JP2005502050A - ナノ粒子の使用下での改善された質量スペクトル分析 - Google Patents
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Abstract
【課題】ナノ粒子の使用下での改善された質量スペクトル分析
【解決手段】本発明は、ナノ粒子の使用下での質量スペクトル分析、特にマトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型−質量分析(MALDI−TOF−MS)のための改善された方法において、アナライトをナノ粒子懸濁液に添加し、結合したアナライトを含む懸濁液を次いでMALDI試料キャリア上に直接析出させ、質量スペクトル分析法により調査する方法、並びにその方法のために適したナノ粒子に関する。
【選択図】図2
【解決手段】本発明は、ナノ粒子の使用下での質量スペクトル分析、特にマトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型−質量分析(MALDI−TOF−MS)のための改善された方法において、アナライトをナノ粒子懸濁液に添加し、結合したアナライトを含む懸濁液を次いでMALDI試料キャリア上に直接析出させ、質量スペクトル分析法により調査する方法、並びにその方法のために適したナノ粒子に関する。
【選択図】図2
Description
【発明の背景】
【0001】
本発明は、ナノ粒子の使用下での質量スペクトル分析、特にマトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型−質量分析(MALDI−TOF−MS)のための改善された方法において、アナライトをナノ粒子懸濁液に添加し、結合したアナライトを含む懸濁液を次いでMALDI試料キャリア上に直接析出させ、質量スペクトル分析法により試験する方法、並びにその方法のために適したナノ粒子に関する。
【0002】
質量分析は、物質の構造を解明するための方法であり、その際、原子状および分子状の粒子をその質量に応じて分離する。この分析方法は分子と電子またはフォトンとの間の反応に基づいている。試料を電子で衝撃することにより、電子の分離の結果プラスの分子イオンが生じ、これが引き続き多様なイオン性、ラジカル性および/または中性のフラグメントに分解する。分子イオンおよびフラグメントは、質量数の大きさに応じて適当な分離システム中で分離される。本来の分子スペクトル分析法、例えばUV/Vis分光分析、IR分光分析またはNMR分光分析とは異なり、質量分析の場合には、つまりイオン化プロセスの結果、化学的分解反応に基づき生じた分子イオンもしくはフラグメントが物質の構造の解明のために用いられる。
【0003】
生成されたイオンは質量/電荷(m/z)の割合に応じてアナライザー中で、例えば磁場または電場によって分離される。質量分析装置は、従って一般に次の主要構成部材からなる:取り入れシステム中で試料物質を蒸発させ、蒸気の形でイオン源内へ導入し、このイオン源内でイオン化を例えば電子衝撃によって生じさせる。このアナライザーは、イオン源内で生成されたラジカル−カチオンおよびカチオンを質量対電荷の割合により分離するために、つまりフォーカス合わせのために用いられる。取り入れシステムからイオン源へ達した蒸気状の物質は、そこで、電気的に加熱された金属ワイヤ、フィラメントから放出される電子によって衝撃される。フィラメントと電子捕捉部の試料キャリアとの間に、いわゆるチャンバ電圧がかけられ、これが電子を所望のエネルギーに加速する。
【0004】
飛行時間型質量分析装置は動的なイオン分離システムを有する。飛行時間型質量分析装置の場合には、多様な質量のイオンが所定の行路長に対してその異なる飛行時間に基づいて分離される。加速されたイオンは飛行管内へ侵入し、その中でより軽いイオンはより重いイオンよりも早くに終端に到達する。電子衝撃型のイオン化の他に、他のイオン化法としてフィールドおよびフィールド脱離イオン化が使用される。フィールドイオン化の場合に、強い電場中で電子の引き抜きによって陽イオンが生じる。分子イオンのわずかなエネルギーに基づきわずかな断片化が生じるだけである。蒸発しにくい化合物のイオン化(フィールド脱離イオン化)のために、この化合物の溶液を、活性化された、アノードとして接続された金属ワイヤ上に塗布する。電場をかけた後に生じたイオンを脱離させる。
【0005】
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型−質量分析(MALDI−TOF−MS)は、ここ数年において、最も多様な物質、特にタンパク質を分析するための重要な方法に発展してきた。この方法の主要な利点は、質量対電荷比(m/z)によるアナライト、特にタンパク質の極端に早い正確な同定およびフェムトモル領域でのまたはそれ以下での極端にわずかな検出限界である。
【0006】
ここ数年で、質量分析のためのタンパク質バイオチップが開発されている。この場合に、化学的官能基がチップ表面と共有結合により自己組織化分子膜(SAM)として固定される。この体系的な配置されたアンカー分子に適当に準備されたタンパク質がレセプターとして取り付けられる。それに引き続き、最適な結合パートナーのライブラリが表面上に設置される。適当な清浄化工程を使用して、過剰の材料を除去し、特異的に結合したリガンドは表面に固定されたままになり、質量スペクトル分析によって直接測定することができる。
【0007】
しかしながら、リガンドを捕捉するために用いるアンカータンパク質と平坦な表面との結合は、2つの原理的な問題を有する。平坦な表面は、比較的小さな領域内に結合することができるアンカータンパク質の量を著しく制限し、アナライトは固相−捕捉表面に対して有効に整列しない。
【0008】
従って、この問題を解決するために、粒子状の結合マトリックスが使用された、それというのも粒子、特にナノ領域の粒子は著しく大きな表面を有しているためである。タンパク質の高アフィニティ結合、分離および予備濃縮のために、特に磁性特性を有する粒子状のシステムが使用される(MerchantおよびWeinberger著、Electrophoreses、21(2000年)、1164−1167頁)。この試料準備はMALDI−TOF−MS−分析のために行われる。例えば、単離すべきタンパク質の抗体を粒子表面上に固定化し、引き続き複合したマトリックスから相応するタンパク質を取り出した(Hurstら著、Anal.Chem.、71(1999年)、4727−4733頁)。粒子として、特に磁性粒子、ポリスチレン粒子およびセファクリル粒子を使用した。分子と粒子表面との結合は、グルタルアルデヒド架橋を介してまたはCNBr活性化炭水化物を介した直接結合を介して行われる。
【0009】
しかしながら、今まで使用された粒子状のシステムは本来のMALDI分析法とは完全には相容性でなく、従って、MALDIプロセスの障害を避けるために試料キャリア上に設置する前に除去しなければならないことが明らかになっている。つまり、粒子状の結合マトリックスは、アナライトを単離しかつ精製するために使用されるが、MALDI試料キャリア上に試料を設置する前に、付加的な作業工程で再び固定化されたアナライトを遊離させなければならない。その後に初めてこのアナライトはMALDI−TOF−MS法を用いて測定することができる。
【発明の開示】
【0010】
本発明の根底をなす技術的課題は、特に先行技術から公知の問題を回避し、つまりアナライトを複合したマトリックスから単離するために使用する手段は後続するMALDI−TOF法の妨げにはならず、従ってこの方法の実施の前に除去する必要がなく、従って試料準備並びにMALDI−TOF分析が著しく簡素化されるような、アナライト、特にタンパク質の単離、精製および引き続くMALDI−TOF分析を行うことができる手段および方法を開発することである。
【0011】
本発明は、前記根底をなす課題を、第1の官能基を有するアナライトを有する試料を準備し、第1の官能基と結合する相補的な第2の官能基を有する表面を備えたコアを有するナノ粒子を準備し、水性または有機性の液体中でのナノ粒子の懸濁液を準備し、少なくとも1種のアナライトを含有する試料をこの懸濁液に添加するかまたはナノ粒子懸濁液をこのアナライトを含有する試料に添加し、アナライトをナノ粒子とアフィニティ結合させ、引き続き結合したアナライトを含有する懸濁液をMALDI−試料キャリア上に析出させ、このアナライトをスペクトル分析により試験する、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型−質量分析(MALDI−TOF−MS)を用いる少なくとも1つのアナライトの試験方法を提供することにより解決した。
【0012】
本発明は、つまり、後続する質量分析用の試料を調製することができる方法を提供する、つまり、アナライトを試料から単離しかつ試料の他の成分を分離し、引き続きマトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型−質量分析(MALDI−TOF−MS)を用いて試験することができる。この場合、アナライトを含有する試料(この試料は例えば未精製の生物学的液体であることができる)に、アナライトに特異的に適合する官能基を有する表面を有するナノ粒子の懸濁液を添加するか、またはアナライトを含有する試料をこのナノ粒子懸濁液に添加する。アナライトはそれ自体、ナノ粒子表面上の官能基と相補的でありかつこれと少なくともアフィニティ結合することができる特異的に結合する基を有しているため、アナライトはナノ粒子に固定化することができる。この懸濁液中に含まれる、表面にアナライトが固定化されているナノ粒子は、本発明の場合に、その後で洗浄することができ、この洗浄の際に試料の固定化されていない成分は除去され、水性の液体中に新たに懸濁させた後にMALDI試料キャリア上に析出させ、分光分析により調査される。しかしながら、本発明の場合には、結合したアナライトを含有するナノ粒子−懸濁液をアナライトの結合の直後にすぐにMALDI試料キャリア上に析出させ、分光分析により調査することも可能である。
【0013】
本発明は、つまり、アナライトをナノ粒子に固定化した後、このナノ粒子から再び分離する必要がなく、アナライトを複合したマトリックスから単離し、引き続きMALDI−TOF−MSによって分析することができる方法を提供する。本発明による方法はつまり先行技術から公知の方法と比較して、アナライトを単離および固定化の後に本発明により使用したナノ粒子と一緒に直接MALDI−TOF−調査を行うことができるという決定的な利点を有する。アナライトと粒子との分離は必要ないため、この試料準備工程はアナライトの損失が起こらない。
【0014】
本発明による方法の使用下で、多数の異なるアナライト、例えばタンパク質、核酸などを試験することができる。特に、複数のタンパク質および/またはペプチドからなる複合体、例えば他のタンパク質および付加的にペプチドと複合体の形態で結合したビオチン化されたタンパク質が調査される。このアナライトは、複数の構成要素を有する官能基を備えていることができる。例えば、タンパク質は官能基として抗体およびこれと結合するレセプターを含有することができる。例えば、cDNAを固定化し、それによりタンパク質、例えばトランスクリプションファクターを探すこともできる。
【0015】
意外にも、MALDI−TOF−分析用に必要な添加されたマトリックス(このマトリックスは分析の間にアナライトと一緒に蒸発する)がMALDI−試料キャリア上にナノ粒子−懸濁液を設置する前にまたはこれと一緒にまたはこれを設置した後に設置できることが明らかになった。
【0016】
本発明による方法は、つまり従来の方法と比較して著しく簡単にかつ極めて短時間に実施できる。本発明による方法は、有利に検出限界を明らかに低下させ、シグナル/ノイズ比を改善しかつ良好なピーク解像度を提供する。本発明による方法の使用下で得られたMS−スペクトルは、例えば通常のMALDI−TOF−条件で、例えばレーザー強度で障害ピークを生じず、従って明らかな試験結果が得られることを特徴とする。
【0017】
本発明による方法の意外な利点は、特に本発明により使用されるナノ粒子の特性に基づく。有利に、本発明による方法において使用されたナノ粒子は、MALDI分析に全く妨げにならないばかりか、従来の試料調製法およびMALDI法と比較してアナライトの分析を著しく改善することができる。本発明により使用されたナノ粒子は、本発明による方法に関して次の利点を有する:
本発明によるナノ粒子は、<150nmの直径を有し、通常利用される粒子と比較して著しく小さい。従って、このナノ粒子は比較して著しく大きな表面−体積比を有し、従って質量当たり大量のアナライトと結合することができる。極めて小さな直径に基づいて、ナノ粒子をMALDIマトリックス中に埋め込む場合に極めて均質な相および表面が生じ、このことは脱離プロセスおよび材料分解のために極めて重要である。MALDIプロセスに障害を与えずに、それどころか試料キャリア上に粒子の複数の層を設置でき、このことは試料キャリア上でのアナライトの付加的な濃縮を生じさせる。
【0018】
本発明により使用された粒子は有利に高度に架橋したガラス状のアルコキシシラン−縮合物であるため、質量分析器中への粒子の可動性はほとんど排除される。通常のMALDI条件下では、例えばレーザー強度では、従って合成されたポリマーからなる粒子の存在はMSスペクトルにおいて障害ピークは生じない。
【0019】
本発明により使用されたナノ粒子は、その高い比重に基づき遠心分離により迅速に分離され、極めて安定なペレットを形成する。従って、本発明によるナノ粒子は迅速にかつ損失なしに液体媒体から分離でき、このことはまた最大のアナライト収量につながる。粒子−ペレットは、また問題なく再懸濁させられ、それによりMALDI試料調製を容易にしかつ促進する。
【0020】
本発明により使用されたナノ粒子は、化学的に明らかに不活性でありかつ機械的に安定である。溶剤中でこの粒子の膨潤は行われない。つまり、粒子が長期間にわたり何度も溶剤中に懸濁される場合であっても、粒子はその形状を変えない。従って、固定化されたアナライトは、障害物質、例えば類似の質量を有する非特異的に結合する化合物またはMALDIプロセスに対する障害物質、例えば界面活性剤および塩から、任意の長さの洗浄プロセスによって最適に分離することができる。
【0021】
本発明により使用されたナノ粒子は、多様な方法で修飾されている表面を備えている。このナノ粒子は、多様な官能基を有しかつ従って多様なタンパク質を結合することができる。本発明により使用された粒子を使用することで、従って相補的官能基を有する極めて多様なアナライトを複合した混合物から分離することができ、かつMALDI−TOF−MS法を用いて直接試験することができる。
【0022】
本発明により使用されたナノ粒子は、慣用のMALDI試料キャリア上で極めて良好な付着を示す。この粒子は、それにより問題なく各MALDI機器システム中で使用することができ、かつシステムに依存しない。このMALDI−質量分析法は、特に、使用する質量分析装置の種類で区別される。本発明により使用されるナノ粒子は、マトリックス支援脱離およびイオン化プロセスの妨げにならず、従って、慣用の全てのMALDI−質量分析法において、固定化の後のアナライトを直接調査するのに使用できる。最も頻繁に使用される質量分析装置は飛行時間型−分析装置(TOF)である。このナノ粒子は、直線型のでも反射型のMALDI−TOF−MSでも使用することができる。反射型の方法の場合には、それによりいわゆるポストソース分解−試験も可能であり、つまり、固定化されたアナライトの構造を適切なフラグメント分析によって測定できる。
【0023】
本発明により使用されたナノ粒子は、従って、いわゆるペプチドマッピングのために特に適している、それというのも、ペプチドマッピングのために必要な酵素消化は障害にならず、質量分解は不利に影響しないためである。特に、このようなペプチドマッピングのために、タンパク質をナノ粒子表面上に架橋によって共有結合で固定することも可能である。それにより、特に複合した試料の際に必要となるストリンジェントな洗浄工程は、アナライトの損失なしに実施することができる。更に、適当な抗体を備えたナノ粒子は、ヒトの医学的および/または獣医学的な診断のために、特に腫瘍の特性決定、BSE−試験などのために適している。このナノ粒子は、従来の方法と比較して決定的な時間的利点を有し、特に緊急の感染の場合に重要である。
【0024】
本発明の範囲内で、「アナライト」とは、その個々の成分の種類および量を測定するべき物質および/または混合物から分離すべき物質であると解釈される。特に、アナライトとはタンパク質であるが、他の化合物、例えば核酸または炭水化物などであることもできる。本発明の有利な実施形態の場合には、アナライトはタンパク質、ペプチド、作用物質、有害物質、毒素、農薬、抗原または核酸である。
【0025】
本発明の範囲内で、「タンパク質」とは、結合を介して相互に結合した少なくとも2つのアミノ酸を含む分子であると解釈される。本発明の範囲内で、タンパク質、つまりペプチド、例えばオリゴペプチド、ポリペプチドまたはそれらの一部、例えばタンパク質−ドメインであることができる。この種のタンパク質は、天然のまたは合成の起源であることができる。このタンパク質は遺伝子工学的方法により、野生型タンパク質に対して修飾しかつ/または天然でないおよび/または特別なアミノ酸を含有することができる。このタンパク質は、野生型に対して誘導化されていてもよく、例えばグリコシル化されていてもよく、これは短縮されていてもよく、これは他のタンパク質と融合されていてもよく、または異なる種類の分子、例えば炭水化物と結合していてもよい。
【0026】
「試料」とは、水性または有機性の溶液、エマルション、分散液または懸濁液であると解釈され、これは前記定義のアナライトを単離する形態および精製する形態で含有するかまたは異なる物質の複合した混合物の成分として含有している。試料は例えば生物学的液体、例えば血液、リンパ液、組織液などであることができ、つまり、生体のまたは死亡した生物、器官または組織から取り出した液体であることができる。しかしながら試料は、生物、例えば微生物またはヒト、動物または植物の細胞を培養した培地、例えば発酵培地であることもできる。しかしながら、試料は本発明の範囲内で、単離するまたは精製するアナライトの水性の溶液、エマルション、分散液または懸濁液であることもできる。試料は既に精製工程を行われていてもよいが、未精製で存在していてもよい。「試料の調製」とは、従って、前記定義の試料を得ることを意味し並びに試料を得た後で試料もしくはアナライトを部分的にまたは完全に精製することも意味する。
【0027】
本発明の範囲内では、「ナノ粒子」とは、これは官能基を有する表面を備えたコアを有し、この官能基はアナライトの相補的な官能基と共有結合するかまたは非共有結合することができ、その際、ナノ粒子上にアナライトが固定されている粒子状の結合マトリックスであると解釈される。ナノ粒子は<500nm、有利に150nmのサイズを有する。ナノ粒子は、このコアが表面とは反対に化学的に不活性であることを特徴としている。「ナノ粒子の準備」はナノ粒子の製造、つまり乳化重合法、ゾル−ゲル法などを使用したコアの製造および官能基の設置によるコア表面の修飾、並びに既に製造し終えたナノ粒子の使用を意味する。
【0028】
「水性液体中のナノ粒子の懸濁液の準備」は、場合により付加的成分、例えばpH剤、懸濁助剤などを添加した、液体中での、特に水性媒体中でのナノ粒子の懸濁、並びに既に製造し終えたナノ粒子懸濁液の使用を意味する。
【0029】
本発明の範囲内で、第1の官能基とは固定化すべきアナライトの官能基であると解釈され、この官能基は第2の官能基、つまりコアの表面上に設置された化学的な基と相互作用して、2つの共有パートナーの間に共有または非共有の形態のアフィニティ結合を行うことができ、アナライトはナノ粒子上に固定化される。
【0030】
本発明の有利な実施形態の場合には、第1の官能基、つまりアナライトの官能基は、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、ビオチン基、Strep−Tag I基、Strep−Tag II基、His−タグ基、Flag−タグ基、タンパク質Aに対する抗体、タンパク質Gに対する抗体、ビオチン化された抗体およびビオチン化されたレセプターの群から選択される。レセプターは例えばHMC−タンパク質、サイトカイン、T細胞レセプター、例えばCD−8タンパク質などであることができる。複合した層も構築することができる。例えば、抗体はストレプトアビジン基およびビオチン化された抗体基およびタンパク質基を有することができ、その際、このタンパク質はレセプターであることができる。
【0031】
第2の官能基、つまりナノ粒子の表面上の官能基は本発明の場合に、アミノ基、カルボキシ基、マレインイミド基、アビジン基、ストレプトアビジン基、ニュートラビジン基、金属キレート錯体、タンパク質A−ユニット、タンパク質G−ユニット、抗体、レセプターユニットまたはこれらの一部の群から選択される。特別な問題解決のために、第2の官能基として抗体またはレセプターもナノ粒子上に直接固定化されていることができる。
【0032】
本発明の場合に使用されるナノ粒子は、その表面に、固定化すべきアナライトの第1の官能基と共有結合するかまたは非共有結合する第2の官能基を有し、その際、この第1の官能基は第2の官能基とは異なる基である。相互に結合するこの2つの基は相互に相補的でなければならず、つまり、相互に共有結合するかまたは非共有結合することができる。
【0033】
本発明の場合には第1の官能基が例えばカルボキシ基である場合に、第2の官能基はアミノ基である。本発明の場合には第1の官能基が逆にアミノ基である場合に、本発明の場合に第2の官能基はカルボキシ基である。本発明の場合にチオール基が第1の官能基として選択される場合に、第2の官能基は本発明の場合にマレインイミド基である。本発明の場合に第1の官能基がビオチン基および/またはStrep−Tag I基および/またはStrep−Tag II基を使用する場合に、第2の官能基はアビジン基および/またはストレプトアビジン基および/または/ニュートラビジン基である。本発明の場合にチオール基が第1の官能基として選択される場合に、第2の官能基は本発明の場合にマレインイミド基である。本発明の場合にタンパク質Aに対する抗体を使用する場合に、第2の官能基として本発明の場合にタンパク質Aを使用する。本発明の場合に第1の官能基としてタンパク質Gに対する抗体を使用する場合に、第2の官能基はタンパク質Gである。
【0034】
前記第1のおよび/または第2の官能基は、本発明の場合に、スペーサーを用いて固定化すべきアナライト、特に固定化すべきタンパク質もしくはコアと結合するか、もしくはスペーサーを用いてコア上にまたはアナライト中に導入することができる。このスペーサーは一方でコアもしくはアナライトに対する官能基の間隔保持部として、他方では官能基に対するキャリアとして機能する。この種のスペーサーは本発明の場合に、2〜50個のC原子を有するアルキレン基またはエチレンオキシド−オリゴマーであることができ、これは有利な実施形態の場合に置換されていてヘテロ原子を有する。このスペーサーはフレキシブルでかつ/または線状であることができる。
【0035】
本発明の有利な実施形態の場合には、第1の官能基はアナライト、特にタンパク質の天然の構成成分であることが考慮される。
【0036】
平均的なサイズの、つまり500個のアミノ酸を有する約50kDAのサイズのタンパク質の場合には、約20〜30個の反応性アミノ基が存在し、この反応性アミノ基は官能基として固定化するための対象と考えることができる。特に、これはタンパク質のN末端のアミノ基である。アミノ基および全てのリシン基は固定化のための対象と考えることができる。グアニジウム基を有するアルギニンも官能基として挙げられる。アナライト、例えば核酸は例えばカルボン酸基を含有し、これは固定化のために使用することができる。タンパク質の場合には、それに対してカルボン酸基を活性化しなければならない。
【0037】
本発明の他の有利な実施形態の場合には、第1の官能基を遺伝子工学的方法、生化学的、酵素学的および/または化学的誘導化または化学的合成法によってアナライト中へ導入することが考慮される。
【0038】
アナライトがタンパク質の場合には、例えば非天然のアミノ酸を遺伝子工学的方法によるかまたは化学的タンパク質合成の間にタンパク質分子内へ、例えばスペーサーまたはリンカーと一緒に挿入することができる。この種の非天然のアミノ酸は、アミノ酸官能基および基Rを有し、かつ天然由来の遺伝コードを定義しない化合物であり、このアミノ酸は特に有利にはチオール基を有する。天然由来のアミノ酸、例えばリシンを、例えばその側鎖、特にその第1アミノ基をレブリン酸のカルボン酸官能基で誘導化することにより変性することも考慮できる。
【0039】
本発明の他の有利な実施形態の場合には、官能基はタンパク質の修飾によりそのタンパク質内へ導入され、その際、タンパク質にタグ、つまりラベルが、有利にC末端またはN末端に付加される。しかしながら、このタグは分子内に配置されていてもよい。タンパク質を、少なくとも1つのStrep−タグ、例えばStrep−Tag IまたはStrep−Tag IIまたはビオチンを付加することにより修飾することが考慮される。本発明の場合には、Strep−タグとは、ストレプトアビジン基および/またはその同等のものと結合することができる、機能的および/または構造的な等価なものであると解釈される。「ストレプトアビジン」の概念は、本発明の範囲内で、つまりその機能的および/または構造的に等価なものをも包含する。本発明の他の実施形態の場合には、MALDI−TOF法を用いて分析すべきタンパク質は、通常の方法を使用して、抗体、特にタンパク質Aに対する抗体またはタンパク質Gに対する抗体を用いてラベルすることができる。
【0040】
「抗体」とは、主に免疫グロブリン遺伝子によりコードされるかまたは免疫グロブリンをコードするポリペプチド、またはアナライト(抗原)と特異的に結合しかつ認識できるそのフラグメントを意味する。公知の免疫グロブリン遺伝子は、不変領域に対してのカッパ−、ラムダ−、アルファ−、ガンマ−、デルタ−、イプシロン−およびミュー遺伝子、ならびに可変免疫グロブリン領域に対しての無数の遺伝子をも含む。抗体は、例えばインタクト型免疫グロブリンとしてまたは一連の良好に特性決定されたフラグメントとしての存在し、このフラグメントは多様なペプチダーゼを用いた分解により生じる。「抗体」は変性された抗体(例えばオリゴマーの、還元された、酸化されたおよびラベルされた抗体)をも意味する。
【0041】
本願明細書中で使用された概念の「抗体」は、完全な抗体の改変によってまたはde novo合成を用いてDNA組み換え技術の使用下で作成された抗体−フラグメントをも包含する。「抗体」の概念は、インタクト型分子も、そのフラグメントも包含し、例えばエピトープ決定要素と結合することができるFab、F(ab’)2およびFvも包含する。
【0042】
本発明の有利な実施形態の場合には、例えば非天然のアミノ酸、天然であるが、非天然に誘導化されたアミノ酸または特異的なStrep−タグで変性されているタンパク質、または抗体に結合したタンパク質が、これに相補的な反応性のナノ粒子−表面と結合して、タンパク質の適当な特異的な、特に非共有の結合を行い、ひいてはタンパク質の表面との固定化が行われることも考慮される。
【0043】
本発明による他の実施形態の場合には、本発明による方法において、有利にゾルゲル法の使用下で、アルコキシシランから製造可能であるコアを有するナノ粒子を使用することも考慮される。
【0044】
本発明の範囲内で、「コア」とは、固定化されたアナライトに対して支持体として利用される化学的に不活性な物質であると解釈される。本発明によるナノ粒子のコアは従ってアルコキシシラン−縮合物からなるのが有利であり、この縮合物は架橋されていてかつそれによりガラス状の特性を有している。本発明により使用されるナノ粒子のコアは、本発明の場合に高い比重を有する。本発明の他の実施形態の場合には、コアの製造の際に、比較的重い化合物、例えばタングステン酸塩などとの共縮合を行うことによりコアの比重が高められていることも考慮される。本発明の場合には、さらに、本発明によるナノ粒子のコアが直径<500nm、特に30〜400nm、有利に50〜150nmを有することも考慮される。
【0045】
コアの表面は、本発明の場合に、第1の官能基と結合する相補的な第2の官能基の設置により修飾されていることによって特徴付けられる。本発明の場合には、特に、この官能基が、標準方法、例えばグラフト重合、シラン化、化学的誘導化および類似の適当な方法によってコアの表面上に設置されていることが考慮される。
【0046】
本発明の有利な実施形態の場合には、付加的な官能性を設置することによりコア表面を修飾できることが考慮される。
【0047】
本発明の方法において使用されるナノ粒子の表面が、他のアナライト、特に他のタンパク質がナノ粒子へ非特異的に吸着することを回避するかまたは低減する化合物を有するのが有利である。この表面はエチレングリコール−オリゴマーを有するのが特に有利である。
【0048】
本発明の場合には、ナノ粒子の表面上に別々にまたは付加的にイオン交換機能が固定されていることも可能である。MALDI分析において、マトリックスの塩の含有量が限界の大きさであることが多い、それというのも、イオン付加によりイオン化が抑制されるかまたはピークの拡大が生じるかもしくは障害ピークが生じるためである。高いイオン交換容量を有しかつそれにより障害となる塩をマトリックス中に固定するナノ粒子によってこの問題は回避される。イオン交換機能を有するナノ粒子は、特に核酸のMALDI分析の最適化のために適している、それというのもこのナノ粒子はそれによって特定の質量状態に移行させることができるためである。
【0049】
本発明の場合に、MALDI−TOF−分析用に必要な添加されたマトリックス(このマトリックスは分析の間にアナライトと一緒に蒸発する)がナノ粒子−懸濁液を設置する前にまたはこれと一緒にまたはMALDI−試料キャリア上にこれを設置した後に設置できることが考慮される。
【0050】
MALDI−質量分析において使用されるマトリックス物質は、低分子量の化合物であり、この化合物は一方で脱離のために使用されるレーザーの波長を吸収することができ、他方でアナライトをその中に良好に埋め込むことができる。それにより脱離およびイオン化が初めて可能となる。イオン化は主にアナライトへのイオン伝達によって、例えばプロトン化によって行われる。マトリックス物質として、多様なレーザー波長および多様なアナライト−クラスに対して多様な化合物が使用される。一般に、これは芳香族基を有する化合物である。タンパク質のUV−MALDI−TOF−MSの場合には、最もよく使用されるマトリックスは、3,5−ジメトキシ−ケイ皮酸(シナピン酸)またはα−シアノ−4−ヒドロキシ−ケイ皮酸である。さらに、このマトリックス化合物からなる混合物およびいわゆるカチオン化剤を使用することもできる。このカチオン化剤は、特にナトリウム塩、カリウム塩または銀塩であり、レーザー脱離の間に炭水化物または合成ポリマーのイオン化を可能にする。
【0051】
本発明は、アナライト、特にタンパク質を調査するための本発明による方法において、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型−質量分析(MALDI−TOF−MS)を用いて使用するナノ粒子にも関する。
【0052】
本発明により使用したナノ粒子は、相補的な官能基とアフィニティ結合するための異なる官能基を有する表面を備えたコアを有する。異なる官能基を備えた異なる表面修飾に基づき、本発明によるナノ粒子は多数のアナライトの固定化のために適している。
【0053】
本発明の有利な実施形態は、アミノ基を設置することにより表面が官能化されているナノ粒子に関する。本発明の場合に、この種のナノ粒子は特に、活性化されたカルボキシ基を備えた少なくとも1種のタンパク質および/または少なくとも1種の核酸を共有結合により固定化し、かつ複合した混合物からそれを分離し、かつMALDI−TOF−MSを用いて直接分析するために適している。
【0054】
他の有利な実施形態は、表面がカルボキシ基を有するナノ粒子に関する。この種のナノ粒子は、特に、自由にアクセス可能なアミノ基を備えた少なくとも1種のタンパク質を共有結合により固定化し、かつ複合した混合物からそれを分離し、かつMALDI−TOF−MSを用いて直接分析するために適している。
【0055】
本発明の他の有利な実施形態は、表面がマレインイミド基を有するナノ粒子に関する。この種のナノ粒子は、特に、チオール基を備えた少なくとも1種のタンパク質を共有結合により固定化し、かつ複合した混合物からそれを分離し、かつMALDI−TOF−MSを用いて直接分析するために適している。
【0056】
本発明の他の実施形態の場合には、表面がアビジン基、ストレプトアビジン基および/またはニュートラビジン基を有するナノ粒子を準備することである。この種のナノ粒子は、特に、ビオチン基および/またはStrep−タグ基を備えたタンパク質を固定化し、かつ複合した混合物からそれを分離し、かつMALDI−TOF−MSを用いて直接分析するために適している。
【0057】
本発明の他の有利な実施形態は、表面がタンパク質A−ユニットを有するナノ粒子に関する。この種のナノ粒子は、特に、少なくとも1種の抗体および/または抗体結合性のタンパク質を固定化し、かつ複合した混合物からそれを分離し、かつMALDI−TOF−MSを用いて直接分析するために適している。
【0058】
本発明のさらに他の有利な実施形態は、表面がタンパク質G−ユニットを有するナノ粒子に関する。この種のナノ粒子は、特に、抗体および/または抗体結合性のタンパク質を固定化し、かつ複合した混合物からそれを分離し、かつMALDI−TOF−MSを用いて直接分析するために適している。
【0059】
本発明によるナノ粒子は、化学的に不活性な材料からなる、有利にガラス状の架橋したアルコキシシラン縮合物からなるコアを有し、その際、このコアの製造は有利にゾル−ゲル合成を用いてアルコキシシランの使用下で行う。本発明によるナノ粒子は、コアの組成によって、高い比重を有する。コアのこの高い比重は、本発明の場合には、コアの製造時にさらに重い化合物、特にタングステン酸塩との共縮合を行うことにより高めることができる。
【0060】
本発明のさらに有利な実施形態の場合には、さらに、異なる官能基を表面上に有しているナノ粒子が異なる色素ラベルを有していることが考慮される。この異なる色素ラベルは、一方で異なる表面修飾の区別を容易にする、つまり本発明による粒子の異なる官能基の区別を容易にする。他方でこの色素ラベルは本発明によるナノ粒子の取り扱いを容易にし、これは特に遠心分離の際に有利に作用する、それというのも極めて小さなペレットを容易に確認することができるためである。
【0061】
本発明は、仕上がったナノ粒子−懸濁液にも関し、このナノ粒子−懸濁液は少なくとも1種の本発明によるナノ粒子を、つまり前記した特別な表面修飾を備えたナノ粒子を、水性媒体中に、場合により他の添加剤、例えばpH調節剤、懸濁助剤などと一緒に有している。このようなナノ粒子懸濁液は、後続するMALDI−TOF−分析のための試料調製に直接、つまりアナライトの単離および精製に直接使用することができる。
【0062】
他の実施形態の場合には、本発明は、少なくとも1種の前記ナノ粒子、つまり前記官能基を有するナノ粒子、しかし有利には数種のナノ粒子を粉末および/または懸濁液の形態で有するキットにも関する。このようなキットは、多数の異なるアナライトに対して後続するMALDI−TOF−分析のための試料調製のために使用することができる。
【0063】
このアナライトを有するナノ粒子は特に有利な実施形態においてはMALDI試料キャリア上に1回だけ設置できるのではない。本発明の場合には有利に数回、特に乾燥工程および/またはマトリックス析出工程を経て2回〜100回、特に有利に10回〜20回の設置により、粒子がMALDIプロセスに不利な影響を与えずに、アナライトを試料キャリア上に濃縮することができる。
【0064】
アナライトの他に、分子量(ピーク状態)および/または濃度(ピーク高さ)の内部校正を行える他のペプチドおよび/またはタンパク質を適当にナノ粒子上に結合することができる。
【0065】
本発明の他の有利な実施形態は、引用形式請求項に記載されている。
【0066】
本発明を、次の実施例および図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0067】
実施例1
ナノ粒子のコアの製造
シリカ−キャリア
エタノール200mlに、テトラエトキシシラン12mMolおよびNH390mMolを添加した。この混合物を室温で24時間撹拌し、引き続き形成された粒子を数回遠心分離により精製した。この場合、平均粒子サイズ125nmのシリカ−粒子650mgが得られた。
【0068】
実施例2
コアの表面修飾
2.1 アミノ官能化された表面
実施例1中で得られたコアの水性懸濁液1質量%を25%のアンモニア10体積%と混合した。コアに対して、アミノプロピルトリエトキシシラン20質量%を添加し、これを室温で1時間撹拌した。この粒子を数回の遠心分離により精製した。得られた粒子は、表面に官能性アミノ基を有していた(0.1Mアセテート緩衝液中でゼータ電位:+35mV)。
【0069】
2.2 PEG化された表面
アミノ官能化された粒子(実施例2.1)1mgを10mMのリン酸塩緩衝液(pH:7.0)1ml中に懸濁させた。引き続き、ヘテロ官能性ポリエチレングリコール(例えばmPEG−スクシンイミジル−プロピオネート、t−Boc−NH−PEG−スクシンイミジル−プロピオネート、マレインイミド−PEG−スクシンイミジル−プロピオネートまたはこれらの混合物)1mgまで添加し、室温で3時間振盪した。表面上に保護基が存在する場合には、この保護基を1%トリフルオロ酢酸を用いて2時間処理することにより除去した。この粒子を、10mMのリン酸塩緩衝液(pH:7.0)1mlで2回洗浄した。
【0070】
この表面は、タンパク質の非特異的付加を抑制するのに適当であった。
【0071】
この表面は保護基の脱保護の後にアミノ基を有する場合、これは実施例2.6/2.7でさらに使用することができる。
【0072】
2.3 カルボキシにより官能化された表面
まず、テトラヒドロフラン中のアミノ官能化されたコアの2質量%の懸濁液を製造した。この溶液10mlにコハク酸無水物260mgを添加した。超音波を用いて5分間処理した後に、室温で1時間撹拌した。その後、このコアを数回の遠心分離を行うことにより精製した。得られたシリカ−コアは官能性カルボキシ基(0.1Mのアセテート緩衝液中のゼータ電位:−35mV)をその表面に有していて、平均粒子サイズ170nmを有する。
【0073】
2.4 ニトリロ三酢酸(NTA)表面
カルボキシで修飾したコア10mgを、アセトニトリル(MeCN)1mlで2回洗浄し、引き続きMeCN1ml中に収容した。これに、ジシクロヘキシルカルボジイミド10μMolおよびN−ヒドロキシスクシンイミド10μMolを添加した。引き続き、室温で2時間振盪した。その後、シクロヘキサン1mlで1回、MeCN1mlで1回洗浄した。この粒子を、引き続きMeCN1ml中に収容した。これに、N,N−ビス−カルボキシメチル−L−リシン4μMolを添加し、室温で3時間振盪した。その後、アセトニトリル1mlで1回、10mMのリン酸塩緩衝液(pH7.0)1mlで2回洗浄した。
【0074】
この反応により、一方で、官能性カルボキシル基の密度は高められ、他方でこの表面とNi2+イオンとが錯形成により結合することができる。次いで、この表面はHis−タグで修飾されたタンパク質と結合することができる。
【0075】
2.5 チオール表面
カルボキシで修飾したコア10mgを、アセトニトリル(MeCN)1mlで2回洗浄し、次いでMeCN1ml中に収容した。これに、ジシクロヘキシルカルボジイミド10μMolおよびN−ヒドロキシスクシンイミド10μMolを添加し、引き続き室温で2時間振盪した。次いで、シクロヘキサン1mlで1回、MeCN1mlで1回洗浄した。このコアを、次いでMeCN1ml中に収容した。これに、システイン500μgを添加し、室温で3時間振盪した。これに引き続き、アセトニトリル1mlで1回、10mMのリン酸塩緩衝液(pH7.0)1mlで2回洗浄した。
【0076】
この表面は、特にジスルフィド架橋を介してタンパク質を固定化するために適していた。
【0077】
2.6 マレインイミドにより活性化された表面
アミノ官能化されたコア500μgを10mMのリン酸塩緩衝液(pH7.0)1ml中に再懸濁させた。これに、スルホ−スクシンイミジル−4−(N−マレインイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート1.25μMolを添加し、室温で1時間振盪した。その後、冷たい10mMのリン酸塩緩衝液(pH7.0)で1回洗浄し、このコアを0.1Mのリン酸塩緩衝液(pH7.0)1ml中に収容した。
【0078】
2.7 ヨードアセチルにより活性化された表面
アミノ官能化されたコア500μgを10mMのリン酸塩緩衝液(pH7.0)1ml中に再懸濁させた。これに、スクシンイミジル−(4−ヨードアセチル)−アミノベンゾエート1.25μMolを添加し、室温で1時間振盪した。その後、冷たい0.1Mのリン酸塩緩衝液(pH7.0)で1回洗浄し、このコアを10mMのリン酸塩緩衝液(pH7.0)1ml中に収容した。
【0079】
この2.8および2.9の表面は遊離チオール基を有するタンパク質の結合のために適当である。
【0080】
2.8 ストレプトアビジンにより修飾された粒子
ストレプトアビジン15μgをMES緩衝液(pH5.0)1ml中に添加した。これに、カルボキシ官能化されたナノ粒子500μgおよびEDC100nMolを添加した。これを室温で3時間振盪させ、この粒子を遠心分離により除去し、PBS緩衝液1mlで2回洗浄した。PBS中に懸濁させた後、この粒子は200nmのサイズであり、その表面上にストレプトアビジン3質量%を有していた。この方法を用いて、他のタンパク質、例えばストレプトアクチンおよびタンパク質Gは表面上に固定化される。
【0081】
実施例3
MALDI
固定化およびストレプトアビジンを抱合するシリカ−ナノ粒子上のhuMIFの直接的なMALDI−MS−検出
図1a)はタンパク質を固定化していないナノ粒子の質量スペクトルを示す。このスペクトルはストレプトアビジンのモノマーのピークしか示していない。図1b)は、ナノ粒子をhuMIFおよびビオチン化されたアンチ−huMIF抗体の溶液中に添加しかつ引き続き緩衝溶液で数回洗浄した後のナノ粒子の質量スペクトルを示す。huMIFの明らかなシグナルが得られた。このことは、huMIFはナノ粒子に特異的に結合し、この後直接検出することができることを意味する。
【0082】
MALDI試料キャリア上でのナノ粒子の濃縮についての実施例
図2はMALDI試料キャリア上でのシリカ−ナノ粒子の濃縮を示す。図2(a)〜(c)は、シリカ−ナノ粒子それぞれ25μg上に固定化された、ビオチン化されたMF2(a)50pmol、(b)5.0pmol、および(c)0.50pmolの質量スペクトルを示す。(a)と(b)は、試料キャリア上での絶対的なアナライト量に相当して次第に弱まる強度を有するピークを示す。(c)ではアナライトのシグナルはもはや得られていない。図2(d)は(c)からの同じシリカ−ナノ粒子の質量スペクトルを示す。この場合、この粒子250μgを繰り返し適用することにより試料キャリア上に設置し、その結果、合計で5.0pmolのアナライト、つまり(c)の10倍の量のアナライトがキャリア上に存在した。この質量スペクトルは、(b)からの質量スペクトルとほとんど同じシグナル−ノイズ比を有するピークを示し、この場合にはターゲットに対して全く同様に5.0pmolが設置されていた。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】2つの質量スペクトルを示す。
【図2】他の質量スペクトルを示す。
【0001】
本発明は、ナノ粒子の使用下での質量スペクトル分析、特にマトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型−質量分析(MALDI−TOF−MS)のための改善された方法において、アナライトをナノ粒子懸濁液に添加し、結合したアナライトを含む懸濁液を次いでMALDI試料キャリア上に直接析出させ、質量スペクトル分析法により試験する方法、並びにその方法のために適したナノ粒子に関する。
【0002】
質量分析は、物質の構造を解明するための方法であり、その際、原子状および分子状の粒子をその質量に応じて分離する。この分析方法は分子と電子またはフォトンとの間の反応に基づいている。試料を電子で衝撃することにより、電子の分離の結果プラスの分子イオンが生じ、これが引き続き多様なイオン性、ラジカル性および/または中性のフラグメントに分解する。分子イオンおよびフラグメントは、質量数の大きさに応じて適当な分離システム中で分離される。本来の分子スペクトル分析法、例えばUV/Vis分光分析、IR分光分析またはNMR分光分析とは異なり、質量分析の場合には、つまりイオン化プロセスの結果、化学的分解反応に基づき生じた分子イオンもしくはフラグメントが物質の構造の解明のために用いられる。
【0003】
生成されたイオンは質量/電荷(m/z)の割合に応じてアナライザー中で、例えば磁場または電場によって分離される。質量分析装置は、従って一般に次の主要構成部材からなる:取り入れシステム中で試料物質を蒸発させ、蒸気の形でイオン源内へ導入し、このイオン源内でイオン化を例えば電子衝撃によって生じさせる。このアナライザーは、イオン源内で生成されたラジカル−カチオンおよびカチオンを質量対電荷の割合により分離するために、つまりフォーカス合わせのために用いられる。取り入れシステムからイオン源へ達した蒸気状の物質は、そこで、電気的に加熱された金属ワイヤ、フィラメントから放出される電子によって衝撃される。フィラメントと電子捕捉部の試料キャリアとの間に、いわゆるチャンバ電圧がかけられ、これが電子を所望のエネルギーに加速する。
【0004】
飛行時間型質量分析装置は動的なイオン分離システムを有する。飛行時間型質量分析装置の場合には、多様な質量のイオンが所定の行路長に対してその異なる飛行時間に基づいて分離される。加速されたイオンは飛行管内へ侵入し、その中でより軽いイオンはより重いイオンよりも早くに終端に到達する。電子衝撃型のイオン化の他に、他のイオン化法としてフィールドおよびフィールド脱離イオン化が使用される。フィールドイオン化の場合に、強い電場中で電子の引き抜きによって陽イオンが生じる。分子イオンのわずかなエネルギーに基づきわずかな断片化が生じるだけである。蒸発しにくい化合物のイオン化(フィールド脱離イオン化)のために、この化合物の溶液を、活性化された、アノードとして接続された金属ワイヤ上に塗布する。電場をかけた後に生じたイオンを脱離させる。
【0005】
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型−質量分析(MALDI−TOF−MS)は、ここ数年において、最も多様な物質、特にタンパク質を分析するための重要な方法に発展してきた。この方法の主要な利点は、質量対電荷比(m/z)によるアナライト、特にタンパク質の極端に早い正確な同定およびフェムトモル領域でのまたはそれ以下での極端にわずかな検出限界である。
【0006】
ここ数年で、質量分析のためのタンパク質バイオチップが開発されている。この場合に、化学的官能基がチップ表面と共有結合により自己組織化分子膜(SAM)として固定される。この体系的な配置されたアンカー分子に適当に準備されたタンパク質がレセプターとして取り付けられる。それに引き続き、最適な結合パートナーのライブラリが表面上に設置される。適当な清浄化工程を使用して、過剰の材料を除去し、特異的に結合したリガンドは表面に固定されたままになり、質量スペクトル分析によって直接測定することができる。
【0007】
しかしながら、リガンドを捕捉するために用いるアンカータンパク質と平坦な表面との結合は、2つの原理的な問題を有する。平坦な表面は、比較的小さな領域内に結合することができるアンカータンパク質の量を著しく制限し、アナライトは固相−捕捉表面に対して有効に整列しない。
【0008】
従って、この問題を解決するために、粒子状の結合マトリックスが使用された、それというのも粒子、特にナノ領域の粒子は著しく大きな表面を有しているためである。タンパク質の高アフィニティ結合、分離および予備濃縮のために、特に磁性特性を有する粒子状のシステムが使用される(MerchantおよびWeinberger著、Electrophoreses、21(2000年)、1164−1167頁)。この試料準備はMALDI−TOF−MS−分析のために行われる。例えば、単離すべきタンパク質の抗体を粒子表面上に固定化し、引き続き複合したマトリックスから相応するタンパク質を取り出した(Hurstら著、Anal.Chem.、71(1999年)、4727−4733頁)。粒子として、特に磁性粒子、ポリスチレン粒子およびセファクリル粒子を使用した。分子と粒子表面との結合は、グルタルアルデヒド架橋を介してまたはCNBr活性化炭水化物を介した直接結合を介して行われる。
【0009】
しかしながら、今まで使用された粒子状のシステムは本来のMALDI分析法とは完全には相容性でなく、従って、MALDIプロセスの障害を避けるために試料キャリア上に設置する前に除去しなければならないことが明らかになっている。つまり、粒子状の結合マトリックスは、アナライトを単離しかつ精製するために使用されるが、MALDI試料キャリア上に試料を設置する前に、付加的な作業工程で再び固定化されたアナライトを遊離させなければならない。その後に初めてこのアナライトはMALDI−TOF−MS法を用いて測定することができる。
【発明の開示】
【0010】
本発明の根底をなす技術的課題は、特に先行技術から公知の問題を回避し、つまりアナライトを複合したマトリックスから単離するために使用する手段は後続するMALDI−TOF法の妨げにはならず、従ってこの方法の実施の前に除去する必要がなく、従って試料準備並びにMALDI−TOF分析が著しく簡素化されるような、アナライト、特にタンパク質の単離、精製および引き続くMALDI−TOF分析を行うことができる手段および方法を開発することである。
【0011】
本発明は、前記根底をなす課題を、第1の官能基を有するアナライトを有する試料を準備し、第1の官能基と結合する相補的な第2の官能基を有する表面を備えたコアを有するナノ粒子を準備し、水性または有機性の液体中でのナノ粒子の懸濁液を準備し、少なくとも1種のアナライトを含有する試料をこの懸濁液に添加するかまたはナノ粒子懸濁液をこのアナライトを含有する試料に添加し、アナライトをナノ粒子とアフィニティ結合させ、引き続き結合したアナライトを含有する懸濁液をMALDI−試料キャリア上に析出させ、このアナライトをスペクトル分析により試験する、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型−質量分析(MALDI−TOF−MS)を用いる少なくとも1つのアナライトの試験方法を提供することにより解決した。
【0012】
本発明は、つまり、後続する質量分析用の試料を調製することができる方法を提供する、つまり、アナライトを試料から単離しかつ試料の他の成分を分離し、引き続きマトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型−質量分析(MALDI−TOF−MS)を用いて試験することができる。この場合、アナライトを含有する試料(この試料は例えば未精製の生物学的液体であることができる)に、アナライトに特異的に適合する官能基を有する表面を有するナノ粒子の懸濁液を添加するか、またはアナライトを含有する試料をこのナノ粒子懸濁液に添加する。アナライトはそれ自体、ナノ粒子表面上の官能基と相補的でありかつこれと少なくともアフィニティ結合することができる特異的に結合する基を有しているため、アナライトはナノ粒子に固定化することができる。この懸濁液中に含まれる、表面にアナライトが固定化されているナノ粒子は、本発明の場合に、その後で洗浄することができ、この洗浄の際に試料の固定化されていない成分は除去され、水性の液体中に新たに懸濁させた後にMALDI試料キャリア上に析出させ、分光分析により調査される。しかしながら、本発明の場合には、結合したアナライトを含有するナノ粒子−懸濁液をアナライトの結合の直後にすぐにMALDI試料キャリア上に析出させ、分光分析により調査することも可能である。
【0013】
本発明は、つまり、アナライトをナノ粒子に固定化した後、このナノ粒子から再び分離する必要がなく、アナライトを複合したマトリックスから単離し、引き続きMALDI−TOF−MSによって分析することができる方法を提供する。本発明による方法はつまり先行技術から公知の方法と比較して、アナライトを単離および固定化の後に本発明により使用したナノ粒子と一緒に直接MALDI−TOF−調査を行うことができるという決定的な利点を有する。アナライトと粒子との分離は必要ないため、この試料準備工程はアナライトの損失が起こらない。
【0014】
本発明による方法の使用下で、多数の異なるアナライト、例えばタンパク質、核酸などを試験することができる。特に、複数のタンパク質および/またはペプチドからなる複合体、例えば他のタンパク質および付加的にペプチドと複合体の形態で結合したビオチン化されたタンパク質が調査される。このアナライトは、複数の構成要素を有する官能基を備えていることができる。例えば、タンパク質は官能基として抗体およびこれと結合するレセプターを含有することができる。例えば、cDNAを固定化し、それによりタンパク質、例えばトランスクリプションファクターを探すこともできる。
【0015】
意外にも、MALDI−TOF−分析用に必要な添加されたマトリックス(このマトリックスは分析の間にアナライトと一緒に蒸発する)がMALDI−試料キャリア上にナノ粒子−懸濁液を設置する前にまたはこれと一緒にまたはこれを設置した後に設置できることが明らかになった。
【0016】
本発明による方法は、つまり従来の方法と比較して著しく簡単にかつ極めて短時間に実施できる。本発明による方法は、有利に検出限界を明らかに低下させ、シグナル/ノイズ比を改善しかつ良好なピーク解像度を提供する。本発明による方法の使用下で得られたMS−スペクトルは、例えば通常のMALDI−TOF−条件で、例えばレーザー強度で障害ピークを生じず、従って明らかな試験結果が得られることを特徴とする。
【0017】
本発明による方法の意外な利点は、特に本発明により使用されるナノ粒子の特性に基づく。有利に、本発明による方法において使用されたナノ粒子は、MALDI分析に全く妨げにならないばかりか、従来の試料調製法およびMALDI法と比較してアナライトの分析を著しく改善することができる。本発明により使用されたナノ粒子は、本発明による方法に関して次の利点を有する:
本発明によるナノ粒子は、<150nmの直径を有し、通常利用される粒子と比較して著しく小さい。従って、このナノ粒子は比較して著しく大きな表面−体積比を有し、従って質量当たり大量のアナライトと結合することができる。極めて小さな直径に基づいて、ナノ粒子をMALDIマトリックス中に埋め込む場合に極めて均質な相および表面が生じ、このことは脱離プロセスおよび材料分解のために極めて重要である。MALDIプロセスに障害を与えずに、それどころか試料キャリア上に粒子の複数の層を設置でき、このことは試料キャリア上でのアナライトの付加的な濃縮を生じさせる。
【0018】
本発明により使用された粒子は有利に高度に架橋したガラス状のアルコキシシラン−縮合物であるため、質量分析器中への粒子の可動性はほとんど排除される。通常のMALDI条件下では、例えばレーザー強度では、従って合成されたポリマーからなる粒子の存在はMSスペクトルにおいて障害ピークは生じない。
【0019】
本発明により使用されたナノ粒子は、その高い比重に基づき遠心分離により迅速に分離され、極めて安定なペレットを形成する。従って、本発明によるナノ粒子は迅速にかつ損失なしに液体媒体から分離でき、このことはまた最大のアナライト収量につながる。粒子−ペレットは、また問題なく再懸濁させられ、それによりMALDI試料調製を容易にしかつ促進する。
【0020】
本発明により使用されたナノ粒子は、化学的に明らかに不活性でありかつ機械的に安定である。溶剤中でこの粒子の膨潤は行われない。つまり、粒子が長期間にわたり何度も溶剤中に懸濁される場合であっても、粒子はその形状を変えない。従って、固定化されたアナライトは、障害物質、例えば類似の質量を有する非特異的に結合する化合物またはMALDIプロセスに対する障害物質、例えば界面活性剤および塩から、任意の長さの洗浄プロセスによって最適に分離することができる。
【0021】
本発明により使用されたナノ粒子は、多様な方法で修飾されている表面を備えている。このナノ粒子は、多様な官能基を有しかつ従って多様なタンパク質を結合することができる。本発明により使用された粒子を使用することで、従って相補的官能基を有する極めて多様なアナライトを複合した混合物から分離することができ、かつMALDI−TOF−MS法を用いて直接試験することができる。
【0022】
本発明により使用されたナノ粒子は、慣用のMALDI試料キャリア上で極めて良好な付着を示す。この粒子は、それにより問題なく各MALDI機器システム中で使用することができ、かつシステムに依存しない。このMALDI−質量分析法は、特に、使用する質量分析装置の種類で区別される。本発明により使用されるナノ粒子は、マトリックス支援脱離およびイオン化プロセスの妨げにならず、従って、慣用の全てのMALDI−質量分析法において、固定化の後のアナライトを直接調査するのに使用できる。最も頻繁に使用される質量分析装置は飛行時間型−分析装置(TOF)である。このナノ粒子は、直線型のでも反射型のMALDI−TOF−MSでも使用することができる。反射型の方法の場合には、それによりいわゆるポストソース分解−試験も可能であり、つまり、固定化されたアナライトの構造を適切なフラグメント分析によって測定できる。
【0023】
本発明により使用されたナノ粒子は、従って、いわゆるペプチドマッピングのために特に適している、それというのも、ペプチドマッピングのために必要な酵素消化は障害にならず、質量分解は不利に影響しないためである。特に、このようなペプチドマッピングのために、タンパク質をナノ粒子表面上に架橋によって共有結合で固定することも可能である。それにより、特に複合した試料の際に必要となるストリンジェントな洗浄工程は、アナライトの損失なしに実施することができる。更に、適当な抗体を備えたナノ粒子は、ヒトの医学的および/または獣医学的な診断のために、特に腫瘍の特性決定、BSE−試験などのために適している。このナノ粒子は、従来の方法と比較して決定的な時間的利点を有し、特に緊急の感染の場合に重要である。
【0024】
本発明の範囲内で、「アナライト」とは、その個々の成分の種類および量を測定するべき物質および/または混合物から分離すべき物質であると解釈される。特に、アナライトとはタンパク質であるが、他の化合物、例えば核酸または炭水化物などであることもできる。本発明の有利な実施形態の場合には、アナライトはタンパク質、ペプチド、作用物質、有害物質、毒素、農薬、抗原または核酸である。
【0025】
本発明の範囲内で、「タンパク質」とは、結合を介して相互に結合した少なくとも2つのアミノ酸を含む分子であると解釈される。本発明の範囲内で、タンパク質、つまりペプチド、例えばオリゴペプチド、ポリペプチドまたはそれらの一部、例えばタンパク質−ドメインであることができる。この種のタンパク質は、天然のまたは合成の起源であることができる。このタンパク質は遺伝子工学的方法により、野生型タンパク質に対して修飾しかつ/または天然でないおよび/または特別なアミノ酸を含有することができる。このタンパク質は、野生型に対して誘導化されていてもよく、例えばグリコシル化されていてもよく、これは短縮されていてもよく、これは他のタンパク質と融合されていてもよく、または異なる種類の分子、例えば炭水化物と結合していてもよい。
【0026】
「試料」とは、水性または有機性の溶液、エマルション、分散液または懸濁液であると解釈され、これは前記定義のアナライトを単離する形態および精製する形態で含有するかまたは異なる物質の複合した混合物の成分として含有している。試料は例えば生物学的液体、例えば血液、リンパ液、組織液などであることができ、つまり、生体のまたは死亡した生物、器官または組織から取り出した液体であることができる。しかしながら試料は、生物、例えば微生物またはヒト、動物または植物の細胞を培養した培地、例えば発酵培地であることもできる。しかしながら、試料は本発明の範囲内で、単離するまたは精製するアナライトの水性の溶液、エマルション、分散液または懸濁液であることもできる。試料は既に精製工程を行われていてもよいが、未精製で存在していてもよい。「試料の調製」とは、従って、前記定義の試料を得ることを意味し並びに試料を得た後で試料もしくはアナライトを部分的にまたは完全に精製することも意味する。
【0027】
本発明の範囲内では、「ナノ粒子」とは、これは官能基を有する表面を備えたコアを有し、この官能基はアナライトの相補的な官能基と共有結合するかまたは非共有結合することができ、その際、ナノ粒子上にアナライトが固定されている粒子状の結合マトリックスであると解釈される。ナノ粒子は<500nm、有利に150nmのサイズを有する。ナノ粒子は、このコアが表面とは反対に化学的に不活性であることを特徴としている。「ナノ粒子の準備」はナノ粒子の製造、つまり乳化重合法、ゾル−ゲル法などを使用したコアの製造および官能基の設置によるコア表面の修飾、並びに既に製造し終えたナノ粒子の使用を意味する。
【0028】
「水性液体中のナノ粒子の懸濁液の準備」は、場合により付加的成分、例えばpH剤、懸濁助剤などを添加した、液体中での、特に水性媒体中でのナノ粒子の懸濁、並びに既に製造し終えたナノ粒子懸濁液の使用を意味する。
【0029】
本発明の範囲内で、第1の官能基とは固定化すべきアナライトの官能基であると解釈され、この官能基は第2の官能基、つまりコアの表面上に設置された化学的な基と相互作用して、2つの共有パートナーの間に共有または非共有の形態のアフィニティ結合を行うことができ、アナライトはナノ粒子上に固定化される。
【0030】
本発明の有利な実施形態の場合には、第1の官能基、つまりアナライトの官能基は、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、ビオチン基、Strep−Tag I基、Strep−Tag II基、His−タグ基、Flag−タグ基、タンパク質Aに対する抗体、タンパク質Gに対する抗体、ビオチン化された抗体およびビオチン化されたレセプターの群から選択される。レセプターは例えばHMC−タンパク質、サイトカイン、T細胞レセプター、例えばCD−8タンパク質などであることができる。複合した層も構築することができる。例えば、抗体はストレプトアビジン基およびビオチン化された抗体基およびタンパク質基を有することができ、その際、このタンパク質はレセプターであることができる。
【0031】
第2の官能基、つまりナノ粒子の表面上の官能基は本発明の場合に、アミノ基、カルボキシ基、マレインイミド基、アビジン基、ストレプトアビジン基、ニュートラビジン基、金属キレート錯体、タンパク質A−ユニット、タンパク質G−ユニット、抗体、レセプターユニットまたはこれらの一部の群から選択される。特別な問題解決のために、第2の官能基として抗体またはレセプターもナノ粒子上に直接固定化されていることができる。
【0032】
本発明の場合に使用されるナノ粒子は、その表面に、固定化すべきアナライトの第1の官能基と共有結合するかまたは非共有結合する第2の官能基を有し、その際、この第1の官能基は第2の官能基とは異なる基である。相互に結合するこの2つの基は相互に相補的でなければならず、つまり、相互に共有結合するかまたは非共有結合することができる。
【0033】
本発明の場合には第1の官能基が例えばカルボキシ基である場合に、第2の官能基はアミノ基である。本発明の場合には第1の官能基が逆にアミノ基である場合に、本発明の場合に第2の官能基はカルボキシ基である。本発明の場合にチオール基が第1の官能基として選択される場合に、第2の官能基は本発明の場合にマレインイミド基である。本発明の場合に第1の官能基がビオチン基および/またはStrep−Tag I基および/またはStrep−Tag II基を使用する場合に、第2の官能基はアビジン基および/またはストレプトアビジン基および/または/ニュートラビジン基である。本発明の場合にチオール基が第1の官能基として選択される場合に、第2の官能基は本発明の場合にマレインイミド基である。本発明の場合にタンパク質Aに対する抗体を使用する場合に、第2の官能基として本発明の場合にタンパク質Aを使用する。本発明の場合に第1の官能基としてタンパク質Gに対する抗体を使用する場合に、第2の官能基はタンパク質Gである。
【0034】
前記第1のおよび/または第2の官能基は、本発明の場合に、スペーサーを用いて固定化すべきアナライト、特に固定化すべきタンパク質もしくはコアと結合するか、もしくはスペーサーを用いてコア上にまたはアナライト中に導入することができる。このスペーサーは一方でコアもしくはアナライトに対する官能基の間隔保持部として、他方では官能基に対するキャリアとして機能する。この種のスペーサーは本発明の場合に、2〜50個のC原子を有するアルキレン基またはエチレンオキシド−オリゴマーであることができ、これは有利な実施形態の場合に置換されていてヘテロ原子を有する。このスペーサーはフレキシブルでかつ/または線状であることができる。
【0035】
本発明の有利な実施形態の場合には、第1の官能基はアナライト、特にタンパク質の天然の構成成分であることが考慮される。
【0036】
平均的なサイズの、つまり500個のアミノ酸を有する約50kDAのサイズのタンパク質の場合には、約20〜30個の反応性アミノ基が存在し、この反応性アミノ基は官能基として固定化するための対象と考えることができる。特に、これはタンパク質のN末端のアミノ基である。アミノ基および全てのリシン基は固定化のための対象と考えることができる。グアニジウム基を有するアルギニンも官能基として挙げられる。アナライト、例えば核酸は例えばカルボン酸基を含有し、これは固定化のために使用することができる。タンパク質の場合には、それに対してカルボン酸基を活性化しなければならない。
【0037】
本発明の他の有利な実施形態の場合には、第1の官能基を遺伝子工学的方法、生化学的、酵素学的および/または化学的誘導化または化学的合成法によってアナライト中へ導入することが考慮される。
【0038】
アナライトがタンパク質の場合には、例えば非天然のアミノ酸を遺伝子工学的方法によるかまたは化学的タンパク質合成の間にタンパク質分子内へ、例えばスペーサーまたはリンカーと一緒に挿入することができる。この種の非天然のアミノ酸は、アミノ酸官能基および基Rを有し、かつ天然由来の遺伝コードを定義しない化合物であり、このアミノ酸は特に有利にはチオール基を有する。天然由来のアミノ酸、例えばリシンを、例えばその側鎖、特にその第1アミノ基をレブリン酸のカルボン酸官能基で誘導化することにより変性することも考慮できる。
【0039】
本発明の他の有利な実施形態の場合には、官能基はタンパク質の修飾によりそのタンパク質内へ導入され、その際、タンパク質にタグ、つまりラベルが、有利にC末端またはN末端に付加される。しかしながら、このタグは分子内に配置されていてもよい。タンパク質を、少なくとも1つのStrep−タグ、例えばStrep−Tag IまたはStrep−Tag IIまたはビオチンを付加することにより修飾することが考慮される。本発明の場合には、Strep−タグとは、ストレプトアビジン基および/またはその同等のものと結合することができる、機能的および/または構造的な等価なものであると解釈される。「ストレプトアビジン」の概念は、本発明の範囲内で、つまりその機能的および/または構造的に等価なものをも包含する。本発明の他の実施形態の場合には、MALDI−TOF法を用いて分析すべきタンパク質は、通常の方法を使用して、抗体、特にタンパク質Aに対する抗体またはタンパク質Gに対する抗体を用いてラベルすることができる。
【0040】
「抗体」とは、主に免疫グロブリン遺伝子によりコードされるかまたは免疫グロブリンをコードするポリペプチド、またはアナライト(抗原)と特異的に結合しかつ認識できるそのフラグメントを意味する。公知の免疫グロブリン遺伝子は、不変領域に対してのカッパ−、ラムダ−、アルファ−、ガンマ−、デルタ−、イプシロン−およびミュー遺伝子、ならびに可変免疫グロブリン領域に対しての無数の遺伝子をも含む。抗体は、例えばインタクト型免疫グロブリンとしてまたは一連の良好に特性決定されたフラグメントとしての存在し、このフラグメントは多様なペプチダーゼを用いた分解により生じる。「抗体」は変性された抗体(例えばオリゴマーの、還元された、酸化されたおよびラベルされた抗体)をも意味する。
【0041】
本願明細書中で使用された概念の「抗体」は、完全な抗体の改変によってまたはde novo合成を用いてDNA組み換え技術の使用下で作成された抗体−フラグメントをも包含する。「抗体」の概念は、インタクト型分子も、そのフラグメントも包含し、例えばエピトープ決定要素と結合することができるFab、F(ab’)2およびFvも包含する。
【0042】
本発明の有利な実施形態の場合には、例えば非天然のアミノ酸、天然であるが、非天然に誘導化されたアミノ酸または特異的なStrep−タグで変性されているタンパク質、または抗体に結合したタンパク質が、これに相補的な反応性のナノ粒子−表面と結合して、タンパク質の適当な特異的な、特に非共有の結合を行い、ひいてはタンパク質の表面との固定化が行われることも考慮される。
【0043】
本発明による他の実施形態の場合には、本発明による方法において、有利にゾルゲル法の使用下で、アルコキシシランから製造可能であるコアを有するナノ粒子を使用することも考慮される。
【0044】
本発明の範囲内で、「コア」とは、固定化されたアナライトに対して支持体として利用される化学的に不活性な物質であると解釈される。本発明によるナノ粒子のコアは従ってアルコキシシラン−縮合物からなるのが有利であり、この縮合物は架橋されていてかつそれによりガラス状の特性を有している。本発明により使用されるナノ粒子のコアは、本発明の場合に高い比重を有する。本発明の他の実施形態の場合には、コアの製造の際に、比較的重い化合物、例えばタングステン酸塩などとの共縮合を行うことによりコアの比重が高められていることも考慮される。本発明の場合には、さらに、本発明によるナノ粒子のコアが直径<500nm、特に30〜400nm、有利に50〜150nmを有することも考慮される。
【0045】
コアの表面は、本発明の場合に、第1の官能基と結合する相補的な第2の官能基の設置により修飾されていることによって特徴付けられる。本発明の場合には、特に、この官能基が、標準方法、例えばグラフト重合、シラン化、化学的誘導化および類似の適当な方法によってコアの表面上に設置されていることが考慮される。
【0046】
本発明の有利な実施形態の場合には、付加的な官能性を設置することによりコア表面を修飾できることが考慮される。
【0047】
本発明の方法において使用されるナノ粒子の表面が、他のアナライト、特に他のタンパク質がナノ粒子へ非特異的に吸着することを回避するかまたは低減する化合物を有するのが有利である。この表面はエチレングリコール−オリゴマーを有するのが特に有利である。
【0048】
本発明の場合には、ナノ粒子の表面上に別々にまたは付加的にイオン交換機能が固定されていることも可能である。MALDI分析において、マトリックスの塩の含有量が限界の大きさであることが多い、それというのも、イオン付加によりイオン化が抑制されるかまたはピークの拡大が生じるかもしくは障害ピークが生じるためである。高いイオン交換容量を有しかつそれにより障害となる塩をマトリックス中に固定するナノ粒子によってこの問題は回避される。イオン交換機能を有するナノ粒子は、特に核酸のMALDI分析の最適化のために適している、それというのもこのナノ粒子はそれによって特定の質量状態に移行させることができるためである。
【0049】
本発明の場合に、MALDI−TOF−分析用に必要な添加されたマトリックス(このマトリックスは分析の間にアナライトと一緒に蒸発する)がナノ粒子−懸濁液を設置する前にまたはこれと一緒にまたはMALDI−試料キャリア上にこれを設置した後に設置できることが考慮される。
【0050】
MALDI−質量分析において使用されるマトリックス物質は、低分子量の化合物であり、この化合物は一方で脱離のために使用されるレーザーの波長を吸収することができ、他方でアナライトをその中に良好に埋め込むことができる。それにより脱離およびイオン化が初めて可能となる。イオン化は主にアナライトへのイオン伝達によって、例えばプロトン化によって行われる。マトリックス物質として、多様なレーザー波長および多様なアナライト−クラスに対して多様な化合物が使用される。一般に、これは芳香族基を有する化合物である。タンパク質のUV−MALDI−TOF−MSの場合には、最もよく使用されるマトリックスは、3,5−ジメトキシ−ケイ皮酸(シナピン酸)またはα−シアノ−4−ヒドロキシ−ケイ皮酸である。さらに、このマトリックス化合物からなる混合物およびいわゆるカチオン化剤を使用することもできる。このカチオン化剤は、特にナトリウム塩、カリウム塩または銀塩であり、レーザー脱離の間に炭水化物または合成ポリマーのイオン化を可能にする。
【0051】
本発明は、アナライト、特にタンパク質を調査するための本発明による方法において、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型−質量分析(MALDI−TOF−MS)を用いて使用するナノ粒子にも関する。
【0052】
本発明により使用したナノ粒子は、相補的な官能基とアフィニティ結合するための異なる官能基を有する表面を備えたコアを有する。異なる官能基を備えた異なる表面修飾に基づき、本発明によるナノ粒子は多数のアナライトの固定化のために適している。
【0053】
本発明の有利な実施形態は、アミノ基を設置することにより表面が官能化されているナノ粒子に関する。本発明の場合に、この種のナノ粒子は特に、活性化されたカルボキシ基を備えた少なくとも1種のタンパク質および/または少なくとも1種の核酸を共有結合により固定化し、かつ複合した混合物からそれを分離し、かつMALDI−TOF−MSを用いて直接分析するために適している。
【0054】
他の有利な実施形態は、表面がカルボキシ基を有するナノ粒子に関する。この種のナノ粒子は、特に、自由にアクセス可能なアミノ基を備えた少なくとも1種のタンパク質を共有結合により固定化し、かつ複合した混合物からそれを分離し、かつMALDI−TOF−MSを用いて直接分析するために適している。
【0055】
本発明の他の有利な実施形態は、表面がマレインイミド基を有するナノ粒子に関する。この種のナノ粒子は、特に、チオール基を備えた少なくとも1種のタンパク質を共有結合により固定化し、かつ複合した混合物からそれを分離し、かつMALDI−TOF−MSを用いて直接分析するために適している。
【0056】
本発明の他の実施形態の場合には、表面がアビジン基、ストレプトアビジン基および/またはニュートラビジン基を有するナノ粒子を準備することである。この種のナノ粒子は、特に、ビオチン基および/またはStrep−タグ基を備えたタンパク質を固定化し、かつ複合した混合物からそれを分離し、かつMALDI−TOF−MSを用いて直接分析するために適している。
【0057】
本発明の他の有利な実施形態は、表面がタンパク質A−ユニットを有するナノ粒子に関する。この種のナノ粒子は、特に、少なくとも1種の抗体および/または抗体結合性のタンパク質を固定化し、かつ複合した混合物からそれを分離し、かつMALDI−TOF−MSを用いて直接分析するために適している。
【0058】
本発明のさらに他の有利な実施形態は、表面がタンパク質G−ユニットを有するナノ粒子に関する。この種のナノ粒子は、特に、抗体および/または抗体結合性のタンパク質を固定化し、かつ複合した混合物からそれを分離し、かつMALDI−TOF−MSを用いて直接分析するために適している。
【0059】
本発明によるナノ粒子は、化学的に不活性な材料からなる、有利にガラス状の架橋したアルコキシシラン縮合物からなるコアを有し、その際、このコアの製造は有利にゾル−ゲル合成を用いてアルコキシシランの使用下で行う。本発明によるナノ粒子は、コアの組成によって、高い比重を有する。コアのこの高い比重は、本発明の場合には、コアの製造時にさらに重い化合物、特にタングステン酸塩との共縮合を行うことにより高めることができる。
【0060】
本発明のさらに有利な実施形態の場合には、さらに、異なる官能基を表面上に有しているナノ粒子が異なる色素ラベルを有していることが考慮される。この異なる色素ラベルは、一方で異なる表面修飾の区別を容易にする、つまり本発明による粒子の異なる官能基の区別を容易にする。他方でこの色素ラベルは本発明によるナノ粒子の取り扱いを容易にし、これは特に遠心分離の際に有利に作用する、それというのも極めて小さなペレットを容易に確認することができるためである。
【0061】
本発明は、仕上がったナノ粒子−懸濁液にも関し、このナノ粒子−懸濁液は少なくとも1種の本発明によるナノ粒子を、つまり前記した特別な表面修飾を備えたナノ粒子を、水性媒体中に、場合により他の添加剤、例えばpH調節剤、懸濁助剤などと一緒に有している。このようなナノ粒子懸濁液は、後続するMALDI−TOF−分析のための試料調製に直接、つまりアナライトの単離および精製に直接使用することができる。
【0062】
他の実施形態の場合には、本発明は、少なくとも1種の前記ナノ粒子、つまり前記官能基を有するナノ粒子、しかし有利には数種のナノ粒子を粉末および/または懸濁液の形態で有するキットにも関する。このようなキットは、多数の異なるアナライトに対して後続するMALDI−TOF−分析のための試料調製のために使用することができる。
【0063】
このアナライトを有するナノ粒子は特に有利な実施形態においてはMALDI試料キャリア上に1回だけ設置できるのではない。本発明の場合には有利に数回、特に乾燥工程および/またはマトリックス析出工程を経て2回〜100回、特に有利に10回〜20回の設置により、粒子がMALDIプロセスに不利な影響を与えずに、アナライトを試料キャリア上に濃縮することができる。
【0064】
アナライトの他に、分子量(ピーク状態)および/または濃度(ピーク高さ)の内部校正を行える他のペプチドおよび/またはタンパク質を適当にナノ粒子上に結合することができる。
【0065】
本発明の他の有利な実施形態は、引用形式請求項に記載されている。
【0066】
本発明を、次の実施例および図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0067】
実施例1
ナノ粒子のコアの製造
シリカ−キャリア
エタノール200mlに、テトラエトキシシラン12mMolおよびNH390mMolを添加した。この混合物を室温で24時間撹拌し、引き続き形成された粒子を数回遠心分離により精製した。この場合、平均粒子サイズ125nmのシリカ−粒子650mgが得られた。
【0068】
実施例2
コアの表面修飾
2.1 アミノ官能化された表面
実施例1中で得られたコアの水性懸濁液1質量%を25%のアンモニア10体積%と混合した。コアに対して、アミノプロピルトリエトキシシラン20質量%を添加し、これを室温で1時間撹拌した。この粒子を数回の遠心分離により精製した。得られた粒子は、表面に官能性アミノ基を有していた(0.1Mアセテート緩衝液中でゼータ電位:+35mV)。
【0069】
2.2 PEG化された表面
アミノ官能化された粒子(実施例2.1)1mgを10mMのリン酸塩緩衝液(pH:7.0)1ml中に懸濁させた。引き続き、ヘテロ官能性ポリエチレングリコール(例えばmPEG−スクシンイミジル−プロピオネート、t−Boc−NH−PEG−スクシンイミジル−プロピオネート、マレインイミド−PEG−スクシンイミジル−プロピオネートまたはこれらの混合物)1mgまで添加し、室温で3時間振盪した。表面上に保護基が存在する場合には、この保護基を1%トリフルオロ酢酸を用いて2時間処理することにより除去した。この粒子を、10mMのリン酸塩緩衝液(pH:7.0)1mlで2回洗浄した。
【0070】
この表面は、タンパク質の非特異的付加を抑制するのに適当であった。
【0071】
この表面は保護基の脱保護の後にアミノ基を有する場合、これは実施例2.6/2.7でさらに使用することができる。
【0072】
2.3 カルボキシにより官能化された表面
まず、テトラヒドロフラン中のアミノ官能化されたコアの2質量%の懸濁液を製造した。この溶液10mlにコハク酸無水物260mgを添加した。超音波を用いて5分間処理した後に、室温で1時間撹拌した。その後、このコアを数回の遠心分離を行うことにより精製した。得られたシリカ−コアは官能性カルボキシ基(0.1Mのアセテート緩衝液中のゼータ電位:−35mV)をその表面に有していて、平均粒子サイズ170nmを有する。
【0073】
2.4 ニトリロ三酢酸(NTA)表面
カルボキシで修飾したコア10mgを、アセトニトリル(MeCN)1mlで2回洗浄し、引き続きMeCN1ml中に収容した。これに、ジシクロヘキシルカルボジイミド10μMolおよびN−ヒドロキシスクシンイミド10μMolを添加した。引き続き、室温で2時間振盪した。その後、シクロヘキサン1mlで1回、MeCN1mlで1回洗浄した。この粒子を、引き続きMeCN1ml中に収容した。これに、N,N−ビス−カルボキシメチル−L−リシン4μMolを添加し、室温で3時間振盪した。その後、アセトニトリル1mlで1回、10mMのリン酸塩緩衝液(pH7.0)1mlで2回洗浄した。
【0074】
この反応により、一方で、官能性カルボキシル基の密度は高められ、他方でこの表面とNi2+イオンとが錯形成により結合することができる。次いで、この表面はHis−タグで修飾されたタンパク質と結合することができる。
【0075】
2.5 チオール表面
カルボキシで修飾したコア10mgを、アセトニトリル(MeCN)1mlで2回洗浄し、次いでMeCN1ml中に収容した。これに、ジシクロヘキシルカルボジイミド10μMolおよびN−ヒドロキシスクシンイミド10μMolを添加し、引き続き室温で2時間振盪した。次いで、シクロヘキサン1mlで1回、MeCN1mlで1回洗浄した。このコアを、次いでMeCN1ml中に収容した。これに、システイン500μgを添加し、室温で3時間振盪した。これに引き続き、アセトニトリル1mlで1回、10mMのリン酸塩緩衝液(pH7.0)1mlで2回洗浄した。
【0076】
この表面は、特にジスルフィド架橋を介してタンパク質を固定化するために適していた。
【0077】
2.6 マレインイミドにより活性化された表面
アミノ官能化されたコア500μgを10mMのリン酸塩緩衝液(pH7.0)1ml中に再懸濁させた。これに、スルホ−スクシンイミジル−4−(N−マレインイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート1.25μMolを添加し、室温で1時間振盪した。その後、冷たい10mMのリン酸塩緩衝液(pH7.0)で1回洗浄し、このコアを0.1Mのリン酸塩緩衝液(pH7.0)1ml中に収容した。
【0078】
2.7 ヨードアセチルにより活性化された表面
アミノ官能化されたコア500μgを10mMのリン酸塩緩衝液(pH7.0)1ml中に再懸濁させた。これに、スクシンイミジル−(4−ヨードアセチル)−アミノベンゾエート1.25μMolを添加し、室温で1時間振盪した。その後、冷たい0.1Mのリン酸塩緩衝液(pH7.0)で1回洗浄し、このコアを10mMのリン酸塩緩衝液(pH7.0)1ml中に収容した。
【0079】
この2.8および2.9の表面は遊離チオール基を有するタンパク質の結合のために適当である。
【0080】
2.8 ストレプトアビジンにより修飾された粒子
ストレプトアビジン15μgをMES緩衝液(pH5.0)1ml中に添加した。これに、カルボキシ官能化されたナノ粒子500μgおよびEDC100nMolを添加した。これを室温で3時間振盪させ、この粒子を遠心分離により除去し、PBS緩衝液1mlで2回洗浄した。PBS中に懸濁させた後、この粒子は200nmのサイズであり、その表面上にストレプトアビジン3質量%を有していた。この方法を用いて、他のタンパク質、例えばストレプトアクチンおよびタンパク質Gは表面上に固定化される。
【0081】
実施例3
MALDI
固定化およびストレプトアビジンを抱合するシリカ−ナノ粒子上のhuMIFの直接的なMALDI−MS−検出
図1a)はタンパク質を固定化していないナノ粒子の質量スペクトルを示す。このスペクトルはストレプトアビジンのモノマーのピークしか示していない。図1b)は、ナノ粒子をhuMIFおよびビオチン化されたアンチ−huMIF抗体の溶液中に添加しかつ引き続き緩衝溶液で数回洗浄した後のナノ粒子の質量スペクトルを示す。huMIFの明らかなシグナルが得られた。このことは、huMIFはナノ粒子に特異的に結合し、この後直接検出することができることを意味する。
【0082】
MALDI試料キャリア上でのナノ粒子の濃縮についての実施例
図2はMALDI試料キャリア上でのシリカ−ナノ粒子の濃縮を示す。図2(a)〜(c)は、シリカ−ナノ粒子それぞれ25μg上に固定化された、ビオチン化されたMF2(a)50pmol、(b)5.0pmol、および(c)0.50pmolの質量スペクトルを示す。(a)と(b)は、試料キャリア上での絶対的なアナライト量に相当して次第に弱まる強度を有するピークを示す。(c)ではアナライトのシグナルはもはや得られていない。図2(d)は(c)からの同じシリカ−ナノ粒子の質量スペクトルを示す。この場合、この粒子250μgを繰り返し適用することにより試料キャリア上に設置し、その結果、合計で5.0pmolのアナライト、つまり(c)の10倍の量のアナライトがキャリア上に存在した。この質量スペクトルは、(b)からの質量スペクトルとほとんど同じシグナル−ノイズ比を有するピークを示し、この場合にはターゲットに対して全く同様に5.0pmolが設置されていた。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】2つの質量スペクトルを示す。
【図2】他の質量スペクトルを示す。
Claims (43)
- 第1の官能基を有するアナライトを有する試料を準備し、第1の官能基と結合する相補的な第2の官能基を有する表面を備えたコアを有するナノ粒子を準備し、水性の液体中でのナノ粒子の懸濁液を準備し、少なくとも1種のアナライトを含有する試料をこのナノ粒子−懸濁液に添加するかまたは懸濁液をこのアナライトを含有する試料に添加し、アナライトをナノ粒子とアフィニティ結合させ、引き続き結合したアナライトを含有する懸濁液をMALDI−試料キャリア上に析出させ、このアナライトを分光分析により調査する、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型−質量分析(MALDI−TOF−MS)を用いる少なくとも1つのアナライトの調査方法。
- 第1の官能基は、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、ビオチン基、His−タグ、FLAG−タグ、Strep−Tag I基、Strep−Tag II基、ヒスチジン−タグ−基、FLAG−タグ−基、タンパク質Aに対する抗体、タンパク質Gに対する抗体、ビオチン化された抗体およびビオチン化されたレセプターからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
- 第1の官能基と結合する相補的な第2の官能基は、アミノ基、カルボキシ基、マレインイミド基、アビジン基、ストレプトアビジン基、ニュートラビジン基、金属キレート錯体、タンパク質A−ユニット、タンパク質G−ユニット、抗体、レセプターユニットまたはそれらの一部からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
- 第1の官能基がアナライトの天然の成分である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 第1の官能基を遺伝子工学的方法、生化学的、酵素学的および/または化学的誘導化または化学的合成法によってアナライト中へ導入する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- コアをアルコキシシランから製造する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 30〜400nm、有利に50〜150nmの直径を有するコアを製造する、請求項6に記載の方法。
- 第1の官能基と結合する相補的な第2の官能基を、グラフト重合、シラン化、化学的誘導化および類似の方法によりコアの表面上に設置する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- コアの表面が付加的機能性の設置によって修飾されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
- 化合物が、コアの表面上への他のタンパク質の非特異的吸着を抑制または低減するために設置されている、請求項9に記載の方法。
- エチレングリコール−オリゴマーがコアの表面に設置されている、請求項9または10に記載の方法。
- コアの表面にイオン交換機能が設置されている、請求項9に記載の方法。
- ナノ粒子をアナライトの結合後に、少なくとも1回の遠心分離および少なくとも1回の洗浄工程を用いて試料を含有する懸濁液から分離し、新たに懸濁させる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
- ナノ粒子を15000gで10分間遠心分離する、請求項13に記載の方法。
- ナノ粒子を低濃度の緩衝系、脱イオン水、有機溶剤または超臨界CO2で洗浄する、請求項13または14に記載の方法。
- MALDI−TOF−MS法の進行において使用されるマトリックスを、ナノ粒子含有の懸濁液の析出の前またはその後で、またはそれと一緒にMALDI試料キャリア上に設置する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
- アナライトを有するナノ粒子をMALDI試料キャリア上に数回設置する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
- 分子量の内部校正のためにまたは濃縮のためにアナライトの他にペプチドまたはタンパク質をナノ粒子上に結合させる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
- BSEテストの実施のため、腫瘍診断のためおよび感染症の診断のための、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
- 少なくとも1種のアナライトの相補的官能基とアフィニティ結合し、それにより少なくとも1種のアナライトを固定化する官能基を有する表面を備えたコアを有する、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型−質量分析(MALDI−TOF−MS)を用いてアナライトを調査するためのナノ粒子。
- 表面にアミノ基を有する、請求項20に記載のナノ粒子。
- 活性化されたカルボキシ基を備えた少なくとも1種のタンパク質および/または少なくとも1種の核酸を固定化し、かつ複合した混合物からそれを分離し、かつMALDI−TOF−MSを用いて直接調査するために適した、請求項21に記載のナノ粒子。
- 表面にカルボキシ基を有する、請求項20に記載のナノ粒子。
- 自由にアクセス可能なアミノ基を備えた少なくとも1種のタンパク質を共有結合により固定化し、かつ複合した混合物からそれを分離し、かつMALDI−TOF−MSを用いて直接調査するために適した、請求項23に記載のナノ粒子。
- 表面にマレインイミド基を有する、請求項20に記載のナノ粒子。
- チオール基を備えた少なくとも1種のタンパク質を共有結合により固定化し、かつ複合した混合物からそれを分離し、かつMALDI−TOF−MSを用いて直接調査するために適した、請求項25に記載のナノ粒子。
- 表面にアビジン基、ストレプトアビジン基および/またはニュートラビジン基を有する、請求項20に記載のナノ粒子。
- ビオチン基および/またはStrep−タグ基を備えた少なくとも1種のタンパク質を固定化し、かつ複合した混合物からそれを分離し、かつMALDI−TOF−MSを用いて直接調査するために適した、請求項27に記載のナノ粒子。
- 表面にタンパク質A−ユニットを有する、請求項20に記載のナノ粒子。
- 少なくとも1種の抗体および/または抗体結合性のタンパク質を固定化し、かつ複合した混合物からそれを分離し、かつMALDI−TOF−MSを用いて直接調査するために適した、請求項29に記載のナノ粒子。
- 表面にタンパク質G−ユニットを有する、請求項20に記載のナノ粒子。
- 少なくとも1種の抗体および/または抗体結合性のタンパク質を固定化し、かつ複合した混合物からそれを分離し、かつMALDI−TOF−MSを用いて直接調査するために適した、請求項31に記載のナノ粒子。
- 前記コアは化学的に不活性の材料からなる、請求項20〜32のいずれか1項に記載のナノ粒子。
- 前記コアは架橋したアルコキシシラン−縮合物からなる、請求項33に記載のナノ粒子。
- 前記コアはアルコキシシランから製造可能である、請求項20〜34のいずれか1項に記載のナノ粒子。
- 前記コアは比較的重い化合物との共縮合により製造可能である、請求項35に記載のナノ粒子。
- 前記コアはタングステン酸塩との共縮合により製造可能である、請求項36に記載のナノ粒子。
- 前記ナノ粒子は30〜400nm、有利に50nm〜150nmのサイズを有する、請求項20〜37に記載のいずれか1項に記載のナノ粒子。
- 前記ナノ粒子は色素ラベルを有する、請求項20〜38のいずれか1項に記載のナノ粒子。
- 請求項20〜39のいずれか1項に記載の少なくとも1種のナノ粒子を水性媒体中に含有する、ナノ粒子−懸濁液。
- 請求項20〜39のいずれか1項に記載の少なくとも1種のナノ粒子を粉末の形態で含有するおよび/または請求項40に記載の少なくとも1種のナノ粒子懸濁液を有する、キット。
- 請求項20〜39のいずれか1項に記載のナノ粒子、請求項40に記載のナノ粒子−懸濁液および/または請求項41に記載のキットの、ペプチドマッピングのための使用。
- 請求項20〜39のいずれか1項に記載のナノ粒子、請求項40に記載のナノ粒子−懸濁液および/または請求項41に記載のキットの、MALDI−TOF−MS法および他のMALDI−MS法を実施するための使用。
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