選択およびスクリーニング)
所望の活性(例えば、触媒活性、結合親和性、または活性アッセイにおける特定の影響)を有する反応生成物についての選択および/またはスクリーニングは、任意の標準的なプロトコルに従って行われ得る。例えば、親和性選択は、ライブラリーベースの選択法(例えば、ファージディスプレイ、ポリソームディスプレイ、およびmRNA融合タンパク質ディスプレイペプチド)において使用される原理に従って行われ得る。触媒活性についての選択は、遷移状態アナログアフィニティーカラムに対する親和性選択(Bacaら(1997)PROC.NATL.ACAD.SCI.USA 94(19):10063−8)または機能ベースの選択スキーム(Pedersenら(1998)PROC.NATL.ACAD.SCI.USA 95(18):10523−8)によって行われ得る。少量のDNA(約10−20mol)が、PCRによって増幅され得る(Kramerら(1999)CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(Ausubel,F.M.編)15.1−15.3,Wiley)ので、これらの選択は、現在の方法による反応分析について必要とされる10分の1より小さな規模で行われ得、よって、実に広い検索を経済的かつ効率的にする。
((i)標的分子に結合するための選択)
標的分子に結合する鋳型および反応性生物を、選択し得る。この文脈において、選択または分離とは、標的分子に結合したライブラリーメンバーを、標的分子に結合していないライブラリーメンバーから分離する任意のプロセスを意味する。選択は、当該分野に公知の種々の方法によって達成され得る。
本発明の鋳型は、直接的な選択および増幅のための組み込み機能を含む。最も多い適用において標的分子への結合は、好ましくは、鋳型および得られる反応性生物が、特定の標的分子と優先的に結合して、おそらく、特定の生物学的効果を妨げるか、または誘導するほど選択的である。最終的に、本発明を用いて同定された結合分子は、治療用薬および/または診断用薬として利用され得る。一旦、選択が完結すると、選択された鋳型を、必要に応じて、増幅するか、または配列決定し得る。十分な量が存在する場合、選択された反応性生物を、鋳型から分離して生成し得(例えば、HPLC、カラムクロマトグラフィーまたは他のクロマトグラフィーの方法による)、そして特徴付け得る。
((ii)標的分子)
結合アッセイは、例えば、表面(例えば、金属、プラスチック、合成物、ガラス、セラミックス、ゴム、皮膚または細胞);ポリマー;触媒;あるいは標的生体分子(例えば、核酸、タンパク質(酵素、レセプター、抗体および糖タンパクを含む)、シグナル分子(例えば、cAMP、イノシトール3リン酸、ペプチドまたはプロスタグランジン)、炭水化物、あるいは脂質)に結合する反応生成物を単離して、同定するのに敏速な方法を提供する。
選択ストラテジーは、ほとんどの任意標的に対して選択し得るように実施され得る。重要なことには、選択ストラテジーは、標的分子またはライブラリー中の分子についての詳細な構造情報を全く必要としない。全プロセスは、ライブラリー中の分子と特定の標的との特異的認識および結合に関する結合親和性によって、駆動される。種々の選択手順の例を以下に記載する。
本発明のライブラリーは、任意の公知または公知でない標的物と本質的に結合し得る分子を含む。標的分子の結合領域には、酵素の触媒部位、レセプター上の結合ポケット(例えば、Gタンパク質結合レセプター)、タンパク質−タンパク質相互作用またはタンパク質−核酸相互作用に関係するタンパク質表面領域(好ましくは、高温点領域)、あるいはDNA上の特定部位(例えば、主溝)が挙げられる。標的物の天然の機能は、反応性生物の結合によって、刺激され得(アゴナイズされ)るか、減少され得(アンタゴナイズされ)るか、作用が及ぼされ得ないか、あるいは、完全に変更され得る。これは、正確な結合様式および反応性生物が標識物上に占める特定の結合部位に依存している。
タンパク質上の機能的部位(例えば、タンパク質−タンパク質相互作用または触媒部位)は、タンパク質上の他のさらに中間の表面領域よりも、分子に結合する傾向が多い。さらに、これらに機能部位は、通常、主に結合エネルギーの責任を負うように見えるより小さな領域;いわゆる、「高温点領域」を含む(Wellsら、(1993)RECENT,PROG.HORMONE RES,.48:253―262)。この現象が、特定標的物の生物学的機能に影響を及ぼす分子に対して、選択を容易にする。
鋳型分子と反応生成物との間の連鎖により、種々の選択ストラテジーを用いる結合分子の敏速な同定が可能である。本発明は、任意の公知標的物に対して結合分子を広く同定し得る。さらに公知でない新規標的物を、公知でない抗原(エピトープ)に対する結合分子を単離し、そして、それらの結合分子を同定および確証に使用することによって、発見し得る。別の好ましい実施形態において、標的分子は、化学反応の遷移状態を模倣する;選択により得られる1つ以上の反応性生物が、遷移状態を安定化して、化学反応を触媒するように設計される。
((iii)結合アッセイ)
本発明の鋳型に向けられた合成は、他の露呈方法(例えば、ファージディスプレイ(Smith(1985)Science 228:1315―1317)に類似した選択手順を容認する。ファージディスプレイは、ペプチド(Wellsら、(1992)CURR.OP.STRUCT.Biol.2:597―604)、タンパク質(Marksら、(1992)J.Biol.Chem.267:16007―16010)および抗体(Winterら、(1994)ANNU.REV.IMMUNOL.12:433―455)においてうまく用いられる。同様な選択手順はまた、他の型の露呈システム(例えば、リボソームディスプレイ(Mattheakisら、(1994)PROC.NATL.ACAD.Sci.91:9022−9026)およびmRNAディスプレイ(Robertsら、(1997)PROC.NATL.ACAD.Sci.94:12297−302))に活用される。しかしながら、本発明のライブラリーは、従来のリボソーム仲介翻訳を必要としないで、標的物特異的分子の直接的な選択を可能にする。本発明はまた、以前は核酸鋳型から直接的に合成されなかった小分子の露呈を可能にする。
ライブラリー由来の結合分子の選択を、任意のフォーマットにおいて行い、最適な結合分子を同定した。代表的には、結合選択は、所望の標的分子を固定化して、潜在的な結合剤のライブラリーを加えて、洗浄により非結合剤を除去することに関する。固定化された標的物に対して低い親和性を示す分子が流出すると、概して、より強い親和性を有する分子が標的分子に付着して残存する。ストリンジェントな洗浄後、標的物に結合して残存する多くの個体群を、好ましくは、例えば、酸、カオトロピック塩、熱、公知のリガンドとの競合的な溶出を用いて、あるいは標的物および/または鋳型分子のタンパク質分解性放出によって溶出する。溶出された鋳型は、多くの増幅種類を導くPCRに適しており、それによって本質的に各々の選択された鋳型は、非常に増加したコピー数で、クローニング、配列決定、および/またはさらなる強化もしくは多様化に利用され得る。
結合アッセイにおいて、リガンド濃度が、標的物濃度よりも非常に少ないとき(DNA鋳型ライブラリーの選択の間にありえるように)、標的物に結合したリガンドの分画は、標的タンパク質の有効濃度により決定される(図10を参照のこと)。標的物に結合したリガンドの分画は、[標的物]=リガンド−標的物複合体のKdで中間点(50%結合)を有する標的物の濃度のS字形関数である。この関係は、特定の選択性のストリンジェンシー(選択の間に標的物に結合して残存するのに必要とされる最小リガンド親和性)が、標的物濃度により決定されることを示唆する。それゆえ、選択ストリンジェンシーは、標的物の有効量を変えることにより制御可能である。
標的分子(ペプチド、タンパク質、DNAまたは他の抗原)を、固体支持体(例えば、容器壁、マイクロタイタープレートウェル壁)上に固定化され得る。ライブラリーを、好ましくは、ワンポットの水性結合緩衝液に溶解して、固体化された標的分子の存在下で平衡化させる。非結合剤を緩衝液で洗い流す。合成的な部分を通してではなく、付着されたDNA鋳型を通して標的分子に結合し得るこれらの分子は、PCRプライマー結合部位を欠く官能性のない鋳型を有する結合されたライブラリーを洗浄することにより除去される。次いで、残存する結合されたライブラリーメンバーを、例えば、変性により溶出し得る。
あるいは、詳細には、SDS−PAGEゲルから溶出される広がった標的物についての場合にあり得るように、標的分子が容器壁に十分に吸着することが不確かな場合、標的分子は、ビーズに固定化され得る。ついで、誘導体化されたビーズは、ベンチトップ遠心機にビーズを簡単に沈降させることにより高親和性ライブラリーメンバーを非結合剤から分離するのに使用され得る。あるいは、ビーズは、親和性カラムを作成するのに使用され得る。そのような場合、ライブラリーは、結合するように1回以上カラムを通して通過される。次いで、非結合ライブラリーメンバーを洗浄して除去する。磁気性ビーズは、本質的に上記の変異体であり;標的物が磁気性ビーズに付着して、次いでこれらを選択の際に使用する。
標的分子を固定化するのに利用可能な多くの反応性基質(例えば、−NH2基または−SH基を有する基質)がある。標的分子は、セファロースビーズに共有結合したNHSエステルまたはマレイミド基との結合により固定化され得、そして標的分子の公知の特性の完全性が確認され得る。活性化されたビーズは、−NH2基または−COOH基に対する付着部位で利用可能である(これは、カップリングに用いられ得る)。あるいは、標的分子は、ニトロセルロースまたはPVDF上にブロットされる。ブロット法を使用する場合、標的物の固定化後、ライブラリーメンバーとブロットとの非特異的結合を阻止するために、ブロットをブロックするべきである(例えば、BSAまたは類似のタンパク質を用いて)。
標的分子に結合するライブラリーメンバーは、変性、酸またはカオトロピック塩によって、放出され得る。あるいは、溶出条件は、バックグランドを減少させるため、所望の特異性を選択するためにより特異的であり得る。溶出は、標的分子と固定化する表面との間または反応性生物と鋳型との間でリンカーを開裂するタンパク質分解を用いて、達成され得る。溶出はまた、標的分子に対して公知の競合的リガンドとの競合により達成され得る。あるいは、PCR反応は、選択手順の終りで、洗浄された標的分子の存在下で直接行なわれ得る。このように結合分子は、選択可能である標的物から溶出可能である必要はない。なぜなら、反応性生物自体ではなく鋳型だけが、さらなる増幅またはクローニングに必要とされるからである。実際、幾つかの標的分子は、最も強力なリガンドと非常に堅く結合するので、溶出が困難である。
細胞表面に発現可能なタンパク質と結合する分子(例えば、イオンチャネルまたは膜貫通型レセプター)に対する選択のために、細胞自体を選択剤として使用し得る。好ましくは、最初に、ライブラリーは、細胞表面上に標的分子を発現しない細胞に曝露されて、他の細胞表面エピトープに特異的または非特異的に結合するライブラリーメンバーを除去する。あるいは、標的分子を欠く細胞は、選択プロセスにおいて大過剰に存在して、標的分子を有する細胞から(例えば、蛍光活性化セルソーティイング(FACS)によって)分離可能である。いずれかの方法おいて、標的分子を有する細胞を、次いで、使用して、標的分子を有するライブラリーメンバーを単離する(例えば、細胞を沈降させることによってか、あるいは、FACSソーティングによって)。例えば、標的分子をコードする組換えDNAは、細胞株に導入され得る;形質変換されない細胞ではなく、形質転換される細胞に結合するライブラリーメンバーは、標的分子結合剤について豊富である。このアプローチはまた、いわゆる減法であり、抗体ライブラリー上のファージディスプレイに使用されている(Hoogenboomら、(1998)IMMUNOTECH 4 :20)。
選択手順はまた、レセプターが、選択された結合分子と一緒に細胞質、細胞核または他の細胞区画(例えば、ゴルジまたはリソソーム)中に通過するように内部移行される細胞表面レセプターへの結合の選択に関する。特定の選択された結合分子に対する解離速度定数に依存して、これらの分子は、主に細胞内区画内に局在化し得る。内部移行したライブラリーメンバーはまた、細胞を洗浄することによって(好ましくは、変性を用いて)、細胞表面に付着した分子と区別する。さらに好ましくは、標準亜細胞細分化技術を、所望の亜細胞区画において選択されたライブラリーメンバーを単離するのに用いる。
別の選択プロトコルはまた、ライブラリーの各メンバーに添付される公知の弱いリガンドを含む。公知のリガンドは、標的分子の規定された部分と相互作用することによって選択を導き、同じ領域に結合する分子の選択を集めて、協同的効果を提供する。詳細には、これは、非常に低い効力のリガンドでなく所望の生物学的な機能を有するリガンドの親和性を増加させるのに有用であり得る。
選択または分離のための他の方法はまた、本発明の使用に利用可能である。これらには、例えば以下が挙げられる:免疫沈降(直接または間接)、ここで、標的分子は、ライブラリーメンバーと一緒に捕獲される;アガロースまたはポロアクリルアミドゲルにおける流動性シフトアッセイ、ここで選択されたライブラリーメンバーは、ケル中で標的分子と共に遊走する;ライブラリーメンバーを有する標的分子を単離するための塩化セシウム勾配遠心分離;ライブラリーメンバーで標識された標的分子を同定するための質量分析。
選択プロセスは、最適化によく適しており、ここで、連続して、結合分子の選択で開始し、最適化された結合分子で終わる選択工程がなされる。各工程の手順は、種々のロボットシステムを使用して自動化され得る。このように、本発明は、最終的に最適化された結合分子を生成する完全な自動システムに適したライブラリーおよび標的分子を供給することを可能にする。理想の条件下で、この工程は、全手順の間ロボットシステム外の外部からの仕事を必要とせずに実施される。
本発明の選択方法は、結合に関する標的分子の機能を改変し得る反応生成物を同定するための二次選択または二次スクリーニングと組み合わされ得る。従って、本明細書中に記載される方法は、任意のタンパク質または核酸に結合し、そして、それらの機能を改変する結合分子を単離するかまたは生成するために使用され得る。例えば、核酸テンプレート化学物質は、(1)触媒を阻害することによって標的酵素の触媒活性に影響するか、または、基質結合を改変する;(2)レセプターへの結合を阻害することによってか、もしくは、レセプターへの結合の特異性を改変することによって、タンパク質レセプターの機能性に影響する;(3)タンパク質サブユニットの四次構造を崩壊することによって、タンパク質マルチマーの機能性に影響する;かまたは、(4)低分子またはイオンの輸送を崩壊させることによって、タンパク質の輸送特性を改変する、結合分子を同定、単離または生成するために使用され得る。
機能性アッセイは、選択プロセスに含まれ得る。例えば、結合アッセイに関して選択した後、選択されたライブラリーメンバーは、所望の機能性効果(例えば、細胞シグナル伝達に対する効果)について直接試験され得る。これは、例えば、FACS方法論によって、実施され得る。
本発明の結合分子は、結合とは別に、他の特性に関して選択され得る。例えば、結合の安定性に関する選択は、所望の操作環境中で相互作用する。特定のプロテアーゼの存在下での安定性が所望の安定性である場合、そのプロテアーゼは、選択の間に使用される緩衝培地の一部となり得る。同様に、その選択は、血清、もしくは細胞抽出物、または水性か、もしくは有機性の任意の型の培地中で、実施され得る。しかし、テンプレートを崩壊、または分解する条件は、後の増幅を可能にするために、避けるべきである。
(iv)他の選択
他の所望の特性(例えば、触媒活性または他の機能性活性)に関する選択もまた。実施され得る。一般的に、選択は、所望の活性を有するライブラリーメンバーが、この原理に基づいて、他のライブラリーメンバーから単離可能であるように、設計されるべきである。例えば、ライブラリーメンバーは、標的分子(例えば、金属イオン)の存在下で、または特定のpHまたは塩濃度条件下で、コンフォメーションを折りたたむ能力または、コンフォメーションを顕著に変化させる能力に関してsクリーニングされ得る。折りたたまれたライブラリーメンバーは、目的の条件下で、非変性ゲル電気泳動を実施することによって、単離され得る。折りたたまれたライブラリーメンバーは、ゲル中で異なる位置に移動し、そして、後に、ゲルから抽出され、単離され得る。
同様に、特定のリガンドの存在下での蛍光発光する反応生成物は、DNAテンプレートを介してビーズに結合した翻訳されたポリマーのFACSに基づいた分類によって選択され得る。標的リガンドの非存在下では生じないが、存在下で蛍光を生じるビーズが単離され、特徴付けられる。任意のビーズ上の核酸テンプレートの同種の集団を有する有用なビーズは、各ビーズが単一のヌクレオチド配列のみに対して露出されるような、ビース上のスプリット−プール(split−pool)合成技術を使用して調製され得る。あるいは、スプリット−プール技術を使用して、種々の抗テンプレート(それぞれは、単一の異なるテンプレートのみに対して相補的である)がビーズ上に合成され得、次いで、溶液相ライブラリーを捕捉するためにアニーリングし得る。
ビオチン末端化生体高分子は、これらの生体高分子を、アビジンに対する基質を介して結合したレジン上を通過させることによって、結合破壊反応の実際の触媒作用に関して、選択され得る(図11A)。基質を触媒する生体高分子は、このレジンを装填したカラムから自己溶出物を分割する。同様に、ビオチン末端化生体高分子が、結合形成反応の触媒に関して選択され得る(図11Bを参照のこと)。1つの基質が、レジンに結合され、第2番目の基質がアビジンに結合される。基質間の結合形成を触媒する生体高分子は、基質と一緒に反応し、生体高分子のレジンへの結合を生じる生体高分子の能力によって選択される。
ライブラリーメンバーはまた、テンプレートが結合するかまたは結合するようになるポリマーの合成に対する触媒効果に関して選択され得る。例えば、ライブラリーメンバーは、ポリマー化され得るモノマー単位の選択に影響し得、ならびに、ポリマー化反応(例えば、空間的配置、立体規則性、活性)がどのように生じるかに影響する。合成されたポリマーは、標準的技術(例えば、電気泳動、ゲルろ過、遠心沈降、または種々の疎水性の溶媒への分配)を使用して、特異的特徴(例えば、分子量、密度、疎水性、立体規則性、立体選択性)に関して選択され得る。次いで、このポリマーの合成に関する付属的なテンプレートが同定され得る。
事実上2つの基質分子間の結合形成を生じるか、または2つの生成物分子中に結合の切断を生じる任意の反応を触媒するライブラリーメンバーは、図12および図13に提案されるスキームを使用して選択され得る。触媒(例えば、ヘテロDiels−Alder触媒、Heckカップリング触媒、アルドール反応触媒、またはオレフィン複分解触媒)を形成する結合を選択するために、ライブラリーメンバーは、それらの5’末端またはチオール末端を介して1つの基質に共有結合される。その反応の他の基質は、ビオチンに結合する誘導体として合成される。ライブラリー−基質結合体の希釈溶液が、基質−ビオチン結合体と合わされる場合、結合形成を触媒するライブラリーメンバーはビオチン基を、ライブラリーメンバー自体に共有結合させる。次いで、触媒を形成する活性な結合は、活性な結合を固定したストレプトアビジンで捕捉し、不活性なライブラリーメンバーを洗い流すことにより、不活性な結合メンバーから分離され得る(図12)。
類似した様式で、結合切断反応(例えば、逆アルドール反応、アミド加水分解、除去反応、または過ヨウ素酸塩切断後のオレフィンのジヒドロキシル化)を触媒するライブラリーメンバーが選択され得る。この場合、ライブラリーメンバーは、この結合切断反応がビオチン部分のライブラリーメンバーからの切断を引き起こすように、ビオチン化基質に共有結合される(図13)。反応条件下でのインキュベーション後、不活性なライブラリーメンバーではなく、活性な触媒は、それらのビオチン基の喪失を生じる。次いで、不活性なポリマーを捕捉するために、ストレプトアビジン結合ビーズが使用され得るのに対して、活性な触媒は、ビーズから溶出され得る。関連する結合形成および結合の切断の選択は、触媒性RNAの展開および触媒性DNAの展開において、首尾よく使用されたきた(Jaschkeら、(2000)CURR.OPIN.CHEM.BIOL.4:257−62)。これらの選択は、複合的なターンオーバー触媒作用を明白に選択しないが、この様式で選択されたRNAおよびDNAは、それらの基質部分から分離される場合、一般的に複合的なターンオーバー触媒であることが証明されている(Jaschkeら、(2000)CURR.OPIN.CHEM.BIOL.4:257−62;Jaegerら、(1999)PROC.NATL.ACAD.SCI.USA 96:14712−7;Bartelら(1993)SCIENCE 261:1411−8;Senら、(1998)CURR.OPIN.CHEM.BIOL.2:680−7)。
単純に活性な触媒を展開させることに加えて、上記のインビトロ選択は、他の触媒発見アプローチを使用して、達成が困難な強力な問題に、非天然のポリマーライブラリーを展開させるために使用される。触媒間の基質特異性は、所望の基質の存在下で、活性な触媒を選択し、次いで、1つ以上の望ましくない基質の存在下での不活性な触媒を選択することによって、選択され得る。所望の基質および所望でない基質が、一つ以上の立体中心で、それらの構造が異なる場合、光学異性体選択的な触媒またはジアステレオ異性体選択的な触媒が、選択のラウンドから現れ得る。同様に、金属選択性は、所望の金属の存在下で、活性な触媒を選択し、所望でない金属の存在下での不活性な触媒を選択することによって、展開され得る。逆に、広い物質許容性を有する触媒は、連続する選択ラウンド間で、基質構造を変動することによって、展開され得る。
(v)反復選択
溶離液を一次選択から二次選択にロードすることによって、選択を反復することで、正味の濃縮度を増加させる。テンプレートの介在性増幅は、必要とされない。例えば、炭酸脱水酵素ビーズへの結合に関する選択は、リガンドの330倍の富化を可能にした。溶出液の新鮮な炭酸脱水素酵素ビーズへの直接的な適用(実施例11を参照のこと)は、炭酸脱水素酵素リガンドをコードするテンプレートを10,000倍以上富化する。その選択が3回繰り返される場合、5,000,000倍の正味のリガンドの富化が観察された。この結果は、ライブラリー選択を反復することによって、所望の分子の非常に大きな富化を生じ得ることを示す。特定の実施形態において、選択の1番目のラウンドは、結合するリガンドの数の少なくとも50倍の増加を提供する。好ましくは、富化における増加は、100倍より高く、より好ましくは、1000倍より高く、そして、さらにより好ましくは、100,000倍より高い。後の選択ラウンドは、さらに、元のライブラリーより100倍、好ましくは、1,000倍、より好ましくは100,000倍、そして最も好ましくは、1,000,000倍、富化を増加させる。
あるいは、ライブラリーに高親和性結合剤を富化するために、選択された合成分子をコードするDNAテンプレートのPCR増幅の後、翻訳、選択および増幅にさらなるラウンドが行われ得る。結合緩衝液および洗浄緩衝液の塩濃度を増加させ、結合の持続時間を減少させ、結合温度および洗浄温度を上昇させ、そして、洗浄添加剤(例えば、DNAまたは無関係のタンパク質)の濃度を増加させることによって、選択のストリンジェンシーを、段階的に増加する。
重要なことは、インビボの選択が、結合親和性に加えて特異性に対しても選択し得ることである。結合特異性に対するライブラリースクリーニング方法は、代表的に、目的の各標的または非標的に対して完全なスクリーニングを繰り返すことを必要とする。対照的に、特異性に対する選択は、標的結合に対する選択ならびに1つ以上の非標的に結合できないことに対する選択によって、単一の実験で実施され得る。従って、ライブラリーは、非標的に結合するライブラリーメンバーを除去することによって、前もって枯渇され得る。あるいは、またはさらに、標的分子への結合に対する選択は、実施例11に記載されるように、過剰の1つ以上の非標的の存在下で実施され得る。特異性を最大化するために、非標的は、相同な分子であり得る。標的分子がタンパク質である場合、適切な非標的タンパク質としては、例えば、アルブミンのような一般的に乱雑なタンパク質が挙げられる。結合アッセイが、標的分子の特定の部分のみを標的として設計される場合、非標的は、その部分が変化されたかまたは除去された分子に対する変形物であり得る。
(vi)増幅および配列決定
選択のラウンドが、一旦完了すると、現在あるいは、以前は、選択された反応産物と結合しているか、または結合していたテンプレートは、配列決定を促進する任意の適切な技術、または他の後のテンプレートの操作を使用して増加される。天然のオリゴヌクレオチドは、任意の方法の任意の状態によって増幅され得る。これらの方法としては、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);核酸配列ベースの増幅(例えば、Compton(1991)NATURE 350:91−92を参照のこと);増幅したアンチセンスRNA(例えば、van Gelderら、(1988)PROC.NATL.ACAD.Sci.USA 85:77652−77656を参照のこと)、自己維持配列複製系(self−sustained sequence replication system)(Gnatelliら、(1990)PROC.NATL.ACAD.SCI.USA 87:1874−1878);ポリメラーゼとは独立した増幅(例えば、Schmidtら、(1997) NUCLEICACIDS RES.25:4797−4802を参照のこと)、およびクローニングしたDNAフラグメントを保有するプラスミドのインビボでの増幅が挙げられる。PCR方法の記述は、例えば、Saikiら、(1985)SCIENCE 230:1350−1354;Scharfら、(1986)SCIENCE 233:1076−1078;および米国特許第4,683,202号中に見出される。リガーゼ媒介増幅方法(例えば、リガーゼ連鎖反応(LCR)もまた使用され得る。一般に、選択された核酸配列の正確で、効率の良い増幅を可能にする任意の方法が、本発明の方法において使用され得る。増幅後の配列の比例した発現量が、増幅前の混合物中の配列の相対的な比率を反映することが、必要ではないが、そうであることが好ましい。
非天然のヌクレオチドに関しては、効率的な増幅手順の選択範囲は少ない。非天然のヌクレオチドは、特定の酵素(ポリメラーゼを含む)によって組み込まれ得るので、各伸長サイクルの間に、ポリメラーゼを添加することによって、手動でポリメラーゼ連鎖反応を行なうことが可能である。
ヌクレオチドアナログを含むオリゴヌクレオチドに関しては、増幅のための方法は、少数しか存在しない。非酵素媒介性の増幅スキームが使用されてもよい(Schmidtら、(1997) NUCLEIC ACIDS RES.25:4797−4802)。中心を改変したオリゴヌクレオチド(backbone−modified oligonucleotide)(例えば、PNAおよびLNA)に関しては、この増幅方法が使用され得る。あるいは、標準的PCRを使用して、PNAオリゴヌクレオチドテンプレートまたはLNAオリゴヌクレオチドテンプレートからDNAを増幅し得る。テンプレートを増幅する前、もしくは、その間、またはテンプレートを相補する前、もしくはその間に、変異誘発または組換えさせて、次のラウンドの選択またはスクリーニングのための展開したライブラリーを作り出す。
((vii)配列決定)
配列決定は、標準的ジデオキシ鎖末端方法、または化学的配列決定(例えば、Maxam−Gilbert配列決定手順を使用する)によってなされ得る。あるいは、テンプレート(または、長いテンプレートが使用される場合、その可変部分)の配列決定は、チップへのハイブリダイゼーションによって決定され得る(実施例12を参照のこと)。例えば、検出可能部分(例えば、蛍光部分)と結合した一本鎖テンプレート分子は、一本鎖核酸または公知の配列の核酸アナログの多数のクローン集団を有するチップ上に露出され、各クローン集団は、チップ上の特定のアドレス可能な位置に存在する。テンプレート配列は、チップ配列にアニーリングすることが可能になる。次いで、検出可能部分のチップ上の位置が、決定される。検出可能部分の位置およびその位置に固定化された配列に基づいて、テンプレートの配列が決定され得る。多数のこのようなオリゴヌクレオチドが、チップまたは他の固体支持体上のアレイに固定され得ることが企図される。
(viii)多様化)
本発明のライブラリーは、DNAレベルで変異を導入する(例えば、誤りがちのPCR(Error−Prone PCR)(Cadwellら(1992) PCR METHODS APPL.2:28))ことによって、またはDNAをインビトロの相同組み換えに供する(Stemmer(1994)PROC.NATL.ACAD.SCI.USA 91:10747;Stemmer(1994)NATURE 370:389)ことによって、展開され得る。
変異および組換えを使用する低分子の展開は、単純な富化を越える二つの強力な利点を提供する。ライブラリーの全体の多様性が、作製される分子の数(代表的に、1012〜1015)より非常に少ない場合、全ての可能なライブラリーメンバーが選択の開始時に存在する。この場合、選択条件が、展開の進行のラウンドにつれて変化し得るので、多様化はなお有効である。例えば、選択のより後のラウンドは、高ストリンジェンシーの下で実施され得、非標的分子への結合に対する対抗選択に関与し得る。多様化は、選択のより早いラウンドの間に捨てられるライブラリーメンバーに、選択条件の変化した、その適性が、他のメンバーに比較してより大きい、後のラウンドで再び現れる機会を与える。さらに、1015分子より大きい理論上の多様性を有する合成ライブラリーを生成することが事実上可能である。この場合、多様性は、元のライブラリーには決して存在しない分子が、選択された分子に対する類似性に基づいて、後の選択ラウンドで現れることを可能にする。このことは、同時に、巨大なタンパク質配列空間の1つの小さな部分集合を探索するタンパク質展開の方法と類似している。
((viii)(a)誤りがちのPCR)
ランダム点変異形成は、誤りがちのPCR(Cadwelletら、(1992)PCR METHODS APPLIC. 2 :28−33)条件下でのPCR増幅工程を行なうことにより実施される。これらの分子の遺伝子コードは、天然のタンパク質の遺伝子コードが構築される様式と類似して、関連する化学基に対する関連するコドンを指定するために記載されるので、選択された分子をコードするテンプレートのランダム点変異は、化学的に関連するアナログに対する結果を多様化する。誤りがちのPCRが、本質的に、通常のPCRより効率的ではないので、誤りがちのPCRによる多様化は、好ましくは、天然のdATP,天然のdTTP、天然のdCTP、天然のdGTPのみとともに、化学的ハンドル(chemical handle)またはビオチン基を欠如するプライマーを使用して実施される。
((viii)(b)組換え)
ライブラリーは、組換えを使用して多様化され得る。例えば、組換えられるべきテンプレートは、図14に示される構造を有し得、そのコドンは、5塩基の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ切断部位(例えば、AvaII(G/GWCC、W=AまたはT)によって切断される部位、Sau96I(G/GNCC、N=A、G、T、またはC)によって切断される部位、DdeI(C/TNAG)によって切断される部位、または、HinFI(G/ANTC)によって切断される部位)によって分離される。選択後、所望の分子をコードするテンプレートは、市販の制限酵素を用いて、酵素的に消化される。次いで、消化されたフラグメントは、T4 DNAリガーゼを用いてインタクトなテンプレート中に組換えられる。コドンを分離する制限部位は、非パリンドロームであるので、テンプレートのフラグメントは、再会合のみして、インタクトな組換えテンプレートを形成し得る(図14)。DNAをテンプレートとした組換えテンプレートの翻訳は、組換え低分子を提供する。このような方法で、天然のタンパク質間でのアミノ酸残基の組換えと類似した様式で、所望の活性を有する合成低分子間の官能基が組換えられる。組換えが、点突然変異のみより効率的な分子の配列空間を探索することがよく理解される(Minshullら、(1999)CURR.OPIN.CHEM.BIOL.3:284−90;Bogaradら、(1999)PROC.NATL.ACAD.SCI.USA 96:2591−5;Stemmer NATURE 370: 389−391)。
ライブラリーメンバーを多様化する好ましい方法は、例えば、WO 02/074978;US Patent Application Publication No.2003−0027180−A1;およびBittkerら、(2002)NATURE BIOTECH.20(10):1024−9に記載されるように、相同ではないランダムな組換えを介する。
((iiiv)(c)ランダムカセット式変異形成)
ランダムカセット式変異形成は、固定した開始配列から多様化したライブラリーを作製するために有用である。従って、このような方法は、例えば、ライブラリーが選択に供され、一つ以上のライブラリーメンバーが単離され、そして配列決定された後に、使用され得る。一般に、開始配列上に変異を有するオリゴヌクレオチドのライブラリーは、従来の化学合成、誤りがちのPCR、または他の方法によって生成される。例えば、オリゴヌクレオチドのライブラリーは、コドンにおける各ヌクレオチド位置に対して、ヌクレオチドが、その位置の開始配列に対して90%の確率で同一性を有し、10%の確率で異なるように生成され得る。オリゴヌクレオチドは、合成される場合、完全なテンプレートであり得るか、またはテンプレートの多様なライブラリーを形成するために、他のオリゴヌクレオチドと後に連結したフラグメントであり得る。
(V.使用)
本発明の方法および組成物は、所望の性質を有する分子を生成するための新規の方法を示す。このアプローチは、分子生物学者が数十年間利用してきた非常に強力な遺伝的方法と有機化学の可撓性および能力を結合させる。遺伝的選択による、非天然のポリマーを調製し、増幅し、そして展開する能力は、活性、バイオアベイラビリティー、安定性、蛍光性、感光性、または、タンパク質および核酸中に見出される限定された一連の成分を使用して達成するのが困難であるかもしくは不可能である他の性質を有する新規のクラスの触媒を生じ得る。同様に、変異形成および選択の周期を繰り返すことにより、低分子を調製し、増幅し、そして展開するための新規の系を展開することにより、よりゆっくりした従来の薬物発見方法によって単離された薬物より優れた性質を有する新規のリガンドまたは薬物の単離につながり得る。
例えば、分子に選択的に結合する人工のレセプターとして、または、化学反応に対する触媒として有用な非天然の生体高分子が単離され得る。これらの分子の特徴づけは、ポリカルバメート、ポリウレア、ポリエステル、ポリカルボネート、非天然の側鎖および空間配置を有するポリペプチド、または、結合特性または触媒特性を有する二次構造または三次構造を形成するための他の非天然のポリマーの能力に重要な見識を提供する。
本発明は、さらに、新規の化学反応の発見を可能にする。化学反応の分野は、以前にはアクセスできなかった分子へのアクセスを提供する新規の化学反応の発見によって、効率の良い合成を可能にし、新規の化学的な原理を明らかにすることで、絶えず変化している。前例となる文献に基づいた反応性の予測に導かれて、化学者は、代表的に、現在の合成方法論における特定の欠点を克服するための新規反応を探索する。現在まで、多数の多様な反応物質が、多数の異なる条件下で、互いに反応するそれらの能力に関して同時に評価される、化学反応に対する広範囲の、偏りのない探索を行なうことは可能ではなかった。数千の多様な反応を実行するのに必要な物質の量およびこのような実験の結果を分析する困難さの両方は、現在の反応発見アプローチを使用するこの目的を解決困難にする。化学反応に対する広範な、偏りのない探索は、従来の見識または発明者らの官能基の反応性を予測する能力に制限されないので、魅力的である。
新規の化学反応および化学反応性を発見する本発明に方法は、既存の方法を上回るいくつかの利点を有する。例えば、いくつかの基は、種々の条件下で、特定の反応の効率を試験するための高処理スクリーニングを構築した(Kuntzら、(1999)CURR.OPIN.CHEM.BIOL.3:313−319;Francisら、(1998)CURR.OPIN.CHEM.BIOL.2:422−428;Pawlasら、(2002)J.AM.CHEM.Soc.124:3669−3679;Loberら、(2001)J.AM.CHEM.SOC.123:4366−4367;Evansら、(2002)CURR.OPIN.CHEM.BIOL.6:333−338;Taylorら、(1998)SCIENCE 280:267−270;およびStambuliら、(2001)J.AM.CHEM.SOC.123:2677−2678);しかし、このスクリーニングは小さな一組の反応型に限定されている。反応は、蛍光分光法、比色法、サーモグラフ分析、および従来のクロマトグラフィーを使用する高処理様式で、分析された(Dahmenら、(2001)SYNTHESIS−STUTTGART 1431−1449およびWennemers(2001)COMBINATORIAL CHEMISTRY & HIGH THROUGHPUT SCREENING 4:273−285)。化学反応性に対して最も高処理のスクリーニングは、小さな一組の反応型のみに対して有用である。というのは、スクリーニングは、反応の特定の性質(例えば、アミンの消失またはプロトンの生成)に依存するためである。結果として、高処理スクリーニング方法は、既知であるかまたは予測される触媒を発見するのに有用であるが、目的の反応とは異なる新規の反応性を発見するためには、あまり適していない。化学反応に対する偏りのない探索は、反応条件および反応物質の両方を、広範囲に、数千の規模の種々の反応で実用的な高効率の様式で、試験する。化学反応を発見する本発明の方法は、反応性への新規の見識および化学合成に対して有用な新規の反応を導き得る予期しない、前例のない反応性を発見する機会をより多く提供する。
反応物および条件の非常に大きく、かつ、多様な収集物から新規の反応を発見することは、(1)特定の基質または生成物に依存しない反応性のための一般的なアッセイ、および(2)反応条件の空間および反応物質の空間が広く探索されるようなアッセイ反応の全体的な効率の上昇、を必要とする。例えば、触媒核酸を展開する研究者は、日常的に、核酸を展開するプールに一つの反応物質を接触させ、別の反応物質を、容易に固定化され得るハンドル(例えば、ビオチン)に結合することによって、結合形成触媒を選択する(Wilsonら(1999)ANNU.REV.BIOCHEM.68:611−647;Jaschke(2001)CURR.OPIN.STRUCT.BIOL.11:321−326;Jaschkeら、(2000)CURR.OPIN.CHEM.BIOL.4:257−262;Jaschke(2001)BIOL.CHEM.382:1321−1325)。活性な核酸は、ハンドルに結合するようになり、そして、不活性な配列から分離される。この型の選択は、特定の基質および生成物の消費または生成に依存しないので、この選択の型で試験され得る反応物の範囲は、現在の反応性スクリーニングで評価され得る反応物の範囲より大きい。
核酸テンプレート合成は、核酸触媒に依存しない新規の化学反応性を発見するために、結合形成の選択を使用する方法を提供する(Gartnerら、(2002)、ANGEW.CHEM.INT.ED.41:1796−1800;Gartnerら、(2001)前出)。核酸テンプレートは、反応幾何学(reaction geometry)に対して、明白な必要条件なしに、高い配列特異的様式で、広範な種々の化学反応に関連し得る。反応物を適切に設計した核酸配列に付着させることによって、前例のない数千の反応物を、各反応物をコードする個々の配列を含む単一のポット(pot)中で試験することが可能になる。核酸の結合した反応物のプールは、第二核酸結合反応物プールのメンバーとの共有結合形成に関して、正確に選択される。PCR増幅およびDNA配列決定は、反応物のどの組合せが、結合形成を首尾よく受けるかを明らかにする。
特定の実施形態において、検索可能な反応は、水性培地または実質的に水性培地中で生じ得る変化である。他の実施形態において、検索可能な反応は、核酸を迅速に、分解しない反応に制限される。DNAの公知の化学的頑健性は、異なる温度、pH範囲、および添加剤(例えば、遷移金属)に及ぶ広範な反応条件が、提案したアプローチに適合性であることを示唆している。DNAテンプレートHeck反応は、遷移金属触媒反応が、DNAテンプレートフォーマット中で、実行可能であることを示し、このことは、DNAが多くの遷移金属複合体(Pd、Ni、Mn、Pt、Ru、Os、Cu、Eu、およびRhを含有するものが挙げられる)と適合性であるという広範な証拠(Patolskyら、(2002)J.AM.CHEM.SOC.124:770−772;Weizmanら、(2002)J.AM.CHEM.SOC.124:1568−1569;Gartnerら、(2002)ANGEW.CHEM.INT.ED.41:1796−1800;Czlapinskiら、(2001)J.AM.CHEM.SOC.123:8618−8619;Holmlinら、(1998)J.AM.CHEM.SOC.120:9724−9725;Bashkinら、(1994)J.AM.CHEM.SOC.116:5981−5982;Magdaら、(1994)J.AM.CHEM.SOC.116;7439−7440;および、Dandlikerら、(1997)SCIENCE 275:1465−1468)と一致する。さらに、公知の水適合性有機反応物の数の急速な増加(Liら、Organic reaction in aqueous media、Wiley and Sons、New York、1997)および水性溶媒中で作用することの固有の利点は、新規の反応の発見に関して水が、リッチな培地であることを示唆する。この試みにおいて、発見された反応は、核酸をテンプレートとしない標準的な様式で実施される場合、一般的に有用であり得、そして、核酸テンプレート合成ライブラリーを生成するのに使用するための天然の候補でもある。
核酸テンプレート化学物質は、反応物の構造に無関係に、新規の結合形成反応を探索するのに効率的な特定の実施形態において、インビトロの選択およびPCR増幅と組み合わされる。共有結合形成、分析に必要な最小スケール、および広範な種々の反応条件と核酸との適合性を直接選択する能力は、一つ以上の実験における反応物の数千の組合せおよび反応条件を試験し得る前例のない反応性に対する第一の探索を可能にし得る。
反応の一般性およびDNAテンプレート合成の隔たりのある独立性は、選択による新規の化学反応を発見するための系を可能にする。結合形成に関してインビボでの選択に適した、DNAを結合した反応物(例えば、テンプレートおよび/または移動単位)は、図9のプールAおよびプールBと呼ばれる一つまたは二つの形態で存在する。プールBの各反応物は、官能基をコードするビオチン化したDNA(コード領域)の短い断片に結合した、試験された官能基を含む。プールAの各反応物は、試験された、対応するコード領域である官能基、およびプールBのコード領域の一つを補完する「アニーリング領域」またはアンチコドンである官能基を含む。プールA中の各官能基は、全ての可能なアニーリング領域の一つに結合する。この配置は、プールA中の任意の官能基が、同一のDNA二本鎖上のプールB中の任意の官能基に結合することを可能にし、このことは、反応物質が相互に反応性である場合、DNAテンプレート結合形成に対する機会を提供する。結合形成のためのインビトロ選択に適したフォーマット中のDNAを結合した反応物質のこれらの二つのプールは、低分子反応物質、コード領域、およびプールAの場合には、アニーリング領域のライブラリーを効率的に会合させる方法の開発を必要とする。
本発明の系は、低分子/標的の結合の対の同定に、特に有用である。例えば、本発明のDNAテンプレート低分子ライブラリーは、標的ライブラリー中の一つ以上の化合物に結合するか、またはそれらと相互作用する本発明のライブラリー内の低分子が同定されるように、他の溶液または潜在的な標的化合物の固相ライブラリーと接触され得る。好ましくは、結合対は、選択(例えば、成分の一つのタグ付けによる選択、もう一方を同定するためのPCRと組み合わせた選択)によって同定され得る。本発明のこの局面の特定の好ましい実施形態において、標的ライブラリーは、ポリペプチドおよび/またはタンパク質を含む。
本明細書中で記載されるとおり、本発明はまた、核酸テンプレート合成の新規モデルを提供し、それは、同時に適合しない反応物および単一のポットの複数の工程の連続した合成(例えば、特定の配列の単一のトリペプチドのみが生成されるように、三つのDNA結合アミノ酸および一つのテンプレートをインキュベートする)を含む。本発明はまた、有機溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド)中の核酸テンプレート合成を提供する。
本発明の系のなお別の適用は、核酸テンプレート合成に対する新規のテンプレートを同定し、そして/または展開することである。例えば、本発明は、各種の生成物を産生する反応に関与するのに十分な薬剤と接触する場合、最も有効に生成物の生成を導く核酸テンプレートの同定を可能にする。
本発明はまた、化学反応経路の開発に通じるのに有用な情報を提供する。例えば、本発明に従うと、研究者は、複合的な化学反応(例えば、ビオチン脱離基の喪失によって選択され得る大環状化)が生じることを可能にする核酸テンプレート基質のライブラリー内から選択し得る。首尾よく反応条件が同定される場合、本発明系は、関与する成分の容易な同定を可能にする。従って、新規の化学反応は、その反応に有用である可能性のある試薬および/または経路のこれまでの知識なしに開発され得る。
(VI.キット)
本発明はまた、本発明の方法に使用するためのキットおよび組成物を提供する。キットは、本発明を実施するのに有用な任意のアイテムまたは組成物を含み得る。キットは、テンプレート(例えば、へリックスの末端構造、ヘアピン構造、オメガ構造、およびT構造)、アンチコドン、移動単位、モノマー単位、構築物、反応物質、低分子骨格、緩衝液、溶媒、酵素(例えば、熱安定性ポリメラーゼ、逆転写酵素、リガーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼ、Klenowフラグメント、ポリメラーゼ、アルカリホスファターゼ、ポリヌクレオチドキナーゼ)、リンカー、保護基、ポリヌクレオチド、ヌクレオシド、ヌクレオチド、塩、酸、塩基、固体支持体、またはこれらの任意の組合せを備え得るが、これらに限定されない。
非天然のポリマーを調製するためのキットは、本明細書中に記載される方法を使用する非天然のポリマーを調製するために必要なアイテムを備えるべきである。このようなキットは、テンプレート、アンチコドン、移動単位、モノマー単位、またはこれらの組合せを備え得る。低分子を合成するためのキットは、テンプレート、アンチコドン、移動単位、構築物、低分子骨格、またはこれらの組合せを備え得る。
本発明のキットはまた、ポリヌクレオチドテンプレートを増幅し、そして/または展開するために必要なアイテム(例えば、PCRに対しては、熱安定性ポリメラーゼ、ヌクレオチド、緩衝液およびプライマー)を備え得る。他の特定の実施形態において、本発明のキットは、DNA混合を行なうのに一般的に使用されるアイテム(例えば、ポリヌクレオチド、リガーゼ、およびヌクレオチド)を備える。
本明細書中に記載されるテンプレートおよび移動単位に加えて、本発明はまた、複合低分子、骨格、または本明細書中に記載される本発明の方法の任意の一つ以上によって調製される非天然のポリマーを含有する組成物を含む。
新規の化学反応または官能性を同定するためのキットは、反応性単位(反応物質)と関連するテンプレート、反応性単位(反応物質)と関連する移動単位、試薬、酸、塩基、触媒、溶媒、ビオチン、アビジン、アビジンビーズなどを備え得る。キットはまた、反応基と関連するテンプレートを生成するための試薬(例えば、ビオチン、ポリヌクレオチド、反応性単位、DNA pol IのKlenowフラグメント、ヌクレオチド、アビジンビーズなど)を備え得る。キットはまた、PCRのための試薬(例えば、緩衝液、熱安定性ポリメラーゼ、ヌクレオチド、プライマーなど)を備え得る。
以下の実施例は、本発明の種々の実施形態およびそれらの等価物における本発明の実施に適用され得るさらなる重要な情報、例示および手引きを含む。
実施例1および実施例2は、核酸テンプレート合成に使用するための材料の調製を記載し、特定の合成反応を記載する。実施例3は、多工程の合成を議論する。実施例4は、核酸テンプレート合成と、有機溶媒との適合性を記載する。実施例5は、特定のDNAテンプレート合成の実施に有用な特定のテンプレート構築物を記載する。実施例6は、核酸テンプレート合成における立体選択性を記載する。実施例7は、単一の溶液中での別の不適合な反応に関するDNAテンプレート合成の使用を記載する。実施例8は、核酸テンプレート合成によって実施され得る官能基の変換反応を記載する。実施例9は、例示的な化合物およびライブラリーの合成を記載する。実施例10は、DNAを非天然のポリマーに翻訳するためのポリメラーゼの使用を記載する。実施例11は、インビトロの選択プロトコルを記載する。実施例12は、新規の化学反応の発見に対するDNAテンプレート合成の適用を記載する。
(実施例1:大多数のDNAテンプレート合成)
核酸テンプレート合成は、極端に用途が広く、種々の化学的化合物の合成を可能にする。この実施例は、二つの異なるDNAテンプレート構築物を使用するDNAテンプレート合成を実施することが可能であることを示す。
図15に示されるように、求電子性マレイミド基を有するヘアピン(H)構築物またはへリックスの末端(E)構築物を備えるテンプレートを調製し、それらの、チオール試薬と関連する相補的DNAオリゴヌクレオチドを含む移動単位との反応性を試験した。HテンプレートおよびEテンプレートの両方が、DNAを結合したチオールの等価物の一つと効率良く反応し、25℃で数分間でチオエステル生成物を産生した。DNAテンプレート反応の速度(Kapp=約105M−1s−1)は、それらの反応基の相対的な向きの違いにも関わらず、H構築物およびE構築物に関して類似していた。対照的に、不一致の配列を含む試薬を使用する場合、または、過剰のβ−メルカプトエタノールを用いて前もってクエンチしたテンプレートを使用する場合、生成物は、観察されなかった(図15を参照のこと)。従って、生じる生成物の構造が天然のDNAバックボーンの構造とは著しく異なっていても両方のDNAテンプレートとも配列特異的DNAテンプレート反応を補助する。テンプレートとしない分子間の反応生成物は、DNAテンプレート反応の特異性を示すその反応条件下(pH7.5、25℃、250mM NaCl、60nM テンプレート移動単位)では、ほとんど観察されないか、全く観察されなかった。
実際、種々の反応型(SN2置換、α,β−不飽和カルボニル系およびビニルスルフォンへの添加剤)、求核試薬(チオールおよびアミン)および反応物質の構造に及ぶ配列特異的DNAテンプレート反応は、全て、良好な収率および卓越した配列選択性を伴なって進行した。チオール(S)または第一級アミン(N)に結合した、適合した(M)かまたは適合しない(X)試薬を、図16に示した種々の求電子試薬で官能性を持たせた1当量のテンプレートと混合した。チオール試薬との反応を、pH7.5で以下の条件下で行なった:SIABおよびSBAP:37℃、16時間;SIA:25℃、16時間、SMCC、GMBS、BMPS、SVSB:25℃、10分間。アミン試薬との反応を、25℃で、pH8.5で、75分間行なった。予期される生成物の量は、質量分析によって確認した。各場合、不適合の試薬ではなく、適合した試薬は、遷移状態の幾何学におけるかなりの変異、立体障害、高次構造上の可塑性にも関わらず、効率的に生成物を生じた。集合的に、これらの発見は、核酸テンプレート合成が、種々の反応型を補助し得る一般的現象であって、核酸バックボーンに類似する構造の作製に限定されないことを示唆する。
配列識別能は、核酸の合成反応性生物への正確な翻訳に関して重要である。DNAテンプレート合成の配列識別能を試験するために、ヨードアセトアミド基に結合したヘアピンテンプレートを、0、1または3の不適合物を含むチオール含有移動単位と反応させた。25℃で、不適合物を含まないチオール含有移動単位の初期の反応速度は、単一の不適合物を含む移動単位の反応速度より200倍速かった(kapp=2.4×104M−1s−1対1.1×102M−1s−1;図17A)
さらに、不適合の試薬のアニーリングから生じる少量の生成物は、反応温度を、不適合試薬の融解温度Tmを上回るまで上昇させることによって、除去し得る(図17B)。図17B中では、図17Bの反応は、示した温度で16時間繰り返される。計算した試薬のTm値は、38℃(適合)および28℃(単一の不適合)であった。生成物の形成と温度との間の反比例関係は、生成物形成が単純な分子間の機構ではなく、むしろDNAテンプレート機構によって進行することを示す。
反応の一般性および配列特異性に加えて、DNAテンプレート合成はまた、特定の状況下で、顕著な距離依存性を示す。マレイミド基またはα−ヨードアセトアミド基に連結されたHテンプレートおよびEテンプレートの両方は、これまで試験したテンプレート上のどこにでも(テンプレート上の反応基から30塩基まで離れても)アニールした不適合ではない、適合したチオール試薬を用いて配列特異性反応を促進した。1塩基離れてアニールされた反応物は、2塩基、3塩基、4塩基、6塩基、8塩基、10塩基、15塩基、20塩基、または30塩基離れてアニールされた反応物と同様な速度で反応した(図18)。41塩基のEテンプレートおよび10塩基の試薬を使用した図18に示される反応は、テンプレートの5’末端から1〜30塩基にアニーリングするように設計された。図18の動力学的プロフィールは、2回の試行の平均を示す(偏差<10%)。「n=1ミス」試薬は、3個の不適合を含んでいた。全ての場合において、テンプレート反応速度は、テンプレートなし(ミスマッチ)の反応の速度よりも数百倍速い(kapp=104〜105M−1s−1対5×101M−1s−1)。30塩基の介在性の距離で、生成物は、おそらく200員環に似ている遷移状態を通じて効率的に形成される。
DNAテンプレート合成の距離非依存性の原理をさらに特徴付けるために、一連の修飾Eテンプレートが、初めて合成され、ここで、介在性塩基は、(i)塩基間相互作用、(ii)DNA骨格のコンフォメーションの優先度、(iii)荷電したリン酸骨格、および(iv)骨格の親水性の可能な寄与を評価するために設計された一連のDNAアナログによって置換された。介在性塩基が図19におけるアナログのいずれかと置換されたテンプレートは、生成物形成の速度に対してほとんど影響しなかった。
図19に示される実験において、図18におけるn=10の反応は、5’−NH2−dTの後の9塩基が示された骨格アナログで置換されたテンプレートを使用して繰り返された。介在性の塩基に相補的なDNAオリゴヌクレオチドの五つの等価物を、「DNA+クランプ(clamp)」反応に添加した。試薬は、(0)に完全に適合したか、または三個の不適合(3)を含むかのいずれかであった。ゲルは、25℃での25分後の反応を示す。図19は、DNAに特異的な骨格構造エレメントが、DNAテンプレート合成に依存しない観察された距離の原因ではないことを示す。しかし、一本鎖介在性領域に相補的な10塩基DNAオリゴヌクレオチド「クランプ」の付加は、有意に生成物形成を減少させ(図19)、このことは、この領域の柔軟性が、効率的なDNAテンプレート合成に重要であることを示唆する。
距離非依存性反応速度は、DNAテンプレートフォーマットにおける結合形成現象が、これらの非テンプレート対応物に対して十分に加速され、その結果、結合形成ではなく、むしろ、DNAアニーリングが律速である場合に説明され得る。従って、DNAアニーリングが少なくとも部分的に律速である場合、生成物形成の速度は、試薬の濃度が低下するにつれて減少するはずである。なぜなら、テンプレート結合形成とは異なり、アニーリングは、二分子過程であるからである。図20は、実験の結果を示し、図18に記載されるn=1、n=10、およびn=1の不適合の(mis)反応は、テンプレートおよび12.5nM、25nM、62.5nM、または125nMの試薬濃度を用いて繰り返した。図20は、反応基間の1〜10の介在性塩基を有するEテンプレートの場合には、反応物の濃度の減少は、観測される反応速度の顕著な減少をもたらしたことを示す。この観察は、DNAテンプレート合成における近接効果が、DNAアニーリングが律速になるまで結合形成速度を増強し得ることを示唆する。
これらの知見は、DNAのワンポットライブラリーを、PCR増幅および選択について適切な合成分子の溶液相ライブラリーへ変換するために、DNAテンプレート合成を使用する可能性をもたらす。上記の配列特異性は、試薬の混合物が、予想されたとおりに、テンプレートの相補的な混合物と反応し得ることを示唆する。最終的に、観察された距離非依存性は、異なるテンプレートコドンが、反応速度を減少することなく異なる反応をコードするように使用され得ることを示唆する。
このアプローチの実証として、8塩基コード領域において各々異なるDNA配列を有する、1,025のマレイミド連結テンプレートのライブラリーを合成した(図21A〜図21B)。これらの配列の1つ、5’−TGACGGGT−3’は、テンプレートへのビオチン基の結合をコードするために任意に選択された。1,025の異なるオリゴヌクレオチドに連結されたチオール試薬のライブラリーもまた作成された。3’−ACTGCCCA−5’に連結された試薬は、ビオチン基を含んだが、他の1,024の試薬(移動単位)は、ビオチンを含まなかった。等モル比の全ての1,025のテンプレートと1,025の試薬とは、25℃で10分間ワンポットで混合され、そして得られた生成物は、ストレプトアビジンへの結合についてインビトロで選択された。この選択で残存する分子は、PCRによって増幅され、そして制限消化およびDNA配列決定によって分析された。
制限エンドヌクレアーゼTsp45I(これは、GTGACを切断し、従ってビオチンコードテンプレートを切断するが、他のテンプレートのいずれも切断しない)を用いる消化は、1:1の比の選択後の非ビオチンコードテンプレートに対するビオチンコードテンプレートを示した。図22Aに示される実験では、レーン1およびレーン5は、ストレプトアビジン結合選択前のPCR増幅ライブラリーを表し;レーン2およびレーン6は、選択後のPCR増幅ライブラリーを表し、;レーン3およびレーン7は、PCR増幅した真のビオチンコードテンプレートを表し、;そして、レーン4は、20bpのラダーを表す。レーン5〜レーン7は、Tsp45Iで消化した。選択前後の増幅したテンプレートのDNA配列決定の記録もまた、ビオチンをコードしないテンプレートの配列およびビオチンをコードするテンプレートの配列と一緒に示す。図22Aに要約した結果は、選択されなかったライブラリーと比較して、1,000倍の富化を示す。選択前後のPCR増幅したプールのDNA配列決定は、類似した程度の富化を示唆し、そして、ビオチンをコードするテンプレートが、選択および増幅後の主要な生成物であることを示した(図22A)。
1,025の試薬の同時配列特異性反応を支持するDNAテンプレート合成の能力(これらの各々は、1,024:1の比率のパートナーのテンプレートに対する非パートナーのテンプレートに直面する)は、ワンポットでの合成ライブラリを生成するための方法としてその可能性を示す。
総合すると、これらの結果は、図22Bに示される特異的特性(例えば、アビジンへの結合)を有する合成ライブラリーメンバーを翻訳し、選択し、そして増幅することが可能であることを示している。さらに、これらの結果は、核酸テンプレート合成が、核酸骨格に対する構造に関連しない生成物を形成するための種々の化学反応物質を単にコードするのではなく、それらの化学反応物質に関連し得る驚くほど一般的な現象であることを示唆している。試験したいくつかの反応に関しては、DNAテンプレートフォーマットは、結合形成の速度を、10塩基のDNAオリゴヌクレオチドの、その相補体へのアニーリングの速度より速く加速し、その結果驚くべき距離の非依存性を生じる。長い距離のDNAテンプレート反応の手軽な性質はまた、非極性の反応物質の体積を縮小する水の性質(C.−J.Liら、Organic Reactions in Aqueous Media,Wiley and Sons:New York,1997を参照のこと)および反応基間の介在性一本鎖DNAの考えられる緻密さ(compactness)に、一部起因し得る。
(材料および方法)
(DNA合成) DNAオリゴヌクレオチドを、標準的なプロトコルを用いてPerSeptive Biosystems Expedite 8909 DNA合成機で合成し、そして逆相HPLCによって精製した。オリゴヌクレオチドを、分光光度的および変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)に続くエチジウムブロマイドまたはSYBR Green(Molecular Probes)を用いる染色およびStratagene Eagle Eye II濃度計を用いる定量化によって定量化した。ホスホルアミダイト(5’−NH2−dT基、5’テトラクロロフルオレセイン基、無塩基の骨格スペーサー基、C3骨格スペーサー基、9−結合ポリエチレングリコールスペーサー基、12−結合飽和炭化水素スペーサー基、および5’ビオチン基の合成を可能にする)を、Glen Research、Sterling、Virginia、USAから購入した。チオール連結オリゴヌクレオチド試薬を、C3ジスルフィドコントロールドポアガラス(Glen Research、Sterling、Virginia、USA)上で合成した。
(テンプレートの官能化) 5’−NH2−dT基を有するテンプレートを、適切な求電子性N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル(Pierce、Rockford、IL、USA)を用いる反応によって種々の求電子性官能基に変換した。反応を、2mg/mL求電子性NHSエステル、10% ジメチルスルホキシド(DMSO)、および100μgまでの5’−アミノテンプレートを含む200mMリン酸ナトリウム(pH7.2)中で25℃で1時間実施した。所望の生成物を、逆相HPLCによって精製し、そしてゲル電気泳動およびMALDI質量分析法によって特徴付けた。
(DNAテンプレート合成反応) 反応を、所望の温度(他に述べられない限り25℃)で、50mM N−[3−モルホリノプロパン]スルホン酸(MOPS)(pH7.5)および250mM NaClを含む緩衝液中で、等モル量の試薬(移動単位)およびテンプレートを混合することによって開始した。試薬およびテンプレートの濃度は、他に示されない限り60nMであった。種々の時点で、アリコートを取り出し、過剰のβ−メルカプトエタノールでクエンチし、そして変性PAGEによって分析した。反応生成物を、これらの固有の蛍光を用いるデンシトメトリーによってか、染色後のデンシトメトリーによって定量化した。代表的な生成物をまた、MALDI質量分析法によって確認した。
(アビジン結合についてのインビトロでの選択) ライブラリ変換反応の生成物(図21A〜図21B)を、エタノール沈澱によって単離し、そして結合緩衝液(10mM Tris(pH8)、1M NaCl、10mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)中に溶解した。生成物を、30μgのストレプトアビジン連結磁気ビーズ(Roche Biosciences)とともに100μLの全容積で室温で10分間インキュベートした。ビーズを、結合緩衝液で16回洗浄し、そして70℃で10分間100μLの結合緩衝液中の1μmolの遊離ビオチンでの処理によって溶出した。溶出した分子を、エタノール沈澱によって単離し、そしてプライマー5’−TGGTGCGGAGCCGCCG(配列番号35)およびプライマー5’−CCACTGTCCGTGGCGCGACCCCGGCTCCTCGGCTCGG(配列番号36)を用いて、標準的なPCRプロトコル(2mM MgCl2、55℃のアニーリング、20サイクル)によって増幅した。自動DNA配列決定は、プライマー5’−CCACTGTCCGTGGCGCGACCC(配列番号37)を使用した。
(DNA配列決定) 図において提供されていない配列は、以下の通りである:図16 SIAB反応およびSBAP反応において適合した試薬:5’−CCCGAGTCGAAGTCGTACC−SH(配列番号38);図16 SIAB反応およびSBAP反応において不適合な試薬:5’−GGGCTCAGCTTCCCCATAA−SH(配列番号39);図16、および図17A〜図17Bにおける他の反応についての不適合な試薬;5’−FAAATCTTCCC−SH(F=テトラクロロフルオレセイン)(配列番号40);1つのミスマッチを含む図16における試薬:5’−FAATTCTTACC−SH(配列番号41);図15、図16、SMCC反応、GMBS反応、BMPS反応、およびSVSB反応、ならびに図17A〜図17B:におけるEテンプレート:5’−(NH2dT)−CGCGAGCGTACGCTCGCGATGGTACGAATTCGACTCGGGAATACCACCTTCGACTCGAGG(配列番号42);図16、SIAB反応、SBAP反応、およびSIA反応におけるHテンプレート:5’−(NH2dT)−CGCGAGCGTACGCTCGCGATGGTACGAATTC(配列番号43);図19におけるクランプオリゴヌクレオチド:5’−ATTCGTACCA(配列番号44)。
(実施例2:DNAテンプレート合成における使用のための例示的な反応:)
この実施例は、DNAテンプレート合成が、反応基のDNAに類似する構造に対する正確な配列を必要とすることなく、化学反応の適度な収集に関連し得ることを示す。さらに、この実施例はまた、1000を越えるテンプレートのライブラリーを、対応するチオエステル生成物へと、同時にワンポットで同時に変換させ、これらの一つを、ストレプトアビジンへの結合についてインビトロでの選択によって富化し、そしてPCRによって増幅することが可能であることを示す。
本明細書中で詳細に記載されるように、種々の化学反応(例えば、ピリミジン光二量体化以外のDNAテンプレート有機金属カップリング反応および炭素―炭素結合形成反応)が、低分子を構築するために、使用され得る。これらの反応は、多様なセットの構造のDNAテンプレート構築物を可能にすることによって、非天然の合成分子のインビトロでの発展に向けて、重要な工程を示している。
主要な反応物に加えて、非DNA連結の活性化剤、触媒または他の試薬を必要とする反応に関するDNAテンプレート合成の能力もまた、本明細書中において示されている。DNAテンプレート骨格の構造的模倣を必要とせずに、このような反応を媒介するDNAテンプレート合成の能力を試験するために、アミン連結テンプレート(1)とベンズアルデヒド連結試薬またはグリオキサール連結試薬(3)との間のDNAテンプレート還元的アミノ化を、ミリモル濃度のシアノホウ化水素ナトリウム(NaBH3CN)と共に室温にて水溶液中で実施し得る(図23Aを参照のこと)。重要なことに、テンプレート配列および試薬配列が相補的であった場合、生成物が効率的に形成したが、試薬の配列がテンプレートの配列と相補的でなかった場合のコントロール反応、またはNaBH3CNを除外した場合のコントロール反応は、有意な生成物を与えなかった(図23A〜図23Dおよび図24を参照のこと)。二本鎖DNAの構造をしっかりと模倣する生成物を生成するためのDNAテンプレート還元的アミノ化は、すでに報告されている(例えば、Liら、(2002)J.AM.CHEM.SOC.、124、746およびGatら、(1998)BIOPOLYMERS、48,19を参照のこと)が、上記の結果は、ホスホリボース骨格に無関係の構造を生成するための還元的アミノ化が、効率的かつ配列特異的に起こり得ることを示している。
図25A〜図25Bを参照すると、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC)およびN−ヒドロキシルスルホスクシンイミド(スルホ−NHS)によって媒介される、アミン連結テンプレート4および5とカルボキシレート連結試薬6〜9との間のDNAテンプレートアミド結合形成は、pH6.0、25℃で良好な収率でアミド生成物を生成する。生成物の形成は、(i)配列特異的であり、(ii)EDCの存在に依存し、そして(iii)アミンまたはカルボキシレートの立体障害に対して非感受性であった。効率的なDNAテンプレートアミド形成はまた、EDCおよびスルホ−NHSの代わりに、水溶性活性化剤4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)によって媒介された(図24および図25A〜図25B)。多数の市販のキラルのアミンおよびカルボン酸とともに、これらの条件下でのDNAをテンプレートとするアミド結合形成の効率および一般性は、この反応を構造的に多種多様な低分子ライブラリーの今後のDNAテンプレート合成における魅力的な候補にする。
炭素−炭素結合形成反応はまた、化学合成および生物学的合成の両方で重要であり、従っていくつかのこのような反応が核酸テンプレートフォーマットで利用され得る。ニトロアルカン連結試薬(10)とアルデヒド連結テンプレート(11)との反応(ニトロ−アルドール反応またはHenry反応)およびマレイミド連結テンプレート(12)への10の共役付加(ニトロ−Michael付加)の両方は、pH7.5〜8.5、25℃で効率的かつ高い配列特異性で進行した(図23Aおよび図24)。さらに、安定化リンイリド(phosphorus ylide)試薬13とアルデヒド連結テンプレート14または11との間の配列特異的DNAテンプレートWittig反応は、pH6.0〜8.0、25℃にて優れた収率で、対応するオレフィン生成物を与えた(図23Bおよび図24)。同様に、ニトロン連結試薬15および16とオレフィン連結テンプレート12、17または18との間のDNAテンプレート1,3−双極性付加環化もまた、pH7.5、25℃で配列特異的に生成物を与えた(図23B、図23Cおよび図24)。
上記される反応に加えて、有機金属カップリング反応もまた、本発明において利用され得る。例えば、DNAテンプレートHeck反応を、水溶性Pdプレ触媒の存在下で実施した。マレイミド12、アクリルアミド17、ビニルスルホン18またはシナムアミド(cinnamamide)20を含む170mM Na2PdCl4、ヨウ化アリール連結試薬19および種々のオレフィン連結テンプレートの存在下では、pH5.0、25℃で適度な収率のHeckカップリング生成物を与えた(図23Dおよび図24)。オレフィン17、18および20を用いるカップリングについて、テンプレートおよび試薬の添加に先立って、1当量のPdあたり2当量のP(p−SO3C6H4)3を添加すると、代表的には、2倍まで全収率が増加した。配列ミスマッチを含むコントロール反応またはPdプレ触媒を欠いているコントロール反応は、生成物を与えなかった。
上記実施例1は、特定のDNAテンプレート反応が、距離非依存性を示すことを示す。距離非依存性は、DNAテンプレート反応における結合形成の速度がテンプレート−試薬のアニーリングの速度より大きい場合に生じ得る。DNAテンプレート反応は、テンプレート−試薬アニーリングの速度より大きい。化学的性質の部分集合のみがこのカテゴリーに分類されるが、試薬がテンプレートの反応性端から種々の距離でアニールされる場合、比較できる生成物収率をもたらす任意のDNAテンプレート反応は、特定の関心事である。なぜなら、DNAテンプレート反応は、種々のテンプレートの位置でコードされ得るからである。反応物が、コードしているライブラリーに対する距離によって分離される場合、効率的に生じる、この実施例における、開発されたDNAテンプレート反応の能力を評価するために、還元的アミノ化、アミド形成、ニトロ−アルドール付加、ニトロ−Michael付加、Wittigオレフィン化、双極性付加環化、およびHeckカップリング反応の収率を、0塩基(n=0)または10塩基(n=10)がアニールされた反応性基を分離した場合(図26A)に比較した。本明細書中で記載される反応または実施例1中の反応のうちで、マレイミドに対するアミド結合形成、ニトロ−アルドール付加、Wittigオレフィン化、Heckカップリング、チオールのマレイミドへの共役付加、およびチオールとα−ヨードアミドとの間のSN2反応は、反応性基が0塩基または10塩基で分離される場合に、比較可能な生成物形成を示す(図26B)。図26Bは、アニールした反応物質を分離する0塩基(レーン1〜3)または10塩基(レーン4〜6)のどちらかで、相補的な11と13との間のDNAテンプレートWittigオレフィン化の変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示す。n=0およびn=10の反応物質に対する見かけの2乗の速度定数は、3倍異なる(kapp(n=0)=9.9×103M−1s−1に対して、kapp(n=10)=3.5×103M−1s−1)が、両方の距離で、13時間後に、生じる生成物は、ほぼ定量的である。配列の不適合を含むコントロール反応は、検出可能な生成物を産生しない。これらの発見は、これらの反応物が、生成物の形成を顕著に損なうことなく、テンプレートの反応性末端から離れたヌクレオチドによって、合成の間に、コードされ得ることを示唆する。
直接上記されるDNAテンプレートSN2反応、共役付加反応、ビニルスルホン付加反応、アミド結合形成反応、還元的アミノ化反応、ニトロ−アルドール反応(Henry反応)、ニトロMichael反応、Wittigオレフィン化反応、1,3−双極性付加環化反応およびHeckカップリング反応に加えて、種々のさらなる試薬もまた、本発明の方法において利用され得る。例えば、図27に示されるように、有力な水性DNAテンプレート合成反応としては、限定することなく、Lewis酸触媒化アルドール付加反応、Mannich反応、Robinson環化(annulation)反応、ケトンおよびアルデヒドへのアリルインジウム、亜鉛および錫の付加反応、Pd補助アリル置換反応、Diels−Alder付加環化反応、ならびにヘテロDiels−Alder反応が挙げられ、これらは、水性溶媒中で効率的に利用され得、そして重要な複雑なビルディング反応である。
まとめると、これらの結果は、DNAテンプレート合成の反応範囲をかなり拡張する。多種多様な反応は、対応する反応物が相補的な配列とともにプログラムされる場合にのみ、効率的かつ選択的に進行し得る。既知のDNAテンプレート反応のレパートリーを増強することによって、これまでに報告されているアミド結合形成反応(Schmidtら、(1997)Nucleic Acids Res.25;4792;Bruickら、(1996)Chem.Biol.,3,49を参照のこと)、イミン形成反応(Czlapinskiら、(2001)J.Am.Chem.Soc.、123、8618)、還元的アミノ化反応(Liら、(2002)J.Am.Chem.Soc.、124、746;Gatら、(1988)Biopolymers、48:19)、SN2反応(Gartnerら、(2001)J.Am.Chem.Soc.、123;6961;Xuら、(2001)Nat.Biotechnol.、19:148;Herrleinら、(1995)J.Am.Chem.Soc.、117:10151)、チオールの共役付加(Gartnerら、(2001)J.Am.Chem.Soc.、123:6961)、およびホスホエステルまたはホスホンアミドの形成(Orgelら、(1995)Acc.Chem.Res.、28:109;Lutherら、(1998)Nature、396、245)に加えて、炭素−炭素結合形成反応および有機金属反応(ニトロ−アルドール付加、ニトロ−Michael付加、Wittigオレフィン化、双極性環化付加、およびHeckカップリング)を含み、これらの結果は、DNAのライブラリを、構造的および機能的に多様な合成生成物のライブラリへと配列特異的に変換し得る。
所望の分子をコードするわずかな量のテンプレートは、PCRによって増幅され得るので、DNAテンプレート反応の収率は、おそらく、従来の合成的変換の収率よりもかなり低い。それにもかかわらず、この実施例で議論した多くの反応は、効率的に進行した。
(材料および方法)
官能化したテンプレートおよび試薬を、代表的には、5’−NH2末端化オリゴヌクレオチド(テンプレート1について)、5’−NH2−(CH2O)2末端化オリゴヌクレオチド(他の全てのテンプレートについて)または3’−OPO3−CH2CH(CH2OH)(CH2)4NH2末端化ヌクレオチド(全ての試薬について)を、0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中の適切なNHSエステル(DMF中20mg/mL溶液の0.1容量)と25℃で1時間、反応させることによって調製して、図23A〜図23Dおよび図25A〜図25Bに示される構造のテンプレートおよび試薬を提供した。アミノ酸連結試薬6〜9について、0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中の3’−OPO3CH2CH(CH2OH)(CH2)4NH2末端化オリゴヌクレオチドを、DMF中100mMビス[2−(スクシンイミジルオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(BSOCOES、Pierce、Rockford、IL、USA)溶液の0.1容量と25℃で10分間、続いて300mM 水酸化ナトリウム(NaOH)中の300mMアミノ酸の0.3容量と25℃で30分間反応させた。
官能化したテンプレートおよび試薬を、Sephadex G−25を用いるゲル濾過、続いて逆相HPLC(0.1酢酸トリエチルアンモニウム−アセトニトリル勾配)によって精製し、そしてMALDI質量分析法によって特徴付けた。
図23A〜図23Dに記載されるDNAテンプレート反応については、各テンプレートの一つの等価物と、他に特定されない限り、60nMの最終濃度での試薬との反応は、25℃で行った。条件:(a)3mM NaBH3CN、0.1M N−[2−モルホリノエタン]スルホン酸(MES)緩衝液pH6.0、0.5M NaCI、1.5時間;b)0.1M N−tris[ヒドロキシメチル]メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPS)緩衝液pH8.5、300mM NaCl、12時間;c)0.1M pH8.0 TAPS緩衝液、1M NaCl、5℃、1.5時間;d)50mM MOPS緩衝液pH7.、2.8M NaCl、22時間;e)120nM 19,1.4mM Na2PdCl4、0.5M NaOAc緩衝液pH5.0、18時間;(f)Na2PdCl4と、P(p−SO3C6H4)3の2つの等価物とを、水中で15分間予め混合し、次いで、0.5M NaOAc緩衝液pH5.0、75mM NaCl中の反応物質に2時間添加する(最終Pd)=[0.3mM、[19]=120nM]。13からの生成物のオレフィン幾何学および14および16からのシクロ添加生成物の領域化学(regiochemistry)は、推測されるが、確認されていない(図23A〜図23D)。生成物は、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびMALDI質量分析法によって、特徴付けられた。特定の条件下での全ての反応に関して、適合したテンプレートおよび試薬配列との反応の生成物収率は、試薬配列を混合したコントロール反応の生成物収率より20倍高かった。
図25A〜図25Bに記載される反応に対する条件は:60nM テンプレート、120nM 試薬、0.1M MOPS緩衝液pH7.0中の50mM DMT−MM、1M NaCl、25℃で16時間;または60nM テンプレート、120nM 試薬、20mM EDC、15mM スルホ−NHS、0.1M MES緩衝液pH6.0、1M NaCI、25℃で16時間であった。図25A〜図25B中の表の各列には、試薬と配列に相補的なテンプレートとの間のDMT−MM媒介反応の産生後、EDC反応およびスルホ−NHS媒介反応を行なった。全ての場合、不適合試薬とのコントロール反応は、検出可能な生成物をほとんど産生しないか、または、全く産生せず、生成物は、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびMALDI質量分析によって、特徴づけられた。
図24は、図23A〜図23Dおよび図25A〜図25Bに列挙される代表的なDNAテンプレート反応の変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析を示す。試薬およびテンプレートの構造は、図23A〜図23Dおよび図25A〜図25B中の番号付けに対応する。レーン:1、3、5、7、9、11:図23A〜図23Dおよび図25A〜図25Bに列挙される条件下での適合(相補的または「M」)試薬とテンプレートとの反応(4と6との間の反応は、DMT−MMによって媒介される)。レーン2、4、6、8、10、12:それぞれ、レーン1、3、5、7、9および11の条件と同一の条件下での不適合(非相補的または「X」)試薬とテンプレートとの反応。
オリギヌクレオチドテンプレートの配列および試薬は、以下のとおりである(5’〜3’向き、nは、テンプレートおよび試薬が、図26Aに示されるようにアニーリングされる場合の反応基間の塩基の数をいう。1:TGGTACGAATTCGACTCGGG[配列番号45];2および3(適合):GAGTCGAATTCGTACC[配列番号46];2および3(不適合):GGGCTCAGCTTCCCCA[配列番号47];4および5:GGTACGAATTCGACTCGGGAATACCACCTT[配列番号48];6〜9(適合)(n=10):TCCCGAGTCG[配列番号49];6(適合)(n=0):AATTCGTACC[配列番号50];6〜9(不適合):TCACCTAGCA[配列番号:51];11、12、14、17、18、20:GGTACGAATTCGACTCGGGA[配列番号52];10、13、16、19(適合):TCCCGAGTCGAATTCGTACC[配列番号53];10、13、16、19(不適合):GGGCTCAGCTTCCCCATAAT[配列番号54];15(適合):AATTCGTACC[配列番号55];15(不適合):TCGTATTCCA[配列番号56];n=10対n=0の比較に対するテンプレート:TAGCGATTACGGTACGAATTCGACTCGGGA[配列番号57]。
反応収率は、変性PAGEに続いて、エチジウムブロマイド染色、UV可視化、ならびに生成物のバンドおよびテンプレート出発物質のバンドの電荷結合素子(CCD)ベースのデンシトメトリーによって定量化した。収率計算は、テンプレートおよび生成物が、1塩基あたり等しい強度で染色されることを仮定し;生成物が定量化の間に部分的に二本鎖である収率計算の場合について、染色強度の変化は、より高い見掛けの収率を生じ得る。
(実施例3:DNAテンプレートによってプログラムされた多工程低分子合成)
この実施例は、DNAテンプレート化学反応による多工程の低分子合成を行なうことが可能であることを示す。
DNAテンプレート合成は、DNA骨格の構造の模倣を必要とすることなく、高配列特異性を有する広範な種々の強力な化学反応に関連し得る。しかし、有用な複雑さの合成分子に対するこのアプローチの適用は、DNAテンプレート反応の生成物が、後のDNAテンプレート変換を受けることを可能にする一般的な方法の開発を必要とする。
多工程のDNAテンプレート低分子合成は、一般のDNAテンプレート合成に関連する課題を超えた2つの大きな課題に直面している。第一に、試薬を適切なテンプレートに指向するために使用されるDNAは、テンプレートに対する望ましくないハイブリダーゼーションを防ぐために、引き続くDNAテンプレート合成工程の前に、DNAテンプレート反応の生成物から除去されなければならない。第2に、多段階合成は多くの場合、中間生成物の精製および単離を必要とする。これらの課題に取り組むために、(i)ここで解読するDNAオリゴヌクレオチドと化学試薬(反応性ユニット)を連結すること、(ii)任意のDNAテンプレート合成工程後に、生成物を精製することについて、3つの異なるストラテジーを開発した。
可能な場合、DNAテンプレート合成のために理想的な試薬−オリゴヌクレオチドのリンカーは、その試薬の脱離基としてオリゴヌクレオチドを位置付ける。この「自動切断」リンカーのストラテジーの下で、オリゴヌクレオチド−試薬の結合は、反応の自然な化学的結果として切断される(図28Aを参照のこと)。
DNAテンプレート化学反応に適用されるこのアプローチの第1の例としては、ダンシル化したWittigのホスホラン試薬(1)を合成し、ここで、解読するDNAオリゴヌクレオチドをアリールホスフィン基の1つに接着させた(Hughes(1996)Tetrahedron Lett.37、7595)。アルデヒド連結されたテンプレート2を用いる、DNAテンプレートWittigのオレフィン化は、試薬からテンプレートへの、蛍光性のダンシル基の効率的な転移を生じ、オレフィン3を提供した(図28A)。自動切断リンカーの第2の例としては、DNAに連結されたチオエステル4が、pH7.0においてAg(I)で活性化される(Zhangら(1999)J.Am.Chem.Soc.、121、3311)場合に、アミノ末端のテンプレート5をアシル化し、アミド生成物6を生じた(図28B)。
リボソーム性タンパク質生合成は、RNAテンプレートペプチド結合形成を媒介する同様の自動切断リンカーの様式でアミノアシル化tRNAを使用する。自動切断リンカーを使用するDNAテンプレート反応後に、未反応の試薬から、そして切断したオリゴヌクレオチドから離れた所望の生成物を精製するために、ビオチン化した試薬オリゴヌクレオチド、およびストレプトアビジン連結した磁気ビーズを用いて粗反応物を洗浄する工程を利用した(図30A)。このアプローチは未反応のテンプレートから反応したテンプレートを分離しないが、未反応のテンプレートを、その後のDNAテンプレート反応および精製工程において取り除き得る。
1つより多くの官能基を有する試薬を、解読されるDNAオリゴヌクレオチドに第2リンカーストラテジーおよび第3リンカーストラテジーを介して連結し得る。「スカーレス(scarless)リンカー」のアプローチ(図28C)において、上記試薬の1つの官能基を、DNAテンプレート結合形成の間に保持して、一方では第2の官能基を使用して、さらなる所望されない化学的官能基を導入せずに、切断され得るリンカーを取り付ける。DNAテンプレート反応に続いて、第2の官能基を介して取り付けられたリンカーの切断が起こり、所望の生成物を提供する(図28C)。例えば、(D)−Phe誘導体7のような一連のアミノアシル化試薬を合成した。ここで、α−アミンが、その解読するオリゴヌクレオチドに、カルバモイルエチルスルホンリンカーを介して接続される(Zarlingら(1980)J.Immunology,124,913)。この試薬およびアミン末端化テンプレート(5)を使用するDNAテンプレートアミド結合の形成の生成物(8)を、水性塩基で処理して、そのリンカーの定量的排除および自発性脱カルボキシル化をもたらし、上手く転移されるアミノ酸基を含む生成物9を提供する(図28C)。このスルホンリンカーは、pH7.5以下の緩衝液中で、25℃で24時間より長く安定であるが、pH11.8の緩衝液に37℃で2時間曝露された場合には定量的切断を受ける。
いくつかの場合において、リンカー切断の結果として1つ以上の原子の新たな化学基を導入することが有利であり得る。第3リンカーストラテジーの下で、リンカーの切断は、その後の段階において官能化され得る「有用なスカー(scar)」を生成する(図28C)。この種類のリンカーの例として、解読するDNAオリゴヌクレオチドに1,2−ジオールを介して連結された、(L)−Phe誘導体10のようなアミノ酸試薬を生成した(Fruchartら(1999)Tetrahedron Lett.,40,6225)。アミン末端化テンプレート(5)とのDNAテンプレートアミド結合の形成の後、このリンカーを、pH5.0の50mM過ヨウ化ナトリウム(NaIO4)水溶液を用いる酸化によって定量的に切断して、その後の官能化のために(例えば、DNAテンプレートWittigオレフィン化、還元的アミノ化またはニトロアルドール付加において)適切な、アルデヒド基を含む生成物12を提供する。
図29は、オートクレーブリンカー、スカーレスリンカーまたは有用なスカーリンカーを使用する、例示的なDNAテンプレート合成の結果を示す。示される反応を、変性PAGEにより分析した。レーン1〜3を、DNA染色を用いずにUV光を使用して可視化した。レーン4〜19を、臭化エチジウムでの染色後のUV透過照明によって可視化した。1〜3についての条件は、以下の通りであった:各々1当量の試薬およびテンプレート、0.1M TAPS緩衝液(pH8.5)、1M NaCl、25℃にて1時間。4〜6について条件は、以下の通りであった:3当量の4、0.1M MES緩衝液(pH7.0)、1M亜硝酸ナトリウム(NaNO2)、10mM硝酸銀(AgNO3)、37℃で8時間。8〜9についての条件は、以下の通りであった:0.1M 3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸(CAPS)緩衝液(pH11.8);60mM β−メルカプトエタノール(BME)、37℃で2時間。最後に、11〜12についての条件は、以下の通りであった:50mM水性NaIO4、25℃にて2時間。R1=NH(CH2)2NH−ダンシル;R2=ビオチン。
スカーレスリンカーまたは有用なスカーリンカーを使用するDNAテンプレート反応から生成される所望される生成物を、ビオチン化試薬オリゴヌクレオチドを使用して、容易に精製し得る(図30B)。所望の生成物と一緒になった試薬オリゴヌクレオチドを、まず、ストレプトアビジンを連結した磁気ビーズ上に捕捉する。塩基対形成によって試薬に結合したテンプレートの未反応のものをすべて、4Mの塩化グアニジニウムを含む緩衝液でビーズを洗浄することによって、取り除く。ビオチン化分子は、これらの条件下ではストレプトアビジンビーズに結合したままである。次いで、反応した試薬および未反応の試薬がビーズに結合したままで、リンカー切断緩衝液(上記の実施例においては、pH11の緩衝液または過ヨウ化ナトリウム(NaIO4)含有緩衝液のいずれか)を用いてビーズを溶出することによって、所望の生成物を純粋な形態で単離する。
上記のようにして生成する特異的ライブラリーの一例として、DNAテンプレートアミド形成、スカーレス(traceless)リンカー切断、およびストレプトアビジン結合ビーズを用いる精製という3つの反復サイクルを使用して、非天然トリペプチドを生成した8図31A〜B)。各アミノ酸試薬を、上記のスルホンリンカーを介して、独特のビオチン化10塩基DNAオリゴヌクレオチドに結合した。上記トリペプチド合成を指向するようにプログラムされた30塩基のアミン末端化テンプレートは、上記3種の試薬と相補的である連続10塩基領域を3つ含んだ。これは、多段階DNAテンプレート低分子ライブラリー合成において使用されるストラテジーを模倣した。
第1段階において、2当量の13を、20mM EDC、15mM スルホ−NHS、0.1M MES緩衝液(pH5.5)および1M NaClを用いて25℃にて10分間処理することによって、活性化した。その後、このテンプレートを、0.1M MOPS(pH7.5)および1M NaCl(25℃)中に添加し、1時間反応させた。その後、14中の遊離アミン基を、第2回および第3回のDNAテンプレートアミド形成およびリンカー切断において、以下の条件を使用してジペプチド15およびトリペプチド16を生成した:2当量の試薬、50mM DMT−MM、0.1M MOPS緩衝液(pH7.0)、1M NaCl、25℃にて6時間。各段階の後の望ましい生成物を、アビジン結合ビーズ上で捕捉し、0.1M CAPS緩衝液(pH11.8)、60mM BME(37℃で2時間)で溶出することによって、精製した。各反応および精製の進行の後に、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行なった(図31B、下)。レーン3、6および9は、混ざった(scrambled)オリゴヌクレオチド配列を含む試薬を使用する、コントロール反応を示す。
各反応、精製、およびスルホンリンカー切断段階の進行の後に、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行なった。テンプレート16に結合した最終トリペプチドを、制限エンドヌクレアーゼEcoRIで消化し、上記トリペプチドを含む消化フラグメントを、MALDI質量分析法により特徴付けた。2nmol(約20μg)の出発材料で開始して、106回より多くのインビトロ選択およびPCR反応のためのテンプレートとして役立つために十分なトリペプチド生成物を、生成した(Kramerら(1999)CURRENT PROTOCOLS IN MOL.BIOL.3:15.1)(1/10,000分子生存選択を仮定する)。出発材料テンプレートを酢酸無水物でキャップした場合、または相補的試薬の代わりに配列ミスマッチを含むコントロール試薬を使用した場合には、有意な生成物は生成されなかった(図31B)。
上記で開発した3つのリンカーストラテジーすべてを使用する非ペプチド性多段階DNAテンプレート低分子合成もまた、実施した(図32A〜32B)。アミン末端化30塩基テンプレートを、ジオールリンカーを含むアミノアシルドナー試薬(17)と、ビオチン化10塩基オリゴヌクレオチドとを使用するDNAテンプレートアミド結合形成に供して、アミド18を得た(20mM EDC、15mMスルホ−NHS、0.1M MES緩衝液(pH5.5)、1M NaCl中で2当量、10分間、25℃、その後、0.1M MOPS(pH7.5)、1M NaCl中のテンプレートに16℃にて8時間添加した)。その後、所望の生成物を、ストレプトアビジンビーズ上で粗反応物を捕捉した後にNaIO4でリンカーを除去してアルデヒド19を生成することによって、単離した。19とビオチニル化オートクレーブリン酸試薬20とのDNAテンプレートWittig反応により、フマルアミド21を得た(3当量の20、0.1M TAPS(pH9.0)、3M NaCl(25℃にて48時間)。第2DNAテンプレート反応からの生成物を、ストレプトアビジンビーズを洗浄して反応試薬および未反応試薬を除去することによって、部分精製した。第3DNAテンプレート段階において、フマルアミド21を、DNAテンプレート結合体付加(Gartnerら(2001)J.AM.CHEM.SOC.123:6961)に供した。この付加には、上記スルホンリンカーを介してビオチン化オリゴヌクレオチドに結合したチオール試薬22を使用した(3当量の22、0.1M TAPS(pH8.5)、1M NaCl、25℃にて21時間)。望ましい結合体付加生成物(23)を、ストレプトアビジンビーズを用いる固定化により精製した。pH11緩衝液を用いるリンカー切断によって、最終生成物をEcoRIで消化し、上記低分子結合テンプレートフラグメントの質量を、MALDI質量分析法により確認した(正確な質量:2568、実測質量:2566±5)。上記のトリペプチドの例においてと同様に、この多段階合成の間に使用した上記の3つの試薬の各々は、上記DNAテンプレート上の独特の位置にてアニールし、配列ミスマッチを含むコントロール反応は、生成物を生じなかった(図32B、下)。図32Bにおいて、下のレーン3、6および9は、コントロール反応を示す。予期したとおり、Wittig試薬を省略したコントロール反応(段階2)もまた、第3段階の後に生成物を生じなかった。
まとめると、化合物16および24のDNAテンプレート合成は、DNAが、構造上核酸と無関係のオリゴマー低分子および非オリゴマー低分子の両方の配列プログラムした多段階合成を指向する能力を示す。
(実施例4:有機溶媒中の例示的な反応)
本明細書中に示されるように、種々のDNAテンプレート反応が、水性媒体中で生じ得る。DNAテンプレート反応が、有機溶媒中で生じ得、従って、DNAテンプレート合成の範囲を大いに拡大することもまた、発見されてきた。具体的には、DNAテンプレートおよびDNA試薬は、長鎖テトラアルキルアンモニウムカチオンと複合体を形成して(Jostら(1989)Nucleic Acids Res.17,2143;Mel’nikovら(1999)Langmuir,15,1923−1928)、CH2Cl2、CHCl3、DMFおよびメタノールを含む無水有機溶媒中の反応成分の定量的解離が可能になる。驚いたことに、DNAテンプレート合成が、実は、高い配列選択性を有する無水有機溶媒において生じ得ることが、見出された。
図33は、上記試薬およびテンプレートを、別個容器中でジメチルジドデシルアンモニウムカチオンと複合体化するか、または水中にてプレアニールし、凍結乾燥させ、CH2Cl2中に溶解し、そして一緒に混合するかのいずれかである、DNAテンプレートアミド結合形成反応を示す。マッチした反応(しかし、ミスマッチ反応は、そうではない)は、反応物が水溶液中でプレアニールした場合、およびそれらを最初にCH2Cl2中にて混合した場合の両方において、生成物を提供した(図33)。DNAテンプレートアミド形成および無水DMFにおけるPd媒介性Heckカップリングもまた、配列特異的に進行した。
有機溶媒中での配列特異的DNAテンプレート合成のこれらの知見は、有機媒体中のテトラアルキルアンモニウム複合体化DNA中の少なくともいくつかの二次構造の存在を意味し、DNAレセプターおよびDNA触媒を、有機溶媒中での立体選択的結合特性または立体選択的触媒特性の方へ進化させることを可能にするはずである。具体的には、共役付加、付加環化、置換反応、およびPd媒介性カップリングを含む、水性媒体中で生じることが公知であるDNAテンプレート反応は、有機溶媒中でもまた実施され得る。
水中で実施することが非効率または不可能な有機溶媒中の反応が使用され得ることが、企図される。例えば、水中でのRu触媒オレフィン置換が、報告されている(Lynnら(1998)J.Am.Chem.Soc.120,1627−1628;Lynnら(2000)、J.Am.Chem.Soc.122,6601−6609;Mohrら(1996)Organometallics 15,4317−4325)一方で、水性転移系は、官能基の同一性に対して極端に感受性である。しかし、有機溶媒におけるRu触媒オレフィン転移の官能基許容性は、有意により強靭である。有機溶媒中で使用するためのいくつかの例示的な反応としては、基底状態の出発物質よりも極性が弱い遷移状態を通って進行し得る、ニトロンとオレフィンとの間の1,3−双極子環状付加が挙げられるがこれに限定されない。
(実施例5:核酸テンプレート合成のための新規な構造)
本実施例は、核酸テンプレート合成の範囲をさらに拡大する2つの異なるテンプレート構造を開示する。
核酸テンプレート化学反応の間に、テンプレートの一部が、オリゴヌクレオチド結合試薬の相補的配列にアニールし、そのテンプレートおよび転移単位上に、反応的に近接して、官能基を保持する。テンプレート構造は、生じる反応の性質に対して顕著な効果を有し得、種々の二次構造を有するテンプレート−試薬複合体をランダムに設計することによって、反応条件を操作する可能性を生じる。
ヘリックス末端(「E」)テンプレートおよびヘアピン(「H」)テンプレートを使用するDNAテンプレート合成の経過の間(実施例1参照)、2つの課題が出現した。第1に、いくつかのDNAテンプレート反応は、テンプレートおよび転移単位(試薬)上のアニールした反応基がごく少数の塩基により隔てられている場合には、効率的には進行しない。上記E構造またはH構造を使用して、「距離依存性」反応は、上記テンプレートの反応性末端にあるテンプレート塩基によってコードされるに過ぎない。第2に、アニールする反応基の間の二本鎖DNAの存在は、テンプレート反応の効率を大いに減少し得る。なぜなら、特定の環境下では、一本鎖テンプレートは、可撓性である必要があるからである。これは、テンプレートオリゴヌクレオチドは、複数の反応をコードするために十分な塩基を含み得るけれども、上記E構造またはH構造を使用する単一DNAテンプレート段階において2つ以上の反応を実施する可能性を排除し得る。本実施例は、2つのテンプレート構造を考察する。これらは、これらの課題各々を克服する。
特定のDNAテンプレート反応(例えば、1,3−双極性付加環化および還元性アミノ化)の距離依存性は、そのテンプレートの2つの個別かつ空間的に分離している領域に試薬がアニールすることを可能にする新規な構造を設計することによって、克服され得ると、仮定した。「オメガ」または「Ω」構造)(図7参照)において、そのテンプレートオリゴヌクレオチドは、遠位コード領域に加えて、例えば、そのテンプレートの反応性5’末端に、少数の定常塩基を含む。このΩ構造のための転移単位のオリゴヌクレオチドは、そのテンプレートの定常領域と相補する塩基を、その反応性3’末端に含み、その後に、そのテンプレートの任意の場所でコード領域と相補する塩基を含む。上記定常領域は、相補的コード領域の非存在下でアニールするには不十分な長さであるように設計される。このテンプレートのコード領域と転移単位とが、相補的でありかつアニールする場合、その定常領域の増加した有効モル濃度は、それらのアニーリングを含む。定常領域のアニーリングは、他の二本鎖テンプレート−試薬複合体において突出物(Ωに似ている)を形成し、基をそのテンプレートおよび試薬の末端に、反応的に近くに配置する。この設計により、距離依存性DNAテンプレート反応が、そのテンプレートの反応性末端から遠位にある塩基によりコードされることが可能になる。
Ω構造を使用するDNAテンプレート合成の効率を、標準的E構造およびH構造の効率と比較した。研究したΩ構造は、(i)テンプレートの5’末端に3〜5個の定常塩基を含み、その後に、(ii)5〜17塩基のループ、および(iii)10塩基コード領域を含む。比較の基礎として、4つの異なる種類のDNAテンプレート反応を実施した。これらは、集合的に、今日までに観察された距離依存性に範囲に及ぶ。
アミンアシル化反応は、アミン基とカルボン酸基とがかなりの距離(例えば、30塩基)により隔てられている場合でさえ効率的に進行する、距離非依存性反応を示す。予期したとおり、アミンアシル化(20mM DMT−MM(pH7.0)、30℃で12時間)は、試薬およびテンプレート上の反応基の間の距離が小さい構造および大きい構造の両方のすべてにおいて、効率的に(46〜96%収率)進行した(図34、レーン1〜5;および図35A)。このΩ構造は、テンプレートおよび試薬の反応末端に3塩基、4塩基、または5塩基があり、アニールした反応物の間に10塩基または20塩基がある、効率的アミンアシル化を媒介した(n=10または20)。重要なことには、遠位コード領域が3つの配列ミスマッチを含むコントロール反応は、テンプレートおよび試薬の末端に相補的な3〜5塩基の定常領域が存在するにも関わらず、有意な生成物を生成しなかった(代表的な例について、図34レーン5参照)。従って、このΩ構造は、距離非依存性アミンアシル化反応の効率または配列特異性を妨害しなかった。
DNAテンプレートWittigオレフィン化反応は、アルデヒドおよびホスホランが多数のテンプレート塩基により隔てられている場合には、生成物収量は、代表的には、介在距離に関わらず12時間以上の反応の後で優れているけれども、有意に遅い速度で進行する。しかし、上記E構造またはH構造におけるたった2時間だけの反応(pH7.5、30℃)の後、オレフィン生成物の収量は、反応物をたった1塩基だけ隔てた場合(n=1)よりも、反応物を10塩基以上(n=10または20)隔てた場合により、3分の1〜6分の1であった(図34レーン6〜7および図35B)。対照的に、反応末端に4つまたは5つの定常塩基を有するΩ構造は、テンプレートのコード領域と反応末端とを10塩基または20塩基が隔てた場合でされ、2時間の反応の後に、効率的かつ配列特異的なWittig生成物形成を生じた(図34レーン8〜9および図35B)。これらの結果は、Ω構造中のテンプレートの反応末端における定常領域および転移単位により、アルデヒド部分とホスホラン部分とが、n=1である場合のE構造を用いて達成される有効濃度に匹敵する有効濃度にて反応することを可能にする(図34)。
現在まで研究された多くのDNAテンプレート反応のうち、1,3−双極性付加環化および還元的アミノ化反応は、最も顕著な距離依存性を示す。両方の反応は、アニールする反応基が10塩基または20塩基隔たっている場合に、上記E構造またはH構造を使用して標準的反応条件下低い効率〜中程度の効率(7〜44%収率)で進行する(図34レーン10〜11および14〜15、ならびに図35C〜35D)。この距離依存性は、これらまたは他の同様に距離依存性の反応をコードし得るDNAテンプレート上の位置を制限する。対照的に、1,3−双極性付加環化および還元的アミノ化の両方は、4つまたは5つの定常塩基を有するΩ構造を使用してテンプレート官能化末端から15〜25塩基離れているテンプレート塩基によりコードされる場合に、効率的(97%までの収率)かつ配列特異的に進行する(図34レーン12〜13および16〜17、ならびに図35C〜35D)。これらの結果は、テンプレートΩ構造により、距離依存性反応がテンプレートの反応末端から離れたDNA塩基により効率的に指向されることを可能にすることを示す。距離非依存性反応の効率を保存しつつこれらの反応の距離依存性を克服することによって、Ω構造は、一本鎖30塩基テンプレート中の事実上任意の連続塩基部分集合が、任意の実行可能なDNAテンプレート反応をコードすることを可能にし得る。興味深いことに、その反応末端にたった3つの連続塩基しか有さないΩ構造は、E構造と比較してこれらの反応の効率を一貫して改善しない(図35C〜35D)。このことは、4またh5つの連続塩基が、Ω構造において都合の良い近接効果を完全に実現するために必要とされ得ることを、示唆する。
Ω構造の観察された特性の基礎となる構造的特徴を探索するために、n=10試薬およびn=20試薬を使用するΩ−5構造およびE構造の熱変性を、特徴付けた。すべてのテンプレート−試薬の組み合わせについて、ただ1つの協働的融解遷移が観察された。5塩基定常領域を欠くE構造試薬と比較して、Ω−5試薬は、アニーリングの際に淡色性を約50%増加したが、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)または1M NaCl含有50mMリン酸ナトリウム(pH7.2)のいずれかにおける融解温度に有意には影響を与えなかった(図36)。これらの結果は、コード領域が一旦アニールすると定常領域が二次構造を形成するけれども、Ω構造におけるテンプレート−試薬のアニーリングがコード領域の相互作用により支配されるモデルと一致する。従って、コード領域と定常領域との間のループを部分的に整列するエントロピーコストは、定常領域のアニーリングの際に生じる都合の良い相互作用により相殺され得る。
任意の長さのDNAテンプレートは、合成するのが容易であり、同じ溶液中の反応物間の望ましくない交差反応性は、非相補的反応物が分子間で反応するのを可能にするには低すぎる濃度を使用して回避され得る。DNAテンプレート合成のこれらの特徴により、1つより多くのDNAテンプレート反応が、1つの溶液中の1つのテンプレートに対して生じることが可能になり、これにより、さらなるDNAテンプレート段階および生成物精製に関係する努力が節約される。
1段階当たり複数のDNAテンプレート反応は、E構造、H構造またはΩ構造を使用して困難であり得る。なぜなら、第1反応の後にテンプレートにアニールしたままである試薬オリゴヌクレオチドは、比較的強固な二重螺旋を形成し、この二重螺旋は、テンプレートに沿ってさらに遠くに離れているアニールした第2試薬が、テンプレートの反応末端に遭遇することを防ぎ得る。これを克服するために、テンプレート上の反応基を、オリゴヌクレオチドの末端〜中央から除去して、その反応基を塩基の非Watson−Crick面に結合した。この「T」構造(図7G参照)は、2つのDNAテンプレート反応が1つのテンプレート上にて同じ溶液中で配列特異的に生じるのを許容するように設計した。1つのDNAテンプレート反応は、第1転移単位のオリゴヌクレオチドの5’末端に試薬を結合する。もう1つのDNAテンプレート反応は、第2転移単位のオリゴヌクレオチドの3’末端に試薬を結合する。
DNAテンプレート反応中のT構造の実効性(viablity)を試験するために、T構造を使用して、Wittigオレフィン化、1,3−双極性付加環化、および還元的アミノ反応を研究した。T構造は、E構造またはE構造の効率以上の効率で、これらの4つの反応を配列特異的に指向した(図37.n=1の場合に69〜100%収率)。この4つの反応の各々についてT構造を使用する距離依存性について観察された程度は、上記の知見と一致した(図37と図35を比較する)。まとめると、これらの結果は、T構造が、配列特異的かつ効率的なDNAテンプレート合成を媒介し得ることを示す。
一旦、T構造が効率的なDNAテンプレート合成を支持する能力が確立されると、T構造が1つのテンプレートにおいて2つのDNAテンプレート反応を指向する能力を、研究した。T構造を使用する2つの異なる2反応スキームを、実施した。図38Aに示される第1スキームにおいて、ベンズアルデヒドTテンプレート(1)を、ホスフィン結合試薬(2)およびα−ヨードアミド結合試薬(3)と1つの溶液(pH8.5、1M NaCl)と合わせた(25℃で1時間)。このホスフィン結合オリゴヌクレオチドは、アルデヒドの5’側のテンプレートの10塩基と相補し(n=4)、一方、ヨウ素結合オリゴヌクレオチドは、アルデヒドの3’側の10塩基を相補した(n=0)。ホスフィンとα−ヨウドアミドとの間のDNAテンプレートSN2反応は、対応するホスホランを生成した。その後、この対応ホスホランは、DNAテンプレートWittig反応に関与して、1時間後に52%の全体収率でシンナミド4を生じた(図38Bレーン9〜10)。いずれかの試薬中に配列ミスマッチを含むコントロール反応は、検出可能な生成物を生じなかった。テンプレート上のアルデヒド基を欠くさらなるコントロール反応は、SN2反応生成物のみを生じ(図38Bレーン3〜4)、一方、ホスフィン基またはα−ヨウドアミド基のいずれかを欠くコントロール反応は、いかなる検出可能な生成物も生じた(図38Bレーン5〜8)。
図38Cに示されるT構造により媒介される第2の2反応スキームにおいて、アミン結合Tテンプレート(5)を、n=−1のプロパルギルグリシン結合5’試薬と、およびn=1のフェニルアジド結合3’試薬’(7)と、合わせた。pH7.0の20mM DMT−MMを付加してアミド形成を誘導し、その後、500μM硫酸銅(II)およびアスコルビン酸ナトリウムを添加して最近報告されたSharpless改変Huisgen 1,3−双極性付加環化をすると、32%の全収率にて、1,4−二置換トリアゾイルアラニン付加物が提供された。
まとめると、これらの知見は、T構造により、2つの配列特異的DNAテンプレート反応が、1つの溶液中で1つのテンプレートにおいて生じることが可能になることを示す。重要なことには、上記のT構造テンプレートは、1サイクルのプライマー伸長と、Taq DNAポリメラーゼを使用する標準的PCR増幅との両方のための効率的なテンプレートとして受容された。これは、DNAテンプレートの非Watson−Crick面に対する改変についての、いくつかのDNAポリメラーゼの公知の許容性と一致した。標的構造を合成するために必要な別個のDNAテンプレート段階の数を減少することに加えて、この構造はまた、3成分反応が、DNAテンプレート様式で実施されるべき合成ライブラリー中の構造複雑度を構築するために一般的に使用されるのを可能にし得る。
要するに、Ω構造およびT構造が、DNAテンプレート合成の範囲を有意に広げる。距離依存性DNAテンプレート反応が、テンプレートの反応末端から遠く離れている塩基によりコードされるのを可能にすることによって、Ω構造は、DNAテンプレート上にいずれの位置でもコードされ得る反応の型を拡大し得る。T構造により、DNAテンプレート反応が、1段階において1つのテンプレートにおいて生じることが可能になる。
(材料および方法)
(オリゴヌクレオチド合成)
他のように特定されない限り、5’官能化オリゴヌクレオチドについて、2−[2−(4−モノメトキシトリチル)アミノエトキシ]エチル−(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピル−ホスホロアミダイトを使用し(Glen Research,Sterling,Virginia,USA)、そして3’官能化オリゴヌクレオチドについて、(2−ジメトキシトリチルオキシメチル−6−フルオレニルメトキシカルボニルアミノ−ヘキサン−1−スクシノイル)−長鎖アルキルアミノ−CPGを使用し(Glen Research,Sterling,Virginia,USA)、DNAオリゴヌクレオチドを、以前に記載された通り(Calderoneら(2002)ANGEW.CHEM.INT.ED.ENGL.41:4104(2002)ANGEW.CHEM.114:4278)に合成および官能化した。T構造についてのテンプレートの場合、アミン基を、5’−ジメトキシトリチル−5−[N−(トリフルオロアセチルアミノヘキシル)−3−アクリルイミド]−2’−デオキシウリジン−3’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト(Glen Research,Sterling,Virginia,USA)を使用し、その後、以前に報告された(Calderoneら(2002)上記)通り、アシル化した。
(アミンアシル化)
アミン標識DNAおよびカルボン酸標識DNAを、水性100mM MOPS緩衝液、1M NaCl(pH7.0)(テンプレートDNA中60nM、試薬DNA中120mM)中で、20mM DMT−MMの存在下で合わせた。反応は、25℃で12時間進行した。
(Wittigオレフィン化)
アルデヒド標識DNAおよびホスホラン標識DNAを、水性100mM MOPS緩衝液、1M NaCl(pH7.5)(テンプレートDNA中60nM、試薬DNA中120mM)中で合わせた。反応は、30℃で2時間進行した。
(1,3−双極性付加環化)
ジアルデヒド標識DNAを、室温にて1時間、260mM塩酸N−メチルヒドロキシルアミン中でインキュベートした(Gartnerら(2002)J.AM.CHEM.SOC.124:10304)。その後、水性50mM MOPS、2.8M NaCl(pH7.5)(最終塩酸N−メチルヒドロキシルアミン濃度0.75mM、テンプレートDNA中60nMおよび試薬DNA中90nM)中でスクシンイミドDNAと合わせた。反応は、37℃にて12時間進行した。
(還元的アミノ化)
アミン標識DNAおよびアルデヒド標識DNAを、水性100mM MES緩衝液、1M NaCl(pH6.0)(テンプレートDNA中60nM、試薬DNA中120mM)中で、合わせた。ナトリウムシアノボロヒドリドを、1M NaOH中の5Mストックとして、最終濃度38mMまで添加した。反応は、25℃で2時間進行した。反応を、15mMメチルアミンの存在下でエタノール沈殿により停止した。
(化合物1〜4のT構造媒介性変換)
5’−ホスフィン結合オリゴヌクレオチド(2)を、N−スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)を、以下に列挙するT(n=−4)オリゴヌクレオチドを使用して、12−(4−モノメトキシトリチルアミノ)ドデシル−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホロアミダイト由来のアミンに結合し(Glen Research、Sterling,Virginia,USA)、その後、以前に記載された(Gartnerら(2002)前出)通りに4−ジフェニルホスフィノ安息香酸で処理することによって、生成した。3’−Ω−ヨードアミド結合試薬(3)を、T(n=1)オリゴヌクレオチド(以下参照)とSIAとを以前に記載された(Gartnerら(2002)ANGEW.CHEM.INT.ED.41:1796(2002)ANGEW.CHEM.114:1874))通りに反応させることによって、調製した。テンプレート1を、1M NaClを含む水性200mM N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)(HEPES)緩衝液(pH8.5)中の試薬2および3と合わせた(63nMテンプレートおよび125nMの各試薬)。反応は、25℃にて1時間まで進行した。
これらの反応の変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析の結果が、図38Bに示される。アルデヒド基を含む30塩基のT構造テンプレート(1)が、レーン1〜2およびレーン5〜10中に存在した。アルデヒド基を欠くが他は(1)と同一であるテンプレートが、レーン3および4に存在した。DNA結合ホスフィン試薬(2)が、レーン3〜6およびレーン9〜10に存在した。DNA結合α−ヨードアミド試薬(3)が、レーン3〜4およびレーン7〜10に存在した。レーン1、3、5、7および9は、30分間後の反応を示す。レーン2、4、6、8および10は、1時間後の反応を示す。
(化合物5〜8のT構造媒介性変換)
5’−プロパルギルグリシン結合オリゴヌクレオチド(6)を、対応するT(n=−1)5’−アミン結合試薬オリゴヌクレオチド(以下参照)と、9:1の200mMリン酸ナトリウムpH7.2:DMF中の2mg/mLビス(スルホスクシンイミジル)スベレートと25℃にて10分間合わせ、その後、300mM NaOH中の300mMラセミプロパルギルグリシン0.3容量を用いて25℃にて2時間処理することによって、生成した。3’−アジド結合オリゴヌクレオチド(7)を、T(n=1)アミン結合試薬オリゴヌクレオチド(以下参照)と、9:1の200mMリン酸ナトリウムpH7.2:DMF中の2mg/mL (N−ヒドロキシスクシンイミジル)−4−アジドベンゾエートと25℃にて2時間合わせることによって、生成した。試薬6および7を、ゲル濾過および逆相HPLCにより精製した。テンプレート5と、試薬6および7とを、1M NaClおよび20mM DMT−MMの存在下で、水性100mM MOPS(pH7.0)中で、25℃にて12時間(60nMテンプレート、120nM試薬)合わせた。その後、硫酸銅(II)五水和物およびアスコルビン酸ナトリウムを、各々500μMまで添加した。25℃にて1時間後、反応を、エタノール沈殿により停止した。
(使用したDNAオリゴヌクレオチド配列)
EテンプレートまたはΩテンプレート:5’−H2N−GGT ACG AAT TCG ACT CGG GAA TAC CAC CTT[配列番号58]。Hテンプレート:5’−H2N−CGC GAG CGT ACG CTC GCG GGT ACG AAT TCG ACT CGG GAA TAC CAC CTT[配列番号59]。Tテンプレート:5’−GGT ACG AAT TCG AC(dT−NH2)CGG GAA TAC CAC CTT[配列番号60]。E試薬またはH試薬(n=1):5’−AAT TCG TAC C−NH2[配列番号61]。E試薬またはH試薬(n=10):5’−TCC CCA GTC G−NH2[配列番号62]。E試薬またはH試薬(n=20):5’−AAG GTG GTA T−NH2[配列番号63]。ミスマッチE試薬またはミスマッチH試薬:5’−TCC CTG ATC G−NH2[配列番号64]。Ω−3試薬(n=10):5’−TCC CGA GTC GAC C−NH2[配列番号65]。Ω−4試薬(n=10):5’−TCC CGA GTC GTA CC−NH2[配列番号66]。Ω−5試薬(n=10):5’−TCC CGA GTC GGT ACC−NH2[配列番号67]。Ω−3試薬(n=20):5’−AAG GTG GTA TAC C−NH2[配列番号68]。Ω−4試薬(n=20):5’−AAG GTG GTA TTA CC−NH2[配列番号69]。Ω−5試薬(n=20):5’−AAG GTG GTA TGT ACC−NH2[配列番号70]。ミスマッチΩ−3試薬:5’−TCC CTG ATC GAC C−NH2[配列番号71]。ミスマッチΩ−4試薬:5’−TCC CTG ATC GTA CC−NH2[配列番号72]。ミスマッチΩ−5試薬:5’−TCC CTG ATC GGT ACC−NH2[配列番号73]。T試薬(n=1):5’−GGT ATT CCC G−NH2[配列番号74]。T試薬(n=2):5’−TGG TAT TCC C−NH2[配列番号75]。T試薬(n=3):5’−GTG GTA TTC C−NH2[配列番号76]。T試薬(n=4):5’−GGT GGT ATT C−NH2[配列番号77]。T試薬(n=5):5’−AGG TGG TAT T−NH2[配列番号78]。T試薬(n=−1):5’−NH2−GTC GAA TTC G[配列番号79]。2についてのT試薬(n=−4):5’−[C12−アミンリンカー]−AAT TCG TAC C[配列番号80]。
反応収量は、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動、およびその後の生成物およびテンプレート出発物質のバンドの臭化エチジウム染色、UV透過照明、およびCCDベースの濃度測定によって、定量した。収量計算は、テンプレートおよび生成物が変性しており、従って、1塩基について匹敵する強度で染色されたと仮定した。定量の間に生成物が部分的に二本鎖である場合について、染色強度の変化は、より大きい見かけの収量を生じ得る。代表的な反応性生物を、MALDI質量分析法および変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、特徴付けた。
融解曲線を、Hewlett−Packard 8453 UV−可視光分光光度計にて、Hewlett−Packard 89090A Peltier熱コントローラーを使用して得た。260nmにおけるテンプレート−試薬対(各々1.5μM)の吸光度を、リン酸緩衝化生理食塩水(「PBS」、137mM NaCl、2.7mM塩化カリウム、1.4mMリン酸カリウム、10mMリン酸ナトリウム(pH7.4))または高塩リン酸緩衝液(「HSB」、50mMリン酸ナトリウム(pH7.2)、1M NaCl)のいずれかにおいて、20℃から80℃まで1℃ごとに1分間保持して測定した。
(実施例6:核酸テンプレート合成における立体選択性)
本実施例は、立体選択的核酸テンプレート合成を実施することが可能であることを示す。DNAのキラル性質は、DNAテンプレート合成が、DNA中に存在するキラル基を超えるキラル基の補助を受けることなく、立体選択的に進行し得、それにより、配列だけではなく立体化学的情報もまた、テンプレートから生成物へと移り得る。
DNAテンプレート型求核置換反応の文脈において、立体選択性を試験した。(S)−または(R)−2−ブロモプロピオンアミドに直接的にそれらの5’アミノ末端で結合したヘアピン構造テンプレートは、25℃において3’チオール連結試薬オリゴヌクレオチドを組み合わせた(図39A)(Gartnerら(2001)上記;Gartnerら(2003)ANGEW.CHEM.INT.ED.42:1370)。ヘアピンテンプレートの正確な構造およびその相補的な試薬(図39A)は、以下であった:
反応条件下でのブロミドの安定性を、いくつかの独立した方法によって確認した。チオエーテル生成物形成の初期速度を、変性ゲル電気泳動によって決定し、そして生成物を、MALDI−TOF質量分析法によってさらに特徴づけた。生成物形成の見かけの速度は、(R)−ブロミド連結テンプレートよりも、(S)−ブロミド連結テンプレートについて4.0±0.2倍高かった。テンプレート−試薬アニーリングが部分的に速度を決定し得るので、この値は、kS/kRの実際の比の下限であり、アニーリング速度は、ブロミドの立体化学によって影響されないとみなされる。
驚くべきことに、(S)−ブロミドを支持する類似の優先性がまた、12個のヌクレオチドがテンプレート−試薬複合体においてチオールおよびブロミドを分離した場合でさえ、らせん末端テンプレート構造を使用して観察された(図38B)。らせん末端テンプレートの正確な構造およびその相補性試薬(図39B)は、以下の通りであった:
立体選択性は、ブロミドまたはチオールがテンプレートに結合するか否かに対して非依存性であるようであった(図39Bおよび39C)。チオールおよびその相補的なしyかう(図39C)に結合したらせん末端テンプレートの正確な構造は、以下の通りであった:
類似の選択性は、(S)−および(R)−ブロミドから生じるチオエーテル生成物が、2つの異なる長さのテンプレートを使用して区別された、両方のブロミド立体異性体を含む偽動力学的分割から現れた(kS/kR=4.2±0.4〜4.9±0.3)。まとめると、これらの発見は、DNAテンプレートのキラリティーが、DNA骨格が似ていないDNAテンプレート型合成の生成物に移され得ることを示す。
観察される立体選択性の起源を調べるために、チオールまたはブロミドの近くのヌクレオチドが、可撓性のアキラルなリンカーで置き換えられた一連のテンプレートおよび試薬アナログを合成した。類似の長さ(72結合)のアキラルなポリエチレングリコールリンカーを用いて、らせん末端の反応のいずれかにおいてブロミドおよびチオールを分離する12個のテンプレートヌクレオチドを置換することによって、立体選択性の喪失を生じた。立体選択性はまた、3つまたは5つの連続したメチレンまたはエーテル酸素からなる可撓性のアキラルなリンカーが、テンプレートオリゴヌクレオチドの5’末端とチオール基またはブロミド基との間、または試薬オリゴヌクレオチドの3’末端とチオールまたはブロミドとの間に挿入された。従って、反応物間のキラルなリンカーは、このDNAテンプレート型合成において立体選択性のために必要とされる。これらの結果はまた、チオールとブロミドの両方が、反応の速度決定工程に関与し、これは、SN2機構と一致する。
遠位塩基スタッキングまたは塩基対形成相互作用における一本鎖DNAおよび二本鎖DNAの公知の選択性は、ブロミドまたはチオールから遠位の基が、立体選択性を誘導することにおいて重要な役割を果たし得ることを示唆する。これらの可能性を試験するために、5’ブロミドに最も近い12個のテンプレートヌクレオチドのちの11個を、キラル無塩基性(abasic)ホスホリボースリンカーとのらせん末端反応で置換され、芳香族塩基がプロトンで置換された(図40A)。らせん末端テンプレートの正確な構造は、塩基2〜12が、無塩基性ホスホリボース単位(Glen Research,Sterling,Virginia,USAからの対応するホスホラミダイトから調製された)で置換したことを除いて、図39と同じであった。たとえ、ブロミドに最も近い5’チミジンヌクレオチドが変化しなかったとしても、生じる反応は、立体選択性ではなく、これは、ブロミドに最も近いヌクレオチドが、観察される立体選択性を誘導するには十分ではなかったことを示す。
次いで、5’末端からの11個の失われた芳香族塩基の各々が、回復され(図40B)、そして各得られたテンプレートについての(S)−ブロミドおよび(R)−ブロミドの反応についての速度を測定した。驚くべきことに、5塩基までが回復された場合、立体選択性は、観察されなかった。6〜11塩基が回復された場合、立体選択性は、kS/kR=4.3にまで着実に増加した(図40C)。5’末端の代わりに、無塩基領域の3’末端からの失われた芳香族塩基の回復はまた、いくつかの塩基が回復された後でのみ立体選択性を誘導した(この場合、5〜11塩基)(図40D)。まとめると、これらの発見は、立体選択性が、いずれかの反応物に隣接するヌクレオチドのコンホメーションから生じ、立体選択性を導くコンホメーションが、少なくとも5〜6個の連続した芳香族塩基を必要とすることを示唆する。
この立体選択性のモデルは、テンプレート−試薬複合体が、たとえ、全ての反応物の共有結合構造および絶対的な立体化学が保存されたとしても、立体選択性を変化させ得る。(5−Me−C)G反復がリッチな二本鎖DNA配列は、高い塩濃度において、通常の右手らせん(B−形態)よりもむしろ左手らせん(Z−形態)を選び得る(Richら(1984)J.ANNU.REV.BIOCHEM.53:791−846;Beheら,(1981)PROC.NATL.ACAD.SCI.USA 78:1619−1623;Maoら(1999)NATURE 397:144−146)。ブロミド連結(5−Me−C)Gリッチヘアピンテンプレートおよび相補的なチオール連結試薬(未反応ジスルフィドとして保護される)が調製された。等モル比で組み合わせた場合、低塩(100mM NaCl)において得られるテンプレート−試薬複合体の円偏光二色性(CD)スペクトルは、B形態DNAの特徴であった(例えば、図42Dを参照のこと)。高塩濃度(5M NaClまたは2.5M Na2SO4)の存在下において、同じテンプレート−試薬複合体は、Z形態DNAに代表的なCDスペクトルを示した。対照的に、通常の配列のテンプレート−試薬複合体のCDスペクトルは、低塩条件および高塩条件の両方において、B形態DNAの代表であった(例えば、図42Dを参照のこと)。
混合または(5−Me−C)Gリッチ配列のいずれかを使用するブロミド連結テンプレートとチオール連結試薬との間のDNAテンプレート型反応の立体選択性は、低塩濃度または高塩濃度の存在下で試験された。低塩濃度または高塩濃度の存在下での混合配列テンプレートおよび試薬(B形態DNA)は、それぞれ、4.3倍または3.2倍だけ(S)−ブロミドを支持した(図41A)。低塩濃度(B形態DNA)での(5−Me−C)Gリッチテンプレートおよび試薬は、(S)−ブロミドの反応についての4.4倍の優先度を示した(図41A)。顕著なことに、Z形態DNAを誘導する高塩濃度の存在下においてこの反応を繰り返すことは、立体選択性における14倍の変化を生じ、ここで、3.2倍の(R)−ブロミドを支持する(kS/kR=0.31)(図41B)。DNA二重らせんの巻き方の方向を変化させる結果としての立体選択性の反転は、このDNAテンプレート型反応の立体選択性を決定する際に、テンプレートおよび試薬のコンホメーションに関係する理論と一致する。
これらの実験は、立体選択性が、核酸テンプレート型有機合成の間に与えられ得ることを実証する。反応物の部分的に拘束された提示とともに、塩基スタッキングに依存するDNAのコンホメーションは、観測される立体選択性を担うようである。これらの実験は、さらに、1つの絶対的な立体化学を有する単一の構造が、その高分子の構造が変更された場合に反対の立体選択性を誘導し得ることを実証する。
(オリゴヌクレオチド)
混合配列および(5−Me−C)Gリッチ配列を含むテンプレートおよび使用されるそれらの対応する試薬の実際の構造は、以下の通りである:
C*=5−メチルシトシン。混合配列および(5−Me−C)Gリッチ配列の両方におけるチオールは、円偏光二色性測定のためにジスルフィド(−(CH2)3S−S(CH2)3OH)として保護された。
(DNA合成および分析)
DNAオリゴヌクレオチドを、標準的なホスホラミダイトプロトコルを使用して、PerSeptive Biosystems Expedite 8090DNA合成機で合成し、そして酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)/CH3CN勾配を用いて逆相HPLCによって精製した。オリゴヌクレオチドは、UVによっておよび臭化エチジウムでの染色後の変性PAGEによって定量された。変性PAGEによるDNAの定量を、Stratagene Eye IIデンシトメーターを用いて行った。合成的に改変されたオリゴヌクレオチドアナログは、Glen Research,Sterling,Virgina,USAから購入した対応するホスホラミダイトまたは制御多孔性ガラス(CPG)ビーズを使用して組み込まれた。
(DNA官能基化)
(2−ブロモプロピオンアミド−NHSエステル)。200mgのN−ヒドロキシスクシンイミド(Pierce,Rockford,IL,USA)を、1.1当量の2−ブロモプロピオン酸(ラセミ、(R)−または(S)−のいずれか)および2当量の1−(3−ジエチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC)(Aldrich)とともに、無水CH2Cl2中に溶解した。2−ブロモプロピオン酸エナンチオマーは、キラルHPLC(ヘキサン中5%イソプロパノール、(R,R)WHELK O1キラル相、220nmで検出)によって判断した場合、>95%のエナンチオ純度であった。この反応を室温で維持し、TLC(EtOAc)によって判断して、1.5時間後に完了させた。粗反応混合物を、2.5%硫酸水素ナトリウム(NaHSO4)とともに抽出して、過剰のEDCを除去した。有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥し、そして減圧下で濃縮した。残渣を乾燥し、そしてDNA官能基化のために直接的に使用した。
(オリゴヌクレオチドの5’−官能基化)。上記のように調製されたNHSエステルを、DMSO中に溶解させた。150μgまでの5’アミノDNAオリゴヌクレオチドを、2時間、室温において、200mMリン酸ナトリウム(pH7.2)中で3mg/mL NHSエステル(最終反応=10%DMSO)と組み合わせた。官能基化オリゴヌクレオチドを、ゲル濾過および逆相HPLCによって精製し、そして変性PAGEおよびMALDI−TOF質量分析によって特徴付けた。
(3’−チオール改変オリゴヌクレオチド)。3’チオール基を、3’−ジスルフィド連結CPG(Glen Research,Sterling,Virgina,USA)を使用して、標準的な自動化DNA合成によって組み込んだ。オリゴヌクレオチド合成に続いて、ジスルフィドは、1時間、室温で、50mM DTT,1M TAPS(pH=8.0)で切断し、DNAテンプレート型反応において使用される前に、ゲル濾過によって精製した。
(DNAテンプレート型反応)
反応を、他に示さない限り、25℃で、50mM MOPS(pH=7.5)および250mM NaCl中の60nMテンプレートおよび60nM試薬で行った。反応アリコートを、2分〜120分の時点で取り出し、過剰のβ−メルカプトエタノールでクエンチした。開始物質および生成物を、クエンチした反応混合物からエタノール沈殿させ、変性PAGEによって分析し、上記のように定量した。生成物形成の相対的な初期速度を、生の収率対時間の当てはめから決定し、kS/kRを計算するために使用した。代表的なデータを図42に示す。
図42に示される代表的なデータセットについて、初期速度から誘導される見かけの二次速度定数は以下の通りである:
図39Aおよび42A:
kR,app=1.94×103M−1s−1;kS,app=7.07×103M−1s−1;krac,app=4.58×103M−1s−1
図39Bおよび42B:
kR,app=5.83×103M−1s−1;kS,app=21.9×103M−1s−1;krac,app=13.6×103M−1s−1
図42Cおよび44A、低塩:
kR,app=4.00×103M−1s−1;kS,app=17.6×103M−1s−1;krac,app=9.88×103M−1s−1
図42Cおよび44A、高塩:
kR,app=1.94×103M−1s−1;kS,app=7.07×103M−1s−1;krac,app=4.58×103M−1s−1
図42Dおよび44B、低塩:
kR,app=6.11×103M−1s−1;kS,app=25.4×103M−1s−1;krac,app=12.1×103M−1s−1
図42Dおよび44B:
kR,app=24.6×103M−1s−1;kS,app=7.66×103M−1s−1;krac,app=13.6×103M−1s−1
(ブロミド安定性の評価)
反応条件下でのブロミドの構造および構造的安定性を、いくつかの独立した方法によって確認した。各ブロミド連結テンプレートまたは試薬オリゴヌクレオチドを、25℃で72時間まで、37℃で48時間まで、チオールの非存在下での反応条件下で、予備的にインキュベートした。予備的インキュベーションに続いて、立体選択性を、上記のように測定し、常に、予備的インキュベーションの結果として変化しないことが見出された。さらに、ブロミド連結テンプレートの大スケール(250pmol)の量を、16時間の反応条件下で各々インキュベートし、そしてMALDI−TOF質量分析によって分析した。ブロミド置換(水またはクロリドによる)の証拠は、表11および12において示されるように、観察されなかった。
最終的に、上記ブロミド連結DNAの低分子アナログ(N−メチル2−ブロモプロピオンアミドの両方のエナンチオマー)についての低分子アナログを、反応条件下で16時間インキュベートし、(S)−エナンチオマーおよび(R)−エナンチオマーを分割する条件下で、キラルHPLCによって分析した。保持時間の変化は観察されなかった。
(アキラル可撓性リンカーを使用する立体選択性)
図43は、DNAテンプレート型SN2反応の間の立体選択性を失う改変テンプレートまたは試薬構造を示す。全ての場合において、kS,app/kR,app値は、0.95〜1.09(±0.09)の範囲内に入り、これは、少なくとも3つの独立した実験の平均および標準偏差を反映する。アキラルリンカーおよびそれらの対応する試薬を含むテンプレートの実際の構造は、以下の通りであった:
(B−DNAおよびZ−DNAの円偏光二色性(CD))
DNAテンプレートおよび試薬を上記のように調製した。チオール連結試薬は、脱保護されず、CD分析の間、それらのジスルフィド形態を保持した。CDサンプルは、100mMまたは5M NaClのいずれかととともに、50mM リン酸緩衝液(pH=7.5)中に215nMテンプレートおよび215nM保護試薬を含んだ。DNAを欠くバックグラウンドサンプルはまた、各サンプルについて調製された。CD測定を、2.0nm分解能を有するJASCO偏光分光計で360nm〜200nmを2nm/秒で走査して、25℃で1mm経路キュベット中で実行した。B−形態およびZ−形態テンプレート−試薬複合体の得られたCDを図44に示す。図44Aは、B−DNAの特徴である正常(混合組成)配列を含むテンプレート−試薬複合体の円偏光二色性(CD)スペクトルを示す。図44Bは、低塩濃度でのB−DNAコンホメーションを有する(5−Me−C)Gリッチ複合体および高塩濃度でのZ−DNAコンホメーションを有する(5−Me−C)GリッチのCDスペクトルを示す。混合配列および(5−Me−C)Gリッチ配列を含むテンプレートの正確な構造、ならびに使用されるそれらの対応する試薬は、以下の通りである:
(B−形態DNAおよびZ−形態DNAによって誘導される立体選択性)
図45は、100mM NaCl(レーン1〜3)または5M NaCl(レーン4〜6)(6時間の時点)においてCGリッチ配列を使用する、代表的な変性ゲル電気泳動分析を示す。レーン1および4:ラセミブロミド;レーン2および5:(R)−ブロミド;レーン3および6:(S)−ブロミド。ブロミド連結試薬は、可視ではない。類似の結果を、NaClの代わりに、Na2SO4を使用して観察した。
(NaClの代わりに、Na2SO4の存在下でのDNAテンプレート型反応)
観察される立体選択性がクロライドの存在によって影響しなかったことを確認するために、図39および44に示される実験を、NaClの代わりに、Na2SO4の存在下で繰り返す(ナトリウムの濃度を一定に維持する)。3つの独立した試験の結果は、NaClの存在下で報告された結果と非常に類似し、以下の通りである:
NaClの代わりにNa2SO4での図39A:kS/kR=5.4±0.5
NaClの代わりにNa2SO4での図39B:kS/kR=3.9±0.3
NaClの代わりにNa2SO4での図39C:kS/kR=4.7±0.7
NaClの代わりにNa2SO4での低塩、図44A:kS/kR=3.7±0.7
NaClの代わりにNa2SO4での高塩、図44A:kS/kR=3.1±0.6
NaClの代わりにNa2SO4での低塩、図44B:kS/kR=3.6±0.5
NaClの代わりにNa2SO4での高塩、図44B:kS/kR=0.25±0.03
(代表的生成物のMALDI−TOF質量分析)
図39の代表的なDNAテンプレート型反応(240pmolスケール)からの生成物を、調製用変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動により精製し、続いて、一晩37℃で、0.1M酢酸トリエチルアンモニウムで抽出した。凍結乾燥した生成物を、MALDI−TOF質量分析に供し、この結果を表13に要約する。全ての場合において、観察される質量が予期された質量と一致する。
(実施例7:単一溶液でのそれ以外の不適合性反応の指示)
この実施例は、たとえ関係する反応物が交差反応性であり、従って、従来の合成条件下で不適合性であるとしても、オリゴヌクレオチドが、同じ溶液中でいくつかの異なる合成反応型を同時に指示し得ることを実証する。これらの発見はまた、複数の同時の必ずではない適合性の反応型を使用して、生成物に合成ライブラリー前駆体のワンポット多様化を実行することが可能であることを実証する。
DNAテンプレートが、空間的分離無しに、異なる反応型を使用して、多様化を媒介する能力を、それぞれ、マレイミド基で5’末端で官能基化された異なるDNA配列の3つのオリゴヌクレオチドテンプレート(1a〜3a)、およびアミン、チオール、またはニトロアルカン基で3’末端において官能基化された3つのオリゴヌクレオチド試薬を調製することによって、最初に試験した(図46)。3つの試薬それぞれのDNA配列は、テンプレートの各々の5’末端近くの10塩基に相補的な異なる10塩基アニーリング領域を含んだ。1aと4a、2aと5a、または3aと6aを3つの別々の容器においてpH8.0で組み合わせて、予期されるDNAテンプレート型アミン結合体付加物、チオール結合体付加物、またはニトロ−マイケル付加生成物7〜9を生じた(図46、レーン1〜3)。
1a〜6aを組み合わせる際に作製され得る9個の可能な反応生成物を区別するために、テンプレートオリゴヌクレオチドの長さを、11塩基、17塩基、または23塩基を含むように変化させ、そして試薬オリゴヌクレオチドの長さを、14塩基、16塩基、または18塩基を含むように変化させた。オリゴヌクレオチド長の差は、DNAテンプレート型反応の効率に有意に影響しなかった反応性基から遠位の伸長を使用して達成された。この設計によって、9個全ての可能な反応生成物(DNAの25塩基、27塩基、29塩基、31塩基、33塩基、35塩基、35塩基、37塩基、39塩基、または41塩基に結合される)が、変性ポリヌクレオチドゲル電気泳動によって区別され得た。
3個全てのテンプレート(1a〜3a)を含む溶液が、3つ全ての試薬(4a〜6a)を含む溶液(pH8.0)と組み合わされた。生じる反応は、長さが25塩基、33塩基、および41塩基の3つの所望の生成物7、8、および9を排他的に作製し、これは、相補的なテンプレート−試薬対に対応する3つの反応のみが行われたことを示す(図46、レーン4)。他の6つの可能な反応生成物の形成は、デンシトメトリーによって検出されなかった(<5%反応)。対照的に、個々の反応テンプレートおよび異なる10塩基アニーリング領域よりもむしろ同じものを含む試薬は、全ての可能な生成物の形成を可能にした(図46、レーン5)。これは、DNAテンプレート型合成が、異なる型の生成物内に単一の官能基の選択的なワンポット変換を指示する能力(実施例において、メレイミドを第2級アミン、チオエーテル、またはα−分枝ニトロアルカンに)を実証する。
この多様化様式が、非DNA連結アクセサリー試薬を必要とするワンポット反応を支持する能力を試験するために、長さが14塩基または14塩基の2つのアルデヒド連結試薬(それぞれ、4bまたは5b)および相補的な11塩基アミン連結テンプレート(1b)または17塩基ホスホラン連結テンプレート(2b)を用いて実行した。1bおよび4bをpH8.0において、3mM NaBH3CNの存在下で組み合わせて、DNAテンプレート型還元的アミノ化生成物10を生じ、同じ条件下での2bおよび5bは、ヴィティヒオレフィン生成物11を作製した(図46)。4つ全ての反応物を一緒にワンポットで混合して、組み合わせた個々のヴィテッヒオレフィン化反応物または還元的アミノ化反応物と同一の生成物の分布を生じた(図46)。アミン1bとアルデヒド5bとの間、またはホスホラン2bとアルデヒド4bとの間の反応は検出されなかった(図46、レーン8対レーン9)。
このアプローチの一般性は、異なるアクセサリー試薬に必要とされる複数の反応型を含むことによって、探索された。長さ11塩基、17塩基または23塩基の3つのアミン連結テンプレート(1c〜3c)を、それぞれ、pH8.0において、3mM NaBH3CNの存在下、10mM 1−(3−ジメチル−アミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC)、および7.5mM N−ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ−NHS)の存在下で、14塩基長、16塩基長、または18塩基長(14c〜6c)のアルデヒド連結試薬、カルボン酸連結試薬、またはマレイミド連結試薬(4c〜6c)とともに組み合わせた。6個全ての反応物を含む反応は、同じ3つ還元的アミノ化、アミンアシル化、または結合体付加生成物(12〜14)(1つのテンプレートおよび1つの試薬を含む個々の反応から生成され、そして非DNAテンプレート型反応から生じる検出可能な量の6個の可能な所望されない生成物を生成しない)を与えた(図46、レーン10〜14)。まとめると、これらの結果は、DNAテンプレート型合成が、いくつかの交差反応性の基の間の同時の反応をワンポットで指示して、配列プログラムされたサブセットの多くの可能な生成物のみを生じ得る。
上記3つの実施例それぞれが、単一の官能基(マレイミド、アルデヒド、またはアミン)を異なる反応型の生成物に多様化した。DNAテンプレート型合成ライブラリーを複数の反応型の生成物にワンポットで多様化するためのより一般的な形式は、試薬およびテンプレートの両方に連結された異なる官能基の同時の反応を含む。この可能性を試験するために、上記3つの実施例において使用される官能基(アミン、アルデヒド、マレイミド、カルボン酸、ニトロアルカン、ホスホラン、およびチオール)の全てを集合的に含む、6個のDNA連結求核性テンプレート(15〜20)および6個のDNA連結求電子性試薬(21〜25)調製した(図47)。これらの12個のDNA連結反応物は、これらの6個の反応の見かけの二次反応定数が、10倍よりも大きく変動するものの、理論的に、同時のアミン結合体付加、チオール結合体付加、ニトロ−マイケル付加、還元的アミノ化、アミンアシル化、およびヴィティッヒオレフィン化を同じポットで受け得る。
異なる長さのオリゴヌクレオチドを使用することによって単一のポットで12個全ての試薬およびテンプレートを組み合わせる結果を決定することは、作製され得る多数(少なくとも28個)の可能な生成物に起因して困難である。従って、15塩基、20塩基、25塩基、30塩基、35塩基、または40塩基のような試薬の長さは、変動するが、テンプレートの長さは、11塩基に固定された(図47)。3mM NaBH3CN、10mM EDC、および7.5mM スルホ−NHSの存在下で、pH8.0において別々に反応された場合、6個の相補的なテンプレート−試薬対の各々が、予期されるアミン結合体付加、チオール結合体付加、ニトロ−マイケル付加、還元的アミノ化、アミンアシル化、またはヴィティッヒオレフィン化の生成物を生成した(図47)。反応効率は、異なる最適な反応条件の間で妥協しなければならないにも関わらず、対応する個々の反応に対して50%よりも大きかった。テンプレート15〜20はまた、3’−ビオチニル化形態で調製された。ビオチニル化テンプレートは、それらの非ビオチニル化対応物と区別可能でない反応性を示した(図47)。
次いで、12個の反応物を含む6個の別々の反応それぞれは、3mM NaBH3CN、10mM EDC、および7.5mM スルホ−NHSの存在下で、pH8.0において実施された(図48)。各反応は、5個の非ビオチン化テンプレート(15〜20)および6個の試薬(21〜25)とともに、異なるビオチン化テンプレート(15、16、17、18、19、または20)を含んだ。これらの反応を、15〜20を含む溶液と、21〜25を含む溶液と組み合わせることによって、開始した。各ビオチン化テンプレートから生じた生成物を、ストレプトアビジンコーティングされた磁気ビーズを用いて捕捉し、そして変性ゲル電気泳動によって同定した。各反応における6個の試薬が独特の長さのオリゴヌクレオチドを含んだので、ビオチン化テンプレートおよび任意の試薬を含む任意の反応生成物の形成が検出され得た。6個全ての場合において、ビオチン化テンプレートは、各反応における5個までの他の生成物を形成する可能性にもかかわらず、そのDNA配列によってプログラムされる単一の生成物のみを形成した(図48)。まとめると、これらの発見は、種々の非DNA連結アクセサリー試薬を必要とする有意に異なる速度の反応が、テンプレートおよび試薬の両方が、たとえいくつかの異なる交差反応性の官能基を含むとしても、同じ溶液においてDNAテンプレート型合成によって指示され得る。DNAテンプレートが、認識可能な速度で進行することから非テンプレート型反応を排除する濃度で複数の反応を指示する能力は、単一の溶液において空間的に分離されたセットの反応を模倣する。
従来の合成方法と比較して、DNAテンプレート型合成による低分子のライブラリーを作製することは、DNA連結試薬を調製することの必要性、水性のDNA適合性化学の制限、および特徴付け方法(例えば、分子生物学的スケール(pg〜μg)の反応に適切な質量分析法および電気泳動)における信頼性を含むいくつかの因子によって制限される。他方、DNAテンプレート型合成は、(i)所望の特性を有する合成分子の直接的なインビトロ選択(スクリーニングに対して)および増幅を可能にし、(ii)前例のない多様性のある合成ライブラリーの調製を可能にし、そして(iii)活性なライブライリーメンバーの選択および同定のために最小量の材料のみを必要とする。さらに、この実施例は、現在の合成方法を使用して可能ではない反応性の潜在的に有用な様式が、DNAテンプレート型形式で達成され得る。例えば、6個の異なる型の反応が、必要とされる非DNA連結アクセサリー試薬が適合性であれば、1つの溶液において同時に実行され得る。この反応様式は、単一の溶液において異なる反応タイプを使用する合成低分子来無頼ーの多様化を可能にする。
(材料および方法)
(テンプレートおよび試薬の合成)
オリゴヌクレオチドを、標準的な自動化固相技術を使用して合成した。改変ホスホラミダイトおよび制御多孔性ガラス支持体を、Glen Research,Sterling,Virginia,USAから得た。他に示さない限り、官能基化テンプレートおよび試薬を、5’−H2N(CH2O)2末端オリゴヌクレオチド(テンプレートのため)または3’−OPO3−CH2CH(CH2OH)(CH2)4NH2末端オリゴヌクレオチド(試薬のため)を、25℃で、2mg/mLの適切なN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(Pierce,Rockford,IL,USA)を含む水性200mM pH7.2リン酸ナトリウム緩衝液:DMFの9:1混合物中で反応させることによって合成した。
アルデヒドおよびニトロアルカン連結オリゴヌクレオチド(4b、4c、5b、6a、17、24、および26、図46および47)について、NHSエステルを、適切なカルボン酸(DMF中、900mM)を等量のジシクロヘキシルカルボジイミド(DMF中、900mM)およびNHS(DMF中、900mM)と90分間、組み合わせることによって作製した。ホスホラン連結オリゴヌクレオチド(2bおよび20、図46および47)を、上記pH7.2の緩衝液において、適切なアミノ末端オリゴヌクレオチドと、ヨード酢酸のNHSエステル(SIA,Pierce,Rockford,IL,USA)の0.1容量の20mg/mL DMF溶液とを90分間反応させ、続いて、DMF中の4−ジフェニルホスフィノ安息香酸の0.1容量の20mg/mL溶液を添加して、調製した。チオール連結テンプレート16を、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGF,Pierce,Rockford,IL,USA)と適切なオリゴヌクレオチドと15分間、反応させ、0.1容量の300mM 2−アミノエタンチオールを添加した。試薬5aを、3’−OPO3−CH2SS(CH2)ODMT官能基化制御多孔性ガラス(CPG)支持体を使用して合成し、そして製造業者のプロトコルに従って使用前に還元して合成した。
3’ビオチニル化オリゴヌクレオチドを、ビオチン−TEG CPG(Glen Research,Sterling,Virginia,USA)を使用して調製した。ビオチニル化テンプレートから生じる生成物を、1.05当量のストレプトアビジン結合磁気ビーズ(Roche)と混合すること、4M塩酸グアニジニウムで2回洗浄すること、および1mMビオチンを含む水性10mM Tris(pH7.6)を用いて80℃で溶出することによって、精製した。
(リンカーの合成)
DNAオリゴヌクレオチドと1a〜6cにおける官能基との間のリンカーは、以下の通りである。1bおよび1c」DNA−5’−NH2;1a、2a〜2c、3aおよび3c:DNA−5’−O(CH2)2O(CH2)2−HN−;5a:DNA−3’−O−(CH2)3SH;4a〜4c、5b、5c、6aおよび6c:DNA−3’−O−CH2CH(CH2OH)(CH2)4NH−。図46における可能な全ての生成物(レーン5、9および14)を生成するために使用されるオリゴヌクレオチド配列にて、アニーリング領域に下線を付している:R−TATCTACAGAG−3’[配列番号106](1a〜1c);R−TATCTACAGAGTAGTCT−3’[配列番号107](2a〜2c);R−TATCTACAGAGTAGTCTAATGAC−3’[配列番号108](3a〜3c);5’−CAGCCTCTGTAGAT−R[配列番号109](4a〜4c);5’−CTCAGCCTCTGTAGAT−R[配列番号110](5a〜5c);5’−GGCTCAGCCTCTGTAGAT−R[配列番号111](6a〜6c)。官能化されたテンプレートおよび試薬を、ゲル濾過(Sephadex G−25)およびその後の逆相HPLC(0.1M酢酸トリエチルアンモニウム/アセトニトリル勾配)によって、精製した。代表的な官能化されたテンプレートおよび試薬を、MALDI質量分析法によりさらに特徴付けた。
(反応条件)
すべての反応を、別個の容器にて純水中に試薬およびテンプレートを溶解した後にそれらを50mM水性TAPS緩衝液(pH8.0)、250mM NaCl中に25℃にて16時間、DNA結合反応物(60nM(図47)または12.5nM(図47および48)と合わせることによって、実施した。NaBH3CN、EDCおよびスルホ−NHSが、記載したように適切な場合には存在した。生成物を、臭化エチジウム染色およびUV透過照明を使用して、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析した。荷電状態の変化、結合した官能基、および部分的二次構造は、同じ長さの種々の官能化されたオリゴヌクレオチドについて、穏やかなゲル移動度変化を生じた(図46〜48)。
(実施例8:DNAテンプレート官能基変換)
カップリング反応は、分子の多様性を構築するために有用であるが、DNAテンプレート官能基変換の発達は、生成し得る構造の型を有意に拡大し得る。DNAテンプレート合成を使用して、カップリング反応において使用する官能基を脱マスクまたは相互変換することにより、官能基を変換し得る。配列をプログラムされたライブラリー部分集合内の反応性基を露出するかまたは作製することによって、DNAテンプレート官能基の相互変換により、ライブラリーの多様性が、配列脱マスクにより生成されることが可能になる(図49)。図49において、PG1〜PG3は、3つの異なる保護基を示し、A〜Fは、足場分子の脱保護された官能基と反応可能な反応物を示す。連続的脱マスクアプローチは、DNAに結合される能力を通常は欠く反応物(例えば、単純なアルキルハライド)が、分子内非テンプレート性反応様式で配列を特定されたテンプレート部分集合と反応することにより、ライブラリーの多様性に寄与すること可能にするという、大きな利点を提供する。この利点は、生成され得る構造の型を有意に増加する。他方、連続的脱マスクは、「工程」ごとにより多くの操作を必要とするという欠点を有する。なぜなら、以前に使用された低分子反応物は、DNAテンプレート官能基脱マスクの間に除去されなければならないからである。この除去は、単純なゲル濾過カートリッジを使用して、ライブラリー全体に対して迅速に実施され得る。
(DNAテンプレート脱保護)
第1の種類のDNAテンプレート官能基変換は、保護形態からアミン基、チオール基、アルコール基、カルボキシレート基またはアルデヒド基を、配列特異的に脱マスクする。Staudinger反応において、アジドは、ホスフィンと反応して、アザイリドを生じる(Staudingerら(19199HELV.CHIM.ACTA.2:635〜646)。この反応は、水性媒体において実施される場合に、そのアザイリドは、自然加水分解して、アミンおよびホスフィンオキシドを提供する(Scrivenら(1988)CHEM.REV.88:297〜368)。DNA結合アリールホスフィン試薬およびDNA結合アルキルホスフィン試薬は、アジド結合DNAテンプレートと合わされた場合に、配列特異的アミン脱保護を可能にする(図50A)。DNA結合ホスフィンおよびDNA結合アジドは、両方とも、以前のDNAテンプレート反応において首尾良く使用されている。代替的DNAテンプレートアミン脱保護として、o−にトロベンゼンスルホンアミド(アミンと市販のo−ニトロベンゼンスルホニルクロライドとから調製する)の求核性芳香族ipso−置換は、遊離アミンを生じ得る(図50B)。この反応は、脱プロトン化チオフェノールの存在下で効率的に進行することが公知であり、従って、pH>8にて、o−にトロベンゼンスルホンアミド結合テンプレートに対するチオフェノール結合試薬のDNAテンプレート攻撃により、配列特異的アミン脱保護が可能になり得る(Fukuyamaら(1999)SYNLETT 8:1301〜1303)。
一旦最適化されると、DNAテンプレートアミン脱保護反応は、アルコールおよびチオールについての脱保護反応を含むように広げられ得る。Kusumotoおよび共同研究者らは、4−アミノブチリルエステルが、自発的分子内ラクタム形成して、2−ピロリドンおよび遊離ヒドロキシル基を、優れた収率で生じる(Kusumotoら(1986)BULL.CHEM.SOC.JPN.59:1296〜1298)。Kahneおよび共同研究者らは、水性媒体においてこの反応を有効に使用した(Thomsonら(1999)J.AM.CHEM.SOC.121:1237〜1244)。DNAテンプレートヒドロキシル基脱保護が、図50Cにおいて示される。ラクタム形成が遅い場合、この反応は、加熱され得るか、またはLewis酸が、添加され得る。なぜなら、配列特異性には、アミン脱保護は必要ではないからである。4−アジドブチリルチオエステルを使用する同様なDNAテンプレートチオール脱保護が、図50Cに示される。これらの基は、広範な条件下で加水分解に対して安定であることが、企図される。
パラジウム媒介性脱アリル化もまた、DNAテンプレートのカルボキシレート脱保護、アミン脱保護、ヒドロキシル脱保護、またはチオール脱保護において使用され得る。アリルオキシカルボニル(Alloc)エステル、カルボネート、チオカルボネート、およびカルバメートが、図50Dにおいて示されるようなDNA結合Pdリガンド(例えば、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)試薬(公知のBINAP−6−ブタン酸から調製する))を用いて、pM〜μM濃度の水溶性Pd源(例えば、Na2PdCl4)の存在下で、処理される(Baystonら(1998)J.ORG.CHEM.63:3137〜3140)。DNA結合Pdリガンドは、相補的テンプレートでのPdの有効モル濃度を増加するが、ミスマッチしたテンプレートでは増加せず、これにより、対応するAllocエステル基、カルボネート基、ヒドロキシル基、チオール基、およびアミン基からの、それぞれ、カルボキシレート基、ヒドロキシル基、チオール基、およびアミン基の配列特異的脱保護が可能になる(図50D)(Genetら(1994)TETRAHEDRON 50:497〜503)。PdからのBINAPリガンド解離速度は、Pd媒介性アリールアミン化の間に測定されており、基質と生成物との会合速度および解離速度よりもかなり遅いことがわかっていることは、特に心強い(Singhら(2002)J.AM.CHEM.SOC.124:14104〜14114)。このPd源およびDNA結合Pdリガンドは、高濃度でプレインキュベートされ得、その後、生じた複合体は、60nM濃度で相補的テンプレートまたはミスマッチテンプレートのいずれかに添加され得る。このアプローチはまた、リガンド−金属解離がDNAアニーリングおよびPd触媒性脱アリル化と比較して遅い場合に、配列特異的Alloc脱保護を生じる。
最後に、遷移金属塩(Sc3+およびYb3+を含む)は、アセタール加水分解を触媒してアルデヒドを生じることが公知である(Fukuzawaら(2001)CHEM.LETT.5:430〜436)。図50Eに示されるクラウンエーテルをオリゴヌクレオチドに結合体化すると、ランタニドトリフレートの存在下でのDNAテンプレートアルデヒド脱保護が可能になる。これらのクラウンエーテル−Ln3+複合体は、水性あるドール反応を触媒すると同時に1当量のLn3+を完全に封鎖することが、以前に報告されている(Kobayashiら(2001)ORG.LETT.3)。アルデヒド脱保護は、非常に配列特異的である。なぜなら、遊離Ln3+は、無視できるからである。
(DNAテンプレート官能基相互変換)
第2の種類のDNAテンプレート官能基変換は、DNAテンプレート反応により形成されるかまたは使用される基を、相互変換する。2つの官能基の相互変換が、図51に示される。2,6−二置換ピリジンN−オキシドの存在下でのルテニウム(II)ポルフィリンは、広範な種類の単純な電子欠乏オレフィンの顕著に効率的なエポキシド化を触媒する(Higuchiら(1989)TETRAHEDRON LETT.30:6545〜6548;Grovesら(1985)J.AM.CHEM.SOC.107:5790〜5792;Zhangら(2002)ORG.LETT.4:1911〜1914;Yuら(2000)J.AM.CHEM.SOC.122:5337〜5342)。一本鎖DNAは、Ru(II)と複合体化した水性テトラキス(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン複合体の存在下で安定であり、Ru(II)−DNA結合体は、以前に報告されている(Hartmannら(1997)J.BIOL.INORG.CHEM.2:427^432;Pascalyら(2002)J.AM.CHEM.SOC.124:9083〜9092)。DNA結合Ru(II)ポルフィリン触媒を使用するDNAテンプレートオレフィンエポキシド化が、図51Aに示される。これは、市販のテトラキス(4−カルボキシフェニル)ポルフィリンをアミン末端オリゴヌクレオチドに結合することによって、調製される(Holmlinら(1999)BIOCONJUG.CHEM.10:1122〜1130)。生じるDNA結合ポルフィリンは、以前に記載されるようにRu3(CO)12を用いて金属化される。この官能基の相互変換は、DNAテンプレートWittigオレフィン化およびHeckカップリングの生成物がエポキシド付加反応のための基質になることを可能にすることによって、いくつかの多様な反応を橋渡しする。
第2の官能基の相互変換として、ランタニドトリフレート触媒性水性Diels−AlderおよびヘテロDiels−Alder付加環化は、水中で効率的に進行し、DNA結合Lewis酸キレート剤(例えば、ビナフトール、ビス−トリフィラミド、または図50Eに示されるクラウンエーテル)は、テンプレート結合アルデヒドと、溶液中の遊離ジエンとの間の配列特異的Diels−Alder反応を可能にする(図51B)。Danishefskyのジエンが使用される場合、この官能基変換は、α,β−不飽和ケトンを提供し、このケトンは、その後のDNAテンプレート結合体付加反応の基質として役立つ。完全に配位したLn3+錯体(例えば、クラウンエーテルから生じる錯体)は、速度論的に安定であり、なおかつ容易なリガンド交換を介して効率的な触媒を可能にすると、報告されている(Chappellら(1998)INORG.CHEM.37:3989〜3998)。さらに、DNA結合ランタニド複合体は、水溶液中で安定な発光剤として以前に使用されており、従って、これらの複合体は、DNA中に存在する官能基と適合性である(Liら(1997)BIOCONJUG.CHEM.8:127〜132)。
(実施例9:例示的化合物および化合物ライブラリーの合成)
(A.ポリカルバメートライブラリーの合成)
本実施例は、増幅可能なポリカルバメートライブラリーを生成するためのストラテジーを示す。
(概説)
上記ライブラリーをコードするために使用される可能な16種のジヌクレオチドコドンのうち、1種が、開始コドンの機能を割当てられ、1種が、終止コドンとして役立つように割当てられる。その後、人工的遺伝コードが、残りの14種までのジヌクレオチドの各々を異なるモノマーに割当てて作製される。幾何学的理由により、1つのモノマーは、実際には、2つの側鎖を含むジカルバメートを含む。各モノマー内において、上記ジカルバメートは、シリルエノールエーテルリンカーを介して、(tRNAアンチコドンと同様に)対応するジヌクレオチドに結合される。これは、フルオライドを用いる処理により、そのネイティブDNAと遊離カルバメートとを遊離させる。
このジヌクレオチド部分は、活性化5’−2−メチルイミダゾールリン酸として存在し、これは、中性水性条件または塩基性水性条件下でなおも比較的安定である、ヌクレオチドのテンプレート特異的オリゴマー化についての優れた脱離基として作用することが実証されている(Inoueら(1982)J.MOL.BIOL.162:201;Remboldら(1994)J.MOL.EVOL.38:205;Chenら(1985)J.MOL.BIOL.181:271;Acevedoら(1987)J.MOL.BIOL.197:187;Inoueら(1981)J.AM.CHEM.SOC.103:7666;Schwartzら(1985)SCIENCE 228:585)。このジカルバメート部分は、ビニルオキシカルボネートリンカーを介して連結された環状形態で存在する。このビニルカルボネート基は、中性水性条件または塩基性水性条件において安定であることが実証されており、アミンの付加によってカルバメートを非常に高い収率で提供することがさらに示されている(Olofsonら(1977)TETRAHEDRON LETT.18:1563;Olofsonら(1977)TETRAHEDRON LETT.18:1567;Olofsonら(1977)TETRAHEDRON LETT.18:1571)。
新生ポリカーバメート鎖からのアミンによって結合された場合、ビニルカルボネートリンカーは、m−クレゾールの芳香族化によって駆動されて、遊離アミンを遊離する。この遊離アミンは次いで、求核試薬として作用して、次のビニルオキシカルボネートを攻撃し、成長するカルバメート鎖の重合を増殖させる。このようなストラテジーは、重合の間の任意の時点で1つのみの求核試薬が存在することを確実にすることにより、交差反応性および二方向性重合の可能性を最小にする。
上記のモノマーを用いて、ポリカーバメートへのDNAの人工的翻訳は、3段階プロセスとして概説され得る。第1段階では、ライブラリーをコードする一本鎖DNAテンプレートを用いて、モノマーのジヌクレオチド部分のアセンブリを導き、3’ヒドロキシル基の代わりに3’メチルエーテルを保有する「停止」モノマーで終結する(図52)。
一旦、これらのヌクレオチドがアセンブルされると、o−ニトロベンジルカルバメートにおいてコードする「開始」モノマーは光脱保護されて、カルバメート重合を開始する一級アミンを明らかにする。重合は、DNA骨格に沿って5’から3’の方向に進行し、各求核試薬の攻撃は、新たなアミン求核試薬のその後の露出をもたらす。「停止」モノマーの攻撃は、アミンではなくアセトアミドを遊離させ、それにより、重合を終結させる(図53)。この段階ではDNAは安定な二本鎖形態で存在するので、温度およびpHのような変数は、重合効率を最適にするために利用され得る。
重合後、ポリカーバメートは、フッ素を用いた処理により、DNAのリン酸骨格から切断され得る。その結果のフェノール放出によって駆動されるエノールエーテルリンカーの脱ケイ酸およびリン酸の除去は、そのコードする一本鎖DNAへとそのカルボキシ末端での共有結合により連結したポリカーバメートを提供する(図54)。
この段階では、ポリカーバメートは、エステル結合の塩基加水分解により、DNAから完全に遊離され得る。この遊離したポリカーバメートは、HPLCによって精製され得、そしてその所望の特性がインタクトであるかを確認するために再試験され得る。遊離DNAは、PCRを用いて増幅され得、誤りがちなPCR(Cadwellら(1992)PCR METHODS APPL.2:28)またはDNAシャッフリング(Stemmer(1994)PROC.NATL.ACAD.SCI.USA 91:1074;Stemmer(1994)NATURE 370:389;米国特許第5,811,238号)を用いて変異誘発され、そして/または配列決定されてポリカーバメートポリマーの一次構造が明らかにされる。
(モノマー単位の合成)
モノマーが合成された後、DNA骨格におけるモノマーのアセンブリおよび重合は、死前に生じるべきである。シキミ酸1(市販される、生合成(Davis(1955)ADV.ENZYMOL.16:287)により入手可能またはD−マンノースからの短い合成(Fleetら(1984)J.CHEM.soc.905;Harveyら(1991)TETRAHEDRON LETT.32:4111)によって入手可能)は、モノマー合成についての便利な開始点として作用する。synヒドロキシル基は、p−メトキシベンジリデンとして保護され、そして残りのヒドロキシル基は、tert−ブチルジメチルシリルエーテルとして作用して、2が得られる。次いで、保護されたシキミ酸のカルボキシレート部分は、塩化アルミニウムリチウム(LAH)還元、得られるアルコールのトシル化、およびLAHを用いたさらなる還元によって完全に除去されて、3を提供する。
市販でかつ合成によって入手可能なN保護アミノ酸は、各モノマーのジカルバメート部分についての出発物質として作用し得る。反応性側鎖は、光不安定性のエーテル、エステル、アセタール、カルバメートまたはチオエーテルとして保護される。以前に開発された化学(Choら(1993)SCIENCE 261:1303)を用いて、所望のアミノ酸4は、イソブチルクロロホルメートとの混合無水物形成、続いて水素化ホウ素ナトリウムでの還元によって、対応するアミノアルコール5へと変換される。次いで、アミノアルコールは、p−ニトロフェニルクロロホルメートでの処理によって、活性化されたカルボネートへと変換されて6が得られ、6は次いで、第2のアミノアルコール7とカップリングし、以下のヒドロキシル基シリル化およびFMOC脱保護に続いて、カルバメート8を提供する。
シキミ酸由来リンカー上へのカルバメート8のカップリングは、以下の通りに進行する。3のアリル性ヒドロキシル基は、tetra−ブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)で脱保護され、トリフレート無水物で処理されて、2級トリフレートを形成し、次いでアミノカルバメート8で置換されて9が得られる。3におけるビニル性メチル基の存在は、SN2’付加から得られる、所望でない生成物の量を最小化することを補助するはずである(Magid(1980)TETRAHEDRON 36:1901)。脱プロトン化されたカルバメートの、α,β−不飽和エステルへのMichael付加は、充分に証明されている(Colladoら(1994)TETRAHEDRON LETT.35:8037;Hiramaら(1985)J.AM.CHEM.Soc.107:1797;Nagasakaら(1989)HETEROCYCLES 29:155;Shishidoら(1987)J.CHEM.Soc.993;Hiramaら(1989)HETEROCYCLES 28:1229)。同様に、この二級アミンを、o−ニトロベンジルカルバメート(NBOC)として保護し、そして得られた化合物を、カルバメート窒素において脱プロトン化する。この脱プロトン化を、代表的には、水素化ナトリウムまたはカリウムtert−ブチルオキシドのいずれかを用いて実施し得る(Colladoら(1994)前出;Hiramaら(1985)前出;Nagasakaら(1989)前出;Shishidoら(1987)前出;Hiramaら(1989)前出)が、他の塩基を利用して、ニトロベンジルプロトンの脱プロトン化を最小にし得る。脱プロトン化カルバメートをα,β−不飽和ケトン10へと付加し、続いて得られたエノラートをtert−ブチルジメチルシリルクロリド(TBSCl)でトラップすることによって、シリルエノールエーテル11が得られるはずである。以前に見出された、5−置換エノン(例えば、10)への共役付加の立体選択性(Houseら(1968)J.ORG.CHEM.33:949;Stillら(1981)Tetrahedron 37:3981)は、11が、そのジアステレオマーよりも優先的に形成されることを示唆する。ケトン10(フッ素切断可能カルバメートホスフェートリンカーに対する前駆体)は、ワンポット脱炭酸(Bartonら(1985)TETRAHEDRON 41:3901)、続いてフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)での処理、得られたアルコールのSwern酸化により12を得ること、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)での脱保護、障害がより少ないアルコールの選択的ニトロベンジルエーテル形成、およびヨウ化サマリウムでα−ヒドロキシル基の還元によって、2から合成され得る(Molander(1994)ORGANIC REACTIONS 46:211)。
11のp−メトキシベンジリデン基を、シアノ水素化ホウ素ナトリウムおよびトリメチルシリルクロリド(TMSCl)を使用して、α−ヒドロキシp−メトキシベンジル(PMB)エーテルに変換し(Johanssonら(1984)J.CHEM.SOC.2371)、そしてTES基を、2%のHFを用いて脱保護化し(TBSエーテルに影響を与えないはずの条件(Boschelliら、TETRAHEDRON LETT.26:5239))、13を得る。先例(Johanssonら(1984)J.CHEM.SOC.2371;Sutherlinら(1993)TETRAHEDRON LETT.34:4897)によれば、PMB基は、障害のより大きな二級アルコール上に残るはずである。2つの遊離ヒドロキシル基を、クロロ蟻酸p−ニトロフェノール(または別のホスゲンアナログ)溶液への13の非常にゆっくりとした添加により、大環状化して14を提供し得る。PMBエーテルを脱保護し、そして得られたアルコールをトリフレートに変換し、立体障害性の塩基を用いて反応速度条件下で除去して、ビニルオキシカルボネート15を得る。ニトロベンジルエーテルおよびニトロベンジルカルバメートの光脱保護は、アルコール16を生じる。
モノマー合成を、3つの成分の連続的なカップリングによって完了する。クロロジイソプロピルアミノホスフィン17を、PCl3とジイソプロピルアミンとの反応によって合成する(Kingら(1984)J.ORG.CHEM.49:1784)。樹脂結合ヌクレオシド(または3’−o−ニトロベンジルエーテル保護ヌクレオシド)18を17にカップリングして、ホスホルアミダイト19を得る。19とヌクレオシド20とのその後のカップリング(Inoueら(1981)J.AM.CHEM.SOC.103:7666)は、21を提供する。次いで、アルコール16を21と反応させ、m−クロロ過安息香酸(MCPBA)またはI2を使用した慎重な酸化、続いての樹脂からの切断(または光脱保護)の後に、完成したモノマー22を生じる。17とアルコールとの連続的なカップリングのこのストラテジーを成功裏に使用して、3つの異なるアルコキシ置換基を保有するホスフェートを良好な収率で生成する(Bannwarthら(1987)HELV.CHIM.ACTA 70:175)。
カルバメート重合を開始および終結させるために使用される独特の開始モノマーおよび停止モノマーを、上記スキームの簡単な改変によって合成し得る。
(B)大環状フマルアミドライブラリー))
本実施例は、DNAテンプレート合成を用いて、低分子のライブラリーを作製し得ることを実証する。特に、図55に示すとおり、DNAテンプレート大環状フマルアミドライブラリーを作製することが可能である。
このライブラリー合成スキームは、頑強なDNAテンプレートアミンアシル化および分子内Wittigオレフィン化反応を用いて、多様で部分的に剛直な大環状フマルアミドを生成する。このフマルアミド基は中性溶液に対して安定であるが、上昇した有効盛る濃度において提示された場合、求電子試薬を充分に捕捉する。それゆえ、標的タンパク質活性部位において見出される求電子試薬側鎖は、フマルアミド官能基によって共有結合によって捕捉され得る。ライブラリー合成において重要な工程は、以下である:(i)スルホンリンカーを用いたDNAテンプレートアミンアシル化、(ii)ジオールリンカーを用いたDNAテンプレートアミンアシル化、(iii)ホスホランリンカーを用いたDNAテンプレートアミンアシル化、および(iv)それらの対応するDNAテンプレートに連結された大環状フマルアミドを得る、分子内Wittigオレフィン化(図55)。
大環状化は、潜在的に、ライブラリー合成のうち、最も取り組みがいのある工程である。これを試験するために、7つのモデル的な工程3の基質を調製して、第3DNAテンプレート工程およびその後の大環状化を確認した(図56)。各基質は、種々の立体障害、立体化学および骨格長さの種々のR1基およびR2基を含んでいた。モデル基質を、DNAテンプレートアミンアシル化条件下で、カルボン酸およびホスホランの両方を含む4つのビオチン化DNA連結試薬のうちの1つと各々混合した。アミド結合痙性およびWittig大環状化の両方を評価するために、2段階精製ストラテジーを実行した。DNAテンプレートアミンアシル化の10個の生成物(図56および図55における工程3)を、ストレプトアビジン連結磁気ビーズを用いた捕捉により、未反応のテンプレートから精製した。次いで、捕捉された中間体を、pH8.0の緩衝液で処理して、Wittigオレフィン化媒介大環状化を誘導した。大環状化は、磁気ビーズから自己溶出する、フマルアミド生成物(ビオチン化試薬オリゴヌクレオチドを欠く)を作製した。あらゆる場合に、アミンアシル化および大環状化は、中間体における広範囲の立体多様性、立体化学的多様性および骨格多様性にもかかわらず、効率的に進行した(図56)。6以下のpH(ホスホランを形成するには低すぎる)でのコントロール反応またはpH8.0であるがアルデヒド基を欠くコントロール反応は、何の生成物も溶出できなかった。まとめると、DNAテンプレートアミンアシル化−Wittig大環状化の順番は、所望の大環状フマルアミドを生成するための高度に効率的な経路である。
大環状化工程を確認した後、DNAテンプレート大環状フマルアミドライブラリーを合成した。パイロットライブラリーを、4×4×5=80の大環状分子と、カルボニックアンヒドラーゼまたはアビジンに結合することについてのポジティブコントロールとしてアリールスルホンアミド、デスチオビオチン基のいずれかもしくはその両方の基を含む3個の大環状分子とを含む83個の大環状フマルアミドに制限した。試薬のオリゴヌクレオチドは、3’末端において連結した2つの一定の塩基がいずれかの側において、上記で報告した通り、スルホン、ジオールまたはホスホランリンカーを通してアミノアシルドナーに対して隣接した6塩基のコドンからなっていた。図57に示した19のDNA連結アミンアシル化試薬のうちの複数μgの量の各々を、上記に記載の通り、市販の遊離アミノ酸、リンカー前駆体および試薬オリゴヌクレオチドから出発して、1日で作製した。構築ブロックを選択して、構造的および機能的な基の多様性をサンプリングした。この構築ブロックは、アルキル側鎖、アルケニル側鎖、アリール側鎖、極性側鎖、複素環式側鎖、負に荷電した側鎖、および正に荷電した側鎖を保有する、(L)α−アミノ酸および(D)α−アミノ酸、α,α’−二置換アミノ酸、ならびにβ−アミノ酸を包含する(図57)。19の試薬の各々を、1回のテンプレート反応において成功裏に試験し、そして生成物を、30%より高い効率分散で作製した。19の試薬は全て、高い配列特異性で反応し、5当量の試薬を用いた場合でさえ、不一致のテンプレートを用いた場合、有意な生成物を作製しなかった。
大環状フマルアミドをコードするテンプレートのライブラリーを、単一の溶液中の分子コード領域カセットから調製した(図58)。全ての試薬アニーリング領域を表すオリゴヌクレオチドを、単一の溶液中で、T4 DNAリガーゼと一緒に混合した。オリゴヌクレオチド末端の配列設計に起因して、所望の組み立てられたテンプレートライブラリーは、ライゲーションが完了した場合の可能な生成物のみである。所望のテンプレートライブラリーの優れた収率は、4時間のライゲーション反応から生じた。ライゲーション後、T7エキソヌクレアーゼを添加して、非コードテンプレート鎖を分解した(所望のコード鎖は、その非天然5’−アミノエチレングリコールリンカーによって保護される)。この手順は、20nmolの5’官能基貸された一本鎖テンプレートライブラリーを、6時間で提供した。各テンプレートの末端における一定の10塩基プライマー結合領域は、この組み立てられた材料から、1,000分子(1021mol)程度に少ないテンプレートのPCR増幅を可能にするために十分であった。3つの陽性コントロールテンプレートを添加して、83のテンプレートを含むライブラリーを生じ、これらのテンプレートを次いで、3.0当量の、工程1の5つの試薬と混合して、第一のライブラリー合成工程を生成した。生成物を上記のように精製し、次いで、工程2のコード領域と相補的な新たな5つの試薬を用いて、第二のDNAテンプレートライブラリー合成工程に供した。療法のDNAテンプレートパイロットライブラリー工程の効率は、変性ゲル電気泳動およびデンシトメトリーによって、70%を超えると判断された。
工程3の前の脱保護のためのモデルとして、DNAに結合したAllocカルバメートのPdにより媒介される脱保護を、約1当量の遊離アミノ基の切断によって判断される場合、優れた効率で実施された。各ライブラリー合成工程からの生成物を、質量分析法によって分析した。脱保護工程を排除することを望んで、出発物質における側鎖アミンの保護および脱保護の必要を試験した。なぜなら、α−アミンのより低いpKaは、側鎖アミンをプロトン化するpHでのα−アミンの選択的反応を可能にし得るからである。実際に、α−アミン基は、pH6.0において、保護されていない側鎖アミンの存在下でDNAテンプレート反応において、選択的かつ効率低にアシル化され得ることが見出された。これは、工程2における第二のDNAテンプレートアミド形成に続く脱保護工程に対する必要性を排除し得る。
次いで、いくつかのモデル基質を合成して、第三のDNAテンプレート工程および引き続く大環状化を評価した。各モデル構造は、テンプレートに結合した中間体からなり、この中間体は、種々の数の結合によって分離された遊離アミン基およびジオールリンカーを含み、ライブラリー合成の間、様々な大きさの基をシミュレートした。モデル基質を、各々、カルボン酸とホスホランとの療法を含有するいくつかのビオチン化DNA結合試薬の1つと、DNAテンプレートアミド形成条件下(pH6.0、20mM EDC、15mM スルホ−NHS)で混合した。DNAテンプレートアミド形成は、60%より高収率で進行し、そして生成物を、アビジン結合した磁気ビーズで捕捉した。ビーズに結合した生成物を、10mM NaIO4でpH8.5で処理し、ジオール切断を行った。得られたアルデヒド基を、自発的ウィッティッヒオレフィン化反応でホスホランと反応させて、ビオチン基のない環状フマルアミドを得、これは、アビジン結合ビーズから自己溶出する(図59)。重要なことには、モデル基質の全てが、大環状化を60%より高い収率で起こした。このことは、この反応が、種々の基質構造に許容性であることを示唆する。コントロール反応は、このフマルアミド形成が、(i)過ヨウ素酸塩切断、(ii)ホスホラン基の存在、および(iii)首尾よいDNAテンプレートアミド形成(アビジン結合ビーズ上への捕捉のために必要とされる)に依存することを確認した。
(C)PNAポリマーライブラリー形成
有意な成功にもかかわらず、テンプレート依存性重合の一般性および配列特異性は、依然として、大部分が調査されていない。例えば、容易に官能基化される、リボース骨格を欠く合成モノマーの、効率および配列特異的テンプレート重合は、報告されていない。このような系は、これらの合成モノマーからなるポリマーの、現在DNA、RNAおよびタンパク質についてのみ利用可能な翻訳(重合)、選択、および増幅の反復されるサイクルを介する進化の可能性を生じる。
合成ポリマー進化のための系の最低限の要件は、以下である:(i)オリゴマー化が隣接してアニールされるモノマーの間で排他的に進行することを確実にするための、距離依存的な核酸テンプレートモノマーカップリング反応;(ii)インビトロ選択のための全長産物の十分な収率を提供するための、効率的な核酸テンプレートオリゴマー化;(iii)ポリマー選択の間の適切なテンプレートの生存を確実にするための、各合成ポリマーの、そのコードテンプレートへの安定な結合;および(iv)あつらえの官能基をポリマーに導入するための、容易に官能基化される合成モノマー骨格。
DNAテンプレート合成によってポリマーを生成する可能性を試験する目的で、DNAテンプレートアミンアシル化、ウィッティッヒオレフィン化、還元的アミノ化、およびオレフィン副分解反応を、それらがDNA配列を官能基化されたペプチド拡散(PNA)ポリマーに翻訳する能力について試験した。産生されたPNAモノマーは安定であり、そして広範な種々の官能基を含む市販のα−アミノ酸から容易に合成され得る(Haaimaら、(1996)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.35:1939−1942;Puschlら、(1998)Tetrahedron Lett.39:4707)。官能基化された側鎖を含むPNAは、それらがDNAに配列特異的にハイブリダイズする能力を保持することが公知である(Haaimaら、(1996)前出;Puschlら(1998)前出)。
最初のストラテジーにおいて、PNAは、官能性ポリマーの骨格として働き、そして各モノマーの官能基を表示する。別のストラテジーにおいて、DNAテンプレートPNA重合は、反応性官能基を組織化し、これらの官能基の間での第二の重合反応(例えば、オレフィン副分解またはウィッティッヒオレフィン化反応)を可能にして、目的の合成ポリマー骨格を形成する。
両方のストラテジーにおいて、テンプレートは、5’官能基化された一本鎖DNAライブラリー(可変塩基の中心領域を含む、50〜200塩基)から構成される。これらのテンプレートは、より長いテンプレートについては酵素により触媒されるライゲーションと組み合わせた、標準的な固相オリゴヌクレオチド合成によって作製される。モノマー構造は、(i)ブレンステッド酸基および塩基基、(ii)求核性基および求電子性基、(iii)PNA重合後副分解のために適切な結合体化オレフィン、ならびに(iv)化学的に強力な遷移金属と錯体を形成し得る、金属結合基を含む化学官能基を提供するように、選択される。これらの官能基を含む例示的なモノマー構造は、図60に示される。各モノマーをコードするDNA塩基(これらのポリマーの「遺伝コード」)は、表10に示される実施例から選択され、アウトオブフレームのアニーリングの可能性を生じる。これらの遺伝コードは、所望でないフレームシフトしたDNAテンプレートポリマー翻訳を防止するべきである。
1015までの異なる配列を含む、5’官能基化ヘアピンDNAテンプレートのライブラリーは、各DNAテンプレート重合の効率および配列忠誠度を最適化する条件下で、モノマーのセットと混合される。次いで、合成ポリマー鎖は、それらのDNAテンプレートから、変性によって脱アニールされ、そして3’DNAヘアピンプライマーは、DNAポリメラーゼを使用して伸張され、現在は解放された一本鎖合成ポリマーに結合したヘアピンDNAテンプレートを生成する(図61)。ライブラリーは、ゲル電気泳動およびMALDI質量分析法によって特徴付けられ、そしてここの代表的なライブラリーメンバーはまた、単一テンプレート反応から特徴付けられて、正確な反応効率を確認する。
一旦、DNA結合PNAのライブラリーが特徴付けられると、これらは、以下についての3つの型のインビトロ選択に供され得る:(i)フォールディング、(ii)標的結合、または(iii)触媒作用。選択の前に、予測される金属結合能力を有するポリマーが、1つ以上の水適合性金属供給源と共にインキュベートされる。フォールディングについての選択は、実施例10に記載される、ゲル電気泳動選択を使用して実施される。金属の存在下ではフォールディング可能であるが非存在下では不可能であるポリマーは、次の2つの型の選択のための、特に魅力的な出発点として働く。
標的結合についての選択は、溶液層のポリマーライブラリーを、固定された標的またはビオチン化標的のいずれかと共に、その後、ストレプトアビジン結合したビーズとインキュベートすることによって、実施され得る。非結合剤が、洗浄によって除去され、そして所望の結合特性を有するポリマーが、化学的変性または過剰の本物の有利リガンドを添加することによって、溶出される。官能基化PNA進化の1サイクルを完了するために、所望のPNAライブラリーメンバーに対応するDNAテンプレートが、5’官能基化ヘアピンプライマーを含む1つのプライマー、およびビオチン化された第二のプライマー(必要に応じて、誤りやすいPCR(Caldwellら(1992)、PCR Methods Applic.1992,2,28−33)によって多様化される)を使用するPCRによって、増幅され、次いで、一本鎖DNAに変性され、そしてストレプトアビジンビーズと共に洗浄されて、非コードテンプレート鎖を除去される。得られた選択された一本鎖5’官能基化DNAのプールは、進化サイクルを完了し、そして引き続く回のDNAテンプレート翻訳、選択、多様化、および増幅に入る。
結合形成反応または結合切断反応を触媒する合成ポリマーの選択もまた実施され得る。結合形成触媒(例えば、ヘテロディールズ−アルダー、Heckカップリング、アルドール反応、またはオレフィン複分解触媒)を選択するために、官能基化PNAライブラリーメンバーが、それらの5’ヘアピン末端を介して、1つの基質に共有結合される。この反応の他方の基質は、ビオチンに結合した誘導体として合成される。ライブラリー−基質結合体の希薄溶液が、基質−ビオチン結合体と反応される場合、結合形成を触媒するライブラリーメンバーは、自己ビオチン化を誘導する。次いで、活性な結合形成触媒が、不活性なライブラリーメンバーから、前者を固定されたストレプトアビジンで細くすることによって、分離する。類似の様式で、結合切断反応(例えば、逆アルドール反応、アミド加水分解、脱離反応またはオレフィンジヒドロキシル化、引き続く過ヨウ素酸ナトリウム切断)を触媒する、官能基化されたPNAもまた、選択され得る。この場合、ライブラリーメンバーは、ビオチン化された基質に結合され、その結果、結合破壊反応が、ビオチン部分のライブラリーメンバーからの脱結合を引き起こす。活性な触媒は、ストレプトアビジン結合ビーズから自己溶出するが、不活性触媒は、結合したままである。
(PNAポリマーライブラリー形成の評価)
ペプチド核酸(PNA)は、それらが配列特異的にDNAを結合する能力、およびそれらの合成的に接近可能なアミノ酸からの単純な調製に起因して、合成ポリマー進化のための魅力的な候補である。PNAをDNAテンプレートまたはRNAテンプレート上にオリゴマー化するための以前の努力は、カップリグ反応としてアミンアシル化を使用し、そして最も効率的に、かつ配列特異的に進行した(Boehlerら、(1995)Nature 376:578−581;Schmidtら、(1997)Nuc.Acids Res.25:4792−4796)。
5つのPNAテンプレートが、種々の水性アミンアシル化条件を使用して、相補的な20塩基のアニーリング領域を含むDNAテンプレートの存在下で混合される場合、全長PNAの適量のみの形成(収率20%未満)(5つの連続的なカップリング反応を表す)が観察された。しかし、なおより問題があることは、テンプレートにおけるミスマッチの4塩基アニーリング領域の位置に無関係な、より高分子量の生成物の形成であった。これらの観察は、PNAが、アミンアシル化化学を使用して、隣接してアニーリングしない場合でさえもカップリングし得、予測されない生成物混合物をもたらすことを示す。
DNAテンプレートアミンアシル化反応において以前に観察された距離費依存性は、アミンアシル化媒介PNAカップリングの乏しい位置選択性が起源であることが意図される。この例は、この問題を、距離非依存性アミンアシル化反応を、距離依存性のDNAテンプレート反応(例えば、還元的アミノ化反応)で置き換えることによって克服することが可能であることを示す。
このことを試験するために、チミン含有PNAモノマーアミノアルデヒドを合成し、そしてEdeおよびBrayの方法(Edeら(1997)TETRAHEDRON LETTERS 38,7119−7122)に従って、スレオニン結合樹脂とカップリングさせた。標準的なFMOCペプチド合成を使用して、このペプチドを、3PNAモノマー伸張させ(最終配列:NH2−gact−CHO)、そして樹脂から水性酸性切断して、所望のテトラマーペプチドアルデヒドを得た(図62)。
5’−アミン末端ヘアピン、および1(5’−AGTC−3’)と相補的な5つの連続する「コドン」の反復を含むDNAテンプレートを、水性のpH8.5の緩衝液中8μmの1と混合した。この反応物をアニーリングし(85℃から25℃)、そしてNaCNBH3を添加して80mMにした。この反応物を、Sephadexカラムを用いる緩衝液充填によってクエンチし、そして変性(50%ホルムアミド中95℃で10分間)および15%変性PAGENに供した。図62において、レーン1および2は、出発テンプレートがほとんど完全に消費され、そしてより高分子量の生成物が、90%を超える収率で形成されたことを示す。DNAテンプレートの除去に引き続く生成物のゲル精製は、DNaseIおよびMALDI−TOF質量分析を用いて、gactPANアルデヒドの全長ペンタマーを確認した。この結果は、DNAテンプレート還元的アミノ化が、PNAアルデヒドの非常に効率的なオリゴマー化を媒介し得ることを示す。
この反応の位置特異性および配列特異性を試験する目的で、オリゴマーか反応を、種々のテンプレート配列を使用して繰り替え素多、ミスマッチのDNAテンプレートコドン(5’−ATGC−3’)が、テンプレートの第二、第三、第四、または第五の4塩基コード領域(すなわち、コドン)に導入される場合、それぞれ1の正確な1コピー、2コピー、3コピーまたは4コピーのカップリングに対応する生成物の非常に効率的な形成が観察された(図62のレーン4〜14を参照のこと)。ミスマッチのコドンが、最初のコード位置のみに位置するか、または5つ全てのコード位置に位置する場合、生成物の形成は観察されなかった(図62のレーン3〜15を参照のこと)。全ての場合において、第一のミスマッチコドンにおけるオリゴマー化は、DNAテンプレートPNAアルデヒドカップリングが、官能基の隣接を必要とすること(すなわち、非常に距離依存性であること)、そして従って、理想的には、テンプレート重合に適切であることを示す。
この系の配列特異性は、8つの異なるミスマッチコドン(ATTC、ATGC、ATCC、AGGC、AGCC、ACTC、ACGC、またはACCC)を裁断のコード領域に含むDNAテンプレートを使用するオリゴマーか実験を実施することによって、プローブされた。これらのコドンのうちの4つが、1つの塩基のみが、マッチした配列(ATGC)とは異なる場合でさえも、各場合において、1の2つのみのコピーが、テンプレートにカップリングされた(図62のレーン5から12を参照のこと)。この高度な配列特性は、異なるDNA配列のライブラリーが、この系(DNAテンプレート低分子系に類似)を使用して、対応するポリマーのライブラリーに忠実に翻訳される可能性を増加させる。
所望の特性(例えば、結合特性または触媒特性)を有する合成ポリマーは、核酸テンプレート合成を効率よく使用して以前に達成されたものを超える長さを必要とし得る。上記系が効率的かつ配列特異的な様式で、より長いポリマーを生成する能力を試験する目的で、上記マッチコドンまたはミスマッチコドンの反復を、対応するPNAアルデヒドポリマーにコードする、40塩基のコード領域で、DNAテンプレートを翻訳した。PNAペプチドアルデヒド濃度が16μMであり、そしてNaCNBH3との反応時間が15分間であったことを除いて、重合を、図62においてのように実施した。これらの実験の結果を、図63に示す。ここで、レーンは、テンプレート(示される位置にミスマッチを有する)と反応物(テンプレートおよびgactモノマー)との間で変化する。図63が示すように、変性PAGEとMALDI−TOF質量分析法との両方が、15分後に、全長40マーのPNAの重合に対応する単一の優勢な生成物を明らかにした。ミスマッチコドンを、テンプレート上の第一のコード位置、第三のコード位置、第五のコード位置、第七のコード位置、または第九のコード位置に導入することによって、再度、短縮が生じた(それぞれ、図63のレーン4、6、8、10、および12)。DNA配列の、40PNA塩基(10のカップリング)へのこの効率的な翻訳は、結合特性または触媒特性を有する、DNAおよびRNAのオリゴヌクレオチドと類似の長さであるが、全体が合成構築ブロックから作製されているポリマーを提供する。
配列が規定された合成ポリマーのライブラリーをこの様式で作製する挑戦的な要件は、密接に関連した配列の複数のモノマーの存在下で、配列特異性を維持することである。複数のPNA構築ブロックを単一の溶液中で使用する、DNAテンプレート重合の特性を研究する目的で、配列NH2−gvvt−CHO(v=g、aまたはc)の9個のPNAアルデヒドテンプレートを合成した。さらに、コドン5のgvvtに相補的な9個のコドンのうちの1つを含むみ、そして他の9個の位置でAGTCを含む、9個のDNAテンプレートを調製した。反応条件は、NaCNBH3との反応時間がさらに5分間まで短縮され、そしてインキュベーションが37℃で行われていたことを除いて、図63からのものと同一であった。図64の各パネルの最初の2つのレーンは、陽性コントロール重合を示す。各さらなるセットの4つのレーンは、以下に対応する:(i)20pmolのテンプレート、(ii)14.4μMのgactとの反応、(iii)1.44μMのgactおよび強調されたコドンに相補的な1.6μMのPNAアルデヒドとの反応、ならびに(iv)14.4μMのgact、および0.2μMの、強調されたコドンに相補的なPNAを除く配列gvvtの各PNAアルデヒド。予測されるように、9個のテンプレートの各々が、1がその反応(37℃、5分間)に含まれる唯一のPNA構築ブロックである場合に1の4つのコピーへの組み込みに対応する、単一の優勢な短縮産物に翻訳された(図64を参照のこと)。しかし、5番目のコード配列に相補的なPNAアルデヒドが1に加えて含まれた場合に、全長産物が、9個全てのテンプレートについて、効率的に生成された。全てのPNAアルデヒドテトラマーが、5番目のコード領域に相補的なPNAを除いて、その反応に含まれる場合に、短縮産物のみが、効率的に生成された(図64を参照のこと)。
一緒になって、これらの実験は、DNAテンプレートPNAアルデヒド重合が、異なるPNA構築ブロックの混合物が単一の揺曳中に存在する場合でさえも、配列特異性を維持することを明らかにする。
(D)進化プラスチック(Evolving Plastics)
本発明のなお別の実施形態において、核酸(例えば、DNA、RNA、これらの誘導体)は、重合化触媒に結合される。核酸が、複合体構造に折りたたまれ得るために、その核酸は成長する高分子鎖の重合化を指向するおよび/またはその重合化に影響を与えるために使用され得る。例えば、核酸は、重合されるモノマー単位の選択、およびどのような重合化反応がおこるか(例えば、立体化学、立体規則性、活性)に影響し得る。この合成高分子は、分子量、密度、疎水性、立体規則性、立体選択性などのような特定の特性について選択され得、そしてその合成を指向する触媒の不可欠な部分を形成する核酸は、増幅され、そして進化され得る(図65A)。リガンドの多様化、選択、および増幅の繰り返しサイクルは、所望の特性への、触媒および高分子の真の進化を可能にする。
例として、DNA分子のライブラリーは、ジヒドロイミダゾールリガンドを介してGrubbsのルテニウムベース開環副分解重合(ROMP)触媒(Schollら(1999)、Org.Lett.1(6):953)に結合され、潜在的な触媒分子の大きく、多種多様なプールを作製し、その各々は、機能化リガンドの性質によって独特である(図65Bを参照のこと)。比較的大きいDNA−デヒドロイミダゾール(DNA−DHI)リガンドでの触媒の官能器化は、触媒の活性を変更し得る。各DNA分子は、独自の立体電子形状(stereoelectronic shape)にフォールディングする潜在性を有し、この形状は、潜在的に重合化反応における異なる選択性および/または活性を有する(図66)。従って、DNAリガンドのライブラリーは、種々のモノマーの付加の際にプラスチックのライブラリーに「翻訳」され得る。特定の実施形態において、それ自体を成長高分子に共有結合的に挿入し得、従って、その作製がコードされたDNAでタグ化された高分子を作製し得るDNA−DHIリガンドが、使用される。図65Aに示される合成スキームを使用して、デヒドロイミダゾール(DHI)リガンドは、2つの化学操作(そのうちの1つはDNAをリガンドに結合するために使用され、他方はDHI骨格にペンダントオレフィン(pedant olefin)を結合するのに使用される)を含んで生成される。副分解の速度は、オレフィン置換および触媒の同定に基づいて広く変化することが知られている。これらの可変基の変化を通して、ペンダントオレフィンの組み込みの速度は、kペンダントオレフィン副分解<<kROMPであるように調節され得、それによって、DNAタグおよび対応する高分子末端の挿入の前に、中程度から高分子量の高分子が形成されるのを可能にする。ビニルエーテル(vinylic either)が、高分子末端を官能化するため(Gordonら(2000)、Chem.Biol.7:9−16)、および減少された分子量の高分子を生成するために、ROMPにおいて通常使用される。
ライブラリーからの高分子は、引き続いて、所望の特性に基づいて、電気泳動、ゲル濾過、遠心分離沈降、異なる疎水性の溶媒への分配などによって、選択される。誤りがちな(error−prone)PCRまたはDNAシャッフリングのような技術を介するコード核酸の増幅および多様化、それに続くDHI骨格への接着は、選択された活性において富化された潜在的ROMP触媒の別のプールの生成を可能にする(図66)。この方法は、高分子材料およびそれを作製する触媒を産生するための新しいアプローチを提供する。
(実施例10:テンプレート合成による触媒の開発)
DNAを非天然の進化可能な高分子へと翻訳する代替のアプローチは、いくつかのDNAポリメラーゼが、特定の改変ヌクレオチド三リン酸基質を受け入れる能力を利用する(Perrinら(2001)、J.Am.Chem.Soc.123,1556;Perrinら(1999)、Nucleosides Nucleotides 18:377−91;Gourlainら(2001)、Nucleic Acids Res.29:1898−1905;Leeら(2001)、Nucleic Acids Res.29,1565−73;Sakthievelら(1998)、Angew.Chem.Int.Ed.37:2872−2875)。Watson−Crick水素結合に関与しない基への改変を保有する、いくつかのデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドは、天然DNAテンプレートの反対側に、高い配列忠実度で挿入されることが公知である。重要なことには、改変されたヌクレオチドを含む一本鎖DNAは、DNAポリメラーゼによって触媒された、天然または改変のモノヌクレオチドの取込みに効率的なテンプレートとして役立ち得る。
現在までにDNAポリメラーゼによって組み込まれた官能基化ヌクレオチドを、図67に示す。DNAポリメラーゼによる改変ヌクレオチド取込みの最も初期の例の1つにおいて、Tooleおよび共同研究者は、PCR条件下でのVent DNAポリメラーゼによる5−(1−ペンチニル)−デオキシウリジン1の受け入れ性を報告した(Lathamら(1994)、Nucleic Acids Res.22:2817−22)。いくつかのさらなる5−官能化デオキシウリジン(2−7)誘導体は続いて、PCRに適切な耐熱性DNAポリメラーゼによって受け入れられることが見出された(Sakthievelら(1998)前出)。DNAポリメラーゼによって受け入れられた最初の官能化プリンであるデオキシアデノシンアナログ8は、デオキシウリジンアナログ7と一緒にT7 DNAポリメラーゼによってDNAへと取り込まれた(Perrinら(1999)、Nucleosides Nucleotides 18:377−91)。7および8の両方を含むDNAライブラリーは、金属非依存性RNA切断活性について好首尾に選択された(Perrinら(2001)、J.Am.Chem.Soc.123:1556−63)。Williamsおよび共同研究者は、いくつかのデオキシウリジン誘導体をTaq DNAポリメラーゼによる受け入れ性について近年試験し、そして受け入れ性は、剛性のアルキン基またはトランスアルキン基を保有するC5改変ウリジンを用いた場合に最大であると結論した(例えば、9および10(Leeら(2001)、Nucleic Acids Res.29:1565−73))。C7官能化7−デアザ−デオキシアデノシンについての類似の研究(Gourlainら(2001)、Nucleic Acids Res.29:1898−1905)は、Taq DNAポリメラーゼによる、7−アミノプロピル−(11)、シス−7−アミノプロペニル−(12)、および7−アミノプロピニル−7−デアザデオキシアデノシン(13)の受け入れ性を明らかにした。
単純な一般的な酸性官能基および一般的な塩基性官能基を用いて、キラル金属中心は、核酸の化学的範囲を有意に拡張する。化学的に強力な金属中心と結合することを目的とした官能基が、これまで核酸高分子に組み込まれてきた。天然DNAは、標的分子を立体特異的に結合し得るか(Linら(1997)、Chem.Biol.1997,4:817−32;Linら(1998)、Chem.Biol.5;555−72;Schultzeら(1994)、J.Mol.Biol.235:1532−47)または、リン酸ジエステル結合操作(Santoroら(1997)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:4262−6;Breakerら(1995)、Chem.Biol.2:655−60;Liら(2000)、Biochemistry 39:3106−14;Liら(1999)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96、2746−51)、DNA脱プリン化(T.L.Sheppardら(2000)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:7802−7807)およびポルフィリンメタレーション(Liら(1997)、Biochemistry 36:5589−99;Liら(1996)、Nat.Struct.Biol.3:743−7)を触媒し得る、複雑な3次元構造に折り畳まる能力を示してきた。Cu、La、Ni、Pd、Rh、RuまたはScのような、化学的に強有力な水適合性金属と結合する能力が増強された非天然核酸は、顕著に拡張された触媒的特性を保有し得る。例えば、十分規定された構造に折り畳まれたPd結合オリゴヌクレオチドは、高度な位置特異性または立体特異性で、Pd媒介性カップリング反応を触媒する能力を保有し得る。同様に、キラルSc結合部位を形成する非天然核酸は、エナンチオ選択性環化付加触媒またはアルドール付加触媒として働き得る。従って、触媒活性についてのインビトロ選択と組み合わせ、これらの非天然高分子へとDNA配列を翻訳するDNAポリメラーゼの能力は、ランダムライブラリーからの所望の触媒の直接進化を可能にする。
このアプローチで触媒を進化させることは、有機金属触媒発見への最近のコンビナトリアルのアプローチ(Kuntzら(1999)、Curr.Opin.Chem.Biol.3:313−319;Francisら(1998)、Curr.Opin.Chem.Biol.2、422−8)を刺激してきた、特定の化学的特性を用する触媒活性部位を合理的に設計する困難に取り組む。例えば、Hoveydaおよび共同研究者らは、ペプチド配位子の連続スクリーニングよって、Tiベースのエナンチオ選択性エポキシ化触媒を同定した(Shimizuら(1997)、Angew.Chem.Int.Ed.36)。連続スクリーニングはまた、金属カチオンと錯体化するとき、エナンチオ選択性エポキシ化触媒を形成するペプチド配位子を同定するために、Jacobsenおよび共同研究者らによって使用された(Francisら(1999)、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.38:937−941)。近年、ホスフィン側鎖を含むペプチドライブラリが、Pd存在下で酢酸シクロペンテニルへのマロン酸エステル付加を触媒する能力についてスクリーニングされた(Gilbersonら(2000)、J.Am.Chem.Soc.122:6522−6523)。
本発明のアプローチは、所望の特性を有する触媒が、多様化、増幅、翻訳、および選択の進化サイクル後にワンポットの溶液相ライブラリーから自発的に出現することを可能にする点で、従来のコンビナトリアル触媒の発見の試みとは根本的に異なる。このストラテジーは、1015までの異なる触媒が、単一の実験で産出され、所望の特性について選択されることを可能にする。ワンポットインビトロ選択との、我々のアプローチの適合性は、金属結合または発熱のような触媒作用に関連する現象についてのスクリーニングではなく、触媒作用反応についての直接選択を可能にする。さらに、基質立体特異性または金属選択性のような、迅速にスクリーニングすることが難しい特性は、我々のアプローチを使用して、直接選択され得る。
多くのC5官能基化されたウリジンアナログおよびC7官能基化された7−デアザアデノシンアナログに対する重要な中間体を、非天然DNAポリマーへの組み込みのために合成した。さらに、デオキシリボヌクレオチド三リン酸としての6個のC8官能基化アデノシンアナログの合成を完了した。
(金属結合ヌクレオチドの合成)
金属結合ウリジンおよび7−デアザアデノシンアナログの合成についてのストラテジーを、図68に示す。両経路は、金属結合官能基のNHSエステルとアミノ修飾デオキシリボヌクレオチド三リン酸との間のアミド結合形成で終結する(7および13)。アナログ7およびアナログ13ならびに7のアセチル化誘導体は、PCRに適する熱安定性DNAポリメラーゼを含むDNAポリメラーゼによって許容されることが、これまで示されてきた(Perrinら(2001)前出;Perrinら(1999)前出;Lathamら(1994)、Nucleic Acids 12v1PRE 22:2817−22;Gourlainら(2001)、Nucleic Acids Res.29:1898−1905;Leeら(2001)、Nucleic Acids Res.29、1565−73;Sakthivelら(1998)、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.37:2872−2875)。このアプローチは、幅広い種類の金属結合配位子を、いずれかのヌクレオチドアナログに迅速に取り組むことを可能にする。以前に報告された(Sakthivelら(1998)前出)経路に従い、アミノ修飾されたデオキシリボヌクレオチド三リン酸7が合成されている。図69に示されるように、N−アリルトリフルオロアセトアミドとの市販の5−ヨード−2’−デオキシウリジン(22)のHeckカップリングは23を生成した。トリメチルホスフェート、オキシ塩化リン(POCl3)、およびプロトンスポンジ(proton sponge)(1,8−ビス(ジメチルアミノ)−ナフタレン)、その後のトリ−n−ブチルアンモニウムピロホスフェートでの23の処理により、5’−三リン酸基が導入され、次いでトリフルオロアセトアミド基が水性アンモニアで除去され、C5修飾ウリジン中間体7を生成した。
7−デアザアデノシンアナログについての重要な中間体であるC7修飾7−デアザアデノシン中間体13を合成した。図70に示したように、ジエトキシエチルシアノアセテート24を、公知のプロトコル(Davoll(1960)J.Am.Chem.Soc.82:131−138)に従って、ブロモアセタール25およびエチルシアノアセテート26から合成した。チオ尿素での24の縮合により、ピリミジン27を得、これをラネーニッケルで脱硫し、次いで希塩酸を用いてピロロピリミジン28に環化した。POCl3での28の処理により、4−クロロ−7−デアザアデノシン29を得た。13におけるプロパギルアミンの配置についてSonogashiraカップリングパートナーとしての役割を果たすヨウ化アリール基を、29とN−ヨードスクシンイミドとの反応によって組み込み、ブロモアセタール25から13%の全体収量中の4−クロロ−7−ヨード−7−デアザアデノシン30を生成した。図71は、保護したデオキシリボシルクロライド38(図72に示したように、デオキシリボースから生成される)を用いる、化合物30のグリコシル化、その後の7−ヨード−アデノシン39(Gourlainら(2001)Nucleic Acids Res.29:1898−1905)を得るアンモニア分解を示す。N−プロピニルトリフルオルアセトアミドを用いる、39のPd媒介性Sonogashiraカップリング(Seelaら(1999)Helv.Chem.Acta 82:1878−1898)で、40を得、次いで、これを5’ヌクレオチド三リン酸に変換し、そしてアンモニアで脱保護して、C7修飾7−デアザアデノシン中間体13を得る。
金属結合ウリジンアナログおよび金属結合アデノシンアナログの」ライブラリーを作製するために、NHSエステルとして種々の金属結合基を、C5修飾ウリジン中間体7およびC7修飾7−デアザアデノシン中間体13に結合させ得る。例示的な金属結合基は、図68に示され、ホスフィン基、チオピリジル基、およびヘミセレン部分が挙げられる。例えば、図73に示した化合物41および42のようなさらなるアデノシン誘導体は、8−ブロモ−デオキシアデノシン(31)に対してアルキルトリフルオロアセトアミドおよびビニルトリフルオロアセトアミドをカップリングすることによって調製され得る。次いで、これらの中間体を、図68に示したNHSエステルで結合させて、種々の金属結合8−官能化デオキシアデノシン三リン酸を生成する。
DNAポリメラーゼ受容の構造的要件の調査し、かつ潜在的な金属結合官能基を提供する代替的な官能化アデニンアナログとして、6個の8修飾デオキシアデノシン三リン酸(図74)を合成した。すべての官能基を、8−ブロモ−デオキシアデノシン(31)に付加することによって組み込み、これを、塩化スカンジウム(ScCl3)の存在下でデオキシアデノシンを臭素化することによって調製し、これが、生成物収量を非常に増加させることを見出した。メチルアデノシン(32)、エチルアデノシン(33)、およびビニルアデノシン(34)を、対応するアルキルスズ試薬と31とのPd媒介性Stilleカップリング(Mamosら(1992)Tetrahedron Lett.33:2413−2416)によって合成した。メチルアミノアデノシン(35)(Nandananら(1999)J.Med.Chem.42:1625−1638)、エチルアミノアデノシン(36)、およびヒスタミノアデノシン(37)を、水中またはエタノール中の対応するアミンを用いて23を処理することによって調製した。32〜37の5’ヌクレオチド三リン酸を、上記のように合成した。
(ポリメラーゼによるヌクレオチドの受容)
図75に示した金属結合官能基を含む修飾ヌクレオチド三リン酸の、DNAポリメラーゼ酵素によって受容される能力を研究した。合成ヌクレオチド三リン酸を、イオン交換および逆相HPLCによって精製し、そしてTaq DNAポリメラーゼ、3種の天然のデオキシヌクレオチド三リン酸、pUC19鋳型DNA、および2種のDNAプライマーを含むPCR反応物に加えた。プライマーを、長さが50塩基対〜200塩基対の範囲のPCR産物を生成するように選択した。コントロールのPCR反応物は、4種の天然のデオキシヌクレオチド三リン酸を含み、そして非天然のヌクレオチドを含まなかった。PCR反応物を、ゲル電気泳動によって分析し、そしてその結果は、官能化ウリジンアナログ2、3、7、13、28、29、および30が、30回のPCRサイクルにわたってTaq DNAポリメラーゼによって効率良く取り込まれたが、ウリジンアナログ31および32は、効率良く取り込まれなかったことを示した(図75を参照のこと)。これらの結果は、金属結合官能基を含む合成ヌクレオチドが、鋳型として読み取られ得、かつ基礎単位としてDNAポリメラーゼを使用して非天然の核酸中に取り込まれ得ることを実証する。8修飾アデノシン三リン酸32および33は、Taq DNAポリメラーゼによって受容されなかった。このことは、C8での修飾の拒絶の可能性を示唆する(図75を参照のこと)。
特になお興味深い官能化ヌクレオチドは、Taq耐熱性DNAポリメラーゼ、Pfu耐熱性DNAポリメラーゼ、またはVent耐熱性DNAポリメラーゼと適合せず、これらを、他の市販のDNAポリメラーゼ(E.coli DNAポリメラーゼIのKlenowフラグメント、T7 DNAポリメラーゼまたはT4 DNAポリメラーゼ、あるいはM−MuLV逆転写酵素が挙げられる)を使用して、プライマー伸長に関与するそれらの能力について試験し得る。
(ポリマーライブラリーの生成)
DNAポリメラーゼに適合する合成金属結合ヌクレオチドを含む非天然ポリマーライブラリーを、作製した。2つのプライマー結合領域に挟まれた40個のランダム塩基からなりかつ図76に示したイミダゾール結合チミン塩基を含む、1015個の様々な修飾核酸のライブラリーを作製した。これらのライブラリーを、3種の方法:標準的なPCR、誤りがちの(error−prone)PCR、および大量の鋳型と化学量論的量のたった1種のプライマーを使用するプライマー伸長によって効率良く生成した。得られる二本鎖ライブラリーを変性し、そして上記に記載したアビジンベースの精製系を使用して、所望の鎖を単離した。Cu2+の存在下でのみ折りたたまるポリマーについて、このライブラリーにおける2ラウンドのインビトロ選択を、折りたたまれた核酸についてのゲル電気泳動を使用して実施した。
最も有望なポリメラーゼ受容性金属結合ヌクレオチド(28〜30(図75)が挙げられる)を含む核酸のライブラリーもまた、生成し得る。ライブラリーは、PCR増幅によってか、または2つの15塩基定常プライミング領域に挟まれた20ヌクレオチド〜40ヌクレオチドのランダム領域からなる合成DNA鋳型ライブラリーのプライマー伸長によって生成し得る(図77)。プライミング領域は、プールのまたは個々のライブラリーメンバーのDNA配列決定を可能にするために、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含む。一方のプライマーは、その5’末端に一次アミン基を含み、ライブラリーの暗号鎖になる。他方のプライマーは、ビオチン化5’末端を含み、非暗号鎖となる。PCR反応物は、1種または2種の非天然金属結合デオキシリボヌクレオチド三リン酸、3種または2種の天然のデオキシリボヌクレオチド三リン酸、および非天然のヌクレオチドに適合するDNAポリメラーゼを含む。PCRの後にライブラリーの二本鎖が生成され、次いで、ライブラリーメンバーを変性し、そして非暗号鎖をストレプトアビジンが結合した磁気ビーズで洗浄することによって除去して、ライブラリー中にビオチン化した鎖が残っていないことを確認した。1015までの様々なメンバーのライブラリーが、この方法によって生成され得、この方法は、以前に報告されたコンビナトリアル金属結合触媒の発見研究に関する組み合わせの多様性を大きく上回る。
次いで、各々のライブラリーを、水溶液中で、以下の非限定的な水適合性金属塩リストからの目的の金属と共にインキュベートする:ScCl3、CrCl3、MnCl2、FECl2、FeCl3、CoCl2、NICl2、CuCl2、ZnCl2、GaCl3、YCl3、RuCl3、RhCl3、Na2PdCl4、AgCl、CdCl2、INCl3、SnCl2、La(OTf)3、Ce(OTf)3、Pr(OTf)3、Nd(OTf)3、Sm(OTf)3、Eu(OTf)3、Gd(OTf)3、Tb(OTf)3、Dy(OTf)3、Ho(OTf)3、Er(OTf)3、Tm(OTf)3、Yb(OTf)3、Lu(OTf)3、IrCl3、PtCl2、AuCl、HgCl2、HgCl、PbCl2、およびBiCl3(Kobayashiら(1998)J.Am.Chem.Soc.120:8287−8288;Fringuelliら(2001)Eur.J.Org.Chem.2001:439−455)。金属は、部分的に、触媒されるべき特定の化学反応に基づいて選択される。例えば、Lewis酸によって触媒されることが公知のアルドール縮合またはヘテロDiels−Alder反応のような反応を目的としたライブラリーは、ScCl3と共にか、またはランタニドトリフレートのうちの1種と共にインキュベートされる(Fringuelliら(2001)前出)。他の事例において、目的の変換を触媒することがこれまでに公知でない金属もまた、前例のない活性を有するポリマーを発展させるために使用される。金属とインキュベートしたライブラリーは、結合していないより小さな反応成分から25塩基またはそれより長いDNAオリゴヌクレオチドを分離するゲル濾過カートリッジ(例えば、Princeton Separationsから入手可能)を使用して、結合していない金属塩から精製される。
ポリマーライブラリー(または個々のライブラリーメンバー)の、目的の金属に結合する能力は、結合していない金属を含まない金属化ライブラリーを、様々な金属の存在下ではっきりと着色する金属染色試薬(例えば、ジチオオキサミド、ジメチルグリオキシム、またはイソチオシアネートカリウム(KSCN)(Francisら(1998)Cyrr.Opin.Chem.Biol.2:422−8)もしくはEDTA(Zaitounら(1997)J.Phys.Chem.B 101:1857−1860))で処理することによって確認する。金属結合の概算レベルを、金属を含まない既知濃度の溶液、およびEDTA基を含む(これは、Glen Research,Sterling,Virginia,USAから市販のホスホラミダイトを使用して導入され得る)ポジティブコントロールのオリゴヌクレオチドの溶液との分光光度比較によって測定する。
(核酸ポリマーの選択)
一旦、官能化DNAのライブラリーを、合成し特徴付けすると、これらは、(i)折りたたみ、(ii)標的結合性、または(iii)触媒作用について、3つの型のインビトロ選択に供される。
(i)折りたたみ。非変性ゲル電気泳動は、本発明の修飾核酸のライブラリーを適用するために、目的の特定の金属の存在下で核酸の折りたたみについて選択するために、簡便な選択として使用され得る。将来のライブラリーメンバーと類似する分子において、この選択アプローチを試験するために、公知であるか(Schultzeら(1994)J.Mol.Biol.235:1532−1547)または非常に複雑に折りたたまれた状態であると予測される(SantaLucia(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:1460−1465)3種の60塩基DNAオリゴヌクレオチドを合成した。各々のオリゴヌクレオチドは、2つの15塩基プライマー結合配列に挟まれた、コアの30塩基配列を含んだ。構造化されていないコントロールオリゴヌクレオチドは、ポリTコアおよびEcoR I制限部位を含んだ。完全に反転した繰り返しを含む第2のコア配列は、非常に安定したヘアピンを形成することが予測され、一方で、ポリGコアを含む第3のコア配列は、溶液中で分子内Gカルテットへと折りたたまれることが公知である(Chengら(1997)Gene 197:253−260)。3種のDNA配列を、等モル比で混合し、そしてその混合物を、調製用の非変性ゲル電気泳動に供した。DNAのうち移動度の大きい部分を回収し、そして分析用の電気泳動によって比較して、ポリTオリゴヌクレオチド、ヘアピンオリゴヌクレオチド、およびポリGオリゴヌクレオチドを確認した。この結果は、折りたたまれたDNAが、折りたたまれたDNA分子と折りたたまれていないDNA分子との混合物から、非変性ゲル電気泳動によって容易に分離され得ることを示す。この選択アプローチは、金属結合ポリマーライブラリーに対して適用され得、ここで、金属結合能が予測されるポリマーは、選択前に、1以上の水適合性金属供給源と共にインキュベートされる。金属の存在下で折りたたまれ得るが、金属の非存在下では折りたたまれ得ないポリマーは、次の2つの型の選択に対して、特に魅力的な開始点としての役割を果たす。
(ii)標的結合性。標的結合性についての選択は、溶液相ポリマーライブラリーを、固定化した標的またはビオチン化した標的のいずれかと共にインキュベートし、その後、ストレプトアビジンが結合したビーズとインキュベートすることによって実施され得る。結合しないものを洗浄によって取り除き、そして所望の結合特性を有するポリマーを、化学変性によってかまたは過剰な真の遊離リガンドを添加することによって溶出する。官能化DNA進化の1回のサイクルを完了するために、そのDNA鋳型を、5’官能化ヘアピンプライマーを含む1種のプライマー、およびビオチン化した第2のプライマーを使用して、PCRによって増幅させ、必要に応じて、誤りがちなPCR(Caldwell(1992)PCR Methods Applic.2:28−33)によってか、または非相同的ランダム組換え法によって多様化させ、次いで、一本鎖DNAに変性させ、そしてストレプトアビジンビーズで洗浄して、非コーディング鋳型鎖を除去する。得られる選択した一本鎖の、5’官能化DNAのプールは、進化のサイクルを完了し、そしてその後のDNAを鋳型とする翻訳、選択、多様化、および増幅のラウンドに入る。
(iii)触媒作用。結合形成反応または結合切断反応を触媒する合成ポリマーについての選択が、実施され得る。実質的に、2つの基質分子間の結合形成を引き起こす反応、または2つの生成物分子への結合の切断を生じる反応を触媒するライブラリーメンバーは、図12および13に提示したスキームを使用して選択され得る。図12に示したように、結合を形成する触媒(例えば、ヘテロDiels−Alder触媒、Heckカップリング触媒、アルドール反応触媒、またはオレフィン転移触媒)について選択するために、ライブリーメンバーは、一方の基質に、その5’アミノ末端またはチオール末端を介して共有結合される。その反応の他方の基質は、ビオチンに結合する誘導体として合成される。ライブラリー−基質結合体の希釈溶液を、基質−ビオチン結合体と反応させる場合、結合形成を触媒するライブラリーメンバーは、ビオチン基をそれらに共有結合させる。次いで、活性な結合形成触媒は、固定化したストレプトアビジンで固定化し、そして不活性なポリマーを洗浄して除くことによって不活性なライブラリーメンバーから分離され得る。例として、活性なHeckカップリング触媒、活性なヘテロディールスアルダー触媒、および活性なアルドール付加触媒が、それぞれ、図78A,78B、および78Cに示したように実施され得る。
類似の様式において、結合切断反応(例えば、過ヨウ素酸の切断に続く、逆アルドール反応、アミド加水分解、脱離反応、またはオレフィンジヒドロキシル化)を触媒するライブラリーメンバーもまた、図13に示したように選択され得る。この場合において、金属化ライブラリーメンバーは、ビオチン化基質に共有結合し、その結果、結合切断反応が、ライブラリーメンバーからのビオチン部分の切断を引き起こす。反応条件下でのインキュベートの際に、不活性なライブララリーメンバーではなく活性な触媒が、それらのビオチン基の損失を誘導する。次いで、ストレプトアビジンが結合したビーズを使用して、不活性なポリマーを回収し、その間に、活性な触媒をビーズから溶出させ得る。関連する結合形成および結合切断選択は、触媒性RNA進化および触媒性DNA進化において首尾よく使用され得る(Jaeschke(2000)Curr.Opin.Chem.Biol、4:257−62)。これらの選択は、複数の繰り返し触媒について明確に選択しないが、このような様式で選択されたRNAおよびDNAは、一般的に、それらの基質部分から分離された場合には、複数の繰り返し触媒であることが証明されている(Jaeschkeら(2000)Curr.Opin.Chem.Biol.4:257−62;Jaegerら(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:14712−7;Bartelら(1993)Science 261:1411−8;Senら(1998)Curr.Opin.Chem.Biol.2:680−7)。
3種の重要かつ多様な結合形成反応(Heckカップリング、ヘテロDiels−Alder付加環化、およびアルドール付加)の触媒が、本明細書中に記載される技術を使用して作製され得ることが意図される。3種すべての反応は、水適合性であり(Kobayashiら(1998)J.Am.Chem.Soc.120:8287−8288;Fringuelliら(2001)Eur.J.Org.Chem.2001:439−455;LIら(1997)Organic Reactions in Aqueous Media)、そして金属によって触媒されることが公知である。
(進化する官能化DNAポリマー)
各々の選択のラウンドの後に、活性なライブラリーメンバーを、非天然のヌクレオチドを用いるPCRによって増幅し得、そしてさらなる選択のラウンドに供して、所望の触媒作用についてライブラリーを富化する。ライブラリーは、誤りがちなPCRを使用するランダムな変異誘発によってか、または非相同組換えによって多様化され得、そして選択前および選択後に、DNA配列決定によって特徴付けられ得る。誤りがちなPCRは、通常のPCRよりも本質的に効率が低いので、誤りがちなPCRは、天然のヌクレオチドのみを用いて行われる。次いで、変異誘発したDNA鋳型を、上記のように非天然の核酸ポリマーに翻訳する。
単純に進化する活性触媒に加えて、本明細書中に記載されるインビトロ選択は、現在の触媒発見アプローチを使用して達成するのが困難な特性を有する触媒を進化させるために使用され得る。例えば、触媒間の基質特異性は、所望の基質の存在下で活性な触媒について選択し、次いで、1以上の所望でない基質の存在下で不活性な触媒について選択することによって進化され得る。この戦略を使用して、前例のない位置選択性および立体選択性を有する触媒のライブラリーを進化させ得ることが意図される。例として、公知の触媒によって現在達成されておらず、そしてまた現在の触媒発見法によって解決されそうもない4つの型の基質特異性としては:(i)パラ−クロライドで作用するがメタ−クロライドで作用しないHeck触媒、(ii)エノレートアクセプターとしてケトンを受容するがアルデヒドは受容しないアルドール触媒、(iii)オレフィン求ジエン体を拒否するヘテロDiels−Alder触媒、および(iv)トランス−トランス末端ジエンを受容するがシス−トランス末端ジエンを受容しないヘテロDiels−Alder触媒、が挙げられる。重要な立体的かつ電子的な基の整列した三次元配置を含む金属結合ポリマーは、理想的には、このような問題を解決するのに適し得る。同様に、金属選択性は、所望の金属の存在下で活性な触媒について選択し、そして所望でない金属の存在下での活性に対して選択することによって進化され得る。広範な基質寛容性を有する触媒は、連続的な選択ラウンド間の基質構造を変化させることによって進化され得る。上記の方法によって進化された触媒の特徴付けは、強力かつ前例のない選択性を有する類似の低分子触媒の開発に新たな洞察を提供し得る。
さらに、DMFおよびCH2Cl2中での配列特異的なDNAを鋳型にした合成の考察は、DNAテトラアルキルアンモニウムカチオン複合体が、有機溶媒中で塩基対構造を形成し得ることを示唆する。これらの知見は、わすかに改変したバージョンの上記の選択を使用して、有機溶媒中で非天然の核酸触媒を進化させる可能性を向上させる。実際の結合形成選択反応および結合切断選択反応は、有機溶媒中で行われ、次いで、粗反応物をエタノール沈殿して、テトラアルキルアンモニウムカチオンを除去し、そして水溶液中で、ビオチン化したライブラリーメンバーとビオチン化していないライブラリーメンバーとの固定化アビジン分離を実施する。次いで、選択したライブラリーメンバーのPCR増幅を、上記のように行う。有機溶媒中で機能する反応触媒の連続的進化は、触媒され得る反応の範囲、および得られる進化した非天然ポリマー触媒の有用性の両方を大幅に拡大する。
(実施例11:タンパク質結合性および親和性についてのインビトロ選択)
本実施例は、タンパク質結合親和性を有する、核酸に結合した合成低分子についてのインビトロ選択が実施され得ることを実証する。これらの選択は、(i)タンパク質結合性について、これまでに報告された合成分子スクリーニングよりも非常に大きな感度(10−20mol)を提供し、(ii)迅速に反復して、106倍よりも大きい活性分子の正味の富化を達成し得、そして(iii)結合特異性について選択するのに適し得る。
選択におけるすべての分子が同時に処理されるので、選択は、スクリーニングよりも非常に高い潜在的スループットを提供する。選択は、代表的には、洗練された装置を必要とせず、そして所望の分子の正味の富化を増加させるために反復され得る。結合特異性のような特定の特性は、スクリーニングするのは困難であるが、容易に選択され得る。最終的に、研究成果および天然の選択は、通常は、増幅可能な核酸に関連付けられ、選択がスクリーニングよりもはるかに高い感度を提供することを可能にする。オリゴヌクレオチドの、対応する合成分子への共有結合は、核酸を鋳型とした有機合成の結果としてか、または合成分子への核酸の結合の結果としてのいずれかで、合成分子が選択され、次いで同定されることを可能にする。これらの魅力にもかかわらず、合成分子についての選択は、ほとんど開発されていない。
最初に、36塩基〜42塩基のDNAオリゴヌクレオチドに結合した種々の合成低分子(図79)を、各々の低分子が、固有のDNA配列に連結するように合成した。その低分子を、6種のタンパク質に対するそれらの公知の結合親和異性について(図79を参照のこと)か、または結合しないネガティブコントロールとしてのいずれかで選択した。DNA結合タンパク質リガンドとDNA結合ネガティブコントロールとを含む溶液を使用して、タンパク質結合活性を有するライブラリーメンバーの小画分を含む、DNAを鋳型にした合成低分子ライブラリーを刺激した。
タンパク質親和性についての選択を、DNAに結合した合成低分子の混合物を、ビーズに共有結合した標的タンパク質と共に1〜2時間インキュベートすることによって実施した。結合しないものを、大量の塩緩衝液でビーズを洗浄することによって除去した。次いで、結合した分子をPCR増幅して、選択で残存したDNAオリゴヌクレオチドを増幅した。公知のタンパク質リガンドをコードする配列を、DNAコード化と区別した。結合しなかったものを配列特異的な制限エンドヌクレアーゼで消化することによって、それらの相対比をゲル電気泳動および濃度測定によって定量可能にした。各々の選択の効率を、DNA結合非結合物(「富化因子」)に対してDNA結合タンパク質リガンドが富化された程度によって評価した。
考慮したタンパク質−低分子相互作用の間で、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)に対するグルタチオンアミドの結合性は、最も低い親和性(Kd=約10μM)の間であり、従って、DNAに結合した合成低分子についてのタンパク質結合性選択のストリンジェントな試験を示す。これらの選択の感度および効率を測定するために(図80を参照のこと)、DNAに結合したグルタチオン分子(1)の数を103分子〜107分子に変化させた。100倍〜106倍モル過剰のネガティブコントロールであるN−ホルミル−Met−Leu−Phe結合DNA(2)を、(1)と結合させ、そして得られた混合物を、GSTを結合させたアガロースビーズへの結合性について選択した。この選択は、ネガティブコントロールと比べて、100倍〜104倍強く、わずか10,000コピーのDNAに結合したグルタチオンを富化した(図80)。選択の間、DNAに結合した分子の濃度はμM未満であったが、GSTが、約10μMを超える有効濃度で固定されており、そのため、(1)の有意な画分がGSTへの結合を維持することが可能であったので、この選択は成功であった。これらの結果は、適度なタンパク質親和性(例えば、Kd=約10μM)についての選択が、この形式において可能であることを実証する。
このアプローチの一般性を評価するために、類似の選択を、GSTに加えて、ストレプトアビジン、脱炭酸酵素、パパイン、トリプシン、およびキモトリプシンについて実施した(図79)。総合的に、これらの6つの機能的に多様なタンパク質は、図79に示したリガンドに、8桁を超える大きさに広がる予測された親和性(Kd=約14μM〜約40fM)を伴って結合する(D’Silva(1990)Biochem.J.271:161−165)(Jainら(1994)J.Med.Chem.37:2100−2105;Green(1990)Methods Enz.184:51−67;Ottoら(1997)Chem.Rev.97:133−172)。これらの事象の各々において、選択富化された10−16mol以下の公知の低分子リガンドは、結合していないネガティブコントロールに対して少なくとも50倍まででDNAに結合した(図79)。このことは、DNA結合体が、図79におけるリガンドが、それらの同族のタンパク質標的に結合する能力を損なわないことを示し、そしてこれらの選択が、広範な無関係のタンパク質に対して適用可能であり得ることを示唆する。
さらに、選択は、所望の分子の正味の富化を増加させるために繰り返され得る。DNAに結合した合成分子を用いる可能性を試験するために、DNAに結合したフェニルスルホアミド(3):DNAに結合したN−ホルミル−Met−Leu−Phe(2)の1:1,000混合物を、脱炭酸酵素への結合性についての選択に供した。第1の選択で残存する分子を溶出し、そして新たに固定した脱炭酸酵素を使用する第2の選択に直接供した。PCR増幅および制限消化は、選択の第1ラウンドが、1:3の比の(3):(2)を産生したことを明らかにした。これは、DNAに結合したフェニルスルホンアミドについて330倍の富化を示す。選択の第2ラウンドは、さらに、30倍を超えるまで3を富化し、その結果、選択の2回のラウンド後に、(3):(2)の比は、10:1(104倍を超える正味の富化)を上回った。同様に、3ラウンドの繰り返し選択を使用して、(3):DNAに結合したビオチン(4)の開始比を、予めDNAに結合したフェニルスルホンアミド(3)を含む溶液中に、5×106だけ富化した(図81を参照のこと)。これらの知見は、DNAに結合した合成分子についての大変な正味の富化が、繰り返し選択を通して達成され得ることを実証し、そしてDNAを鋳型とした合成ライブラリー内の106中のわずか一部を表す所望の分子が、この様式において効率良く単離され得ることを示唆する。
結合親和性に加えて、結合特異性が、合成分子に関して広く重要な特性である。結合特異性についてのライブラリースクリーニング法は、代表的には、目的の各標的または非標的についての完全なスクリーニングを繰り返すことを必要とする。対照的に、特異性についての選択は、原則として、単一の実験において、1以上の非標的に対する標的結合性ならびに結合不能について選択することによって実施され得る。DNAに結合した合成低分子の間の特異性についての選択を確認するために、DNAに結合したビオチン(4)、DNAに結合したキモスタチン(5)、およびDNAに結合したアンチパイン(6)を、それぞれ、24:4:1の比で単一溶液中に混合した。ビオチンは、キモトリプシンまたはパパインに対して有意な親和性を有さないので、キモスタチンは両方のプロテアーゼに結合し、そしてアンチパインはパパインのみに結合する(図82を参照のこと)。この混合物は、主に非結合性分子を含むライブラリーを、非特異的な結合物の微量画分で、そして標的に特異的な結合物のより小さい画分でさえ刺激する。
この混合物を、パパインに対する結合性について選択の2回のラウンドに供した場合、5および6の両方が、予期したように、4を犠牲にして富化された(図82)。しかし、上記の混合物を、キモトリプシンが結合したビーズで洗浄し、そして過剰な遊離のキモトリプシンの存在下でパパインに対する結合性について選択した場合、パパインに特異的なリガンド(6)のみが富化された(図82)。上記の選択が、単一の溶液から標的に特異的なDNAに結合した合成分子と非特異的なDNAに結合した合成分子を分離する能力は、関連するタンパク質(例えば、キナーゼ、プロテアーゼ、またはグリコトランスフェラーゼ)の大きなファミリーのうちの単一のメンバーに排他的に結合し、そして一般に低分子の生物学的効力を減少させる(例えば、それらを隔離するか、外へ出するか、または代謝することによって)タンパク質に結合しない合成分子を発見することに対するそれらの使用を示唆する。
要約すると、本実施例は、タンパク質結合活性を有するDNAに結合した合成低分子についてのインビトロ選択を実施することの実行可能性を実証する。核酸を鋳型にした(または核酸に結合した)ライブラリーに対して本明細書で開発した方法の適用は、これまでは生物学的分子に対してのみ利用可能であった強力な選択および増幅戦略を使用して、所望の特性を有する合成分子の発見において、重要な役割を果たし得る。
(材料および方法)
(DNA合成)
DNAオリゴヌクレオチドは、標準的なホスホラミダイトプロトコルを使用して、PerSeptive Biosystems Expedite 8090 DNA合成機で合成した。すべての試薬は、Glen Research,Sterling,Virginia,USAから購入した。グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)選択のための鋳型は、5’−アミノ修飾因子C12を使用して合成し、そして他のすべての鋳型は、5’−アミノ修飾因子C5を使用して合成した。
(化合物(1)の合成)
グルタチオンを、標準的なBoc化学を使用して、室温にて固相上で合成した。200mg PAM樹脂(Advanced Chem Tech)を、2mL DMF中で20分間膨潤させた。N−Boc−グリシン(Sigma、640μmol、112mg)、ジイソプロピルカルボジイミド(570μmol、89μL)、および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP、57μmol、7mg)を、樹脂に加え、そして4時間攪拌した。樹脂を、DMFで洗浄し、次いで、DMF/CH2Cl2(1:1)で洗浄した。N−Boc保護基を、トリフルオロ酢酸(TFA):m−クレゾール(95:5)の3分間の洗浄を2回行って除去した。次いで、樹脂を、DMF:CH2Cl2(1:1)およびDMF:ピリジン(1:1)で洗浄した。800μLの1−メチル−2ピロリジノン中の、N−Boc−Cys(Fm)−OH(ChemImpex、800μmol、320mg)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(Aldrich、720μmol、274mg)、2,6−ルチジン(1.2mmol、131μl)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、750μmol、131μl)の溶液を、15分間攪拌し、そして樹脂に加え、30分間攪拌した。次いで、樹脂をDMF/CH2Cl2(1:1)で洗浄した。システイン上のN−Boc保護基を除去するために、1.75mL CH2Cl2中の、トリメチルシリルトリフレート(TMS−Otf)(2.8mmol、0.5mL)および2,6−ルチジン(4.58mmol、0.5mL)の溶液を樹脂に加え、そして1時間攪拌した。次いで、樹脂を、メタノールで洗浄し、そしてDMF:CH2Cl2(1:1)で洗浄した。Fmoc−Glu−OFm(ChemImpex、800μmol、438mg)を上記ようにカップリングした。完全に保護したグルタチオンを、トリフルオロメタンスルホン酸:m−クレゾール:トリアニソール:TFA(2:1:1:8)の溶液を用いて樹脂から切り出し、1時間攪拌した。この混合物を濾過し、そして濾液をヘキサン中に抽出した。粗抽出物を、ヘキサン中で分取用の薄層クロマトグラフィーを使用して精製した。粗生成物(Rf=0.35)を含むシリカを、ヘキサン:酢酸エチル(4:1)を用いて広範に洗浄した。濾液を、減圧下で単離して、黄褐色の固体を得た。この合成についての収率は、最適化されなかった。
90μl DMF中の保護したグルタチオンの溶液(1.1μmol、4mg)を、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、11μmol、1.3mg)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、11μmol、2.3mg)、およびDMAP(5.7μmol、0.7mg)と共に、1時間攪拌した。その混合物を、遠沈し、そして上清をCPGビーズ上の5’−アミノ末端保護DNAに加えた。この混合物を、2時間攪拌し、次いで、そのビーズを、DMF、CH3CNで洗浄し、そして窒素で乾燥させた。
(化合物(2a)の調製)
N−ホルミル−Met−Leu−Phe(MLF)を、Sigmaから購入し、化合物(1)について記載した条件を使用して、CPGビーズ上の5’−アミノ末端保護DNAにカップリングした。
(化合物(2b)の調製)
MLF(10μmol〜100μmol、0.17M)を、乾燥DMFに、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1当量)(Novabiochem)、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(0.9当量)(Aldrich)、およびDIPEA(2.3当量)と共に溶解させた。この溶液を、室温で1時間攪拌し、次いで、CPGビーズ上の固有配列の5’−アミノ末端保護DNAに加えた。この混合物を、室温で1時間攪拌した。次いで、ビーズをDMF、次いでCH3CNで洗浄し、そして窒素下で乾燥させた。
(化合物(3)の調製)
Fmoc−Lys(Mmt)−OH(Novabiochem)を、化合物(2b)について記載した方法を使用して、CPGビーズ上のアミノ末端保護DNAに付着させた。Fmoc基を、DMF中の20%ピペリジンでの2分間の洗浄を3回行って除去した。次いで、この混合物を、DMFで洗浄し、次いで、CH3CNで洗浄した。次いで、α−アミンを、アセトアルデヒド/ピリジン/テトラヒドロフラン(1:1.1:18)中の5% 1−メチルイミダゾールの溶液で、室温にて10分間キャップした。次いで、ビーズを、DMFおよびCH3CNで洗浄し、そしてCH2Cl2中の3%トリクロロ酢酸、1%チオアニソールで、室温にて5分間処理して、Mmt保護基を除去した。この混合物を、CH3CNで洗浄し、そして窒素で乾燥させた。Fmoc−Phg−OH(Novabiochem)を、化合物(2b)について記載した方法を使用して、Lys−結合DNAのε−アミンに付着させた。Fmoc保護基の除去後、4−カルボキシベンゼンスルホンアミド(Aldrich)を、化合物(2b)について記載した方法を使用して、ビーズに付着させた。このビーズを、DMFで洗浄し、次いで、CH3CNで洗浄し、そして窒素で乾燥させた。
(化合物(4a,4b)の調製)
5’−ビオチン修飾ホスホラミダイト(Glen Research,Sterling,Virginia,USA)を、DNA合成における最終モノマーとして使用した。
(化合物(5)の調製)
化合物(2b)について記載した条件を使用して、キモスタチン(Sigma)をCPGビーズ上のアミノ末端が保護されたDNAに結合した。
(化合物(6)の調製)
アンチパイン(Sigma,1.5mol,0.9mg)を、DMF中300mM DCCおよび300mM NHSの溶液30μLに添加した。室温で1時間撹拌した後、この溶液を、0.1M MES緩衝液(pH6.0)中の5’アミノ終端DNA(約200〜300μM)50μLに添加した。このDNAは、予め、CPGビーズから取り除いており、次のセクションに記載したように、HPLCにより精製した。2時間後、この溶液を、Sephadex G−25を使用するゲル濾過およびその後の逆相HPLCによって精製した。
DNAに1−6連結した、合成基の構造全体を図83に示す。
(DNA連結合成分子の特徴づけ)
低分子−DNA結合体を、55℃にて1時間、メチルアミン:水酸化アンモニウム(1:1)の溶液を用いてCPGビーズから取り除いた。この溶液を、真空下で乾燥し、次いで、TEAA/CH3CN勾配を使用する逆相HPLCにより精製し、MALDI−TOF質量分析により分析した。ストック溶液の濃度を、UV−Vis分光法を使用して測定し、選択実験のために限界希釈物を調製した。サンプルを、−20℃にて水中に保存した。
(固定化した標的タンパク質の調製)
NHS−活性型Sepharose 4 Fast Flow(Amersham Pharmacia)を、製造業者の指示書に従って準備した。ウマGST、ウシ炭酸脱水酵素(CA)、パパイン、Nα−p−トシル−L−リジンクロロメチルケトン(TLCK)処理したウシキモトリプシン、およびN−p−トシル−L−フェニルアラニンクロロメチルケトン(TPCK)処理したウシトリプシンを、Sigmaから購入した。代表的に、タンパク質を、20〜100μMの濃度にて、リン酸緩衝化生理食塩(PBS)緩衝液(pH7.4〜7.6)中に溶解した。タンパク質濃度を、UV−Vis分光法を使用して測定した。タンパク質を4℃にて16時間ビーズと共にインキュベートした。このビーズを、Tris緩衝液で2時間キャッピングし、次いで、1M NaClを含有する適切な選択緩衝液で激しく洗浄し、次いで、適切な選択緩衝液(表14を参照のこと)中に移した。ビーズを、ビーズが使用される最初の容量と同じ容量の選択緩衝液中で、4℃にて最大1ヶ月間保存した。使用前に、パパインビーズを、5.5mM システインHCl、1.1mM EDTAおよび0.067mM β−メルカプトエタノールの溶液を使用して、4℃にて20分間活性化した。ストレプトアビジン磁性粒子(Roche)を、使用前に選択緩衝液で3回洗浄した。
(表14:選択緩衝液および洗浄緩衝液)
(GST選択)
化合物(1)(結合リガンド)の量を、10
3分子と10
7分子の間と見積もり、化合物(2a)(非結合リガンド)を10
2〜10
6モル過剰で使用した。(1)および(2a)を、40μLのGSTビーズに添加し、4℃にて1時間撹拌した。混合物を5.0μmの低結合Duraporeメンブレンスピンフィルター(Millipore)に移し、2×150μL PBS(pH7.4)、1×100μL Tris(pH8.0)、0.5M NaClおよび1×150μL PBSで洗浄した。結合したリガンドを、室温にて、100μLの0.1Mグルタチオン(Sigma)を用いてビーズを撹拌するこよによって溶離した。溶離液を3M酢酸ナトリウムおよび1Lグリコーゲンを用いてエタノール沈殿した。沈殿を直接PCRに用いた。
(炭酸脱水酵素選択)
化合物(2b)(非結合リガンド)および化合物(3)(結合リガンド)を、40μLの再懸濁ビーズに添加し、選択緩衝液を用いて400μLまで希釈した。次いで、室温にて選択を行った。各混合物を、スピンフィルターに移し、400μLの洗浄緩衝液で3回、400μLの選択緩衝液で1回洗浄した。この樹脂を、60μLの選択緩衝液でスピンフィルターから取り除き、得られたビーズをPCRに供した。
(パパイン選択)
化合物(4a)(非結合リガンド)および化合物(5)または(6)(結合リガンド)を、パパインビーズと共にインキュベートし、炭酸脱水酵素選択について記載したように選択した。
(キモトリプリシン選択)
化合物(4a)(非結合リガンド)および化合物(5)(結合リガンド)を、キモトリプシンビーズと共にインキュベートし、炭酸脱水酵素選択について記載したように選択した。
(トリプシン選択)
化合物(4a)(非結合リガンド)および化合物(6)(結合リガンド)を、トリプシンビーズと共にインキュベートし、炭酸脱水酵素選択について記載したように選択した。
(ストレプトアビジン選択)
化合物(3)(非結合リガンド)および化合物(4b)(結合リガンド)を、15μLのストレプトアビジン磁性粒子と共にインキュベートし、室温にて20分間撹拌した。MPC−Sマグネット(Dynal)を使用して、このビーズを、0.1M NaOH、1mM EDTA(100〜200μL)で2回、洗浄緩衝液(100〜200μL)で4回、そして、選択緩衝液で1回洗浄した。次いで、ビーズを、15μLの二重蒸留H2O中に再懸濁した。
(炭酸脱水酵素選択の反復)
108分子の化合物(3)および1011分子の化合物(2b)を、40μLの炭酸脱水酵素ビーズと共に1時間インキュベートし、次いで、記載したように選択した。最初の選択ラウンドの後、5μLの再懸濁アガロースビーズをPCRで除去した。6MのグアニジンHCl、10mM EDTA(40μL)をビーズに添加し、混合物を90℃まで15分間加熱した。Wizard Minicolumn(Promega)を使用してビーズをフィルターで取り除いた。濾液を、Centrisep Spin Column(Princeton Separations)を使用して選択緩衝液に緩衝液交換した。炭酸脱水酵素ビーズの新しいアリコートを溶離したテンプレートに添加した。2回目の選択ラウンドの後、アガロースビーズを30μLのH2O中に懸濁し、そのうちの15μLをPCRに使用した。PCR生成物をHindIIIで消化し、図84の結果を生じた。
3回の反復選択を、わずかな変更を伴って本質的には上記のように行った。調製した炭酸脱水酵素ビーズを、ZnSO4(1mM)と共に1時間インキュベートし、次いで、2M NaClを含有する選択緩衝液で激しく洗浄した。このビーズを、選択緩衝液に戻し、反復選択のために直接使用した。109分子の化合物(3)および1015分子の化合物(4b)をビーズに添加し、上記のように選択した。最初の選択ラウンド後、3μLのアリコートをPCRのために取った。2回目の選択ラウンドを上記のように行い、8μLのビーズのアリコートをPCRのために取った。3回目の選択ラウンド後、得られたビーズを30μLの二重蒸留H2Oを使用してスピンフィルターから取り除き、15μLの再懸濁ビーズをPCRのために使用した。
(パパイン親和性およびパパイン特異性選択)
親和性選択:6×109分子の化合物(6)、2.3×1010分子の化合物(5)および1.4×1011分子の化合物(4a)を、1時間、40μLのパパインビーズに添加した。ビーズを、パパイン洗浄緩衝液(100μL)で3回、100μLのパパイン選択緩衝液で1回洗浄した。ビーズを、30μLの二重蒸留H2Oでスピンフィルターから取り除いた。再懸濁したビーズの3μLのアリコートをPCRのために取った。DNA結合体を、70μLの6MグアニジンHClを添加し、混合物を90℃まで15分間加熱することによって、ビーズから溶離した。溶離した物質を、炭酸脱水酵素選択の反復に記載したように緩衝液交換した。2回目の選択ラウンド後、30μLのH2Oを用いてアガロースビーズをスピンフィルターから取り除き、再懸濁したビーズの15μLをPCRのために使用した。
特異性選択:等量のアンチパイン、キモスタチンおよびビオチンを、40μLのキモトリプシン選択緩衝液中のキモトリプシンアガロースビーズに添加し、1時間インキュベートした。ビーズをスピンダウンし、フロースルーを40μLの新しいキモトリプシンビーズに添加し、1時間インキュベートした。ビーズをスピンダウンし、15μLのパパイン選択緩衝液中100μMのキモトリプシンをこのフロースルーに添加し、次いで、1時間インキュベートした。この溶液を40μLのパパインビーズに添加し、上記のように選択した。低分子−DNA結合体を溶離し、上記のように緩衝液交換し、15μLの100μMキモトリプシンと共に1時間インキュベートし、次いで、2回目の選択ラウンドに供した。30μLのH2Oでビーズをスピンフィルターから取り除き、15μLをPCRのために使用した。
(汚染コントロール)
これらの実験の高感度に起因して、これらの研究を通じて2つの重要な汚染コントロールを使用した。1つ目は、リガンド−DNA結合体をタンパク質結合ビーズに添加しなかったこと以外は、上記のように各選択を行い、緩衝液の汚染およびサンプル間の交差汚染の試験を可能にした。2つ目は、選択からの物質を加えないPCR反応を、プライマー。dNTPおよびPCR緩衝液中の汚染について試験するtまえに使用した。
選択に残った鋳型を、PCRを用いて増幅した。全ての反応が、1Mの各プライマーと250μMの各dNTP(Promega)を含んだ。GST選択のために、沈殿したDNAをPCR反応において使用し、Platinum Taq(Invitrogen)で増幅した。PCR条件は以下の通りであった;工程1:94℃、2分;工程2:94℃、30秒;工程3:55℃、1分;工程4:72℃、30秒;工程5:工程2×29の実行;工程6:72℃、5分;工程7:4℃に維持。全ての他の選択のために、アガロースビーズ(3〜15μL)を、Taqポリメラーゼ(Promega)を用いるPCR反応に直接使用した。PCR条件は以下の通りであった;工程1:94℃、2分;工程2:94℃、30秒;工程3:55℃、1分;工程4:72℃、30秒;工程5:工程2×24の実行;工程6:4℃。
次いで、PCR産物を、リガンドをコードするDNAを消化する制限酵素(New England Biolabs,5〜10単位)で1〜2時間消化した。消化した産物を3%アガロースゲル上での電気泳動により分析し、エチジウムブロマイド染色およびStratagene Eagle Eye IIシステムでのデンシトメトリにより定量した。
(富化の算出)
富化を、既知の濃度のストック溶液により決定した、選択に導入された結合リガンドの分画に対する、制限消化により決定した、選択で残った結合リガンドの分画の割合として算出する。
(鋳型およびプライマーのDNA配列)
制限エンドヌクレアーゼの切断部位に下線を付す。
(グルタチオンSトランスフェラーゼ選択のためのDNA配列)
(炭酸脱水酵素選択のためのDNA配列)
(プロテアーゼ選択のためのDNA配列)
(実施例12:新規化学反応の同定)
本実施例によって、核酸テンプレート型の合成を介した新規化学反応の存在を同定することが可能であることを実証する。新規化学反応を、結合形成反応を選択し、それを特徴づける為の実験の結果として同定する。
新規の結合形成反応を同定するためのワンポッド選択を、図85に概説した。簡潔にいうと、nプールA反応物とmプールBビオチン化反応物とを組み合わせると、n×mの起こり得る反応の組み合わせが利用可能である。このテンプレートとなる反応を特定のセットの反応条件のもとで、そのテンプレート(例えば、反応物A27)の特定の組み合わせを、特定の組み合わせの移動ユニット(例えば、反応物 ビオチン化BII)と反応する。この反応生成物を、アビジン結合ビーズによって捕捉する。反応していないテンプレートは、そのアビジンによって捕捉されず、洗浄することによって取り除かれる。次いで、そのアビジンで捕捉した反応性生物を、例えば、PCRによって、増幅し得、そして、そのコドン配列を決定するために、配列決定し得る。示されるように、その増幅したテンプレートは、反応物A27についての配列タグ(コード領域)および反応物B11コドン配列(アニーリング領域)を含んでいた。
図86は、そのメンバーを新たに同定した化学反応によって生成した化合物ライブラリーを生成するスキームの概略図を提供する。結合形成反応について選択するために、フェニル基(A1B1およびA1B2)または第1級アミン(A2B1およびA2B2)のいずれかと、カルボン酸(B1)またはメチルエステル(B2)のいずれかを表す2つのビオチン化プールB反応物を調製した。その2つのコード領域および2つのアニーリング領域は、様々な制限消化部位を含み、混合物における、4つのプールメンバーの各々の相対的な定量を可能にする。6つ全ての反応物(250molの各プールA反応物および500fmolの、B1およびB2の各々)を、DMT−MM(アミンとカルボン酸との間でのアミド形成を媒介すると知られている(Gartnerら(2002),AGNEW.CHEM.INT.ED.41:1796−1800;Kunishimaら(2002)TETRAHEDRON 57:1551−1558)の存在下またはその非存在下のいずれかで、単一のポッドの中において組み合わせた。この粗反応物を、ストレプトアビジン結合磁気ビーズに通過させて、結合形成反応物をコードするテンプレートを選択し、そして、変性剤で洗浄して、プールBのメンバーと結合形成しなかったプールAメンバーを取り除いた。この選択した分子を、遊離したビオチンおよびホルムアミドを用いて溶離させた。初期総反応物のうちの5fmolに対応する溶離物の画分を、PCRによって増幅して、そして、DNA配列決定および制限消化に供して、4つ(すなわち、そのカルボン酸とフェニル基との反応、そのエステルとフェニル基との反応、そのカルボン酸とアミン基との反応、およびそのエステルとアミン基との反応)の存在し得る反応コード配列の比率を決定した(図86)。
DMT−MMの非存在下で、それらの反応物を組み合わせると、選択後のPCR生成物形成がごく僅か生じた。対照的に、強力なPCR生成物が、その反応物がDMT−MM(図86)と組み合わされたときに、観測され、これは、反応プールAメンバーを捕捉する有効性および洗浄工程の流れの良さと矛盾しない。この結果によって、結合形成反応についての選択後のPCR生成物の収量は、反応物のプールにおける結合形成の存在についての簡単なスクリーンとしての役割を果たし得ることを示唆する。その結合形成試薬の同一性を決定するために、それらのPCR生成物を、MseIおよびTspI45を用いて消化した。ここで、MseIは、A1ではなくA2についてのコード領域を切断し、そしてTsp45Iは、B1でなく、B2を切断する。DMT−MMの非存在下での反応の後に、選択することによって、4つの存在し得る反応コードプールAメンバーの混合物を生じたことを、フラグメントの消化の分析によって明らかにした(図86)。対照的に、DMT−MMの存在下の反応の後に、選択することによって、A2B1配列が生じたが、他の3つの配列は存在しなかった。このことは、結合形成をコードするDNAについての強力な増強を示す。選択したPCR産物のDNA配列決定は、制限消化分析と矛盾を生じない。これらの結果によって、新規反応を発見するための、提案された方法およびシステムの基礎的な原理を実証する。
提案した反応発見システムが、未反応の組合せの非常に規模の大きい過剰量から単一の反応組合せを選択する能力を試験するために、そのシステムを、3つの可能性(アミン+カルボン酸、アミド+エステルおよびアミン+エステル)をもってプログラムし、そして、未反応の組合せ(アミド+エステルならびにアミノ+エステル)に対する傾向がある集団中でその対応するDNA結合反応物を100倍にして組み合わせる。アミドカップリング試薬DMT−MMにおいて、結合形成反応について得られた混合物のインビトロ選択は、そのアミンとカルボン酸との間の結合形成をコードするテンプレートを、1000倍を超えて増強することを生じる。DMT−MMが取り除かれた場合、ならんら増強は観測されなかった。この結果によって、計画された30×30で900の可能性から単一の反応性結合形成の組合せを選択およびデコードする可能がさらに支持される。
(新規反応発見の検証(実施例A))
この実験は、DNAを鋳型とする合成を使用する、新しい化学反応を発見することが実際に可能であることを示す。図87に示されるDNA連結官能基を含有する25の反応混合物を、ω構造、プールAの反応物に対する1ポットアセンブリ法、および最適化したコドンセットを使用して、本質的に図9に記載されるように作製した。このセットの中でも25の可能性のある反応は、Huisgenのアジドとアルキンとの間の、1,3−二極環付加(Huisgenら(1989)PURE APPL.CHEM.61:613)である。Sharplessおよび共同実験者らは、最近、触媒量のCuSO4およびアスコルビン酸ナトリウムが、このプロセスの位置選択性および効率を劇的に改善し、室温での強固な反応を可能にすることを報告した(Rostoutseuら(2002)ANGEW CHEM.INT.ED.ENGL.41:2596)。反応発見の選択を、CuSO4およびアスコルビン酸ナトリウムの有無のいずれかでの、この25反応マトリクスを使用する1pmolスケールで実施した。
銅およびアスコルビン酸塩の存在下で、結合形成反応後のPCR増幅および制限消化による配列分析により、アルケンおよびアジドをコードする反応物をコードするプールA鋳型を富化した(図87Bのレーン2を参照のこと)。対照的に、銅およびアスコルビン酸塩を除外した結果、アルケンおよびアジドをコードする鋳型は富化しなかった(図87Bのレーン3を参照のこと)。それゆえ反応発見選択システムは、アルケンおよびアジドのCu(I)媒介カプリングを、うまく「再発見した」。
(新規反応発見の検証(実施例B))
この実施例は、実施例Aで同定された反応がまた、96−反応マトリクスにおいて同定され得ることを示す。簡単には、図88に示されるDNA結合官能基を有する96−反応マトリクスが生成した。プールAは、12この反応物(A1〜A12)を含み、プールBは、8このビオチン化された反応物(B1〜B8)を含んだ。合わせると、96の異なる反応が可能であった。
反応物(各10fmol)を、pH6.0にて500μM Cu(I)の存在下で混合した。反応選択および増幅後、1つのオリゴヌクレオチド配列が富化された。詳細には、反応物A2と反応物B5との間の反応をコードする鋳型について27倍の富化があった。実施例Aのような反応性生物は、Huisgen付加環化反応から生じたように見える。対照的に、Cu(I)が存在しないとき、PCR生成物は極めてわずかであり、いかなる反応物の組み合わせにおいても富化しなかった。
(新規反応発見の検証(実施例C))
この実施例は、鋳型核酸合成を用いて新規化学反応を発見し得ることを示す。詳細には、この実施例は、新規Pd媒介カップリング反応の発見を説明する。
反応物のライブラリーを作成して、混合し、鋳型核酸Pd媒介カップリング反応の能力を試験した。反応物の2つのプール(図89を参照のこと)を合成して、12このプールA反応物(A1〜A12)および8このビオチン化されたプールB反応物を得た。合わせると、96の異なる反応が可能であった。反応物(各10fmol)を、pH7.0にて1mM Pd(II)の存在下で混合した。反応選択および増幅後、5つのオリゴヌクレオチド配列が10倍〜22倍の間で富化された。5つのオリゴヌクレオチド配列の分析から、反応は、(i)反応物A2と反応物B1(ii)反応物A2と反応物B4(iii)反応物A2と反応物B8(iv)反応物A9と反応物B1(v)反応物A10と反応物B4との間で生じることが明らかになった。
富化されたオリゴヌクレオチドを配列決定するための代替として、反応生成物に付着したオリゴヌクレオチド配列の同定を、マイクロアレイ分析により決定した(図90を参照のこと)。反応マトリクス中に含まれるべき各々の鋳型に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドのライブラリーを合成した。次いで、各鋳型に相補的な個々のアンチセンスオリゴヌクレオチド(図90の1’〜9’)を、マクロアレイの別個のアドレス可能位置に固定化した。マイクロアレイに固定化されたアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列は公知である。鋳型核酸合成後、得られる反応性生物に付着したオリゴヌクレオチド(例えば、図90の鋳型1に付着したP1および鋳型8に付着した生成物P8)は、検出可能な部分(例えば、フルオロフォア)の増幅させた鋳型への取り込みを可能にする条件下で、増幅された。次いで、増幅されたオリゴヌクレオチドを変性して、鋳型オリゴヌクレオチド(例えば、実施例90のオリゴヌクレオチド1およびオリゴヌクレオチド8)を、その固定化された相補的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせる条件下で、マイクロアレイと結合させた。洗浄して非結合物質を除去した後、次いで、マイクロアレイをスキャンして、特定の位置にて検出可能な部分の検出をさらに介して特定の結合を検出した。検出可能な部分の位置およびその位置に固定化された相補的オリゴヌクレオチドの公知の配列に基づいて、結合した鋳型の配列および反応生成物を生成した反応物を決定し得る。
実施例B(CU(I)を用いる96の反応マトリクス)および上記実施例C(Pd(イオン)を用いる96反応マトリクス)の後に、この型のマイクロアレイ分析アプローチを使用した。このマイクロアレイ分析は、DNA配列決定の結果と一致することが分かった。さらに、このマイクロアレイ分析は、従来の配列決定方法論より直接的で、より高感度で、そして、有意に高速(少なくとも)であることが分かった。
例として、Pd(II)が媒介する反応の種々の産物を、このマイクロアレイシステムにより転出し、結果を図91にまとめる。図91は、プールAの反応物がプールBのビオチン化反応物と反応し、産物を生じることをまとめる。図91はまた、バックグラウンドを上回るシグナルのレベルと、各生成物についてのDNAを鋳型とする反応収率をまとめる。特に興味深いのは、1mM Pd(II)の存在下、pH7における、DNA連結した末端アルキンA2とDNA連結したアクリルアミドB8との間の結合形成の配列分析アプローチの両方を使用する発見である(図89および91を参照のこと)。この反応は、効率的にDNAを鋳型とするアリールヨウ化物とオレフィンとのHeckカップリング反応と匹敵し、Pd供給源の不在下では進行しない。末端アルキンとアリールヨウ化物との間のPd媒介性のカップリングは公知であるが(Amatoreら(1995)J.ORG.CHEM.60:6829)、シンプルなオレフィンまたは電子不足のオレフィンを用いる末端アルキンのPd媒介性のカップリングは、新型の反応スキームであるようである。この新しく発見された反応スキームは、現在、より慣用的な大規模反応を使用して、より詳細に特徴付けられ得る。
(参考としての援用)
本明細書中に引用される刊行物、特許、特許出願の各々の全内容は、あらゆる目的のために、本願に参考として援用される。
(等価物)
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態において実施され得る。したがって、以上の実施形態は、例示された全ての観点ではなく、むしろ、本明細書中に記載された本発明に限定しているとみなされるべきである。本発明の範囲は、従って、以上の説明ではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲によって示され、添付の特許請求の範囲の意味および等価の範囲内の、全ての変更が、本発明に包含されることが意図される。