JP2005500078A - 甜菜から白糖及び黒糖を製造する方法 - Google Patents
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Abstract
粗製ディフューザー甜菜汁液から白糖及び黒糖を製造する方法に関する。汁液を、分子量カットオフ2,000〜500,000ダルトンを有するフィルター上、70〜95℃において、膜濾過によって精製し、減圧下で、乾燥物質含量60〜80質量%まで蒸発させて濃厚な汁液とする。この濃厚な汁液について、一般的な多段階蒸発結晶化を行い、白糖及び黒糖結晶の生成物を得る。黒糖は重要な官能特性を有する。
【選択図】図1
【選択図】図1
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗製の甜菜汁液の精製、続く蒸発及び結晶化によって、白糖及び黒糖の如き砂糖結晶を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
甜菜からの従来の製糖法は、第1工程として、甜菜を洗浄し、細断し、水で抽出することによる粗製甜菜汁液の調製を含む。抽出はディフューザーにおいて行われ、従って、粗製汁液は、しばしば、ディフュージョン汁液又はディフューザー汁液と称される。
【0003】
粗製ディフューザー汁液を、ついで、1以上の処理(各処理は、一連の石灰化、炭酸化及び濾過でなる)によって精製する。石灰化では、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムを添加して、代表的には、pHを約12.6以上に上昇させる。その後、二酸化炭素の添加(炭酸化)又は他の酸の添加によってカルシウムを沈殿させ、ついで、沈殿物を、一般的な濾過によって汁液から除去する。代表的には、精製は、このような沈殿処理2回を含む。
【0004】
沈澱処理後、汁液を亜硫酸化(SO2の添加)に供して、着色を防止する。
【0005】
ついで、精製汁液を、減圧下、約130℃から開始して約80℃までの温度で蒸発させて、乾物含量約70質量%を有するシロップとし、このシロップを、さらに、第1の蒸発結晶化装置から始まる3段階蒸発結晶化において、減圧下、80℃で蒸発させ、ここで、第1蒸発結晶化装置において、シロップを、さらに濃縮して乾物含量約91質量%とし、この蒸発結晶化装置において生成された白糖結晶を、遠心法の如き相分離によって回収する。
【0006】
母液については、蒸発結晶化装置における濃縮、続いて遠心分離を行う、さらに2つの段階に供する。この2つの段階の遠心分離処理によって得られた結晶は不純物を含有する。充分な収率及び充分な最終の砂糖品質を達成するため、結晶を溶解し、第1蒸発結晶化装置に再循環でき、一方、最後の母液(糖蜜)は動物用飼料として及び発酵用に使用される。
【0007】
従来法による第2及び第3の蒸発結晶化装置から得られた砂糖結晶は黒糖(粗製)状である。しかし、甜菜から得られた黒糖は、消費者には受け入れられない不快な異味及び臭いを有している。このため、操作及び設備のコストの増大を招くが、砂糖結晶を再溶解し、これを第1蒸発結晶化装置に再循環することが必要である。
【0008】
石灰及び二酸化炭素による従来の沈澱処理は、環境及びエネルギー消費の両方の点から不利であることが知られている。このため、別の精製法を開発するよう、いくつかのアプローチがなされている。いくつかのケースでは、沈澱処理の回数が低減され、他のケースでは、別の化学剤が提案されている。
【0009】
米国特許第759,283号(Ekernら)は、精製甜菜汁液生成物を製造するための甜菜の処理方法を開示している。汁液を、石灰及び炭酸カルシウムの添加によってプレ石灰化し、その後、プレ石灰化汁液を、孔サイズ0.002〜0.5μmを有する濾過膜を介する濾過に供して、濾過膜を通過しない残留物及び膜を通過する透過物を生成する。ついで、透過物を二酸化炭素ガスで処理して、溶解した石灰を透過物から除去して、ここから、精製甜菜汁液生成物を生成する。この方法は、甜菜から白糖を生成するための従来の2回の処理の代わりに、石灰+炭酸化処理の回数を1回の処理に制限するが、化学剤によるこの処理は完全には回避されない。
【0010】
WO98/21368は、石灰化及び炭酸化の代わりに、粗製ディフュージョン汁液を、アルカリ性pHにおいて、70℃以上に、有効な凝集を行うに充分な期間維持する工程を行う甜菜汁液の清澄化法を開示している。凝集化された粒子は、遠心分離又は濾過の如き相分離によって除去される。1具体例では、分離は、プレスクリーニング及び膜濾過でなる。この方法によって、石灰化及び炭酸化は回避されるが、この方法は、なお、化学剤の添加を含み、一般的な軟化工程を必要とする。
【0011】
米国特許第5,902,409号(Kwokら)は、サトウキビ又は甜菜の汁液を、クロスフローMF、UF又はNFによって清澄化するものである。この方法は、消石灰の如き凝集剤又はカチオン性凝集剤の形の化学剤の添加による清澄化工程を含む。
【0012】
ヨーロッパ特許公開第1,046,718号(Eridania S.p.A.ら)は、プレ濾過、続く膜濾過に基づく別の処理によって粗製甜菜汁液の50%以下を清澄化し、汁液の残部を、従来のCaOの添加、第1の炭酸化及び濾過、第2の炭酸化及びさらに濾過によって処理するものである。別法にて処理された透過物を、第1の炭酸化の清澄な汁液と混合する。実施例によれば、得られた精製汁液は、従来の方法によって精製された汁液とは、純度、pH、色及びアルカリ度に関して、必ずしも顕著な差異を示してはいない。その明細書には、甜菜からの黒糖の製造についての教示は記載されていない。
【0013】
ヨーロッパ特許公開第957,178号(Eridiania)は、粗製甜菜汁液から粒径50μm以上を有する有機性粒子及び無機性粒子を分離し、続いて、分子量カットオフ(MWCO)5000ダルトン〜0.5μmの膜を使用するMF又はUFを行うものである。ついで、汁液を濃縮し、冷却結晶化によって、白糖結晶の第1生成物を得る。このヨーロッパ特許公開第957,178号の教示によれば、従来の蒸発結晶化に代わって冷却結晶化を使用することが、上記の膜精製した粗製甜菜汁液から市販可能な品質の白糖を得ることを可能にする必須の特徴である。第1結晶化段階からの母液を、さらに、2つの冷却結晶化段階で処理して、砂糖結晶の第2及び第3生成物を得る。これら第2及び第3の2つの生成物、特に第3生成物の純度は、白糖として充分ではない。従って、これらの生成物を溶解し、第1の濃縮/結晶化段階に再循環する。いくつかのケースでは、砂糖結晶の第2生成物は、特殊な色合い及び特殊な形態を有する市販品質の「特殊な」等級の砂糖として使用される。しかし、蒸発結晶化によって、第2及び第3生成物が択一的に得られる場合には、その再処理が必要である。
【0014】
蒸発結晶化は、冷却結晶化よりも高い砂糖結晶収率を提供する。これは、従来の3段階結晶化法によって、北ヨーロッパで見られる高純度汁液から砂糖を抽出し尽くすことができるが、一方、冷却結晶化では、4段階結晶化法が必要となることを意味している。この結果、蒸発結晶化は、より簡単かつよりコスト効率の良いものとなる。
【0015】
蒸発結晶化及び続く遠心分離の方法が開発され、数十年以上、最大限に利用されており、甜菜工業の至る所で、確立された方法に関して、存在するノウハウ及び熟練によって良好に機能する装置が使用されている。
【0016】
ヨーロッパ特許公開第957,178号に従って教示されるような冷却結晶化の商業的な使用は、最適な装置、方法のパラメーター及び多段階冷却結晶化の操作法のさらなる開発を必要としている。さらに、結晶化速度は、より低い温度では(代表的には80℃から始まって、約30℃となる)、より遅く、一方、蒸発結晶化は、約80℃の一定温度で行われる。これは、冷却結晶化時間が長くなり、より長い時間の冷却結晶化は、プロセスにおいて、より大きい容積の生成物を生成し、従って、より大きい容積の装置が必要となることを意味している。また、冷却結晶化の運動メカニズム及び変動する流体力学的条件は複雑であり、コントロール及び最適化を困難にする。
【0017】
記載された分析データによれば、ヨーロッパ特許公開第957,178号に従って得られる第2生成物は、220 ICUMSA単位(IU)の色を有する。この色は、黒糖よりもむしろ、サトウキビからのプランテーション白糖のものにより類似している(サトウキビからのものは、代表的には、800〜8000IUの色を有する)。結論として、開示された第2生成物は、サトウキビを原材料とする公知の黒糖製品と交換されような良好な味の黒糖には類似していない。
【0018】
米国特許第4,432,806号(Madsenら)は、従来の濾過及びUFによって甜菜汁液を精製するものである。UF前に、低分子量の非糖類を高分子量化合物に変換し、不溶性化合物を可溶性化合物に変換するため、糖汁液を、酸化剤、錯化剤又はその混合物での化学処理に供する。この化学処理はUF工程を容易にする。UF工程後、汁液を従来の石灰化に供する。甜菜から許容される黒糖製品を製造する仕方は、Madsenらによっては教示されない。
【0019】
米国特許第3,799,806号(Madsen)は、粗製汁液を機械的に処理し、続いて、甜菜汁液の場合には、CaOにてpHを11.5に調節するものである。汁液をUFに供し、さらに、一般的な手段によって精製する。甜菜からの許容される黒糖製品の製造は教示されない。
【0020】
国際公開WO 01/14594号(Tate & Lyle)は、甜菜から白糖を製造する方法を開示しており、これによれば、一般的なディフュージョンによっては、粗製汁液は得られない。汁液は、細断した甜菜から、機械的分離によって得られる。従来の粗製ディフューザー甜菜汁液のものとは異なる不純物含量を有する得られた汁液を、ついで、1以上の膜濾過工程によって精製する。好適な具体例では、精製は、好適な分子量カットオフ4,000〜200,000ダルトンをもつ膜を使用する第1UF、続く、好ましくは1,000〜4,000ダルトンの膜を使用する透過物の第2UFを含むものである。最後に、第2の透過物をナノ濾過(NF)に供して、多量の最小不純物を除去し、NF透過物を蒸発させ、結晶化させて、1以上の白糖生成物を得る。いくつかの具体例では、オゾン、過酸化水素、水酸化ナトリウム、二酸化イオウ、硫酸塩、又は亜硫酸塩の如き化学剤を使用している。甜菜からの許容される黒糖製品の製造は教示されていない。
【0021】
ヨーロッパ特許第413,796号(Agrana Zucker-Gesellschachft)は、甜菜から白糖及び特殊な粗糖を製造する方法を開示する。第1工程では、甜菜を洗浄及び細断し、ついで、スチームでの直接加熱によって70〜90℃で湯がく。得られ凝縮物は、サポニン及び砂糖製品では望ましくない芳香物質を含有しており、フェノールオキシダーゼが不活性化されている。この凝縮物を従来の石灰化及び炭酸化によって精製し、白糖の製造に使用する。ついで、残りの甜菜細断物を、さらに抽出又は圧搾して、高含量の有用物質(例えば、ビタミン)を含有するが、苦味及び/又は芳香物質及び酵素を含有しない特殊な粗糖用の汁液を得る。しかし、このような生成物は、タンパク質、ペクチン、着色料及び不溶性固状物の如き高分子物質(これら物質は、生成物を、サトウキビに由来する味及び香りを有する市販の黒糖の代替物としての使用には適さないものにする)を含有する。さらに、ヨーロッパ特許第413,796号に教示された方法は、甜菜工業において既に利用可能な従来の抽出システムとは異なる抽出システムを必要とする。
【0022】
市販の白糖以外にも、淡い褐色の砂糖及び琥珀色の砂糖の如き精製度の低い製品も、芳しい風味のため、商業的に興味深い。しかし、黒糖製品は、甜菜から得られる黒糖が、消費者には受け入れられない望ましくない異味を有しているため、伝統的には、サトウキビから製造されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
甜菜を原材料とする製糖工業の国でも、官能的に許容される黒糖製品の製造は、なお、輸入されたサトウキビ糖物質を原材料としている。この黒糖は、甜菜からの白糖約90質量%及びサトウキビ糖蜜約10質量%の混合物から製造される。
【0024】
経済性の点から見て、砂糖が甜菜に由来する場合、第2及び第3の蒸発結晶化装置において得られる粗製砂糖結晶が市販製品として使用されないことは納得できない。事実、結晶を再度溶解させ、ついで、得られた汁液又はシロップを蒸発させるために、非常にエネルギーを消費している。
【0025】
従って、不快な異味及び臭いが保持されることなく、粗製黒糖製品の良好な味及び芳香に寄与する不純物が、第2及び第3の蒸発結晶化装置から得られる結晶生成物中に存在するようして粗製甜菜汁液の製造方法を確立することは望ましいことである。
【0026】
特に、蒸発結晶化段階によって得られる異なる砂糖結晶生成物のすべてが市販製品の形であることが望ましい。そのようなケースでは、溶解及び再結晶化による低純度結晶のエネルギー消費を伴う再処理は、黒糖製品の市場の要求によって低減又は省略される。
【0027】
さらに、粗製ディフューザー汁液の石灰化及び炭酸化の如き従来の化学処理を回避できることは望ましいことである。
【0028】
最後に、生成された糖蜜を、黒糖の製造において使用されている輸入サトウキビ糖蜜の代わりに使用できることは望ましいことである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の目的は、従来の石灰化及び炭酸化を使用することなく、これにより、黒糖製品において望ましくない不純物は除去されるが、良好な味及び芳香を提供する不純物は、蒸発結晶化によって得られる純度の低い結晶生成物中に保持されているような別の精製法を提供することにある。
【0030】
従って、本発明は、精製及び続く蒸発結晶化によって粗製ディフューザー甜菜汁液から砂糖結晶を製造する方法であって、前記粗製汁液を、a)70〜95℃に加熱し、b)任意に、プレ濾過し、c)分子量カットオフ2,000〜500,000ダルトンを有するフィルター上で濾過し、d)減圧下で、乾物含量60〜80質量%まで蒸発させ、e)さらに、蒸発によって結晶化し、続いて、相分離を行って、白糖結晶の如き砂糖結晶生成物及び液体相を生成し、及びf)前記工程からの液体相を、蒸発による結晶化及び相分離に供して、淡い褐色の砂糖結晶及び琥珀色の砂糖結晶の如き砂糖結晶形の生成物及び最後の段階からの液体相としての糖蜜を生成する工程に供することを特徴とする砂糖結晶の製法に関する。
【0031】
本発明の方法によって、
−化学剤の添加なしで、市場的に価値のある(売り物になる)結晶性砂糖製品を製造すること、
−環境的理由から望ましくない石灰含有廃棄物を排除すること、
−操作工程の数を低減すること、
−サトウキビ生産国から粗製原料を輸入することなく、甜菜から所望の黒糖を製造すること、
−溶解及び再結晶による低純度結晶化砂糖の再循環を低減又は完全に排除すること、
−従来の甜菜糖蜜よりも良好な味及び芳香をもつ糖蜜を製造すること、及び
−黒糖を製造するための白糖との混合用糖蜜を製造し、これによって、輸入のサトウキビ糖蜜を使用する必要性を回避すること、
が可能になる。
【0032】
本発明の方法の利点は、粗製ディフューザー甜菜汁液の調製及び蒸発及び結晶化工程(工程d〜f)のいずれもが、存在する工場の既存の装置において実施されるため、既存の甜菜工業に容易に合体されることである。
【0033】
本発明の産業上の利用性の程度については、下記の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明及び特殊な実施例は、好適な具体例を説明するために含まれるものであって、本発明の精神の範囲内における各種の変形及び変更は、詳細な説明に基づき当業者には明白であることが理解されなければならない。
存の問題の点で
【0034】
図1及び図2では、下記の略語を使用している。
RJ: 粗製汁液
PF: プレ濾過
UF: 限外濾過
P: 透過物
EV: 蒸発
TJ: 濃厚汁液
CRYST: 結晶化(蒸発)装置
1.M,2.M,3.M: 第1,第2,第3マスキット
CF: 遠心分離
1.S,2.S,3.S: 第1,第2,第3の砂糖生成物
MOL: 糖蜜
CRYST A,B,C,W: 結晶化装置A,B,C,W
AM,BM,CM,WM: マスキットA,B,C,W
AS,BS,CS,WS: 砂糖A,B,C,W
WG: Wグリーン*
*グリーンシロップ:マスキット又はマグマを遠心分離する際に生成される第1シロップ又は流出液体
【0035】
本発明による方法は、70〜95℃に加熱する工程(工程a)、任意の濾過工程(工程b)及び膜濾過する工程(工程c)、続いて行う従来の多段階、特に3段階の蒸発結晶化(工程d〜f)(ただし、砂糖結晶の全ての生成物が、その魅力的な味及び芳香により市場的に価値が有り、従って、売り物となる生成物であるため、溶解及び再結晶によって再処理する必要がないとの事実により通常の方法とは異なる)を含む別の汁液精製を包含する。
【0036】
膜濾過工程cから透過物として得られた精製汁液は、石灰化及び炭酸化でなる従来の汁液精製によって得られる汁液において見られるパターンとは異なる汁液中に残留する非糖化合物のパターンを有する。
【0037】
従来の方法によっては、乾物基準で、非糖化合物の約35質量%が粗製甜菜糖汁液から除去される。これらの非糖化合物は、セルロース、ペクチン物質、タンパク質、サポニン、脂質及び灰分の如き水不溶性化合物、及び単糖、ラフィノース、ペクチン物質、有機酸、脂質、サポニン、タンパク質、ベタイン、着色材、アミノ酸、アミド、アンモニウム塩、硝酸塩、亜硝酸塩の如き可溶性物質、及びカリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、鉄、アルミニウム及びケイ酸塩の如き無機化合物(灰分)を含む高分子量化合物及び低分子量化合物の両方を含む。
【0038】
従来法による非糖不純物のこの実質的な除去にもかかわらず、精製された汁液は、3段階結晶化によって、第1生成物として得られた純粋な(白色)結晶を除去した後、第2及び第3の生成物において高濃度で見られるいくらかの残留不純物をなお含有している。残念なことには、これらの残留不純物は、黒糖生成物を官能的には許容されないものとするパターンで見られる。
【0039】
本発明による粗製ディフュージョン汁液のクロスフロー膜濾過による非糖不純物の除去は、他の残留不純物パターンを残す。このように、従来の精製法によって除去されるいくらかの不純物は、汁液内に残る。特に、有機酸、アミノ酸及び着色材の如き低分子量化合物は、汁液から除去されず、汁液から得られる黒糖及び糖蜜の魅力的な特性に寄与する。
【0040】
さらに、甜菜シロップの望ましくない風味は、とりわけ、ある種のピラジン及び二硫化ジメチル(これらの化合物はサトウキビ糖蜜中には存在しない)と組み合わされる。ピラジンは、メイラード反応を介してグルコースとアミノ酸との反応によって形成される1種の含窒素複素環化合物である。ある種のピラジンは、パン、ベークドポテト及びコーヒーの如き加熱食品では重要な風味成分である。しかし、システイン及びメチオニンの如きイオウ含有アミノ酸から形成されるピラジンは、メチオニンの反応生成物である二硫化ジメチルのものの如き望ましくない臭いを提供する。これらの反応は、汁液のpHを上昇させることによって、pHの上昇が、非プロトン化形のアミノ酸の割合を増大させ、再び、メイラード反応における初期縮合工程の率を増大させるため、促進される。
【0041】
上記の理由により、最終の砂糖製品における望ましい風味は、従来の石灰化を回避すること及び本発明の方法を、自然発生の酸性pHにおいて、すなわち、pH調節用の化学剤を添加することなく実施することによって促進される。
【0042】
従って、本発明の方法は、好ましくは、7以下のpH、より好ましくはpH5.6〜6.8、例えば、pH5.8〜6.5において実施される。このようなpH値は、pH調節化合物を添加しない場合に汁液内で自然に発生するものである。
【0043】
汁液の精製
工程a:加熱
粗製ディフューザー汁液の微生物学的安定性を最小とし、濾過速度を改善するため、汁液精製を高温で実施する。このように、第1の工程では、各種の従来の態様で得られた粗製ディフュージョン甜菜汁液を、濾過工程前に、70〜95℃、好ましくは75〜90℃、例えば、約80℃に加熱する。
【0044】
工程b:プレ濾過
膜濾過(工程c)に先だって、精製汁液を、好ましくはプレ濾過する。プレ濾過の目的は、砂及び繊維の如き粒子を除去することによって、次の工程(c)において使用する膜フィルターを浸食、目詰まり及びブロッキングから保護することにある。膜濾過前のこのような粒子の濾過は、通常、膜フィルターの供給者によって推奨されており、プレ濾過用フィルターの実際の選択は、使用する膜フィルターに左右される。例えば、Koch Membrane Systems, Inc.(ウイルミントン,マサチューセッツ州,米国)は、スパイラル膜の使用前には、これらが増大されたスペーサーサイズを有するため、ブロッキングを生じ易くなることを防止するように、100μmまでプレ濾過することを推奨している。また、S.C.T.(バジェット,仏国)は、セラミック膜を保護するために、60μm絶対等級をもつプレフィルターを推奨している。
【0045】
5μmまで又は少なくとも15μmまでのより目の詰まったプレフィルターを使用することもでき、これにより、粗い砂だけでなく、細かい砂も除去できる。プレ濾過用にこのような細かい目のフィルターを使用することは、最終製品の特性には影響を及ぼさないが、膜の寿命には影響を及ぼす。
【0046】
現時点では、次の膜濾過を容易にし、膜フィルターを保護するためには、50μmより大きい粒子を除去すれば充分であると考えられる。これにより、膜を汚染する残留パルプ及び砂の如き浮遊する粒子は、プレ濾過によって除去される。
【0047】
好ましくは、プレ濾過に使用するフィルターは、孔サイズ30〜150μm、より好ましくは45〜100μm、例えば、50〜70μmを有する。
【0048】
スタティックカーブドウェッジワイヤースクリーンは50μmまで使用可能であり、プレ濾過用として1つの選択肢である。バックフラッシャブルフィルターは他の選択肢である。1例は、等級50μmをもつコイルフィルターであるPhoenixフィルター(Cross Manufacturing Co. (1938) Ltd.(バス,英国)である。特殊なデザインの「ターボ」流路は、粒状物質をフィルターエレメントから遠ざけ、バックウォッシングの頻度を低減させる。コイルは、バックウォッシングの際に開口し、完全かつ徹底的な浄化を可能にする。Societe des Ceramiques Thechniques (S.C.T.)(バジェット,仏国)は、MF及びUFの範囲のセラミック膜を包含する膜濾過システム「Membralox」の稼働に先立っての使用に推奨される絶対等級60μmをもつ自浄性プレフィルターを提供している。Phenixフィルターは、サイズ12μm、25μm、75μm及びそれ以上を有するが得られる。
【0049】
膜濾過
膜濾過工程(c)の目的は、浮遊する全ての固体及び巨大分子を除去することにある。この工程は、精密濾過(MF)又は限外濾過(UF)によって行われる。
【0050】
膜のクラスMF(精密濾過)とUF(限外濾過)との区別は、各著者によって異なり、その範囲は重複する。Osmonics, Inc.(ミネトンカ,ミネソタ州,米国)は、MFを0.02〜2.0μmの範囲の分離と定義し、UFを0.002〜0.2μmの範囲(分子量カットオフ範囲500〜300,000に相当)の分離と定義している。
【0051】
一般に、MFは、直径0.1〜10μmの範囲の粒子を保持するために使用される。MFフィルターは、代表的には、重合体又はセラミックで製造され、多くは等方性であるとして特徴付けられ、これは、膜の孔がフィルターの厚さ全体に渡って同じサイズであることを意味している。これらフィルターは、可溶性の高分子量物質よりもむしろ、主に不溶性の化合物を除去するために使用される。この1つの理由のため、本発明には、UF膜が好ましい。他の理由は、細菌性物質が除去されると共に、高いの容量及び安定性能力が維持されることである。
【0052】
分子量カットオフ値に応じて、UF膜は、分子量2,000〜500,000Da(ダルトン)をもつ粒子及び巨大分子の両方を除去する。これらの膜は、通常、非対称又は異方性であり、これは、膜が、厚いスポンジ状基材上に支持された均質な重合体の薄層でなることを意味している。薄層又は「スキン」の孔は、膜の残りの部分の孔よりもかなり小さい。従って、スキンは、主要な運搬バリヤーを構成し、UF膜の濾過特性を決定する。
【0053】
本発明に関して使用可能な膜フィルターは、分子量カットオフ値2,000Da又はそれ以上をもつUFフィルターから、約0.3μmの粒子を保持するMFフィルターまでの範囲である。Osmonics, Inc.によれば、後者は、分子量カットオフ約500,000Daに相当する。残留不純物の魅力的なパターンを確保するため、カットオフ値の好適な下限は、約5,000Da、さらに好ましくは7,000Da、最も好ましくは10,000Daである。上限は、約500,000Da、好ましくは150,000Da、最も好ましくは70,000Daである。
【0054】
本発明に関して、好適な膜フィルターは、着色材と共に、0.05〜0.1μmより大きいタンパク質、ペクチン及びコロイド状物質の如き巨大分子を含むいくらかの関連する巨大分子も確実に除去するためには、UF範囲に属するものである。
【0055】
使用できる市販の膜装置は各種のタイプがある。これらは、チューブ、スパイラル及びプレートタイプである。スパイラル形の膜は比較的安価であり、非常にコンパクトである。しかし、ネット様供給スペーサーをもつデザインのため、これらの膜は、プレ濾過が、メッシュスペーサーのサイズに応じて100μm又はよりタイトからの範囲の充分に細かいフィルターを使用して実施された場合にのみ使用される。
【0056】
膜濾過は、好ましくは、膜上において、液体の供給をクロスフロー(タンジェンシャルフロー)として実施される。これにより、膜表面の連続した浄化及び高い濾過率が可能である。膜の断続的な浄化は、透過物の高い流速を維持するため、苛性アルカリ、酸、洗剤又はこれらの組合せを必要とする。
【0057】
粗製汁液を清浄化して、濁り及びコロイド状物質を除去するために、MF及びUF膜を使用し、続いて、いくつかの他の高度に有効な精製工程、例えば、化学剤に添加による色の除去、汁液の軟化(すなわち、Ca及びMgイオンの除去)及びイオン交換樹脂を使用するクロマトグラフィーを行うことが既に提案されている。しかし、このような精製順序は白糖の製造を目的として提案又は使用されたものであり、黒糖製品にとって特徴的である芳香及び良好な味を提供する不純物の保持を考慮したものではない。
【0058】
膜濾過の分野では、近年、製糖用に適する重合体、ステンレス鋼、セラミック及び炭素製の膜が開発された。このような膜システムを供給する会社は、例えば、Koch Membrane Systems, Inc.(ウイルミントン,マサチューセッツ州,米国)、Graver Technologies(グラスゴー,デラウエア州,米国)、S.C.T.(バジェット,仏国)、Osmonics, Inc.(ミネトンカ,ミネソタ州,米国)、Danish Separation Systems(ナクスコウ,デンマーク国)及びApplexion(エポーン,仏国)がある。
【0059】
スパイラル形の膜は、エネルギー効率が良く、コンパクトであり、設置するには経済的であり、濃縮及び清浄化用には良好である。これらは、ポリプロピレン、ポリスルホン及びポリフッ化ビニリデンを含む各種の重合体物質製である。
【0060】
チューブタイプ膜は大きい直径の膜であり、炭素、セラミック及び多孔性金属(例えば、ステンレス鋼)を含む重合体又は不活性物質からなる。これらは、スパイラル形の膜があまり適さないようなストリーム、例えば、高浮遊固体レベルをもつストリーム又はプレ濾過が制限されるようなストリームの濃縮及び清浄化に最も良好に使用される。
【0061】
電気透析
好適な具体例によれば、透過物として得られた膜濾過汁液を、それ自体公知の電気透析(ED)による任意の脱塩工程によって、さらに精製することができる。ED膜は温度に鋭敏であり、従って、汁液の温度は、例えば、熱交換器を使用して、60℃以下に低減されなければならない。
【0062】
膜濾過後に得られた汁液は、普通、乾物含量約15質量%(°Brix)を有し、そのままで、EDに供される。しかし、乾物含量30質量%の糖汁液波、最大の導電率を有しており、EDによる最高に効果的な脱塩を生ずる。従って、好ましくは、ED脱塩工程前に、膜濾過透過物を、乾物含量25〜35質量%となるように予備蒸発に供する。脱塩後、汁液を、乾物含量60〜80質量%となるまでさらに蒸発させ、さらに、下記のように蒸発結晶化に供する。
【0063】
膜濾過した粗糖汁液を処理するために使用されるEDユニットは、市場から、例えば、Eurodia Industrie S.A(ウィソー,仏国)から入手できる。
【0064】
電気透析によって、膜濾過透過物に残留する無機塩及び有機塩を、カチオン又はアニオン交換膜を使用して分離する。膜スタックを通って直流を通し、これによって、アニオンをアニオン交換膜を通って、カチオンをカチオン交換膜を通って移動させる。
【0065】
EDによって、いくらかの低分子量着色材が除去される。さらに、蒸発及び結晶化の後に得られた黒糖は、より高い純度及びより低い灰分含量を有する。
【0066】
EDは、無機塩と共に、有機酸を除去することに関して有効である。特に酢酸の除去は、黒糖のあまりにも鋭い芳香を回避する。
【0067】
EDによる塩の除去は、汁液のpHを、代表的には5.2〜5.4に低減させる。これによって、続く処理の間に、ショ糖の転化が生ずる。必要であれば、ストリームの一部又は全体に対する光沢剤として弱又は強塩基性イオン交換樹脂を使用して、pHを上げることができる。これは、転化によるロスが望ましくないような白糖の製造には好ましい。しかし、黒糖の製造には、より大きい転化糖含量であることは、良好なコンシステンシー及び湿潤特性をもつ砂糖を提供でき、水分含量及びコンシステンシーが良好に保存される。
【0068】
従って、膜濾過と最終の蒸発との間で電気透析工程を使用する場合には、膜濾過した粗製汁液から、許容される黒糖製品を製造できる。最終生成物は灰分及び有機酸が少なく、見た目の黒色外観にあまり影響を及ぼすことなく、その純度が増大されている。有機酸、特に酢酸の除去は、他の望ましい芳香が、許容される黒糖製品を与えるアルデヒド及び甘草関連化合物から突出することを防止する。
【0069】
蒸発及び結晶化
膜濾過の後、精製汁液を、一般的に製糖工場で見られる多重効用エバポレーターシステムにおいて、普通の様式で行われる蒸発によって濃縮する。生成した濃厚汁液を、ついで、一般的に製糖工場で見られる蒸発結晶化装置を使用して、普通の様式で結晶化させる。
【0070】
使用できる蒸発結晶化装置は、バッチタイプの蒸発結晶化装置又は連続式蒸発結晶化装置であり、これらは、製糖工業においてよく知られている。例えば、P.W. van der Poel, H. Schiweck及びT. Schwartz: Sugar Technology-Beet and Cane Sugar Manufacture, bartens, 1998, p.780-797を参照する。
【0071】
砂糖の3段階結晶化は、製糖産業によって長年に渡って開発されてきた特殊なバッチ式又は連続式の蒸発結晶化装置を使用して、従来の様式で行われる。
【0072】
蒸発結晶化では、水の蒸発によって、結晶の成長を惹起するために必要な過飽和を達成する。結晶の成長は、核生成又は種スラリー又はマグマの注入によって開始される。
【0073】
原則的には、蒸発結晶化は、減圧と組み合わせて、充分に高い温度を使用することによって水を蒸発させるとの点で、ヨーロッパ特許公開第957,178号に開示された冷却結晶化とは相違する。実際、蒸発結晶化の温度は、一般に、70℃以上、好ましくは75℃以上、例えば、80℃であり、一方、冷却結晶化では、温度は30℃までである。後者は、蒸発とは異なるため、水を除去して、過飽和を維持する必要がなく、代わって、結晶化を推進する力は、冷却によって維持されなければならない。
【0074】
結晶の成長は、エネルギー効率のため及び着色を制限するために、減圧下で実施される。普通の様式で行われる遠心分離によって、結晶を濃縮汁液から分離する。しかし、本発明によれば、これらの結晶は、興味深い官能性により、売り物となる製品として既に適するものであるため、水による結晶の洗浄及び純度の低い砂糖結晶の再溶解及び再循環を排除することができる。
【0075】
このようにして、実質的なエネルギーの節約が達成され、装置の適応性も増大される。
【0076】
3段階結晶化において第2及び第3生成物として得られた黒糖は、魅力のある品質を有しており、従って、市場における高い可能性を有している。黒糖の需要が変動する場合には、黒糖生成物又はその一部を、従来の様式で溶解及び再循環することができる。この場合でも、本発明の方法は、いかなる化学剤も使用することなく、粗製ディフューザー汁液から白糖を製造できるため興味深い。このような砂糖は、多数の消費者に受け入れられるものであり、この方法は、環境の改善でもある。
【0077】
また、生成された糖蜜は、従来の甜菜糖蜜と比べて、良好な味及び芳香を有している。従って、特殊なソフト黒糖製品を製造するために白糖をブレンドされるため、生成物の全てを回収することが可能であり、廃棄物を全く生じない。
【0078】
糖蜜の品質に基づき、さらに他の使用としては、発酵又は他の一般的な処理によってさらに加工される食品及び飲料を含む食品及び飲料における成分としての使用が考えられる。
【実施例1】
【0079】
この実施例は、図1を参照して、本発明の方法の好適な1具体例を説明するものである。
【0080】
粗製ディフューザー汁液の生成
甜菜から従来の様式で調製した粗製ディフューザー汁液(RJ)(2)をプレフィルター(PF)(4)においてプレ濾過して、砂、繊維及び以降の膜フィルターに損傷を与える可能性のある他の物質の如き粒子を除去する。ついで、プレ濾過した汁液を、この具体例では、限外濾過(UF)(6)によって膜濾過し、これによって、捕捉物と共に、浮遊固体及び巨大分子を除去する。限外濾過から透過物(P)(8)として得られた精製汁液を、ついで、従来の3段階蒸発結晶化に供する。
【0081】
3段階結晶化
上記の如く得られた透過物(8)について、エバポレーター(EV)(10)において、減圧下で、第1回目の蒸発を行って、濃厚汁液(TJ)(12)とする。ついで、濃厚汁液を、第1蒸発結晶化装置(CRYST)(14)において、真空を維持しながら、蒸発結晶化に供する。ついで、第1マスキット(1.M)(16)を、第1遠心分離器(CF)(18)において、なお真空下で分離する。用語「マスキット」は、製糖の分野において、蒸発又は冷却結晶化装置で得られるような砂糖結晶及びシロップの混合物について使用されている。第1遠心分離器(18)において、マスキットを、砂糖結晶の第1生成物(1.S)(20)及び母液又はシロップ(22)に分離する。ついで、なお真空下にあるシロップ(22)を、第2蒸発結晶化装置(24)において処理し、得られた第2マスキット(2.M)(26)を、第2遠心分離器(28)において、前記と同様にして、砂糖結晶の第2生成物(2.S)(30)及びシロップ(32)に分離する。その後、同様にして、なお真空下にあるシロップ(32)を、第3蒸発結晶化装置(34)において処理して、第3マスキット(3.M)(36)を得た後、これを、第3遠心分離器(38)において、砂糖結晶の第3生成物(3.S)(40)及び糖蜜(MOL)形の母液(42)に分離する。
【0082】
砂糖結晶の3種の生成物(20)(30)(40)は、それぞれ、白糖、淡い褐色の砂糖及び琥珀色の砂糖として、全て市場的に有用な生成物である。このように、従来法とは異なり、砂糖結晶の第2及び第3生成物(30)(40)を溶解し、溶解した砂糖を第1蒸発結晶化装置(14)に再循環する必要はない。
【実施例2】
【0083】
甜菜から従来の様式で得られた粗製ディフュージョン汁液を80℃に加熱し、Sweco(ストックホルム,スウェーデン国)から入手した50μm振動スクリーンプレフィルター上でプレ濾過した。ついで、得られた濾液を、公称30kDaのUF膜フィルター上で濾過した。
【0084】
精製効率を、表1に示す分析結果によって説明する。
【0085】
【表1】
【0086】
結果は、UFによって、汁液の純度が1%上昇し、色が54%低減したことを表している。
【実施例3】
【0087】
実施例1に記載の方法を使用して、甜菜から従来の様式で得られた粗製ディフュージョン汁液を80℃に加熱し、Sweco(ストックホルム,スウェーデン国)から入手した50μm振動スクリーンプレフィルター上でプレ濾過した。ついで、得られた濾液を、公称30kDaのUF膜フィルター上で濾過した。
【0088】
UF精製した汁液を、130〜80℃において蒸発させて、乾物含量約70質量%を有する濃厚汁液又はシロップとした。段階の間に、得られた結晶の遠心分離による分離を挟み、温度を80℃に維持しながら、シロップを、80℃、真空下、3段階での蒸発結晶化に供した。この蒸発結晶化により、色86IU(ICUMSA単位)を有する白糖の第1生成物、色約2500 IUを有する淡い褐色の砂糖の第2生成物及び約11000 IUを有する琥珀色の砂糖の第3生成物が得られた。
【0089】
生成物ストリームの量及び分析データを表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
それぞれ、第2及び第3生成物として得られた淡い褐色の砂糖及び琥珀色の砂糖を、表3において、白糖にサトウキビ糖蜜約10質量%を配合することによって製造されている現在の黒糖製品「Brun farin」と比較した。
【0092】
【表3】
【0093】
「Brun farin」の色の測定値は、第3生成物として得られた琥珀色の砂糖のものと類似しているが、実際には、これらは視覚的には全く異なる。このように、新たな製品は、「Brun farin」の淡いチョコレートブラウンの色と比べて、より心地よい琥珀色を有している。さらに、2つの黒糖製品は、消費者にとって、これら製品を魅力的なものにする有利な味及び芳香を有している。
【0094】
従来の甜菜を基材とする製品よりも、サトウキビ基材製品に、より類似した心地よい風味を与えるように、本来の甜菜糖蜜中に見られる非糖の酸味とショ糖の甘味とを相乗的に組み合わせるため、得られた淡い褐色の砂糖及び琥珀色の砂糖を官能検査によって判定した。その結果、これらの黒糖製品が、黒糖が伝統的に基材として使用していたサトウキビの代わりに、甜菜由来のシロップを基材としているため、斬新なものであると判定された。
【0095】
従来の汁液精製法は、代表的に、甜菜100トン当たり石灰石2.2〜3.5トン及びコークス0.14〜0.22トンを消費する。これらの支出は、本発明の方法によって節約される。さらに、炭酸化処理からの使用した石灰スラッジの廃棄に関連する問題点が、本発明の方法によって回避される。
【0096】
さらに、本発明により、砂糖の第2及び第3生成物の再循環が回避されるため、製糖工場で処理されるマスキットの量が、甜菜100kg当たり約62kgから甜菜100kg当たり約35kgに低減される。これはプラントの能力を増大させるものであり、製糖工場での水分の蒸発量も、甜菜100kg当たり約11kgから甜菜100kg当たり約7.5kgに低減され、これによって、エネルギーの節約が達成される。
【実施例4】
【0097】
実施例3から得られた白糖の第1生成物90質量%を、同じく実施例3からの糖蜜10質量%と混合することによって、琥珀色の砂糖を調製した。得られた生成物の特性を下記の表4に示す。
【実施例5】
【0098】
実施例3から得られた淡い褐色の砂糖の第2生成物95質量%を、同じく実施例3からの糖蜜5質量%と混合することによって、琥珀色の砂糖を調製した。得られた生成物の特性を下記の表4に示す。
【0099】
【表4】
【実施例6】
【0100】
この実施例は、図2を参照して、化学処理を行うことなく、増大された純度を有する白糖を製造する際に使用される本発明の他の特殊な具体例を説明するものである。
【0101】
実施例1に記載したように、プレ濾過、限外濾過及び蒸発によって、粗製ディフューザー汁液から濃厚汁液(112)を調製する。濃厚汁液を、2つの部分(111)(113)に分割する。これらの部分の1つ(113)を、第4の蒸発結晶化装置(CRYST W)(144)において、後述する他の物質と合わせる。一方、他の部分(111)をグリーンシロップ(WG)の再循環母液(152)と合わせ、得られた混合物を3段階蒸発結晶化に供する。この3段階蒸発を、実施例1と同様に実施する。従って、この実施例の段階A、B及びCは、それぞれ、実施例1の段階1、2及び3に相当する。
【0102】
3段階結晶化に当たり、部分(111)及び母液(152)の混合物を、1番目に、第1蒸発結晶化装置(CRYST A)(114)において、真空を維持しながら、蒸発結晶化に供する。ついで、第1マスキット(AM)(116)を、なお真空下、第1遠心分離器(CF)(118)において分離する。第1遠心分離器(118)では、マスキットを、砂糖結晶の第1生成物(AS)(120)及び母液又はシロップ(122)に分離する。なお真空下にあるシロップ(122)を、ついで、第2蒸発結晶化装置(CRYST B)(124)において処理し、前記と同様にして、得られた第2マスキット(BM)(126)を、第2遠心分離器(128)において、砂糖結晶の第2生成物(BS)(130)及びシロップ(132)に分離する。その後、同様にして、なお真空下にあるシロップ(132)を、第3蒸発結晶化装置(CRYST C)(134)において処理して、第3マスキット(CM)(136)を得た後、このマスキットを第3遠心分離器(138)において、砂糖結晶の第3生成物(CS)(140)及び糖蜜(MOL)の形の母液(142)に分離する。
【0103】
砂糖結晶の第1、第2及び第3生成物(120)(130)(140)を溶解し、濃厚汁液の部分(113)と合わせ、得られた混合物を、第4蒸発結晶化装置(CRYST W)(144)において、第4結晶化に供して、第4マスキット(WM)(146)を得た後、このマスキットを第4遠心分離器(148)において、純粋な白糖結晶の生成物(WS)(150)及び上述のグリーンシロップ(WG)の母液(152)に分離する。この母液は、上述のように、再循環されて、濃厚汁液の部分(111)と合わされる。
【0104】
実施例6による具体例における生成物ストリームの量及び分析データを、下記の表5に示す。
【0105】
【表5】
【0106】
精製のために化学剤を使用することなく、非常に純粋な白糖(25IU)が得られることが明らかである。黒糖の需要に応じて、糖蜜と共に、第2及び第3砂糖生成物(B及びC)の全てが興味深い官能特性を有しており、この特性によって、これらは、売り物となる製品自体として又はこのような製品における成分として有用なものとなるとの事実を配慮して、変更される。
【0107】
実施例6による具体例の利点は、方法に柔軟性があり、結晶化される各物質における濃厚汁液の配合率を制御することによって、砂糖の所望の色を達成できることである。これにより、化学物質フリーの方法において、高品質の砂糖を製造できる。
【実施例7】
【0108】
実施例3に記載のようにしてUF精製汁液を調製し、80℃において、乾物含量約30質量%まで蒸発させた。ついで、汁液を60℃以下に冷却し、各々、セル25個を有する4個のEUR6-40 P15膜スタック及び電流4mA/cm2にて作動するフィード及びフィード−ブリードユニットを有するEurodia Industrie S.A.(ウィソー,仏国)製の電気透析プラントにおいて処理した。
【0109】
電気透析の前後において汁液を分析した。結果を表6に示す。
【0110】
【表6】
【0111】
ついで、電気透析した汁液を80℃において蒸発させて、乾物含量約70質量%を有する濃厚汁液又はシロップとした。各段階の間に、得られた結晶の遠心分離による分離を挟み、温度を80℃に維持しながら、シロップを、3段階で、80℃、真空下における蒸発結晶化に供した。この蒸発結晶化により、色65IU(ICUMSA単位)を有する白糖の第1生成物、色約1130 IUを有する淡い褐色の砂糖の第2生成物及び約9850 IUを有する琥珀色の砂糖の第3生成物が得られた。
【0112】
UF処理及び電気透析した汁液を基材とするこれらの淡い褐色の砂糖及び琥珀色の砂糖の分析結果を表7に示す。
【0113】
【表7】
【0114】
表3における結果と比較して、UFによっては除去されない低分子量の着色材が電気透析によって除去されており、これにより、第1、第2及び第3生成物に関して、色が低減されていることが明らかである。さらに、灰分も低減され、黒糖に関して純度が増大している。
【0115】
この実施例に従って得られた砂糖は、実施例3からの砂糖と比べて、内部味覚パネルによって、より高い等級が与えられた。
【実施例8】
【0116】
本発明に従って得られた黒糖製品は、小売市場では、テーブルシュガーとして、ホームクッキング及びベーキング用に、及び朝食用シリアルへの添加物として使用される。黒糖製品は、産業市場においても、食品製品の製造用に使用される。例えば、製品は、製パンに使用される。
【0117】
本発明の方法によって得られる糖蜜は、通常、活性炭又は粉末炭にて処理され、イオン交換樹脂を使用して脱塩される必要がある。このような処理は、製パン用シロップ又は糖蜜として適した製品を提供する。シロップは、新規な味をもつ製品を提供するように、サトウキビ系糖蜜とも配合される。
【0118】
発明の上記の記載は、多くの様式で、変更がなされることを明白に表している。このような変更も、本発明の精神を逸脱するものではなく、当業者にとって明白なこのような変更の全てが、請求の範囲の精神を構成するものである。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】工程(c)においてUF及び3段階における蒸発結晶化を使用する好適な具体例による本発明の方法の概略フローシートである。
【図2】化学剤を使用しない方法で高純度の白糖を製造する本発明の方法の好適な具体例の概略フローシートである。
【符号の説明】
【0120】
(2)粗製ディフューザー汁液
(4)プレフィルター
(6)限外濾過
(8)透過物
(10)エバポレーター
(12)(112)濃厚汁液
(14)(114)第1蒸発結晶化装置
(16)(116)第1マスキット
(18)(118)第1遠心分離器
(20)(120)砂糖結晶の第1生成物
(22)(122)シロップ
(24)(124)第2蒸発結晶化装置
(26)(126)第2マスキット
(28)(128)第2遠心分離器
(30)(130)砂糖結晶の第2生成物
(32)(132)シロップ
(34)(134)第3蒸発結晶化装置
(36)(136)第3マスキット
(38)(138)第3遠心分離器
(40)(140)砂糖結晶の第3生成物
(42)(142)母液
(111)(113)部分
(144)第4の蒸発結晶化装置
(152)再循環母液
【0001】
本発明は、粗製の甜菜汁液の精製、続く蒸発及び結晶化によって、白糖及び黒糖の如き砂糖結晶を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
甜菜からの従来の製糖法は、第1工程として、甜菜を洗浄し、細断し、水で抽出することによる粗製甜菜汁液の調製を含む。抽出はディフューザーにおいて行われ、従って、粗製汁液は、しばしば、ディフュージョン汁液又はディフューザー汁液と称される。
【0003】
粗製ディフューザー汁液を、ついで、1以上の処理(各処理は、一連の石灰化、炭酸化及び濾過でなる)によって精製する。石灰化では、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムを添加して、代表的には、pHを約12.6以上に上昇させる。その後、二酸化炭素の添加(炭酸化)又は他の酸の添加によってカルシウムを沈殿させ、ついで、沈殿物を、一般的な濾過によって汁液から除去する。代表的には、精製は、このような沈殿処理2回を含む。
【0004】
沈澱処理後、汁液を亜硫酸化(SO2の添加)に供して、着色を防止する。
【0005】
ついで、精製汁液を、減圧下、約130℃から開始して約80℃までの温度で蒸発させて、乾物含量約70質量%を有するシロップとし、このシロップを、さらに、第1の蒸発結晶化装置から始まる3段階蒸発結晶化において、減圧下、80℃で蒸発させ、ここで、第1蒸発結晶化装置において、シロップを、さらに濃縮して乾物含量約91質量%とし、この蒸発結晶化装置において生成された白糖結晶を、遠心法の如き相分離によって回収する。
【0006】
母液については、蒸発結晶化装置における濃縮、続いて遠心分離を行う、さらに2つの段階に供する。この2つの段階の遠心分離処理によって得られた結晶は不純物を含有する。充分な収率及び充分な最終の砂糖品質を達成するため、結晶を溶解し、第1蒸発結晶化装置に再循環でき、一方、最後の母液(糖蜜)は動物用飼料として及び発酵用に使用される。
【0007】
従来法による第2及び第3の蒸発結晶化装置から得られた砂糖結晶は黒糖(粗製)状である。しかし、甜菜から得られた黒糖は、消費者には受け入れられない不快な異味及び臭いを有している。このため、操作及び設備のコストの増大を招くが、砂糖結晶を再溶解し、これを第1蒸発結晶化装置に再循環することが必要である。
【0008】
石灰及び二酸化炭素による従来の沈澱処理は、環境及びエネルギー消費の両方の点から不利であることが知られている。このため、別の精製法を開発するよう、いくつかのアプローチがなされている。いくつかのケースでは、沈澱処理の回数が低減され、他のケースでは、別の化学剤が提案されている。
【0009】
米国特許第759,283号(Ekernら)は、精製甜菜汁液生成物を製造するための甜菜の処理方法を開示している。汁液を、石灰及び炭酸カルシウムの添加によってプレ石灰化し、その後、プレ石灰化汁液を、孔サイズ0.002〜0.5μmを有する濾過膜を介する濾過に供して、濾過膜を通過しない残留物及び膜を通過する透過物を生成する。ついで、透過物を二酸化炭素ガスで処理して、溶解した石灰を透過物から除去して、ここから、精製甜菜汁液生成物を生成する。この方法は、甜菜から白糖を生成するための従来の2回の処理の代わりに、石灰+炭酸化処理の回数を1回の処理に制限するが、化学剤によるこの処理は完全には回避されない。
【0010】
WO98/21368は、石灰化及び炭酸化の代わりに、粗製ディフュージョン汁液を、アルカリ性pHにおいて、70℃以上に、有効な凝集を行うに充分な期間維持する工程を行う甜菜汁液の清澄化法を開示している。凝集化された粒子は、遠心分離又は濾過の如き相分離によって除去される。1具体例では、分離は、プレスクリーニング及び膜濾過でなる。この方法によって、石灰化及び炭酸化は回避されるが、この方法は、なお、化学剤の添加を含み、一般的な軟化工程を必要とする。
【0011】
米国特許第5,902,409号(Kwokら)は、サトウキビ又は甜菜の汁液を、クロスフローMF、UF又はNFによって清澄化するものである。この方法は、消石灰の如き凝集剤又はカチオン性凝集剤の形の化学剤の添加による清澄化工程を含む。
【0012】
ヨーロッパ特許公開第1,046,718号(Eridania S.p.A.ら)は、プレ濾過、続く膜濾過に基づく別の処理によって粗製甜菜汁液の50%以下を清澄化し、汁液の残部を、従来のCaOの添加、第1の炭酸化及び濾過、第2の炭酸化及びさらに濾過によって処理するものである。別法にて処理された透過物を、第1の炭酸化の清澄な汁液と混合する。実施例によれば、得られた精製汁液は、従来の方法によって精製された汁液とは、純度、pH、色及びアルカリ度に関して、必ずしも顕著な差異を示してはいない。その明細書には、甜菜からの黒糖の製造についての教示は記載されていない。
【0013】
ヨーロッパ特許公開第957,178号(Eridiania)は、粗製甜菜汁液から粒径50μm以上を有する有機性粒子及び無機性粒子を分離し、続いて、分子量カットオフ(MWCO)5000ダルトン〜0.5μmの膜を使用するMF又はUFを行うものである。ついで、汁液を濃縮し、冷却結晶化によって、白糖結晶の第1生成物を得る。このヨーロッパ特許公開第957,178号の教示によれば、従来の蒸発結晶化に代わって冷却結晶化を使用することが、上記の膜精製した粗製甜菜汁液から市販可能な品質の白糖を得ることを可能にする必須の特徴である。第1結晶化段階からの母液を、さらに、2つの冷却結晶化段階で処理して、砂糖結晶の第2及び第3生成物を得る。これら第2及び第3の2つの生成物、特に第3生成物の純度は、白糖として充分ではない。従って、これらの生成物を溶解し、第1の濃縮/結晶化段階に再循環する。いくつかのケースでは、砂糖結晶の第2生成物は、特殊な色合い及び特殊な形態を有する市販品質の「特殊な」等級の砂糖として使用される。しかし、蒸発結晶化によって、第2及び第3生成物が択一的に得られる場合には、その再処理が必要である。
【0014】
蒸発結晶化は、冷却結晶化よりも高い砂糖結晶収率を提供する。これは、従来の3段階結晶化法によって、北ヨーロッパで見られる高純度汁液から砂糖を抽出し尽くすことができるが、一方、冷却結晶化では、4段階結晶化法が必要となることを意味している。この結果、蒸発結晶化は、より簡単かつよりコスト効率の良いものとなる。
【0015】
蒸発結晶化及び続く遠心分離の方法が開発され、数十年以上、最大限に利用されており、甜菜工業の至る所で、確立された方法に関して、存在するノウハウ及び熟練によって良好に機能する装置が使用されている。
【0016】
ヨーロッパ特許公開第957,178号に従って教示されるような冷却結晶化の商業的な使用は、最適な装置、方法のパラメーター及び多段階冷却結晶化の操作法のさらなる開発を必要としている。さらに、結晶化速度は、より低い温度では(代表的には80℃から始まって、約30℃となる)、より遅く、一方、蒸発結晶化は、約80℃の一定温度で行われる。これは、冷却結晶化時間が長くなり、より長い時間の冷却結晶化は、プロセスにおいて、より大きい容積の生成物を生成し、従って、より大きい容積の装置が必要となることを意味している。また、冷却結晶化の運動メカニズム及び変動する流体力学的条件は複雑であり、コントロール及び最適化を困難にする。
【0017】
記載された分析データによれば、ヨーロッパ特許公開第957,178号に従って得られる第2生成物は、220 ICUMSA単位(IU)の色を有する。この色は、黒糖よりもむしろ、サトウキビからのプランテーション白糖のものにより類似している(サトウキビからのものは、代表的には、800〜8000IUの色を有する)。結論として、開示された第2生成物は、サトウキビを原材料とする公知の黒糖製品と交換されような良好な味の黒糖には類似していない。
【0018】
米国特許第4,432,806号(Madsenら)は、従来の濾過及びUFによって甜菜汁液を精製するものである。UF前に、低分子量の非糖類を高分子量化合物に変換し、不溶性化合物を可溶性化合物に変換するため、糖汁液を、酸化剤、錯化剤又はその混合物での化学処理に供する。この化学処理はUF工程を容易にする。UF工程後、汁液を従来の石灰化に供する。甜菜から許容される黒糖製品を製造する仕方は、Madsenらによっては教示されない。
【0019】
米国特許第3,799,806号(Madsen)は、粗製汁液を機械的に処理し、続いて、甜菜汁液の場合には、CaOにてpHを11.5に調節するものである。汁液をUFに供し、さらに、一般的な手段によって精製する。甜菜からの許容される黒糖製品の製造は教示されない。
【0020】
国際公開WO 01/14594号(Tate & Lyle)は、甜菜から白糖を製造する方法を開示しており、これによれば、一般的なディフュージョンによっては、粗製汁液は得られない。汁液は、細断した甜菜から、機械的分離によって得られる。従来の粗製ディフューザー甜菜汁液のものとは異なる不純物含量を有する得られた汁液を、ついで、1以上の膜濾過工程によって精製する。好適な具体例では、精製は、好適な分子量カットオフ4,000〜200,000ダルトンをもつ膜を使用する第1UF、続く、好ましくは1,000〜4,000ダルトンの膜を使用する透過物の第2UFを含むものである。最後に、第2の透過物をナノ濾過(NF)に供して、多量の最小不純物を除去し、NF透過物を蒸発させ、結晶化させて、1以上の白糖生成物を得る。いくつかの具体例では、オゾン、過酸化水素、水酸化ナトリウム、二酸化イオウ、硫酸塩、又は亜硫酸塩の如き化学剤を使用している。甜菜からの許容される黒糖製品の製造は教示されていない。
【0021】
ヨーロッパ特許第413,796号(Agrana Zucker-Gesellschachft)は、甜菜から白糖及び特殊な粗糖を製造する方法を開示する。第1工程では、甜菜を洗浄及び細断し、ついで、スチームでの直接加熱によって70〜90℃で湯がく。得られ凝縮物は、サポニン及び砂糖製品では望ましくない芳香物質を含有しており、フェノールオキシダーゼが不活性化されている。この凝縮物を従来の石灰化及び炭酸化によって精製し、白糖の製造に使用する。ついで、残りの甜菜細断物を、さらに抽出又は圧搾して、高含量の有用物質(例えば、ビタミン)を含有するが、苦味及び/又は芳香物質及び酵素を含有しない特殊な粗糖用の汁液を得る。しかし、このような生成物は、タンパク質、ペクチン、着色料及び不溶性固状物の如き高分子物質(これら物質は、生成物を、サトウキビに由来する味及び香りを有する市販の黒糖の代替物としての使用には適さないものにする)を含有する。さらに、ヨーロッパ特許第413,796号に教示された方法は、甜菜工業において既に利用可能な従来の抽出システムとは異なる抽出システムを必要とする。
【0022】
市販の白糖以外にも、淡い褐色の砂糖及び琥珀色の砂糖の如き精製度の低い製品も、芳しい風味のため、商業的に興味深い。しかし、黒糖製品は、甜菜から得られる黒糖が、消費者には受け入れられない望ましくない異味を有しているため、伝統的には、サトウキビから製造されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
甜菜を原材料とする製糖工業の国でも、官能的に許容される黒糖製品の製造は、なお、輸入されたサトウキビ糖物質を原材料としている。この黒糖は、甜菜からの白糖約90質量%及びサトウキビ糖蜜約10質量%の混合物から製造される。
【0024】
経済性の点から見て、砂糖が甜菜に由来する場合、第2及び第3の蒸発結晶化装置において得られる粗製砂糖結晶が市販製品として使用されないことは納得できない。事実、結晶を再度溶解させ、ついで、得られた汁液又はシロップを蒸発させるために、非常にエネルギーを消費している。
【0025】
従って、不快な異味及び臭いが保持されることなく、粗製黒糖製品の良好な味及び芳香に寄与する不純物が、第2及び第3の蒸発結晶化装置から得られる結晶生成物中に存在するようして粗製甜菜汁液の製造方法を確立することは望ましいことである。
【0026】
特に、蒸発結晶化段階によって得られる異なる砂糖結晶生成物のすべてが市販製品の形であることが望ましい。そのようなケースでは、溶解及び再結晶化による低純度結晶のエネルギー消費を伴う再処理は、黒糖製品の市場の要求によって低減又は省略される。
【0027】
さらに、粗製ディフューザー汁液の石灰化及び炭酸化の如き従来の化学処理を回避できることは望ましいことである。
【0028】
最後に、生成された糖蜜を、黒糖の製造において使用されている輸入サトウキビ糖蜜の代わりに使用できることは望ましいことである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の目的は、従来の石灰化及び炭酸化を使用することなく、これにより、黒糖製品において望ましくない不純物は除去されるが、良好な味及び芳香を提供する不純物は、蒸発結晶化によって得られる純度の低い結晶生成物中に保持されているような別の精製法を提供することにある。
【0030】
従って、本発明は、精製及び続く蒸発結晶化によって粗製ディフューザー甜菜汁液から砂糖結晶を製造する方法であって、前記粗製汁液を、a)70〜95℃に加熱し、b)任意に、プレ濾過し、c)分子量カットオフ2,000〜500,000ダルトンを有するフィルター上で濾過し、d)減圧下で、乾物含量60〜80質量%まで蒸発させ、e)さらに、蒸発によって結晶化し、続いて、相分離を行って、白糖結晶の如き砂糖結晶生成物及び液体相を生成し、及びf)前記工程からの液体相を、蒸発による結晶化及び相分離に供して、淡い褐色の砂糖結晶及び琥珀色の砂糖結晶の如き砂糖結晶形の生成物及び最後の段階からの液体相としての糖蜜を生成する工程に供することを特徴とする砂糖結晶の製法に関する。
【0031】
本発明の方法によって、
−化学剤の添加なしで、市場的に価値のある(売り物になる)結晶性砂糖製品を製造すること、
−環境的理由から望ましくない石灰含有廃棄物を排除すること、
−操作工程の数を低減すること、
−サトウキビ生産国から粗製原料を輸入することなく、甜菜から所望の黒糖を製造すること、
−溶解及び再結晶による低純度結晶化砂糖の再循環を低減又は完全に排除すること、
−従来の甜菜糖蜜よりも良好な味及び芳香をもつ糖蜜を製造すること、及び
−黒糖を製造するための白糖との混合用糖蜜を製造し、これによって、輸入のサトウキビ糖蜜を使用する必要性を回避すること、
が可能になる。
【0032】
本発明の方法の利点は、粗製ディフューザー甜菜汁液の調製及び蒸発及び結晶化工程(工程d〜f)のいずれもが、存在する工場の既存の装置において実施されるため、既存の甜菜工業に容易に合体されることである。
【0033】
本発明の産業上の利用性の程度については、下記の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明及び特殊な実施例は、好適な具体例を説明するために含まれるものであって、本発明の精神の範囲内における各種の変形及び変更は、詳細な説明に基づき当業者には明白であることが理解されなければならない。
存の問題の点で
【0034】
図1及び図2では、下記の略語を使用している。
RJ: 粗製汁液
PF: プレ濾過
UF: 限外濾過
P: 透過物
EV: 蒸発
TJ: 濃厚汁液
CRYST: 結晶化(蒸発)装置
1.M,2.M,3.M: 第1,第2,第3マスキット
CF: 遠心分離
1.S,2.S,3.S: 第1,第2,第3の砂糖生成物
MOL: 糖蜜
CRYST A,B,C,W: 結晶化装置A,B,C,W
AM,BM,CM,WM: マスキットA,B,C,W
AS,BS,CS,WS: 砂糖A,B,C,W
WG: Wグリーン*
*グリーンシロップ:マスキット又はマグマを遠心分離する際に生成される第1シロップ又は流出液体
【0035】
本発明による方法は、70〜95℃に加熱する工程(工程a)、任意の濾過工程(工程b)及び膜濾過する工程(工程c)、続いて行う従来の多段階、特に3段階の蒸発結晶化(工程d〜f)(ただし、砂糖結晶の全ての生成物が、その魅力的な味及び芳香により市場的に価値が有り、従って、売り物となる生成物であるため、溶解及び再結晶によって再処理する必要がないとの事実により通常の方法とは異なる)を含む別の汁液精製を包含する。
【0036】
膜濾過工程cから透過物として得られた精製汁液は、石灰化及び炭酸化でなる従来の汁液精製によって得られる汁液において見られるパターンとは異なる汁液中に残留する非糖化合物のパターンを有する。
【0037】
従来の方法によっては、乾物基準で、非糖化合物の約35質量%が粗製甜菜糖汁液から除去される。これらの非糖化合物は、セルロース、ペクチン物質、タンパク質、サポニン、脂質及び灰分の如き水不溶性化合物、及び単糖、ラフィノース、ペクチン物質、有機酸、脂質、サポニン、タンパク質、ベタイン、着色材、アミノ酸、アミド、アンモニウム塩、硝酸塩、亜硝酸塩の如き可溶性物質、及びカリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、鉄、アルミニウム及びケイ酸塩の如き無機化合物(灰分)を含む高分子量化合物及び低分子量化合物の両方を含む。
【0038】
従来法による非糖不純物のこの実質的な除去にもかかわらず、精製された汁液は、3段階結晶化によって、第1生成物として得られた純粋な(白色)結晶を除去した後、第2及び第3の生成物において高濃度で見られるいくらかの残留不純物をなお含有している。残念なことには、これらの残留不純物は、黒糖生成物を官能的には許容されないものとするパターンで見られる。
【0039】
本発明による粗製ディフュージョン汁液のクロスフロー膜濾過による非糖不純物の除去は、他の残留不純物パターンを残す。このように、従来の精製法によって除去されるいくらかの不純物は、汁液内に残る。特に、有機酸、アミノ酸及び着色材の如き低分子量化合物は、汁液から除去されず、汁液から得られる黒糖及び糖蜜の魅力的な特性に寄与する。
【0040】
さらに、甜菜シロップの望ましくない風味は、とりわけ、ある種のピラジン及び二硫化ジメチル(これらの化合物はサトウキビ糖蜜中には存在しない)と組み合わされる。ピラジンは、メイラード反応を介してグルコースとアミノ酸との反応によって形成される1種の含窒素複素環化合物である。ある種のピラジンは、パン、ベークドポテト及びコーヒーの如き加熱食品では重要な風味成分である。しかし、システイン及びメチオニンの如きイオウ含有アミノ酸から形成されるピラジンは、メチオニンの反応生成物である二硫化ジメチルのものの如き望ましくない臭いを提供する。これらの反応は、汁液のpHを上昇させることによって、pHの上昇が、非プロトン化形のアミノ酸の割合を増大させ、再び、メイラード反応における初期縮合工程の率を増大させるため、促進される。
【0041】
上記の理由により、最終の砂糖製品における望ましい風味は、従来の石灰化を回避すること及び本発明の方法を、自然発生の酸性pHにおいて、すなわち、pH調節用の化学剤を添加することなく実施することによって促進される。
【0042】
従って、本発明の方法は、好ましくは、7以下のpH、より好ましくはpH5.6〜6.8、例えば、pH5.8〜6.5において実施される。このようなpH値は、pH調節化合物を添加しない場合に汁液内で自然に発生するものである。
【0043】
汁液の精製
工程a:加熱
粗製ディフューザー汁液の微生物学的安定性を最小とし、濾過速度を改善するため、汁液精製を高温で実施する。このように、第1の工程では、各種の従来の態様で得られた粗製ディフュージョン甜菜汁液を、濾過工程前に、70〜95℃、好ましくは75〜90℃、例えば、約80℃に加熱する。
【0044】
工程b:プレ濾過
膜濾過(工程c)に先だって、精製汁液を、好ましくはプレ濾過する。プレ濾過の目的は、砂及び繊維の如き粒子を除去することによって、次の工程(c)において使用する膜フィルターを浸食、目詰まり及びブロッキングから保護することにある。膜濾過前のこのような粒子の濾過は、通常、膜フィルターの供給者によって推奨されており、プレ濾過用フィルターの実際の選択は、使用する膜フィルターに左右される。例えば、Koch Membrane Systems, Inc.(ウイルミントン,マサチューセッツ州,米国)は、スパイラル膜の使用前には、これらが増大されたスペーサーサイズを有するため、ブロッキングを生じ易くなることを防止するように、100μmまでプレ濾過することを推奨している。また、S.C.T.(バジェット,仏国)は、セラミック膜を保護するために、60μm絶対等級をもつプレフィルターを推奨している。
【0045】
5μmまで又は少なくとも15μmまでのより目の詰まったプレフィルターを使用することもでき、これにより、粗い砂だけでなく、細かい砂も除去できる。プレ濾過用にこのような細かい目のフィルターを使用することは、最終製品の特性には影響を及ぼさないが、膜の寿命には影響を及ぼす。
【0046】
現時点では、次の膜濾過を容易にし、膜フィルターを保護するためには、50μmより大きい粒子を除去すれば充分であると考えられる。これにより、膜を汚染する残留パルプ及び砂の如き浮遊する粒子は、プレ濾過によって除去される。
【0047】
好ましくは、プレ濾過に使用するフィルターは、孔サイズ30〜150μm、より好ましくは45〜100μm、例えば、50〜70μmを有する。
【0048】
スタティックカーブドウェッジワイヤースクリーンは50μmまで使用可能であり、プレ濾過用として1つの選択肢である。バックフラッシャブルフィルターは他の選択肢である。1例は、等級50μmをもつコイルフィルターであるPhoenixフィルター(Cross Manufacturing Co. (1938) Ltd.(バス,英国)である。特殊なデザインの「ターボ」流路は、粒状物質をフィルターエレメントから遠ざけ、バックウォッシングの頻度を低減させる。コイルは、バックウォッシングの際に開口し、完全かつ徹底的な浄化を可能にする。Societe des Ceramiques Thechniques (S.C.T.)(バジェット,仏国)は、MF及びUFの範囲のセラミック膜を包含する膜濾過システム「Membralox」の稼働に先立っての使用に推奨される絶対等級60μmをもつ自浄性プレフィルターを提供している。Phenixフィルターは、サイズ12μm、25μm、75μm及びそれ以上を有するが得られる。
【0049】
膜濾過
膜濾過工程(c)の目的は、浮遊する全ての固体及び巨大分子を除去することにある。この工程は、精密濾過(MF)又は限外濾過(UF)によって行われる。
【0050】
膜のクラスMF(精密濾過)とUF(限外濾過)との区別は、各著者によって異なり、その範囲は重複する。Osmonics, Inc.(ミネトンカ,ミネソタ州,米国)は、MFを0.02〜2.0μmの範囲の分離と定義し、UFを0.002〜0.2μmの範囲(分子量カットオフ範囲500〜300,000に相当)の分離と定義している。
【0051】
一般に、MFは、直径0.1〜10μmの範囲の粒子を保持するために使用される。MFフィルターは、代表的には、重合体又はセラミックで製造され、多くは等方性であるとして特徴付けられ、これは、膜の孔がフィルターの厚さ全体に渡って同じサイズであることを意味している。これらフィルターは、可溶性の高分子量物質よりもむしろ、主に不溶性の化合物を除去するために使用される。この1つの理由のため、本発明には、UF膜が好ましい。他の理由は、細菌性物質が除去されると共に、高いの容量及び安定性能力が維持されることである。
【0052】
分子量カットオフ値に応じて、UF膜は、分子量2,000〜500,000Da(ダルトン)をもつ粒子及び巨大分子の両方を除去する。これらの膜は、通常、非対称又は異方性であり、これは、膜が、厚いスポンジ状基材上に支持された均質な重合体の薄層でなることを意味している。薄層又は「スキン」の孔は、膜の残りの部分の孔よりもかなり小さい。従って、スキンは、主要な運搬バリヤーを構成し、UF膜の濾過特性を決定する。
【0053】
本発明に関して使用可能な膜フィルターは、分子量カットオフ値2,000Da又はそれ以上をもつUFフィルターから、約0.3μmの粒子を保持するMFフィルターまでの範囲である。Osmonics, Inc.によれば、後者は、分子量カットオフ約500,000Daに相当する。残留不純物の魅力的なパターンを確保するため、カットオフ値の好適な下限は、約5,000Da、さらに好ましくは7,000Da、最も好ましくは10,000Daである。上限は、約500,000Da、好ましくは150,000Da、最も好ましくは70,000Daである。
【0054】
本発明に関して、好適な膜フィルターは、着色材と共に、0.05〜0.1μmより大きいタンパク質、ペクチン及びコロイド状物質の如き巨大分子を含むいくらかの関連する巨大分子も確実に除去するためには、UF範囲に属するものである。
【0055】
使用できる市販の膜装置は各種のタイプがある。これらは、チューブ、スパイラル及びプレートタイプである。スパイラル形の膜は比較的安価であり、非常にコンパクトである。しかし、ネット様供給スペーサーをもつデザインのため、これらの膜は、プレ濾過が、メッシュスペーサーのサイズに応じて100μm又はよりタイトからの範囲の充分に細かいフィルターを使用して実施された場合にのみ使用される。
【0056】
膜濾過は、好ましくは、膜上において、液体の供給をクロスフロー(タンジェンシャルフロー)として実施される。これにより、膜表面の連続した浄化及び高い濾過率が可能である。膜の断続的な浄化は、透過物の高い流速を維持するため、苛性アルカリ、酸、洗剤又はこれらの組合せを必要とする。
【0057】
粗製汁液を清浄化して、濁り及びコロイド状物質を除去するために、MF及びUF膜を使用し、続いて、いくつかの他の高度に有効な精製工程、例えば、化学剤に添加による色の除去、汁液の軟化(すなわち、Ca及びMgイオンの除去)及びイオン交換樹脂を使用するクロマトグラフィーを行うことが既に提案されている。しかし、このような精製順序は白糖の製造を目的として提案又は使用されたものであり、黒糖製品にとって特徴的である芳香及び良好な味を提供する不純物の保持を考慮したものではない。
【0058】
膜濾過の分野では、近年、製糖用に適する重合体、ステンレス鋼、セラミック及び炭素製の膜が開発された。このような膜システムを供給する会社は、例えば、Koch Membrane Systems, Inc.(ウイルミントン,マサチューセッツ州,米国)、Graver Technologies(グラスゴー,デラウエア州,米国)、S.C.T.(バジェット,仏国)、Osmonics, Inc.(ミネトンカ,ミネソタ州,米国)、Danish Separation Systems(ナクスコウ,デンマーク国)及びApplexion(エポーン,仏国)がある。
【0059】
スパイラル形の膜は、エネルギー効率が良く、コンパクトであり、設置するには経済的であり、濃縮及び清浄化用には良好である。これらは、ポリプロピレン、ポリスルホン及びポリフッ化ビニリデンを含む各種の重合体物質製である。
【0060】
チューブタイプ膜は大きい直径の膜であり、炭素、セラミック及び多孔性金属(例えば、ステンレス鋼)を含む重合体又は不活性物質からなる。これらは、スパイラル形の膜があまり適さないようなストリーム、例えば、高浮遊固体レベルをもつストリーム又はプレ濾過が制限されるようなストリームの濃縮及び清浄化に最も良好に使用される。
【0061】
電気透析
好適な具体例によれば、透過物として得られた膜濾過汁液を、それ自体公知の電気透析(ED)による任意の脱塩工程によって、さらに精製することができる。ED膜は温度に鋭敏であり、従って、汁液の温度は、例えば、熱交換器を使用して、60℃以下に低減されなければならない。
【0062】
膜濾過後に得られた汁液は、普通、乾物含量約15質量%(°Brix)を有し、そのままで、EDに供される。しかし、乾物含量30質量%の糖汁液波、最大の導電率を有しており、EDによる最高に効果的な脱塩を生ずる。従って、好ましくは、ED脱塩工程前に、膜濾過透過物を、乾物含量25〜35質量%となるように予備蒸発に供する。脱塩後、汁液を、乾物含量60〜80質量%となるまでさらに蒸発させ、さらに、下記のように蒸発結晶化に供する。
【0063】
膜濾過した粗糖汁液を処理するために使用されるEDユニットは、市場から、例えば、Eurodia Industrie S.A(ウィソー,仏国)から入手できる。
【0064】
電気透析によって、膜濾過透過物に残留する無機塩及び有機塩を、カチオン又はアニオン交換膜を使用して分離する。膜スタックを通って直流を通し、これによって、アニオンをアニオン交換膜を通って、カチオンをカチオン交換膜を通って移動させる。
【0065】
EDによって、いくらかの低分子量着色材が除去される。さらに、蒸発及び結晶化の後に得られた黒糖は、より高い純度及びより低い灰分含量を有する。
【0066】
EDは、無機塩と共に、有機酸を除去することに関して有効である。特に酢酸の除去は、黒糖のあまりにも鋭い芳香を回避する。
【0067】
EDによる塩の除去は、汁液のpHを、代表的には5.2〜5.4に低減させる。これによって、続く処理の間に、ショ糖の転化が生ずる。必要であれば、ストリームの一部又は全体に対する光沢剤として弱又は強塩基性イオン交換樹脂を使用して、pHを上げることができる。これは、転化によるロスが望ましくないような白糖の製造には好ましい。しかし、黒糖の製造には、より大きい転化糖含量であることは、良好なコンシステンシー及び湿潤特性をもつ砂糖を提供でき、水分含量及びコンシステンシーが良好に保存される。
【0068】
従って、膜濾過と最終の蒸発との間で電気透析工程を使用する場合には、膜濾過した粗製汁液から、許容される黒糖製品を製造できる。最終生成物は灰分及び有機酸が少なく、見た目の黒色外観にあまり影響を及ぼすことなく、その純度が増大されている。有機酸、特に酢酸の除去は、他の望ましい芳香が、許容される黒糖製品を与えるアルデヒド及び甘草関連化合物から突出することを防止する。
【0069】
蒸発及び結晶化
膜濾過の後、精製汁液を、一般的に製糖工場で見られる多重効用エバポレーターシステムにおいて、普通の様式で行われる蒸発によって濃縮する。生成した濃厚汁液を、ついで、一般的に製糖工場で見られる蒸発結晶化装置を使用して、普通の様式で結晶化させる。
【0070】
使用できる蒸発結晶化装置は、バッチタイプの蒸発結晶化装置又は連続式蒸発結晶化装置であり、これらは、製糖工業においてよく知られている。例えば、P.W. van der Poel, H. Schiweck及びT. Schwartz: Sugar Technology-Beet and Cane Sugar Manufacture, bartens, 1998, p.780-797を参照する。
【0071】
砂糖の3段階結晶化は、製糖産業によって長年に渡って開発されてきた特殊なバッチ式又は連続式の蒸発結晶化装置を使用して、従来の様式で行われる。
【0072】
蒸発結晶化では、水の蒸発によって、結晶の成長を惹起するために必要な過飽和を達成する。結晶の成長は、核生成又は種スラリー又はマグマの注入によって開始される。
【0073】
原則的には、蒸発結晶化は、減圧と組み合わせて、充分に高い温度を使用することによって水を蒸発させるとの点で、ヨーロッパ特許公開第957,178号に開示された冷却結晶化とは相違する。実際、蒸発結晶化の温度は、一般に、70℃以上、好ましくは75℃以上、例えば、80℃であり、一方、冷却結晶化では、温度は30℃までである。後者は、蒸発とは異なるため、水を除去して、過飽和を維持する必要がなく、代わって、結晶化を推進する力は、冷却によって維持されなければならない。
【0074】
結晶の成長は、エネルギー効率のため及び着色を制限するために、減圧下で実施される。普通の様式で行われる遠心分離によって、結晶を濃縮汁液から分離する。しかし、本発明によれば、これらの結晶は、興味深い官能性により、売り物となる製品として既に適するものであるため、水による結晶の洗浄及び純度の低い砂糖結晶の再溶解及び再循環を排除することができる。
【0075】
このようにして、実質的なエネルギーの節約が達成され、装置の適応性も増大される。
【0076】
3段階結晶化において第2及び第3生成物として得られた黒糖は、魅力のある品質を有しており、従って、市場における高い可能性を有している。黒糖の需要が変動する場合には、黒糖生成物又はその一部を、従来の様式で溶解及び再循環することができる。この場合でも、本発明の方法は、いかなる化学剤も使用することなく、粗製ディフューザー汁液から白糖を製造できるため興味深い。このような砂糖は、多数の消費者に受け入れられるものであり、この方法は、環境の改善でもある。
【0077】
また、生成された糖蜜は、従来の甜菜糖蜜と比べて、良好な味及び芳香を有している。従って、特殊なソフト黒糖製品を製造するために白糖をブレンドされるため、生成物の全てを回収することが可能であり、廃棄物を全く生じない。
【0078】
糖蜜の品質に基づき、さらに他の使用としては、発酵又は他の一般的な処理によってさらに加工される食品及び飲料を含む食品及び飲料における成分としての使用が考えられる。
【実施例1】
【0079】
この実施例は、図1を参照して、本発明の方法の好適な1具体例を説明するものである。
【0080】
粗製ディフューザー汁液の生成
甜菜から従来の様式で調製した粗製ディフューザー汁液(RJ)(2)をプレフィルター(PF)(4)においてプレ濾過して、砂、繊維及び以降の膜フィルターに損傷を与える可能性のある他の物質の如き粒子を除去する。ついで、プレ濾過した汁液を、この具体例では、限外濾過(UF)(6)によって膜濾過し、これによって、捕捉物と共に、浮遊固体及び巨大分子を除去する。限外濾過から透過物(P)(8)として得られた精製汁液を、ついで、従来の3段階蒸発結晶化に供する。
【0081】
3段階結晶化
上記の如く得られた透過物(8)について、エバポレーター(EV)(10)において、減圧下で、第1回目の蒸発を行って、濃厚汁液(TJ)(12)とする。ついで、濃厚汁液を、第1蒸発結晶化装置(CRYST)(14)において、真空を維持しながら、蒸発結晶化に供する。ついで、第1マスキット(1.M)(16)を、第1遠心分離器(CF)(18)において、なお真空下で分離する。用語「マスキット」は、製糖の分野において、蒸発又は冷却結晶化装置で得られるような砂糖結晶及びシロップの混合物について使用されている。第1遠心分離器(18)において、マスキットを、砂糖結晶の第1生成物(1.S)(20)及び母液又はシロップ(22)に分離する。ついで、なお真空下にあるシロップ(22)を、第2蒸発結晶化装置(24)において処理し、得られた第2マスキット(2.M)(26)を、第2遠心分離器(28)において、前記と同様にして、砂糖結晶の第2生成物(2.S)(30)及びシロップ(32)に分離する。その後、同様にして、なお真空下にあるシロップ(32)を、第3蒸発結晶化装置(34)において処理して、第3マスキット(3.M)(36)を得た後、これを、第3遠心分離器(38)において、砂糖結晶の第3生成物(3.S)(40)及び糖蜜(MOL)形の母液(42)に分離する。
【0082】
砂糖結晶の3種の生成物(20)(30)(40)は、それぞれ、白糖、淡い褐色の砂糖及び琥珀色の砂糖として、全て市場的に有用な生成物である。このように、従来法とは異なり、砂糖結晶の第2及び第3生成物(30)(40)を溶解し、溶解した砂糖を第1蒸発結晶化装置(14)に再循環する必要はない。
【実施例2】
【0083】
甜菜から従来の様式で得られた粗製ディフュージョン汁液を80℃に加熱し、Sweco(ストックホルム,スウェーデン国)から入手した50μm振動スクリーンプレフィルター上でプレ濾過した。ついで、得られた濾液を、公称30kDaのUF膜フィルター上で濾過した。
【0084】
精製効率を、表1に示す分析結果によって説明する。
【0085】
【表1】
【0086】
結果は、UFによって、汁液の純度が1%上昇し、色が54%低減したことを表している。
【実施例3】
【0087】
実施例1に記載の方法を使用して、甜菜から従来の様式で得られた粗製ディフュージョン汁液を80℃に加熱し、Sweco(ストックホルム,スウェーデン国)から入手した50μm振動スクリーンプレフィルター上でプレ濾過した。ついで、得られた濾液を、公称30kDaのUF膜フィルター上で濾過した。
【0088】
UF精製した汁液を、130〜80℃において蒸発させて、乾物含量約70質量%を有する濃厚汁液又はシロップとした。段階の間に、得られた結晶の遠心分離による分離を挟み、温度を80℃に維持しながら、シロップを、80℃、真空下、3段階での蒸発結晶化に供した。この蒸発結晶化により、色86IU(ICUMSA単位)を有する白糖の第1生成物、色約2500 IUを有する淡い褐色の砂糖の第2生成物及び約11000 IUを有する琥珀色の砂糖の第3生成物が得られた。
【0089】
生成物ストリームの量及び分析データを表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
それぞれ、第2及び第3生成物として得られた淡い褐色の砂糖及び琥珀色の砂糖を、表3において、白糖にサトウキビ糖蜜約10質量%を配合することによって製造されている現在の黒糖製品「Brun farin」と比較した。
【0092】
【表3】
【0093】
「Brun farin」の色の測定値は、第3生成物として得られた琥珀色の砂糖のものと類似しているが、実際には、これらは視覚的には全く異なる。このように、新たな製品は、「Brun farin」の淡いチョコレートブラウンの色と比べて、より心地よい琥珀色を有している。さらに、2つの黒糖製品は、消費者にとって、これら製品を魅力的なものにする有利な味及び芳香を有している。
【0094】
従来の甜菜を基材とする製品よりも、サトウキビ基材製品に、より類似した心地よい風味を与えるように、本来の甜菜糖蜜中に見られる非糖の酸味とショ糖の甘味とを相乗的に組み合わせるため、得られた淡い褐色の砂糖及び琥珀色の砂糖を官能検査によって判定した。その結果、これらの黒糖製品が、黒糖が伝統的に基材として使用していたサトウキビの代わりに、甜菜由来のシロップを基材としているため、斬新なものであると判定された。
【0095】
従来の汁液精製法は、代表的に、甜菜100トン当たり石灰石2.2〜3.5トン及びコークス0.14〜0.22トンを消費する。これらの支出は、本発明の方法によって節約される。さらに、炭酸化処理からの使用した石灰スラッジの廃棄に関連する問題点が、本発明の方法によって回避される。
【0096】
さらに、本発明により、砂糖の第2及び第3生成物の再循環が回避されるため、製糖工場で処理されるマスキットの量が、甜菜100kg当たり約62kgから甜菜100kg当たり約35kgに低減される。これはプラントの能力を増大させるものであり、製糖工場での水分の蒸発量も、甜菜100kg当たり約11kgから甜菜100kg当たり約7.5kgに低減され、これによって、エネルギーの節約が達成される。
【実施例4】
【0097】
実施例3から得られた白糖の第1生成物90質量%を、同じく実施例3からの糖蜜10質量%と混合することによって、琥珀色の砂糖を調製した。得られた生成物の特性を下記の表4に示す。
【実施例5】
【0098】
実施例3から得られた淡い褐色の砂糖の第2生成物95質量%を、同じく実施例3からの糖蜜5質量%と混合することによって、琥珀色の砂糖を調製した。得られた生成物の特性を下記の表4に示す。
【0099】
【表4】
【実施例6】
【0100】
この実施例は、図2を参照して、化学処理を行うことなく、増大された純度を有する白糖を製造する際に使用される本発明の他の特殊な具体例を説明するものである。
【0101】
実施例1に記載したように、プレ濾過、限外濾過及び蒸発によって、粗製ディフューザー汁液から濃厚汁液(112)を調製する。濃厚汁液を、2つの部分(111)(113)に分割する。これらの部分の1つ(113)を、第4の蒸発結晶化装置(CRYST W)(144)において、後述する他の物質と合わせる。一方、他の部分(111)をグリーンシロップ(WG)の再循環母液(152)と合わせ、得られた混合物を3段階蒸発結晶化に供する。この3段階蒸発を、実施例1と同様に実施する。従って、この実施例の段階A、B及びCは、それぞれ、実施例1の段階1、2及び3に相当する。
【0102】
3段階結晶化に当たり、部分(111)及び母液(152)の混合物を、1番目に、第1蒸発結晶化装置(CRYST A)(114)において、真空を維持しながら、蒸発結晶化に供する。ついで、第1マスキット(AM)(116)を、なお真空下、第1遠心分離器(CF)(118)において分離する。第1遠心分離器(118)では、マスキットを、砂糖結晶の第1生成物(AS)(120)及び母液又はシロップ(122)に分離する。なお真空下にあるシロップ(122)を、ついで、第2蒸発結晶化装置(CRYST B)(124)において処理し、前記と同様にして、得られた第2マスキット(BM)(126)を、第2遠心分離器(128)において、砂糖結晶の第2生成物(BS)(130)及びシロップ(132)に分離する。その後、同様にして、なお真空下にあるシロップ(132)を、第3蒸発結晶化装置(CRYST C)(134)において処理して、第3マスキット(CM)(136)を得た後、このマスキットを第3遠心分離器(138)において、砂糖結晶の第3生成物(CS)(140)及び糖蜜(MOL)の形の母液(142)に分離する。
【0103】
砂糖結晶の第1、第2及び第3生成物(120)(130)(140)を溶解し、濃厚汁液の部分(113)と合わせ、得られた混合物を、第4蒸発結晶化装置(CRYST W)(144)において、第4結晶化に供して、第4マスキット(WM)(146)を得た後、このマスキットを第4遠心分離器(148)において、純粋な白糖結晶の生成物(WS)(150)及び上述のグリーンシロップ(WG)の母液(152)に分離する。この母液は、上述のように、再循環されて、濃厚汁液の部分(111)と合わされる。
【0104】
実施例6による具体例における生成物ストリームの量及び分析データを、下記の表5に示す。
【0105】
【表5】
【0106】
精製のために化学剤を使用することなく、非常に純粋な白糖(25IU)が得られることが明らかである。黒糖の需要に応じて、糖蜜と共に、第2及び第3砂糖生成物(B及びC)の全てが興味深い官能特性を有しており、この特性によって、これらは、売り物となる製品自体として又はこのような製品における成分として有用なものとなるとの事実を配慮して、変更される。
【0107】
実施例6による具体例の利点は、方法に柔軟性があり、結晶化される各物質における濃厚汁液の配合率を制御することによって、砂糖の所望の色を達成できることである。これにより、化学物質フリーの方法において、高品質の砂糖を製造できる。
【実施例7】
【0108】
実施例3に記載のようにしてUF精製汁液を調製し、80℃において、乾物含量約30質量%まで蒸発させた。ついで、汁液を60℃以下に冷却し、各々、セル25個を有する4個のEUR6-40 P15膜スタック及び電流4mA/cm2にて作動するフィード及びフィード−ブリードユニットを有するEurodia Industrie S.A.(ウィソー,仏国)製の電気透析プラントにおいて処理した。
【0109】
電気透析の前後において汁液を分析した。結果を表6に示す。
【0110】
【表6】
【0111】
ついで、電気透析した汁液を80℃において蒸発させて、乾物含量約70質量%を有する濃厚汁液又はシロップとした。各段階の間に、得られた結晶の遠心分離による分離を挟み、温度を80℃に維持しながら、シロップを、3段階で、80℃、真空下における蒸発結晶化に供した。この蒸発結晶化により、色65IU(ICUMSA単位)を有する白糖の第1生成物、色約1130 IUを有する淡い褐色の砂糖の第2生成物及び約9850 IUを有する琥珀色の砂糖の第3生成物が得られた。
【0112】
UF処理及び電気透析した汁液を基材とするこれらの淡い褐色の砂糖及び琥珀色の砂糖の分析結果を表7に示す。
【0113】
【表7】
【0114】
表3における結果と比較して、UFによっては除去されない低分子量の着色材が電気透析によって除去されており、これにより、第1、第2及び第3生成物に関して、色が低減されていることが明らかである。さらに、灰分も低減され、黒糖に関して純度が増大している。
【0115】
この実施例に従って得られた砂糖は、実施例3からの砂糖と比べて、内部味覚パネルによって、より高い等級が与えられた。
【実施例8】
【0116】
本発明に従って得られた黒糖製品は、小売市場では、テーブルシュガーとして、ホームクッキング及びベーキング用に、及び朝食用シリアルへの添加物として使用される。黒糖製品は、産業市場においても、食品製品の製造用に使用される。例えば、製品は、製パンに使用される。
【0117】
本発明の方法によって得られる糖蜜は、通常、活性炭又は粉末炭にて処理され、イオン交換樹脂を使用して脱塩される必要がある。このような処理は、製パン用シロップ又は糖蜜として適した製品を提供する。シロップは、新規な味をもつ製品を提供するように、サトウキビ系糖蜜とも配合される。
【0118】
発明の上記の記載は、多くの様式で、変更がなされることを明白に表している。このような変更も、本発明の精神を逸脱するものではなく、当業者にとって明白なこのような変更の全てが、請求の範囲の精神を構成するものである。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】工程(c)においてUF及び3段階における蒸発結晶化を使用する好適な具体例による本発明の方法の概略フローシートである。
【図2】化学剤を使用しない方法で高純度の白糖を製造する本発明の方法の好適な具体例の概略フローシートである。
【符号の説明】
【0120】
(2)粗製ディフューザー汁液
(4)プレフィルター
(6)限外濾過
(8)透過物
(10)エバポレーター
(12)(112)濃厚汁液
(14)(114)第1蒸発結晶化装置
(16)(116)第1マスキット
(18)(118)第1遠心分離器
(20)(120)砂糖結晶の第1生成物
(22)(122)シロップ
(24)(124)第2蒸発結晶化装置
(26)(126)第2マスキット
(28)(128)第2遠心分離器
(30)(130)砂糖結晶の第2生成物
(32)(132)シロップ
(34)(134)第3蒸発結晶化装置
(36)(136)第3マスキット
(38)(138)第3遠心分離器
(40)(140)砂糖結晶の第3生成物
(42)(142)母液
(111)(113)部分
(144)第4の蒸発結晶化装置
(152)再循環母液
Claims (16)
- 精製及び続く蒸発結晶化によって粗製ディフューザー甜菜汁液から砂糖結晶を製造する方法であって、前記粗製汁液を、a)70〜95℃に加熱し、c)分子量カットオフ2,000〜500,000ダルトンを有するフィルター上で膜濾過し、d)真空下で、乾物含量60〜80質量%に蒸発させ、e)さらに、蒸発によって結晶化し、続いて、相分離を行って、砂糖結晶生成物及び液体相を生成し、及びf)前記工程からの液体相を、1以上の段階の蒸発による結晶化及び相分離に供して、砂糖結晶形の生成物及び最後の段階からの液体相としての糖蜜を生成する工程に供することを特徴とする砂糖結晶の製法。
- 粗製汁液を、a)70〜95℃に加熱し、c)分子量カットオフ2,000〜500,000ダルトンを有するフィルター上で膜濾過し、d)真空下で蒸発させて、乾物含量60〜80質量%を有する濃厚汁液とし、d1)工程d)で得られた濃厚汁液を、第1及び第2部分に分け、e)工程d1)で得られた第1部分を、さらに、蒸発によって結晶化し、続いて、相分離を行って、第1砂糖結晶生成物及び液体相を生成し、f)工程e)で得られた液体相を、1以上の段階の蒸発による結晶化及び相分離に供して、他の砂糖結晶生成物及び最後の段階からの液体相としての糖蜜を生成し、g)工程d1)で得られた第2部分を、さらに、蒸発により結晶化し、続いて、相分離を行って、砂糖結晶生成物及び液体グリーンシロップ相を生成し、h)液体グリーンシロップを再循環して、工程d1)で得られた濃厚汁液の第1部分と、該第1部分を工程e)における処理に供する前に合わせる工程に供することを特徴とする請求項1記載の砂糖結晶の製法。
- 工程e)及び/又は工程f)で得られた1以上の砂糖結晶生成物を、工程d1)で得られた濃厚汁液の第2部分と、該第2部分を工程g)における処理に供する前に合わせることを特徴とする請求項2記載の砂糖結晶の製法。
- 工程c)における膜濾過後に、電気透析による脱塩工程を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の砂糖結晶の製法。
- 工程c)で得られた膜濾過汁液を、予備的に、真空下で蒸発させて、乾物含量25〜35質量%とし、その後、電気透析によって脱塩処理し、ついで、さらに、工程d)に従って蒸発させて、乾物含量60〜80質量%を有する濃厚汁液とすることを特徴とする請求項4記載の砂糖結晶の製法。
- さらに、工程a)における加熱の後で、工程c)における膜濾過の前に、b)プレ濾過する工程を包含する請求項1〜5のいずれかに記載の砂糖結晶の製法。
- 工程b)における膜濾過を、孔サイズ30〜150μmを有するフィルター上で行う請求項6記載の砂糖結晶の製法。
- 工程b)における膜濾過を、孔サイズ50〜100μmを有するフィルター上で行う請求項7記載の砂糖結晶の製法。
- 工程d)から得られた濃厚汁液を、3段階における結晶化に供し、各段階が結晶化及び続く相分離を含むものである請求項1記載の砂糖結晶の製法。
- 工程e)によって白糖生成物が生成され、工程f)の段階f1)によって淡い褐色の砂糖生成物が生成され、段階f2)によって琥珀色の砂糖生成物が生成される請求項2又は9記載の砂糖結晶の製法。
- 工程g)で得られる砂糖結晶生成物が白糖生成物である請求項2又は3記載の砂糖結晶の製法。
- 一連の工程d)、工程e)及び工程f)の1以上の段階を、間に冷却を行うことなく実施する請求項1〜11のいずれかに記載の砂糖結晶の製法。
- 一連の工程d)、工程e)及び工程f)の全ての段階の間における操作を真空下で行う請求項1〜12のいずれかに記載の砂糖結晶の製法。
- 工程c)における膜濾過を、分子量カットオフ10,000〜70,000ダルトンを有するUF膜フィルター上で行う請求項1〜13のいずれかに記載の砂糖結晶の製法。
- 請求項1〜14のいずれかによる方法によって、粗製ディフューザー甜菜汁液から砂糖結晶生成物の1つとして得られる黒糖製品。
- 請求項1〜14のいずれかによる方法によって、粗製ディフューザー甜菜汁液から黒糖及び/又は糖蜜を含む食品。
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