図1および図2は、本発明に係るエンジンの始動装置を有する4サイクル火花点火式エンジンの概略構成を示している。このエンジンには、シリンダヘッド10およびシリンダブロック11を有するエンジン本体1と、エンジン制御用のECU2とを備えている。上記エンジン本体1には、四つの気筒12A〜12Dが設けられるとともに、各気筒12A〜12Dの内部には、クランク軸3に連結されたピストン13が嵌挿されることにより、その上方に燃焼室14が形成されている。
上記各気筒12A〜12Dの燃焼室14の頂部には、プラグ先端が燃焼室14内に臨むように点火プラグ15が設置されている。また、上記燃焼室14の側方には、燃焼室14内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁16が設けられている。この燃料噴射弁16は、図外のニードル弁およびソレノイドを内蔵し、上記ECU2から入力されたパルス信号のパルス幅に対応する時間だけ駆動されて開弁し、その開弁時間に応じた量の燃料を上記点火プラグ15の電極付近に向けて噴射するように構成されている。
また、上記各気筒12A〜12Dの燃焼室14の上部には、燃焼室14に向かって開口する吸気ポート17および排気ポート18が設けられるとともに、これらのポート17,18に、吸気弁19および排気弁20がそれぞれ装備されている。上記吸気弁19および排気弁20は、図示を省略したカムシャフト等を有する動弁機構によって駆動されることにより、各気筒12A〜12Dが所定の位相差をもって燃焼サイクルを行うように各気筒12A〜12Dの吸・排気弁19,20の開閉タイミングが設定されている。
上記吸気ポート17および排気ポート18には、吸気通路21および排気通路22が接続されている。上記吸気ポート17に近い吸気通路21の下流側は、図2に示すように、各気筒12A〜12Dに対応して独立した分岐吸気通路21aとされ、この各分岐吸気通路21aの上流端がそれぞれサージタンク21bに連通している。このサージタンク21bよりも上流側には共通吸気通路21cが設けられるとともに、この共通吸気通路21cには、アクチュエータ24により駆動されるスロットル弁23からなる吸気流量調節手段が配設されている。このスロットル弁23の上流側および下流側には、それぞれ吸気流量を検出するエアフローセンサ25と、吸気圧力(ブースト圧)を検出する吸気圧センサ26とが配設されている。
また、各気筒12A〜12Dからの排気が集合する排気通路22の集合部下流には、排気ガス浄化触媒37が配設されている。この排気ガス浄化触媒37は、例えば、排気の空燃比状態が理論空燃比の近傍にあるときにHC、COおよびNOxの浄化率が極めて高い三元触媒により構成され、排気ガス中の酸素濃度が比較的高い酸素過剰雰囲気で酸素を吸蔵し、酸素濃度の比較的低いときに吸蔵している酸素を放出してHC、CO等と反応させる機能を有している。図2において、38は上記排気通路22に導出された排気ガスを吸気通路21に還流する排気還流通路であり、この排気還流通路38には排気ガスの還流量を調節するためのEGR弁39が設けられている。
上記エンジン本体1には、タイミングベルト等によりクランク軸3に連結されたオルタネータ(発電機)28が付設されている。このオルタネータ28は、図示を省略したフィールドコイルの電流を制御して出力電圧を調節することにより目標発電電流を調整するレギュレータ回路28aを内蔵し、このレギュレータ回路28aに入力される上記ECU2の出力信号に基づき、通常時に車両の電気負荷および車載バッテリーの電圧等に対応した目標発電電流の制御が実行されるように構成されている。
さらに、上記エンジンには、クランク軸3の回転角を検出する2つのクランク角センサ30,31が設けられ、一方のクランク角センサ30から出力される検出信号に基づいてエンジンの回転速度が検出されるとともに、後述するように上記両クランク角センサ30,31から出力される位相のずれた検出信号に基づき、クランク軸3の回転方向および回転角度が検出されるようになっている。
また、カムシャフトに設けられた気筒識別用の特定回転位置を検出するカム角センサ32と、エンジンの冷却水温度を検出する水温センサ33と、運転者のアクセル操作量に対応したアクセル開度を検出するアクセルセンサ34と、運転者がブレーキ操作を行ったことを検出するブレーキセンサ35からそれぞれ出力される各検出信号がECU2に入力されるようになっている。
そして、ECU2には、上記各センサ25,26,30〜35からの検出信号を受け、燃料噴射弁16に対して燃料の噴射量および噴射時期を制御するための制御信号を出力するとともに、点火プラグ15に付設された点火装置27に対して点火時期を制御することにより、エンジンの運転状態に対応した燃焼制御を実行する燃焼制御手段41と、上記スロットル弁23のアクチュエータ24に対してスロットル開度を制御するための制御信号を出力して吸気流量を制御する吸気流量制御手段42と、車両の減速走行時に燃料噴射を停止する減速燃料カット制御手段43とが設けられている。
また、上記ECU2には、予め設定されたエンジンの自動停止条件が成立したときに各気筒12A〜12Dへの燃料噴射を所定のタイミングで停止(燃料カット)して、エンジンを自動的に停止させるとともに、その後に運転者によるアクセル操作が行われる等により再始動条件が成立したときにエンジンを自動的に再始動させる制御を実行する自動停止制御手段44と、オルタネータ28の目標発電電流を設定する発電電流制御手段45と、上記EGR弁39を駆動して排気還流通路38を開閉する排気還流制御手段46とが設けられている。
上記燃焼制御手段41および吸気流量制御手段42は、気筒12A〜12D内の空燃比を運転状態に対応した値に設定した燃焼制御を実行するように構成されている。また、上記減速燃料カット制御手段43は、車両の減速走行状態でエンジン回転速度が、例えば1100rpm程度以上である場合に、燃料噴射を停止することにより減速燃料カット制御を実行するとともに、エンジン回転速度が900rpm程度に低下した時点で、上記自動停止制御手段44によりエンジンの自動停止制御を実行する場合を除き、減速燃料カット制御を停止して燃料噴射を再開するように構成されている。
上記自動停止制御手段44は、エンジンの自動停止時に圧縮行程の途中でピストン13が停止した圧縮行程気筒で初回の燃焼を行わせることにより、そのピストン13を押し下げてクランク軸3を少しだけ逆転させ、エンジンの自動停止時に膨張行程の途中でピストン13が停止した膨張行程気筒のピストン13を一旦上昇させて、その気筒内の混合気を圧縮した状態で、この混合気に点火して燃焼させることにより、クランク軸3に正転方向の駆動トルクを与えてエンジンを再始動させる制御を実行するように構成されている。
上記のようにして再始動モータ等を使用することなく、特定の気筒に噴射された燃料に点火してエンジンを適正に再始動させるためには、上記膨張行程気筒の混合気を燃焼させることにより得られる燃焼エネルギーを充分に確保し、これに続いて圧縮上死点を迎える気筒がその圧縮反力に打ち勝って圧縮上死点を超えるようにしなければならない。したがって、エンジンの自動停止時にピストン13が膨張行程の途中にある上記膨張行程気筒内に充分な空気量を確保しておく必要がある。
すなわち、図3(a),(b)に示すように、エンジンの停止時点で膨張行程および圧縮行程になる気筒では、それぞれ位相が180°CAだけずれているため、各ピストン13が互いに逆方向に作動し、膨張行程気筒のピストン13が行程中央よりも下死点側に位置していれば、その気筒の空気量が多くなって充分な燃焼エネルギーが得られる。しかし、上記膨張行程気筒のピストン13が極端に下死点側に位置した状態となると、圧縮行程気筒内の空気量が少なくなり過ぎてクランク軸3を逆転させるための燃焼エネルギーが充分に得られなくなる。
これに対して上記膨張行程気筒の行程中央、つまり圧縮上死点後のクランク角が90°CAとなる位置よりもやや下死点側の所定範囲、例えば圧縮上死点後のクランク角が100°〜120°CAとなる適正範囲R内にピストン13を停止させることができれば、圧縮行程気筒内に所定量の空気が確保されて上記初回の燃焼によりクランク軸3を少しだけ逆転させ得る程度の燃焼エネルギーが得られることになる。しかも、膨張行程気筒内に多くの空気量を確保することにより、クランク軸3を正転させるための燃焼エネルギーが充分に得られてエンジンを確実に再始動させることができる。
そこで、この実施形態では、ECU2に設けられた上記自動停止制御手段44においてエンジンの自動停止制御を実行することが可能な状態にあると判定され、かつエンジンの回転速度が、エンジンを自動停止させないときの通常のアイドル回転速度よりも高い状態にあることが確認された時点でエンジンの自動停止制御を実行するように構成されている。例えば、通常のアイドル回転速度が650rpm(自動変速機がドライブレンジ)に設定されたエンジンにおいて、エンジン回転速度の目標値を860rpm程度(自動変速機はニュートラルレンジ)に設定することにより、図4に示すように、エンジンの回転速度Neが目標値以上となった時点t1で燃料噴射を停止させてエンジンの回転速度Neを低下させるように構成されている。
また、エンジンを自動停止させる制御動作の初期段階である上記燃料噴射の停止時点t1でスロットル弁23の開度Kを、例えば全開の30%程度の開度に増大させてブースト圧(吸気圧力)Btを上昇させることにより、エンジンの各気筒12A〜12Dに吸入される吸気流量を、エンジン運転の継続に必要な最小限の吸気流量よりも所定量だけ多い状態に設定してエンジンの掃気性を確保する制御が上記吸気流量制御手段42において実行されるとともに、上記燃料噴射の停止時点t1でオルタネータ28の目標発電電流Geを低下させることにより、クランク軸3の回転抵抗を低減する制御が上記発電電流制御手段45において実行されるように構成されている。
また、上記の時点t1で燃料噴射を停止することにより、エンジンの回転速度Neが、予め設定された基準速度N2(例えば790rpm)以下に低下したことが確認された時点t2で、上記スロットル弁23の開度Kを0%に設定してスロットル弁23を閉止する。このスロットル弁23が閉止された時点t2からブースト圧Btが低下し始めてエンジンの各気筒12A〜12Dに導入される吸気流量が減少し、上記スロットル弁23の開放時点t1から閉止時点t2までの間に共通吸気通路21cに導入された空気が、サージタンク21bおよび分岐吸気通路21aを経由することにより、吸気行程を迎える第4気筒12D、第2気筒12B、第1気筒12Aおよび第3気筒12Cの順に所定の輸送遅れをもって導入される。そして、上記吸気の輸送遅れを考慮してスロットル弁23の開放時点t1および閉止時点t2を適正時期に設定することにより、エンジンの停止時に圧縮行程となる第3気筒12Cよりも多くの空気が膨張行程となる第1気筒12Aに導入されることになる。
また、エンジンの回転速度Neが上記基準速度N2以下に低下したことが確認された時点t2で、オルタネータ28の目標発電電流Geを一時的に増大させ、かつ後述するようにエンジンの上死点回転速度neが所定範囲内となった時点t3で、オルタネータ28の目標発電電流Geをエンジン回転速度Neの低下度合に対応した値に調節することにより、予め行った実験結果等に基づいて設定された基準ラインに沿ってエンジンの回転速度Neを低下させる制御を実行するように構成されている。
上記のようにエンジンを自動停止させる際に、燃料噴射の停止時点t1から、クランク軸3やフライホイール等が有する運動エネルギーが摩擦抵抗による機械的な損失や、各気筒12A〜12Dのポンプ仕事によって消費されることにより、エンジンのクランク軸3は惰性で数回転し、4気筒4サイクルのエンジンでは10回前後の圧縮上死点を迎えた後に停止する。具体的には、図4に示すように、上記各気筒12A〜12Dが圧縮上死点を迎える度にエンジンの回転速度Neが一時的に落ち込んだ後に、圧縮上死点を超えた時点で再び上昇するというアップダウンを繰り返しながらエンジン回転速度Neが次第に低下する。
そして、エンジンの停止前に最後の圧縮上死点を超えた時点t5の後に圧縮上死点を迎える気筒12Cでは、慣性力によるピストン13の上昇に伴って空気圧が高まり、その圧縮反力によりピストン13が押し返されてクランク軸3が逆転する。このクランク軸3の逆転により、エンジンの停止時に膨張行程となる膨張行程気筒12Aの空気圧が上昇するため、その圧縮反力に応じて膨張行程気筒12Aのピストン13が下死点側に押し返されてクランク軸3が再び正転し始め、このクランク軸3の逆転と正転とが数回繰り返されてピストン13が往復作動した後に停止することになる。このピストン13の停止位置は、上記圧縮行程気筒12Cおよび膨張行程気筒12Aにおける圧縮反力のバランスにより略決定されるとともに、エンジンの摩擦抵抗等の影響を受け、上記最後の圧縮上死点を超えた時点t5におけるエンジンの回転慣性、つまりエンジン回転速度Neの高低によっても変化する。
したがって、エンジンが自動停止する際に膨張行程にある膨張行程気筒12Aのピストン13を再始動に適した上記適正範囲R内に停止させるためには、まず膨張行程気筒12Aおよび圧縮行程気筒12Cの圧縮反力がそれぞれ充分に大きくなり、かつ膨張行程気筒12Aの圧縮反力が圧縮行程気筒12Cの圧縮反力よりも所定値以上大きくなるように、両気筒12A,12Cに対する吸気流量を調節する必要がある。このために、当実施形態では、燃料噴射の停止時点t1でスロットル弁23の開度Kを大きな値に設定することにより、上記膨張行程気筒12Aおよび圧縮行程気筒12Cの両方に所定量の空気を吸入させた後、エンジンの回転速度Neが予め設定された基準速度N2(例えば790rpm)以下に低下したことが確認された時点t2で、上記スロットル弁23を閉止してその開度Kを低減することにより上記吸入空気量を調節するようにしている。
すなわち、図5は、上記のようにエンジンの回転速度Neが所定速度となった時点t1で燃料噴射を停止し、その後の所定期間に亘りスロットル弁23を開弁状態に維持するようにして、惰性により回転するエンジンの各気筒12A〜12Dに設けられたピストン13が圧縮上死点を通過する際の上死点回転速度neを計測するとともに、エンジンの停止時点における膨張行程気筒12Aのピストン位置を調べ、このピストン位置を縦軸に取るとともに、上記エンジンの上死点回転速度neを横軸に取って、両者の関係をグラフ化したものである。この作業を繰り返してエンジンの停止動作期間中における上記上死点回転速度neと、膨張行程気筒12Aにおけるピストン停止位置との相関関係を示す分布図が得られることになる。
上記の分布図から、エンジンの停止動作期間中における上死点回転速度neと膨張行程気筒12Aにおけるピストン停止位置との間に所定の相関関係が見られ、図5に示す例では、エンジンが停止状態となる前の6番目〜2番目における上死点回転速度neがハッチングで示す範囲内にあれば、上記ピストン13の停止位置がエンジンの再始動に適した範囲R(圧縮上死点後の100°〜120°CA)に入ることが分かる。特に、エンジンが停止状態となる前の2番目の上死点回転速度neについてみれば、図6に示すように、上記上死点回転速度neが略280rpm〜380rpmの範囲内にあるとともに、約320rpmを境にしてそれ以下の低回転側では、上記上死点回転速度neが低下するのに伴ってピストン停止位置が徐々に上死点寄りに変化している。一方、上記上死点回転速度neが320rpm以上の高回転側では、この上死点回転速度neの高低に拘わらず、ピストン13の停止位置が概ね一定になり、略適正範囲R内に入ることが分かる。
上記のような特徴的な分布傾向が見られるのは、エンジンの上死点回転速度neが320rpm以上の高回転側にあると、エンジン停止時の膨張行程気筒12Aおよび圧縮行程気筒12Cにそれぞれ充分な量の空気が充填され、この空気の圧縮反力によってピストン停止位置が行程の中央寄りに集中するためであると考えられる。なお、上記320rpm以下の低回転側でピストン停止位置が左下がりの分布状態となるのは、各気筒内12A〜12Dで往復動するピストン13が圧縮上死点側で反転した後、摩擦抵抗等により減速されて行程中央まで戻ることができずに停止するためであると考えられる。
一方、燃料噴射の停止後にスロットル弁23を開放操作することなく、これを閉止状態に維持した場合には、図6に破線で示すように、一様な右肩上がりの分布状態となり、エンジンの上死点回転速度neの高低に応じてピストン13の停止位置が変化することになる。これは、スロットル弁23を閉じたままに維持すると、吸気負圧が大きい(吸気の圧力が低い)状態に維持され、エンジンの停止後に膨張行程気筒12Aおよび圧縮行程気筒12Cになる気筒の圧縮反力が小さくなるために、エンジンの回転速度(回転慣性)と摩擦抵抗との影響が相対的に大きくなるからである。
したがって、上記回転慣性および摩擦抵抗の影響を抑制しつつ、エンジンの掃気性を充分に確保するために、図4に示すように、燃料噴射を停止した時点t1から所定時間が経過するまで、つまりエンジン回転速度Neが基準速度(例えば790rpm程度)N2以下に低下する時点t2までは、スロットル弁23の開度Kを比較的大きな値(例えば全開の30%の開度)に設定する必要がある。また、上記ピストン13を適正位置に停止させる制御が可能な速度にエンジンの回転速度Neを維持するために、上記燃料噴射の停止時点t1でオルタネータ28の目標発電電流Geを、例えば0に設定することが好ましい。
そして、エンジン回転速度Neが基準速度N2以下に低下した時点t2で、上記スロットル弁23の開度Kを低減するとともに、オルタネータ28の目標発電電流Geを予め設定された初期値に上昇させる制御を実行した後、エンジンの上死点回転速度neが所定範囲内になった時点t3で、上記オルタネータ28の目標発電電流Geをエンジン回転速度Neの低下状態に対応した値に低下させてクランク軸3の回転抵抗を調節し、エンジンの外部負荷をエンジン回転速度Neの低下度合に対応させて変化させることにより、予め行った実験等に基づいて設定された基準ラインに沿ってエンジン回転速度Neを低下させることが可能となる。
具体的には、上記基準ラインに沿ってエンジンの回転速度Neが低下している過程でエンジンの上死点回転速度neを検出し、この上死点回転速度neが、例えば480rpm〜540rpm内にあると判定されることにより、エンジンが停止状態となる前の4番目の圧縮上死点を通過した状態にあることが確認された時点t3の上死点回転速度neに基づき、図7に示すように、エンジンの上死点回転速度neが高い程、目標発電電流Geが大きな値に設定されたマップから、上記上死点回転速度neの検出値に対応した目標発電電流Geを読み出し、この値に対応したオルタネータ28の目標発電電流Geするように構成されている。
また、エンジン回転速度Neが基準N2速度以下に低下した時点t2でオルタネータ28の目標発電電流Geを上昇させる際の初期値は、上記マップから読み出される目標発電電流Geの最大値よりも大きな値に設定され、上記の時点t2において初期値に上昇させた目標発電電流Geを上記の時点t3で低下させることにより、上記上死点回転速度neの検出値に基づいてオルタネータ28の目標発電電流Geを制御するように構成されている。例えば、上記マップから読み出される目標発電電流Geが0〜50Aに設定されている場合には、その最大値である50Aよりも高い値、例えば60Aに上記初期値が設定されている。そして、上記の時点t2で目標発電電流Geが60Aに設定された後、上記の時点t3でマップから読み出された値に基づいて上記目標発電電流Geの低下量が設定され、この値に基づいてオルタネータ28の目標発電電流を低下させる制御が実行されるようになっている。
上記のようにしてオルタネータ28の発電電流の制御が実行されることにより、通常の運転状態では、最後の圧縮上死点を通過した時点t5で、クランク軸3、フライホイール、ピストン13およびコネクティングロッド等が有する運動エネルギーや圧縮行程気筒12Cで圧縮された空気が有する位置エネルギー等が、その後に作用する摩擦抵抗損失等と見合うものとなり、エンジンの停止状態で膨張行程となる気筒12Aのピストン13をエンジンの再始動に適した範囲R内に停止させることが可能になる。
また、上記減速燃料カット制御手段43による燃料カット制御の実行中に、自動停止制御手段44においてエンジンの自動停止条件が成立したと判定された場合には、原則として燃料噴射を復帰させることなく、スロットル弁23の開度、オルタネータ28の発電電流およびEGR弁39の開度を制御することにより、エンジンの停止時に膨張行程になる気筒12Aのピストン13をエンジンの再始動に適した位置に停止させるエンジンの自動停止制御を実行するように構成されている。
すなわち、車両の減速走行時に、図8に示すように、エンジン回転速度Neが一定値(例えば1100rpm)以上の状態にあると判定された時点t0で、燃料噴射を停止する減速燃料カット制御を実行するとともに、この減速燃料カット制御の実行中に排気ガス浄化触媒37の温度が予め設定された基準温度よりも低いか否かを判定し、低いことが確認された場合には、EGR弁39の開度Eを全開に設定して排気還流通路38を開放状態するとともに、スロットル弁23の開度Kを0%に設定して吸気流量を減少させることにより、排気通路22に導出された低温の空気を吸気通路21に環流させる制御を実行する。
そして、エンジンの回転速度Neが、例えば900rpm以下に低下した時点t1′で、排気ガス浄化触媒37の温度が活性温度以上の状態にあるか否かを判定し、活性化温度以上であることが確認された場合には、上記EGR弁39の開度Eを全閉に設定して排気還流通路38を閉止状態するとともに、スロットル弁23の開度Kを30%に設定して吸気流量を増大させ、かつ所定のタイミングt2でスロットル弁23の開度Kを0%に設定することにより、エンジンの停止状態で膨張行程となる気筒12Aのピストン13をエンジンの再始動に適した範囲R内に停止させる制御が上記自動停止制御手段44において実行されるようになっている。
上記ECU2の自動停止制御手段によりエンジンを自動停止させる際の制御動作を、図9〜図11に示すフローチャートに基づいて説明する。この制御動作がスタートすると、エンジンの自動停止制御を実行することが可能な運転状態にあるか否かを示す自動停止許可フラグFがONであるか否かを判定する(ステップS1)。この自動停止許可フラグFは、車速が所定値(例えば10km/h)以上、操舵角が所定値以下、バッテリー電圧が基準値以上、かつエアコンがOFF状態にある等の条件が全て満たされている場合に、エンジンの自動停止制御を実行することが可能な状態にあると判断してON状態となるように設定されている。
上記ステップS1でYESと判定された場合には、アクセルセンサ34がOFF状態であるか否かを判定し(ステップS2)、YESと判定されて車両が所定の減速状態にあることが確認された場合には、エンジン回転速度Neが、予め1100rpm程度に設定された減速時燃料カット用の判断基準値FC・ONよりも大きいか否かを判定し(ステップS3)、NOと判定された場合には、ブレーキセンサ35がON状態にあるか否かを判定し(ステップS4)、NOと判定された場合には、ステップS1にリターンする。
上記ステップS4でYESと判定されてブレーキセンサ35がON状態にあることが確認された場合には、エンジン回転速度の目標値N1を、通常のアイドル回転速度(650rpm)よりも所定量だけ高い値、例えば860rpmに設定した後(ステップS5)、エンジン回転速度Neが上記目標値N1以上で安定した状態にあるか否かを判定する(ステップS6)。このステップS6でNOと判定された場合には、ステップS1にリターンして上記制御動作を繰り返す。
上記ステップS6でYESと判定され、エンジン回転速度Neが上記目標値N1以上で安定した状態にあることが確認された時点t1で、エンジンの掃気性を向上させるためにEGR通路に設けられたEGR弁38を閉止して排気還流通路39を閉止状態とするとともに(ステップS7)、自動変速機のシフトレンジをニュートラルに設定して無負荷状態とし(ステップS8)、かつ燃料噴射を停止することによりエンジンの自動停止制御を開始する(ステップS9)。
また、オルタネータ28の目標発電電流Geを0に設定して発電を停止させるとともに(ステップS10)、スロットル弁23を開弁して、その開度Kを例えば30%程度に設定する(ステップS11)。その後、上記ステップS9で燃料噴射が停止された時点t1から所定時間が経過したか否か、つまり燃料噴射の停止後に2回の圧縮上死点を迎えてその前に噴射された燃料の燃焼が終了したか否かを判定し(ステップS12)、YESと判定された時点で上記点火装置27による点火を停止させた後に(ステップS13)、下記ステップS31に移行する。
上記のようにステップS1で車速が10km/hよりも大きい走行時にあってエンジンの自動停止許可フラグFがON状態にあることが確認されるとともに、ステップS2で車両が減速状態(ブレーキセンサ35がON状態)にあることが確認された場合に、エンジンの目標回転速度N1をエンジンの燃焼状態に対応した所定値として安定させる制御を実行するように構成したため、エンジン回転速度Neが通常のアイドル回転速度(650rpm)に低下する前に、エンジンの自動停止制御が実行されることになる。
また、上記ステップS3でYESと判定されてエンジン回転速度Neが上記減速時燃料カット用の判断基準値FC・ONよりも大きいことが確認された場合には、この時点t0で減速時の燃料カット(FC)を実行するとともに(ステップS14)、排気ガス浄化触媒37の温度が、例えば活性温度よりも所定値だけ高い値(排気ガス浄化触媒37が充分な活性化状態にある温度)に予め設定された基準温度T1以下であるか否かを判定する(ステップS15)。このステップS15でYESと判定された場合には、EGR弁39の開度Eを全開に設定して排気還流通路38を開放状態するとともに、スロットル弁23の開度Kを0%に設定して吸気流量を減少させる(ステップS16)。これにより各気筒12A〜12Dから排気通路22に導出された空気が各気筒12A〜12Dに環流されて次第に暖められることになる。
また、上記ステップS15でNOと判定されて排気ガス浄化触媒37の温度が上記基準温度よりも高いことが確認された場合には、EGR弁39の開度Eを全閉に設定して排気還流通路38を閉放状態するとともに、スロットル弁23の開度Kを30%に設定して吸気流量を増大させる(ステップS17)。これにより吸気通路21から各気筒12A〜12Dに導入された低温の空気が、そのまま排気通路22を介して排気ガス浄化触媒37の設置部に導出されることになる。
次いで、エンジン回転速度Neが、予め900rpm程度に設定された燃料復帰用の判断基準値FC・OFF以下に低下したか否かを判定し(ステップS18)、NOと判定された場合には、アクセルセンサ34がON状態となったか否かを判定する(ステップS19)。このステップS19でYESと判定された場合には、上記EGR弁39の開度Eを全閉に設定するとともに(ステップS20)、減速時の燃料カット(FC)制御を終了した後に(ステップS21)、リターンする。
また、上記ステップS18でYESと判定されてエンジン回転速度Neが、予め900rpm程度に設定された燃料復帰用の判断基準値FC・OFF以下に低下したことが確認された場合には、ブレーキセンサ35がON状態に継続されているか否かを判定し(ステップS22)、NOと判定された場合には、上記ステップS20に移行してEGR弁39の開度Eを全閉に設定した後に、減速時の燃料カット(FC)制御を終了する。
上記ステップS22でYESと判定されてブレーキセンサ35がON状態に継続されていることが確認された場合には、排気ガス浄化触媒37が活性化温度に対応した温度T0以上であるか否かを判定し(ステップS23)、NOと判定された場合には、気筒内の空燃比を理論空燃比(λ=1)に設定して燃料噴射を復帰させることにより燃料カット(FC)制御を終了するとともに(ステップS24)、点火時期を所定量だけリタードさせた後(ステップS25)、上記ステップS1にリターンする。
なお、上記ステップS23でNOと判定され、減速燃料カット制御の実行中に排気ガス浄化触媒37の温度が活性化温度に対応した値T0よりも低いことが確認された場合に、気筒12A〜12D内の空燃比を理論空燃比ないし理論空燃比よりもリッチに設定して燃料噴射を復帰させるとともに、排気還流通路38を閉止状態とするように構成してもよい。この構成によれば、各気筒12A〜12D内に導入される新気量を充分に確保することにより、失火を生じることなく点火時期を充分にリタードさせることができるため、排気ガスの温度を、より効果的に上昇させて排気ガス浄化触媒37を迅速に活性化できるという利点がある。
そして、上記ステップS23でYESと判定されて排気ガス浄化触媒37が活性化温度に対応した温度T0以上であることが確認された場合には、自動変速機のシフトレンジをニュートラルに設定して無負荷状態とするとともに(ステップS26)、オルタネータ28の目標発電電流Geを0に設定して発電を停止させる(ステップS27)。また、上記EGR弁38を閉止して排気還流通路39を閉止状態とするとともに(ステップS28)、スロットル弁23を開弁して、その開度Kを例えば30%程度に設定した後(ステップS29)、下記ステップS31に移行する。
そして、エンジンの回転速度Neが予め790rpm程度に設定された基準速度N2以下となったか否かを判定することにより(ステップS31)、燃料噴射が停止されることによってエンジンの回転速度Neが低下し始めたか否かを判定し、YESと判定された時点t2で、スロットル弁23を閉止状態としてその開度Kを0%とする(ステップS32)。この結果、上記ステップS11,S29でスロットル弁23が開放されて大気圧に近付くように上昇したブースト圧Btが、スロットル弁23の閉止操作に応じて所定の時間差をもって低下し始めることになる。
また、オルタネータ28の目標発電電流Geを予め60A程度に設定された初期値に設定してオルタネータ28を作動させる発電制御を開始する(ステップS33)。なお、上記ステップS31でエンジンの回転速度Neが基準速度N2以下となったと判定された時点t2でスロットル弁23を閉弁状態とするように構成された上記実施形態に代え、エンジンの上死点回転速度neが、例えば790rpm程度に設定された基準速度N2以下になったと判定された時点で、スロットル弁23を閉弁状態とするとともに、オルタネータ28の発電制御を開始するように構成してもよい。
次に、エンジンの上死点回転速度neが第1所定範囲内にあるか否かを判定する(ステップS34)。この第1所定範囲は、予め設定された基準ラインに沿ってエンジンの回転速度Neが低下している過程で、例えばエンジンが停止状態となる前の4番目の圧縮上死点を通過する時点t3における上死点回転速度neに基づいて設定された値であり、具体的には480rpm〜540rpmの範囲内に設定されている。
上記ステップS33でYESと判定され、エンジンの上死点回転速度neが上記所定範囲(480rpm〜540rpm)内にあることが確認された場合には、その時点t3の上死点回転速度neに対応したオルタネータ28の目標発電電流Geを設定する(ステップS35)。すなわち、図7に示すように、エンジンの上死点回転速度neが高い程、目標発電電流Geが大きな値に設定されたマップから上死点回転速度neに対応した目標発電電流Geを読み出し、この値に基づいてオルタネータ28の目標発電電流Geを上記初期値(60A)から、上記マップから読み出された値に低下させる制御を実行する。
次いで、エンジンの上死点回転速度neが、エンジン停止前の2番目の圧縮上死点を通過する時点t4における上死点回転速度neに基づいて設定された第2所定範囲内、例えば260rpm〜400rpmの範囲内にあるか否かを判定する(ステップS36)。このステップS36でYESと判定され、エンジン停止前の2番目の圧縮上死点を通過したことが確認された時点t4で、エンジンの上死点回転速度neが高い程、燃料噴射量が大きな値に設定された図外のマップから、エンジンの停止時に圧縮行程となる気筒12Cに対する燃料噴射量を設定し、この気筒12Cの圧縮行程後半で燃料噴射を行う(ステップS37)。この気筒12Cに噴射された燃料が気化することによって気筒内温度が低下し、その内部圧力の上昇が抑制されることになる。
そして、エンジンの上死点回転速度neが所定値N3以下であるか否かを判定する(ステップS38)。この所定値N3は、予め設定された基準ラインに沿ってエンジンの回転速度Neが低下している過程で最後の圧縮上死点を超える際の上死点回転速度neに対応した値であり、例えば260rpm程度に設定されている。また、各気筒12A〜12Dが順次圧縮上死点を通過する各時点のブースト圧Btが検知され、その値が記憶される。
上記ステップS38でYESと判定されてエンジンの上死点回転速度neが上記所定値N3以下になったこと、つまりエンジンが最後の圧縮上死点を通過したことが確認された場合には、この時点t5で、その1回前の圧縮上死点を通過する際のブースト圧Btを読み出し、この値をエンジン停止前の2番目の圧縮上死点(TDC)におけるブースト圧Btとして設定する(ステップS39)。
そして、エンジンが最後の圧縮上死点を迎える時点t5における上死点回転速度ne(以下、最終上死点回転速度ne1という)と、エンジン停止前の2番目の圧縮上死点におけるブースト圧Bt(以下、ブースト圧Bt2という)とに基づき、ピストン13が各行程の後期寄り位置(膨張行程気筒12Aでは下死点寄りの位置)で停止する傾向があるか否かを判定する(ステップS40)。具体的には、最終上死点回転速度ne1が所定回転速度N4(例えばN4=200rpm)以上であり、かつ上記ブースト圧Bt2が所定圧力P2(例えばP2=−200mmHg)以下であるとき(真空側であるとき)に、上記行程の後期寄りの位置で停止する傾向が大きい、つまり膨張行程気筒12Aにおけるピストン停止位置が、圧縮上死点後100°〜120°CAとなる適正範囲Rに対して120°CAに近い位置で停止する傾向が大きいため、上記ステップS339でYESと判定される。
上記ステップS40でNOと判定された場合には、エンジンが上記のように行程の後期寄りの位置で停止する傾向が顕著ではなく、行程の比較的に前期寄りの位置、つまり膨張行程気筒12Aにおけるピストン停止位置が、圧縮上死点後100°〜120°CAとなる適正範囲Rに対して100°CAに近い位置または100°CA以下で停止する可能性がある。そこで、ピストン13を上記適正範囲R内により確実に停止させるために、スロットル弁23を開放操作する。例えばスロットル弁23の開度Kを、全開の40%程度に設定された第1開度K1とするようにスロットル弁23を開弁し(ステップS41)、吸気流量を増加させることにより、吸気行程気筒12Dの吸気抵抗を減少させる。この結果、エンジンが行程の後期寄りの位置で停止し易くなり、結果的に膨張行程気筒12Aにおけるピストン13の停止位置が適正範囲R内の下限(100°CA)を超えることが防止されることになる。
一方、上記ステップS40でYESと判定された場合には、エンジンの回転慣性が大きいとともに、圧縮行程気筒12Cへの最終吸気行程における吸気流量が少なく、その圧縮反力が小さい状態にあって、ピストン13が行程の後期寄りの位置で停止し易い条件が既に揃っている。そこで、スロットル弁23の開度Kを、例えば5%程度に設定された第2開度K2とするようにスロットル弁23を操作する(ステップS42)。上記第2開度K2は、エンジンの特性等に応じ、さらに小開度、あるいは閉止状態としてもよい。このようにして吸気行程気筒12Dに適度の吸気抵抗が生じ、ピストン13の停止位置が上記適正範囲Rを超えてさらに後期側となるという事態の発生が効果的に防止される。
次いで、エンジンが停止状態になったか否かを判定し(ステップS43)、YESと判定された時点で、自動変速機のシフトレンジをニュートラル状態からドライブ状態(Dレンジ)に復帰させるとともに(ステップS44)、自動停止許可フラグFをOFFとした後に(ステップS45)、制御動作を終了する。
上記のようにして自動停止状態となったエンジンを再始動させる際の制御動作を図12〜図14に示すフローチャートと、図15および図16に示すタイムチャートとに基づいて説明する。まず、所定のエンジン再始動条件が成立したか否かを判定し(ステップS101)、YESと判定された場合、例えば、停車状態から発進のためのアクセル操作等が行われた場合、バッテリー電圧が低下した場合、あるいはエアコンが作動した場合等には、エンジン水温、自動停止からの経過時間、吸気温度等に基づいて筒内温度を推定する(ステップS102)。
そして、エンジンの自動停止時に検出されたピストン13の停止位置に基づき、圧縮行程気筒12Cおよび膨張行程気筒12A内の空気量を算出する(ステップS103)。つまり、上記ピストン13の停止位置から圧縮行程気筒12Cおよび膨張行程気筒12Aの燃焼室容積が求められる。なお、エンジンの自動停止時には、燃料噴射の停止後にエンジンが数回転してから停止するので膨張行程気筒12Aも新気で満たされた状態にあり、かつ、エンジン停止中に圧縮行程気筒12Cおよび膨張行程気筒12Aの内部が略大気圧となっているので、上記燃焼室容積から新気量が求められることになる。
次に、上記クランク角センサ30,31の出力信号に応じて検出されたピストン13の停止位置が、圧縮行程気筒12Cにおける適正停止範囲R(上死点前BTDC60°CA〜80°CA)のうち、下死点BDC寄りにあるか否が判定される(ステップS104)。このステップS104でYESと判定され、圧縮行程気筒12C内の空気量が比較的に多いことが確認された場合には、上記ステップS103で算出された圧縮行程気筒12Cの空気量に対し、λ(空気過剰率)>1なる空燃比(例えば空燃比=20程度)となるように1回目の燃料噴射を行う(ステップS105)。この空燃比は、ピストン13の停止位置に応じて予め設定された圧縮行程気筒12Cの1回目用第1空燃比マップM1から求められ、λ>1というリーン空燃比に設定される。これにより、圧縮行程気筒12C内の空気量が比較的多いときであっても、逆転のための燃焼エネルギーが過多となることが防止される。
一方、上記ステップS104でNOと判定され、圧縮行程気筒12C内の空気量が比較的に少ないときは、上記ステップS103で算出された圧縮行程気筒12Cの空気量に対してλ≦1なる空燃比となるように1回目の燃料噴射を行う(ステップS106)。この空燃比は、ピストン13の停止位置に応じて予め設定された圧縮行程気筒12Cの1回目用第2空燃比マップM2から求められ、λ≦1(理論空燃比ないしはそれよりリッチ空燃比)に設定されることにより、圧縮行程気筒12C内の空気量が少ないときであっても、逆転のための燃焼エネルギーが充分に得られるようになっている。
次に、圧縮行程気筒12Cへの1回目燃料噴射から気化時間を考慮して設定した所定時間の経過後に、当該気筒12Cに対して点火を行う(ステップS107)。そして、点火後の一定時間内にクランク角センサ30,31のエッジ、つまりクランク角信号の立ち上がり、または立ち下がりが検出されたか否かにより、ピストン13が動いたか否かを判定し(ステップS108)、NOと判定されて失火が生じてピストン13が動かなかったことが確認された場合には、圧縮行程気筒12Cに対して再点火を行う(ステップS109)。
上記ステップS108でYESと判定されてピストン13が動いたことが確認されると、ピストン13の停止位置および上記ステップS102で推定した筒内温度に基づいて、膨張行程気筒12Aに対する分割燃料噴射の分割比(1回目の前段噴射と2回目の後段噴射との比率)を算出する(ステップS121)。上記後段の噴射比率は、膨張行程気筒12Aにおけるピストン停止位置が下死点寄りであるほど、また筒内温度が高いほど大きな値に設定される。
次に、上記ステップS103で算出した膨張行程気筒12Aの空気量に対して所定の空燃比(λ≦1)となるように燃料噴射量を算出する(ステップS122)。この際の空燃比は、ピストン13の停止位置に応じて予め設定された膨張行程気筒12A用の空燃比マップM3から求められる。また、ステップS122で算出された膨張行程気筒12Aへの燃料噴射量とステップS121で算出された分割比とに基づき、膨張行程気筒12Aに対する前段(1回目)の燃料噴射量を算出し、燃料を噴射する(ステップS123)。
次に、上記ステップS102で推定された筒内温度に基づき、膨張行程気筒12Aに対する後段(2回目)の燃料噴射時期を算出する(ステップS124)。この2回目の噴射時期は、ピストン13が上死点側への移動(エンジンの逆転)を開始した後で、気筒内の空気が圧縮されている時期であるとともに、噴射燃料の気化潜熱が圧縮圧力を効果的に減少させるように、つまりピストン13を上死点へ近付けるように設定され、かつこの2回目の噴射燃料が点火時期までに気化する時間が可及的に長くなるように設定される。
次に、ステップS122で算出された膨張行程気筒12Aへの燃料噴射量とステップS121で算出された分割比とによって、膨張行程気筒12Aに対する後段(2回目)の燃料噴射量を算出し(ステップS125)、上記ステップS124で算出された2回目の噴射時期に噴射する(ステップS126)。
上記膨張行程気筒12Aへの2回目の燃料噴射後に、所定のディレイ時間が経過した時点で点火する(ステップS127)。このディレイ時間は、ピストン13の停止位置に応じて予め設定された膨張行程気筒12A用の点火マップM4から求められる。上記点火による膨張行程気筒12Aでの初回燃焼により、エンジンは逆転から正転に転ずる。したがって、圧縮行程気筒12Cのピストン13が上死点側に移動し、気筒内のガス(上記ステップS107の点火によって燃焼した既燃ガス)が圧縮され始める。
次に、燃料の気化時間を考慮に入れ、圧縮行程気筒12Cに2回目の燃料を噴射する(ステップS128)。この際の燃料噴射量は、1回目の噴射量とを合計した噴射量に基づく全体の空燃比が可燃空燃比(下限は7〜8)よりもさらにリッチ(例えば6程度)になるように、ピストン13の停止位置に応じて予め設定された圧縮行程気筒12Cの2回目用空燃比マップM5から求められる。この圧縮行程気筒12Cにおける2回目の噴射燃料による気化潜熱に応じて、圧縮行程気筒12Cの圧縮上死点付近における圧縮圧力が低減されることにより、当該圧縮上死点を容易に越えることが可能となる。
なお、上記圧縮行程気筒12Cへの2回目の燃料噴射は、専ら筒内の圧縮圧力を低減させるためになされるものであって、これに対する点火、燃焼は行われず、可燃空燃比よりもリッチなために自着火も起こらず、この不燃燃料は、その後に排気通路22の排気ガス浄化触媒37に吸蔵されている酸素と反応して、無害化される。
上記のように圧縮行程気筒12Cにおいて2回目に噴射された燃料は燃焼しないので、膨張行程気筒12Aでの最初の燃焼に続く次の燃焼は、図15に示すように、吸気行程気筒12D、つまり停止時に吸気行程にあった第4気筒での最初の燃焼となる。この吸気行程気筒12Dのピストン13が圧縮上死点を越えるためのエネルギーとしては、膨張行程気筒12Aにおける初回燃焼のエネルギーの一部が充てられ、上記膨張行程気筒12Aにおける初回燃焼のエネルギーが、圧縮行程気筒12Cが圧縮上死点を乗り超えるためと吸気行程気筒12Dが圧縮上死点を越えるためとの両方に供される。
したがって、円滑な始動のためには吸気行程気筒12Dが圧縮上死点を越えるためのエネルギーが小さいことが望ましく、このために上記吸気行程気筒12D内の空気密度を推定し、その推定値から吸気行程気筒12Dの空気量を算定した後(ステップS140)、上記ステップS102で推定した筒内温度に基づいて、自着火を防止するための空燃比補正値を算出する(ステップS141)。すなわち自着火が起こると、その燃焼によって圧縮上死点に至る前にピストン13を下死点側に押し戻す力(逆トルク)が発生し、その分だけ圧縮上死点を越えるためのエネルギーが多く消費されるので望ましくない。そこで上記逆トルクを抑制するために空燃比をリーン側に補正し、圧縮自己着火が起こらないようにしている。
次に、上記ステップS140で算定した吸気行程気筒12Dの空気量と、上記ステップS141で算出した空燃比補正値を考慮した空燃比とに基づき、吸気行程気筒12Dへの燃料噴射量を算出する(ステップS142)。そして、上記吸気行程気筒12Dに対する燃料噴射を行うが、この燃料噴射は、その気化潜熱によって圧縮圧力が低減されるように、つまり圧縮上死点を越えるための必要エネルギーが低減されるように、圧縮行程の後期まで遅延され(ステップS143)、その遅延量は、エンジンの自動停止期間、吸気温度、エンジン水温等に基づいて算出される。
また、上記逆トルクの発生を抑制するため、点火時期を上死点以降に遅延して点火する(ステップS144)。以上の制御が実行されることにより、吸気行程気筒12Dにおいて、圧縮上死点まではその圧縮圧力が小さくなって上死点を越え易くなり、上死点を過ぎた時点で燃焼エネルギーによる正転方向のトルクが発生することになる。
上記ステップS144の後、通常の制御状態に移行してもよいが、当実施形態では、さらにエンジン回転速度の吹上がりを抑制する制御を行っている。このエンジン回転速度の吹上がりとは、吸気行程気筒12Dでの初回燃焼以降、エンジン回転速度が必要以上に急上昇することをいい、加速ショックが発生したり、運転者に違和感が与えられたりする原因となるので望ましくない。上記エンジン回転速度の吹上がりは、自動停止期間中の吸気圧力(スロットル弁23より下流の圧力)が略大気圧となっているために、始動直後(吸気行程気筒12Dでの初回燃焼以降)の各気筒12A〜12Dでの燃焼エネルギーが通常のアイドル運転時の燃焼エネルギーに比べて一時的に大きくなることにより発生する。このために下記のステップS145〜S158で、上記エンジン回転速度の吹上がりを抑制する制御を行っている。
まず、オルタネータ28の目標電流値を通常より高めに設定して発電を開始し(ステップS145)、このオルタネータ28の発電によってクランクシャフト3の回転抵抗(エンジンの外部負荷)を増大させてエンジン回転速度の吹上がりを抑制する。次に、吸気圧センサ26によって検出された吸気圧力が、エンジンの自動停止を行わない場合の通常のアイドル時における吸気圧力より高いか否かを判定し(ステップS150)、YESと判定されると、エンジン回転速度の吹上がりが起こり易い状態となっているので、スロットル弁23の開度を通常のアイドル運転時におけるスロットル開度よりもさらに小さくすることにより(ステップS151)、燃焼エネルギーの発生量を抑制する。
そして、排気通路22に設けられた排ガス浄化触媒37の温度が活性温度以下であるか否かを判定し(ステップS152)、YESと判定された場合には、気筒内の目標空燃比をλ≦1なるリッチ空燃比に設定するとともに(ステップS153)、点火時期を上死点以降に遅延させる(ステップS154)。これにより、上記触媒37の温度上昇が促進されるとともに、点火時期の遅延によって燃焼エネルギーの発生量が抑制される。
一方、上記ステップS152でNOと判定されて排気ガス浄化触媒37の温度が活性温度よりも高いことが確認された場合には、気筒内の目標空燃比をλ>1のリーン空燃比に設定して成層リーンの燃焼状態とする(ステップS158)。このリーン燃焼によって燃料の消費が抑制されつつ、燃焼エネルギーの発生量が抑制されることになる。
上記ステップS154またはステップS158を経てステップS150に戻り、このステップS150でNOと判定されてエンジンの自動停止を行わない場合の通常のアイドル時によりも吸気圧力が低下したことが確認されるまで、上記制御動作が繰り返される。このステップS150でNOと判定されると、もはやエンジン回転速度の吹上がりが生じる虞がないので、オルタネータ28の発電電流も含めて通常の制御状態に移行する(ステップS160)。
上記の再始動制御が実行されることにより、図15および図16に示すように、先ず圧縮行程気筒12C(第3気筒)において1回目の燃料噴射J3が行われ、その点火によって燃焼(図15中の(1))が行われる。この燃焼(1)による燃焼圧(図16中のa部分)で、圧縮行程気筒12Cのピストン13が下死点側に押し下げられてエンジンが逆転方向に駆動される。ここで、圧縮行程気筒12Cの1回目の燃料噴射J3が、比較的空気量の多いときにはリーン空燃比(λ>1)、少ないときには理論空燃比ないしはそれよりリッチ空燃比(λ≦1)となるように噴射されるので、エンジン逆転のための適度な燃焼エネルギー、すなわち膨張行程気筒12A内の空気を充分圧縮しつつ、その圧縮上死点を超えて逆転し過ぎることのない程度の燃焼エネルギーを得ることができる。
上記エンジンの逆回転開始に伴って膨張行程気筒12A(第1気筒)のピストン13が上死点方向に動き始める。また、その直後に膨張行程気筒12Aでの1回目(前段)の燃料噴射J1が行われ、気化し始める。そして、膨張行程気筒12Aのピストン13が上死点側(望ましくは行程中央より上死点寄り)に移動し、上記気筒12A内の空気が圧縮された時点で2回目(後段)の燃料噴射J2が行われる。この噴射燃料の気化潜熱によって圧縮圧力が低減し、ピストン13がより上死点に近付くので圧縮空気(混合気)の密度が増大する(図16中のb部分)。
上記膨張行程気筒12Aのピストン13が上死点に充分に近付いた時点で当該気筒12Aに対する点火が行われて、気化が促進された1回目の噴射燃料(J1)と2回目の噴射燃料(J2)とが燃焼し(図15中の(2))、その燃焼圧(図16中のc部分)によりエンジンが正転方向に駆動される。
また、圧縮行程気筒12Cに対して適当なタイミングで可燃空燃比よりもリッチな燃料が噴射(J4)されることにより(図15中の(3))、この圧縮行程気筒12Cでは燃焼させないものの、燃料噴射による気化潜熱によって上記圧縮行程気筒12Cの圧縮圧力が低減され(図16中のd部分)、これに応じて当該圧縮上死点(始動開始から最初の圧縮上死点)を超えるために消費される膨張行程気筒12Aの最初の燃焼エネルギーが低減されることになる。
さらに、次の燃焼気筒である吸気行程気筒12Dにおける燃料噴射(J5)の時期を、燃料の気化潜熱によって気筒内の温度、および圧縮圧力を低下させる適正なタイミング(図15中の(4)に示すように、例えば圧縮行程の中期以降)に設定しているため、上記吸気行程気筒12Dの圧縮行程で圧縮上死点前に自着火することが防止される。また、上記吸気行程気筒12Dの点火時期が圧縮上死点以降に設定されていることも相俟って、圧縮上死点前での燃焼が防止される(図16中のe部分)。つまり燃料噴射(J5)による圧縮圧力の低減と圧縮上死点前の燃焼を行わないことにより、膨張行程気筒12Aにおける初回燃焼のエネルギーが上記圧縮上死点(エンジン始動開始時点から2番目の圧縮上死点)を超えるために消費されるのを抑制することができる。
このようにして膨張行程気筒12Aにおける初回燃焼(図15中の(2))のエネルギーにより、再始動開始後の最初の圧縮上死点(図15中の(3))と、2番目の圧縮上死点(図15中の(4))とを超えることが可能となり、円滑で確実な始動性を確保することができ、それ以降(図15中の(5)、(6)・・・)は、触媒37の温度に応じて空燃比をリーン(λ>1)にし、あるいは点火時期を遅延させることにより、エンジン回転速度の吹上がりを防止しつつ、通常運転に移行する。
上記のように予め設定されたエンジンの自動停止条件が成立したときに、エンジンの運転を継続させる燃料噴射を停止してエンジンを自動的に停止させるとともに、自動停止状態にあるエンジンの再始動条件が成立したときに、少なくとも膨張行程で停止状態にある気筒12Aに燃料を噴射して点火、燃焼を行わせることによりエンジンを再始動させるように構成されたエンジンの始動装置において、減速時に燃料噴射を停止する減速燃料カット制御手段43と、この減速燃料カット制御の実行中にエンジンの自動停止条件が成立した場合においてもエンジンの停止時に膨張行程になる気筒12Aのピストン13を再始動に適した位置に停止させる自動停止制御を実行する自動停止制御手段44とを設け、減速燃料カット制御の実行中に排気還流通路38を開放状態とするとともに、各気筒12A〜12Dに導入される吸気流量を減少させた状態で上記エンジンの自動停止制御を実行するように構成したため、上記減速燃料カット制御およびエンジンの自動停止制御を適正に実行することにより、燃費を効果的に改善するとともに、エンジンの掃気性を充分に確保しつつ、排気ガス浄化触媒37の設置部に低温の空気が供給されることに起因した温度低下を効果的に抑制し、エンジンの再始動時における排気浄化性能を維持できるという利点がある。
すなわち、減速燃料カット制御の実行中にエンジンの自動停止制御を実行して燃料噴射の停止状態を長期間に亘り継続させるように構成したため、燃費を効果的に改善することができるとともに、エンジンの掃気性を充分に確保することができる。しかも、上記減速燃料カット制御の実行中にEGR弁38を開弁し、かつスロットル弁23を閉弁するように構成したため、吸気通路22内から各気筒12A〜12D内に冷たい空気が供給されるのを効果的に抑制することができるとともに、各気筒12A〜12Dから導出された空気を上記排気還流通路38により各気筒12A〜12D内に還流させて暖めることができる。したがって、排気ガス浄化触媒37の設置部に低温の空気が供給されることに起因した温度低下を効果的に抑制し、エンジンの再始動時における排気浄化性能を維持できるとともに、エンジンの停止時に膨張行程になる気筒12Aのピストン13を再始動に適した位置に停止させる自動停止制御を適正に実行できるという利点がある。
また、上記実施形態では、減速燃料カット制御の実行中にエンジンを自動停止させる際に、排気還流通路39を開放状態とするとともに、各気筒12A〜12Dに導入される吸気流量を減少させることにより、排気ガス浄化触媒37の設置部に低温の空気が供給されることに起因した温度低下を効果的に抑制する制御を実行した後、EGR弁38を閉弁して排気還流通路39を閉止状態とするとともに、スロットル弁23を開弁して各気筒12A〜12Dに導入される吸気流量を増大させるように構成したため、エンジンの掃気性を充分に確保しつつ、ポンピングロスを低減した状態で、エンジンの停止時に各気筒12A〜12D内に所定量の空気を導入させることにより、エンジンの再始動時に適した位置(行程の中央付近)にピストン13を停止させる制御を適正に実行することができる。
特に、上記のように減速燃料カット制御の実行中にエンジンを自動停止させる際に各気筒12〜12Dに導入される吸気流量を増大させた後、エンジンの停止時に膨張行程となる気筒内に導入される吸気流量が圧縮行程となる気筒内に導入される吸気流量よりも多くなるようなタイミングでスロットル弁23を閉弁して吸気流量を減少させるようにした場合は、エンジンの再始動条件が成立して膨張行程にある気筒12A内に燃料噴射して点火、燃料を行わせることによりエンジンを効果的に再始動させることができる。
すなわち、上記実施形態では、エンジン回転速度Neが基準速度(790rpm)以下に低下したことが確認された時点t2で、スロットル弁23を閉弁して吸気流量を減少させ、所定の輸送遅れをもって各気筒12A〜12Dに導入される吸気の流量を適正タイミングで調節することにより、エンジンの停止時に膨張行程となる気筒12Aのピストン13を行程中央よりもやや上方側に位置させ、圧縮行程となる気筒内12Cよりも多くの吸気を上記膨張行程気筒12A内に導入させるように構成したため、エンジンを再始動させるのに必要な駆動トルクを充分に発生させることができるという利点がある。
また、上記実施形態では、減速燃料カット制御の実行中に排気ガス浄化触媒37の温度が予め設定された基準温度T1以下であると判定された場合に、EGR弁38を閉弁して排気還流通路39を開放状態とするとともに、スロットル弁23を開弁して各気筒12A〜12Dに導入される吸気流量を減少させ、各気筒12A〜12Dから導出された空気を各気筒12A〜12D内に還流させるように構成したため、排気ガス浄化触媒37の設置部に低温の空気が供給されることに起因して排気ガス浄化触媒37の温度が低下するのを効果的に抑制し、エンジンの再始動時における排気浄化性能を維持することができる。
さらに、上記実施形態では、減速燃料カット制御の実行中に排気ガス浄化触媒37の温度が予め設定された基準温度、つまり排気ガス浄化触媒37の活性化温度に対応した値よりもよりも所定値だけ高い値に設定された温度T1よりも高いと判定された場合に、排気還流通路39を閉止状態とするとともに、上記吸気流量の減少制御を抑制するように構成したため、排気ガス浄化触媒37の設置部に充分な量の空気を供給して排気ガス浄化触媒37を冷却することにより、上記排気ガス浄化触媒37の温度が過度に高くなるのを防止することができる。したがって、上記排気ガス浄化触媒37が焼損してその信頼性が低下するという事態の発生を効果的に防止できるという利点がある。
なお、減速燃料カット制御の実行中に排気ガス浄化触媒37の温度が予め設定された上記基準温度T1よりも低いと判定された場合に、排気還流通路39を開放状態とするとともに、各気筒12〜12Dに導入される吸気流量を減少させ、かつ基準温度T1よりも高いと判定された場合に、排気還流通路39を閉止状態とするとともに、吸気流量の減少制御を抑制するように構成した上記実施形態に代え、減速燃料カット制御の実行時点t0におけるエンジン回転速度Neが高い場合に、排気ガス還流通路39を開放状態とし、上記の時点t0におけるエンジン回転速度が低い場合に、吸気流量の減少制御を抑制するようにしてもよい。
上記の構成によれば、減速燃料カット制御の実行時点t0におけるエンジン回転速度Neが高く、エンジンが停止状態となるまでの時間が長くなる傾向にある場合には、排気ガス還流通路39を開放した状態で、燃料噴射を長期間に亘り停止することにより、燃費を効果的に改善するとともに、エンジンの掃気性を充分に確保しつつ、排気ガス浄化触媒37の設置部に低温の空気が供給されることに起因した温度低下を効果的に抑制することができる。これに対して上記減速燃料カット制御の実行時点t0におけるエンジン回転速度Neが低く、エンジンが停止状態となるまでの時間が短くなる傾向にある場合には、スロットル弁23の閉弁操作量を低減して吸気流量の減少制御を抑制することにより、各気筒12A〜12D内に充分な量の吸気を導入させてエンジンの掃気性を効果的に向上させるとともに、ポンピングロスを低減した状態で、エンジンの再始動に適した位置にピストン13を停止させる自動停止制御を適正に実行できるという利点がある。
また、上記実施形態では、減速燃料カット制御手段43による減速燃料カット制御の実行中に、排気ガス浄化触媒37の温度が活性化温度に対応した値T0よりも高いか否かを判定し、活性化温度に対応した値T0より低いことが確認された場合に、燃料噴射を復帰させるように構成したため、排気ガス浄化触媒37の設置部に低温の空気が供給されることに起因した温度低下を効果的に抑制できるという利点がある。そして、減速燃料カット制御の実行中に排気ガス浄化触媒37の温度が活性化温度に対応した値より高いことが確認された場合には、燃料噴射を復帰させることなくエンジンの自動停止制御を実行するように構成したため、燃料噴射の停止状態を長期間に亘り継続して燃費を効果的に改善するとともに、エンジンの掃気性を充分に確保できるという利点がある。
また、上記実施形態では、エンジンを自動停止させる際に、エンジンの回転速度Neが予め設定された基準速度N2となって燃料噴射が停止された後に、所定時間が経過して例えばエンジン停止前の4番目の圧縮上死点を迎えたことが確認された時点t3で、その上死点回転速度neを検出するとともに、この上死点回転速度neに対応した目標発電電流Geを図7に示すマップから読み出し、上記上死点回転速度neが低い場合に、高い場合に比べてオルタネータ28の目標発電電流Geの低下量を大きな値に設定するように構成したため、予め設定された基準ラインに沿ってエンジン回転速度Neを低下させるようにオルタネータ28の目標発電電流Geを適正に制御することができる。このようにしてエンジンが停止状態となる前の2番目の上死点回数速度ne等が図5のハッチングで示す範囲内に収まるように、エンジンが停止状態となる前の4番目の上死点回数速度neに基づいてオルタネータ28の目標発電電流Geを調節し、エンジンの回転抵抗を変化させることにより、エンジンの停止時点で膨張行程となる気筒のピストン13をエンジンの再始動に適した位置に停止させることができる。
エンジンの停止時点で膨張行程となる気筒12Aのピストン13をエンジンの再始動に適した位置に停止させるためには、エンジンが停止状態となる直前に上記オルタネータ28の発電電流を制御してクランク軸3の回転抵抗を調節することが望ましい。しかし、エンジンが停止状態となる直前には、エンジンの回転速度Neが低くなって上記オルタネータ28の発電機能が充分に発揮されず、その目標発電電流Geを変化させてもクランク軸3の回転抵抗をそれ程顕著に変動させることができないので、エンジン回転速度Neの低下状態を正確に調節することは困難である。このため、上記エンジンの停止時点で膨張行程となる気筒12Aのピストン13を適正位置に停止させるには、燃料噴射の停止後にオルタネータ28の目標発電電流Geを予め設定された初期値に上昇させるとともに、エンジン回転速度Neが低下する過程の中期段階(例えばエンジンの停止前の4番目〜6番目の圧縮上死点を迎える時点)で、エンジン回転速度の低下度合に対応した値にオルタネータ28の目標発電電流Geを低下させる制御を実行することが望ましい。
すなわち、上記オルタネータ28は、目標発電電流Geを例えば0Aから60A程度までの任意の値に調節することにより、クランク軸3の回転抵抗を広範囲において正確に調節することができるが、図19に示すように、目標発電電流Geを例えば10A程度の小さな電流値から60A程度の大きな電流値に設定して発電電流を上昇させる場合には、0.1sec程度の時間を要することが知られている。これに対し、オルタネータ28の目標発電電流Geを、例えば60A程度の大きな電流値から10A程度の小さな電流値に設定して発電電流を下降させる場合には、瞬時に発電電流を変化させることができる。
したがって、上記エンジンを自動停止させる動作の初期に、オルタネータ28の目標発電電流Geを60A程度の初期値に上昇させて、オルタネータ28の発電機能を充分に発揮し得る状態とした後に、ピストン13が圧縮上死点を通過するときのエンジンの上死点回転速度neを所定のタイミングで検出し、この上死点回転速度neが低い場合には、高い場合に比べて目標発電電流Geの低下量を大きな値に設定することにより、エンジン回転速度Neの低下状態に対応してクランク軸3の回転抵抗を調節して膨張行程気筒12Aのピストン13をエンジンの再始動に適した位置に停止させる制御を実行することが望ましい。
なお、ピストン13が圧縮上死点を通過するときのエンジンの上死点回転速度neを検出するとともに、この上死点回転速度neに基づき、上記目標発電電流Geの低下量を制御するように構成した上記実施形態に代え、ピストン13が行程中央位置を通過する時点等のクランク角を検出角度として設定し、この検出角度となった時点で検出されたエンジンの回転速度Neに基づいて目標発電電流Geの低下量を設定することも可能である。しかし、ピストン13が行程中央位置を通過する時点では、エンジンの回転速度Neが顕著に変動する状態にあり、エンジンの回転速度Neの低下状態を正確に判別することが困難であるため、上記実施形態に示すように、エンジン回転速度Neが一時的に安定した状態となるピストン13が圧縮上死点を通過するときのエンジンの上死点回転速度neに基づき、オルタネータ28の目標発電電流Geの低下量を設定することが望ましい。
特に上記実施形態では、エンジンを自動停止させる動作の初期にあってエンジン回転速度Neが充分に高い領域で、吸気絞り量を小さくして気筒12A〜12D内に導入される吸気流量を充分に確保するとともに、これと同時にオルタネータ28の目標発電電流Geを0に設定する等により、この目標発電電流Geを一時的に低下させるように構成したため、エンジンの掃気性を効果的に向上させることができるとともに、クランク軸3の回転抵抗およびポンピングロスの両方を低減することができる。したがって、エンジンを自動停止させる動作の初期に、エンジンの回転数Neが顕著に低下するのを防止しつつ、その後の所定のタイミングでオルタネータ28の目標発電電流Geを初期値に上昇させることにより、オルタネータ28の発電機能を迅速かつ充分に発揮させてエンジンの外部負荷を適正値に調節できるという利点がある。
また、上記実施形態に示すように、エンジンを自動停止させる動作の初期に、自動変速機をニュートラル状態として外乱によるエンジン回転速度Neの変動を抑制した状態で、燃料噴射を停止してエンジンの回転速度Neを低下させるように構成した場合には、エンジンの再始動に適した位置にピストン13を停止させる自動停止制御を適正に実行できるという利点がある。
さらに、上記実施形態では、ピストン13が最後の圧縮上死点を迎える時点t5における上死点回転速度ne1に基づき、ピストン13が行程の後半寄りの位置で停止する傾向があるか否かを判定し、その判定結果に応じてスロットル弁23の開度Kを調節するように構成したため、エンジンの停止直前におけるピストン13のストローク量を適正に調節してエンジンの再始動に適した範囲R内にピストン13を停止させる自動停止制御を適正に実行することができる。
例えば最終上死点回転速度ne1が200rpm以上であり、かつ上記ブースト圧Bt2がP2=−200mmHg以下である条件を満たすか否かによってピストン13が行程の後半寄りの位置で停止する傾向があるか否かを判定し、NOと判定された場合には、スロットル弁23の開度Kを40%程度に予め設定された第1開度に設定して、吸気行程気筒12Dの吸気抵抗を減少させることにより、膨張行程気筒12Aのピストン13の位置が適正範囲Rの下限を超えた状態となるのを効果的に防止することができる。一方、上記判定結果がYESの場合には、スロットル弁23の開度Kを5%程度の第2開度に設定して、吸気行程気筒12Dに適度の吸気抵抗を生じさせることにより、ピストン13の停止位置が上記適正範囲Rを超えてさらに後期側となるのを防止できるという利点がある。
なお、上記減速燃料カット制御手段43による減速燃料カット制御を実行する際に、原則として排気還流通路39を開放状態とするとともに、各気筒12A〜12Dに導入される吸気流量を減少させた後、排気ガス浄化触媒37の温度が活性化温度に対応し値T0よりも低いことが確認された場合に、燃料噴射を復帰させるように構成した上記実施形態に代え、減速燃料カット制御の実行中に排気還流通路39を開放状態とするとともに、各気筒12A〜12Dに導入される吸気流量を減少させる制御を実行する前に、排気ガス浄化触媒37の温度が活性化温度に対応した値T0より低いか否かを判定するとともに、この判定結果に対応した制御を実行するように構成してもよい。
すなわち、図17および図18に示すフローチャートのステップS3でYESと判定され、エンジン回転速度Neが上記減速時燃料カット用の判断基準値FC・ONよりも大きいことが確認された場合には、ステップS14で減速時の燃料カット(FC)を実行した後にステップS18に移行して減速燃料カット制御を終了すべき状態にあるか否かを判定し、この判定結果に応じてステップS19〜S22の制御を実行する。そして、ステップS22でブレーキセンサ35がON状態と判定され、上記減速燃料カット制御の実行中にエンジンの自動停止条件が成立した状態にあることが確認された場合には、この時点で排気ガス浄化触媒37が活性化温度に対応した温度T0以上であるか否かを判定する(ステップS23)。
上記ステップS23でNOと判定されて排気ガス浄化触媒37が活性化温度に対応した温度T0未満であることが確認された場合には、気筒内の空燃比を理論空燃比(λ=1)に設定して燃料噴射を復帰させることにより燃料カット(FC)制御を終了するとともに(ステップS24)、点火時期を所定量だけリタードさせる(ステップS25)。また、EGR弁38を閉弁して排気還流通路39を閉止状態とした後(ステップS50)、上記ステップS1にリターンする。
そして、上記ステップS23でYESと判定されて排気ガス浄化触媒37の温度が活性化温度に対応した温度T0以上であることが確認された場合には、排気ガス浄化触媒37の温度が、上記温度T0よりも所定温度だけ高い値に設定された基準温度T1以下であるか否かを判定し(ステップS51)、YESと判定された場合には、EGR弁39の開度Eを全開に設定して排気還流通路38を開放状態するとともに、スロットル弁23の開度Kを0%に設定して吸気流量を減少させる(ステップS52)。これにより各気筒12A〜12Dから排気通路22に導出された空気が各気筒12A〜12Dに環流されて次第に暖められることになる。
また、上記ステップS51でNOと判定されて排気ガス浄化触媒37の温度が上記基準温度T1よりも低いことが確認された場合には、EGR弁39の開度Eを全閉に設定して排気還流通路38を閉放状態するとともに、スロットル弁23の開度Kを30%に設定して吸気流量を増大させる制御を実行して吸気通路21から各気筒12A〜12Dに導入された低温の空気を排気ガス浄化触媒37の設置部に導出させた後(ステップS53)、図10に示すフローチャートのステップS26〜S29を経て図11に示すフローチャートのステップS31に移行する。
上記のように減速燃料カット制御手段43による減速燃料カット制御の実行中に、排気ガス浄化触媒37の温度が活性化温度に対応した値T0よりも高いか否かを判定し、活性化温度に対応した値T0より低いことが確認された場合に、燃料噴射を復帰させることによりように構成した場合には、燃料噴射の停止状態が長時間に亘り継続されることに起因した排気ガス浄化触媒37の温度低下を効果的に抑制し、燃料噴射の再開時における排気浄化性能を維持できるという利点がある。そして、上記減速燃料カット制御の実行中に排気ガス浄化触媒37の温度が活性化温度に対応した値T0より高いことが確認された場合には、燃料噴射を復帰させることなくエンジンの自動停止制御を実行するように構成したため、燃料噴射の停止状態を長期間に亘り継続して燃費を効果的に改善できるとともに、エンジンの掃気性を充分に確保できるという利点がある。
また、上記実施形態では、減速燃料カット制御の実行中に排気ガス浄化触媒37の温度が、上記活性化温度に対応した値T0よりも高く、この値T0よりも所定温度だけ高い値に設定された基準温度T1以下であると判定された場合には、排気還流通路38を開放状態とするとともに、各気筒12A〜12Dに導入される吸気流量を減少させる制御を実行するように構成したため、排気ガス浄化触媒37の設置部に低温の空気が供給されることに起因した温度低下を効果的に抑制することにより、エンジンの再始動時における排気浄化性能を維持することができる。
さらに、上記実施形態では、減速燃料カット制御の実行中に排気ガス浄化触媒37の温度が活性化温度に対応した値T0より低いと判定された場合には、燃料噴射を復帰させた後に排気還流通路39を閉止状態とするとともに、各気筒12A〜12Dに導入される吸気流量を増大させるように構成したため、その後にエンジンの自動停止制御を実行する際における掃気性を効果的に向上させることができるという利点がある。
また、上記減速燃料カット制御の実行中に排気ガス浄化触媒37の温度が活性化温度に対応し値T0よりも高く、かつ上記基準温度T1よりも高いことが確認された場合には、排気還流通路39を閉止状態とするとともに、各気筒12A〜12Dに導入される吸気流量を増大させるように構成した場合には、吸気通路21から各気筒12A〜12Dを介して排気ガス浄化触媒37の設置部に供給される低温の空気量を増大させることにより、排気ガス浄化触媒37を冷却して上記排気ガス浄化触媒37の温度が過度に高くなるのを防止することができる。したがって、上記排気ガス浄化触媒37が焼損してその信頼性が低下するという事態の発生を効果的に防止することにより、その信頼性を効果的に確保することができ、かつ減速燃料カット制御の実行中に燃料噴射を復帰させることなくエンジンの自動停止制御を実行することにより、燃費を効果的に改善するとともに、エンジンの掃気性を充分に確保できるという利点がある。
また、上記実施形態では、減速燃料カット制御の実行中に排気ガス浄化触媒37の温度が活性化温度に対応した値T0よりも低いと判定されて燃料噴射を復帰させる場合における気筒12A〜12D内の空燃比を理論空燃比ないし理論空燃比よりもリッチに設定したため、排気通路22に導出される排気ガスの温度を効果的に上昇させることによって排気ガス浄化触媒37を早期に活性化させることができる。
さらに、上記実施形態に示すように、減速燃料カット制御の実行中に排気ガス浄化触媒37の温度が活性化温度に対応した値T0よりも低いと判定されて燃料噴射を復帰させる場合における気筒12A〜12D内の空燃比を理論空燃比ないし理論空燃比よりもリッチに設定するとともに、排気還流通路38を閉止状態とするようにした構成によると、各気筒12A〜12D内に導入される新気量を確保することにより、失火を生じることなく点火時期を充分にリタードさせることができる。このため、排気ガスの温度を、より効果的に上昇させて排気ガス浄化触媒37を迅速に活性化できるという利点がある。
なお、上記燃料噴射の復帰時に、気筒12A〜12D内の空燃比を理論空燃比ないし理論空燃比よりもリッチに設定するとともに、排気還流通路38を開放状態とした場合には、空燃比のフィードバック制御性が悪化する傾向があるが、吸気圧センサ27により検出された吸気圧力に基づいて吸気充填量を算出することにより空燃比のフィードバック制御性を、ある程度確保することができる。このため、上記排気ガス浄化触媒37が非活性状態にあってNOxの浄化性能が不充分な状態で燃料噴射を復帰させる場合に、排気還流通路38を開放状態とすることにより、NOxの発生を抑制してエミッションの悪化を防止するようにしてもよい。
なお、上記実施形態では、サージタンク21bの上流側に配設されたスロットル弁23からなる吸気流量調節手段により各気筒12A〜12Dへの吸気流量を調節するように構成した例について説明したが、これに限らず、各気筒12A〜12Dに設けられた吸気弁19のリフト量を変更する周知の可変動弁機構を設けることにより、上記各気筒12A〜12Dへの吸気流量を調節するように構成してもよく、あるいは各気筒12A〜12Dに接続された分岐吸気通路21aに個別に弁体が配設された多連型スロットル弁を用いて上記各気筒12A〜12Dへの吸気流量を調節するように構成してもよい。
さらに、上記実施形態において、エンジンの回転速度Neが、燃料噴射の停止後に790rpm程度に予め設定された基準速度N2よりも低下した時点t2で、スロットル弁23の開度Kを減少させる動作と、オルタネータ28の目標発電電流Geを増大させる動作を同時に行っているが、必ずしも両者の動作時点を合せる必要はなく、オルタネータ28の目標発電電流Geの増大時期を、スロットル弁23の開度を減少させる時点t2より少し前後にずらすようにしてもよい。
また、上記実施形態におけるエンジンの始動装置では、自動停止状態にあるエンジンを再始動させる際に、圧縮行程気筒12Cに第1回の燃焼を行わせることにより、最初にクランク軸3を少しだけ逆回転させて膨張行程気筒12A内の混合気を圧縮した後に点火するようにしているが、本発明に係るエンジンの始動装置は、これに限るものではなく、膨張行程気筒12Aに対して最初に点火を行うことによりエンジンを再始動させるように構成してもよい。
さらに、上記実施形態では、エンジンの再始動時に、膨張行程気筒12Aで初回燃焼のための燃料噴射を分割噴射(J1+J2)としたが、これを、気化潜熱による圧縮圧力の低減と気化性能の確保とが可及的に両立できるタイミング(所定燃料噴射時期)を実験等によって策定し、この所定燃料噴射時期における1回の燃料噴射としてもよい。また、エンジンの再始動時に、膨張行程気筒12Aにおいて最初の燃焼のために行う分割燃料噴射は、必要に応じて3分割以上としてもよい。
また、上記実施形態では省略しているが、エンジン再始動時において、所定の条件成立時、例えばピストン停止位置が適正停止範囲R内にない場合や、始動後の所定時期までにエンジン回転速度が所定値に達しない等に、スタータモータによるアシストを伴う制御を行うようにしてもよい。