JP2005337414A - ボールねじ装置 - Google Patents

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Akio Sakai
明男 酒井
Isao Shindo
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Abstract

【課題】焼入れ時のねじ軸やナットの変形を抑制して製造時間を短縮したボールねじ装置を提供する。
【解決手段】外周面に螺旋状の軸転動溝を形成したねじ軸と、内周面に軸転動溝に対向するナット転動溝を形成したナットと、ナット転動溝を連結する連結路と、軸転動溝とナット転動溝と連結路とで構成される循環転動路を転動する複数の転動球とを備えたボールねじ装置において、ねじ軸の軸転動溝の転動球との転動部に硬化層を形成し、この硬化層の硬さと深さを軸転動溝の溝底部の硬化層の硬さと深さよりも硬くかつ深くする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、工作機械や精密機械等の移動体の送り機構や位置決め機構等に用いられるボールねじ装置に関する。
従来のボールねじ装置は、そのねじ軸の軸転動溝の表面に浸炭焼入れや高周波焼入れ等の焼入れ処理により一様な硬化層を形成して転がり疲労寿命の向上を図っている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2003−119518号公報(第3頁段落0018−第4頁段落0024、第2図)
しかしながら、上述した従来の技術においては、ねじ軸の軸転動溝の溝底部まで一様に焼入れを行っているため、焼入れ時の加熱、冷却による熱影響によってねじ軸の寸法や形状が変化しやすく、その曲がりの確認や曲がり矯正等の作業工程を必要とし、製造時間の短縮を図ることが困難であるという問題がある。
また、高周波焼入れにおいては、高周波コイルと軸転動溝の溝底部との距離が離れるために溝底部を誘導加熱するために多くのエネルギを要するという問題がある。
これらのことは、ナットの焼入れにおいても同様である。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、焼入れ時のねじ軸やナットの変形を抑制して製造時間を短縮したボールねじ装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、外周面に螺旋状の軸転動溝を形成したねじ軸と、内周面に前記軸転動溝に対向するナット転動溝を形成したナットと、前記ナット転動溝を連結する連結路と、前記軸転動溝とナット転動溝と連結路とで構成される循環転動路を転動する複数の転動球とを備えたボールねじ装置において、前記ねじ軸の前記軸転動溝の転動球との転動部に硬化層を形成し、該硬化層の硬さを前記軸転動溝の溝底部の硬化層の硬さよりも硬くしたことを特徴とする。
これにより、本発明は、熱影響によるねじ軸の寸法の変化や曲がりの発生を防止することができると共に、曲がり確認や曲がり矯正等の作業工程を少なくすることができ、ボールねじ装置の製造時間の短縮を図ることができるという効果が得られる。
以下に、図面を参照して本発明によるボールねじ装置の実施例について説明する。
図1は実施例のねじ軸の焼入れ状態を示す断面図、図2は実施例のボールねじ装置を示す斜視図、図3は実施例の焼入れ部位を示す説明図である。
図2において、1はボールねじ装置である。
2はボールねじ装置1のねじ軸であり、合金鋼や炭素鋼等の鋼材で製作され、その外周面2aには後述する硬化層11を形成した略半円弧形状の軸転動溝3が等ピッチで螺旋状に形成されている。
4はボールねじ装置1のナットであり、合金鋼や炭素鋼等の鋼材で製作され、その内周面4aには軸転動溝3と対向する複数ピッチの後述する硬化層11を形成した略半円弧形状のナット転動溝5が形成されている。
また、ナット4にはその軸方向と平行に切欠いた平面4bが設けられており、この平面4bに設けた穴4cの底部には後述するリターンチューブ7の端部の外径部が嵌合する嵌合穴4dが設けられている。
6は転動球であり、合金鋼等の鋼材またはセラミック材等で製作された球体であって、鋼材で製作される場合にはその表面に焼入れ処理により硬化層が形成されている。
7は連結路としてのリターンチューブであり、鋼材や樹脂材料等で製作され、転動球6が転動できる程度の内径を有する略U字形に曲折した管であって、ナット4の平面4bに設けられた穴4cの底部の嵌合穴4dにその端部が嵌合して、ナット転動溝5の両側の端部を連結する。
8はチューブ固定具であり、鋼材や樹脂材料等を曲折して製作された固定具であって、ナット4の平面4bに小ねじ9等の締結手段で締結してリターンチューブ7をナット4に固定する。
10はフランジ部であり、ナット4の外周部に一体に設けられ、フランジ部10に設けたボルト穴10aにより図示しない移動体にボルト等で固定される。
上記のねじ軸2の軸転動溝3とこれに対向するナット4のナット転動溝5およびこれを連結するリターンチューブ7の内径面により循環転動路が形成される。
また、循環転動路には複数の転動球6と共に所定の量の潤滑剤、例えばグリースが封入されて軸転動溝3とナット転動溝5とを転動球6を介して螺合させ、ねじ軸2またはナット4を回転させることによって転動球6が循環転動路を循環しながら転動し、ねじ軸2に螺合したナット4を軸方向に移動させる。
図1、図3において、11は硬化層であり、高周波焼入れによってねじ軸2に形成された所定の硬さの硬化層である。
12は転動部であり、予圧等によって接触角αで接触する軸転動溝3と転動球6との接触点とその周囲を含む螺旋状の軸転動溝3に沿った帯状の領域である。
硬化層11は、ねじ軸2の外周面2aと軸転動溝3とに形成されており、その軸転動溝3の転動部12はHRc60程度の硬さとなるように、溝底部13はHRc50程度の硬さとなるように形成されており、転動部12の硬化層11の深さTと溝底部13の硬化層11の深さSとは、T>S≧0なる関係、つまり転動部12の硬化層深さTは、溝底部13の硬化層11が形成されない場合も含めて溝底部13の硬化層深さSよりも深くなるように形成される。
ナット4の硬化層11も同様に、ナット4の内周面4aとナット転動溝5と形成され、ナット転動溝5の転動球6との転動部12と溝底部13は、ねじ軸2と同様の硬さおよび深さに形成される。
上記の構成の作用について説明する。
ねじ軸2を製作する場合は、合金鋼や炭素鋼等の鋼材からなる丸棒に研削または転造等の加工手段によって軸転動溝3を形成して軸素材を成形する。
この軸素材を円筒状の高周波コイルに挿入して高周波コイルに高周波電源を用いて所定の時間通電し、ねじ軸2の外周面2aおよび軸転動溝3の転動部12を主にして誘導加熱により加熱して赤熱させた後にオイルまたは水により急冷して焼入れ処理を施す。
これにより、図1に示すように軸転動溝3の転動部12には硬化層深さT、硬さHRc60程度の硬化層11が形成され、溝底部13は高周波コイルとの距離が離れているために加熱の度合いが少なくなって転動部12の硬化層深さTよりも浅い硬化層深さS、転動部12の硬化層11の硬さよりも低い硬度のHRc50程度の硬さの硬化層11が形成される。
このようにして、軸転動溝3の転動部12と溝底部13とで深さおよび硬さが異なるねじ軸2が製作される。
ナット4の場合も同様である。この場合には円柱状の高周波コイルをナット4の内周面4a側に挿入して内周面4aとナット転動面5を前記と同様に誘導加熱して焼入れ処理を施し、ナット転動面5の転動部12と溝底部13とで深さおよび硬さが異なる硬化層11を形成するようにする。
このようにして製作されたねじ軸2および/もしくはナット4は、加熱範囲を狭くすることができ、過度の誘導加熱による熱影響を防止して、寸法の変化や曲がり発生の少ないねじ軸2および/もしくはナット4とすることができる。
また、ねじ軸2等の転動部12に形成された硬化層11は、ねじ軸2とナット4を転動球6を介して螺合させた場合に、予圧またはナット4の移動時のスラスト力によって接触角αで転動球6と軸転動溝3およびナット転動溝5とが接触したときに転動球6の転動に耐える充分な硬さと深さを有しており、ねじ軸2またはナット4の回転に伴って転動部12に加わる荷重に耐えてボールねじ装置1の転がり疲労寿命を維持することができる。
なお、本実施例においては、高周波焼入れによって外周面2aと軸転動溝3とに硬化層11を形成するとして説明したが、硬化層11は軸転動溝3の転動部12を上記の深さおよび硬さに形成すればボールねじ装置1の転がり疲労寿命を維持することができ、例えばレーザ加熱により主に転動部12を加熱して焼入れ処理を行うようにしてもよい。
この場合に、たとえ溝底部13に硬化層11が形成されなくとも前記のように転動部12には充分な深さと硬さを有する硬化層11が形成されるので、ボールねじ装置1の転がり疲労寿命を低下させることはない。ナット4の場合も同様である。
また、本実施例の硬化層11の形成は、ねじ軸2およびナット4の一方のみに形成してもよく、両方に形成するようにしてもよい。
以上説明したように、本実施例では、主にねじ軸の軸転動溝の転動部に焼入れ処理による硬化層を形成するようにしたことによって、熱影響を受ける範囲を狭くすることができ、熱影響によるねじ軸の寸法の変化や曲がりの発生を防止することができると共に、曲がり確認や曲がり矯正等の作業工程を少なくすることができてねじ軸の製造時間の短縮を図ることができる。
また、軸転動溝の溝底部の硬化層の硬さや深さを、転動部の硬化層の硬さや深さよりも低い硬度で浅くなるようにし、溝底部への高周波焼入れによる加熱を少なくするようにしたことによって、誘導加熱に要するエネルギを低減することができ、焼入れ処理に要する時間を短縮することができると共にエネルギコストを節減することができる。
このことは、ねじ軸の外周面と軸転動溝との角部のオーバーヒートを防止してねじ軸の生産効率の向上を図る場合に特に有効である。
上記の効果は、ナットにおいても同様である。
なお、本実施例においては、リターンチューブを連結路として転動球を循環させるチューブ式の循環方式を用いたボールねじ装置に本発明を適用した場合を例に説明したが、連結路は上記に限らず連結路をこま式やエンドキャップ式等とした循環方式のボールねじ装置に本発明を適用しても同様の効果を得ることができる。
また、ボールねじ装置に本発明を適用した場合を例に説明したが、転動球を介して移動台をレール上で移動させる直動案内軸受装置の転動球の転動溝に本発明を適用しても同様の効果を奏することができる。
実施例のねじ軸の焼入れ状態を示す断面図 実施例のボールねじ装置を示す斜視図 実施例の焼入れ部位を示す説明図
符号の説明
1 ボールねじ装置
2 ねじ軸
2a 外周面
3 軸転動溝
4 ナット
4a 内周面
4b 平面
4c 穴
4d 嵌合穴
5 ナット転動溝
6 転動球
7 リターンチューブ
8 チューブ固定具
9 小ねじ
10 フランジ部
10a ボルト穴
11 硬化層
12 転動部
13 溝底部

Claims (5)

  1. 外周面に螺旋状の軸転動溝を形成したねじ軸と、内周面に前記軸転動溝に対向するナット転動溝を形成したナットと、前記ナット転動溝を連結する連結路と、前記軸転動溝とナット転動溝と連結路とで構成される循環転動路を転動する複数の転動球とを備えたボールねじ装置において、
    前記ねじ軸の前記軸転動溝の転動球との転動部に硬化層を形成し、該硬化層の硬さを前記軸転動溝の溝底部の硬化層の硬さよりも硬くしたことを特徴とするボールねじ装置。
  2. 外周面に螺旋状の軸転動溝を形成したねじ軸と、内周面に前記軸転動溝に対向するナット転動溝を形成したナットと、前記ナット転動溝を連結する連結路と、前記軸転動溝とナット転動溝と連結路とで構成される循環転動路を転動する複数の転動球とを備えたボールねじ装置において、
    前記ねじ軸の前記軸転動溝の転動球との転動部に硬化層を形成し、該硬化層の深さを前記軸転動溝の溝底部の硬化層の深さよりも深くしたことを特徴とするボールねじ装置。
  3. 外周面に螺旋状の軸転動溝を形成したねじ軸と、内周面に前記軸転動溝に対向するナット転動溝を形成したナットと、前記ナット転動溝を連結する連結路と、前記軸転動溝とナット転動溝と連結路とで構成される循環転動路を転動する複数の転動球とを備えたボールねじ装置において、
    前記ナットの前記ナット転動溝の転動球との転動部に硬化層を形成し、該硬化層の硬さを前記ナット転動溝の溝底部の硬化層の硬さよりも硬くしたことを特徴とするボールねじ装置。
  4. 外周面に螺旋状の軸転動溝を形成したねじ軸と、内周面に前記軸転動溝に対向するナット転動溝を形成したナットと、前記ナット転動溝を連結する連結路と、前記軸転動溝とナット転動溝と連結路とで構成される循環転動路を転動する複数の転動球とを備えたボールねじ装置において、
    前記ナットの前記ナット転動溝の転動球との転動部に硬化層を形成し、該硬化層の深さを前記ナット転動溝の溝底部の硬化層の深さよりも深くしたことを特徴とするボールねじ装置。
  5. 請求項1から請求項3または請求項4において、
    前記転動部の硬化層の深さをTとし、前記溝底部の硬化層の深さをSとしたときに、深さTと深さSとが、T>S≧0なる関係を有することを特徴とするボールねじ装置。
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