JP2005527510A - 癌の治療において一酸化窒素模倣体を使用するための製剤および方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は悪性細胞の表現型、細胞、腫瘍および/または疾患を抑制、治療および予防するための方法および製剤に関する。低用量によるなどの一酸化窒素模倣体の投与は、悪性細胞の表現型、細胞、腫瘍および/または疾患が抑制または予防されるように、細胞における一酸化窒素媒介シグナル伝達を増強、回復または維持するために十分である。これらの方法および製剤は動物における癌の治療および予防において特に有用である。

Description

関連出願の相互参照
本発明出願は2002年3月6日に出願された米国仮出願第60/362,969号、および2002年3月7日に出願された第60/362,20号、および、2001年10月25日に出願された米国出願第10/042,039号の利益を請求し、前記出願は参照として本明細書に組み入れられる。米国出願第10/042,039号は2001年4月26日出願の米国出願第09/842,547号の継続出願であり、これは2001年3月21日に出願された米国仮出願第60/277/469号および2000年4月26日出願の第60/199,757号の利益を請求し、前記出願は参照として本明細書に組み入れられる。
発明の技術分野
本発明は、悪性細胞表現型、細胞および/または疾患を阻害、処置および防止する方法ならびに処方に関する。本発明者らは、低酸素症および低窒素症が細胞表現型に影響を及ぼす機構は、必ずしも低酸素によって媒介されるのではなく、むしろ一酸化窒素を介するシグナル伝達(signaling)の欠損によることを今回発見した。従って本明細書において明らかにされるように、一酸化窒素模倣体の投与(例えば低用量)は、細胞の一酸化窒素媒介シグナル伝達を増加、回復または維持し、その結果悪性細胞表現型、細胞、腫瘍および/または疾患が阻害または防止されるのに十分である。従って本明細書において、悪性細胞表現型、細胞、腫瘍および/または疾患を阻害し、および/または悪性細胞表現型、細胞、腫瘍および/または疾患の発生を防止するが、NO模倣体の望ましくない作用の発生は低下または回避するようなレベルで、低用量一酸化窒素模倣体を細胞に送達するための処方およびこれらの処方を使用する方法が提供される。これらの方法および処方は、動物における癌の治療および防止に特に有用である。
発明の背景
低酸素症または細胞における正常な生理レベル以下の酸素圧は、細胞の生理学的、更には病理学的変化を生じ、その変化は示差的遺伝子発現に関連する。例えば低酸素症は、血管作動性物質の転写により調節された発現の変調または血管および周囲組織の再構築を含む様々な方法で、インビボおよびインビトロにおいて、内皮細胞の生理に影響を及ぼす(Faller, D.V.、Clin. Exp. Pharmacol. and Physiol.、26:74-84(1999))。固形腫瘍における低酸素症は、癌細胞をX線照射により殺傷されることから守り、かつある種の抗癌剤に対する抵抗性をもたらすことが示されている。更に低酸素症は、悪性進行を促進しかつ転移を増大すると考えられる(Brown, J.M.、Cancer Res.、59:5863-5870(1999))。
低酸素濃度は多くの細胞型において侵襲性を増強することがわかっており、急速に成長する腫瘍のコア部のような生物学的環境における侵襲性の表現型を促進すると考えられる。本発明者らの実験室における研究によれば、この作用は一酸化窒素(NO)の生産の低減を介して媒介されることが示唆された。例えば、内因性NO生産(低酸素条件下またはNOSインヒビターの存在下に起こる)の抑制はウロキナーゼ受容体(uPAR、前侵襲性分子)の発現および転移の両方をアップレギュレートすることがわかっている。更にまた、(uPAR)の低酸素性アップレギュレーションおよび転移は極めて低濃度のNO模倣体の添加により完全に打ち消されている。
一酸化窒素は、様々な生体プロセスに関わっている。例えば一酸化窒素は、内皮由来血管弛緩および神経伝達に寄与する生物学的メッセンジャー分子である。これらの研究者らが高レベルとみなすような一酸化窒素は、マクロファージの抗腫瘍作用および抗菌作用のメディエーターとしても公知である。一酸化窒素は、マトリックスメタロプロテアーゼ-9およびメタロプロテアーゼの組織インヒビターのサイトカイン誘導型発現に対し変調性の役割を果たすことも明らかにされている(Eberhardtら、Kidney International、57:59-69(2000))。
可溶性のグアニリルシクラーゼ(sGC)はNOの最も明らかにされている下流の標的である。しかしながら、NOは多面発現性の分子であることから、NOの作用を媒介する別の分子標的が存在する可能性がある。例えばNOが現在知られていない機序(成長、増殖、転移、アポトーシスなど様々な細胞の機能など)を介して遺伝子発現を減衰する可能性が極めて高い。ヘテロ二量体タンパク質、即ち、sGCがグアノシン5’-トリホスフェート(GTP)から環状グアノシンモノホスフェート(cGMP)への変換を触媒する。一酸化窒素はsGCのヘム部分に結合してその活性化をもたらす多くのコンホーメーション変化を誘導する。cGMPはNOがそのシグナルを下流のエフェクターに伝達できるようにする強力な第2のメッセンジャーである。上昇したcGMPの濃度は血管の平滑筋の生育と逆の相関を有しており、血小板の凝集並びに好中球の内皮細胞への接着を防止することがわかっている。更にまた、cGMPの濃度は遺伝子の調節に関与している。cGMP類縁体(8-Br-cGMP)はVEGFの低酸素誘導を防止することがわかっている。NOによるエンドセリン-1(ET-1)の内因性の抑制もまたグアニル酸シクラーゼ/cGMP-依存性の機序を通じて媒介される。
NO調節遺伝子発現を媒介しうる数種のcGMP標的タンパク質が存在する。これらにはcGMP依存性タンパク質キナーゼ(PKG)、cGMP活性化ホスホジエステラーゼ(PDE)およびcGMPゲートイオンチャンネルおよび特定の条件下ではcAMP依存性タンパク質キナーゼが含まれる。これらのうち、PKGがcGMPの細胞内作用の大部分に関与していると考えられている。PKGはcGMP結合により選択的に活性化されるセリン/スレオニンタンパク質キナーゼである。活性化により、PKGは多くの細胞内標的をホスホリル化し、しばしば遺伝子発現を変化させる。例えばPKGは、それがAP-1のような因子および血清応答エレメントを活性化することを通じて、種々の遺伝子の転写をモジュレートすることがわかっている。同様にIdrissらはPKG依存性の機序によりc-fosプロモーターが活性化されることを示している。
臨床および実験データが、一酸化窒素は、固形腫瘍の増殖および進行を促進することにおいて役割を果たしていることを指摘している。例えば、誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)による一酸化窒素生成は、前立腺癌(Klotzら、Cancer; National Library of Medicine, MDX Health Digest、82(10):1897-903(1998))に加え、結腸腺癌および乳腺癌(Lala, P.K.およびOrucevic, A.、Cancer and Metastasis Reviews、17:91-106(1998))の発生に関連している。加えて一酸化窒素は、肺癌、特に腺癌の代謝および挙動において重要な役割を果たすことが示唆されている(Fujimotoら、Jpn. J. Cancer Res、88:1190-1198(1997))。実際、これらの研究者らが低レベル一酸化窒素と称するものを生成するかまたはこれに曝露された腫瘍細胞、もしくは一酸化窒素が媒介した損傷に抵抗性を示すことが可能な腫瘍細胞は、それらの生存上の利点のためにクローン選択を受けることが示唆されている(Lala, P.K.およびOrucevic, A.、Cancer and Metastasis Review、17:91-106(1998))。これらの著者は、これらの腫瘍細胞は、増殖、浸潤および転移の促進のために、ある種の一酸化窒素媒介型機構を利用することを示し、かつ一酸化窒素阻害薬は、ある種のヒト癌の治療において有用であることを提唱している。更に腫瘍由来の一酸化窒素は、ヒトを含む動物において腫瘍の血管新生に加え、ある種の腫瘍の浸潤を促進することを示す証拠もある(Lala, P.K.、Cancer and Metastasis Reviews、17:1-6(1998))。
しかし一酸化窒素は、低酸素症により誘導された血管収縮物の生成を逆行することが報告されている(Faller, D.G.、Clinical and Experimental Pharmacology and Physiology、26:74-84(1999))。加えて一酸化窒素供与体であるニトロプルシドナトリウム、S-ニトロソ-L-グルタチオンおよび3-モルホリノシドノニミンは、マイクロモル領域で(IC50は、各々、7.8、211および490μM)、低酸素状態で培養されたHep3B細胞、ヒト肝癌細胞株において転写因子である低酸素症誘導因子-1により制御された適応性のある細胞反応を抑制することが明らかにされている(Sogawaら、Proc. Natl Acad. Sci. USA、95:7368-7373(1998))。一酸化窒素供与体であるニトロプルシドナトリウム(SNP;150μM)は更に、血管内皮細胞増殖因子、正常な血管発生、ならびに癌および虹彩および網膜の血管新生のような病原性血管形成性疾患に必要な内皮細胞分裂促進因子の低酸素症誘導性の発現を低下することが明らかにされている(Ghisoら、Investigative Ophthalmology & Visual Science、40(6):1033-1039(1999))。これらの実験において、150μM SNPは、不死化されたヒト網膜上皮細胞において少なくとも24時間、低酸素症が誘導したVEGF mRNAレベルを完全に抑制することが明らかにされた。
高レベルの一酸化窒素がある種の細胞において誘導された場合、これは細胞分裂停止およびアポトーシスを生じる。例えばXieらは、利用できる(exploitable)現象であるはずの高レベルの一酸化窒素への曝露(およそ75μM亜硝酸塩を生成;Xieらの論文図5A参照)が、マウスK-1735黒色腫細胞の死滅を促進する(Xieらの論文図6Aおよび6B参照)ことを明らかにしている(J. Exp. Med.、181:1333-1343(1995))。加えて国際公開公報第93/20806号は、水溶液中に一酸化窒素を放出することが可能であるスペルミン-ビス(一酸化窒素)付加一水和物500μMなどの化合物へ細胞を曝露することにより細胞の分裂停止または細胞毒性を誘導する方法を開示している。これらの化合物は、腫瘍細胞の治療に加え、駆虫、抗真菌および抗菌治療に有用であると考えられている。大用量の一酸化窒素放出化合物が投与され、活性化合物を作用させるような時間をかけ、その後一酸化窒素捕捉剤のような適当な試薬がこの活性化合物を失活させかつ非特異的損傷を停止するために個体に投与されるような、メガ投与計画の採用が示唆されている。国際公開公報第93/20806号の14頁25〜30行には、3-(n-プロピルアミノ)プロピルアミン-ビス(一酸化窒素)付加物、ジエチルアミン-ビス(一酸化窒素)付加体のナトリウム塩、イソプロピルアミン-ビス(一酸化窒素)付加体のナトリウム塩、トリオキソ二硝酸ナトリウム(II)一水和物、およびN-ニトロソヒドロキシルアミン-N-スルホネートは、最高濃度500μMまで、細胞生存度には有意には作用しないと記載されている。
米国特許第5,840,759号、米国特許第5,837,736号、および米国特許第5,814,667号には、腫瘍の低酸素状態の細胞を放射線に対して増感するために一酸化窒素放出化合物をmg/kg量使用する方法を開示されている。これらの特許は更に、非癌性細胞または組織を放射線から保護し、癌性細胞を化学療法剤に対して増感し、および非癌性細胞または組織を化学療法剤から保護するために、同じ一酸化窒素放出化合物をmg/kgレベルで使用する方法も開示している。これらの方法において使用される化合物は、酸素を要求することなく生理条件下で自然発生的に一酸化窒素を放出する。これらの特許は、治療前約15〜約60分間の一酸化窒素放出化合物の投与も開示している。投与される一酸化窒素放出化合物の典型的用量は、体重1kg当り1種以上の一酸化窒素放出化合物を約0.1〜約100mgであることが示唆されている。MCF7乳癌細胞およびV79繊維芽細胞のインビトロにおけるメルファラン、チオテパ、マイトマイシンC、SR4233およびシスプラチンに対する感受性を増大することが示されている一酸化窒素放出化合物DEA/NOおよびPAPA/NOの濃度はミリモル領域であるのに対し、DEA/NOの70mg/kgは、インビボ KHT腫瘍モデルにおいて化学療法剤メルファランを投与されたマウスの生存を延長することが示された。
米国特許第5,700,830号および国際公開公報第96/15781号は、動物へ一酸化窒素放出N202官能基を有する一酸化窒素放出化合物を投与することによる、動物における癌性細胞と非癌性細胞との間の接着を阻害する方法を開示している。しかし研究は、管外遊出につながる、血管壁への癌細胞接着およびそれに沿った広がりは、転移の必須事象ではないことを指摘している(Morrisら、Exp. Cell. Res.、219:571-578(1995))。
国際公開公報第98/58633号は、一酸化窒素生成の低下または一酸化窒素作用の減弱に関連した血管状態を緩和するためのマイクロ用量の一酸化窒素療法を開示している。
本発明は悪性細胞の表現型、細胞、腫瘍および/または疾患の抑制、治療ならびに予防のために、一酸化窒素模倣体を投与する方法および製剤を提供する。特定の好ましい局面において、一酸化窒素模倣体は低用量で投与される。好都合なことに、特定の局面においては、本発明の一酸化窒素模倣体は癌に伴う不快な症状、例えば疼痛、悪心および息切れの度合いを緩解または低減することにより緩和的治療の効果を増大させる。
1つの局面において、本発明は、癌、悪性疾患、新生物、過形成、肥大、形成異常および/または腫瘍の血管形成の調節、治療および/または予防のための方法であって、癌、悪性疾患、新生物、過形成、肥大、転移、形成異常および/または腫瘍の血管形成の調節、治療および/または予防のために動物に一酸化窒素模倣体を投与することを含む方法を提供する。
1つの態様において、一酸化窒素模倣体は低用量で投与される。別の態様において、一酸化窒素模倣体は、頭痛、潮紅、失神、めまいおよび低血圧を含む一酸化窒素模倣体への耐容性の発生および/または不要な副作用を遅延および/または低減する濃度で投与される。別の態様において、この一酸化窒素模倣体は単独または抗悪性疾患治療薬と組み合わせて投与される。更に別の態様において、一酸化窒素模倣体は疼痛の緩和、体力および生活の質の向上を含む緩和的目的を意図した薬剤と組み合わせて投与される。
別の態様において、一酸化窒素模倣体は、(1)好ましくは、悪性表現型を示す細胞、腫瘍および/または疾患の侵襲性、進行、生育および/または転移を低減すること;悪性表現型を示す細胞、腫瘍および/若しくは疾患の生存ならびに/または生育を抑制すること;悪性表現型を示す細胞、腫瘍容量および/または疾患の進行および/または転移を低減すること;悪性表現型を示す細胞、腫瘍および/または疾患の後退を増強すること;および/または悪性表現型を示す細胞、腫瘍および/または疾患の殺傷を促進することにより悪性細胞の表現型、細胞、腫瘍および/または疾患の転移の潜在性を抑制すること;(2)悪性細胞、腫瘍および/または疾患をその原発および/または二次的部位において休止状態に維持すること;(3)抗悪性疾患治療手段の効果を増強、それへの感受性を増強、および/またはそれへの悪性細胞、腫瘍および/または疾患の耐性を抑制または低減すること;または、(4)癌の発症の危険性が高い動物における、および/または動物の一酸化窒素の活性を低減することが既知の因子に曝露された動物における、細胞、腫瘍および/または疾患の血管形成を抑制し、ここにおいて随意的に因子は低下したアルギニン濃度、一酸化窒素合成酵素アンダゴニストへの曝露、一酸化窒素スカベンジャーへの曝露、一酸化窒素合成酵素発現の変化、コファクターの変化、グルコース枯渇、外科的処置、麻酔薬の投与、循環を改変する薬理学的物質の投与、外傷的傷害、身体的傷害、血液の損失、血液量の低下、もしくは出血、またはこれらの組み合わせである。
別の態様において、悪性疾患を示す細胞は、悪性細胞、侵襲性細胞、悪性の過程を促進する細胞および組織、ならびにこれらの組み合わせから選択され、選択的に、悪性細胞の表現型が、抗悪性疾患治療手段への応答を向上させることにより調節、治療または予防される。
別の態様において、一酸化窒素模倣体は(1)好ましくは既存の腫瘍の侵襲性、進行、生育および/または転移を低減すること;既存の腫瘍の生存および/または生育を抑制すること;既存の腫瘍の進行および/または転移を低減すること;既存の腫瘍の後退を増強すること;および/または既存の腫瘍の殺傷を促進することにより、患者における既存の腫瘍の転移を抑制または遅延させること;(2)悪性腫瘍をその原発および/または二次的部位において休止状態に維持すること;(3)抗悪性疾患治療手段の効果を増強、それへの感受性を増強、および/またはそれへの腫瘍の耐性を抑制または低減しすること;または、(4)癌の発症の危険性が高い動物において、および/または動物の一酸化窒素の活性を低減することが既知の因子に曝露された動物における、腫瘍の血管形成を抑制または防止し、選択的にこの因子は低下したアルギニン濃度、一酸化窒素合成酵素アンダゴニストへの曝露、一酸化窒素スカベンジャーへの曝露、一酸化窒素合成酵素発現の変化、コファクターの変化、グルコース枯渇、外科的処置、麻酔薬の投与、循環を改変する薬理学的物質の投与、外傷的傷害、身体的傷害、血液の損失、血液量の低下または出血、または、これらの組み合わせである。
別の態様において、一酸化窒素模倣体は(1)好ましくは疾患の侵襲性、進行、生育および/または転移を低減すること;疾患の生存および/または生育を抑制すること;疾患の進行および/または転移を低減すること;疾患の後退を増強すること;および/または疾患の治癒および/または治療を促進することにより、患者における癌性の疾患の転移を抑制または遅延させること;(2)疾患の後退をもたらすかこれを維持すること;(3)疾患の治療に用いられる抗悪性疾患治療手段の効果を増強、それへの感受性を増強、および/またはそれへの耐性を防止もしくは低減すること;または(4)癌の発症の危険性が高い動物において、および/または動物の一酸化窒素の活性を低減することが既知の因子に曝露された動物において、疾患の発症を抑制または防止し、選択的にこの因子は低下したアルギニン濃度、一酸化窒素合成酵素アンダゴニストへの曝露、一酸化窒素スカベンジャーへの曝露、一酸化窒素合成酵素発現の変化、コファクターの変化、グルコース枯渇、外科的処置、麻酔薬の投与、循環を改変する薬理学的物質の投与、外傷的傷害、身体的傷害、血液の損失、血液量の低下もしくは出血、またはこれらの組み合わせである。
別の態様においては、悪性疾患を示す細胞は、悪性細胞、侵襲性細胞、悪性の過程を促進する細胞および組織、ならびにこれらの組み合わせから選択され、選択的に、悪性細胞の表現型が、抗悪性疾患治療手段への応答を向上させることにより調節、治療または予防される。
別の態様においては、この動物に存在する腫瘍選択性マーカーを測定することにより癌が診断またはモニタリングされる。
別の態様においては、一酸化窒素模倣体がこの腫瘍マーカーの濃度を低減するか、維持するか、または増大を遅延させる。
別の態様においては、癌は胃癌、胃腸癌、精巣癌、前立腺癌、前立腺の腺癌、乳癌、転移性黒色腫、肺癌、表2に記載の癌、またはこれらの組み合わせを含む。選択的に、動物における癌または他の悪性疾患、新生物、過形成、肥大、形成異常および/または腫瘍の血管形成は、良性の前立腺過形成または奇胎妊娠を含む。
別の態様においては、一酸化窒素模倣体は、一酸化窒素、一酸化窒素ドナー、一酸化窒素プロドラッグ、生体変換を介して一酸化窒素を発生または放出する化合物、一酸化窒素を自発的に生成するか一酸化窒素を自発的に放出する化合物、または、一酸化窒素を発生する化合物、またはこれらの組み合わせを含む。
別の態様においては、一酸化窒素模倣体は、(1)ニトログリセリン(GTN)、イソソルビド5-モノニトレート(ISMN)、イソソルビドジニトレート(ISDN)、ペンタエリスリトールテトラニトレート(PETN)、エリスリチルテトラニトレート(ETN)、N-ヒドロキシル-L-アルギニン(NOHA)、N6-(1-イミノエチル)リジン)(L-NIL)、L-N5-(1-イミノエチル)オルニチン(LN-NIO)、NW-メチル-L-アルギニン(L-NMMA)、S-ニトロソグルタチオン(SNOG)、S,S-ジニトロソジチオール(SSDD)、[N-[2(ニトロキシエチル)]-3-ピリジンカルボキシアミド(ニコランジル)、ナトリウムニトロプルシド(SNP)、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP)、3-モルホリノ-シドノニミン(SIN-1)、モルシドミン、DEA-NONOエート(2(N,N-ジエチルアミノ)-ジアゼノレート-2-オキシド)、および、スペルミンNONOエート(N-[4-[1-(3-アミノプロピル)-2-ヒドロキシ-2-ニトロソヒドラジノ]ブチル-1,3-プロパンジアミンから選択される一酸化窒素ドナー;(2)NO経路の段階を活性化する化合物、細胞によるNOの利用を可能にするか促進する化合物、グアニリルシクラーゼを直接活性化する化合物またはホスホジエステラーゼインヒビターまたはこれらの組み合わせ;(3)非特異的ホスホジエステラーゼインヒビター、二重選択性ホスホジエステラーゼインヒビター、I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、XまたはXI型ホスホジエステラーゼインヒビターまたはこれらの組み合わせ;または、(4)タンパク質キナーゼGアクチベーターである。
別の態様においては、抗悪性疾患治療薬は、放射線療法(放射線治療)、温熱療法、免疫療法、ホルモン療法、または単一薬剤化学療法、化学療法の複合療法、化学/放射線、アジュバント療法、ネオアジュバント療法、緩和療法、もしくはこれらの組み合わせを含む。随意的に、抗悪性疾患治療手段が放射線療法を含み、この一酸化窒素模倣体が一酸化窒素、一酸化窒素ドナー、生体変換を介して一酸化窒素を発生もしくは放出する化合物、酸素の存在下においてのみ一酸化窒素を自発的に生成するかもしくは一酸化窒素を自発的に放出する化合物、またはこれらの組み合わせであり、この一酸化窒素模倣体が放射線療法の間に投与される。
別の態様においては、化学療法は、抗血管形成剤、代謝拮抗物質、抗生物質、エンドセリンアクチベーター、酵素インヒビター、ホルモン剤、オクレオチドアセテート、微小管撹乱剤、微小管安定化剤、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、トポイソメラーゼインヒビター;プレニルタンパク質転移酵素インヒビター、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、ミトーテン、ヘキサメチルメラミン、白金配位鎖体(platinum coordination complex)、生物学的応答変調剤(modifier)、成長因子、免疫モジュレーターまたはモノクローナル抗体またはこれらの組み合わせである化学療法剤の投与を含む。
別の態様においては、緩和療法はグルココルチコイドステロイド、麻薬性疼痛緩解剤、抗欝剤、性ホルモンまたはこれらの組み合わせを含む。
別の態様においては、一酸化窒素模倣体の用量は、血管拡張をもたらす一酸化窒素模倣体の用量よりも少なくとも3〜10,000倍低値、好ましくは100〜10,000倍低値である。
別の態様においては、一酸化窒素模倣体は有機ニトレートであり、模倣体は血管拡張をもたらすことが既知の一酸化窒素模倣体の用量よりも少なくとも3〜10,000倍低値、好ましくは100〜10,000倍低値の用量で投与される。
別の態様においては、一酸化窒素模倣体が既知の血管拡張化合物であり、そしてこの模倣体が血管拡張をもたらすことが既知の一酸化窒素模倣体の用量よりも少なくとも3〜10,000倍低値、好ましくは100〜10,000倍低値の用量で投与される。
別の態様においては、一酸化窒素模倣体は、カルシウムチャンネルブロッカー、α-アドレナリン受容体アンダゴニスト、β-アドレナリン受容体アゴニスト、ホスホジエステラーゼインヒビター、cAMP依存性タンパク質キナーゼアクチベーター、スーパーオキシドスカベンジャー、カリウムチャンネルアクチベーター、ベンゾジアゼピン、アドレナリン作用性神経インヒビター、抗下痢剤、HMG-CoA還元酵素インヒビター、アデノシン受容体モジュレーター、アデニリルシクラーゼアクチベーター、エンドセリン受容体アンダゴニスト、ビスホスホネート、cGMP依存性タンパク質キナーゼアクチベーター、グアニリルシクラーゼアクチベーターおよびSOCインヒビターからなる群より選択される。
これらの方法および処方は、癌の増殖を低下しかつ治療に対する反応を改善することにより、癌の管理において特に有用である。例えば、本発明の方法および処方は、悪性表現型を示す細胞、腫瘍および/または疾患の転移、浸潤および進行を阻害することができる。加えてこれらの方法および処方は、原発部位に加え続発部位において、悪性表現型を示す細胞、腫瘍および/または疾患の休止状態(dormancy)または回復を誘導または維持することができる。更にこれらの方法および処方は、悪性表現型を示す細胞、腫瘍および/または疾患の抗悪性治療様式に対する抵抗性の発生を防止または減少することに加え、抗悪性治療様式の効能を増強することができる。
本発明の方法および処方は、細胞における一酸化窒素模倣活性の欠損につながるような状態および/または治療薬への細胞の曝露時に細胞に発生し得る悪性細胞表現型、細胞、腫瘍および/または疾患の防止においても非常に有用である。
本発明の方法および処方は、癌の発生を誘導するような因子への曝露時に発生し得るような癌細胞においてより攻撃的な悪性細胞表現型、細胞、腫瘍および/または疾患の発生を阻害することにおいても有用である。
加えてこれらの方法および処方は、低用量一酸化窒素模倣体の投与後の悪性表現型の1種以上のマーカー指標レベルの検出による、動物における悪性細胞表現型、細胞、腫瘍および/または疾患の診断および経過観察において有用である。低用量一酸化窒素模倣体投与前の動物におけるマーカーレベルと比較した場合の、低用量一酸化窒素模倣体投与後の動物における、1種以上のこれらのマーカーレベルの無変化、減少または増加の減速は、その動物における悪性表現型の指標である。従って、本発明の方法および処方は、動物における癌の治療および防止の新規治療法ならびに診断法を提供する。
好都合なことに、本明細書に記載した化合物および方法は癌の後退を長期化し、癌の再発を防止し、癌マーカーを低減し、腫瘍容量を低減し、疼痛、不快感および障害(病的状態)を低減し、抗悪性疾患治療手段に伴う生活の質を向上させ、悪液質を低減し、そして、抗嘔吐剤および麻薬性鎮痛剤の必要性を低減する。
発明の詳細な説明
本発明者らは本明細書において、低酸素症および低窒素症が細胞表現型に影響を及ぼす機構が、酸素の欠乏によってのみではなく、むしろ一酸化窒素模倣活性の欠損によって媒介されることを明らかにする。更に本発明者らは本明細書において、低用量一酸化窒素模倣体の投与は、細胞の一酸化窒素模倣活性のレベルを増加、回復または維持し、その結果悪性細胞表現型が阻害または防止されるのに十分であることを明らかにする。この阻害および防止は、細胞が低酸素状態環境にある場合および/または内因性一酸化窒素生成の阻害と組合わせた場合にも生じる。一酸化窒素模倣体は、正常酸素圧下ならびに低酸素条件下において、効果的である。非常に低用量の一酸化窒素模倣体の投与は、例え顕著に低下した酸素レベル(1%O2)条件下であっても、悪性細胞表現型の生成を防止し、かつ細胞の悪性細胞表現型を阻害する。
従って本発明は、細胞の悪性細胞表現型を阻害および防止することにおける一酸化窒素模倣体(例えば低用量)の使用に関する。本発明の方法および処方は、動物における癌の治療および予防のための新規治療法を提供する。本発明の目的に関して「治療」または「治療する」は、悪性細胞表現型を示す細胞の増殖を低下し、かつ抗悪性治療様式に対する反応を改善することによる癌の制御のための全ての手段を包含していることを意味する。従って「治療」または「治療する」は、悪性細胞表現型を示す細胞の生存および/または増殖を阻害すること、悪性細胞表現型を示す細胞の生存および/または増殖を防止すること、悪性細胞表現型を示す細胞の浸潤度を低下すること、悪性細胞表現型を示す細胞の進展を減速すること、悪性細胞表現型を示す細胞の転移を減少すること、悪性細胞表現型を示す細胞の退縮を増大すること、および/または悪性細胞表現型を示す細胞の殺傷を促進することを意味する。「治療」または「治療する」は、更にその原発部位に加え続発部位における悪性細胞表現型を示す細胞の休止状態(または静止状態)への維持を包含することを意味する。更に「治療」または「治療する」は、抗悪性治療様式の効能を増強することに加え、それに対する抵抗を防止または低下することを意味する。「抗悪性治療様式」とは、放射線療法、温熱療法、免疫療法、ホルモン療法、シグナル伝達剤(signal agent)治療法、組合せ療法、化学放射線(chemo irradiation)、アジュバンド療法、ネオアジュバンド療法、苦痛緩和療法、ならびにその他の癌および他の悪性疾患の治療において当業者により使用される療法を含むが、これらに限定されるものではないことを意味する。
「治療すること」または「治療」とは、長期化した癌の後退、再発の防止、癌マーカーの低減、癌容量の低減、疼痛、不快感および障害(病的状態)の低減、抗悪性疾患治療手段に伴う生活の質の向上、粘液性の低減、および、抗嘔吐剤および麻薬性鎮痛剤の必要性の低減を含むものとする。「作用の増大」とは、抗悪性疾患治療手段の力価および/もしくは活性の増大、ならびに/または抗悪性疾患治療手段への耐性の発生の低減、ならびに/または、抗悪性疾患治療手段に対する悪性細胞および/もしくは腫瘍の感受性の増大を含むものとする。本発明はまたNO模倣体(例えば低用量)療法の存在下での動物における腫瘍選択性マーカーの測定を介して動物における悪性細胞の表現型のモニタリングおよび/または診断の方法に関する。腫瘍の進行および転移のモニタリングおよび診断において有用な腫瘍マーカーの例としては、例えば、前立腺癌に関する前立腺特異的抗原(PSA)、胃腸癌に関する癌胎児性抗原(CEA)およびガストリンまたはグルカゴンのようなポリペプチド、精巣癌に関するα-フェトプロテイン(AFP)およびβhCG、生殖細胞癌におけるα-フェトプロテイン(AFP)、ヒト絨毛ゴナドトロピン(HCG)およびラクテート脱水素酵素(LDH)、絨毛癌におけるHCG、肝細胞癌における血清AFP、小細胞肺癌におけるニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、骨髄腫における予後指標となるパラプロテイン濃度およびB2-ミクログロブリン、カルチノイド腫瘍における5-ヒドロキシインドール酢酸(5HIAA)尿レベル(urine level)、扁平上皮細胞癌に関する扁平上皮細胞癌抗原(SCC)およびサイトケラチンフラグメント、頚部癌における予後的情報に関するSCCおよびCA125、胃がんに関するCA19-9およびCA72-4、非小細胞肺癌におけるp-セレクチンリガンドを含む種々の癌に関するCD24、前立腺癌の予後に関するNFκB、卵巣癌に関する血清腫瘍マーカーCA125、悪性中皮腫に関する診断マーカーとしてのCDKN2A、膵臓腺管癌におけるジスアドヘリンの過剰発現、結腸直腸癌患者における予後マーカーとしてのSMAD7、進行した疾患を有する乳癌患者に関する潜在的予後マーカーとしてのTGFβ1、小細胞肺癌の予後的決定因子としての神経内分泌性およびサイトケラチン性の血清マーカー、転移性骨肉腫細胞に関するマーカーとしてのErbB2および骨シアロタンパク質、乳癌に関するサイクリンEおよびCA15-3、ならびに乳癌に関するエストロゲンおよびHer-2に対する細胞表面受容体が挙げられる。診断目的のためにモニタリングできる更なるマーカーとしては、例えば、髄質甲状腺癌の診断およびスクリーニングのためのカルシトニンおよびカルシトニン関連ペプチド、NDRG-1としても知られているOXYgen-1により調節されるタンパク質(PROXY-1)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター(PAI-1)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター受容体(uPAR)および血管内皮成長因子(VEGF)が挙げられる。更にまた、本明細書を読むことにより当業者に理解されるように、本明細書に記載したもの以外の腫瘍マーカーもまた本発明において挙げることができる。好ましい態様においては、腫瘍マーカーは血清、血漿または尿のような生物体液中で検出可能なものである。低用量の一酸化窒素模倣体の投与の前の動物におけるマーカーの濃度と比較した場合に低用量の一酸化窒素模倣体の投与後の動物においてそのマーカーの一つまたは複数の濃度の変化、低下、または上昇緩徐化があることは、動物における悪性細胞の表現型を示している。
本発明の目的のための用語「低用量」とは、悪性細胞表現型を阻害または防止しおよび/または低用量NO模倣体と同時投与される抗悪性治療様式の効能を増強するような細胞、腫瘍および/または疾患に、一酸化窒素模倣活性のレベルを増加、回復または維持させることが可能であるような、一酸化窒素模倣体の量を意味する。この低用量では、悪性細胞表現型、細胞、腫瘍および/または疾患を伴わない動物において、従来から公知のNO模倣体の悪影響は生じない。本内容を判読する際に当業者に理解されるように、一酸化窒素模倣体は、細胞内および細胞周辺(すなわち、細胞の微小環境)の両方における活性を増加、回復または維持する。
細胞培養物、更には血漿および血清中の、亜硝酸塩、硝酸塩およびS-ニトロソチオールレベルを基にした細胞の一酸化窒素レベルを決定する方法が説明されている。普通の健常志願者における血清または血漿中の硝酸塩レベルは、平均一酸化窒素レベル33.4±8.9μMで、14〜60μMの範囲にあることが報告されている(Marzinzigら、Nitric Oxide: Biology and Chemistry、1(2):177-189(1987))。しかしこれらのレベルは、蓄積するNOシンターゼ最終生成物を基にしており、その結果おそらく正常な生理的一酸化窒素レベルを過大評価しているであろう。更に報告された測定レベルは、測定のために選択された方法によって大きく左右される。更に血漿または血清中の亜硝酸塩および硝酸塩のレベルは、単なる患者のNO産生の代表値ではない。本発明者らの実験を基に、細胞の一酸化窒素模倣活性の正常な生理的レベルは、細胞によっては、当該技術分野において報告された値よりも、例えば少なくとも1/5と少なく、好ましくは1/10〜1/10,000であると本発明者らは考えた。
短期間の一酸化窒素模倣体療法は、一般に細胞の一酸化窒素模倣活性を正常な生理的レベルを上回るように増加するようなレベルで投与される。しかし概してより長期の療法が望ましいような本発明の目的については、NO模倣体に対する耐性の誘導および副作用が懸念される。従ってある局面において、投与される一酸化窒素模倣体の量は、好ましくは投与されたNO模倣体に対する耐性の発生および/または望ましくない副作用を遅延および/または低下するように非常に低いものである。例えば、一酸化窒素または血管拡張剤による心臓血管系の病態治療に通常使用される用量(すなわち、GTNは0.2mg/h以上)で一酸化窒素をヒトへ送達するような化合物の投与は、強力な血管拡張作用を誘起することに加え、反復投与時にGTNに対する薬物耐性を発生し得る。このような投与は、頭痛、潮紅および低血圧を含む、多くの望ましくない副作用を伴うことが多い。対照的に、悪性細胞表現型、細胞、腫瘍、ならびに/または疾患を阻害および防止するために本発明において投与された一酸化窒素模倣体の好ましい用量は、血管拡張のような他の治療適応において典型的に使用される用量よりも低く、好ましくは少なくとも1/3〜1/10,000であり、より好ましくは少なくとも1/100〜少なくとも1/10,000であり、その結果NO模倣体に対する耐性を迅速に誘導しないばかりではなく更に望ましくない副作用も誘導しない。例えば、一酸化窒素模倣体ニトロプルシドナトリウム(SNP)および三硝酸グリセリン(GTN)の使用に際し、本発明者らは、細胞環境内の10-12〜10-10Mの範囲の量を用いて、悪性細胞表現型、細胞、腫瘍、および/または疾患を防止および阻害することができることを明らかにしている。更に本発明者らは、これらの実験結果を基に、SNP用量は、10-14Mと低くとも、より低い低酸素または低窒素環境における悪性細胞表現型細胞、腫瘍、および/または疾患の防止および阻害において有効であると考えている。表1は、本発明において有用な一酸化窒素模倣体に関する様々な好ましい低用量に加え、血管拡張療法において使用される比較的高い用量の追加例を提供する。
本内容を読む際に当業者に理解されるように、本明細書に例示した用量よりもより高いまたはより低い一酸化窒素模倣体量も、細胞の一酸化窒素模倣活性を増加、回復または維持し、その結果実質的にNO模倣体に対する薬剤耐性を生じずかつ望ましくない副作用を伴うことなく、悪性細胞表現型、細胞、腫瘍および/または疾患が防止または阻害されるという最終の目的を達成することにおける一酸化窒素模倣体の効能を基に投与することができる。本発明の低用量製剤に取り込まれる一酸化窒素模倣体の量を決定することは、本明細書に提供される技術をもとに当業者によって簡単に実施されうる。
本明細書に記載の「阻害すること、および防止すること」という用語は、低下する、後退する、または、生物学的状態を緩和する、改善する、正常化する、制御する、もしくは管理することを意味する。つまり、悪性細胞の表現型を阻害および防止することとは、悪性細胞表現型、細胞、腫瘍、および/または疾患の発症を防止すること、悪性細胞表現型、細胞、腫瘍、および/または疾患の発症を後退もしくは軽減すること、ならびに/または、悪性細胞表現型、細胞、腫瘍、および/または疾患の発症を正常化、調節もしくは管理することを指す。更にまた、本発明に従って悪性腫瘍を抑制および防止することとは、悪性腫瘍の発症を防止すること、発症を後退もしくは軽減すること、および/または、発症を正常化、調節もしくは管理することを指す。同様に、本発明に従って悪性疾患を阻害および防止することとは、悪性疾患の発症を防止すること、発症を後退もしくは軽減すること、および/または、発症を規格化、調節もしくは管理することを指す。従って低用量一酸化窒素模倣体の投与は、(1)予防的に、癌発症のリスクが高い動物、もしくは細胞の一酸化窒素模倣活性を減少することが公知の因子に曝露された動物において、悪性細胞表現型、細胞、腫瘍および/もしくは疾患の発生を阻害および防止するために、ならびに(2)転移または抗悪性治療様式に対する抵抗性の発生を阻害すること、および抗悪性治療様式の効能を増強することにより動物において癌を治療するための両方で使用することができる。「ステッドマン医学大辞典(Stedman's Medical Dictionary)」によると、悪性とは、1)治療に対して抵抗性があること;重症型でしばしば致命的;悪化する傾向があり、漸悪性の経過を取る;ならびに2)新生物に関しては、局部的浸潤性、破壊的増殖性、および転移性を有するものをいう、と定義される。この定義に従い、本発明の目的に関して「悪性細胞表現型、細胞、腫瘍、および/または疾患」とは、転移の増加、抗悪性治療様式に対する抵抗性、および血管新生を包含することを意味する。本発明の目的に関する「悪性細胞表現型」は、更に、過形成、肥大および異形成のような、悪性の挙動および異常な浸潤、更には悪性の経過を促進するそのような細胞および組織につながるスペクトル内の状態を含むことも意味する。このスペクトル内の状態の例は、良性前立腺肥大および奇胎妊娠を含むが、これらに限定されるものではない。本明細書に示されたデータにより証明されるように、細胞における悪性細胞表現型、細胞、腫瘍、および/または疾患の阻害および防止は、uPAR、PSA、PAI-1、PROXY-1およびVEGFを含むが、これらに限定されるものではないような遺伝子の発現を試験すること、インビトロまたはインビボアッセイにおいて細胞浸潤を試験すること、ならびに/または細胞の抗悪性治療様式に対する抵抗性を試験することにより、型どおりに決定することができる。上昇したホスホジエステラーゼ発現および/または活性は、悪性細胞表現型の細胞において認められると考えられている。これらの遺伝子の発現を測定する方法は、例えば国際公開公報第99/57306号に開示されており、これは本明細書に参照として組入れられている。しかし本明細書の開示を読む際に当業者に理解されるように、発現されたタンパク質またはそれらのタンパク質分解性断片の測定による、遺伝子発現を決定するその他の方法も使用することができる。本発明の目的について、用語「一酸化窒素模倣体」とは、一酸化窒素、またはそれらの機能同等物;一酸化窒素の作用を模倣するか、生体転換を通じて一酸化窒素を生成または放出するか、自然発生的に一酸化窒素を生成するか、または自然発生的に一酸化窒素を放出するようないずれかの化合物;いずれか他の方法で一酸化窒素または一酸化窒素様部分を生成もしくはNO経路の他の段階を活性化するいずれかの化合物;もしくは、動物に投与された場合に、細胞によるNO利用を可能にするまたは促進する化合物を意味する。このような化合物は更に、「NO供与体」、「NOプロドラッグ」、「NO産生物質」、「NO送達化合物」、「NO生成物質」「NO遊離物質」および「NOプロバイダー」と称することもできる。このような化合物の例は、有機硝酸塩、例えばニトログリセリン(GTN)、イソソルビド5-一硝酸塩(ISMN)、イソソルビド二硝酸(ISDN)、ペンタエリスリトール四硝酸(PETN)、エリスリチル四硝酸(ETN);アミノ酸誘導体、例えばN-ヒドロキシル-L-アルギニン(NOHA)、N6-(1-イミノエチル)リシン(L-NIL)、L-N5-(1-イミノエチル)オルニチン(LN-NIO)、Nω-メチル-L-アルギニン(L-NMMA)、およびS-ニトロソグルタチオン(SNOG);ならびに、生理的条件下でNOを生成または放出する他の化合物、例えばS,S-ジニトロソジチオール(SSDD)、[N-[2-(ニトロキシエチル)]-3-ピリジンカルボキシアミド(ニコランジル)、ニトロプルシドナトリウム(SNP)、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP)、3-モルホリノ-シドニミン(SIN-1)、モルシドミン、DEA-NONOエート(2-(N,N-ジエチルアミノ)-ジアゼノレート-2-オキシド)、およびスペルミンNONOエート(N-[4-[1-(3-アミノプロピル)-2-ヒドロキシ-2-ニトロソヒドラジノ]ブチル-1,3-プロパンジアミンを含むが、これらに限定されるものではない。有機硝酸塩GTN、ISMN、ISDN、ETN、およびPETNに加え、ニコランジル(一般にカリウムチャネルオペレーターとして公知)は、医薬剤形で市販されている。SIN-1、SNAP、S-チオグルタチオン、L-NMMA、L-NIL、L-NIO、スペルミンNONOエート、およびDEA-NONOエートは、Biotium社(リッチモンド、CA)から市販されている。更に本明細書において使用される用語「一酸化窒素模倣体」は、一酸化窒素経路の模倣体として作用するか、一酸化窒素様活性を有するか、または一酸化窒素の作用を模倣するような化合物を意味することが意図されている。このような化合物は、必ずしも一酸化窒素を放出、生成または提供はしないが、これらは一酸化窒素により影響を受けるような経路に対し一酸化窒素と同様の作用を有する。例えば一酸化窒素は、サイクリックGMP依存型およびサイクリックGMP非依存型の両方の作用を有する。一酸化窒素は、グアニル酸シクラーゼの可溶性型を活性化し、これによりセカンドメッセンジャーであるサイクリックGMPの細胞内レベルを増大し、およびサイクリックAMPのような他の細胞内セカンドメッセンジャーと別の相互作用をすることは公知である。このように、粒子状または可溶性のグアニル酸シクラーゼのいずれかを直接活性化する化合物、例えばナトリウム排泄増加性ペプチド(AMP、BNP、およびCNP)、3-(5'-ヒドロキシメチル-2'-フリル)-1-ベンジルイミダゾール(indazole)(YC-cGMPまたはYC-1)および8-(4-クロロフェニルチオ)グアノシン3',5'-サイクリック一リン酸(8-PCPT-cGMP)も、NO模倣体の例である。しかし本発明の一部の態様において、NO模倣体は、粒子状または可溶型のいずれかのグアニル酸シクラーゼを直接活性化する化合物を包含しないことが好ましい。一酸化窒素模倣活性は、例えばグアニル酸シクラーゼおよび他のヘム含有タンパク質などの、少なくとも1種のNO模倣体結合エフェクター分子を含むそのようなシグナル伝達過程または経路を包含している。細胞によるNO利用を可能にするまたは促進することによりNO模倣体として作用する物質の例は、ホスホジエステラーゼインヒビターのような、ホスホジエステラーゼ活性および/または発現を阻害するような化合物である。
Figure 2005527510
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好ましい本発明の態様において、1種以上のNO模倣体が投与される。この態様において、NO模倣体は、細胞のNO経路の様々な部分を標的化するかまたは作用することが好ましい。例えば、NO供与体は、ホスホジエステラーゼインヒビターのような、環状ヌクレオチド(例えば、cAMPまたはcGMP)分解を阻害する化合物と同時投与することができる。好ましいNO模倣体として有用なホスホジエステラーゼ(PDE)インヒビターは、PDE-1からPDE-11を阻害するものである。
本発明の用語「低窒素症」とは、一酸化窒素模倣活性のレベルが、その細胞種の正常な生理的レベルよりも低いような状態を意味する。
本発明において使用するのに適する特定の化合物は当技術分野において周知であり、例えばGoodmanおよびGliman,The Pharmacological Basis of Therapeutics(9th Ed.),McGraw-Hill,Inc.(1996);The Merck Index(12th Ed.),Merck & Co.,Inc.(1996);The Physician’s Desk Reference(49th Ed.),Medical Economics(1995);および、Drug Facts and Comparisons,Facts and Comparisons(1993)に記載されている。
NOドナー
好ましい態様においては、本発明の化合物はNOドナーである。一酸化窒素ドナーは種々のNOドナーのいずれか、例えば有機NOドナー、無機NOドナーおよびNOドナーのプロドラッグを含むことができる。更なる適当なNOドナーには、インビボで代謝されて一酸化窒素を供給する化合物となる化合物(例えば、NOドナーのプロドラッグ型;NO放出非ステロイド抗炎症剤(NO-NSAID)のようなNO放出薬剤、例えばニトロアスピリン、NCX4016、ニトロ-(フルルビプロフェン)、HCT1026、NCX2216;もしくはバイナリNO発生システム(例えば酸性化ニトレート等)またはL-アルギニンおよびL-アルギニン塩のような一酸化窒素の生理学的前駆体として作用する化合物が含まれる。NOドナーは少なくとも1個の有機性ニトレート(硝酸のエステルを含む)を含み、環状または非環状の化合物の何れかであることができる。例えば、適当なNOドナーには、ニトログリセリン(NTG)、イソソルビドジニトレート(ISDN)、イソソルビドモノニトレート(ISMN)例えばイソソルビド-2-モノニトレート(IS2N)および/またはイソソルビド-5-モノニトレート(IS5N)、エリスリチルテトラニトレート(ETN)、ペンタエリスリトールテトラニトレート(PETN)、エチレングリコールジニトレート、イソプロピルニトレート、グリセリル-1-モノニトレート、グリセリル-1,2-ジニトレート、グリセリル-1,3-ジニトレート、ブタン-1,2,4-チオールトリニトレート等が含まれる。ニトログリセリンおよび他の有機性のニトレート、例えば、ISDN、ETNおよびPETNは、ヒトを対象とした医療の他の分野における治療における使用について法的に認可されている。更なるNOドナーには、ナトリウムニトロプルシド、N,O-ジアセチル-N-ヒドロキシ-4-クロロベンゼンスルホンアミド、N-ヒドロキシ-L-アルギニン(NOHA)、ヒドロキシグアニジンスルフェート、モルシドミン、3-モルホリノシドノニミン(SIN-1)、(±)-S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP)、S-ニトオソグルタチオン(GSNO)、(±)-(E)-エチル-2-[(E)-ヒドロキシイミノ]-5-ニトロ-3-ヘキセンアミド(FK409)、(±)-N-[(E)-4-エチル-3-[(Z)-ヒドロキシイミノ]-5-ニトロ-3-ヘキセン-1-イル]-3-ピリジンカルボキサミド(FR144420)および4-ヒドロキシメチル-3-フルオロキサカルボキサミドが含まれる。更に、インビボでNOの分解を妨害する化合物を投与してもよい。
更なるNO模倣体
特定の態様において、本発明の化合物および方法は上記した伝統的な一酸化窒素模倣体に限定されない。後により詳述するとおり、これらの一酸化窒素模倣体化合物は、例えば、カルシウムチャンネルブロッカー、α-アドレナリン受容体アンダゴニストおよびβ-アドレナリン受容体アゴニスト、ホスホジエステラーゼインヒビター、cAMP依存性タンパク質キナーゼアクチベーター、スーパーオキシドスカベンジャー、カリウムチャンネルアクチベーター、ベンゾジアゼピン、アドレナリン作用性神経インヒビター、抗下痢剤、HMG-CoA還元酵素インヒビター、アデノシン受容体モジュレーター、アデニリルシクラーゼアクチベーター、エンドセリン受容体アンダゴニスト、ビスホスホネート、cGMP依存性タンパク質キナーゼアクチベーター、グアニリルシクラーゼアクチベーターおよびSOCインヒビターを含む。特定の局面において、化合物は低用量に限定されない。当然ながら低用量を使用できるが、これらの化合物の用量はそのように限定されるわけではない。以下に記載する化合物(例えばPDEインヒビター)は高用量および低用量のような種々の用量で使用できる。
カルシウムチャンネルブロッカー
Ca2+チャンネルブロッカーは細胞外の液体から細胞内へのCa2+の進入を抑制する化合物である。本発明の方法とともに使用するための適当なCa2+チャンネルブロッカーは、例えば、ニフェジピン、ニモジピン、フェロピジン、ニカルジピン、イスラジピン、アムロジピン、ジルチアゼム、ベプリジル、ベラパミル等を含む(例えばWO98/36733参照)。L-型Ca2+チャンネルブロッカーもまた利用される。
α-アドレナリン受容体アンダゴニストおよびβ-アドレナリン受容体アゴニスト
本発明の文脈内で使用するための別の好ましい化合物には、例えばα-アドレナリン受容体アンダゴニストおよびβ-アドレナリン受容体アゴニストが含まれる。適当なα-アドレナリン受容体アンダゴニストには、例えばα1-アドレナリン受容体アンダゴニスト、α2-アドレナリン受容体アンダゴニストおよび他の非特異的α-アドレナリン受容体アゴニストが含まれる。好ましいα1-アドレナリン受容体アンダゴニストには例えば、プラゾシン、ドキサゾシン、フェノキシベンザミン、フェントラミン、テラゾシン、トラゾリン等が包含され、例えばGoodmanおよびGilman,「The Pharmaceutical Basis of Therapeutics」,9th Edition,Hardman,ら、(ed.),McGraw-Hill(1996)に記載されている。適当なα2-アドレナリン受容体アンダゴニストには例えばヨヒンビンが包含され、そしてやはり、Goodman and Gilman,「The Pharmaceutical Basis of Therapeutics」,9th Edition,Hardman,ら、(ed.),McGraw-Hill(1996)に記載されている。他の適当なアンダゴニストはα2-アドレナリン作用性アンダゴニストであり、例えばシナプス後のα2-アドレナリン作用性アンダゴニストが含まれる。シナプス後のα2-アドレナリン作用性アンダゴニストには、例えばイミロキサン、2塩酸ARC239および他の薬学的に許容されるその塩が含まれる。2塩酸ARC239は2-[2-(4-(2-メトキシフェニル)ピペラジン-1-イル)エチル]-4,4-ジメチル-1,3-(2H,4H)-イソキノリンドンジハイドクロライドである。他の適当なシナプス後のα2-アドレナリン作用性アンダゴニストには、例えばイダゾキサン、ラウオルシン、エファロキサン、ミアンセリンおよびミルタザピンが含まれる。これらのうち、ミアンセリンおよびミルタザピンが特に好ましい。本発明の方法とともに使用するための適当なβ-アドレナリン受容体アゴニストには、例えば、β1-アドレナリン受容体アゴニスト、β2-アドレナリン受容体アゴニスト、β3-アドレナリン受容体アゴニストおよび他の非特異的なβ-アドレナリン受容体アゴニストが含まれる。好ましい態様においては、β-アドレナリン受容体アゴニストはβ2-アドレナリン受容体アゴニストまたはβ3-アドレナリン受容体アゴニストである。本発明の方法とともに使用するための適当なβ-アドレナリン受容体アゴニストの例は、例えば、アルブテロール、ビトルテロール、サルブタモール、テルブタリン、メタプロテレノール、プロカテロール、サルメテロール、クレンブテロール、イソプロテレノール、ジンテロール、BRL37344、CL316243、CGP-12177A、GS332、L-757793、L-760087、L-764646およびL-766892等である(例えば前記のGoodman and Gilman参照)。
ホスホジエステラーゼインヒビター
別の好ましい態様においては、化合物はホスホジエステラーゼインヒビターである。環状ヌクレオチドの第2のメッセンジャー(cAMPおよびcGMP)はシグナル伝達および生理学的応答の調節において中心的役割を果たしている。その細胞内濃度は環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)酵素の複合的なスーパーファミリーにより制御されている。ホスホジエステラーゼ(PDE)のインヒビターは酵素とのアロステリックな相互作用または酵素の活性部位への結合を介してPDEを活性化または抑制することができる物質である。PDEファミリーには少なくとも19種の遺伝子および少なくとも11種のPDEアイソザイムファミリーが含まれ、50を超えるアイソザイムがこれまでに同定されている。PDEは(a)基質特異性、即ち、cGMP特異的、cAMP特異的または非特異的PDE、(b)組織、細胞または細胞成分の分布、および(c)異なるアロステリックアクチベーターまたはインヒビターによる調節により、識別される。PDEインヒビターには非特異的PDEインヒビターおよび特異的PDEインヒビター(ホスホジエステラーゼのいずれかの他の型に対してはほとんど作用を有さずにホスホジエステラーゼの単一の型を抑制するもの)の両方が含まれる。更に別の有用なPDEインヒビターはデュアル選択的PDEインヒビター(例えばPDE III/IVインヒビターまたはPDE II/IVインヒビター)である。本発明の方法において有用な種々のPDEインヒビターを示す表を以下に示す。
Figure 2005527510
1つの態様において、PDEインヒビターはPDE Vインヒビターである。有用なホスホジエステラーゼV型インヒビターには、例えばシアリス、バルデナフィル、タナダフィル、ザプリナスト、MBCQ、MY-5445、ジピリダモール、フロイルおよびベンゾフロイルピロロキノロン、2-(2-メチルピリジン-4-イル)メチル-4-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-8-(ピリミジン-2-イル)メトキシ-1,2-ジヒドロ-1-オキソ-2,7-ナフチリジン-3-カルボン酸メチルエステルハイドロクロライド(T-0156)、T-1032(メチル2-(4-アミノフェニル)-1,2-ジヒドロ-1-オキソ-7-(2-ピリジルメトキシ)-4-(3,4,5-トリメトキシ-フェニル)-3-イソキノリンカルボキシレートサルフェート)が含まれる。環状GMP特異的インヒビターには、これに限定するわけではないが、例えばA02131-1[3-(5’-ヒドロキシメチル-2’-フリル)-1-ベンジルチエノ(3,2-c)ピラゾール]が含まれる。別の態様において、組成物はホスホジエステラーゼII型(PDE II)インヒビター、例えばEHNAなどを含む。更に別の態様において、組成物はホスホジエステラーゼIV型(PDE IV)インヒビターを含む。適当なホスホジエステラーゼIV型インヒビターには、例えば、ロフルミラスト、アリフロ(SB207499)、RP73401、CDP840、ロリプラム、メソプラム、デンブフィリン、EMD95832/3、シロミラスト、RO-20-1724およびLAS31025が含まれる。更に別の態様においては、ホスホジエステラーゼインヒビターはデュアル選択性ホスホジエステラーゼインヒビター、例えばPDE III/IVインヒビター(例えばザルダベリン)またはサチグレル(Satigrel)(E5510、4-シアノ-5,5-ビス(4-メトキシフェニル)-4-ペンタン酸)のようなcAMPとcGMPの両方の濃度を上昇させることができるホスホジエステラーゼインヒビターである。
別の態様において、PDEインヒビターはPDEIIIアイソザイムのインヒビター、例えばオルプリノン(Olprinone)である。
別の態様において、PDEインヒビターはPDEIVアイソザイムファミリー、またはcAMP特異的およびロリプラム感受性のPDEであってcAMPを優先的に加水分解するもののインヒビターである。
更に別の態様において、組成物は非特異的ホスホジエステラーゼインヒビターである薬剤を含む。適当な非特異的ホスホジエステラーゼインヒビターには、例えば、テオブロミン、ジフィリン、IBMX、テオフィリン、アミノフィリン、ペントキシフィリン、パパベリン、カフェインおよび他のメチルキサンチン誘導体が含まれる。
cAMP依存性タンパク質キナーゼアクチベーター
別の好ましい態様において、本明細書に記載する障害を治療するために使用する化合物はcAMP依存性タンパク質キナーゼアクチベーターである。cAMP依存性タンパク質キナーゼアクチベーターの例には、cAMP模倣体またはデュアルcGMP/cAMP依存性タンパク質キナーゼアクチベーターが含まれる。適当なcAMP模倣体または類縁体にはcAMPと構造的に同じであり、cAMPと同様の機能、例えば活性を有する化合物が含まれる。適当なcAMP模倣体の例には、例えば、8-ブロモ-cAMP、ジブチル-cAMP、Rp-cAMPSおよびSp-cAMPSが包含され、そして有用なデュアルアクチベーターには例えばSp-8-pCPT-cGMPS、Sp-8-ブロモ-cGMPSおよび8-CPT-cAMPが含まれる。
スーパーオキシドスカベンジャー
別の態様において、本発明の組成物および方法において使用される化合物はスーパーオキシドアニオン(O2)スカベンジャーである。スーパーオキシドはNOと反応してその生物学的作用を劇的に低下させることができる。従って、スーパーオキシドアニオンを除去する(scavenge)物質はNOの作用を増強できる。スーパーオキシドスカベンジャーの例は、例えば、外因性のMnまたはCu/Znスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)または小分子SOD模倣体、例えば塩化Mn(III)テトラ(4-安息香酸)ポルフィリン(MnTBAP)およびM40403である(例えばSalveminiら、Science,286(5438):304-306(1999)参照)。
カリウムチャンネルアクチベーター
別の局面において、本発明はカリウムチャンネルアクチベーターを含む薬学的組成物を提供する。1つの態様において、カリウムチャンネルアクチベーターはATP感受性のカリウムチャンネルアクチベーターである。ATP感受性Kチャンネルを活性化する合成化合物は平滑筋弛緩物質である。このような化合物は例えば、モノキシジル、モノキシジルスルフェート、ピノシジル、ジオゾキシド、レブクロモカリム、クロモカリム等である(例えばWhiteら、Eur.J.Pharmacol.,357:41-51(1998)参照)。別の適当なATP感受性Kチャンネルアクチベーターは、例えばBristolら、「Annual Reports in Medicinal Chemistry」Vol.29,Chap.8,pp.73-82,Academic Press(1991)に記載されている。別の態様において、カリウムチャンネルアクチベーターはMaxi-Kチャンネルアクチベーターである。Maxi-Kチャンネルのアクチベーターの例は、例えばエストロゲン様化合物、例えばエストラジオールである(例えばValverdeら、SCIENCE,285:1929-1931)。
ベンゾジアゼピン
別の局面において、本発明はベンゾジアゼピンを含む薬学的組成物を提供する。適当なベンゾジアゼピンは、これらに限定するわけではないが、例えば、アルプラゾラム、ブロチゾラム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロナゼパム、クロアゼペート、デモキセパム、ジアゼパム、エスタゾラム、フルマゼニル、フルラゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマゼパムおよびトリアゾラムである(例えば前記のGoodmanおよびGillman参照)。
アドレナリン作用性神経インヒビター
別の局面において、本発明の化合物はアドレナリン作用性神経を抑制する化合物である。アドレナリン作用性神経インヒビターは、交感神経末端を破壊する化合物、例えば、6-ヒドロキシドーパミンおよびその類縁体を含む(例えば前記のGoodmanおよびGillman参照)。アドレナリン作用性神経インヒビターはまた、ノルエピネフリンの生合成を抑制するか貯留量を枯渇させることのいずれかによりノルエピネフリンの貯蔵を枯渇させる化合物およびノルエピネフリンの放出を抑制する化合物を含む。ノルエピネフリンの生合成を抑制する化合物は、例えばα-メチルチロシンである。ノルエピネフリンの貯留量を枯渇させる化合物は、例えばレセルピン、グアネチジンおよびブレチリウムである。ノルエピネフリンの放出を抑制する化合物は、例えばクロニジンおよび他のα2-アドレナリン受容体アンダゴニストである。交感神経末端破壊物質の例は、例えばα2-アドレナリン受容体アンダゴニストである。
抗下痢剤
別の局面において、本発明の化合物は抗下痢剤である。適当な抗下痢剤の例は、これらに限定するわけではないが、ジフェノキシレート、ロペルアミド、ビスマスサブサリシレート、オクトレオチド等である(例えば前記のGoodmanおよびGillman参照)。
HMG-CoA還元酵素インヒビター
別の局面において、本発明の化合物はHMG-CoA還元酵素インヒビターである。HMG-CoA還元酵素インヒビターの例は、これらに限定するわけではないが、メバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、デルバスタチン、アトロバスタチン、フルバスタチン等である(例えば前記のGoodmanおよびGillman参照)。
平滑筋弛緩剤
別の態様において、本発明の化合物は平滑筋弛緩剤、例えばヒドララジン、パパベリン、チロプラミド、シクランデレート、イソキスプリンおよびニリドリンである。
アデノシン受容体モジュレーター
別の局面において、本発明はアデノシン受容体モジュレーターを単独または他の薬剤と組み合わせて含む悪性細胞の表現型の治療のための組成物を提供する。これらの組成物の使用方法も提供する。態様における1つのグループでは、アデノシン受容体モジュレーターは単独で使用される。態様における別のグループでは、アデノシン受容体モジュレーターは他の筋肉弛緩剤一つまたは複数と組み合わせられる。別の態様においては、本発明の化合物はメチルキサンチンのようなアデノシン受容体モジュレーターである。アデノシン受容体モジュレーターの例はテオフィリンおよびジフィリンを含む。他の例については前記のGoodmanおよびGillmanを参照できる。好ましい薬剤は上記した単独薬剤または複合剤の組成物を参照しながら説明されるものから選択される。
テオフィリン、即ち植物由来のメチルキサンチンは、気管支喘息の治療のために数十年間使用されている。テオフィリンは平滑筋、特に痙攣原性物質により実験的に、または、喘息において臨床的に収縮している気管支の平滑筋を弛緩させる。メチルキサンチン誘導の生理学的および薬理学的な推定作用機序には、1)ホスホジエステラーゼを阻害することによる細胞内の環状AMPの増大、2)細胞内カルシウム濃度に対する直接作用、3)細胞膜の分極亢進を介した細胞内カルシウム濃度に対する間接的作用、4)筋肉収縮エレメントとの細胞内カルシウム増大の関連性解除、および5)アデノシン受容体の拮抗が含まれる。
関連化合物、即ちジフィリンが好ましいアデノシン受容体モジュレーターである。この化合物は肝により代謝されず、未変化のまま腎より排出され、従って、その薬物胴体および血漿中濃度は喫煙、年齢、うっ血精神疾患または肝機能に影響する他の薬剤の使用のような肝酵素に影響する因子とは無関係である。
アデニリルシクラーゼアクチベーター
別の局面において、本発明はアデニリルシクラーゼアクチベーターを単独または本明細書に記載した他の化合物または薬剤と組み合わせて含む組成物を提供する。アデニリルシクラーゼアクチベーターであるフォルスコリンが好ましい。アデニリルシクラーゼアクチベーターの他の例は、N6、O2’-ジブチリル-cAMP、8-クロロ-cAMPおよびアデノシン3’、5’-環状モノホスホロチオエートのRp-ジアステレオマー、ならびに関連の類縁体、例えばRp-8-ブロモ-アデノシン3’、5’-環状モノホスホロチオエート、および塩酸コルフォルシンダロペートを含むフォルスコリンの誘導体を含む。
エンドセリン受容体アンダゴニスト
別の局面において、本発明はエンドセリン受容体アンダゴニストを単独または本明細書に記載した他の化合物と組み合わせて含む組成物を提供する。エンドセリン受容体アンダゴニストの例は、BE1827B、JKC-301、JKC-302、BQ-610、W-7338A、IRL-1038、LRL-1620、ボセタン、ABT627、Ro48-5695、Ro61-1790、テソセンタン(Ro61-0612、ZD1611、BMS-187308、BMS-182874、BMS-193884、シタキセンタン(TBC11251)、TBC2576、TBC3214、TBC-10950、ABT-627、アトラセタン、A-192621、A-308165、A-216546、CI-1020、EMD122946、J-104132(L753037)、LU127043、LU135252、LU302872、TAK-044(69)、SB209670、SB234551、SB247083、ATZ1993、PABSA、L-749,329、RPR111723、RPR11801A、PD164800、PD180988(CI1034)、IRL3630、IRL2500およびこれらの誘導体などを含む(Doherty,Annual Reports in Medicinal Chemistry,Volume 35,pp.73-82,Academic Press,2000参照)。エンドセリン受容体アンダゴニストであり本発明の方法において有用な他のエテンスルホンアミド誘導体はHaradaら、Chem.Pharm.Bull.,49(12):1593-1603(2001)に記載されている。
ビスホスホネート
別の局面において、本発明はビスホスホネートを単独または他の薬剤と組み合わせて含む組成物を提供する。本発明の方法において使用するための適当なビスホスホネートは、例えば、アレンドロネートナトリウム(Fosamax)、パミドロネートジナトリウム(Aredia)、エチドロネート2ナトリウム(Ididronel)等である。
cGMP依存性タンパク質キナーゼアクチベーター
別の局面において、本発明は、cGMP依存性タンパク質キナーゼアクチベーターを単独または本明細書に記載した他の薬剤と組み合わせて提供する。適当なcGMP依存性タンパク質キナーゼアクチベーターの例は、cGMP模倣体またはデュアルcGMP/cAMP依存性タンパク質キナーゼアクチベーターである。適当なcGMP模倣体または類縁体には、構造的にcGMPと同様であり、cGMPと同様の機能、例えば活性を有する化合物を含む。適当なcGMP模倣体の例には、8-ブロモ-cGMP、ジブチリル-cGMP、Rp-cGMPS、およびSp-cGMPSが包含され、有用なデュアルアクチベーターは例えばSp-8-pCPT-cGMPS、Sp-8-ブロモ-cGMPSおよび8-CPT-cAMPを含む。
グアニリルシクラーゼアクチベーター
例えば、BAY41-2272はNOと相乗作用的方法において精製された酵素を活性化させる可溶性グアニリルシクラーゼの新しいの非NO系の直接の促進剤である。
SOCインヒビター
別の局面において本発明は貯留作動性カルシウム流入(SOC)インヒビターを提供し、これは、細胞内カルシウム貯留プールの促進物質媒介の枯渇に応答した非興奮細胞内へのカルシウム取り込みを阻害する。SOCインヒビターは好ましくは以下の物質、即ち、活性化T細胞の核因子(NFAT)、各因子kB(NF-kB)、ストレスキナーゼc-JunN-末端キナーゼ(JNK)のカルシウム依存性活性化およびエキソサイトーシスの一つまたは複数を抑制し、これにより炎症メディエータの放出または同化をもたらす。SOCインヒビターの例としては、δ-ラクトン型のスタチン類、例えばロバスタチン、メバスタチン、フルバスタチン、パラバスタチン、ダルバスタチン、セリバスタチン、アトロバスタチンおよびシンバスタチンが含まれる。
他の治療選択肢には、更に薬効を増強するための抗酸化剤と組み合わせたNO模倣体が含まれる。このような抗酸化剤には、例えば、リコペン、レスベラトール、緑茶ポリフェノール(例えばECGC)、ブラシニン(白菜のようなアブラナ科の野菜由来)、スルホラファン(ブロッコリ由来)およびその類縁体であるスルホラメート、ウイサノリド(トマティロ由来)およびn-アセチルシステインが含まれる。
本発明の目的のためには、「動物」という用語は全ての哺乳類、特にヒトを指すものとする。好ましくは、NO模倣体は悪性細胞の表現型の危険性を有するかまたはこれに罹患している動物に対して投与する。このような動物はまた本明細書においては、治療を必要とする対象または患者と称する。
低酸素濃度は細胞の侵襲および侵襲性の亢進と相関付けられている。低酸素ストレスは種々の細胞の順応を誘導し、特定の遺伝子のアップレギュレーションとして顕在化する場合が多い。
例えばuPAR mRNAおよび細胞表面uPARタンパク質の濃度は低酸素条件下において上昇することがわかっている。uPARはプロウロキナーゼ型のプラスミノーゲンアクチベーター(pro-uPA)の高親和性細胞表面受容体である。pro-uPAのuPARへの結合により、不活性の1本鎖pro-uPAが切断されて活性の2本鎖型になる。なお受容体に結合している活性化された酵素はその後プラスミノーゲンをプラスミンに変換する作用を示し、これが最終的には細胞外マトリックス(ECM)の数種の成分を分解する。活性なuPAはまた潜在するメタロプロテイナーゼおよび成長因子の両方を活性化させる作用を有する。uPARはまたECM分子ビトロネクチンの受容体としても機能し、そしてインテグリンの機能をモジュレートすることもできる。複合的には、これらの機能は細胞の侵襲および潜在的侵襲性を増大させる。低酸素誘導性uPARアップレギュレーションと癌細胞の侵襲性の間の正の相関が示唆されている(Grahamら、Int.J.Cancer 1999,80:617-623)。更にまた、本発明者らは今回、24時間37℃でインキュベートしたヒトMDA-MD-231細胞においてuPARmRNA濃度を上昇させるために低酸素(1%O2)および非低酸素(5%および20%O2)条件において一酸化窒素合成酵素アンダゴニストL-NMMA(0.5mM)の投与により誘導された低酸化窒素症を示している。
侵襲および腫瘍の進行におけるuPARの役割は十分検討されているものの、その発現を支配している調節機序はほとんど理解されていない。細胞の侵襲能力はその移動を妨げる細胞外マトリックス(ECM)および基底膜を貫通するその能力に大きく依存している。この過程には多くのタンパク質分解酵素系が関与しており、そのうちuPA系が大部分を占めている。本発明者らは、現在の研究において観察された侵襲および転移のcGMP依存性の調節は少なくとも部分的にはuPARの発現の壊変を通じて媒介されていると推定している。
本発明者らは、酸素の感知とuPARの調節により表現型がcGMP依存性のシグナル伝達の低下に応答して修飾される新しい機序を示唆している。この現象は内因性のNO合成の低下によるものである。分子状酸素は酵素NO合成酵素(NOS)によるL-アルギニンからNOおよびL-シトルリンへの変換のために必須である。実際、低濃度の酸素(1〜3%)への細胞の曝露は90%までNO生産を抑制し、NOSの阻害は低酸素と同様の方法において侵襲性の表現型を誘導することがわかっている。低下したNO濃度のため、GC活性の低下とその後の細胞内cGMPの減少が起こる。実際、Taylorら(1998)が低酸素(1%O2;24時間)において腸上皮細胞を培養したところ、基底値および促進値のcGMP濃度が有意に低下している。本発明者らの研究でもまた、上皮細胞の潜在的酸素感知機序にはGCのようなヘム含有タンパク質が関与していることが示唆されている。本発明者らは低酸素濃度がcGMPの生成を低減し、そしてそれらはまた表現型の壊変ももたらすことも同様に示している。両方の試験において、これらの壊変は8-Br-cGMPの添加により克服された。本発明者らは更に、1H-[1,2,4]オキサジアゾール[4,3-a]キノキサリン-1-オン(ODQ)による可溶性グアニリルシクラーゼ(sGC)の阻害がNO模倣体の能力と拮抗することによりuPARの低酸素性アップレギュレーションを防止することを明らかにしている。これらの所見に基づいて、本発明者らはuPARの酸素媒介調節のための作業モデルを誘導した(図4)。このモデルにおいては、低酸素濃度は低下したNO合成をもたらし、その後のsGC活性化の低下をもたらした。即ち、細胞内cGMP濃度は低下し、PKG活性の低下がもたらされる。
1つの考えられる機序にはMAPキナーゼシグナル伝達経路の混乱が含まれる。この経路は低酸素により活性化され、そして、研究によれば、NOはRAS/RafのPKG媒介妨害を通じてERKのホスホリル化を防止できることがわかっている。この概念はNOドナーおよびcGMP模倣体はERKホスホリル化を抑制することによりエラスターゼを低減することを示しているYoshihideら(2000)によっても裏付けられている。これにより、後にAML1B(エラスターゼの転写因子)の活性化およびDNA結合能の低下が起こる。cGMP依存性NOシグナル伝達は同様に、低酸素誘導性ERKホスホリル化を抑制し、これによりuPARのアップレギュレーションに関与する転写因子の活性化を低下させる。
uPARのプロモーター領域には活性化タンパク質-1(AP-1)、Sp-1/3および核因子κB(NfκB)のような転写因子のための結合部位が含まれる。低酸素誘導性因子1(HIF-1)の濃度もまた、uPAR開始コドンの上流の配列を以前に検討したところ、少なくとも3箇所の潜在的HIF-1-結合部位の存在が明らかになったことから、uPAR遺伝子の転写活性化に寄与していると考えられる。更にまた、HIF-1の蓄積および転写活性は比較的高濃度(2.5〜500μM)のNO模倣体、例えばSNP、S-ニトロソ-L-グルタチオンおよび3-モルホリノシドノニミンによって低減できることもわかっている。本発明者らの研究室における予備的試験によれば、高濃度(0.1〜1mM)のGTNおよびSNPがHIF-1の蓄積および交差作用活性を抑制することが確認された。しかしながら、転移、侵襲性およびuPARの発現の低酸素性促進を完全に抑制するNO模倣体の濃度は、低酸素状況下におけるHIF-1の蓄積または交差作用活性に影響しなかった。同様に、8-Br-cGMPの投与はHIF-1の活性に影響しなかった。従って、侵襲性の表現型のcGMP依存性の調節がHIF-1の壊変を通じて媒介されるとは考えにくい。
uPARと同様、PAI-1もまた低酸素条件下において刺激されることがわかっている。WO99/57306を参照できる。更にまた、この刺激は細胞の接着の低減を伴っていた。PAI-1は52kDaのECM糖タンパク質であり、種々の正常細胞および悪性細胞により生産される。この糖タンパク質はプラスミノーゲンアクチベーターの活性の調節物質である。非可逆的な共有結合複合体の形成を通じて遊離および結合型のuPAの両方を抑制する機能を有する。PAI-1はまたビトロネクチンの同じドメインへの結合に関してuPARと競合することがわかっている。即ち、PAI-1はビトロネクチンコーティングプレートに結合した細胞を遊離させることができる。研究によれば、PAI-1は肺癌細胞の旨適インビトロ侵襲性のために必要である。
低酸素はまた、細胞毒性物質に対する細胞の耐性を増強することがわかっている。低濃度の酸素下における種々の細胞型の培養の後にRT-PCR系の示差ディスプレーを用いてPROXY-1に関する遺伝子が同定されている。WO99/57306を参照できる。43-kDaのPROXY-1タンパク質は、低酸素、DNA損傷剤、細胞毒性剤およびグルコース枯渇を含む障害に対し、これらの有害な刺激の各々に応答してPROXY-1発現の増強が観察されることから、これらの障害から細胞を保護する役割を有すると考えられている。この遺伝子が種々の未関連の細胞型により発現されるという事実と合わせると、この型の遺伝子発現は、PROXY-1が低酸素に対する細胞の順応をもたらす初期の挙動に関与する普遍的な「スイッチ」であることを示している。
しかしながら、腫瘍細胞の発生、促進、進行、生存およびアポトーシスにおけるNOの役割は細胞の型、所与の細胞内微小環境内におけるNOの濃度、NOへの細胞の曝露期間、および、おそらくは他の要因に応じて変化する。同様の理論的枠組みが、例えば急性および慢性の炎症過程および心筋および神経保護性の予備条件におけるNOの役割からも引き出されている。種々の形態の癌における薬剤耐性の形成に関して、腫瘍の進行において、そして、放射線耐性の形成において、多面発現性の転写因子としてのNFκB(核因子κB)誘導抗アポトーシスシグナルが関与していることが示唆されている。開発中の抗癌剤療法の分子標的としてのNF-κBは数人の研究者らにより紅斑に検討されている。多くの既知のNF-κBインヒビター、例えばNSAID、グルココルチコイド、COX2インヒビター、および、より最近ではプロテオソームインヒビター(NF-κBの活性化をブロックする)が効果的な、または潜在的に効果的な癌治療法の選択肢であることがわかっている。腫瘍の進行および薬剤耐性に関与する既知のNFκB誘導性遺伝子には、VEGF(血管内皮成長因子)、EGFR(表皮成長因子受容体)、COX2(シクロオキシゲナーゼ2型)、MMP(例えばマトリックスメタロプロテアーゼ2および9)、uPAR(ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター受容体)等が含まれる。炎症および癌に関する最近の研究論文において、抗炎症剤療法は早期の新生物の進行および悪性疾患への変換に対する効果的な手段であると考えられている。
NOがNFκBのアップレギュレーション/活性化のフィードバックインヒビターとして機能する可能性がある。或いは、NOはp53腫瘍サプレッサー遺伝子の発現またはBcL発現に影響すると考えられる。更にまた、NOが全く未知の機序により腫瘍細胞の薬剤感受性を増強させる可能性がある。組み合わせにより化学療法剤および/または放射線療法を用いた癌治療の慣用的方法は主に既知の作用機序に基づいていたが、現在の方法は治療の有効性と選択された薬剤の毒性特徴とを均衡させることに着目している。NO模倣体の大部分が急性および慢性時の使用において安全であるため、それは、癌の種々の形態の治療の既知の標準法にNO模倣体を追加する場合には、安全性のリスクを最小限にするための固有の機会として存在する。
一部の癌、例えば前立腺癌および乳癌の場合は、ホルモン療法が疾患の早期の段階では典型的に使用されている。ホルモン療法には前立腺癌に対しては抗アンドロゲン剤(例えばフルタミド)、およびエストロゲン受容体陽性またはER状態未知の早期の段階の乳癌に対しては抗エストロゲン剤(例えばタモキシフェン)が含まれる。一般的に、腫瘍は新しい表現型が形成される前はホルモン療法に良好に応答している。新たに形成された表現型は典型的にはもはやもとのホルモン療法には応答せず;癌のこの段階、即ちホルモン治療抵抗性/非感受性の段階の患者の予後は極めて不良となる。癌のホルモン応答段階の間のホルモン療法を用いる場合でも、患者はほてり、リビドー消失、性的機能不全、骨減少症、骨粗鬆症、自身喪失および生活の質の低下を経験する。これらの癌の表現型のホルモン応答の消失をもたらす機序は現時点では大部分が未知である。それはアンドロゲン/エストロゲン受容体の発現濃度、細胞内位置、これらのステロイド受容体の機能的活性に関連すると考えられる。或いは、それはまた種々の細胞内コンパートメントおよびサブコンパートメント、例えばミトコンドリアにおけるこれらのステロイド標的の改変された非ゲノム作用によるとも考えられる。
テストステロンおよび5-α-ジヒドロテストステロン(DHT;テストステロンの2種の重要な代謝産物の一方)を含む内因性アンドロゲンは雄性動物種における生殖組織(例えば精巣、精巣上体、精嚢、陰茎等)の発達および維持のために必須である。外来性に投与されたアンドロゲン、例えばテストステロンウンデカノエート、テストステロンプロピオネート等は典型的にはその生物学的活性を示す前にテストステロンまたはDHTに変換される。テストステロンおよびDHTの生物学的活性の大部分はシトゾル性のアンドロゲン受容体(AR)によりもたらされる。ARはステロイドホルモン-甲状腺ホルモン-レチン酸核受容体スーパーファミリーの一員である。アンドロゲンの結合により、ARはコンホーメーションの変化を起こし、抑制タンパク質を放出し、その後高ホスホリル化され、細胞核へ翻訳される。核内に入ると、ARは2量化し、アンドロゲン標的遺伝子の調節領域内のホルモン応答エレメントに結合し、その後遺伝子転写事象に至る。DHTは高親和性でARに結合し、テストステロンよりも高濃度のアンドロゲン調節遺伝子の発現を誘導する。第2の重要な代謝産物はE2であるため、テストステロンの生物学的活性はまた少なくとも部分的にはエストロゲン受容体の活性化によっても媒介される。
最近、IGF-I(インスリン様成長因子)、および、程度は低いがケラチノサイト成長因子および表皮成長因子のようなペプチド成長因子によるAR転写活性のリガンド非依存性活性化に関する証拠が得られている。他のステロイド受容体リガンドと同様、テストステロンもまたアンドロゲン依存性の細胞型におけるイオン流出の関与する場合が多い非ゲノム機序を介して生物学的活性を示すことができる。典型的には、ピコモル濃度のテストステロンの添加後のカルシウム流出がラット心筋細胞、雄性ラット骨芽細胞、ヒト前立腺癌細胞およびセルトーリ細胞において報告されている。パッチクランプ試験による直接の証拠は、テストステロンが単一冠動脈筋細胞におけるKチャンネルをオープンすることができることを示している。テストステロン媒介のイオン流出は種々の細胞型において報告されているが、これらの活性の生物学的転帰はなお不明である。
早期の局在化した前立腺腫瘍においては頻繁ではないが、ARの突然変異は多くの進行前立腺癌において確認されている。大部分の証拠によれば、AR活性は前立腺癌の進行型において、そして、一部においては遺伝子増幅事象の結果として増強されていた。多くの場合、ARはまた改変されたリガンド特異性を有すると考えられ;例えば、進行前立腺癌はしばしば、アンドロゲン非依存性であり、もはやアンドロゲン除去療法には応答しない。アンドロゲン感受性の消失は進行前立腺癌の予後が不良であることの指標となると考えられる。
NO模倣体はホメオスタシス状態の下で腫瘍細胞を維持する、即ち、ステロイド受容体の発現、発現濃度、位置、あるいは、アンドロゲンおよび抗アンドロゲン作用等に関わるイオンチャンネルの改変を防止することができると考えられる。即ち、NO模倣体の投与は、ホルモン応答性の段階にある種々の形態の癌に対しホルモン療法下に患者を維持し、二次的部位への転移およびより進行したホルモン治療抵抗性/非感受性/非感受性癌への変換を防止または遅延させることができる。NO模倣体は治療段階のホルモン療法と組み合わせて投与することができ、そして/または、緩解段階においても使用できる。
ある場合においては、NO模倣体は治療段階中の癌の根絶を確実にするための化学療法および/または放射線療法とともに使用でき、そして、緩解段階における単独療法として使用できる。癌の再発を防止するために低用量の化学療法を用いる場合は、NO模倣体は癌の再発を防止するかその時期を遅延させるため、そして最終的には癌患者の生存期間を長期化するために低用量の化学療法とともに使用できる。NO模倣体療法の追加はまた、1)麻薬様鎮痛剤に対する依存性およびその使用による副作用を低減し、そしてなおこれらの薬剤の有効性を増強し、2)骨の鉱物質の密度の進行的損失、およびその結果としての骨粗鬆症の発育と骨折の危険を防止し、そして、3)癌患者の生活の質を全体にわたって改善する。
本発明者らは、一酸化窒素は、細胞内および細胞周辺の酸素レベルの変化に対する細胞適応反応の一次メディエーターであることを今回発見した。本発明者らは、低用量一酸化窒素模倣体の投与にもかかわらず、一酸化窒素模倣活性が、悪性細胞表現型を阻害または防止するレベルへ増加、回復または維持することができることを示した。対照的に、細胞に低酸素レベルを維持する作用は、内在性一酸化窒素産生の基底レベルを阻害するように制限される。
本発明者らは現在、酸素レベルが制限される低酸素条件下では、癌細胞株が下記の悪性細胞表現型特性の1種以上を獲得することを明らかにしている:これらは、同系マウスにおけるi.v.接種後、それらの肺コロニー形成能を増大する(実験的転移);これらは、インビトロにおいて細胞外マトリックスを通じてのそれらの浸潤性を増大する(同じく転移に関連);ならびに、これらは、化学療法剤ドキソルビシン、5-フルオロウラシルに対してより抵抗性となる。これらの実験において、癌細胞は、1%O2(10〜15mmHg pO2)に曝露し、低酸素症を惹起し、かつ非低酸素5〜20%O2(30〜160mmHg)に曝露した癌細胞と比べた。低用量一酸化窒素模倣体の投与により(酸素レベルが制限された期間および/または内在性一酸化窒素産生が阻害された期間)、これらの悪性表現型の変化の獲得は妨げられた。この妨害は、細胞が極端な低酸素環境にある場合であっても生じる。
本発明者らは今回、低濃度の一酸化窒素模倣体SNPおよび/または三硝酸グリセリン(GTN)は、uPARおよびPAI-1、更にはPROXY-1の低酸素性アップレギュレーションを阻害することを明らかにしている。同様の低用量一酸化窒素模倣体療法は、L-NMMA(0.5mM)で処理された細胞において認められるもののように、同じくこれらの遺伝子の低窒素性アップレギュレーションを阻害することにおいて有効、すなわち悪性細胞表現型を阻害および防止するであろうと予想される。
低酸素条件(1%O2)で培養されたヒト乳癌細胞において実施された実験は、低酸素状態細胞の10-12M SNPによる処置が、対照低酸素状態細胞および10-8M SNPで処置した低酸素状態細胞と比べ、uPAR mRNAのレベルを有意に低下することを示した。同様に、低酸素条件で培養された乳癌細胞の低用量10-11M〜10-10Mでの一酸化窒素模倣体GTNによる処理は、未処置の低酸素状態細胞ならびにGTNの10-9M、10-8M、10-7M、10-6Mおよび10-5Mで処置した低酸素状態細胞と比べ、低酸素状態細胞においてuPAR mRNAレベルを有意に低下した。実際、10-11M GTNおよび10-10M GTNで処理した低酸素状態乳癌細胞におけるuPAR mRNAレベルは、非低酸素条件(20%O2)下で培養した細胞において測定したuPAR mRNAレベルと類似していた。GTNの10-6Mおよび10-5Mで処置した低酸素状態細胞におけるuPAR mRNAレベルは、未処理の低酸素状態細胞のレベルと類似しており、これはNO模倣体に対する耐性を示唆している。同じくuPARタンパク質レベルの低下は、これらの細胞においてこれらの一酸化窒素模倣体と共にインキュベーションの24時間後に観察された。
更なるヒト浸潤性栄養芽層細胞(HTR-8/SVneo)による実験は、これらの一酸化窒素模倣体の低用量での低酸素状態細胞においてuPAR発現を低下する能力を確認した。
HTR-8/SVneo浸潤性栄養芽層細胞の一酸化窒素模倣体GTNによる処理のPROXY-1 mRNAレベルに対する作用も試験した。PROXY-1 mRNAレベルは、20%O2において培養した細胞においては非常に低い。しかし、PROXY-1 mRNAレベルは、未処理および10-7M GTNで処理した1%O2中で培養した細胞においては増加した。比較のためのPROXY-1のレベルは、低用量10-11M GTNで処理した低酸素状態細胞においてはるかに低かった。
加えて、乳癌細胞における一酸化窒素模倣体SNPおよびGTNのPAI-1 mRNAレベルに対する作用を試験した。再度、低酸素状態細胞の低用量一酸化窒素模倣体SNP(10-12M)およびGTN(10-11M)による処理は、未処理の低酸素状態細胞と比べ、PAI-1 mRNAのレベルを有意に低下した。
様々な酵素(例えば、メタロプロテアーゼ、ゲラチナーゼなど)レベルに対する低用量一酸化窒素模倣体の作用を確認する実験も行った。乳癌細胞は、変動する濃度のSNPまたはGTNの存在する低酸素条件または対照条件下で培養した。低酸素状態細胞の低用量一酸化窒素模倣体、10-11M GTNおよび10-12M SNPによる処理は、未処理の低酸素状態細胞と比べ、細胞から分泌されたゲラチナーゼの低下を生じた。
機能的に、その後これらの遺伝子の低酸素状態でのアップレギュレーションの阻害は、細胞浸潤および薬物耐性の低下を生じることが示された。一酸化窒素模倣体の存在下または非存在下での低酸素条件における細胞の浸潤性も、Materigel浸潤チャンバー(Boydenチャンバーの変形)を用いて評価した。これらのインビトロ浸潤アッセイにおいて、乳癌細胞(図1参照)またはHTR-8/SVneo浸潤性栄養芽層のいずれかを、Materigel被覆膜上に配置した。その後細胞を、低酸素条件または通常の条件下で、単独でまたは一酸化窒素模倣体の存在下でインキュベーションした。各処置に関する浸潤インデックスを、膜を浸潤した細胞を染色しかつそれらを計数することにより決定した。両細胞株において、低用量一酸化窒素模倣体による処理は、未処理の低酸素状態細胞と比べ、低酸素状態細胞の浸潤を有意に低下した。10-10M SNPおよび10-11M GTNで処理した低酸素状態乳癌細胞の浸潤インデックスは、非低酸素条件下で培養した細胞と類似しているかもしくはそれよりも低かった。HTR-8/SVneo栄養芽層細胞において、10-7M GTNは、低酸素状態細胞の浸潤性を56.2%阻害したのに対し、10-8M SNPは浸潤性を63.4%阻害した。
次に低用量一酸化窒素模倣体の動物における腫瘍細胞の転移を阻害する能力を確認した。第一の実験セットにおいて、低酸素条件の転移数を増加する能力が明らかにされた。これらの実験においては、マウスに、尾静脈注射により、ボーラス転移性黒色腫細胞を投与した。注射直後に、マウスを2群に分けた。第一群は、21%O2(室内大気)を含有する混合気体の連続流れを伴うチャンバーに入れた。第二群は、わずかに10%O2の低酸素環境に置いた。24時間後、両群を取出し、室内大気に維持した通常のケージに入れた。14日後、これらの動物を屠殺し、かつ動物の肺内の転移結節を計数した。低酸素環境にあった動物は、非低酸素環境の動物と比べ、統計学的に2倍多い数の肺結節を有していた。
第二の実験セットにおいて、マウスに、低濃度一酸化窒素模倣体(GTN;2x10-11M)の存在下または非存在下、1%または20%O2中で12時間プレインキュベーションしたマウス黒色腫細胞を注射した。14日後、このマウスを屠殺し、かつ肺を転移性結節について肉眼により観察した。加えて、これらのマウスにおける肺結節の数を比較した。注射前に一酸化窒素模倣体で処理した低酸素および非低酸素の黒色腫細胞が投与された動物の肺は、未処置の低酸素状態および非低酸素状態の黒色腫細胞のいずれかを投与した動物と比べ、統計学的に減少した転移性結節を示した(図2参照)。特に、2x10-11M GTNによるインビトロ前処理は、低酸素状態が刺激した肺結節形成を85%低下し、かつ20%酸素中においてでさえ、GTN前処理は、60%よりも多く転移の程度を低下した。実際に、GTN前処理による肺結節形成の抑制は、インビトロ酸素化レベルとは無関係に同等であることがわかった。更に、これらの細胞のマウスへ接種前のL-NMMAによる処理は、肺結節数の63%の全般的増加を生じた(p<0.01;post hocフィッシャー検定)。GTN(10-10M)およびL-NMMAを用いる併用処理は、この転移性反応を60%まで減弱した(p<0.0005)。これら3種の実験群を通じての肺結節の頻度分布は、0〜111の範囲であった。対照マウス2匹およびGTN処理したマウス4匹においては、肺結節は見つからなかった。三分位値(tertile)による肺結節頻度の特徴決定は、L-NMMA処理群と比べ、NO模倣体処理群を通じての一貫した抑制パターンを明らかにした。加えて、GTN処理群の転移は、最高の三分位値であっても対照レベル以下と有意に低かった。まとめると、これらのデータ(date)は、酸素それ自身ではないNOのレベルが、転移性表現型の重篤度を決定することを示している。更に低濃度のGTN処理の肺結節形成に対する作用は、これらは未処理の細胞とインビトロコロニー形成能が類似しているので、細胞に対する非特異的細胞傷害性または増殖阻害性作用には起因していない。
本明細書を読む際に当業者に理解されるように、これらのマウスモデルにおける試験結果は、ヒトを含む他の種における薬物素因を推定し、ヒトを含む様々な種における薬物動態学的当量を定義し、ならびに他の実験動物モデルおよびヒト臨床試験用の投与計画をデザインするために使用することができる。このような薬物動態学的増減は、Mordenti J. J. Pharm. Sci.、75(ll):1028-1040(1986)のような参考文献で証明されたように、本明細書に提供されるようなデータを基に日常的に行われている。
更に、NO模倣体のヒトにおける疾患進行を低下する能力が明らかにされた。この試験において、連続的に経皮貼付剤を用い、非常に低用量のGTN(0.033mg/時)を、再発性前立腺癌の患者に送達した。前立腺癌患者は、この種の癌の進行が前立腺特異抗原(PSA)血漿レベルと良く相関しているので、本試験のために選択した。従って、低用量NO模倣体療法の転帰は、PSAレベルの測定により容易に評価することができる。この試験における患者2名のデータを分析したところ、GTN処理の2ヶ月以内に血漿PSAレベルにおける急激な減衰が明らかになり、従ってこれは低用量NO模倣体療法が、ヒトにおける癌、特に前立腺癌の管理に有効な手法であることを示している(図3Aおよび3B参照)。血漿PSAレベルは、Immuno 1(Bayer社)などの市販のイムノアッセイキットにより測定した。
低用量一酸化窒素模倣体が乳癌細胞のドキソルビシンに対する抵抗性を低下する能力も試験した。これらの実験において、低酸素状態のドキソルビシンに対する抵抗性を増加する能力が最初に確認された。濃度25および50μMのドキソルビシンにおいて、1%O2に曝露した細胞は、20%O2に曝露した細胞と比べ、より高い生存率を有した。次に低用量一酸化窒素模倣体GTNの低酸素および非低酸素状態細胞のドキソルビシン抵抗性に対する作用を試験した。10-6Mおよび10-10MのGTNで処理した低酸素状態癌細胞は、未処理の低酸素状態細胞と比べ、より低いドキソルビシン生存率を有することがわかった。一酸化窒素模倣体処理した低酸素状態細胞の生存率は、未処理の非低酸素状態細胞および一酸化窒素模倣体で処理した非低酸素状態細胞において認められたものと同等であった。これらの結果は、多発性ヒト癌に加えマウス癌において、および他の抗悪性治療様式により、確認されている。
従ってこれらの試験は、低酸素症により誘導されるような悪性細胞表現型は、一酸化窒素模倣活性のレベルを増加(回復)することにより阻害および防止することができることを明らかにする。悪性細胞表現型を誘導するように細胞の一酸化窒素模倣活性を低下することがわかっている他の因子は、以下を含むが、これらに限定されるものではない:アルギニンレベルの低下、L-NMMAおよびADMAのような内在性一酸化窒素シンターゼアンタゴニストへの曝露、スーパーオキシドのような内在性一酸化窒素捕捉剤への曝露、一酸化窒素シンターゼ発現における変化、GSHおよびNADPHなどの補因子の変化、グルコース枯渇、外科的手技、麻酔薬の投与、血圧降下剤に限定されない循環を変更する薬学的物質の投与、ならびに失血、血量低下および出血に関連したものを含むが、これらに限定されるものではないような外的損傷。本発明は、低用量の1種以上の一酸化窒素模倣体を投与することにより、これらおよび他の因子により生じた、悪性細胞表現型を阻害および防止する方法に関する。
本発明の低用量一酸化窒素模倣体療法は更に、血管新生としても公知である、最終的に腫瘍による血管内皮細胞の漸増(recruitment)および腫瘍への血液供給の発生を生じるような血管内皮細胞の悪性細胞表現型を防止するであろう。血管内皮細胞内のVEGFをブロックすることにより腫瘍への血液供給を遮断する試みは、癌治療としては余り成功していない。腫瘍内のVEGFの存在は、腫瘍浸潤性を抑制することが示されている。従って、抗VEGF抗体のようなVEGFの作用を取除くかまたはブロックするような物質は、実際により攻撃的な癌細胞表現型を生じると考えられている。しかし本発明を用い、より攻撃的な悪性細胞表現型が生じることを防止することができ、これにより、より攻撃的な癌細胞を生じることなく血管新生を防止する抗VEGF療法が可能になる。
これらの試験は更に、低用量NO模倣体療法の患者の腫瘍マーカーレベルを低下する能力を明らかにしている。腫瘍マーカーレベルは、癌の進行の指標として、当業者により日常的に使用されている。従って、低用量NO模倣体療法のこれらのマーカーレベルを低下する能力は、それの癌治療能の指標である。更に、患者の腫瘍の進行は、低用量一酸化窒素模倣体の存在下で患者の腫瘍マーカーレベルを測定することにより、診断および/または経過観察することができる。
最終的に悪性細胞表現型を防止または阻害するのに十分な細胞の一酸化窒素模倣活性の増加、回復または維持を生じるような一酸化窒素模倣体の低用量処方は、当該技術分野において公知の処方方法に従い作成することができる。本発明の方法に従う一酸化窒素模倣体投与のための処方は、軟膏剤、経皮貼付剤、経頬側貼付剤、注射剤、鼻腔吸入剤、口から肺深部への送達のための噴霧剤、経口投与で摂取可能な錠剤およびカプセル剤、ならびに経口粘膜組織経由の投与のための錠剤またはトローチ剤、もしくは「キャンディー(lollipop)」製剤の形状であることができる。後者の製剤は、舌の上または下、もしくは頬側口腔に保持しながら溶ける錠剤、トローチ剤などを含む。この薬学的調製は、細胞の一酸化窒素模倣活性が低下されている期間に、一酸化窒素模倣活性を悪性細胞表現型を阻害または防止するレベルに増加、回復または維持に十分な低用量、本明細書においては治療有効量とも称される量の一酸化窒素模倣体を提供することが好ましい。更に1種以上のNO模倣体を含有する処方も好ましい。この態様において、NO模倣体は、NO経路の様々な部分を標的とするかまたはこれに作用することが好ましい。例えば、NO供与体は、ホスホジエステラーゼインヒビターのような、環状ヌクレオチド(例えば、cAMPまたはcGMP)分解を阻害する化合物と同時投与することができる。NO模倣体として有用な好ましいホスホジエステラーゼ(PDE)インヒビターは、PDE-1からPDE-5を阻害するものである。
本発明の方法は広範な疾患の治療のために有用であるが、特に、肺癌、例えば非小細胞肺癌および小細胞肺癌;中皮腫;胸腺腫瘍;乳癌、例えばインサイチューの腺管癌、インサイチューの小葉癌、特殊型の腺管癌および侵襲性の小葉癌;結腸直腸癌;肛門癌;食道癌;胃癌;小腸および類癌腫;肝癌、例えば原発性肝癌および肝細胞癌;胆道の癌、例えば胆管癌;膀胱の腫瘍;膵臓癌;内分泌癌、例えば甲状腺癌、副腎癌および神経芽腫;泌尿器癌、例えば腎臓癌、ウィルムス腫、膀胱および子宮の癌、前立腺癌、ならびに精巣癌;婦人科癌、例えば卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、膣外陰部癌および栄養膜癌;頭部および頚部の癌、例えば喉頭癌、口腔癌、鼻咽頭癌、鼻腔および副鼻腔の癌、癌部および眼窩の癌、ならびに唾液腺腫瘍;中枢神経系の腫瘍、例えば原発性脳腫瘍および脳転移;皮膚癌、例えば原発性皮膚悪性黒色腫および非黒色腫性皮膚癌;血液学的悪性疾患、例えば急性白血病、慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫および骨髄腫;骨および軟組織の悪性疾患、例えば骨肉腫、ユーイング肉腫、他の原発性骨腫瘍および軟組織の肉腫;未知の原発部位の癌;新生物随伴症候群、例えば内分泌の新生物随伴症候群、神経学的な新生物随伴症候群、血液学的な新生物随伴症候群、および、皮膚科的新生物随伴症候群;およびAIDS関連悪性疾患、例えばカポジ肉腫、非ホジキンリンパ腫および原発性の中枢神経系リンパ腫に効果的である。表2は本発明の方法および製剤を用いて治療できる癌の例、および、これらの癌を治療するために用いられている処置の現在の標準並びにこれらの癌を治療するために用いられている研究中の治療法を示す。
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本発明の処方は、1種以上の薬学的に許容できる担体と共に処方された、治療有効量の一酸化窒素模倣体を含有する。本明細書において使用される用語「薬学的に許容できる担体」とは、無毒の不活性の固形、半固形、または液体の充填剤、希釈剤、カプセル封入剤またはあらゆる種類の処方補助剤を意味する。薬学的に許容できる担体として利用することができる物質の例の一部は、乳糖、ブドウ糖およびショ糖のような、糖類;コーンスターチおよびジャガイモデンプンのような、デンプン類;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースのような、セルロースおよびその誘導体類;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび坐薬用ワックスのような、賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油およびダイズ油のような油分;プロピレングリコールのような、グリコール類;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのようなエステル類;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような緩衝剤;アルギン酸;パイロジェン非含有水;等張生理食塩水;リンガー液;エチルアルコール;およびリン酸緩衝液に加え、その他の無毒の相溶性の滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムがある。着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、矯味・矯臭剤および香料、保存剤および酸化防止剤も、処方者の判断に従い処方中に存在することができる。本発明の処方は、ヒトおよび他の動物へ、経口、経直腸、非経口、槽内、膣内、腹腔内、局所的(散剤、軟膏剤、またはドロップ剤として)、舌上(supralingually)(舌の上側)舌下(sublingually)(舌の下側)、頬側(頬側口腔に保持)、もしくは経口または経鼻噴霧剤的に投与することができる。経口噴霧剤は、経口吸入により肺深部に送達されるような粉末または霧の形状であることができる。
また別の態様では、悪性細胞の表現型疾患を治療するために、本発明は一つまたは複数の前記医薬化合物、および薬学的に許容されるキャリアを含む局所用保持徐放薬学的組成物を提供する。局所用処方の1例には75%(w/w)の白色鉱油USP、4%(w/w)のパラフィンワックスUSP/NF、14%(w/w)のラノリン、2%のソルビタンセスキオレエート、4%のプロピレングリコールUSP、および1%の本発明の化合物が含まれる。このような組成物は癌の治療とそれに付随する苦痛を制御し軽減するのに有用である。このような組成物は単位用量の一つまたは複数の有効成分(例えばNOドナー、カルシウムチャンネルブロッカー、コリンモジュレーター、α-アドレナリン受容体アンダゴニスト、β-アドレナリン受容体アゴニスト、ホスホジエステラーゼインヒビター、cAMP-依存性タンパク質キナーゼアクチベーター、スーパーオキサイドスカベンジャー、カリウムチャネルアクチベーター、SOCインヒビター、ベンゾジアゼピン、アドレナリン受容体神経インヒビター、抗下痢剤、HMG-CoA還元酵素インヒビター、平滑筋弛緩剤、アデノシン受容体モジュレーター、アデニリルシクラーゼアクチベーター、cAMP模倣体、エンドテリン受容体アンダゴニスト、ビスホスホネート、cGMP依存性タンパク質キナーゼアクチベーター、およびcGMP模倣体)を含みうる。この組成物はこのような治療が必要な対象に単位用量の形で投与されることが好ましい。局所保持徐放組成物は典型的には変形体であり、1)親水性基剤中の吸収剤、2)疎水性基剤中の吸収剤、および3)適当な賦形剤中に分散した吸収マトリックスを含む被覆ビーズを含む。また、本発明は癌の治療法であって、有効量のこのような化合物をこのような治療を必要とする対象に局所的に(例えば単位用量の形で)投与することを含む治療法を提供する。
本発明のこのような親水性組成物と製剤は本発明の化合物と、目的の化合物をポリマーに結合させるためのセルロース(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)等のポリマー、高分子量ポリエチレングリコール、メタクリル-アクリル酸エマルジョン、ヒドロゲル、カーボポール、エチルビニルアセテートコポリマー、またはポリエステル等のポリマーを含む。次いで化合物とポリマーのマトリックスを親水性賦形剤中に分散して半固体を形成する。このような親水性組成物を適当な領域に投与後、半固体製剤中の水が吸収され、有効成分(例えば医薬化合物)を有するポリマーマトリックスがそれを施した領域中に被覆剤として残存する。次いで医薬化合物が徐々にこの被覆剤から放出される。
本発明の疎水性組成物と製剤は親水性製剤中で用いられたものと類似のポリマーを用いるが、ポリマー/化合物マトリックスは疎水性組成物および製剤中の成形基剤等の賦形剤中に分散される。成形基剤は薬学的組成物を部分的にのみ溶解する鉱物油器材である。半固体組成物は、例えば膣または尿管等に組成物が施される薄い被覆膜を形成し、有効成分を徐々に放出する。原理的に遅延作用は有効成分の賦形剤中への溶解度で制御される。
本発明はまた、最初に本発明の化合物または化合物の組み合せを、ポリエチレングリコール、充填剤、結合剤その他の賦形剤とブレンドされたセルロース材料上に吸収する被覆ビーズを提供する。 次いで得られたマトリックスを押出し球形にし(例えば球状にする工程)、小さなビーズを製造する。ビーズは一つまたは複数の適当な材料、例えばメタクリル-アクリルポリマー、ポリウレタン、エチルビニルアセテート共重合体、ポリエステル、シラン化合物等で適当な厚さに被覆される。ビーズ上の被覆は核心となるビーズから化合物の放出を制御する速度制御膜として作用する。
他の態様では、本発明は経口投与に適した薬学的組成物であって、単位用量当りNOドナー、カルシウムチャンネルブロッカー、コリンモジュレーター、α-アドレナリン受容体アンダゴニスト、β-アドレナリン受容体アゴニスト、ホスホジエステラーゼインヒビター、cAMP-依存性タンパク質キナーゼアクチベーター、スーパーオキサイドスカベンジャー、カリウムチャネルアクチベーター、SOCインヒビター、ベンゾジアゼピン、アドレナリン受容体神経インヒビター、抗下痢剤、HMG-CoA還元酵素インヒビター、平滑筋弛緩剤、アデノシン受容体モジュレーター、アデニリルシクラーゼアクチベーター、cAMP模倣体、エンドテリン受容体アンダゴニスト、ビスホスホネート、cGMP依存性タンパク質キナーゼアクチベーター、cGMP模倣体、および薬学的に許容されるキャリアを含む単位用量の形で提供される薬学的組成物を提供する。このような組成物は、上記疾患および病状を含む癌の治療に有用である。
頬膜へ送達するため、典型的にはロゼンジ、錠剤またはカプセル等の経口製剤が使用される。これらの製剤の製造法は公知であり、医薬剤を製造前の錠剤に添加し、不活性充填剤、結合剤、および薬学的化合物またはその化合物を含む物質を低温で圧縮し(米国特許第4,806,356に記載)、カプセル化する工程を含むがそれに限定されない。他の経口製剤はセルロース誘導体、例えば米国特許第4,940,587に記載のヒドロキシプロピルセルロース等の接着剤で口腔内に投与されるものである。この頬接着剤製剤を頬粘膜に投与すると、口の中、および頬粘膜を通る医薬成分の放出を制御することができる。本発明の化合物をこのような製剤中へ取り込むことができる。
鼻または気管支に送達するため、典型的なエアロゾル製剤が用いられる。「エアロゾル」と言う用語は気管支または鼻腔中へ吸入可能な、医薬成分の任意の気体状の懸濁相を含む。具体的には、エアロゾルは定用量吸入器または噴霧器、または霧スプレー器中で生成する、本発明の化合物の液滴の気体状懸濁物を含む。エアロゾルはまた、空気または他のキャリアーガス中に懸濁した目的の医薬化合物の乾燥粉末組成物を含み、例えば吸入器から通気により送達される。エアロゾルを調製するために使用される溶液では、医薬成分の濃度の好ましい範囲は0.1〜100mg/ml、より好ましくは0.1〜30mg/ml、および最も好ましくは1〜10mg/mlである。通常、溶液はリン酸塩または重炭酸塩等の生理学的に受容し得る緩衝剤で緩衝される。通常のpH範囲は5〜9、好ましくは6.5〜7.8、およびより好ましくは7.0〜7.6である。典型的には、浸透圧を好ましくは等張の10%以内の範囲の生理的範囲に調製するため、食塩が添加される。エアロゾル吸入剤を調製するためのこのような溶液の製剤化はRemington, Pharmaceutical Scienceに記載されている。Gandertonら、Drug Delivery to the Respiratory Tract、Ellis Horwood(1987);Gonda、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、6:273-313(1990);およびRaeburnら、J. Pharmacol. Toxicol. Methods、27:143-159(1992)も参照のこと。
経口投与のための液体剤形は、薬学的に許容できる乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤を含む。液体剤形は、有効化合物に加え、当該技術分野において通常使用される、例えば、水または他の溶媒のような不活性希釈剤、可溶化剤および乳化剤、例としてエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油分(特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含有することができる。更に経口処方は、不活性希釈剤に加え、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、矯味・矯臭剤ならびに香料などの添加剤を含有することもできる。例えば、無菌の注射可能な水性または油性懸濁液のような注射可能な調製物は、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用い、当該技術分野において公知の技術に従い処方することができる。この無菌の注射可能な調製物は、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液などの、無毒の非経口的に許容できる希釈剤または溶剤中の、無菌の注射用溶液、懸濁液または乳液であることもできる。使用することができる許容できるビヒクルおよび溶剤の中で、水、米国薬局方リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、無菌の不揮発油が、通常溶媒または懸濁媒質として使用されている。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含むいずれかの商品名の不揮発油を使用することができる。加えてオレイン酸のような脂肪酸を、注射可能な調製物中で使用することができる。
注射可能な処方は、例えば細菌残留フィルターを通す濾過、もしくは使用前に滅菌水または他の注射可能な媒質へ溶解または分散することができるような無菌の固形組成物の形の滅菌剤の混入により、滅菌することができる。
一酸化窒素模倣体の作用を延長することが望ましいような場合において、皮下または筋肉内注射からの一酸化窒素模倣体の吸収を遅延することができる。これは、溶解度が低い結晶または非晶質物質の液体懸濁液の使用により達成することができる。次に一酸化窒素模倣体の吸収速度は、結晶サイズおよび結晶形によって左右され、その解離速度に応じても左右される。あるいは非経口投与された処方の遅延された吸収は、一酸化窒素模倣体の油性ビヒクル内への溶解または懸濁により達成される。注射可能なデポ剤は、ポリラクチド-ポリグリコリドのような生分解性ポリマー中の薬物のマイクロカプセルマトリックスの形成により製造される。薬物対ポリマーの比および使用した粒子状ポリマーの性質に応じて、薬物放出速度は制御され得る。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)を含む。デポ剤注射可能な処方は更に、一酸化窒素模倣体を生体組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に捕獲することにより調製することができる。
経直腸または経膣投与のための処方は、一酸化窒素模倣体の、周囲温度では固体であるが体温では液体でありその結果直腸または膣洞で溶融しこれにより一酸化窒素模倣体を放出するような適当な非刺激性賦形剤または担体、例えばココアバター、ポリエチレングリコールまたは坐薬用ワックスなどとの混合により調製された坐薬、スポンジ、またはリングが好ましい。
経口投与のための固形剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤を含む。このような固形剤形においては、一酸化窒素模倣体は、少なくとも1種の不活性の薬学的に許容できる賦形剤または担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または;充填剤または増量剤、例えばデンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトールおよびケイ酸;結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、およびアラビアゴム;保湿剤、例えばグリセロール;崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム;溶解抑制剤、例えばパラフィン;吸収促進剤、例えば4級アンモニウム化合物;湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびグリセロール一リン酸;吸着剤、例えばカオリンおよびベントナイトクレイ;ならびに滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合は、その剤形は更に緩衝剤を含有することができる。
類似型の固形組成物も、乳糖またはミルクシュガー、更には高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を用い、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル剤中に充填剤として使用することができる。錠剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤のような固形剤形は、薬学処方分野においては周知のように腸溶性コーティングおよび他のコーティングのように、コーティングおよびシェルにより調製することができる。これらは、任意に不透明化剤を含有してもよく、かつ一酸化窒素模倣体のみを、または優先的に腸管の特定部位において、任意に遅延型で、放出するような組成物であることもできる。使用することができる埋込み型組成物の例は、高分子物質およびワックスである。
散剤および噴霧剤は、一酸化窒素模倣体に加え、乳糖、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などを含有することができる。噴霧剤は、更に習慣的に噴射剤、例えば、クロロフルオロカーボンまたは1,3,4-Aとも称されるDIMELのような別の非CFC噴射剤を含有することができる。
一酸化窒素模倣体の局所的または経皮的投与のための剤形は、軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、液剤、噴霧剤、吸入剤、または貼付剤を含む。一酸化窒素模倣体は、無菌条件下で、薬学的に許容できる担体ならびに必要とされる保存剤および/または緩衝剤と混合される。眼科用製剤、点眼液、眼用軟膏、散剤および液剤も、本発明の範囲内で考案されている。経皮的貼付剤は、一酸化窒素模倣体の生体への制御された送達を提供するという更なる利点を有する。このような剤形は、一酸化窒素模倣体の溶解または粉末媒質中への分散により作成することができる。吸収増強剤も、皮膚を通しての一酸化窒素模倣体の流出を増加するために使用することができる。その速度は、速度制御膜を提供するかもしくは一酸化窒素模倣体をポリマーマトリックスまたはゲル中に分散するかのいずれかにより制御することができる。
軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤およびゲル剤は、一酸化窒素模倣体に加え、動物性および植物性脂肪、油分、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、もしくはそれらの混合物のような賦形剤を含有することもできる。
好ましい送達の様式は、定常状態の血漿濃度を維持するために、一酸化窒素模倣体の妥当な定常状態での送達を提供するものである。このような送達は、物質の血漿濃度におけるあらゆる実質的初期スパイク(initial spike)を避け、これは負の副作用をもたらすような血漿濃度を避けるために望ましいであろう。
市販の一酸化窒素模倣体を含有するこれらの処方について、本発明の方法において使用するための低用量処方は、市販の高用量処方と同じ方法であるが、これは悪性細胞表現型を阻害または防止するおよび/または抗悪性治療様式の効能を増強するレベルで細胞に対する一酸化窒素模倣活性を増加、回復または維持するのに十分な程低用量で処方されることが好ましい。処方の方法は、医薬処方に関する技術者の技術の範囲内であり、かつ「レミントン薬科学(Remington's Pharmaceutical Science)」(第18版、Alfonso R. Gennaro編集、Mack Publishing社、イーストン、ペンシルバニア州、USA、1990年)などの労作において十分に説明されている。
本発明の方法および処方は、転移、および腫瘍細胞の化学療法剤、放射線療法、免疫療法および温熱療法を含むが、これにに限定されない抗悪性治療様式に対する抵抗性の発生を阻害することにおいて特に有用である。低用量NO模倣体と組合わせて有用な化学療法剤の種類の例は、以下を含むが、これらに限定されるものではない:抗VEGF薬、アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、エチレンイミンおよびトリアゼンなどを含むが、これらに限定されるものではない抗血管形成剤;代謝拮抗物質、例えば葉酸アンタゴニスト、プリンアナログ、およびピリミジンアナログなど;抗生物質、例えばアントラサイクリン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、マイトマイシン、ダクチノマイシン、およびプリカマイシン;エンドセリン活性化剤;L-アスパラギナーゼのような酵素;ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼインヒビター;5αレダクターゼインヒビター;17β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ3型のインヒビター;グルココルチコイド、エストロゲンまたは抗エストロゲン、アンドロゲンまたは抗アンドロゲン、プロゲスチン、および黄体形成ホルモン放出ホルモンアンタゴニストなどの、ホルモン物質;酢酸オクトレオチド;エクチナサイジンおよびその誘導体のような、微小管破壊物質;タキサンのような、微小管安定化物質、例えば、TAXOL(パクリタキセル)、TAXOTERE(ドセタキセル)およびそれらのアナログ、ならびにエポシロンまたはそれらのアナログ;ビンカ・アルカロイド;エピポドフィロトキシン(epipodophyllotoxin);トポイソメラーゼインヒビター;プレニル-タンパク質トランスフェラーゼインヒビター;ならびに、その他の物質、例えばヒドロキシ尿素、プロカルバジン、ミトタン、ヘキサメチルメラミン、プラチナ配位錯体、例えばシスプラチンおよびカルボプラチン、生物学的反応修飾剤、増殖因子、および免疫変調剤またはモノクローナル抗体。本発明において有用な種類の化学療法剤の代表例は、アクチノマイシンD、アフラコン(aflacon)、硫酸ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カルムスチン、クルラムブシル、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ディスコデルモリド(discodermolide)、塩酸ドキソルビシン、エストラムスチン、エストラムスチンリン酸ナトリウム、エトポシド、リン酸エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、イダルビシン、イフォスファミド、インターフェロン、インターロイキン、ロイプロリド、レバミソール、ロムスチン、塩酸メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシンC、パクリタキセル、ペンタスタチン、プテリジン、キノカルシン、リツキシマブ、サフラシン(safracin)、サフラマイシン、セムスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、酒石酸ビノレルビン、アルデスロイキン(インターロイキン-2;プロロイキン)、アレムツズマブ(カンパス;21-28kDa細胞表面グリコプロテインCD52にたいするモノクローナル抗体)、アルトレタミン(ヘキサレン;ヘキサメチルメラミン;HML)、アミフォスチン(エチオール;WR2721)、アミノグルテチミド(シタドレン;エピテン)、アムサクリン(m-AMSA;AMSA;アムシジル)、アナストロゾン(アリミデックス)、砒素トリオキサイド(トリセノックス)、アスパラギナーゼ(エルスパー;L-アスパラギナーゼ)、バチラスカルメッテグエリン(BCG;テラシスト;TICE)、ベキサロテン(ターグレチン)、ビカルタミド(カソデックス)、カパシタビン(ゼローダ)、カルムスチン(BCNU、ビスクロロニトロソウレア)、ダウノルビシンリポソーム(ダウノキソーム)、デニロイキンディフチトックス(オンタク;DAB389IL-2)、デクスラゾキサン(ジネカード;ICRF-187)、ドセタクセル(タキソテレ)、ドキソルビシン(アドリアDOX;ルベックス;アドリアマイシン;ヒドロキシダウノルビシン)、ドキソルビシンリポソーム(ドキシル)、エピルビシン(エレンセ;EPI)、エリスロポエチン(プロクリット;エポゲン;EPO)、エキセメスタン(アロマスチン)、フィルグラスチン(ニューポゲン;G-CSF[顆粒球コロニー刺激因子])、フロクスリディン(FUDR;5-フルオロ-2-デオキシウリジン)、5-フルオロウラシル(5-FU;エフデックス)、ゲムシタビン(ゲムザール)、ゲムチュズマブオゾガミシン(CMA-676;マイロターグ)、ゴセレリン(ゾラデックス)、イマチニブ(ST1570;グリーベック;CGP57148B)、インターフェロンアルファ(イントロンA;ロフェロン)、イリノテカン(CTP-11;カンプトサール)、イソトレチニオン(アキュタン;13-シス-レチノール酸)、レトロゾール(フェメラ)、メクロレタミン(マスターゲン)、メゲストロール酢酸(メガセ)、メンサ(メスネックス;2-メルカプトエタンスルフォン酸)、マイトマイシンC(ムタマイシン)、ミトキサントロン(ノバントロン;DHAD;DHAQ)、ニルタミド(ニランドロン)、オキサリプラチン(エロキサチン;DACH-プラチナ)、ペメトレキシド(アリムタ;LY231514)、ペントスタチン(dCF;ニペント;2’-デオキシコフォルマイシン)、プロカルビン(マチュラン;ナチュラナール;N-メチルヒドラジン)、ラルチトレックスド(トムデックス;ZD1694)、サルグラモスチム(ロイキン;GM-CSF[顆粒球単球コロニー刺激因子])、ストレプトゾシン(ザノサール;ストレプトゾトシン)、UFT(ウラシル;タガファー)、テモゾロミド(テモダール)、トレミフェン(ファレストン)、トラスチュマブ(ヘルセピン、抗HER-2抗体;rhuMAbHER2)、トレチニオン(ベサノイド、全トランスレチノール酸)、トリメトレキセート( TMTX;ノイトレキシン;TQM)、ビノレルビン(ナベルビン)、およびこれらの任意のアナログまたは誘導体。
癌を罹患した動物には、腫瘍細胞の転移能を阻害し、加えて癌細胞殺傷を目的とし同時投与される抗悪性治療様式の効能を増強するために、低用量一酸化窒素模倣体を投与することができる。この態様において、一酸化窒素模倣体は、腫瘍の外科的除去後、前または同時に、および/または放射線または化学療法の後、同時、または前に、他の抗悪性治療様式と組合わせて、動物へ投与することができる。この療法は、更に腫瘍へと血管内皮細胞の血管新生を阻害することを目的とした抗VEGF薬の効能を増強すると考えられる。この態様において、低用量一酸化窒素模倣体療法は、抗VEGF抗体のような抗VEGF薬の投与の前に、同時にまたは後に、動物へ投与することができる。この態様において、一酸化窒素療法は、少なくともわかっている抗VEGF薬の活性期間を通じて維持されることが好ましい。低用量一酸化窒素模倣体療法は、更に予防療法として、癌発症のリスクの高い動物に、悪性細胞表現型を伴う細胞の発生を防止するために投与することができる。この態様において、低用量一酸化窒素模倣体は、動物へ、その生存期間を通じて直接投与することができる。従って、長期間の持続放出型投薬処方の投与が、これらの動物において好ましい。加えて低用量一酸化窒素療法は、悪性細胞表現型を伴う細胞を誘導するために、細胞の一酸化窒素模倣活性を低下する因子に曝露されることが推定されるかまたはわかっているような動物に投与することができる。この低用量一酸化窒素療法の投与は、これらの動物における悪性細胞表現型の発生を阻害すると予想される。この態様において、少なくともこの因子に動物が曝露されている限りは、一酸化窒素模倣体療法が投与されることが好ましい。例えば、手術および麻酔の両方が、細胞の一酸化窒素模倣活性を低下し、その結果悪性細胞表現型を誘導する因子であると考えられる。従って動物における手術手技および/または麻酔薬投与の前または途中に、悪性細胞表現型を防止および阻害するために、その動物に低用量一酸化窒素模倣体を投与することもできる。この態様において、一酸化窒素模倣体が、少なくとも動物が手術手技を施されているおよび/または麻酔薬の作用下にある期間は投与されることが好ましい。同様に、物理的外傷、特に失血、血量の低下または出血を伴う物理的外傷を受けた動物は、悪性細胞表現型を防止および阻害するために、低用量一酸化窒素模倣体を投与することができる。更に低用量一酸化窒素模倣体の同時投与は、血圧降下剤などの、循環を変更する薬学的物質の投与時に発生し得るような悪性細胞表現型を阻害または防止するために使用することができると考えられている。この態様において、一酸化窒素模倣体は、これらの他の物質と共に毎日、もしくは他の物質が投与される期間よりも長いような長期間持続放出型処方で投与されることが好ましい。
下記の限定的でない実施例は、本発明の更に詳細な説明のために提供される。
実施例
実施例1:材料および方法
A.材料
組織培養培地(RPMI 1640)およびウシ胎仔血清(FBS)は、Gibco BRL社(グランドアイランド、NY)から購入した。低酸素条件は、BellCo Biotechnology社(ビネランド、NJ)の密閉チャンバーを用いて作り出した。GTNは、DuPont Pharmaceuticals社(スカボロー、ON)から、エタノール、プロピレングリコールおよび水(1:1:1.33)を溶媒とする溶液(TRIDIL、5mg/mlまたは2.22M)として入手した。ニトロプルシドナトリウム(SNP)は、Sigma Chemical社(セントルイス、MO)から購入した。RNA抽出は、Gentra Systems社(ミネアポリス、MN)のPURESCRIPT RNA単離キットを用いて行った。ノーザンブロットアッセイ法のために、RNA転写に使用したナイロン膜は、Micron Separations社(ウェストボロ、MA)から購入し;uPARおよびPAI-1 cDNAプローブは、Bluescriptプラスミドベクターにクローニングし;[32P]-dCTPおよびReflection NEFフィルムは、Dupont/New England Nuclear社(ミシソーガ、ON)から購入し;ならびに、オリゴ標識キットは、Pharmacia Biotech社(ピスカタウェイ、NJ)から入手した。In vitro浸潤アッセイについて、血清非含有EX-CELL 300培養培地を、JRH Biosciences社(レネキサ、KS)から購入し、Costar TRANSWELLインサート(insert)(直径6.5mmのポリカーボネート、膜、孔径8μm)は、Corning Costar社(ケンブリッジ、MA)から購入し、および再構成された基底膜(Materigel)は、Collaborative Biomedical Products社(ベッドフォード、MA)から得た。プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キットは、American Diagnostica社(グリーンウィッチ、CT)から入手した。uPARのウェスタンブロットアッセイ法のために、溶解したタンパク質を、Millipore社(ベッドフォード、MA)のImmobilon-P膜に転写し、抗uPAR抗体(モノクローナル抗体[MoAb]3937)は、American Diagnostica社(グリーンウィッチ、CT)から購入し、ブロッティング用の等級のアフィニティ精製したヤギ抗マウスIgG(H+L)ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体は、BIO-RAD社(ヘラクレス、CA)から購入し、かつこの抗原は、Amersham Canada社(ミシソーガ、ON)の試薬を用いる増強型ケミルミネッセンス(ECL)により検出した。ザイモグラフ分析用のゼラチンをBDH社(トロント、ON)から購入し、カゼインをSigma Chemical社(セントルイス、MO)から、およびプラスミノーゲンをAmerican Diagnostica社(グリーンウィッチ、CT)から購入した。
B.細胞
これらの実験においては、HTR-8/SVneo浸潤性栄養芽層細胞株およびMDA-MB-231転移性乳癌細胞株を用いた。HTR-8/SVneoおよびMDA-MB-231細胞は両方とも、5%FBSを補充したRPMI-1640培地において培養した。
HTR-8/SVneo細胞株は、ヒトの最初の第一期胎盤の外植片培養から得、SVneoラージT抗原をコードしているcDNA構築体によるトランスフェクションにより不死化した。これらの細胞は、予め特徴決定し、かつ5%FBSを補充したRPMI-1640培地において、130継代以上培地において維持した。これらは、高度の増殖指数を示し、かつトランスフェクションしていない親HTR-8細胞と、インビトロ浸潤能およびヌードマウスにおける腫瘍原性の欠如などの様々な表現型の類似性を共有していた。
MDA-MB-231細胞株は、1973年に51歳の乳癌患者の胸腔滲出液から始めて単離された(Callieauら、J. Nat. Cancer Inst.、53:661-674(1974))。
C.低酸素状態細胞培養条件
細胞を、密閉チャンバーに入れ、5% CO2:95% N2を含有する混合ガスを、酸素濃度のMinioxi Oxygen Analyzer(Catalyst Research社、オーイングミル、MD)による測定値が0%となるまで、フラッシュした。次に細胞を、37℃でインキュベーションした。インキュベーションの最初の2時間以内に、チャンバー内の酸素レベルはおよそ1%に平衡化し、かつこのレベルにインキュベーションの残りの期間維持した。
あるいは、細胞を、大気O2レベルがPRO-Ox O2レギュレーター(Biospherix社、レッドフィールド、NY)により維持されたチャンバー内に入れた。
D.細胞の三硝酸グリセリン(GTN)およびニトロプルシドナトリウム(SNP)による処理
これらの実験において、細胞は、様々な濃度のGTNおよびSNPにより処理した。GTN保存液は最初に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)により、濃度10-4Mへ希釈した。濾過後、GTN溶液を、培養培地で、濃度10-4M〜10-11Mの範囲に希釈した。SNP(当初は結晶形)は、蒸留水に溶解し、濃度10-5Mに希釈した。濾過後、このSNPを培養培地で濃度10-6M〜10-12Mの範囲に希釈した。
E.ノーザンブロットアッセイ法
細胞を、様々な濃度のGTNおよびSNPと共に、低酸素(1%O2)または対照(20%O2)条件下、37℃で培養した。別の実験セットにおいて、MDA-MB-231細胞を、LMMA(0.5mM)の存在または非存在下で、様々なレベルの酸素(1%、5%または20%O2)下、37℃で24時間インキュベーションした。インキュベーション後、これらの細胞から全細胞RNAを、Gentra社のPURESCRIPT RNA単離キットを用いて単離した。その後単離したRNAは、電気泳動により分離し、かつ帯電したナイロン膜へと転写した。これらの膜を、50%ホルムアミド、5X Denhardt液、0.5%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、6X SSC(1xSSC=0.15M NaCl、15mMクエン酸ナトリウム、pH7.0)および100μg/mL変性サケ精子DNAを含有する溶液中、42℃でおよそ2時間プレハイブリダイゼーションした。その後これらを、6X SSC、0.5%SDS、100μg/mL変性サケ精子DNAおよび50%ホルムアミドで構成され、およびPharmacia Oligolabellingキットを用い[32P]-dCTPで標識されたcDNAプローブ(uPARまたはPAI-1)を含有する溶液中で、およそ24時間42℃で、[32P]-dCTP標識したcDNAプローブ(uPARまたはPAI-1)とハイブリダイゼーションした。連続洗浄した後この膜を用い、Dupont Reflection NEFフィルムを露光した。1〜4日後、フィルムを現像し分析した。各試料に負荷したRNA量の差異を補正するために、28S rRNAを用いた。
F.uPARタンパク質レベルのウェスタンブロットアッセイ法
uPARタンパク質のレベルを試験するために、最初に細胞を、様々な濃度のSNPまたはGTNが存在する20%O2または1%O2中で培養した。インキュベーション後、これらの細胞を、40mM HEPES(pH7.2)、100mM NaCl、20%グリセロール、0.1mM EDTA(pH8.0)、0.2%トリトンX100、1mM DTT、および2mM PMSFを含有する緩衝液を用いて溶解した。その後これらの溶解液に、ホモジネーション、DNA剪断(25 5/8ゲージ針を用い10回)、煮沸(5分間)および遠心(15分間, 14000g)を施した。上清を収集し、かつ使用時まで-80℃で貯蔵した。試料に、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を施し、溶解したタンパク質を、湿式転写装置(Bio-Rad Laboratories社、ミシソーガ、ON)を用い、Immobilon-P膜に転写した。これらの膜を、1%PBS、および0.01%Tween20(PBS-T)に加え、5%カゼインを含有する溶液中で、4℃で一晩ブロックした。これらのブロットを引き続き、モノクローナル抗uPAR抗体[MoAb 3937]と共に1.5時間インキュベーションし、引き続きPBS-Tで5分間6回洗浄した。その後これらの膜を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識したヤギ抗マウスIgG二次抗体と共に1.5時間インキュベーションした。更にPBS-Tで5分間6回洗浄した後、抗原を、増強型ケミルミネッセンスにより検出し、かつブロットを、Dupont Reflection NEFフィルム上で露光した。
G.ザイモグラフによるメタロプロテアーゼおよびプラスミノーゲンアクチベーター活性の測定
メタロプロテアーゼおよびプラスミノーゲンアクチベーター活性のレベルを測定するために、これらの細胞を、様々な濃度のSNPまたはGTNの存在下、低酸素または対照条件下でインキュベーションした。これらの細胞を、血清非含有培地(EX-CELL300)を用いて培養した。インキュベーション後、この培地を抽出し、かつ5,000rpmで5分間遠心した。その後上清を収集し、使用時まで-80℃で貯蔵した。SDS-ポリアクリルアミドゲルを、周知の手法に従い調製した。メタロプロテアーゼ分泌の分析のためのゲルは0.1%(w/v)ゼラチンを含有し、プラスミノーゲンアクチベーター分泌の分析のためのゲルには0.1%(w/v)カゼイン、更にはプラスミノーゲン(50μg/mL)を補充した。その後血清非含有馴化培地を、非還元(nonreducing)試料負荷緩衝液(グリセロール2mL中、0.5M Tris、10%SDS、1%ブロモフェノールブルー)と比4:1で一緒にし、煮沸しなかった。電気泳動後、ゲルに2.5%TritonX-100による15分洗浄を2回行った。この工程はSDSを除去した。H2Oで洗浄した後、ゲルを、Tris-HCl(pH7.0)およびCaCl2(5mM)含有溶液中で、37℃で一晩インキュベーションした。これらのゲルを、40%メタノール/10%氷酢酸/50%蒸留水中の0.4%クマシーブリリアントブルーR-250で、およそ1時間染色し、その後30%メタノール/10%氷酢酸/60%蒸留水中で約2時間脱色した。分子量標準品は、比較的明るい青色背景に対し、暗色のバンドを示し、かつ溶解が生じた無色のゾーンが出現した。ゼラチン含有ゲルにおいて、これらの領域は、メタロプロテアーゼ(ゼラチナーゼ)活性に対応しており、カゼインゲルにおいてはこれらのバンドは、プラスミノーゲンアクチベーター活性に対応していた。これらのゲルは、保存液(10%氷酢酸/10%グリセロール/80%蒸留水)を用いて1時間保存し、60℃で1時間セロファン上で乾燥した。
H.In vitro浸潤アッセイ
Materigel浸潤チャンバー(Boydenチャンバーの変形)を用い、様々な濃度のGTNまたはSNPの存在または非存在下で、低酸素および標準の条件下での細胞の浸潤性を評価した。これらのチャンバーは、直径6.5mmおよび孔径8μm膜の細胞培養インサートからなる。膜は各々、冷血清非含有培養培地(EX-CELL300)中に希釈した1mg/mL Materigel溶液100μLで被覆し、層流(laminar flow)キャビネット内でおよそ12時間かけて乾燥させた。その後Materigelを、100μL血清非含有培地と共におよそ1時間インキュベーションすることにより、再水和した。再水和後、血清および一酸化窒素処置物の両方を含む、培地100μL中に細胞5.0x104または1.0x105個を含む細胞浮遊液を、各ウェルに添加した。血清および各一酸化窒素処置物を含む培養培地を、各インサートに添加した。これらの細胞を、低酸素(1%O2)または対照(20%O2)のいずれかの条件下で24時間インキュベーションした。インキュベーション後、非浸潤細胞を、綿棒で拭うことにより、膜の上面から取除いた。膜の下面の細胞は、Carnoy固定液(25%酢酸、75%メタノール)により10分間固定し、その後およそ3時間、1%トルイジンブルー、1%ホウ酸ナトリウムで染色した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)ですすいだ後、膜を、小さい外科用メスを収容しているインサートから取除き、顕微鏡スライドガラス上に載せ、カバーグラスをかけた。次に浸潤している細胞を、倍率40Xで顕微鏡観察し、計数した。各処理に対する浸潤インデックスは、浸潤細胞数を、標準条件下で浸潤した細胞数で除算することにより算出した。その後この値を100倍し、百分率を得た。標準は100%値とし、処理値は標準についての百分率へと変換した。これらの結果を、統計学的有意性について、対のある多重比較法のためのターキー検定を、または対のある多重比較法のためのスチューデント-ニューマン-クールズ法のいずれかを用い検定した。図1参照のこと。
I.In vivo転移モデル
C57BL6マウスに、5x104〜105個のB16F1O転移性黒色腫細胞をボーラス静脈内注射した(尾静脈)。尾静脈注射直後に、マウスを無作為に15群に分け、各群のマウスを、各々、20%O2:バランス量のN2および10%O2:バランス量のN2の混合ガスを連続フラッシュしているプレキシガラスチャンバー(およそ3L)に入れた。ガス流は、チャンバー内にCO2蓄積が生じないレベルに調節した。20%O2または10%O2のいずれかの大気に24時間曝露後、マウスをチャンバーから取り出し、室内大気に維持した通常のケージに移した。13日後、マウスを、頸部脱臼により屠殺し、肺を摘出し、Bouin固定液(Sigma社)で固定した。肺表面上の転移性結節(その多くはメラニンの存在により黒色に見える)を、解剖学顕微鏡下で肉眼により計数した。データは、注射した104個細胞当りの肺結節数で表し、ノンパラメトリック値に関する統計学的検定を用いて解析した。
実験の第二セットにおいて、B16F10マウス黒色腫細胞を、2x10-11M GTNの存在または非存在下、1%または20%酸素中で12時間インキュベーションした以外は、同じプロトコールを用いた。その後細胞を、トリプシンでプレートから取除き、かつC57BL6雌マウスへ5x104個の細胞を静脈内注射した(尾静脈)。図2参照のこと。In vitroにおいて処理した細胞の一部は、組織培養皿上に配置し、I節、J節に説明したプロトコールを用い、コロニー形成能について決定した。
J.ドキソルビシン耐性に関するコロニー形成アッセイ
MDA-MB-231乳癌細胞のドキソルビシンに対する耐性を、20%または1%酸素中で培養後、形成されたコロニー数を計数することにより決定した。MDA-MB-231細胞は、1%O2または20%O2中で24時間インキュベーションした。インキュベーション後、細胞を、希釈液(対照)、25μMドキソルビシン、25μMドキソルビシン+10-6M GTNまたは25μMドキソルビシン+10-10M GTNに、1時間曝露した。これらの細胞を洗浄し、その後35mmプレート上に異なる希釈で置いた。これらの細胞を、細胞コロニーを形成させるために、更に1〜2週間インキュベーションした。インキュベーション期間の最後に、細胞をCarnoy固定液で固定し、クリスタルバイオレットで染色し、すすぎかつ風乾した。コロニーを肉眼により計数した。各条件下での生存細胞を、コロニー数を計数することにより決定し、ドキソルビシン曝露なしに生存したコロニー数の分数として表した。
II. 実施例2:sGCおよびPKGの活性化は侵襲性および転移性表現型の制御と関連する
A. 材料
濃度2.22Mのグリセリン三硝酸(GNT;サベックス、バウチャービル、QC)およびヂエチレントリアミン/酸化窒素付加物(DETA-NONOate;シグマケミカル、セントルイス、MO)をNO-模倣体として使用した。デスフェロキサミンメシレート(DFO;シグマケミカル、セントルイス、MO)を鉄キレート剤として使用した。1H-[1,2,4]オキサジアゾール-[4,3-a]キノキサリン-1-オン(ODQ)(シグマケミカル、セントルイス、MO )を可溶性グアニジルシクラーゼの選択阻害に使用した。様々な濃度の8-ブロモグアノシン-3’,5’-サイクリックモノホスフェート(8-Br-cGMP;シグマケミカル、セントルイス、MO )をcGMP-依存性タンパク質キナーゼの活性化に使用し、KT5823(カルビオケム、ラヨロラ、CA)をPKG選択阻害に使用した。
B. 細胞
HRT-8/SVネオ株をヒト妊娠初期胎盤の体外移植培養で確立し、サルウイルス40の巨大T抗原をトランスフェクションして不死化した。これらの細胞はインビトロでその親株HTR-8細胞に類似した侵襲能を示し、ヌードマウスで腫瘍発生性を示さなかった。その細胞を130代にわたって維持され、インビトロで増殖を維持するためには少なくとも5%の血清を要求した(Graham,Hawleyら、1993ID:1080)。
MDA-MB-231は51才の患者から1973年に単離された転移性乳癌細胞株である(Cailleau,Youngら、1974ID:982)。
転移性ネズミメラノーマ(B16F10;London Regional Cancer Centre、ロンドン、ONのAnn Chambers博士より寄贈)を実験的転移に利用した。
培養細胞の全てを、標準サンヨーCO2インキュベーター(空気中5% CO2、37℃;エスベサイエンティフィック、マルクハム、ON)内で、5%ウシ胎児血清(FBS;ギブコBRL)を補充したRPMI1640培地(ギブコBRL、グランドアイランド、NY)中で単層培養で維持した。
C. 培養条件
低酸素条件にするため、所定の酸素濃度に達するまで5%CO2/95%N2を吹き込んだ混合ガス気密チャンバー(ベルコバイオテクノロジー、ヴィネランド、NJ)内に細胞を置いた。Pro-Oxモデル110酸素レギュレーター(レミングバイオスフェリックス、レッドフィールド、NY)を用いて酸素レベルを維持した。
D. ノーザンブロットアッセイ法
インキュベーション後、GENTRA PURESCRIPT(登録商標)RNA単離キット(ジェントラシステムズミネアポリス、MN)を用いて全細胞RNAを単離した。単離したRNAを次に電気泳動で分離し、荷電ナイロン膜(ミクロンセパレーション社、ウエストボロ、MA)に移し、UVクロスリンカー(商品名)を用いてUV光線で固定した。膜を余熱した紫外線感受性ハイブリダイゼーション緩衝液ULTRAAhyb(商標)(アンビオン、オースチン、TX)中で68℃、約1時間で予備ハイブリダイゼーションした。次いで膜をDIGラベルuPARプローブと68℃で一晩ハイブリダイゼーションした。プローブを作製するため、ブルースクリプトプラスミドベクター中にクローン化したuPAR cDNAを直線化した。次いで直線状のcDNAをDIGラベルRNAラベリングミックスとT3RNAポリメラーゼ(モレキュラーバイオケミカルズ、インディアナポリス、IN)でインビトロ転写した。ハイブリダイゼーション後、膜を2× SSC、0.1%SDS中で2回洗浄し(68℃、5分)、次いで0.1× SCC、0.1%SDS中で2回洗浄した(68℃、15分)。バンドをDIG発光性検出キット(ロッシュモレキュラーバイオロジーズ、インディアナポリス、IN)を用いて検出し、膜をデュポン反射NEF(DuPont Reflection NEF)フィルム(デュポン/ニューイングランドニュークレア、ミシサーガ、ON)に露光した。
E. ウェスタンブロットアッセイ法
インキュベーション後、細胞を40mM HEPES pH7.2、100mM NaCl、20%グリセロール、0.1mM EDTA pH8.0、0.2%Triton-X100、1mMジチオトレイトール(DTT)および2mMフェニルメチルスルフォニルフルオライド(PMSF)を含む緩衝液を用いて溶解した。溶解物を均一化、DNAシェアリング(255/8ゲージ注射針で10回)、煮沸(5分間)および遠心(14,000×gで15分間)した。上澄を集め、使用するまで-80℃で保存した。試料をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)にかけ、湿式移動装置を用いて(バイオラッドラボラトリーズ、ミッシサウガ、ON)分離したタンパク質をイモビリオン-P-膜(ミリポア社、ベッドフォード、MA)に移行した。膜を1%PBS、0.01% Tween20(PBS-T)および5%乾燥粉末乳を含む溶液中、4℃で一晩ブロックした。次いでブロットをモノクローナル抗uPAR(MoAb3937;アメリカンダイアグノスティック社、グリーンヴィッチ、CT)またはポリクローン可溶性グアニレートシクラーゼ(sGC)抗血清(カイマンケミカル、アンアーバー、MI)と共に1.5時間インキュベートし、続いてPBS-Tで5分間、5回洗浄した。次にuPAR膜をセイヨウワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG 2次抗体(バイオラッド、ヘラキュレス、CA)と共に1時間インキュベートし、sGC膜をヤギ抗ウサギIgG-セイヨウワサビ複合体(ベクターラボラトリーズ社、バーリンゲーム、CA)と共に1時間インキュベートした。さらに6回、PBS-Tで5分間洗浄後、抗原を増幅ケミルミネッセンス(アマーシャムカナダ社、ミッシッサウガ、ON)で検出し、ブロットをデュポン反射NEF(DuPont Reflection NEF)フィルム上に露光した。
F. インビトロ侵襲アッセイ法
8-Br-cGMPの細胞の細胞外マトリックスを貫通する能力に対する効果を評価するため、Matrigel侵襲分析を用いた。チャンバーは8μmポア膜を有する6.5mmのインサート(コーニングコスター社、ケンブリッジ、MA)で構成される。各膜を冷無血清培地(EX-CELL300、JRHバイオサイエンス、レナックス、KS)中で希釈した100mLの2.6mg/mLMatrigel溶液(コラボラティブバイオケミカルプロダクツ、ベッドフォード、MA)で被覆し、層流キャビネット中で約12時間乾燥した。次いでMatrigelを100mLの無血清培地で約1時間再水和した。再水和後、100mLのRPMI中の5.0×104個の細胞と血清(5%FBS)および8-Br-cGMPを含む細胞懸濁液を各ウェルに加えた。細胞を1%または20%酸素中で24時間インキュベートした。インキュベーション後、非侵襲性の細胞を毛羽立った綿棒で膜の上部表面から取り除いた。膜の株表面上の細胞は氷冷メタノールで2分間固定し、1%トルイジンブルーおよび1%ホウ酸ナトリウム溶液に一晩浸し染色した。リン酸緩衝生理食塩水ですすいだ後、膜を小型メスの刃でインサートから離し、顕微鏡スライドおよびカバースライド上に載せた。次いで侵襲した細胞を40倍の顕微鏡で観察し、計数した。各処理における侵襲インデックスを侵襲した細胞の数を標準条件(20%酸素)で侵襲した細胞の数で割って計算した。侵襲インデックスは対照(20%酸素)の百分率で表現した。結果を分散の解析を用いる統計的有意性と、ペアワイズ多重比較のためのターキーまたはスチューデント-ニューマン-キール検定で検定した。
G. インビボ転移実験
B16-F10黒色腫細胞の転移能に対する8-Br-cGMPの効果を評価するため、ネズミ転移モデルを使用した。細胞を1%または20%酸素中、8-Br-cGMP(1mM)のある場合とない場合で12時間インキュベートした。培養プレートから収穫後、5〜7週齢C57B1/6雌マウス中に5×104個の細胞を静脈注入した。インビトロコロニー形成能に対する培養条件の効果を決めるため、細胞を組織培養プレート中にも散布した。静脈接種の40日後、マウスを屠殺し、ハイブリダイゼーションを摘出してボウイン固定剤中に固定した。黒色腫および非黒色腫転移性コロニーを解剖顕微鏡下で計数した。データを5×104個の注入した生きた細胞(インビトロコロニー形成能で測定)当たりの肺リンパ節の数で表し、非パラメトリック値に対する統計的検定を用いて解析した。
H. グアニレートシクラーゼレベルと酸性度の測定
低酸素およびNO-模倣体処理のsGCレベルへの影響をウエスタンブロット解析を用いて測定した。sGC活性を決めるため、cGMPレベルを測定した。つまり、細胞を1mLの6%トリクロロ酢酸(BDHラボラトリーサプライス、ポール、イングランド)中で氷上に抽出した。次いでホモジェネートを13、000gで10分間遠心した。上澄部分を除き、2mlの水飽和ジエチルエーテル(BDM)で5回抽出した。次にこの部分に含まれるcGMPをアセチル化し、酵素結合免疫吸着体分析(ELISA)キット(STIシグナルトランスダクションプロダクツ、サンクレメント、CA)を用いて定量分析した。
結果
I. 低酸素誘導性uPARアップレギュレーションのNO模倣体阻害における可溶性グアニレートシクラーゼの役割
sGC等のヘムタンパク質がNO模倣体のuPAR低酸素性アップレギュレーション阻害能においてある役割を果たすかどうかを決めるため、鉄配位子デスフェロキサミン(DFO;100μM)を使用した。DFOによるヘム撹乱に反応して生じるuPARのアップレギュレーションがGTN(10-10M、10-6M)により阻害されないことが見出された。これらの結果はNO-模倣体の効果はヘム部分で媒介されることを示唆している。
様々な酸素濃度とNOS遮断のsGCタンパク質レベルに対する効果を決めるため、ウエスタンブロットアッセイ法を用いた。用いた処理に拘わらず、全sGCレベルは変化しないままであることが見出された。逆に、sGC活性はわずか12時間の低酸素(0.5%O2)後に減少することがcGMPに対するELISAを用いて見出された。さらに、この減少はGTN(10-10M,10-6M)を添加することにより有意に阻止された。
uPARアップレギュレーションのNO模倣体による阻止におけるsGCの役割を決めるため、選択的sGCインヒビターODQ(0.5μM)を用いた。GTN(10-6M)がuPARの低酸素誘導を停止する能力はタンパク質およびmRNAレベルの双方で実質的に阻止されることが見出された。
J. 低酸素誘導性uPARアップレギュレーションのNO模倣体による阻止におけるPKGの役割
uPARの酸素仲介制御におけるPKGの役割を決めるため、PKGアクチベーター8-Br-cGMP(10-3〜10-7M)を20%および0.5%酸素中、またはDFOの存在下で培養した細胞に添加した。先の研究によれば、uPARの発現は、タンパク質およびmRNAレベルの双方で低酸素条件下およびDFOの存在でで顕著に増加した。興味深いことに、この誘導は8-BR-cGMPを添加すると有意に減少した。 8-BR-cGMPがPKGを活性化することを確認するため、PKGインヒビター(KT5823、10μM)を培地中に添加した。 酸素が存在してもKT5823はuPARの発現を誘導しすることができ、8-Br-cGMPの効果を有意に鈍らせることが見出された。
K. 低酸素誘導性侵襲および転移に対する 8-BR-cGMPの効果
uPARの発現の機能的関連として、インビトロ分析を行った。 8-BR-cGMPが低酸素関連侵襲を有意に阻害し得ることが見出された。
これらの発見を進展するため、インビボ転移分析を行った。先の実験によれば、低酸素条件(1%O2)でのB16F10細胞の培養は転移性肺リンパ節が顕著に増加する結果となった。この誘導は8-BR-cGMP(1mM)を添加することにより完全に阻止された。コロニー形成分析を用いて、8-BR-cGMP処理が細胞の生育性に影響しないことが見出された。
L. uPARのインビトロ侵襲及び発現の低酸素性アップレギュレーションに対するNO模倣体の効果
インビトロ侵襲性に対するNO模倣体の影響を調べるため、インビトロ侵襲分析を行った。低酸素はMDA-MB-231乳癌細胞のインビトロ侵襲性を5倍以上増加させたが(図5)、低濃度の2種の異なったNO模倣体、すなわちグリセリル三硝酸(GTN;1pMおよび0.1μM;それぞれP<0.002およびP<0.001;一方向ANOVA後にフィッシャー試験)およびニトロプルシドナトリウム(SNP、10pM;P<0.001)を24時間侵襲アッセイ法の最初に投与した。
MDA-MB-231細胞を0.5%酸素中で24時間培養して、uPARタンパク質レベルに対する効果を調べた。0.5%酸素に暴露するとuPARレベルが3.5倍まで増加し(図6Aおよび9B;P<0.0001)、uPAR mRNAレベルが5倍まで増加する(図6C、8Aおよび9A)結果となることが見出された。0.5%酸素中で24時間インキュベートした細胞へGTN(1pM、1nMおよび0.1μM)を1回投与すると、uPARタンパク質発現のアップレギュレーションを阻止するに十分であった(図6A;各濃度それぞれのGTNに対しP<0.004、<0.005および<0.001)。同様に、uPAR mRNAレベルの低酸素で媒介される増加も低濃度のGTN(pM)を用いた場合に阻止された(図6C;P<0.001)。
M. uPARタンパク質とmRNAレベルに対するNOシンセターゼ阻害の効果
内因性NOがuPAR発現を阻害するかどうかを評価するため、NDA-MB-231細胞中のNO合成をNOSインヒビターN-モノメチル-L-アルギニン(L-NMMA、0.5mM)と共にインキュベートして妨害した。低酸素にさらされた細胞に特徴的な様式では、20%O2中で培養した場合でも(図6B;P<0.04)L-NMMAを1回投与した24時間インキュベーションで、MDA-MB-231細胞中で全体としてuPARタンパク質レベルが50%増加し(図6B;P<0.004)、uPAR mRNAレベルが2.8倍に増加する結果となった。対照的に、20%O2中のみでインキュベートした細胞中のuPAR発現と比較して、L-NMMA(0.5mM)とGTN(0.1mM)の組み合わせで20%O2中でインキュベートした細胞中ではuPARタンパク質(P=0.89)または転写(P=0.35)レベルの有為の増加は認められなかった(図6Bおよび6D)。
N. sGCシグナル伝達に対する低酸素の効果
cGMPレベルに対する低酸素の効果を測定するため、MDA-MB-231乳癌細胞をIBMX(500mM)の存在下に0.5%O2中で6時間インキュベートした。cGMPに対するELISAの結果から、20%O2中でインキュベートした細胞と比較して、0.5%O2中でインキュベートした細胞では蓄積されたcGMPレベルが50%減少(P<0.002、図7A)していることが明らかとなった。このcGMPレベルに対する低酸素の効果はNO模倣体GTN(1mM)との共インキュベーションで阻止された。
低酸素のsGCレベルに対する効果を測定するため、ウエスタンブロットを行った可溶性GCはα1およびβ1サブユニットで構成されるヘテロダイマータンパク質である。低酸素で24時間培養するとβ1サブユニットが44%減少する結果となった(P<0.0001)。対照的に、低酸素で培養するとα1サブユニットのレベルが2.3倍増加する結果となった(P<0.02;図7)。低酸素中波α1とβ1の比率が変化したが、sGCの総量に有為な変化はなかった。
O. uPARのNO-媒介阻害におけるsGCの役割
sGCのuPAR mRNAブロッカーに対するsGCの効果を決めるため、MDA-MB-231細胞を選択的sGCブロッカー(ODQ、0.5μM)と共に24時間インキュベートした。制御された条件(20%O2のみ)下での細胞のインキュベーションと比較して、上記の処理はuPER mRNAのレベルが2.8倍増加する(p<0.05)結果となった(図8A)。GTN(1μM)が存在するとuPARの発現の低酸素性アップレギュレーションが阻止されたが、培地中にODQも存在する場合、GTNは低酸素の効果を妨害することはできなかった(図8A)。
可溶性GCはその生合成と活性に鉄(II)イオンを要求するヘム含有酵素である。従って、この酵素がNOシグナル伝達経路によりuPARの発現の制御に関与していることをさらに検証するために、MDA-MB-231細胞をDFOの存在下で培養し、uPAR mRNAレベルが4倍増加する(P<0.007)結果が得られた(図8C)。低酸素とは対照的に、ODFのuPAR mRNA発現に対する効果は1μMのGTNで阻止されなかった。
さらに、低酸素によるuPAR mRNAおよびタンパク質発現のアップレギュレーションが、cGMPの加水分解不能アナログである8-BR-cGMP(0.1mM〜10mM;24時間)の存在で用量に依存して(100%まで)有意に減少した(P<0.0001;図9Aおよび9B)。興味のあることに、8-Br-cGMPの存在(1mM)もuPAR mRNA発現のDFO誘導アップレギュレーションを完全に阻害する(P<0.01)結果となった(図9C)。これらの結果は、低酸素およびDFOで媒介されるuPAR発現の刺激の主な要因はsGCの阻害であることを示唆している。
P. NOによって媒介されるuPAR発現の阻害におけるPKGの役割
uPARの発現におけるNOシグナル伝達の役割をさらに説明するため、MDA-MB-231細胞をPKGインヒビターKT5823(10μM)と共に6時間インキュベートした。20%O2中でもPKGを選択的に阻害するとuPARタンパク質とmRNAの発現が1.8倍増加する(P<0.05)結果となることが、ノーザン及びウェスタンブロットアッセイ法により明らかとなった(図10Aおよび10B)。これらの結果は、cGMPによるPKGの活性化がNOによるuPAR発現の阻害に必要であることを示している。
Q. 低酸素誘導性侵襲に対する8-Br-cGMPの効果
8-Br-cGMPの低酸素誘導性侵襲に対する効果を調べるため、インビトロ分析を行った。侵襲に対する基質としてのMatrigelを用いるインビトロ侵襲分析の結果は、20%O2中でインキュベートした細胞の侵襲性と比較して、低酸素がMDA-MB-213細胞の侵襲性を3.9倍に刺激したことを明らかにした(P<0.0001;図11)。この低酸素の侵襲性に対する効果は、様々な濃度(0.1μM〜1μM)の9-Br-cGMPの存在により完全に阻害された(図11)。
III. 実施例3:前立腺癌細胞中の低酸素誘導性薬剤耐性
腫瘍の酸素化が低いこと(低酸素)は、転移の増加と、放射線治療と化学治療に対する抵抗性の増加と関連している。低酸素はヒト前立腺癌を伴い、前立腺癌は化学療法に高い抵抗性をもつことが示されている。低酸素が前立腺癌における薬剤感受性の減少の主な要因であるかどうか、および前立腺癌細胞における低酸素誘導性薬剤耐性が低濃度の一酸化窒素(NO)模倣体で阻害できることを試験するため、ヒトPC-3およびマウスTRAMP-C2前立腺癌細胞を、グリセロール三硝酸(GTN、0.1nM)を加えた場合と加えない場合につき、20%O2または0.5%O2中で12時間インキュベートした。その後ドキソルビシンと共に1時間インキュベートし、コロニー形成アッセイ法で生存率を評価した。ウェスタンブロットアッセイ法により、20%および0.5% O2中で培養した細胞中のNOシンセターゼ(NOS)タンパク質レベルを測定した。低酸素下での2つの細胞株の前インキュベーションの結果、ドキソルビシン暴露後のの生存率が増加した( PC-3細胞で最大8倍、TRAMP-C2細胞で最大12倍;P<0.0001)。PC-3とTRAMP-C」細胞を1nMのGTNと共インキュベートした結果、低酸素誘導性抗ドキソルビシンが完全に阻害された(P<0.0001)。両細胞株は3種のNOSアイソフォーム(NOS I、NOS IIおよびNOS III)全てを発現したが、0.5%O2中でインキュベートしたPC-3細胞では、20%O2中でインキュベートした細胞に比べNOS IIIの発現みが有意に増加していた(P<0.05)。これらの発見は、前立腺癌細胞の化学療法感受性(chemosensitivity)の制御にNOが重要な役割を果たすことを示している。さらに、その結果はGTNの投与が前立腺癌腫を化学療法感受性にする手段を提供することを示している(図12および13)。
IV. 実施例4:ドキソルビシンに対する多細胞性抵抗性が一酸化窒素模倣体で低減する
以前の研究では、単層培養における腫瘍細胞の低酸素誘導性薬剤耐性は酸化窒素(NO)産生障害によることを明らかにした。単層培養と比較して、多層集合として培養された腫瘍細胞(スフェロイド)が有意に高いレベルの化学療法剤耐性を示すことは十分に確立されている。本研究は、スフェロイド培養に伴う薬剤耐性はNOシグナル伝達の減少によることを示した。クローン原性分析でヒトMDA-MB-231乳癌腫細胞を用いて、単層培養およびスフェロイド培養双方にドキソルビシン暴露とNO模倣体投与を行った後、生存率を測定した。20%O2中のインキュベーションと比較して、1%O2中でインキュベートした単層細胞はドキソルビシン耐性が3倍増加した。1mMのグリセリル三硝酸(GNT)の添加の結果、耐性が50%減少した。200mMのドキソルビシンでインキュベートした結果、スフェロイドとして培養された腫瘍細胞の生存率は90%減少した。0.1μMおよび2μMのジエチレントリアミン/酸化窒素付加物(DETA)、および0.1nM及び1mMのGTNは対照細胞(ドキソルビシン未処理)の生存率に影響しなかった。しかしながら、NO模倣体は3次元培養における200mMのドキソルビシン耐性をそれぞれ90%および30%、効果的に減少させた。これらの結果は、NO模倣体処理を固形癌の化学療法感受性を増加させる新しいアプローチとして使用し得ることを示している(図14および15)。
V. 実施例5:乳癌腫の侵襲性の制御におけるcAMPシグナル伝達の役割
本実施例は、低酸素によって誘導されたuPARの発現と侵襲性の増加が、cGMP依存性シグナル伝達の減少で仲介されることを示す。cGMP系とcAMP系は密接に関連し、cGMPレベルがcAMPレベルを変化させることが示されている。cGMPシグナル伝達が侵襲性制御に重要であること、およびそのcAMPシグナル伝達変化能を基に、本研究はcAMPとそのエフェクター、cAMP依存性タンパク質キナーゼ(PKA)の癌腫細胞侵襲性における役割を示す。
アデニニルシクラーゼアクチベーターフォルスコリン(10μM)および/またはPKAインヒビターH-89(1μM )を加えた場合と加えない場合で、ヒト乳癌腫(MDA-MB-231)細胞を20%または0.5%O2中で24時間培養した。ノーザンおよびウェスタンブロットアッセイ法から、フォルスコリンは20%および0.5%O2でuPAR mRNAおよびタンパク質発現を阻害することが示された。uPAR発現に対するこのフォルスコリンの効果はH-89により阻止され、フォルスコリンの効果がcAMP依存性のPKAの活性化で仲介されることを示している。PKAのH-89による阻害の結果、酸素化とは独立のuPAR発現もアップレギュレーションされた。再構築細胞外マトリックス(Matrigel(登録商標))を通過するインビトロ細胞侵襲分析を用いて、フォルスコリンは20%および0.5%O2で細胞の侵襲を阻害した。H-89によるPKA活性の阻害はフォルスコリンのこの効果を阻止し、侵襲性を独立に増大させた。これらの知見は、酸素化の状態とは独立に、cAMP依存性シグナル伝達が癌腫細胞の侵襲性の調節に重大な役割を果たすことを示している。さらに、cAMP経路は腫瘍細胞の侵襲と転移を阻害するための新規の薬学的目標を提供する。
VI. 実施例6:低用量ニトログリセリン処置がPSA速度を減少させる
方法: ASTROの基準(3回の連続PSA昂進)による生化学的不全を経験し、PSA<10(ユニット)であり、無症状性の疾患を有する安定な、前立腺切除の病歴を持つ患者を、インフォームドコンセントにサインした後に研究に加えた。全ての患者に連続して低用量経皮ニトログリセリン治療を行った(〜0.03mg/hr、1日24時間)。被検者は毎月のPSA測定のために研究センターへ戻った。病気の進展またはその他の予期しない医学的な問題を生じた場合、被験者を試験から除外した。
結果: 一般に5ヶ月以上の治療を受けた患者では平均PSA速度が14%/月から5.4%/月へ減少し、9人中4人の被験者が6ヶ月の治療を終えた。1人の被験者(ネガティブマージン)ではPSAの減少が見られ、残りの3人の被験者(ポジティブマージン)ではPSA速度の減少が見られた。3人の被験者を除外したが、その理由は心臓薬剤療法の開始、および登録直後に診断された腎不全および脊髄管転移のMRI陽性であった。どの患者にも薬剤に関係する副作用はなかった。
結論: 現在進行中の試験的な非盲検の研究(pilot open-label study)は、低用量一酸化窒素ドナー治療を用いることは安全であり、根治的前立腺切除後に生化学的不全を生じた被験者が十分に緩和されたことを示している。生化学的な不全の初期中にPSAを減少させる良性治療は、前立腺癌の管理において有用な補助診療手段となる。現在のデータに基づき、生化学的不全に伴うPSAの上昇の低用量酸化窒素治療の概念を、ランダムなプラセボ対照臨床研究で評価しなければならない。
VII. 実施例7:頚部病巣内腫瘍形成(CIN)の子宮頚癌への進行の予防
子宮頚癌は発展途上国でごく普通である。子宮頚部は子宮の下から3番目である。子宮頚部癌は膣表面上または子宮管内で発症する。毎年、世界中で500,000の新しい症例があると見積もられ、これらの女性の約250、000人がその病気のために死ぬ運命にある。発生率と死亡率を子宮頚部スクリーニング計画の実施により減少させ得ることを示す十分な証拠がある(Cain JMら、Science,288:1753〜1754、2000)。現在、ヒトパピロマウイルス(HPV)、特にHPV16および18がこの病気の主な原因物質であると考えられている。子宮頚癌の症状には膣の出血、性交後の汚点、膣排泄物、および進行した症例では下肢の後半部へ広がる挫骨神経に響く苦痛を伴う骨盤または下部背痛がある。
典型的には、女性は毎年、子宮頚表皮細胞の細胞学的異常を調べるPAPスメアを含む婦人科検診を受ける。1988年に国立健康研究所(National Institute of Health)コンセンサスパネルが設立され、子宮頚細胞学の報告書作成の統一用語集を作成した。HPVの変化を含む軽度粘膜上皮内病変(LSIL)はグレードI CINと見なされる。グレードIIおよびIII CINを含む重度病変は子宮頚部癌へ進行する危険性が高い。PAPスメアの結果が陽性である場合、次の段階は膣鏡検査と直接バイオプシーである。腫瘍塊の見られる患者では、直接子宮頚部パンチバイオプシーで診断を確定する(Benedet JLら、International Journal of Gynecology & Obestrics、70(2000)、209-262)。
様々なグレードのCINで診断された女性を局所的、経膣または非経口で低用量のニトロリセリン単独、または産婦人科腫瘍学FIGO委員会が推奨する標準治療法と組み合わせてで処置することができる。CINグレードの縮小は治療が成功したと考えられる。さらに、患者のグレードがCIN IIまたはIIIであり、ニトログリセリン治療で子宮頚癌の進行が確定診断されなかった場合、ニトログリセリン治療が悪性表現型への進行を阻止することに成功したと結論することができる。リスクの高いグループの患者、例えばHPV感染の存在または可能性のある様々な症例では、再発を防止するために低用量のニトログリセリンを続けることができる。
VIII. 実施例8:経口PDE Vインヒビターによる第4系列治療オプションを用いるホルモン非応答性/非感受性乳癌の治療の有効治療期間を延長し、全体的な効果を高める
乳癌は女性にとってもっとも普通の癌であり、死亡の二番目に多い癌である。米国では、転移性乳癌を持つ生存する女性の数は100,000人である。一度転移を生じたら、乳癌が治療できるのは極めて希である。転移性疾患を扱う場合、治療効果を最適化し、生存率を上げ、これらの目的と可能な限り最高の生活の質の維持とをバランスさせることである。ハーセプチン(HER2癌タンパク質に特異的)を除いて、依然として細胞毒性化学療法剤が進行したホルモン非感受性乳癌の標準である。
アンスラサイクリン、タキサンおよびカペシタビン治療へ進んだ、癌が進行した乳癌患者では、治療インデックス(癌の症状の緩和と治療に関連する毒性の比率)と全体的な生活の質を改善するために、以下の治療が検討される。第4列治療の一つ(例えばドキシル、ナベルビン、ゲムシタビン)で治療しながら、乳癌患者を経口PED Vインヒビターであるバイアグラを毎日1回25mg、またはバナダフィル等の他のより長く続くPDE Vインヒビターを服用することもできる。ある第4系列治療の歴史的データベースと比較して、生存率および/または生存時間の全体的な増加はPDEVインヒビターであるバイアグラの治療が成功したと考えられる。生活の質の向上、苦痛および生存期間中の不快さの軽減を増大することは、第4系列治療法を用いる乳癌患者の治療でバイアグラの有効性を支持すると考えられる。バイアグラをプレドニソン等のグルココーチコイドと一緒に使用して、癌の症状を緩和することもできる。
IX. 実施例9:前立腺癌の進行の予防
前立腺癌は公衆衛生の重要な関心事であり、最も普通の内臓癌であると同時に北アメリカの男性の癌による死亡の2番目に多い原因である。1999年にアメリカ癌協会は約179,300の前立腺癌の新しい症例が米国で診断され、約37,000人の男性がこの病気で死亡すると見積もった(Landisら、CA Cancer J. Clin.、1999、49:8-31)。これだけ多く蔓延しているにもかかわらず、局所および転移性疾患の最適処置法は漠然としている。スクリーニングの努力で癌を初期に検出しようとしているが、前立腺癌と診断された男性の25%は実際に転移性疾患に侵されている(Landisら、CA Cancer J. Clin. 1999 49:8-31)。
根治的前立腺摘出は局所前立腺癌の最も優れた治療法と考えられ、病気が根絶した場合、全ての前立腺組織の除去により1ヶ月以内に血清PSAが検出されなくなる必要がある(Landisら、CA Cancer J. Clin. 1999 49:8-31)。従って、PSAの長期的な測定は、現在のところ癌の持続、根治前立腺切除後の再発と進行を検出する最も感度の高い方法である(Landisら、CA Cancer J. Clin.、1999、49:8-31)。PSA上昇がなく前立腺癌が再発した数少ない例の報告を除いて、局部または遠位の癌不全の臨床知見より、生化学的な知見(すなわち検出できるPSA;Landisら、CA Cancer J. Clin.、1999、49:8-31)が何ヶ月、または何年も先行する。臨床的に局在化した前立腺癌の根治的前立腺摘出後の生化学的不全の10年の生命表法による発生率(actuarial incidence)は、27〜57%の範囲となる(Zeitmanら、Urology、1994、43:828-833)。 8%の10年の臨床的局所再発率、9%の臨床的遠位再発率、および32%の何らかの不全の証拠(生化学的または臨床的)が報告されている。治療不全のPSA知見の中央値は19〜24ヶ月の範囲であり、生化学的再発から疾患の臨床知見までの中央値はさらに19ヶ月遅れる(7〜71ヶ月の範囲)。
前立腺癌と診断された男性をニトログリセリンまたはイソソルバイド二硝酸などの低用量NO模倣体で、好ましくは経口、舌下、局所または非経口で、単独または標準治療法(例えば抗アンドロゲン治療、根治的前立腺摘出)と組み合わせて治療することができる。低用量NO模倣体治療の例は本明細書の表1に示される。連続したPSA値の改善または安定化は治療が成功したと考えられる。さらに、被検者が前立腺癌を有し、ニトログリセリンまたはイソソルバイド二硝酸等の低用量NO模倣体で後期前立腺癌に進行しなかった場合、NO模倣体治療が前立腺癌の拡大の阻止に成功したと結論することができる。リスクの高いグループの被検者、例えばPSAダブリング時間が短い、または家族歴のある被験者は、低用量NO模倣体治療(例えばニトログリセリンまたはイソソルバイド二硝酸)を続けて(stay on)、病気の発生、進行または再発を防止することができる。
X. 実施例10:乳癌の進行の予防
腫瘍の局部的ミクロ環境が腫瘍細胞の挙動を決定する上で重要な役割を果たすという事実がある。固形腫瘍塊内の低酸素(pO2値10mmHg以下)は、様々な癌患者、特に乳癌患者で臨床結果が悪いという独立したマーカーである。原発癌が体内の離れた部位へ転移する場合、死亡の危険性が有意に増加する。
乳癌であると診断された女性をニトログリセリンまたはイソソルビド等の低用量の模倣体で、好ましくは経口、舌下、局所または非経口投与で、単独または標準化学療法(例えばタキソール)との組み合わせで治療することができる。低用量NO模倣体治療の例は表1に示される。原発癌の縮退または安定化は治療の成功と考えられる。危険性の高い被験者グループ(例えば家族歴)が低用量NO模倣体治療(例えばニトログリセリンまたはイソソルビド二硝酸)を続けて(stay on)、病気の進展、拡大または再発を阻止することができる。
XI. 実施例11:PASレベルに対するGNTの効果
前立腺癌再発の生化学的マーカーであるPSAレベルを、前立腺がまだ無傷である前立腺癌患者でGTN投与の後に測定した。
この前立腺癌では患者では、治療の選択として1991年に放射線治療を受けた。続いて、患者は次の系列の治療として抗アンドロゲン治療を受けた。1年後、癌の再発のマーカーとしての血清PSAレベルが上昇した。図16に示すように、それぞれ約1ヶ月間の0.03mg/時間、1日24時間のGNT投与の2つの独立したエピソードの開始後に循環PSAレベルの増加率はこの患者では減少した。双方の期間中、PSA速度の減少がGNT治療で観察された。GNTを0.03mg/時間、1日24時間、約1ヶ月間投与の第3のエピソード後、GNTレベルの減少が再び観察された。この結果は1)PSA速度の連続増加で示される生化学的不全時、および2)男性で前立腺癌が完全に再発する時間の延長のみで、GNT等のNO模倣体の抗アンドロゲン治療への有効性を改善し得ることを示唆している。
さらに、図17に示すように、GTNを0.03mg/時間の濃度で経皮的に継続的に投与することにより、循環PSAレベルで測定される放射線治療の効力を劇的に改善する。継続的なGTN治療が始まって2ヶ月後、この患者は放射線治療を受けた。図17に示すように、この組み合わせ治療により、PSA減少速度が3ヶ月以内に加速された。放射線治療のみの後の同様なPSAレベルの減少の予想された平均値は12ヶ月である。この結果は、前立腺患者を治療する場合の放射線治療の有効性を増大させるためにNO模倣体を使用することを、次の点で支持する;1)前立腺癌の血清マーカーであるPSAレベルの減少、2)前立腺癌が鎮静へ向かう可能性、および3)前立腺癌を無期限に休止期に保つ。
XII. 実施例12
前立腺癌は現在では最も普通に診断される癌であり、男性の癌による死亡の2番目に多い原因である。前立腺癌はほとんど、重度の前立腺上皮内異常増殖(PIN)が原因の腺癌であり、注射針バイオプシーの4〜16.5%で存在し、共存する癌腫を強く予言し、バイオプシーの繰り返しを必要とする。初期の前立腺患者は既存のアンドロゲン抑制療法で効果的に治療される。
ホルモン不応性進行前立腺癌は臨床的な挑戦の対象である。非エストラムスチン、タキサン含有療法が失敗し、エストラムスチン治療法(例えば3〜4回の用量でそれぞれ14mg/kg/日PO)に入った、ホルモン不応性/不感性前立腺癌(HRPC)患者では、局所ニトログリセリン軟膏が施される。ニトログリセリン軟膏は毎日4〜5回施され、酸化窒素の血漿レベルを維持する。ニトログリセリンおよびエストラムスチン治療を行っている間に、PSAレベルを毎月測定する。ニトログリセリン治療の効果を、エストラムスチンの使用者のデータベースを参照して測定する。統計的に、PSAレベルまたは速度が50%以上減少した患者の40%以上が、ニトログリセリン治療の成功と見なされる。エストラムスチン単独治療で予期される5ヶ月の生存時間中間値、苦痛の回数の減少、または患者が意識を維持し、病気の進展を記録する能力の改善も、これらの患者の標準的な治療にニトログリセリン治療を加えることの臨床な意義であると考えられる。
XIII. 実施例13:乳腺腫瘤摘出手術後の悪性乳癌再発の防止
局所初期非転移性乳癌患者を、悪性組織を除去するための乳腺腫瘤摘出手術を行うするために選んだ。手術に先立ち、腫瘍の体積を減少させるため、第1系列抗悪性治療を患者に始めた。この治療の有効性を改善するため、患者はバイアグラ等の酸化窒素模倣体(25mgまたは50mg)を継続的に毎日、第1系列の治療期間中の服用を開始した。乳癌または他の癌の再発を防止するため、服用は手術直後、および手術後は継続的である。病歴データーベースを参照して再発期間が延長されること、および/または改善された生活の質は治療の成功と考えられる。
本明細書に記載した実施例と態様は説明の目的であり、その線に沿った様々な変法または変更が当業者に示唆され、それは本出願の精神と展望、および貼付された特許請求の範囲に含まれる。本明細書に引用した全ての出版物、特許および特許出願をあらゆる目的で参照として組み入れられる。
正常(20%O2)条件と比較した、低酸素(1%O2)条件でのMDA-MB-231浸潤性乳癌細胞によるGTNおよびSNPのインビトロ浸潤に対する作用を示すヒストグラムである。細胞を、Materigel被覆した膜上に塗布し、かつ低酸素または正常条件下で、単独でまたは一酸化窒素模倣体の存在下でインキュベーションした。各処置に関する細胞の浸潤能の尺度とみなされる浸潤インデックス(対照に対する%)は、膜を通して浸潤した細胞を染色しかつそれを計数することにより決定した。第一の棒グラフは、正常条件(20%O2)下で培養した細胞の浸潤インデックスを示す。第二の棒グラフは、低酸素条件(1%O2)下で培養した細胞の浸潤インデックスを示す。第三の棒グラフは、低酸素条件(1%O2)下で培養しかつ10-10M SNPを投与した細胞の浸潤インデックスを示す。第四の棒グラフは、低酸素条件(1%O2)下で培養しかつ10-11M GTNを投与した細胞の浸潤インデックスを示す。「*」で示した値は、対のある多重比較法のためのスチューデント化されたニューマン・クールズpost hoc検定を用い、有意差(p<0.05、n=6)がある。 2x10-11M GTNの存在または非存在下において、1%または20%O2中で12時間インキュベーションし、かつC57B16雌マウスへi.v.注射(尾静脈)した、B16F10マウス黒色腫細胞の肺コロニー形成能を示すヒストグラムである。14日後マウスを屠殺し、肺を摘出し、かつBouin固定液中で固定した。黒色および非黒色の両方の転移性コロニーを、解剖顕微鏡下で計数した。第一の棒グラフは、正常条件(20%O2)下で培養した細胞を注射したマウスの肺において観察された結節数を示す。第二の棒グラフは、正常条件(20%O2)下で培養しかつ2x10-11M GTNを投与した細胞を注射したマウスの肺において観察された結節数を示す。第三の棒グラフは、低酸素条件(1%O2)下で培養した細胞を注射したマウスの肺において観察された結節数を示す。第四の棒グラフは、低酸素条件(1%O2)下で培養しかつ2x10-11M GTNを投与した細胞を注射したマウスの肺において観察された結節数を示す。 根治的前立腺切除術を受けた患者A(図3A)および患者B(図3B)である患者2名における循環血中前立腺特異抗原(PSA)レベルを示す。血漿PSAレベルの急激な減少が、低用量NO模倣体療法投与後2ヶ月以内に、両方の患者において認められた。血漿PSAレベルは、ラジオイムノアッセイを用いて測定し、これは精度±0.1ng/mlであった。 MDA-MB-231乳癌細胞における細胞内cGMP濃度に対する低酸素(0.5%O2)の作用を示す。細胞を6時間、20%または0.5%O2中、および、GTN(1mM)の存在下または非存在下に培養した。IBMX(500mM)を培地中インキュベートしてPDE活性を阻害することによりcGMPの測定可能な蓄積を可能とした。低酸素条件下での培養によりcGMP濃度は44%低下した。この作用はGTN(1mM)により完全に防止された。数値は細胞タンパク質mg辺りのfMcGMP±標準偏差として表示した。アスタリスク(*)により示された数値は一対多重比較に関するTukey検定後の一元分散分析により調べた場合の有意差を示す(N=3,p<0.05)。 MDA-MB-231細胞によるインビトロの侵襲の低酸素性アップレギュレーションに対するGTNおよびSNPの作用を示す。NO模倣体の薬剤を24時間試験法の開始時に細胞に添加し、膜を貫通した細胞を計数した後に各投与の侵襲指数を計算した。棒印は平均、規格化された侵襲指数±標準偏差を示す。アスタリスク(*)により示された数値は20%O2中で培養された非投与細胞の侵襲指数と有意差があることを示す(N=6)。P値は実施例において示す。 MDA-MB-231乳癌細胞におけるウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター受容体(uPAR)の発現を示す。種々の濃度のグリセリルトリニトレート(GTN)(A;N=3)の存在下1%O2中、または、NOSアゴニストN-モノメチル-L-アルギニン(L-NMMA、0.5μM)単独またはGTN(0.1nM)との組み合わせの存在下または非存在下20%O2中(B;N=6)にインキュベートした細胞によるuPARタンパク質発現のウェスタンブロットアッセイ法である。uPARmRNA濃度に対するGTN(1pM)の作用もまたウエスタンブロットと同様の条件下に培養された細胞のノーザンブロットアッセイ法により調べた(CおよびD;それぞれN=3および6)。全ての場合において、GTNは24時間のインキュベート時間の開始時に添加した。18SrRNAを用いてノーザンブロットにおけるRNA負荷の均一性を確認した。棒印は相対密度の平均±標準偏差を示す。アスタリスク(*)は対照群(20%O2)の値と比較した場合の統計学的有意差を示す。全てのP値は実施例において示す。 MDA-MB-231乳癌細胞におけるsGCの活性および発現に対する低酸素の作用を示す。(A)GTN(1μM)の存在下または非存在下において20%O2または0.5%O2中で6時間培養されたMDA-MB-231乳癌細胞中に蓄積した総細胞cGMP。環状GMP濃度を測定し、総タンパク質濃度に対して規格化した。数値は蓄積cGMPの平均±標準偏差を示す(N=3)。(B)20%O2または0.5%O2中で24時間インキュベートされた細胞におけるsGC発現のウェスタンブロットアッセイ法(N=3)。棒印は平均の密度±標準偏差を示す。アスタリスク(*)は対照群(20%O2)の値と比較した場合の統計学的有意差を示す。各条件についてP値は実施例において示す。 MDA-MB-231乳癌細胞におけるuPAR発現のNO媒介抑制に対するsGC破壊の作用を示す。(A)GTN(1μM)および選択的sGCインヒビターの存在下または非存在下において20%O2または0.5%O2中で24時間培養された細胞におけるuPARmRNA発現のノーザンブロットアッセイ法(ODG、0.5μM;N=5)。(B)ヘム破壊物質DFO(100mM)単独およびGTN(1μM)との組み合わせの存在下または非存在下、24時間培養した細胞におけるuPARの発現のノーザンブロットアッセイ法(N=5)。(A)および(B)中の棒印は平均の相対密度±標準偏差を示す。アスタリスク(*)は統計学的に有意差ありを示す。全てのP値は実施例において示す。 MDA-MB-231乳癌細胞における低酸素およびDFO誘導のuPARの発現に対する8-Br-cGMPの作用を示す。(A)種々の濃度の8-Br-cGMPの非存在下または存在下において20%O2または0.5%O2中で24時間培養された細胞におけるuPAR発現のノーザンブロットアッセイ法(N=3)。(B)種々の濃度の8-Br-cGMPの非存在下または存在下において20%O2または0.5%O2中で24時間培養された細胞におけるuPARタンパク質のウェスタンブロットアッセイ法(N=9)。(C)DFO(100μM)単独または8-Br-cGMPの非存在下または存在下において24時間培養された細胞におけるuPAR転写産物のノーザンブロットアッセイ法(N=6)。(A)、(B)および(C)における棒印は平均の相対密度±標準偏差を示す。アスタリスク(*)は対照群(20%O2)の値と比較した場合の統計学的有意差を示す。全てのP値は実施例において示す。 MDA-MB-231乳癌細胞におけるuPAR発現に対するPKGインヒビターの作用を示す。(A)PKGインヒビター(KT5823、10μM)の存在下または非存在下において6時間培養した細胞におけるuPARの発現のノーザンブロットアッセイ法である(N=6)。(B)PKGインヒビター(KT5823、10μM)の存在下または非存在下において6時間培養した細胞におけるuPARタンパク質のウェスタンブロットアッセイ法である(N=6)。棒印は平均の相対密度±標準偏差を示す。アスタリスク(*)により示された数値は対照群(20%O2)の値と比較した場合の統計学的有意差を示す。全てのP値は実施例において示す。 MDA-MB-231乳癌細胞におけるインビトロの侵襲性の低酸素性アップレギュレーションに対する8-Br-cGMPの作用を示す。種々の濃度の8-Br-cGMPの非存在下または存在下において20%O2または0.5%O2中で24時間、再調製された細胞外マトリックスに細胞を通過させた。膜を貫通した細胞を計数した後、各治療の侵襲指数を計算した。数値は侵襲指数の平均±標準偏差として示す。アスタリスク(*)により示された数値は対照群(20%O2)細胞の侵襲指数有意差を示す(N=6)。全てのP値は実施例において示す。 ヒトPC-3前立腺癌細胞の生存性に対するドキソルビシン(12.5〜100μM)の作用を示す。細胞を予め24時間20%または0.5%のCO2に曝露した後、ドキソルビシンを1時間治療した。生存性はクローン形成能力により評価した。 ドキソルビシンに対する低酸素誘導性耐性に対するGTN単回投与の作用を示す。(A)ヒトPC-3および(B)TRAMP-C2細胞をGTN(0.1nM)とともに治療することにより、低酸素中12時間のインキュベートに渡る12.5μMドキソルビシンへの低酸素誘導性耐性の獲得が防止された。結果は平均±標準偏差で示す(N=12)。単一のアスタリスク(*)は12.5μMドキソルビシンにおいて20%O2中でインキュベートされた細胞と比較した場合の生存性における統計学的有意差(p<0.0001)を示す。二重のアスタリスク(**)は0.5%O2のみでインキュベートされた細胞と比較した生存性における統計学的有意差(p<0.0001)を示す。 経時的なドキソルビシンに対する耐性に対するMDA-MB-231ヒト乳癌細胞球状培養物の作用を示す。初期細胞プレーティングの後、24、48、72、96または120時間に渡り球状物を形成させた。各時点において、球状物をドキソルビシン200μMに曝露し、その後、粉砕し、プレーティングしてコロニー形成を調べた(生存性)。この濃度のドキソルビシンにおいては、単層培養物の生存性はゼロ値であった(図示せず)。 MDA-MB-231乳癌細胞球状培養物の生存性に対するNOドナー薬剤DETA/NOと組み合わせた200μMドキソルビシンの作用を示す。球状物は72時間形成させた。DETA/NOは球状物形成の最後の24時間に適用した。次に球状物を1時間ドキソルビシンに曝露し、その後、粉砕し、プレーティングしてコロニー試験により生存性を調べた。 前立腺がまだ未損傷の場合の前立腺癌を有する患者に対するGTN療法の作用を示す。前立腺がまだ未損傷である前立腺癌を有する1患者のPSA濃度を示す。この患者には1日24時間0.03mg/hでGTNを各々約1ヶ月間、3つのエピソードの治療において投与した。図示するとおり、最初の2エピソードの開始の後、PSA濃度の上昇速度の低下が観察された。3回目のエピソードの開始後には、PSA濃度の低下が観察された。 放射線療法と組み合わせたGTN療法の作用を示す。前立腺がまだ未損傷である前立腺癌患者1人における循環系PSA濃度を示す。この患者には0.03mg/時の濃度で長期にわたり慢性的にGTNを投与した。長期GTN療法開始2ヵ月後、患者に放射線療法を行った。図示されるとおり、複合療法により三ヶ月以内にPSA低下速度が加速された。放射線療法のみの後のPSA濃度の同様の低下について予測される平均は12ヶ月である。

Claims (16)

  1. 癌、悪性疾患、新生物、過形成、肥大、形成異常および/または腫瘍の血管形成を調節、治療および/または予防するために動物に一酸化窒素模倣体を投与する段階を含む、癌、悪性疾患、新生物、過形成、肥大、形成異常および/または腫瘍の血管形成を調節、治療および/または予防する方法。
  2. 一酸化窒素模倣体が低用量で投与される請求項1記載の方法。
  3. 頭痛、潮紅および低血圧を含む一酸化窒素模倣体への耐容性の発生および/または不要な副作用を遅延および/または低減させる濃度で一酸化窒素模倣体を投与する、請求項1または2記載の方法。
  4. 一酸化窒素模倣体が単独または抗悪性疾患治療薬と組み合わせて投与される、請求項1記載の方法。
  5. 一酸化窒素模倣体が、
    (1)好ましくは、悪性表現型を示す細胞の侵襲性、進行、生育および/または転移を低減する段階;悪性表現型を示す細胞の生存および/または生育を抑制する段階;悪性表現型を示す細胞の進行および/または転移を低減する段階;悪性表現型を示す細胞の後退を増強する段階;および/または、悪性表現型を示す細胞の殺傷を促進することにより腫瘍または悪性細胞の表現型の転移の潜在性を抑制する段階;
    (2)悪性腫瘍をその原発および/または二次的部位において休止状態または静穏状態に維持する段階;
    (3)抗悪性疾患治療手段の効果を増強、および/または、それへの耐性を防止または低減し;または、
    (4)癌の発症の危険性が高い動物における、および/または、動物の一酸化窒素の活性を低減することが既知の因子に曝露された動物における、腫瘍の血管形成を抑制または防止し、そして選択的に該因子は低下したアルギニン濃度、一酸化窒素合成酵素アンダゴニストへの曝露、一酸化窒素スカベンジャーへの曝露、一酸化窒素合成酵素発現の変化、コファクターの変化、グルコース枯渇、外科的処置、麻酔薬の投与、循環を改変する薬理学的物質の投与、外傷的傷害、身体的傷害、血液の損失、血液量の低下、もしくは出血、またはこれらの組み合わせである、請求項1記載の方法。
  6. 悪性疾患を示す細胞が、悪性細胞、侵襲性細胞、悪性の過程を促進する細胞および組織、ならびにこれらの組み合わせから選択され、ここにおいて随意的に、悪性細胞の表現型が、抗悪性疾患治療手段への応答を向上させることにより調節、治療または予防される、請求項1記載の方法。
  7. 動物に存在する腫瘍選択性マーカーを測定することにより癌が診断またはモニタリングされる、請求項1記載の方法。
  8. 一酸化窒素模倣体が腫瘍マーカーの濃度を低下するか、または上昇を遅延させる、請求項7記載の方法。
  9. 癌が胃癌、胃腸癌、精巣癌、前立腺癌、前立腺の腺癌、乳癌、転移性黒色腫、もしくは肺癌、またはこれらの組み合わせを含み;ここにおいて随意的に、動物における癌もしくは他の悪性疾患、新生物、過形成、肥大、形成異常および/または腫瘍の血管形成が良性の前立腺過形成または奇胎妊娠を含む、請求項1記載の方法。
  10. 一酸化窒素模倣体が一酸化窒素、一酸化窒素ドナー、生体変換を介して一酸化窒素を発生または放出する化合物、一酸化窒素を自発的に生成するか一酸化窒素を自発的に放出する化合物、または、一酸化窒素を発生する化合物、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1記載の方法。
  11. 一酸化窒素模倣体が、
    (1)ニトログリセリン(GTN)、イソソルビド5-モノニトレート(ISMN)、イソソルビドジニトレート(ISDN)、ペンタエリスリトールテトラニトレート(PETN)、エリスリチルテトラニトレート(ETN)、N-ヒドロキシル-L-アルギニン(NOHA)、N6-(1-イミノエチル)リジン)(L-NIL)、L-N5-(1-イミノエチル)オルニチン(LN-NIO)、NW-メチル-L-アルギニン(L-NMMA)、S-ニトロソグルタチオン(SNOG)、S,S-ジニトロソジチオール(SSDD)、[N-[2(ニトロキシエチル)]-3-ピリジンカルボキシアミド(ニコランジル)、ナトリウムニトロプルシド(SNP)、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP)、3-モルホリノ-シドノニミン(SIN-1)、モルシドミン、DEA-NONOエート(2(N,N-ジエチルアミノ)-ジアゼノレート-2-オキシド)、および、スペルミンNONOエート(N-[4-[1-(3-アミノプロピル)-2-ヒドロキシ-2-ニトロソヒドラジノ]ブチル-1,3-プロパンジアミンから選択される一酸化窒素ドナー;
    (2)NO経路の段階を活性化する化合物、細胞によるNOの利用を可能にするか促進する化合物、グアニリルシクラーゼを直接活性化する化合物またはホスホジエステラーゼインヒビターまたはこれらの組み合わせ;
    (3)I、II、III、IVまたはV型ホスホジエステラーゼインヒビターまたはこれらの組み合わせ;または、
    (4)タンパク質キナーゼGアクチベーター、
    である、請求項10記載の方法。
  12. 抗悪性疾患治療薬が放射線療法、温熱療法、免疫療法または化学療法またはこれらの組み合わせを含み、ここにおいて随意的に抗悪性疾患治療手段が放射線療法を含み、そして一酸化窒素模倣体が一酸化窒素、一酸化窒素ドナー、生体変換を介して一酸化窒素を発生もしくは放出する化合物、酸素の存在下においてのみ一酸化窒素を自発的に生成するかもしくは一酸化窒素を自発的に放出する化合物、またはこれらの組み合わせであり、該一酸化窒素模倣体が放射線療法の間に投与される、請求項4記載の方法。
  13. 化学療法が、抗血管形成剤、代謝拮抗物質、抗生物質、エンドセリンアクチベーター、酵素インヒビター、ホルモン剤、オクレオチドアセテート、微小管撹乱剤、微小管安定化剤、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、トポイソメラーゼインヒビター、プレニルタンパク質転移酵素インヒビター、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、ミトーテン、ヘキサメチルメラミン、白金配位鎖体、生物学的応答変調剤、成長因子、免疫モジュレーターもしくはモノクローナル抗体、またはこれらの組み合わせである化学療法剤の投与を含む、請求項12記載の方法。
  14. 一酸化窒素模倣体の用量が血管拡張をもたらす一酸化窒素模倣体の用量よりも少なくとも3〜10,000倍低値、好ましくは100〜10,000倍低値である、請求項1記載の方法。
  15. 一酸化窒素模倣体が既知の血管拡張化合物であり、模倣体が血管拡張をもたらすことが、既知の一酸化窒素模倣体の用量よりも少なくとも3〜10,000倍低値、好ましくは100〜10,000倍低値の用量で投与される、請求項1記載の方法。
  16. 一酸化窒素模倣体がカルシウムチャンネルブロッカー、α-アドレナリン受容体アンダゴニスト、β-アドレナリン受容体アゴニスト、ホスホジエステラーゼインヒビター、cAMP依存性タンパク質キナーゼアクチベーター、スーパーオキシドスカベンジャー、カリウムチャンネルアクチベーター、ベンゾジアゼピン、アドレナリン作用性神経インヒビター、抗下痢剤、HMG-CoA還元酵素インヒビター、アデノシン受容体モジュレーター、アデニリルシクラーゼアクチベーター、エンドセリン受容体アンダゴニスト、ビスホスホネート、cGMP依存性タンパク質キナーゼアクチベーター、グアニリルシクラーゼアクチベーターおよびSOCインヒビターからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
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