JP2005500861A - 細胞を単離する方法及びその使用 - Google Patents
細胞を単離する方法及びその使用 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2005500861A JP2005500861A JP2003525686A JP2003525686A JP2005500861A JP 2005500861 A JP2005500861 A JP 2005500861A JP 2003525686 A JP2003525686 A JP 2003525686A JP 2003525686 A JP2003525686 A JP 2003525686A JP 2005500861 A JP2005500861 A JP 2005500861A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- cells
- fetal
- cell
- microhygienic
- markers
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Classifications
-
- G—PHYSICS
- G01—MEASURING; TESTING
- G01N—INVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
- G01N33/00—Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
- G01N33/48—Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
- G01N33/50—Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
- G01N33/53—Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor
- G01N33/569—Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor for microorganisms, e.g. protozoa, bacteria, viruses
- G01N33/56966—Animal cells
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q1/00—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
- C12Q1/68—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
- C12Q1/6876—Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes
- C12Q1/6881—Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes for tissue or cell typing, e.g. human leukocyte antigen [HLA] probes
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q1/00—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
- C12Q1/68—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
- C12Q1/6876—Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes
- C12Q1/6883—Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes for diseases caused by alterations of genetic material
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q2600/00—Oligonucleotides characterized by their use
- C12Q2600/156—Polymorphic or mutational markers
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q2600/00—Oligonucleotides characterized by their use
- C12Q2600/158—Expression markers
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q2600/00—Oligonucleotides characterized by their use
- C12Q2600/16—Primer sets for multiplex assays
Landscapes
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
- Immunology (AREA)
- Zoology (AREA)
- Analytical Chemistry (AREA)
- Molecular Biology (AREA)
- Wood Science & Technology (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Microbiology (AREA)
- Biotechnology (AREA)
- Cell Biology (AREA)
- Genetics & Genomics (AREA)
- Physics & Mathematics (AREA)
- Biochemistry (AREA)
- Biophysics (AREA)
- Hematology (AREA)
- Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
- Pathology (AREA)
- General Engineering & Computer Science (AREA)
- Urology & Nephrology (AREA)
- Biomedical Technology (AREA)
- Tropical Medicine & Parasitology (AREA)
- Virology (AREA)
- Food Science & Technology (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- General Physics & Mathematics (AREA)
- Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
Abstract
本発明は、細胞、特に胎児細胞及び栄養芽細胞、を取り出しそして特定するための非侵襲的方法に関する。本発明は、染色体異常及び突然変異を特定するために、特に染色体及び単一遺伝子障害の遺伝子診断を行うことにより出産前診断で特定するために、細胞を使用する方法を含む。本発明は、胎児起源の細胞を確認する方法も含む。
Description
【発明の分野】
【0001】
本願は、細胞、特に胎児細胞及び栄養芽細胞、を取り出しそして特定するための非侵襲的方法に関する。本発明は、染色体異常及び突然変異を特定するために、特に染色体及び単一遺伝子障害 (single gene disorder) の遺伝子診断を行うことによる出産前診断のために、細胞を使用する方法を含む。本発明は、胎児起源の細胞を確認する方法も含む。
【発明の背景】
【0002】
約0.5%の夫婦は、遺伝子障害を有する子供を有する高いリスクがある。そのような遺伝子障害には、膵嚢胞性繊維症、ハンチントン病、β−地中海貧血、及び筋強直性ジストロフィーが含まれる。例えば、オーストラリアでは、人口の25人に1人は、膵嚢胞性繊維症突然変異のキャリヤであるので、最近、膵嚢胞性繊維症のための新生児スクリーニングが、全ての出産を追跡するために実行されている。
【0003】
単一遺伝子障害に加えて、染色体異常は、自然流産及び新生児に見られる最も一般的な遺伝子障害である。染色体21、18、13、X及びYに関連するトリソミーは、最大のグループであり、トリソミー21又はダウン症候群が最も頻度が高く、生産700人毎に約1人の割合で起こる。トリソミー13及び18は、特徴的先天性異常症候群で出産予定日に到達し、出生直後の期間内に死に至る唯一の他の常染色体トリソミーである。残りの生産トリソミーの個体は、余分な性染色体、つまりXXY、XYY、又はXXXを有する。出産前診断は、重荷、胎児における染色体異常、特にダウン症候群を検知しようとして行われる。ダウン症候群は、ヒトにおける心的遅れの最も重要な遺伝子的原因であり、そして先天性心疾患及び白血病の高いリスクとも関係している。
【0004】
出産前診断は、妊娠期間中の胎児における単一遺伝子障害又は染色体異常のいずれかを検知するために行われる。現在、出産前診断は、胎児における潜在的染色体異常を特定するために、絨毛膜絨毛サンプリング(CVS)(10〜12週間)又は羊水穿刺(14〜16週間)のいずれかの形態での非侵襲的操作を含む。これら両方の操作には、流産のリスク(1〜2%)がある。従って、出産前試験は、高齢出産の婦人(>35歳)、異常母体血清スクリーニングの婦人又は以前に染色体異常の胎児を持ったことがある婦人を含む、高いリスクがあると予想される婦人にのみ申し入れられる。
【0005】
出産前診断は、通常、絨毛細胞又は羊水細胞をサンプリングするのに、非侵襲的方法によって行われる。これら方法のサンプリングで、その時点の胎児の胎児細胞も確実に試験される。その時点の胎児からの又は最近流産した胎児のものであり得る、血液のような他の供給源から得られるサンプルは、そのような細胞は数年間の循環を持続していることがあるから、胎児細胞をそれほど確実に特定できない。胎児細胞が得られたら、染色体異常を特定するために、細胞遺伝学的技術が使用される。そのような操作は長たらしく、かつ高いレベルの技術専門家を必要とする。更に、概して、結果は3週間までは患者に利用され得ない。
【0006】
従って、迅速で非侵襲的な診断技術であり、好ましくはその時点の胎児の試験が確実にできる技術が、高い又は低い遺伝的リスクのある全ての妊婦にかなり有益である。24時間以内の診断は、彼女らに心の平安を与え、又は彼女らの妊娠の第1三カ月期における治療的中絶に関する早期の決断の機会を与える。
【0007】
このことから、実質的に無傷の胎児細胞を特定し、そして、妊婦らのその時点での妊娠からダウン症候群のような普通の胎児染色体異数体、並びに他の遺伝的障害及び単一遺伝子障害を診断するために、迅速で非侵襲的な診断試験の必要性が存在する。
【0008】
従って、本発明のある側面は、先行技術の課題の幾つかを克服し又は少なくとも軽減し、そして妊婦のための遺伝的試験を改善することである。
【発明の要旨】
【0009】
本発明の第一の側面では、子宮頸部粘液サンプルから細胞を取り出す方法であって:
子宮頸部粘液サンプルを得ること;
該サンプルをコラゲナーゼ及びプロテアーゼで処理して、該子宮頸部粘液サンプルから細胞を解離させること;及び
解離された細胞を該サンプルから取り出すこと
を含んでなる方法が提供される。
【0010】
抗体試験を介するなどの信頼性ある特定を可能にするところの、細胞膜完全性を実質的に維持している実質的に無傷な細胞を取り出すことが好ましい。
好ましい態様では、子宮頸部粘液サンプルは、細胞を解離させるためにコラゲナーゼ及びプロテアーゼで処理される前に粘液溶解剤で更に処理される。この組み合わせ法で処理されることにより子宮頸部粘液サンプルからの懸濁単一細胞の収率がより良好となることが分かった。
【0011】
その粘液サンプルは、粘液を壊すために酵素混合物で更に処理される。理想的には、その混合物は、胎児のものであっても母体のものであってもそれら細胞の特定を容易にするために、それら細胞の完全性を維持して細胞膜を保存している。このことから、それら酵素は、実質的に細胞に作用しないような組み合わせで選択された。
【0012】
本出願人は、プロテアーゼとコラゲナーゼとの組み合わせが、好ましくはそれらと粘液溶解剤との組み合わせが、細胞を、それらの特定及びその後の診断目的の使用を可能にする形でうまく解き放すことを見出した。本発明の別の側面では、子宮頸部粘液サンプルから胎児細胞を取り出す方法であって:
上記の通りに解離された細胞を得ること;
該細胞を胎児特異性抗体で処理すること;
該抗体に結合した細胞を特定すること;及び
該特定された胎児細胞を取り出すこと
を含んでなる方法が提供される。
【0013】
本発明の別の側面では、胎児細胞を特定する方法であって:
上記の通りに子宮頸部粘液サンプルから解離細胞を得ること;
該細胞を胎児特異性抗体で処理すること;及び
該抗体に結合した細胞を特定すること
を含んでなる方法が提供される。
【0014】
本発明の別の側面では、胎児細胞の染色体中の染色体異数体を特定する方法であって:
胎児細胞を得ること;
該染色体上の少なくとも3種の多型微小衛生マーカー (polymorphic microsatellite marker) を特定すること;及び
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを決定すること
を含んでなる方法が提供される。
【0015】
本発明の別の側面では、出産前診断の方法であって:
本明細書に記載の通りに子宮頸部粘液サンプルから胎児細胞を得ること;
該胎児細胞に特徴的な該染色体上の少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを特定すること;
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを決定すること;及び
該対立遺伝子プロフィールを出産前診断のための条件と相関させること
を含んでなる方法が提供される。
【0016】
好ましい側面では、ダウン症候群を診断する方法であって:
胎児細胞を得ること;
該染色体上の少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを特定すること;
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを決定すること;及び
染色体21のトリソミーを決定すること
を含んでなる方法により染色体異数体を特定することを含んでなる方法が提供される。
【0017】
本発明の別の側面では、個体からの子宮頸部粘液サンプルからの細胞の胎児起源を確認する方法であって:
該同じ個体から胎児細胞と母体細胞を得ること;
該胎児又は母体細胞のいずれかに特徴的な少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを選択すること;及び
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを該胎児細胞及び該母体細胞上で決定すること
を含んでなる方法が提供される。
【詳細な説明】
【0018】
本発明の第1の側面では、子宮頸部粘液サンプルから細胞を取り出す方法であって:
子宮頸部粘液サンプルを得ること;
該サンプルをコラゲナーゼ及びプロテアーゼで処理して該子宮頸部粘液サンプルから細胞を解離させること;及び
解離された細胞を該サンプルから取り出すこと
を含んでなる方法が提供される。
【0019】
本発明は、母体及び胎児両方の細胞を子宮頸部粘液サンプルから解き放つための方法を提供する。これら細胞は複雑な粘液構造の中に捕捉されていることがあるので、これまでこれら細胞を解き放とうと試みられてきた。しかしながら、これら細胞は、これまでうまく解き放たれなかった。そして、それらがそうであったなら、それらは塊のままであるか又はそれらの細胞膜完全性が破壊されることによって、出産前診断又は効果的な特定のようなその後の用途のためのそれらの有効性が減ずる。
【0020】
従って、本法は、抗体試験を介するなどの信頼性ある特定を可能にするところの細胞膜完全性を実質的に維持している実質的に無傷な細胞を取り出すことが好ましい。
胎児の遺伝的障害を正確に診断するには、胎児細胞が使用されるのが理想的である。しかしながら、そのような用途のために胎児細胞の信頼性ある単離及び特定を行うには問題があった。子宮頸部粘液がこれら細胞の供給源を提供するが、その粘液から胎児細胞を効果的に単離することには、原則的に母体細胞を含有しているという問題、次いで、特定及び診断目的のためにその完全性を維持しなければならないという問題が残っていた。
【0021】
胎児を試験する非侵襲的な方法は、流産及び胎児死の発生を少なくする。母体の子宮下支柱 (lower uterine pole) 及び子宮頸部粘液の中に流れ込んだ胎児細胞は、胎児細胞の潜在的供給源を提供する。しかしながら、この供給源に付随するものが、更なる特定及び診断のために胎児細胞を単離することの問題となっている。これまで、これら乏しい細胞をそれらを取り囲む粘液プラグから単離するのは難しかった。細胞が粘液から解き放たれたときでさえ、希少な胎児細胞を母体細胞から単離して特定するには課題が残っていた。このことから、何らかの遺伝的障害についての単一細胞分子診断を行う前に、これら乏しい細胞を大多数の母体細胞から明確に特定することが必要とされた。これまでの検討は、その時点の胎児から源を発するこれら細胞は、妊娠の第7〜13週の狭い窓にだけ出現することを示唆している。
【0022】
胎児起源の有核赤血球が、百万個に約1個の確率ではあるが、妊娠の第1及び第2三カ月期の間に母体の血流中に見出されている。幾つかのグループは、これら希少な胎児有核赤血球を単離しようと異なる形の細胞選別法を使用したが、成功は限られたものであった。加えて、出産後の母体血流中に胎児細胞が保存されることが示され、かくして、その時点での胎児の診断を混乱させた。胎児赤血球及び他の胎児細胞の表面上の胎児特異性抗体を微小操作技術と組合わせて使用することは、これまでのところ、胎児細胞を特定するのに最も見込みがある。
【0023】
“無傷”細胞という用語は、細胞膜完全性を維持している細胞を意味する。それら細胞は、理想的には細胞内容物を失っていないので、DNA、RNA及びmRNAを含む核酸の使用による更なる特定を可能にする。
【0024】
本発明は、子宮頸部粘液から細胞を、好ましくは無傷細胞を得るための手段を提供し、それは、胎児の非侵襲的試験の基礎を提供する。細胞が粘液プラグから解き放たれると、それらは、胎児細胞又は母体細胞として更に特定されることによって、遺伝子試験のための胎児細胞の供給源を提供する。
【0025】
サンプル中の細胞は、胎児から流れ込んだか又は子宮頸部に移動した、子宮頸管からの細胞を含む。これら細胞は、妊娠の第1三カ月期(約7〜13週)の間、子宮頸管の中に見出される。それら細胞は、胎児起源又は母体起源であり得る。
【0026】
これら細胞は、退行過程にある絨毛膜絨毛から子宮下支柱及び子宮頸部粘液の中に流れ込むと推定される。胎児細胞は、パップ塗沫採取 (pap smear) と類似の非侵襲的方法で、好ましくは、子宮頸管及び子宮下支柱から粘液を吸引することにより、母体細胞と一緒に取り出されることができる。これまでの研究は、これら胎児細胞が子宮頸部内外 (transcervical) サンプルの50〜90%に存在することを示してきた。この確率のバラツキは、サンプリング技術、オペレーターの技能、及び胎児細胞を母体細胞から明確に区別できないことに起因している。子宮頸部内外細胞の採取は安全かつ効率的であると文献に報告されている。CVSの前の妊婦達に行った予備的研究は、この操作が感染のリスクも自然流産のリスクも高めないことを示唆している。200人を越える婦人が関与したこれまでに報告された研究では、子宮頸部サンプルが進行中の妊娠期間中に吸引されたが、これら操作は、母体と胎児の健康にいかなる有害な影響ももたらさなかった。父方から受け継がれた微小衛生マーカーの存在によって、大量の子宮頸部内外細胞のPCR後に、胎児起源が幾つかのサンプルで確認されただけだった。母体細胞の混入は出産前診断を妨害する。
【0027】
子宮頸部粘液サンプルは、妊娠のいずれの段階で得られてもよい。好ましくは、そのサンプルは、妊娠の第1及び第2三カ月期に得られる。理想的には、そのサンプルは、胎児の幸福について決断できる段階、好ましくは治療的中絶に関する早期の決断をする機会を作れる期間内に得られる。好ましくは、そのサンプルは、妊娠の第14週までに得られる。より好ましくは、そのサンプルは、妊娠の第1三カ月期に得られる。
【0028】
好ましい態様では、子宮頸部粘液サンプルは、細胞を解離させるためにコラゲナーゼ及びプロテアーゼで処理される前に更に粘液溶解剤で処理される。この組み合わせ法で処理されることにより子宮頸部粘液サンプルからの細胞の収率がより良好となることが分かった。
【0029】
適する粘液溶解剤は、N−アセチル−L−システイン、DDT、トリプシン、及びトリプシン/EDTAを含む群から選択され得る。好ましくは、粘液溶解剤は、N−アセチル−L−システインである。
【0030】
サンプルは、好ましくは、酵素での処理の前に粘液溶解剤で処理される。しかしながら、この工程は、コラゲナーゼとプロテアーゼでの酵素処理と組み合わせて行われてもよい。この処理の組み合わせが、粘液分解の相乗的効果をもたらし、それにより細胞の解き放ちが容易になる。粘液溶解剤と酵素(コラゲナーゼとプロテアーゼ)のこの組み合わせ効果は、粘液溶解剤単独と酵素処理単独の別々の効果及び単に合わせた効果よりも大きな効果がある。
【0031】
好ましくは、サンプルは、2〜20mg/mlのN−アセチル−L−システインで処理される。より好ましくは、10mg/mlの最終濃度が使用される。
サンプルは、粘液を溶解するのに十分な時間処理され、一般に、粘液プラグを小球に解離することによってその粘液の粘度を減少させる。より好ましくは、サンプルは、約37℃で30〜60分間処理される。最も好ましくは、サンプルは、緩やかに攪拌しながら45分間処理される。
【0032】
粘液サンプルは、その粘液を分解するために更に酵素混合物で処理される。理想的には、その混合物は、胎児のものであっても母体のものであってもそれら細胞の特定を容易にするために、それら細胞の完全性を維持して細胞膜を保存する。このことから、それら酵素は、実質的に細胞に作用しないような組み合わせで選択された。
【0033】
プロテアーゼのような酵素の使用は、細胞膜の完全性が維持されるべきであるなら一般的には避けられる。しかしながら、本出願人は、プロテアーゼとコラゲナーゼとの組み合わせが、好ましくはそれらと粘液溶解剤との組み合わせが、細胞を、それらの特定及びその後の診断目的の使用を可能にする形でうまく解き放すことを見出した。
【0034】
コラゲナーゼとプロテアーゼは、単独で使用されても組み合わせて使用されてもよい。しかしながら、粘液サンプルを処理するためには、両方の酵素が同時に使用されるのが好ましい。粘液サンプルの同時処理が達成されるように、それら酵素を粘液サンプルの処理のための混合物に調製するのも望ましい。
【0035】
好ましくは、酵素の濃度は、粘液を実質的に分解するのに十分な濃度である。その濃度は、好ましくは、少なくとも1又は2回の処理で粘液を分解するだけの高さになろう。
子宮頸部粘液サンプルは、コラゲナーゼとプロテアーゼで処理される。当業者が知っているあらゆるコラゲナーゼタイプもプロテアーゼタイプも使用され得る。
【0036】
リベラーゼブレンドザイムのような市販の酵素ミックスが、コラゲナーゼとプロテアーゼでの処理を補足するために使用され得る。リベラーゼブレンドザイムは、コラゲナーゼイソフォームIと II 及びサーモリシンとの組み合わせ物であり、Roche から得ることができる。酵素混合物の適する濃度は、凡そリベラーゼブレンドザイム(0.5〜10WU/ml)コラゲナーゼとディスパーゼ(0.1〜1.5mg/ml)である。
【0037】
しかしながら、本発明は、これら特定の濃度に限定されない。濃度及びインキュベーション時間の操作は、粘液サンプル中の細胞のより良好な解き放ちを提供するであろう。
解離された細胞は、母体細胞と胎児細胞を含んでなるので、出産前診断試験に使用されるためには、又は、単離細胞、即ち胎児細胞を必要とする他の使用のためには、胎児細胞は更に特定されかつ単離され得るというのは、この細胞混合物から来ている。
【0038】
解離された細胞は、適する緩衝液及び生理食塩水で洗浄された後、遠心分離を含む当業者にとって利用可能なあらゆる方法によってサンプルから取り出されることができる。細胞の取り出し又は取り除きは、上澄み液からの細胞の分離を包含する。取り出されたら、それら細胞は、母体細胞と胎児細胞への更なる特定のために使用されてもよい。
【0039】
本発明の別の側面では、子宮頸部粘液サンプルから胎児細胞を取り出す方法であって:
上記の通りに解離された細胞を得ること;
該細胞を胎児特異性抗体で処理すること;
該抗体に結合した細胞を特定すること;及び
該特定された胎児細胞を取り出すこと
を含んでなる方法が提供される。
【0040】
胎児細胞は、上記の通りに解離細胞のサンプルを調製した後に子宮頸部粘液サンプルから取り出されることができる。子宮頸部粘液サンプルからの解離細胞は、胎児細胞と母体細胞とのミックスである。次いで、それら細胞の混合物は、胎児起源の細胞を特定するために特定操作を受ける。
【0041】
本発明の胎児細胞は、当該技術分野で周知の技術を使用して特定及び単離される。これら技術には、細胞を標識するために抗体を使用してそれを胎児起源のものであるとして特定することを包含する免疫組織化学法が含まれるがこれに限定されない。これら技術には、第1及び第2抗体を使用して細胞を第1三カ月期の胎児起源のものであるとして特定することも含まれる。好ましくは、抗体は胎児特異性抗原に結合するもので、IgG、IgM及びモノクローナル抗体であることができる。好ましくは、胎児特異性抗原は、胎児細胞の表面上に存在する。結合すると、胎児細胞は‘標識された’細胞を標識の無い細胞から分離するために処理される。細胞の標識には、第1抗体に結合する第2抗体の更なる使用が含まれ得る。第2抗体の例には、マウス由来第1抗体に結合するウサギ抗マウスフルオレセインイソチオシアネート異性体I(FITC)が含まれる。しかしながら、第1抗体は、第2抗体の不存在下で細胞を特定し単離するのに適していてもよい。適する第2抗体は、第1抗体を考慮しかつその第1抗体に第2抗体を反応させることによって当業者により決定されることができる。
【0042】
胎児細胞は、胎児特異性抗体によって特定される。胎児細胞が子宮頸部サンプルの粘液から分離されたら、現時点で入手可能などのような胎児特異性抗体でも使用できる。好ましくは、胎児特異性抗体は、妊娠の第1三カ月期に特異的である。最も好ましくは、それら抗体には、合胞栄養芽層、絨毛栄養膜細胞層及び栄養膜細胞柱 (cytotrophoblast cell columns) に特異的な抗体が含まれる。
【0043】
他の適する胎児特異性抗体は、Sunderland, C. A et al (1981) "Monoclonal Antibodies to human syncytiotrophoblast", Immunology 43(3):541-6 及び Griffith-Jones, M.D. et al (1992) "Detection of fetal DNA in trans-cervical swabs from first trimester pregnancies by gene amplification: A new route to prenatal diagnosis?", British Journal of Obstetrics and Gynecology, 99(6):508-11 に記載されたものである。具体的には、これら抗体は、NDOG1、NDOG5及びFT1.41.1として掲載されている。NDOG1は妊娠第1三カ月期の合胞栄養芽層を染色し、NDOG5は合胞栄養芽層と栄養膜細胞柱を染色し、そしてFT1.41.1は合胞栄養芽層と絨毛栄養膜細胞層を染色する。これら抗体のいずれも、母体の子宮内膜にも子宮頸部組織にも反応性ではない。
【0044】
これら抗体は、単独でも組み合わせても使用され得る。これら抗体は、細胞がそれら抗体と反応して結合できるなら、別々にでも同時にでも細胞に付されることができる。好ましくは、それらは、胎児細胞を特定するために抗体ミックスとして使用される。これら抗体が胎児細胞の細胞膜に特異的に結合することが本出願人によって見出された。
【0045】
胎児特異性抗体は、全ての胎児細胞タイプに特異的であるのが好ましい。子宮頸部粘液サンプルで起こる胎児細胞の不均質性に起因して、全てのタイプの胎児細胞を検知するために胎児特異性抗体の混合物を使用するのが望ましい。1種類の抗体が使用される場合には、他の胎児細胞タイプが逃され得る。抗体は、妊娠の段階を知ることにより選択され得るので、特定の細胞タイプが予測され得る。従って、予測された細胞タイプに特異的な抗体が、優先的に単独で又は組み合わせて使用されることができる。
【0046】
抗体は、特定を容易にするために標識を含んでもよい。本明細書で使用される“標識”という用語は、核酸プローブや抗体のような試薬に直接又は間接に複合化し又は融合して、それが複合化し又は融合したその試薬の検出を容易にする化合物又は組成物のことを意味する。標識自体が検出可能であっても(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)、酵素標識である場合に、検出可能である基質化合物又は組成物の化学変化を触媒するものであってもよい。
【0047】
抗体で標識された胎児細胞は、母体細胞のネガティブ選択又は胎児細胞のポジティブ選択のための、蛍光活性化細胞選別法(FACS)、磁気ビーズ分離技術、マイクロマニピュレーション技術、レーザー捕捉、及び蛍光免疫組織化学法を含む、当該技術分野で周知の技術を使用して特定及び/又は分離されることができる。好ましくは、胎児細胞は、母体細胞のネガティブ選択又は胎児細胞のポジティブ選択のために、蛍光免疫組織化学法を使用して特定及び/又は分離される。例えば、蛍光免疫組織化学法を使用して標識された胎児細胞は、蛍光顕微鏡で形態学的に特定され、そして、例えば、プルドガラスピペット (pulled glass pipettes) 又はマイクロマニュピレーターを使用するマイクロマニュピレーション技術を使用して単離されることができる。
【0048】
細胞が特定されたら、次いで、それは、当業者に利用可能な方法によって単離又は取り出されることができる。例えば、細胞が蛍光標識されているなら、それらはレーザー捕捉によって単離され又はFACS分析によって選別されることができる。しかしながら、抗体によって特定された細胞の特定方法に依っては他の方法を使用してもよい。
【0049】
本発明の別の側面では、本明細書に記載した方法によって取り出された胎児細胞が提供される。
本発明の別の側面では、胎児細胞を特定する方法であって:
上記のように子宮頸部粘液サンプルから解離細胞を得ること;
該細胞を胎児特異性抗体で処理すること;及び
該抗体に結合した細胞を特定すること
を含んでなる方法が提供される。
【0050】
子宮頸部粘液サンプルから胎児細胞をうまく特定することは、その子宮頸部粘液サンプルから細胞懸濁液を得ることにより達成される。細胞は好ましくは無傷であり、そのことが抗体が実質的に無傷の細胞膜に反応するのを可能にする。
【0051】
本発明の別の側面では、胎児細胞を特定する方法であって:
細胞サンプルを得ること;
該細胞サンプルを、本明細書に記載されたNDOG1、NDOG5及びFT1.41.1を含む群から選択される抗体又はそれらの等価物で処理すること;及び
該抗体に結合した細胞を特定すること
を含んでなる方法が提供される。
【0052】
上記のように、胎児細胞は、胎児細胞にだけ反応性の抗体の特異的カクテルを使用して特定されることができる。これら抗体、即ち、NDOG1、NDOG5及びFT1.41.1は胎児細胞に特異的である。それらは単独で使用されても組み合わせて使用されてもよく、そしてそれらは別々に加えられても同時に加えられてもよい。
【0053】
抗体NDOG1、NDOG3及びFT1.41.1に適用され、かつ本明細書で使用される“それらの等価物”という用語は、リストに挙げた抗体のいずれか1つと同じように挙動しかつ類似の特異性を有する等価の抗体を意味する。例えば、NDOG1、NDOG5及びFT1.41.1の標的部位を確認し、そしてモノクローナル抗体やポリクローナル抗体を生じさせる方法のような当業者に知られている方法を使用することによって他の抗体を生じさせてもよい。
【0054】
好ましくは、それら抗体は上記のようなやり方で標識される。蛍光標識が最も好ましい。
胎児細胞が特定され、そして好ましくは子宮頸部粘液プラグのような非侵襲的供給源から取り出されたら、それら細胞は:
(a)胎児特定、染色体異常及び単一遺伝子診断のための多数回FL−PCR;
(b)胎児特定のためのSNPでの、及び単一遺伝子障害及び染色体異数体のためのプローブでの、WGA、ハイブリダイゼーション及びマイクロアレイ分析;又は
(c)mRNAの抽出、cDNAライブラリー、ハイブリダイゼーション及び遺伝子発現マイクロアレイ分析
を含むあらゆるやり方で使用されることができる。
【0055】
これら技術は、胎児細胞のあらゆる生化学的障害、代謝的障害又は遺伝子障害を特定するために、それら胎児細胞を特徴付けるのに使用されてもよい。単離された胎児細胞は、いずれかの細胞タイプにおいて確認されることができる胎児異常を包含する、全てのタイプの異常を特定するために使用されることができる。胎児細胞が子宮頸部粘液サンプルから単離され特定されたら、あらゆる細胞分析がそれら胎児細胞に関して行われることができる。
【0056】
胎児起源を確認するため、単一遺伝子障害及び染色体異常を診断するために、マイクロアレイが使用されてもよい。1回のマイクロアレイで、単一ヌクレオチド多型現象(SNP)を使用して胎児細胞を特定すること、並びに単一遺伝子障害及び染色体異常を特定することが可能である。この方法で、単離され特定された単一胎児細胞は、プライマー伸長予備的増幅PCR(PEP−PCR)、退行オリゴヌクレオチドプライムドPCR (degenerate oligonucleotide primed PCR)(DOP−PCR)、リンカーアダプター−PCR、又はMSD(複数鎖追い出し)全ゲノム増幅(WGA)のいずれかによって、全ゲノム増幅を受けることができる。WGAからの蛍光標識産物は、マイクロアレイプラットフォームにハイブリダイズできるので、結合した蛍光のレーザー走査が、胎児起源を確認し、ヒト染色体の全ての23対の染色体異数体を診断し、そしてあらゆる具体的単一遺伝子欠失を特定することになる。
【0057】
本発明の別の側面では、胎児細胞を特定するために使用される組成物であって、抗体NDOG1、NDOG5及びFT1.41.1を含んでなる組成物が提供される。
本発明の別の側面では、胎児細胞の染色体中の染色体異数体を特定する方法であって:
胎児細胞を得ること;
該染色体上の少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを特定すること;及び
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを決定すること
を含んでなる方法が提供される。
【0058】
本発明のこの側面は、胎児細胞の染色体中の染色体異数体を特定する方法に関する。本明細書で使用される“染色体中の染色体異数体”には、対象の正常な天然の核型と比較して、染色体の一部を欠損しているか又は余分なコピー若しくは部分を有する染色体が含まれ、特定の部位でモノソミー又はトリソミーを起こす欠失、付加及び転座が含まれる。好ましくは、異数体は、常染色体のトリソミー及びモノソミー、及び性染色体のモノソミー、ジソミー及びトリソミーを含む群から選択される。
【0059】
好ましくは、胎児細胞は、上記のように、子宮頸部粘液サンプルから得られる。好ましくは、そのサンプルは妊婦からのものである。しかしながら、本発明は、流産した婦人から胎児細胞を得ることを排除しない。
【0060】
絨毛膜絨毛サンプリング(CVS)又は羊水穿刺のような胎児細胞を得る侵襲的方法は、胎児細胞を提供できる、絨毛膜絨毛サンプル、羊膜細胞、胎児組織及び臍帯血をもたらす。しかしながら、子宮頸部粘液サンプルから胎児細胞を得るための非侵襲的方法が好ましい。いかなる段階でのいかなるタイプの胎児細胞も使用できる。
【0061】
本発明は、核酸に特異的な多型微小衛生マーカーの使用を包含する。本発明の核酸はDNA、好ましくは染色体DNAであることができる。好ましくは、諸多型微小衛生マーカーは同じ染色体上に存在する。
【0062】
好ましくは、多型微小衛生マーカーは、高い異型接合性、対立遺伝子の広い分布、トリ対立遺伝子パターンを生み出す高い確率、及び所与染色体への特異性に基づいて選択される。例えば、表2に掲げられたダウン症候群の診断のための染色体21テトラヌクレオチド微小衛生マーカー及び表3に掲げられた他の症候群のための他のテトラヌクレオチド微小衛生マーカー診断法を参照のこと。
【0063】
選択される多型マーカーは、常染色体のトリソミー及びモノソミー、及び性染色体のモノソミー、ジソミー及びトリソミーを含む異数体の種々のパターンを特定するのに有用である。対立遺伝子サイズの広い分布は、そのような範囲の諸対立遺伝子サイズが、異数体、特にトリソミー、ジソミー又はモノソミーの対立遺伝子パターン診断を提供するので、遺伝子分析をうまく行うのに好ましい。それらマーカーは、各々のマーカーが、DNAフィンガープリント (fingerprint) 中に、他のマーカーと重なることのない、明確に異なる対立遺伝子プロフィールを有するようにも選択される。
【0064】
トリソミーは、流産及び死産によく見られる最も一般的な染色体異常であって、染色体21、18及び13におけるトリソミー及びX及びYにおけるジソミーが最大のグループである。トリソミー21又はダウン症候群は、出産予定日に到達する最も一般的な常染色体異常である。
【0065】
本発明は、染色体異数体の特定を可能にするためにその染色体上に少なくとも3種の多型マーカーを必要とする。
3種未満の多型マーカーの増幅は、幾つかの理由により偽結果をもたらす。限定されたテンプレート上での多数回蛍光ポリメラーゼ連鎖反応(FL−PCR)によるDNAフィンガープリンティングに付随する問題には、完全増幅の失敗、親の異型接合の可能性(各々の親は同じ対立遺伝子の2コピーを有する)、対立遺伝子脱落(ADO)(PCRの最初の2、3回のサイクルで、1対立遺伝子だけが検出可能であるという程度の、1対立遺伝子の完全増幅の失敗)、及び優先的増幅(PA)(1対立遺伝子という過少表現 (under-representation) が、期待される1:1ジ対立遺伝子比率からの歪みをもたらす)が含まれる。こうしたことから、1染色体当たり3種の高度に多型の微小衛生マーカーが異数体細胞の診断のために必要とされる。
【0066】
精度を向上させるために、微小衛生マーカーの数を増やしてもよい。本法は、少なくとも3種のマーカーを必要とする。しかしながら、5種の微小衛生マーカーが好ましい。少なくとも3種の微小衛生マーカーを含めることで、対立遺伝子脱落(ADO)と優先的増幅がそれほど結果に干渉することはない。もし1つの遺伝子座マーカーが害されても、他のものが正しい診断のために残っているからである。好ましくは、5種の多型マーカーが増幅される。
【0067】
この明細書の記載及び請求の範囲を通して、“含んでなる”という用語及びその類語は、他の添加物、成分、数又は工程を排除することを意図していない。
対立遺伝子プロフィールは、異数体及び胎児起源を特定するための手段を提供する。多型微小衛生マーカーにより特定される種々の対立遺伝子の比率は、トリソミー、ジソミー及びモノソミーを含むがこれらに限定されない異数体の種々の形態のいずれかとして特定可能な対立遺伝子パターンを提供する。
【0068】
多型微小衛生マーカーにより対立遺伝子を検出するのに種々の手段が利用可能である。他の方法には、制限フラグメント多型現象(RFLP)、単一ヌクレオチド多型現象(SNP)及びマイクロアレイが含まれる。
【0069】
好ましい態様では、対立遺伝子プロフィールは、対立遺伝子プロフィールを生じるための多型マーカーの増幅によって決定される。対立遺伝子プロフィールは、モノソミー、ジソミー又はトリソミーを含むがこれらに限定されない異数体の具体的特定を提供することができる。例えば、FL−PCR増幅で産生されるDNAの量は、初期標的配列の量に比例すると考えられるので、何らかの特定の遺伝子座についての対立遺伝子比率は、最終蛍光量から計算されることができる(第2対立遺伝子のPCR産物の量で割った第1対立遺伝子からのPCR産物の量)。従って、ジソミーは1:1の期待ビ対立遺伝子比率によって定義されるのに対し、トリソミーはトリ対立遺伝子パターンとして1:1:1の期待比率として定義されることができる。モノソミーの診断は、単一の対立遺伝子を表示するために全部で5種の微小衛生マーカーを必要とし得るが、トリソミーは、1種のマーカーの少なくとも1種のトリ対立遺伝子パターンによって正しく診断されることができた。
【0070】
本明細書で使用される“増幅する”という用語は、核酸又はその部分のコピーの数を増やす当該技術分野で公知のあらゆる種々の方法を含む。核酸増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む当該技術分野で知られた種々の核酸増幅方法によって達成されることができる。多数回FL−PCRを含む種々の形態のPCRが本発明の範囲に含まれる。種々の増幅方法が当該技術分野で知られており、"The polymerase chain -reaction", Baumforth et al., Journal of Clinical Pathology: Molecular Pathology 1999, (52): 1-10 に記載されている。
【0071】
増幅された核酸は分析されてもよく、そして、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を含む当該技術分野で周知の技術を使用して、好ましくは変性ゲルを使用して、プロフィールを生じさせる。分析は自動又は手動操作を使用して行われることができ、例えば、自動分析には、ABI Prism 377 DNA Sequencer と付随する Genescan 672 ソフトウェア (Applied Biosystems, Australia) の使用が含まれ得る。他の自動分析には、ABI Prism 3100 Genetic Analyzer 及び変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)が含まれる。
【0072】
本明細書で使用される“プライマー”という用語には、短鎖核酸、好ましくは長さが15又はそれを越えるヌクレオチド数のDNAオリゴヌクレオチドであって、例えば、核酸ハイブリダイゼーションによって相補的標的DNA鎖へアニーリングされてそのプライマーと標的DNA鎖の間でハイブリッドを形成し、次いで、ポリメラーゼによって、好ましくは熱安定性DNAポリメラーゼによって、その標的DNA鎖に沿って伸長されることができるオリゴヌクレオチドが含まれる。プライマー対は、核酸を増幅するために、例えば、PCRにより又は当該技術分野で周知の他の核酸増幅方法により増幅するために使用されうる。PCRプライマー対は、核酸の配列から誘導されても、次の基準に従って設計されてもよい:約50%のGC含量、18〜24塩基対の長さ、最少のプライマー二量体形成率及び自己アニーリング率、プライマーの3’末端における2G又はC塩基、同じ長さである順向プライマーと逆向プライマー(±1ヌクレオチド)、一列の中に3以下の反復塩基、及び100〜400ヌクレオチドの長さであるPCR産物のサイズ。
【0073】
プライマーを調製し及び使用する方法は、例えば、Sambrook et at. Molecular Cloning: A Laboratory manual, 2nd ed., vol. 1-3, ed. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, USA 1989; Current Protocols in Molecular Biology, ed. Asubel et. al., Greene Publishing and Wiley-Interscience, NY, USA 1987 に記載されている。
【0074】
最も好ましくは、本法は、DNAフィンガープリンティングにより多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを決定することを包含する。
本発明の別の側面では、出産前診断の方法であって:
本明細書に記載の通りに子宮頸部粘液サンプルから胎児細胞を得ること;
該胎児細胞に特徴的な染色体上の少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを特定すること;
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを決定すること;及び
該対立遺伝子プロフィールを出産前診断のめの条件と相関させること
を含んでなる方法が提供される。
【0075】
本明細書で使用される“出産前診断”という用語は、胎児細胞内での遺伝子突然変異又は何らかの生物学的若しくは代謝的特定物の存在を確認することを包含する。出産前診断は、全てのタイプの胎児異常を特定することを意図する。遺伝子突然変異には、染色体異数体、点突然変異、転座、トリヌクレオチド反復拡大 (trinucleotide repeat expansions)、逆位 (inversions)、多型現象、挿入及び欠失が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子突然変異は、遺伝子障害、例えば、膵嚢胞性繊維症、β−地中海貧血、ハンチントン病、脆弱X (Fragile X)、筋強直性ジストロフィー、デュシェーヌ筋ジストロフィー、又は鎌型赤血球貧血症を起こし得る。
【0076】
出産前診断には、染色体における異常に起因して起こる遺伝子障害が含まれ得る。染色体21、18、13、X及びYを包含する染色体異常が最も高い頻度で生産に見られる。他の異数体は、一般に、移植又は第1三カ月期の早期に無くなるが、染色体の全ての23対の異数体の早期の非侵襲的方法診断は、多数回FL−PCR又はマイクロアレイで達成されることができる。ターナー症候群(XO)、クラインフェルター症候群(XXY)、XXX女性 (XXX females) 及びXYY男性 (XYY males)、三倍体性(69,XXX又はXXY又はXYY)、パタウ症候群(トリソミー13)及びエドワード症候群(トリソミー18)、ダウン症候群(トリソミー21)を含むがこれらに限定されない遺伝子障害も本法によって検知され得る。好ましくは、本出産前診断は、異数体の形態にある染色体異常を検知することができる。出産前診断には、特定遺伝子における突然変異によって起こる単一遺伝子障害が含まれる。最も一般的な障害は、膵嚢胞性繊維症である。膵嚢胞性繊維症は、2,500回の出産に1回観察され、25個体に1個体がこの常染色体劣性状態のキャリヤである。
【0077】
好ましい側面では、ダウン症候群を診断する方法であって:
胎児細胞を得ること;
その染色体上の少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを特定すること;
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを決定すること;及び
染色体21のトリソミーを決定すること
を含んでなる方法によって染色体異数体を特定することを含んでなる方法が提供される。
【0078】
現在、ダウン症候群胎児の検知のため35歳未満の妊婦に申し入れられる一連の非診断的血清スクリーニングがある。これら試験は、12週目の超音波で測定される胎児の首の後ろの体液蓄積量(頸の厚み)、第1三カ月期における母体血液中のフリーのβ−hCG及び妊娠関連血漿プロテイン−A(PAPP−A)の濃度、並びに第2三カ月期における母体血液中のフリーのβ−hCG及びα−フェトプロテイン(AFP)の濃度を含む、ダウン症候群胎児と相関するように特定されたある範囲の変数の測定を包含する。組合わせた試験結果から、患者の個人的リスクが計算され、その80〜90%が検知効力であり5〜10%が偽陽性率である。しかしながら、これらスクリーニング試験は非診断的であり、かつ陰性結果が胎児におけるダウン症候群の不存在を示さない。現在80%近くのダウン症候群の生産が35歳を下回る母親からのものである。
【0079】
胎児細胞は、上記のいずれかの供給源から得られる。好ましくは、それら細胞は、妊婦の子宮頸部内外から綿棒で又は子宮頸管の吸引で得られる胎児細胞である。このことは、非侵襲的診断方法のためには理想的である。
【0080】
好ましい方法では、染色体21のトリソミーは、ダウン症候群の指標である。
この方法は、少なくとも3種の多型微小衛生マーカーで行われる。しかしながら、少なくとも5種のマーカーが使用されるのが好ましい。高度に異型接合性でありかつ広い分布の対立遺伝子サイズを有する染色体21上のテトラヌクレオチド微小衛生マーカーがこの方法に特に好ましい。
【0081】
ダウン症候群について、いかなる蛍光もサイズ重複も有さない明らかに異なる対立遺伝子プロフィール又はパターンを生ずるマーカーの選択が好ましい。ダウン症候群の好ましい診断について表2を参照のこと。
【0082】
本法は、少なくとも3種の多型微小衛生マーカー、好ましくは表2から選択されるものを必要とするが、5種のマーカーがダウン症候群を診断するために使用されるのが最も好ましい。
【0083】
この系に5種の微小衛生マーカーを含めることで、対立遺伝子脱落及び優先的増幅が結果に干渉することはない。もし1つの遺伝子座マーカーが害されても、正しい診断のために4種が残っているからである。
【0084】
対立遺伝子プロフィールを決定する方法は、多型微小衛生マーカーによって表示される対立遺伝子の指標となるパターンを生ずるいかなる方法によってもよい。好ましくは、対立遺伝子プロフィールは、それらマーカーのDNA増幅によって、好ましくはPCR、より好ましくはFL−PCRを使用して決定される。
【0085】
PCR産物の分析方法は、本明細書に記載されている。
プロフィールが樹立されたら、DNAの量、それから決定されるそれらそれぞれの対立遺伝子の比率及びサイズに関して上記した通りにして、異数体が特定され得る。ダウン症候群について図2をそして染色体13、18、21及びXの異数体について図3を参照のこと。
【0086】
本発明の別の側面では、ダウン症候群を診断する方法に使用するための微小衛生マーカーであって、前記マーカーが:
tatgtgagtcaattccccaagtga;
atgatgaatgcatagatggatg;
ttgcagggaaaccacagtt;
tgaacatacatgtacatgtgtctgg;又は
cactgcagacggcatgaacttc
のいずれかから選択される配列を含む順向プライマー配列を有する微小衛生マーカーが提供される。
【0087】
本発明の別の側面では、ダウン症候群を診断する方法に使用するための微小衛生マーカーであって、前記マーカーが:
gttgtattagtcaatgttctccag;
aatgtgtgtccttccaggc;
tccttggaataaattcccgg;
ttctctacatatttactgccaacac;又は
ccagaatcacatgagccaattcc
のいずれかから選択される配列を含む逆向プライマー配列を有する微小衛生マーカーが提供される。
【0088】
本発明の好ましい態様では、ダウン症候群を診断するための方法に使用するための微小衛星マーカーであって、表2に記載された群から選択されるいずれか1つのマーカーが提供される。これらマーカーのいずれか1つは、本明細書に記載の方法に従ってトリソミー21を診断するのに適する少なくとも2種の他のマーカーと組み合わせて使用されることができる。加えて、プライマー配列は、多数回FL−PCRにおける他のプライマー配列に相補的であるように再設計されてもよい。
【0089】
本発明の別の側面では、出産前診断のためのキットであって、胎児細胞の染色体中の染色体異数体を特定する方法に使用するための少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを含んでなり、前記方法が:
胎児細胞を得ること;
該染色体上の少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを特定すること;及び
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを決定すること
を含んでなるキットが提供される。
【0090】
好ましくは、その胎児細胞は、本明細書に記載した通りの子宮頸部粘液サンプルから得られる。
好ましい側面では、そのキットは、胎児細胞の特定の染色体上の多型微小衛生マーカーを特定して対立遺伝子プロフィールを得る手段を含んでなる。
【0091】
更なる側面では、そのキットは、多型微小衛生マーカーを、好ましくはPCR、より好ましくはFL−PCRを使用して増幅する手段を含む。マーカーを増幅する手段は、本明細書に記載されている。
【0092】
更なる好ましい側面では、ダウン症候群を診断するためのキットであって、マーカーが上記のダウン症候群のためのマーカーのいずれかから選択されるキットが提供される。
本発明の別の側面では、個体からの子宮頸部粘液サンプルからの細胞の胎児起源を確認する方法であって:
同じ個体から胎児細胞と母体細胞を得ること;
該胎児又は母体細胞のいずれかに特徴的な少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを選択すること;及び
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを該胎児細胞及び該母体細胞上で決定すること
を含んでなる方法が提供される。
【0093】
好ましくは、個体から細胞の胎児起源を確認する方法は、母体細胞と胎児細胞の染色体中の染色体異数体を特定することを含む。
加えて、子宮頸管からの胎児細胞の単離で、この非侵襲的方法は、単一遺伝子障害、例えば、膵嚢胞性繊維症を起こす突然変異を検知することもできる。
【0094】
単一遺伝子障害の突然変異検知をDNAフィンガープリンティング系と組み合わせることも、染色体異数体と所与単一遺伝子障害の両方についての妊婦診断を提供することも可能である(図3を参照のこと)。
【0095】
文書、行為、材料、装置、文献等の説明は、本発明の前後関係を与える目的のためにのみこの明細書に含められている。これら事柄のいずれか又は全てが、本願の各々の請求項の優先日前にオーストラリアに存在する先行技術の一部を形成するとも本発明に関連する分野における一般的知識になっているとも示唆も表現もしていない。
【0096】
本発明は、以下の実施例によってより十分に説明される。しかしながら、以下の記載は、例示だけのためと理解されるべきであり、上記の本発明の広さに関する限定として解釈されるべきでない。
【実施例】
【0097】
実施例1:ダウン症候群の診断
(a)子宮頸部内外細胞の採取と調製
第1又は第2三カ月期間の妊婦からの子宮頸部内外細胞の採取は、パップ塗沫採取と類似の操作であり、細いカテーテル (Aspiracath, Cook IVF) を使用する子宮頸管及び子宮下支柱からの子宮頸部粘液の直接吸引を含む。母体粘液細胞と子宮頸部内外細胞を含有するこのカテーテルのチップが、0.5mlのRPMI培地を含有し37℃にされたエッペンドルフ管の中に切り取られる。その内容物がカテーテルの内部チップから機械的に優しく取り外されて37℃の培地中に懸濁される。
【0098】
(b)子宮頸部内外サンプルからの胎児細胞の特定と単離
採取後、サンプルは、20mg/mlのN−アセチル−L−システイン0.5mlで処理され、更に、ゆっくり振盪されながら37℃で45分間インキュベートされる。次いで、そのサンプル全体は、PBSで2回洗浄された後、0.5mlの酵素カクテル(コラゲナーゼとプロテアーゼ)で37℃で1時間インキュベートされる。インキュベーション時間の間、解離した細胞が取り出され、元のサンプルに残った塊が新しい酵素で処理される。完全に解離させた後、その細胞懸濁液は、PBSで2回洗浄された後に免疫蛍光標識される。
【0099】
フルオレセインで標識された3種の胎児特異性抗体のカクテル(NDOG1、NDOG5及びFT1.41.1)が37℃で細胞懸濁液に加えられ、そして胎児細胞だけの細胞膜に特異的に結合される。NDOG1は、妊娠第1三カ月期の合胞栄養芽層を染色し、NDOG5は、合胞栄養芽層と栄養膜細胞柱を染色し、そして、FT1.41.1は、合胞栄養芽層と絨毛栄養膜細胞層を染色する。これら抗体のいずれも、母体の子宮内膜にも子宮頸部組織にも反応性ではない。プルドガラスピペットでのマイクロマニュピレーション及びマイクロディセクティング (microdissecting) 技術を使用して、反転顕微鏡下で、蛍光標識された胎児細胞の単一の小塊が特定され、単離され、そしてPBS緩衝液で3回洗浄された後、分析のため0.2mlPCR管に移される。陰性コントロールとして、母体偏平上皮細胞も単離されて、PBS緩衝液で3回洗浄された後、分析のため0.2mlPCR管に移される。
【0100】
(c)胎児起源の確認及びトリソミー21の診断
この多数回FL−PCR反応は、染色体21上で見出された5種の微小衛生マーカーを取り込む。この多数回から生じた対立遺伝子プロフィールが、母体起源又は胎児起源のいずれか、並びに染色体21の存在又は不存在を確認する。FL−PCR反応は:2.5μlの10×PCR緩衝液(500mM KCl、100mM トリス−HCl、pH9.0及び15mM MaCl2)、0.5μlの10mM dNTP(200μM)、0.3μlのTaqポリメラーゼ(5単位/μl)、11.20μl MQ−H2O、及び10.5μlのプライマーミックスを含有し、25μlの最終容量になる。プライマー対は、各々のPCR反応に、D21S1411、D21S11、D21S1413、D21S1412、及びD21S1437を含む。全ての反応ミックスは、手動の“加熱開始 (Hot Start)”を受け、多数回FL−PCRが 9700 Thermocycler PCR 機 (Applied Biosystems, Australia) を使用して行われた。反応は、94℃で45秒間の変性、60℃で45秒間のアニーリング、及び72℃で1分間の伸長からなる35回の熱サイクルに付された。各々の単一細胞多数回FL−PCRで、PCR反応ミックスが機能的でありかついずれの試薬も混ざりものでないことを確保するために、陽性及び陰性コントロールが含められた。
【0101】
他の実施例は、ダウン症候群と普通膵嚢胞性繊維症δF508突然変異の同時診断を包含する。そのFL−PCRは、上記の通りであるが、プライマーミックスが、δF508突然変異検知のためのプライマー対と一緒に、情報を与えてくれる4種の染色体21微小衛生マーカーを含有するという変更を有する。
【0102】
(d)胎児起源の読み取り及びトリソミー21の診断
全てのFL−PCR産物は、ABI Prism 3100 DNA Sequencer と付随する Genescan 672 ソフトウェア (Applied Biosystems, Australia) を使用して分析される。各々のPCR産物(0.5〜1.0μl)は、9.75μlのホルムアミドと0.25μlの内部標準と混合される。サンプルは、95℃で5分間変性され、氷上に置かれ、そして96ウェルプレート内に10μlが充填される。諸サンプルは、界面動電注入を受け、そして Genescan ソフトウェアによる自動サイジングで電気泳動される。Genescan プロフィール又は ‘フィンガープリント’ が生じ、使用された蛍光染料に依存して着色したピークとしてPCR産物を示す(図1を参照のこと,ダウン症候群対象の単一細胞対立遺伝子プロフィール)。
【0103】
胎児起源を確認するため、単一遺伝子障害及び染色体異常を診断するために、マイクロアレイも使用されることができる。1回のマイクロアレイで、単一ヌクレオチド多型現象(SNP)を使用して胎児細胞を特定すること、単一遺伝子障害及び染色体異常を特定することが可能である。この方法で、単離され特定された単一胎児細胞は、まず、PEP−PCR、DOP−PCR、リンカーアダプター−PCR又はMSDWGAのいずれかによって、全ゲノム増幅(WGA)を受けることになる。WGAからの蛍光標識産物は、マイクロアレイプラットフォームにハイブリダイズできるので、結合した蛍光のレーザー走査が、胎児起源を確認し、ヒト染色体の全23対の染色体異数体を診断し、そしてあらゆる具体的単一遺伝子欠失を特定することになる。
【0104】
実施例2:ダウン症候群 II の診断
(a)子宮頸部内外細胞の採取と調製が、実施例1に記載した通りに行われる。
(b)胎児細胞の特定と単離
採取後、サンプルがスライド上に播かれて100%エタノール中に固定される。胎児細胞を特定するために第1三カ月期胎児特異性抗体を使用して免疫組織化学法が行われる。次いで、それらスライドが脱水される。レーザー捕捉マイクロディセクティング技術が、陽性に染色された細胞を、そのスライドから、PCR管の中に直接移されることができる膜上に取り出すために使用される。
【0105】
(c,d及びe)トリソミー21についてのFL−PCR DNAフィンガープリンティング、FL−PCR産物の分析、及び異数体の診断が実施例1に記載の通りに行われる。
【0106】
実施例3:ダウン症候群及び膵嚢胞性繊維症δF508突然変異の同時診断
(a及びb)子宮頸部内外細胞の採取と調製、及び胎児細胞の特定と単離が、実施例1に記載した通りに行われる。
【0107】
(c)トリソミー21についてのFL−PCR DNAフィンガープリンティング、及び膵嚢胞性繊維症δF508の診断
FL−PCR反応は、上記の通りであるが、プライマーミックスが、δF508突然変異検知のためのプライマー対と一緒に、情報を与えてくれる4種の染色体21微小衛生マーカーを含有するという変更を有する。表2及び3に概略を示した微小衛生マーカーが、DNAフィンガープリンティング系の中への取り込みのための異型接合性遺伝子座を特定するために母体のゲノムDNA上で遺伝子型にされる。最終最適化プライマー対濃度は、反応及びプライマーに特異的である。
【0108】
(d及びe)FL−PCR産物の分析及び異数体の診断は上記の通りである(図3を参照のこと)。
最後に、他の種々の修飾及び/又は変更が、本明細書に概略を示した本発明の精神から逸脱することなく成され得ることが理解されるべきである。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1は、ダウン症候群を有する男性対象からの単一ヒト頬細胞のDNAフィンガープリントを示す。微小衛生マーカーD21S1413、D21S11及びD21S1442は、トリ対立遺伝子パターンを示し、D21S1437及びD21S1411は、期待1:2対立遺伝子比率を有するジ対立遺伝子2重パターンを示す。
【図2】図2は、二倍体対象からの単一ヒト頬細胞のDNAフィンガープリントを示す。この8重DNAフィンガープリント系には、各々がある二倍体対立遺伝子比率を示す染色体X、13、18及び21の各々について2つの微小衛生マーカーがある。
【図3】図3は、普通膵嚢胞性繊維症δF508突然変異のキャリヤである二倍体個体からの単一ヒト頬細胞のDNAフィンガープリントを示す。このDNAフィンガープリントには、染色体21についての4つの微小衛生マーカーがあり、膵嚢胞性繊維症δF508について突然変異が検知されている。
【0001】
本願は、細胞、特に胎児細胞及び栄養芽細胞、を取り出しそして特定するための非侵襲的方法に関する。本発明は、染色体異常及び突然変異を特定するために、特に染色体及び単一遺伝子障害 (single gene disorder) の遺伝子診断を行うことによる出産前診断のために、細胞を使用する方法を含む。本発明は、胎児起源の細胞を確認する方法も含む。
【発明の背景】
【0002】
約0.5%の夫婦は、遺伝子障害を有する子供を有する高いリスクがある。そのような遺伝子障害には、膵嚢胞性繊維症、ハンチントン病、β−地中海貧血、及び筋強直性ジストロフィーが含まれる。例えば、オーストラリアでは、人口の25人に1人は、膵嚢胞性繊維症突然変異のキャリヤであるので、最近、膵嚢胞性繊維症のための新生児スクリーニングが、全ての出産を追跡するために実行されている。
【0003】
単一遺伝子障害に加えて、染色体異常は、自然流産及び新生児に見られる最も一般的な遺伝子障害である。染色体21、18、13、X及びYに関連するトリソミーは、最大のグループであり、トリソミー21又はダウン症候群が最も頻度が高く、生産700人毎に約1人の割合で起こる。トリソミー13及び18は、特徴的先天性異常症候群で出産予定日に到達し、出生直後の期間内に死に至る唯一の他の常染色体トリソミーである。残りの生産トリソミーの個体は、余分な性染色体、つまりXXY、XYY、又はXXXを有する。出産前診断は、重荷、胎児における染色体異常、特にダウン症候群を検知しようとして行われる。ダウン症候群は、ヒトにおける心的遅れの最も重要な遺伝子的原因であり、そして先天性心疾患及び白血病の高いリスクとも関係している。
【0004】
出産前診断は、妊娠期間中の胎児における単一遺伝子障害又は染色体異常のいずれかを検知するために行われる。現在、出産前診断は、胎児における潜在的染色体異常を特定するために、絨毛膜絨毛サンプリング(CVS)(10〜12週間)又は羊水穿刺(14〜16週間)のいずれかの形態での非侵襲的操作を含む。これら両方の操作には、流産のリスク(1〜2%)がある。従って、出産前試験は、高齢出産の婦人(>35歳)、異常母体血清スクリーニングの婦人又は以前に染色体異常の胎児を持ったことがある婦人を含む、高いリスクがあると予想される婦人にのみ申し入れられる。
【0005】
出産前診断は、通常、絨毛細胞又は羊水細胞をサンプリングするのに、非侵襲的方法によって行われる。これら方法のサンプリングで、その時点の胎児の胎児細胞も確実に試験される。その時点の胎児からの又は最近流産した胎児のものであり得る、血液のような他の供給源から得られるサンプルは、そのような細胞は数年間の循環を持続していることがあるから、胎児細胞をそれほど確実に特定できない。胎児細胞が得られたら、染色体異常を特定するために、細胞遺伝学的技術が使用される。そのような操作は長たらしく、かつ高いレベルの技術専門家を必要とする。更に、概して、結果は3週間までは患者に利用され得ない。
【0006】
従って、迅速で非侵襲的な診断技術であり、好ましくはその時点の胎児の試験が確実にできる技術が、高い又は低い遺伝的リスクのある全ての妊婦にかなり有益である。24時間以内の診断は、彼女らに心の平安を与え、又は彼女らの妊娠の第1三カ月期における治療的中絶に関する早期の決断の機会を与える。
【0007】
このことから、実質的に無傷の胎児細胞を特定し、そして、妊婦らのその時点での妊娠からダウン症候群のような普通の胎児染色体異数体、並びに他の遺伝的障害及び単一遺伝子障害を診断するために、迅速で非侵襲的な診断試験の必要性が存在する。
【0008】
従って、本発明のある側面は、先行技術の課題の幾つかを克服し又は少なくとも軽減し、そして妊婦のための遺伝的試験を改善することである。
【発明の要旨】
【0009】
本発明の第一の側面では、子宮頸部粘液サンプルから細胞を取り出す方法であって:
子宮頸部粘液サンプルを得ること;
該サンプルをコラゲナーゼ及びプロテアーゼで処理して、該子宮頸部粘液サンプルから細胞を解離させること;及び
解離された細胞を該サンプルから取り出すこと
を含んでなる方法が提供される。
【0010】
抗体試験を介するなどの信頼性ある特定を可能にするところの、細胞膜完全性を実質的に維持している実質的に無傷な細胞を取り出すことが好ましい。
好ましい態様では、子宮頸部粘液サンプルは、細胞を解離させるためにコラゲナーゼ及びプロテアーゼで処理される前に粘液溶解剤で更に処理される。この組み合わせ法で処理されることにより子宮頸部粘液サンプルからの懸濁単一細胞の収率がより良好となることが分かった。
【0011】
その粘液サンプルは、粘液を壊すために酵素混合物で更に処理される。理想的には、その混合物は、胎児のものであっても母体のものであってもそれら細胞の特定を容易にするために、それら細胞の完全性を維持して細胞膜を保存している。このことから、それら酵素は、実質的に細胞に作用しないような組み合わせで選択された。
【0012】
本出願人は、プロテアーゼとコラゲナーゼとの組み合わせが、好ましくはそれらと粘液溶解剤との組み合わせが、細胞を、それらの特定及びその後の診断目的の使用を可能にする形でうまく解き放すことを見出した。本発明の別の側面では、子宮頸部粘液サンプルから胎児細胞を取り出す方法であって:
上記の通りに解離された細胞を得ること;
該細胞を胎児特異性抗体で処理すること;
該抗体に結合した細胞を特定すること;及び
該特定された胎児細胞を取り出すこと
を含んでなる方法が提供される。
【0013】
本発明の別の側面では、胎児細胞を特定する方法であって:
上記の通りに子宮頸部粘液サンプルから解離細胞を得ること;
該細胞を胎児特異性抗体で処理すること;及び
該抗体に結合した細胞を特定すること
を含んでなる方法が提供される。
【0014】
本発明の別の側面では、胎児細胞の染色体中の染色体異数体を特定する方法であって:
胎児細胞を得ること;
該染色体上の少なくとも3種の多型微小衛生マーカー (polymorphic microsatellite marker) を特定すること;及び
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを決定すること
を含んでなる方法が提供される。
【0015】
本発明の別の側面では、出産前診断の方法であって:
本明細書に記載の通りに子宮頸部粘液サンプルから胎児細胞を得ること;
該胎児細胞に特徴的な該染色体上の少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを特定すること;
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを決定すること;及び
該対立遺伝子プロフィールを出産前診断のための条件と相関させること
を含んでなる方法が提供される。
【0016】
好ましい側面では、ダウン症候群を診断する方法であって:
胎児細胞を得ること;
該染色体上の少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを特定すること;
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを決定すること;及び
染色体21のトリソミーを決定すること
を含んでなる方法により染色体異数体を特定することを含んでなる方法が提供される。
【0017】
本発明の別の側面では、個体からの子宮頸部粘液サンプルからの細胞の胎児起源を確認する方法であって:
該同じ個体から胎児細胞と母体細胞を得ること;
該胎児又は母体細胞のいずれかに特徴的な少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを選択すること;及び
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを該胎児細胞及び該母体細胞上で決定すること
を含んでなる方法が提供される。
【詳細な説明】
【0018】
本発明の第1の側面では、子宮頸部粘液サンプルから細胞を取り出す方法であって:
子宮頸部粘液サンプルを得ること;
該サンプルをコラゲナーゼ及びプロテアーゼで処理して該子宮頸部粘液サンプルから細胞を解離させること;及び
解離された細胞を該サンプルから取り出すこと
を含んでなる方法が提供される。
【0019】
本発明は、母体及び胎児両方の細胞を子宮頸部粘液サンプルから解き放つための方法を提供する。これら細胞は複雑な粘液構造の中に捕捉されていることがあるので、これまでこれら細胞を解き放とうと試みられてきた。しかしながら、これら細胞は、これまでうまく解き放たれなかった。そして、それらがそうであったなら、それらは塊のままであるか又はそれらの細胞膜完全性が破壊されることによって、出産前診断又は効果的な特定のようなその後の用途のためのそれらの有効性が減ずる。
【0020】
従って、本法は、抗体試験を介するなどの信頼性ある特定を可能にするところの細胞膜完全性を実質的に維持している実質的に無傷な細胞を取り出すことが好ましい。
胎児の遺伝的障害を正確に診断するには、胎児細胞が使用されるのが理想的である。しかしながら、そのような用途のために胎児細胞の信頼性ある単離及び特定を行うには問題があった。子宮頸部粘液がこれら細胞の供給源を提供するが、その粘液から胎児細胞を効果的に単離することには、原則的に母体細胞を含有しているという問題、次いで、特定及び診断目的のためにその完全性を維持しなければならないという問題が残っていた。
【0021】
胎児を試験する非侵襲的な方法は、流産及び胎児死の発生を少なくする。母体の子宮下支柱 (lower uterine pole) 及び子宮頸部粘液の中に流れ込んだ胎児細胞は、胎児細胞の潜在的供給源を提供する。しかしながら、この供給源に付随するものが、更なる特定及び診断のために胎児細胞を単離することの問題となっている。これまで、これら乏しい細胞をそれらを取り囲む粘液プラグから単離するのは難しかった。細胞が粘液から解き放たれたときでさえ、希少な胎児細胞を母体細胞から単離して特定するには課題が残っていた。このことから、何らかの遺伝的障害についての単一細胞分子診断を行う前に、これら乏しい細胞を大多数の母体細胞から明確に特定することが必要とされた。これまでの検討は、その時点の胎児から源を発するこれら細胞は、妊娠の第7〜13週の狭い窓にだけ出現することを示唆している。
【0022】
胎児起源の有核赤血球が、百万個に約1個の確率ではあるが、妊娠の第1及び第2三カ月期の間に母体の血流中に見出されている。幾つかのグループは、これら希少な胎児有核赤血球を単離しようと異なる形の細胞選別法を使用したが、成功は限られたものであった。加えて、出産後の母体血流中に胎児細胞が保存されることが示され、かくして、その時点での胎児の診断を混乱させた。胎児赤血球及び他の胎児細胞の表面上の胎児特異性抗体を微小操作技術と組合わせて使用することは、これまでのところ、胎児細胞を特定するのに最も見込みがある。
【0023】
“無傷”細胞という用語は、細胞膜完全性を維持している細胞を意味する。それら細胞は、理想的には細胞内容物を失っていないので、DNA、RNA及びmRNAを含む核酸の使用による更なる特定を可能にする。
【0024】
本発明は、子宮頸部粘液から細胞を、好ましくは無傷細胞を得るための手段を提供し、それは、胎児の非侵襲的試験の基礎を提供する。細胞が粘液プラグから解き放たれると、それらは、胎児細胞又は母体細胞として更に特定されることによって、遺伝子試験のための胎児細胞の供給源を提供する。
【0025】
サンプル中の細胞は、胎児から流れ込んだか又は子宮頸部に移動した、子宮頸管からの細胞を含む。これら細胞は、妊娠の第1三カ月期(約7〜13週)の間、子宮頸管の中に見出される。それら細胞は、胎児起源又は母体起源であり得る。
【0026】
これら細胞は、退行過程にある絨毛膜絨毛から子宮下支柱及び子宮頸部粘液の中に流れ込むと推定される。胎児細胞は、パップ塗沫採取 (pap smear) と類似の非侵襲的方法で、好ましくは、子宮頸管及び子宮下支柱から粘液を吸引することにより、母体細胞と一緒に取り出されることができる。これまでの研究は、これら胎児細胞が子宮頸部内外 (transcervical) サンプルの50〜90%に存在することを示してきた。この確率のバラツキは、サンプリング技術、オペレーターの技能、及び胎児細胞を母体細胞から明確に区別できないことに起因している。子宮頸部内外細胞の採取は安全かつ効率的であると文献に報告されている。CVSの前の妊婦達に行った予備的研究は、この操作が感染のリスクも自然流産のリスクも高めないことを示唆している。200人を越える婦人が関与したこれまでに報告された研究では、子宮頸部サンプルが進行中の妊娠期間中に吸引されたが、これら操作は、母体と胎児の健康にいかなる有害な影響ももたらさなかった。父方から受け継がれた微小衛生マーカーの存在によって、大量の子宮頸部内外細胞のPCR後に、胎児起源が幾つかのサンプルで確認されただけだった。母体細胞の混入は出産前診断を妨害する。
【0027】
子宮頸部粘液サンプルは、妊娠のいずれの段階で得られてもよい。好ましくは、そのサンプルは、妊娠の第1及び第2三カ月期に得られる。理想的には、そのサンプルは、胎児の幸福について決断できる段階、好ましくは治療的中絶に関する早期の決断をする機会を作れる期間内に得られる。好ましくは、そのサンプルは、妊娠の第14週までに得られる。より好ましくは、そのサンプルは、妊娠の第1三カ月期に得られる。
【0028】
好ましい態様では、子宮頸部粘液サンプルは、細胞を解離させるためにコラゲナーゼ及びプロテアーゼで処理される前に更に粘液溶解剤で処理される。この組み合わせ法で処理されることにより子宮頸部粘液サンプルからの細胞の収率がより良好となることが分かった。
【0029】
適する粘液溶解剤は、N−アセチル−L−システイン、DDT、トリプシン、及びトリプシン/EDTAを含む群から選択され得る。好ましくは、粘液溶解剤は、N−アセチル−L−システインである。
【0030】
サンプルは、好ましくは、酵素での処理の前に粘液溶解剤で処理される。しかしながら、この工程は、コラゲナーゼとプロテアーゼでの酵素処理と組み合わせて行われてもよい。この処理の組み合わせが、粘液分解の相乗的効果をもたらし、それにより細胞の解き放ちが容易になる。粘液溶解剤と酵素(コラゲナーゼとプロテアーゼ)のこの組み合わせ効果は、粘液溶解剤単独と酵素処理単独の別々の効果及び単に合わせた効果よりも大きな効果がある。
【0031】
好ましくは、サンプルは、2〜20mg/mlのN−アセチル−L−システインで処理される。より好ましくは、10mg/mlの最終濃度が使用される。
サンプルは、粘液を溶解するのに十分な時間処理され、一般に、粘液プラグを小球に解離することによってその粘液の粘度を減少させる。より好ましくは、サンプルは、約37℃で30〜60分間処理される。最も好ましくは、サンプルは、緩やかに攪拌しながら45分間処理される。
【0032】
粘液サンプルは、その粘液を分解するために更に酵素混合物で処理される。理想的には、その混合物は、胎児のものであっても母体のものであってもそれら細胞の特定を容易にするために、それら細胞の完全性を維持して細胞膜を保存する。このことから、それら酵素は、実質的に細胞に作用しないような組み合わせで選択された。
【0033】
プロテアーゼのような酵素の使用は、細胞膜の完全性が維持されるべきであるなら一般的には避けられる。しかしながら、本出願人は、プロテアーゼとコラゲナーゼとの組み合わせが、好ましくはそれらと粘液溶解剤との組み合わせが、細胞を、それらの特定及びその後の診断目的の使用を可能にする形でうまく解き放すことを見出した。
【0034】
コラゲナーゼとプロテアーゼは、単独で使用されても組み合わせて使用されてもよい。しかしながら、粘液サンプルを処理するためには、両方の酵素が同時に使用されるのが好ましい。粘液サンプルの同時処理が達成されるように、それら酵素を粘液サンプルの処理のための混合物に調製するのも望ましい。
【0035】
好ましくは、酵素の濃度は、粘液を実質的に分解するのに十分な濃度である。その濃度は、好ましくは、少なくとも1又は2回の処理で粘液を分解するだけの高さになろう。
子宮頸部粘液サンプルは、コラゲナーゼとプロテアーゼで処理される。当業者が知っているあらゆるコラゲナーゼタイプもプロテアーゼタイプも使用され得る。
【0036】
リベラーゼブレンドザイムのような市販の酵素ミックスが、コラゲナーゼとプロテアーゼでの処理を補足するために使用され得る。リベラーゼブレンドザイムは、コラゲナーゼイソフォームIと II 及びサーモリシンとの組み合わせ物であり、Roche から得ることができる。酵素混合物の適する濃度は、凡そリベラーゼブレンドザイム(0.5〜10WU/ml)コラゲナーゼとディスパーゼ(0.1〜1.5mg/ml)である。
【0037】
しかしながら、本発明は、これら特定の濃度に限定されない。濃度及びインキュベーション時間の操作は、粘液サンプル中の細胞のより良好な解き放ちを提供するであろう。
解離された細胞は、母体細胞と胎児細胞を含んでなるので、出産前診断試験に使用されるためには、又は、単離細胞、即ち胎児細胞を必要とする他の使用のためには、胎児細胞は更に特定されかつ単離され得るというのは、この細胞混合物から来ている。
【0038】
解離された細胞は、適する緩衝液及び生理食塩水で洗浄された後、遠心分離を含む当業者にとって利用可能なあらゆる方法によってサンプルから取り出されることができる。細胞の取り出し又は取り除きは、上澄み液からの細胞の分離を包含する。取り出されたら、それら細胞は、母体細胞と胎児細胞への更なる特定のために使用されてもよい。
【0039】
本発明の別の側面では、子宮頸部粘液サンプルから胎児細胞を取り出す方法であって:
上記の通りに解離された細胞を得ること;
該細胞を胎児特異性抗体で処理すること;
該抗体に結合した細胞を特定すること;及び
該特定された胎児細胞を取り出すこと
を含んでなる方法が提供される。
【0040】
胎児細胞は、上記の通りに解離細胞のサンプルを調製した後に子宮頸部粘液サンプルから取り出されることができる。子宮頸部粘液サンプルからの解離細胞は、胎児細胞と母体細胞とのミックスである。次いで、それら細胞の混合物は、胎児起源の細胞を特定するために特定操作を受ける。
【0041】
本発明の胎児細胞は、当該技術分野で周知の技術を使用して特定及び単離される。これら技術には、細胞を標識するために抗体を使用してそれを胎児起源のものであるとして特定することを包含する免疫組織化学法が含まれるがこれに限定されない。これら技術には、第1及び第2抗体を使用して細胞を第1三カ月期の胎児起源のものであるとして特定することも含まれる。好ましくは、抗体は胎児特異性抗原に結合するもので、IgG、IgM及びモノクローナル抗体であることができる。好ましくは、胎児特異性抗原は、胎児細胞の表面上に存在する。結合すると、胎児細胞は‘標識された’細胞を標識の無い細胞から分離するために処理される。細胞の標識には、第1抗体に結合する第2抗体の更なる使用が含まれ得る。第2抗体の例には、マウス由来第1抗体に結合するウサギ抗マウスフルオレセインイソチオシアネート異性体I(FITC)が含まれる。しかしながら、第1抗体は、第2抗体の不存在下で細胞を特定し単離するのに適していてもよい。適する第2抗体は、第1抗体を考慮しかつその第1抗体に第2抗体を反応させることによって当業者により決定されることができる。
【0042】
胎児細胞は、胎児特異性抗体によって特定される。胎児細胞が子宮頸部サンプルの粘液から分離されたら、現時点で入手可能などのような胎児特異性抗体でも使用できる。好ましくは、胎児特異性抗体は、妊娠の第1三カ月期に特異的である。最も好ましくは、それら抗体には、合胞栄養芽層、絨毛栄養膜細胞層及び栄養膜細胞柱 (cytotrophoblast cell columns) に特異的な抗体が含まれる。
【0043】
他の適する胎児特異性抗体は、Sunderland, C. A et al (1981) "Monoclonal Antibodies to human syncytiotrophoblast", Immunology 43(3):541-6 及び Griffith-Jones, M.D. et al (1992) "Detection of fetal DNA in trans-cervical swabs from first trimester pregnancies by gene amplification: A new route to prenatal diagnosis?", British Journal of Obstetrics and Gynecology, 99(6):508-11 に記載されたものである。具体的には、これら抗体は、NDOG1、NDOG5及びFT1.41.1として掲載されている。NDOG1は妊娠第1三カ月期の合胞栄養芽層を染色し、NDOG5は合胞栄養芽層と栄養膜細胞柱を染色し、そしてFT1.41.1は合胞栄養芽層と絨毛栄養膜細胞層を染色する。これら抗体のいずれも、母体の子宮内膜にも子宮頸部組織にも反応性ではない。
【0044】
これら抗体は、単独でも組み合わせても使用され得る。これら抗体は、細胞がそれら抗体と反応して結合できるなら、別々にでも同時にでも細胞に付されることができる。好ましくは、それらは、胎児細胞を特定するために抗体ミックスとして使用される。これら抗体が胎児細胞の細胞膜に特異的に結合することが本出願人によって見出された。
【0045】
胎児特異性抗体は、全ての胎児細胞タイプに特異的であるのが好ましい。子宮頸部粘液サンプルで起こる胎児細胞の不均質性に起因して、全てのタイプの胎児細胞を検知するために胎児特異性抗体の混合物を使用するのが望ましい。1種類の抗体が使用される場合には、他の胎児細胞タイプが逃され得る。抗体は、妊娠の段階を知ることにより選択され得るので、特定の細胞タイプが予測され得る。従って、予測された細胞タイプに特異的な抗体が、優先的に単独で又は組み合わせて使用されることができる。
【0046】
抗体は、特定を容易にするために標識を含んでもよい。本明細書で使用される“標識”という用語は、核酸プローブや抗体のような試薬に直接又は間接に複合化し又は融合して、それが複合化し又は融合したその試薬の検出を容易にする化合物又は組成物のことを意味する。標識自体が検出可能であっても(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)、酵素標識である場合に、検出可能である基質化合物又は組成物の化学変化を触媒するものであってもよい。
【0047】
抗体で標識された胎児細胞は、母体細胞のネガティブ選択又は胎児細胞のポジティブ選択のための、蛍光活性化細胞選別法(FACS)、磁気ビーズ分離技術、マイクロマニピュレーション技術、レーザー捕捉、及び蛍光免疫組織化学法を含む、当該技術分野で周知の技術を使用して特定及び/又は分離されることができる。好ましくは、胎児細胞は、母体細胞のネガティブ選択又は胎児細胞のポジティブ選択のために、蛍光免疫組織化学法を使用して特定及び/又は分離される。例えば、蛍光免疫組織化学法を使用して標識された胎児細胞は、蛍光顕微鏡で形態学的に特定され、そして、例えば、プルドガラスピペット (pulled glass pipettes) 又はマイクロマニュピレーターを使用するマイクロマニュピレーション技術を使用して単離されることができる。
【0048】
細胞が特定されたら、次いで、それは、当業者に利用可能な方法によって単離又は取り出されることができる。例えば、細胞が蛍光標識されているなら、それらはレーザー捕捉によって単離され又はFACS分析によって選別されることができる。しかしながら、抗体によって特定された細胞の特定方法に依っては他の方法を使用してもよい。
【0049】
本発明の別の側面では、本明細書に記載した方法によって取り出された胎児細胞が提供される。
本発明の別の側面では、胎児細胞を特定する方法であって:
上記のように子宮頸部粘液サンプルから解離細胞を得ること;
該細胞を胎児特異性抗体で処理すること;及び
該抗体に結合した細胞を特定すること
を含んでなる方法が提供される。
【0050】
子宮頸部粘液サンプルから胎児細胞をうまく特定することは、その子宮頸部粘液サンプルから細胞懸濁液を得ることにより達成される。細胞は好ましくは無傷であり、そのことが抗体が実質的に無傷の細胞膜に反応するのを可能にする。
【0051】
本発明の別の側面では、胎児細胞を特定する方法であって:
細胞サンプルを得ること;
該細胞サンプルを、本明細書に記載されたNDOG1、NDOG5及びFT1.41.1を含む群から選択される抗体又はそれらの等価物で処理すること;及び
該抗体に結合した細胞を特定すること
を含んでなる方法が提供される。
【0052】
上記のように、胎児細胞は、胎児細胞にだけ反応性の抗体の特異的カクテルを使用して特定されることができる。これら抗体、即ち、NDOG1、NDOG5及びFT1.41.1は胎児細胞に特異的である。それらは単独で使用されても組み合わせて使用されてもよく、そしてそれらは別々に加えられても同時に加えられてもよい。
【0053】
抗体NDOG1、NDOG3及びFT1.41.1に適用され、かつ本明細書で使用される“それらの等価物”という用語は、リストに挙げた抗体のいずれか1つと同じように挙動しかつ類似の特異性を有する等価の抗体を意味する。例えば、NDOG1、NDOG5及びFT1.41.1の標的部位を確認し、そしてモノクローナル抗体やポリクローナル抗体を生じさせる方法のような当業者に知られている方法を使用することによって他の抗体を生じさせてもよい。
【0054】
好ましくは、それら抗体は上記のようなやり方で標識される。蛍光標識が最も好ましい。
胎児細胞が特定され、そして好ましくは子宮頸部粘液プラグのような非侵襲的供給源から取り出されたら、それら細胞は:
(a)胎児特定、染色体異常及び単一遺伝子診断のための多数回FL−PCR;
(b)胎児特定のためのSNPでの、及び単一遺伝子障害及び染色体異数体のためのプローブでの、WGA、ハイブリダイゼーション及びマイクロアレイ分析;又は
(c)mRNAの抽出、cDNAライブラリー、ハイブリダイゼーション及び遺伝子発現マイクロアレイ分析
を含むあらゆるやり方で使用されることができる。
【0055】
これら技術は、胎児細胞のあらゆる生化学的障害、代謝的障害又は遺伝子障害を特定するために、それら胎児細胞を特徴付けるのに使用されてもよい。単離された胎児細胞は、いずれかの細胞タイプにおいて確認されることができる胎児異常を包含する、全てのタイプの異常を特定するために使用されることができる。胎児細胞が子宮頸部粘液サンプルから単離され特定されたら、あらゆる細胞分析がそれら胎児細胞に関して行われることができる。
【0056】
胎児起源を確認するため、単一遺伝子障害及び染色体異常を診断するために、マイクロアレイが使用されてもよい。1回のマイクロアレイで、単一ヌクレオチド多型現象(SNP)を使用して胎児細胞を特定すること、並びに単一遺伝子障害及び染色体異常を特定することが可能である。この方法で、単離され特定された単一胎児細胞は、プライマー伸長予備的増幅PCR(PEP−PCR)、退行オリゴヌクレオチドプライムドPCR (degenerate oligonucleotide primed PCR)(DOP−PCR)、リンカーアダプター−PCR、又はMSD(複数鎖追い出し)全ゲノム増幅(WGA)のいずれかによって、全ゲノム増幅を受けることができる。WGAからの蛍光標識産物は、マイクロアレイプラットフォームにハイブリダイズできるので、結合した蛍光のレーザー走査が、胎児起源を確認し、ヒト染色体の全ての23対の染色体異数体を診断し、そしてあらゆる具体的単一遺伝子欠失を特定することになる。
【0057】
本発明の別の側面では、胎児細胞を特定するために使用される組成物であって、抗体NDOG1、NDOG5及びFT1.41.1を含んでなる組成物が提供される。
本発明の別の側面では、胎児細胞の染色体中の染色体異数体を特定する方法であって:
胎児細胞を得ること;
該染色体上の少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを特定すること;及び
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを決定すること
を含んでなる方法が提供される。
【0058】
本発明のこの側面は、胎児細胞の染色体中の染色体異数体を特定する方法に関する。本明細書で使用される“染色体中の染色体異数体”には、対象の正常な天然の核型と比較して、染色体の一部を欠損しているか又は余分なコピー若しくは部分を有する染色体が含まれ、特定の部位でモノソミー又はトリソミーを起こす欠失、付加及び転座が含まれる。好ましくは、異数体は、常染色体のトリソミー及びモノソミー、及び性染色体のモノソミー、ジソミー及びトリソミーを含む群から選択される。
【0059】
好ましくは、胎児細胞は、上記のように、子宮頸部粘液サンプルから得られる。好ましくは、そのサンプルは妊婦からのものである。しかしながら、本発明は、流産した婦人から胎児細胞を得ることを排除しない。
【0060】
絨毛膜絨毛サンプリング(CVS)又は羊水穿刺のような胎児細胞を得る侵襲的方法は、胎児細胞を提供できる、絨毛膜絨毛サンプル、羊膜細胞、胎児組織及び臍帯血をもたらす。しかしながら、子宮頸部粘液サンプルから胎児細胞を得るための非侵襲的方法が好ましい。いかなる段階でのいかなるタイプの胎児細胞も使用できる。
【0061】
本発明は、核酸に特異的な多型微小衛生マーカーの使用を包含する。本発明の核酸はDNA、好ましくは染色体DNAであることができる。好ましくは、諸多型微小衛生マーカーは同じ染色体上に存在する。
【0062】
好ましくは、多型微小衛生マーカーは、高い異型接合性、対立遺伝子の広い分布、トリ対立遺伝子パターンを生み出す高い確率、及び所与染色体への特異性に基づいて選択される。例えば、表2に掲げられたダウン症候群の診断のための染色体21テトラヌクレオチド微小衛生マーカー及び表3に掲げられた他の症候群のための他のテトラヌクレオチド微小衛生マーカー診断法を参照のこと。
【0063】
選択される多型マーカーは、常染色体のトリソミー及びモノソミー、及び性染色体のモノソミー、ジソミー及びトリソミーを含む異数体の種々のパターンを特定するのに有用である。対立遺伝子サイズの広い分布は、そのような範囲の諸対立遺伝子サイズが、異数体、特にトリソミー、ジソミー又はモノソミーの対立遺伝子パターン診断を提供するので、遺伝子分析をうまく行うのに好ましい。それらマーカーは、各々のマーカーが、DNAフィンガープリント (fingerprint) 中に、他のマーカーと重なることのない、明確に異なる対立遺伝子プロフィールを有するようにも選択される。
【0064】
トリソミーは、流産及び死産によく見られる最も一般的な染色体異常であって、染色体21、18及び13におけるトリソミー及びX及びYにおけるジソミーが最大のグループである。トリソミー21又はダウン症候群は、出産予定日に到達する最も一般的な常染色体異常である。
【0065】
本発明は、染色体異数体の特定を可能にするためにその染色体上に少なくとも3種の多型マーカーを必要とする。
3種未満の多型マーカーの増幅は、幾つかの理由により偽結果をもたらす。限定されたテンプレート上での多数回蛍光ポリメラーゼ連鎖反応(FL−PCR)によるDNAフィンガープリンティングに付随する問題には、完全増幅の失敗、親の異型接合の可能性(各々の親は同じ対立遺伝子の2コピーを有する)、対立遺伝子脱落(ADO)(PCRの最初の2、3回のサイクルで、1対立遺伝子だけが検出可能であるという程度の、1対立遺伝子の完全増幅の失敗)、及び優先的増幅(PA)(1対立遺伝子という過少表現 (under-representation) が、期待される1:1ジ対立遺伝子比率からの歪みをもたらす)が含まれる。こうしたことから、1染色体当たり3種の高度に多型の微小衛生マーカーが異数体細胞の診断のために必要とされる。
【0066】
精度を向上させるために、微小衛生マーカーの数を増やしてもよい。本法は、少なくとも3種のマーカーを必要とする。しかしながら、5種の微小衛生マーカーが好ましい。少なくとも3種の微小衛生マーカーを含めることで、対立遺伝子脱落(ADO)と優先的増幅がそれほど結果に干渉することはない。もし1つの遺伝子座マーカーが害されても、他のものが正しい診断のために残っているからである。好ましくは、5種の多型マーカーが増幅される。
【0067】
この明細書の記載及び請求の範囲を通して、“含んでなる”という用語及びその類語は、他の添加物、成分、数又は工程を排除することを意図していない。
対立遺伝子プロフィールは、異数体及び胎児起源を特定するための手段を提供する。多型微小衛生マーカーにより特定される種々の対立遺伝子の比率は、トリソミー、ジソミー及びモノソミーを含むがこれらに限定されない異数体の種々の形態のいずれかとして特定可能な対立遺伝子パターンを提供する。
【0068】
多型微小衛生マーカーにより対立遺伝子を検出するのに種々の手段が利用可能である。他の方法には、制限フラグメント多型現象(RFLP)、単一ヌクレオチド多型現象(SNP)及びマイクロアレイが含まれる。
【0069】
好ましい態様では、対立遺伝子プロフィールは、対立遺伝子プロフィールを生じるための多型マーカーの増幅によって決定される。対立遺伝子プロフィールは、モノソミー、ジソミー又はトリソミーを含むがこれらに限定されない異数体の具体的特定を提供することができる。例えば、FL−PCR増幅で産生されるDNAの量は、初期標的配列の量に比例すると考えられるので、何らかの特定の遺伝子座についての対立遺伝子比率は、最終蛍光量から計算されることができる(第2対立遺伝子のPCR産物の量で割った第1対立遺伝子からのPCR産物の量)。従って、ジソミーは1:1の期待ビ対立遺伝子比率によって定義されるのに対し、トリソミーはトリ対立遺伝子パターンとして1:1:1の期待比率として定義されることができる。モノソミーの診断は、単一の対立遺伝子を表示するために全部で5種の微小衛生マーカーを必要とし得るが、トリソミーは、1種のマーカーの少なくとも1種のトリ対立遺伝子パターンによって正しく診断されることができた。
【0070】
本明細書で使用される“増幅する”という用語は、核酸又はその部分のコピーの数を増やす当該技術分野で公知のあらゆる種々の方法を含む。核酸増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む当該技術分野で知られた種々の核酸増幅方法によって達成されることができる。多数回FL−PCRを含む種々の形態のPCRが本発明の範囲に含まれる。種々の増幅方法が当該技術分野で知られており、"The polymerase chain -reaction", Baumforth et al., Journal of Clinical Pathology: Molecular Pathology 1999, (52): 1-10 に記載されている。
【0071】
増幅された核酸は分析されてもよく、そして、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を含む当該技術分野で周知の技術を使用して、好ましくは変性ゲルを使用して、プロフィールを生じさせる。分析は自動又は手動操作を使用して行われることができ、例えば、自動分析には、ABI Prism 377 DNA Sequencer と付随する Genescan 672 ソフトウェア (Applied Biosystems, Australia) の使用が含まれ得る。他の自動分析には、ABI Prism 3100 Genetic Analyzer 及び変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)が含まれる。
【0072】
本明細書で使用される“プライマー”という用語には、短鎖核酸、好ましくは長さが15又はそれを越えるヌクレオチド数のDNAオリゴヌクレオチドであって、例えば、核酸ハイブリダイゼーションによって相補的標的DNA鎖へアニーリングされてそのプライマーと標的DNA鎖の間でハイブリッドを形成し、次いで、ポリメラーゼによって、好ましくは熱安定性DNAポリメラーゼによって、その標的DNA鎖に沿って伸長されることができるオリゴヌクレオチドが含まれる。プライマー対は、核酸を増幅するために、例えば、PCRにより又は当該技術分野で周知の他の核酸増幅方法により増幅するために使用されうる。PCRプライマー対は、核酸の配列から誘導されても、次の基準に従って設計されてもよい:約50%のGC含量、18〜24塩基対の長さ、最少のプライマー二量体形成率及び自己アニーリング率、プライマーの3’末端における2G又はC塩基、同じ長さである順向プライマーと逆向プライマー(±1ヌクレオチド)、一列の中に3以下の反復塩基、及び100〜400ヌクレオチドの長さであるPCR産物のサイズ。
【0073】
プライマーを調製し及び使用する方法は、例えば、Sambrook et at. Molecular Cloning: A Laboratory manual, 2nd ed., vol. 1-3, ed. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, USA 1989; Current Protocols in Molecular Biology, ed. Asubel et. al., Greene Publishing and Wiley-Interscience, NY, USA 1987 に記載されている。
【0074】
最も好ましくは、本法は、DNAフィンガープリンティングにより多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを決定することを包含する。
本発明の別の側面では、出産前診断の方法であって:
本明細書に記載の通りに子宮頸部粘液サンプルから胎児細胞を得ること;
該胎児細胞に特徴的な染色体上の少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを特定すること;
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを決定すること;及び
該対立遺伝子プロフィールを出産前診断のめの条件と相関させること
を含んでなる方法が提供される。
【0075】
本明細書で使用される“出産前診断”という用語は、胎児細胞内での遺伝子突然変異又は何らかの生物学的若しくは代謝的特定物の存在を確認することを包含する。出産前診断は、全てのタイプの胎児異常を特定することを意図する。遺伝子突然変異には、染色体異数体、点突然変異、転座、トリヌクレオチド反復拡大 (trinucleotide repeat expansions)、逆位 (inversions)、多型現象、挿入及び欠失が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子突然変異は、遺伝子障害、例えば、膵嚢胞性繊維症、β−地中海貧血、ハンチントン病、脆弱X (Fragile X)、筋強直性ジストロフィー、デュシェーヌ筋ジストロフィー、又は鎌型赤血球貧血症を起こし得る。
【0076】
出産前診断には、染色体における異常に起因して起こる遺伝子障害が含まれ得る。染色体21、18、13、X及びYを包含する染色体異常が最も高い頻度で生産に見られる。他の異数体は、一般に、移植又は第1三カ月期の早期に無くなるが、染色体の全ての23対の異数体の早期の非侵襲的方法診断は、多数回FL−PCR又はマイクロアレイで達成されることができる。ターナー症候群(XO)、クラインフェルター症候群(XXY)、XXX女性 (XXX females) 及びXYY男性 (XYY males)、三倍体性(69,XXX又はXXY又はXYY)、パタウ症候群(トリソミー13)及びエドワード症候群(トリソミー18)、ダウン症候群(トリソミー21)を含むがこれらに限定されない遺伝子障害も本法によって検知され得る。好ましくは、本出産前診断は、異数体の形態にある染色体異常を検知することができる。出産前診断には、特定遺伝子における突然変異によって起こる単一遺伝子障害が含まれる。最も一般的な障害は、膵嚢胞性繊維症である。膵嚢胞性繊維症は、2,500回の出産に1回観察され、25個体に1個体がこの常染色体劣性状態のキャリヤである。
【0077】
好ましい側面では、ダウン症候群を診断する方法であって:
胎児細胞を得ること;
その染色体上の少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを特定すること;
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを決定すること;及び
染色体21のトリソミーを決定すること
を含んでなる方法によって染色体異数体を特定することを含んでなる方法が提供される。
【0078】
現在、ダウン症候群胎児の検知のため35歳未満の妊婦に申し入れられる一連の非診断的血清スクリーニングがある。これら試験は、12週目の超音波で測定される胎児の首の後ろの体液蓄積量(頸の厚み)、第1三カ月期における母体血液中のフリーのβ−hCG及び妊娠関連血漿プロテイン−A(PAPP−A)の濃度、並びに第2三カ月期における母体血液中のフリーのβ−hCG及びα−フェトプロテイン(AFP)の濃度を含む、ダウン症候群胎児と相関するように特定されたある範囲の変数の測定を包含する。組合わせた試験結果から、患者の個人的リスクが計算され、その80〜90%が検知効力であり5〜10%が偽陽性率である。しかしながら、これらスクリーニング試験は非診断的であり、かつ陰性結果が胎児におけるダウン症候群の不存在を示さない。現在80%近くのダウン症候群の生産が35歳を下回る母親からのものである。
【0079】
胎児細胞は、上記のいずれかの供給源から得られる。好ましくは、それら細胞は、妊婦の子宮頸部内外から綿棒で又は子宮頸管の吸引で得られる胎児細胞である。このことは、非侵襲的診断方法のためには理想的である。
【0080】
好ましい方法では、染色体21のトリソミーは、ダウン症候群の指標である。
この方法は、少なくとも3種の多型微小衛生マーカーで行われる。しかしながら、少なくとも5種のマーカーが使用されるのが好ましい。高度に異型接合性でありかつ広い分布の対立遺伝子サイズを有する染色体21上のテトラヌクレオチド微小衛生マーカーがこの方法に特に好ましい。
【0081】
ダウン症候群について、いかなる蛍光もサイズ重複も有さない明らかに異なる対立遺伝子プロフィール又はパターンを生ずるマーカーの選択が好ましい。ダウン症候群の好ましい診断について表2を参照のこと。
【0082】
本法は、少なくとも3種の多型微小衛生マーカー、好ましくは表2から選択されるものを必要とするが、5種のマーカーがダウン症候群を診断するために使用されるのが最も好ましい。
【0083】
この系に5種の微小衛生マーカーを含めることで、対立遺伝子脱落及び優先的増幅が結果に干渉することはない。もし1つの遺伝子座マーカーが害されても、正しい診断のために4種が残っているからである。
【0084】
対立遺伝子プロフィールを決定する方法は、多型微小衛生マーカーによって表示される対立遺伝子の指標となるパターンを生ずるいかなる方法によってもよい。好ましくは、対立遺伝子プロフィールは、それらマーカーのDNA増幅によって、好ましくはPCR、より好ましくはFL−PCRを使用して決定される。
【0085】
PCR産物の分析方法は、本明細書に記載されている。
プロフィールが樹立されたら、DNAの量、それから決定されるそれらそれぞれの対立遺伝子の比率及びサイズに関して上記した通りにして、異数体が特定され得る。ダウン症候群について図2をそして染色体13、18、21及びXの異数体について図3を参照のこと。
【0086】
本発明の別の側面では、ダウン症候群を診断する方法に使用するための微小衛生マーカーであって、前記マーカーが:
tatgtgagtcaattccccaagtga;
atgatgaatgcatagatggatg;
ttgcagggaaaccacagtt;
tgaacatacatgtacatgtgtctgg;又は
cactgcagacggcatgaacttc
のいずれかから選択される配列を含む順向プライマー配列を有する微小衛生マーカーが提供される。
【0087】
本発明の別の側面では、ダウン症候群を診断する方法に使用するための微小衛生マーカーであって、前記マーカーが:
gttgtattagtcaatgttctccag;
aatgtgtgtccttccaggc;
tccttggaataaattcccgg;
ttctctacatatttactgccaacac;又は
ccagaatcacatgagccaattcc
のいずれかから選択される配列を含む逆向プライマー配列を有する微小衛生マーカーが提供される。
【0088】
本発明の好ましい態様では、ダウン症候群を診断するための方法に使用するための微小衛星マーカーであって、表2に記載された群から選択されるいずれか1つのマーカーが提供される。これらマーカーのいずれか1つは、本明細書に記載の方法に従ってトリソミー21を診断するのに適する少なくとも2種の他のマーカーと組み合わせて使用されることができる。加えて、プライマー配列は、多数回FL−PCRにおける他のプライマー配列に相補的であるように再設計されてもよい。
【0089】
本発明の別の側面では、出産前診断のためのキットであって、胎児細胞の染色体中の染色体異数体を特定する方法に使用するための少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを含んでなり、前記方法が:
胎児細胞を得ること;
該染色体上の少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを特定すること;及び
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを決定すること
を含んでなるキットが提供される。
【0090】
好ましくは、その胎児細胞は、本明細書に記載した通りの子宮頸部粘液サンプルから得られる。
好ましい側面では、そのキットは、胎児細胞の特定の染色体上の多型微小衛生マーカーを特定して対立遺伝子プロフィールを得る手段を含んでなる。
【0091】
更なる側面では、そのキットは、多型微小衛生マーカーを、好ましくはPCR、より好ましくはFL−PCRを使用して増幅する手段を含む。マーカーを増幅する手段は、本明細書に記載されている。
【0092】
更なる好ましい側面では、ダウン症候群を診断するためのキットであって、マーカーが上記のダウン症候群のためのマーカーのいずれかから選択されるキットが提供される。
本発明の別の側面では、個体からの子宮頸部粘液サンプルからの細胞の胎児起源を確認する方法であって:
同じ個体から胎児細胞と母体細胞を得ること;
該胎児又は母体細胞のいずれかに特徴的な少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを選択すること;及び
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを該胎児細胞及び該母体細胞上で決定すること
を含んでなる方法が提供される。
【0093】
好ましくは、個体から細胞の胎児起源を確認する方法は、母体細胞と胎児細胞の染色体中の染色体異数体を特定することを含む。
加えて、子宮頸管からの胎児細胞の単離で、この非侵襲的方法は、単一遺伝子障害、例えば、膵嚢胞性繊維症を起こす突然変異を検知することもできる。
【0094】
単一遺伝子障害の突然変異検知をDNAフィンガープリンティング系と組み合わせることも、染色体異数体と所与単一遺伝子障害の両方についての妊婦診断を提供することも可能である(図3を参照のこと)。
【0095】
文書、行為、材料、装置、文献等の説明は、本発明の前後関係を与える目的のためにのみこの明細書に含められている。これら事柄のいずれか又は全てが、本願の各々の請求項の優先日前にオーストラリアに存在する先行技術の一部を形成するとも本発明に関連する分野における一般的知識になっているとも示唆も表現もしていない。
【0096】
本発明は、以下の実施例によってより十分に説明される。しかしながら、以下の記載は、例示だけのためと理解されるべきであり、上記の本発明の広さに関する限定として解釈されるべきでない。
【実施例】
【0097】
実施例1:ダウン症候群の診断
(a)子宮頸部内外細胞の採取と調製
第1又は第2三カ月期間の妊婦からの子宮頸部内外細胞の採取は、パップ塗沫採取と類似の操作であり、細いカテーテル (Aspiracath, Cook IVF) を使用する子宮頸管及び子宮下支柱からの子宮頸部粘液の直接吸引を含む。母体粘液細胞と子宮頸部内外細胞を含有するこのカテーテルのチップが、0.5mlのRPMI培地を含有し37℃にされたエッペンドルフ管の中に切り取られる。その内容物がカテーテルの内部チップから機械的に優しく取り外されて37℃の培地中に懸濁される。
【0098】
(b)子宮頸部内外サンプルからの胎児細胞の特定と単離
採取後、サンプルは、20mg/mlのN−アセチル−L−システイン0.5mlで処理され、更に、ゆっくり振盪されながら37℃で45分間インキュベートされる。次いで、そのサンプル全体は、PBSで2回洗浄された後、0.5mlの酵素カクテル(コラゲナーゼとプロテアーゼ)で37℃で1時間インキュベートされる。インキュベーション時間の間、解離した細胞が取り出され、元のサンプルに残った塊が新しい酵素で処理される。完全に解離させた後、その細胞懸濁液は、PBSで2回洗浄された後に免疫蛍光標識される。
【0099】
フルオレセインで標識された3種の胎児特異性抗体のカクテル(NDOG1、NDOG5及びFT1.41.1)が37℃で細胞懸濁液に加えられ、そして胎児細胞だけの細胞膜に特異的に結合される。NDOG1は、妊娠第1三カ月期の合胞栄養芽層を染色し、NDOG5は、合胞栄養芽層と栄養膜細胞柱を染色し、そして、FT1.41.1は、合胞栄養芽層と絨毛栄養膜細胞層を染色する。これら抗体のいずれも、母体の子宮内膜にも子宮頸部組織にも反応性ではない。プルドガラスピペットでのマイクロマニュピレーション及びマイクロディセクティング (microdissecting) 技術を使用して、反転顕微鏡下で、蛍光標識された胎児細胞の単一の小塊が特定され、単離され、そしてPBS緩衝液で3回洗浄された後、分析のため0.2mlPCR管に移される。陰性コントロールとして、母体偏平上皮細胞も単離されて、PBS緩衝液で3回洗浄された後、分析のため0.2mlPCR管に移される。
【0100】
(c)胎児起源の確認及びトリソミー21の診断
この多数回FL−PCR反応は、染色体21上で見出された5種の微小衛生マーカーを取り込む。この多数回から生じた対立遺伝子プロフィールが、母体起源又は胎児起源のいずれか、並びに染色体21の存在又は不存在を確認する。FL−PCR反応は:2.5μlの10×PCR緩衝液(500mM KCl、100mM トリス−HCl、pH9.0及び15mM MaCl2)、0.5μlの10mM dNTP(200μM)、0.3μlのTaqポリメラーゼ(5単位/μl)、11.20μl MQ−H2O、及び10.5μlのプライマーミックスを含有し、25μlの最終容量になる。プライマー対は、各々のPCR反応に、D21S1411、D21S11、D21S1413、D21S1412、及びD21S1437を含む。全ての反応ミックスは、手動の“加熱開始 (Hot Start)”を受け、多数回FL−PCRが 9700 Thermocycler PCR 機 (Applied Biosystems, Australia) を使用して行われた。反応は、94℃で45秒間の変性、60℃で45秒間のアニーリング、及び72℃で1分間の伸長からなる35回の熱サイクルに付された。各々の単一細胞多数回FL−PCRで、PCR反応ミックスが機能的でありかついずれの試薬も混ざりものでないことを確保するために、陽性及び陰性コントロールが含められた。
【0101】
他の実施例は、ダウン症候群と普通膵嚢胞性繊維症δF508突然変異の同時診断を包含する。そのFL−PCRは、上記の通りであるが、プライマーミックスが、δF508突然変異検知のためのプライマー対と一緒に、情報を与えてくれる4種の染色体21微小衛生マーカーを含有するという変更を有する。
【0102】
(d)胎児起源の読み取り及びトリソミー21の診断
全てのFL−PCR産物は、ABI Prism 3100 DNA Sequencer と付随する Genescan 672 ソフトウェア (Applied Biosystems, Australia) を使用して分析される。各々のPCR産物(0.5〜1.0μl)は、9.75μlのホルムアミドと0.25μlの内部標準と混合される。サンプルは、95℃で5分間変性され、氷上に置かれ、そして96ウェルプレート内に10μlが充填される。諸サンプルは、界面動電注入を受け、そして Genescan ソフトウェアによる自動サイジングで電気泳動される。Genescan プロフィール又は ‘フィンガープリント’ が生じ、使用された蛍光染料に依存して着色したピークとしてPCR産物を示す(図1を参照のこと,ダウン症候群対象の単一細胞対立遺伝子プロフィール)。
【0103】
胎児起源を確認するため、単一遺伝子障害及び染色体異常を診断するために、マイクロアレイも使用されることができる。1回のマイクロアレイで、単一ヌクレオチド多型現象(SNP)を使用して胎児細胞を特定すること、単一遺伝子障害及び染色体異常を特定することが可能である。この方法で、単離され特定された単一胎児細胞は、まず、PEP−PCR、DOP−PCR、リンカーアダプター−PCR又はMSDWGAのいずれかによって、全ゲノム増幅(WGA)を受けることになる。WGAからの蛍光標識産物は、マイクロアレイプラットフォームにハイブリダイズできるので、結合した蛍光のレーザー走査が、胎児起源を確認し、ヒト染色体の全23対の染色体異数体を診断し、そしてあらゆる具体的単一遺伝子欠失を特定することになる。
【0104】
実施例2:ダウン症候群 II の診断
(a)子宮頸部内外細胞の採取と調製が、実施例1に記載した通りに行われる。
(b)胎児細胞の特定と単離
採取後、サンプルがスライド上に播かれて100%エタノール中に固定される。胎児細胞を特定するために第1三カ月期胎児特異性抗体を使用して免疫組織化学法が行われる。次いで、それらスライドが脱水される。レーザー捕捉マイクロディセクティング技術が、陽性に染色された細胞を、そのスライドから、PCR管の中に直接移されることができる膜上に取り出すために使用される。
【0105】
(c,d及びe)トリソミー21についてのFL−PCR DNAフィンガープリンティング、FL−PCR産物の分析、及び異数体の診断が実施例1に記載の通りに行われる。
【0106】
実施例3:ダウン症候群及び膵嚢胞性繊維症δF508突然変異の同時診断
(a及びb)子宮頸部内外細胞の採取と調製、及び胎児細胞の特定と単離が、実施例1に記載した通りに行われる。
【0107】
(c)トリソミー21についてのFL−PCR DNAフィンガープリンティング、及び膵嚢胞性繊維症δF508の診断
FL−PCR反応は、上記の通りであるが、プライマーミックスが、δF508突然変異検知のためのプライマー対と一緒に、情報を与えてくれる4種の染色体21微小衛生マーカーを含有するという変更を有する。表2及び3に概略を示した微小衛生マーカーが、DNAフィンガープリンティング系の中への取り込みのための異型接合性遺伝子座を特定するために母体のゲノムDNA上で遺伝子型にされる。最終最適化プライマー対濃度は、反応及びプライマーに特異的である。
【0108】
(d及びe)FL−PCR産物の分析及び異数体の診断は上記の通りである(図3を参照のこと)。
最後に、他の種々の修飾及び/又は変更が、本明細書に概略を示した本発明の精神から逸脱することなく成され得ることが理解されるべきである。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1は、ダウン症候群を有する男性対象からの単一ヒト頬細胞のDNAフィンガープリントを示す。微小衛生マーカーD21S1413、D21S11及びD21S1442は、トリ対立遺伝子パターンを示し、D21S1437及びD21S1411は、期待1:2対立遺伝子比率を有するジ対立遺伝子2重パターンを示す。
【図2】図2は、二倍体対象からの単一ヒト頬細胞のDNAフィンガープリントを示す。この8重DNAフィンガープリント系には、各々がある二倍体対立遺伝子比率を示す染色体X、13、18及び21の各々について2つの微小衛生マーカーがある。
【図3】図3は、普通膵嚢胞性繊維症δF508突然変異のキャリヤである二倍体個体からの単一ヒト頬細胞のDNAフィンガープリントを示す。このDNAフィンガープリントには、染色体21についての4つの微小衛生マーカーがあり、膵嚢胞性繊維症δF508について突然変異が検知されている。
Claims (40)
- 子宮頸部粘液サンプルから細胞を取り出す方法であって:
子宮頸部粘液サンプルを得ること;
該サンプルをコラゲナーゼ及びプロテアーゼで処理して該子宮頸部粘液サンプルから細胞を解離させること;及び
解離された細胞を該サンプルから取り出すこと
を含んでなる方法。 - 請求項1記載の方法であって、該子宮頸部粘液サンプルが子宮頸部内外サンプルである方法。
- 請求項1又は2に記載の方法であって、該子宮頸部粘液サンプルが、子宮頸管及び子宮下支柱を含む子宮頸部領域から得られる方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、該子宮頸部粘液サンプルが妊娠の第1又は第2三カ月期の間に得られる方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法であって、該子宮頸部粘液サンプルがコラゲナーゼ及びプロテアーゼ及びリベラーゼブレンドザイムの組み合わせで処理される方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法であって、該子宮頸部粘液サンプルを粘液溶解剤で処理することを更に含む方法。
- 請求項6記載の方法であって、該子宮頸部粘液サンプルが、コラゲナーゼ及びプロテアーゼでの処理に先立って粘液溶解剤で処理される方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法によって調製された解離細胞。
- 子宮頸部粘液サンプルから胎児細胞を取り出す方法であって:
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法によって調製された解離細胞の混合物を得ること;
該細胞を胎児抗体で処理すること;
該胎児抗体に結合した細胞を特定すること;及び
該特定された細胞を取り出すこと
を含んでなる方法。 - 胎児細胞を特定する方法であって:
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法によって調製された解離細胞の混合物を得ること;
該細胞を胎児特異性抗体で処理すること;及び
該抗体に結合した細胞を特定すること
を含んでなる方法。 - 請求項9又は10に記載の方法であって、該胎児抗体が第1三カ月期胎児特異性抗体である方法。
- 請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法であって、該胎児細胞を特定するために該抗体が単独で又は別の抗体と一緒に使用される方法。
- 請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法であって、胎児細胞を特定するために1又はそれを越える抗体が使用される方法。
- 請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法であって、該胎児細胞が母体コントロールに対して比較される微小衛生マーカーによって更に特定され、前記胎児細胞が該母体細胞と微小衛生マーカーを共有している方法。
- 請求項14記載の方法であって、該微小衛生マーカーが:
tatgtgagtcaattccccaagtga;
atgatgaatgcatagatggatg;
ttgcagggaaaccacagtt;
tgaacatacatgtacatgtgtctgg;又は
cactgcagacggcatgaacttc
を含む群から選択される順向プライマー配列によって特定される方法。 - 請求項15記載の方法であって、該微小衛生マーカーが:
gttgtattagtcaatgttctccag;
aatgtgtgtccttccaggc;
tccttggaataaattcccgg;
ttctctacatatttactgccaacac;又は
ccagaatcacatgagccaattcc
を含む群から選択される逆向プライマー配列によって特定される方法。 - 請求項9又は11〜16のいずれか1項に記載の方法によって調製された胎児細胞。
- 胎児細胞を特定する方法であって:
細胞サンプルを得ること;
該細胞サンプルを、本明細書に記載されたNDOG1、NDOG5及びFT1.41.1を含む群から選択される抗体又はそれらの等価物で処理すること;及び
該抗体に結合した細胞を特定すること
を含んでなる方法。 - 請求項18記載の方法であって、該胎児細胞を特定するために該抗体が単独で又は組み合わせて使用される方法。
- 胎児細胞を特定するために使用される組成物であって、抗体NDOG1、NDOG5及びFT1.41.1を含んでなる組成物。
- 胎児細胞を特徴付ける方法であって:
請求項9〜16のいずれか1項に記載の方法によって調製された子宮頸部粘液サンプルから胎児細胞を得ること;
該胎児細胞を:
(a)多重FL−PCR;
(b)WGA、ハイブリダイゼーション及びマイクロアレイ分析;又は
(c)mRNAの抽出、cDNAライブラリー、ハイブリダイゼーション及び遺伝子発現マイクロアレイ分析
を含む群から選択される操作に付すること;及び
該操作の結果を分析して該細胞を特徴付けること
を含んでなる方法。 - 請求項21記載の方法であって、該胎児細胞が、生化学的障害、代謝障害又は遺伝子障害について特徴付けられる方法。
- 胎児細胞の染色体中の染色体異数体を特定する方法であって:
請求項9〜16のいずれか1項に記載の方法によって調製された子宮頸部粘液サンプルから胎児細胞を得ること;
該染色体上の少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを特定すること;及び
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを決定すること
を含んでなる方法。 - 請求項23記載の方法であって、該対立遺伝子プロフィールが5種の微小衛生マーカーの1又はそれを越えるマーカーによって決定される方法。
- 出産前診断の方法であって:
請求項9〜16のいずれか1項に記載の方法によって調製された子宮頸部粘液サンプルから胎児細胞を得ること;
染色体上の少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを特定すること;
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを決定すること;及び
該対立遺伝子プロフィールを出産前診断のための条件と相関させること
を含んでなる方法。 - 請求項25記載の方法であって、該出産前診断が、胎児細胞における遺伝子突然変異の存在を確認することを含み、該遺伝子突然変異が、染色体異数体、点突然変異、転座、トリヌクレオチド反復拡大、挿入及び欠失を含む群から選択される方法。
- 請求項26記載の方法であって、該遺伝子突然変異が、膵嚢胞性繊維症、β−地中海貧血、ハンチントン病、脆弱X、筋強直性ジストロフィー、デュシェーヌ筋ジストロフィー、鎌型赤血球貧血症、ターナー症候群(XO)、クラインフェルター症候群(XXY)、XXX女性及びXYY男性、三倍体性(69,XXX又はXXY又はXYY)、パタウ症候群(トリソミー13)及びエドワード症候群(トリソミー18)、又はダウン症候群(トリソミー21)を含んでなる群から選択される状態と関係している方法。
- 請求項27記載の方法であって、該染色体異数体が、染色体21、18、13、X及びYを含む群から選択されるヒト染色体で起こる方法。
- 請求項28記載の方法であって、該対立遺伝子プロフィールが染色体21のトリソミーを示す方法。
- 請求項28又は29記載の方法であって、該遺伝子障害がダウン症候群である方法。
- 請求項23〜30のいずれか1項に記載の方法であって、該微小衛生マーカーが:
tatgtgagtcaattccccaagtga;
atgatgaatgcatagatggatg;
ttgcagggaaaccacagtt;
tgaacatacatgtacatgtgtctgg;又は
cactgcagacggcatgaacttc
を含む群から選択される順向プライマー配列を含む方法。 - 請求項23〜32のいずれか1項に記載の方法であって、該微小衛生マーカーが:
gttgtattagtcaatgttctccag;
aatgtgtgtccttccaggc;
tccttggaataaattcccgg;
ttctctacatatttactgccaacac;又は
ccagaatcacatgagccaattcc
を含む群から選択される逆向プライマー配列を含む方法。 - 請求項23〜32のいずれか1項に記載の方法であって、表2のマーカーから選択される微小衛生マーカーの使用を含む方法。
- 個体からの細胞の胎児起源を確認する方法であって:
請求項9〜16のいずれか1項に記載の方法によって調製された子宮頸部粘液サンプルから胎児細胞をそして同個体から母体細胞を得ること;
該胎児又は母体細胞のいずれかに特徴的な少なくとも3種の多型微小衛生マーカーを選択すること;及び
該少なくとも3種の多型微小衛生マーカーの対立遺伝子プロフィールを該胎児細胞及び該母体細胞上で決定すること
を含んでなる方法。 - 請求項34記載の方法であって、個体からの細胞の胎児起源を確認する該方法が、該母体細胞及び該胎児細胞の染色体における染色体異数体を特定することを含む方法。
- 単一遺伝子障害を検知する方法であって:
請求項9〜16のいずれか1項に記載の方法によって調製された子宮頸部粘液サンプルから胎児細胞を得ること;及び
該胎児細胞の遺伝子における突然変異を検知すること
を含んでなる方法。 - 請求項36記載の方法であって、該単一遺伝子障害が、膵嚢胞性繊維症、β−地中海貧血、ハンチントン病、脆弱X、筋強直性ジストロフィー、デュシェーヌ筋ジストロフィー、及び鎌型赤血球貧血症を含む群から選択される方法。
- 請求項37記載の方法であって、該遺伝子障害が膵嚢胞性繊維症である方法。
- 請求項1記載の細胞を取り出す方法であって、実施例1又は2に記載の方法。
- 請求項9記載の胎児細胞を取り出す方法であって、実施例1又は2に記載の方法。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
AUPR7499A AUPR749901A0 (en) | 2001-09-06 | 2001-09-06 | Method of identifying chromosomal abnormalities and prenatal diagnosis |
PCT/AU2002/001214 WO2003020986A1 (en) | 2001-09-06 | 2002-09-06 | Method of isolating cells and uses thereof |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005500861A true JP2005500861A (ja) | 2005-01-13 |
Family
ID=3831449
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003525686A Withdrawn JP2005500861A (ja) | 2001-09-06 | 2002-09-06 | 細胞を単離する方法及びその使用 |
Country Status (7)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US20050123914A1 (ja) |
EP (1) | EP1434887A4 (ja) |
JP (1) | JP2005500861A (ja) |
CN (1) | CN1582341A (ja) |
AU (1) | AUPR749901A0 (ja) |
CA (1) | CA2459725A1 (ja) |
WO (1) | WO2003020986A1 (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015533504A (ja) * | 2012-10-19 | 2015-11-26 | ウェイン ステイト ユニヴァーシティ | 出生前診断のための頚管粘液における胎性栄養膜細胞の同定および分析 |
JP2023527246A (ja) * | 2021-05-20 | 2023-06-27 | 広州凱普医薬科技有限公司 | 妊婦の子宮頸部剥離細胞から胎盤栄養膜細胞を分離する方法 |
Families Citing this family (57)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
AU2003900944A0 (en) * | 2003-02-28 | 2003-03-13 | The University Of Queensland | Cell isolation & enrichment |
US9045796B2 (en) * | 2003-06-20 | 2015-06-02 | Illumina, Inc. | Methods and compositions for whole genome amplification and genotyping |
WO2005047532A1 (en) * | 2003-11-17 | 2005-05-26 | Gribbles Molecular Science Pty Ltd | Improved method of performing genetic analyses on reproductive tract cell samples |
EP1624074A1 (fr) * | 2004-08-06 | 2006-02-08 | Neurolab | Marqueurs et procédés pour le dépistage prénatal d'anomalies chromosomiques |
FR2880897B1 (fr) * | 2005-01-18 | 2010-12-17 | Inst Nat Sante Rech Med | Methode de detection, non invasive, prenatale, in vitro de l'etat sain normal, de l'etat de porteur sain ou de l'etat de porteur malade de la mucoviscidose |
US11111543B2 (en) | 2005-07-29 | 2021-09-07 | Natera, Inc. | System and method for cleaning noisy genetic data and determining chromosome copy number |
US11111544B2 (en) | 2005-07-29 | 2021-09-07 | Natera, Inc. | System and method for cleaning noisy genetic data and determining chromosome copy number |
US10081839B2 (en) | 2005-07-29 | 2018-09-25 | Natera, Inc | System and method for cleaning noisy genetic data and determining chromosome copy number |
US9424392B2 (en) | 2005-11-26 | 2016-08-23 | Natera, Inc. | System and method for cleaning noisy genetic data from target individuals using genetic data from genetically related individuals |
US10083273B2 (en) | 2005-07-29 | 2018-09-25 | Natera, Inc. | System and method for cleaning noisy genetic data and determining chromosome copy number |
GB0523276D0 (en) * | 2005-11-15 | 2005-12-21 | London Bridge Fertility | Chromosomal analysis by molecular karyotyping |
US20070224597A1 (en) * | 2006-03-23 | 2007-09-27 | Biocept, Inc. | Isolating fetal trophoblasts |
US20080050739A1 (en) | 2006-06-14 | 2008-02-28 | Roland Stoughton | Diagnosis of fetal abnormalities using polymorphisms including short tandem repeats |
EP2589668A1 (en) | 2006-06-14 | 2013-05-08 | Verinata Health, Inc | Rare cell analysis using sample splitting and DNA tags |
EP4108780A1 (en) * | 2006-06-14 | 2022-12-28 | Verinata Health, Inc. | Rare cell analysis using sample splitting and dna tags |
EP2029779A4 (en) | 2006-06-14 | 2010-01-20 | Living Microsystems Inc | HIGHLY PARALLEL SNP GENOTYPING UTILIZATION FOR FETAL DIAGNOSIS |
US8137912B2 (en) | 2006-06-14 | 2012-03-20 | The General Hospital Corporation | Methods for the diagnosis of fetal abnormalities |
EP2140027B1 (en) * | 2006-12-07 | 2012-07-18 | Novartis AG | Non-invasive prenatal genetic screen |
CA2731991C (en) * | 2008-08-04 | 2021-06-08 | Gene Security Network, Inc. | Methods for allele calling and ploidy calling |
PT2562268T (pt) | 2008-09-20 | 2017-03-29 | Univ Leland Stanford Junior | Diagnóstico não invasivo de aneuploidia fetal por sequenciação |
JP5923035B2 (ja) | 2009-03-24 | 2016-05-24 | バイオセプト インコーポレイティッド | 細胞の捕捉および解析のデバイスおよび方法 |
US20120100538A1 (en) * | 2009-03-24 | 2012-04-26 | Biocept, Inc. | Devices and methods of cell capture and analysis |
EP2421955A4 (en) | 2009-04-21 | 2012-10-10 | Genetic Technologies Ltd | METHODS OF OBTAINING F TAL GENETIC MATERIAL |
US8825412B2 (en) | 2010-05-18 | 2014-09-02 | Natera, Inc. | Methods for non-invasive prenatal ploidy calling |
WO2011041485A1 (en) | 2009-09-30 | 2011-04-07 | Gene Security Network, Inc. | Methods for non-invasive prenatal ploidy calling |
CA2817990A1 (en) | 2009-12-23 | 2011-06-30 | Genetic Technologies Limited | Methods of enriching and detecting fetal nucleic acids |
US20110312503A1 (en) | 2010-01-23 | 2011-12-22 | Artemis Health, Inc. | Methods of fetal abnormality detection |
US10316362B2 (en) | 2010-05-18 | 2019-06-11 | Natera, Inc. | Methods for simultaneous amplification of target loci |
US11332785B2 (en) | 2010-05-18 | 2022-05-17 | Natera, Inc. | Methods for non-invasive prenatal ploidy calling |
US11408031B2 (en) | 2010-05-18 | 2022-08-09 | Natera, Inc. | Methods for non-invasive prenatal paternity testing |
US9677118B2 (en) | 2014-04-21 | 2017-06-13 | Natera, Inc. | Methods for simultaneous amplification of target loci |
US11332793B2 (en) | 2010-05-18 | 2022-05-17 | Natera, Inc. | Methods for simultaneous amplification of target loci |
US11326208B2 (en) | 2010-05-18 | 2022-05-10 | Natera, Inc. | Methods for nested PCR amplification of cell-free DNA |
US11339429B2 (en) | 2010-05-18 | 2022-05-24 | Natera, Inc. | Methods for non-invasive prenatal ploidy calling |
US20190010543A1 (en) | 2010-05-18 | 2019-01-10 | Natera, Inc. | Methods for simultaneous amplification of target loci |
US11939634B2 (en) | 2010-05-18 | 2024-03-26 | Natera, Inc. | Methods for simultaneous amplification of target loci |
US11322224B2 (en) | 2010-05-18 | 2022-05-03 | Natera, Inc. | Methods for non-invasive prenatal ploidy calling |
ES2770342T3 (es) | 2010-12-22 | 2020-07-01 | Natera Inc | Procedimientos para pruebas prenatales no invasivas de paternidad |
WO2012108920A1 (en) | 2011-02-09 | 2012-08-16 | Natera, Inc | Methods for non-invasive prenatal ploidy calling |
CN103074416B (zh) * | 2012-06-20 | 2017-12-08 | 宁波海尔施基因科技有限公司 | 一种检测五条染色体数目异常的方法 |
WO2015048535A1 (en) | 2013-09-27 | 2015-04-02 | Natera, Inc. | Prenatal diagnostic resting standards |
US10577655B2 (en) | 2013-09-27 | 2020-03-03 | Natera, Inc. | Cell free DNA diagnostic testing standards |
US10262755B2 (en) | 2014-04-21 | 2019-04-16 | Natera, Inc. | Detecting cancer mutations and aneuploidy in chromosomal segments |
EP3957749A1 (en) | 2014-04-21 | 2022-02-23 | Natera, Inc. | Detecting tumour specific mutations in biopsies with whole exome sequencing and in cell-free samples |
CN105506066B (zh) * | 2014-09-26 | 2021-04-30 | 深圳华大基因细胞科技有限责任公司 | 一种用于新一代无创产前诊断领域的细胞鉴定方法 |
DK3204536T3 (da) | 2014-10-10 | 2020-03-30 | Univ Wayne State | Fremgangsmåde til analyse af RNA fra føtale ekstravilløse trophoblastceller |
CN104651488B (zh) * | 2014-11-25 | 2017-08-08 | 北京阅微基因技术有限公司 | 检测染色体非整倍体数目异常的扩增组合物及快速检测试剂盒 |
CA2974373A1 (en) * | 2015-01-23 | 2016-07-28 | Unimed Biotech (Shanghai) Co., Ltd. | Microfluidics based fetal cell detection and isolation for non-invasive prenatal testing |
WO2016183106A1 (en) | 2015-05-11 | 2016-11-17 | Natera, Inc. | Methods and compositions for determining ploidy |
EP3440209A4 (en) | 2016-04-06 | 2019-11-27 | Wayne State University | ISOLATION AND ANALYSIS OF FETAL DNA FROM EXTRAVILLE THROPHOBLAST CELLS RECOVERED FROM THE ENDOZERVICAL CHANNEL |
US11485996B2 (en) | 2016-10-04 | 2022-11-01 | Natera, Inc. | Methods for characterizing copy number variation using proximity-litigation sequencing |
US10011870B2 (en) | 2016-12-07 | 2018-07-03 | Natera, Inc. | Compositions and methods for identifying nucleic acid molecules |
EP3585889A1 (en) | 2017-02-21 | 2020-01-01 | Natera, Inc. | Compositions, methods, and kits for isolating nucleic acids |
US11230729B2 (en) | 2018-04-20 | 2022-01-25 | Inanna Diagnostics, Inc | Methods and devices for obtaining cellular and DNA material from human female reproductive system |
US11525159B2 (en) | 2018-07-03 | 2022-12-13 | Natera, Inc. | Methods for detection of donor-derived cell-free DNA |
JP7242851B2 (ja) * | 2018-07-26 | 2023-03-20 | カウンシル・オブ・サイエンティフィック・アンド・インダストリアル・リサーチ・アン・インディアン・レジスタード・ボディ・インコーポレイテッド・アンダー・ザ・レジストレーション・オブ・ソサエティーズ・アクト・(アクト・21・オブ・1860) | 子宮頸がんのグレード検出のためのスクリーニングキットおよびその調製方法 |
TWI668423B (zh) * | 2018-10-02 | 2019-08-11 | 吳宏偉 | 細胞分選方法及系統 |
-
2001
- 2001-09-06 AU AUPR7499A patent/AUPR749901A0/en not_active Abandoned
-
2002
- 2002-09-06 JP JP2003525686A patent/JP2005500861A/ja not_active Withdrawn
- 2002-09-06 CA CA002459725A patent/CA2459725A1/en not_active Abandoned
- 2002-09-06 CN CNA028221184A patent/CN1582341A/zh active Pending
- 2002-09-06 US US10/488,855 patent/US20050123914A1/en not_active Abandoned
- 2002-09-06 WO PCT/AU2002/001214 patent/WO2003020986A1/en not_active Application Discontinuation
- 2002-09-06 EP EP02759920A patent/EP1434887A4/en not_active Withdrawn
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015533504A (ja) * | 2012-10-19 | 2015-11-26 | ウェイン ステイト ユニヴァーシティ | 出生前診断のための頚管粘液における胎性栄養膜細胞の同定および分析 |
JP2023527246A (ja) * | 2021-05-20 | 2023-06-27 | 広州凱普医薬科技有限公司 | 妊婦の子宮頸部剥離細胞から胎盤栄養膜細胞を分離する方法 |
JP7368642B2 (ja) | 2021-05-20 | 2023-10-24 | 広州凱普医薬科技有限公司 | 妊婦の子宮頸部剥離細胞から胎盤栄養膜細胞を分離する方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
CN1582341A (zh) | 2005-02-16 |
EP1434887A4 (en) | 2006-02-01 |
CA2459725A1 (en) | 2003-03-13 |
US20050123914A1 (en) | 2005-06-09 |
EP1434887A1 (en) | 2004-07-07 |
AUPR749901A0 (en) | 2001-09-27 |
WO2003020986A1 (en) | 2003-03-13 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2005500861A (ja) | 細胞を単離する方法及びその使用 | |
US11378498B2 (en) | Diagnosis of fetal abnormalities using polymorphisms including short tandem repeats | |
EP2029778B1 (en) | Diagnosis of fetal abnormalities | |
US6258540B1 (en) | Non-invasive prenatal diagnosis | |
US20080026390A1 (en) | Diagnosis of Fetal Abnormalities by Comparative Genomic Hybridization Analysis | |
US20050181429A1 (en) | Non-invasive prenatal genetic diagnosis using transcervical cells | |
US20010051341A1 (en) | Non-invasive prenatal diagnosis | |
US20050003351A1 (en) | Non-invasive prenatal genetic diagnosis using transcervical cells | |
Tynan et al. | Multiplexed analysis of circulating cell-free fetal nucleic acids for noninvasive prenatal diagnostic RHD testing | |
Giambona et al. | Embryo‐fetal erythroid cell selection from celomic fluid allows earlier prenatal diagnosis of hemoglobinopathies | |
Hessner et al. | Prenatal genotyping of Jka and Jkb of the human Kidd blood group system by allele‐specific polymerase chain reaction | |
Mantzaris et al. | Preliminary report: correct diagnosis of sex in fetal cells isolated from cervical mucus during early pregnancy | |
Bingulac-Popović et al. | Prenatal RHD genotyping in Croatia: preliminary results | |
JP2010187556A (ja) | 妊孕性診断方法、妊孕性診断キット、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、及び抗体 | |
WO2016052405A1 (ja) | 胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法および判別システム | |
Sillence | Cell-free fetal DNA (cffDNA) enrichment for non-invasive prenatal testing (NIPT): a comparison of molecular techniques | |
Vicic et al. | Antenatal detection of chromosomal abnormalities combining QF-PCR and cytogenetic analysis | |
AU2002325667A1 (en) | Method of isolating cells and uses thereof | |
Wu et al. | Application of droplet digital PCR for prenatal screening of Down syndrome | |
Fuks et al. | Prenatal Diagnosis using Fetal Genetic Material in Maternal Circulation | |
Ahmadi | Non-Invasive Determination of Fetal RHD Status by Cell-Free Fetal DNA from Maternal Plasma |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050906 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20051017 |
|
A761 | Written withdrawal of application |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 Effective date: 20060214 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20060214 |