図1および図2は、本発明に係るエンジンの始動装置を有する4サイクル火花点火式エンジンの概略構成を示している。このエンジンには、シリンダヘッド10およびシリンダブロック11を有するエンジン本体1と、エンジン制御用のECU2とを備えている。上記エンジン本体1には、四つの気筒12A〜12Dが設けられるとともに、各気筒12A〜12Dの内部には、クランク軸3に連結されたピストン13が嵌挿されることにより、その上方に燃焼室14が形成されている。
上記各気筒12A〜12Dの燃焼室14の頂部には、プラグ先端が燃焼室14内に臨むように点火プラグ15が設置されている。また、上記燃焼室14の側方には、燃焼室14内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁16が設けられている。この燃料噴射弁16は、図外のニードル弁およびソレノイドを内蔵し、上記ECU2から入力されたパルス信号のパルス幅に対応する時間だけ駆動されて開弁し、その開弁時間に応じた量の燃料を上記点火プラグ15の電極付近に向けて噴射するように構成されている。
また、上記各気筒12A〜12Dの燃焼室14の上部には、燃焼室14に向かって開口する吸気ポート17および排気ポート18が設けられるとともに、これらのポート17,18に、吸気弁19および排気弁20がそれぞれ装備されている。上記吸気弁19および排気弁20は、図示を省略したカムシャフト等を有する動弁機構によって駆動されることにより、各気筒12A〜12Dが所定の位相差をもって燃焼サイクルを行うように各気筒12A〜12Dの吸・排気弁19,20の開閉タイミングが設定されている。
上記吸気ポート17および排気ポート18には、吸気通路21および排気通路22が接続されている。上記吸気ポート17に近い吸気通路21の下流側は、図2に示すように、各気筒12A〜12Dに対応して独立した分岐吸気通路21aとされ、この各分岐吸気通路21aの上流端がそれぞれサージタンク21bに連通している。このサージタンク21bよりも上流側には共通吸気通路21cが設けられるとともに、この共通吸気通路21cには、アクチュエータ24により駆動されるスロットル弁23からなる吸気流量調節手段が配設されている。このスロットル弁23の上流側および下流側には、それぞれ吸気流量を検出するエアフローセンサ25と、吸気圧力(負圧)を検出する吸気圧センサ26とが配設されている。
また、各気筒12A〜12Dからの排気が集合する排気通路22の集合部下流には、排気ガス浄化触媒37が配設されている。この排気ガス浄化触媒37は、例えば、排気の空燃比状態が理論空燃比近傍にあるときにHC、COおよびNOxの浄化率が極めて高い、いわゆる三元触媒からなるとともに、排気ガス中の酸素濃度が比較的高い酸素過剰雰囲気でこれを吸蔵する酸素吸蔵能を有し、酸素濃度の比較的低いときには吸蔵している酸素を放出して、HC、CO等と反応させるものである。なお、上記排気ガス浄化触媒37は、三元触媒に限らず、上記のような酸素吸蔵能を有するものであれば良く、例えば酸素過剰雰囲気でもNOxを浄化可能な、いわゆるリーンNOx触媒であってもよい。
上記エンジン本体1には、タイミングベルト等によりクランク軸3に連結されたオルタネータ(発電機)28が付設されている。このオルタネータ28は、図示を省略したフィールドコイルの電流を制御して出力電圧を調節することにより目標発電電流を調整するレギュレータ回路28aを内蔵し、このレギュレータ回路28aに入力される上記ECU2からの制御信号に基づき、通常時に車両の電気負荷および車載バッテリーの電圧等に対応した目標発電電流の制御が実行されるように構成されている。
さらに、上記エンジンには、クランク軸3の回転角を検出する2つのクランク角センサ30,31が設けられ、一方のクランク角センサ30から出力される検出信号に基づいてエンジンの回転速度が検出されるとともに、後述するように上記両クランク角センサ30,31から出力される位相のずれた検出信号に基づいてクランク軸3の回転方向および回転角度が検出されるようになっている。
また、カムシャフトに設けられた気筒識別用の特定回転位置を検出するカム角センサ32と、エンジンの冷却水温度を検出する水温センサ33と、運転者のアクセル操作量に対応したアクセル開度を検出するアクセルセンサ34と、運転者がブレーキ操作を行ったことを検出するブレーキセンサ35からそれぞれ出力される各検出信号がECU2に入力されるようになっている。
また、エンジンは、図3に示すように、その出力軸であるクランク軸3を通じて自動変速機構50に接続されている。この自動変速機構50は、上記クランク軸3に連結されたトルクコンバータ51と、このトルクコンバータ51の出力軸であるタービンシャフト59に連結された多段変速機構52とを備え、この多段変速機構52に含まれる複数の摩擦締結要素を断続させることにより、車輪側への駆動力の伝達が切り離されたニュートラル状態および車輪側への駆動力の伝達が可能なドライブ状態を含む複数レンジに切換可能で、かつ、ドライブ状態において低高速段(1速段〜4速段)を含む多段変速可能に構成されている。
上記トルクコンバータ51は、クランク軸3に連結されたポンプカバー53と、このポンプカバー53に一体に形成されたポンプインペラ54(トルクコンバータ入力側)と、これに対向するように設置されたタービンランナ55(トルクコンバータ出力側)と、その間でワンウェイクラッチ56を介してケース57に取付けられたステータ58とを備えている。そして、トルクコンバータ51の出力軸となるタービンシャフト59が上記タービンランナ55に連結されている。また、上記ポンプカバー53内の空間には、作動流体としてのオイルが充満され、ポンプインペラ54の駆動力がこの作動油を介してタービンランナ55に伝達されるものとなされている。そして、このタービンランナ55に近接してタービンランナ用回転センサ36が設けられ、この回転センサ36によってタービンランナ55の回転速度がECU2に送信されるように構成されている。
このトルクコンバータ51には、さらに上記ポンプカバー53とタービンランナ55との間に介設され、該カバー53を介してクランク軸3とタービンランナ55とを直結するロックアップクラッチ64が設けられている。このロックアップクラッチ64は、図外のオイルポンプ等に図外の油圧制御回路を介して接続されており、この油圧制御回路に設けられたコントロールバルブおよびソレノイドバルブをオン・オフ制御されることにより油路を切り換えてロックアップ状態とアンロックアップ状態とに切り換えられる。このロックアップクラッチ64は、多段変速機構52が高速段にあるときであって、車両が加速または定速走行状態にあるとき、および車両が減速走行状態にあるときにロックアップ状態となされるように設定されている。
一方、多段変速機構52は、第1および第2遊星ギヤ機構65,66と、この遊星ギヤ機構65,66を含む動力伝達経路を切り換えるクラッチやブレーキ等の複数の摩擦締結要素67〜72とを備え、これらの摩擦締結要素67〜72を適宜断続してニュートラル状態、および後退速、複数段の前進速等の複数段のドライブ状態に切換可能に構成されている。
なお、この摩擦締結要素は、上記タービンシャフト59および第1遊星ギヤ機構65のサンギヤの間に介在するフォワードクラッチ67と、タービンシャフト59と第2遊星ギヤ機構66のサンギヤとの間に介在するリバースクラッチ68と、タービンシャフト59と第2遊星ギヤ機構66のキャリヤとの間に介在する3−4クラッチ69と、第2遊星ギヤ機構66のサンギヤを固定する2−4ブレーキ70と、これらの遊星ギヤ機構65,66とケース57との間に並列的に介在するローリバースブレーキ71およびワンウェイクラッチ72等とを備え、これらの摩擦締結要素67〜72が断続されて出力ギヤ73に繋がる動力伝達経路が変更ないし断絶されるものとなされている。そして、この出力ギヤ73が回転することにより、駆動力が車輪側、すなわち伝導ギヤ74,75,76および差動機構77を介して左右の車軸78,79に伝達されるようになっている。
この自動変速機構50は、原則として図外の運転席に設けられたシフトレバーがNレンジにあわされることによりニュートラル状態に設定され、或いは、少なくともDレンジにあわされることによりドライブ状態に設定されるものとなされているが、当実施形態ではシフトレバーがドライブ状態のレンジ(例えばDレンジ)にある場合でもエンジンの自動停止ないしは自動再始動期間における所定期間にECU2によって自動的にニュートラル状態に切り換えることができるものとなされている。ここで、ニュートラル状態とは、車輪側への駆動力の伝達が切り離された状態をいい、この状態では少なくともフォワードクラッチ67とリバースクラッチ68のいずれもが断絶されている。また、ドライブ状態とは、車輪側への駆動力の伝達が可能な状態をいい、この状態では少なくともフォワードクラッチ67とリバースクラッチ68のいずれかが締結されている。当実施形態では、自動変速機構50がニュートラル状態にあるときはロックアップクラッチ64を含む全ての摩擦締結要素67〜72が断絶された状態となるように設定されており、クランク軸3に作用する回転抵抗を低減するものとなっている。
また、自動変速機構50は、シフトレバーがDレンジに設定されている場合であって1速段にあるときには、フォワードクラッチ67が締結されるとともにローリバースブレーキ71が断絶され、またワンウェイクラッチ72がロックされ、これによりクランク軸3から車軸78,79に駆動力が伝達されるが逆へは駆動力が伝達されず、エンジンブレーキが作用しないようになされている。一方、シフトレバーがDレンジに設定されている場合であって多段変速機構52が2、3、4速段にあるときは、クランク軸3から車軸78,79に駆動力が伝達されるとともにその逆にも駆動力が伝達されてエンジンブレーキが作用するようになされている。なお、例えば出力ギヤ73、伝導ギヤ74と並列的にコーストクラッチを設けて2速段についてもエンジンブレーキが作用しないように構成するものであってもよい。
一方、ECU2には、上記各センサ25,26,30〜36からの検出信号を受け、燃料噴射弁16に対して燃料の噴射量および噴射時期を制御するための制御信号を出力するとともに、点火プラグ15に付設された点火装置27に対して点火時期を制御することにより、エンジンの運転状態に対応した燃焼制御を実行する燃焼制御手段41と、上記スロットル弁23のアクチュエータ24に対してスロットル開度を制御するための制御信号を出力して吸気流量を制御する吸気流量制御手段42と、燃料噴射弁16のアクチュエータに対して制御信号を出力してエンジンに対する燃料供給を制御する燃料供給制御手段43と、オルタネータ28の目標発電電流を設定する発電電流制御手段44と、多段変速機構52をニュートラル状態とドライブ状態との間で切り換える機能を有する変速制御手段45と、上記各種制御手段41〜45等に対して制御信号を出力することにより予め設定されたエンジンの自動停止条件が成立したときに各気筒12A〜12Dへの燃料噴射を所定のタイミングで停止(燃料カット)して、エンジンを自動的に停止させるとともに、その後に運転者によるアクセル操作が行われる等により再始動条件が成立したときにエンジンを自動的に再始動させる制御を実行する自動停止制御手段46とが設けられている。
この自動停止制御手段46は、車両の走行中においてエンジンの自動停止制御が実行されるように構成されているとともに、所定の条件下で車両走行中にエンジン(ピストン13)を完全に停止させるべく、比較的早期に各気筒12A〜12Dへの燃料噴射を停止するように構成されている。
すなわち、上記自動停止条件には、例えば操舵角が所定値以下、バッテリー電圧が基準値以上、かつ、エアコンがOFF状態にある等の所定条件のほか、車速が所定値(例えば10km/h)以上という条件が含まれ、エンジンの自動停止制御が車両の走行中に開始されるようになされている。なお、この自動停止条件について、通常設定されている車速が0である等の車速に関する条件を省くことによっても自動停止制御手段46による走行中のエンジンの自動停止制御が可能となる。このように車速に関する条件を省略した場合には、停車後にもエンジンの自動停止制御が実行可能となる。
この自動停止制御手段46による上記自動停止条件の成否判定は、自動停止条件に含まれる全ての条件を一挙に判定するものであってもよいが、当実施形態では各条件を所定時期に分散させて判定するものとなされている。そして、エンジンの自動停止制御を車両の走行中に開始すべく、後述する減速時燃料供給停止の復帰回転速度FC・OFFに到達した時点等でブレーキセンサ35がON状態にあるか否かを最終の自動停止条件として判定し、このブレーキセンサ35がON状態にある場合に乗員において車両停止の意思があるものと認定してエンジンの自動停止が実行されるように構成されている。
そして、自動停止制御手段46は、上記自動停止条件の成否判定の結果、自動停止条件が成立していると判定した場合には、車両走行中の所定時期に燃料供給制御手段43による各気筒12A〜12Dへの燃料の供給を停止するように構成されている。
具体的には、当実施形態では、図4に示すように、上記燃料供給制御手段43によって車両の減速時における所定条件下で過濃混合気の発生を防止するための減速時燃料供給停止(減速時FC)がこの減速中の所定回転速度範囲において実行されるものとなされ、この減速時FCが実行される場合であって自動停止条件が成立していると判定した場合に、上記減速時FCが実行される所定回転速度範囲の下限値である復帰回転速度FC・OFFに到達した時点で自動停止制御手段46が燃料供給制御手段43による燃料供給の復帰を無効化することにより各気筒12A〜12Dに対する燃料の供給を停止するように構成されている。このように減速時FC期間から燃料供給の復帰を無効化すると、減速時FCからそのままエンジンの自動停止が実行されることになる。なお、この復帰回転数FC・OFFに到達した時点では、後述する速度比αは1以上となっており、このように速度比αが1以上のときに燃料の供給が停止されると、高確率で車両走行中にピストン13を停止させることができ、また後述する制御を併せて実行することによりピストン13を後述する適正範囲R(図5等参照)に高確率で停止させることができる。
一方、燃料供給制御手段43による減速時FCが実行されない場合には、自動変速機構50の多段変速機構52をニュートラル状態に設定して自動停止制御手段46による基本制御が実行されることになる。この基本制御については後述する。
また、自動停止制御手段46による減速時FCが実行される場合の制御に戻って、高速段で走行している車両が減速されると、トルクコンバータ51のロックアップクラッチ64が締結され、自動変速機構50がロックアップ状態となされ、このロックアップ状態でエンジン回転速度が低下してエンジン回転速度が所定のロックアップ解除回転数Nluに達した時点でロックアップクラッチ64が断絶されてロックアップ状態からアンロックアップ状態に切り換えられるものとなされている。この自動変速機構50におけるロックアップ状態はエンジンブレーキを効率的に作用させることができ、またオルタネータ28による発電効率が向上するとともに再加速要求に対する応答性が良好であることから可及的長期にわたって実行されることが好ましい。そこで、当実施形態では上記ロックアップ解除回転数Nluを例えば1200〜1300rpmに設定するとともに、上記復帰回転速度FC・OFFをこのロックアップ解除回転数Nluよりも低い値、例えば900rpmに設定している。車両減速時にロックアップクラッチ64が断絶されると(アンロックアップ状態となされると)、車軸78,79からの駆動力が効率的に伝達されなくなるため、エンジン回転速度が急速に低下する。従って、上記復帰回転速度FC・OFFをこのロックアップ解除回転数Nluよりも低い値に設定することにより、ロックアップ状態に伴うメリットを可及的に維持しつつ、ロックアップ状態からアンロックアップ状態に切り換えることによりエンジン回転速度を急速に低下させ復帰回転速度FC・OFFに到達させて、早期に自動停止条件(当実施形態ではブレーキセンサ35のON・OFF状態)の成否を判定することができる。
さらに、Dレンジに設定されている多段変速機構52が2速段を含む中高速段にある場合には、車軸78,79からクランク軸3に駆動力が伝達されてエンジンブレーキが作用している状態となることから、燃料供給制御手段43による燃料供給の停止を早期に実施した場合であってもエンジンブレーキ作用によってクランク軸3は回転させられ、車両走行中にピストン13を完全に停止させることができない。従って、復帰回転速度FC・OFF以下にエンジン回転速度が低下した後、多段変速機構52をエンジンブレーキが作用しない1速段にシフトダウンして車軸78,79側の駆動力がクランク軸3に伝達されないようにして車両走行中においてもピストン13を完全に停止することができるように構成されている。
当実施形態の自動停止制御手段46等による上記制御をまとめると、Dレンジに設定された多段変速機構52が高速段の状態からアクセルがOFFにされ、或いはこれに加えてブレーキがONにされた場合には車両は減速し、図4に示すように、この減速に伴ってエンジン回転速度Neも低下する。この減速時においては、ロックアップクラッチ64が締結されて自動変速機構50はロックアップ状態となされる。そして、この減速に伴ってエンジン回転速度Neが減速時FC回転速度FC・ON、例えば1200rpm以上の所定値(当実施形態では1400rpm)に到達した時点t1において、過濃混合気の発生を防止すべく燃料供給制御手段43により減速時FC制御が実行され、各気筒12A〜12Dに対する燃料の供給が停止される。
この状態でエンジン回転速度Neが低下し続けてロックアップ解除回転数Nlu(当実施形態では1200〜1300rpmの範囲における所定値)に到達すると、この到達時点t2でロックアップクラッチ64が断絶されて自動変速機構50がロックアップ状態からアンロックアップ状態に切り換えられ、これに伴ってエンジン回転速度Neの低下度合が大きくなり、当該エンジン回転速度Neが急速に低下する。この低下によりエンジン回転速度Neがトルクコンバータ51を介したエンジンブレーキ作用に見合ったエンジン回転速度に到達すると、この時点t3でエンジン回転速度の低下度合が小さくなり、復帰回転速度FC・OFFに到達直後の所定時点t4で多段変速機構52を1速段に切り換える。当実施形態では、このシフトダウンする時点t4の直前にエンジン回転速度Neが復帰回転速度FC・OFFに到達し、この復帰回転速度FC・OFFに到達した時点T1(言い換えると燃料供給を停止する時点)で自動停止条件、当実施形態では自動停止条件の一つとしてのブレーキセンサ35がON状態にあるか否かの判定が行われる。そして、この時点t4からt5に至るまでの期間内に自動停止制御手段46によって後述する、多段変速機構52がドライブ状態に設定されている場合の制御が実行されてピストン13の停止位置を再始動に適した適正範囲内に収めるようにしている。そして、図4の破線枠Bに示すように、ピストンが適正範囲Rに停止した後(時点t5)、車両はさらに減速し続けて時点t6において停車する。従って、この装置によれば、車両の走行中にピストン13を完全に停止させることができる。
ところで、この自動停止制御手段46は、また、エンジン再始動時に、まずエンジン停止時の圧縮行程気筒に対して初回の燃焼を実行してピストンを押し下げ、膨張行程にある気筒のピストン上昇によって筒内圧力を高めるようにしてから、当該膨張行程気筒に対して燃料を噴射させて点火、燃焼を行わせ、かつ、上記圧縮行程気筒における初回燃焼後の燃焼室内に燃焼用空気を存在させ、その空気量に応じた燃料を初回燃焼後の適当な時期に供給することにより、当該気筒がピストン上昇に転じて圧縮上死点を越える際に当該気筒で再燃焼を行わせるように制御するように構成されている。つまり、エンジンの自動再始動時に、ピストンの停止位置が後述する適正範囲にあるときは、始動初期で一旦エンジンを逆転作動させ、その後、正転作動に転じるように制御する。
上記のようにして原則的に再始動モータ等を使用することなく、特定の気筒に噴射された燃料に点火してエンジンを適正に再始動させるためには、上記膨張行程気筒の混合気を燃焼させることにより得られる燃焼エネルギーを充分に確保して続く気筒が圧縮上死点を超えるようにしなければならない。従って、エンジンの自動停止時にピストン13が膨張行程の途中にある上記膨張行程気筒内に充分な空気量を確保しておく必要がある。
すなわち、図5(a),(b)に示すように、エンジンの停止時点で膨張行程および圧縮行程になる気筒では、それぞれ位相が180°CAだけずれているため、各ピストン13が互いに逆方向に作動し、膨張行程気筒のピストン13が行程中央よりも下死点側に位置していれば、その気筒の空気量が多くなって充分な燃焼エネルギーが得られる。しかし、上記膨張行程気筒のピストン13が極端に下死点側に位置した状態となると、圧縮行程気筒内の空気量が少なくなり過ぎてクランク軸3を逆転させるための燃焼エネルギーが充分に得られなくなる。
これに対して上記膨張行程気筒の行程中央、つまり圧縮上死点後のクランク角が90°CAとなる位置よりもやや下死点側の所定範囲、例えば圧縮上死点後のクランク角が100°〜120°CAとなる適正範囲R内にピストン13を停止させることができれば、圧縮行程気筒内に所定量の空気が確保されて上記初回の燃焼によりクランク軸3を少しだけ逆転させ得る程度の燃焼エネルギーが得られることになる。しかも、膨張行程気筒内に多くの空気量を確保することにより、クランク軸3を正転させるための燃焼エネルギーを充分に発生させてエンジンを確実に再始動させることが可能となる。
そこで、ECU2に設けられた上記自動停止制御手段46により、吸気流量制御手段42、燃料供給制御手段43、発電電流制御手段44及び変速制御手段45を制御してピストン13を上記適正範囲R内に停止させるようにしている。当実施形態の自動停止制御手段46は、減速時に過濃混合気の発生を防止するための燃料供給の停止が実行されるか否かで制御が異なるが、まずこの減速時燃料供給の停止が行われない場合におけるエンジンの自動停止制御について説明する。
すなわち、自動停止制御手段46は、図6に示すように、エンジンの自動停止条件の全てが成立した時点T0で、エンジンの目標回転速度を、エンジンを自動停止させないときの通常のアイドル回転速度よりも高い値に設定して安定させる制御を実行する。例えば、通常のアイドル回転速度が650rpm(多段変速機構52がドライブ状態)に設定されたエンジンにおいて、多段変速機構52をニュートラル状態に切り換えてエンジンを自動停止させる場合には(図6に実線で示す)、上記目標回転速度を810rpm程度に設定することにより、エンジンの回転速度Neを通常のアイドル回転速度よりも少し高い回転速度で安定させる制御を実行し、エンジンの回転速度Neが目標回転速度で安定した時点T1で燃料噴射を停止させてエンジンの回転速度Neを低下させるように構成されている。
上記のようにエンジンの自動停止にあたって多段変速機構52をニュートラル状態としている場合には、エンジンの回転速度が安定し、従ってこのエンジンの回転速度のみに基づいて吸気流量制御手段42や発電電流制御手段44を制御することにより当該エンジンの回転速度を調整してピストン13を高確率で適正範囲Rに停止させることができる。
ここで、多段変速機構52をニュートラル状態とした場合にはドライブ状態とした場合に比べエンジンに作用する外部負荷が小さいため、上記したようにエンジンの回転速度を比較的安定させ易いが、反面、車両を再加速等させる場合に多段変速機構52をニュートラル状態からドライブ状態に切り換えなければならず、乗員によるアクセルペダル操作等に対する応答性に劣るため、当実施形態の装置では、減速時燃料停止が実行される場合に多段変速機構52をドライブ状態のまま維持し、この減速時燃料噴射停止(減速時FC)を利用して、すなわち減速時FCから燃料噴射を復帰させないでエンジンを自動停止させるように構成されている。また、この燃料噴射の復帰を無効としつつ、多段変速機構52をドライブ状態に維持した場合に、車両走行中にピストン13を完全に停止させるべく、上記したようにDレンジに設定されている多段変速機構52を停車前の所定時期にエンジンブレーキが作用しない低速段(当実施形態では1速段)にシフトダウンするように構成されている。
このシフトダウン前においては、多段変速機構52がドライブ状態で、かつ、高速段となされ、エンジンブレーキが作用している、すなわち駆動伝達経路が車軸78,79側からクランク軸3に繋がっているため、エンジンの回転速度が不安定、つまりエンジンの低下度合が多段変速機構52をニュートラル状態に設定している場合に比べて不安定になりやすい(図6に破線で示す)。
そこで、この装置では自動停止制御手段46がクランク角センサ30,31と、タービンランナ用回転センサ36からの出力を受けてエンジン回転速度Ne(クランク軸3の回転速度)に対するタービンランナ55の回転速度Teの比である速度比α(=Te/Ne)を検出するとともに、この検出された速度比αが所定の基準値(当実施形態では1)以上であるか、或いは未満であるかによって発電電流制御手段44および変速制御手段45を制御することによってエンジンに対する外部負荷を調整しているので、車軸78,79等から作用する外部負荷の影響を吸収してピストン13を高確率で適正範囲Rに停止させるように構成されている。なお、図6では、多段変速機構52がニュートラル状態に設定されている場合におけるエンジンの回転速度の変化状態を示すタイムチャートを実線で示し、多段変速機構52がドライブ状態に設定され、かつ、速度比αが1未満である場合におけるエンジンの回転速度の変化状態を示すタイムチャートを破線で示している。従って、ニュートラル状態にある場合に比べてエンジン回転速度の低下度合が大きいものとなっている。
このエンジンの自動停止制御を、まず、多段変速機構52がニュートラル状態に設定されている場合について具体的に説明した後、多段変速機構52がドライブ状態に設定されている場合について具体的に説明する。
すなわち、図7に示すように、エンジンを自動停止させる制御動作の初期段階である上記燃料噴射の停止時点T1でスロットル弁23の開度Kを、例えば全開の30%程度の開度に増大させてブースト圧(吸気圧力)Btを上昇させることにより、エンジンの各気筒12A〜12Dに吸入される吸気流量を、エンジン運転の継続に必要な最小限の吸気流量よりも所定量だけ多い状態に設定して各気筒12A〜12Dの掃気性を確保する制御が上記吸気流量制御手段42において実行されるとともに、上記燃料噴射の停止時点T1でオルタネータ28の目標発電電流Geを上記自動停止条件の成立時点T0よりも低下させ(図7に点線で示す)、好ましくは発電電流を0にする(図7に実線で示す)ことにより、クランク軸3の回転抵抗を低減する制御が上記発電電流制御手段44において実行されるように構成されている。
また、上記時点T1で燃焼噴射を停止することにより、エンジンの回転速度Neが、予め設定された基準速度N2(例えば790rpm)以下に低下したことが確認された時点T2で、上記スロットル弁23を閉止する。このスロットル弁23が閉止された時点T2からブースト圧Btが低下し始めてエンジンの各気筒12A〜12Dに導入される吸気流量が減少し、上記スロットル弁23の開放時点T1から閉止時点T2までの間に共通吸気通路21cに導入された空気が、サージタンク21bおよび分岐吸気通路21aを経由することにより、吸気行程を迎える第4気筒12D、第2気筒12B、第1気筒12Aおよび第3気筒12Cの順に所定の輸送遅れをもって導入される。そして、上記吸気の輸送遅れを考慮してスロットル弁23の開放時点T1および閉止時点T2を適正時期に設定することにより、エンジンの停止時に圧縮行程となる第3気筒12Cよりも、膨張行程となる第1気筒12Aに対して、より多くの空気が導入されることになる。
次いで、上記時点T2で、オルタネータ28の目標発電電流Geを一時的に増大させ、かつ後述するようにエンジンの上死点回転速度neが所定範囲内となった時点T3で、オルタネータ28の目標発電電流Geをエンジン回転速度Neのみに対応した値に調節することにより、予め行った実験結果等に基づいて設定された基準ラインに沿ってエンジンの回転速度Neを低下させる制御を実行するように構成されている。
上記のようにエンジンを自動停止させる際に、燃料噴射の停止時点T1から、クランク軸3やフライホイール等が有する運動エネルギーが摩擦抵抗による機械的な損失や、各気筒12A〜12Dのポンプ仕事によって消費されることにより、エンジンのクランク軸3は惰性で数回転し、4気筒4サイクルのエンジンでは10回前後の圧縮上死点を迎えた後に停止する。
そして、エンジンの停止前に最後の圧縮上死点を超えた時点T5の後に圧縮上死点を迎える気筒12Cでは、慣性力によるピストン13の上昇に伴って空気圧が高まり、その圧縮反力によりピストン13が押し返されてクランク軸3が逆転する。このクランク軸3の逆転により、エンジンの停止時に膨張行程となる膨張行程気筒12Aの空気圧が上昇するため、その圧縮反力に応じて膨張行程気筒12Aのピストン13が下死点側に押し返されてクランク軸3が再び正転し始め、このクランク軸3の逆転と正転とが数回繰り返されてピストン13が往復作動した後に停止することになる。このピストン13の停止位置は、上記圧縮行程気筒12Cおよび膨張行程気筒12Aにおける圧縮反力のバランスにより略決定されるとともに、エンジンの摩擦抵抗等の影響を受け、上記最後の圧縮上死点を超えた時点T5におけるエンジンの回転慣性、つまりエンジン回転速度Neの高低によっても変化する。
上記のように、エンジンが自動停止する際に膨張行程にある膨張行程気筒12Aのピストン13を再始動に適した上記適正範囲R内に停止させるためには、まず膨張行程気筒12Aおよび圧縮行程気筒12Cの圧縮反力がそれぞれ充分に大きくなり、かつ膨張行程気筒12Aの圧縮反力が圧縮行程気筒12Cの圧縮反力よりも所定値以上大きくなるように、両気筒12A,12Cに対する吸気流量を調節する必要がある。このため、当実施形態では、燃料噴射の停止時点T1でスロットル弁23の開度Kを大きな値に設定し、その後の時点T2で、上記スロットル弁23を閉止してその開度Kを低減することにより上記吸入空気量を調節するようにしている。
ここで、実際のエンジンでは、吸気通路、例えばスロットル弁23や吸気ポート17等に個体差があり、この通路を流通する空気の挙動が変化するため、吸気流量にバラツキが生じ、上記のようにスロットル弁23の開閉制御を行っても、ピストン停止位置が適正範囲Rから外れることもあった。この点につき、当実施形態では、エンジンの自動停止動作期間中においてエンジンの回転速度が低下する過程で、図8に一例を示すように、各気筒12A〜12Dが圧縮上死点を通過する際のエンジン回転速度(上死点回転速度)neと、エンジンの停止時点で膨張行程にある気筒のピストン停止位置との間に明確な相関関係があることに着目し、燃料噴射を停止した時点T1の後にエンジンの回転速度Neが低下する過程で、各気筒のピストン13が圧縮上死点を通過する際のエンジン回転速度、つまり上死点回転速度neをそれぞれ検出し、この上死点回転速度neの検出値に応じてオルタネータ28の目標発電電流を制御することにより、クランク軸3の回転抵抗を調整してエンジン回転速度Neの低下度合を調節し、これによりピストン停止位置を適正範囲R内に高確率で収めるようにしている。
すなわち、図8は、多段変速機構52がニュートラル状態にある場合に、上記のようにエンジンの回転速度Neが所定速度となった時点T1で燃料噴射を停止し、その後の所定期間にわたりスロットル弁23を開弁状態に維持するようにして、惰性により回転するエンジンの各気筒12A〜12Dに設けられたピストン13が圧縮上死点を通過する際の上死点回転速度neを計測するとともに、エンジンの停止時点における膨張行程気筒12Aのピストン位置を調べ、このピストン位置を縦軸に取るとともに、上記エンジンの上死点回転速度neを横軸に取って、両者の関係をグラフ化したものである。この作業を繰り返してエンジンの停止動作期間中における上記上死点回転速度neと、膨張行程気筒12Aにおけるピストン停止位置との相関関係を示す分布図が得られることになる。
上記の分布図から、エンジンの停止動作期間中における上死点回転速度neと膨張行程気筒12Aにおけるピストン停止位置と間に所定の相関関係が見られ、図8に示す例では、エンジンが停止状態となる前の6番目〜2番目における上死点回転速度neがハッチングで示す範囲内にあれば、上記ピストン13の停止位置がエンジンの再始動に適した範囲R(圧縮上死点後の100°〜120°CA)に入ることが分かる。特に、エンジンが停止状態となる前の2番目の上死点回転速度neについてみれば、図8に示すように、上記上死点回転速度neが略280rpm〜380rpmの範囲内にあるとともに、約320rpmを境にしてそれ以下の低回転側では、上記上死点回転速度neが低下するのに伴ってピストン停止位置が徐々に上死点寄りに変化している。一方、上記上死点回転速度neが320rpm以上の高回転側では、この上死点回転速度neの高低に拘わらず、ピストン13の停止位置が概ね一定になり、略適正範囲R内に入ることが分かる。従って、自動停止制御手段46は、上死点回転速度neを図のハッチング内に収めるように発電電流制御手段44によって目標発電電流を調整し、必要に応じてエンジンの停止に至るまでの上死点通過回数を間引いてピストン13を高確率で適正範囲R内に収めるようにしている。
一方、多段変速機構52がドライブ状態に設定されている場合の自動停止制御手段46によるエンジンの自動停止制御は、基本的にはニュートラル状態に設定されている場合と同様であるが、タービンランナ回転速度Teも加味された速度比αを検出することにより外部負荷による影響を検出し、この速度比αに基づいて発電電流制御手段44および変速制御手段45によるエンジンの負荷調整を実行することにより外部負荷による影響を可及的に相殺すべく構成されている。なお、スロットル弁23の開度Kの調整は上記ニュートラル状態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
すなわち、図9(a),(b)に示すように、燃料噴射の停止時点t1でオルタネータ28の目標発電電流Geを上記自動停止条件の成立時点T0よりも低下させ(図8に点線で示す)、好ましくは発電電流を0にする(図8に実線で示す)ことにより、クランク軸3の回転抵抗を低減する制御が上記発電電流制御手段44において実行されるように構成されている。
また、この燃料噴射の停止時点T1から、この燃焼噴射の停止によりエンジンの回転速度Neが予め設定された基準速度N2(例えば790rpm)以下に低下したことが確認された時点T2に至るまでの間に、自動停止制御手段46によって速度比αが検出され、自動停止制御手段46がこの速度比αに基づいて変速制御手段45を制御するように構成されている。すなわち、自動停止制御手段46は、クランク角センサ30,31およびタービンランナ用回転センサ36からエンジン回転速度Neおよびタービンランナ回転速度Teを検出し、各回転速度Ne,Teから自動停止制御手段46において速度比αを検出すべく構成されている。そして、この自動停止制御手段46によって検出された速度比αが所定の基準値以上、ここでは1以上である場合には、多段変速機構52をドライブ状態のまま維持するように変速制御手段45を制御し、一方、速度比αが1未満である場合には、多段変速機構52をドライブ状態からニュートラル状態に切り換えるように変速制御手段45を制御すべく構成されている。
すなわち、速度比αが1未満である場合には、クランク軸3の回転速度(エンジン回転速度Ne)よりもタービンランナ55の回転速度Teが遅いことから、エンジンに外部負荷が生じている状態にあり、従って多段変速機構52をニュートラル状態に設定することによりエンジンに作用する外部負荷を低減するものとなされている。一方、速度比が1以上である場合には、クランク軸3の回転速度よりもタービンランナ55の回転速度Teが速いことから、逆にタービンランナ55の回転によってクランク軸3が回転させられる状態にあり、或いはエンジンに外部負荷がほとんど作用していない状態にあり、従って多段変速機構52をドライブ状態に設定することにより再加速要求があった場合に迅速に加速し得るように構成されている。
次いで、上記時点T1で燃焼噴射を停止することにより、エンジンの回転速度Neが、予め設定された基準速度N2(例えば790rpm)以下に低下したことが確認された時点T2で、発電電流制御手段44によってオルタネータ28の目標発電電流Geを一時的に増大させるように構成されている。このとき、オルタネータ28の目標発電電流Geの増大後の値は自動停止制御手段46によって決定されている。
すなわち、自動停止制御手段46は、上記検出された速度比αが所定の基準値以上、ここでは1以上である場合には、上記目標発電電流Geを所定値G01(当実施形態では80A)に設定し、一方、速度比αが1未満である場合には、目標発電電流Geを所定値G01よりも小さい値G02(当実施形態では60A)に設定するように構成されている。当実施形態では、燃料噴射の停止時点T1から確認時点T2に至るまでに速度比αが1未満である場合にはニュートラル状態に設定されていることから、多段変速機構52がドライブ状態にある場合にオルタネータ28による目標発電電流Geが所定値G01に設定され、ニュートラル状態にある場合に上記目標発電電流Geが所定値G01よりも低い値G02に設定される。
ここで、図10は、横軸にピストン停止までの圧縮上死点を通過する回数を取り、縦軸に上死点回転速度neを取って、ピストン13を適正範囲R内に高確率で停止させることができる上死点回転速度neの適正範囲rを、速度比αが所定の基準値(当実施形態では1)よりも大きい場合と小さい場合のそれぞれについて示したものである。この図において、斜線で示す範囲は速度比αが小さい場合における上死点回転速度neの適正範囲を示し、ドットで示す範囲は速度比αが大きい場合における上死点回転速度neの適正範囲を示す。上記のように速度比αに応じて時点T2から時点T3に至るまでの間の目標発電電流Geを大小二つの値G01,G02の間で異ならせることにより、燃料供給の停止後、エンジンが停止状態になる前4番目の圧縮上死点に至るまでの間に、速度比αの大小による上死点回転速度neの適正範囲rの開きを徐々に縮小させることができ、エンジン停止状態前4番目の圧縮上死点を通過した時点で両適正範囲を滑らかに合流させることができ、その後のエンジン回転速度Neの制御を実行し易くしている。
そして、多段変速機構52がドライブ状態に設定されている場合に、エンジンの上死点回転速度neが所定範囲内となった時点T3で、オルタネータ28の目標発電電流Geを速度比αに応じてエンジン回転速度Neの低下度合に対応した値G11〜G14に調節することにより、図10に示す基準ラインに沿ってエンジンの回転速度Neを低下させる制御を実行して、車輪側への駆動力が伝達可能な状態となっていることに基づいてエンジンに作用する外部負荷の影響を可及的に低減するように構成されている。
上記時点T3後の目標発電電流の調整は、速度比αが大きいほど目標発電電流も大きく設定され、従って図9(b)に示す時点T3からエンジンの停止前最後の上死点通過時点に至るまでの目標発電電流の値は速度比αが大きい側から順に値G11、G12,G13,G14の値に設定される。なお、この設定値は複数の値が設定されていれば、その個数を問わず、予め行った実験等によって速度比αに応じた目標発電電流の値が設定されるように構成されている。
一方、速度比αに応じて多段変速機構52がニュートラル状態に切り換えられた場合には、エンジンの上死点回転速度neが所定範囲内となった時点T3で、オルタネータ28の目標発電電流Geをエンジン回転速度Neのみに対応した値に調節することにより、図7に示す予め行った実験結果等に基づいて設定された基準ラインに沿ってエンジンの回転速度Neを低下させる制御を実行するように構成されている。
そして、エンジンの停止前に最後の圧縮上死点を超えた時点T5の後に、クランク軸3の逆転と正転とが数回繰り返されてピストン13が往復作動した後に停止することになる。このピストン13の停止位置は、このピストン13の停止位置は、上記圧縮行程気筒12Cおよび膨張行程気筒12Aにおける圧縮反力のバランスにより略決定されるとともに、エンジンの摩擦抵抗等の影響を受け、上記最後の圧縮上死点を超えた時点T5におけるエンジンの回転慣性、つまりエンジン回転速度Neの高低によっても変化し、上記自動停止制御手段46による変速制御手段45および発電電流制御手段44によって多段変速機構52をドライブ状態に設定している場合でも高確率で適正範囲R内に収めることができる。
上記ECU2の自動停止制御手段によりエンジンを自動停止させる際の制御動作を、図11〜図13に示すフローチャートに基づいて説明する。この制御動作がスタートすると、エンジンの自動停止制御を実行することが可能な運転状態にあるか否かを判定する自動停止許可フラグFがONであるか否かを判定する(ステップS1)。この自動停止許可フラグFは、車速が所定値(例えば10km/h)以上、操舵角が所定値以下、バッテリー電圧が基準値以上、かつエアコンがOFF状態にある等の条件が全て満たされている場合に、エンジンの自動停止が可能な状態にあると判断してON状態となるように設定されている。この自動停止許可フラグFも自動停止条件の一種であり、車速が所定値(例えば10km/h)以上という条件が含まれることにより車両走行中においても後述する自動停止手順が実行されることになる。
上記ステップS1でYESと判定した場合には、アクセルセンサ34がOFF状態であるか否かを判定し(ステップS2)、YESと判定されて車両が所定の減速状態にあることを確認した場合には、エンジン回転速度Neが、予め1100rpm程度に設定された減速時燃料噴射停止(減速時燃料カット)用の判断基準値FC・ONよりも大きいか否かを判定し(ステップS3)、NOと判定した場合には、下記ステップS17に移行する。
上記ステップS3でYESと判定してエンジン回転速度Neが上記減速時燃料噴射停止用の判断基準値FC・ONよりも大きいことを確認した場合には、減速時の燃料カット(FC)を実行する(ステップS4)。
次いで自動停止制御手段46によりロックアップクラッチ64が締結状態にあるかを確認するとともに、このロックアップクラッチ64が締結状態にある場合にはエンジン回転速度Neがロックアップ解除回転数Nlu以下になったか否かを判定し(ステップS5)、ロックアップ解除回転数Nlu以下になった場合には(ステップS5でYES)ロックアップクラッチ64を開放してロックアップを解除する(ステップS6)。このロックアップクラッチ64の開放により供回りしていたタービンランナ55とクランク軸3との関係が崩れ、タービンランナ55の回転速度Teとクランク軸3の回転速度(エンジン回転速度Ne)相違してくる。通常、車両の減速時は、タービンランナ55の回転速度がクランク軸3の回転速度よりも大きいことから、このロックアップクラッチ64の開放によってクランク軸3の回転速度が急速に低下する。なお、ステップS5でロックアップクラッチ64が締結状態にない場合には、図示していないがこのステップS6をスキップするように構成されている。
そして、エンジン回転速度Neが、予め900rpm程度に設定された燃料復帰用の判断基準値FC・OFF以下に低下したか否かを判定し(ステップS7)、NOと判定した時点でアクセルがON状態であるか否かを判定し(ステップS8)、アクセルがOFF状態である場合にはステップS7にリターンする。
一方、ステップS7でYESと判定すると、ブレーキセンサ35がON状態であるか否かを判定し(ステップS10)、このステップS10でNOと判定した場合、および上記ステップS8でYESと判定した場合には、乗員による再加速要求があるものと認定して燃料噴射停止(FC)を終了して通常の燃料噴射状態に復帰させ(ステップS9)、リターンする。
上記ステップS10でYESと判定した場合には、最終的に自動停止条件が全て成立していると認定し、車両走行中にエンジンの自動停止のための制御が続けて行われることになる。具体的には、多段変速機構52が高速段(2速段を含む)に設定されているか否か、すなわち、例えば3−4クラッチ69や2−4ブレーキ70が締結されているか否かを判定し(ステップS11)、高速段(2速段を含む)に設定されている場合には1速段にシフトダウンすることにより(ステップS12)、エンジンブレーキが作用しない状態に移行させる。
そして、オルタネータ28の目標発電電流Geを0に設定して発電を停止させる(ステップS13)ことにより、いったんオルタネータ28による負荷を無負荷状態としてその後の有負荷状態に備えるとともに、スロットル弁23を開弁して、その開度Kを例えば30%程度に設定して(ステップS14)掃気性を充分に確保する。なお、当実施形態では減速時FCから自動停止手順に移行するように構成されているので、この減速時FCにより各気筒12A〜12Dの掃気性は充分に確保されているが、ここでさらにスロットル弁23を開放することによりさらなる掃気性の確保が可能となる。
続いて、車速が所定値、例えば20km/hになった時点で、自動停止制御手段46によってクランク角センサ30,31からの検出結果およびタービンランナ用回転センサ36からの検出結果を受けて速度比αを検出し、この速度比αが所定の基準値(当実施形態では1)以上か否かの判定を行う(ステップS15)。速度比αが1以上である場合(ステップS15でYES)にはそのままステップS27に移行し、一方、速度比αが1未満である場合には(ステップS15でNO)、多段変速機構52をニュートラル状態に切り換えて(シフトレンジをニュートラルにして)から(ステップS16)、ステップS27に移行する。
すなわち、エンジンの低下度合が小さい場合には、大きい場合に比べてエンジンの回転速度Neの制御がし易い。従って、速度比αが1以上の場合には、エンジンの外部負荷が小さい状態にあることからエンジン回転速度の低下度合も小さい状態にあり、この場合には多段変速機構52をドライブ状態に維持することにより減速時に運転者のアクセル操作が行われた場合、つまり車両の再加速要求があった場合に、エンジンの自動停止制御が禁止されて再加速応答性が向上することになる。一方、速度比αが1未満の場合には、エンジンの外部負荷が大きい状態にあることからエンジン回転速度の低下度合も大きい状態にあり、この場合には多段変速機構52をニュートラル状態に切り換えることによりピストン13を高確率で適正範囲R内に収めることができる。
一方、ステップS3でNOと判定した場合には、ブレーキセンサ35がON状態となっているか否かの判定を行い(ステップS17)、ブレーキセンサ35がON状態となっていない場合には、ステップS1にリターンし、ON状態となっている場合には、ステップS18に移行してエンジン回転数が所定の回転数N1、例えば860rpm+50〜100rpm程度以上にあるか否かの判定を行う。この判定によってエンジン回転速度NeがN1未満であれば、エンジン回転速度Neを所定値N1を超える程度にまでいったん上昇させ、エンジン回転速度Neが所定値N1以上となった時点でドライブ状態にある多段変速機構52をニュートラル状態に切り換える(ステップS20)。
次いで、上記ステップS17でYESと判定してエンジンの自動停止条件が成立したことが確認された時点T0の後に、予め1sec(秒)程度に設定された所定時間が経過したか否かを判定し(ステップS21)、NOと判定された場合には、アクセルセンサ34がON状態となったか否か、つまり運転者による発進操作が行われたか否かを判定する(ステップS22)。このステップS22でYESと判定された場合には、エンジンの自動停止を行うことなく、ステップS1に移行する。これにより、車速が0となった直後に、或いは減速時に運転者のアクセル操作が行われた場合、つまり車両の再加速要求があった場合に、エンジンの自動停止制御が禁止されて再加速応答性が確保されることになる。
そして、上記ステップS21でYESと判定された時点で、燃料噴射の停止条件(FC条件)が成立したか否か、具体的にはエンジン回転速度Neが目標回転速度となるとともに、ブースト圧Btが上記目標圧P1となった状態で安定したか否かを判定する(ステップS23)。このステップS23でYESと判定され、エンジン回転速度Neおよびブースト圧Btが安定した状態となったことが確認された時点(図7の時点T1)で、燃料噴射を停止させた後(ステップS24)、オルタネータ28の目標発電電流Geを0に設定して発電を停止させるとともに(ステップS25)、スロットル弁23を開弁して、その開度Kを例えば30%程度に設定し(ステップS26)、ステップS27に移行する。
このステップS27の前提として燃料噴射が停止された時点t1から所定時間が経過したか否か、つまり燃料噴射の停止後に2回の圧縮上死点を迎えてその前に噴射された燃料の燃焼が終了したか否かを判定し、終了したと判定した時点で上記点火装置27による点火を停止させる。そして、このステップS27では、エンジンの回転速度Neが予め790rpm程度に設定された基準速度N2以下となったか否かを判定することにより、図6および図8に示す燃料噴射の停止時点T1の後に、エンジンの回転速度Neが低下し始めたか否かを判定し、YESと判定された時点T2でスロットル弁23を閉止状態としてその開度Kを0%とする(ステップS28)。この結果、上記ステップS14,ステップS26でスロットル弁23が開放されて大気圧に近付くように上昇したブースト圧Btが、上記スロットル弁23の閉止操作に応じて所定の時間差をもって低下し始めることになる。なお、上記ステップS28でエンジンの回転速度Neが基準速度N2以下となったと判定された時点T2でスロットル弁23を閉弁状態とするように構成された上記実施形態に代え、エンジンの上死点回転速度neが、例えば790rpm程度に設定された基準速度N2以下になったと判定された時点で、スロットル弁23を閉弁状態とするように構成してもよい。
次いで、多段変速機構52がニュートラル状態に設定されているか否かを判定し(ステップS29)、ニュートラル状態に設定されている場合にはステップS30〜32によってエンジン回転速度Neのみに基づいてオルタネータ28による目標発電電流の値を設定し、一方、ドライブ状態に設定されている場合にはステップS33〜35によってエンジン回転速度Neだけでなく、タービン回転速度Teをも加味し速度比αに基づいてオルタネータ28による目標発電電流の値を設定する。
すなわち、多段変速機構52がニュートラル状態にある場合には(シフトレンジがNレンジにある場合には)、オルタネータ28の目標発電電流Geを予め60A程度に設定された初期値に設定してオルタネータ28を作動させる発電制御を開始する(ステップS30)。
そして、エンジンの上死点回転速度neが第1所定範囲内にあるか否かを判定する(ステップS31)。この第1所定範囲は、予め設定された基準ラインに沿ってエンジンの回転速度Neが低下している過程で、例えばエンジンが停止状態となる前の4番目の圧縮上死点を通過する時点T3における上死点回転速度neに基づいて設定された値であり、具体的には480rpm〜540rpmの範囲内に設定されている。
上記ステップS31でYESと判定され、エンジンの上死点回転速度neが上記所定範囲(480rpm〜540rpm)内にあることが確認された場合には、その時点T3の上死点回転速度neに対応したオルタネータ28の目標発電電流Geを設定する(ステップS32)。すなわち、エンジンの上死点回転速度neが高い程、目標発電電流Geが大きな値に設定されたマップから上死点回転速度neに対応した目標発電電流Geを読み出し、この値に基づいてオルタネータ28の目標発電電流Geを上記初期値(60A)から、上記マップから読み出された値に低下させる制御を実行する。
一方、多段変速機構52がドライブ状態にある場合には(シフトレンジがDレンジにある場合には)、オルタネータ28の目標発電電流Geを速度比αに対応した対応初期値G0に設定してオルタネータ28を作動させる発電制御を開始する(ステップS33)。すなわち、この時点での速度比αを自動停止制御手段46によって検出し、この速度比αが1未満である場合には、対応初期値G0を所定値G01(当実施形態では80A)に設定し、速度比αが1以上である場合には、対応初期値G0を所定値G02(当実施形態では60A)に設定する。
そして、エンジンの上死点回転速度neが第2所定範囲内にあるか否かを判定する(ステップS34)。この第1所定範囲は、図10に示すように予め設定された基準ラインに沿ってエンジンの回転速度Neが低下している過程で、例えばエンジンが停止状態となる前の4番目の圧縮上死点を通過する時点t3における上死点回転速度neに基づいて設定された値であり、具体的には480rpm〜510rpmの範囲内に設定されている。
上記ステップS34でYESと判定され、エンジンの上死点回転速度neが上記所定第2範囲(480rpm〜510rpm)内にあることが確認された場合には、その時点T3の速度比αを検出してこの速度比αに対応したオルタネータ28の目標発電電流Geを対応値G1に設定する(ステップS35)。すなわち、速度比αが大きい程、目標発電電流Geが大きな値G11,G12に設定され、この値に基づいてオルタネータ28の目標発電電流Geを上記対応初期値G0から、上記対応値G1に低下させる制御を実行する。
すなわち、速度比αが1以上の場合には、エンジンの負荷が小さい状態にあることからエンジン回転速度の低下度合も小さい状態にある。従って、目標発電電流Geの初期値を、多段変速機構52がニュートラル状態にある場合に比べて大きい値G01に設定することによりエンジン回転速度Neの低下度合を大きくしている。一方、速度比αが1未満の場合には、エンジンの負荷が大きい状態にあることからエンジン回転速度の低下度合も大きい状態にある。従って、目標発電電流Geの初期値を、対応初期値G01よりも小さい値G02(当実施形態では60A)に設定することによりエンジン回転速度Neの低下度合を小さくしている。その結果、所定の期間経過後に圧縮上死点を通過する際の上死点回転速度neの適正範囲rが徐々に一致して、この適正範囲が一致する所定の時点(当実施形態ではエンジンが停止状態となる前4番目の圧縮上死点通過時点)から速度比αに応じて目標発電電流の値を調整して速度比αに拘わらずピストン13を適正範囲R内に停止させるように構成されている。
従って、例えば車輪側への駆動力の伝達が可能なドライブ状態に自動変速機構50が設定されている場合でもタービンランナ55の回転速度を通じて車輪側からエンジン側に伝達される駆動力等の力によるエンジン回転速度Neの変化の度合を加味することができ、この低下度合を考慮してエンジンに対する負荷を調整することによりエンジン回転速度Neを調整することができる。しかも、このエンジンの自動停止にあたって、自動停止制御手段46によって検出された速度比が所定の基準値(当実施形態では1)よりも小さいときは大きいときに比べて目標発電電流の値を小さくしてエンジンの負荷を相対的に小さく調整するので、自動変速機構50がニュートラル状態にある場合だけでなくドライブ状態にある場合でもピストン13を高確率で適正範囲R内に停止させることができる。
次いで、エンジンの上死点回転速度neが、エンジン停止前の2番目の圧縮上死点を通過する時点t4における上死点回転速度neに基づいて設定された第3所定範囲内、例えば260rpm〜400rpmの範囲内にあるか否かを判定する(ステップS36)。このステップS36でYESと判定され、エンジン停止前の2番目の圧縮上死点を通過したことが確認された時点T4で、エンジンの上死点回転速度neが高い程、燃料噴射量が大きな値に設定されたマップM0から、エンジンの停止時に圧縮行程となる気筒12Cに対する燃料噴射量を設定し、この気筒12Cの圧縮行程後半で燃料噴射を行う(ステップS37)。この気筒12Cに噴射された燃料が気化することによって気筒内温度が低下し、その内部圧力の上昇が抑制されることになる。
そして、エンジンの上死点回転速度neが所定値N3以下であるか否かを判定する(ステップS38)。この所定値N3は、予め設定された基準ラインに沿ってエンジンの回転速度Neが低下している過程で最後の圧縮上死点を超える際の上死点回転速度neに対応した値であり、例えば260rpm程度に設定されている。また、各気筒12A〜12Dが順次圧縮上死点を通過する各時点のブースト圧Btが検知され、その値が記憶される。
上記ステップS38でYESと判定されてエンジンの上死点回転速度neが上記所定値N3以下になったこと、つまりエンジンが最後の圧縮上死点を通過したことが確認された場合には、この時点T5で、その1回前の圧縮上死点を通過する際のブースト圧Btを読み出し、この値をエンジン停止前の2番目の圧縮上死点(TDC)におけるブースト圧Btとして設定する(ステップS39)。
そして、エンジンが最後の圧縮上死点を迎える時点T5における上死点回転速度ne(以下、最終上死点回転速度ne1という)と、エンジン停止前の2番目の圧縮上死点におけるブースト圧Bt(以下、ブースト圧Bt2という)とに基づき、ピストン13が各行程の後期寄り位置(膨張行程気筒12Aでは下死点寄りの位置)で停止する傾向があるか否かを判定する(ステップS41)。具体的には、最終上死点回転速度ne1が所定回転速度N4(例えばN4=200rpm)以上であり、かつ上記ブースト圧Bt2が所定圧力P2(例えばP2=−200mmHg)以下であるとき(真空側であるとき)に、上記行程の後期寄りの位置で停止する傾向が大きい、つまり膨張行程気筒12Aにおけるピストン停止位置が、圧縮上死点後100°〜120°CAとなる適正範囲Rに対して120°CAに近い位置で停止する傾向が大きいため、上記ステップS34でYESと判定される。
上記ステップS40でNOと判定された場合には、エンジンが上記のように行程の後期寄りの位置で停止する傾向が顕著ではなく、行程の比較的に前期寄りの位置、つまり膨張行程気筒12Aにおけるピストン停止位置が、圧縮上死点後100°〜120°CAとなる適正範囲Rに対して100°CAに近い位置または100°CA以下で停止する可能性がある。そこで、ピストン13を上記適正範囲R内により確実に停止させるために、スロットル弁23を開放操作する。例えばスロットル弁23の開度Kを、全開の40%程度に設定された第1開度K1とするようにスロットル弁23を開弁し(ステップS41)、吸気流量を増加させることにより、吸気行程気筒12Dの吸気抵抗を減少させる。この結果、エンジンが行程の後期寄りの位置で停止し易くなり、結果的に膨張行程気筒12Aにおけるピストン13の停止位置が適正範囲R内の下限(100°CA)を超えることが防止されることになる。
一方、上記ステップS40でYESと判定された場合には、エンジンの回転慣性が大きいとともに、圧縮行程気筒12Cへの最終吸気行程における吸気流量が少なく、その圧縮反力が小さい状態にあって、ピストン13が行程の後期寄りの位置で停止し易い条件が既に揃っている。そこで、スロットル弁23の開度Kを、例えば5%程度に設定された第2開度K2とするようにスロットル弁23を操作する(ステップS42)。上記第2開度K2は、エンジンの特性等に応じ、さらに小開度、あるいは閉止状態としてもよい。このようにして吸気行程気筒12Dに適度の吸気抵抗が生じ、ピストン13の停止位置が上記適正範囲Rを超えてさらに後期側となるという事態の発生が効果的に防止される。
次いで、エンジンが停止状態になったか否かを判定し(ステップS43)、YESと判定された時点で、多段変速機構52がニュートラル状態にあるか否かを判定し(ステップS44)、ニュートラル状態ある場合にはドライブ状態(Dレンジ)に復帰させるとともに(ステップS45)、自動停止許可フラグFをOFFとした後に(ステップS46)、制御動作を終了する。
上記自動停止制御手段46によるエンジンの自動停止制御によれば、多段変速機構52が高速段に設定された状態で走行中に、上記自動停止条件としてエンジンの自動停止許可フラグFを判定するとともに(ステップS1)、またブレーキセンサ35がON状態となっているか否かを判定し(ステップS10,S17等)、この判定の結果、自動停止条件が成立していると判定した場合には、車両走行中に各気筒12A〜12Dへの燃料の噴射を停止し(ステップS23)、或いは減速時FCからの燃料供給の復帰を無効化するので(ステップS7〜S10)、車両が停止するまでに高確率でエンジンを完全に停止させることができる。
ここで、当実施形態の自動停止制御手段46では、車速検出手段等によって車両の走行状態を直接検出して、自動停止条件の判定や燃料供給の停止を実行するものではなく、エンジン回転速度Neをクランク角センサ30,31によって検出してこの検出された回転速度が通常のアイドル回転速度(例えばドライブ状態で650rpm)よりも高い場合には車両が走行状態にあるものと認定している。すなわち、エンジン回転速度Neの検出を通じて間接的に車両の走行状態を検出している。なお、車速検出手段を設けて、この車速検出手段からの出力を自動停止制御手段46が受けて、この信号に基づいて各種制御手段41〜45等を制御するものであってもよいし、多段変速機構52が高速段にある場合に車両が走行状態にあると間接的に認定して高速段にある場合に各種制御手段41〜45等を制御するものであってもよい。
そして、この装置では、多段変速機構52がニュートラル状態に設定されている場合に、すなわちエンジンの外部負荷が略無負荷状態にある場合に、減速時における燃料供給の停止を除く燃料供給の停止から所定期間(当実施形態では少なくとも2秒以内)にピストン13が完全に停止することに着目し、通常のブレーキ操作において車両停止に至るまでの期間がこのピストン13の停止までの期間よりも長くなるように燃料供給の停止時期が定められている。つまり、減速時FC制御が実行される場合においては、多段変速機構52が高速段にある場合であって、通常のアイドル回転速度(例えば650rpm)よりも高い減速時FCにおける復帰回転速度FC・OFFに到達した時点にエンジンの自動停止のための燃料供給停止、具体的には燃料供給の復帰を無効化して車両走行中にピストン13を停止させるものとなされている。従って、この自動停止の際に生じるエンジンの振れが車両の走行に伴う振動に紛れて乗員が体感する振動を可及的に軽減することができ、これにより乗員に生じる違和感を抑えて快適性を向上させることができる。
しかも、車両の減速時に燃料供給を停止する減速時FCを有効に活用してこの燃料供給の復帰を無効とすることによりエンジンの自動停止のための燃料供給を停止するので、各気筒12A〜12Dの掃気性を確実に確保することができる。
上記のようにして自動停止状態となったエンジンを再始動させる際の制御動作を図14〜図16に示すフローチャートと、図17および図18に示すタイムチャートとに基づいて説明する。まず、所定のエンジン再始動条件が成立したか否かを判定し(ステップS101)、YESと判定された場合、例えば、停車状態から発進のためのアクセル操作等が行われた場合、バッテリー電圧が低下した場合、あるいはエアコンが作動した場合等には、エンジン水温、自動停止からの経過時間、吸気温度等に基づいて筒内温度を推定する(ステップS102)。
そして、エンジンの自動停止時に検出されたピストン13の停止位置に基づき、圧縮行程気筒12Cおよび膨張行程気筒12A内の空気量を算出する(ステップS103)。つまり、上記ピストン13の停止位置から圧縮行程気筒12Cおよび膨張行程気筒12Aの燃焼室容積が求められる。なお、エンジンの自動停止時には、燃料噴射の停止後にエンジンが数回転してから停止するので膨張行程気筒12Aも新気で満たされた状態にあり、かつ、エンジン停止中に圧縮行程気筒12Cおよび膨張行程気筒12Aの内部が略大気圧となっているので、上記燃焼室容積から新気量が求められることになる。
次に、上記クランク角センサ30,31の出力信号に応じて検出されたピストン13の停止位置が、圧縮行程気筒12Cにおける適正停止範囲R(上死点前BTDC60°CA〜80°CA)のうち、下死点BDC寄りにあるか否が判定される(ステップS104)。このステップS104でYESと判定され、圧縮行程気筒12C内の空気量が比較的に多いことが確認された場合には、上記ステップS103で算出された圧縮行程気筒12Cの空気量に対し、λ(空気過剰率)>1なる空燃比(例えば空燃比=20程度)となるように1回目の燃料噴射を行う(ステップS105)。この空燃比は、ピストン13の停止位置に応じて予め設定された圧縮行程気筒12Cの1回目用第1空燃比マップM1から求められ、λ>1というリーン空燃比に設定される。これにより、圧縮行程気筒12C内の空気量が比較的多いときであっても、逆転のための燃焼エネルギーが過多となることが防止される。
一方、上記ステップS104でNOと判定され、圧縮行程気筒12C内の空気量が比較的に少ないときは、上記ステップS103で算出された圧縮行程気筒12Cの空気量に対してλ≦1なる空燃比となるように1回目の燃料噴射を行う(ステップS106)。この空燃比は、ピストン13の停止位置に応じて予め設定された圧縮行程気筒12Cの1回目用第2空燃比マップM2から求められ、λ≦1(理論空燃比ないしはそれよりリッチ空燃比)に設定されることにより、圧縮行程気筒12C内の空気量が少ないときであっても、逆転のための燃焼エネルギーが充分に得られるようになっている。
次に、圧縮行程気筒12Cへの1回目燃料噴射から気化時間を考慮して設定した所定時間の経過後に、当該気筒12Cに対して点火を行う(ステップS107)。そして、点火後の一定時間内にクランク角センサ30,31のエッジ、つまりクランク角信号の立ち上がり、または立ち下がりが検出されたか否かにより、ピストン13が動いたか否かを判定し(ステップS108)、NOと判定されて失火が生じてピストン13が動かなかったことが確認された場合には、圧縮行程気筒12Cに対して再点火を行う(ステップS109)。
上記ステップS108でYESと判定されてピストン13が動いたことが確認されると、ピストン13の停止位置および上記ステップS102で推定した筒内温度に基づいて、膨張行程気筒12Aに対する分割燃料噴射の分割比(1回目の前段噴射と2回目の後段噴射との比率)を算出する(ステップS121)。上記後段の噴射比率は、膨張行程気筒12Aにおけるピストン停止位置が下死点寄りであるほど、また筒内温度が高いほど大きな値に設定される。
次に、上記ステップS103で算出した膨張行程気筒12Aの空気量に対して所定の空燃比(λ≦1)となるように燃料噴射量を算出する(ステップS122)。この際の空燃比は、ピストン13の停止位置に応じて予め設定された膨張行程気筒12A用の空燃比マップM3から求められる。また、ステップS122で算出された膨張行程気筒12Aへの燃料噴射量とステップS121で算出された分割比とに基づき、膨張行程気筒12Aに対する前段(1回目)の燃料噴射量を算出し、燃料を噴射する(ステップS123)。
次に、上記ステップS102で推定された筒内温度に基づき、膨張行程気筒12Aに対する後段(2回目)の燃料噴射時期を算出する(ステップS124)。この2回目の噴射時期は、ピストン13が上死点側への移動(エンジンの逆転)を開始した後で、気筒内の空気が圧縮されている時期であるとともに、噴射燃料の気化潜熱が圧縮圧力を効果的に減少させるように、つまりピストン13を上死点へ近付けるように設定され、かつこの2回目の噴射燃料が点火時期までに気化する時間が可及的に長くなるように設定される。
次に、ステップS122で算出された膨張行程気筒12Aへの燃料噴射量とステップS121で算出された分割比とによって、膨張行程気筒12Aに対する後段(2回目)の燃料噴射量を算出し(ステップS125)、上記ステップS124で算出された2回目の噴射時期に噴射する(ステップS126)。
上記膨張行程気筒12Aへの2回目の燃料噴射後に、所定のディレイ時間が経過した時点で点火する(ステップS127)。このディレイ時間は、ピストン13の停止位置に応じて予め設定された膨張行程気筒12A用の点火マップM4から求められる。上記点火による膨張行程気筒12Aでの初回燃焼により、エンジンは逆転から正転に転ずる。従って、圧縮行程気筒12Cのピストン13が上死点側に移動し、気筒内のガス(上記ステップS107の点火によって燃焼した既燃ガス)が圧縮され始める。
次に、燃料の気化時間を考慮に入れ、圧縮行程気筒12Cに2回目の燃料を噴射する(ステップS128)。この際の燃料噴射量は、1回目の噴射量とを合計した噴射量に基づく全体の空燃比が可燃空燃比(下限は7〜8)よりもさらにリッチ(例えば6程度)になるように、ピストン13の停止位置に応じて予め設定された圧縮行程気筒12Cの2回目用空燃比マップM5から求められる。この圧縮行程気筒12Cにおける2回目の噴射燃料による気化潜熱に応じて、圧縮行程気筒12Cの圧縮上死点付近における圧縮圧力が低減されることにより、当該圧縮上死点を容易に越えることが可能となる。
なお、上記圧縮行程気筒12Cへの2回目の燃料噴射は、専ら筒内の圧縮圧力を低減させるためになされるものであって、これに対する点火、燃焼は行われず、可燃空燃比よりもリッチなために自着火も起こらず、この不燃燃料は、その後に排気通路22の排気ガス浄化触媒37に吸蔵されている酸素と反応して、無害化される。
上記のように圧縮行程気筒12Cにおいて2回目に噴射された燃料は燃焼しないので、膨張行程気筒12Aでの最初の燃焼に続く次の燃焼は、図17に示すように、吸気行程気筒12D、つまり停止時に吸気行程にあった第4気筒での最初の燃焼となる。この吸気行程気筒12Dのピストン13が圧縮上死点を越えるためのエネルギーとしては、膨張行程気筒12Aにおける初回燃焼のエネルギーの一部が充てられ、上記膨張行程気筒12Aにおける初回燃焼のエネルギーが、圧縮行程気筒12Cが圧縮上死点を乗り超えるためと吸気行程気筒12Dが圧縮上死点を越えるためとの両方に供される。
従って、円滑な始動のためには吸気行程気筒12Dが圧縮上死点を越えるためのエネルギーが小さいことが望ましく、このために上記吸気行程気筒12D内の空気密度を推定し、その推定値から吸気行程気筒12Dの空気量を算定した後(ステップS140)、上記ステップS102で推定した筒内温度に基づいて、自着火を防止するための空燃比補正値を算出する(ステップS141)。すなわち自着火が起こると、その燃焼によって圧縮上死点に至る前にピストン13を下死点側に押し戻す力(逆トルク)が発生し、その分だけ圧縮上死点を越えるためのエネルギーが多く消費されるので望ましくない。そこで上記逆トルクを抑制するために空燃比をリーン側に補正し、圧縮自己着火が起こらないようにしている。
次に、上記ステップS140で算定した吸気行程気筒12Dの空気量と、上記ステップS141で算出した空燃比補正値を考慮した空燃比とに基づき、吸気行程気筒12Dへの燃料噴射量を算出する(ステップS142)。そして、上記吸気行程気筒12Dに対する燃料噴射を行うが、この燃料噴射は、その気化潜熱によって圧縮圧力が低減されるように、つまり圧縮上死点を越えるための必要エネルギーが低減されるように、圧縮行程の後期まで遅延され(ステップS143)、その遅延量は、エンジンの自動停止期間、吸気温度、エンジン水温等に基づいて算出される。
また、上記逆トルクの発生を抑制するため、点火時期を上死点以降に遅延して点火する(ステップS144)。以上の制御が実行されることにより、吸気行程気筒12Dにおいて、圧縮上死点まではその圧縮圧力が小さくなって上死点を越え易くなり、上死点を過ぎた時点で燃焼エネルギーによる正転方向のトルクが発生することになる。
上記ステップS144の後、通常の制御状態に移行してもよいが、当実施形態では、さらにエンジン回転速度の吹上がりを抑制する制御を行っている。このエンジン回転速度の吹上がりとは、吸気行程気筒12Dでの初回燃焼以降、エンジン回転速度が必要以上に急上昇することをいい、加速ショックが発生したり、運転者に違和感が与えられたりする原因となるので望ましくない。上記エンジン回転速度の吹上がりは、自動停止期間中の吸気圧力(スロットル弁23より下流の圧力)が略大気圧となっているために、始動直後(吸気行程気筒12Dでの初回燃焼以降)の各気筒12A〜12Dでの燃焼エネルギーが通常のアイドル運転時の燃焼エネルギーに比べて一時的に大きくなることにより発生する。このために下記のステップS145〜S158で、上記エンジン回転速度の吹上がりを抑制する制御を行っている。
まず、オルタネータ28の目標電流値を通常より高めに設定して発電を開始し(ステップS145)、このオルタネータ28の発電によってクランク軸3の回転抵抗(エンジンの外部負荷)を増大させてエンジン回転速度の吹上がりを抑制する。次に、吸気圧センサ26によって検出された吸気圧力が、エンジンの自動停止を行わない場合の通常のアイドル時における吸気圧力より高いか否かを判定し(ステップS150)、YESと判定されると、エンジン回転速度の吹上がりが起こり易い状態となっているので、スロットル弁23の開度を通常のアイドル運転時におけるスロットル開度よりもさらに小さくすることにより(ステップS151)、燃焼エネルギーの発生量を抑制する。
そして、排気通路22に設けられた排気ガス浄化触媒37の温度が活性温度以下であるか否かを判定し(ステップS152)、YESと判定された場合には、気筒内の目標空燃比をλ≦1なるリッチ空燃比に設定するとともに(ステップS153)、点火時期を上死点以降に遅延させる(ステップS154)。これにより、上記触媒の温度上昇が促進されるとともに、点火時期の遅延によって燃焼エネルギーの発生量が抑制される。
一方、上記ステップS152でNOと判定されて排気ガス浄化触媒37の温度が活性温度よりも高いことが確認された場合には、気筒内の目標空燃比をλ>1のリーン空燃比に設定して成層リーンの燃焼状態とする(ステップS158)。このリーン燃焼によって燃料の消費が抑制されつつ、燃焼エネルギーの発生量が抑制されることになる。
上記ステップS154またはステップS158を経てステップS150に戻り、このステップS150でNOと判定されてエンジンの自動停止を行わない場合の通常のアイドル時によりも吸気圧力が低下したことが確認されるまで、上記制御動作が繰り返される。このステップS150でNOと判定されると、もはやエンジン回転速度の吹上がりが生じる虞がないので、オルタネータ28の発電電流も含めて通常の制御状態に移行する(ステップS160)。
上記の再始動制御が実行されることにより、図17および図18に示すように、まず圧縮行程気筒12C(第3気筒)において1回目の燃料噴射J3が行われ、その点火によって燃焼(図17中の(1))が行われる。この燃焼(1)による燃焼圧(図18中のa部分)で、圧縮行程気筒12Cのピストン13が下死点側に押し下げられてエンジンが逆転方向に駆動される。ここで、圧縮行程気筒12Cの1回目の燃料噴射J3が、比較的空気量の多いときにはリーン空燃比(λ>1)、少ないときには理論空燃比ないしはそれよりリッチ空燃比(λ≦1)となるように噴射されるので、エンジン逆転のための適度な燃焼エネルギー、すなわち膨張行程気筒12A内の空気を充分圧縮しつつ、その圧縮上死点を超えて逆転し過ぎることのない程度の燃焼エネルギーを得ることができる。
上記エンジンの逆回転開始に伴って膨張行程気筒12A(第1気筒)のピストン13が上死点方向に動き始める。また、その直後に膨張行程気筒12Aでの1回目(前段)の燃料噴射J1が行われ、気化し始める。そして、膨張行程気筒12Aのピストン13が上死点側(望ましくは行程中央より上死点寄り)に移動し、上記気筒12A内の空気が圧縮された時点で2回目(後段)の燃料噴射J2が行われる。この噴射燃料の気化潜熱によって圧縮圧力が低減し、ピストン13がより上死点に近付くので圧縮空気(混合気)の密度が増大する(図18中のb部分)。
上記膨張行程気筒12Aのピストン13が上死点に充分に近付いた時点で当該気筒12Aに対する点火が行われて、気化が促進された1回目の噴射燃料(J1)と2回目の噴射燃料(J2)とが燃焼し(図17中の(2))、その燃焼圧(図18中のc部分)によりエンジンが正転方向に駆動される。
また、圧縮行程気筒12Cに対して適当なタイミングで可燃空燃比よりもリッチな燃料が噴射(J4)されることにより(図17中の(3))、この圧縮行程気筒12Cでは燃焼させないものの、燃料噴射による気化潜熱によって上記圧縮行程気筒12Cの圧縮圧力が低減され(図18中のd部分)、これに応じて当該圧縮上死点(始動開始から最初の圧縮上死点)を超えるために消費される膨張行程気筒12Aの最初の燃焼エネルギーが低減されることになる。
さらに、次の燃焼気筒である吸気行程気筒12Dにおける燃料噴射(J5)の時期を、燃料の気化潜熱によって気筒内の温度、および圧縮圧力を低下させる適正なタイミング(図17中の(4)に示すように、例えば圧縮行程の中期以降)に設定しているため、上記吸気行程気筒12Dの圧縮行程で圧縮上死点前に自着火することが防止される。また、上記吸気行程気筒12Dの点火時期が圧縮上死点以降に設定されていることも相俟って、圧縮上死点前での燃焼が防止される(図18中のe部分)。つまり燃料噴射(J5)による圧縮圧力の低減と圧縮上死点前の燃焼を行わないことにより、膨張行程気筒12Aにおける初回燃焼のエネルギーが上記圧縮上死点(エンジン始動開始時点から2番目の圧縮上死点)を超えるために消費されるのを抑制することができる。
このようにして膨張行程気筒12Aにおける初回燃焼(図17中の(2))のエネルギーにより、再始動開始後の最初の圧縮上死点(図17中の(3))と、2番目の圧縮上死点(図17中の(4))とを超えることが可能となり、円滑で確実な始動性を確保することができ、それ以降(図17中の(5)、(6)・・・)は、触媒の温度に応じて空燃比をリーン(λ>1)にし、あるいは点火時期を遅延させることにより、エンジン回転速度の吹上がりを防止しつつ、通常運転に移行する。
なお、以上説明したエンジンの始動装置は、本発明に係る始動装置が適用される装置の一実施形態であって、装置の具体的な構成等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であり、変形例を以下に説明する。
(1)上記実施形態では、多段変速機構52がエンジンブレーキが作用する2速段を含む中高速段にある場合に1速段にシフトダウンしてエンジンブレーキが作用しない状態に切り換えて車両走行中にピストン13を完全に停止させるように構成されているが、エンジンブレーキが作用する中高速段のまま車両を停止させるように構成してもよい。この場合でも、車両が停止するまでピストン13は完全に停止しないものの、車両停止と同時ないしは直後にピストン13も停止することになりエンジンの自動停止に伴う振動が停車時の挙動に紛れて乗員が体感する上記自動停止に伴う振動を軽減することができる。
(2)上記実施形態では、過濃混合気の発生を防止する観点から車両減速時において燃料供給の停止が実行される減速時FCが実行され、この減速時FC期間から燃料の供給を復帰させる所定回転速度において自動停止条件が成立しているか否かの判定を行い、自動停止条件が成立している場合に燃料供給の復帰を無効としてそのままエンジンを自動停止させるものとなされているが、例えば図19に示すように減速時FCを実行しない場合に多段変速機構52をニュートラル状態としてエンジン回転速度を安定させ、その後、燃料供給を停止するものであってもよい。
すなわち、図19に示すように、エンジン回転速度Neがロックアップ解除回転数Nluに到達した時点t2でロックアップクラッチ64を開放してアンロックアップ状態に切り換える。この切り換えに伴ってエンジン回転速度Neが急速に低下して、通常のアイドル回転速度(例えばDレンジで650rpm)よりも高く設定された速度(例えば860rpm)になった時点t3’で多段変速機構52をニュートラル状態に設定するとともに、エンジン回転速度をこの回転速度で安定させて、この時点t3’から所定時間経過した後に燃料供給制御手段43による燃料の供給を停止して上記ニュートラル状態における基本制御が実行されるものとしてもよい。
このように自動停止制御手段46を制御しても、上記と同様の効果を得られ、乗員における快適性を向上させることができる。
なお、図19において速度比αを示すタイムチャートは時点t3’でドライブ状態からニュートラル状態に切り換えられることにより、タービンランナ55が慣性で数回転した後停止することから、時点t3’以降の速度比αは省略している。
(3)なお、上記実施形態では、サージタンク21bの上流側に配設されたスロットル弁23からなる吸気流量調節手段により各気筒12A〜12Dへの吸気流量を調節するように構成した例について説明したが、これに限らず、各気筒12A〜12Dに設けられた吸気弁19のリフト量を変更する周知の可変動弁機構を設けることにより、上記各気筒12A〜12Dへの吸気流量を調節するように構成してもよく、あるいは各気筒12A〜12Dに接続された分岐吸気通路21aに個別に弁体が配設された多連型スロットル弁を用いて上記各気筒12A〜12Dへの吸気流量を調節するように構成してもよい。
(4)上記実施形態におけるエンジンの始動装置では、自動停止状態にあるエンジンを再始動させる際に、圧縮行程気筒12Cに第1回の燃焼を行わせることにより、最初にクランク軸3を少しだけ逆回転させて膨張行程気筒12A内の混合気を圧縮した後に点火するようにしているが、本発明に係るエンジンの始動装置は、これに限るものではなく、膨張行程気筒12Aに対して最初に点火を行うことによりエンジンを再始動させるように構成してもよい。
(5)上記実施形態では、エンジンの再始動時に、膨張行程気筒12Aで初回燃焼のための燃料噴射を分割噴射(J1+J2)としたが、これを、気化潜熱による圧縮圧力の低減と気化性能の確保とが可及的に両立できるタイミング(所定燃料噴射時期)を実験等によって策定し、この所定燃料噴射時期における1回の燃料噴射としてもよい。また、エンジンの再始動時に、膨張行程気筒12Aにおいて最初の燃焼のために行う分割燃料噴射は、必要に応じて3分割以上としてもよい。
(6)上記実施形態では省略しているが、エンジン再始動時において、所定の条件成立時、例えばピストン停止位置が適正停止範囲R内にない場合や、始動後の所定時期までにエンジン回転速度が所定値に達しない等に、スタータモータによるアシストを伴う制御を行うようにしてもよい。