近年の半導体集積回路の微細化および高集積化は急速に進化し、微細に加工することが必要になってきており、またデバイスが複雑な構造になって立体化するようになってきている。微細化は、半導体装置の製造工程における微細加工技術の進歩、特に、光を利用して回路パターンをウエハ面上に塗布された感光性有機膜(フォトレジスト)に転写する技術であるリソグラフィー工程における高解像力化により達成されてきた。具体的には、リソグラフィー工程において、短波長化された光源を用いて露光する技術が開発されている。また、デバイス構造の高低差をできるだけ低減することで、焦点深度の不足を補い、微細なパターンの焦点ずれを引き起こさず確実に解像させる方法が検討されている。
そこで、デバイス構造の高低差を平坦化する方法として、最近では、シリコンウエハの鏡面加工を応用したCMP法が採用されており、この装置は、回転する研磨プレート回転軸に支承され表面に研磨パッドが接着された研磨プレートと、ダイヤモンド粉などを金属板に電着などで形成した、研磨パッドの表面を目立てするためのドレッサーと、層間絶縁膜などの被研磨層が形成された被研磨体(以下、ウエハと称する)をウエハバッキングフィルムにより保持するキャリアと、研磨スラリーを研磨パッド上に供給する研磨スラリー供給ノズルを有する研磨スラリー供給装置とから概ね構成されている。
その1方法として、研磨パッドをドレッサーによりドレッシング(研削)した後に、研磨プレート回転軸およびキャリア回転軸を回転させ、研磨スラリー供給ノズルから研磨パッドの中央部に研磨スラリーを供給しながら、研磨圧力調整機構によりウエハを研磨パッド上に押圧させてウエハを研磨する方法がある。このようなCMP法では、ウエハの絶縁膜などの被研磨層にマイクロスクラッチの発生や研磨レートのばらつきや研磨量のウエハ面内でのバラツキが大きいことが問題となっている。
マイクロスクラッチの発生を抑制するためには、研磨パッドのドレッシング時に発生する研磨パッドの削りクズやドレッサーのダイヤモンド、層間膜、ウエハの破片クズや研磨済みの研磨スラリーなど(以降、これらを総称して不純物とも表記する)を研磨パッド外へ排出する必要がある。このような従来のCMP装置においては、研磨作業中に研磨スラリーを研磨パッドの中央部に間断なく十分に流し出し、不純物をこの研磨スラリーにより研磨パッド外へ除去あるいは押し流すという対策をとっている。このようにドレッシングによりパッド表面に目立て層を形成し、研磨スラリーを供給してウエハの研磨を行う時、研磨スラリーは研磨パッドの回転による遠心力およびウエハを研磨パッドに押し付けることにより押し出され、殆どが研磨に直接寄与することなく研磨パッド外に排出されてしまうため、高価な研磨スラリーを余分に消費してしまうことになる。
これらの課題を解決するために、研磨パッド面に研磨作業時に開口する中空部を有する複数の高分子微小エレメントが含浸された高分子マトリックスから成り、加工品の均一で一貫した研磨および研磨パッドの均一な磨滅を可能とした研磨パッド(特許文献1参照)、研磨パッド面に溝を被研磨基板の進行方向前方側の溝の肩部が上方ほど広がるテーパー形状に形成し、被研磨基板全面での研磨均一性および平坦性の向上を可能とする研磨パッド(特許文献2参照)や、硬質層と軟質層とを備え、研磨面である硬質層の一面に複数の溝や硬質層のみを貫通する複数の孔を形成し、被研磨体の容易な取り除き、研磨剤必要量の低減、劣化の抑制およびドレッシング時のダイヤモンドの脱落抑制を可能とする研磨パッド(特許文献3参照)が提案されている。
特許文献1においては、研磨スラリーと共に使用される加工品の表面を変える製品で、上記製品が複数の高分子微小エレメント(それ自体は実質的に加工品の表面を研磨しないもの)が含浸された高分子マトリックスから成り、各高分子微小エレメントが大気圧より大きい圧力のガスを含む空隙スペースを有し、上記製品が作業面および上記作業面に隣接する副表面を有するものであって、上記製品が作業環境に接する時、上記製品の上記作業面における高分子微小エレメントが開口し、副表面に埋め込まれた高分子微小エレメントよりも固さが減じる製品を得ることで、加工品の均一で一貫した研磨および研磨パッドの均一な磨滅を可能とした研磨パッドを得ている。上記製品が現在一般的に使用されている研磨パッドの代表的なものである。
また、特許文献2においては、被研磨基板を研磨する化学的機械研磨法に用いる研磨パッドであって、上記研磨パッドには溝が形成されており、少なくとも上記被研磨基板の進行方向前方側の溝の肩部が上方ほど広がる順テーパー形状に形成されていることで、被研磨基板全面での研磨均一性および平坦性の向上を可能とした研磨パッドを得ているが、加工枚数が増えるに従い、順テーパー部分が磨滅して研磨特性が変化するため、安定した研磨特性を実現することができない。特に加工初期と後期での研磨特性が変化するという点において課題を有している。
更に、特許文献3においても、被研磨物を研磨する研磨パッドにおいて、硬質層と軟質層とを備え、上記硬質層の一の面は研磨層であり、被研磨物を研磨する研磨剤を保持するために、上記研磨面上に複数の溝と上記硬質層のみを貫通する複数の孔とを有し、近接する溝間の距離が近接する孔間の距離よりも大きいことで、被研磨体の容易な取り除き、研磨剤必要量の低減、劣化の抑制およびドレッシング時のダイヤモンドの脱落抑制を可能とする研磨パッドを得ているが、硬質層のみを貫通する複数の孔に関して、その詳細な形状および加工方法に関する記載がない。特に、より高度なCMP法を実現するためには、前記複数孔の詳細な形状および加工方法を選定することが重要な課題である。
上記のように、半導体CMP用研磨パッドにおいては、研磨層に溝やパーフォレーションと呼ばれる貫通孔等を設けて研磨スラリー(研磨剤)の保持力を向上させる。この貫通孔は、通常、直径1〜2mm、ピッチ5〜15mmとなるように加工されるものである。上記貫通孔加工方法としては、通常、打ち抜き加工等が用いられるが、打ち抜き加工後の研磨層表面における貫通孔周辺、即ち貫通孔の研磨層表面におけるエッジに凹みが発生して、研磨性能、特に研磨レートに悪影響を及ぼすという問題がある。また、上記貫通孔の研磨層の表面と裏面との孔径が異なる(表面>裏面)ため、初期状態から研磨層の磨耗が進行するに従って、研磨レートが変化するという問題があった。
特許第3013105号公報
特開平11‐333699号公報
特許第3324643号公報
本発明の半導体CMP用研磨パッドは、研磨層に表面から裏面に貫通する多数の孔を形成し、この貫通孔の研磨層表面におけるエッジの凹みの深さ(δy)を0.1mm(100μm)以下となるように形成したものである。次に、本発明の研磨パッドおよびその製造方法を図1〜5を用いて具体的に説明する。図1は、本発明の研磨パッドの研磨層に設けられた貫通孔の1つの実施態様の概略断面図であり、図2は、本発明の研磨パッドの研磨層の貫通孔を打ち抜き加工するための円筒刃の1つの実施態様の概略断面図である。但し、これらの図は研磨パッドの研磨層の貫通孔および貫通孔加工用円筒刃の部分模式図であって正確な寸法を示すものではない。図3は、本発明の研磨パッドの研磨層に設けられた貫通孔の断面の実施態様の電子顕微鏡写真(倍率:50倍)である。図4〜5は、従来の研磨パッドの研磨層に設けられた貫通孔の断面の電子顕微鏡写真(倍率:50倍)である。本発明の研磨パッドでは、従来の研磨パッドに比較して、貫通孔の研磨層表面におけるエッジの凹み、特に凹みの深さ(δy)が非常に小さくなっていることがわかる。
図1に示すように、本発明の半導体CMP用研磨パッドでは、研磨層(厚さT)に表面から裏面に貫通する孔を多数有し、研磨層表面における上記貫通孔周辺に生じる凹み、即ち上記貫通孔の研磨層表面におけるエッジの凹みの深さ(δy)を0.1mm(100μm)以下としたものである。また、本発明の半導体CMP用研磨パッドにおいては、上記貫通孔は、好ましくは研磨層の表面における孔径(D4)と裏面における孔径(D5)の差(D4−D5)がD4の10%以内となるように形成する。
本発明の半導体CMP用研磨パッドにおいて、上記のように貫通孔の研磨層表面におけるエッジの凹みの深さ(δy)を0.1mm(100μm)以下とすることを要件とするが、好ましくは0〜0.06mm、より好ましくは0〜0.04mmである。上記凹みの深さ(δy)が0.1mm(100μm)を超えると、研磨作業時に上記凹み部分に研磨スラリーが保持され、研磨レートが変化し、更に被研磨体と研磨層の接触面積が、研磨層の磨耗により変化し、研磨レートが経時的に変化して研磨量にバラツキが生じる。
また、上記貫通孔の研磨層表面におけるエッジの凹みの幅(δx)は、0〜0.20mm、好ましくは0〜0.15mm、より好ましくは0〜0.08mmであることが望ましい。上記凹みの幅(δx)が、0.20mmより大きいと、研磨作業時に上記凹み部分に研磨スラリーが保持され、研磨レートが変化し、更に被研磨体と研磨層の接触面積が、研磨層の磨耗により変化し、研磨レートが経時的に変化して研磨量にバラツキが生じる。
本発明の半導体CMP用研磨パッドにおいて、上記貫通孔が研磨層の表面と裏面とにおける孔径の差(D4−D5)がD4の10%以内、好ましくは0〜6%、より好ましくは0〜3%を有することが望ましい。上記貫通孔の孔径の差が10%を超えると、研磨層の磨耗により研磨レートが変化し、研磨レートの経時安定性が低下する。
上記貫通孔の研磨層表面における孔径(D4)は、0.5〜3.0mm、好ましくは1.0〜2.0mm、より好ましくは1.5〜2.0mmであることが望ましい。上記貫通孔の表面孔径(D4)が、3.0mmより大きいとスラリー使用量が不必要に増えてコストアップとなり、0.5mmより小さいと小径の円筒刃物が多数必要となり、これはコストおよび刃物の耐久性の観点から不利である。
上記貫通孔の間隔は、2〜25mm、好ましくは4〜20mm、より好ましくは5〜15mmであることが望ましい。上記貫通孔の間隔が、25mmより大きいと貫通孔の総数が少なくなり過ぎて所望の研磨特性が十分に得られなくなり、2mmより小さいと貫通孔の間隔が狭くなり過ぎてパッドとしての剛性が低下し所望の研磨特性を発現できない。また、スラリーも浪費することとなる。本明細書中で「貫通孔の間隔」とは、最も近い隣接する貫通孔の中心から中心までの距離を表す。
本発明の半導体CMP用研磨パッドにおいて、上記貫通孔の加工方法は、上記貫通孔の研磨層表面におけるエッジの凹みの深さ(δy)が上記範囲内になるように加工するものであれば、特に限定されないが、打ち抜き加工が好ましい。上記貫通孔を打ち抜き加工する場合、特殊な形状を有する、図2に示すような貫通孔加工用円筒刃を用いることが好ましい。
上記貫通孔加工用円筒刃において、刃先角(テーパー角度)を「α」とすると、「tanα」が0.05〜0.2、好ましくは0.08〜0.15、より好ましくは0.08〜0.1であることが望ましい。上記「tanα」が、0.2より大きいと打ち抜き抵抗が大きくなるため、加工時の打ち抜き圧力を増加する必要があると共に、δx、δy、(D4−D5)が大きくなり、0.05より小さいと刃先強度が低下して円筒刃物の刃先のカケが発生する。
上記貫通孔加工用円筒刃において、テーパー長(L)は、3〜15mm、好ましくは5〜10mm、より好ましくは7〜10mmであることが望ましい。上記テーパー長(L)が、15mmより大きいと円筒刃が長くなり、安定した刃物保持が別途必要となりコストアップにつながり、3mmより小さいと上記のような所望の刃先角「α」を得ることが困難となる。
上記貫通孔加工用円筒刃において、刃先幅(t1)は、0.1〜0.5mm、好ましくは0.1〜0.3mm、より好ましくは0.15〜0.2mmであることが望ましい。上記刃先幅(t1)が、0.5mmより大きいと打ち抜き抵抗が大きくなるため、加工時の打ち抜き圧力を増加する必要があると共に、δx、δy、(D4−D5)が大きくなり、0.1mmより小さいと刃先強度が不足して刃先のカケ等が発生する。
上記貫通孔加工用円筒刃において、テーパー幅(t2)は、上記刃先角(テーパー角度)「α」およびテーパー長(L)を決定することにより決定されるが、0.3〜1.5mm、好ましくは0.5〜1.0mm、より好ましくは0.5〜0.8mmであることが望ましい。
本発明の研磨パッドとしては、従来一般に使用されている単層型パッドであってもよく、またはウエハ等の被研磨体に当接する硬質表面層および硬質表面層とプラテン(定盤)との間に位置する弾性支持層の少なくとも2層を有する積層パッドであってもよいし、更に他層を重ねての多層研磨パッドのような積層研磨パッドであってもよい。生産上、性能上、硬質表面層とプラテンとの間に位置する弾性支持層の少なくとも2層を有するものが好ましい。本発明はこのように単層、積層の研磨パッドに限定されるものではない。
上記の積層研磨パッドにおいて、硬質表面層と弾性支持層とで大別して形成されるものであるが、上記硬質表面層の硬度(JIS K6253−1997に準拠して行った。2cm×2cm(厚み:任意)の大きさに切り出したものを硬度測定用試料とし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定時には、試料を重ね合わせ、厚み6mm以上とした。硬度計(高分子計器社製 アスカーD型硬度計)を用い、硬度を測定した。)は、35〜80であることが好ましい。上記硬度が35度未満の場合、被研磨物のプラナリティ(平坦性)が悪化し、また、80度より大きい場合は、プラナリティは良好であるが、被研磨物のユニフォミティ(均一性)が悪化してしまう。弾性支持層の硬度(JIS K6253−1997準拠、高分子計器社製 アスカーA型硬度計)は、好ましくは25〜100、より好ましくは30〜85である。また、硬質表面層の厚さは、好ましくは0.2〜4mm、より好ましくは0.8〜3.0mm、弾性支持層の厚さは好ましくは0.2〜4.0mm、より好ましくは0.5〜3.0mmとすることが望ましい。
単層型研磨パッドにおいては、厚さは1.0〜5.0mm程であり、その材料は硬質表面層と弾性支持層にそれぞれ使用される材料から適宜選択使用されるものであってよい。
積層研磨パッドにおいて硬質表面層としては光硬化性樹脂、無発泡ポリウレタンや発泡ポリウレタンなどのポリウレタン、弾性支持層としてはポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリエステルの不織布などが好ましいが、これらに限定されるものではない。硬質表面層、弾性支持層を不織布で形成する場合、ポリウレタン樹脂等の含浸剤を不織布に含浸させてもよい。但し、上記硬度範囲を満足するものであれば、上記以外の材質で研磨パッドを構成してもよい。
光硬化性樹脂組成物としては、例えば、光重合性モノマ、ベースレジン、光重合開始剤等からなる組成物が挙げられる。光硬化性樹脂組成物を用いる場合、貫通孔はフォトリソグラフィー法を用いて加工するため、前述のような円筒刃は使用しない。上記光重合成モノマとしては、各種アクリレート、各種アクリルアミド、ビニル化合物等の単官能性、多官能性のエチレン性不飽和モノマ等を用いることができる。ベースレジンとしては、ポリエステル、エポキシ、ポリウレタンがより好ましい。
光硬化性樹脂組成物の光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシイソブチルフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパン、t−ブチルアントントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダール2量体等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
これらの光重合開始剤は単独でまたは2種類以上を組合せて使用される。本成分の使用量は、光硬化性樹脂組成物中の固形分総量の0.01〜25重量%とすることが好ましく、1〜20重量%であることがより好ましい。更に必要に応じて、増感剤、密着向上剤等の添加剤を加えてもよい。
光硬化性樹脂層は単独でシート材として使用してもよく、支持材の上に塗布して表層として使用してもよく、支持材上への塗布方法としては、ロールコータ塗布、スピンコータ塗布、スプレー塗布、ディップコータ塗布、カーテンフローコータ塗布、ワイヤバーコータ塗布、グラビアコータ塗布、エアナイフコータ塗布、ダイコータ塗布等がある。露光機としては、カーボンアーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ等が挙げられる。
ポリウレタン樹脂としては、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと有機ジアミン化合物とからなり、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートと高分子ポリオールと低分子ポリオールからなる。
ポリイソシアネートとしては、例えば2,4−および/または2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−およびm−フェニレンジイソシアネート、ダイメリルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニル−4,4’−ジイソシネート、1,3−および1,4−テトラメチルキシリデンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−および1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネート)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(=水添MDI)、2−および4−イソシアナトシクロヘキシル−2’−イソシアナトシクロヘキシルメタン、1,3−および1,4−ビス−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、ビス−(4−イソシアナト−3−メチルシクロヘキシル)メタン、等が挙げられる。上記ポリイソシアネート成分は、注型成形時に必要とされるポットライフに応じて適宜に選定されると共に、生成する末端NCOプレポリマーを低溶融粘度とすることが必要である為、単独または2種以上の混合物で適用される。
また、高分子ポリオールとしては、例えばヒドロキシ末端ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリエーテル、ポリエーテルカーボネート、ポリエステルアミド等が挙げられるが、これらのうち耐加水分解性の良好なポリエーテルおよびポリカーボネートが好ましく、価格面と溶融粘度面からはポリエーテルが特に好ましい。ポリエーテルポリオールとしては、反応性水素原子を有する出発化合物と、例えば酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、酸化スチレン、テトラヒドロフラン、エピクロルヒドリンの様な酸化アルキレンまたはこれら酸化アルキレンの混合物との反応生成物が挙げられる。反応性水素原子を有する出発化合物としては、水、ビスフェノールA並びに後述のようなポリエステルポリオールを製造するための二価アルコールが挙げられる。
更に、ヒドロキシ基を有するポリカーボネートとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよび/またはポリテトラメチレングリコールの様なジオールとホスゲン、ジアリルカーボネート(例えばジフェニルカーボネート)もしくは環式カーボネート(例えばプロピレンカーボネート)との反応生成物が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、二価アルコールと二塩基性カルボン酸との反応生成物が挙げられるが、耐加水分解性向上の為には、エステル結合間距離が長い方が好ましく、いずれも長鎖成分の組み合わせが望ましい。
二価アルコールとしては、特に限定はしないが、例えばエチレングリコール、1,3−および1,2−プロピレングリコール、1,4−および1,3−および2,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,4−ビス−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール等が挙げられる。
二塩基性カルボン酸としては、脂肪族、脂環族、芳香族および/または複素環式のものがあるが、生成する末端NCOプレポリマーを液状または低溶融粘度とする必要上から、脂肪族や脂環族のものが好ましく、芳香族系を適用する場合は脂肪族や脂環族のものとの併用が好ましい。これらカルボン酸としては、限定はしないが、例えばコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸(o−、m−、p−)、ダイマー脂肪酸、例えばオレイン酸、等が挙げられる。これらポリエステルポリオールとしては、カルボキシル末端基の一部を有することもできる。例えば、ε−カプロラクトンの様なラクトン、またはε−ヒドロキシカプロン酸の様なヒドロキシカルボン酸のポリエステルも使用することができる。
低分子ポリオールとしては、前述のポリエステルポリオールを製造するのに用いられる二価アルコールが挙げられるが、本発明の低分子ポリオールとは、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサメチレングリコールのいずれか1種またはそれらの混合物を用いることが好ましい。本発明以外の低分子ポリオールであるエチレングリコールや1,4−ブチレングリコールを用いると、注型成形時の反応性が速くなり過ぎたり、最終的に得られるポリウレタン研磨材成形物の硬度が高くなり過ぎるため、本発明の研磨材としては、脆くなったり又IC表面に傷がつき易くなる。他方、1,6−ヘキサメチレングリコールよりも長鎖の二価アルコールを用いると、注型成形時の反応性や、最終的に得られるポリウレタン研磨材成形物の硬度が適切なものが得られる場合もあるが、価格的に高くなり過ぎ、実用的ではない。
本発明で使用される有機ジアミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、クロロアニリン変性ジクロロジアミノジフェニルメタン、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゾエート、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン等が挙げられる。
本発明における研磨パッドは、研磨の際に必要であれば研磨領域表面の目立てであるドレッシングを施してもよいが、ドレッサー屑によるスクラッチを防止したり、研磨パッドの寿命が長くなるため、ドレスを行わないドレスレスでの研磨が望ましい。
また、本発明における研磨層の加工方法により、研磨層の厚みバラツキは100μm以下であることが好ましい。厚みバラツキが100μmを越えるものは、研磨層に大きなうねりを持ったものとなり、被研磨物に対する接触状態が異なる部分ができ、研磨特性に影響を与える。また、研磨層の厚みバラツキを解消するため、一般的には、研磨初期に研磨層表面をダイヤモンド砥粒が電着又は、融着させたドレッサーを用いてドレッシングするが、上記範囲を超えたものは、ドレッシング時間が長くなり、生産効率を低下させるものとなる。
本発明の研磨パッドを使用して、研磨パッドの表面に対して研磨スラリーを供給しながら、被研磨体を所望の研磨圧で押し付けながら回転させて上記研磨パッドの移動方向に対して交差する方向に揺動させることによって、上記研磨パッドの表面と被研磨体の表面との間に供給されたスラリーの化学的および機械的な作用によって被研磨体の表面を研磨する方法で被研磨体が半導体ウエハである研磨方法であり、この半導体ウエハの研磨において本発明の研磨パッドがもっとも効果を発揮する。また本発明は、上記研磨パッドで研磨され製造された半導体デバイスに及ぶものである。
以下、本発明の効果を具体的に示す実施例等について説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、実施例等における評価項目は以下のようにして測定した。
(研磨特性の評価)
研磨装置としてSPP600S(岡本工作機械社製)を使用し、作製した研磨パッドを用いて、研磨特性として研磨レートの評価を行った。
(1)研磨レート
研磨レート(Å/分)は、8インチ(約20cm)のシリコンウエハに熱酸化膜を1μm製膜したものを、約0.5μm研磨して、このときの時間から算出した。酸化膜の膜厚測定には、干渉式膜厚測定装置(大塚電子社製)を用いた。研磨条件としては、スラリーとしてシリカスラリー(SS12、キャボット社製)を研磨中に150ミリリットル/分にて添加した。研磨荷重としては350g/cm2、研磨定盤回転数35rpm、ウエハ回転数30rpmとした。
(2)貫通孔同士の間隔(p)
隣り合う貫通孔同士の最も近い距離をp1とした。pの測定には、デジタル顕微鏡VH‐6300(キーエンス社製)を用い、隣り合う3つの貫通孔の3点のp1の平均値をpとした。
(実施例1〜3および比較例1〜3)
(研磨パッドの作製)
フッ素コーティングした反応容器に、フィルタリングしたポリエーテル系プレポリマー(ユニロイヤル社製、アジプレンL‐325、イソシアネート基濃度:2.22meq/)100重量部、及びフィルタリングしたシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウシリコーン社製、SH192)3重量部を混合し、反応温度を80℃に調整した。フッ素コーティングした攪拌機を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく攪拌を行った。そこへ予め120℃で溶融させ、フィルタリングした4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)(イハラケミカル社製、イハラキュアミンMT)を26重量部添加した。約1分間攪拌を続けた後、フッ素コーティングしたパン型のオープンモールドへ反応溶液を流し込んだ。この反応溶液に流動性がなくなった時点でオーブン内に入れ、110℃で6時間ポストキュアを行いポリウレタン樹脂発泡体ブロックを得た。このポリウレタン樹脂発泡体ブロックからバンドソータイプのスライサー(フェッケン社製)を使用してスライスし、ポリウレタン発泡体シートを得た。次にこのシートをバフ機(アミテック社製)を使用して、所定の厚さに表面バフをし、厚み精度を整えたシートとした(シート厚さ:1.27mm)。
得られたシートを直径61cmに打ち抜き、以下の表1に示した形状を有する貫通孔加工用円筒刃を取り付けた打ち抜き加工機を用いて、研磨層に貫通孔加工を行った。上記貫通孔の孔径、貫通孔の研磨層表面におけるエッジの凹みの大きさおよび貫通孔の間隔を、以下の表2に示す。
このシートの表面(打ち抜き加工時の上面)と反対の面にラミネーターを使用して、両面テープ(積水化学工業社製、ダブルタックテープ)を貼り、更に、表面バフ掛けし、コロナ処理をしたクッションシート(東レ社製、ポリエチレンフォーム、トーレペフ、厚み0.8mm)をラミネーターを使用して前記シートに貼り合せた。更にクッションシートの他面にラミネーターを使用して両面テープを貼り合せて研磨パッドを作製した。
得られた実施例1〜3および比較例1〜3の研磨パッドの研磨特性として、初期状態、50%(8インチのシリコンウエハ500枚研磨相当)および最終状態(8インチのシリコンウエハ1000枚研磨相当)における研磨レートを上記方法により評価した。その結果を以下の表4に示す。
上記表1の結果から明らかなように、実施例1〜3の本発明の研磨パッドは、比較例1〜2の研磨パッドに比べて、研磨レートの経時変化が小さくて良好であり、研磨レートの経時安定性が高いことがわかる。比較例3の研磨パッドは研磨レートの経時安定性が高いものの、貫通孔加工用刃物の厚さ(t1〜t3)が小さ過ぎて、貫通孔の打ち抜き加工時に円筒刃の刃欠けが発生した。