JP2005512566A6 - ThermoanaerobacterthermohydrosulfuricusDNAポリメラーゼI変異体による核酸標識 - Google Patents

ThermoanaerobacterthermohydrosulfuricusDNAポリメラーゼI変異体による核酸標識 Download PDF

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Abstract

Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricusのDNAポリメラーゼまたはそのフラグメントとアミノ酸配列において少なくとも80%の同一性を有し、Tts Pol Iの720位またはΔTts Pol Iの426位またはTts DNAポリメラーゼIに対して示された相同な位置のアミノ酸が改変されており、そしてDNA合成におけるヌクレオチド類似体および天然塩基の組み込みが改変されていない酵素に比べて改善されている、酵素的に活性なDNAポリメラーゼまたはその活性フラグメント。

Description

発明の背景
技術分野
Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricus(Tts)DNAポリメラーゼはクローニングされており、大腸菌で発現され、精製されている。最近、米国特許(米国特許第5,744,312号)がAmersham Life Science, Inc.に付与されている。このポリメラーゼの顕著な特徴は、DNA依存DNAポリメラーゼ活性の他に、RNA-依存DNAポリメラーゼ活性、逆転写酵素活性(米国特許第5,744,312号)を触媒する能力である。このポリメラーゼは、37-65℃という範囲の温度で最適に機能し、60℃で最大活性となる。この酵素の熱安定性と組み合わせたこれらの活性により、以下考察されるような幾つかの利点が得られる。この酵素の数種の変異体は、DNA配列決定での有用性、第一鎖cDNA合成、RT-PCRでの使用、および鎖置換増幅のために作成された。
関連技術の説明
細菌、ウイルス、古細菌の仲間の種々の生体から単離したDNAポリメラーゼおよび逆転写酵素(Rt)は、分子生物学の分野で種々の応用にうまく使用されている。これらの生体の増殖温度は極度に低い温度から高温までにわたる。それらの生体から得られる酵素の応用には、クローニング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(米国特許第4,683,195号, Mullis et. al.)、DNA配列決定、変異誘発、ゲノムライブラリーの構成、およびミクロおよびマクロアレイのcDNA標識のような核酸標識がある。
DNAポリメラーゼは、DNA合成中、非天然塩基の組み込みを差別化する。殆どの天然のDNAポリメラーゼはまた、鋳型分子としてRNAを用いることはない。しかし、逆転写酵素の天然鋳型はRNAおよびDNAの両方である。DNAポリメラーゼおよびRTの天然のブロックは、4種のデオキシリボヌクレオチド(dATP、dGTP、dCTPおよびdTTP)である。殆どの天然由来ポリメラーゼおよび逆転写酵素は殆どのヌクレオチド類似体に対し組み込み効率が低い。該類似体は、ddNTPのような天然のdNTPの任意の変異体、rNTP、dNTPの結合体(色素または他のもの)およびddNTPである。この選択は宿主の生存に重要である。非天然塩基の頻繁な組み込みは、その後の複製ラウンドの障害となり、最終的にはその生体を死に至らしめる。もしポリメラーゼがその宿主に非天然塩基を組み込むとすれば、その生体はその生体の生存がおびやかされるような極限状態にある。しかし、その現象により、極限状態での生存に必要な該生体の変異が生じる。そのため、宿主から直接かまたは組み換え体によるか何れかにより単離される、野生型アミノ酸配列を有する天然ポリメラーゼが、非天然ヌクレオチドに対し識別作用を示すことは希ではない。それにも関わらず、非常に高濃度の類似体の存在下では、天然ポリメラーゼは、DNA合成中、僅かではあるが、これらの類似体を組み込む。現在、この特徴は、核酸標識にDNAポリメラーゼまたはRTを使用する応用全てにおいて開発されつつある。結果として、天然のポリメラーゼまたはRTを使用し作成したプローブの特異活性は一般的に低い。標識に天然酵素を使用するという現在のアプローチには多くの技術的困難がある。例えば、これら天然の酵素により蛍光標識したヌクレオチドの組み込みは、該反応で過剰量のこれらの標識ヌクレオチドを用いても僅かに改善されるだけであり得る。しかし、これは、種々の問題を生ずる。該反応後に未使用の過剰標識ヌクレオチドを除くというのは一般的に困難であり、ノイズに対するシグナルの比が低くなるという深刻な問題が生ずる。更には、僅かな標識のために大量の、通常希な原料物質が用いられる。これらの問題とは別に、作成されている全プローブの収率が犠牲となっている。これは、色素-dNTPのような組み込まれたdNTP類似体から伸張を行う野生型ポリメラーゼおよびRTの識別性によるものである。更に、これは、野生型ポリメラーゼおよび逆転写酵素に備わった特徴でもある。
より高い特異活性のプローブは種々の応用に有用である。これには、色素-dNMPを容易に付加しその後に伸張することが必要となる。色素-dNMPの付加および伸張の繰り返しラウンドにより、より高い特異活性を有するプローブが形成される。天然のポリメラーゼおよびRTには、dNTP類似体または色素-dNTPの付加および伸張の両方に識別性があり、作成された該プローブの特異活性は低い。
上記考察が示唆するように、DNA合成中のヌクレオチド類似体の組み込みがよりよくなるようにポリメラーゼの天然の特性を変える方法が望ましい。例えば、ローリングサークル増幅および一塩基多型検出のような種々の核酸応用で標識ヌクレオチドを組み込む能力を改善することは有用となるだろう。この点を以下でより詳細に取り組む。
本発明の要約
従って、DNA合成中のヌクレオチド類似体および天然塩基の組み込みを改善する酵素的に活性なDNAポリメラーゼ、および該DNAポリメラーゼまたはその活性フラグメントを使用する色素標識dNTPを組み込む方法を提供することを目的とする。直接のRNA配列決定を行うための該DNAポリメラーゼを用いる方法を提供すること、およびDNAまたはRNA鋳型由来のポリヌクレオチドをDNAまたはRNAプライマーで標識するためのキットであって該DNAポリメラーゼを含む該キットを提供することが本発明の更なる目的である。
上記目的は、DNAポリメラーゼまたはその活性フラグメントの一態様に関連する、本発明により達成される。該DNAポリメラーゼまたはその活性フラグメントは、Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricusのDNAポリメラーゼまたはそのフラグメントとアミノ酸配列において少なくとも80%の同一性を有し、Tts Pol Iの720位またはΔTts Pol Iの426位もしくはTts DNA ポリメラーゼIに対して示された相同な位置のアミノ酸が改変されており、そしてDNA合成におけるヌクレオチド類似体および天然塩基の組み込みが改変されていない酵素に比べて改善されている。1つの実施態様では、ヌクレオチド類似体はdNTP、ddNTPおよびrNTP類似体である。第2の実施態様では、dNTP、ddNTPおよびrNTP類似体は色素が結合しているか、またはビオチンが結合している。第3の実施態様では、色素-結合ヌクレオチド類似体の色素はローダミンまたはシアニン誘導体色素である。第4の実施態様では、ローダミン色素はR110、R6G、TMRまたはRoxである。第5の実施態様では、シアニン誘導体色素はCy3、Cy3.5、Cy5.0またはCy5.5である。第6の実施態様では、DNAポリメラーゼは、Tts Pol Iの720位にまたはΔTts Pol Iの426位にアスパラギン酸を有し、それは、アルギニンに置換される。
本発明の関連の態様は、Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricusのDNAポリメラーゼまたはそのフラグメントを利用する方法に関し、ここで、該ポリメラーゼなどは、Tts Pol Iの720位またはΔTts Pol Iの426位またはTts DNAポリメラーゼIに対して示された相同な位置のアミノ酸が改変されており、37-65℃の反応温度の範囲でCy3およびCy5色素結合dNTPを組み込むためのDNA合成におけるヌクレオチド類似体および天然塩基の組み込みが改変されていない酵素に比べて改善されている。
更なる態様では、本発明は、直接のRNA配列決定を行うためのDNAポリメラーゼを用いる方法に関し、その一方、更なる態様は、DNAまたはRNA鋳型由来のポリヌクレオチドをDNAまたはRNAプライマーで標識するためのキットであってDNAポリメラーゼを含む該キットの提供に関する。
本発明の上記目的および特徴は、本発明の以下の詳細な説明を添付の図面と合わせて読めばより完全に明らかとなるであろう。
図面の簡単な説明
図1(配列番号1)は、Tts DNAポリメラーゼIの全長のアミノ酸配列である。全長の組み換え体酵素は、天然5'-3'DNA鋳型依存性(mediated)DNAポリメラーゼおよび5'-3'エキソヌクレアーゼの両方の機能を有し(米国特許第5,744,312号に開示)、参照アミノ酸配列としての役割をする。加えて、該酵素は逆転写活性を保有する。
図1A(配列番号2)は、Tts DNAポリメラーゼIの全長のDNA配列である(米国特許第5,744,312号に開示)。
図2(配列番号3)は、ΔTts DNAポリメラーゼIのアミノ酸配列である。5'-3'エキソヌクレアーゼ欠損(exo-)は、該酵素のアミノ末端をトランケートすることにより形成する(米国特許第5,744,312号に開示)。四角で囲った部分は、全長型酵素から欠失させたアミノ酸領域である。
図2Aは、ΔTts DNAポリメラーゼIのDNA配列(配列番号4)を示す(米国特許第5,744,312号に開示)。
図3は、ΔTts DNAポリメラーゼIのF412Y変異体のアミノ酸配列を示す(米国特許第5,744,312号に開示)。四角で囲った部分は、全長型酵素から欠失させたアミノ酸領域である(ΔTtsの412位は全長酵素の706位に相当し、この位置のフェニルアラニンはddNTPに対する識別に関与する。F412Y改変はddNTPの組み込みを容易にする)。(配列番号5)
図3Aは、ΔTts DNAポリメラーゼIのF412Y変異体のDNA配列を示す(配列番号6)。(米国特許第5,744,312号)
図4は、ΔTts F412YD426R変異体ポリメラーゼのアミノ酸配列を示す。四角で囲った部分は、全長型酵素から欠失させたアミノ酸領域である。ΔTtsの412位は全長酵素の706位に相当し、この位置のフェニルアラニンはddNTPに対する識別に関与する。ΔTtsの426位は全長酵素の720位に相当する。dNTP、rNTPまたはddNTPの色素結合体の組み込みおよび伸張の両方に対する識別は、この位置のアスパラギン酸残基に依存する。変異は、オリゴヌクレオチドに基づく部位特異的突然変異誘発技術により誘導し、Tts F412YバックグラウンドでΔTts D426Rの改変が導入された。
図5は、ΔTts D426Rポリメラーゼのアミノ酸配列を示す。四角で囲った部分は、全長型酵素から欠失させたアミノ酸領域である。ΔTtsの426位は全長酵素の720位に相当する。dNTP、rNTPまたはddNTPの色素結合体の組み込みおよび伸張の両方に対する識別は、この位置のアスパラギン酸残基に依存する(配列番号8)。
図6は、種々の微生物由来の野生型PolI配列のアライメントを示す。PolIファミリーのポリメラーゼの"フィンガー領域"辺りと相同な位置をここにに示す。Richardson, "DNA polymerase from Escherichia coli," Procedures in Nucleic Acid Research, Cantoni and Davies editors, Harper and Row, New York, pp. 263-276 (1966)およびScopes, Protein Purification, Springer-Verlag, New York, New York, pp. 46-48 (1994)参照。
図7は、ΔTts D426R型のΔTts PolIによる色素(Cy 3.5)-dCTPおよびdCTPの組み込みの改善を示す。
図8は、AMV RT、ΔTtsおよびΔTtsF412Y Pol Iによる、直接のRNA配列決定を示す。
図9は、Cy3およびCy5-dCTPを用いるcDNA標識でのΔTtsF412YD426Rパフォーマンスおよびマイクロアレイ適用での有用性を示す。
図10は、Cy3およびCy5-dUTPを用いるcDNA標識でのΔTtsF412YD426Rパフォーマンスおよびマイクロアレイ適用での有用性を示す。
図11は、RNA鋳型を用いる、一塩基プライマー伸張(SnuPE)におけるΔTts F412YまたはΔTtsF412YD426R Pol Iの有用性を示す。色素標識または非標識のddA、ddT、ddGおよびddCをここで示す。
図12は、ローリングサークル増幅反応におけるΔTts DNAポリメラーゼの有用性を示す。
図13は、DNA依存性DNA合成の際の色素標識ヌクレオチドの組み込みを示す(ΔTts、ΔTts F412Y、ΔTts F412YD426R)。
図14aおよびbは、Cy3/Cy5-dCTPを用いるcDNA標識におけるΔTtsF412YD426Rパフォーマンスを示す。広範囲の温度で遺伝子発現を正確に検出している(図14aおよびb)。
本発明の詳細な説明
本発明は、蛍光ヌクレオチド類似体による核酸標識のための、Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricusの天然DNA polIおよび変異型DNA polIの有用性について開示する。cDNA標識、ローリングサークル増幅、RNA配列決定およびRNAにおける一塩基プライマー伸張のような適用における有用性も含む。
この本発明では、我々は、DNA合成でヌクレオチド類似体をよりよく組み込むべく、ポリメラーゼの天然の特性を変化させる方法を案出した。天然のポリメラーゼ/逆転写酵素に導入し得る修飾であって、蛍光標識ヌクレオチドの組み込みを促進する該修飾を開示する。本発明では、特定ヌクレオチド類似体の組み込みの改善に関与する、ポリメラーゼ中の一アミノ酸残基を特定した。アミノ酸残基の改変により、色素標識ヌクレオチドの組み込みおよびそのヌクレオチドから伸張するための酵素の能力が非常に高められる。この特徴は、DNAポリメラーゼでヌクレオチド類似体を組み込むことにより標識する蛍光を利用する任意の核酸の用途に有用となる。それらの応用には、遺伝子発現のマイクロアレイ分析のような種々の応用におけるDNA合成中の標識が含まれる。我々は、直接のRNA配列決定、ローリングサークル増幅、DNAまたはRNA鋳型の何れかを用いる一塩基プライマー伸張による一塩基多型検出(SNP)における、幾種かの変異型酵素の有用性も示す。この発明は、野生型および変異型酵素およびそのDNA配列およびアミノ酸配列およびそれらを作成するために使用するベクターに関する。
本発明の第1の態様は、Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricusの天然DNA polIの変異型であって、図1(米国特許第5,744,312号)に示すアミノ酸配列との同一性が少なくとも80%あるポリメラーゼの配列を有する該変異型の作成および精製に関する。
図1は、特許(米国特許第5,744,312号)に開示のTtsのゲノムDNAの1056-3674位(配列番号1)にコードされているアミノ酸である参照配列を示す。この酵素を、従前に開示のように遺伝子操作し、天然酵素にある関連の5'-3'エキソヌクレアーゼ機能を除き、そして図2に参照配列として示す。
参照容易化のため、図1、2および3を示す(米国特許第5,744,312号に開示)。図1は、天然5'-3'DNA鋳型依存性DNAポリメラーゼ機能および5'-3'エキソヌクレアーゼの両方を保有する全長の組み換え体酵素が、図1に示すような参照アミノ酸配列としての役割をすることを示す。この文書に開示の、全長の酵素をTts DNA PolIと称する。
図2は、アミノ末端をトランケートした5'-3'エキソヌクレアーゼ欠損(exo-)型酵素である(米国特許第5,744,312号に開示)。以下、この型の酵素をΔTts酵素と称する。トランケートした酵素のナンバリングは、トランケート型の最初のアミノ酸から開始する。更に、ある場合では、この文書でアミノ酸のナンバリングは、比較を容易にするため、トランケートされていない全長の酵素をも示している。
図3は、412位のO-ヘリックス領域でF(フェニルアラニン)からY(チロシン)へ改変した、エキソヌクレアーゼ欠損のトランケート型酵素であり、参照として示している(米国特許第5,744,312号に開示)。
図4は、ΔTtsF412Y型酵素の426位のアスパラギン酸(D)残基をアルギニン(R)に改変させた点変異の導入が見られる酵素である。この型の酵素を、以下、ΔTtsF412YD420Rと称する。
図5は、ΔTtsF412Y型酵素の412のチロシン(Y)残基をフェニルアラニン(F)に戻した、ΔTtsD426Rと称する、他の型の酵素を示す。一文字表記のアミノ酸は、文献で使用される従来のコードによるものである。
米国特許第5,744,312号は、cDNA調製、鎖置換増幅(Walker et al., "Isothermal in vitro amplification of DNA by a restriction enzyme/DNA polymerase system," Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:392-396 (1992))およびDNA配列決定用途における天然Tts、ΔTts、ΔTtsF412Yの有用性を示す。
本発明の応用は、DNA合成での非天然塩基類似体の組み込みにおける変異型Tts酵素の有用性を示す。幾つかの例には、非標識かまたは色素標識の何れかのdNTP、ddNTPおよびrNTPの組み込みがある。DNA合成は、DNA鋳型を仲介(DNAポリメラーゼ活性)するかまたはRNA鋳型を仲介(逆転写酵素活性)するか何れかであり得る。DNAまたはRNAを仲介するcDNAプローブは、ミクロアレイ応用での必要性が高まりつつある。本発明は、DNA合成中の核酸標識であって、遺伝子発現の研究用のマイクロアレイの応用で特定の強度を有する該標識における酵素変異体の有用性を示す。
ddNTPまたはddNTP類似体の組み込みは、DNAまたはRNAの配列決定のような応用に非常に有用である。本明細書では、ΔTtsF412YおよびΔTtsF412YD426R型酵素は、直接のRNA配列決定のような応用の可能性があり、一塩基プライマー伸張のモニターという可能性があることを示す。例えば、F412Y変異型は、レトロウイルス逆転写酵素に比べて良好な配列情報を狭い領域のRNAから得ることができる。DNAまたはRNAバックボーンの標的配列の誘因のための一塩基プライマー伸張(SnuPE)の応用での数種の酵素型の有用性を立証すべく、実験結果をまた示す。
この発見は、一塩基多型検出、DNAまたはRNAでの変異検出を含む応用に有用である。RNAレベルでの直接の変異検出は、多くの観点で有用である。その応用の例は、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)RNA中の薬物耐性変異を、薬物治療中の患者より決定することである。HIV逆転写酵素およびプロテアーゼインヒビターの耐性変異の直接の原因は、RNAゲノム中でこれらのタンパク質をコードする遺伝子の変異である。更に、ヒトおよび高等生物では、欠損mRNAを生ずるRNAの不適当なスプライシングが主な疾患で関連している。RNAのような限定された範囲の直接のRNA配列決定、またはSnuPEを用いる変異検出による不適当なスプライス化RNAの直接の検出は、ΔTtsF412YまたはΔTtsF412RD426R変異体で行うことができる。これらは、進展しつつある現在のアプローチとは異なる。レトロウイルスRTは良好な配列決定酵素ではないため、現在のアプローチでは、RT-PCRステップが、配列決定を行う前に必要である。
変異検出に加えて、Tts PolI変異体は、RNAコピー数の算出に使用され得る。これは、HIV研究や遺伝子発現研究で有用となる。色素ターミネーターを組み込む酵素の能力およびcDNA合成中に色素標識dNTPおよびddNTPを組み込む可能性は、HIV-RNAのコピー数の算出に、ここでは、ウイルス力価の算出に、利用することができる。ΔTtsD426Rによる色素標識ヌクレオチド組み込みのこの特性は、ミクロまたはマクロアレイでのmRNA定量化および遺伝子発現研究にも有用であり得る。現在用いられている他のストラテジーは、1)ウイルス性RNAおよびmRNAの算出に用いる定量RT-PCR、2)ウイルスおよびmRNA定量のための分枝化DNA/ヌクレアーゼ切除である。
ローリングサークル増幅(RCA)のような鎖置換増幅におけるTts酵素変異体の有用性もまた本発明で示される。
実施例
以下の実施例は、該DNAポリメラーゼの有用性を解説する役割をし、それは、解説目的にのみ使用し、どんな場合でも添付の特許請求の範囲に記載の発明を制限するために用いるべきではない。
実施例1
ΔTts F412YD426R変異体(図4)の作成
米国特許第5,744,312号に開示のΔTts F412Y変異体を保有する発現ベクターPLS-3は本発明の開始プラスミドとして役割をする。プライマーは、ΔTts pol Iの残基426をコードするコドンをアスパラギン酸からアルギニンに変わるように設計した。フォワードプライマー“gggctttctcgacgccttaaaatatca 配列番号9)(422位から430位をコードする)および相補配列を用い、点変異を導入した。アミノ酸Rに使用した新しいコドンは“cgc”であった。該プライマーをアニールさせ、Pfu DNAポリメラーゼを用い、4種すべてのdNTPの存在下サイクリング反応(cycling reaction)を行い、新しい鎖を作成した。最終産物を大腸菌株の形質転換に使用し、コロニーをDNA配列決定により個々にスクリーニングし、望ましい変異を有するクローンを選択した。
実施例2
ΔTtsD426R変異体(図5)の作成
上記実施例1に示したΔTtsF412YD426R変異体を有するプラスミドを含むクローンは、ΔTtsD426R変異体の作成のための開始材料としての役割をした。上記と同様のストラテジーを用いた。互いに相補的な2つのプライマーを、目的であるオリジナルのフェニルアラニン“F博c基がΔTtsF412YD426Rの412位に導入されるように設計した。フォワードプライマーGCCGTAAATTTTGGCATAATATATGGC(配列番号10)(ΔTtsF412YD426Rポリメラーゼの409位から417位に位置する)および相補配列を用い、“Y博c基が変わるように設計した。フェニルアラニンのコドン“TTT”を用い、改変するよう遺伝子操作した。
実施例3
種々の微生物由来の野生型PolI配列のアライメント(図6)
PolIファミリーのポリメラーゼのフィンガー領域中の相同な位置をここで示す。全長のTts Pol Iの720位(ΔTtsの426位)に相当するアミノ酸のアライメントに注目すべきである。四角で囲った領域は、酵素間の相同領域を示す。ddNTPに対する差別化におけるTts PolIの706に相当する位置のフェニルアラニンの役割を参照のため示し、またこれは文献にも開示されている。本特許の特許請求の範囲は、全長Tts DNAポリメラーゼIの720位のアミノ酸の役割を含む。このアミノ酸の改変の結果、色素標識ヌクレオチド類似体の組み込みが容易となる。この位置での陰性荷電のアミノ酸は、色素標識ヌクレオチドの組み込みに対する差別化を強める。アルギニンまたはリシンまたは他の巨大な残基のような陽性荷電への改変の結果、dNTPまたはddNTP結合体に対する差別化が低下する。色素ヌクレオチド標識のための他の天然ポリメラーゼの有用性の他に、グルタミン酸またはアスパラギン酸以外の残基を天然で保有するポリメラーゼをもまた本発明で開示する。
実施例4
アッセイ条件
図7に示す実験は、色素-CTP (Cy3.5-dCTP)およびdCTPの組み込みの相対的効率を調べたものである。3つの酵素調製物ΔTts、ΔTtsF412Y、ΔTtsF412YD426Rを実験で分析した。
Tts PolIの全ての変異型での、逆転写酵素(RNA依存性DNAポリメラーゼ)およびDNAポリメラーゼ(DNA依存性DNAポリメラーゼ)反応のための最適化1X緩衝性組成物は以下の通りである。Tris, pH 8.0 (50mM)、KCl (40 mM)、MgCl2 (3 mM)、DTT (1mM)、DNAまたはRNA鋳型(必要なだけ)、プライマー (5から50フェムトモル)、酵素0.5から1ユニット、dNTPまたはdNTP類似体 (必要に応じて濃度を変える)。標準的な合成反応では、全長の合成をモニターするとき、4種類すべてのdNTP 50μMが含まれる。典型的な反応体積は10μlである。反応温度は、実験の必要性に応じて37-60℃に維持した。反応時間は、単一のヌクレオチドの組み込みについての研究では、10分に制限した。時間は、実験目的の必要に応じて変え、時折、より長い伸張をモニターする場合には1時間までとした。
図7に示す実験は、色素-CTP (Cy3.5-dCTP)およびdCTPの組み込みの相対的効率を調べたものである。3つの酵素調製物ΔTts、ΔTtsFY、ΔTtsF412YD426Rを実験で分析した。
図7では、グロビンmRNAを鋳型として用いた。5' P-33標識化プライマー(DNA 25-mer)を該鋳型にアニールさせた。反応は、Cy3.5-dCTPまたはdCTPの何れか単独で濃度を変えて行った。唯一のdNTPを入れることにより、その次には正しくヌクレオチドが単独で組み込まれた。単一のヌクレオチド“C”の組み込みを調べ得る鋳型プライマーの配列は以下の通りである。
Figure 2005512566
Figure 2005512566
レーン1、2、3および4は20、2、0.2、および0.02μMのdNTPまたは色素-dNTPを含む。標識のないレーンは酵素がなく、スターティングP-33ラベルプライマーの精度(integrity)を示す。一塩基伸張産物の定量は、酵素中のDR改変によりどのような結果が生ずるかを確認する1つの方法である。"P"は放射標識プライマーを示す。"P+1"はヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体が1つ伸張した産物を示す。P+1は、色素-dNTP結合体と共にゆっくりと移動する。Cy3.5 dCMPを含むバンドは、dCTP伸張産物に比してゆっくりとゲルを移動することに注目すべきである。パネルA、BおよびCを比較すると、レーン1から4は、DからRへの、酵素のアミノ酸バックボーンの改変により、天然ヌクレオチドの効率が改善することを示す。P+1産物は、DR改変した酵素によりdCTPの1/10-1/100未満の濃度で生ずる。同様に、パネルA'、B'およびC'の比較から、DRの改変により、色素-CTPの組み込みが改善することがわかる。本質的に、組み込みは、野生型ポリメラーゼに比べると、低い濃度(1/10未満)で生ずる。DR酵素は、0.2μM(Cy3.5 dCTP)のような低い濃度またはもっと低い濃度でCy3.5 dCTPを組み込むことができることが証明された。この点をD酵素と比較すると、これらの低い濃度では組み込みが比較的悪くなった。そして、その結果は、この変異により、パネルB'のTts F412Yに見られる低下した色素-CTPの組み込みが増加することを示す。この実験では、鋳型-プライマーは、放射標識プライマーにアニールしたmRNAである。伸張は、天然ヌクレオチドとしてP+1をおよび色素標識ヌクレオチドとしてP+1*を定量的にモニターする。これは、cDNAプローブ標識のためのマイクロアレイ応用における使用が有望であることを示す最初の知見である。
実施例5
AMV RT、ΔTtsおよびΔTtsF412Y Pol Iによる直接のRNA配列決定(図8)
グロビンmRNAを鋳型として用いた。50-mer DNAをプライマーに用いた。Amersham Pharmacia Thermo Sequenase kitの標準の配列決定コンポーネントを配列決定に用いた。P-33標識ターミネーター(ddNTP)をAmersham Pharmacia Biotechから入手した。配列決定反応後産物を6%尿素-ポリアクリルアミドゲルで分離した。AMV、Avian Myeloblastosis virus RT。
実施例6
Cy3およびCy5-dCTPを用いたcDNA標識におけるΔTtsF412YD426Rのパフォーマンスおよびマイクロアレイ適用における有用性(図9)
典型的な20μl反応物、Cy3またはCy5反応物には、1X反応緩衝液(50 mM Tris, pH 8.0、1mM DDT、40 mM KC、100 μM dA、GおよびTTPおよび該反応物に応じて、それぞれ50 μmのCTPおよびCy3-dCTPまたはCy5-dCTP)中、1μgのヒト骨格筋mRNA、オリゴdT(25)、およびランダムなノナマーのプライマーおよびTtsFYDRポリメラーゼ酵素が含まれていた。既知配列組成物の対照mRNA(APBiotech Inc.)が種々の濃度含まれており、ダイナミックレンジおよび遺伝子発現比対照としての役割をした。Tts反応は50℃からの温度で行った。鋳型RNAをアルカリ処理により加水分解し、HEPESで中和した。
プローブをMultiScreen filters (Millipore)で精製し、スペクトロフォトメトリーで定量した。ヒトcDNA遺伝子標的を含むガラススライドを、等量(それぞれ30 pmol)のCy3およびCy5標識cDNAプローブとハイブリダイズさせた。スライドは、GenePix(登録商標)(Axon)スキャナーを用いスキャンし、ImageQuantソフトウェアを用い定量した。該図は、プローブの正確な表示、ほぼ均一なCy3およびCy5の組み込み、およびCy3対Cy5反応における示差的な遺伝子発現を示す。
実施例7
Cy3およびCy5-dUTPを用いるcDNA標識におけるΔTtsF412YD426Rパフォーマンスおよびマイクロアレイ応用における有用性(図10)
典型的な20μl反応物、Cy3またはCy5反応物には、1X反応緩衝液(50 mM Tris, pH 8.0、1mM DDT、40 mM KC、100 μM dA、GおよびCTPおよび該反応物に応じて、それぞれ50 μmのTTPおよびCy3-dUTPまたはCy5-dUTP)中、1μgのヒト骨格筋mRNA、オリゴdT(25)、およびランダムなノナマーのプライマーおよびTtsFYDRポリメラーゼ酵素が含まれていた。既知配列組成物の対照mRNA(APBiotech Inc.)が種々の濃度含まれており、ダイナミックレンジおよび遺伝子発現比対照としての役割をした。Tts反応は50℃からの温度で行った。鋳型RNAをアルカリ処理により加水分解し、HEPESで中和した。
プローブをMultiScreen filters (Millipore)で精製し、スペクトロフォトメトリーで定量した。ヒトcDNA遺伝子標的を含むガラススライドを、等量(それぞれ30 pmol)のCy3およびCy5標識cDNAプローブでハイブリダイズさせた。スライドは、GenePix(登録商標)(Axon)スキャナーを用いスキャンし、ImageQuantソフトウェアを用い定量した。該図は、プローブの正確な表示、ほぼ均一なCy3およびCy5の組み込み、およびCy3対Cy5反応における示差的な遺伝子発現を示す。
実施例8
RNAの標的塩基の調査のためのSnuPE、一塩基プライマー伸張でのΔTtsF412YまたはΔTtsF412YD426R Pol Iの有用性(図11)
レーン1はdNTP(パネルA、B、CおよびDではG、A、TまたはC)である。レーン2は非標識のddNTPである。レーン3は色素標識ddNTP(リンカーアームの長さ11炭素原子)である。レーン4は色素標識ddNTP(リンカーアームの長さ4炭素原子)である。色素は、4-炭素原子または11-炭素原子連結基の何れかによりddG、ddA、ddTおよびddCに結合したFAM、R6G、TMRおよびRoxのローダミンクラスのものである。
単一のヌクレオチド"G"の組み込みを調べ得る鋳型プライマーの配列は以下のものである。
Figure 2005512566
Figure 2005512566
単一のヌクレオチド"A"の組み込みを調べ得る鋳型プライマーの配列は以下のものである。
Figure 2005512566
Figure 2005512566
単一のヌクレオチド"T"の組み込みを調べ得る鋳型プライマーの配列は以下のものである。
Figure 2005512566
Figure 2005512566
単一のヌクレオチド"C"の組み込みを調べ得る鋳型プライマーの配列は以下のものである。
Figure 2005512566
Figure 2005512566
Tts変異体による色素-ddNTPまたはddNTPの効率を測定するアッセイは以下の通り測定した。ddNTPまたは色素-ddNTPを除く全ての反応コンポーネントを含む混合物を以下のように調製した。該反応物は以下のコンポーネントを含んでいた。10μl反応体積中、Tris, pH 8.0 (50 mM)、KCl (40 mM)、MgCl2、(3 mM)、DTT (1 mM)、dNTPまたは色素dNTP 0.2 μM (レーン1、2、3および4)、5’標識p-33プライマー(0.2 pimol)、mRNAグロビン鋳型(100 ng)、酵素。
鋳型プライマーアニーリングは、該コンポーネントを60℃で10分間処理し、その後、ゆっくりと37℃にまで冷却し、適当なアニーリングをするように、行った。反応は10分間適当な温度で行った。反応は、6μlのホルムアミド停止溶液を加えることにより停止した。サンプルを分離し、16%変性ポリアクリルアミドゲルで分析した。濡れているゲルをWhatmann Filterペーパー上で乾燥させ、オートラジオグラフィーまたはPhosPhor Imagerを用い描写した。
実施例9
RCA反応における何れかのΔTtsの有用性
等温性ローリングサークル増幅反応は以下の通り行った。鋳型サークルDNAはプライマー1(該サークルに相補的)および2(該サークルと同じ極性)を用い、該酵素を含む全てのコンポーネントを以下のように合わせた。該反応は、55℃で1時間行い、反応物は、続く、1%アガロースゲルでの分離により分析した。20μl反応物は、Tris pH 8.0 (50 μM)、KCl (40 μM)、MgCl2 (3 μM)、DTT (1 μM)およびdNTP (400 μM)、プライマー1および2(それぞれ1μM)、鋳型および酵素20ユニットを含んだ。Tth polI反応は70℃で行い、Bst DNA pol反応は55℃で行った。
実施例10
DNA依存性DNA合成(ΔTts、ΔTtsF412Y、ΔTtsF412YD426R)における色素標識ヌクレオチドの組み込み(図13)
プライマー伸張を、特定のDNA鋳型DNAプライマーを用いモニターした。
この実験では、色素-CTP(Cy3.5-dCTP)の組み込みの相対的効率を調べた。3つの酵素調製物ΔTts、ΔTtsF412Y、およびΔTtsF412YD426Rをテストした。
以下に示す特定のDNAは鋳型の役割をした。P-33標識プライマー(DNA 25mer)を該鋳型にアニールさせた。反応は、Cy3.5-dCTPまたはdCTPの何れか単独で種々濃度を変えて行った。たった1つのdNTPが含まれることにより、その次には正しくヌクレオチドが単独で組み込まれ得ることとなった。単一のヌクレオチド"C"の組み込みを調べ得る鋳型プライマーの配列を以下に示す。
Figure 2005512566
Figure 2005512566
レーン1、2、3、4および5は、20、2、0.2、0.02および0μM色素-dCTPを含む。レーン5は酵素なしであり、それは、スターティングp-33ラベルプライマーの精度を示すためのものである。一塩基伸張産物の定量は、該酵素中のDR改変によりどのような結果が生ずるかを確認する1つの方法である。"P"は放射標識プライマーを示す。"P+1"は単独のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体により伸張した産物を示す。P+1は色素-dNTP結合体と共にゆっくりと移動する。Cy3.5-dCMPを含むバンドは、dCMP伸張産物に比してゆっくりとゲルを移動することに注目すべきである。パネルA、BおよびCを比較すると、レーン1から4は、DからRへの、酵素のアミノ酸バックボーンの改変により、天然ヌクレオチドの効率が改善することを示す。P+1産物は、DR改変した酵素により色素-dCTPの1/10-1/100未満の濃度で生ずる。本質的に、組み込みは、野生型酵素に比べて非常に低い濃度の色素-dNMPで生ずる。DR酵素は、0.2μMのような低い濃度またはもっと低い濃度でCy3.5-dCTPを組み込むことができることが証明された。この点をD酵素(野生型)と比較すると、これらの低い濃度では組み込みが比較的悪くなった。そして、その結果は、この変異により、パネルBのTts F412Yに見られる低下した色素-CMPの組み込みが劇的に増加することを示す。これらの観察により、DNA鋳型依存性合成中の標識においてのDR変異体の有用性もまた示される。
実施例11
Cy3/Cy5-dCTPを用いるcDNA標識におけるΔTtsF412YD426Rパフォーマンス;広範囲の反応温度における遺伝子発現の正確な決定を示す
20μl反応物、Cy3またはCy5反応物には、1X反応緩衝液(50 mM Tris, pH 8.0、1mM DDT、40 mM KC、100 μM dA、GおよびTTPおよび該反応物に応じて、それぞれ50μmのCTPおよびCy3-dCTPまたはCy5-dCTP)中、1μgのヒト骨格筋mRNA、オリゴdT(25)、およびランダムなノナマーのプライマーおよびTtsFYDRポリメラーゼ酵素が含まれていた。既知配列組成物の対照mRNA(APBiotech Inc.)が種々の濃度含まれており、ダイナミックレンジおよび遺伝子発現比対照としての役割をした。Tts反応は37、42、45、50、55、60および65℃からの温度で行った。Superscript IIの場合、cDNA合成反応は42℃で行った(Life Technologies)。鋳型RNAをアルカリ処理により加水分解し、HEPESで中和した。
プローブをMultiScreen filters (Millipore)で精製し、スペクトロフォトメトリーで定量した。ヒトcDNA遺伝子標的を含むガラススライドを、等量(それぞれ30 pmol)のCy3およびCy5標識cDNAプローブとハイブリダイズさせた。スライドは、GenePix(登録商標)(Axon)スキャナーを用いスキャンし、ImageQuantソフトウェアを用い定量した。標準化係数2(Cy3およびCy5の励起効率における相違による)を、観察された未処理蛍光シグナル比に適用した。図は、Cy3およびCy5反応における遺伝子発現の相違を正確に決定し示す。例えば、全ての温度範囲を通じて、標準化した観察された比は目的の比に非常に近く、これにより、ΔTtsF412YD426Rを用いて広い温度範囲で遺伝子発現の違いを正確に決定する能力が示された。
実施例12
タンパク質精製プロトコール
ΔTtsF412YD426RまたはΔTtsD426R pol I精製スキーム
以下は、初期の酵素評価研究のため、LB培地1Lから回収した細胞に適用したプロトコールである(湿細胞(wet cell)4-6gの典型的な収率)。発現ベクターを保有する大腸菌細胞は、オリジナルの特許に記載のような標準的なプロトコールにより増殖させ、回収し、使用の準備ができるまで凍結させた。細胞溶解は、湿細胞のペースト1gあたり溶解緩衝液(50 mM Tris pH 8.0、1 mM EDTA、50 mM NaCl、10 % グリセロールおよび1 mg/ml リゾチームを含む)5mlを加えることにより行った。細胞を40分間氷上に静置した。完全に再懸濁し、該細胞を、15,000 PSIでFrench Pressに通過させた。溶解後、細胞抽出物を70℃で10分間処理し、宿主の酵素を不活性化した。次いで、該抽出物を、12,000rpmで30分間遠心分離することにより、透明にした。次いで、該酵素画分を含む該懸濁液を更なる精製に使用した。
次いで、該溶解物を、事前に緩衝液A(Tris 50mM (pH 7.5)、EDTA 1mM、NaCl 150 mM、10% グリセロール)で平衡化させたQ-Sepharose HPカラムにロードした。該カラムを緩衝液Aで4回洗浄した。該緩衝液の流速は1分間あたり8-10mlであった。このステップにより核酸を選択的に結合させ、該酵素を含むフロースルーを次のカラムに使用した。該フロースルーサンプルを小さな体積となるように濃縮し、平行流(tangential flow)およびダイアフィルトレーション装置により脱塩し、次のカラム用に調製した。該サンプルを、緩衝液B(Tris 50mM (pH 7.5)、EDTA 1mM、10% グリセロール)で事前に平衡化した二番目のQ-Sepharose HPカラムにロードした。該カラムは、更に3倍のカラム体積の緩衝液Bで洗浄し、結合していないタンパク質を除去した。ΔTts F412YD426R pol I調製物を、NaClを用い0-30%の塩勾配を構成することにより、溶出させた。該溶出サンプルを緩衝液C(30mM リン酸ナトリウム、30 mM ギ酸ナトリウム、60 mM 酢酸ナトリウム、1 mM EDTAおよび10% グリセロール)で透析した。該透析したサンプルを、事前に緩衝液Cで平衡化したResource Sカラムにロードした。該カラムを、更に3倍のカラム体積の緩衝液Cで洗浄し、結合していないタンパク質を除去した。ΔTtsF412YD426R Pol Iは、NaClを用いた0-50%の塩勾配で特異的に溶出した。このサンプルは、精製された酵素調製物を含んでいた。
同様の精製プロトコールをΔTtsD426R Pol Iに用いた。
Tts DNAポリメラーゼIの全長のアミノ酸配列である。 Tts DNAポリメラーゼIの全長のDNA配列である。 ΔTts DNAポリメラーゼIのアミノ酸配列である。 ΔTts DNAポリメラーゼIのDNA配列を示す。 ΔTts DNAポリメラーゼIのF412Y変異体のアミノ酸配列を示す。 ΔTts DNAポリメラーゼIのF412Y変異体のDNA配列を示す。 ΔTts F412YD426R変異体ポリメラーゼのアミノ酸配列を示す。 ΔTts D426Rポリメラーゼのアミノ酸配列を示す。 種々の微生物由来の野生型PolI配列のアライメントを示す。 ΔTts D426R型のΔTts PolIによる色素(Cy 3.5)-dCTPおよびdCTPの組み込みの改善を示す。 AMV RT、ΔTtsおよびΔTtsF412Y Pol Iによる、直接のRNA配列決定を示す。 Cy3およびCy5-dCTPを用いるcDNA標識でのΔTtsF412YD426Rパフォーマンスおよびマイクロアレイ適用での有用性を示す。 Cy3およびCy5-dUTPを用いるcDNA標識でのΔTtsF412YD426Rパフォーマンスおよびマイクロアレイ適用での有用性を示す。 RNA鋳型を用いる、一塩基プライマー伸張(SnuPE)におけるΔTts F412YまたはΔTtsF412YD426R Pol Iの有用性を示す。 ローリングサークル増幅反応におけるΔTts DNAポリメラーゼの有用性を示す。 DNA依存性DNA合成の際の色素標識ヌクレオチドの組み込みを示す。 Cy3/Cy5-dCTPを用いるcDNA標識におけるΔTtsF412YD426Rパフォーマンスを示す。 Cy3/Cy5-dCTPを用いるcDNA標識におけるΔTtsF412YD426Rパフォーマンスを示す。
【配列表】
Figure 2005512566
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Claims (10)

  1. Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricusのDNAポリメラーゼまたはそのフラグメントとアミノ酸配列において少なくとも80%の同一性を有し、Tts Pol Iの720位またはΔTts Pol Iの426位またはTts DNA ポリメラーゼIに対して示された相同な位置のアミノ酸が改変されており、そしてDNA合成におけるヌクレオチド類似体および天然塩基の組み込みが改変されていない酵素に比べて改善されている、酵素的に活性なDNAポリメラーゼまたはその活性なフラグメント。
  2. 該ヌクレオチド類似体がdNTP、ddNTPおよびrNTP類似体である、請求項1のポリメラーゼ。
  3. 該dNTP、ddNTPおよびrNTP類似体が色素結合した、またはビオチン結合したdNTP、ddNTPおよびrNTPである、請求項2のポリメラーゼ。
  4. 該色素結合したdNTP、ddNTPおよびrNTPがローダミンまたはシアニン誘導体色素である、請求項3のポリメラーゼ。
  5. 該ローダミン色素がR110、R6G、TMRまたはRoxである、請求項4のポリメラーゼ。
  6. 該シアニン誘導体色素がCy3、Cy3.5、Cy5.0またはCy5.5である、請求項4のポリメラーゼ。
  7. 該ポリメラーゼはTts PolIの720位またはΔTts PolIの426位のアスパラギン酸がアルギニンに置換されている、請求項1のポリメラーゼ。
  8. 請求項1のポリメラーゼを用いる、直接のRNA配列決定を行う方法。
  9. 請求項1のポリメラーゼを用いる、37-65℃の反応温度の範囲でCy3およびCy5色素結合dNTPを組み込む方法。
  10. 請求項1のDNAポリメラーゼを含む、DNAまたはRNAプライマーを用いDNAまたはRNA鋳型由来のポリヌクレオチドを標識するキット。
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