JP2005330319A - ゴム組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 シリカを含むSBR/BRブレンド系の粘弾性特性、特にtanδバランスを改良する。
【解決手段】 加硫後に粘弾性的に相溶性となるスチレンブタジエン共重合体ゴム(SBR)とポリブタジエンゴム(BR)のブレンドゴムをゴム成分として用いたシリカ含有ゴム組成物において、全ゴム成分におけるSBR/BR共架橋部分率が0.2以下であるゴム組成物及びその製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、未加硫物は粘弾性的に非相溶性であるが、加硫物としては粘弾性的に相溶系とみなされるスチレンブタジエン共重合体ゴム(SBR)/ポリブタジエンゴム(BR)のブレンドゴムにおいて、シリカを配合し、更に好ましくはシリカをSBR存在部に多く偏在させることによってSBR/BR共架橋部を少なくして非相溶系のモルフォロジーを変化させ、粘弾性特性、特にtanδバランスを改良させたゴム組成物及びその製造方法に関する。
特許文献1はゴム組成物及びその製造方法に関し、この特許文献には粘弾性的に非相溶であるゴムブレンド系において低Tg側ゴムにカーボンブラックを偏在させて、粘弾性におけるtanδ温度勾配を大きくすることによって、湿潤的制動性と、キャップゴムの転動抵抗を両立させることが開示されている。特許文献2はタイヤ用ゴム組成物に関し、この特許文献にはSBR/BRブレンド系においてBR側にカーボンブラックを偏在させることによってトレッドゴムの湿潤時制動性と耐摩耗性、その他の特性を両立させることが記載されている。特許文献3はタイヤ用ゴム組成物に関し、この特許文献にはSBRとその他のゴムとのブレンドにおいてその他のゴムの島相にカーボンブラックを偏在させることによって島相の平均粒径が600nm以下のゴム組成物を得ている。特許文献4はエラストマー組成物及びその製造方法に関し、この特許文献には疎水化したシリカと溶液重合SBRとのマスターバッチを用いたエラストマー組成物が開示されている。その他SBR/BR系にシリカを配合したゴム組成物についての特許文献は多い。
特開平8−217917号公報 特開平11−172043号公報 特開2003−292680号公報 特表2002−515515号公報
従って、本発明はSBR/BR系ブレンドゴムにシリカを配合したゴム組成物において、その粘弾性特性、特にtanδのバランスを改良したゴム組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に従えば、加硫後に粘弾性的に相溶性となるスチレンブタジエン共重合体ゴム(SBR)とポリブタジエンゴム(BR)とのブレンドゴムをゴム成分として用いたシリカ含有ゴム組成物において、全ゴム成分におけるSBR/BR共架橋部分率が0.2以下であるゴム組成物が提供される。
本発明に従えば、また、スチレンブタジエン共重合体ゴム(SBR)とシリカを含むマスターバッチを作製し、次いで、このマスターバッチとポリブタジエンゴム(BR)とを混練りすることによって前記ゴム組成物を製造する方法が提供される。
本発明に従えば、更に、スチレンブタジエン共重合体ゴム(SBR)と多量割合のシリカを含むマスターバッチ(A)と、ポリブタジエンゴム(BR)と少量割合のシリカを含むマスターバッチ(B)とをそれぞれ別に作製し、次いでこれらのマスターバッチを一緒に混練りすることによって前記ゴム組成物を製造する方法が提供される。
本発明に従えば、SBR/BRブレンド系にシリカを配合し、好ましくはブレンド系のSBR部にシリカを偏在させることによって、ブレンドゴムの相構造を変化させ、粘弾性特性、特にtanδバランスを改良することができる。特に、従来の低Tg側(BR)へほぼ全てのフィラーを偏在させることによるtanδバランスの改良手法とは異なり、本発明ではSBR側へシリカフィラーのみを偏在させることによって、tanδバランスを改良させるのでSBR部の補強性低下をおこさないという効果もある。
前述の如く、本発明によれば、ある特定のガラス転移温度(Tg)の高いSBRとTgの低いBRとのブレンド系にシリカを配合して、ブレンドゴム系のBR又はSBR部分、特に好ましくは高TgのSBR部分中へ、シリカを偏在させることによりtanδバランスを改良することができる。
本発明に用いるSBR及びBRとしては、未加硫時は粘弾性的に非相溶性(つまりtanδピークが2つ)であるが、加硫後は相溶性(tanδピークが1つ)とみなされるブレンド系ゴム組成物として配合することができる任意の各種SBR及び各種BRを用いることができるが、好ましくは1,4結合が90%以上のハイシスBRに対して、スチレン量が5重量%以上40重量%以下、ブタジエン部分のビニル量が40重量%以下であるSBRである。シリカとしてもゴム組成物に配合することができる任意のシリカ、例えば湿式及び乾式シリカを用いることができるが、ゴム加工性と補強性の観点から湿式シリカを用いるのが好ましい。
本発明に係るゴム組成物はシリカを含むSBR及びBRブレンド系ゴム組成物であるが全ゴム成分におけるSBR/BR共架橋部分率が0.2以下、好ましくは0〜0.16である。以下に、この「SBR/BR共架橋部分率」について説明する。BRのガラス転移点温度(Tg)とSBRのTgの間の温度領域では、BRがゴム状態、SBRがガラス状態であるため、BR/SBRブレンド系が完全に非相溶性であれば、この温度領域でガラス状態とゴム状態に対応する二つの相が存在することになる。一方、BR/SBRの一部が相溶している、すなわち、共架橋部分が存在する場合、上記2相にガラス/ゴム混在の転移状態が加わるはずである。よって、共架橋部分の量は、ガラス/ゴム混在の転移状態の量で決まることになる。一般にガラス/ゴム状態の把握はゴム分子鎖の運動性に関する情報から得ることができる。ガラス/ゴム混在の転移状態はガラス/ゴムの間の中間的な運動性を示す。ゴム分子鎖の運動性に関する情報は、粘弾性や熱測定(DSC)等により得ることができるが、定量性に難がある。一方、パルスNMR法はこのようなゴム分子運動性の異なる成分の定量に非常に好適である。従って、本発明では、ある特定の温度領域におけるSBR/BR共架橋部分率はパルスNMR法によって求める。
本発明に係るシリカ含有SBR/BRブレンド系ゴム組成物の配合比に特に限定はないが、SBR/BR(重量部比)が90/10〜10/90であるのが好ましく、70/30〜30/70であるのが更に好ましい。またシリカの配合量にも特に限定はないが、全ゴム成分100重量部に対し70重量部以下であるのが好ましく、5〜50重量部であるのが更に好ましい。
本発明の好ましい態様ではシリカが加硫後のSBR/BRブレンドゴム中においてBR存在部よりもSBR存在部に多く偏在している。この偏在比には特に限定はないが、約51/49〜100/0であるのが好ましく、70/30〜100/0であるのが更に好ましい。
全ゴム成分中のSBR/BR共架橋部分率0.2以下の本発明に従ったゴム組成物は種々の方法で製造することができる。例えばシリカをSBR及びBRと一緒に配合してもよいし、予じめシリカをSBR及びBRの少なくとも一方の少なくとも一部に配合してマスターバッチとし、これに他のゴム成分を配合することによって製造してもよい。特にSBRにシリカを予じめ配合してマスターバッチとするのが好ましい。或いはSBR及びBRの両者にそれぞれ予じめシリカを配合したマスターバッチ、特にSBRの方に多量割合(例えば51%以上、好ましくは70%以上)のシリカを配合し、BRに少量割合(例えば49%以下、更に好ましくは30%以下)のシリカを配合したマスターバッチを予じめ作製して混合するのも好ましい。
本発明に係るゴム組成物には、前記した必須成分に加えて、通常通り、その他のジエン系ゴムなどのゴム成分、カーボンブラック、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑性剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練、加硫して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
実施例1〜6及び比較例1〜3
表I並びに表II及び表IIIに示す配合(重量部)に従って第1工程、第2工程(比較例1及び実施例1はなし)並びに第3工程に分けて各成分を配合しゴム組成物を得た。
第1工程では表I又は表IIIに示す各成分(重量部)を70mlのブラベンダープラストミルで3〜5分間混練し、温度が110±5℃に達したときに放出し、次に第2工程でSBR又はBRを添加して、その次に亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤を加えて上記ブラベンダープラストミルで5分程度混合し、最終工程(第3工程)で加硫促進剤とイオウを上記ブラベンダープラストミルで3分間混練し、ゴム組成物を得た。得られた組成物は、以下の方法で評価し、結果を表I及び表IIに示した。
1)SBR又はBR中へのシリカの存在:透過型電子顕微鏡(TEM)[日立製作所製 HITACHI H−9000 NAR Type]を用いて、加速電圧200kV、8000倍で観察した。
各例の加硫ゴム組成物をメチルメタクリレートとブチルメタクリレートの混合溶液に約1%のベンジルパーオキシサイドを加えたものに浸せきし、約60℃で24時間硬化させたものを観察用試料とした。試料をミクロトームを用いて、室温にて厚さ約50〜100nmの切片を作製し、TEM観察用銅製メッシュ上に採取した。本銅製メッシュを4%四酸化オスミウム水溶液の蒸気中に室温で24時間程度放置することで、メッシュ上の切片を染色し、それをTEM観察した。黒く染色された部分がBR相、白い部分がSBR相、灰色部分がSBR/BR共架橋部に対応する。SBR・BR各相のシリカの存在は目視によりシリカ粒子をカウントし、シリカ粒子全体の数に対する、SBR・BR各相のシリカ粒子数を概算し、0であれば「なし」、40%未満では「少しあり」、40〜70%未満では「あり」、70%以上では「かなりあり」とした。
2)SBR/BR共架橋部分率:系の分子運動性をJEOL製パルスNMRスペクトロメーター(日本電子製JNM−MU25)を用い、ソリッドエコー法で測定を行った。自由減衰信号(FID)は次式で示されるWeibull関数で解析して、スピン−スピン緩和時間(T2)と各々の成分分率を計算した。
ここでtは時間、Eiは成分iのWeibull係数、h0iは時間ゼロにおける成分Iの信号強度、h(t)は時間tにおける信号強度、T2iは成分iのスピン−スピン緩和時間である。成分jの成分分率fjは次式で与えられる。
本測定は低Tg側ゴムのガラス転移温度+35℃で行った。得られたFIDからガラス/ガラス〜ゴム中間/ゴムの3つの成分に分離できガラス〜ゴム中間成分の分率を共架橋部分率とした。
3)tanδ(0℃及び30℃):動的粘弾性測定は、レオバイブロン(オリエンテック社製)を用い、引張りモードで、測定周波数110Hz、測定温度範囲−120℃〜30℃、昇温速度2℃/minで行った。0℃及び30℃のtanδの値は、上記測定で得られた温度分散曲線の0℃及び30℃測定値から得た。
表I脚注
*1:日本ゼオン(株)製 Nipol 1502(Tg:−51℃)
*2:日本ゼオン(株)製 Nipol BR 1220(Tg:−105℃)
*3:日本シリカ(株)製 Nipsil AQ
*4:東海カーボン(株)製 シースト300
*5:正同化学工業(株)製 酸化亜鉛
*6:日本油脂(株)製 工業用ステアリン酸
*7:フレキシス製 サントフレックス 6 PPD
*8:軽井沢精錬所(株)製 5%油処理イオウ
*9:大内新興化学工業(株)製 ノクセラーCZ−G
*1:表III参照
*2:正同化学工業(株)製 酸化亜鉛
*3:日本油脂(株)製 工業用ステアリン酸
*4:フレキシス社製 サントフレックス 6PPD
*5:軽井沢精錬所(株)製 5%油処理粉末イオウ
*6:大内新興化学工業(株)製 加硫促進剤 ノクセラーCZ−G
表III脚注
*1:日本ゼオン(株)製 Nipol 1502
*2:日本ゼオン(株)製 Nipol BR1220
*3:日本シリカ(株)製 Nipsil AQ
*4:東海カーボン(株)製 シースト300
表Iに示す如く、比較例1はシリカを配合しない系でSBR50部(重量部、以下同じ)、BR50部及びカーボンブラック25部を混合した系でSBR/BR共架橋部分率が0.22と高くtanδ比(tanδ(0℃)/tanδ(30℃))が1.31と十分でなかった。これに対し、カーボンブラックを予じめSBR(比較例2)又はBR(比較例3)に配合してマスターバッチとし、次にそれぞれBR又はSBRを配合した系もSBR/BR共架橋部分率がそれぞれ0.23及び0.26と高く、tanδ比もともに1.32と十分でなかった。これらに対し、シリカをSBR及びBRと混合した系(実施例1)及びシリカを予じめBRと配合した系(実施例3)ではSBR/BR共架橋部分率がそれぞれ0.15及び0.16と0.2以下で、tanδ比もそれぞれ1.35及び1.38と改良効果が認められた。この改良効果はシリカを予じめSBRに混合してマスターバッチとした実施例2ではtanδ比が1.52と顕著である。また、シリカを予めSBR及びBRとそれぞれ別個にマスターバッチとした後、混合した実施例4,5もtanδ比がそれぞれ、1.46,1.38と改良効果が見受けられており、SBR側に多くシリカを配合した実施例4がBR側に多く配合した実施例5よりも高い値を示した。更に、実施例6はカーボンブラック・シリカ混在での例である。カーボンブラック混在の場合においても、シリカのみがSBR側に偏在することにより、tanδ比は1.48と改良効果が見受けられた。
シリカ配合されている実施例2及び3にそれぞれ対応する図1及び図2は共にSBR/BR共架橋部分に相当する灰色相が見受けられない。また、図1では白色であるSBR相にシリカ粒子が多く見受けられる一方で、図2では黒色であるBR相に集中しており、SBR相にシリカは見受けられなかった。カーボンブラック配合である、比較例2及び3にそれぞれ対応する図3及び図4はSBR/BR共架橋部分に相当する灰色相が多く見受けられた。
図5及び図6は実施例2及び3にそれぞれ対応する粘弾性温度分散曲線(E’’、tanδ)であり、図7及び図8は比較例2及び3にそれぞれ対応するものである。シリカ配合されている実施例2及び3では、曲線が2山でtanδピークは2つ存在していた。SBR側にシリカが偏在している実施例2はBR側に偏在している実施例3に比べて、山がそれぞれ綺麗に表れている。高温側ピーク値に相当する温度は実施例3に比べて実施例2の方が高温側にあり、非相溶性が顕著であることを示している。一方、比較例2及び3はいずれも曲線が1山であった。
以上の通り、本発明によれば、シリカを配合したSBR/BRブレンド系ゴム組成物の粘弾性特性、特にtanδのバランスを改良させることができるので破壊特性等のその他特性を損なうことなく、湿潤時制動性と転動抵抗を両立させることができる。
実施例2で得られた加硫ゴム組成物の相構造を示す、図面に代る透過型電子顕微鏡(TEM)写真である(×8000倍)。 実施例3で得られた加硫ゴム組成物の相構造を示す、図面に代るTEM写真である(×8000倍)。 比較例2で得られた加硫ゴム組成物の相構造を示す、図面の代るTEM写真である(×8000倍)。 比較例3で得られた加硫ゴム組成物の相構造を示す、図面の代るTEM写真である(×8000倍)。 実施例2で得られた加硫ゴム組成物の粘弾性特性の温度分散曲線(E’’、tanδ)である。 実施例3で得られた加硫ゴム組成物の粘弾性特性の温度分散曲線(E’’、tanδ)である。 比較例2で得られた加硫ゴム組成物の粘弾性特性の温度分散曲線(E’’、tanδ)である。 比較例3で得られた加硫ゴム組成物の粘弾性特性の温度分散曲線(E’’、tanδ)である。

Claims (4)

  1. 加硫後に粘弾性的に相溶性となるスチレンブタジエン共重合体ゴム(SBR)とポリブタジエンゴム(BR)とのブレンドゴムをゴム成分として用いたシリカ含有ゴム組成物において、全ゴム成分におけるSBR/BR共架橋部分率が0.2以下であることを特徴とするゴム組成物。
  2. 前記シリカが加硫後のブレンドゴム中のBR存在部よりもSBR存在部に多く偏在している請求項1に記載のゴム組成物。
  3. スチレンブタジエン共重合体ゴム(SBR)とシリカを含むマスターバッチを作製し、次いで、このマスターバッチとポリブタジエンゴム(BR)とを混練りすることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム組成物の製造方法。
  4. スチレンブタジエン共重合体ゴム(SBR)と多量割合のシリカを含むマスターバッチ(A)と、ポリブタジエンゴム(BR)と少量割合のシリカを含むマスターバッチ(B)とをそれぞれ別に作製し、次いでこれらのマスターバッチ(A)及び(B)を一緒に混練りすることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム組成物の製造方法。
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