JP2005344012A - ゴム組成物及び歯付ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】 自動車等のエンジンに使用され、OHC用歯付ベルトとして、高負荷での使用に耐え得る歯付ベルトを提供する。
【解決手段】 長手方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部2と、心線3を埋設した背部4を有し、前記歯部2の表面に歯布5を被覆した歯付ベルト1において、背部4が、(イ)水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを重量比40:60〜50:50で配合した複合ポリマー体と(ロ)水素化ニトリルゴムとを重量比が3:97〜80:20となるよう配合したゴム成分100重量部に、ポリオレフィン・シリコーン共重合体0.1〜30重量部と有機過酸化物0.2〜10重量部を配合したゴム組成物を架橋してなるものであることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 長手方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部2と、心線3を埋設した背部4を有し、前記歯部2の表面に歯布5を被覆した歯付ベルト1において、背部4が、(イ)水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを重量比40:60〜50:50で配合した複合ポリマー体と(ロ)水素化ニトリルゴムとを重量比が3:97〜80:20となるよう配合したゴム成分100重量部に、ポリオレフィン・シリコーン共重合体0.1〜30重量部と有機過酸化物0.2〜10重量部を配合したゴム組成物を架橋してなるものであることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、歯付ベルトに関し、特に、高負荷の掛かる自動車用OHC歯付ベルトに関する。
省エネルギー、省資源を目指す社会的背景のもとに、農業機械や自動車等に用いられている歯付ベルトにおいても長寿命化、高負荷化が重要な課題となっている。近年、自動車のOHC歯付ベルトにおいては、自動車の車体スペースの小型化、軽量化及び燃費節約の観点から、複数のプーリに1本の歯付ベルトを曲がりくねった状態で取り付けて駆動させるようになり、より高負荷が掛かる傾向にあった。
このような条件下では、ベルトを架掛しているプーリ軸が撓んで歯付ベルトが片寄り走行し、プーリフランジ等に接触してベルト側面の異常摩耗や損傷が発生し易いといった問題が指摘されていた。更に、自動車OHC歯付ベルトは、背面アイドラープーリと接触して背面駆動をおこなうため、ベルト背面ゴムが激しく磨耗したり、クラックが生じるといった問題もあった。
このような諸問題に対して、歯付ベルトの歯部や背部を水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸を含有したゴム組成物で構成することによって、耐磨耗性や耐クラック性を改善することが提案されている。(例えば特許文献1参照)
特公平6−37576号公報
これにより、背面部の耐磨耗性、耐クラック性は向上したものの、近年における高負荷化に対応するには充分とは言えず、未だに満足できる改良策が見出されていない。
本発明は上記問題に鑑みてなされてものであり、歯付ベルトの背部に使用されるゴムの強度や引裂力などの諸物性が高く、しかも背面の摩擦係数を下げると共にその効果を持続せしめることで、高負荷下で発生するベルト背面の磨耗、損傷及びベルトのプーリフランジ部への移動によるベルトの端面摩耗、損傷を防止し、それによりエンジンの正常な動きを維持するベルトを提供する。
即ち、本発明は、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩を配合したゴム成分100重量部に、ポリオレフィン・シリコーン共重合体0.1〜30重量部と、有機過酸化物0.2〜10重量部を配合したことを特徴とするゴム組成物である。
更に本発明は、ゴム成分が(イ)水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを配合した複合ポリマー体と(ロ)水素化ニトリルゴムとを配合したものである;ゴム成分が(イ)水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを重量比40:60〜50:50で配合した複合ポリマー体と(ロ)水素化ニトリルゴムとを重量比が3:97〜60:40となるよう配合したものである;ポリオレフィン・シリコーン共重合体がポリオレフィンとポリシロキサンのグラフト共重合体である;ポリオレフィンがポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、そしてエチレン−アクリル酸エチル共重合体のうちから少なくとも1種選ばれてなる ゴム組成物でもある。
また本発明は、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部と、心線を埋設した背部を有する歯付ベルトにおいて、前記背部が、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩を配合したゴム成分100重量部に、ポリオレフィン・シリコーン共重合体0.1〜30重量部と、有機過酸化物0.2〜10重量部を配合したゴム組成物を架橋してなるものであることを特徴とする歯付ベルトである。
そして、更に本発明は、ゴム成分が(イ)水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを配合した複合ポリマー体と(ロ)水素化ニトリルゴムとを配合したものである;ゴム成分が(イ)水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを重量比40:60〜50:50で配合した複合ポリマー体と(ロ)水素化ニトリルゴムとを重量比が3:97〜60:40となるよう配合したものである;ポリオレフィン・シリコーン共重合体がポリオレフィンとポリシロキサンのグラフト共重合体である;ポリオレフィンがポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、そしてエチレン−アクリル酸エチル共重合体のうちから少なくとも1種選ばれてなる 歯付ベルトでもある。
水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を配合したゴム成分に、ポリオレフィン・シリコーン共重合体と有機過酸化物を特定量配合することで、架橋物の強度、硬度、引裂力などの諸物性が高いゴム組成物が得られる。また表面の摩擦係数を低減せしめるとともに、その効果を持続せしめることが可能となる。
そして背部を該ゴム組成物で構成した歯付ベルトは、ベルトの屈曲性を損なうことなく、ベルトの物性を向上させることができる。また、ベルト背面とアイドラープーリとの間の摩擦係数を低減することができるため、ベルト背面側に帆布を設けることなく、高負荷での使用に耐え得る歯付ベルトが得られる。
以下、本発明の実施の形態例について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態例に係る歯付ベルトを示す斜視図である。
この歯付ベルト1は、図示しない背面アイドラープーリを使用して、少なくとも2軸間で回転駆動するものであり、図1に示すようにベルトの長手方向に沿って所定ピッチで列設された複数の歯部2と、心線3を埋設した背部4と、歯部2の表面を被覆する歯布5と、で構成されている。又、歯布5は、ベルトの長手方向に延在する緯糸6と、ベルトの幅方向に延在する経糸7とを織成して成る繊維材料を基材として構成される。
ここで背部4は、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩を配合したゴム成分100重量部に、ポリオレフィン・シリコーン共重合体0.1〜30重量部と、有機過酸化物0.2〜10重量部を配合したゴム組成物を架橋してなるもので構成される。
ゴム成分は、水素化ニトリルゴム(以下、H−NBRという。)に共架橋剤として不飽和カルボン酸金属塩を配合することによって、引張弾性率や硬度を高めるようにしている。
より具体的には、ゴム成分は(イ)H−NBRと不飽和カルボン酸金属塩とを配合した複合ポリマー体と(ロ)H−NBRとを配合したものを用いることが、引張弾性率、硬度、切断伸度、そして引裂強度などの諸物性を高める上で好ましい。このように構成することで、不飽和カルボン酸金属塩がポリマー分を高次構造にし、不飽和カルボン酸金属塩がポリマー分で微細に分散したフィラーを形成すると考えられ、当初からH−NBR全量分に不飽和カルボン酸金属塩を配合するよりも大きな引張り強さを有することができる。
より望ましくは、ゴム成分は(イ)H−NBRと不飽和カルボン酸金属塩とを重量比40:60〜50:50で配合された複合ポリマー体と(ロ)H−NBRとを重量比1:99〜80:20、更に好ましくは3:97〜60:40、で配合したゴム成分を用いることが、引張弾性率や切断伸度、さらに高い引き裂き強度や硬度などを確保する為に好ましい。
本発明で用いるH−NBRとしては、耐熱性の観点から水素添加率が少なくとも90%以上であることが好ましく、更に好ましくは92〜98%である。
不飽和カルボン酸金属塩は、カルボキシル基を有する不飽和カルボン酸と金属とがイオン結合したものであり、不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸が好ましく、金属としてはベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、錫、鉛、アンチモンなどを好ましく用いることができる。
ポリオレフィン・シリコーン共重合体は、シリコーンをポリオレフィンと共重合せしめることにより、ゴム成分との相溶性に優れるといった特性がある。またシリコーン由来の性質により、加工性改良効果や摩擦係数低減効果を奏するものである。そして後述の有機過酸化物で架橋することによって、ポリオレフィンがゴム成分と共架橋して加硫成形体からブルームすることを抑制し、ひいては摩擦係数低減効果を長期間持続せしめることができるといった効果がある。
ポリオレフィン・シリコーン共重合体の構成単位としては、ポリオレフィンとポリシロキサンの共重合体、ポリオレフィンとシリコーンオリゴマーの共重合体などがあり、共重合体の構造としては、グラフト共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、デンドリマー共重合体などが挙げられるが、好ましくはポリオレフィンとポリシロキサンのグラフト共重合体が用いられる。この場合、ポリオレフィン並びにグラフト重合点がゴム成分と共架橋して、ブルームを抑制する効果があると考えられる。ポリオレフィンとポリシロキサンのグラフト共重合体は、例えばポリオレフィンとポリシロキサンを加熱混練してグラフト反応せしめることにより得られたものが知られているが、製造方法はこれに限定されるものではない。
ポリオレフィンとしては、エチレン系重合体またはプロピレン系重合体などがある。エチレン系重合体としては、高圧法ポリエチレン、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが挙げられるが、ポリエチレン、EVA、EEAのうちから少なくとも1種選ばれることが望ましい。プロピレン系重合体としては、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1三元共重合体などが挙げられる。
シリコーンとしては、例えばポリシロキサンがあり、具体的には、ビニルメチル−ジメチルポリシロキサン、ビニルメチル−フェニルメチル−ジメチルポリシロキサンなどのオルガノポリシロキサンがある。
ポリオレフィン・シリコーン共重合体の配合量は、上述のゴム成分100重量部に対して、0.1〜30重量部である。0.1重量部未満の場合は加工性の改良や摩擦係数低減効果が充分ではなく、30重量部を超えると架橋物の強度や引裂力などのゴム物性が極端に低下し、背部4の耐磨耗性や耐クラック性に悪影響が見られる。
有機過酸化物は、ゴム成分を架橋すると共に、ポリオレフィン・シリコーン共重合体とゴム成分とを共架橋せしめる架橋剤である。有機過酸化物として例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−モノ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等を挙げることができる。この有機過酸化物は、単独もしくは混合物として、ゴム成分100重量部に対して0.2〜10重量部配合する。0.2重量部未満であれば架橋度が低くなり、10重量部を超えると弾性が不足するといった問題がある。
上記ゴム組成物には、上述の配合剤以外にも通常のゴム組成物に配合可能な配合剤を配合することができる。
尚、背部4の硬度を80度(JIS−A)以上、好ましくは85度以上とすることで、応力が負荷された場合であっても、ゴムの変形を抑制することができる。例えば、不飽和カルボン酸金属塩以外の他の共架橋剤を配合することによって架橋度を向上させ、硬度を高めることができる。不飽和カルボン酸金属塩以外の他の共架橋剤としては、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパン(TMP)、N,N'−m−フェニレンジマレイミド、エチレン−グリコール−ジメタクリレートのうちから選ばれた1種又は2種以上の組合せを好ましく用いることができる。これらの共架橋剤は、前述のゴム成分100重量部に対して0.5〜10重量部を添加することが好ましい。これらの共架橋剤を配合することで、心線とゴム組成物との接着力を低下させることなく、ゴム組成物のモジュラスを高くすることができ、歯付ベルト寿命が向上する。これらの共架橋剤の配合量が、ゴム成分100重量部に対して0.5重量部よりも少ないと、ゴム組成物のモジュラス向上の効果が小さく、また10重量部よりも多いとゴム組成物の破断伸びの低下が著しく、歯付ベルトの耐久寿命が低下するといった不具合がある。
即ち、本発明のゴム組成物は、強度、引裂力が高く、高硬度を有し、表面の摩擦係数が低く、しかも該摩擦係数低減効果を長期に渡り維持できるといった特徴がある。そして本発明の歯付ベルト1は背部4を該ゴム組成物で構成してなるものである。
以上のように構成される背部4に埋設される心線3は、一般には、ガラス繊維及びアラミド繊維が使用される。また、ポリベンゾオキサゾール、ポリパラフェニレンナフタレート、ポリエステル、アクリル、カーボン、スチールを組成とする撚コードのいずれでも使用できる。ガラス繊維の組成は、Eガラス、Sガラス(高強度ガラス)のいずれでもよく、フィラメントの太さ及びフィラメントの集束本数及びストランド本数に制限されない。
この心線3は接着処理を施されることが好ましく、処理液として例えばレゾルシンとホルムアルデヒドの初期縮合物とゴムラテックスを混合したRFL液が好ましく用いられる。レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比は1:1.5〜3にすることが接着力を高める上で好ましい。また、レゾルシンとホルムアルデヒドの初期縮合物は、これをラテックスのゴム分100重量部に対してその樹脂分が2〜30重量部になるようにラテックスと混合したうえ、全固形濃度を5〜40%濃度に調節されることが望ましい。このラテックスとしては、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、H−NBR、エピクロルヒドリン、天然ゴム、SBR、クロロプレンゴム、オレフィン−ビニルエステル共重合体等が使用できる。
心線3は、このRFL液による処理後、フェノール樹脂とニトリル基含有高飽和重合体ゴムを含む処理剤で処理することができる。ここで、ニトリル基含有高飽和重合体ゴムとしては、例えば、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、H−NBR等を使用することができる。また、高飽和重合体とは、水添加率が高いものをいい、本実施形態例では、水添加率が80%以上、好ましくは90%以上のものを使用することが望ましい。また、処理剤中のフェノール樹脂配合量は、ニトリル基含有高飽和重合体ゴム100重量部に対して1〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは3〜20重量部である。このように、心線3をフェノール樹脂とニトリル基含有高飽和重合体ゴムを含む処理剤で処理することによって、前述の背部4に含まれているフェノール樹脂とが、加硫時に相溶化し、心線3と背部4との接着力が向上する。
また、歯布5を構成する緯糸7と、経糸6を形成する繊維材料の材質としては、それぞれポリアミド、アラミド、ポリエステル、ポリベンゾオキサゾール、綿等の何れか又はこれらの組合せが採用できる。繊維の形態は、フィラメント糸及び紡績糸の何れでも良く、単独組成の撚糸又は混撚糸、混紡糸の何れであっても良い。また、織成構成は綾織り、繻手織り、平織り等何れであっても良い。
この歯布5は、RFL液、イソシアネート溶液あるいはエポキシ溶液によって処理されたものであることが好ましい。これらで、処理した歯布5は、歯部2に用いたゴム組成部を含浸付着させ加硫したゴム付帆布となる。具体的にはゴム組成物に使用したゴム成分を溶剤によって溶解したゴム湖を作製した後、これを含浸付着させ、そして乾燥させた後に加硫してゴム付帆布にする。また、必要に応じて老化防止剤を添加することもできる。
また、前記ゴム組成物に用いたゴム成分にカーボンブラック、シリカなどの補強剤、有機過酸化物、加硫促進剤などを同時に混合配合し、これを溶剤によって溶解したゴム糊を使用することもできる。これによって、歯布5表面に潤滑性を持たせることが可能となる。
なお、ゴム組成物を溶解する溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどから選ばれた溶剤を使用することができる。そして、ゴム組成物を溶解して得られたゴム糊は、この歯布5に塗布、吹き付け等によって含浸付着させ加硫させることが好ましい。
以上のように、構成されている本実施形態例に係る歯付ベルトは、背部4を水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を配合したゴム成分100重量部に、ポリオレフィン・シリコーン共重合体0.1〜30重量部と、有機過酸化物0.2〜10重量部を配合したゴム組成物を架橋してなるもので構成することによって、ベルトの屈曲性を損なうことなく、強度や硬度などのベルトの物性を向上させることができる。また、共重合体のシリコーン由来の性質により、ベルト背面と背面アイドラープーリとの間の摩擦係数を低減することができるとともに、共重合体がゴム成分と共架橋しているためブリードし難く、長期間に渡りその効果を持続せしめることができる。このため、ベルト背面側に帆布を設けることなく、高負荷での使用に耐え得る歯付ベルトとすることができる。
また、歯部2側のゴムにも同様のゴム組成物を使用することもできる。この場合、歯部2表面に貼付されている歯布5からも該ゴム組成物が表出し、歯部2側の摩擦係数も低減することが可能である。加えて、耐摩耗性も向上し、ベルト寿命がより一層長寿命化する効果が得られる。
次に、本発明に係る歯付ベルトを実施例によって具体的に説明する。
表1に示す各種配合(実施例1〜5、比較例1〜4)からなるゴムをバンバリーミキサーで混練し、カレンダーロールにて所定の厚さのゴムシートを調整した。各ゴムシートの物性を表1に併記する。また、歯布としてナイロン帆布を、心線としてガラスコードを用いた歯付ベルト(105MY:ベルト幅30mm、ベルト歯形MY、歯数105歯、歯ピッチ8.0mm)を作製した。
歯付ベルトの作製方法は次の通りである。まず、ベルト作製用の金型に歯布となるナイロン帆布を巻き付け、次に心線となるガラスコードを所定ピッチにてスパイラルに巻き付けた。そして、該ガラス心線の上に上記のゴムシートを貼り付けて、未加硫ベルトスリーブを作製した。その後、該未加硫ベルトスリーブを巻き付けた金型を加硫缶に投入し、通常の圧入方式により165°Cにて30分加圧加硫して、加硫ベルトスリーブを得た。この加硫ベルトスリーブのベルト背面を一定厚さに研磨し、一定幅にカットして上記サイズの歯付ベルトを得た。各歯付ベルトの背面硬度(JIS−A)を表1に示す。
またJIS K7218に従ってリングスラスト試験を実施し、ベルト背面のスラスト摩擦係数を測定した。リングスラスト試験の条件は、外径25.6mm、内径20.0mmのリングを使用し、荷重200N、速度0.25m/secで室温雰囲気下、10分後の摩擦係数を測定した。結果を表1に併記する。
表1より、ポリオレフィン・シリコーン共重合体を適量配合した実施例1〜4は不飽和カルボン酸混合H−NBR比が増大するにつれて、高硬度、高強度の配合となっていた。一方、H−NBRを単独で配合した比較例3は硬度が62と最も低く、ポリオレフィン・シリコーン共重合体を多量に配合した比較例2では、硬度は高いものの、強度、伸び、引裂力といった諸物性値が低下しているのが知見できた。またポリオレフィン・シリコーン共重合体及び共架橋剤を含まない比較例4では、実施例3と比較して硬度が8ポイント低下しているのが知見できた。また、実施例1〜4の歯付ベルトはベルト背面の摩擦係数が非常に低いが、他方、ポリオレフィン・シリコーン共重合体を配合していない比較例1,3,4では摩擦係数が高かった。
更に、実施例1,4及び比較例1,2の歯付ベルトについて、高負荷走行における耐久性を評価した。試験装置は、図2に示す22歯のクランクプーリ14、44歯のカムプーリ11、同じく44歯のインジェクションポンププーリ12、ウォータポンププーリ13(直径109.5mm)、オートテンショナー15(直径72mm)からなるレイアウトの試験装置を使用した。走行試験は、室温下、クランクプーリ回転数4000rpmで、ベルト1mm幅あたり15Kgfという高負荷を与えて100時間打ち切り走行を行った。そして走行試験後の各歯付ベルトの状態を目視で確認した。
結果、実施例1及び4はベルト端面の損傷、背面のクラック発生が認められなかった。一方、比較例1はベルト端面の損傷並びに背面のクラック発生が確認された。また比較例2では背面にクラックの発生が認められた。
即ち、スラスト摩擦係数の低かった実施例1及び4は100時間後も損傷が発生せず、耐高負荷について有効であることが確認できた。これはベルト背面の摩擦係数が低く、しかもそれが長時間に渡り維持されたため、100時間走行においても力がうまく逃げていると考えられる。一方、スラスト摩擦係数の高かった比較例1は、100時間走行後端面が損傷しており、背部にクラックが生じていた。これは、背面の滑りが悪く、背部にプーリがきつく当たり、クラックが生じたものと考えられる。また、比較例2は摩擦係数が低いものの、背部を構成するゴムの引裂力が低いため、背面にクラックが生じたと考えられる。
本発明のゴム組成物は、歯付ベルト用のゴム組成物として好適であるが、これに限らず一般の伝動ベルトなどにも適用可能なものである。また本発明の歯付ベルトは、駆動側の回転により従動側のロボットアームを駆動させる駆動装置や、自動車のオーバーヘッドカムシャフトの駆動装置等に使用することが可能なものである。
1 歯付ベルト
2 歯部
3 心線
4 背部
5 歯布
6 経糸
7 緯糸
2 歯部
3 心線
4 背部
5 歯布
6 経糸
7 緯糸
Claims (10)
- 水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩を配合したゴム成分100重量部に、ポリオレフィン・シリコーン共重合体0.1〜30重量部と、有機過酸化物0.2〜10重量部を配合したことを特徴とするゴム組成物。
- ゴム成分が、(イ)水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを配合した複合ポリマー体と(ロ)水素化ニトリルゴムとを配合したものである請求項1記載のゴム組成物。
- ゴム成分が、(イ)水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを重量比40:60〜50:50で配合した複合ポリマー体と(ロ)水素化ニトリルゴムとを重量比が3:97〜60:40となるよう配合したものである請求項1記載のゴム組成物。
- ポリオレフィン・シリコーン共重合体が、ポリオレフィンとポリシロキサンのグラフト共重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
- ポリオレフィンが、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、そしてエチレン−アクリル酸エチル共重合体のうちから少なくとも1種選ばれてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
- 長手方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部と、心線を埋設した背部を有する歯付ベルトにおいて、
前記背部が、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩を配合したゴム成分100重量部に、ポリオレフィン・シリコーン共重合体0.1〜30重量部と、有機過酸化物0.2〜10重量部を配合したゴム組成物を架橋してなるものであることを特徴とする歯付ベルト。 - ゴム成分が、(イ)水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを配合した複合ポリマー体と(ロ)水素化ニトリルゴムとを配合したものである請求項6記載の歯付ベルト。
- ゴム成分が、(イ)水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを重量比40:60〜50:50で配合した複合ポリマー体と(ロ)水素化ニトリルゴムとを重量比が3:97〜60:40となるよう配合したものである請求項6記載の歯付ベルト。
- ポリオレフィン・シリコーン共重合体が、ポリオレフィンとポリシロキサンのグラフト共重合体である請求項6〜8のいずれか1項に記載の歯付ベルト。
- ポリオレフィンが、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、そしてエチレン−アクリル酸エチル共重合体のうちから少なくとも1種選ばれてなる請求項6〜9のいずれか1項に記載の歯付ベルト。
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JP2009523979A (ja) * | 2006-01-19 | 2009-06-25 | ダイコ ユーロペ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ | 歯付きベルト及びタイミング制御系 |
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2004
- 2004-06-03 JP JP2004165635A patent/JP2005344012A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009523979A (ja) * | 2006-01-19 | 2009-06-25 | ダイコ ユーロペ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ | 歯付きベルト及びタイミング制御系 |
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