JP2005517155A - 細胞増殖異常に伴う疾患に関連するポリペプチド抗原の同定方法及びそのような疾患の治療に有効な組成物 - Google Patents

細胞増殖異常に伴う疾患に関連するポリペプチド抗原の同定方法及びそのような疾患の治療に有効な組成物 Download PDF

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Abstract

正常な非癌細胞および組織に対して限られた一般毒性を有する有糸分裂インヒビターを使用した効果的な癌治療法の開発のための方法と組成物を提供する。本方法と組成物は、抗有糸分裂化合物(例えばメイタンシノイド)に細胞結合剤(例えば抗体)を抱合させてなる細胞障害性化合物を利用する。本発明は、抗体依存性細胞媒介細胞障害性(ADCC)および/または相補体依存性細胞障害性(CDC)を誘発する能力を実質的に有さないため、治療効果が、ADCCおよび/またはCDCによる間接的細胞殺傷でなく、主に細胞障害性化合物の抗有糸分裂成分により媒介されることが確実な抗体をさらに提供する。本発明の抗体は、さらに、増殖非癌細胞よりも増殖癌細胞に多く発現するポリペプチド抗原を区別する能力を有する。

Description

1.発明の分野
本発明は、細胞増殖の異常に伴って発生する疾患(例えば癌)に関連するポリペプチド抗原の同定に有用な方法に関する。より具体的には、本発明は癌治療の有効な目標となる細胞のポリペプチド抗原を同定するための新規な方法に関する。加えて、本発明は、細胞結合剤(例えば抗体)と細胞障害性化合物を結合させることで、特定の細胞集団へ送達される細胞障害性化合物(例えばメイタンシノイド(maytansinoids))を含んでなる新規組成物に関するものであり、該組成物は抗有糸分裂特性を示す組成物である。
2.発明の背景
2.1.細胞有糸分裂
細胞有糸分裂は、細胞分割及び複製を含む複数のステップからなるプロセスである (Alberts, B.ら, In The Cell, pp. 652-661 (1989); Stryer, E. Biochemistry (1988))。細胞は分割により2つの娘細胞を複製する。細胞複製周期のDNA複製段階は、S期として知られている。S期の間、細胞内の染色体が複製され、姉妹染色分体として知られる同一の娘DNA分子の対が産出される。姉妹染色分体は次いで有糸分裂期に分離し、2つの新しい核を産生する。「有糸分裂」という用語は一般に「細胞分裂」と同義的に使用されるが、正確には、有糸分裂は細胞分裂プロセスの一段階である、姉妹染色分体が2つの娘細胞に等分される段階のみを指す。真核細胞では、有糸分裂の後に細胞質分裂が起こり、このプロセスにより細胞質が2つの別個の、通常は同一の娘細胞に開裂する。
有糸分裂の開始時、細胞質微小管として知られ、主にチューブリンと呼ばれるタンパク質からなる小さな細胞内糸状構造がチューブリン分子内に散らばる。次いでチューブリンは、「有糸分裂紡錘体」として知られる細胞内構造を形成する微小管に再び集まる。有糸分裂紡錘体は、2つの娘核を分ける細胞内に精確に染色体を分配するのに重要な役割を果たす。したがって、細胞内微小管の形成は、哺乳動物の細胞増殖プロセスにおいて不可欠な段階であることが明白である。
しかしながら、異常細胞増殖によって多くの疾病が特徴付けられる。一例として、制御されない細胞分裂は癌の顕著な特徴である。癌は、男女双方について、心臓疾患に次いで一番多い死因である。癌との闘いにおいて、これまでに多数の技術が開発されており、現在の研究の目的は、疾病の性質及び原因の理解と、その制御又は治療方法の提供に向けられている。
概して、癌細胞は多くの健常細胞に観察されるものよりも速い細胞分裂及び増殖を特徴としており、多数の抗癌剤が細胞分裂を阻害することにより作用する。癌細胞は健常細胞より速く分裂するので、癌細胞は有糸分裂を阻害する抗癌剤により死滅させることが好ましい。このような化合物はしばしば「抗有糸分裂」化合物と呼ばれる。
2.2.抗腫瘍剤
今日までに、抗腫瘍剤には3つの主要なファミリーが知られている。ファミリーはどれも存在が認められた作用メカニズムに関連している。第一に、抗腫瘍剤はアルキル化剤でよい。そのアルキル化剤は通常、DNAと共有結合的に結合し、二官能性の損傷を形成する。二官能性損傷は、同じストランドの隣接又は近接塩基を含むか、又は、逆に反対のストランドに塩基を含み、ストランド内クロスリンクを形成する。アルキル化剤の例は、ナイトロジェン・マスタード、シクロホスファミド、及びクロラムブシルを含む。アルキル化剤の使用に関連する毒性には、悪心、嘔吐、脱毛、出血性膀胱炎、肺繊維症等が含まれる。第二に、抗腫瘍剤は代謝拮抗剤でもよい。代謝拮抗剤は、通常、DNAの合成又はアセンブリーに関与する酵素を阻害する。あるいは、代謝拮抗剤はDNAプロセスの偽物又は類似基質としての役割を果たすことができる。代謝拮抗剤の例は、プリン、ピリミジン、及び葉酸塩アンタゴニスト、ならびにビンクリスチン及びビンブラスチンなどの植物アルカロイドを含む。代謝拮抗剤の使用に関連する毒性には、脱毛、骨髄抑制、嘔吐、悪心、抹消神経障害等が含まれる。第三に、抗腫瘍剤は抗体でもよい。抗体は、DNAのらせんにインターカレートすることにより、又はDNAに鎖切断を挿入することにより作用する。抗体の例は、ドキソルビシン、ダウノルビシン、及びアクチノマイシンを含む。抗体の使用に関連する毒性には、骨髄抑制、アナフィラキシー性反応、摂食障害、心臓毒、肺繊維症等が含まれる。
抗有糸分裂化合物には複数の種類が知られており、分裂している細胞に投与されると、チューブリン又は微小管に結合することにより有糸分裂紡錘体の形成を妨げる。有糸分裂紡錘体が存在しないと、有糸分裂が停止し、可視的な姉妹染色分体を有する細胞が蓄積するが、正常な有糸分裂像はない。細胞が分裂能を有さないことにより、最終的に細胞死が起こる。このような化合物は、例えば、E. Hamel, Medicinal Research Reviews, vol. 16, pp. 207-231 (1996) に記載されている。有糸分裂紡錘体の形成を阻止するとして知られる化合物の例は、ニチニチソウのアルカロイドビンクリスチン及びビンブラスチン;ノコダゾール(nocodazole)等のベンズイズミダゾールカルバミン酸塩;コルヒチン及びポドフィロトキシン、ステガナシン(steganacin)、及びコンブレタスタチン等の関連化合物;パクリタキセル、ドセタキセルなどのタキサン;及びメイタンシノイドを含む。アルカロイド、ビンクリスチン、及びビンブラスチン、タキサンベースの化合物、ならびにメイタンシノイドは、抗癌剤として使用されている(例えば、E. K. Rowinsky 及びR. C. Donehower, Pharmacology and Therapeutics, vol. 52, pp. 35-84 (1991)参照)。
電離放射線もまた、確立された悪性疾患治療法であり、治療上の目的及び対症上の目的の両方について効果が証明されている。しかしながら、電離放射線は、口内炎、白血球減少、剥離、脊髄根クローシス、及び閉塞性動脈内膜炎など、複数の好ましくない合併症を伴う可能性がある。これらの合併症により、放射線の治療的投与量を完全に投与することができなかったり、治療後の罹患率が増大したりする。また、多くの化学療法剤が正常組織の細胞に毒性であり、よって化学療法の副作用は、時として腫瘍自体の負担とほぼ同じ苦しみを患者にもたらす。化学療法の副作用を低減させる1つの方法では、放射性同位元素、ならびに様々な植物毒性及び細菌毒性を含む化学療法剤を、腫瘍細胞に存在する抗原に特異的な抗体に付着させることにより、腫瘍細胞を目標とするように試みてきた。例えば、癌胎児性抗原抗体を使用する放射免疫治療を開示した固形腫瘍(癌)の米国特許第4,348,376号、及び同第4,460,559号、ならびに、それよりも散在性の腫瘍であるリンパ腫の放射免疫治療を目的とした米国特許第5,595,721号を参照のこと。
2.3.メイタンシノイド
メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害するように作用する分裂阻害剤である。メイタンシンは、最初、東アフリカシラブメイテナス・セラタ(Maytenus serrata)から単離されたものである(米国特許第3,896,111号)。その後、ある種の微生物がメイタンシノイド類、例えばメイタンシノール及びC-3メイタンシノールエステルを生成することが発見された(米国特許第4,151,042号)。合成メイタンシノール及びその類似体は、例えば米国特許第4,137,230号;同4,248,870号;同4,256,746号;同4,260,608号;同4,265,814号;同4,294,757号;同4,307,016号;同4,308,268号;同4,308,269号;同4,309,428号;同4,313,946号;同4,315,929号;同4,317,821号;同4,322,348号;同4,331,598号;同4,361,650号;同4,364,866号;同4,424,219号;同4,450,254号;同4,362,663号;及び同4,371,533号に開示されており、その開示は出典を明示してここに取り込まれる。
メイタンシン及びメイタンシノイドは高い細胞障害性を有するが、主に腫瘍に対する選択性の乏しさに起因する強い全身性の副作用を持つため、癌治療におけるその臨床的使用には限界があった。メイタンシンを使用した臨床試験は、中枢神経系及び胃腸管系に重症の悪影響があるために中断された(Isselら, 1987, Can. Trtmnt. Rev., 5:199-207)。さらに、メイタンシンは抹消神経に関係していることが分かっている。したがって、癌治療におけるメイタンシノイドの使用は限られた成功例しかもたらしていない。
2.4.メイタンシノイド−抗体コンジュゲート
治療指標を改善する試みにおいて、メイタンシン及びメイタンシノイドを、腫瘍細胞抗原に特異的に結合する抗体と結合させた。具体的には、治療様式は、腫瘍上に存在するが正常細胞には存在しない抗原を認識して結合する抗体にメイタンシノイドをコンジュゲートさせ、それによりメイタンシノイドの毒作用を腫瘍細胞のみに制限することを含む。腫瘍細胞に結合するメイタンシノイドを含有する免疫コンジュゲートは、例えば米国特許第5,208,020号、同5,416,064号、欧州特許第0425235B1号に開示されており、その開示は出典を明示してここに取り込まれる。Liuら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623(1996)には、ヒト結腸直腸癌に対するモノクローナル抗体C242に結合するDM1と命名されたメイタンシノイドを含有する免疫コンジュゲートが記載されている。このコンジュゲートは培養された結腸癌細胞に対して高い細胞障害性を有することが見出されており、インビボ腫瘍成長アッセイにおいて抗腫瘍活性を示す。実際、C242−DM1コンジュゲートは約100%のCOLO205細胞について細胞障害性を有するだけでなく、約99%のLoVO細胞に対しても細胞障害性を有し、そのうち約20〜30%がC242抗原を発現する。Chariら, Cancer Research, 52:127-131(1992)には、メイタンシノイドが、ジスルフィド結合を介して、ヒト結腸癌株化細胞の抗原に結合するマウス抗体A7、又はHER-2/neuオンコジーンに結合する他のマウスモノクローナル抗体TA.1に結合している免疫コンジュゲートが記載されている。TA.1-メイタンシノイドコンジュゲートの細胞障害性はヒト乳癌株化細胞SK-BR-3においてインビトロで試験され、細胞当たり3x10HER-2表面抗原を発現した。薬剤コンジュゲートにより、遊離のメイタンシノイド剤に類似した細胞傷害度が達成され、該細胞傷害度は、抗体分子当たりのメイタンシノイド分子の数を増加させることにより増加させることができた。A7-メイタンシノイドコンジュゲートはマウスにおいては低い全身性細胞障害性を示した。上述のメイタンシノイド−抗体コンジュゲートは抗体分子当たり3〜4のメイタンシノイド分子を使用し、よってコンジュゲートの細胞障害性を増大させる。
上述のメイタンシノイド−抗体コンジュゲートによりいくつかの成功例がもたらされたが、腫瘍細胞抗原にだけ特異的に結合し、正常細胞の抗原には全く結合しない抗体の同定と生成は極端に困難であることが明らかであったため、全体的な治療効果には限界があった。したがって、メイタンシノイドを使用する既存の方法及び組成物は、身体の正常細胞に比較的高いレベルの通常の細胞障害性をもたらす。よって、上述のような一般毒性の危険のない細胞有糸分裂阻害剤の細胞ポリペプチド標的を同定するのに有用な新規方法が必要である。
2.5.さらなる治療の必要
多くの潜在的抗癌剤が評価されてきたが、ヒト癌の治療は、依然として合併症を伴い、それにより次善の治療法を選択し続けざるを得ない場合が多い。したがって、毒性を殆ど持たないか、全く持たず、安価に入手又は製造でき、患者が良好な耐性を持ち、且つ投与が容易な化学療法剤を、癌専門医に現在可能な治療様式に加えることが所望されている。悪性組織を選択的に感作することにより放射線の投射量を低減させることができる薬剤、又は治療効果を維持しつつ健常組織への損傷を減らすことができる治療法もまた必要である。同様に、癌の発症又は再発を防ぐ薬剤も必要である。本発明は、そのような薬剤を提供することにより、これらの必要性に応えるものである。さらに、本発明は、現在の抗毒素コンジュゲート様式が有する欠陥を克服する、すなわち腫瘍細胞表面の抗原に特異的に結合するが、正常細胞の抗原には全く結合しない抗体の使用が必要不可欠ではない。
3.本発明の概要
本発明は、患者の正常及び非癌細胞及び組織に対する一般毒性が限られた分裂阻害剤を使用する、有効な癌治療法の開発のための方法及び組成物を提供する。本方法及び組成物は、抗分裂化合物の抗体コンジュゲートからなる細胞毒化合物を使用する。好適な実施形態では、抗体は、実質的に抗体依存性細胞媒介細胞障害性(ADCC)及び/又は補体依存性細胞障害性(CDC)を誘発することができず、よって、ADCC及び/又はCDCを介する間接的細胞死ではなく、むしろ細胞毒化合物の抗分裂成分が確実に治療効果(例えば増殖細胞のみの細胞死)を媒介する。
本発明は、異常な細胞増殖(例えば癌)を伴う疾患の治療のための方法及び組成物を提供する。具体的には、本発明は、細胞結合剤にコンジュゲートさせたとき抗分裂特性を示す化合物(例えばメイタンシノイド)が細胞増殖の増加を特徴とする疾患の治療に有効であるという事実の発見に基づいている。本発明は、細胞結合剤が腫瘍細胞抗原に特異的である(例えば腫瘍細胞に存在するが正常細胞に存在しない)必要はないという驚くべき発見を基礎とする。そうではなく、細胞結合剤は、癌以外の増殖細胞と比較して、増殖癌細胞に多く発現するポリペプチド抗原を区別するだけでよい。
一実施形態では、本発明は、癌治療の標的として使用可能な細胞表面のポリペプチド抗原の同定方法を提供する。好ましい実施形態では、ポリペプチド抗原は、増殖する非癌細胞の表面よりも増殖癌細胞の表面に多く発現する。さらなる実施形態では、ポリペプチド抗原は、増殖する非細胞の表面よりも、増殖していないか、又は増殖速度の遅い非癌細胞の表面に多く発現する。別の実施形態では、増殖癌細胞表面のポリペプチド抗原の発現レベルは、増殖しないか、又は増殖速度の遅い非癌細胞表面のポリペプチド抗原の発現レベルとほぼ同じか、それより小さい。また別の実施形態では、ポリペプチド抗原を同定するステップは、マイクロアレイ分析の使用を含む。
他の実施形態では、本発明は、癌治療に有効な細胞障害性化合物の製造方法を提供する。本方法は、増殖非癌細胞の表面よりも増殖癌細胞表面に多く発現するポリペプチド抗原を同定すること、ポリペプチド抗原に結合する抗体を製造すること、及び少なくとも1つの抗分裂化合物を抗体に結合させることを含む。さらなる実施形態では、ポリペプチド抗原は、増殖非癌細胞の表面よりも、増殖しないか、または増殖速度の遅い非癌細胞の表面に多く発現する。別の実施形態では、増殖癌細胞表面のポリペプチド抗原の発現レベルは、増殖しないか、又は増殖速度の遅い非癌細胞表面のポリペプチド抗原の発現レベルとほぼ同じか、それより小さい。また別の実施形態では、ポリペプチド抗原を同定するステップは、マイクロアレイ分析の使用を含む。好ましい実施形態では、少なくとも1つの抗有糸分裂化合物はメイタンシノイドである。さらなる実施形態では、抗体は、抗原断片、モノクローナル抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体である。さらに別の実施形態では、抗体はポリペプチド抗原に特異的に結合する。また別の実施形態では、抗体はADCC又はCDCを実質的に誘発することができない。
他の実施形態では、本発明は癌細胞の増殖を阻害する方法を提供する。本方法は、増殖非癌細胞の表面よりも癌細胞表面に多く発現するポリペプチド抗原を同定すること、ポリペプチド抗原に結合する抗体を製造すること、少なくとも1つの抗有糸分裂化合物を抗体に結合させて細胞障害性化合物を提供すること、及び癌細胞に細胞障害性化合物を接触させることを含む。さらなる実施形態では、ポリペプチド抗原は、増殖非癌細胞の表面よりも、増殖しないか、または増殖速度の遅い非癌細胞の表面に多く発現する。別の実施形態では、増殖癌細胞表面のポリペプチド抗原の発現レベルは、増殖しないか、又は増殖速度の遅い非癌細胞表面のポリペプチド抗原の発現レベルとほぼ同じか、それより小さい。また別の実施形態では、ポリペプチド抗原を同定するステップは、マイクロアレイ分析の使用を含む。好ましい実施形態では、少なくとも1つの抗有糸分裂化合物はメイタンシノイドである。さらなる実施形態では、抗体は、抗原断片、モノクローナル抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体である。さらに別の実施形態では、抗体はポリペプチド抗原に特異的に結合する。また別の実施形態では、抗体はADCC又はCDCを実質的に誘発することができない。
本発明の別の実施形態は、哺乳動物の癌治療法を提供するものである。本方法は、増殖する非癌細胞の表面よりも癌細胞表面に多く発現するポリペプチド抗原に結合する抗体と、該抗体に結合した少なくとも1つの抗有糸分裂化合物を含む細胞障害性化合物の治療的有効量を、哺乳動物に投与することを含む。別の実施形態では、本方法は、それに加えて化学療法剤を投与することを含む。また別の実施形態では、本方法は、それに加えて外科的処置を含む。さらなる実施形態では、ポリペプチド抗原は、増殖非癌細胞の表面よりも、増殖しないか、または増殖速度の遅い非癌細胞の表面に多く発現する。別の実施形態では、増殖癌細胞表面のポリペプチド抗原の発現レベルは、増殖しないか、又は増殖速度の遅い非癌細胞表面のポリペプチド抗原の発現レベルとほぼ同じか、それより小さい。また別の実施形態では、ポリペプチド抗原を同定するステップは、マイクロアレイ分析の使用を含む。好ましい実施形態では、少なくとも1つの抗有糸分裂化合物はメイタンシノイドである。さらなる実施形態では、抗体は、抗原断片、モノクローナル抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体である。さらに別の実施形態では、抗体はポリペプチド抗原に特異的に結合する。また別の実施形態では、抗体はADCC又はCDCを実質的に誘発することができない。
さらなる実施形態では、本発明は、抗有糸分裂化合物にコンジュゲートさせた抗体を含む組成物を提供する。好ましい実施形態では、抗体は、増殖する非癌細胞の表面よりも増殖癌細胞の表面に多く発現するポリペプチド抗原に結合する。さらなる実施形態では、抗体は、増殖非癌細胞の表面よりも、増殖しないか、または増殖速度の遅い非癌細胞の表面に多く発現するポリペプチド抗原に結合する。別の実施形態では、増殖癌細胞表面のポリペプチド抗原の発現レベルは、増殖しないか、又は増殖速度の遅い非癌細胞表面のポリペプチド抗原の発現レベルとほぼ同じか、それより小さい。好ましい実施形態では、少なくとも1つの抗有糸分裂化合物はメイタンシノイドである。さらなる実施形態では、抗体は、抗原断片、モノクローナル抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体である。さらに別の実施形態では、抗体はポリペプチド抗原に特異的に結合する。また別の実施形態では、抗体はADCC又はCDCを実質的に誘発することができない。
別の実施形態では、本発明は、製薬的に許容可能な担体との混合剤中に抗体−メイタンシノイドコンジュゲートを含む組成物を提供する。好ましくは、本組成物は無菌である。本組成物は、長期に亘る貯蔵安定性を持つ保存可能な液状製薬的調製物の形態で投与することができる。保存された液状製薬的調製物は、組成物の複数回に亘る投与量を含むことができ、よって反復使用に適している。
さらなる実施形態では、本発明は、癌治療に有効な組成物の調製方法を提供する。害方法は、製薬的に有効な量の抗体−メイタンシノイドコンジュゲートを製薬的に許容可能な担体と混合することを含む。
また別の態様において、本発明は:
(a)抗体−メイタンシノイドコンジュゲートを含む物質の組成物、
(b)前記組成物を収容する容器、および
(c)過剰増殖性疾患の治療又は軽減に対する前記抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの使用に言及した、前記容器に添付するラベル、または前記容器に含まれる添付文書
を含む製造品を提供する。組成物は治療的有効量の抗体−メイタンシノイドコンジュゲートを含むことができる。
5.本発明の詳細な説明
5.1.定義
「癌」、「癌性の」および「悪性の」という用語は、典型的には調節されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、腺癌、リンパ腫、芽細胞腫、黒色腫、肉腫、及び白血病を含む悪性腫瘍が含まれる。このような癌のより特定の例には、扁平細胞癌(squamous cell cancer)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸癌、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、膠芽細胞腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝癌および肝細胞腫などの肝臓癌、膀胱癌、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎癌およびビルムス腫などの腎臓癌、基底細胞癌、黒色腫、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、精巣癌、食道癌、並びに多種多様な頭部及び頸部の癌が含まれる。本発明による治療に好適な癌は、乳癌、大腸癌、肺癌、黒色腫、卵巣癌、及び上記に言及したその他血管腫瘍を伴う癌である。
ここで用いられる「細胞障害剤」という用語は、細胞の機能を阻害又は抑制し及び/又は細胞破壊を生ずる物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32およびLuの放射性同位体)、化学療法剤、例えばメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカノイド類(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブチル、ダウノルビシン又は他の挿入剤(intercalating agents)、酵素及びそれらの断片、例えば核分解性酵素、抗体、及び毒素、例えば細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素的活性毒素、又は小分子毒素、それらの断片及び/又は変異体を含み、様々な抗腫瘍剤又は抗癌剤を以下に記載する。他の細胞障害剤を以下に記載する。殺腫瘍性剤により腫瘍細胞の破壊が生じる。
「化学療法剤」は、癌治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロスホスファミド(CYTOXAN(登録商標))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;クロランブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン、ラニムスチン;アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カリーチアマイシン(calicheamicin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン(mitomycins)、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin)などの抗生物質;メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)のような抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)、5−FUのようなピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PKS(登録商標);ラゾキサン(razoxane);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、及びドキセタキセル(タキソテア(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン(navelbine);ノバントロン(novantrone);テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CPT-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラマイシン(esperamicin);カペシタビン(capecitabine);並びに上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。また、この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働く抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン(raloxifene)、4(5)-イミダゾール類を阻害するアロマターゼ、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びトレミフェン(Fareston)などを含む抗エストロゲン;及びフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリンなどを含む抗アンドロゲン;並びに上記のものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
この出願で使用される「プロドラッグ」という用語は、親薬物に比べて、癌細胞に対する細胞障害性が低く、より活性な親形態に、酵素的に活性化又は転換され得る製薬的に活性な物質の先駆体又は誘導体形態を称する。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」, Biochemical Society Transactions, 14, pp.375-382, 615th Meeting Belfast(1986)及びStella等,「Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」, Directed Drug Delivery, Borchardt等,(編), pp.247-267, Humana Press(1985)を参照。 限定するものではないが、本発明のプロドラッグには、ホスファート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、スルファート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸変性プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、βラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグが含まれる。限定するものではないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞障害剤の例には、上記の化学療法剤が含まれる。
ここで使用される「成長阻害剤」とは、インビトロ及び/又はインビボにおいてWnt過剰発現細胞などの細胞の成長を阻害する化合物又は組成物を称する。従って、成長阻害剤は、S期の悪性細胞の割合を著しく減少させるようなものでありうる。成長阻害剤の例には、細胞周期の進行をブロックする薬剤(S期以外の時点において)、例えばG1停止及びM期停止を誘発する薬剤が含まれる。典型的なM期ブロッカーには、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキソール(登録商標)、メイタンシノイド、トポIIインヒビター、例えばドキソルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。また、G1を停止させるこれらの薬剤、例えばDNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン、プレドニソン、ダカーバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-CがS期停止に溢流する。更なる情報は、The Molecular Basis of Cancer, MendelsohnおよびIsrael編, Chapter 1,表題“Cell cycle regulation, oncogenes, and antineoplastic drugs"Murakami等 (WB Saunders: Philadelphia, 1995), 特にp13に見出すことができる。追加的な例として、腫瘍壊死因子(TNF)、酸性またはアルカリ性FGF、あるいは肝細胞成長因子(HGF)の血管系性活性を阻害または中和できる抗体、組織因子の血液凝固活性を阻害または中和できる抗体、タンパク質C、またはタンパク質S(1991年2月21日公開のWO/91/01753参照)、またはHER2レセプターに結合可能な抗体(WO89/06692)、例えば4D5抗体(およびその機能的相当物)(例えばWO92/22653)を挙げることができる。
「治療」とは、過剰増殖疾患の進行を防ぐか、またはその症状を変化させる目的をもって行われる処置である。治療の概念は最も広い意味で使用され、具体的には、任意の段階にある過剰増殖疾患の防護(予防法)、緩和、縮小、および治癒を含む。したがって「治療」とは、治療上の処置と予防または防護的措置の両方を指し、その目的は、そのような疾患の防護または遅延(減少)または改善である。治療を必要とするものには、すでに疾患を持つものだけでなく、疾患にかかりやすい傾向のあるもの、または疾患を予防しようとするものも含まれる。
「長期投与」とは、緊急モードに対し、初回効果を長期に亘って維持するために薬剤を連続モードで投与することを意味する。
治療のための「哺乳動物」とは、哺乳類に分類される任意の動物を意味し、ヒト、家畜、動物園、スポーツまたはペット用動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタを含む。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
1以上の別の治療薬と「組み合わせた」投与は、同時投与、およびその順序を問わず連続投与を含む。
「治療的有効量」という用語は、対象または哺乳動物の疾患又は疾病を「治療」するのに効果的な抗体または薬剤の量を指す。癌の場合、治療的に有効な量の薬剤は癌細胞の数を減じ;腫瘍の大きさを減じ;末梢器官への癌細胞の浸潤を阻害(すなわち、ある程度まで減速、好ましくは停止)し;腫瘍の転移を阻害(すなわち、ある程度まで減速、好ましくは停止)し;ある程度まで腫瘍の成長を阻害し;及び/又は癌に関連する一つ又は複数の症状をある程度まで緩和する。前述の「治療」の項を参照されたい。ある程度まで既存の癌細胞の成長を防ぐ、および/または死滅させるため、それは細胞増殖抑制性および/または細胞障害性であり得る。
ここで用いられる「担体」は、製薬的に許容可能な担体、賦形剤、又は安定化剤を含み、用いられる用量及び濃度でそれらに暴露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である。生理学的に許容可能な担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理学的に許容可能な担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸塩のバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;疎水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシン;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(登録商標)を含む。
「抗体」(Ab)と「免疫グロブリン」(Ig)は同じ構造的特徴を有する糖タンパク質である。抗体は特定の抗原に対して結合特異性を示すものであるが、免疫グロブリンは、抗体と、抗原特異性を欠く他の抗体様分子の両方を含むものである。後者の種類のポリペプチドは、例えばリンパ系により低レベルで、骨髄腫により増加したレベルで産生される。「抗体」という用語は最も広い意味で使用され、限定するものではないが、所望の生物学的活性を示す限りにおいて、無傷のモノクロナール抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷抗体から形成される多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、および抗体断片を包含する。
「天然抗体」及び「天然免疫グロブリン」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド結合を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(V)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を、他端に定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
「可変」という用語は、可変ドメインの特定の部分は抗体間で大きく配列が異なるという事実を表し、特定の抗原に対する特定の抗体の各々の結合および特異性に利用される。しかしながら、抗体の可変ドメインにおいて可変性は通常一様に分布してはいない。典型的には、相補性決定領域(CDR)または軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメイン両方の高頻度可変領域と呼ばれる3つの染色体部分に集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分をフレームワーク領域(FR)と呼ぶ。天然の重鎖および軽鎖の各可変ドメインは、大部分がβ−シート構造を取り入れ、3つのCDRにより連結された4つのFR領域を有しており、それらCDRはβ−シート構造を連結するループを形成するか、場合によってはβ−シート構造の一部を形成する。各鎖のCDRはFR領域によって互いに近接して保持されており、別の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat, E.A.ら、NIH Publ. No.91-3242, Vol. I, 647-669頁, 1991)。定常ドメインは抗原への抗体の結合に直接関与しないが、抗体依存性の細胞障害性への抗体の関与など、様々な作動体機能を示す。
「抗体断片」には、無傷の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合又は可変領域が含まれる。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')及びFv断片;二重特異性抗体;直鎖状抗体(Zapata等, Protein Eng. 8(10):1057-1062[1995]);単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。
抗体のパパイン消化により、各々が単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、その名称が容易に結晶化する能力を表す、残余した「Fc」断片が産生される。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、更に抗原に架橋し得るF(ab')断片が得られる。
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この配置において、各可変ドメインの3つのCDRは相互作用し、V-V二量体表面に抗原結合部位を形成する。集合的に、6つのCDRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低いとはいえ、抗原を認識して結合する能力を有している。
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1領域のカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')抗体断片は、元は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産されたものである。抗体断片の他の化学結合も知られている。
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つが割り当てられる。
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主たるクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、それらのいくつかは更にサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に分割される。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、σ、ε、γ及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び3次元構造はよく知られている。
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量で存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に対している。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含む通常の(ポリクローナル)抗体と比べて、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されていないハイブリドーマ培養から合成される点で有利である。「モノクローナル」との修飾詞は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature 256:495 (1975)により開示されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば、米国特許第4,816,567号参照)。また「モノクローナル抗体」は、例えばClackson等, Nature 352:624-628(1991)、及びMarks等, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリから単離することもできる。
ここで、モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同であり、鎖の残りの部分が他の種由来の抗体あるいは他の抗体クラスあるいはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びにそれが所望の生物的活性を有する限りそれら抗体の断片を特に含む。米国特許第4,816,567号; Morrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855[1984]を参照のこと。
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはそれらの断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。大部分においてヒト化抗体はレシピエントのCDRの残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvFR残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は抗体の能力を更に洗練し、最適化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる。更なる詳細は、Jones等, Nature 321:522-525(1986);Reichmann等, Nature 332:323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596(1992)を参照のこと。ヒト化抗体は、抗体の抗原結合領域が、対象とする抗原でマカクザルを免疫化することにより生産された抗体に由来する、PRIMATIZED(登録商標)抗体を含む。
「一本鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のV及びVドメインを含有するもので、これらのドメインはポリペプチド単鎖に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合にとって所望の構造を形成できるようにするポリペプチドリンカーをVとVドメインの間に更に含んでいる。sFvについては、例えば、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol.113, Rosenburg及びMoore編(Springer-Verlag: New York, 1994) 269-315頁を参照されたい。
「二重特異性抗体」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を意味するもので、断片は軽鎖可変ドメイン(V)に結合した重鎖可変ドメイン(V)を同じポリペプチド鎖(V-V)に含有する。同じ鎖上での二つのドメイン間の対合には短か過ぎるリンカーを使用することにより、ドメインが、他の鎖の相補的ドメインとの対合を強いられ、二つの抗原結合部位をつくりだす。二重特異性抗体は、例えば、欧州特許第404,097号;国際公開93/11161号;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)に更に詳しく記載されている。
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定され分離及び/又は回収されたものである。その自然環境の汚染成分とは、その抗体の診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、抗体は、(1)ローリ法(Lowry method)で測定した場合抗体の95重量%を超える、最も好ましくは99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、あるいは、(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離された抗体には、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。
「エピトープ」という用語は、タンパク質抗原上の(モノクローナルまたはポリクローナル)抗体への結合サイトを指す。特定のエピトープに結合する抗体は、「エピトープマッピング」として同定される。タンパク質上のエピトープをマッピングするおよび特徴付けるための多くの方法が従来技術に既知であり、それらには、抗体―抗原複合体の結晶構造を溶解すること、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイ、および合成タンパク質に基くアッセイなどがあり、例えばHarlow and LaneのChapter 11, Using Antibodies, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1999に記載されている。競合アッセイは後述する。遺伝子断片発現アッセイでは、タンパク質をコードするオープン読み込みフレームを、ランダムに、または特定の遺伝子構造により断片化し、試験した抗体による抗体の発現断片の反応性を決定する。例えば、遺伝子断片はPCRにより生成し、次いで放射性アミノ酸の存在下でインビボでタンパク質に転写または移入させることができる。次いで、免疫沈降およびゲル電気泳動により放射標識したタンパク質断片への抗体の結合を決定する。また、ファージ粒子の表面に表示されたランダムなタンパク質配列の大型ライブラリを使用して特定のエピトープを同定できる(ファージライブラリ)。あるいは、単純な結合アッセイにおいて、重複しているタンパク質断片の明確なライブラリを試験抗体に対する結合について試験することができる。後者の方法は、約5〜15アミノ酸長の線形エピトープを規定するのに適している。
抗体は、2つの抗体が同一または立体的に重複しているエピトープを認識すると、基準抗体として「本質的に同じエピトープ」に結合する。同一または立体的に重複するエピトープに2つのエピトープが結合するかどうかを決定するために最も広く使用され、且つ最も速い方法は、競合アッセイである。競合アッセイは、標識化抗原または標識化抗体を使用して、全ての異なるフォーマットに構築可能である。通常、抗原を96ウェルプレート上に固定し、放射標識または酵素標識を使用することにより、標識化抗原の結合をブロックする非標識化抗体の能力を測定する。
「天然配列」ポリペプチドは、天然から誘導されたポリペプチド(例えば抗体)と同一のアミノ酸配列を有するものである。このような天然配列ポリペプチドは、天然から単離することもできるし、組換え又は合成手段により生産することもできる。よって、天然配列ポリペプチドは、自然に生じるヒトポリペプチド、マウスポリペプチド、又は任意の他の哺乳動物種からのポリペプチドのアミノ酸配列を有することができる。
「アミノ酸配列変異体」という用語は、天然配列ポリペプチドと或る程度異なっているアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。通常、アミノ酸配列変異体は天然配列と少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、さらに好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも95%の相同性を有している。アミノ酸配列変異体は、天然アミノ酸配列のアミノ酸配列内の或る位置において置換、欠失及び/又は挿入を有している。
抗体の「機能的断片又は類似体」という表現は、全長抗体と共通した定性的生物学的活性を有する化合物である。例えば、抗IgE抗体の機能的断片又は類似体は、高親和性レセプターFcεRIに結合する能力を有するような分子の能力を防止し又は実質的に低減させるような形でIgE免疫グロブリンに結合可能なものである。
「相同性」とは、アミノ酸配列変異体において、最大のパーセント相同性を達成するために、必要ならば間隙を導入して、配列を整列させた後に同一である残基のパーセンテージとして定義される。アラインメントのための方法およびコンピュータープログラムは本技術分野においてよく知られているものである。そのようなコンピュータープログラムの一つは、ジェネンテック社により著作された「Align2」で、1991年12月10日にアメリカ合衆国著作権庁、Washington, DC 20559に利用者資料を付して提出されている。
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰する生物学的活性を意味し、抗体のアイソタイプにより変わる。また、抗体のFc領域は抗体のアイソタイプを決定する。様々な抗体のアイソタイプの例として、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgMおよびIgEを挙げることができる。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞障害(CDC);Fc領域結合性;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);貪食作用;細胞表面レセプター(すなわち、B細胞レセプター)の下方制御;及びB細胞活性化が含まれる。
「抗体依存性細胞媒介性細胞障害」又は「ADCC」とは、ある種の細胞障害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcRs)と結合した分泌Igにより、これらの細胞障害エフェクター細胞が抗原-担持標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒により標的細胞を死滅させることを可能にする細胞障害性の形態を意味する。抗体は細胞障害性細胞を「備えて」おり、これはこのような死滅には絶対に必要なものである。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991) の464頁の表3に要約されている。関心ある分子のADCC活性をアッセイするために、米国特許第5,500,362号又は同5,821,337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイにおいて有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)が含まれる。代わりとして、もしくは付加的に、関心ある分子のADCC活性は、例えば、Clynesら, PNAS (USA) 95:652-656 (1998)において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価することが可能である。さらに、抗体のADCCおよび/またはCDCのレベルを調節する(つまり増加させるか低減させる)ための技術は、従来技術に周知である。例えば、米国特許第6,194,551号を参照のこと。本発明の抗体は、好ましくは、ADCCおよび/またはCDCを誘発できないか、または誘発する能力が低減するように変更されている。
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを指す。好適なFcRは天然配列ヒトFcRである。さらに、好適なFcRは、IgG抗体(ガンマレセプター)に結合し、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含み、これらのレセプターの対立遺伝子変異体、選択的にスプライシングされた形態のものも含まれる。FcγRIIレセプターには、FcγRIIA(「活性型レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害型レセプター」)が含まれ、主としてその細胞質ドメインは異なるが、類似のアミノ酸配列を有するものである。活性型レセプターFcγRIIAは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif ;ITAM)を含んでいる。阻害型レセプターFcγRIIBは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター阻害性モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif ;ITIM)を含んでいる(Daeron, Annu. Rev. immunol. 15:203-234 (1997)を参照)。FcRsに関しては、 Ravetch and Kinet, Annu.Rev. Immunol. 9:457-92 (1991); Capel等, Immunomethods 4:25-34 (1994); 及びde Haasら, J.Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995) に概説されている。他のFcRsは、将来的に同定されるものも含め、本明細書では「FcR」という言葉によって包含される。また、該用語には、母性IgGsが胎児に受け継がれる要因となっている新生児性レセプターFcRn(Guyerら, J. Immunol. 117:587 (1976) 、およびKimら, J. Immunol.24:249 (1994))も含まれる。
「ヒトエフェクター細胞」とは、一又は複数のFcRsを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行することが望ましい。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞及び好中球が含まれるが、PBMCsとNK細胞が好適である。エフェクター細胞は天然源、例えば血液から単離してもよい。
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。典型的な補体経路の活性化は補体系(Clq)の第1補体が、同族抗原と結合した(適切なサブクラスの)抗体に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。
ここで使用される「標識」とは、「標識化」抗体を生じせしめるために、抗体に直接的に又は間接的に結合した検出可能な化合物又は組成物を称する。標識はそれ自体が検出可能(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)であってよく、あるいは、酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物又は組成物の化学的変換を触媒してもよい。検出可能な標識を提供しうる放射性ヌクレオチドは、例えば、I-131、I-123、I-125、Y-90、Re-188、Re-186、At-211、Cu-67、Bi-212、及びPd-109を含む。標識は、毒素のような非検出性の物質でもよい。
「固相」とは、本発明の抗体が接着できる非水性マトリクスを意味する。ここに包含される固相の例は、部分的又は全体的にガラス(例えば、径の調整されたガラス)、ポリサッカリド(例えばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール及びシリコーンで形成されたものを含む。或る実施態様では、前後関係に応じて、固相はアッセイ用プレートのウェル;その他では精製用カラム(例えばアフィニティクロマトグラフィカラム)を含むことができる。また、この用語は、米国特許第4,275,149号に記載されたような別々の粒子の不連続な固相も含む。
「リポソーム」は、哺乳動物への薬物(例えば本明細書に開示する抗体)投与に有用な、様々な種類の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤の小胞体である。リポソームの成分は、通常は生体膜の脂質配向に類似した2層構造に配列される。
本明細書中の「イムノアドヘシン」という用語は、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能を持つ異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性を付与した抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識及び結合部位以外の所望の結合特異性を持つアミノ酸配列(即ち「異種」)と免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物である。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には少なくともレセプター又はリガンドの結合部位を含む近接アミノ酸配列である。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4サブタイプ、IgA(IgA1及びIgA2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」に融合した抗体ポリペプチド含んでなるキメラポリペプチドを指す。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープを提供するに十分な数の残基を有しているが、それに融合したIgポリペプチドの活性を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜約50のアミノ酸残基(好ましくは約10〜約20の残基)を有する。
「小分子」とは、ここで約500ダルトン未満の分子量を有するものと定義される。
「パッケージ挿入物」という用語は、指示、用法、用量、投与方法、禁忌及び/又はかかる治療製品の使用に関する警告についての情報を含む、治療製品の市販用パッケージに通常含まれる注意書きを指すために使用される。
「単離された核酸」は、天然配列に自然に付随している、他のゲノムDNA配列並びにタンパク質又は複合体、例えばリボソーム及びポリメラーゼから実質的に分離された、核酸、例えばRNA、DNA又は混合ポリマーである。前記用語には、その自然に生じる環境から取り出された核酸配列が含まれ、組換え又はクローンされたDNA単離物、及び化学的に合成された類似体、又は異種系から生化学的に合成された類似体も含まれる。実質的に純粋な分子には分子の単離された形態が含まれる。
「ベクター」にはシャトル及び発現ベクターが含まれる。典型的には、プラスミド構築物は、細菌においてプラスミドの複製と選択それぞれのための複製開始点(例えばColE1複製起点)及び選択可能マーカー(例えばアンピシリン又はテトラサイクリン耐性)を含む。「発現ベクター」とは、細菌又は真核生物細胞において、本発明の抗体断片を含む抗体の発現に必要なコントロール配列又は調節エレメントを含むベクターを意味する。適切なベクターは以下に開示される。
本明細書において、「癌治療標的」または「癌治療のための標的」とう表現は、異種分子が結合可能で、異種分子のための1以上の結合部位を有し、癌、またはその他任意の過剰増殖疾病または疾患に関連する症状の改善のための治療法を設計、発見または調整するための焦点となり得る分子、通常ポリペプチドと定義される。ポリペプチド標的に加え、本発明はまた、非ポリペプチド癌治療標的、例えば、米国特許第5,091,178号に開示されているような、腫瘍関連糖脂質標的を包含する。
本明細書において、「抗有糸分裂化合物」とは、細胞周期の任意の段階において、有糸分裂性細胞分割および/または細胞進行を、阻害または妨害するか、あるいは遅延させる化合物を意味する。抗有糸分裂化合物は、微小管の形成および/または動作に作用することにより機能できる。このような薬剤は、例えば、微小管安定剤、または微小管形成を中断させる薬剤とすることができる。本発明において有用な微小管作用剤は、当業者には周知であり、限定するものではないが、メイタンシン、メイタンシン誘導体、アロコルヒチン、ハリコンドリンB、コルヒチン、コルヒチン誘導体、ドラスタチン10、リゾキシン(rhizoxin)、パクリタキセル、タクソールRTM誘導体、チオコルヒチン、トリチルシステイン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、エポシロンA、エポシロン、およびdiscodermolideエストラムスチン、nocodazole、MAP4等が挙げられる。このような薬剤の例は、科学文献および特許文献にも記載されている。例えば、Bulinski (1997) J. Cell Sci. 110:3055-3064; Panda (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:10560-10564; Muhlradt (1997) Cancer Res. 57:3344-3346; Nicolaou (1997) Nature 387:268-272; Vasquez (1997) Mol. Biol. Cell 8:973-985; Panda (1996) J. Biol. Chem. 271:29807-29812を参照のこと。
本明細書の定義では、「メイタンシノイド」は、チューブリン重合を阻害するように作用する高度に毒性の分裂阻害剤である係蹄マクロライドである。メイタンシノイドの一種であるメイタンシンは、最初、東アフリカシラブMaytenus serrataから単離されたものである(米国特許第3,896,111号)。本発明のメイタンシノイドは、限定されないが、合成メイタンシノイドおよびメイタンシノイド類自体(例えばメイタンシン)を含み、それらは例えば例えば米国特許第4,137,230号;同4,248,870号;同4,256,746号;同4,260,608号;同4,265,814号;同4,294,757号;同4,307,016号;同4,308,268号;同4,308,269号;同4,309,428号;同4,313,946号;同4,315,929号;同4,317,821号;同4,322,348号;同4,331,598号;同4,361,650号;同4,364,866号;同4,424,219号;同4,450,254号;同4,362,663号;及び同4,371,533号に開示されており、その開示は出典を明示してここに取り込まれる。
細胞表面のポリペプチドの発現に言及して「多く発現する」と言う場合、本明細書では、細胞表面のポリペプチドの複写数が、別の細胞と比較して少なくとも10%、好ましくは15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、および最も好ましくは100%高いことを意味する。
細胞表面のポリペプチドの発現に言及して「ほぼ同じ」と言う場合、本明細書では、表面のポリペプチドの複写数を別の細胞と比較したときの差異が、10%未満、好ましくは5%未満、2%未満、1%未満、最も好ましくは0%であることを意味する。
「DNAマイクロアレイ」とは、紙、ナイロン、またはその他の種類の膜、フィルタ、ゲル、ポリマー、チップ、ガラススライド、あるいは固体の支持体を含めその他適切な支持体などの基板上に配置された個別のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドのアレイを指す。DNAマイクロアレイは、(複写画像を生成するために)多数の遺伝子の差動的な発現レベルを同時にモニターするため、および遺伝子変異体、突然変異、および染色体の多型を同定するために使用される。特にDNAマイクロアレイは、第一の種類の細胞由来の遺伝子の発現を第二の種類の細胞の遺伝子と比較したときの発現の差異または変化を検知するように設計されている(通常第一の種類の細胞は非病変組織に、第二の種類の細胞は病変細胞に対応する)。タンパク質アレイもまた本発明の範囲に含まれる。そのようなタンパク質アレイの例は、例えば米国特許第6,197,599号に見ることができる。典型的に、DNAマイクロアレイでは、基本的に、ロボットにより単純な顕微鏡用スライド上に配置された遺伝子断片を表す、選択された数千の異なる核酸配列のデータベースを使用する。次に、特定の種類の細胞のmRNA(様々な遺伝子の細胞に特異的な発現を反映している)は、RT/PCR法によりcDNAに転換され、蛍光タグで標識化され、スライド上の選択された核酸配列にハイブリッド可能となる。次いでスキャナによりスライド上の各試料の蛍光を検知および測定する。そこで検知および測定された蛍光は、スライド上の既に判明している位置で、それが既知の核酸配列とのハイブリダイゼーションしていることにより同定可能な試験細胞由来の標識化メッセンジャーを表す。相対的な蛍光は遺伝子の相対的な活性を表し、強い蛍光は比較的大量のメッセンジャーを発現している活性の遺伝子を示す。傾向が殆どないか、または全くない場合は、既知の核酸配列にハイブリダイズした標識化されたメッセンジャーが存在しないことを示す。
本明細書で使用する「増殖する」細胞とは、細胞の生殖周期のM期(M=有糸分裂)が少なくとも8時間毎に起こる細胞を意味する。本明細書で使用する「増殖速度の遅い」細胞とは、細胞の生殖周期のM期の起こる頻度が約8時間毎よりも小さく、しかし約72時間毎よりも大きい細胞を意味する。本明細書で使用する「非増殖」細胞とは、細胞の生殖周期のM期が約72時間毎よりも小さい頻度で起こる細胞を意味する。
5.2.本発明の組成物及び方法
5.2.1.本発明の抗体
以下に、本発明において有用な抗体を製造するための例示的技術を記載する。場合によっては、標準的な組み換えDNA方法論を使用して、細菌または真核細胞内に抗体を製造し、単離することができる。
5.2.1.1.ポリクロナール抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより、動物に産生される。免疫化されるべき種において免疫原性であるタンパク質へ、関連する抗原(特に、合成ペプチドが用いられる場合)を結合することが有用である。例えば、この抗原を、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターへ、二重官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介する抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する抱合)、グルタルアルデヒド、及び無水コハク酸、SOCl、又はR及びRが異なるアルキル基であるRN=C=NRを用いて結合させることができる。
動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫する。1ヶ月後、完全フロイントアジュバントに入れたタンパク質またはコンジュゲートの初回量の1/5ないし1/10を複数部位に皮下注射することにより、該動物を追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。コンジュゲートは、タンパク融合として組換え細胞培養で調製することも可能である。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために適切に使用される。
5.2.1.2.モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、Kohlerら, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法、又は組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作成することができる。
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを上記のように免疫し、免疫化に用いられたタンパク質と特異的に結合する抗体を産生する、又は産生することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。免疫化の後、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融合剤を用いて骨髄腫細胞株と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞(融合パートナーとも呼ばれる)の増殖または生存を阻害する1つ又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための選択的培地は、典型的には、HGPRT−欠失細胞の成長を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。
好ましい融合パートナーである骨髄腫細胞とは、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの発現を支え、融合した親細胞培地に対して感受性である細胞である。好ましい骨髄腫株化細胞は、マウス骨髄腫ライン、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、サンディエゴ、カリフォルニア、アメリカ合衆国より入手し得るMOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍、及び、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックヴィル、メリーランド、アメリカ合衆国より入手し得るSP-2又は誘導体、例えばX63-Ag8-653細胞である。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-63頁、(Marcel Dekker, Inc., ニューヨーク, 1987))。
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
例えば、モノクローナル抗体の結合親和性は、Munsonら., Anal. Biochem., 107:220(1980)のスキャッチャード分析によって測定することができる。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が確定された後、そのクローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により成長させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地は、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地を包含する。また、このハイブリドーマ細胞は、動物の腹水症腫瘍として、例えばマウスへの細胞の腹腔内注射によって、インビボで成長させることができる。
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばアフィニティークロマトグラフィー(例えばプロテインA又はプロテインG-セファロースを用いる)又はイオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析等のような常套的な抗体精製法によって、培地、腹水、又は血清から適切に分離される。
モノクローナル抗体をコードするDNAは、常法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)容易に分離されて、配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび分離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、この状況以外では抗体タンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中にトランスフェクションし、組換え宿主細胞にモノクローナル抗体の合成を獲得することができる。抗体をコードするDNAの細菌での組み換え発現に関する概説論文には、Skerraら., Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及びPluckthun, Immunol. Revs. 130:151-188(1992)が含まれる。
更なる実施態様では、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントは、McCaffertyら, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して産生される抗体ファージライブラリから分離することができる。Clacksonら, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marksら, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリを使用したマウス及びヒト抗体の分離をそれぞれ記述している。続く刊行物は、鎖シャフリングによる高親和性(nM範囲)のヒト抗体の産生(Marksら, Bio/Technology, 10:779-783(1992))、並びに大規模なファージライブラリを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouseら, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266(1993))を記述している。従って、これらの技術は、モノクローナル抗体の分離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法の実行可能な別法である。
抗体をコードするDNAを修飾して、例えば、相同的なマウス配列をヒト重鎖及び軽鎖定常ドメイン(C及びC)配列で置換することによって(米国特許第4,816,567号;Morrisonら, Proc.Nat.Acad.Sci.,USA,81:6851(1984))、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチド(異種ポリペプチド)のコード配列の全部又は一部を共有結合させることによって修飾することができる。非免疫グロブリンポリペプチド配列は、抗体の定常ドメインに置き代えることができるか、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインが置換されて、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう1つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
5.2.1.3.ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。好ましくは、ヒト化抗体には非ヒト由来の1つ又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的に高頻度可変領域配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりウィンター(Winter)及び共同研究者(Jonesら, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmannら, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyenら, Science, 239:1534-1536 (1988)の方法に従って実施される。従って、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が、非ヒト種由来のそれに対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかの高頻度可変領域残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
抗体がヒトの治療用途を意図している場合、抗原性及びHAMA反応(ヒト抗-マウス抗体)を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方のヒト可変ドメインの選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒトVドメイン配列を同定し、その中のヒトフレームワーク(FR)をヒト化抗体のために受け入れる(Simsほか, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothiaら, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carterほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Prestaら, J. Immunol., 151:2623(1993))。
更に、抗体を、抗原に対する高結合親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることにより、標的抗原に対する親和性の向上といった所望の抗体特性が達成できる。一般的に、高頻度可変領域残基は、直接かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
ヒト化抗体の種々の形態が考えられる。例えばヒト化抗体は、免疫結合体を生成するために、随意的に1つ又は複数の細胞障害剤(類)と結合する抗体断片、例えばFabであってもよい。また、ヒト化抗体は無傷抗体、例えば無傷IgG1抗体であってもよい。
5.2.1.4.ヒト抗体
ヒト化の別法として、ヒト抗体を生成することができる。例えば、現在では、免疫化することで、内因性免疫グロブリンを産生せずに、ヒト抗体の全レパートリーを産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが可能である。例えば、キメラ及び生殖細胞系突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子のホモ接合体欠失によって、結果として内因性抗体産生の完全な阻害が起こることが説明されてきた。ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子配列の、このような生殖細胞系突然変異体マウスへの転移によって、結果として抗原投与時にヒト抗体の産生がおこる。Jakobovitsら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993);Jakobovitsら, Nature 362:255-258 (1993); Bruggemanら, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5,545,806号、同5,569,825号、同5,591,669号(全てジェンファーム(GenPharm));同5,545,807号;及び国際公開第97/17852号を参照されたい。
別法として、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら, Nature 348:552-553[1990])を使用して、非免疫化ドナーの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を産出させることができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子を、フレーム単位で、繊維状バクテリオファージ、例えばM13又はfdの大きい又は小さいコートタンパク質遺伝子のどちらかでクローンし、ファージ粒子の表面に機能的抗体断片として表示させる。繊維状粒子がファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むので、抗体の機能特性に基づいた選択に基づいても、結果としてこれらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択が成される。よって、このファージはB細胞のいくつかの特性を模倣している。ファージディスプレイは多様な形式で行うことができる;例えばJohnson, Kevin S. 及びChiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571(1993)を参照せよ。V-遺伝子セグメントのいくつかの供給源を、ファージディスプレイのために使用できる。Clacksonら, Nature, 352:624-628(1991)は、免疫化したマウス脾臓由来のV遺伝子の小さいランダムなコンビナトリアルライブラリから、多様で多くの抗-オキサゾロン抗体を単離した。非免疫化ヒトドナーのV遺伝子のレパートリーが構成可能であり、多様で多くの抗原(自己抗原を含む)に対する抗体は、Marksら, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)、又はGriffithら, EMBO J. 12:725-734(1993)に記載の技術にそのまま従うことで単離することができる。また、米国特許第5,565,332号及び同5,573,905号を参照のこと。
上述したように、ヒト抗体はインビトロで活性化したB細胞により産生することができる(米国特許第5,567,610号及び同5,229,275号)。
5.2.1.5.抗体断片
ある状況下では、抗体全体よりも、抗体断片を用いることに利点がある。断片が小さい方が迅速なクリアランスが可能となり、固形腫瘍への接近の改良につながり得る。
抗体断片を産生するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、無傷の抗体のタンパク分解性消化によって誘導された(例えば、Morimotoら, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennanら, Science, 229:81(1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片は、現在は組換え宿主細胞により直接産生することができる。Fab、Fv及びScFv抗体断片は、すべて大腸菌で発現させ分泌させることができ、従って、大量のこれら断片の産生が容易となった。抗体断片は、上で論じた抗体ファージライブラリから単離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合させてF(ab')断片を形成することができる(Carterら, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。インビボ半減期が増した、サルベージレセプター結合性エピトープ残基を含むFab及びF(ab’)が、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片を生成するのための他の方法は、当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択する抗体は単鎖Fv断片(scFv)である。国際公開第93/16185号;米国特許第5,571,894号;及び米国特許第5,587,458号を参照のこと。Fv及びsFvは、定常領域を欠く無傷の連結部位を有する唯一の種である;従って、インビボでの使用の間、非特異的結合が少ない場合に適している。sFv融合タンパク質は、sFvのアミノ又はカルボキシ末端のどちらかで、エフェクタータンパク質の融合体が生成されるように構成されてもよい。上掲のAntibody Engineering, ed. Borrebaeckを参照のこと。また、抗体断片は、例えば米国特許第5,641,870号に記載されているような「直鎖状抗体」であってもよい。そのような直鎖状抗体断片は単一特異性又は二重特異性であってもよい。
5.2.1.6.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、抗原の2つの異なるエピトープに結合し得る。他のこのような抗体では、他のタンパク質に対する結合部位を有する抗原結合部位を含むことがある。また、二重特異性抗体は、特定の抗原を発現する細胞に細胞障害剤を局在化するためにも使用されうる。これらの抗体は抗原結合アーム及び細胞障害剤(例えば、サポリン(saporin)、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセート又は放射性同位体ハプテン)と結合するアームを有する。二重特異性抗体は完全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')二重特異性抗体)として調製することができる。
二重特異性抗体を作成する方法は当該分野において既知である。完全長二重特異性抗体の従来の生成は二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づき、ここで二つの鎖は異なる特異性を持っている(Millsteinら, Nature, 305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を生成し、そのうちただ1つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。同様の方法が国際公開第93/08829号及びTrauneckerら、EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
異なったアプローチ法では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原-抗体結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。その融合は好ましくは、少なくともヒンジの一部、C2及びC3領域を含むIg重鎖定常ドメインである。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(C1)を、融合の少なくとも1つに存在させることが望ましい。免疫グロブリン重鎖の融合、望まれるならば免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時トランスフェクトする。これにより、組立に使用される三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が所望の二重特異性抗体の最適な収率をもたらす態様において、三つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に大きな融通性が与えられる。しかし、少なくとも二つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率が所望の鎖の組み合わせにあまり影響がないときは、2または3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
この手法の好ましい実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体を産生する更なる詳細については、例えばSureshら, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
米国特許第5,731,168号に記載された他の手法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーのパーセントを最大にすることができる。好適な界面はC3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの1つ又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
二重特異性抗体は、架橋した又は「ヘテロコンジュゲート」抗体もまた含む。例えば、ヘテロコンジュゲートの抗体の一方はアビジンに結合され、他方はビオチンに結合され得る。そのような抗体は、例えば、不要の細胞に対する免疫系細胞をターゲティングするため(米国特許第4,676,980号)、及びHIV感染の治療のために提案された(国際公開第91/00360号、同92/200373号、及び欧州特許第03089号)。ヘテロコンジュゲート抗体は、あらゆる簡便な架橋法を用いて作製することができる。好適な架橋剤は当該分野において良く知られており、幾つかの架橋技術と共に米国特許第4,676,980号に開示されている。
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennanら, Science, 229:81 (1985) は無傷の抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤、亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に変換される。Fab'-TNB誘導体の1つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再変換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
最近の進歩により、大腸菌からのFab'-SH断片の直接の回収が容易になり、これは化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalabyら,J.Exp.Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')分子の製造を記述している。各Fab'断片は大腸菌から別個に分泌され、インビトロ定方向化学カップリングを供されて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、正常なヒトT細胞、及びErbB2レセプターを過剰発現する細胞に結合可能で、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の細胞溶解活性の誘因となる。また、組み換え細胞培養から直接二重特異性抗体断片を分離するため、および作成するための様々な技術が開示されている。例えば、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を製造することができる。Kostelnyら, J.Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させる。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法は、抗体ホモダイマーの作製のために使用することも可能である。Hollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには十分に短いリンカーによりVにVを結合してなる。従って、1つの断片のV及びVドメインは他の断片の相補的V及びVドメインと強制的に対形成させられ、よって2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用による二重特異性抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruberら, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J.Immunol. 147:60(1991)
5.2.1.7.多価抗体
多価抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞により、二価抗体よりも早くインターナリゼーション(及び/又は異化)されうる。本発明の抗体は、3以上の結合部位を有する多価抗体(IgMクラス以外のもの)であり得(例えば四価抗体)、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現により容易に生成することができる。多価抗体は二量化ドメインと3又はそれ以上の抗原結合部位を有する。好ましい二量化ドメインはFc領域又はヒンジ領域を有する(又はそれらからなる)。このシナリオにおいて、抗体はFc領域と、Fc領域のアミノ末端に3又はそれ以上の抗原結合部位を有しているであろう。ここで、好ましい多価抗体は3ないし8、好ましくは4の抗原結合部位を有する(又はそれらからなる)。多価抗体は少なくとも1つのポリペプチド鎖(好ましくは2つのポリペプチド鎖)を有し、ポリペプチド鎖(類)は2以上の可変ドメインを有する。例えば、ポリペプチド鎖(類)はVD1-(X1)-VD2-(X2)-Fcを有し、ここでVD1は第1の可変ドメインであり、VD2は第2の可変ドメインであり、FcはFc領域のポリペプチド鎖の1つであり、X1及びX2はアミノ酸又はポリペプチドを表し、nは0又は1である。例えば、ポリペプチド鎖(類)は:VH-CH1-柔軟なリンカー-VH-CH1-Fc領域鎖;又はVH-CH1-VH-CH1-Fc領域鎖を有し得る。ここで多価抗体は、好ましくは少なくとも2つ(好ましくは4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドをさらに有する。ここで多価抗体は、例えば約2〜約8の軽鎖可変ドメインポリペプチドを有する。ここで考察される軽鎖可変ドメインポリペプチドは軽鎖可変ドメインを有し、あるいはCLドメインをさらに有する。
5.2.2.アミノ酸の修飾
ここに開示する抗体のアミノ酸配列の修飾を考える。例えば、抗体の結合親和性および/または生物学的特性を向上することができれば望ましい。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体の核酸に適切なヌクレオチド変化を導入して、又はペプチド合成により調製される。そのような修飾は、4抗体のアミノ酸配列内の残基の、例えば、欠失型、又は挿入或いは置換を含む。最終構成物が所望する特徴を有していれば、欠失、挿入又は置換をどのように組合せてもよい。アミノ酸変化は、また、グリコシル化部位の数または位置を変えることなどの、抗体の翻訳後プロセスを改変することが可能である。
突然変異誘発に好ましい位置である抗体の特定の残基または領域の同定に有益な方法は、CunninghamおよびWellsによりScience, 244:1081-1085 (1989年)に開示されているように、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的となる残基または残基の組が同定され(例えば、arg、asp、his、lys、およびgluなどの荷電した残基)、中性の、または負に荷電したアミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)で置換され、アミノ酸の抗原との相互作用に影響を与える。次いで、置換に対する機能的感受性を示しているそれらアミノ酸位置を、置換の部位において、または置換の部位のために、さらなる、または他の変異体を導入することにより精製する。このように、アミノ酸配列変異体を導入する部位は予め決定されるが、突然変異自体の性質は予め決定する必要は無い。例えば、任意の部位における突然変異の機能を分析するために、標的コドンまたは領域においてalaスキャンニングまたはランダム突然変異誘発を実行し、発現した抗体変異体を所望の活性についてスクリーニングする。
アミノ酸配列挿入には、1残基から100以上の残基を有するポリペプチドまでの長さに亘るアミノ−末端融合および/またはカルボキシ−末端融合、ならびに、単一または多重アミノ酸残基の配列内挿入を含む。端末挿入の例には、N−末端メチオニル残基を持つ抗体、または細胞障害性ポリペプチドに融合した抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体には、抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドまたは(例えばADEPTのための)酵素の抗体のN−末端またはC−末端への融合が含まれる。
別の種類の変異体は、アミノ酸置換変異体である。これら変異体では、抗体分子の少なくとも1つのアミノ酸残基が別の残基で置換されている。置換突然変異誘発に関して最も興味深い部位には高頻度可変領域が含まれるが、FR変換も考慮される。常套的な置換を表1の「好ましい置換」の欄に示す。このような置換により生物学的活性に変化が生じたならば、表1の「例示的置換」の欄に示すか、またはアミノ酸のクラスに関してさらに後述されるさらに重要な変化を導入でき、産物をスクリーニングできる。
Figure 2005517155
抗体の生物学的特性の実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又はら旋構造、(b)標的部位の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩の維持におけいて大きく効果を異にする置換基を選択することにより達成される。天然発生残基は共通の側鎖特性に基づいてグループに分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン, met, ala, val, leu, ile;
(2)中性の親水性:cys, ser, thr;
(3)酸性:asp, glu;
(4)塩基性:asn, gln, his, lys, arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly, pro; 及び
(6)芳香族:trp, tyr, phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。このようにして置換された残基も、保存的置換部位、またはさらに好ましくは残りの(非保存的)部位に挿入することができる。
変異は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)変異、アラニンスキャンニング、及びPCR変異などの、この分野で知られた方法を用いて行うことができる。部位特異的変異[Carter等, Nucl. Acids Res., 13:4331 (1986); Zoller等, Nucl. Acids Res., 10:6487 (1987)]、カセット変異[Wells等, Gene, 34:315 (1985)]、制限選択変異[Wells等, Philos. Trans.R. Soc. London SerA, 317:415 (1986)]又は他の周知の技術などがある。
また、隣接する配列に沿って1つ又は複数のアミノ酸を同定するのに、スキャニングアミノ酸分析も用いることができる。好ましいスキャニングアミノ酸は、比較的小さい中性のアミノ酸である。このようなアミノ酸は、アラニン、グリシン、セリン、及びシステインを含む。アラニンは、ベータ炭素を越える側鎖を排除し、変異体の主鎖高次構造を変える可能性が低いので、これらの群の中の典型的に好適なスキャンニングアミノ酸である[CunninghamおよびWells, Science, 244:1081-1085(19899)]。また、アラニンは、最も普通のアミノ酸であるので典型的に好ましい。さらに、隠れた及び露出した位置の両方で頻繁に見いだされる[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150:1 (1976)]。アラニン置換が適当な量の変異を生じない場合、アイソテリック(isoteric)なアミノ酸を用いることができる。
また、抗体の適当な構造を維持するのに関与しない任意のシステイン残基は、通常、セリンで置換することで、分子の酸化的安定性を向上させ、異常な架橋を防ぐことができる。逆に、システイン結合を抗体に付加することにより、その安定性を向上させることができる(特に抗体がFV断片のような抗体断片である場合)。
5.2.2.1.その他の修飾
特に好ましい種類の置換変異体は、親抗体(例えばヒト化抗体またはヒト抗体)の高頻度可変領域の1つ以上を置換することを含む。一般に、さらなる開発のために選択された変異体は、それらを産生した親抗体と比較して改善された生物学的特性を有する。そのような置換変異体を生成するのに簡便な方法には、ファージディスプレイを使用した親和性成熟が含まれる。簡単には、複数の高頻度可変部位(例えば6〜7部位)を変化させ、各部位において可能なアミノ置換をすべて生成する。このようにして生成された抗体変異体は、各粒子に包含されたM13の遺伝子III産物への融合時に繊維状ファージ粒子から一価でディスプレイされる。次いでファージディスプレイされた変異体を、ここに開示するように、その生物学的活性(例えば結合親和性)についてスクリーニングする。修飾のための候補高頻度可変領域部位を同定するため、アラニンスキャニング突然変異誘導を実行し、抗原結合に大きな役割を果たす高頻度可変領域残基を同定することができる。それに代えて、またはそれに加えて、抗原−交代結合複合体の結晶構造を分析し、抗体と抗原の接触点を同定することが有益である。このような接触残基および近接残基は、本明細書に説明する技術にしたがう置換のための候補である。そのような変異体が生成されたら、変異体のパネルをここに開示するようにスクリーニングし、1以上の関連アッセイにおいて優れた特性を有する抗体をさらなる開発のために選択する。
抗体の別の種類のアミノ酸変異体は、抗体の元のグリコシル化パターンを変更する。変更するとは、抗体に見られる1以上の炭水化物部分の欠失、および/または抗体に存在しない1以上のグリコシル化部位の追加を意味する。加えて、この表現は、存在する様々な炭水化物部分の性質および特性の変化を含め、抗体のグリコシル化パターンの質的変化も含む。
抗体のグリコシル化とは、典型的にはN-結合又はO-結合である。N-結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の付与を指す。トリペプチド配列アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン-X-スレオニン(ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的に付与の認識部位である。従って、ポリペプチドにおけるこれらトリペプチド配列のいずれかの存在によって、潜在的なグリコシル化部位を作り出される。O-結合グリコシル化とは、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースのうちの一つの糖のヒドロキシアミノ酸、殆どの場合にはセリン又はスレオニンへの付与を指す。5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシルリジンを用いてもよい。
抗体へのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を改変して、それが上記に記載のトリペプチド配列の一つ又は複数を含むようにすることによって簡便に完遂できる(N-結合グリコシル化部位の場合)。この改変は、また、元の抗体の配列へ一つ又は複数のセリン又はスレオニン残基を付加、又は置換することによって生成される(O-結合グリコシル化部位の場合)。
抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当技術分野で知られている様々な方法を使用して調製される。これらの方法には、限定されないが、天然源からの単離(自然発生アミノ酸配列変異体の場合)、あるいは、あらかじめ調製された抗体の変異体または非変異体の、オリゴヌクレオチド媒介(または部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、およびカセット突然変異誘発が含まれる。
抗体上に炭水化物部分の数を増加させる他の手段は、グリコシドのポリペプチドへの化学的又は酵素的結合による。そのような方法は、この技術分野において、例えば、1987年9月11日に発行された国際公開87/05330、及びAplin及びWriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306 (1981)に記載されている。
抗体上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的又は酵素的に、あるいはグルコシル化の標的として提示されたアミノ酸残基をコードするコドンの変異的置換によって達成することが可能である。化学的脱グリコシル化技術は、この分野で知られており、例えば、Hakimuddinら, Arch. Biochem. Biophys., 259:52 (1987)によって、そしてEdgeら, Anal. Biochem., 118: 131 (1981)によって記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakuraら, Meth. Enzymol. 138:350 (1987)に記載されているように、種々のエンド及びエキソグリコシダーゼを用いることにより達成することができる。
抗体の共有結合的修飾の他の型は、抗体の非タンパク質様ポリマーの1つ、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンへ、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号又は第4,179,337号に記載された方法で結合させることをを含む。
また、本発明の抗体は、その他の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列と融合した抗体又はを含むキメラ分子が形成される方法で修飾されてもよい。
一実施態様では、このようなキメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドと抗体との融合を含む。エピトープタグは、一般的には抗体のアミノ又はカルボキシル末端に位置する。このような抗体のエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他の型の親和性マトリクスを用いたアフィニティ精製によって抗体を容易に精製できるようにする。種々のタグポリペプチド及びそれら各々の抗体はこの分野で良く知られている。例としては、ポリ−ヒスチジン(ポリ-His)又はポリ−ヒスチジン−グリシン(poly-his-gly)タグ;flu HAタグポリペプチド及びその抗体12CA5[Fieldら, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c-mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体[Evanら, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];及び単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体[Paborskyら, Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]を含む。他のタグポリペプチドは、フラッグペプチド[Hoppら, BioTechnology, 6:1204-1210 (1988)];KT3エピトープペプチド[Martinら, Science, 255:192-194 (1992)];α-チューブリンエピトープペプチド[Skinnerら, J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991)];及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuthら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990)]を含む。
5.2.3.エフェクター機能の設計
本発明の抗体をエフェクター機能について改変し、抗体の抗原依存性細胞媒介細胞障害性(ADCC)および/または補体媒介細胞障害性(CDC)を増強または抑制することが望ましい。これは、1以上のアミノ酸置換基を抗体のFc領域に導入することにより達成される。例えば、米国特許第6,194,551号参照。その代わりに、またはそれに加えて、システイン残基をFc領域に導入して、この領域における鎖間ジスルイド結合を形成させる。このようにして産生されたホモダイマー抗体は改善されたインターナリゼーション能力及び/又は増加したか減少した補体媒介細胞死滅及び抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を有しうる。Caron等, J. Exp. Med. 176:1191-1195 (1992)及びShopes, B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照されたい。
抗腫瘍活性が高められたホモダイマー抗体は、Wolff等, Cancer Research 53:2560-2565(1993)に記載されているようなヘテロ二官能性架橋剤を使用して調製することもできる。あるいは二重Fc領域を有し、よって増強された補体溶解及びADCC能を有しうる抗体を設計することができる。Stevensonら, Anti-cancer Drug Design 3:219-230 (1989)を参照。
好ましくは、本発明の抗体のADCCまたはCDC誘発能は低下している。上記のように、抗体を改変してADCCおよび/またはCDC誘発能の低い抗体を産出するための方法は、従来技術に既知である。例えば、米国特許第6,194,551号参照。本発明の抗体は、好ましくは抗有糸分裂化合物に結合して細胞障害性化合物を作り出すため、抗体のADCCおよび/またはCDC能を低下させるおよび/または排除することにより、細胞障害性化合物の治療効果(例えば増殖細胞のみの細胞死)は、ADCCおよび/またはCDCによる間接的細胞死滅ではなく、主に細胞障害性化合物の抗有糸分裂成分により媒介される。
抗体の血清半減期を増加させるため、例えば、米国特許第5,739,277号に記載のように、サルベージレセプター結合エピトープを抗体(特に抗体断片)に包含してもよい。ここで使用する「サルベージレセプター結合エピトープ」という用語は、インビボでIgG分子の血清半減期を増加させるIgG分子(例えばIgG、IgG、IgG、またはIgG)のFc領域のエピトープを指す。
5.2.4.免疫複合体
本発明はまた、化学治療薬、毒素(例えば、細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素、又はその断片)などの細胞障害性薬、あるいは放射性同位体(即ち、放射性抱合)、成長阻害剤、または抗有糸分裂化合物に抱合された抗体を含む免疫複合体にも関する。
5.2.4.1.メイタンシノイド免疫複合体
好ましい実施形態では、本発明の抗体は、抗体またはメイタンシノイド分子の生物学的活性を縮小することななく1つ以上のメイタンシノイド分子に抱合される。メイタンシノイドは、チューブリンの重合を阻害する有糸分裂インヒビターである。従って、本発明のメイタンシノイドを含む免疫複合体は、増殖し(例えば癌細胞)、よって分裂する細胞に対して治療的効果を有する。しかしながら、同じ免疫複合体は、増殖していない細胞には効果を有さない。
本発明の好ましい実施形態では、メイタンシノイドにより誘発された毒性を受けない組織および/または細胞を標的とする。メイタンシノイド誘発毒性の影響を受けたことを既に示している組織/細胞の例には、限定されないが、胃腸(GI)組織および神経細胞が含まれる(Issel等, 1978, Can. Trtmnt. Rev., 5:199-207)。GI内の細胞は増殖率が高く、よってメイタンシノイドの抗有糸分裂特性によりそのような細胞は死滅する傾向にあるので、GI系はメイタンシノイドに応答して毒性を示しやすい。神経細胞の増殖率は高くないが、神経細胞は軸索小胞輸送のための微小管に依存している。先述のように、メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害するので、分裂インヒビターである。よって、メイタンシノイドによるチューブリン重合の阻害は、神経細胞の増殖率は高くなくとも神経細胞に悪影響を与えるように作用する。
メイタンシノイドは当技術分野において周知であり、既知の技術によって合成可能であるか、または天然源から単離可能である。適切なメイタンシノイドは、例えば、米国特許第5,208,020号およびその他上述の特許文献および非特許文献に開示されている。好ましいメイタンシノイドはメイタンシノール、および様々なメイタンシノールエステルなど、メイタンシノール分子の芳香環内かその他の位置で改変されたメイタンシノール類似体である。
抗体−メイタンシノイド複合体を作成するための多くの結合基が当技術分野において既知である。それらには、例えば、米国特許第5,208,020号またはEP0425235B1、およびChari等. Cancer Research 52:127-131 (1992)が含まれる。結合基は、上記の特許文献に開示されているような、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定基、感光性基、ペプチダーゼ不安定基、又はエステラーゼ不安定基を含み、中でもジスルフィドおよびチオエーテル基が好ましい。
抗体とメイタンシノイドの複合体は、様々な二官能性タンパク質結合剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を含む。ジスルフィド結合を作るための特に好ましい結合剤は、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(Carlsson等, Biochem. J. 173:723-737 [1978])およびN−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ))ペンタノアート(pentanoate)(SPP)を含む。
結合の種類に応じてメイタンシノイド分子の様々な位置にリンカーを添付することができる。例えば、常套的な結合技術を使用してヒドロキシル基との反応によりエステル結合を形成できる。反応はヒドロキシル基を有するC−3位置、ヒドロキシルメチルで修飾したC−14位置、ヒドロキシル基で修飾したC−15位置、およびヒドロキシル基を有するC−20位置で起こる。好ましい実施形態では、結合は、メイタンシノールまたはメイタンシノール類似体のC−3位置で形成される。
5.2.4.2.その他の免疫複合体
本発明の抗体と結合可能な他の抗腫瘍剤には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン及び5-フルオロウラシル、米国特許第5,053,394号、同5,770,710号に記載されており、集合的にLL-E33288複合体として公知の薬剤のファミリー、並びにエスペラマイシン(esperamicine)(米国特許第5,877,296号)が含まれる。
使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)エキソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、α-サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、ツルレイシインヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日公開のWO93/21232号を参照のこと。
さらに本発明では、抗体と核分解活性(nucleolytic activity)を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNアーゼ)との間に形成される免疫コンジュゲートが考慮される。
腫瘍を選択的に破壊するため、抗体は高い放射性を有する原子を含有してよい。放射性原子をコンジュゲートした抗-PUMPCn抗体を生成するために、種々の放射性同位体が利用される。例として、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体が含まれる。コンジュゲートが診断用に使用される場合、それはシンチグラフィー研究用の放射性原子、例えばtc99m又はI123、又は核磁気共鳴(NMR)映像(磁気共鳴映像、mriとしても公知)用のスピン標識、例えばヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マグネシウム又は鉄を含有し得る。
放射-又は他の標識が、公知の方法でコンジュゲートに導入される。例えば、ペプチドは生物合成されるか、又は水素の代わりにフッ素-19を含む適切なアミノ酸前駆体を使用する化学的なアミノ酸合成により合成される。標識、例えばtc99m又はI123、Re186、Re188及びIn111は、ペプチドのシステイン残基を介して結合可能である。イットリウム-90はリジン残基を介して結合可能である。IODOGEN法(Frakerら(1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80:49-57)は、ヨウ素-123の導入に使用することができる。他の方法の詳細は、「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal, CRC Press 1989)に記載されている。
抗体と細胞障害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質結合剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)が抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。WO94/11026号を参照されたい。リンカーは細胞中の細胞障害剤の放出を容易にするための「切断可能リンカー」であってよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチターゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカーが使用され得る(Chariら, Cancer Research, 52:127-131(1992);米国特許第5,208,020号)。
別法として、抗体及び細胞障害剤を含有する融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成により作製される。DNAの長さは、コンジュゲートの所望する特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により離間しているか、又は互いに隣接しているコンジュゲートの2つの部分をコードする領域をそれぞれ含有する。
他の実施態様において、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートし、ここで抗体-レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いてキレート剤を使用し、循環から未結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
5.2.5.免疫リポソーム
また、ここに開示する抗体は、免疫リポソームとして調製してもよい。抗体を含むリポソームは、Epsteinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688 (1985);Hwangら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4030 (1980); 及び米国特許第4,485,045号及び第4,544,545号に記載されたような、この分野で知られた方法で調製される。向上した循環時間を持つリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成される。リポソームは、所定サイズの孔のフィルターを通して押し出され、所望の径を有するリポソームが生成される。本発明の抗体のFab'断片は、Martinら, J. Biol. Chem. 257: 286-288 (1982)に記載されているように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームに抱合され得る。化学治療薬(ドキソルビシン等)は、場合によってはリポソーム内に包含される。Gabizonら, J. National Cancer Inst. 81(19) 1484 (1989)参照。
5.2.6.投与プロトコル、スケジュール、用量及び製剤
ここに記載された化合物は、上述した種々の疾患及び疾病の予防及び治療薬として製薬的に有用である。
化合物の治療用組成物は、適当な純度を持つ所望の分子を任意の製薬的に許容される担体、賦形剤、又は安定化剤(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A.編, (1980))と、凍結乾燥した製剤又は水溶液の形態で混合することにより調製することができる。許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、好ましくは用いられる投与量及び濃度で受容者に非毒性であり、リン酸塩、クエン酸炎、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンザルコニウムクロライド;ベンゼトニウムクロライド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストランを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
このような担体の更なる例は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩、又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、マグネシウムトリシリケート、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、及びプロピレングリコールである。局所用の担体又はゲルベースの形態は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース又はメチルセルロース等の多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及びモクロウアルコールを含む。あらゆる投与について、従来のデポー形態が好適に用いられる。このような形態は、例えば、マイクロカプセル、ナノ-カプセル、リポソーム、硬膏剤、吸入形態、鼻スプレー、舌下状錠剤、及び除放性製剤を含む。化合物は、典型的にはそのような媒体中に約0.1mg/mlから100mg/mlの濃度で処方される。
インビボ投与に用いられる化合物は無菌でなければならない。これは、凍結乾燥及び再形成の前又は後の滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成される。化合物は通常は凍結乾燥形態又は全身投与される場合には溶液中に貯蔵される。凍結乾燥形態にある場合、化合物は典型的には使用時の適当な希釈剤を含む他の成分と組み合わせて処方される。本発明の化合物の液体製剤の例は、無菌の、透明な、無色の生鮮溶液で、皮下注射用の1回投与バイアルに充填されている。繰り返し使用に適切な防腐製薬組成物は、例えば、主にポリペプチドの種類及び指示に応じて、
a)本発明の化合物;
b)溶液中のポリペプチド又は他の分子の安定性を最大にする範囲内のpH、好ましくは約4-8のpHを維持可能なバッファー;
c)主として、撹拌誘発性集合体に対し化合物を安定化させる洗浄剤/界面活性剤;
d)等張剤;
e)フェノール、ベンジルアルコール及びベンゼトニウムハロゲン化物、例えば塩化物の群から選択される防腐剤;及び
f)水;
を含有し得る。
使用される洗浄剤が非イオン性であるならば、それは、例えばポリソルベート(例えば、POLYSORBATE(登録商標)(TWEEN(登録商標))20、80等)、またはポロキサマー(例えば、POLOXAMER(登録商標)188等)であってよい。非イオン性界面活性剤を使用することにより、ポリペプチドの変性を引き起こすことなく、表面応力の剪断に調製物をさらすことができる。さらに、このような界面活性剤含有調製物は、エアゾール装置、例えば静脈投与、及びニードルレスジェッ注入ガンに使用されるものに使用され得る(例えば、EP257,956を参照されたい)。
等張剤は、化合物の液体組成物を確実に等浸透圧とするために存在し、多価糖アルコール、好ましくは3価又は高級糖アルコール、例えばグリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールが含まれる。これらの糖アルコールは、単独で、又は組合せて使用することもできる。また、塩化ナトリウム又は他の適切な塩を、溶液を等にするために使用してもよい。
バッファーは、所望するpHに応じて、アセタート、シタラート、スクシナート又はホスファートバッファーであってよい。本発明の液状調製物の一種類のpHは、約4から8、好ましくはほぼ生理学的pHの範囲に緩衝される。
防腐剤、フェノール、ベンジルアルコール及びベンゼトニウムハロゲン化物、例えば塩化物は、使用可能な周知の抗菌薬である。
治療用組成物は、一般的に無菌のアクセスポートを具備する容器、例えば、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針で穿孔可能なストッパーを具備するバイアルに配される。製剤は、好ましくは静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、又は筋肉内(i.m.)の繰り返し注射として、あるいは鼻内又は肺内送達に適したエアロゾル製剤として投与される(肺内送達については、例えばEP 257,956参照)。
また、化合物は持続放出製剤の形態で投与することもできる。持続放出製剤の好適な例は、本発明の化合物を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、当該マトリクスは成形物、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、Langer等, J. Biomed. Mater. Res., 15: 167-277 (1981)及びLanger, Chem. Tech., 12:98-105 (1982)に記載されたようなポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号、EP 58,481)、L-グルタミン酸及びガンマエチル-L-グルタメートのコポリマー(Sidman等, Biopolymers, 22: 547-556 (1983))、非分解性エチレン−酢酸ビニル(Langer等, 上掲)、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLupron Depot(登録商標)(乳酸−グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能な微小球)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシブチル酸(EP 133,988)を含む。
エチレン−酢酸ビニルや乳酸−グリコール酸等の重合体は100日以上分子を放出できるが、特定のヒドロゲルがタンパク質を放出する時間はそれよりも短い。カプセル化タンパク質は、長時間体内に残存すると、37℃で水分に曝されることで、変性又は凝集し、生理活性の喪失や免疫原生の変化のおそれがある。かかる機構に応じて安定性を得るための合理的な処置が考えられる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換による分子間S―S結合であることが分かったら、スルフヒドリル残基を変更し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分量を調整し、適当な添加物を使用し、特定の重合体マトリクス化合物を開発することで安定性を保証することができる。
持続放出組成物は、また、リポソーム的に包括された化合物を含む。本発明の化合物を含有するリポソームは、それ自体周知である方法、例えば、DE 3,218,121、Epstein等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688-3692 (1985)、Hwang等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4030-4034 (1980)、EP 52,322、EP 36,676、EP 88,046、EP 143,949、EP 142,641、特願昭58-118008、米国特許第4,485,045号及び第4,544,545号、及びEP 102,324等による方法によって調製する。通常、リポソームは、脂質含有量が約30モル%以上コレステロールであり、選択される割合が最適な治療法に対して調整された微小(約200-800オングストローム)な単ラメラ状のものである。
本発明の化合物の治療的有効量は、当然のことながら、治療(予防を含む)すべき病理学的状態、投与方法、治療に用いられる化合物の型、任意の同時治療、患者の年齢、体重、一般的な医学的状態、医学的履歴などの要因によって異なり、それは担当する医師の技量の範囲内で良好に決定される。従って、治療者は、最大の治療効果が得られるように、投与量を滴定し投与経路を修正する必要がある。臨床医は投与量が当該病状の治療において所望する効果が得られるまで、化合物を投与するであろう。
上記の指針では、有効投与量は、一般的に約0.001から約1.0mg/kg、好ましくは約0.01−1.0mg/kg、最も好ましくは約0.01−0.1mg/kgの範囲内である。
化合物の投与経路は周知の方法に従い、例えば静脈内、筋肉内、脳内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、眼内、関節内、滑膜内、包膜内、経口、局所又は吸入経路による注射又は注入、あるいは以下に記載する持続放出系による。また化合物は、腫瘍内、腫瘍周辺、病巣内、又は病巣周辺経路で好適に投与され、局所的並びに全身に治療効果を発揮する。腹腔内経路は、例えば卵巣腫瘍の治療に特に有用であること思われる。
塩を形成し下記において有用な分子の薬理学的に許容される塩類の例には、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩)、アンモニウム塩、有機塩基塩(例えばピリジン塩、トリエチルアミン塩)、無機酸塩(例えば塩酸、硫酸塩、硝酸塩)及び有機酸塩(例えば酢酸塩、シュウ酸塩、p-トルエンスルホン酸塩)が含まれる。
5.2.7.組合せ治療
課題とする疾患の防止又は治療における化合物の効力は、同じ組成物又は別個の組成物において、これらの目的のために有効な他の薬剤と組合せるか、又は活性剤を連続して投与することにより向上する。
癌の治療に使用される化合物は、上述にて同定したような細胞障害剤、化学療法剤又は成長阻害剤と組合せられる。また癌の治療のために、化合物は適切に連続投与されるか、又は、放射活性物質の照射又は投与を含んでも含まなくても、放射線学的治療と組合せられる。
本発明の化合物と組合せて投与される治療薬の有効量は、医師又は獣医の裁量による。投与量とその調節は処理される病状に最大の治療効果が達成されるようになされる。用量は、治療される特定の患者及び使用される治療薬の種類等の因子に依存する。
5.2.8.製造品
上述した疾患の診断又は治療に有用な本発明の化合物を含むキットのような製造品は、少なくとも1つの容器及びラベルを具備する。適切な容器には、例えばボトル、バイアル、シリンジ及び試験管が含まれる。容器はガラス又はプラスチックのような種々の物質から形成できる。容器は、状態の診断又は治療に有効な組成物を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で穿孔可能なストッパーを具備する静脈内溶液のバッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の活性剤は本発明の化合物である。容器上の又は容器に添付されるラベルには、選択した状態の診断又は治療に組成物が使用されることが示されている。この製造品は、製薬的に許容されるバッファー、例えばリン酸緩衝塩水、リンガー液、及びデキストロース溶液を収容した第2の容器をさらに具備してもよい。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明書を備えた包装挿入物を含む、商業的に、及び使用者の立場から望ましい他の材料を具備してもよい。また、この製造品は、上述のような他の活性剤を収容した第2又は第3の容器を具備してもよい。
5.2.9.抗体の製薬組成物
本発明に従って使用される抗体の製薬組成物および免疫複合体は、所望の純度を有する抗体を随意の製薬的に許容可能な担体、賦形剤、または安定化剤に凍結乾燥した製剤又は水溶液の形態で混合することにより調製される(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))。許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、好ましくは用いられる投与量及び濃度で受容者に非毒性であり、酢酸、トリス、リン酸、クエン酸炎、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンザルコニウムクロライド;ベンゼトニウムクロライド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;トレハロースおよび塩化ナトリウムなどのtonicifier;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ポリソルベートなどの界面活性剤;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。抗体は、5から200mg/ml、さらに好ましくは10から100mg/mlの濃度で抗体を含んでいることが好ましい。
抗原が細胞内であり、全抗体がインヒビターとして使用される場合は、内部移行抗体が好ましい。しかし、リポフェクション又はリポソームを、細胞中に抗体、又は抗体断片を送達するために使用することができる。抗体断片が使用される場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小の抑制断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持するペプチド分子を設計することができる。このようなペプチドは化学的に合成し、及び/又は組換えDNA技術により生産することができる。例えばMarasco等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:7889-7893 (1993)を参照されたい。
ここに記載した製剤はまた、治療される特定の効能に対する必要な一以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものを含んでいてもよい。あるいは、又は加えて、組成物は、その機能を増強する薬剤、例えば細胞障害性剤、サイトカイン、化学療法剤、又は成長阻害剤を含有しうる。このような分子は意図した目的のために効果的な量で組み合わせて存在せしめるのが好適である。
活性成分はまたコロイド状薬剤送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)、又はマクロエマルションにおいて、例えばコアセルベーション技術又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリラート)マイクロカプセルに捕捉されている。このような技術はRemington's Pharmaceutical Sciences(上掲)に開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜による濾過により容易に達成される。
徐放製剤を調製してもよい。徐放製剤の好適な例には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが含まれ、このマトリックスは成形品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形態である。徐放製剤の好適な例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号)、Lグルタミン酸γ-エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-ビニルアセテート、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシブチル酸が含まれる。酢酸エチレンビニル及び乳酸-グリコール酸のようなポリマーにより100日以上にわたる分子の放出が可能であるが、ある種のヒドロゲルはそれよりも短い時間にわたりタンパク質を放出する。カプセル化された抗体が長い間身体中に残る場合、抗体は37℃での水分にさらされる結果、変性又は凝集し、その結果生物活性を喪失し、また免疫原生の変化を生じる場合がある。関連する機構に応じて安定化のために合理的な方策を考えることができる。例えば、凝集機構がチオスルフィド交換による分子間S-S結合形成であることが判明したら、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分量を制御し、適当な添加剤を使用し、特定のポリマーマトリックス組成物を開発することにより達成されうる。
5.2.10.抗体を使用する治療方法
本発明の抗体、特に本発明の免疫複合体(例えばメイタンシノイド−抗体複合体)は、上述した種々の疾病および疾患の治療に使用できると考えられる。
抗体は、哺乳動物、好ましくはヒトに、周知の方法、例えば、ボーラスとして又は所定時間に渡る連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹膜内、脳脊髄内、皮下、関節間、滑膜内、鞘内、経口、局所、又は吸入経路などにより投与される。抗体の静脈内投与が好ましい。
通常、治療対象となる疾病または疾患は癌である。治療対象となる癌の例には、限定されないが、悪性腫瘍、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血性またはリンパ性悪性腫瘍が含まれる。このような癌のさらに具体的な例は、扁平上皮癌(例えば上皮性扁平上皮癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺の扁平上皮癌を含む肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵臓癌、膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝臓癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓または腎癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝臓癌、肛門癌、陰茎癌、並びに多種多様な頭部及び頸部の癌を含む。
上述したように、他の治療的養生法を本発明の抗体の投与と組み合わせてもよい。例えば、抗体で癌の治療をする場合は、このような抗体で治療される患者は放射線治療を受けてもよい。あるいは、又はそれに加えて、患者に化学療法剤を投与してもよい。このような化学療法剤の調製法及び用量スケジュールは、製造者の指示に従って使用されるか、熟練した実務者により経験的に決定される。そのような化学治療に対する調製法及び用量スケジュールはまたChemotherapy Service M.C. Perry編, (Williams & Wilkins: Baltimore, MD, 1992)にも記載されている。化学療法剤は、抗体の投与に先立って、又はそれに続いて投与してもよく、あるいはそれと同時に投与してもよい。抗体は、タモキシフェン又はEVIST(登録商標)等の抗エストロゲン化合物又はオナプリストンなどの抗プロゲステロン(EP 616812参照)の、それらの分子について知られた用量と組み合わせてもよい。
別の実施形態では、本発明の抗体調製物による治療法は、複数の異なる化学療法剤のカクテルの同時投与を含め、抗体と1以上の化学療法剤、または成長阻害剤の組み合わせ投与を使用する。化学療法剤は、エストラムスチンリン酸、プレドニムスチン、シスプラチン、5−フルオロウラシル、メルファラン、シクロホスファミド、ヒドロキシウレア、およびヒドロキシウレアタキサン(例えばパクリタキセルおよびドキセタキセル)および/またはアントラサイクリン抗体を含む。このような化学療法剤の調製法及び用量スケジュールは、製造者の指示に従って使用されるか、熟練した実務者により経験的に決定される。そのような化学治療に対する調製法及び用量スケジュールはまたChemotherapy Service M.C. Perry編, (Williams & Wilkins: Baltimore, MD, 1992)にも記載されている。
抗体は、抗ホルマリン化合物;例えば、タモキシフェンなどの抗エストロゲン化合物;オナプリストンなどの抗プロゲステロン(EP616812参照);またはフルタミド(flutamide)などの抗アンドロゲンと組み合わせ、そのような分子に知られている投与を行ってもよい。治療対象である癌がアンドロゲン独立癌である場合、患者には予め抗アンドロゲン療法を施し、癌がアンドロゲン独立性になったら、患者に抗体(および随意で上述のような他の薬剤)を投与する。
患者に対し、(治療法に関連する心筋機能障害を防ぐ、または低減するため)心保護剤、または1以上のサイトカインの同時投与を行うことが有益な場合もある。上記治療的養生法に加えて、抗体療法の前、後、またはそれと同時に、患者には癌細胞の外科的除去および/または放射線治療を行う。上記同時投与される薬剤の適切な投与量は、現在使用中のものでもよいし、抗原および抗体の組み合わせ作用(相乗作用)のためにそれより減らしてもよい。
抗体を癌の治療に使用する場合、他の腫瘍関連抗原に対する抗体、例えば一又は複数のErbB2、EGFR、ErbB3、ErbB4、又はVEGFレセプターに結合する抗体を投与することも好ましい。これらには、上述した薬剤も含まれる。また、抗体は適切に連続投与されるか、又は、放射活性物質の照射又は投与を含んでも含まなくても、放射線学的治療と組合せられる。あるいは、又はそれに加えて、ここで開示したものと同じか、又は二つ以上の異なる抗原に結合する二以上の抗体を、患者に同時投与してもよい。ときどきは、患者に一又は複数のサイトカインを投与することも有利である。好ましい実施態様では、この抗体は、成長阻害剤と同時投与される。例えば、まず成長阻害剤を投与し、続いて本発明の抗体を投与する。しかしながら、同時投与、又は本発明の抗体を最初に投与することも可能である。
一実施態様において、腫瘍の血管新生は、組合せ治療において攻撃される。本発明の抗体及び他の既知の抗体(例えば抗-VEGF)を、例えば存在する腫瘍又は転移病巣の壊死の観察により決定された治療的有効量で、腫瘍を有する患者に投与する。この治療は、好ましい効果が観察されるか、又は腫瘍又は任意の転移病巣の痕跡がなくなるまで続けられる。ついで、TNFを、単独で、または補助剤、例えばα−、β−又はγ−インターフェロン、抗-HER2抗体、ヘレグリン(heregulin)、抗ヘレグリン抗体、D-因子、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、又は腫瘍中の微細血管凝固促進剤、例えば抗-プロテインC抗体、抗-プロテインS抗体、又はC4b結合プロテイン(1991年2月21日公開のWO91/01753参照)、または熱またはX線と組み合わせて投与する。
補助剤の有効性は様々であるので、常套的なマトリクススクリーニングにより、腫瘍へのそれらの影響力を比較することが望ましい。本発明の抗体及びTNFの投与は、所望する臨床効果が達成されるまで繰り返される。また、本発明の抗体は、TNF、場合によっては補助剤と共に投与される。固形腫瘍が、四肢又は一般的な循環器からの単離が可能な他の位置で見出される例では、ここに記載される治療薬は単離された腫瘍又は器官に投与される。他の実施態様において、FGF又はPDGFアンタゴニスト、例えば抗-FGF又は抗-PDGF中和抗体は、本発明の抗体と共に患者に投与される。本発明の抗体を用いた治療は、好ましくは傷の治癒又は所望の新血管新生の期間中は中止する。
疾病の予防又は治療のため、既知の基準に従って医師は投与量及び投与モードを選択する。抗体の適切な投与量は、上記で定義したような治療される疾患の型、疾患の重篤さ及び経過、抗体の投与目的は防止であるか、治療であるか、従前の治療、患者の臨床履歴及び抗体に対する反応、及び主治医の裁量による。抗体は、適切には患者に一回又は一連の治療にわたって適切に投与される。好ましくは、抗体は、静脈内注射、または皮下注射により投与される。疾患の型及び重篤さに応じ、患者への投与の最初の候補投与量として、体重1kg当たり約1μgから50mg(例えば、1回に0.1−15mg/kg)の抗体を、例えば、1回で又は複数に分けて、あるいは連続注入で、投与することができる。一投与法では、最初の負荷投与量として4mg・kgを投与し、その後週に約2mg/gkの抗体を維持量として投与することができる。典型的な1日の用量は、上記の要因に応じて、約1μg/kgから100mg/kg以上であろう。数日以上に渡る繰り返し投与のためには、状態に応じて、疾患の徴候に所望の抑制が現れるまで治療が続けられる。この治療の進行は、従来の方法及びアッセイにより、および医師またはその他等分野の熟練者に既知の基準に基づいて容易にモニターできる。
患者に対する抗体タンパク質の投与の他に、本出願では遺伝子療法による抗体の投与を考慮する。抗体をコードする核酸のこのような投与は、「治療的有効量の抗体を投与する」という表現に含まれる。例えば、細胞内抗体の生成を目的とした遺伝子療法に関する1996年3月14日公開のWO96/07321を参照のこと。
核酸(場合によってはベクター内に含まれたもの)を患者の細胞に入れるために:インビボ及びエキソビボという2つの主要な方法がある。インビボ送達では、核酸は、通常は抗体が必要とされる部位において、患者に直接注入される。エキソビボ処理では、患者の細胞を取り出し、核酸をこれらの単離された細胞に導入し、修飾された細胞を患者に、直接、又は例えば患者に埋め込まれる多孔性膜にカプセル化して投与する(米国特許第4,892,538号及び第5,283,187号参照)。核酸を生細胞に導入するために利用可能な種々の技術がある。これらの技術は、核酸が培養された細胞にインビトロで移入されるか、又は対象とする宿主にインビボで移入されるかによって異なる。哺乳動物細胞にインビトロで核酸を移入するのに適した技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストリン、リン酸カルシウム沈降法などを含む。遺伝子のエキソビボ送達に通常用いられるベクターはレトロウイルスベクターである。
現在インビボ核酸移入技術で好ましいのは、ウイルスベクター(アデノウイルス、単純ヘルペスIウイルス、又はアデノ関連ウイルス)、及び脂質ベースの系(遺伝子の脂質媒介移入に有用な脂質は、例えば、DOTMA、DOPE、及びDC-Cholである)での形質移入を含む。現在知られている遺伝子作成および遺伝子療法プロトコルの概説については、Anderson等, Science 256:808-813 (1992)を参照のこと。また、Wo93/25673を参照し、ここに引用することにより本明細書に包含する。
5.2.10.1.抗体の標的化
好ましい実施形態では、本発明の抗体を限定はしないがメイタンシノイドを含む抗有糸分裂化合物に抱合することを考える。有糸分裂は、細胞分裂および複製に伴う細胞プロセスの1つである。不運にも、多くの疾病および疾患が異常細胞分裂を特徴としている。例えば、癌は細胞分裂が制御不能となったそのような例の1つである。したがって、治療用薬剤の標的を異常細胞分裂に伴う細胞にすることが好ましい。
本発明は、抗体−抗有糸分裂複合体が、分裂中の細胞を死滅させるのに非常に効果的であるという発見に基づいている。さらに、本発明は、抗体、またはその他の細胞結合剤が、腫瘍細胞だけに発現するポリペプチド抗原に特異的である必要はないという驚くべき発見に基づく。それよりも、本発明の抗体またはその他結合剤は、増殖する非癌細胞と比較して増殖する癌細胞に多く発現したポリペプチド抗原を差異化する必要があるだけである。抗体またはその他の結合剤は抗有糸分裂剤に抱合されるので、増殖する細胞のみが死滅させられることとなり、増殖しないか、増殖速度の遅い細胞に対する抗体の結合は、非増殖または増殖速度の遅い細胞の死滅に繋がらない。
好ましい実施形態では、抗体はメイタンシノイドに抱合されており、抗体は、メイタンシノイドにより誘発された毒性の影響を受けない組織および/または細胞を標的とすることが好ましい。既にメイタンシノイドにより誘発された毒性の影響を受けたことを示す組織の例は、限定されないが、胃腸(GI)組織および神経細胞を含む(Issel等, 1978, Can. Trtmnt. Rev., 5:199-207)。GI内細胞は増殖性が高く、よってメイタンシノイドの抗有糸分裂特性によりそのような細胞が死滅される傾向にあるので、GI系はメイタンシノイドへの反応として毒性を示しやすい。神経細胞の増殖性は高くないが、ニューロンは軸索小胞輸送のための微小管に依存している。上記したように、メイタンシノイドはチューブリンの重合を阻害するので、有糸分裂インヒビターである。よって、メイタンシノイドによるチューブリン重合の阻害は、ニューロンの増殖性が高くなくとも、神経細胞に悪影響を及ぼし得る。
したがって、本発明は先行技術による腫瘍抗原スクリーニング法の限界と欠点を克服するものである。具体的に述べると、本発明以前は、腫瘍細胞と、正常で、増殖していないかまたはゆっくりと増殖している細胞療法の表面に見られるポリペプチド抗原は、増殖していないか増殖速度の遅い細胞に毒性の影響を与えてしまうという恐れがあるために、癌治療の標的にされることはなかった。しかしながら、上述したように、本発明の抗体を抗有糸分裂化合物(例えばメイタンシノイド)に抱合することによって、増殖していないか増殖速度の遅い細胞に悪影響を及ぼすことがない。したがって、本発明の驚くべき発見は、癌治療に使用できるポリペプチド抗原標的の可能性を大きく拡大するものである。
5.2.11.細胞表面のポリペプチドスクリーニング技術
増殖癌細胞における細胞表面のポリペプチドの異なる発現、および/または発現の変化と、増殖する非癌細胞、増殖速度の遅い非癌細胞、および増殖しない非癌細胞および組織と比較したその他病変組織とを同定することで、遺伝子機能、疾病の遺伝子的基礎、およびそのような疾病の治療上の標的にたいする貴重な認識を得ることができる。別の種類の細胞に対してある種類の細胞に多く発現するポリペプチド抗原の同定に現在使用できる技術が無数にある。好ましい態様では、これら技術を使用して、増殖する非癌細胞の表面よりも増殖する癌細胞の表面に多く発現するポリペプチド抗原を同定することが可能である。そのような技術の例には、限定されないが、マイクロアレイ分析、ノーザン法、ウェスタン法、PCRに基づく戦略、TAQMAN、遺伝子増幅、および、公的(例えばGenbank)、および/または民間(LIFESEQ(登録商標)、Incyte Pharmaceuticals, Inc., Palo Alto, CA;およびGeneExpress(登録商標)、Genelogic, Inc., Gaithersberg, MD)の遺伝子発現データベースを含む遺伝子発現データベースのスクリーニングが含まれる。
5.2.11.1.マイクロアレイ分析
過去7年の間に、DNAマイクロアレイと呼ばれる新しい技術が、広く分子生物学者の興味を引くところとなり、複雑な疾病のプロファイリングや新規疾病関連遺伝子の発見に使用されるようになった。(Ekins, R.等, “Microarrays: their origins and applications", Trends in Biotechnology, 17: 217-218 (1999); Heller, A.等., Proc. Natl. Acad. Sci USA, 94:2150-2155 (1997))。
DNAマイクロアレイは、整列させたポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド試料で構成されている。この技術により、塩基ペアリングルールに基づき既知および未知のDNA試料に合致させるための培地、および未知のDNAの同定プロセスの自動化が可能である。DNAマイクロアレイは、通常はガラスに、場合によってはナイロンまたはその他の基質上に、高速ロボット工学により組み立てるか、またはマニュアルで創造することができる。それについて既知の識別を有するcDNAプローブを使用して相補的結合を決定し、よって大量の平行遺伝子発現および遺伝子発見の研究を可能とする。単一のDNAチップによる実験により、数千の遺伝子の情報を同時に得ることができる(Schena, M.等, Science, 270: 467-470 (1995); Shalon, D.等, Genome Res., 6(7): 639-645 (1996))。
DNAマイクロアレイを使用して、試験および対照mRNA試料由来の試験および対照mRNA試料を逆転写および標識化し、cDNAプローブを作成する。次いでプローブを固形の支持体に固定化した核酸のアレイにハイブリダイズする。アレイは、アレイの配列と各メンバーが分かるように構成する。例えば、ある病的状態に発現することが分かっている遺伝子を選択し、固体支持体上に配列することができる。特定のアレイメンバーとの標識化プローブのハイブリダイゼーションは、プローブを採取した試料がその遺伝子を発現することを示す。試料(病変組織)由来のそのようなプローブのハイブリダイゼーションが、対照試料(非病変組織)由来のプローブのハイブリダイゼーションより大きい場合、病変組織に発現した一または複数の遺伝子を同定する。あるいは、他の種類の細胞と比較してある種類の細胞に多く発現した遺伝子を同定するためにマイクロアレイを使用できる。
疾病に関連した遺伝子発現を認識するうえでの対照試料と比較した試験試料の効果的な分析において、検出感度は制限要因である。DNAマイクロアレイを使用したヒト遺伝子の研究において、多くの病的状態の満足の行く分析を行うためには、試料の質に限界がある中で、十分な感度で検出を行う必要がある。
したがって、DNAマイクロアレイは、第一の細胞型から採取した既知の遺伝子の、第二の細胞形における同じ遺伝子の発現と比較した場合の異なる発現を検出するように設計することができる(典型的には第一の細胞型は非病変組織に、第二の細胞型は腫瘍を含む病変組織に対応する)。特に重要なのは、特定の遺伝子の発現の変化が、正常組織と比較して病変組織に検出された場合で、そのような遺伝子を報告された疾病のための薬剤投与の標的に使用できる。このように、DNAマイクロアレイ技術は、疾病のプロファイリング、および遺伝子関連疾病の同定に非常に適しており、ゆえに疾病の薬物療法および治療法の開発をもたらし、複合型慢性疾患の治療を向上させるものである。
DNAマイクロアレイを使用して遺伝子発現の差異および/または変化を測定し、ポリペプチド抗原をコードする多数の目的遺伝子の発現レベルをモニターすることができる。DNAマイクロアレイを使用して多数の遺伝子の発現レベルを同時にモニターし(それにより転写画像を生成し)、変異体、突然変異および多形型を同定することができる。特に、DNAマイクロアレイは、第一の細胞型由来のポリペプチド抗原をコードする遺伝子の発現を、第二の細胞型における同じ遺伝子の発現と比較したときの差異を検出するように設計することができる(典型的には第一の細胞型は正常組織に、第二の細胞型は病変組織に対応する)。mRNA由来の蛍光標識したcDNAを2つの細胞型から単離し、第一および第二の細胞型由来のcDNAを第一および第二のそれぞれ異なる蛍光レポーターで標識する。好ましい実施形態では、マイクロアレイを使用して、他の細胞型と比較してある細胞型に多く発現する遺伝子を同定することができる。
一実施形態では、DNAマイクロアレイを作成し、WO95/11995 (Chee等, Lockart, D. J.等, Nat. Biotech., 14:1675-1680 (1996), およびSchena, M.等, Proc. Natl. Acad. Sci., 93: 10614-10619 (1996))に開示されているような先行技術に既知の方法に従って使用する。
好ましくは、DNAマイクロアレイは、通常固体の支持体に固定されたcDNAの合成アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは断片である、多数の特異な一本鎖核酸配列より構成される。オリゴヌクレオチドは約6〜60ヌクレオチド長、さらに好ましくは約15〜30ヌクレオチド長、および最も好ましくは約20〜25ヌクレオチド長であることが好ましい。ある種のDNAマイクロアレイでは、わずか7〜10ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドを使用することが好ましい。DNAマイクロアレイは既知の5'(または3')配列を有してもよく、あるいは、完全長配列に亘る連続オリゴヌクレオチド、または配列長に沿う特定の領域から選択された特異なオリゴヌクレオチドを有してもよい。DNAマイクロアレイに使用されるポリヌクレオチドは、配列が少なくとも部分的に判明している目的遺伝子に特異的であるか、あるいは、特定の細胞または組織型、または正常、進行または病変状態に共通する1以上の未確認cDNAに特異的なオリゴヌクレオチドであり得る。特定の場合では、マイクロアレイにオリゴヌクレオチド対を使用することが好ましいことがある。これらの対は、好ましくは配列の中央に位置する1つのヌクレオチドを除き、同一である。対になっているうちの2番目のヌクレオチド(1つだけ不一致)は、対照として機能する。オリゴヌクレオチド対は2〜1,000,000の範囲に亘ってよい。
マイクロアレイ用の既知の配列にオリゴヌクレオチドを製作するため、目的とするポリペプチド抗原をコードする遺伝子を、ヌクレオチド配列の5'末端、またはさらに好ましくは3'末端から始めるコンピューターアルゴリズムを使用して検査する。アルゴリズムにより、遺伝子に固有で、ハイブリダイゼーションに適した領域内にGCコンテンツを有し、ハイブリダイゼーションに干渉し得る予想第二構造を持たないある規定の長さのオリゴマーが同定される。
一態様では、WO95/251116 (Balderschweiler等)に開示されているような、インクジェットアプリケーション装置、および光指向性の化学的結合手順を使用して、オリゴヌクレオチドを基板表面上の所定の領域に合成できる。基板は、紙、ナイロンまたはその他任意の膜、フィルター、チップ、ガラススライド、あるいはその他任意の適切な固体の支持体とすることができる。別の態様では、ドットまたはスロットブロット(HYBRIDOT(登録商標)器具、GIBCO/BRL)に類似の「格子」アレイを使用し、真空システム、熱、UV、機械的または化学的結合手順により、基板表面に対してcDNA断片またはオリゴヌクレオチドを配置および結合させることができる。さらに別の態様では、マニュアルで、または利用可能な装置、材料、およびマシン(BRINKMAN(登録商標)マルチチャネルピペッターまたはロボット工学的機具を含む)を使用して、アレイを製造できる。このようなアレイは8、24、96、384、1536、または6144のオリゴヌクレオチド、または、市販の器具に効果的に使用できる2〜1,000,000の範囲のその他任意の倍数を収容することができる。
別の態様では、本発明は少数の核酸、特にリボ核酸から蛍光標識したcDNAを生成する方法の改善にも関する。哺乳動物の組織において、例えば全RNAの1%がメッセンジャーRNA/ポリA+RNAである。mRNA/ポリA+RNAはcDNAプローブ合成の最初のテンプレートを提供する材料であるので、非メッセンジャーRNA(リボソームRNA、運搬RNAなど)という複雑な背景に対し、微量からも得ることができる。したがって、本発明に従うテンプレートとして有用なRNAの量が、既知の方法の100〜1000分の1であるので、cDNAプローブ合成のための本発明の方法は有利である。
一実施形態では、蛍光標識したcDNAを生成する方法は、全細胞RNAのナノグラム単位の量を使用することを伴う。全RNAのそのように少ない量は、細胞メッセンジャーRNAのピコグラム単位の量に匹敵し、その場合mRNAはcDNAへの逆転写の実際のテンプレートである。本発明の別の実施形態は、病変ヒト組織から単離したRNA、病変組織から顕微解剖した腫瘍細胞、およびホルマリンで固定し、パラフィンに埋め込んだ病変組織試料蛍光標識したcDNAプローブを生成することを含む。
DNAマイクロアレイを使用した試料分析は、生物学的試料からポリヌクレオチドを抽出することにより行う。生物学的試料は任意の体液(血液、尿、唾液、粘液、胃液など)、培養細胞、生検、またはその他組織調整物から採取できる。試料由来のポリヌクレオチドを使用して、プローブとして、マイクロアレイ上の核酸に相補的な核酸配列を生成できる。マイクロアレイがcDNAからなる場合,アンチセンスRNA(複数または単数)が適切なプローブである。したがって、一態様では、mRNAを使用してcDNAを製造し、次いで蛍光ヌクレオチドの存在下でcDNAを使用して断片またはオリゴヌクレオチドaRNAプローブを製造する。蛍光標識したプローブをDNAマイクロアレイで培養することにより、プローブ配列がマイクロアレイのcDNAオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。別の態様では、プローブとして使用される核酸配列は、ハイブリダイゼーション技術において周知の制限酵素PCR技術およびOLIGOLABELING(登録商標)またはTRANSPROBE(登録商標)キット(Pharmacia)を使用して製造したcDNAオリゴヌクレオチド、断片、および、相補的またはアンチセンス配列を含む。
培養条件は、精密な相補的合致をみながら、または段階的にそれよりも低い相補性を有するようにハイブリダイゼーションが起こるように調整される。ハイブリダイズしなかったプローブを除去した後、スキャナを使用して蛍光のレベルとパターンを決定する。スキャンした画像を検査して、相補性の度合いと、マイクロアレイ上への各オリゴヌクレオチド配列の相対的存在度を決定する。全ての個別配列(この場合は遺伝子をコードする抗原)について、同時に、ハイブリダイゼーションの有無および量を測定するため、検出システムを使用してよい。このデータを、試料中の配列、突然変異、変異体、または多形型の、機能分析や大規模相関研究に使用することができる(Heller, R. A.等, Proc. Natl. Acad. Sci, 94:2150-55 (1997))。また、増殖非癌細胞よりも増殖癌細胞の表面に多く発現するポリペプチド抗原の同定にこのデータを使用できる。
5.2.11.2.発現レベル分析のためのその他技術
遺伝子の増幅及び/又は発現は、適切に標識されたプローブを用い、良く知られたサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201-5205 (1980))、ドットブロット法(DNA分析)、又はインシトゥハイブリッド形成法によって、直接的に試料中で測定することができる。あるいは、DNA二重鎖、RNA二重鎖、およびDNA−RNAハイブリッド二重鎖、またはDNA−タンパク質二重鎖を含む特定の二重鎖を認識できる抗体を使用してもよい。次いで抗体を標識し、アッセイを実行すると、二重鎖が表面に結合するので、表面に二重鎖が形成されることにより二重鎖に結合した抗体の存在を検出できる。
別法として、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば細胞または組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液の検定によって、測定することもできる。免疫組織化学的染色および/または試料の検定に有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、既に詳述したように、任意の哺乳動物で調整できる。
5.2.11.2.1.ポリペプチドの精製
ポリペプチドの形態は、培地又は宿主細胞の溶菌液から回収することができる。膜結合性であるならば、適切な洗浄液(例えばトリトン-X100)を用いて又は酵素的切断により膜から引き離すことができる。ポリペプチドの発現に用いられる細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤などの種々の化学的又は物理的手段によって破壊することができる。
ポリペプチドは、組換え細胞タンパク又はポリペプチドから精製することが望ましい。適切な精製手順の例である次の手順により精製される:すなわち、イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はDEAEなどのカチオン交換樹脂でのクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;IgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラム;及びポリペプチドのエピトープタグ形態を結合させる金属キレート化カラムである。この分野で知られ、例えば、Deutscher, Methods in Enzymology, 182 (1990);Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, シュプリンガー・フェアラーク(Springer-Verlag),ニューヨーク(1982)に記載されたような、多くのタンパク質精製方法を用いることができる。選ばれる精製過程は、例えば、用いられる生成方法及び特に生成される特定のポリペプチドの性質に依存する。
5.2.11.2.2.ポリペプチド抗原をコードする遺伝子の増殖
本発明は、特定の癌細胞で増幅され、それ故癌治療の標的として使用可能な遺伝子の同定に基づく。好ましい実施形態では、同定されたポリペプチド抗原コード化遺伝子は、増殖非癌細胞よりも増殖癌細胞表面に多く発現する。
原核生物および真核生物のゲノムは、2つの一見矛盾する要件を有する。1つは、遺伝子情報を元の形態に維持するDNAの保存および増殖であり、これは複数の世代に亘って安定した遺伝を確実に行うために必要である。一方、細胞または生物は絶え間ない環境の変化に適応できなければならない。適応のメカニズムは、遺伝子物質の質的または量的変更を含むことができる。質的変更は、DNA突然変異を含み、コード化配列の変更により構造的および/または機能的に異なるタンパク質ができる。遺伝子増幅は量的変更であり、完全なコード化配列、つまり遺伝子、の実数が増加し、その結果、転写に使用可能なテンプレートの数、移動可能な転写物の数、および最終的には増幅された遺伝子によりコードされるタンパク質の存在度が増加する。
遺伝子増幅現象とその背景にあるメカニズムは、複数の原核および真核培養システムにおいてインビトロで調査されてきた。遺伝子増幅を最も良く特徴付ける例には、濃度の異なる細胞障害剤メトトレキサート(MTX)を含む培地での真核細胞の培養を含む。MTXは葉酸類似体であり、酵素のジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)をブロックすることにより、DNA合成を妨害する。低濃度のMTXとの最初の接触の間に、殆どの細胞(>99.9%)が死滅する。少数の細胞が、大量のDHFR−RNAとタンパク質を生成することにより、MTXの濃度を増加しても生存および成長することができる。この過剰製造の基本は一本鎖DHFR遺伝子の増幅である。遺伝子のまた別の複写は、小さな過剰染色体(二重微小染色体)の形態の染色体外複写として、または結合した染色体複写として見出される。
遺伝子増幅は、多くの場合、細胞障害剤(細菌に対する抗体、および真核細胞のための化学療法剤)および新腫瘍性形質転換に対する耐性を発達させる。自然発生の、あるいは、ウイルスまたは化学的/環境的侵襲による真核細胞の形質転換は、通常、細胞の遺伝子材料の変化に関連している。ヒトの悪性腫瘍に見られる最も一般的な遺伝子的変化の1つは、p53タンパク質の突然変異である。p53は、固定相(G1)から複製相(S)への細胞の移行を制御し、このDNAの損傷があると移行を防ぐ。言い換えると、p53突然変異能を失くすことによる主な結果の1つは、DNA損傷、つまり遺伝子変化の蓄積および伝播である。新腫瘍性細胞に一般的な遺伝子変化の種類は、点変異の他に、増幅、および転座などの構造の全体的変化である。
DNA配列の増幅は、DHFR試験システムに表されるような、構造的要件を示すことができる。したがって、悪性腫瘍の特定のオンコジーンを増幅することは、悪性転換及び形質転換した表現型の維持のプロセスにおけるこれら遺伝子の原因的役割を指向するものである。最近の研究は、この表現型を支持するものである。例えば、bcl−2タンパク質は、特定の種類の非ホジキンリンパ腫で増幅されることが分かっている。このタンパク質は、アポトーシスを抑制し、新腫瘍性細胞の漸進的な蓄積をもたらす。成長因子レセプターの遺伝子ファミリーのメンバーは、様々な種類の癌において増幅されることが分かっており、これは、これらレセプターが過剰発現すると、成長因子の量に限界があることの、新主要細胞に対する影響が低減されることを示している。例としては、アンドロゲン欠乏療法中の再発性前立腺癌におけるアンドロゲンレセプターの増幅、および乳癌における成長因子レセプター相同ERB2の増幅を挙げることができる。最後に、細胞内シグナル伝達および細胞周期進行の制御に関与する遺伝子は、悪性転換の間に増幅する可能性がある。これは、様々な上皮およびリンパ球新腫瘍におけるbcl−Iおよびras遺伝子の増幅により説明される。
このアプローチ法は悪性転換に重要な遺伝子を同定できるので、これらの初期研究により、新腫瘍中に増幅されたDNA配列を同定することが可能であることが示された。ERB2の場合も、形質転換するタンパク質は腫瘍治療の新規で特異的な標的を表すので、治療的見地からの可能性を示すものである。
複数の異なる技術を使用して、増殖された遺伝子配列を示すことができる。癌細胞から調製された染色体塗布の、常套的な細胞遺伝学的分析は、全体的構造の変化、例えば転座、欠失及び逆位を同定するのに十分である。増幅された遺伝子領域は、複写を多く含む大領域を有するか、または染色体外物質として存在する場合のみ可視化される。細胞遺伝学は、特定の染色体変化の、特定の新腫瘍とが一貫して関連していることを示すための第一の技術であるが、管理が容易なDNA配列の同定および単離には不十分である。もっと最近になって開発された比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)技術は、新腫瘍にゲノム増幅現象が広く起こっていることを示した。腫瘍および正常DNAを分裂中期の正常細胞に同時にハイブリダイズし、ゲノム全体を画像分析によりスクリーニングし、さらに頻繁に腫瘍に存在するDNA配列を得ることができる。(WO 93/18,186; Gray等, Radiation Res., 137:275-289 [1994])。スクリーニング方法として、この種の分析は、様々なヒト新腫瘍において大量の再発性単位複製配列(増幅されたDNAの伸張部)を明らかにした。CGHは、DNAの増幅された伸張部の同定において、従来の細胞遺伝学的分析よりも感度が高いが、標準的な分子遺伝子技術による単位複製配列中のコード化配列の同定および単離を高速で行うことはできない。しかしながら、CGHを効果的に使用して、増殖非癌細胞よりも増殖癌細胞の表面に多く発現するポリペプチド抗原を同定することができる。
遺伝子増幅を検出するための最も感度の高い方法は、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)に基づくアッセイである。これらのアッセイは、微量の腫瘍DNAを開始の際の材料に使用し、感度が非常に高く、配列決定などのその後の分析に使用可能で、スループットの大きい分析に適したDNAを提供する。
上述のアッセイは互いに相反するものではなく、新腫瘍中の増幅の同定に組み合わせて使用されることが多い。細胞遺伝学的分析およびCGHは、増幅領域のゲノム全体を調査するための代表的なスクリーニング方法である一方、PCRに基づくアッセイはコード化配列、つまり増幅領域の遺伝子の最終同定に最も適している。
本発明によると、ポリペプチド抗原をコードするこのような遺伝子は、胸部、肺、結腸、前立腺、能、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、精巣、卵巣、子宮などを含む様々な原発腫瘍、腫瘍、または腫瘍細胞系由来のDNAを、健常ドナー由来のプールしたDNAと比較することにより、定量的PCR(S. Gelmini等, Clin. Chem., 43:752 [1997])により同定することができる。定量的PCRは、TaqMan(登録商標)器具(ABI)を使用して実行できる。遺伝子に特異的なプライマーおよび蛍光発生的プローブが、DNAのコード化配列に基づいて設計される。
5.2.11.2.3.組織分布
本明細書の遺伝子増幅アッセイの結果を、さらなる研究によって、例えば、様々なヒト組織中のmRNA発現を決定することによって、検証することができる。
上述のように、様々な組織中の遺伝子の増幅及び/又は発現は、適切に標識されたプローブを用い、良く知られたサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201-5205 (1980))、ドットブロット法(DNA分析)、又はインシトゥハイブリッド形成法によって、直接的に試料中で測定することができる。あるいは、DNA二重鎖、RNA二重鎖、およびDNA−RNAハイブリッド二重鎖、またはDNA−タンパク質二重鎖を含む特定の二重鎖を認識できる抗体を使用してもよい。
別法として、様々な組織における遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば細胞または組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液の検定によって、測定することもできる。免疫組織化学的染色および/または試料の検定に有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の哺乳動物で調整できる。抗体を製造する一般的な技術、およびノーザンブロット法に特異的なプロトコル、およびインシトゥハイブリッド形成法は本明細書に提供されており、および/または当技術分野において周知である。
よって、上述したように、他の細胞型よりもある細胞型に多く発現するポリペプチド抗原の同定に使用できる多数の技術が現在存在している。好ましい態様では、これらの技術を使用して、増殖非癌細胞よりも増殖癌細胞の表面に多く発現し、よって癌治療の同定、特徴付け、および創造の標的として使用できるポリペプチド抗原を同定することができる。
以下の実施例は例示のみを目的としており、本発明の範囲をいかなる意味でも限定するものではない。
本明細書で引用した全ての特許および非特許文献の開示内容を、参照により本明細書に包含する。
6.実施例
実施例で言及されている全ての他の市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC登録番号により以下の実施例及び明細書全体を通して特定されている細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、VAである。特に記さない限り、本発明は上記及び以下の教科書に記載されたような組換えDNA技術の標準的な手法を用いた:Sambrook等, 上掲; Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology(Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y., 1989); Innis等, PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications(Academic Press, Inc., N.Y., 1990); Harlow等, Antibodies: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, 1988); Gait, Oligonucleotide synthesis(IRL Press, Oxford, 1984); Freshney, Animal Cell Culture, 1987; Coligan等, Current Protocols in Immunology, 1991。
6.1.実施例1:HERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体
6.1.1. HERCEPTIN(登録商標)の精製
HERCEPTIN(登録商標)(huMAb4D5-8, rhuMAb HER2, 米国特許第5,821,337号)(1バイアルは440mgの抗体を含む)を50mLのMES緩衝液(25mMのMES、50mMのNaCl、pH5.6)に溶解した。試料をカチオン交換カラム(セファロースS、15cm×1.7cm)に充填した。次いでカラムを同じ緩衝液(5カラム分の容量)で洗浄した。緩衝液のNaCl濃度を200mMまで上昇させることにより、HERCEPTIN(登録商標)を溶出した。抗体を含む断片をプールして10mg/mLに希釈し、リン酸カリウムを50mm、NaClを50mM、EDTA2mMを含むpH6.5の緩衝液に透析した。
6.1.2.SPPを使用したHERCEPTIN(登録商標)の修飾
ジチオピリジル基に導入するため、精製したHERCEPTIN(登録商標)抗体を、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノアート(SPP)で修飾した。NaCl(50mM)およびEDTA(1mM)を含む44.7MLのリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)50mM中の抗体(376.0mg、8mg/ML)をSPP(2.3mLのエタノールにおいて5.3モルに相当)で処理した。室温のアルゴン下で90分間培養した後、35mMのクエン酸ナトリウム、154mMのNaCl、2mMのEDTAで平衡化したSephadexG25カラムにより反応混合物をゲル濾過した。断片を含む抗体をプールし、検定した。抗体の修飾度を上述のように決定した。修飾された抗体(HERCEPTIN(登録商標)−SPP−Py)の回収率は、1抗体につき337mg(89.7%)であり、4.5遊離可能2−チオピリジン基結合を有していた。
6.1.3.DM1によるHERCEPTIN(登録商標)−SPP−Pyの抱合
修飾した抗体(遊離可能2−チオピリジン基337.0mg、9.5mol)を上述のクエン酸ナトリウム緩衝液35mM、pH6.5で希釈し、最終濃度を2.5mg/mLにした。3.0mMのジメチルアセタミド(DMA、最終反応混合物中3%v/v)中のDM1(1.7に相当、16.1モル)を次いで抗体溶液に添加した。DM1の構造を図1に示す。図1の「R」基は臨界状態ではなく、例えば、リンカーと化学的結合を形成できる様々な基により占有されることができる。本反応に使用されたDM1を、さらに安定化しているS−S形態として保存し、HERCEPTIN(登録商標)抗体と抱合させるためにSH形態に還元した。反応は、アルゴン下の室温で20時間進行した。HERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体の構造を図2に示す。
反応物を、クエン酸ナトリウム35mM、NaCl154mM、pH6.5で平衡化したセファクリルS300ゲル濾過カラム(5.0cm×90.0cm、1.77L)に充填した。流量は5.0mL/分であり、65断片(それぞれ20.0mL)を回収した。大天井は断片番号47(図3)周辺に集中している。大天井は単量体HERCEPTIN(登録商標)−DM1を有する。断片44〜51をプールし、検定した。252nmおよび280nmでの吸光度を測定することにより抗体毎に結合したDM1薬分子の数を決定したところ、1抗体分子当たり3.7薬物分子であった。
6.1.4.インビトロでのHERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体の抗増殖効果
細胞表面にレベル3+のHER2(細胞当たり約2百万のHER2分子)を発現するSK−BR3細胞をHERCEPTIN(登録商標)、HERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体、対照のmAb RITUXAN(登録商標)−またはRITUXAN(登録商標)−DM1複合体で処理し、これら処置の細胞増殖に対する影響をモニターした。図4に示すように、HERCEPTIN(登録商標)−DM1による細胞成長阻害の範囲 は、HERCEPTIN(登録商標)によるものよりも劇的に大きく、一方、対照のRITUXAN(登録商標)−抗体は細胞成長を阻害しなかった。RITUXAN(登録商標)−DM1は細胞成長を阻害したが、阻害は高濃度でのみ起こった。例えば、RITUXAN(登録商標)−DM1複合体は1g/mlまではそれ程成長を阻害しなかった。対照的に、、HERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体は0.01g/mlを超えたところから非常に効果的となり、細胞成長を大きく阻害し始め、0.1g/mlで平坦状態に達した。RITUXAN(登録商標)−DM1複合体は、HERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体と同等の細胞成長阻害のレベルを達成するために、約100倍の濃度を必要とした。また、これは、それぞれの複合体のIC50値(細胞成長を50%阻害するのに必要な濃度)に100倍の差異があることを意味する。
6.2.実施例2:HERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体の毒性の不足
以下の実験により、HERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体に関連するインビボでの毒性が不足していることが示された。
6.2.1.実験設計
HERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体を、若年成体のメスカニクイザル(Macaca fascicularis; Primate Products, Inc., Miami Florida)に対し、週に1度4週の間投与した。サルの平均体重は3キログラム(2.7〜3.4キロの範囲)であった。合計8匹のサルを2匹ずつ4組に分け、研究に使用した。試験したHERCEPTIN(登録商標)−DM1の投与量は2、10および30mg/kgであった。対照群には溶媒のみ(セレン酸ナトリウム(10mM)、スクロース(100mg/ml)およびTween20(0.1%)を含む水溶緩衝液(pH5.0))を、治療対象動物に用途されるものと同じ投与量で投与する。サルを、限定しないが、神経毒性および心毒性を含む様々な毒性について分析する。以下の表2は、例示的実験の実験設定の詳細を具体的に示すものである。
Figure 2005517155
6.2.2.動物の管理
6.2.2.1.ハウジング
動物は、USDA動物福祉法(8 CFR parts 1, 2および3)に従い、隔離期間の間、高架のステンレス鋼性のケージに2匹1組で収容した。遠隔測定による評価のため、手術後実験期間を通して動物を個別に収容した。
6.2.2.2.食餌
承認された霊長類用食品番号5048(ミズーリ州セントルイス、PMI Nutrition International)の新鮮な食餌を毎日1回与えた。与えられる食餌の量は、室内の動物の平均体重の約4重量%であった。食餌の補助として、果物と野菜を週3回与えた。本実験中に使用した各フィード・ロットの分析は製造者によって行われた。
6.2.2.3.水
水は、自動給水システム(ニュージャージー州ウェストフィールド、Elizabethtown Water Company)により制限なく与えられた。水の分析がニュージャージー州ウェストフィールドのElizabethtown Water Company(Raritan-East Millstone工場)により行われ、水がEPA連邦安全飲用水法の規定(40 CFR Part 141)に定められた基準に合致するものであることが確認されている。加えて、水の試料を実験施設の各ルームから半年毎に回収し、これらに使用について化学的および微生物学的水分析を外注にて行った。
6.2.2.4.環境条件
12時間毎の昼/夜周期を自動タイマーにより制御した。毒物動態学のための血液試料を回収するために、昼間の周期は必要に応じて中断した。
1日に2回温度を測定して記録し、最大可能範囲までの特定の範囲内に維持した。温度の範囲は17℃から29℃であった。
毎日1回相対湿度をモニターして記録し、最大可能範囲までの特定の範囲内に維持した。湿度の範囲は20%から80%であった。
6.2.3.HERCEPTIN(登録商標)−DM1投与
6.2.3.1.投与経路
適切な大きさのステンレス鋼の投与針および注射器を使用し、伏在静脈または橈側皮静脈に挿入された留置カテーテル内に、試験および対照物を30〜60秒の時間をかけて静脈内注射により投与した。留置カテーテルは、使用に先立ち生理食塩水で洗浄し、静脈内に適切に挿入されていることを確認した。投与後、カテーテルを約2mlの生理食塩水で洗浄した。投与量は直近の体重を使用して計算した。
6.2.3.2.投与の頻度、期間およびレベル
1週間に1回4週にわたり(0日目、7日目、14日目および21日目)試験物を投与した。投与レベルは、第1群−0mg/kg;第2群−2mg/kg;第3群−10mg/kg、および第4群−30mg/kg、であった。全ての投与において投与量は6ml/kgの容量であった。
6.2.4.動物の外科的前処置
6.2.4.1.遠隔プローブの移植
手術に先立つ日、手術日、および手術後5日間、抗体(DNAジャイレースインヒビターであるBaytril(登録商標)5mg/kg)を筋肉内に導入することによりサルに予防的処置を講じた。手術前合計12時間以上18時間以内(手術期間も含む)の間は動物には食餌を与えなかった。麻酔の前に動物をケタミン(10mg/kg)およびアトロピン(0.05mg/kg)を処置した。麻酔は、イソフルレンにより誘起および維持された。動物は手術期間全体を通して麻酔下に維持された。麻酔後、適当な腹部及び鼠径部領域の体毛を剃り、外科的移植処置の準備をした。左鼠径部領域および腹腔を小さく切開した。遠隔装置/送信機(ミネソタ州セントポール、Data Sciences International)を腹腔に配置し、網または腹膜粘膜表面(動物に依存する部分)のいずれかに抱合することにより固定する。遠隔プローブの血圧カテーテルを腹部筋肉組織を通して体外に出し、左鼠径部領域まで皮下を通した。血圧カテーテルを左大腿動脈に挿入し、その際カテーテルの先端を腹部大動脈に配置し、縫合により固定した。また、電気泳動のリードを体外に出し、適切な解剖領域まで皮下を通した。次いで両方のリードを縫合した。
6.2.4.2.手術後の処置
鎮痛剤として、非ステロイド抗炎症剤であるフルニキシンメグルミン(1mg/kg、筋肉内投与)を術後直ちに(麻酔からの覚醒の前に)投与した。試験監督者および/またはスタッフの獣医が必要と認めるフルニキシンメグルミンの追加投与を行った。外科的処置当日の術後期間の間、麻酔から覚醒するまで動物を観察し、一晩食餌を与えた。術後5日間サルを抗生物質(Baytril(登録商標)5mg/kg、筋肉内投与)で予防処置した。投与開始まで、サルに最低14日間の回復期間を与えた。腹部縫合が開く危険を排除するため、術後7から10日間は動物の取り扱いは行わなかった。
6.2.5.要約と結論
本実験は、メスカニクイザルに対し、週に1回4週間に亘り、静脈内注射によりHERCEPTIN(登録商標)を2、10、30mg/kg投与したときの潜在的毒性(例えば心毒性および神経毒性)効果を評価するために設計された。対照群(2匹)には溶媒(コハク酸ナトリウム(10mM)、スクロース(100mg/ml)およびTween20(0.1%)を含む水溶性緩衝液(pH5.0))を実験動物に投与されたものと同じ投与量で与えた。
試験前に2回、および試験期間にわたり週に1回、物理的観察を行った。試験前に2回、試験期間に亘り週に1回、および終了前に体重を記録した。毒物動態学的分析のための血液試料は、試験物の投与日と試験終了の期間に選択された感覚で回収した。抗体分析のための血液試料は、試験前、14日目の投与前、および試験終了時に回収した。試験前に2回、ならびに5日目、12日目、19日目および26日目にクレアチン・キナーゼ・イソエンザイムおよび心臓トロポニン(トロポニンIおよびトロポニンT)を含む臨床化学および血液学検査を行った。また、クレアチン・キナーゼ・イソエンザイムおよび心臓トロポニンのための試料を0日目、7日目、14日目、および21日目の投与後6時間後に同時に採取した。
実験前に2回の24時間に亘る遠隔心血管検査を行った。試験物投与期間には、動物を、試験前約2時間、投与後4時間の間1分毎に、投与後4時間から24時間の間30分毎に、および投与週間の残りの期間は1時間ごとにモニターした。試験前に2度、および試験終了時に、マニュアルの9リード心電図を記録した。心エコー図による測定は、試験前に3度、ならびに5日目、12日目、19日目および26日目に行った。
4週間の処置後、生き残った動物を全て屠殺した。全ての動物について、完全な巨視的検死検査および選択された組織の組織病理学的評価を行った。心臓および神経組織を各動物から回収し、分析した。
試験中、HERCEPTIN(登録商標)−DM1に関連する死亡はなかった。HERCEPTIN(登録商標)−DM1に関連する臨床的発見または体重への影響はなかった。終了時に記録された複数リード心電図にも、試験を通じて頻繁に記録された単一リード遠隔心電図にも、HERCEPTIN(登録商標)−DM1に関連する毒性の証拠はなかった。各投与後5日間心エコー図により複数の2D/Mモード心臓の容積およびドップラー血流変数を測定したが、いずれの投与量(2、10または30mg/kg)においても、動物に進行性の左心室機能低下はなかった。投与量2、10または30mg/kgにおいて、血圧値(平均、伸縮時、および拡張時)にHERCEPTIN(登録商標)−DM1の影響は認められなかった。血液学的値に対するHERCEPTIN(登録商標)−DM1関連の影響の明らかな証拠はなかった。心臓障害の特異的マーカーであるクレアチンキナーゼMBおよび心臓トロポニンIおよびTの臨床化学的値または血清レベルにHERCEPTIN(登録商標)−DM1に関連する影響はなかった。HERCEPTIN(登録商標)−DM1による治療に起因する巨視的発見はなかった。しかしながら、30mg/kgという高い投与量で治療した動物については、HERCEPTIN(登録商標)−DM1に関連する巨視的発見は、坐骨神経および迷走神経における巨視的神経変性的変化、ならびに骨格筋への二次的影響を含んでいた。しかしながら、30mg/kgというレベルは、予想される治療レベルの10倍の増加を示した。さらに、ケージにおける観察に基づいた場合、HERCEPTIN(登録商標)−DM1による治療後、神経学的または上皮性細胞に関連する(例えば胃腸、皮膚、感染などの)変化は起こらなかった。
結果として、週に1度4週に亘り投与量2、10、または30mg/kgのHERCEPTIN(登録商標)−DM1を静脈内注射により投与して治療したメスカニクイザルにおいて、心臓毒性の臨床的評価、心臓障害の特異的血清マーカーの測定、および心臓組織の光顕微鏡による検査に基づく証拠はなかった。週に1度4週に亘り投与量30mg/kgのHERCEPTIN(登録商標)−DM1を静脈内注射により投与して治療したメスカニクイザルの、末梢神経を観察した。しかしながら、上述したように、30mg/kgというレベルは、予想治療レベルの約10倍の上昇を示した。さらに、HERCEPTIN(登録商標)−DM1による治療後、神経学的または上皮性細胞に関連する(例えば胃腸、皮膚、感染などの)変化は見られなかった。
6.3.実施例3:HERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体は正常ヒト細胞または成長停止細胞に非毒性である
以下の実験により、HERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体は正常ヒト細胞および成長停止細胞に非毒性であることが示された。
6.3.1.実験設計
Clonetics/BioWhittaker(カリフォルニア州サンディエゴ)より正常なヒト胸部上皮細胞(HMEC)、小気道上皮細胞(SAEC)および成人上皮ケラチノサイト(NHEK)を入手した。In Vitro Technologies(メリーランド州ボルティモア)からヒト肝細胞を入手した。アメリカンSK−BR−3ヒト乳癌細胞をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(メリーランド州ロックヴィル)より入手した。使用した培養培地は:すべてClonetics/BioWhittakerから入手したMEGM(胸部上皮細胞成長培地)、SAGM(小気道上皮細胞成長培地)およびKGM(ケラチノサイト成長培地)と、肝細胞培養培地(In Vitro Technologies)である。10%の熱で非活性化したウシ胎児血清と2mMのI−グルタミン(すべてGIBCO/BRL(ニューヨーク州グランドアイランド)より入手)を補った高グルコースのDMEM/Ham’s F-12(50対50)でSK−BR−3細胞を培養した。
細胞を次のような濃度で96ウェルのマイクロタイタ培養プレートに配置した:SK−BR−3を1ウェル当たり2×10;HMEC、SAECおよびNHEKを1ウェル当たり10;およびヒト肝細胞を1ウェル当たり3.5×10(コラーゲンで被覆したプレートにIn Vitro Technologiesにより予め配置されたもの)配置し、インキュベーター内で(37℃、5%のCO)一晩付着させた。翌日、抗体のみ(HERCEPTINまたはRITUXAN)、あるいは抗体−メイタンシノイド複合体(HERCEPTIN(登録商標)−DM1またはRITUXAN(登録商標)−DM1)を0.1ng/mlから10mg/mlの範囲に亘る濃度で加えた。3日間培養した後、培地を除去し、細胞単層をPBSで一度洗浄し、クリスタル・バイオレット染料(0.5%クリスタル・バイオレット、20%メタノール)で染色した。
成長停止細胞上での実験では、SK−BR−3胸部腫瘍細胞を、1ウェル当たり5×10(10%のFBSを含む培地に残る細胞について)または1ウェル当たり2×10(成長を停止させる細胞について)の密度の培養培地を完全に補充した96ウェルのマイクロタイタプレートに配置した。一晩培養した後、培地を除去し、10%のFBSを補充した培地に置換して正常な細胞成長をさせるか、または0.1%のFBSを含む培地に置換して細胞周期の停止を開始した。3日間の培養を行って完全に成長を停止させた後、培地を再び除去し、10%のFBSか、あるいは0.1%のFBSとHERCEPTINまたは抗体―DM1複合体(0.1ng/ml〜10g/ml)を含む培地に置換した。次いで細胞を3日間培養し、単層を上述のようなクリスタル・バイオレット染料で染色した。
すべての実験について、クリスタル・バイオレト染料を除去した後、プレートを一晩空気乾燥させた。次いで染料を0.1Mクエン酸ナトリウム−エタノール(50:50)、pH4.2で溶出し、プレートを波長540nmのSLT340ATCプレートリーダーで読み取った。各処理群を4回反復試験し、平均O.D.540+/−標準誤差で、または処理を行わなかった対照細胞と比較した細胞増殖に対して(平均+/−s.e.)データを表した。
6.3.2.HERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体は正常細胞に対して非毒性である
HERCEPTIN(登録商標)−DM1によりSK−BR−3胸部腫瘍細胞を治療した結果、約0.005mg/ml(33pM)のEC50で投与量に依存する細胞障害性が見られた(図4参照)。HERCEPTINのみでは、SK−BR−3細胞成長に中程度の低下(35%)が生じた。対照の抗体−メイタンシノイド複合体であるRITUXAN(登録商標)−DM1は、試験した高濃度(10μg/ml)でのみ毒性を示した。対照的に、HERCEPTIN(登録商標)−DM1は正常なヒト乳腺上皮細胞(図5A)、正常なヒト肝細胞(図5B);正常なヒト表皮性ケラチノサイト(図5C)または正常なヒト小気道上皮細胞(図5D)に影響を及ぼさなかった。
6.3.3.HERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体は成長停止細胞に対して非毒性である
上述のように、SK−BR−3胸部腫瘍細胞をHERCEPTIN(登録商標)−DM1で治療した結果、投与量依存性の細胞障害性が見られた(図4)。図6Aは、HERCEPTIN(登録商標)−DM1によりSK−BR−3胸部腫瘍細胞を治療した結果、投与量に依存する増殖の減少が見られたことを示す。HERCEPTINのみではSK−BR−3細胞増殖に中程度の減少が見られ、一方対照の抗体−メイタンシノイド複合体であるRITUXAN(登録商標)−DM1では試験した高濃度(1および10μg/ml)でのみ細胞増殖の減少が見られた。
細胞成長の停止に繋がる血清欠乏期の後、HERCEPTIN(登録商標)−DM1によりSK−BR−3細胞を治療したところ、細胞障害反応は起こらなかった。成長を停止したSK−BR−3胸部腫瘍細胞は、HERCEPTIN(登録商標)−DM1(または高投与量のRITUXAN(登録商標)−DM1)細胞障害性に対し、試験した高投与量(10μg/ml)においてさえ、完全に耐性であった(図6B)。加えて、上述したように、ヒト肝細胞は抗体−メイタンシノイドによる死滅に非感受性であった。肝細胞は非分割細胞であるので、これらの結果はHERCEPTIN(登録商標)−DM1が非分割細胞に対して何の影響力も持たないという発見をさらに支持するものである。
「DM1」と命名されたメイタンシノイドの構造を示す。DM1の構造において、「R」は、選択されたリンカーと化学的結合を形成できる様々な基により占有される。好ましくは、「R」はSH基か、または保護されたその誘導体であり、N-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPP)などのリンカーとS−S結合を形成する。 HERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体の構造を示す。 セファクリルS300ゲル濾過カラムにおけるHERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体の溶出特性を示す。 インビトロでのSK−BR3細胞に対するHERCEPTIN(登録商標)およびHERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体の抗増殖効果を示す。対照として、非処理のモノクローナル抗体であるRITUXAN(登録商標)またはRITUXAN(登録商標)−DM1複合体を使用した。 正常ヒト胸腺上皮細胞がHERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体によって死滅しないことを示す。 正常ヒト肝細胞がHERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体によって死滅しないことを示す。 正常ヒト表皮性ケラチノサイトがHERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体によって死滅しないことを示す。 小気道上皮細胞がHERCEPTIN(登録商標)−DM1複合体によって死滅しないことを示す。 図6AおよびBは、成長停止細胞がHERCEPTIN(登録商標)−DM1に非感受性であることを示す。

Claims (36)

  1. 癌治療の標的として使用できる細胞表面におけるポリペプチド抗原の同定方法であって、増殖する非癌細胞の表面よりも増殖癌細胞の表面に多く発現するポリペプチド抗原を同定し、それにより前記ポリペプチド抗原を同定することを含む方法。
  2. 前記ポリペプチド抗原が、大部分の種類の増殖する非癌細胞の表面よりも、前記増殖癌細胞の表面に多く発現する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ポリペプチド抗原が、全ての種類の増殖する非癌細胞の表面よりも、前記増殖癌細胞の表面に多く発現する、請求項1に記載の方法。
  4. 前記ポリペプチド抗原が、増殖する非癌細胞の表面よりも、増殖していないか、または増殖速度の遅い非癌細胞の表面に多く発現する、請求項1に記載の方法。
  5. 前記ポリペプチド抗原が、大多数の種類の増殖する非癌細胞の表面よりも、大部分の種類の、増殖していないか、または増殖速度の遅い非癌細胞の表面に多く発現する、請求項1に記載の方法。
  6. 前記ポリペプチド抗原が、全ての種類の増殖している非癌細胞の表面よりも、大部分の種類の、増殖していないか、または増殖速度の遅い非癌細胞の表面に多く発現する、請求項1に記載の方法。
  7. 前記増殖癌細胞の表面、および増殖していないか、または増殖速度の遅い細胞表面における前記ポリペプチド抗原の発現レベルが、殆ど同じである、請求項1に記載の方法。
  8. 前記ポリペプチド抗原が、前記増殖癌細胞の表面よりも、増殖していないか、増殖速度の遅い細胞の表面に多く発現する、請求項1に記載の方法。
  9. 前記増殖する非癌細胞の表面よりも増殖癌細胞の表面に多く発現するポリペプチド抗原を同定するステップが、マイクロアレイ分析を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
  10. 癌の治療に有用な細胞障害性化合物の製造方法であって:
    (a)増殖する非癌細胞の表面よりも増殖癌細胞の表面に多く発現するポリペプチド抗原を同定すること;
    (b)前記ポリペプチド抗原に結合する抗体を製造すること;および
    (c)前記抗体に対し、少なくとも1つの抗有糸分裂化合物を結合させること
    により、前記細胞障害性化合物を製造する方法。
  11. 前記ポリペプチド抗原が、前記増殖非癌細胞の表面よりも、増殖していないか、増殖速度の遅い非癌細胞の表面に多く発現する、請求項10に記載の方法。
  12. 前記少なくとも1つの抗有糸分裂化合物がメイタンシノイドである、請求項10に記載の方法。
  13. 前記抗体が、抗体断片、モノクローナル抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項10に記載の方法。
  14. 前記抗体が前記ポリペプチド抗原に特異的に結合する、請求項10に記載の方法。
  15. 前記抗体が、抗体依存性細胞媒介細胞障害性(ADCC)または相補体媒介性細胞障害性(CDC)を誘発する能力を実質的に有しない、請求項10に記載の方法。
  16. (a)増殖する非癌細胞の表面よりも前記癌細胞の表面に多く発現するポリペプチド抗原を同定すること;
    (b)前記ポリペプチド抗原に結合する抗体を製造すること;
    (c)前記抗体に対し、少なくとも1つの抗有糸分裂化合物を結合させて、細胞障害性化合物を調製すること;および
    (d)前記癌細胞に前記細胞障害性化合物に接触させることにより、その増殖を阻害することを含んでなる、癌細胞の増殖を阻害する方法。
  17. 前記ポリペプチド抗原が、前記増殖する非癌細胞の表面よりも、増殖していないか、増殖速度の遅い非癌細胞の表面に多く発現する、請求項16に記載の方法。
  18. 前記少なくとも1つの抗有糸分裂化合物がメイタンシノイドである、請求項16に記載の方法。
  19. 前記抗体が、抗体断片、モノクローナル抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項16に記載の方法。
  20. 前記抗体が前記ポリペプチド抗原に結合する、請求項16に記載の方法。
  21. 前記抗体が、抗体依存性細胞媒介細胞障害性(ADCC)または相補体媒介性細胞障害性を誘発する能力を実質的に有さない、請求項16に記載の方法。
  22. 哺乳動物の癌治療法であって:
    前記哺乳動物に対し、(i)増殖非癌細胞の表面よりも癌細胞表面に多く発現するポリペプチド抗原に結合する抗体、および(ii)前記抗体に結合した少なくとも1つの抗有糸分裂化合物を含む製薬的に有効な量の細胞障害性化合物を投与し、前記哺乳動物における前記癌を効果的に治療する方法。
  23. 前記哺乳動物に対し、付加的に化学療法剤を投与することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
  24. 外科的処置をさらに含む、請求項22に記載の方法。
  25. 前記哺乳動物がヒトである、請求項22に記載の方法。
  26. 前記ポリペプチド抗原が、前記増殖非癌細胞の表面よりも、増殖していないか、または増殖速度の遅い非癌細胞の表面に多く発現する、請求項22に記載の方法。
  27. 前記少なくとも1つの抗有糸分裂化合物がメイタンシノイドである、請求項22に記載の方法。
  28. 前記抗体が、抗体断片、モノクローナル抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項22に記載の方法。
  29. 前記抗体が前記ポリペプチド抗原に対し特異的に結合する、請求項22に記載の方法。
  30. 前記抗体が、抗体依存性細胞媒介細胞障害性(ADCC)または相補体媒介性細胞障害性(CDC)を誘発する能力を実質的に有さない、請求項22に記載の方法。
  31. 前記抗体が、増殖非癌細胞の表面よりも増殖癌細胞の表面に多く発現するポリペプチド抗原に結合する、抗体に結合した抗有糸分裂化合物を含む組成物。
  32. 前記ポリペプチド抗原が、増殖する非癌細胞の表面よりも、増殖していないか、または増殖速度の遅い非癌細胞の表面に多く発現する、請求項31に記載の組成物。
  33. 前記抗有糸分裂化合物がメイタンシノイドである、請求項31に記載の組成物。
  34. 前記抗体が、抗体断片、モノクローナル抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項31に記載の組成物。
  35. 前記抗体が、前記ポリペプチド抗原に対して特異的に結合する、請求項31に記載の組成物。
  36. 前記抗体が、抗体依存性細胞媒介細胞障害性(ADCC)または相補体媒介性細胞障害性(CDC)を誘発する能力を実質的に有さない、請求項31に記載の組成物。
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