JP2005521892A - 被分析物の分析方法 - Google Patents
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Abstract
Description
Pappin DJC,Hoejrup PおよびBleasby AJ,Current Biology,第3巻:第327〜332頁,「ペプチドマスフィンガープリントによるタンパク質の迅速な同定」(1993年) Mann M,Hojrup P,Roepstorff P,Biol Mass Spectrom,第22巻6号:第338〜345頁,「配列データベースにおける質量スペクトル分子量情報のタンパク質を同定するための利用」(1993年) Yates JR 3世,Speicher S,Griffin PR,Hunkapiller T,Anal Biochem,第214巻2号:第397〜408頁,「ペプチドマスマップ:タンパク質を同定するために有益なアプローチ」(1993年) Krause E.とWenschuh H.とJungblut P.R.,Anal Chem,第71巻19号:第4160〜4165頁,「トリプシンを利用したタンパク質のMALDIマスフィンガープリントにおけるアルギニン含有ペプチドの優先度」(1999年) V.Bonettoら,Journal of Protein Chemistry,第16巻5号:第371〜374頁,「MALDIマスによる修飾ペプチドC末端の配列決定」(1997年) Francesco L.Brancia,Stephen G.OliverおよびSimon J.Gaskell,Rapid Commun. in Mass Spec.,第14巻,第2070〜2073頁,「リシン含有ペプチドのグアニジン化に続き、トリプシンにより加水分解した消化物の、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法の改良法」(2000年) Branciaら,Electrophoresis,第22巻:第552〜559頁,「化学的誘導体化と改良バイオインフォマティクス手段との組合わせによって、プロテオミクスのためのタンパク質同定を最適化できる」(2001年) Okamotoら,Anal Chem.,第69巻15号:第2919〜2926頁,「マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法による2-アミノピリジン誘導体化オリゴサッカライドの高感度検出とポストソース分解」(1997年) Bian N.ら,Rapid Commun Mass Spectrom,第11巻16号:第1781〜1784頁,「多重電子運搬体で標識されたアルブミンのレーザー脱離質量分析による検出」(1997年) Abdel-Baky S.およびGiese R.W.,Anal Chem,第63巻24号:第2986〜2989頁,「ゼプトモルレベルにおけるガスクロマトグラフィー/電子捕捉陰イオン質量分析」(1991年) Rothら,Mass Spectrometry Reviews,第17巻:第255〜274頁,「質量分析のためのペプチドの電荷誘導体化」(1998年)
(a) 予め定めた周波数の光を吸収する光吸収ラベルにより該被分析物を標識することによって、標識化被分析物を形成する工程;
(b) 該標識化被分析物を、少なくとも1つの光吸収性化合物から形成されたマトリックス中に包埋することによって、包埋標識化被分析物を形成する工程;
(c) 該包埋標識化被分析物を、予め定めた該周波数を有する光に露光することにより脱離させて、脱離被分析物を形成する工程;および
(d) 該脱離被分析物を質量分析法により検出することによって、該被分析物を分析する工程、を含むことを特徴とする方法を提供するものである。
(a) 必要に応じて該ポリペプチド中のシステインジスルフィド結合を還元して遊離のチオールを形成し、遊離した該チオールをキャッピングする工程;
(b) 配列特異的切断試薬により該ポリペプチドを切断し、ペプチドフラグメントを形成する工程;
(c) 必要に応じて該切断試薬を不活性化する工程;
(d) 1または2以上のε-アミノ基が存在する場合に、これをリシン反応性試薬によりキャッピングする工程;
(e) 上記記載の方法により該ペプチドフラグメントを分析することによって、該ポリペプチドについてのマスフィンガープリントを作成する工程;並びに
(f) 該マスフィンガープリントから該ポリペプチドを同定する工程;
を含む方法を提供する。
(a) 必要に応じて1または2以上の該ポリペプチド中のシステインジスルフィド結合を還元して遊離のチオールを形成し、遊離した該チオールをキャッピングする工程;
(b) 該ポリペプチド群から1または2以上のポリペプチドを分離する工程;
(c) 配列特異的切断試薬により1または2以上のポリペプチドを切断し、ペプチドフラグメントを形成する工程;
(d) 必要に応じて該切断試薬を不活性化する工程;
(e) 1または2以上のε-アミノ基が存在する場合に、これをリシン反応性試薬によりキャッピングする工程;
(f) 上記記載の方法により1または2以上のペプチドフラグメントを分析することによって、該ポリペプチドについてのマスフィンガープリントを作成する工程;並びに
(g) 該マスフィンガープリントから1または2以上のポリペプチドを同定する工程;
を含む方法を提供する。
(a) 必要に応じて、該サンプル由来の1または2以上の該ポリペプチド中のシステインジスルフィド結合を還元し、遊離した該チオールをキャッピングする工程;
(b) 該サンプルの各々から1または2以上のポリペプチドを分離する工程;
(c) 配列特異的切断試薬により該ポリペプチドを切断し、ペプチドフラグメントを形成する工程;
(d) 必要に応じて該切断試薬を不活性化する工程;
(e) 1または2以上のε-アミノ基が存在する場合に、これをリシン反応性試薬によりキャッピングする工程;
(f) 上記記載の方法によりペプチドフラグメントを分析することによって、該サンプル由来の1または2以上のポリペプチドについてのマスフィンガープリントを作成する工程;並びに
(g) 1または2以上のマスフィンガープリントから該サンプル中の1または2以上のポリペプチドを同定する工程;
を含む方法を提供する。
D−M−L−A
式中、Dは光吸収ラベルを含むものであり、Mは質量調節因子を含むものであり、Lはリンカーを含むものであり、Aは被分析物を含むものである。
(a) 被分析物へラベルを結合させるための反応性官能基を有する1または2以上の光吸収ラベル;および
(b) マトリックスを形成するための化合物であって、該光吸収ラベルと同じ周波数の光を吸収する化合物。
色素−反応性官能基
式中、色素としては非蛍光のものが好適であり、好ましくは吸収された放射線を熱として放散するものである。
色素−質量調節因子−リンカー−反応性官能基。
1. 予め定めた周波数の光を吸収する色素により被分析物を標識する工程。
2. 標識した被分析物を、脱離工程で用いるレーザー光と同一周波数の光を吸収する色素を含むマトリックス中に包埋する工程。
3. 予め定めた周波数のレーザー光を照射することにより標識した被分析物分子を脱離させ、マトリックスと共に標識した被分析物を昇華させる工程。
4. 脱離工程において形成されたイオンを質量分析法によって検出する工程。
1.本発明の第一の態様で用いられる質量標識分子;および
2.適切なMALDIマトリックス試薬。
高分子量である生体分子のMALDI分析のためのマトリックスとして、種々の化合物が有用であることが見出されている。これらの化合物は、一般的に、多数の特性によって特徴付けられる。これら化合物は、一般的に、脱離のために用いられるレーザーの周波数に対して大きな減衰係数を有する。また、これら化合物は、固体溶液中で被分析物分子を認識することができ、MALDI質量分析計中でレーザーショットに曝された場合、十分な揮発性を有することから迅速に昇華できる。この様な昇華性色素は、包埋された被分析物分子を運搬するための噴流中で迅速に揮発し、そしてこの揮発は、ほとんどの実施態様において好ましいことに、被分析物のフラグメンテーションなしに起こるはずである(但し、このフラグメンテーションは、被分析物についての構造情報が求められる場合、望ましいことされる場合がある)。一方、マトリックスは、揮発性でありすぎてはならない。なぜなら、実験には数時間かかることがあり、被分析物/マトリックスの共晶(co-crystal)は、その間、イオン供給源内において減圧下で安定でなければならないからである。レーザー照射に対する揮発性の特性は、マトリックスにより生成された被分析物イオンの初期速度を決定することによっておおよそ判断することができる。最初の揮発性が高いほど、「よりソフトな(softer)」イオン化、すなわちフラグメンテーションを低減できることが観察されている(Karas M.およびGlueckmann M.,J Mass Spectrom,第34巻:第467〜477頁,「紫外線マトリックス支援レーザー脱離/イオン化における初期イオン速度と、そのマトリックス、被分析物および調整方法に対する依存性」,1999年)。しかし、マトリックスの高い初期イオン揮発性もまた、減圧下での迅速な昇華に関連していることがある。
本発明の1つの態様では、被分析物に結合させる光吸収色素分子を提供する。本発明では、これまでMALDI質量分析では用いられていなかった種々の色素を使用することができる。4-ジメチルアミノアゾベンゼン-4'-スルホニルクロライド(ダンシルクロライド,Sigma-Aldrich,Poole,Dorset,UK)など、UV周波数の光を強く吸収し、反応性官能基を有する色素が市販されている。この試薬のみならず、発光励起を熱的に放散する同様のUV吸収色素も、本発明において適用可能である。
様々な他の反応性官能基が、本発明で使用する反応性色素を調製するために適切なものとして考えられる。以下の表1では、色素分子へ組み込まれ得るいくつかの反応性官能基を列挙している。これらの反応性官能基は、生体分子、特にペプチドやポリペプチドにみられる求核性反応基と反応することができる。例示した求核性官能基と反応性官能基の反応によって、2つの基の間に共有結合が形成される。この共有結合は、この表の三列目に示されている。合成オリゴヌクレオチドへの適用に際しては、多くの場合、第一級アミンまたはチオールが、標識を可能にするため合成過程において分子末端に導入される。目的分子に質量マーカーを結合させるために、以下に挙げる官能基のいずれかを本発明の化合物に導入することができる。反応性官能基は、必要である場合には、さらなるリンカー基をさらなる反応性官能基と共に導入するため用いることができる。表1は、その他の態様を排除するものではなく、本発明は、列挙された官能基のみの使用に限定されない。
本発明における第二の態様では、生体分子を検出する方法が提供される。この方法では、生体分子は色素分子により共有結合的に標識される。次いで、この標識化分子は、色素分子を含むMALDIマトリックス中に包埋されるが、この色素分子は、生体分子を標識するために用いられた色素と同じであっても異なってもよい。次に、包埋された標識化生体分子を、MALDI質量分析計で分析する。被分析物である生体分子を標識するために用いた色素と遊離のマトリックスとして選択された色素は、両方ともMALDIプロセスで用いられる周波数の光を強く吸収するように選択される。代表的には、266nm(Nd-YAGレーザー)または337nm(Nitrogen Lasers)のレーザー紫外(UV)周波数を用いる。
質量分析計に不可欠な構成は、以下のとおりである。
入力システム、イオン供給源および質量分析計には、大型の生体分子を分析する目的のため用いることができる様々なものがある。本発明においては、イオン供給源としてマトリックス支援レーザー脱離イオン供給源を用いるが、これについては限られた数の入力システムしか存在しない。様々な質量分析計、イオン検出器およびデータ捕捉システムをMALDIとともに用いることができるが、ある種の質量分析計の中には、商業的には製造されていないものがある。飛行時間型質量分析計は、通常、MALDIならびにフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計および四重極/飛行時間型質量分析計とともに用いられる。原理上、イオントラップとセクター装置はMALDIで用いることができるが、一般にはこれらは商業的には製造されていない。
移動ベルトシステムは、標識された核酸の分析のためにレーザー脱離とともに用いられている新しい入力システムの1つである(Linxiao Xuら,Anal.Chem.,第69巻:第3595〜3602頁,「電気泳動質量タグジデオキシDNAシークエンシング」,1997年)。この技術はMALDIで用いられていないが、このようなインターフェースを本発明の試薬や方法とともに使用するために適合させることは簡単なはずである。
MALDIにおいては、生体分子溶液を大モル過剰の光励起性「マトリックス」中に包埋しなければならない。適切な周波数のレーザー光の照射によりマトリックスが励起され、その結果、包埋された生体分子と一緒にマトリックスが迅速に蒸発する。酸性マトリックスから生体分子へのプロトンの移動によりプロトン化型の生体分子が生じ、これが、陽イオン質量分析法、特に飛行時間型(TOF)質量分析法により検出される。陰イオン質量分析もまた、MALDI TOFにより可能である。この技術によって、大量の伝達エネルギーがイオンに与えられるが、それにもかかわらず過剰なフラグメンテーションはあまり誘導されない。供給源からイオンを加速させるために用いられるレーザーエネルギーや電位差の適用のタイミングを用いて、この技術によりフラグメンテーションを制御することができる。この技術は、その質量範囲が大きいこと、そのスペクトル中の一価のイオンの分布、そして多数のペプチドを同時に分析する能力から、ペプチドマスフィンガープリントの決定に極めて好ましい。
飛行時間型質量分析計
その名称が示すとおり、飛行時間型質量分析計は、予め定められた電位差の作用により定められた距離をイオンが移動するのに要する時間を測定するものである。この飛行時間測定によって、検出器に衝突するイオンの質量電荷比を算出することが可能になる。これらの装置は、サンプル中のほぼ全てのイオンの到達を測定するため、結果としてかなり高感度であり得るが、この技術では選択性を達成することは困難である。また、この技術によって、通常、イオントラップや四重極質量分析計により測定できるよりも高い質量電荷比でイオンを検出することもできる。TOF質量分析計は、現在のところ、MALDIで広く用いられている。
イオントラップ質量分析計は、四重極質量分析計と関係する。イオントラップは、一般的に3電極の構造(各々の末端でキャビティーを形成する「キャップ」電極を有する円柱状電極)を有する。正弦波電位がこの円柱状電極に加えられ、一方で、キャップ電極はDCまたはACの電位により偏向される。キャビティーへ注入されたイオンは、円柱状電極の電場振動によって、安定な環状の軌道に拘束される。しかし、ある発振ポテンシャルの振幅において、特定のイオンは不安定な軌道を有しており、トラップから追い出される。トラップに注入されたイオンのサンプルは、発振高周波ポテンシャルが変化することによって、それらの質量/電荷比に従いトラップから連続的に排出され得る。次いで、この排出イオンが検出され、これによって質量スペクトルが作成される。
FTICR質量分析法は、イオンのサンプルがキャビティー内で保持されるという点でイオントラップと同様の特徴を有するが、FTICR MSでは、イオンは交差した電場と磁場により高真空チャンバ中で捕捉される。ボックスの2つの側面を形成する1対のプレート電極が、電場を生じる。このボックスは、超伝導磁石の磁場に入れる。この磁場は、トラッププレートであるこの2つのプレートとの協同作用により、注入されたイオンを、このトラッププレートの間の当該磁場に垂直な環状軌道に拘束する。このイオンは、当該ボックスの別の2つの向かい合う側面を形成する2つの「トランスミッタープレート(transmitter plates)」に高周波パルスを加えることによって、より大きい軌道へ励起される。このイオンの円柱状の動きによって、「レシーバープレート(receiver plates)」を含む当該ボックスの残りの2つの対向側面において対応する電場が生じる。この励起パルスが、イオンをさらに大きい軌道へ励起させ、この軌道は、イオンの干渉運動が衝突によって失われるにつれて減衰する。レシーバープレートによって検出される対応シグナルは、フーリエ変換(FT)解析によって質量スペクトルに変換される。
ペプチドの配列を決定するために、衝突誘起解離によるペプチドのフラグメント化を本発明において用いることによって、その消化産物の質量のパターンによっては同定されないタンパク質を同定することができる。さらに、フラグメント化は、光励起や電子衝撃によっても行なうことができる。ペプチドをフラグメント化するためやフラグメントの質量を決定するために、様々な質量分析計を用いることができる。
タンデム質量分析計によって、予め決定した質量対電荷比を有するイオンを選択してフラグメンテーションさせることができる(例えば、衝突誘起解離(CID)によって)。次いで、このフラグメントを検出し、選択されたイオンについての構造情報を得ることができる。タンデム質量分析計においてCIDによりペプチドを解析する場合、特徴的な切断パターンが観察され、それによってペプチドの配列を決定することができる。天然のペプチドは、通常、ペプチド骨格のアミド結合で無作為にフラグメント化され、当該ペプチドに特徴的なイオン群を生じる。CIDフラグメント群は、n番目のペプチド結合での切断について、an、bn、cnなどで表され、ここでイオンの電荷は、そのイオンのN末端フラグメント上に保持されている。同様に、フラグメント群は、xn、yn、znなどで表され、ここでの電荷は、そのイオンのC末端フラグメント上に保持されている。
本発明の特定の実施形態では、質量マーカーとして、アフィニティーキャプチャリガンドを含むものを用いる。アフィニティーキャプチャリガンドは、極めて特異的な結合パートナーを有するリガンドである。これらの結合パートナーによって、リガンドでタグ化された分子は、結合パートナーにより選択的に捕捉されることが可能になる。好ましくは、固体支持体は結合パートナーで誘導体化され、その結果、アフィニティーリガンドタグ化分子が固相支持体上へ選択的に捕捉され得る。アフィニティーキャプチャリガンドの使用によって、質量分析法のための被分析物の馴化も可能であるままで、タグ化種が分析の前に選択的に捕捉されタグ化物質および非タグ化物質の分離が可能になるという点で、多くの利点が生まれる。サンプルの馴化には、イオン化を抑制するか或いは質量分析法を妨害し得る洗浄剤や他の混入物の除去が含まれる。また、馴化には、質量スペクトルにおいて質量シフトを起こす被分析物との付加物を形成し得る塩の除去が含まれる。さらに、イオン化を最適化するためにpHを調節してもよい。固相支持体上に捕捉されたタグ化被分析物の馴化は容易である。なぜなら、捕捉された物質は、所望のpHに応じて、炭酸アンモニウムやトリフルオロ酢酸のような揮発性の塩を含む適切な緩衝液で容易に洗浄できるからである。この洗浄工程により混入物質を除去することができる上に、pHを適切に調節することができる。
本発明のいくつかの実施態様では、タグは、容易にイオン化できる基を含み得、当該基が、質量分析計におけるタグおよびタグ化された被分析物の可溶化、ならびにタグ化被分析物のイオン化の両方を補助し得る。種々の官能基を、イオン化可能基として用いることができる。第三級アミノ基およびグアニジノ基は、両方とも可溶化およびイオン化に有用な官能基である(Francesco L.Branca,Stephen G.OliverおよびSimon J.Gaskell,Rapid Commun.in Mass Spec.,第14巻,第2070〜2073頁,「改良マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法によるリシン含有ペプチドのグアニジン化に続くトリプシンによる加水分解物の分析」2000年)。
表面活性化レーザー脱離イオン化(SELDI)は、MALDIの改良型であり、ここでは、MALDIの有用な金属ターゲットは誘導体化される(Weinberger S.R.,Morris T.S.,Pawlak M.,Pharmacogenomics,第1巻4号:第395〜416頁「プロテインバイオチップ技術における最近のトレンド」,2000年)。斯かる表面修飾としては、陰イオン交換体、陽イオン交換体、疎水性表面または親水性表面での誘導体化が挙げられる。タンパク質またはペプチドのサンプルがこれらの表面に加えられると、サンプルは表面に吸着する。適切な洗浄工程によって、MALDI TOF質量分析計によるさらなる分析のために、サンプルフラクションから、ターゲット上に残留している特定の成分を選択的に除去することができる。この技術においては、分析目的と標識化被分析物を未反応のタグから分離する目的の両方のため、本発明の標識の適用が有用であると考えられる。特に、陽イオンまたは陰イオン交換樹脂でコーティングされた表面に適用するに際して有用であることが認識される。
4-ヒドロキシ-α-シアノ-ケイ皮酸(HCCA)の2つの異なる反応性誘導体を合成した。調製した第1の誘導体は、HCCAのカルボキシル官能基のN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルとした。HCCAのNHSエステル(NHS-HCCA)は、アミン反応性誘導体である(図1を参照)。この第1の合成は成功し、MALDIで良好な結果が得られたが、ペプチドとの反応収率は望まれるほど良くなかった。そこで、第2の合成を考案し、ケイ皮酸官能基と反応性NHSエステル基との間にスペーサーを組み込んだHCCAの誘導体を得た。この第2の試薬(図1を参照のこと)は、NHS-L-HCCAと呼ばれ、これもアミン反応性である。
NHS-HCCAの合成を図1に示す。第1の工程において、HCCAのヒドロキシル官能基を保護し、次にカルボン酸部分を活性化する。
5.6 g(30 mmol)の2-シアノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)アクリル酸を溶解した40 mlのアセトニトリルを、透明な溶液が得られるまで、4.6 ml(33 mmol)のトリエチルアミンとともに撹拌した。次いで、0.2 g(4 mmol)の4-ジメチルアミノピリジンと7.3 g(33 mmol)のtert-ブチルピロカルボネートを、この透明溶液に添加した。2時間の反応後(この溶液はその時点で無色である)、当該溶液をその半分の容積に減らし、200 mlの冷5%クエン酸溶液で洗浄した。
収率:7.4=85%
融点:120〜121℃。
0.95 g(5 mmol)の2-シアン-3-(4-tert-ブトキシカルボニルオキシフェニル)アクリル酸と0.6 g(5 mmol)のN-ヒドロキシスクシンイミドを10 mlのアセトニトリルに溶解した。1.1 g(5.7 mmol)のN-エチル-N'-3-ジメチルアミノジシクロヘキシルカルボジイミド塩酸塩を、反応混合物に少しずつ添加した。2時間後、溶媒を留去した。得られた残渣を酢酸エチルで、そして冷5%クエン酸溶液で、次いで、飽和NaCl溶液で洗浄した。生成物をクロマトグラフィーによって精製した。
収率:1.2 g=63%。
NHS-L-HCCAの合成を、図1に示す。最初の工程で、塩素化したリンカーを生成させる。次いで、この塩素基をシアン化物イオンにより求核置換する。次に、このシアノリンカーを4-ヒドロキシベンズアルデヒドと縮合させ、遊離カルボキシル基を有する6個の炭素鎖リンカーを有するケイ皮酸誘導体を得る。当該化合物は、この合成の最終工程で活性化されてNHSエステルを形成する。
18 ml(221 mMol)のクロロアセチルクロライドを、20 g(153 mmol)の6-アミノヘキサン酸を溶解した80 mlの冷NaOH溶液(2 N)へ室温で滴下した。NaOH溶液(6 N)を時々添加することによって、この溶液のpHを10〜11に保ちつつ、この反応混合物を30分間撹拌した。次いで、HCl(2 N)を用いて反応混合物のpHをpH 5とし、残渣を濾別した。次に、濾液のpHが中性になるまで、この残渣を水で洗浄した。この生成物を五酸化リンにより乾燥し、300 mlのクロロホルムに再度溶解し、濾過により溶解しない残渣を除去した。濾液にヘプタンを添加し、冷却下で撹拌することによってシロップを得た。この生成物を濾過し、乾燥して、次いで水から結晶化させた。
収率:20 g=63%
融点:82℃。
2.8 g(20 mmol)の炭酸水素カリウムを、8.3 g(40 mmol)の6-(クロロアセトアミド)ヘキサン酸を溶解した25 mlの水に添加した。次いで、3.2 g(48 mmol)のシアン化カリウムをこの透明な溶液に添加して、氷上で冷却した。この反応混合物を17時間撹拌し、次いでHCl(2 N)で酸性化した。抽出後の残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル,溶媒:酢酸エチル)により精製した。
収率:6 g=76%
融点:80〜81℃。
7.5 g(38 mmol)の6-(シアノアセトアミド)ヘキサン酸を、50 mlのピリジンに溶解させた。4.6 g(38 mmol)の4-ヒドロキシベンズアルデヒドと0.7 ml(7 mmol)のピペリジンをこの溶液に添加して、反応混合物を50℃で2時間撹拌した。次いで、さらに0.4 mlのピペリジンをこの反応に添加し、溶液を室温で60時間撹拌した。ピリジンの留去後の残渣をHCl(2 N)により酸性化して、酢酸エチルで抽出した。この有機層を300 mlの炭酸水素ナトリウムの飽和溶液に注いだ。次いで、この水層をHCl(2 N)を用いて注意深く酸性化した。沈殿した残渣を濾過して、水で洗浄した。乾燥生成物をジオキサンから結晶化させた。
収率:8.4 g=74%
融点:178℃。
2.3 g(20 mmol)のN-ヒドロキシスクシンイミドと6.0 g(20 mmol)の2-シアン-3-(4-ヒドロキシフェニル)アクリル酸の(6-ヒドロキシ-6-オキソ-ヘキシル)アミドを、60〜70℃で200 mlのジオキサンに溶解した。4.6 g(22 mmol)のジシクロヘキシルカルボジイミドを反応混合物に添加し、これを撹拌して30℃に冷却した。この温度を、1時間維持した。次いで、反応混合物を室温にし、20時間撹拌した。溶液を濾過して溶媒を留去した。残渣をジクロロメタンと重炭酸ナトリウムの溶液で処理した。抽出後の有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒の留去後、次に、残渣をシリカゲル上でクロマトグラフィーにかけた。この生成物を酢酸エチルから結晶化させた。シリカゲル上への生成物の沈着によって生じる発熱反応を回避するために、最初にカラムを冷却した。
収率:50 g=63%
融点:142℃。
1番目の活性なエステルケイ皮酸質量タグ(NHS-HCCA)(その合成は上記に記載されている)を、以下の手順に従って樹脂に結合させたペプチドに結合した。
HRDPYRFDPHKDのペプチド配列を、標準的なFmoc/tBu合成手順を用いてWang型の樹脂上で合成した(例えば、Fields G.B.およびNoble R.L.,Int J Pept Protein Res,第35巻3号:第161〜214頁,「9-フルオレニルメトキシカルボニルアミノ酸を利用したペプチドの固相合成」1990年を参照のこと)。樹脂に結合させたペプチドは、切断後に遊離の酸部分を生じた。
正確な質量=286.06
分子式=C14H10N2O5
分子組成=C 58.7%,H 3.5%,N 9.8%,O 28.0%。
樹脂に結合させたペプチドを、標準的な方法(ピペラジンを含有するDMF)に従ってN末端で脱保護して、過剰量の上記試薬であるNHS-HCCAと過剰の塩基(117 mg=0.4 molを800μlのDMF中に、1当量=44.3 mg DIPEAとともに含有)と反応させた。この混合物を室温で3時間インキュベートした。
標識後に樹脂を洗浄し、スカベンジャー混合物(TFA:チオアニソール:トリエチルシラン:水が、それぞれ、92.5%:2.5%:2.5%:2.5%)と2時間インキュベーションすることによって、ペプチドを樹脂から切断した。このペプチドを沈殿させて、ジエチルエーテルで洗浄し、tert-ブタノール/水(4:1)から凍結乾燥して白色粉末を得た。
モノアイソトピック組成:C80H104N24O22。
標識反応生成物をHPLCによって分析して(図2を参照のこと)、標識および未標識のペプチドの混合物を含むことを見出した。標識されたペプチドが混合物の約85%を占め、未標識のペプチドは混合物の約15%を占める。エレクトロスプレーイオン化質量分析法によるこの混合物の解析によっては、標識されたペプチドの検出感度の改善はまったく示されないが、MALDI TOF MSによるこの混合物の分析(図3)は、この混合物のうち、さらに少ない割合を占める標識されたペプチドが、未標識のペプチドよりもかなり高い感度で検出されることを示している。
さらに6個の炭素鎖のリンカーを含む第2の活性エステルケイ皮酸質量タグ(NHS-L-HCCA)(その合成は上記に記載されている)を、以下の手順に従って、樹脂に結合させたペプチドに結合した。
以下のペプチド配列を、標準的なFmoc/tBu合成手順によりWang型の樹脂上で合成した:
HSRGARGHSHAHRG(高い塩基性) M:1522.62
YDSGEGDESDAYEG(高い酸性) M:1493.38
LGWSGFGWSFSYLG(高い疎水性) M:1563.75
(切断後において遊離の酸を生じるようにトリチル型樹脂に結合させた)。
正確な質量=399.14
分子式= C20H21N3O6
分子組成=C 60.14%,H 5.30%,N 10.52%,O 24.04%。
樹脂に結合させたペプチドを、標準的な方法(ピペリジン含有DMF)に従ってN末端で脱保護し、過剰の試薬NHS-L-HCCAと、過剰の塩基(128 mg=0.4 Mを800μlのDMFに、1当量=44.3 mg DIPEAとともに含有)と反応させた。この混合物を室温で3時間インキュベートした。
標識反応後に樹脂を洗浄し、スカベンジャー混合物(TFA:92.5%/チオアニソール;2.5%/トリエチルシラン;2.5%/水;2.5%)と2時間インキュベーションにすることによって、ペプチドを樹脂から切断した。このペプチドを沈殿させて、ジエチルエーテルで洗浄した。最終的に、このペプチドを、tert-ブタノール/水(4:1)から凍結乾燥して白色粉末を得た。
モノアイソトピック組成:C76H111N33O20。
モノアイソトピック組成:C76H96N16O34。
モノアイソトピック組成:C94H114N18O22。
ペプチドは、HPLCにより分析した。最初のペプチドであるHSRGARGHSHAHRGは、リンカーを含むタグとの反応が完了したとき、純粋に単離された。標識したペプチドを未標識のペプチドと混合し、50/50の混合物を1μmol/μlの各ペプチド濃度で得た。エレクトロスプレーイオン化質量分析による混合物の分析では、標識されたペプチドの検出感度は、未標識のペプチドに比べて全く改善を示さない。しかし、MALDI TOF MSによって分析された金属標的上での0.5μlの混合物は、標識ペプチドが未標識のペプチドよりも大きい感度で検出されることを示している。このことは、リンカー官能基は、タグの有効性を低下させることなく、標識反応の収率を改善するために用いることができることを示している。
分子量:399.41。
タンパク質:β-MSH(DEGPYKMEHFRWGSPPKD,M:2175)
1 mg(0.46μmol)のペプチドを、水/アセトニトリル(250μl,90/10)に溶解させる。30μgのトリプシンを含有するホウ酸緩衝液(100μl,pH 8.0)を、ペプチド溶液に添加する。この消化を37℃で18時間行う。
β-MSH由来のペプチドマスフィンガープリント
未標識のβ-MSHのトリプシン消化により、以下の表2に示すような3つのフラグメントが生じる。
全タンパク質を用いたさらなる実験を行なった。タンパク質であるウシ血清アルブミン(BSA)とグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)を別々に分析した。
BSA(プローブA):69.2 kDa/60*Lys/26*Arg
GAPDH(プローブB):35.7 kDa/26*Lys/10*Arg。
図9は、BSAの典型的なMALDI TOFペプチドマスフィンガープリントの質量スペクトルを示す。このスペクトルで決定した質量は、そのトリプシンペプチドフラグメント成分の質量からタンパク質を同定するために、公知で且つ予測された質量スペクトルのデータベースを検索するために用いることができる。図10は、図10に示すスペクトルから得られる質量について、ProteinProspectorデータベースサーバー上でMS-Fitプログラムを用いることによって、SWISS-PROTデータベースを検索した結果を示している。このツールは、ワールドワイドウェブで利用可能であり、修飾されたアミノ酸を有するタンパク質を同定できる(Clauser K.R.,Baker P.R.およびBurlingame A.L.,Analytical Chemistry,第71巻14号:第2871頁,「マスまたはマス/マスおよびデータベース検索を用いるタンパク質同定戦略における正確な質量測定(+/- 10 ppm)の役割」1999年)。修飾されたアミノ酸の質量は、一連の修飾ペプチド質量とともにプログラム中に入れられる。プログラムからの出力データは、データベースへ提示された質量に適合するペプチドを含むタンパク質のリストである。次に、MS-Fitによって特定される適合タンパク質について適合するペプチドを提示して、このペプチドがどの程度タンパク質と適合するかを決定することが可能である。これを図10に示す。この分析は未修飾のリシンを用いて行った。
以下の例は、本発明に係る新規のタグであり、図17a〜17dに示されるものの合成をさらに示す。これらのタグは、全てイオン化可能な官能基を含む。イオン化可能な官能基は、有用な目的のために役立つ。イオン化可能な官能基は、水性溶媒や緩衝液中でのタグの溶解性を改善する。イオン化可能な官能基は、アフィニティーリガンドとして働くことから、イオン交換樹脂を用いて、標識化被分析物からの未反応のタグの分離を可能にすることができる。スルホン酸部分は、陰イオン交換樹脂に対して親和性を有するが、イオン化する基はすべて陽イオン交換樹脂に親和性を有する。さらに、イオン化可能な官能基は、質量分析計においてイオン化を促進する。図17aに示すタグは、スルホン酸官能基を含む。図17bと17cのタグはグアニジノ官能基を含むが、図17dのタグは第三級アミノ官能基を含む。
ここで、図17aに示すタグ化合物の合成を記載する。中間体は、図18に示すスキームに従って番号付けする。
1H-NMR (d6-DMSO) δ 1.23-1.50(m, m, m, 6H, N-C-(CH2)3-C-CO); 2.18(t, 2H, CH2-CO2); 3.05(m, 2H, N-CH2); 3.56(s, 2H, NC-CH2); 8.15(t, 1H, NH); 11.94(s, 1H, OH)。
HPLC:>98%[LiChrospher 100,RP 18,(5μm);CH3CN:(H2O+0.01M TBAS)=40:60,流量1 ml/分;2.4分]
1H-NMR (d6-DMSO) δ 1.23-1.50(m, m, m, 6H, N-C-(CH2)3-C-CO); 2.18(t, 2H, CH2-CO2); 3.05(m, 2H, N-CH2); 3.56(s, 2H, NC-CH2); 8.15(t, 1H, NH); 11.94(s, 1H, OH)。
RF=0.48(EtOAc/AcOH=2:1)
HPLC:>98%[LiChrospher 100,RP 18,(5μm)Merck# 50377;CH3CN:(H2O+0.01M TBAS)=40:60,流量 1ml/分;5.2分]
1H-NMR (d6-DMSO) δ 6.53(d, 1H, 5-H-Ph); 7.50(m, 1H, 4-H-Ph); 7.92(d, 1H, 2-H-Ph); 9.50(s, 1H, OH)。
HPLC:93%[LiChrospher 100,RP 18,(5 pm)Merck# 50377;CH3CN:(H2O+0.01M TBAS)=40:60,流量 1 ml/分;6.3分]
1H-NMR (D2O) δ 1.29-1.36 u. 1.53-1.60(m, m, 6H, N-C-(CH2)3-C-CO); 2.14-2.19(m, 2H, CH2-CO2); 3.25-3.28(m, 2H, N-CH2); 6.73(d, 1H, 5-H-Ph); 7.80(m, 1H, 6-H-Ph); 8.30(d, 1H, 2-H-Ph); 7.92(s, 1H, CH=C-CN)。
HPLC:>90%[Lichrosorb RP 18,(5μm)Merck# 50333;CH3CN:(H2O+0.01M TBAS)=40:60,流量 1ml/分;10.3分]
1H-NMR (D2O) δ 1.39-1.67 (m, m, m, 6H, N-C-(CH2)3-C-CO); 2.69(t, 2H, CH2-CO2); 2.80(s, 4H, OSu); 3.18-3.20(m, 2H, N-CH2); 6.97(d, 1H, 5-H-Ph); 7.92(m, 1H, 6-H-Ph); 8.13(d, 1H, 2-H-Ph); 8.03(s, 1H, CH=C-CN); 8.31(t, 1H, NH); 11.22(s, 1H, OH)。
ここで、図17bに示すタグ化合物の合成を記載する。中間体は、図19に示すスキームに従って番号付けする。
HPLC:96%[LiChrospher 100 RP 18,(5μm)Merck# 50377;CH3CN:(H2O+0.01M TBAS)=90:10,流量 1ml/分;2.5分]。
HPLC:>98%[LiChrospher 100 RP 18,(5μm)Merck# 50377;CH3CN:(H2O+0.01M TBAS)=90:10,流量 1ml/分;2.6分]
1H-NMR (d6-DMSO) δ 1.37 u. 1.45 (s, s, 18H, 2× t-Bu); 1.45-1.88(m, 4H); 3.32(m, 2H, N-CH2); 4.31(m, 1H, N-CH); 6.94 u. 7.88(m, m, 4H, Ph); 8.06(s, 1H, CH=C-CN); 8.31, 8.45,〜10.4, 11.5 u. 12.6(5H, 3× NH, 2× OH)。
1H-NMR (CDCl3) δ 1.32 u. 1.43(s, s, 18H, 2× t-Bu); 1.57-2.04(m, 4H); 2.78(s, 4H, O-Su); 3.25-3.67(m, 2H, N-CH2); 4.88(m, 1H, N-CH); 6.88 u. 7.76(m, m, 4H, Ph); 8.04(s, 1H, CH=C-CN); 7.21, 8.49, 〜8.75, 11.45(4H, 3× NH, OH)
MS: 643 (M+1)。
ここで、図17cに示すタグ化合物の合成を記載する。この中間体は、図20に示すスキームに従って番号付けする。
HPLC:>98%[Lichrosorb RP 18,(5μm)Merck# 50333;CH3CN:(H2O+0.01M TBAS)=55:45,流量 1 ml/分;4.1分]
1H-NMR (CDCl3) δ 1.43 u. 1.48(s, s, 18H, 2× t-Bu); 1.30-1.73(m, 10H); 1.74-1.85(m, 1H); 1.85-1.97(m, 1H); 2.34(m, 2H); 3.15-3.39(m, 2H); 3.45(m, 2H); 4.51(m, 1H); 6.92 u. 7.76(m, m, 4H, Ph); 8.0(s, 1H, CH=C-CN); 7.03, 7.26, 〜8.55, 9.5(4H, 3× NH, OH)。
RF=0.56(EtOAc)
HPLC:95%[Lichrosorb RP 18,(5μm)Merck# 50333;CH3CN:(H2O+0.01M TBAS)=55:45,流量 1 ml/分;6.1分]
1H-NMR (CDCl3) δ 1.45 u. 1.49(s, s, 18H, 2× t-Bu); 1.40-1.98(m, 11H); 2.6(t, 2H); 2.85(s, 4H, OSu); 3.24-3.37(m, 2H); 3.38-3.57(m, 2H); 4.54(m, 1H); 6.92と7.77(m, 4H, Ph); 8.01(s, 1H, CH=C-CN); 6.85, 7.09, 8.53, 11.45(4H, 3× NH, OH)。
ここで、図17dに示すタグ化合物の合成を記載する。中間体は図21に示すスキームに従って番号付けする。
1H-NMR (CDCl3) δ 1.25(t, 3H, O-C-CH3); 1.3-1.38(m, 2H); 1.45(s, 9H, t-Bu); 1.48-1.55(m, 2H); 1.6-1.68(m, 2H); 2.27-2.4(m, 8H, 3× C-N-CH2, CH2-CO); 3.42(t, 4H, 2× CO-N-CH2); 4.12(q, 2H, O-CH2)。
HPLC>98%[Lichrosorb RP 18(5μm)Merck# 50333;アセトニトリル/(H2O+0.01M TBAS)=25:75;流量 1ml/分;6.3分]。
RF=0.44(EtOAc/CH3OH=5:1)
HPLC 91%[Lichrosorb RP 18(5μm)Merck# 50333;アセトニトリル/(H2O+0.01M TBAS)=25:75;流量 1 ml/分;2.1分]。
HPLC>98%[Lichrosorb RP 18(5μm)Merck# 50333;アセトニトリル/(H2O+0.01M TBAS)=25:75;流量 1ml/分;2.0分]
1H-NMR (CDCl3) δ 1.25(t, 3H, O-C-CH3); 1.31-1.39, 1.46-1.54, 1.6-1.68(m, m, m, 6H, N-C-(CH2)3-C-CO); 2.3, 2.36, 2.42 u. 2.49(t, t, t, t, 8H, 3× C-N-CH2, CH2-CO); 3.45 u. 3.62(t, t, 4H, OSu); 3.24-3.37(m, 2H); 3.38-3.57(m, 2H); 4.54(m, 1H); 6.92と7.77(m, 4H, 2× CO-N-CH2); 3.53(s, 2H, NC-CH2); 4.12(q, 2H, O-CH2)。
HPLC>98%[Lichrosorb RP 18(5μm)Merck# 50333;アセトニトリル/(H2O+0.01M TBAS)=25:75;流量 1ml/分;3.0分]
1H-NMR (d6-DMSO) δ 1.17(t, 3H, O-C-CH3); 1.23-1.32, 1.38-1.47, 1.49-1.57(m, m, m, 6H, N-C-(CH2)3-C-CO); 2.24-2.31, 2.38, 2.42 u. 2.49(m, t, 8H, 3× C-N-CH2, CH2-CO); 3.54(t, 4H, 2× CO-N-CH2); 4.04(q, 2H, O-CH2), 6.91 u. 7.83(m, m, 4H, Ph); 7.62(s, 1H, CH=C-CN); 10.47(br.s, 1H, OH)。
HPLC 94%[Lichrosorb RP 18(5μm)Merck# 50333;アセトニトリル/(H2O+0.01M TBAS)=20:80;流量 1ml/分;2.3分]
1H-NMR (d6-DMSO) δ 1.23-1.35, 1.46-1.56, 1.65-1.78(m, m, m, 6H, N-C-(CH2)3-C-CO); 2.23(t, 2H, CH2-CO); 3.05(m, 4H, 2× CO-N-CH2); 3.5(m, 4H, 2× N+-CH2-C-N-); 4.25(m, 2H, N+-CH2), 6.95 u. 7.86(m, m, 4H, Ph); 7.71(s, 1H, CH=C-CN); 10.66(s, 1H, +NH); 11.34と12.04(br.s, br.s, 2H, 2× OH)。
HPLC 97%[Lichrosorb RP 18(5μm)Merck# 50333;アセトニトリル/(H2O+0.01M TBAS)=15:85;流量 1ml/分;6.4分]。
Claims (49)
- マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析法により被分析物を分析するための方法であって:
(a) 予め定めた周波数の光を吸収する光吸収ラベルにより該被分析物を標識することによって、標識化被分析物を形成する工程;
(b) 該標識化被分析物を、少なくとも1つの光吸収性化合物から形成されたマトリックス中に包埋することによって、包埋標識化被分析物を形成する工程;
(c) 該包埋標識化被分析物を、予め定めた該周波数を有する光に露光することにより脱離させて、脱離被分析物を形成する工程;および
(d) 該脱離被分析物を質量分析法により検出することによって、該被分析物を分析する工程;
を含むことを特徴とする方法。 - 請求項1に記載の方法において、上記脱離被分析物を質量分析法により直接検出する方法。
- 請求項1に記載の方法において、上記脱離被分析物を質量分析法により間接的に検出するものであり、上記被分析物をこれに関係し得る質量標識でさらに標識し、且つ、該質量標識を脱離した被分析物から切断して質量分析法により検出することによって、被分析物を分析する方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の方法において、上記包埋標識化被分析物に露光する光をレーザー光とする方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の方法において、マトリックスを形成するための上記光吸収性化合物として、上記光吸収ラベルが吸収する光と同じ周波数の光を吸収するものを用いる方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の方法において、上記マトリックスおよび上記光吸収ラベルを同じ化合物で形成する方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の方法において、上記マトリックスとして固体マトリックスまたは液体マトリックスを用いる方法。
- 請求項7に記載の方法において、上記マトリックスとしてニトロベンジルアルコールを含む液体マトリックスを用いる方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の方法において、上記マトリックスとして酸性マトリックスまたは塩基性マトリックスを含むものを用いる方法。
- 請求項9に記載の方法において、上記マトリックスとして、3-ヒドロキシピコリン酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸および4-ヒドロキシ-α-シアノケイ皮酸から選択される化合物を含むものを用いる方法。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の方法において、上記光吸収ラベルとして色素から形成されるものを用いる方法。
- 請求項11に記載の方法において、上記色素として非蛍光色素を用いる方法。
- 請求項11または請求項12に記載の方法において、上記色素として、4-ジメチルアミノアゾベンジン-4'-スルフォニルクロライド(ダンシルクロライド)、3-ヒドロキシピコリン酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸および4-ヒドロキシ-α-シアノケイ皮酸を含むものを用いる方法。
- 請求項1〜13のいずれかに記載の方法において、上記被分析物として、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ペプチドフラグメントおよびアミノ酸から選択される1つ以上の化合物を含むものを分析する方法。
- ポリペプチドを分析するための方法であって:
(a) 必要に応じて該ポリペプチド中のシステインジスルフィド結合を還元して遊離のチオールを形成し、遊離した該チオールをキャッピングする工程;
(b) 配列特異的切断試薬により該ポリペプチドを切断し、ペプチドフラグメントを形成する工程;
(c) 必要に応じて該切断試薬を不活性化する工程;
(d) 1または2以上のε-アミノ基が存在する場合に、これをリシン反応性試薬によりキャッピングする工程;
(e) 請求項1〜14のいずれかに記載の方法により該ペプチドフラグメントを分析することによって、該ポリペプチドについてのマスフィンガープリントを作成する工程;並びに
(f) 該マスフィンガープリントから該ポリペプチドを同定する工程;
を含む方法。 - ポリペプチド群を分析するための方法であって:
(h) 必要に応じて1または2以上の該ポリペプチド中のシステインジスルフィド結合を還元して遊離のチオールを形成し、遊離した該チオールをキャッピングする工程;
(i) 該ポリペプチド群から1または2以上のポリペプチドを分離する工程;
(j) 配列特異的切断試薬により1または2以上のポリペプチドを切断し、ペプチドフラグメントを形成する工程;
(k) 必要に応じて該切断試薬を不活性化する工程;
(l) 1または2以上のε-アミノ基が存在する場合に、これをリシン反応性試薬によりキャッピングする工程;
(m) 請求項1〜14のいずれかに記載の方法により1または2以上のペプチドフラグメントを分析することによって、該ポリペプチドについてのマスフィンガープリントを作成する工程;並びに
(n) 該マスフィンガープリントから1または2以上のポリペプチドを同定する工程;
を含む方法。 - 各サンプルが1または2以上のポリペプチドを含む複数のサンプルを比較するための方法であって:
(h) 必要に応じて、該サンプル由来の1または2以上の該ポリペプチド中のシステインジスルフィド結合を還元し、遊離した該チオールをキャッピングする工程;
(i) 該サンプルの各々から1または2以上のポリペプチドを分離する工程;
(j) 配列特異的切断試薬により該ポリペプチドを切断し、ペプチドフラグメントを形成する工程;
(k) 必要に応じて該切断試薬を不活性化する工程;
(l) 1または2以上のε-アミノ基が存在する場合に、これをリシン反応性試薬によりキャッピングする工程;
(m) 請求項1〜14のいずれかに記載の方法によりペプチドフラグメントを分析することによって、該サンプル由来の1または2以上のポリペプチドについてのマスフィンガープリントを作成する工程;並びに
(n) 1または2以上のマスフィンガープリントから該サンプル中の1または2以上のポリペプチドを同定する工程;
を含む方法。 - 請求項15〜17のいずれかに記載の方法において、上記リシン反応性試薬として標識されたものを用いる方法。
- 各サンプルが1または2以上のポリペプチドを含む複数のサンプルを比較するための請求項17に記載の方法において:
(a) 必要に応じて、該サンプル由来の1または2以上の該ポリペプチド中のシステインジスルフィド結合を還元し、遊離した該チオールをキャッピングする工程;
(b) 各サンプル中に1または2以上のε-アミノ基が存在する場合に、これを標識されたリシン反応性試薬によりキャッピングする工程;
(c) 該サンプルをプールする工程;
(d) プールされた該サンプルから1または2以上のポリペプチドを分離する工程;
(e) 配列特異的切断試薬により該ポリペプチドを切断し、ペプチドフラグメントを形成する工程;
(f) 必要に応じて該切断試薬を不活性化する工程;
(g) 請求項1〜14のいずれかに記載の方法によりペプチドフラグメントを分析することによって、該サンプル由来の1または2以上のポリペプチドについてのマスフィンガープリントを作成する工程;並びに
(h) 1または2以上のマスフィンガープリントから該サンプル中の1または2以上のポリペプチドを同定する工程;
を含み、
ここで、同じサンプル由来のポリペプチドまたはペプチドに対しては同じ標識を使用し、異なるサンプル由来のポリペプチドまたはペプチドに対しては異なる標識を用いることによって、ポリペプチドまたはペプチドが含まれていたサンプルの決定が、その標識から可能になる方法。 - 請求項15〜19のいずれかに記載の方法において、上記配列特異的切断試薬によって、1または2以上のポリペプチドのリシン残基のC末端側において切断する方法。
- 請求項15〜20のいずれかに記載の方法において、上記特異的切断試薬としてLys-Cまたはトリプシンを含むものを用いる方法。
- 請求項15〜21のいずれかに記載の方法において、キャッピングされたε-アミノ基を有する上記ペプチドフラグメントをアフィニティーキャプチャ法により除去し、上記リシン反応性試薬としてビオチンを含むものを用いる方法。
- 請求項15〜22のいずれかに記載の方法において、上記リシン反応性試薬としてヒンダード・ミカエル試薬を含むものを用いる方法。
- 標識化被分析物であって、以下の構造を有する化合物:
D−M−L−A
式中、Dは光吸収ラベルを含むものであり、Mは質量調節因子を含むものであり、Lはリンカーを含むものであり、Aは被分析物を含むものである。 - 請求項25に記載の化合物において、Dが非蛍光色素を含むものである化合物。
- 請求項26に記載の化合物において、Dがケイ皮酸誘導体、ニコチン酸誘導体、ピコリン酸誘導体、ヒドロキシ安息香酸誘導体、メトキシ安息香酸誘導体またはシナピン酸誘導体を含むものである化合物。
- 請求項26または請求項27に記載の化合物において、上記非蛍光色素が、4-ジメチルアミノアゾベンジン-4'-スルフォニルクロライド(ダンシルクロライド)、3-ヒドロキシピコリン酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸および4-ヒドロキシ-α-シアノケイ皮酸から選択される化合物を含むものである化合物。
- 請求項25〜28のいずれかに記載の化合物において、Mが、アリールエーテルから形成される化合物、および2つ以上のアリールエーテル単位から形成されるオリゴマーから選択されるものである化合物。
- 請求項25〜28のいずれかに記載の化合物において、上記リンカーが、-CR2-CH2-SO2-、-N(CR2-CH2-SO2-)2、-NH-CR2-CH2-SO2-、-CO-NH-、-CO-O-、-NH-CO-NH-、-NH-CS-NH-、-CH2-NH-、-SO2-NH-、-NH-CH2-CH2-および-OP(=O)(O)O-から選択される基を含むものである化合物。
- 請求項25〜30のいずれかに記載の化合物において、Aがタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ペプチドフラグメント、およびアミノ酸から選択されるものである化合物。
- 被分析物を標識するための化合物であって、以下の構造を有する化合物:
M−L−R
式中、Mは、ケイ皮酸誘導体、ニコチン酸誘導体、ピコリン酸誘導体、ヒドロキシ安息香酸誘導体、メトキシ安息香酸誘導体またはシナピン酸誘導体を含む質量マーカーであり、Lはリンカーを含むものであり、Rは該化合物を被分析物に結合させるための反応性官能基を含む。 - 請求項32に記載の化合物において、Mが、4-ジメチルアミノアゾベンジン-4'-スルフォニルクロライド(ダンシルクロライド)、3-ヒドロキシピコリン酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸および4-ヒドロキシ-α-シアノケイ皮酸から選択される非蛍光色素化合物を含むものである化合物。
- 請求項32または33に記載の化合物において、Mが、アリールエーテルから形成される化合物、または2つ以上のアリールエーテル単位から形成されるオリゴマーをさらに含むものである化合物。
- 請求項32〜34のいずれかに記載の化合物において、上記リンカーが、-CR2-CH2-SO2-、-N(CR2-CH2-SO2-)2、-NH-CR2-CH2-SO2-、-CO-NH-、-CO-O-、-NH-CO-NH-、-NH-CS-NH-、-CH2-NH-、-SO2-NH-、-NH-CH2-CH2-、-OP(=O)(O)O-およびMの酸基によるアミド結合から選択される基を含むものである化合物。
- 請求項32〜35のいずれかに記載の化合物において、Rが、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ペプチドフラグメントまたはアミノ酸へ該化合物を結合するためのものである化合物。
- 請求項32〜36のいずれかに記載の化合物において、Rが、エステル基、酸無水物基、酸塩化物のような酸ハライド基、N-ヒドロキシコハク酸アミド基、ペンタフルオロフェニルエステル基、マレイミド基、アルケニルスルホン基またはヨードアセトアミド基を含むものである化合物。
- 請求項25〜37のいずれかに記載の化合物において、更にアフィニティーリガンドを含むものである化合物。
- 請求項38に記載の化合物において、上記アフィニティーリガンドがビオチンを含むものである化合物。
- 請求項25〜39のいずれかに記載の化合物において、さらにイオン化可能部分を含むものである化合物。
- 請求項40に記載の化合物において、上記イオン化可能部分が、第三級アミノ基、グアニジノ基およびスルホン酸基から選択されるものである化合物。
- 請求項25〜41のいずれかに記載の化合物において、ケイ皮酸官能基を含むものである化合物。
- 被分析物を標識するための2つ以上の化合物群であって、該化合物群中の化合物は請求項32〜42のいずれかに規定される化合物であり、且つ該化合物群中の各化合物の質量は、該化合物群中の他の全ての化合物の質量と異なるものである化合物群。
- 請求項43に記載の化合物群において、該化合物群における各化合物の質量の相違が、同位体置換によるものである化合物群。
- マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析法により被分析物を分析するためのキットであって:
(a) 被分析物へラベルを結合させるための反応性官能基を有する1または2以上の光吸収ラベル;および
(b) マトリックスを形成するための化合物であって、該光吸収ラベルと同じ周波数の光を吸収する化合物
を含有するキット。 - 請求項45に記載のキットにおいて、上記構成要素(a)が、請求項32〜44のいずれかに記載の化合物または化合物群を含むキット。
- マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析法によって被分析物を分析するためのキットであって:
(a) 請求項32〜44のいずれかに記載の化合物または化合物群;
(b) イオン交換樹脂
を含有するキット。 - 請求項47に記載のキットにおいて、上記化合物または化合物群が、正の電荷を生じ得るイオン化可能部分を含み、上記イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂を含むものであるキット。
- 請求項47に記載のキットにおいて、上記化合物または化合物群が、負の電荷を生じ得るイオン化可能部分を含み、上記イオン交換樹脂が陰イオン交換樹脂を含むものであるキット。
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