JP2005501709A - 酸化に対して不感受性であり、かつアミノカルボキシレートを含有する触媒を使用する酸性気体の脱硫法 - Google Patents
酸化に対して不感受性であり、かつアミノカルボキシレートを含有する触媒を使用する酸性気体の脱硫法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2005501709A JP2005501709A JP2003526529A JP2003526529A JP2005501709A JP 2005501709 A JP2005501709 A JP 2005501709A JP 2003526529 A JP2003526529 A JP 2003526529A JP 2003526529 A JP2003526529 A JP 2003526529A JP 2005501709 A JP2005501709 A JP 2005501709A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- metal
- group
- chelate complex
- gas stream
- iron
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Classifications
-
- B—PERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
- B01—PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
- B01D—SEPARATION
- B01D53/00—Separation of gases or vapours; Recovering vapours of volatile solvents from gases; Chemical or biological purification of waste gases, e.g. engine exhaust gases, smoke, fumes, flue gases, aerosols
- B01D53/14—Separation of gases or vapours; Recovering vapours of volatile solvents from gases; Chemical or biological purification of waste gases, e.g. engine exhaust gases, smoke, fumes, flue gases, aerosols by absorption
- B01D53/1493—Selection of liquid materials for use as absorbents
-
- B—PERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
- B01—PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
- B01D—SEPARATION
- B01D53/00—Separation of gases or vapours; Recovering vapours of volatile solvents from gases; Chemical or biological purification of waste gases, e.g. engine exhaust gases, smoke, fumes, flue gases, aerosols
- B01D53/34—Chemical or biological purification of waste gases
- B01D53/46—Removing components of defined structure
- B01D53/48—Sulfur compounds
- B01D53/52—Hydrogen sulfide
-
- B—PERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
- B01—PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
- B01D—SEPARATION
- B01D53/00—Separation of gases or vapours; Recovering vapours of volatile solvents from gases; Chemical or biological purification of waste gases, e.g. engine exhaust gases, smoke, fumes, flue gases, aerosols
- B01D53/14—Separation of gases or vapours; Recovering vapours of volatile solvents from gases; Chemical or biological purification of waste gases, e.g. engine exhaust gases, smoke, fumes, flue gases, aerosols by absorption
- B01D53/1456—Removing acid components
- B01D53/1468—Removing hydrogen sulfide
Landscapes
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- General Chemical & Material Sciences (AREA)
- Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
- Oil, Petroleum & Natural Gas (AREA)
- Analytical Chemistry (AREA)
- Environmental & Geological Engineering (AREA)
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Biomedical Technology (AREA)
- Treating Waste Gases (AREA)
- Gas Separation By Absorption (AREA)
- Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
- Exhaust Gas Treatment By Means Of Catalyst (AREA)
- Catalysts (AREA)
Abstract
本発明は、一般式(I)[式中、Xは水素、アルカリ金属またはNH4 +であり、nは1、2または3であり、かつ基R1〜R6の少なくとも1つはアルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基またはヒドロキシル基であり、かつその他の基は水素であり、かつ金属キレート錯体中の金属は、1より大きい酸化状態で存在していることができる多価の金属である]のキレートリガンドの存在下で酸性気体流からH2Sガスを触媒反応により除去するための方法に関する。さらに本発明は酸性気体流からH2Sガスを除去するための混合物に関し、この場合、該混合物はアミノカルボキシレート含有の金属キレート錯体を有しており、ならびに本発明は酸性気体流からH2Sガスを除去するためのアミノカルボキシレート含有金属キレート錯体の使用に関する。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノカルボキシレートを含有する触媒の存在下で酸性気体流からH2Sガスを触媒反応により除去するための方法、酸性気体流からH2Sガスを除去するための、アミノカルボキシレート含有の金属キレート錯体を含有する混合物、ならびに酸性気体流からH2Sガスを除去するためのアミノカルボキシレート含有金属キレート錯体の使用に関する。
【0002】
種々の工業的な、いわゆる酸性気体流中の著量のH2Sの存在は大きな環境問題である。酸性気体からH2Sを除去することに関する種々の方法が公知である。酸性気体からH2Sガスを除去するための重要な方法はいわゆるリキッド・レドックス法(Liquid-Redox-Prozess)である。この場合、水溶液中のH2SのS2−イオンを元素の硫黄へと還元し、かつレドックス触媒を還元する。この原理により運転される第一の方法の1つは、ストレットフォード法(Stretford-Prozess)であり、この場合、バナジウム触媒を使用する。この方法は環境の観点に関して問題があるので、その他の金属をベースとするレドックス触媒が使用される方法によって次第に取って代わられている。その際、多くの方法では金属として鉄が使用される。この場合、可溶性の鉄(III)キレート錯体がレドックスパートナーとして機能し、該錯体はS2−イオンが元素の硫黄へ酸化する際に自体、鉄(II)キレート錯体へと還元される。鉄錯体を含有する洗浄液を空気酸素によりガス処理し、その際、鉄(II)はふたたび鉄(III)へと酸化され、かつ洗浄液を循環させることができる。この方法において重要なことは、溶液中の鉄キレート錯体の濃度が、効率的な反応率を達成するために十分に高い濃度であることである。さらに方法のそれぞれの段階で鉄塩が沈澱することは望ましくない。従って鉄イオンは錯化された形で溶解したままである。このためには通常、アミノカルボキシレート化合物、たとえばニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)ならびにヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)を使用する。これらの錯体は再生の間に部分的に分解するという欠点を有する。
【0003】
たとえばD. McManus等のJournal of Molecular Catalysis A: Chemical 117(1997年)、第289〜297頁は、種々の鉄キレート錯体の分解速度の試験に関する。ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノジアセテート(IDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)ならびにシクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)が、その分解速度に関して試験され、かつリガンドの選択のための基準が詳細に説明されている。
【0004】
種々の金属キレート触媒の分解速度の類似の試験がArthur I. Martell等のCan. J. Chem.、第71巻、1993年、第1524〜1531頁に開示されている。この結果によれば、HEDTA、EDTAおよびNTAを比較すると、HEDTAが最も早く分解し、次いでEDTAが分解する一方で、NTAは最も安定していることが明らかである。
【0005】
それにもかかわらずこれらの錯体の酸化安定性は不十分である。US5,591,417は改善された酸化/還元法に関し、この場合、キレートリガンドとしてピリジンホスホネートを含有する触媒を使用している。US5,591,419によれば、これらの錯体は活性な金属キレートの酸化分解に対してより安定している。しかしこれらのリガンドは高価であり、かつ工業用の適用のためには入手が困難である。
【0006】
従って次の特性を有する新規のキレート化合物に対する要求が生じる:
− 一方では錯体は商業的な量で適切な費用で得られるべきである。さらに毒性を有していないか、または毒性がわずかであり、かつ環境に対して良好な相容性が所望される。たとえばEDTAおよびHEDTAは生物学的に容易に分解されず、かつ生物学的に容易に分解されうるNTAは、特に鉄NTAの場合、毒物学的な懸念に関して問題がある。
【0007】
− さらにH2Sガスから水性系中の液相への移行は高いpH値において特に効果的である。従って金属キレート錯体は、Fe(OH)2およびFe(OH)3の沈澱を回避するために、9まで、またはそれ以上のpH値において熱力学的に安定している。
【0008】
− さらに鉄(II)キレート錯体の安定性は、わずかにアルカリ性の条件下でのFeSの沈澱を防止するために十分な大きさでなくてはならない。
【0009】
− さらに鉄(II)キレート錯体と鉄(III)キレート錯体との間の安定性の違いは、H2Sによる鉄(III)キレート錯体の、鉄(II)キレート錯体への還元が可能であるように小さくなくてはならない。鉄(III)キレート錯体を安定化すべき場合、キレート錯体は鉄(III)段階のままであり、かつH2Sの酸化は行われない。
【0010】
− さらに鉄(III)キレート錯体の安定性は、鉄(II)キレート錯体の安定性よりも大きくあるべきであり、このことによって溶解した酸素による鉄(II)キレート錯体の酸化は再生の際の有利な反応である。従って鉄(II)を鉄(III)に対して安定化するキレート錯体はこの方法では不適切である。
【0011】
− 最後にこれらの鉄キレート錯体は酸素またはここから溶液中で発生するラジカルおよびイオンによる分解に対して安定していなくてはならない。
【0012】
従って本発明の課題は、前記の基準、特に酸化安定性を満足する金属キレート錯体を提供することである。
【0013】
前記課題は
a)H2S含有の酸性気体流と、金属キレート錯体を含有する水溶液とを反応させることにより酸性気体流中のH2S量を低減させ、その際、一般式(I)
【0014】
【化1】
[式中、
Xは水素、アルカリ金属またはNH4 +、有利には水素またはナトリウムであり、その際、式(I)のキレートリガンドはトリカルボン酸、一ナトリウム塩、二ナトリウム塩または三ナトリウム塩であってもよく、
nは1または2であり、
基R1〜R6の少なくとも1つはアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アルキルオキシ基またはヒドロキシル基であり、その際、残りの基は水素であり、かつ金属キレート錯体の金属は1より大きい酸化状態で存在することができる多価の金属である]のキレートリガンドを使用し、その際、金属の少なくとも一部はH2Sを含有する酸性気体流との反応後に、反応前よりも低い酸化状態(還元体)で存在し、
b)工程a)で得られ、元素の硫黄および、その中で金属の少なくとも一部が還元体として存在する金属キレート錯体を含有する混合物を酸化剤により再生し、その際、金属の還元体を本来の酸化状態の金属へと酸化し、かつ
c)再生された多価金属キレート錯体を工程a)へと返送する
工程を包含し、その際、工程a)およびb)は単独の反応容器中で実施することができる、酸性気体流からH2Sガスを触媒反応により除去するための方法により解決される。
【0015】
この場合、酸性気体流とは、H2Sを有害な副生成物として含有している全ての気体流であると理解すべきである。このようなガスは天然に由来する天然ガス、合成ガス、石炭ガス化からの炭化水素混合物、石油留分の「水素処理法」からの炭化水素混合物、「促進された(enhanced)」油の取得において使用される二酸化炭素、ビスコースの製造からの排ガス、炭化ケイ素の製造からの排ガス、地熱を取得するための装置からの排ガスおよび廃水処理の際に生じる排ガスである。
【0016】
酸性気体流中のH2S含有率は広い範囲で変化してもよい。数ppmのH2Sを含有する酸性気体流を使用することができる。しかしまた酸性気体流はH2Sを主成分として含有していてもよい。
【0017】
a)金属キレート錯体との反応による酸性気体流中のH2Sの還元
本発明により使用される金属キレート錯体は、ニトリロ三酢酸から誘導されるキレートリガンドを含有している。これは置換されたニトリロ三酢酸誘導体である。この一般式(I)の置換されたニトリロ三酢酸誘導体中で、基R1〜R6の少なくとも1つはアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アルキルオキシ基またはヒドロキシル基であり、かつ残りの基は水素原子である。有利には基R1〜R6の1〜3つは相応する基であり、特に有利にはR1〜R6の1つは相応する基である。特に有利には単に基R6がアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アルキルオキシ基またはヒドロキシル基であり、その一方で残りの基は水素である。
【0018】
基R1〜R6の少なくとも1つは、アルキル基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アルキルオキシ基またはヒドロキシル基であり、有利にはアルキル基、カルボキシ基またはヒドロキシル基であり、特に有利にはC1〜C6−アルキル基またはヒドロキシル基であり、とりわけ有利にはC1〜C3−アルキル基であり、かつ特にメチル基である。
【0019】
nは1、2または3であってよく、つまり窒素原子とカルボキシル基との間にはC1架橋(n=1)、C2架橋(n=2)またはC3架橋(n=3)が存在する。有利にはn=1である。従って特に有利にはメチルグリシン二酢酸(MGDA)または相応する一ナトリウム塩、二ナトリウム塩、三ナトリウム塩をキレートリガンドとして使用する。
【0020】
しかし、n=2である化合物もまた適切である。これらの化合物の中で、イソセリン二酢酸(ISDA)または相応する一ナトリウム塩、二ナトリウム塩または三ナトリウム塩が特に有利である。
【0021】
金属キレート錯体を形成するために適切な多価の金属は一般に銅、コバルト、バナジウム、マンガン、白金、タングステン、ニッケル、水銀、スズ、鉛および鉄から選択されている。有利な適切な金属は銅、コバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄から選択されている。特に有利には鉄を多価金属として使用する。
【0022】
本発明により使用される金属キレート錯体は従来技術において使用される金属キレート錯体に対して高い酸化安定性により優れているものの、水溶液がさらに安定化試薬を含有していることが可能である。その際、全ての通例の安定化試薬が適切である。従ってたとえばチオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸アルカリ金属塩、チオ硫酸アルカリ土類金属塩、チオ硫酸アンモニウムの前駆物質およびチオスルフェートイオンを使用することができる。さらに特定の低分子脂肪族アルコールは、物質の沈澱を回避し、かつ金属キレート錯体の分解を遅延させるか、または防止するために適切である。この低分子アルコールは一般に一価、二価または多価のアルコールである。有利には3〜8個の炭素原子を有するヒドロキシアルコール、特にt−ブタノール、イソ−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびソルビトールが有利である。
【0023】
これらの安定化試薬は金属キレート錯体1モルに対して、安定化試薬、有利にはアルコールを一般に0.1〜1.5モル、有利には金属キレート錯体1モルに対して安定化試薬、有利にはアルコールを0.3〜1.0モル使用する。
【0024】
本発明による方法はいわゆるリキッド・レドックス法である。リキッド・レドックス法の異なった変法が公知であり、その際、本発明による方法は一般に全ての変法で使用することができる。最も知られているリキッド・レドックス法は、バナジウム/アントラキノンをベースとする金属錯体を使用するストレットフォード(R)法、同様にバナジウム/アントラキノン錯体を使用するTakahax (R)法、鉄キレート錯体を使用するSulfint (R)法、Sulferox (R)法およびLo-Cat (R)法であり、その際、最後に挙げた2つの方法は同様に鉄キレート錯体を使用する。本発明による方法により鉄キレート錯体を使用することは特に有利であるので、本発明による方法は有利にはSulfint (R)法、 Sulferox (R)法または Lo Cat (R)法で使用する。これらの方法は方法技術的な違いとは別に、特に使用される鉄キレート錯体の濃度において異なっている。
【0025】
本発明による方法は広い濃度範囲の金属イオンを使用することができる。一般に本発明による方法における金属イオン濃度は0.001〜6モル/lであり、有利には0.001〜4モル/l、特に有利には0.001〜3モル/lである。鉄を金属イオンとして使用する場合、Sulfint (R)法での鉄濃度は約0.001モル/lであり、LoCat (R)法では約0.02モル/lであり、かつSulferox (R)法の場合、0.01〜3モル/lである。
【0026】
金属キレート錯体、特に鉄キレート錯体の存在下で酸性気体流中のH2Sガスを除去するためのリキッド・レドックス法におけるもう1つの重要なパラメータはpH値である。H2Sガスの液相への移行は水性系中、高いpH値で特に効果的である。しかし特に高いpH値では相応する金属の水酸化物、鉄の場合にはFe(OH)2および特にFe(OH)3が生じることが問題である。従って金属キレート錯体は特に高いpH値で十分な熱力学的な安定性を有していなくてはならない。本発明による方法は一般に4〜12、有利には5〜11、特に有利には6〜9のpH値を有する水溶液中で実施する。つまり、本発明により使用される金属キレート錯体は12までのpH値で熱力学的に十分に安定しているので、金属水酸化物の沈澱は、場合により安定化試薬、特にアルコールを添加して防止される。適切な安定化試薬はすでに記載したものである。
【0027】
工程a)における反応の過程で、H2Sの酸性の性質に基づいてpH値の低下が生じる。pH値は、使用される酸性気体が別の酸性種、たとえば二酸化炭素を含有する場合にさらに低下する。しかし反応はpH値のが高い場合には、低いpH値の場合よりも効果的であるので、アルカリ性の材料を水性の反応溶液に添加することが有利である。適切なアルカリ性の材料はたとえばNaOH、KOH、アンモニア、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属重炭酸塩である。これらを一般に連続的に系に添加して、反応混合物中の酸性成分を中和する。アルカリ性材料の添加は本発明による方法のいずれの段階でも行うことができる。しかし有利には工程b)の再生段階でアルカリ性材料を添加する。
【0028】
本発明による方法における温度は一般に重要ではない。通常、本発明による方法は5〜100℃、有利には10〜90℃、特に有利には20〜60℃の温度で実施する。
【0029】
圧力は本発明による方法では重要ではない。有利には本発明による方法を標準圧力で実施する。
【0030】
本発明により使用されるキレートリガンドは適切な製造方法により、たとえば当業者に公知のストレッカー(Strecker)合成により製造する。
【0031】
本発明により使用される金属キレート錯体は一般に、一般式(I)の相応するキレートリガンドと適切な金属塩、金属酸化物または水酸化物とを水溶液中で、場合によりアルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンの存在下で反応させることにより、または相応するアンモニウム塩またはアルカリ金属塩を反応させることにより得られる。正確な反応条件は当業者に公知である。金属対キレートリガンドの比は一般に1:4〜2:1、有利には1:3〜1.5:1、特に有利には1:2〜1.2:1である。
【0032】
工程a)における水溶液中の、本発明により使用される金属キレート錯体とH2Sを含有する酸性気体流との接触時間は広い範囲で変更することができる。一般に接触時間は0.5秒〜120秒、有利には1秒〜60秒、特に有利には1秒〜10秒の範囲である。
【0033】
一般にH2Sの90質量%以上、有利には95質量%以上、特に有利には99質量%以上を酸性気体流から除去する。
【0034】
b)工程a)で得られる混合物の再生
工程b)では工程a)で得られた、元素の硫黄および金属キレート錯体を含有する混合物中の再生を行い、その際、金属の少なくとも一部は酸化剤により還元された形で存在し、その際、金属の還元体を本来の酸化状態の金属へと酸化する。
【0035】
有利には工程a)で得られた混合物を酸化剤としての酸素と接触させる。この場合、酸素の概念は本発明によれば、純粋な酸素に限定されず、さらに空気、酸素が富化された空気またはその他の酸素含有ガスも包含する。
【0036】
酸化剤は一般に化学量論比で、または有利には還元した形で存在する金属(金属錯体の形で)に対して過剰で使用する。
【0037】
工程a)で得られた混合物と酸化剤との接触は、有利な実施態様ではキレート溶液中に、たとえば向流法により空気をバブリングすることによって行う。
【0038】
温度は本発明による方法の再生工程b)中で広い範囲で変更することができる。一般に工程b)は工程a)と同じ温度で実施する。場合により工程b)における温度はわずかに低い。従って工程b)は一般に5〜100℃、有利には10〜90℃、特に有利には20〜60℃で実施する。
【0039】
工程b)における圧力もまた広い範囲で変更することができる。一般に工程b)を標準圧力で実施する。
【0040】
pH値もまた有利には工程a)において調節されたpH値に相応する。これは一般に4〜12、有利には5〜11、特に有利には6〜9である。
【0041】
工程a)で生じた元素の硫黄を反応混合物から分離する。硫黄の分離は再生工程b)の前でも、後でも、その間でも行うことができる。有利な実施態様では硫黄を再生工程b)の前またはその間に、工程a)で得られた混合物から分離する。硫黄の分離は適切な、当業者に公知の方法によって行うことができる。たとえば工程a)を実施する反応器中で硫黄を沈澱させることにより回収することが可能である。硫黄は定期的に系から除去するか、または連続的にバルブを介して除去することができる。さらに、濾過、浮選、遠心分離または溶融および相分離による分離によって硫黄を水性の系から除去するか、または当業者に公知の適切な装置によって除去することができる。その際、必ずしも全ての硫黄を除去する必要はない。次いで、混合物中に硫黄の残留物が残留している場合にその後の方法工程を実施することもできる。
【0042】
工程a)で還元された形の金属を該金属の相応する酸化状態へと酸化する再生工程b)に引き続き、再生した多価金属キレート錯体を工程a)へと返送する。
【0043】
c)再生した多価金属キレート錯体の、工程a)への返送
返送前に一般に過剰の酸化剤、有利には過剰の空気を、当業者に公知の方法により混合物から除去する。再生し、かつ過剰の酸化剤を除去した溶液を工程a)へ返送する。その際、還元した形の金属対本来の酸化状態の金属の形の比は一般に1:10〜1:1000、有利には1:50〜1:1000である。
【0044】
d)適切な装置
一般に従来技術から公知の、H2S含有酸性気体と水性の金属キレート錯体溶液との緊密な接触を可能にする方法のいずれも使用することができる。その際、本発明による方法の実施は、H2Sの酸化および金属キレート錯体溶液の再生を同じ反応器中、向流で実施する好気性の系中で可能である。H2Sの酸化および金属キレート錯体溶液の再生を別々の反応器または反応器の反応帯域中で実施する嫌気性の運転法もまた可能である。
【0045】
工程a)の反応器は有利には吸収塔であり、その際、任意の適切な吸収塔を使用することができる。これはたとえばスタチックミキサー、充填カラム、たとえばスクラバー塔またはベンチュリ管である。工程b)を実施するために適切な反応器は充填カラム、噴霧塔および気体のバブリングを備えた反応器である。
【0046】
e)その他の添加剤
本発明による方法において存在する混合物はさらに当業者に公知の別の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤はたとえば緩衝物質、たとえば燐酸塩もしくは炭酸塩緩衝液である。その他の添加剤はたとえばシュウ酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウムならびに硫黄の分離を容易にする添加剤、消泡剤および/または湿潤剤である。さらにすでに上で記載した安定化試薬を添加することができる。
【0047】
殊に有利な実施態様では本発明による方法は以下のとおりに、有利には図1に記載されている装置で実施する:
図1では符号は次のものを表す:
1 H2Sガスを含有する酸性気体流、
2 吸収塔、
3 処理されたH2S不含のガス、
4 冷却器、
5 再生反応器、
6 酸化、
7 空気、
8 過剰の/消費された空気、
9 スラリーポンプ、
10 熱交換器、
11 分離器、
12 液状の硫黄。
【0048】
H2Sガスを含有する酸性気体流1を反応器(吸収塔)2に供給し、ここで本発明による金属キレート錯体の水溶液と接触させる。この溶液は有利には工程b)で再生した混合物を返送することにより得られる。工程a)において反応器(吸収塔)から出た気体流は、低減したH2S含有率を有するか、またはH2S不含である。硫黄(元素の形で)および金属が還元された形でその中に存在する本発明による金属キレート錯体を含有する混合物が残留する。この混合物を別の反応器5または別の反応帯域に供給し、ここで再生(酸化6;工程b))が行われる。このために酸素を含有する気体流、有利には空気7を反応器に案内し、該反応器中で再生(酸化)を行う。有利には反応器の底部に沈澱した硫黄を有利には連続的に方法から除去し、このために混合物の一部を硫黄の分離のための装置(分離器)11に供給し、その後、硫黄を有利には熱交換器10中で液状にする。硫黄を分離した後に混合物のこの割合をふたたび、再生が行われる反応器に供給し、その一方で分離した硫黄12を通常は液体の形で再使用することができる。再生工程b)では、本発明による金属キレート錯体の形で存在する、還元した形の金属の酸化6が、酸素の、有利には空気7の形での供給により行われる。再生の間に過剰の酸素または酸素を含有する気体を反応器から除去する8。次いで再生された金属キレート錯体溶液を本発明による方法の相応する工程c)で、工程a)を行う反応器(吸収塔)へ返送する。
【0049】
本出願のもう1つの対象は、すでに前記したとおり、酸性気体流からH2Sガスを除去するための、少なくとも1種の金属キレート錯体を含有する混合物である。有利にはこの混合物はさらに安定化試薬を含有している。適切な安定化試薬はすでに前記したとおりである。さらに本発明による混合物中に別の添加剤が含有されていてもよく、その際、適切な添加剤は同様に前記のものである。
【0050】
この混合物は有利には前記のとおり、工程a)、b)およびc)を含む方法で使用する。
【0051】
本発明のもう1つの対象は、酸性気体流からH2Sガスを除去するための本発明による金属キレート錯体の使用である。
【0052】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0053】
実施例
以下の例において次の金属キレート錯体を使用した:
a)1:2の比で鉄およびメチルグリシン二酢酸(MGDA)からなる金属キレート錯体(本発明による)、
b)1:2の比で鉄とニトリロ三酢酸(NTA)とからなる金属キレート錯体(比較試験)。
【0054】
1.金属キレート錯体の製造(一般的な作業規定)
反応容器中に、蒸留水中に溶解した相応するキレート錯体のナトリウム塩0.036モルをFe(NO3)3×9H2O 0.018モルと共に添加し、かつ蒸留水により1lになるまで満たす。溶液に応じて希釈したNaOHまたは希釈したHNO3によりpH値を8.5に調整する。鉄(III)キレート錯体溶液1lが得られる。
【0055】
2.水溶液からのH2Sガスの除去
そのつど1.で製造した溶液800mlを反応容器へ移し、フラスコ中に存在するガラスフリットを介して窒素で約5分間パージする。
【0056】
引き続きそのつどの試験溶液を、ふたたびガラスフリットを介してH2Sにより約4l/hの気体流で約10分間処理する。その際、H2S中に含有されている硫黄(S2−)をそのつどの鉄キレート錯体中に含有されているFe3+によって酸化し、その際、Fe3+はFe2+へと還元され、かつ元素の硫黄が形成され、該硫黄は反応容器中で試験の過程で富化する。引き続き、開始時と同様に混合物を窒素で約5分間パージする。
【0057】
次いでガラスフリットを介して空気により約80l/hの空気流で試験溶液を再生する。空気中に含有されている酸素を酸化し、その際、今度は鉄キレート錯体中に含有されているFe2+はふたたびFe3+へと酸化される。
【0058】
これまで記載した手順により試験の時間に応じてn回繰り返されるサイクルが生じる。
【0059】
以下に記載した方法の試験条件を挙げる:
温度:室温、
圧力:標準圧力、
H2S流:約4l/h(サイクルあたり約10分)、
N2流:約4l/h(サイクルあたり約5分)、
空気流:約80l/h(サイクルあたり約1時間)、
撹拌機:400rpm/分、
pH値:8.5。
【0060】
添付の図2は本発明による方法を実施するための実験室用装置の構成を略図により示している:
図面において符号は次のものを表す:
1 H2S貯蔵容器、
2 H2S供給導管、
3 N2供給導管、
4 流量計、
5 空気の供給、
6 過圧弁、
7 排気導管、
8 反応フラスコ、
9 撹拌機、
10 洗浄瓶、
11 排気導管。
【0061】
以下の図3および4ではそのつどのキレート錯体の分解の試験およびサイクルの回数に依存するH2S量測定の結果を記載している。
【0062】
その際、図3はサイクルの回数に依存する本発明による鉄−メチルグリシン二酢酸(MGDA)錯体の分解を示しており、かつ図4はサイクルの回数に依存する相応する鉄−ニトリロ三酢酸錯体の分解(比較試験)を示している。
【0063】
そのつどの錯体の分解は次の図式に従って進行する:
【0064】
【化2】
【0065】
図3では黒塗りの三角がサイクルの回数に依存するメチルグリシン二酢酸(MGDA)の含有率を示している。黒塗りの菱形はサイクルの回数に依存するイミドジアセテート(IDA)の割合を示しており、かつ白抜きの円形はサイクルの回数に依存して、それまでに溶液に導通させたH2S量の合計を(g)で示している。
【0066】
図4では黒塗りの三角がサイクルの回数に依存するニトリロ三酢酸(NTA)の量を示しており、黒塗りの菱形はサイクルの回数に依存するイミドジアセテート(IDA)の割合を示しており、黒塗りの四角はサイクルの回数に依存するシュウ酸の割合を示しており、白抜きの円形はサイクルの回数に依存して、それまでに溶液に導通させたH2Sの量の孔径を(g)で示しており、かつ星形はサイクルの回数に依存して、それまでに沈澱した硫黄の量の合計を(g)で示している。
【0067】
図3(本発明による)および4(比較試験)とを比較すると、MGDA(本発明による)の分解は、同じ反応条件下でのNTA(比較試験)よりも明らかに遅く行われることが判明する。相応する分解生成物の増加はそのつど使用されるキレート錯体化合物MGDAまたはNTAの低下に相応して挙動する。
【0068】
図5には、種々の酸性気体の脱硫において使用されるキレート錯体ならびに本発明により使用されるキレート錯体の、時間に依存する酸化安定性の試験の結果が示されている。
【0069】
ここでx軸は時間を時間(h)で示し、かつy軸はキレート錯体の使用量に対するキレート錯体の割合を%で示している。左の棒グラフはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のデータを示しており、左から2つ目の棒グラフはニトリロ三酢酸(NTA)のデータを示しており、左から三番目の棒グラフはメチルグリシン二酢酸(MGDA)(本発明による)のデータを示し、かつ右の棒グラフはエチルグリシン二酢酸(EGDA)(本発明による)のデータを示している。
【0070】
酸化安定性は水溶液中、pH値8.5および温度65℃で測定した。この溶液中でそのつどの錯化剤0.6%、H2O2 2%およびマンガン60ppmが存在していた。
【0071】
本発明により使用される錯体MGDAおよびEGDAはH2O2に対して、比較例で使用される錯体よりも大きな酸化安定性を有していることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明による方法を実施するための装置を示す図
【図2】本発明による方法を実施するための実験室用装置を示す図
【図3】本発明による鉄−メチルグリシン二酢酸錯体の分解を示す図
【図4】鉄−ニトリロ三酢酸錯体(比較例)の分解を示す図
【図5】種々のキレート錯体ならびに本発明により使用されるキレート錯体の酸化安定性の試験結果を示すグラフの図
【符号の説明】
【0073】
図1:
1 H2Sガスを含有する酸性気体流、 2 吸収塔、 3 処理されたH2S不含のガス、 4 冷却器、 5 再生反応器、 6 酸化、 7 空気、 8 過剰の/消費された空気、 9 スラリーポンプ、 10 熱交換器、 11 分離器、 12 液状の硫黄。
図2:
1 H2S貯蔵容器、 2 H2S供給導管、 3 N2供給導管、 4 流量計、 5 空気の供給、 6 過圧弁、 7 排気導管、 8 反応フラスコ、 9 撹拌機、 10 洗浄瓶、 11 排気導管
【0001】
本発明は、アミノカルボキシレートを含有する触媒の存在下で酸性気体流からH2Sガスを触媒反応により除去するための方法、酸性気体流からH2Sガスを除去するための、アミノカルボキシレート含有の金属キレート錯体を含有する混合物、ならびに酸性気体流からH2Sガスを除去するためのアミノカルボキシレート含有金属キレート錯体の使用に関する。
【0002】
種々の工業的な、いわゆる酸性気体流中の著量のH2Sの存在は大きな環境問題である。酸性気体からH2Sを除去することに関する種々の方法が公知である。酸性気体からH2Sガスを除去するための重要な方法はいわゆるリキッド・レドックス法(Liquid-Redox-Prozess)である。この場合、水溶液中のH2SのS2−イオンを元素の硫黄へと還元し、かつレドックス触媒を還元する。この原理により運転される第一の方法の1つは、ストレットフォード法(Stretford-Prozess)であり、この場合、バナジウム触媒を使用する。この方法は環境の観点に関して問題があるので、その他の金属をベースとするレドックス触媒が使用される方法によって次第に取って代わられている。その際、多くの方法では金属として鉄が使用される。この場合、可溶性の鉄(III)キレート錯体がレドックスパートナーとして機能し、該錯体はS2−イオンが元素の硫黄へ酸化する際に自体、鉄(II)キレート錯体へと還元される。鉄錯体を含有する洗浄液を空気酸素によりガス処理し、その際、鉄(II)はふたたび鉄(III)へと酸化され、かつ洗浄液を循環させることができる。この方法において重要なことは、溶液中の鉄キレート錯体の濃度が、効率的な反応率を達成するために十分に高い濃度であることである。さらに方法のそれぞれの段階で鉄塩が沈澱することは望ましくない。従って鉄イオンは錯化された形で溶解したままである。このためには通常、アミノカルボキシレート化合物、たとえばニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)ならびにヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)を使用する。これらの錯体は再生の間に部分的に分解するという欠点を有する。
【0003】
たとえばD. McManus等のJournal of Molecular Catalysis A: Chemical 117(1997年)、第289〜297頁は、種々の鉄キレート錯体の分解速度の試験に関する。ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノジアセテート(IDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)ならびにシクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)が、その分解速度に関して試験され、かつリガンドの選択のための基準が詳細に説明されている。
【0004】
種々の金属キレート触媒の分解速度の類似の試験がArthur I. Martell等のCan. J. Chem.、第71巻、1993年、第1524〜1531頁に開示されている。この結果によれば、HEDTA、EDTAおよびNTAを比較すると、HEDTAが最も早く分解し、次いでEDTAが分解する一方で、NTAは最も安定していることが明らかである。
【0005】
それにもかかわらずこれらの錯体の酸化安定性は不十分である。US5,591,417は改善された酸化/還元法に関し、この場合、キレートリガンドとしてピリジンホスホネートを含有する触媒を使用している。US5,591,419によれば、これらの錯体は活性な金属キレートの酸化分解に対してより安定している。しかしこれらのリガンドは高価であり、かつ工業用の適用のためには入手が困難である。
【0006】
従って次の特性を有する新規のキレート化合物に対する要求が生じる:
− 一方では錯体は商業的な量で適切な費用で得られるべきである。さらに毒性を有していないか、または毒性がわずかであり、かつ環境に対して良好な相容性が所望される。たとえばEDTAおよびHEDTAは生物学的に容易に分解されず、かつ生物学的に容易に分解されうるNTAは、特に鉄NTAの場合、毒物学的な懸念に関して問題がある。
【0007】
− さらにH2Sガスから水性系中の液相への移行は高いpH値において特に効果的である。従って金属キレート錯体は、Fe(OH)2およびFe(OH)3の沈澱を回避するために、9まで、またはそれ以上のpH値において熱力学的に安定している。
【0008】
− さらに鉄(II)キレート錯体の安定性は、わずかにアルカリ性の条件下でのFeSの沈澱を防止するために十分な大きさでなくてはならない。
【0009】
− さらに鉄(II)キレート錯体と鉄(III)キレート錯体との間の安定性の違いは、H2Sによる鉄(III)キレート錯体の、鉄(II)キレート錯体への還元が可能であるように小さくなくてはならない。鉄(III)キレート錯体を安定化すべき場合、キレート錯体は鉄(III)段階のままであり、かつH2Sの酸化は行われない。
【0010】
− さらに鉄(III)キレート錯体の安定性は、鉄(II)キレート錯体の安定性よりも大きくあるべきであり、このことによって溶解した酸素による鉄(II)キレート錯体の酸化は再生の際の有利な反応である。従って鉄(II)を鉄(III)に対して安定化するキレート錯体はこの方法では不適切である。
【0011】
− 最後にこれらの鉄キレート錯体は酸素またはここから溶液中で発生するラジカルおよびイオンによる分解に対して安定していなくてはならない。
【0012】
従って本発明の課題は、前記の基準、特に酸化安定性を満足する金属キレート錯体を提供することである。
【0013】
前記課題は
a)H2S含有の酸性気体流と、金属キレート錯体を含有する水溶液とを反応させることにより酸性気体流中のH2S量を低減させ、その際、一般式(I)
【0014】
【化1】
[式中、
Xは水素、アルカリ金属またはNH4 +、有利には水素またはナトリウムであり、その際、式(I)のキレートリガンドはトリカルボン酸、一ナトリウム塩、二ナトリウム塩または三ナトリウム塩であってもよく、
nは1または2であり、
基R1〜R6の少なくとも1つはアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アルキルオキシ基またはヒドロキシル基であり、その際、残りの基は水素であり、かつ金属キレート錯体の金属は1より大きい酸化状態で存在することができる多価の金属である]のキレートリガンドを使用し、その際、金属の少なくとも一部はH2Sを含有する酸性気体流との反応後に、反応前よりも低い酸化状態(還元体)で存在し、
b)工程a)で得られ、元素の硫黄および、その中で金属の少なくとも一部が還元体として存在する金属キレート錯体を含有する混合物を酸化剤により再生し、その際、金属の還元体を本来の酸化状態の金属へと酸化し、かつ
c)再生された多価金属キレート錯体を工程a)へと返送する
工程を包含し、その際、工程a)およびb)は単独の反応容器中で実施することができる、酸性気体流からH2Sガスを触媒反応により除去するための方法により解決される。
【0015】
この場合、酸性気体流とは、H2Sを有害な副生成物として含有している全ての気体流であると理解すべきである。このようなガスは天然に由来する天然ガス、合成ガス、石炭ガス化からの炭化水素混合物、石油留分の「水素処理法」からの炭化水素混合物、「促進された(enhanced)」油の取得において使用される二酸化炭素、ビスコースの製造からの排ガス、炭化ケイ素の製造からの排ガス、地熱を取得するための装置からの排ガスおよび廃水処理の際に生じる排ガスである。
【0016】
酸性気体流中のH2S含有率は広い範囲で変化してもよい。数ppmのH2Sを含有する酸性気体流を使用することができる。しかしまた酸性気体流はH2Sを主成分として含有していてもよい。
【0017】
a)金属キレート錯体との反応による酸性気体流中のH2Sの還元
本発明により使用される金属キレート錯体は、ニトリロ三酢酸から誘導されるキレートリガンドを含有している。これは置換されたニトリロ三酢酸誘導体である。この一般式(I)の置換されたニトリロ三酢酸誘導体中で、基R1〜R6の少なくとも1つはアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アルキルオキシ基またはヒドロキシル基であり、かつ残りの基は水素原子である。有利には基R1〜R6の1〜3つは相応する基であり、特に有利にはR1〜R6の1つは相応する基である。特に有利には単に基R6がアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アルキルオキシ基またはヒドロキシル基であり、その一方で残りの基は水素である。
【0018】
基R1〜R6の少なくとも1つは、アルキル基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アルキルオキシ基またはヒドロキシル基であり、有利にはアルキル基、カルボキシ基またはヒドロキシル基であり、特に有利にはC1〜C6−アルキル基またはヒドロキシル基であり、とりわけ有利にはC1〜C3−アルキル基であり、かつ特にメチル基である。
【0019】
nは1、2または3であってよく、つまり窒素原子とカルボキシル基との間にはC1架橋(n=1)、C2架橋(n=2)またはC3架橋(n=3)が存在する。有利にはn=1である。従って特に有利にはメチルグリシン二酢酸(MGDA)または相応する一ナトリウム塩、二ナトリウム塩、三ナトリウム塩をキレートリガンドとして使用する。
【0020】
しかし、n=2である化合物もまた適切である。これらの化合物の中で、イソセリン二酢酸(ISDA)または相応する一ナトリウム塩、二ナトリウム塩または三ナトリウム塩が特に有利である。
【0021】
金属キレート錯体を形成するために適切な多価の金属は一般に銅、コバルト、バナジウム、マンガン、白金、タングステン、ニッケル、水銀、スズ、鉛および鉄から選択されている。有利な適切な金属は銅、コバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄から選択されている。特に有利には鉄を多価金属として使用する。
【0022】
本発明により使用される金属キレート錯体は従来技術において使用される金属キレート錯体に対して高い酸化安定性により優れているものの、水溶液がさらに安定化試薬を含有していることが可能である。その際、全ての通例の安定化試薬が適切である。従ってたとえばチオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸アルカリ金属塩、チオ硫酸アルカリ土類金属塩、チオ硫酸アンモニウムの前駆物質およびチオスルフェートイオンを使用することができる。さらに特定の低分子脂肪族アルコールは、物質の沈澱を回避し、かつ金属キレート錯体の分解を遅延させるか、または防止するために適切である。この低分子アルコールは一般に一価、二価または多価のアルコールである。有利には3〜8個の炭素原子を有するヒドロキシアルコール、特にt−ブタノール、イソ−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびソルビトールが有利である。
【0023】
これらの安定化試薬は金属キレート錯体1モルに対して、安定化試薬、有利にはアルコールを一般に0.1〜1.5モル、有利には金属キレート錯体1モルに対して安定化試薬、有利にはアルコールを0.3〜1.0モル使用する。
【0024】
本発明による方法はいわゆるリキッド・レドックス法である。リキッド・レドックス法の異なった変法が公知であり、その際、本発明による方法は一般に全ての変法で使用することができる。最も知られているリキッド・レドックス法は、バナジウム/アントラキノンをベースとする金属錯体を使用するストレットフォード(R)法、同様にバナジウム/アントラキノン錯体を使用するTakahax (R)法、鉄キレート錯体を使用するSulfint (R)法、Sulferox (R)法およびLo-Cat (R)法であり、その際、最後に挙げた2つの方法は同様に鉄キレート錯体を使用する。本発明による方法により鉄キレート錯体を使用することは特に有利であるので、本発明による方法は有利にはSulfint (R)法、 Sulferox (R)法または Lo Cat (R)法で使用する。これらの方法は方法技術的な違いとは別に、特に使用される鉄キレート錯体の濃度において異なっている。
【0025】
本発明による方法は広い濃度範囲の金属イオンを使用することができる。一般に本発明による方法における金属イオン濃度は0.001〜6モル/lであり、有利には0.001〜4モル/l、特に有利には0.001〜3モル/lである。鉄を金属イオンとして使用する場合、Sulfint (R)法での鉄濃度は約0.001モル/lであり、LoCat (R)法では約0.02モル/lであり、かつSulferox (R)法の場合、0.01〜3モル/lである。
【0026】
金属キレート錯体、特に鉄キレート錯体の存在下で酸性気体流中のH2Sガスを除去するためのリキッド・レドックス法におけるもう1つの重要なパラメータはpH値である。H2Sガスの液相への移行は水性系中、高いpH値で特に効果的である。しかし特に高いpH値では相応する金属の水酸化物、鉄の場合にはFe(OH)2および特にFe(OH)3が生じることが問題である。従って金属キレート錯体は特に高いpH値で十分な熱力学的な安定性を有していなくてはならない。本発明による方法は一般に4〜12、有利には5〜11、特に有利には6〜9のpH値を有する水溶液中で実施する。つまり、本発明により使用される金属キレート錯体は12までのpH値で熱力学的に十分に安定しているので、金属水酸化物の沈澱は、場合により安定化試薬、特にアルコールを添加して防止される。適切な安定化試薬はすでに記載したものである。
【0027】
工程a)における反応の過程で、H2Sの酸性の性質に基づいてpH値の低下が生じる。pH値は、使用される酸性気体が別の酸性種、たとえば二酸化炭素を含有する場合にさらに低下する。しかし反応はpH値のが高い場合には、低いpH値の場合よりも効果的であるので、アルカリ性の材料を水性の反応溶液に添加することが有利である。適切なアルカリ性の材料はたとえばNaOH、KOH、アンモニア、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属重炭酸塩である。これらを一般に連続的に系に添加して、反応混合物中の酸性成分を中和する。アルカリ性材料の添加は本発明による方法のいずれの段階でも行うことができる。しかし有利には工程b)の再生段階でアルカリ性材料を添加する。
【0028】
本発明による方法における温度は一般に重要ではない。通常、本発明による方法は5〜100℃、有利には10〜90℃、特に有利には20〜60℃の温度で実施する。
【0029】
圧力は本発明による方法では重要ではない。有利には本発明による方法を標準圧力で実施する。
【0030】
本発明により使用されるキレートリガンドは適切な製造方法により、たとえば当業者に公知のストレッカー(Strecker)合成により製造する。
【0031】
本発明により使用される金属キレート錯体は一般に、一般式(I)の相応するキレートリガンドと適切な金属塩、金属酸化物または水酸化物とを水溶液中で、場合によりアルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンの存在下で反応させることにより、または相応するアンモニウム塩またはアルカリ金属塩を反応させることにより得られる。正確な反応条件は当業者に公知である。金属対キレートリガンドの比は一般に1:4〜2:1、有利には1:3〜1.5:1、特に有利には1:2〜1.2:1である。
【0032】
工程a)における水溶液中の、本発明により使用される金属キレート錯体とH2Sを含有する酸性気体流との接触時間は広い範囲で変更することができる。一般に接触時間は0.5秒〜120秒、有利には1秒〜60秒、特に有利には1秒〜10秒の範囲である。
【0033】
一般にH2Sの90質量%以上、有利には95質量%以上、特に有利には99質量%以上を酸性気体流から除去する。
【0034】
b)工程a)で得られる混合物の再生
工程b)では工程a)で得られた、元素の硫黄および金属キレート錯体を含有する混合物中の再生を行い、その際、金属の少なくとも一部は酸化剤により還元された形で存在し、その際、金属の還元体を本来の酸化状態の金属へと酸化する。
【0035】
有利には工程a)で得られた混合物を酸化剤としての酸素と接触させる。この場合、酸素の概念は本発明によれば、純粋な酸素に限定されず、さらに空気、酸素が富化された空気またはその他の酸素含有ガスも包含する。
【0036】
酸化剤は一般に化学量論比で、または有利には還元した形で存在する金属(金属錯体の形で)に対して過剰で使用する。
【0037】
工程a)で得られた混合物と酸化剤との接触は、有利な実施態様ではキレート溶液中に、たとえば向流法により空気をバブリングすることによって行う。
【0038】
温度は本発明による方法の再生工程b)中で広い範囲で変更することができる。一般に工程b)は工程a)と同じ温度で実施する。場合により工程b)における温度はわずかに低い。従って工程b)は一般に5〜100℃、有利には10〜90℃、特に有利には20〜60℃で実施する。
【0039】
工程b)における圧力もまた広い範囲で変更することができる。一般に工程b)を標準圧力で実施する。
【0040】
pH値もまた有利には工程a)において調節されたpH値に相応する。これは一般に4〜12、有利には5〜11、特に有利には6〜9である。
【0041】
工程a)で生じた元素の硫黄を反応混合物から分離する。硫黄の分離は再生工程b)の前でも、後でも、その間でも行うことができる。有利な実施態様では硫黄を再生工程b)の前またはその間に、工程a)で得られた混合物から分離する。硫黄の分離は適切な、当業者に公知の方法によって行うことができる。たとえば工程a)を実施する反応器中で硫黄を沈澱させることにより回収することが可能である。硫黄は定期的に系から除去するか、または連続的にバルブを介して除去することができる。さらに、濾過、浮選、遠心分離または溶融および相分離による分離によって硫黄を水性の系から除去するか、または当業者に公知の適切な装置によって除去することができる。その際、必ずしも全ての硫黄を除去する必要はない。次いで、混合物中に硫黄の残留物が残留している場合にその後の方法工程を実施することもできる。
【0042】
工程a)で還元された形の金属を該金属の相応する酸化状態へと酸化する再生工程b)に引き続き、再生した多価金属キレート錯体を工程a)へと返送する。
【0043】
c)再生した多価金属キレート錯体の、工程a)への返送
返送前に一般に過剰の酸化剤、有利には過剰の空気を、当業者に公知の方法により混合物から除去する。再生し、かつ過剰の酸化剤を除去した溶液を工程a)へ返送する。その際、還元した形の金属対本来の酸化状態の金属の形の比は一般に1:10〜1:1000、有利には1:50〜1:1000である。
【0044】
d)適切な装置
一般に従来技術から公知の、H2S含有酸性気体と水性の金属キレート錯体溶液との緊密な接触を可能にする方法のいずれも使用することができる。その際、本発明による方法の実施は、H2Sの酸化および金属キレート錯体溶液の再生を同じ反応器中、向流で実施する好気性の系中で可能である。H2Sの酸化および金属キレート錯体溶液の再生を別々の反応器または反応器の反応帯域中で実施する嫌気性の運転法もまた可能である。
【0045】
工程a)の反応器は有利には吸収塔であり、その際、任意の適切な吸収塔を使用することができる。これはたとえばスタチックミキサー、充填カラム、たとえばスクラバー塔またはベンチュリ管である。工程b)を実施するために適切な反応器は充填カラム、噴霧塔および気体のバブリングを備えた反応器である。
【0046】
e)その他の添加剤
本発明による方法において存在する混合物はさらに当業者に公知の別の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤はたとえば緩衝物質、たとえば燐酸塩もしくは炭酸塩緩衝液である。その他の添加剤はたとえばシュウ酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウムならびに硫黄の分離を容易にする添加剤、消泡剤および/または湿潤剤である。さらにすでに上で記載した安定化試薬を添加することができる。
【0047】
殊に有利な実施態様では本発明による方法は以下のとおりに、有利には図1に記載されている装置で実施する:
図1では符号は次のものを表す:
1 H2Sガスを含有する酸性気体流、
2 吸収塔、
3 処理されたH2S不含のガス、
4 冷却器、
5 再生反応器、
6 酸化、
7 空気、
8 過剰の/消費された空気、
9 スラリーポンプ、
10 熱交換器、
11 分離器、
12 液状の硫黄。
【0048】
H2Sガスを含有する酸性気体流1を反応器(吸収塔)2に供給し、ここで本発明による金属キレート錯体の水溶液と接触させる。この溶液は有利には工程b)で再生した混合物を返送することにより得られる。工程a)において反応器(吸収塔)から出た気体流は、低減したH2S含有率を有するか、またはH2S不含である。硫黄(元素の形で)および金属が還元された形でその中に存在する本発明による金属キレート錯体を含有する混合物が残留する。この混合物を別の反応器5または別の反応帯域に供給し、ここで再生(酸化6;工程b))が行われる。このために酸素を含有する気体流、有利には空気7を反応器に案内し、該反応器中で再生(酸化)を行う。有利には反応器の底部に沈澱した硫黄を有利には連続的に方法から除去し、このために混合物の一部を硫黄の分離のための装置(分離器)11に供給し、その後、硫黄を有利には熱交換器10中で液状にする。硫黄を分離した後に混合物のこの割合をふたたび、再生が行われる反応器に供給し、その一方で分離した硫黄12を通常は液体の形で再使用することができる。再生工程b)では、本発明による金属キレート錯体の形で存在する、還元した形の金属の酸化6が、酸素の、有利には空気7の形での供給により行われる。再生の間に過剰の酸素または酸素を含有する気体を反応器から除去する8。次いで再生された金属キレート錯体溶液を本発明による方法の相応する工程c)で、工程a)を行う反応器(吸収塔)へ返送する。
【0049】
本出願のもう1つの対象は、すでに前記したとおり、酸性気体流からH2Sガスを除去するための、少なくとも1種の金属キレート錯体を含有する混合物である。有利にはこの混合物はさらに安定化試薬を含有している。適切な安定化試薬はすでに前記したとおりである。さらに本発明による混合物中に別の添加剤が含有されていてもよく、その際、適切な添加剤は同様に前記のものである。
【0050】
この混合物は有利には前記のとおり、工程a)、b)およびc)を含む方法で使用する。
【0051】
本発明のもう1つの対象は、酸性気体流からH2Sガスを除去するための本発明による金属キレート錯体の使用である。
【0052】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0053】
実施例
以下の例において次の金属キレート錯体を使用した:
a)1:2の比で鉄およびメチルグリシン二酢酸(MGDA)からなる金属キレート錯体(本発明による)、
b)1:2の比で鉄とニトリロ三酢酸(NTA)とからなる金属キレート錯体(比較試験)。
【0054】
1.金属キレート錯体の製造(一般的な作業規定)
反応容器中に、蒸留水中に溶解した相応するキレート錯体のナトリウム塩0.036モルをFe(NO3)3×9H2O 0.018モルと共に添加し、かつ蒸留水により1lになるまで満たす。溶液に応じて希釈したNaOHまたは希釈したHNO3によりpH値を8.5に調整する。鉄(III)キレート錯体溶液1lが得られる。
【0055】
2.水溶液からのH2Sガスの除去
そのつど1.で製造した溶液800mlを反応容器へ移し、フラスコ中に存在するガラスフリットを介して窒素で約5分間パージする。
【0056】
引き続きそのつどの試験溶液を、ふたたびガラスフリットを介してH2Sにより約4l/hの気体流で約10分間処理する。その際、H2S中に含有されている硫黄(S2−)をそのつどの鉄キレート錯体中に含有されているFe3+によって酸化し、その際、Fe3+はFe2+へと還元され、かつ元素の硫黄が形成され、該硫黄は反応容器中で試験の過程で富化する。引き続き、開始時と同様に混合物を窒素で約5分間パージする。
【0057】
次いでガラスフリットを介して空気により約80l/hの空気流で試験溶液を再生する。空気中に含有されている酸素を酸化し、その際、今度は鉄キレート錯体中に含有されているFe2+はふたたびFe3+へと酸化される。
【0058】
これまで記載した手順により試験の時間に応じてn回繰り返されるサイクルが生じる。
【0059】
以下に記載した方法の試験条件を挙げる:
温度:室温、
圧力:標準圧力、
H2S流:約4l/h(サイクルあたり約10分)、
N2流:約4l/h(サイクルあたり約5分)、
空気流:約80l/h(サイクルあたり約1時間)、
撹拌機:400rpm/分、
pH値:8.5。
【0060】
添付の図2は本発明による方法を実施するための実験室用装置の構成を略図により示している:
図面において符号は次のものを表す:
1 H2S貯蔵容器、
2 H2S供給導管、
3 N2供給導管、
4 流量計、
5 空気の供給、
6 過圧弁、
7 排気導管、
8 反応フラスコ、
9 撹拌機、
10 洗浄瓶、
11 排気導管。
【0061】
以下の図3および4ではそのつどのキレート錯体の分解の試験およびサイクルの回数に依存するH2S量測定の結果を記載している。
【0062】
その際、図3はサイクルの回数に依存する本発明による鉄−メチルグリシン二酢酸(MGDA)錯体の分解を示しており、かつ図4はサイクルの回数に依存する相応する鉄−ニトリロ三酢酸錯体の分解(比較試験)を示している。
【0063】
そのつどの錯体の分解は次の図式に従って進行する:
【0064】
【化2】
【0065】
図3では黒塗りの三角がサイクルの回数に依存するメチルグリシン二酢酸(MGDA)の含有率を示している。黒塗りの菱形はサイクルの回数に依存するイミドジアセテート(IDA)の割合を示しており、かつ白抜きの円形はサイクルの回数に依存して、それまでに溶液に導通させたH2S量の合計を(g)で示している。
【0066】
図4では黒塗りの三角がサイクルの回数に依存するニトリロ三酢酸(NTA)の量を示しており、黒塗りの菱形はサイクルの回数に依存するイミドジアセテート(IDA)の割合を示しており、黒塗りの四角はサイクルの回数に依存するシュウ酸の割合を示しており、白抜きの円形はサイクルの回数に依存して、それまでに溶液に導通させたH2Sの量の孔径を(g)で示しており、かつ星形はサイクルの回数に依存して、それまでに沈澱した硫黄の量の合計を(g)で示している。
【0067】
図3(本発明による)および4(比較試験)とを比較すると、MGDA(本発明による)の分解は、同じ反応条件下でのNTA(比較試験)よりも明らかに遅く行われることが判明する。相応する分解生成物の増加はそのつど使用されるキレート錯体化合物MGDAまたはNTAの低下に相応して挙動する。
【0068】
図5には、種々の酸性気体の脱硫において使用されるキレート錯体ならびに本発明により使用されるキレート錯体の、時間に依存する酸化安定性の試験の結果が示されている。
【0069】
ここでx軸は時間を時間(h)で示し、かつy軸はキレート錯体の使用量に対するキレート錯体の割合を%で示している。左の棒グラフはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のデータを示しており、左から2つ目の棒グラフはニトリロ三酢酸(NTA)のデータを示しており、左から三番目の棒グラフはメチルグリシン二酢酸(MGDA)(本発明による)のデータを示し、かつ右の棒グラフはエチルグリシン二酢酸(EGDA)(本発明による)のデータを示している。
【0070】
酸化安定性は水溶液中、pH値8.5および温度65℃で測定した。この溶液中でそのつどの錯化剤0.6%、H2O2 2%およびマンガン60ppmが存在していた。
【0071】
本発明により使用される錯体MGDAおよびEGDAはH2O2に対して、比較例で使用される錯体よりも大きな酸化安定性を有していることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明による方法を実施するための装置を示す図
【図2】本発明による方法を実施するための実験室用装置を示す図
【図3】本発明による鉄−メチルグリシン二酢酸錯体の分解を示す図
【図4】鉄−ニトリロ三酢酸錯体(比較例)の分解を示す図
【図5】種々のキレート錯体ならびに本発明により使用されるキレート錯体の酸化安定性の試験結果を示すグラフの図
【符号の説明】
【0073】
図1:
1 H2Sガスを含有する酸性気体流、 2 吸収塔、 3 処理されたH2S不含のガス、 4 冷却器、 5 再生反応器、 6 酸化、 7 空気、 8 過剰の/消費された空気、 9 スラリーポンプ、 10 熱交換器、 11 分離器、 12 液状の硫黄。
図2:
1 H2S貯蔵容器、 2 H2S供給導管、 3 N2供給導管、 4 流量計、 5 空気の供給、 6 過圧弁、 7 排気導管、 8 反応フラスコ、 9 撹拌機、 10 洗浄瓶、 11 排気導管
Claims (12)
- 酸性気体流からH2Sガスを触媒反応により除去するための方法において、
a)H2S含有の酸性気体流と、金属キレート錯体を含有する水溶液とを反応させることにより酸性気体流中のH2S量を低減させ、その際、一般式(I)
Xは水素、アルカリ金属またはNH4 +であり、
nは1、2または3であり、かつ
基R1〜R6の少なくとも1つはアルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基またはヒドロキシル基であり、かつ残りの基は水素であり、かつ金属キレート錯体の金属は1より大きい酸化状態で存在することができる多価の金属である]のキレートリガンドを使用し、その際、金属の少なくとも一部はH2Sを含有する酸性気体流との反応後に、反応前よりも低い酸化状態(還元体)で存在し、
b)工程a)で得られ、元素の硫黄および、その中で金属の少なくとも一部が還元された形で存在する金属キレート錯体を含有する混合物を酸化剤により再生し、その際、金属の還元体を本来の酸化状態の金属へと酸化し、かつ
c)再生された多価金属キレート錯体を工程a)へと返送する
工程を包含し、その際、工程a)およびb)を単一の反応容器中で実施することができる、酸性気体流からH2Sガスを触媒反応により除去するための方法。 - 一般式(I)のキレートリガンド中で基R6がアルキル基、ヒドロキシル基またはカルボキシ基であり、かつ基R1〜R5が水素である、請求項1記載の方法。
- nが1であり、かつR6がC1〜C3−アルキル基である、請求項2記載の方法。
- nが2であり、かつR6がヒドロキシル基である、請求項2記載の方法。
- 式(I)の化合物がメチルグリシン二酢酸または相応する一ナトリウム塩、二ナトリウム塩または三ナトリウム塩である、請求項3記載の方法。
- 金属が鉄、銅、コバルト、ニッケルおよびマンガンから選択されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
- 金属が鉄である、請求項6記載の方法。
- 水溶液が安定化試薬を含有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
- 安定化試薬がチオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸アルカリ金属塩、チオ硫酸アルカリ土類金属塩、チオスルフェートイオンの前駆物質および一価、二価または多価のアルコールから選択されている、請求項8記載の方法。
- 請求項1から7までのいずれか1項記載の金属キレート錯体を少なくとも1種含有する、酸性気体流からH2Sガスを除去するための混合物。
- さらに安定化試薬を含有する、請求項10記載の混合物。
- H2Sガスを酸性気体流から除去するための請求項1から7までのいずれか1項記載の金属キレート錯体の使用。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
DE10144890A DE10144890A1 (de) | 2001-09-12 | 2001-09-12 | Verfahren zur Entschwefelung von Sauergasen mittels oxidationsunempfindlicher, aminocarboxylhaltiger Katalysatoren |
PCT/EP2002/010131 WO2003022406A1 (de) | 2001-09-12 | 2002-09-10 | Verfahren zur entschwefelung von sauergasen mittels oxidationsunempfindlicher, aminocarboxylathaltiger katalysatoren |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005501709A true JP2005501709A (ja) | 2005-01-20 |
JP2005501709A5 JP2005501709A5 (ja) | 2005-11-17 |
Family
ID=7698755
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003526529A Withdrawn JP2005501709A (ja) | 2001-09-12 | 2002-09-10 | 酸化に対して不感受性であり、かつアミノカルボキシレートを含有する触媒を使用する酸性気体の脱硫法 |
Country Status (12)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US6998099B2 (ja) |
EP (1) | EP1427510B1 (ja) |
JP (1) | JP2005501709A (ja) |
KR (1) | KR20040044906A (ja) |
CN (1) | CN1564705A (ja) |
AT (1) | ATE346675T1 (ja) |
BR (1) | BR0212465A (ja) |
CA (1) | CA2460390A1 (ja) |
DE (2) | DE10144890A1 (ja) |
ES (1) | ES2276963T3 (ja) |
MX (1) | MXPA04002196A (ja) |
WO (1) | WO2003022406A1 (ja) |
Families Citing this family (14)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7662294B1 (en) | 2004-02-02 | 2010-02-16 | Cox Jr Henry Wilmore | Method for reducing organic contamination |
KR100635698B1 (ko) * | 2005-05-24 | 2006-10-17 | 한국전력공사 | 혼합가스 중의 산성가스 분리용 흡수제 및 혼합가스로부터산성가스의 분리방법 |
US7682520B2 (en) * | 2006-08-10 | 2010-03-23 | Diversified Industries Ltd. | Composition and method for chelated scavenging compounds |
US8609926B1 (en) | 2006-11-21 | 2013-12-17 | Henry Wilmore Cox, Jr. | Methods for managing sulfide in wastewater systems |
WO2008137517A1 (en) * | 2007-05-07 | 2008-11-13 | Hydrite Chemical Co. | Systems, compositions, and/or methods for depolymerizing cellulose and/or starch |
KR100947985B1 (ko) * | 2008-03-18 | 2010-03-18 | 성균관대학교산학협력단 | 액체주석을 이용한 연료가스의 고온탈황방법 및 액체금속을이용한 연료가스의 고온탈황장치 |
CA2917252A1 (en) | 2013-07-16 | 2015-01-22 | Axel Carstens | New salts, crystals, complexes, and derivatives of threonine diacetic acid, a process to prepare threonine diacetic acid, and the use thereof |
US9657248B1 (en) * | 2014-03-14 | 2017-05-23 | Biosystems Consulting, Inc. | Systems, devices, compositions, and/or methods for de-sulphurizing acid gases |
US10131558B1 (en) | 2016-02-29 | 2018-11-20 | Biosystems Consulting, Inc. | Compositions, methods, and/or systems for managing sulfide |
WO2018071613A1 (en) * | 2016-10-14 | 2018-04-19 | Biosystems Consulting, Inc. Dba Advanced Oxidation Technology | Treatment of hydrogen sulfide gas under aerobic conditions |
CN111630143A (zh) | 2018-01-30 | 2020-09-04 | 伊士曼化工公司 | 包含氨基羧酸类螯合剂的组合物 |
US11174180B1 (en) | 2018-04-19 | 2021-11-16 | Streamline Innovations, Inc. | Removing sulphur-based contaminants and nitrogen-based contaminants from water streams |
CN110876883B (zh) * | 2018-09-06 | 2022-06-21 | 中国石油化工股份有限公司 | 脱除气体中硫化氢的湿式氧化还原的方法 |
CN113578391B (zh) * | 2021-08-11 | 2023-10-27 | 四川炳辉环保科技有限责任公司 | 湿法液相脱硫催化剂及其制备方法 |
Family Cites Families (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CA1078145A (en) | 1975-06-10 | 1980-05-27 | Erwin Hartert | Removal of co2 and/or h2s from cracked gases |
US4528817A (en) * | 1981-11-27 | 1985-07-16 | The Dow Chemical Company | Purifying geothermal steam |
US4758416A (en) * | 1986-12-30 | 1988-07-19 | Shell Oil Company | Removal of H2 S from gas streams |
US5591417A (en) * | 1992-04-15 | 1997-01-07 | Mobil Oil Corporation | Removing SOx, CO and NOx from flue gases |
DE4444347A1 (de) * | 1994-12-14 | 1996-06-20 | Basf Ag | Verwendung von Glycin-N,N-diessigsäure-Derivaten als Komplexbildner für Erdalkali- und Schwermetallionen bei der Förderung und beim Transport von Erdöl und Erdgas |
US5591419A (en) * | 1996-01-16 | 1997-01-07 | Wheelabrator Clean Air Systems Inc. | Oxidation-reduction process |
-
2001
- 2001-09-12 DE DE10144890A patent/DE10144890A1/de not_active Withdrawn
-
2002
- 2002-09-10 CN CNA02819909XA patent/CN1564705A/zh active Pending
- 2002-09-10 CA CA002460390A patent/CA2460390A1/en not_active Abandoned
- 2002-09-10 US US10/488,921 patent/US6998099B2/en not_active Expired - Fee Related
- 2002-09-10 JP JP2003526529A patent/JP2005501709A/ja not_active Withdrawn
- 2002-09-10 KR KR10-2004-7003692A patent/KR20040044906A/ko not_active Application Discontinuation
- 2002-09-10 MX MXPA04002196A patent/MXPA04002196A/es not_active Application Discontinuation
- 2002-09-10 BR BR0212465-3A patent/BR0212465A/pt not_active Application Discontinuation
- 2002-09-10 DE DE50208857T patent/DE50208857D1/de not_active Revoked
- 2002-09-10 ES ES02777055T patent/ES2276963T3/es not_active Expired - Lifetime
- 2002-09-10 AT AT02777055T patent/ATE346675T1/de active
- 2002-09-10 WO PCT/EP2002/010131 patent/WO2003022406A1/de active IP Right Grant
- 2002-09-10 EP EP02777055A patent/EP1427510B1/de not_active Revoked
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
CA2460390A1 (en) | 2003-03-20 |
DE50208857D1 (de) | 2007-01-11 |
EP1427510B1 (de) | 2006-11-29 |
WO2003022406A1 (de) | 2003-03-20 |
ES2276963T3 (es) | 2007-07-01 |
CN1564705A (zh) | 2005-01-12 |
US20040241068A1 (en) | 2004-12-02 |
KR20040044906A (ko) | 2004-05-31 |
MXPA04002196A (es) | 2004-06-07 |
ATE346675T1 (de) | 2006-12-15 |
BR0212465A (pt) | 2004-10-19 |
US6998099B2 (en) | 2006-02-14 |
EP1427510A1 (de) | 2004-06-16 |
DE10144890A1 (de) | 2003-03-27 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP0055497B1 (en) | Removal of hydrogen sulphide and carbonyl sulphide from gaseous mixtures | |
JP2005501709A (ja) | 酸化に対して不感受性であり、かつアミノカルボキシレートを含有する触媒を使用する酸性気体の脱硫法 | |
CA2240820C (en) | Regenerative method and composition for removing sulfides from gas streams | |
EP0279667B1 (en) | Process for the removal of hydrogen sulfide and optionally carbon dioxide from gaseous streams | |
JP5829692B2 (ja) | 高圧酸化還元脱硫法 | |
CA1189682A (en) | Sulfur removal from a gas stream | |
US6872371B2 (en) | Method and apparatus for NOx and SO2 removal | |
EP0066307A2 (en) | Process for the removal of acid gases from gaseous streams | |
CN103599682B (zh) | 一种超重力液相氧化还原去除硫化氢的方法及其专用设备 | |
JPS60153921A (ja) | サワーh↓2s含有気体流からのh↓2sの除去方法 | |
WO2007028539A1 (en) | Process for the removal in continuous of hydrogen sulfide from gaseous streams | |
JPS62110733A (ja) | スクラツビングによるガス除去方法 | |
US4348368A (en) | Method of removing hydrogen sulfide from gases | |
US6165436A (en) | High-pressure sulfur recovery process | |
EP0361895B1 (en) | Regeneration of chelated polyvalent metal solutions by controlled potential electrolysis | |
de Angelis et al. | New method for H2S removal in acid solutions | |
EP0271203B1 (en) | Method of stabilizing solutions of chelated polyvalent metals | |
US5094824A (en) | H2 S removal process | |
CA1100289A (en) | Refining a gas containing hydrogen sulfide, nitrogen oxides and other contaminants | |
CA1126484A (en) | Method for desulfurizing gases with iron oxide | |
JPH0811170B2 (ja) | 硫化水素除去に用いるキレ−ト剤の分解を防止する方法及びそれに用いるレドツクス触媒調合品 | |
Diaz | H2S removal |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A761 | Written withdrawal of application |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 Effective date: 20060630 |