JP2005339859A - プラズマディスプレイパネルの製造方法およびプラズマディスプレイパネル用の焼成炉 - Google Patents

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真登 森田
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Abstract

【課題】プラズマディスプレイパネルの誘電体層や電極などの構造物の形成に際して、焼成炉内の雰囲気による悪影響を低減することを目的とする。
【解決手段】プラズマディスプレイパネルの誘電体層や電極などの構造物の形成における焼成を、硫黄酸化物成分の濃度を0.2ppm以下とした雰囲気下で行うために、例えば、焼成炉21の炉体22の断熱材23として、大気中において700℃以上で3時間以上焼成したものを用いることを特徴とするものである。
【選択図】図4

Description

本発明は、放電を制御することにより画像を表示するプラズマディスプレイパネルの製造方法およびプラズマディスプレイ用の焼成装置に関するものである。
高品位テレビジョン画像を大画面で表示するためのディスプレイ装置として、プラズマディスプレイパネル(PDP)を使用した装置への期待が高まっている。
PDPは、基本的には、前面板と背面板とで構成されている。前面板は、ガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極およびバス電極よりなる表示電極と、この表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、この誘電体層上に形成されたMgOからなる保護層とで構成されている。
ガラス基板としては大面積化が容易で平坦性に優れたガラスの製造に適したフロート法によるガラス基板を用い、薄膜プロセスにより透明電極を形成し、その上に導電性を確保するためにAg材料を含むペーストを所定のパターンで形成した後焼成することによりバス電極を形成している。さらに、表示電極を覆うように誘電体ペーストを塗布し焼成することにより誘電体層を形成し、最後にMgOからなる保護層を広く知られている薄膜形成技術を用いて形成している。
一方、背面板は、ガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のアドレス電極と、このアドレス電極を覆う誘電体層と、その上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色および青色でそれぞれ発光する蛍光体層とで構成されている。
背面板のガラス基板も、同様にフロート法によるガラス基板を用い、その上に同じくAg材料を含むペーストを所定のパターンで形成した後焼成することによりアドレス電極を形成している。さらに、アドレス電極を覆うように誘電体ペーストを塗布し焼成することにより誘電体層を形成し、さらにこの誘電体層上に隔壁を形成し、この隔壁の間に蛍光体材料を塗布し焼成することで蛍光体層を形成している。
そして、前面板と背面板とをその電極形成面側を対向させて気密封着し、隔壁によって形成された放電空間にNe−Xe等の放電ガスを400Torr〜600Torrの圧力で封入する。
このPDPは、表示電極に映像信号電圧を選択的に印加することによって放電させ、それによって発生した紫外線が各色蛍光体層を励起して赤色、緑色、青色の発光をさせて、カラー画像表示を実現している。
ここで、上述における、前面板に形成するバス電極や誘電体層、および背面板に形成するアドレス電極、誘電体層、隔壁、蛍光体層など、PDPの構造物を形成する際には、それぞれの前駆体となる材料を溶剤やバインダー等の樹脂材料と混入してペースト状、スラリー状などとし、それを用いて塗布や、印刷、ダイコート等を行った後、混入した樹脂成分を燃焼させることで除去するための焼成を行う。ここで焼成とは、昇温、恒温、降温、またはこれらの組み合わせの熱処理であって、対象物の温度を、上げる、下げる、または一定に保つこと、あるいはこれらのいずれかの組み合わせによる熱処理をも指すものである。そして、焼成により除去される樹脂材料成分は、焼成炉に設けられた給排気機構により炉外へ排出し、脱臭装置で処理した後、屋外へ排気している(例えば、非特許文献1参照)。
2001 FPDテクノロジー大全、株式会社電子ジャーナル刊、2000年10月25日、p672〜p682
上述のように、焼成炉に設けた給排気機構により、焼成時には、焼成炉内に新鮮な空気を導入すると共に燃焼により発生した樹脂材料成分の燃焼ガスは焼成炉外に排気するようにしている。そしてこのことにより、樹脂材料を良好に燃焼させると同時に、その際発生する燃焼ガスがPDPの構造物に対して悪影響を与えないようにしている。
しかしながら、焼成炉内の雰囲気を比較的清浄な状態として焼成を行ったにもかかわらず、焼成後のPDPの構造物には、不具合が発生する場合があった。例えば、前面板の基板の表面に「くもり」が発生したり、バス電極やアドレス電極の電気抵抗値が上昇してしまうといった課題である。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、上述のようなPDPの構造物の形成に際して、焼成炉内の雰囲気による悪影響を低減することを目的とする。
上記目的を実現するために本発明のPDPの製造方法は、硫黄酸化物成分の濃度を0.2ppm以下とした雰囲気下で焼成を行う工程を備えることを特徴とするものである。
また、上記目的を実現するために本発明のPDP用の焼成炉は、炉体の断熱材として、大気中において700℃以上で3時間以上焼成したものを用いたものである。
また、上記目的を実現するために本発明のPDP用の焼成炉は、炉体の断熱材として、硫黄成分の含有量が0.65wt%以下としたものを用いたものである。
本発明によれば、硫黄成分が抑制された雰囲気下でPDPの焼成を行うことが可能となり、PDPの構造物に対する悪影響を低減することができる。
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1は、一般的な面放電タイプ、AC型のプラズマディスプレイパネル(PDP)の概略構成を示す断面斜視図である。
PDP1の前面板2は、例えばフロートガラスのような、平滑で、透明且つ絶縁性の基板3上に、走査電極4と維持電極5とからなる表示電極6を複数形成し、そしてその表示電極6を覆うように誘電体層7を形成し、さらにその誘電体層7上にMgOからなる保護層8を形成することにより構成している。なお、走査電極4および維持電極5は、それぞれ放電電極となる透明電極4a、5a、および走査電極4および維持電極5として必要な導電性を確保するためのCr/Cu/CrまたはAg等からなるバス電極4b、5bとから構成されている。
ここで、透明電極4a、5aは薄膜プロセスにより形成し、また、バス電極4b、5bは、Ag材料を含むペーストを所定のパターンで形成した後焼成することにより形成している。誘電体層7は、表示電極6を覆うように誘電体ペーストを塗布し焼成することにより形成しており、保護層8は、広く知られている薄膜形成技術を用いて形成している。
また、背面板9は、例えばガラスのような絶縁性の基板10上に、アドレス電極11を複数形成し、このアドレス電極11を覆うように誘電体層12を形成している。そしてこの誘電体層12上の、アドレス電極11間に対応する位置に隔壁13を設けており、誘電体層12の表面と隔壁13の側面にかけて蛍光体層14(赤、緑、青の各色の蛍光体層14R、14G、14B)を設けた構造となっている。
ここで、アドレス電極11はAg材料を含むペーストを所定のパターンで形成した後焼成することにより形成している。さらに、アドレス電極11を覆うように誘電体ペーストを塗布し焼成することにより誘電体層12を形成し、さらにこの誘電体層12上に隔壁13を形成し、この隔壁13の間に蛍光体材料を塗布し焼成することで蛍光体層14を形成している。
そして前面板2と背面板9とは、表示電極6とアドレス電極11とが直交し、且つ、放電空間15を形成するように、隔壁13を挟んで対向して配置されている。
そして放電空間15には、放電ガスとして、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンのうち、少なくとも1種類の希ガスが封入されており、隔壁13によって仕切られ、アドレス電極11と走査電極4および維持電極5との交差部の放電空間15が放電セル16として動作し、アドレス電極11、表示電極6に周期的な電圧を印加することによって放電を発生させ、この放電による紫外線を蛍光体層14に照射し可視光に変換させることにより、画像表示を行う。
ここで、上述のように、前面板2のバス電極4b、5bや誘電体層7、背面板9のアドレス電極11、誘電体層12、隔壁13、蛍光体層14など、PDP1の構造物を形成する際には、それぞれの前駆体となる材料を溶剤やバインダー等の樹脂材料と混入してペースト状、スラリー状などとし、それを用いて塗布や、印刷、ダイコート等を行った後、混入した樹脂成分を燃焼させて除去するために焼成を行う。ここで焼成とは、昇温、恒温、降温、またはこれらの組み合わせの熱処理であって、対象物の温度を、上げる、下げる、または一定に保つこと、あるいはこれらのいずれかの組み合わせによる熱処理を指すものとする。そして、焼成により除去された樹脂材料成分を含むガス(燃焼ガス)は、焼成炉内に設けられた給排気機構により炉外へ排出し、脱臭装置で処理した後、屋外へ排気している。
すなわち、焼成炉に設けた給排気機構により、焼成時には、焼成炉内に新鮮な空気を導入すると共に燃焼により発生した燃焼ガスを焼成炉外に排気するようにしている。そしてこのことにより、樹脂材料を良好に燃焼させると同時に、その際発生する燃焼ガスが炉内に残留することでPDPの構造物に対して悪影響を与えてしまうということがないようにしている。
しかしながら、以上のように、焼成炉内の雰囲気を比較的清浄な状態として焼成を行ったにもかかわらず、焼成後のPDPの構造物に、材料の変質などに起因すると考えられる不具合が発生する場合があった。例えば、前面板2の基板3の表面に「くもり」が発生したり、バス電極4b、5bやアドレス電極11の電気抵抗値が上昇してしまうといった課題である。
そこで、本発明者らがその課題に対して検討を行った結果、上述したような課題は、樹脂材料が燃焼することで発生した燃焼ガスによるものではなく、焼成炉内に存在する硫黄成分であるということ、そしてその硫黄成分は、焼成炉においては一般的に用いられているアルミナ−シリカ系の断熱材に含有されているものが焼成炉内に放出されたものであるということを見出した。
すなわち、焼成炉のような熱処理装置の炉体を構成するアルミナ−シリカ系断熱材には、0.65wt%と微量ながらも硫黄成分を含んでおり、この硫黄成分が加熱により断熱材から焼成炉の内部空間(炉内)に放出され、炉内に硫黄酸化物として充満するというものである。そして硫黄成分は、例えばガラス基板に含まれるバリウムやストロンチウムと反応すると、ガラス基板表面において、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウムを形成し、それが「くもり」として認識されてしまうというものである。また、電極に含まれるAgと反応すると、電極の抵抗値を上昇させることとなる。以上のようなPDPに対する悪影響は、炉内における硫黄酸化物の濃度が0.2ppmを超える程度になると顕著なものとなることも見出した。
そこで、上述の検討結果に基づき、本発明の一実施の形態によるPDPの製造方法では、焼成を、硫黄酸化物成分の濃度が0.2ppm以下とした雰囲気下で行うものとする。
次に、図2は焼成炉に用いられる一般的な断熱材から発生する硫黄成分の量を示す。横軸は加熱温度で、縦軸は硫黄成分に対応するガスの放出量を信号強度で示すものである。
図2から判るように、加熱により断熱材からは硫黄成分が発生し、その離脱がピークとなる温度は700℃付近である。ここで、PDPの製造工程に用いる焼成炉では、PDPの基板として用いるガラス材料の耐熱性の制約から、焼成温度としてそのような高温度で使用することはない。したがって通常の使用によってでは、断熱材が含有する硫黄成分を放出させ切ることはできず、その結果、焼成を行うたびに焼成炉内には断熱材から硫黄成分が放出されることとなってしまう。
ここで、図3(a)に、断熱材に対して焼成を行う際の温度プロファイルの一例を示す。また図3(b)に、図3(a)の温度プロファイルで焼成した後の、断熱材からのガス放出の状況を示す。図3(b)から判るように、700℃で3時間維持するような温度プロファイルで焼成をした後では、断熱材からの硫黄成分の放出が大幅に低減される。
そこで、本発明の一実施の形態によるプラズマディスプレイパネル用の焼成炉は、断熱材として、大気中において700℃以上で3時間以上焼成したものを用いたものとしている。このような焼成を経た断熱材を用いることにより、焼成時、焼成炉内に放出される硫黄成分を低減させることができ、先述したような課題の抑制が可能となることを確認した。なお、この際の断熱材に含有される硫黄成分は0.65wt%以下となっていることを確認した。
なお、図3(a)に示す温度プロファイルでの断熱材の焼成は、断熱材単体の状態で行っても、また焼成炉の断熱材として炉体に装着した状態で行うものであっても、どちらでも構わない。
図4に、本発明の一実施の形態によるPDP用の焼成炉の概略構成を断面図で示す。図4(a)は、焼成炉の1缶体分の側面断面図であり、図4(b)および図4(c)はそれぞれ図4(a)におけるA−A矢視断面図、B−B矢視断面図である。
焼成炉21の炉体22は、断熱材23と、これを支持する炉体フレーム24と炉壁25とにより構成される。そして、炉体22の内部である炉内26にはローラコンベア27が配置され、このローラコンベア27により、補助板28に載せられた状態でPDPの基板3、10が搬送され焼成される。
炉内26においては、その天井及び床となる部分にはヒータ29が設けられ、このヒータ29により基板3、10は加熱される。
給気管30は、基板3、10が載せられた補助板28の搬送方向と直角に炉内26上部に配置され、給気管30に設けられたノズル31から炉内に供給されたフレッシュエア32は、基板3、10上に塗布された機能膜材料に含まれる溶剤、バインダーなどの樹脂材料成分が熱処理されて排出された成分を含む高温の燃焼ガス33となり、排気口34部分を通して断熱材23の一部に設けられた排気管35を通して外部へ排出される。
断熱材23の、炉内26の内表面に露出している面には、断熱材23からの発塵を防止し基板3、10を清浄に保つために、ガラス製のマッフル材36が配設されている。
ヒータ29はヒータ線を断熱材23に埋め込み一体成型されている。側面の断熱材23にはヒータ29は配置されなくても良い。
以上の構成の本発明の一実施の形態によるPDP用の焼成炉21においては、断熱材23として、前述したような焼成プロセスを経たものを用いており、このことにより断熱材23からの硫黄成分が原因と考えられる前述したような課題の発生は大きく抑制することを確認した。
以上のように本発明によれば、硫黄成分が抑制された雰囲気下でPDPの焼成を行うことを可能とし、もってPDPの構造物に対する悪影響を低減することができる。
一般的なプラズマディスプレイパネルの概略構成を示す断面斜視図 焼成炉に用いられる断熱材からの硫黄成分の放出量を模式的に示す図 本発明の一実施の形態によるプラズマディスプレイパネル用の焼成炉に用いる断熱材を説明するための図 本発明の一実施の形態によるプラズマディスプレイパネル用の焼成炉の概略構成を示す断面図
符号の説明
21 焼成炉
22 炉体
23 断熱材
24 炉体フレーム
25 炉壁
26 炉内
27 ローラコンベア
28 補助板
29 ヒータ
30 給気管
35 排気管

Claims (3)

  1. 硫黄酸化物成分の濃度を0.2ppm以下とした雰囲気下で焼成を行う工程を備えることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  2. 炉体の断熱材として、大気中において700℃以上で3時間以上焼成したものを用いたプラズマディスプレイパネル用の焼成炉。
  3. 炉体の断熱材として、硫黄成分の含有量が0.65wt%以下としたものを用いたプラズマディスプレイパネル用の焼成炉。
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