JP2005534739A - シアニン染料リポーターを用いたタンパク質の部位特異的標識 - Google Patents

シアニン染料リポーターを用いたタンパク質の部位特異的標識 Download PDF

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Abstract

下記式(I)の化合物が開示される。
【化1】
Figure 2005534739

式中、Dはシアニン染料及びその誘導体から選択される染料であり、Bは親和性標識であり、Fはカルボン酸チオエステル基及び1,2−アミノチオール基から選択される標的結合基からなり、MはFとの結合に適合した基であり、L及びLは各々独立に、炭素原子から選択される1〜40の結合原子を含む基であって、適宜−NR′−、−O−、−CH=CH−、−CO−NH−及びフェニレニル基(式中、R′は水素及びC〜Cアルキルから選択される。)から選択される1以上の基を含み得る基からなる。本発明は、合成又は組換えペプチド又はタンパク質及びその誘導体のN−末端又はC−末端へのシアニン染料リポーター基の直接結合を部位特異的に可能にすると共に、得られる標識分子の精製を可能にする方法にも関する。

Description

本発明は、シアニン染料をリポーター分子として使用するタンパク質の部位特異的標識のための試薬及び方法に関する。特に本発明は、チオエステル活性化基を含むと共に、チオエステル反応部分を含有するか、又はチオエステル反応部分を含有するように誘導体化された標的分子との反応性を有する基を含む新規なシアニン染料誘導体に関する。
生体分子の標識及び検出で使用するための蛍光リポーターに対する関心及び要望が高まっている。シアニン及び関連染料(例えば、剛直化シアニン染料やスクアレイン)は、他の蛍光染料試薬に比べて幾つかの利点を有しており、配列決定、マイクロアレイ、フローサイトメトリー及びプロテオミックスのような様々な分野で蛍光標識として広く使用されている。例えば、米国特許第5569587号(Waggonerら)には、−OH、−NH又は−SH基を含有するか、或いはかかる基を含有するように誘導体化された標的分子との反応に適した反応基を有する水溶性シアニン染料誘導体が開示されている。シアニン染料は、非常に高い吸光係数及び好ましい量子収率を有することが特徴である。加えて、シアニン染料は良好な光安定性を有しており、容易に光漂白されない。
数多くの用途では、蛍光標識染料とタンパク質のような標的分子との間に(共有結合の形態で)恒久的な結合を形成することが必要である。ペプチド及びタンパク質標識の化学は文献中に十分に記載されており、現在では広範囲の標識試薬が商業的に入手できる。蛍光標識試薬を用いたタンパク質標識に関する総説及び事例については、“Non−Radioactive Labelling,a Practical Inroduction”,Garman,A.J.,Academic Press,1997、及び“Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals”,Haugland,R.P.,Molecular Probes Inc.,1992を参照されたい。
タンパク質又はペプチド中に蛍光標識を部位特異的に組み込むことは、ある種の生化学及び生物物理学的研究、例えば蛍光共鳴エネルギー移動並びにタンパク質の構造及び機能の研究で大きな利益となり得る。標的ポリペプチド中に蛍光標識を部位特異的に結合するための一方法は、天然の化学的連結反応を利用する。この方法に従えば、N−末端システイン残基を含む非保護ペプチド断片とα−チオエステル基を含む第二の非保護ペプチド断片とを生理的pHで化学選択的に連結することで、、これらの一次配列にかかわりなく、連結部位にアミド結合が生成される。例えば、Cotton,G.J.and Muir,T.W.,Chem.Biol.,(1999),,R247−260、Giriat,I.,Muir,T.W.and Perler,F.B.,Genetic Engineering,(2001),23,171−199、及びMuir,T.W.,Syn.Lett.,(2001),,733−740の総説を参照されたい。
Tolbert,T.J.and Wong,C−H.(Angew.Chem.Int.Ed.,(2002),41,2171−2174)は、フルオレセイン及びビオチンチオエステル誘導体の製造並びにこれらとN−末端システイン含有組換えタンパク質との反応を記載している。Schuler,B.and Pannell,L.K.(Bioconjugate Chemistry,2002年7月18日にオンラインで出版)は、Cy5(商標)のベンジルチオエステルの製造及びそれに続くN−末端システイン残基含有合成ポリペプチドとの反応を報告した。
しかし、リポーターも親和性標識に共有結合されているシアニン染料のチオエステル誘導体を記載した報告は存在しない。タンパク質及びペプチドの部位特異的標識に伴う反応でかかる試薬を使用することは、蛍光染料で標識した標識を引き続いて分離及び精製するために有利であろう。したがって本発明は、合成又は組換えペプチド又はタンパク質及びその誘導体のN−末端又はC−末端へのシアニン染料リポーターの直接結合を部位特異的に可能にすると共に、得られる標識分子の精製を可能にする新規なシアニン染料試薬及び方法を提供する。
米国特許第5569587号明細書 "Non−Radioactive Labelling,a Practical Inroduction",Garman,A.J.,Academic Press,1997 "Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals",Haugland,R.P.,Molecular Probes Inc.,1992 Cotton,G.J.and Muir,T.W.,Chem.Biol.,(1999),6,R247−260 Giriat,I.,Muir,T.W.and Perler,F.B.,Genetic Engineering,(2001),23,171−199 Muir,T.W.,Syn.Lett.,(2001),6,733−740 Tolbert,T.J.and Wong,C−H.,Angew.Chem.Int.Ed.,(2002),41,2171−2174 Schuler,B.and Pannell,L.K.,Bioconjugate Chemistry,2002年7月18日にオンラインで出版
本発明の一態様に従えば、カルボン酸チオエステル基及びチオエステルとの共有結合反応に適した基から選択される1以上の標的結合基を含有する、シアニン染料又はその誘導体を含んでなる化合物であって、当該化合物がそれに共有結合した親和性標識を含むことを特徴とする化合物が提供される。
好適には、本化合物は下記式(I)を有する。
Figure 2005534739
式中、
Dはシアニン染料及びその誘導体から選択される染料であり、
Bは親和性標識であり、
Fはカルボン酸チオエステル基及び1,2−アミノチオール基から選択される標的結合基からなり、
MはFとの結合に適合した基であり、
及びLは各々独立に、炭素原子から選択される1〜40の結合原子を含む基であって、適宜−NR′−、−O−、−CH=CH−、−CO−NH−及びフェニレニル基(式中、R′は水素及びC〜Cアルキルから選択される。)から選択される1以上の基を含み得る基からなる。
好適には、L及びLの各々に2〜30の原子が存在し、好ましくは6〜20の原子が存在する。
好ましくは、L及びLは次式の基から独立に選択される。
−{(CHR′)−Q−(CHR′)}
式中、Qは−CHR′−、−NR′−、−O−、−CH=CH−、−Ar−及び−CO−NH−から選択され、R′は水素又はC〜Cアルキルであり、pは0〜5であり、rは1〜5であり、sは1又は2である。
特に好ましいQは、−CHR′−、−O−及び−CO−NH−(式中、R′は前記に定義した通りである。)から選択される。
一実施形態では、Lは開裂可能なリンカーであり、さらに、好適には化学的に開裂可能な基、酵素で開裂可能な基及び光化学的に開裂可能な基から選択できる基Pを含み得る。好適な化学的に開裂可能な基には、いずれも塩基性条件下で開裂されるカルバミン酸エステル及びカルボン酸エステルがある。好適な酵素で開裂可能な基は、エステル基、アミド基及びホスホジエステル基のような基から選択できる。かかる基は、プロテアーゼ、エステラーゼ及びホスホジエステラーゼのようなヒドロラーゼの基質であり、かかるヒドロラーゼで加水分解される。式(I)の化合物中で使用するために適した光開裂可能な基Pは、4,5−ジアルコキシ−2−ニトロベンジルアルコールリンカー(Holmes,C.P.,and Jones,D.G.,J.Org.Chem.,(1995),60,2318−2319)又はフェナシルリンカー(Wang,S.,J.Org.Chem.,(1976),41,3258−3261)を含み得る。これらの基は300nmの照明下で効率的な光反応を受け、親和性標識からの染料分子又は染料標識タンパク質の急速な開裂をもたらす。
好適には、基Mは標的結合基Fを結合するために適合した任意適宜の官能基であり得る。好ましくは、Mは次式から選択される。
Figure 2005534739
式中、R′は前記に定義した通りである。
好適な親和性標識は、ビオチン、デスチオビオチン及びHis標識、イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸などの金属キレート配位子から選択できる。好ましい親和性標識は、ビオチン及びデスチオビオチンから選択される。
本発明の一実施形態では、標的結合基Fは次式のカルボン酸チオエステルである。
Figure 2005534739
式中、L′は単結合であるか、或いは炭素原子から選択される1〜30の結合原子を含み、適宜−NH−、−O−及び−CO−NH−から選択される1以上の基を含む基であり、R″は適宜スルホネートで置換され得るC〜Cアルキル、C〜C10アリール又はC〜C15アラルキルであるか、或いは−(CH)−CONHである。L′が単結合である場合、標的結合基Fは基Mに直接結合される。
代わりの実施形態では、標的結合基Fは次式の1,2−アミノチオール基である。
Figure 2005534739
式中、L′は前記に定義した通りである。
かくして本発明は、シアニン染料又はその誘導体を含んでなる蛍光標識試薬であって、分子中に標的結合基及び親和性標識を組み込むことで修飾された蛍光標識試薬を提供する。標的結合基は、カルボン酸チオエステル基及び1,2−アミノチオール基から選択できる。標的結合基がチオエステル基である場合、それは標的分子(好適にはタンパク質又はペプチド)又はその誘導体上の1,2−アミノチオール基と選択的に反応する。別法として、シアニン染料は標的上のチオエステル基と反応するための1,2−アミノチオール基を含み得る。リポーター分子の化学構造中に反応性チオエステル官能基又は(別法として)1,2−アミノチオール官能基を組み込むことにより、簡便な一段階法で標的分子を直接標識することができる。本発明の方法に従えば、ペプチド及びタンパク質の標識は、一次配列の組成にかかわりなく部位特異的である。N−末端システイン官能基又はチオエステル官能基をもった標的一次配列を生成することにより、標的をシアニン染料の適当な誘導体(好適には、それぞれチオエステル及び1,2−アミノチオール誘導体)と共にインキュベートすることで部位特異的な標識を直接に達成できる。さらに、標識試薬中に親和性標識が含まれることにより、引き続いて蛍光染料標識タンパク質又はペプチドを精製することを可能にする。
好適には、シアニン染料又はシアニン染料誘導体は、染料中に1以上のカルボン酸チオエステル基又はチオエステルとの共有結合反応に適した基が組み込まれていることを条件として、シアニン染料、剛直化シアニン染料及びスクアレイン染料から選択される。表1は、特定の励起特性(Abs)及び発光特性(Em)を有するシアニン染料の若干の例を示している。
Figure 2005534739
第一の態様に係る一実施形態では、本化合物は下記式(II)を有する。
Figure 2005534739
式中、
基R及びRはZ環構造に結合していると共に、基R及びRはZ環構造に結合しており、
nは1〜3の整数であり、
及びZは、1つの環又は2つの縮合環を含む芳香族又はヘテロ芳香族環系を完成するために必要な原子を独立に表し、各環は炭素原子から選択される5又は6の原子を有すると共に、適宜酸素、窒素及び硫黄から選択される2以下の原子を有し、
X及びYは同一であるか又は異なっており、>CR、酸素、硫黄、−CH=CH−、>N−W(式中、Nは窒素であり、Wは水素及び基R10から選択される。)から選択され、
基R、R、R、R、R、R、R、R及びR10の1以上は次式の基であり、
Figure 2005534739
(式中、B、F、M、L及びLは前記に定義した通りである。)
基Rは水素及び非置換又はアリール置換であり得るC〜Cアルキルから独立に選択されるか、或いは2以上のRが次式の基と一緒になって、Rで置換されると共に、適宜−O−、−S−及び>NR(式中、Rは前記に定義した通りである。)から選択されるヘテロ原子を含み得る炭化水素環系を形成し、
Figure 2005534739
(式中、nは前記に定義した通りである。)
残りの基R、R、R及びRは水素、ハロゲン、アミド、シアノ、ニトロ、モノ−又はジ−C〜Cアルキル置換アミノ、カルボニル、カルボキシル、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリール、ヘテロアリール、アラルキル及び基−(CH)−Y(式中、Yはスルホネート、スルフェート、ホスホネート、ホスフェート及び第四アンモニウムから選択され、mは0又は1〜6の整数である。)からなる群から独立に選択され、
残りの基R、R及びR10は独立にC〜Cアルキルであり、
残りの基R及びRは水素、C〜C10アルキル、基−(CH)−Y(式中、Y及びmは前記に定義した通りである。)、及び非置換であるか又は2以下のニトロ基で置換され得るベンジルから独立に選択される。
第一の態様に係る第二の実施形態では、本化合物は下記式(III)を有する。
Figure 2005534739
式中、
基R12、R13、R14及びR15はX及びYを含む環に結合しているか、或いは適宜Z及びZ環構造の原子に結合しており、
及びZは、1つの環又は2つの縮合環を含む芳香族又はヘテロ芳香族環系を完成するために必要な原子を独立に表し、各環は炭素原子から選択される5又は6の原子を有すると共に、適宜酸素、窒素及び硫黄から選択される2以下の原子を有し、
X及びYは同一であるか又は異なっており、>CR、酸素、硫黄、−CH=CH−、>N−W(式中、Nは窒素であり、Wは水素及び基R10から選択される。)から選択され、
AはO及びNR16(式中、R16は次式の置換アミノ基である。)から選択され、
Figure 2005534739
基R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R17及びR18の1以上は次式の基であり、
Figure 2005534739
(式中、B、F、M、L及びLは前記に定義した通りである。)
残りの基R11、R12、R13、R14及びR15は水素、ハロゲン、アミド、シアノ、ニトロ、モノ−又はジ−C〜Cアルキル置換アミノ、カルボニル、カルボキシル、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリール、ヘテロアリール、アラルキル及び基−(CH)−Y(式中、Yはスルホネート、スルフェート、ホスホネート、ホスフェート及び第四アンモニウムから選択され、mは0又は1〜6の整数である。)からなる群から独立に選択され、
残りの基R、R及びR10は独立にC〜Cアルキルであり、
残りの基R17は水素、C〜Cアルキル及びアリールから選択され、残りの基R18はC〜Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、炭素原子数2〜7のアシル基、及びチオカルバモイル基から選択される。
好適には、式(II)及び(III)に係る化合物中で、Z及びZはフェニル、ピリジル、ナフチル、アントラニル、インデニル、フルオレニル、キノリニル、インドリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル及びベンゾイミダゾリル部分からなる群から独立に選択される。1つの環又は2つの縮合環を含む追加の環系は、当業者には容易に明らかとなろう。好ましくは、Z及びZはフェニル、ピリジル、ナフチル、キノリニル及びインドリル部分からなる群から選択される。特に好ましいZ及びZはフェニル及びナフチル部分である。
好適には、式(II)及び(III)の化合物の基Rの1以上は、化合物に親水特性を付与するための水可溶化基である。可溶化基(例えば、スルホネート、スルホン酸及び第四アンモニウム)は、式(II)及び(III)の化合物の芳香族環構造Z及び/又はZに直接結合できる。別法として、可溶化基はC〜Cアルキルリンカー鎖によって前記芳香族環構造に結合でき、基−(CH)−Y(式中、Yはスルホネート、スルフェート、ホスホネート、ホスフェート、第四アンモニウム及びカルボキシルから選択され、mは前記に定義した通りである。)から選択できる。別の可溶化基は、炭水化物残基(例えば、単糖類)又はポリエチレングリコール誘導体であり得る。水可溶化成分の例には、−(CH)−SO 及び−(CH)−SO のようなC〜Cアルキルスルホネートがある。しかし、式(II)又は(III)の染料の芳香族環構造に直接結合した1以上のスルホネート基又はスルホン酸基が特に好ましい。タンパク質を標識する場合、水溶性は有利であり得る。
一実施形態では、式(I)の化合物は蛍光リポーター分子である。この実施形態では、式(II)及び(III)の化合物中の置換基Rのいずれもがニトロ基を含まない。
別の実施形態では、式(I)の化合物は、式(II)及び(III)の化合物の芳香族環構造に結合した基Rの1以上が1以上のニトロ基を含む非蛍光又は実質的に非蛍光の染料である。この実施形態では、好適には、1以上のニトロ基がZ及び/又はZ芳香族環構造に直接結合していればよい。別法として、モノ−又はジ−ニトロ置換ベンジル基がZ及び/又はZ芳香族環構造に結合していてもよく、適宜これらの環構造がさらに1以上のニトロ基で置換されていてもよい。本発明に係る非蛍光又は実質的に非蛍光のシアニン染料或いはシアニン染料誘導体は、欧州特許第1086179B1号(Amersham Biosciences UK Limited)に記載されているように、生体分子に係る反応中での結合及び/又は開裂事象の検出を伴うアッセイに際して蛍光供与体/受容体対の一成分を標識するために使用できる。
第一の態様に係る実施形態では、
i)アリールは、6〜10の炭素原子を有する1つの芳香環又は2つの縮合芳香環を含む芳香族置換基(例えば、フェニル又はナフチル)であり、適宜1以上の置換基(例えば、ハロゲン、炭素原子数1〜10の直鎖又は枝分れアルキル基、アラルキル及びアルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ及びn−ブトキシ))で独立に置換され、
ii)ヘテロアリールは、N、O及びSから選択できる1以上で3以下のヘテロ原子を含む単環式又は二環式五〜十員芳香環系であり、適宜1以上の置換基(例えば、ハロゲン、炭素原子数1〜10の直鎖又は枝分れアルキル基、アラルキル及びアルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ及びn−ブトキシ))で独立に置換され、
iii)アラルキルは、アリール又はヘテロアリール基で置換されたC〜Cアルキル基であり、
iv)ハロゲン及びハロ基は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される。
標的結合基Fのおかげで、本発明に係る化合物は、生物学的検出系での用途のため、標的生体材料を部位特異的に共有結合で標識するのに有用である。好適な標的材料には、タンパク質、翻訳後修飾タンパク質、ペプチド、抗体、抗原及びタンパク質−核酸(PNA)がある。リポーター部分は、細胞(生細胞又は死細胞)内でのリポーターの経路を指示し得る化学種、或いは細胞への出入りを助ける化学種、例えば、親油性膜の透過を可能にするための長鎖アルキル残基、或いは二本鎖DNAを含む核又は他の細胞領域にリポーターを局在させるための挿入化学種に結合することもできる。
第二の態様では、N−末端システインを含むか、又はN−末端システインを含むように誘導体化された対象タンパク質を標識するための方法であって、
i)前記タンパク質を含む液体に下記式(I)の化合物を添加し、
Figure 2005534739
(式中、
Dはシアニン染料及びその誘導体から選択される染料であり、
Bは生体親和性標識であり、
Fはカルボン酸チオエステル基及び1,2−アミノチオール基から選択される標的結合基からなり、
MはFとの結合に適合した基であり、
及びLは各々独立に、炭素原子から選択される1〜40の結合原子を含む基であって、適宜−NR′−、−O−、−CH=CH−、−CO−NH−及びフェニレニル基(式中、R′は水素及びC〜Cアルキルから選択される。)から選択される1以上の基を含み得る基からなる。)
ii)前記タンパク質を標識するのに適した条件下で前記化合物を前記タンパク質と共にインキュベートする
ことを含んでなる方法が提供される。
好適には、L及びLの各々には2〜30の原子が存在し、好ましくは6〜20の原子が存在する。
好ましくは、L及びLは次式の基から独立に選択される。
−{(CHR′)−Q−(CHR′)}
式中、Qは−CHR′−、−NR′−、−O−、−CH=CH−、−Ar−及び−CO−NH−から選択され、R′は水素又はC〜Cアルキルであり、pは0〜5であり、rは1〜5であり、sは1又は2である。
特に好ましいQは、−CHR′−、−O−及び−CO−NH−(式中、R′は前記に定義した通りである。)から選択される。
標的タンパク質を標識するのに使用するための好ましい式(I)の化合物は、前記に定義したような式(II)又は(III)を有するものである。
本発明の化合物を用いる共有結合標識は、前記に定義したように1以上のカルボン酸チオエステル基又は1,2−アミノチオール基を有する標的を用いて達成できる。標的は、標的材料の相補的基と共有結合し得る量の、前記に定義したような1以上の基Fを有する本発明の化合物と共にインキュベートすればよい。標的材料及び本発明の化合物は、標的材料を本発明の化合物に共有結合させるのに十分な条件下で十分な時間にわたりインキュベートされる。即ち、例えば、チオエステル基Fは1,2−アミノチオール基を含むか、又は1,2−アミノチオール基を含むように誘導体化された上記標的材料の任意のものと反応して共有結合を形成し得る。これらの方法及びそれで得られる生成物(例えば、リポーター標識生体分子)も、本発明の追加の態様として想定されている。
好適には、対象タンパク質は抗体、抗原、タンパク質、ペプチド、微生物材料、細胞及び細胞膜からなる群から選択できる。
第二の態様に係る特定の実施形態では、支持体に結合した固定化リガンド(又は特異結合パートナー)に対する親和性標識部分の親和性を利用するアフィニティークロマトグラフィーにより、染料で標識した対象タンパク質を分離及び/又は精製する方法が提供される。アフィニティークロマトグラフィーは、生理的条件下で標識及び非標識タンパク質分子の分離を可能にする迅速で簡便な方法を提供する。親和性標識で標識したタンパク質はアフィニティーカラムに選択的に結合させることができ、未反応のタンパク質はカラムを洗浄することで除去できる。好適に特異結合部分には、(ビオチン標識に対しては)アビジン又はストレプトアビジンがあり、(His標識又はイミノジ酢酸に対しては)固定化金属イオン、例えばCu(II)、Ni(II)、Fe(II)及びFe(III)がある。タンパク質の親和精製のための方法は当業者にとって公知であり、例えば、Ostrove,S,Methods in Enzymology,(1990),Vol 182,page 357を参照されたい。
典型的な標識方法では、N−末端システイン残基を含む標的ペプチド又はタンパク質を、約1.5%のMESNAを含むpH約7.3〜7.4のリン酸塩緩衝液(通例は200mM NaCl、200mMリン酸ナトリウム)中で過剰のシアニン染料チオエステル誘導体(例えば、Cy5−MESNA(Cy5−メルカプトエタンスルホン酸エステル))と共に撹拌する。標識反応中での標的ポリペプチドの濃度は一般に100μM〜10mMである一方、Cy5−MESNAは一般に過剰に(例えば、1.5〜3倍のモル過剰量で)存在する。標的ポリペプチド濃度が比較的低い場合、Cy5−MESNAの濃度は通常は1mM以上に維持される。一般に、小さいペプチドを標識するためには、Cy5−MESNA及びMESNA補助因子の溶液を凍結乾燥した標的に直接添加する。
通例、本発明の試薬を用いるタンパク質及び大きいポリペプチドの部位特異的標識のためには、まず標的を、標識反応に影響を及ぼさないことが知られている適当な緩衝液中に置き換える。次いで、Cy5−MESNA及びMESNAチオール補助因子を連結緩衝液中に溶解した等容の溶液をタンパク質に添加して、反応体の所望最終濃度を得る。反応生成物を室温で一晩撹拌する。高い反応体濃度に対しては反応時間を1時間未満に短縮することができ、標的ポリペプチドの安定性が問題となる場合には、標識反応を4℃で効率的に行うことができる。標識反応の完了後、ジチオトレイトール(DTT)を約50mMの最終濃度となるように添加し、所望の物質をアフィニティークロマトグラフィーで単離する。
天然の化学的連結反応及び発現タンパク質連結反応を実施する場合には、ペプチド断片の連結を助けるため、及び/又は反応体又は生成物を安定化するため、様々な変性剤、有機溶剤及び界面活性剤を反応緩衝液に添加できる。かかる試薬は、必要ならば生成物の収率を高めるため、標識反応中で使用することもできる。その例には、特に限定されないが、塩化グアニジニウム、尿素、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、トリトンX−100、オクチルグルコシド、1,6−ヘキサンジオール及びグリセロールがある。
本発明に従って誘導体化シアニン染料を用いる連結反応は、適宜7.0〜8.0のpH及び4〜37℃の範囲で変化する温度で実施できる。かかる温度範囲は本明細書中に記載した部位特異的標識に適合していると考えられる。
本方法の利点は、タンパク質系基質中に外来の標識をレジオ選択的で特異的なやり方で導入することを可能にし、かくして標識がタンパク質の生物学的機能に及ぼすことのある有害な効果を最小限に抑え得ることである。染料の過剰添加が生物学的活性を妨げる可能性がある場合には、標識の化学量論的関係を制御することが重要である。加えて、このような標識の化学量論的関係の制御が内部部位ではなく単一の末端部位に向けられるならば、これは標識化学種の生物学的有効性をさらに維持するという利益をもたらし得る。
以下の実施例及び図面を参照することで本発明をさらに詳しく説明する。図面中では、
図1は、実施例3及び4に係るチオエステル誘導体(α−D−デスチオビオチン−ε−Cy5−L−リシン−MESNA)によるGrb2SH2ドメインのN−末端システイン誘導体の標識反応から得られた生成物を示している。
実験
1.2−[(1E,3E,5E)−5−(3,3−ジメチル−1−{6−オキソ−6−[(2−スルホエチル)チオ]ヘキシル}−5−スルホ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル]−1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホ−3H−インドリウム
Figure 2005534739
無水ジメチルホルムアミド(DMF、1ml)に7−アゾベンゾトリアゾリルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyAOP、66mg、0.127mmol)を溶解した溶液中のCy(商標)5モノ酸(47mg、0.062mmol)に、無水ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(30μl、0.1724mmol)を添加し、5分間混合した。次いで、この活性化染料溶液を、DMF(2ml)及びDIEA(30μl、0.1724mmol)に2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム塩(MESNA、40mg、0.243mmol)を溶解した撹拌溶液に乾燥窒素雰囲気下で添加した。この混合物に、乾燥4Aモレキュラーシーブ(約1g、<5ミクロン、活性化粉末)を固体として添加した。乾燥窒素雰囲気下で、混合物を暗所において室温で一晩撹拌した。薄層クロマトグラフィー分析(逆相C18プレート、溶離剤水/アセトニトリル(70:30、0.1%TFA含有)は主成分(Rfthioester=0.25)を示し、微量の出発原料(Rfacid=0.12)も認められなかった。
モレキュラーシーブを濾過により除去して濾液を過剰の酢酸エチル中に滴下し、青色の固体を濾別し、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)[Phenomenex Prodigy C18カラム、20ml/分で30分間にわたり15%B〜30%B、溶離剤A=0.1%TFA/水、溶離剤B=0.1%TFA/MeCN、650nmでのUV検出]で精製した。生成物を濃青紫色の固体(40mg、0.051mmol、83%収率)として単離した。
正確な単一同位体質量:C354510は781を要求する。実測質量(Maldi Tof、LC−MS):M 781.25。δH(300MHz、d6−DMSO):8.37(t,1H)、8.36(t,1H)、7.83(d,1H)、7.82(d,1H)、7.67(dd,1H)、7.64(dd,1H)、7.36(d,1H)、7.33(d,1H)、6.61(t,1H)、6.38(d,1H)、6.28(d,1H)、4.15(m,2H)、4.08(t,2H)、3.06(m,2H)、2.63(m,2H)、2.56(t,2H)、1.64(m,2H)、1.28(t,3H,7.1)、1.40(m,2H)。λmax(abs)=647nm。(ε(HO)=230000M−1cm−1)。
2.2−[(1E,3E,5E)−5−(3,3−ジメチル−1−{6−オキソ−6−[(2−スルホエチル)チオ]ヘキシル}−5−スルホ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル]−1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホ−3H−インドリウムを用いる標識の特異性の判定
2.1 Cy5−Cys−Gly−Leu−Asp−Lys−Arg−Gly−Cys−Gly−NH の調製
i)H−Cys(Trt)−Gly−Leu−Asp(OtBu)−Lys(Boc)−Arg(Pmc)−Gly−Cys(Trt)−Gly−リンクアミド樹脂の合成
FastMoc(商標)化学を用いる市販のApplied Biosystems Model 433A自動化ペプチドシンセサイザーを使用し、全体にわたり装置製造業者の推奨手順に従ってH−Cys(Trt)−Gly−Leu−Asp(OtBu)−Lys(Boc)−Arg(Pmc)−Gly−Cys(Trt)−Gly−リンクアミド樹脂を合成した。O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)を活性化剤として用い、0.25ミリモルスケールでペプチドを合成した。
ii)H−Cys−Gly−Leu−Asp−Lys−Arg−Gly−Cys−Gly−NH
Figure 2005534739
H−Cys(Trt)−Gly−Leu−Asp(OtBu)−Lys(Boc)−Arg(Pmc)−Gly−Cys(Trt)−Gly−リンクアミド樹脂(100mg、理論添加量0.36mmol/g)を脱保護し、室温の95%トリフルオロ酢酸(TFA)/2.5%トリイソプロピルシラン(TIS)/2.5%水(3ml)中で2時間処理して固相から分離した。粗生成物を10倍過剰量の冷ジエチルエーテル中に沈殿させ、2500rpmで5分間遠心し、エーテルをデカンテーションで除去した。粗ペプチドをエーテルでさらに2回洗い、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)[Phenomenex Jupiter C18カラム、溶離剤A:0.1%TFA/水、溶離剤B:0.1%TFA/アセトニトリル、勾配:1ml/分で30分間にわたり0〜73%B、214nmでの検出]で精製した。生成物を単離して凍結乾燥することで、無色の綿毛状固体(重量21mg、60%)を得た。単一同位体質量:906.4。実測質量(LC−MS):MH 907.3、MNa 929.6。214nmでのRP−HPLC(Phenomenex Jupiter C18カラム、溶離剤A:0.1%TFA/水、溶離剤B:0.1%TFA/アセトニトリル、1ml/分で25分間にわたり5〜50%B、650nmでのUV検出)で判定して純度>95%。
iii)Cy5−Cys−Gly−Leu−Asp−Lys−Arg−Gly−Cys−Gly−NH
固体のH−Cys−Gly−Leu−Asp−Lys−Arg−Gly−Cys−Gly−NH(重量3.0mg、0.0033mmol)に、1.5%2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム塩を含む200mMリン酸塩緩衝液、200mM NaCl、pH7.2(400μl)にCy5−MESNA(3.5mg、0.0045mmol)を溶解した溶液を添加した。反応混合物をローラー上に乗せ、暗所において室温で30分間撹拌した。インキュベーション中、青色の沈殿が生じたが、アセトニトリル(40μl)を添加したところ再溶解した。
次いで、200mMリン酸塩緩衝液、200mM NaCl、pH7.2(0.5ml、0.0025mmol)中の500mM DTT(200μl)を反応混合物に添加して完全に混合し、暗所において室温でさらに30分間撹拌した。次いで、粗反応混合物をRP−HPLC[Phenomenex Jupiter C18カラム、溶離剤A:0.1%TFA/水、溶離剤B:0.1%TFA/アセトニトリル、勾配:4ml/分で30分間にわたり20〜35%B、650nm及び214nmでの検出]で精製した。生成物を単離し、青色の綿毛状固体として凍結乾燥した(650nmでのUV/VISで測定して1.6mg、50%収率、650nmでのRP−HPLCで判定して純度98%)。単一同位体質量:C671011618は1545.636を要求する。実測値(LC−MS):M 1545.7。
2.2 標識ペプチドの特性決定
i)Cy5−Cys−Gly−Leu−Asp−Lys−Arg−Gly−Cys−Gly−NH に関するエルマン試験
Cy5−Cys−Gly−Leu−Asp−Lys−Arg−Gly−Cys−Gly−NHの試料を、100mMリン酸ナトリウム緩衝液、1mM EDTA、pH7.27(緩衝原液)に溶解して、650nmでのUV/VISで測定して0.3μMペプチド原液を得た。
0.3μMペプチド原液(40μl)及び100mMリン酸ナトリウム緩衝液、1mM EDTA、pH7.27(50μl)中の10mM 5,5′−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)を緩衝原液(910μl)中で混合して緑色の溶液を得た。(TNB2−の生成に原因する)412nmでの吸光度をDTNBブランク[緩衝原液(950μl)中の10mM DTNB原液(50μl)]に対して記録した。TNB2−の既知モル吸収係数(14150M−1cm−1)を用いてチオール濃度を求めたところ、ペプチド濃度の約2倍の655μMであって、2つの遊離チオール基が確認された。[SH]=[A412nm(試料)−A412nm(基準材料)/ε(TNB2−
ii)Cy5−Cys−Gly−Leu−Asp−Lys−Arg−Gly−Cys−Gly−NH の酵素消化
10%アセトニトリルを含むTRIS緩衝液、pH8.0(100μl)にCy5−Cys−Gly−Leu−Asp−Lys−Arg−Gly−Cys−Gly−NH(650nmでのUV/VISで測定して180μg)を溶解した溶液に、TRIS緩衝液、pH8.0(70μl)中のAsp−Nを添加した。反応混合物を暗所において室温で4時間撹拌した。反応混合物を、TRIS緩衝液、pH8.0(55μl)中の250mMトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンHCL(TCEP)で30分間処理した。還元した反応混合物を水中の0.1%TFAで1:5に希釈し、逆相HPLC[Phenomenex Jupiter C18、溶離剤A:0.1%TFA/水、溶離剤B:0.1%TFA/アセトニトリル、1ml/分で30分間にわたり5〜50%B、214nmでのUV、650nm]で精製した。反応混合物の2種の成分は、Cy5−Cys−Gly−Leu−OH(単一同位体質量:C446011は930.3451を要求する。実測質量(MALDI Tof):M 930.0)及びH−Asp−Lys−Arg−Gly−Cys−Gly−NH(単一同位体質量:C234311Sは633.3016を要求する。実測質量(MALDI Tof):M 633.0)として同定された。
3.α−D−デスチオビオチン−ε−Cy5−L−リシン−MESNA[N −(6−{(2Z)−2−[(2E,4E)−5−(1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホ−3H−インドリウム−2−イル)ペンタ−2,4−ジエニリデン]−3,3−ジメチル−5−スルホ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−1−イル}ヘキサノイル)−N −(6−{[6−(5−メチル−2−オキソイミダゾリジン−4−イル)ヘキサノイル]アミノ}ヘキサノイル)リシルチオエタン−2−スルホン酸]の調製
Figure 2005534739
3.1 α−Fmoc−ε−Cy5−L−リシン−OH[2−[(1E,3E)−5−(1−{6−[(5−カルボキシ−5−{[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]アミノ}ペンチル)アミノ]−6−オキソヘキシル}−3,3−ジメチル−5−スルホ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン)−1,3−ペンタジエニル]−1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホ−3H−インドリウム塩]の調製
Cy5モノ遊離酸カリウム塩(Amersham Pharmacia Biotech Ltd)(450mg、0.65mmol)及びDIEA(720μl)を無水ジメチルスルホキシド(18ml)に溶解した。これにO−(N−スクシンイミジル)−N,N,N′,N′−ビス(テトラメチレン)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(666mg、1.6mmol)を添加し、反応混合物を室温で1時間撹拌した後、TLC(RPC18、1:1 メタノール:水)によれば無視できる量の出発原料が残留していた。反応混合物をジエチルエーテル中にゆっくりと注入して生成物(Cy5モノNHSエステル)を沈殿させ、これを濾別し、酢酸エチルで洗い、真空中で乾燥した。生成物を無水ジメチルスルホキシド(18ml)に再溶解し、DIEA(720μl)を添加した。Fmoc−リシン−OH(360mg、0.98mmol)をリン酸塩緩衝液(pH7.4)(9ml)とジメチルスルホキシド(9ml)の混合物中に懸濁した。懸濁液をCy5NHSエステルの溶液にゆっくりと添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。TLC(RPC18、2:3 メタノール:水)は、出発原料の消失及び新しい生成物スポットの生成を示した。
生成物をHPLC(Dynamax C18カラム(50×4.14cm)、流量25ml/分、80分間にわたり20〜80%Bの勾配(溶離剤A=水中の0.1%TFA、溶離剤B=アセトニトリル中の0.1%TFA)、650nmでの検出)で精製した。所望の生成物を含む画分をプールし、溶媒の大部分を減圧下で除去し、残留物を凍結乾燥した。生成物(α−Fmoc−ε−Cy5−L−リシン−OH)を綿毛状の藍色固体(487mg、74%)として得た。MS(MALDI TOF)実測値:1008(M)[理論値(C546411):1009]。H NMR(200MHz、DDMSO):1.27(t,3H,CH)、1.35(m,4H,CH,CH)、1.55(m′s,4H,CH,CH)、1.7(s,12H,(CH))、1.78(m,2H,CH)、2.05(t,2H,CH)、3.0(m,2H,CH)、3.92(m,1H,CHアミノ酸)、4.11(m,4H,N−CH,NCH)、4.27(m,3H,O−CH,CHフルオレニル)、6.3(d,2H,α,α′メチン),6.59(t,1H,γメチン)、7.28〜7.48(m′s,6H,Fmoc及びインドールAr)、7.65(d,2H,フルオレニルAr)、7.73(d,2H,フルオレニルAr)、7.85(s,2H,インドールAr)、7.9(d,2H,インドールAr)、8.38(t,2H,β,β′メチン)。
3.2 ε−Cy5−L−リシン−OH[N −(6−{(2E)−2−[(2E,4E)−5−(1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホ−3H−インドリウム−2−イル)ペンタ−2,4−ジエニリデン]−3,3−ジメチル−5−スルホ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−1−イル}ヘキサノイル)リシン]の調製
NMP中20%ピペリジンの混合物(2ml)中でα−Fmoc−ε−Cy5−L−リシン−OH(100mg、0.1mmol)を脱保護した。TLC(RP C18、1:1 MeOH:水)は、出発原料のスポット(rf=0.46)に比べて新しい生成物スポット(rf=0.92)の生成を示した。ピペリジンを減圧下で除去し、反応混合物をジエチルエーテル中に注入することで染料を沈殿させた。生成物を濾別し、ジクロロメタン、次いで酢酸エチルで洗うことで、黄色のFmoc由来副生物を除去した。生成物を水に溶解し、濾過し、次いでHPLC(Vydac Protein and Peptide C18カラム、10ml/分で45分間にわたり0〜50%B、溶離剤A=0.1%TFA/水、溶離剤B=0.1%TFA/MeCN、215nmでの検出)で精製した。所望の生成物を含む画分を合わせ、減圧下で溶媒を除去して青色の残留物を得た。残留物を酢酸エチルでトリチュレートし、得られた固体を40℃で真空乾燥した。生成物(ε−Cy5−L−リシン−OH)を濃青色の固体(43mg、48%)として得た。分析用HPLC AKTA分析:Phenomenex C18カラム、1ml/分で30分間にわたり0〜50%B、溶離剤A=0.1%TFA/水、溶離剤B=0.1%TFA/MeCN、650nmでの検出、rt=20.22分。MS(MALDI TOF)実測値:785(M)[理論値(C3953):785]。H NMR(300MHz、DDMSO):1.26(t,3H,CH)、1.52(m,4H,CH,CH)、1.62(m,4H,CH,CH)、1.69(s,12H,(CH))、2.02(m,2H,CH)、2.92(m,2H,CH)、3.85(m,1H,CHアミノ酸)、4.10(m,NCH,NCH)、6.29(d,1H,αメチン)、6.34(d,1H,α′メチン)、6.58(t,1H,γメチン)、7.32(m,2H,インドールAr)、7.82(d,2H,インドールAr)、8.04(m,3H,NH )、8.37(t,2H,β,β′メチン)。
3.3 D−デスチオビオチンアミドカプロン酸の調製
D−デスチオビオチン(250mg、1.17mmol)を無水ジメチルスルホキシド(2ml)に溶解した。この溶液にPyAOP(610mg、1.17mmol)及びDIEA(200μl、1.15mmol)を添加した。混合物を窒素下において室温で3時間撹拌した後、6−アミノカプロン酸(153mg、1.17mmol)及び追加量のDIEA(200μl、1.15mmol)を添加した。反応混合物をさらに4時間撹拌した。TLC(RP C18、1:2 MeOH:水、シンナムアルデヒド染色による検出)は、出発原料(rf=0.76)に比べて新しい生成物スポット(rf=0.63)の生成を示した。反応混合物を過剰のジエチルエーテル中に注入して褐色の油を得た。油を酢酸エチルでトリチュレートしてオフホワイトの固体を得た。生成物を濾別し、HPLC[Vydac Protein and Peptide C18カラム、10ml/分で10分間にわたり0〜50%B、溶離剤A=0.1%TFA/水、溶離剤B=0.1%TFA/MeCN、215nmでの検出]で精製した。所望の生成物を含む画分をプールし、減圧下で溶媒を除去した。残留物を酢酸エチルでトリチュレートして白色の固体を得た。生成物を濾別し、40℃で減圧乾燥した。生成物(D−デスチオビオチンアミドカプロン酸)を白色の固体(48mg、12.5%)として得た。MS(MALDI TOF)実測値:327(M)[理論値(C1629):327]。H NMR(300MHz、DDMSO):0.96(d,3H,CH)、1.25(m,6H,CH,CH,CH)、1.34(m,4H,CH,CH)、1.48(m,4H,CH,CH)、2.03(m,2H,C(O)CH)、2.60(m,2H,C(O)CH)、3.01(m,2H,NHCH)、3.47(m,1H,CH)、3.60(m,1H,CH)、6.11(s,1H,NH)、6.29(s,1H,NH)、7.71(s,1H,NH)。
3.4 D−デスチオビオチンアミドカプロン酸N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルの調製
D−デスチオビオチンアミドカプロン酸(48mg、0.147mmol)をDMF(1ml)に溶解し、N,N,N′,N′−ビス(テトラメチレン)−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HSPyU)(90mg、0.21mmol)及びDIEA(40μl、0.23mmol)を添加した。反応混合物を窒素下において室温で6時間撹拌したところ、TLC(RP C18、1:2 MeOH:水、シンナムアルデヒド染色による物質検出)は、出発原料(rf=0.68)に比べて基線位置に新しい生成物の生成を示した。反応混合物をジエチルエーテル中に注入して褐色のガムを得た。上澄み液をデカンテーションで除去し、ガムを再びジエチルエーテルで処理した。固体は生じなかった。ガムを減圧下で乾燥し、62mgの理論収量を仮定して、生成物(D−デスチオビオチンアミドカプロン酸N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル)を次の染料結合反応で直接使用した。
3.5 α−D−デスチオビオチン−ε−Cy5−L−リシン−OH[N −(6−{(2Z)−2−[(2E,4E)−5−(1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホ−3H−インドリウム−2−イル)ペンタ−2,4−ジエニリデン]−3,3−ジメチル−5−スルホ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−1−イル}ヘキサノイル)−N −(6−{[6−(5−メチル−2−オキソイミダゾリジン−4−イル)ヘキサノイル]アミノ}ヘキサノイル)リシン]の調製
ε−Cy5−L−リシン−OH(43mg、0.048mmol)、D−デスチオビオチンアミドカプロン酸N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(62mg、0.146mmol)及びDIEA(80μl、0.45mmol)をDMF(2ml)中で一緒に3時間撹拌した。TLC(RP C18、1:1 MeOH:水)は、出発原料のスポットの直下に新しい生成物スポット(rf=0.79)の生成を示した。生成物をジエチルエーテル(200ml)中に沈殿させ、次いで濾別した。この物質がH NMRで純粋とわかるまで、HPLC[Vydac Protein and Peptide C18カラム、溶離剤A=0.1%TFA/水、溶離剤B=0.1%TFA/MeCN、様々な勾配、215nmでの検出]で繰返し精製した。分析用HPLC AKTA分析:Phenomenex C18カラム、1ml/分で30分間にわたり0〜50%B、溶離剤A=0.1%TFA/水、溶離剤B=0.1%TFA/MeCN、650nmでの検出、rt=22.04分。MS(MALDI TOF)実測値:1094(M)[理論値(C558012):1094]。
3.6 α−D−デスチオビオチン−ε−Cy5−L−リシン−MESNA[N −(6−{(2Z)−2−[(2E,4E)−5−(1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホ−3H−インドリウム−2−イル)ペンタ−2,4−ジエニリデン]−3,3−ジメチル−5−スルホ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−1−イル}ヘキサノイル)−N −(6−{[6−(5−メチル−2−オキソイミダゾリジン−4−イル)ヘキサノイル]アミノ}ヘキサノイル)リシルチオプロパン−3−スルホン酸]の調製
α−D−デスチオビオチン−ε−Cy5−L−リシン−OH(10mg、8.8μmol)を無水ジメチルスルホキシド(2ml)に溶解し、PyAOP(10mg、19.2μmol)、MESNA(5mg、0.30mmol)及びDIEA(10μl、0.06mmol)を添加し、反応混合物を窒素下で4時間撹拌した。反応混合物をRP−HPLC[Vydac Protein and Peptide C18カラム、10ml/分で45分間にわたり15〜40%B、溶離剤A=0.1%TFA/水、溶離剤B=0.1%TFA/MeCN、215nmでの検出]で精製した。生成物を含む画分を合わせ、減圧下で溶媒の大部分を除去し、残留物を凍結乾燥した。生成物を綿毛状の青色固体(4mg、37%)として得た。TLC(RP C18、1:1 水:アセトニトリル):rf=0.76。分析用HPLC AKTA分析:Phenomenex C18カラム、1ml/分で30分間にわたり0〜50%B、溶離剤A=0.1%TFA/水、溶離剤B=0.1%TFA/MeCN、650nmでの検出、rt=21.04分。λmax=648nm(PBS緩衝液)。MS(MALDI TOF)実測値:1219(MH)[理論値(C578414):1218]。
4.タンパク質の標識及び親和精製
4.1 α−D−デスチオビオチン−ε−Cy5−L−リシン−MESNAによるN−末端システインGrb2SH2の標識及び精製
N−末端システインGrb2SH2(N−Cys−Grb2SH2)(PBS緩衝液、pH7.2中で200μM)(200μl)にα−D−デスチオビオチン−ε−Cy5−L−リシン−MESNA(反応緩衝液中で2mM)(200μl)を添加した。N−Cys−Grb2SH2は組換え技術を用いて調製した。反応緩衝液は、塩化ナトリウム(200mM)及び4%MESNAを含むリン酸塩緩衝液(200mM)、pH7.2からなっていた。反応混合物を、光から保護するためにホイルで包み、室温で12時間放置した。次いで、dl−ジチオトレイトール(最終濃度60mM)で反応を停止した。高速脱塩カラム、PBS緩衝液(pH7.4、2ml/分)の溶離剤及び280nmでの検出を用いるFPLCで、未反応染料を標識/非標識タンパク質から分離した。タンパク質画分を合わせ、デスチオビオチン−ε−Cy5−L−リシン親和性プローブ標識タンパク質をストレプトアビジンビーズ(PIERCE Ultralink(商標)ストレプトアビジン)に結合した。ビーズをPBS緩衝液及び結合緩衝液(500mM NaClを含むPBS緩衝液)の両方で激しく洗った。冷ビオチン(1.6mM)を添加することで、生成物(α−D−デスチオビオチン−ε−Cy5−L−Lys−Cys−Grb2SH2)をストレプトアビジンビーズから抽出した。数回の抽出操作が必要であった。この物質を透析(PIERCE Slide−a−lyser(商標)ミニ透析ユニット、7000mwco)でさらに精製することで、試料から遊離ビオチンを除去した。生成物を、下記の対照品と共に、SDS PAGEで分析した(図1参照)。
Figure 2005534739
Cy5蛍光に関するパラメーターを用いて蛍光標識を含む画分を検出するタイフーン(Typhoon)イメージャーを用いてゲルをイメージ化した(図1A)。次いで、ゲルをクーマシーブルー染色で染色することでタンパク質含有画分を決定した(図1B)。SDS PAGEゲルは、(a)非標識タンパク質(XA因子及びN−Cys−Grb2SH2の両方)がストレプトアビジンビーズに結合しなかったこと(図1A及び1B、カラム5)(濃いタンパク質染色)、並びに(b)冷ビオチンを添加することで生成物がストレプトアビジンビーズから除去されたこと(図1A及び1B、カラム7及び8)(タンパク質染色及びCy5蛍光の両方)を示している。
実施例3及び4に係るチオエステル誘導体(α−D−デスチオビオチン−ε−Cy5−L−リシン−MESNA)によるGrb2SH2ドメインのN−末端システイン誘導体の標識反応から得られた生成物を示している。

Claims (19)

  1. カルボン酸チオエステル基及びチオエステルとの共有結合反応に適した基から選択される1以上の標的結合基を含有する、シアニン染料又はその誘導体を含んでなる化合物であって、当該化合物がそれに共有結合した親和性標識を含むことを特徴とする化合物。
  2. 下記式(I)を有する、請求項1記載の化合物。
    Figure 2005534739
    式中、
    Dはシアニン染料及びその誘導体から選択される染料であり、
    Bは親和性標識であり、
    Fはカルボン酸チオエステル基及び1,2−アミノチオール基から選択される標的結合基からなり、
    MはFとの結合に適合した基であり、
    及びLは各々独立に、炭素原子から選択される1〜40の結合原子を含む基であって、適宜−NR′−、−O−、−CH=CH−、−CO−NH−及びフェニレニル基(式中、R′は水素及びC〜Cアルキルから選択される。)から選択される1以上の基を含み得る基からなる。
  3. 及びLの各々が2〜30の原子を含む、請求項2記載の化合物。
  4. 及びLが次式の基から独立に選択される、請求項2記載の化合物。
    −{(CHR′)−Q−(CHR′)}
    式中、Qは−CHR′−、−NR′−、−O−、−CH=CH−、−Ar−及び−CO−NH−から選択され、R′は水素又はC〜Cアルキルであり、pは0〜5であり、rは1〜5であり、sは1又は2である。
  5. Qが−CHR′−、−O−及び−CO−NH−(式中、R′は前記に定義した通りである。)から選択される、請求項4記載の化合物。
  6. 前記親和性標識がビオチン及びデスチオビオチンから選択される、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の化合物。
  7. 前記親和性標識がHis標識、イミノジ酢酸及びニトリロトリ酢酸から選択される、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の化合物。
  8. 標的結合基Fが次式のカルボン酸チオエステルである、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の化合物。
    Figure 2005534739
    式中、L′は単結合であるか、或いは炭素原子から選択される1〜30の結合原子を含み、適宜−NH−、−O−及び−CO−NH−から選択される1以上の基を含む基であり、R″は適宜スルホネートで置換され得るC〜Cアルキル、C〜C10アリール又はC〜C15アラルキルであるか、或いは−(CH)−CONHである。
  9. 標的結合基Fが次式の1,2−アミノチオール基である、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の化合物。
    Figure 2005534739
    式中、L′は前記に定義した通りである。
  10. 当該化合物が下記式(II)を有する、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の化合物。
    Figure 2005534739
    式中、
    基R及びRはZ環構造に結合していると共に、基R及びRはZ環構造に結合しており、
    nは1〜3の整数であり、
    及びZは、1つの環又は2つの縮合環を含む芳香族又はヘテロ芳香族環系を完成するために必要な原子を独立に表し、各環は炭素原子から選択される5又は6の原子を有すると共に、適宜酸素、窒素及び硫黄から選択される2以下の原子を有し、
    X及びYは同一であるか又は異なっており、>CR、酸素、硫黄、−CH=CH−、>N−W(式中、Nは窒素であり、Wは水素及び基R10から選択される。)から選択され、
    基R、R、R、R、R、R、R、R及びR10の1以上は次式の基であり、
    Figure 2005534739
    (式中、B、F、M、L及びLは前記に定義した通りである。)
    基Rは水素及び非置換又はアリール置換であり得るC〜Cアルキルから独立に選択されるか、或いは2以上のRが次式の基と一緒になって、Rで置換されると共に、適宜−O−、−S−及び>NR(式中、Rは前記に定義した通りである。)から選択されるヘテロ原子を含み得る炭化水素環系を形成し、
    Figure 2005534739
    (式中、nは前記に定義した通りである。
    残りの基R、R、R及びRは水素、ハロゲン、アミド、シアノ、ニトロ、モノ−又はジ−C〜Cアルキル置換アミノ、カルボニル、カルボキシル、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリール、ヘテロアリール、アラルキル及び基−(CH)−Y(式中、Yはスルホネート、スルフェート、ホスホネート、ホスフェート及び第四アンモニウムから選択され、mは0又は1〜6の整数である。)からなる群から独立に選択され、
    残りの基R、R及びR10は独立にC〜Cアルキルであり、
    残りの基R及びRは水素、C〜C10アルキル、基−(CH)−Y(式中、Y及びmは前記に定義した通りである。)、及び非置換であるか又は2以下のニトロ基で置換され得るベンジルから独立に選択される。)
  11. 当該化合物が下記式(III)を有する、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の化合物。
    Figure 2005534739
    式中、
    基R12、R13、R14及びR15はX及びYを含む環に結合しているか、或いは適宜Z及びZ環構造の原子に結合しており、
    及びZは、1つの環又は2つの縮合環を含む芳香族又はヘテロ芳香族環系を完成するために必要な原子を独立に表し、各環は炭素原子から選択される5又は6の原子を有すると共に、適宜酸素、窒素及び硫黄から選択される2以下の原子を有し、
    X及びYは同一であるか又は異なっており、>CR、酸素、硫黄、−CH=CH−、>N−W(式中、Nは窒素であり、Wは水素及び基R10から選択される。)から選択され、
    AはO及びNR16(式中、R16は次式の置換アミノ基である。)から選択され、
    Figure 2005534739
    基R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R17及びR18の1以上は次式の基であり、
    Figure 2005534739
    (式中、B、F、M、L及びLは前記に定義した通りである。)
    残りの基R11、R12、R13、R14及びR15は水素、ハロゲン、アミド、シアノ、ニトロ、モノ−又はジ−C〜Cアルキル置換アミノ、カルボニル、カルボキシル、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリール、ヘテロアリール、アラルキル及び基−(CH)−Y(式中、Yはスルホネート、スルフェート、ホスホネート、ホスフェート及び第四アンモニウムから選択され、mは0又は1〜6の整数である。)からなる群から独立に選択され、
    残りの基R、R及びR10は独立にC〜Cアルキルであり、
    残りの基R17は水素、C〜Cアルキル及びアリールから選択され、残りの基R18はC〜Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、炭素原子数2〜7のアシル基、及びチオカルバモイル基から選択される。
  12. 及びZがフェニル、ピリジル、ナフチル、キノリニル及びインドリル部分からなる群から独立に選択される、請求項10又は請求項11記載の化合物。
  13. 及びZがフェニル及びナフチル部分から選択される、請求項10又は請求項11記載の化合物。
  14. N−末端システインを含むか、又はN−末端システインを含むように誘導体化された対象タンパク質を標識するための方法であって、
    i)前記タンパク質を含む液体に下記式(I)の化合物を添加し、
    Figure 2005534739
    (式中、
    Dはシアニン染料及びその誘導体から選択される染料であり、
    Bは生体親和性標識であり、
    Fはカルボン酸チオエステル基及び1,2−アミノチオール基から選択される標的結合基からなり、
    MはFとの結合に適合した基であり、
    及びLは各々独立に、炭素原子から選択される1〜40の結合原子を含む基であって、適宜−NR′−、−O−、−CH=CH−、−CO−NH−及びフェニレニル基(式中、R′は水素及びC〜Cアルキルから選択される。)から選択される1以上の基を含み得る基からなる。)
    ii)前記タンパク質を標識するのに適した条件下で前記化合物を前記タンパク質と共にインキュベートする
    ことを含んでなる方法。
  15. 及びLの各々が2〜30の原子を含む、請求項14記載の化合物。
  16. 及びLが次式の基から独立に選択される、請求項14記載の方法。
    −{(CHR′)−Q−(CHR′)}
    式中、Qは−CHR′−、−NR′−、−O−、−CH=CH−、−Ar−及び−CO−NH−から選択され、R′は水素又はC〜Cアルキルであり、pは0〜5であり、rは1〜5であり、sは1又は2である。
  17. Qが−CHR′−、−O−及び−CO−NH−(式中、R′は前記に定義した通りである。)から選択される、請求項16記載の方法。
  18. さらに、染料で標識された対象タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーで分離及び/又は精製することを含む、請求項14乃至請求項17のいずれか1項記載の方法。
  19. 前記対象タンパク質が抗体、抗原、タンパク質、ペプチド、微生物材料、細胞及び細胞膜から選択される、請求項14乃至請求項18のいずれか1項記載の方法。
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