WO2024111650A1 - タイヤ - Google Patents

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WO2024111650A1
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正寛 川島
了太 ▲高▼橋
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株式会社ブリヂストン
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Abstract

本発明の課題は、耐カット性を悪化させることなく、ウェット制動性と低燃費性を向上させたタイヤを提供することで、その解決手段は、トレッドゴム層(8)と、該トレッドゴム層(8)のタイヤ径方向内側に位置するベルト層(6A,6B)を具え、前記トレッドゴム層(8)は、ゴム成分と樹脂成分と充填剤とを含み、前記ゴム成分は、イソプレン骨格ゴムと、ガラス転移温度が-40℃未満のスチレン-ブタジエンゴムを含み、前記樹脂成分は、イソプレン骨格ゴムとのSP値の差が1.40(cal/cm1/2以下であり、前記トレッドゴム層(8)は、式:樹脂成分/イソプレン骨格ゴムの質量比率≧0.5を満たし、前記ベルト層(6A,6B)が、フィラメントの直径をX(mm)、フィラメントの引張強度をY(MPa)とした際、4000-2000X≦Y≦4500-2000Xを満たすフィラメントを撚り合わせたコードを含む、タイヤ(1)である。

Description

タイヤ
 本発明は、タイヤに関するものである。
 従来、車両の安全性を向上させる見地から、湿潤路面での制動性(以下、「ウェット制動性」と略称する。)を向上させるために、種々の検討がなされている。例えば、下記特許文献1には、天然ゴムを70質量%以上含むゴム成分に対して、熱可塑性樹脂と、シリカを含む充填剤を配合してなるゴム組成物を、タイヤのトレッドゴムに適用することで、乾燥路面及び湿潤路面の双方に対するタイヤの制動性が向上することが開示されている。
 一方、昨今の環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出規制の動きに関連して、自動車の低燃費化に対する要求が強まりつつある。このような要求に対応するため、タイヤ性能についても、低燃費性の向上(転がり抵抗の低減)が求められている。
国際公開第2015/079703号
 しかしながら、本発明者らが検討したところ、上記特許文献1に記載の技術によれば、タイヤのウェット制動性を向上させることができるものの、軟化成分である樹脂が添加されることにより、ゴムの剛性が低下することで、タイヤのプランジャーレベルが低下し、耐カット性が十分でなくなる場合があった。また、タイヤの耐カット性を補完しようとすると、軟化成分である樹脂の添加量が限定され、ウェット制動性が十分でなくなる場合があった。
 そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、耐カット性を悪化させることなく、ウェット制動性と、低燃費性とを向上させたタイヤを提供することを課題とする。
 上記課題を解決する本発明のタイヤの要旨構成は、以下の通りである。
[1] トレッド部の最表面に位置するトレッドゴム層と、該トレッドゴム層のタイヤ径方向内側に位置するベルト層と、を具えるタイヤであって、
 前記トレッドゴム層は、ゴム成分と、樹脂成分と、充填剤と、を含み、
 前記ゴム成分が、イソプレン骨格ゴムと、スチレン-ブタジエンゴムと、を含み、
 前記スチレン-ブタジエンゴムの少なくとも一種は、ガラス転移温度が-40℃未満であり、
 前記樹脂成分は、前記イソプレン骨格ゴムとのSP値の差が1.40(cal/cm1/2以下であり、
 前記トレッドゴム層は、下記の式(A):
   前記樹脂成分/前記イソプレン骨格ゴムの質量比率≧0.5 ・・・ (A)
 を満たし、
 前記ベルト層が、フィラメントを撚り合わせてなる構造を有するコードを含み、
 前記ベルト層のコードを構成するフィラメントが、当該フィラメントの直径をX(mm)とし、当該フィラメントの引張強度をY(MPa)としたときに、下記の式(B):
   4000-2000X≦Y≦4500-2000X ・・・ (B)
 を満たすことを特徴とする、タイヤ。
[2] 前記樹脂成分は、軟化点が110℃より高く、ポリスチレン換算の重量平均分子量が200~1600g/molである、[1]に記載のタイヤ。
[3] 前記樹脂成分が、水添C系樹脂、水添C-C系樹脂、水添ジシクロペンタジエン系樹脂、及び水添テルペン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載のタイヤ。
[4] 前記スチレン-ブタジエンゴムが、窒素原子を含む官能基とアルコキシ基とを有する変性剤で変性されている、[1]~[3]のいずれか一つに記載のタイヤ。
[5] 前記ベルト層のコードが、N本のフィラメントを撚り合わせてなる1×N構造(ここで、Nは2~6から選択される整数である)である、[1]~[4]のいずれか一つに記載のタイヤ。
[6] 前記ベルト層におけるコードの打ち込み密度が、60本/dm以上95本/dm以下である、[1]~[5]のいずれか一つに記載のタイヤ。
[7] 前記ベルト層のコードの径が、0.5mm以上1.0mm以下である、[1]~[6]のいずれか一つに記載のタイヤ。
 本発明によれば、耐カット性を悪化させることなく、ウェット制動性と、低燃費性とを向上させたタイヤを提供することができる。
本発明のタイヤの一実施態様の断面図である。
 以下に、本発明のタイヤを、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
<定義>
 本明細書に記載されている化合物は、部分的に、又は全てが化石資源由来であってもよく、植物資源等の生物資源由来であってもよく、使用済タイヤ等の再生資源由来であってもよい。また、化石資源、生物資源、再生資源のいずれか2つ以上の混合物由来であってもよい。
 本明細書において、スチレン-ブタジエンゴムのガラス転移温度については、ISO 22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とする。
 本明細書において、イソプレン骨格ゴム、スチレン-ブタジエンゴム及び樹脂成分のSP値(溶解度パラメータ)は、Fedors法に従って、算出する。
 本明細書において、樹脂成分の軟化点は、JIS-K2207-1996(環球法)に準拠して測定する。
 本明細書において、樹脂成分の重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算の値を算出する。
<タイヤ>
 図1は、本発明のタイヤの一実施態様の断面図である。図1に示すタイヤ1は、一対のビード部2及び一対のサイドウォール部3と、両サイドウォール部3に連なるトレッド部4と、を有し、前記一対のビード部2間にトロイド状に延在して、これら各部2,3,4を補強するカーカス5と、該カーカス5のクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されたベルト6と、を具える。
 図1に示すタイヤのカーカス5は、平行に配列された複数のコードをコーティングゴムで被覆してなるカーカスプライ1枚から構成され、また、該カーカス5は、上記ビード部2に夫々埋設されたビードコア7間にトロイド状に延びる本体部と、各ビードコア7の周りでタイヤ幅方向内側から外側に向けて径方向外方に巻上げた折り返し部とからなるが、本発明のタイヤにおいて、カーカス5のプライ数及び構造は、これに限られるものではない。
 また、図1に示すタイヤのベルト6は、2枚のベルト層6A,6Bからなるが、本発明のタイヤにおいて、ベルト6を構成するベルト層の枚数はこれに限られるものではなく、ベルト層の枚数は、3枚以上であってもよい。ここで、ベルト層は、通常、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びる金属コード(好ましくは、スチールコード)のゴム引き層からなり、2枚のベルト層は、該ベルト層を構成する金属コードが互いにタイヤ赤道面を挟んで交差するように積層されてベルト6を構成する。
 そして、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部4の最表面に位置するトレッドゴム層8と、該トレッドゴム層8のタイヤ径方向内側に位置するベルト層6A,6Bと、を具え、前記トレッドゴム層8は、ゴム成分と、樹脂成分と、充填剤と、を含み、前記ゴム成分が、イソプレン骨格ゴムと、スチレン-ブタジエンゴムと、を含み、前記スチレン-ブタジエンゴムの少なくとも一種は、ガラス転移温度が-40℃未満であり、前記樹脂成分は、前記イソプレン骨格ゴムとのSP値の差が1.40(cal/cm1/2以下であり、前記トレッドゴム層8は、下記の式(A):
   前記樹脂成分/前記イソプレン骨格ゴムの質量比率≧0.5 ・・・ (A)
 を満たし、
 前記ベルト層6A,6Bが、フィラメントを撚り合わせてなる構造を有するコードを含み、前記ベルト層6A,6Bのコードを構成するフィラメントが、当該フィラメントの直径をX(mm)とし、当該フィラメントの引張強度をY(MPa)としたときに、下記の式(B):
   4000-2000X≦Y≦4500-2000X ・・・ (B)
 を満たすことを特徴とする。
 なお、本発明のタイヤは、トレッド部の最表面に位置するトレッドゴム層と、該トレッドゴム層のタイヤ径方向内側に位置するベルト層と、を具えていればよく、種々の変更を加えることができる。例えば、図1に示すタイヤ1のベルト6のタイヤ径方向外側に、ベルト補強層を配設したり、トレッドゴム層8を、最表面側に位置するキャップゴムと、そのタイヤ径方向内側に位置するベースゴムに分割することも可能である。
 本実施形態のタイヤ1は、トレッドゴム層8が、イソプレン骨格ゴムとのSP値の差が1.40(cal/cm1/2以下である樹脂成分を含むことで、ウェット制動性が向上している。
 但し、前記トレッドゴム層8に樹脂成分を含ませるだけでは、タイヤの低燃費性が低下する。これに対し、トレッドゴム層8にガラス転移温度が-40℃未満のスチレン-ブタジエンゴムを含ませることで、前記充填剤の分散性を改良して、タイヤの低燃費性を補完する。また、前記トレッドゴム層8がイソプレン骨格ゴムを含有することで、破壊強度を高めることができ、その結果、タイヤの転がり抵抗を小さくして、低燃費性を向上させることができる。
 更に、トレッドゴム層8における、前記樹脂成分/前記イソプレン骨格ゴムの質量比率を0.5以上とすることで、タイヤのウェット制動性を更に向上させることができる。
 また、軟化成分である樹脂成分をトレッドゴム層8に含ませると、トレッドゴム層8の剛性が低下することで、タイヤ1のプランジャーレベルが低下し、耐カット性が十分でなくなる場合がある。これに対して、本実施形態のタイヤ1においては、フィラメントを撚り合わせてなる構造を有するコードであって、該コードを構成するフィラメントが、当該フィラメントの直径をX(mm)とし、当該フィラメントの引張強度をY(MPa)としたときに、下記の式(B):
   4000-2000X≦Y≦4500-2000X ・・・ (B)
 を満たす、コードをベルト層6A,6Bに用いることで、ベルト層6A,6Bの強度を向上させ、プランジャーレベルを向上させて、タイヤ1の耐カット性を補う。
 従って、本実施形態のタイヤ1は、耐カット性を悪化させることなく、ウェット制動性と、低燃費性とが向上している。
<<トレッドゴム層>>
 本実施形態のタイヤにおいて、前記トレッドゴム層は、ゴム成分と、樹脂成分と、充填剤と、を含む。該トレッドゴム層は、例えば、ゴム成分と、樹脂成分と、充填剤と、を含むゴム組成物から作製することができる。
(ゴム成分)
 前記ゴム成分は、イソプレン骨格ゴムと、スチレン-ブタジエンゴムと、を含み、更に他のゴム成分を含んでもよい。
-イソプレン骨格ゴム-
 前記イソプレン骨格ゴムは、イソプレン単位を主たる骨格とするゴムであり、具体的には、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)等が挙られる。
 ゴム成分がイソプレン骨格ゴムを含有することで、トレッドゴム層の破壊強度を高めることができる。その結果、該トレッドゴム層を具えるタイヤの転がり抵抗を小さくして、低燃費性を向上させることができ、また、タイヤの耐摩耗性を向上させることもできる。
 前記イソプレン骨格ゴムの含有量は、前記ゴム成分100質量部中、1~80質量部であることが好ましく、1~40質量部であることが更に好ましい。イソプレン骨格ゴムの含有量が、ゴム成分100質量部中、1~80質量部の場合、タイヤの低燃費性とウェット制動性とを更に向上させることができる。また、イソプレン骨格ゴムの含有量が、ゴム成分100質量部中、1~40質量部の場合、タイヤの低燃費性とウェット制動性とをより一層向上させることができる。また、イソプレン骨格ゴムの配合効果をより大きくする観点からは、イソプレン骨格ゴムの含有量は、前記ゴム成分100質量部中、10質量部以上が更に好ましい。
-スチレン-ブタジエンゴム-
 前記トレッドゴム層のゴム成分は、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)を含み、該スチレン-ブタジエンゴム(SBR)の少なくとも一種は、ガラス転移温度が-40℃未満であり、好ましくは-45℃以下、更に好ましくは-50℃以下であり、また、好ましくは-90℃より高い。少なくとも一種のスチレン-ブタジエンゴムのガラス転移温度が-40℃未満であると、タイヤの低燃費性と耐摩耗性とを十分に向上させることができる。また、ガラス転移温度が-90℃より高いスチレン-ブタジエンゴムは、合成し易い。
 なお、前記トレッドゴム層のゴム成分は、ガラス転移温度が-40℃以上のスチレン-ブタジエンゴムを含んでもよい。
 前記スチレン-ブタジエンゴムの含有量は、前記ゴム成分100質量部中、20~99質量部であることが好ましく、30~99質量部であることがより好ましく、40~99質量部であることがより好ましく、50~99質量部であることがより好ましく、60~99質量部であることが更に好ましい。スチレン-ブタジエンゴムの含有量が、ゴム成分100質量部中、60~99質量部の場合、タイヤの低燃費性とウェット制動性とを更に向上させることができる。
 前記イソプレン骨格ゴムと前記スチレン-ブタジエンゴムとのSP値の差は、0.3(cal/cm1/2以上であることが好ましく、0.35(cal/cm1/2以上であることが更に好ましい。イソプレン骨格ゴムとスチレン-ブタジエンゴムとのSP値の差が0.3(cal/cm1/2以上の場合、イソプレン骨格ゴムとスチレン-ブタジエンゴムとが非相溶になり易い。
 前記スチレン-ブタジエンゴムは、結合スチレン量が15質量%未満であることが好ましい。スチレン-ブタジエンゴムの結合スチレン量とは、スチレン-ブタジエンゴムに含まれるスチレン単位の割合を意味する。スチレン-ブタジエンゴムの結合スチレン量が15質量%未満である場合、ガラス転移温度が低くなり易い。スチレン-ブタジエンゴムの結合スチレン量は、14質量%以下であることがより好ましく、13質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることが更に好ましい。また、スチレン-ブタジエンゴムの結合スチレン量は、タイヤの耐摩耗性の観点から、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、8質量%以上であることが更に好ましい。
 前記スチレン-ブタジエンゴムの結合スチレン量は、スチレン-ブタジエンゴムの重合に用いる単量体の量、重合度等により調整することができる。
 前記スチレン-ブタジエンゴムは、窒素原子を含む官能基とアルコキシ基とを有する変性剤で変性されていることが好ましい。スチレン-ブタジエンゴムが窒素原子を含む官能基とアルコキシ基とを有する変性剤で変性されている場合、タイヤのウェット制動性と、低燃費性と、耐摩耗性とのバランスが更に向上し、特には、低燃費性と耐摩耗性を更に向上させることができる。
 前記窒素原子を含む官能基とアルコキシ基とを有する変性剤とは、少なくとも1つの窒素原子を含む官能基と少なくとも1つのアルコキシ基を有する変性剤の総称である。
 窒素原子を含む官能基は、下記から選択されることが好ましい。
 第一アミノ基、加水分解可能な保護基で保護された第一アミノ基、第一アミンのオニウム塩残基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、イミン基、イミン残基、アミド基、加水分解可能な保護基で保護された第二アミノ基、環状第二アミノ基、環状第二アミンのオニウム塩残基、非環状第二アミノ基、非環状第二アミンのオニウム塩残基、イソシアヌル酸トリエステル残基、環状第三アミノ基、非環状第三アミノ基、ニトリル基、ピリジン残基、環状第三アミンのオニウム塩残基及び非環状第三アミンのオニウム塩残基からなる群から選択される官能基を有し、直鎖、分枝、脂環若しくは芳香族環を含む炭素数1~30の1価の炭化水素基、又は酸素原子、硫黄原子及びリン原子から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含んでいても良い、直鎖、分枝、脂環又は芳香族環を含む炭素数1~30の1価の炭化水素基である。
--第1の好適態様の変性スチレン-ブタジエンゴム--
 前記スチレン-ブタジエンゴム(SBR)は、アミノアルコキシシラン化合物で変性されていることが好ましく、充填剤に対して高い親和性を有する観点から、末端がアミノアルコキシシラン化合物で変性されていることが更に好ましい。スチレン-ブタジエンゴムの末端がアミノアルコキシシラン化合物で変性されている場合、変性スチレン-ブタジエンゴムと充填剤(特には、シリカ)との相互作用が特に大きくなる。
 前記スチレン-ブタジエンゴムの変性箇所は、上述のように分子末端であってもよいが、主鎖であってもよい。
 分子末端が変性されたスチレン-ブタジエンゴムは、例えば、国際公開第2003/046020号、特開2007-217562号公報に記載の方法に従って、活性末端を有するスチレン-ブタジエン共重合体の末端に、種々の変性剤を反応させることで製造できる。
 一好適態様においては、該分子末端が変性されたスチレン-ブタジエンゴムは、国際公開第2003/046020号、特開2007-217562号公報に記載の方法に従って、シス-1,4結合量が75%以上の活性末端を有するスチレン-ブタジエン共重合体の末端に、アミノアルコキシシラン化合物を反応させた後、多価アルコールのカルボン酸部分エステルと反応させて安定化を行うことで製造することができる。
 前記多価アルコールのカルボン酸部分エステルとは、多価アルコールとカルボン酸とのエステルであり、かつ水酸基を一つ以上有する部分エステルを意味する。具体的には、炭素数4以上の糖類又は変性糖類と脂肪酸とのエステルが好ましく用いられる。このエステルは、更に好ましくは、(1)多価アルコールの脂肪酸部分エステル、特に炭素数10~20の飽和高級脂肪酸又は不飽和高級脂肪酸と多価アルコールとの部分エステル(モノエステル、ジエステル、トリエステルのいずれでもよい)、(2)多価カルボン酸と高級アルコールの部分エステルを、多価アルコールに1~3個結合させたエステル化合物等が挙げられる。
 部分エステルの原料に用いられる多価アルコールとしては、好ましくは少なくとも三つの水酸基を有する炭素数5又は6の糖類(水素添加されていても、水素添加されていなくてもよい)、グリコールやポリヒドロキシ化合物等が用いられる。また、原料脂肪酸としては、好ましくは炭素数10~20の飽和又は不飽和脂肪酸であり、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸が用いられる。
 多価アルコールの脂肪酸部分エステルの中では、ソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、具体的には、ソルビタンモノラウリン酸エステル、ソルビタンモノパルミチン酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタントリステアリン酸エステル、ソルビタンモノオレイン酸エステル、ソルビタントリオレイン酸エステル等が挙げられる。
 上記アミノアルコキシシラン化合物としては、特に限定されないが、下記一般式(i)で表されるアミノアルコキシシラン化合物が好ましい。
   R11 -Si-(OR124-a ・・・ (i)
 一般式(i)中、R11及びR12は、それぞれ独立に炭素数1~20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基を示し、R11及びR12の少なくとも1つはアミノ基で置換されており、aは0~2の整数であり、OR12が複数ある場合、各OR12は互いに同一でも異なっていてもよく、また、分子中には活性プロトンは含まれない。
 上記アミノアルコキシシラン化合物としては、下記一般式(ii)で表されるアミノアルコキシシラン化合物も好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
 一般式(ii)中、n1+n2+n3+n4=4(但し、n2は1~4の整数であり、n1、n3およびn4は0~3の整数である)である。
 Aは、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、アミド基、並びに加水分解性基を有する第一若しくは第二アミノ基の中から選択される少なくとも1種の官能基である。n4が2以上の場合には、Aは、同一でも異なっていてもよく、Aは、Siと結合して環状構造を形成する二価の基であってもよい。
 R21は、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、n1が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。
 R22は、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、いずれも窒素原子及び/又はケイ素原子を含有していてもよい。n2が2以上の場合には、R22は、互いに同一若しくは異なっていてもよいし、或いは、一緒になって環を形成してもよい。
 R23は、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基、炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基又はハロゲン原子であり、n3が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。
 R24は、炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、n4が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。
 加水分解性基を有する第一若しくは第二アミノ基における加水分解性基としては、トリメチルシリル基又はtert-ブチルジメチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基が特に好ましい。
 上記一般式(ii)で表されるアミノアルコキシシラン化合物は、下記一般式(iii)で表されるアミノアルコキシシラン化合物であることが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
 一般式(iii)中、p1+p2+p3=2(但し、p2は1~2の整数であり、p1およびp3は0~1の整数である)である。
 Aは、NRa(Raは、一価の炭化水素基、加水分解性基又は含窒素有機基である)である。
 R25は、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基である。
 R26は、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基、炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基又は含窒素有機基であり、いずれも窒素原子及び/又はケイ素原子を含有していてもよい。p2が2の場合には、R26は、互いに同一でも異なっていてもよいし、或いは、一緒になって環を形成していてもよい。
 R27は、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基、炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基又はハロゲン原子である。
 R28は、炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基である。
 加水分解性基としては、トリメチルシリル基又はtert-ブチルジメチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基が特に好ましい。
 上記一般式(ii)で表されるアミノアルコキシシラン化合物は、下記一般式(iv)又は下記一般式(v)で表されるアミノアルコキシシラン化合物であることも好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
 一般式(iv)中、q1+q2=3(但し、q1は0~2の整数であり、q2は1~3の整数である)である。
 R31は、炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基である。
 R32及びR33は、それぞれ独立して、加水分解性基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基である。
 R34は、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q1が2の場合には同一でも異なっていてもよい。
 R35は、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q2が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
 一般式(v)中、r1+r2=3(但し、r1は1~3の整数であり、r2は0~2の整数である)である。
 R36は、炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基である。
 R37は、ジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、メチルシリル(メチル)アミノメチル基、メチルシリル(メチル)アミノエチル基、メチルシリル(エチル)アミノメチル基、メチルシリル(エチル)アミノエチル基、ジメチルシリルアミノメチル基、ジメチルシリルアミノエチル基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r1が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。
 R38は、炭素数1~20のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r2が2の場合には同一でも異なっていてもよい。
 一般式(v)で表されるアミノアルコキシシラン化合物の具体例としては、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-トリエトキシシリル-1-プロパンアミンが挙げられる。
 上記一般式(ii)で表されるアミノアルコキシシラン化合物は、下記一般式(vi)又は下記一般式(vii)で表されるアミノアルコキシシラン化合物であることも好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
 一般式(vi)中、R40は、トリメチルシリル基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基である。
 R41は、炭素数1~20のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基である。
 R42は、炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基である。
 ここで、TMSは、トリメチルシリル基を示す(以下、同じ。)。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
 一般式(vii)中、R43及びR44は、それぞれ独立して炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基である。
 R45は、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、各R45は、同一でも異なっていてもよい。
 上記一般式(ii)で表されるアミノアルコキシシラン化合物は、下記一般式(viii)又は下記一般式(ix)で表されるアミノアルコキシシラン化合物であることも好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
 一般式(viii)中、s1+s2は3である(但し、s1は0~2の整数であり、s2は1~3の整数である)。
 R46は、炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基である。
 R47及びR48は、それぞれ独立して炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基である。複数のR47又はR48は、同一でも異なっていてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
 一般式(ix)中、Xは、ハロゲン原子である。
 R49は、炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基である。
 R50及びR51は、それぞれ独立して加水分解性基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であるか、或いは、R50及びR51は結合して二価の有機基を形成している。
 R52及びR53は、それぞれ独立してハロゲン原子、ヒドロカルビルオキシ基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基である。
 R50及びR51としては、加水分解性基が好ましく、加水分解性基として、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基が特に好ましい。
 上記一般式(ii)で表されるアミノアルコキシシラン化合物は、下記一般式(x)、下記一般式(xi)、下記一般式(xii)又は下記一般式(xiii)で表されるアミノアルコキシシラン化合物であることも好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000011
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000012
 一般式(x)~(xiii)中、記号U、Vは、それぞれ0~2且つU+V=2を満たす整数である。
 一般式(x)~(xiii)中のR5492は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1~20の一価若しくは二価の脂肪族又は脂環式炭化水素基、或いは炭素数6~18の一価若しくは二価の芳香族炭化水素基である。
 一般式(xiii)中のα及びβは、0~5の整数である。
 一般式(x)、一般式(xi)、一般式(xii)を満たす化合物の中でも、特に、N1,N1,N7,N7-テトラメチル-4-((トリメトキシシリル)メチル)へプタン-1,7-ジアミン、2-((ヘキシル-ジメトキシシリル)メチル)-N1,N1,N3,N3-2-ペンタメチルプロパン-1,3-ジアミン、N1-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N3,N3-ジメチル-N1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1,3-ジアミン、4-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N1,N1,N7,N7-テトラメチル-4-((トリメトキシシリル)メチル)へプタン-1,7-ジアミンが好ましい。
 また、一般式(xiii)を満たす化合物の中でも、特に、N,N-ジメチル-2-(3-(ジメトキシメチルシリル)プロポキシ)エタンアミン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-2-(3-(トリメトキシシリル)プロポキシ)エタンアミン、N,N-ジメチル-2-(3-(トリメトキシシリル)プロポキシ)エタンアミン、N,N-ジメチル-3-(3-(トリメトキシシリル)プロポキシ)プロパン-1-アミンが好ましい。
--第2の好適態様の変性スチレン-ブタジエンゴム--
 前記スチレン-ブタジエンゴム(SBR)は、下記一般式(I)で表されるカップリング剤によって変性されていることも好ましい。この場合、タイヤの低燃費性と耐摩耗性を更に向上させることができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000013
 上記一般式(I)中、R、R及びRは、それぞれ独立して単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示す。
 R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基を示す。
 R及びR11は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキレン基を示す。
 R10は、炭素数1~20の、アルキル基又はトリアルキルシリル基を示す。
 mは、1~3の整数を示し、pは、1又は2を示す。
 R~R11、m及びpは、複数存在する場合、それぞれ独立している。
 i、j及びkは、それぞれ独立して0~6の整数を示す。但し、(i+j+k)は、3~10の整数である。
 Aは、炭素数1~20の、炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子を有し、活性水素を有しない有機基を示す。
 ここで、一般式(I)中、Aが示す炭化水素基は、飽和、不飽和、脂肪族、及び芳香族の炭化水素基を包含する。活性水素を有しない有機基としては、例えば、水酸基(-OH)、第2級アミノ基(>NH)、第1級アミノ基(-NH)、スルフヒドリル基(-SH)等の活性水素を有する官能基、を有しない有機基が挙げられる。
 上記一般式(I)で表されるカップリング剤によって変性されたスチレン-ブタジエンゴムは、重量平均分子量(Mw)が20×10~300×10であって、該変性スチレン-ブタジエンゴムの総量に対して、分子量が200×10~500×10である変性スチレン-ブタジエンゴムを、0.25~30質量%含み、収縮因子(g’)が0.64未満であることが好ましい。
 一般に、分岐を有する重合体は、同一の絶対分子量である直鎖状の重合体と比較した場合に、分子の大きさが小さくなる傾向にあり、前記収縮因子(g’)は、想定上同一の絶対分子量である直鎖状重合体に対する、分子の占める大きさの比率の指標である。即ち、重合体の分岐度が大きくなれば、収縮因子(g’)は小さくなる傾向にある。本実施形態では、分子の大きさの指標として固有粘度を用い、直鎖状の重合体は、固有粘度[η]=-3.883M0.771の関係式に従うものとして用いる。変性スチレン-ブタジエンゴムの各絶対分子量のときの収縮因子(g’)を算出し、絶対分子量が100×10~200×10のときの収縮因子(g’)の平均値を、その変性スチレン-ブタジエンゴムの収縮因子(g’)とする。ここで、「分岐」とは、1つの重合体に対して、他の重合体が直接又は間接的に結合することにより形成されるものである。また、「分岐度」は、1の分岐に対して、直接又は間接的に互いに結合している重合体の数である。例えば、後述するカップリング残基を介して間接的に、後述の5つのスチレン-ブタジエン共重合体鎖が互いに結合している場合には、分岐度は5である。なお、カップリング残基とは、スチレン-ブタジエン共重合体鎖に結合される、変性スチレン-ブタジエンゴムの構成単位であり、例えば、後述するスチレン-ブタジエン共重合体とカップリング剤とを反応させることによって生じる、カップリング剤由来の構造単位である。また、スチレン-ブタジエン共重合体鎖は、変性スチレン-ブタジエンゴムの構成単位であり、例えば、後述するスチレン-ブタジエン共重合体とカップリング剤とを反応させることによって生じる、スチレン-ブタジエン共重合体由来の構造単位である。
 前記収縮因子(g’)は、好ましくは0.64未満であり、より好ましくは0.63以下であり、より好ましくは0.60以下であり、更に好ましくは0.59以下であり、より一層好ましくは0.57以下である。また、収縮因子(g’)の下限は、特に限定されず、検出限界値以下であってもよいが、好ましくは0.30以上であり、より好ましくは0.33以上であり、更に好ましくは0.35以上であり、より一層好ましくは0.45以上である。収縮因子(g’)がこの範囲である変性スチレン-ブタジエンゴムを使用することで、トレッドゴム層に用いるゴム組成物の加工性が向上する。
 収縮因子(g’)は分岐度に依存する傾向にあるため、例えば、分岐度を指標として収縮因子(g’)を制御することができる。具体的には、分岐度が6である変性スチレン-ブタジエンゴムとした場合には、その収縮因子(g’)は0.59以上0.63以下となる傾向にあり、分岐度が8である変性スチレン-ブタジエンゴムとした場合には、その収縮因子(g’)は0.45以上0.59以下となる傾向にある。
 上記一般式(I)で表されるカップリング剤によって変性されたスチレン-ブタジエンゴムは、分岐を有し、分岐度が5以上であることが好ましい。また、変性スチレン-ブタジエンゴムは、1以上のカップリング残基と、該カップリング残基に対して結合するスチレン-ブタジエン共重合体鎖とを有し、更に、上記分岐が、1の当該カップリング残基に対して5以上の当該スチレン-ブタジエン共重合体鎖が結合している分岐を含むことがより好ましい。分岐度が5以上であること、及び、分岐が、1のカップリング残基に対して5以上のスチレン-ブタジエン共重合体鎖が結合している分岐を含むよう、変性スチレン-ブタジエンゴムの構造を特定することにより、より確実に収縮因子(g’)を0.64未満にすることができる。なお、1のカップリング残基に対して結合しているスチレン-ブタジエン共重合体鎖の数は、収縮因子(g’)の値から確認することができる。
 また、前記変性スチレン-ブタジエンゴムは、分岐を有し、分岐度が6以上であることがより好ましい。また、変性スチレン-ブタジエンゴムは、1以上のカップリング残基と、該カップリング残基に対して結合するスチレン-ブタジエン共重合体鎖とを有し、更に、上記分岐が、1の当該カップリング残基に対して6以上の当該スチレン-ブタジエン共重合体鎖が結合している分岐を含むことが、更に好ましい。分岐度が6以上であること、及び、分岐が、1のカップリング残基に対して6以上のスチレン-ブタジエン共重合体鎖が結合している分岐を含むよう、変性スチレン-ブタジエンゴムの構造を特定することにより、収縮因子(g’)を0.63以下にすることができる。
 更に、前記変性スチレン-ブタジエンゴムは、分岐を有し、分岐度が7以上であることが更に好ましく、分岐度が8以上であることがより一層好ましい。分岐度の上限は、特に限定されないが、18以下であることが好ましい。また、変性スチレン-ブタジエンゴムは、1以上のカップリング残基と、該カップリング残基に対して結合するスチレン-ブタジエン共重合体鎖とを有し、更に、上記分岐が、1の当該カップリング残基に対して7以上の当該スチレン-ブタジエン共重合体鎖が結合している分岐を含むことが、より一層好ましく、1の当該カップリング残基に対して8以上の当該スチレン-ブタジエン共重合体鎖が結合している分岐を含むことが、特に好ましい。分岐度が8以上であること、及び、分岐が、1のカップリング残基に対して8以上のスチレン-ブタジエン共重合体鎖が結合している分岐を含むよう、変性スチレン-ブタジエンゴムの構造を特定することにより、収縮因子(g’)を0.59以下にすることができる。
 前記スチレン-ブタジエン共重合体鎖は、少なくともその1つの末端が、それぞれカップリング残基が有するケイ素原子と結合していることが好ましい。この場合、複数のスチレン-ブタジエン共重合体鎖の末端が、1のケイ素原子と結合していてもよい。また、スチレン-ブタジエン共重合体鎖の末端と炭素数1~20のアルコキシ基又は水酸基とが、一つのケイ素原子に結合し、その結果として、その1つのケイ素原子が炭素数1~20のアルコキシシリル基又はシラノール基を構成していてもよい。
 前記変性スチレン-ブタジエンゴムは、伸展油を加えた油展ゴムとすることができる。該変性スチレン-ブタジエンゴムは、非油展であっても、油展であってもよいが、耐摩耗性の観点から、100℃で測定されるムーニー粘度が、20以上100以下であることが好ましく、30以上80以下であることがより好ましい。
 前記変性スチレン-ブタジエンゴムの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20×10以上300×10以下であり、より好ましくは50×10以上であり、より好ましくは64×10以上であり、更に好ましくは80×10以上である。また、上記重量平均分子量は、好ましくは250×10以下であり、更に好ましくは180×10以下であり、より好ましくは150×10以下である。重量平均分子量が20×10以上であると、トレッドゴム層の低ロス性と耐摩耗性を十分に向上させることができる。また、重量平均分子量が300×10以下であると、トレッドゴム層に用いるゴム組成物の加工性が向上する。
 前記変性スチレン-ブタジエンゴムは、該変性スチレン-ブタジエンゴムの総量(100質量%)に対して、分子量が200×10以上500×10以下である変性スチレン-ブタジエンゴム(以下、「特定の高分子量成分」ともいう。)を、0.25質量%以上30質量%以下含むことが好ましい。該特定の高分子量成分の含有量が0.25質量%以上30質量%以下の場合、トレッドゴム層の低ロス性と耐摩耗性を十分に向上させることができる。前記変性スチレン-ブタジエンゴムは、前記特定の高分子量成分を、好ましくは1.0質量%以上含み、より好ましくは1.4質量%以上含み、更に好ましくは1.75質量%以上含み、より一層好ましくは2.0質量%以上含み、特に好ましくは2.15質量%以上含み、極めて好ましくは2.5質量%以上含む。また、変性スチレン-ブタジエンゴムは、前記特定の高分子量成分を、好ましくは28質量%以下含み、より好ましくは25質量%以下含み、更に好ましくは20質量%以下含み、より一層好ましくは18質量%以下含む。
 なお、本明細書において、ゴム成分の「分子量」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって得られる、標準ポリスチレン換算分子量である。特定の高分子量成分の含有量がこのような範囲にある変性スチレン-ブタジエンゴムを得るためには、後述する重合工程と反応工程とにおける反応条件を制御することが好ましい。例えば、重合工程においては、後述する有機モノリチウム化合物の重合開始剤としての使用量を調整すればよい。また、重合工程において、連続式、及び回分式のいずれの重合様式においても、滞留時間分布を有する方法を用いる、即ち、成長反応の時間分布を広げるとよい。
 前記変性スチレン-ブタジエンゴムにおいては、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、1.6以上3.0以下が好ましい。変性スチレン-ブタジエンゴムの分子量分布がこの範囲であれば、トレッドゴム層に用いるゴム組成物の加工性が良好となる。
 前記変性スチレン-ブタジエンゴムの製造方法は、特に限定されるものではないが、有機モノリチウム化合物を重合開始剤として用い、ブタジエンとスチレンを共重合して、スチレン-ブタジエン共重合体を得る重合工程と、該スチレン-ブタジエン共重合体の活性末端に対して、5官能以上の反応性化合物(以下、「カップリング剤」ともいう。)を反応させる反応工程と、を有することが好ましい。
 前記重合工程は、リビングアニオン重合反応による成長反応による重合が好ましく、これにより、活性末端を有するスチレン-ブタジエン共重合体を得ることができ、高変性率の変性スチレン-ブタジエンゴムを得ることができる。
 前記スチレン-ブタジエン共重合体は、1,3-ブタジエンとスチレンを共重合して得られる。
 前記有機モノリチウム化合物の重合開始剤としての使用量は、目標とするスチレン-ブタジエン共重合体又は変性スチレン-ブタジエンゴムの分子量によって決めることが好ましい。重合開始剤の使用量に対する、1,3-ブタジエン、スチレン等の単量体の使用量が重合度に関係し、即ち、数平均分子量及び/又は重量平均分子量に関係する。従って、分子量を増大させるためには、重合開始剤を減らす方向に調整するとよく、分子量を低下させるためには、重合開始剤量を増やす方向に調整するとよい。
 前記有機モノリチウム化合物は、工業的入手の容易さ及び重合反応のコントロールの容易さの観点から、好ましくは、アルキルリチウム化合物である。この場合、重合開始末端にアルキル基を有する、スチレン-ブタジエン共重合体が得られる。アルキルリチウム化合物としては、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、及びスチルベンリチウムが挙げられる。アルキルリチウム化合物としては、工業的入手の容易さ及び重合反応のコントロールの容易さの観点から、n-ブチルリチウム、及びsec-ブチルリチウムが好ましい。これらの有機モノリチウム化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
 前記重合工程において、重合反応様式としては、例えば、回分式、連続式の重合反応様式が挙げられる。連続式においては、1個又は2個以上の連結された反応器を用いることができる。連続式の反応器は、例えば、撹拌機付きの槽型、管型のものが用いられる。連続式においては、好ましくは、連続的に単量体、不活性溶媒、及び重合開始剤が反応器にフィードされ、該反応器内で重合体を含む重合体溶液が得られ、連続的に重合体溶液が排出される。回分式の反応器は、例えば、攪拌機付の槽型のものが用いられる。回分式においては、好ましくは、単量体、不活性溶媒、及び重合開始剤がフィードされ、必要により単量体が重合中に連続的又は断続的に追加され、該反応器内で重合体を含む重合体溶液が得られ、重合終了後に重合体溶液が排出される。本実施形態において、高い割合で活性末端を有するスチレン-ブタジエン共重合体を得るには、重合体を連続的に排出し、短時間で次の反応に供することが可能な、連続式が好ましい。
 前記重合工程は、不活性溶媒中で重合することが好ましい。溶媒としては、例えば、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が挙げられる。具体的な炭化水素系溶媒としては、以下のものに限定されないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素が挙げられる。重合反応に供する前に、不純物であるアレン類、及びアセチレン類を有機金属化合物で処理することで、高濃度の活性末端を有するスチレン-ブタジエン共重合体が得られる傾向にあり、高い変性率の変性スチレン-ブタジエンゴムが得られる傾向にあるため好ましい。
 前記重合工程においては、極性化合物を添加してもよい。極性化合物を添加することで、スチレンを1,3-ブタジエンとランダムに共重合させることができ、また、極性化合物は、1,3-ブタジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤としても用いることができる傾向にある。
 前記極性化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第3級アミン化合物;カリウム-tert-アミラート、カリウム-tert-ブチラート、ナトリウム-tert-ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等を用いることができる。これらの極性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
 前記重合工程において、重合温度は、生産性の観点から、0℃以上であることが好ましく、120℃以下であることが更に好ましく、50℃以上100℃以下であることが特に好ましい。このような範囲にあることで、重合終了後の活性末端に対するカップリング剤の反応量を充分に確保することができる傾向にある。
 前記スチレン-ブタジエン共重合体又は変性スチレン-ブタジエンゴム中の結合ブタジエン量は、特に限定されないが、40質量%以上100質量%以下であることが好ましく、55質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
 また、前記スチレン-ブタジエン共重合体又は変性スチレン-ブタジエンゴム中の結合スチレン量は、特に限定されないが、0質量%超60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。
 前記結合ブタジエン量及び結合スチレン量が上記範囲であると、トレッドゴム層の低ロス性と耐摩耗性とを更に向上させることができる。
 なお、結合スチレン量は、フェニル基の紫外吸光によって測定でき、ここから結合ブタジエン量も求めることができる。
 前記スチレン-ブタジエン共重合体又は変性スチレン-ブタジエンゴムにおいて、ブタジエン結合単位中のビニル結合量は、特に限定されないが、10モル%以上75モル%以下であることが好ましく、20モル%以上65モル%以下であることがより好ましい。ビニル結合量が上記範囲であると、トレッドゴム層の低ロス性と耐摩耗性とを更に向上させることができる。
 なお、変性スチレン-ブタジエンゴムについては、ハンプトンの方法[R.R.Hampton,Analytical Chemistry,21,923(1949)]により、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2-結合量)を求めることができる。
 上記一般式(I)で表されるカップリング剤が有するアルコキシシリル基は、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体が有する活性末端と反応して、アルコキシリチウムが解離し、スチレン-ブタジエン共重合体鎖の末端とカップリング残基のケイ素との結合を形成する傾向にある。カップリング剤1分子が有するSiORの総数から、反応により減じたSiOR数を差し引いた値が、カップリング残基が有するアルコキシシリル基の数となる。また、カップリング剤が有するアザシラサイクル基は、>N-Li結合及びスチレン-ブタジエン共重合体末端とカップリング残基のケイ素との結合を形成する。なお、>N-Li結合は、仕上げ時の水等により容易に>NH及びLiOHとなる傾向にある。また、カップリング剤において、未反応で残存したアルコキシシリル基は、仕上げ時の水等により容易にシラノール(Si-OH基)となり得る傾向にある。
 前記反応工程における反応温度は、好ましくはスチレン-ブタジエン共重合体の重合温度と同様の温度であり、より好ましくは0℃以上120℃以下であり、更に好ましくは50℃以上100℃以下である。また、重合工程後からカップリング剤が添加されるまでの温度変化は、好ましくは10℃以下であり、より好ましくは5℃以下である。
 前記反応工程における反応時間は、好ましくは10秒以上であり、より好ましくは30秒以上である。重合工程の終了時から反応工程の開始時までの時間は、カップリング率の観点から、より短い方が好ましいが、より好ましくは5分以内である。
 反応工程における混合は、機械的な攪拌、スタティックミキサーによる攪拌等のいずれでもよい。重合工程が連続式である場合は、反応工程も連続式であることが好ましい。反応工程における反応器は、例えば、撹拌機付きの槽型、管型のものが用いられる。カップリング剤は、不活性溶媒により希釈して反応器に連続的に供給してもよい。重合工程が回分式の場合は、重合反応器にカップリング剤を投入する方法でも、別の反応器に移送して反応工程を行ってもよい。
 前記一般式(I)において、Aは、好ましくは下記一般式(II)~(V)のいずれかで表される。Aが一般式(II)~(V)のいずれかで表されるものであることにより、より優れた性能を有する変性スチレン-ブタジエンゴムを得ることができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000014
 前記一般式(II)中、Bは、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、aは、1~10の整数を示す。複数存在する場合のBは、各々独立している。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000015
 前記一般式(III)中、Bは、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、Bは、炭素数1~20のアルキル基を示し、aは、1~10の整数を示す。それぞれ複数存在する場合のB及びBは、各々独立している。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000016
 前記一般式(IV)中、Bは、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、aは、1~10の整数を示す。複数存在する場合のBは、各々独立している。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000017
 前記一般式(V)中、Bは、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、aは、1~10の整数を示す。複数存在する場合のBは、各々独立している。
 前記一般式(II)~(V)中のB、B、B、Bに関して、炭素数1~20の炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキレン基等が挙げられる。
 好ましくは、前記一般式(I)において、Aは、前記一般式(II)又は(III)で表され、kは、0を示す。
 より好ましくは、前記一般式(I)において、Aは、前記一般式(II)又は(III)で表され、kは、0を示し、前記一般式(II)又は(III)において、aは、2~10の整数を示す。
 より一層好ましくは、前記一般式(I)において、Aは、前記一般式(II)で表され、kは、0を示し、前記一般式(II)において、aは、2~10の整数を示す。
 かかるカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]アミン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-メチル-1,3-プロパンジアミン、ビス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリスメトキシシリルプロピル)-メチル-1,3-プロパンジアミン等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンが特に好ましい。
 前記カップリング剤としての一般式(I)で表される化合物の添加量は、スチレン-ブタジエン共重合体のモル数対カップリング剤のモル数が、所望の化学量論的比率で反応させるよう調整することができ、そのことにより所望の分岐度が達成される傾向にある。具体的な重合開始剤のモル数は、カップリング剤のモル数に対して、好ましくは5.0倍モル以上、より好ましくは6.0倍モル以上であることが好ましい。この場合、一般式(I)において、カップリング剤の官能基数((m-1)×i+p×j+k)は、5~10の整数であることが好ましく、6~10の整数であることがより好ましい。
 前記特定の高分子成分を有する変性スチレン-ブタジエンゴムを得るためには、スチレン-ブタジエン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を、好ましくは1.5以上2.5以下、より好ましくは1.8以上2.2以下とするとよい。また、得られる変性スチレン-ブタジエンゴムは、GPCによる分子量曲線が一山のピークが検出されるものであることが好ましい。
 前記変性スチレン-ブタジエンゴムのGPCによるピーク分子量をMp、スチレン-ブタジエン共重合体のピーク分子量をMpとした場合、以下の式が成り立つことが好ましい。
   (Mp/Mp)<1.8×10-12×(Mp-120×10+2
 Mpは、20×10以上80×10以下、Mpは30×10以上150×10以下がより好ましい。Mp及びMpは、後述する実施例に記載の方法により求める。
 前記変性スチレン-ブタジエンゴムの変性率は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。変性率が30質量%以上であることで、トレッドゴム層の低ロス性と耐摩耗性とを更に向上させることができる。
 前記反応工程の後、共重合体溶液に、必要に応じて、失活剤、中和剤等を添加してもよい。失活剤としては、以下のものに限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール等が挙げられる。中和剤としては、以下のものに限定されないが、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、バーサチック酸(炭素数9~11個で、10個を中心とする、分岐の多いカルボン酸混合物)等のカルボン酸;無機酸の水溶液、炭酸ガス等が挙げられる。
 また、前記変性スチレン-ブタジエンゴムは、重合後のゲル生成を防止する観点、及び加工時の安定性を向上させる観点から、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェノール)プロピネート、2-メチル-4,6-ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等の酸化防止剤を添加することが好ましい。
 前記変性スチレン-ブタジエンゴムを、重合体溶液から取得する方法としては、公知の方法を用いることができる。その方法として、例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、更にそれを脱水及び乾燥して重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、更にベント押出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法が挙げられる。
 上記一般式(I)で表されるカップリング剤と、スチレン-ブタジエン共重合体とを反応させてなる変性スチレン-ブタジエンゴムは、例えば、下記一般式(VI)で表される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000018
 一般式(VI)中、Dは、スチレン-ブタジエン共重合体鎖を示し、該スチレン-ブタジエン共重合体鎖の重量平均分子量は、10×10~100×10であることが好ましい。該スチレン-ブタジエン共重合体鎖は、変性スチレン-ブタジエンゴムの構成単位であり、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体とカップリング剤とを反応させることによって生じる、スチレン-ブタジエン共重合体由来の構造単位である。
 R12、R13及びR14は、各々独立に、単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示す。
 R15及びR18は、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基を示す。
 R16、R19、及びR20は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示す。
 R17及びR21は、各々独立に、炭素数1~20のアルキレン基を示す。
 R22は、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示す。
 m及びxは、1~3の整数を示し、x≦mであり、pは、1又は2を示し、yは1~3の整数を示し、y≦(p+1)であり、zは、1又は2の整数を示す。
 それぞれ複数存在する場合のD、R12~R22、m、p、x、y、及びzは、各々独立しており、同じであっても異なっていてもよい。
 また、iは、0~6の整数を示し、jは0~6の整数を示し、kは0~6の整数を示し、(i+j+k)は3~10の整数であり、((x×i)+(y×j)+(z×k))は、5~30の整数である。
 Aは、炭素数1~20の炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を有し、かつ、活性水素を有しない有機基を示す。Aが示す炭化水素基は、飽和、不飽和、脂肪族、及び芳香族の炭化水素基を包含する。上記活性水素を有しない有機基としては、例えば、水酸基(-OH)、第2級アミノ基(>NH)、第1級アミノ基(-NH)、スルフヒドリル基(-SH)等の活性水素を有する官能基、を有しない有機基が挙げられる。
 上記一般式(VI)において、Aは、上記一般式(II)~(V)のいずれかで表されることが好ましい。Aが一般式(II)~(V)のいずれかで表されるものであることにより、トレッドゴム層の低ロス性と耐摩耗性とを更に向上させることができる。
--第3の好適態様の変性スチレン-ブタジエンゴム--
 前記スチレン-ブタジエンゴム(SBR)は、少なくとも一方の末端が以下の一般式(1)で表される化合物(アルコキシシラン)を含む変性剤で変性されていることも好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000019
 前記ゴム成分として、充填剤親和性作用基であるオリゴシロキサン及び3級アミノ基を含む上記一般式(1)で表される化合物を含む変性剤で変性したスチレン-ブタジエンゴムを用いることによって、シリカ等の充填剤の分散性を高めることができる。その結果、トレッドゴム層に用いるゴム組成物中での、充填剤の分散性が改善されることから、低ロス性が大きく改善され、タイヤの転がり抵抗を低減でき、低燃費性を向上させることができる。
 上記一般式(1)において、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり;L及びLは、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり;nは、2~4の整数である。
 具体的には、式(1)において、R~Rは、それぞれ独立して置換又は非置換の炭素数1~20のアルキル基であってもよく、前記R~Rが置換される場合、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数4~10のシクロアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数2~12のアルカノイルオキシ基(Ra-COO-、ここで、Raは炭素数1~9のアルキル基である)、炭素数7~13のアラルキルオキシ基、炭素数7~13のアリールアルキル基、及び、炭素数7~13のアルキルアリール基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換され得る。
 より具体的には、前記R~Rは、置換又は非置換の炭素数1~10のアルキル基であってもよく、さらに具体的には、前記R~Rは、それぞれ独立して置換又は非置換の、炭素数1~6のアルキル基であってもよい。
 また、式(1)において、R~Rは、それぞれ独立して置換又は非置換の炭素数1~20のアルキル基であり、具体的には、置換又は非置換の炭素数1~10のアルキル基、さらに具体的には、置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基であってもよく、置換される場合、先にR~Rで説明したような置換基で置換され得る。
 なお、前記R~Rがアルキル基ではなく、加水分解可能な置換基の場合、N-R及びN-Rの結合が水分存在下でN-Hに加水分解され、重合体の加工性に悪影響を及ぼし得る。
 より具体的には、前記式(1)で表される化合物において、R~Rは、メチル基又はエチル基であり、R~Rは、炭素数1~10のアルキル基とすることができる。
 前記式(1)で表される化合物中のアミノ基、即ち、N-R及びN-Rは、3級アミノ基であることが好ましい。前記3級アミノ基は、式(1)で表される化合物が変性剤として用いられた際、更に優れた加工性を有するようにする。
 なお、前記R~Rにアミノ基を保護するための保護基が結合するか、又は、水素が結合する場合には、前記式(1)で表される化合物による効果の具現が難しい可能性がある。水素が結合する場合、変性過程で陰イオンが水素と反応して反応性を失うようになって変性反応自体が不可能となり、保護基が結合する場合、変性反応が行われるが、重合体末端に結合した状態で後加工時に加水分解によって脱保護されて1級又は2級アミノ基になり、脱保護された1級又は2級アミノ基は、その後の配合時に配合物の高粘度化を引き起こし、加工性低下の原因になるおそれがある。
 また、前記式(1)で表される化合物中のL及びLは、それぞれ独立して置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基である。
 より具体的には、L及びLは、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキレン基、更に具体的には、メチレン基、エチレン基又はプロピレン基のような炭素数1~6のアルキレン基とすることができる。
 前記式(1)で表される化合物中のL及びLについては、分子内のSi原子とN原子との間の距離が近い程、より優れた効果を奏する。但し、SiがNと直接結合する場合、後の処理工程中にSiとNとの間の結合が切れるおそれがあり、この際に発生した2級アミノ基は、後処理中に水により流失する可能性が高く、製造される変性スチレン-ブタジエンゴムでは、シリカ等の充填剤との結合を促進するアミノ基による充填剤との結合が難しく、その結果、充填剤の分散性の向上効果が低下することがある。このようにSiとNとの間の結合の長さによる改善効果を考慮すると、前記L及びLは、それぞれ独立して、メチレン基、エチレン基又はプロピレン基のような炭素数1~3のアルキレン基であることが更に好ましく、より具体的には、プロピレン基とすることができる。また、L及びLは、先にR~Rで説明したような置換基で置換され得る。
 また、前記式(1)で表される化合物は、例えば、下記構造式(1-1)~(1-5)で表される化合物のうちのいずれか1つであることが好ましい。より優れた低ロス性を実現できるためである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000020
 前記式(1)で表される化合物は、アルコキシシラン構造がスチレン-ブタジエン共重合体の活性末端と結合する一方、Si-O-Si構造及び末端に結合した3つ以上のアミノ基が、シリカ等の充填剤に対して親和力を示すことによって、従来の分子内に一つのアミノ基を含む変性剤と比較して、充填剤と変性スチレン-ブタジエンゴムとの結合を促進させることができる。また、前記スチレン-ブタジエン共重合体の活性末端の結合程度が均一で、カップリング前後に分子量分布の変化を観察すると、カップリング後にも前に比べて分子量分布が大きくならずに一定である。そのため、変性スチレン-ブタジエンゴム自体の物性低下がなく、トレッドゴム層に用いるゴム組成物内の充填剤の凝集を防ぎ、充填剤の分散性を高めることができるため、該ゴム組成物の加工性を向上させることができ、更には、タイヤの低燃費性とウェット制動性をバランスよく改善することが可能となる。
 なお、前記式(1)で表される化合物は、下記反応スキームで表される縮合反応を通じて製造され得る。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000021
 前記反応スキームにおいて、R~R、L及びL、及びnは、上述した式(1)で定義されたものと同様であり、R’及びR”は、前記縮合反応に影響を及ぼさない任意の置換基である。例えば、前記R’及びR”は、それぞれ独立してR~Rのいずれか1つと同一のものとすることができる。
 前記反応スキームの反応は、酸の存在下で進行し、該酸は一般に縮合反応に用いられるものであれば、制限なしに用いることができる。当業者は、前記反応が進められる反応器の種類、出発物質、反応温度等の多様な工程変数に合わせて、最適な酸を選択することができる。
 なお、前記式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性されたスチレン-ブタジエンゴムは、1.1~3.0の狭い分子量分布(Mw/Mn、「多分散指数(PDI)」ともいう。)を有するものとすることができる。前記変性スチレン-ブタジエンゴムの分子量分布が3.0を超えるか、1.1未満の場合、トレッドゴム層の引張特性及び粘弾性が低下するおそれがある。前記変性スチレン-ブタジエンゴムの分子量分布の制御による、引張特性及び粘弾性改善の効果の顕著性を考慮すると、前記変性スチレン-ブタジエンゴムの分子量分布は、1.3~2.0の範囲が好ましい。なお、前記変性スチレン-ブタジエンゴムは、前記変性剤を用いることによって、変性前のスチレン-ブタジエン共重合体の分子量分布と類似する。
 前記変性スチレン-ブタジエンゴムの分子量分布は、重量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)から計算され得る。このとき、前記数平均分子量(Mn)は、n個の重合体分子の分子量を測定し、これら分子量の総合を求めてnで割って計算した個別の重合体分子量の共通平均であり、前記重量平均分子量(Mw)は、高分子組成物の分子量分布を表す。全体分子量の平均は、モル当たりグラム(g/mol)で表すことができる。
 また、前記重量平均分子量及び数平均分子量は、それぞれゲル透過型クロマトグラフィ(GPC)で分析されるポリスチレン換算分子量である。
 また、前記変性スチレン-ブタジエンゴムは、上記した分子量分布の条件を満たしていると同時に、数平均分子量(Mn)が50,000g/mol~2,000,000g/molであり、より具体的には、200,000g/mol~800,000g/molとすることができる。前記変性スチレン-ブタジエンゴムは、重量平均分子量(Mw)が100,000g/mol~4,000,000g/molであり、より具体的には、300,000g/mol~1,500,000g/molとすることができる。
 前記変性スチレン-ブタジエンゴムの重量平均分子量(Mw)が100,000g/mol未満であるか、又は数平均分子量(Mn)が50,000g/mol未満の場合、トレッドゴム層の引張特性が低下するおそれがある。また、重量平均分子量(Mw)が4,000,000g/molを超えているか、数平均分子量(Mn)が2,000,000g/molを超える場合には、変性スチレン-ブタジエンゴムの加工性の低下によりトレッドゴム層に用いるゴム組成物の作業性が悪化し、混練が困難となり、また、トレッドゴム層の物性を十分に向上させることが難しくなることがある。
 より具体的には、前記変性スチレン-ブタジエンゴムは、前記分子量分布とともに、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の条件を同時に満たしている場合には、トレッドゴム層用のゴム組成物の粘弾性と加工性をバランスよく改善させることができる。
 前記変性スチレン-ブタジエンゴムは、ブタジエン部分のビニル結合量が5%以上であることが好ましく、10%以上であることが更に好ましく、また、60%以下であることが好ましい。ブタジエン部分のビニル結合量を上記の範囲にすることで、ガラス転移温度を適切な範囲に調整できる。
 前記変性スチレン-ブタジエンゴムは、100℃でのムーニー粘度(MV)が、40~140、具体的には60~100であってもよい。前記範囲のムーニー粘度を有する場合、より優れた加工性を示すことができる。
 前記ムーニー粘度は、ムーニー粘度計、例えば、Monsanto社のMV2000Eで、100℃、ローター速度2±0.02rpmで、大ローターを使って測定することができる。このとき用いられた試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取して、ダイキャビティの内部に満たしておき、プラテンを作動させて測定することができる。
 前記変性スチレン-ブタジエンゴムは、上述したように、一方の末端が上記一般式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性されることが好ましいが、他方の末端が下記一般式(2)で表される化合物を含む変性剤によって更に変性されていることが好ましい。変性スチレン-ブタジエンゴムの両末端が変性されていることで、トレッドゴム層用のゴム組成物中の充填剤の分散性が更に向上し、タイヤの低燃費性とウェット制動性とをより高いレベルで両立できる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000022
 上記一般式(2)において、R~R11は、互いに独立して、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;又は炭素数3~30の複素環基である。
 また、式(2)において、R12は、単結合;置換基で置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基で置換又は非置換の炭素数5~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基である。
 また、式(2)において、R13は、炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基;又は下記一般式(2a)若しくは一般式(2b)で表される作用基であり、mは1~5の整数であり、R13のうち少なくとも1つは、下記一般式(2a)若しくは一般式(2b)で表される作用基であり、mが2~5の整数の場合、複数のR13は、互いに同一であっても、異なってもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000023
 上記一般式(2a)において、R14は、置換基で置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基で置換又は非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基である。
 また、式(2a)において、R15及びR16は、互いに独立に、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基で置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基である。
 また、式(2a)において、R17は、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基であり、Xは、N、O又はS原子であり、但し、XがO又はSである場合、R17は存在しない。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000024
 上記一般式(2b)において、R18は、置換基で置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基で置換又は非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基である。
 また、式(2b)において、R19及びR20は、互いに独立に、炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基である。
 また、上記一般式(2)で表される化合物において、R~R11は、互いに独立に、水素;炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;又は炭素数2~10のアルキニル基であり、R12は、単結合;又は非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R13は、炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;炭素数2~10のアルキニル基;又は上記一般式(2a)又は一般式(2b)で表される作用基であり、上記一般式(2a)において、R14は、非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R15及びR16は、互いに独立に非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R17は、炭素数1~10のアルキル基;炭素数5~20のシクロアルキル基;炭素数6~20のアリール基;又は炭素数3~20の複素環基であり、上記一般式(2b)において、R18は、非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R19及びR20は、互いに独立に炭素数1~10のアルキル基;炭素数5~20のシクロアルキル基;炭素数6~20のアリール基;又は炭素数3~20の複素環基であってもよい。
 より具体的には、上記一般式(2)で表される化合物は、以下の構造式(2-1)~式(2-3)で表される化合物とすることができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000025
 なお、前記スチレン-ブタジエン共重合体を、上記一般式(2)で表される化合物を含む変性剤によって変性させる場合には、式(2)で表される化合物を含む変性剤を、変性開始剤として用いる。
 具体的には、例えば、炭化水素溶媒中で、式(2)で表される化合物を含む変性剤の存在下にて、ブタジエン単量体及びスチレン単量体を重合させることで、式(2)で表される化合物由来の変性基を、前記スチレン-ブタジエン共重体に付与することができる。
-他のゴム-
 前記ゴム成分は、更に他のゴムを含んでもよく、ゴム成分100質量部中、他のゴムの含有量は、35質量部以下が好ましい。かかる他のゴムとしては、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPR,EPDM)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらの中でも、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)等のジエン系ゴムが好ましく、ブタジエンゴム(BR)が更に好ましい。
 また、ブタジエンゴム(BR)としては、ハイシスポリブタジエンが好ましく、ここで、ハイシスポリブタジエンは、シス-1,4結合含量が90質量%以上であることが好ましい。なお、ゴム成分がブタジエンゴムを含む場合、ブタジエンゴムの含有量は、ゴム成分100質量部中、1~35質量部の範囲が好ましい。
(樹脂成分)
 前記トレッドゴム層は、樹脂成分を含む。該樹脂成分は、前記イソプレン骨格ゴムとのSP値の差が1.40(cal/cm1/2以下である。また、前記トレッドゴム層は、下記の式:
   前記樹脂成分/前記イソプレン骨格ゴムの質量比率≧0.5
 を満たす。
 前記樹脂成分と、前記イソプレン骨格ゴムとのSP値の差が1.40(cal/cm1/2以下であることで、樹脂成分のイソプレン骨格ゴムに対する相溶性が高くなり、ゴム成分の運動性が制御され、低温領域のヒステリシスロス(tanδ)を向上させることができるため、タイヤのウェット制動性が向上する。なお、樹脂成分とイソプレン骨格ゴムとのSP値の差は、相溶性をより向上させる観点から、1.35(cal/cm1/2以下であることが好ましく、0.50(cal/cm1/2以下であることがより好ましく、0.45(cal/cm1/2以下であることがより好ましく、0.3(cal/cm1/2以下であることがより好ましく、0.25(cal/cm1/2以下であることが更に好ましい。樹脂成分とイソプレン骨格ゴムとのSP値の差が0.50(cal/cm1/2以下であると、樹脂成分とイソプレン骨格ゴムとの相溶性がより向上し、タイヤのウェット制動性が更に向上する。
 また、前記樹脂成分と前記イソプレン骨格ゴムの質量比率[樹脂成分/イソプレン骨格ゴムの質量比率]が、0.5以上であることで、タイヤのウェット制動性を更に向上させることができる。なお、樹脂成分とイソプレン骨格ゴムの質量比率[樹脂成分/イソプレン骨格ゴムの質量比率]は、0.65以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、0.8以上がより好ましく、また、2.0以下が好ましく、1.9以下がより好ましく、1.8以下であることが更に好ましい。
 前記樹脂成分の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して1質量部以上50質量部未満であることが好ましい。トレッドゴム層中の樹脂成分の含有量が、ゴム成分100質量部に対し1質量部以上であると、樹脂成分による効果が十分に発現し、また、50質量部未満であると、タイヤから樹脂成分が析出し難く、樹脂成分による効果を十分に発現できる。トレッドゴム層中の樹脂成分の含有量は、樹脂成分による効果をより高める観点から、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、7質量部以上であることがより好ましく、9質量部以上であることがより好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、17質量部以上であることが更に好ましい。また、タイヤからの樹脂成分の析出を抑制し、タイヤ外観の低下を抑制する観点から、トレッドゴム層中の樹脂成分の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、45質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることが更に好ましい。
 前記樹脂成分は、少なくとも部分的に水素添加されていることが好ましい。樹脂成分が、少なくとも部分的に水素添加されていることで、イソプレン骨格ゴムに対する相溶性が更に高くなり、ゴム成分の運動性が更に制御され、低温領域のヒステリシスロス(tanδ)を更に向上させることができるため、タイヤのウェット制動性が更に向上する。
 前記樹脂成分は、軟化点が110℃より高く、ポリスチレン換算の重量平均分子量が200~1600g/molであることが好ましい。かかる樹脂成分を含むトレッドゴム層をタイヤに適用することで、タイヤの耐摩耗性を更に向上させることができる。
 前記樹脂成分の軟化点が110℃より高いと、トレッドゴム層を十分に補強でき、タイヤの耐摩耗性を更に向上させることができる。樹脂成分の軟化点は、タイヤの耐摩耗性の観点から、116℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがより好ましく、123℃以上であることがより好ましく、127℃以上であることが更に好ましい。また、樹脂成分の軟化点は、加工性の観点から、160℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、145℃以下であることがより好ましく、141℃以下であることがより好ましく、136℃以下であることが更に好ましい。
 前記樹脂成分のポリスチレン換算の重量平均分子量が200g/mol以上であると、タイヤから樹脂成分が析出し難く、樹脂成分による効果を十分に発現することができ、また、1600g/mol以下であると、樹脂成分がゴム成分と相溶し易い。
 タイヤからの樹脂成分の析出を抑制し、タイヤ外観の低下を抑制する観点から、樹脂成分のポリスチレン換算の重量平均分子量は、500g/mol以上であることが好ましく、550g/mol以上であることがより好ましく、600g/mol以上であることがより好ましく、650g/mol以上であることがより好ましく、700g/mol以上であることが更に好ましい。また、ゴム成分への樹脂成分の相溶性を高め、樹脂成分による効果をより高める観点から、樹脂成分のポリスチレン換算の重量平均分子量は、1570g/mol以下であることがより好ましく、1530g/mol以下であることがより好ましく、1500g/mol以下であることがより好ましく、1470g/mol以下であることがより好ましく、1430g/mol以下であることがより好ましく、1400g/mol以下であることがより好ましく、1370g/mol以下であることがより好ましく、1330g/mol以下であることがより好ましく、1300g/mol以下であることがより好ましく、1200g/mol以下であることがより好ましく、1100g/mol以下であることがより好ましく、1000g/mol以下であることがより好ましく、950g/mol以下であることが更に好ましい。
 前記樹脂成分のポリスチレン換算の重量平均分子量(MwHR)(単位はg/mol)に対する樹脂成分の軟化点(TsHR)(単位は℃)の比(TsHR/MwHR)は、0.07以上であることが好ましく、0.083以上であることがより好ましく、0.095以上であることがより好ましく、0.104以上であることがより好ましく、0.125以上であることがより好ましく、0.135以上であることがより好ましく、0.14以上であることがより好ましく、0.141以上であることが更に好ましい。また、該比(TsHR/MwHR)は、0.25以下であることが好ましく、0.24以下であることが好ましく、0.23以下であることが好ましく、0.19以下であることが好ましく、0.18以下であることがより好ましく、0.17以下であることが更に好ましい。
 前記樹脂成分としては、C系樹脂、C-C系樹脂、C系樹脂、テルペン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、テルペン-芳香族化合物系樹脂等が挙げられ、これら樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 また、上述の、少なくとも部分的に水素添加されている樹脂成分とは、樹脂を還元水素化して得られる樹脂を意味する。水素添加されている樹脂成分の原料となる樹脂としては、C系樹脂、C-C系樹脂、C系樹脂、テルペン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、テルペン-芳香族化合物系樹脂等が挙げられ、これら樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 前記C系樹脂としては、石油化学工業のナフサの熱分解によって得られるC留分を(共)重合して得られる脂肪族系石油樹脂が挙げられる。
 C留分には、通常1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、3-メチル-1-ブテン等のオレフィン系炭化水素、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,2-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,2-ブタジエン等のジオレフィン系炭化水素等が含まれる。なお、C系樹脂は、市販品を利用することができる。
 前記C-C系樹脂とは、C-C系合成石油樹脂を指し、C-C系樹脂としては、例えば、石油由来のC-C11留分を、AlCl、BF等のフリーデルクラフツ触媒を用いて重合して得られる固体重合体が挙げられ、より具体的には、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデン等を主成分とする共重合体等が挙げられる。
 C-C系樹脂としては、C以上の成分の少ない樹脂が、ゴム成分との相溶性の観点から好ましい。ここで、「C以上の成分が少ない」とは、樹脂全量中のC以上の成分が50質量%未満、好ましくは40質量%以下であることを言うものとする。C-C系樹脂は、市販品を利用することができる。
 前記C系樹脂とは、C系合成石油樹脂を指し、例えばAlClやBF等のフリーデルクラフツ型触媒を用い、C留分を重合して得られる固体重合体を指す。
 C系樹脂としては、例えば、インデン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等を主成分とする共重合体等が挙げられる。
 前記テルペン系樹脂は、松属の木からロジンを得る際に同時に得られるテレビン油、或いはこれから分離した重合成分を配合し、フリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体状の樹脂であり、β-ピネン樹脂、α-ピネン樹脂等がある。また、テルペン-芳香族化合物系樹脂としては、代表例としてテルペン-フェノール樹脂を挙げることができる。このテルペン-フェノール樹脂は、テルペン類と種々のフェノール類とを、フリーデルクラフツ型触媒を用いて反応させたり、或いは更にホルマリンで縮合する方法で得ることができる。原料のテルペン類としては特に制限はなく、α-ピネンやリモネン等のモノテルペン炭化水素が好ましく、α-ピネンを含むものがより好ましく、特にα-ピネンであることが好ましい。なお、骨格中にスチレン等を含んでいてもよい。
 前記ジシクロペンタジエン系樹脂は、例えばAlClやBF等のフリーデルクラフツ型触媒等を用い、ジシクロペンタジエンを重合して得られる樹脂を指す。
 また、水素添加されている樹脂成分の原料となる樹脂は、例えば、C留分とジシクロペンタジエン(DCPD)とを共重合した樹脂(C-DCPD系樹脂)を含んでいてもよい。
 ここで、樹脂全量中のジシクロペンタジエン由来成分が50質量%以上の場合、C-DCPD系樹脂はジシクロペンタジエン系樹脂に含まれるものとする。樹脂全量中のジシクロペンタジエン由来成分が50質量%未満の場合、C-DCPD系樹脂はC系樹脂に含まれるものとする。更に第三成分等が少量含まれる場合でも同様である。
 前記ゴム成分と樹脂成分との相溶性を高める観点から、樹脂成分は、水添C系樹脂、水添C-C系樹脂、及び水添ジシクロペンタジエン系樹脂(水添DCPD系樹脂)、水添テルペン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、水添C系樹脂及び水添C-C系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、水添C系樹脂であることが更に好ましい。また、少なくともモノマーに水添DCPD構造又は水添された環状構造を有する樹脂であることが好ましい。前記樹脂成分が、水添C系樹脂、水添C-C系樹脂、水添ジシクロペンタジエン系樹脂、及び水添テルペン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であると、トレッドゴム層を具えるタイヤのウェット制動性をより向上させ、また、低燃費性を更に向上させることができる。
(充填剤)
 前記トレッドゴム層は、充填剤を含む。充填剤を含むことで、トレッドゴム層の補強性が向上する。
 前記トレッドゴム層中の充填剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して40~125質量部の範囲が好ましい。トレッドゴム層中の充填剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対し、40質量部以上であると、トレッドゴム層の補強が十分であり、タイヤの耐摩耗性を更に向上させることができ、また、125質量部以下であると、トレッドゴム層の弾性率が高くなり過ぎず、タイヤのウェット制動性が更に向上する。タイヤの転がり抵抗をより低くする観点(低燃費性を向上させる観点)から、トレッドゴム層中の充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、45質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることがより好ましく、55質量部以上であることが更に好ましい。また、タイヤのウェット制動性を向上させる観点から、トレッドゴム層中の充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、105質量部以下であることがより好ましく、100質量部以下であることがより好ましく、95質量部以下であることが更に好ましい。
-シリカ-
 前記充填剤は、シリカを含有することが好ましく、窒素吸着比表面積(BET法)が80m/g以上330m/g未満であるシリカを含有することが更に好ましい。シリカの窒素吸着比表面積(BET法)が80m/g以上であると、タイヤを十分に補強でき、タイヤの転がり抵抗を更に低くすることができる。また、シリカの窒素吸着比表面積(BET法)が330m/g未満であると、トレッドゴム層の弾性率が高くなり過ぎず、タイヤのウェット制動性が更に向上する。転がり抵抗をより低くし、タイヤの耐摩耗性を更に向上させる観点から、シリカの窒素吸着比表面積(BET法)は、110m/g以上であることが好ましく、130m/g以上であることが好ましく、150m/g以上であることが好ましく、180m/g以上であることが更に好ましい。また、タイヤのウェット制動性をより向上させる観点から、シリカの窒素吸着比表面積(BET法)は、300m/g以下であることが好ましく、280m/g以下であることがより好ましく、270m/g以下であることが更に好ましい。
 前記シリカとしては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、湿式シリカが好ましい。これらシリカは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
 前記シリカとしては、植物由来のシリカも好ましい。前記植物由来のシリカとしては、環境負荷低減の観点から、ケイ酸植物由来のシリカが好ましい。該ケイ酸植物は、例えば、コケ類、シダ類、トクサ類、ウリ科、イラクサ科、イネ科の植物等に存在する。これら植物の中でも、イネ科植物が好ましく、即ち、前記植物由来のシリカとしては、イネ科植物由来のシリカが好ましい。イネ科植物由来のシリカは、タイヤ製造工場の近隣で原料を現地調達できるため、輸送や保管のエネルギー及びコストを低減でき、種々の観点から、環境面で好ましい。
 また、該イネ科植物としては、イネ、笹、サトウキビ等が挙げられ、これらの中でも、イネが好ましい。該イネは、食用に広く栽培されているため、広い地域で現地調達可能であり、また、イネの籾殻は、産業廃棄物として多量に発生することから量を確保し易い。従って、入手容易性の観点から、植物由来のシリカとしては、籾殻由来のシリカ(以下、「籾殻シリカ」とも呼ぶ。)が特に好ましい。該籾殻シリカを用いることで、産業廃棄物となる籾殻を有効活用でき、また、タイヤ製造工場の近隣で原料を現地調達できるため、輸送や保管のエネルギー及びコストを低減でき、種々の観点から、環境面で好ましい。前記籾殻シリカは、籾殻を加熱により炭化して得られる籾殻炭の粉末でもよいし、籾殻を燃料としてバイオマスボイラーで燃焼させた際に発生する籾殻灰をアルカリで抽出してケイ酸アルカリ水溶液を調製し、該ケイ酸アルカリ水溶液を用いて湿式法で製造した沈降シリカでもよい。前記籾殻炭の製法は、特に限定されず、公知の種々の方法を用いることができ、例えば、窯を用いて籾殻を蒸し焼きにすることで熱分解させて籾殻炭を得ることができる。このようにして得られる籾殻炭を公知の粉砕機(例えば、ボールミル)を用いて粉砕し、所定の粒径範囲に選別し分級することで、籾殻炭の粉末を得ることができる。また、前記籾殻由来の沈降シリカは、特開2019-38728号公報に記載の方法等で製造できる。
 前記トレッドゴム層中のシリカの含有量は、トレッドゴム層の機械的強度を向上させ、タイヤの耐摩耗性を更に向上させる観点から、ゴム成分100質量部に対して、40質量部以上であることが好ましく、45質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることがより好ましく、55質量部以上であることが更に好ましい。また、タイヤのウェット制動性をより向上させる観点から、トレッドゴム層中のシリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、125質量部以下であることが好ましく、105質量部以下であることがより好ましく、100質量部以下であることがより好ましく、95質量部以下であることが更に好ましい。
-カーボンブラック-
 前記充填剤は、カーボンブラックを含むことも好ましい。該カーボンブラックは、トレッドゴム層を補強して、タイヤの耐摩耗性を向上させることができる。
 カーボンブラックとしては、特に限定されるものではなく、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、及びSAFグレードのカーボンブラックが挙げられる。これらカーボンブラックは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。また、カーボンブラックは、再生カーボンブラックでもよい。
 本明細書において、「再生カーボンブラック」とは、リサイクルに供された廃棄物である原材料から回収して得られるカーボンブラックを指す。上記リサイクルに供された廃棄物としては、使用済ゴム及び使用済タイヤに代表される、カーボンブラックを含むゴム製品(特には、加硫ゴム製品)、廃油等が挙げられる。「再生カーボンブラック」は、石油や天然ガスなどの炭化水素を原材料から直接製造されるカーボンブラック、すなわち、リサイクル品ではないカーボンブラックとは異なる。なお、ここでの「使用済」とは、実際に使用された後で廃棄されたものだけではなく、製造されたものの実際には使用されずに廃棄されたものも含む。
 前記トレッドゴム層中のカーボンブラックの含有量は、トレッドゴム層及びそれを適用したタイヤの耐摩耗性を向上させる観点から、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることが更に好ましい。また、トレッドゴム層の作製に用いるゴム組成物の作業性の観点から、トレッドゴム層(トレッドゴム層用のゴム組成物)中のカーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。
 充填剤がシリカとカーボンブラックを含む場合、シリカとカーボンブラックの総量中のシリカの割合は、80質量%以上100質量%未満であることが好ましく、90質量%以上100質量%未満であることが更に好ましい。シリカの割合が80質量%以上であることで、トレッドゴム層の機械的強度が向上し、タイヤの転がり抵抗をより低くすることができる。
-その他の充填剤-
 前記充填剤は、シリカ、カーボンブラック以外に、例えば、クレー、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機充填剤を含んでいてもよい。
 上述のその他の充填剤は、充填剤中のシリカの割合が70質量%以上である範囲で、含まれることが好ましい。充填剤中のシリカの割合が70質量%以上であることで、トレッドゴム層の機械的強度が向上し、タイヤの転がり抵抗をより低くすることができる。充填剤中のシリカの割合は、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは85質量%以上であり、より一層好ましくは90質量%以上100質量%未満である。
(スチレン系熱可塑性エラストマー)
 前記トレッドゴム層は、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)を含んでもよい。該スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)は、スチレン系重合体ブロック(ハードセグメント)と、共役ジエン系重合体ブロック(ソフトセグメント)とを有し、スチレン系重合体部分が物理架橋を形成して橋かけ点となり、一方、共役ジエン系重合体ブロックがゴム弾性を付与する。共役ジエン系重合体ブロック(ソフトセグメント)の二重結合は、一部又は全部が水素化されていてもよい。
 なお、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)は、熱可塑性である一方、前記ゴム成分(好ましくは、ジエン系ゴム)は、熱可塑性ではない。そのため、本明細書においては、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)は、前記ゴム成分に含めないものとする。スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して1~30質量部の範囲が好ましい。
 前記スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)としては、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)ブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)ブロック共重合体、スチレン/ブタジエン(SB)ブロック共重合体、スチレン/イソプレン(SI)ブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/イソプレン(SBI)ブロック共重合体、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン(SEBS)ブロック共重合体、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン(SEPS)ブロック共重合体、スチレン/エチレン/エチレン/プロピレン/スチレン(SEEPS)ブロック共重合体、スチレン/エチレン/ブチレン(SEB)ブロック共重合体、スチレン/エチレン/プロピレン(SEP)ブロック共重合体、スチレン/エチレン/エチレン/プロピレン(SEEP)ブロック共重合体等が挙げられる。
(その他)
 前記トレッドゴム層は、既述のゴム成分、樹脂成分、充填剤、スチレン系熱可塑性エラストマー、並びに、必要に応じて、ゴム工業界で通常使用される各種成分、例えば、シランカップリング剤、老化防止剤、ワックス、軟化剤、加工助剤、ステアリン酸、酸化亜鉛(亜鉛華)、加硫促進剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して含有していてもよい。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
 前記トレッドゴム層がシリカを含む場合、該シリカの効果を向上させるために、シランカップリング剤を含むことが好ましい。該シランカップリング剤としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等が挙げられる。該シランカップリング剤の含有量は、前記シリカ100質量部に対して2~20質量部の範囲が好ましく、5~15質量部の範囲が更に好ましい。
 前記老化防止剤としては、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6C)、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(TMDQ)、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(AW)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)等が挙げられる。該老化防止剤の含有量は、特に制限はなく、前記ゴム成分100質量部に対して、0.1~5質量部の範囲が好ましく、1~4質量部がより好ましい。
 前記ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。該ワックスの含有量は、特に制限はなく、前記ゴム成分100質量部に対して、0.1~5質量部の範囲が好ましく、1~4質量部がより好ましい。
 前記酸化亜鉛(亜鉛華)の含有量は、特に制限はなく、前記ゴム成分100質量部に対して、0.1~10質量部の範囲が好ましく、1~8質量部がより好ましい。
 前記加硫促進剤としては、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。該加硫促進剤の含有量は、特に制限はなく、前記ゴム成分100質量部に対して、0.1~5質量部の範囲が好ましく、0.2~4質量部の範囲が更に好ましい。
 前記加硫剤としては、硫黄等が挙げられる。該加硫剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、硫黄分として0.1~10質量部の範囲が好ましく、1~4質量部の範囲が更に好ましい。
(トレッドゴム層の製造方法)
 前記トレッドゴム層の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、既述のゴム成分、樹脂成分及び充填剤に、必要に応じて適宜選択した各種成分を配合して、混練り、熱入れ、押出等することによりトレッドゴム層用のゴム組成物を製造することができる。また、得られたゴム組成物を加硫することで、加硫ゴムとすることができる。
 前記混練りの条件としては、特に制限はなく、混練り装置の投入体積やローターの回転速度、ラム圧等、及び混練り温度や混練り時間、混練り装置の種類等の諸条件について目的に応じて適宜に選択することができる。混練り装置としては、通常、ゴム組成物の混練りに用いるバンバリーミキサーやインターミックス、ニーダー、ロール等が挙げられる。
 前記熱入れの条件についても、特に制限はなく、熱入れ温度や熱入れ時間、熱入れ装置等の諸条件について目的に応じて適宜に選択することができる。該熱入れ装置としては、通常、ゴム組成物の熱入れに用いる熱入れロール機等が挙げられる。
 前記押出の条件についても、特に制限はなく、押出時間や押出速度、押出装置、押出温度等の諸条件について目的に応じて適宜に選択することができる。押出装置としては、通常、ゴム組成物の押出に用いる押出機等が挙げられる。押出温度は、適宜に決定することができる。
 前記加硫を行う装置や方式、条件等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜に選択することができる。加硫を行う装置としては、通常、ゴム組成物の加硫に用いる金型による成形加硫機等が挙げられる。加硫の条件として、その温度は、例えば100~190℃程度である。
<<ベルト層>>
 前記ベルト層は、フィラメントを撚り合わせてなる構造を有するコードを含み、更に該ベルト層のコードは、ベルトコーティングゴムで被覆されている。該ベルト層のコードを構成するフィラメントは、当該フィラメントの直径をX(mm)とし、当該フィラメントの引張強度をY(MPa)としたときに、下記式(B):
   4000-2000X≦Y≦4500-2000X ・・・ (B)
 を満たす。式(B)を満たすフィラメントを撚り合わせてなる構造を有するコードをベルト層に用いることで、ベルト層の強度を向上させ、プランジャーレベルを向上させて、タイヤの耐カット性を補うことができる。
 ここで、フィラメントの引張強度は、ISO 17832:2009の規定に従って決定する。
 前記ベルト層のコードを構成するフィラメントは、耐疲労性の観点から、フィラメントの表層の硬度は内層の硬度に対して90~110%が好ましく、100%が特に好ましい。当該硬度は、例えば、ビッカース硬さで測定することができる。また、フィラメントの表層とは最表面から0.01mmの深さまでの層を意味し、それより内側はフィラメントの内層を意味する。硬度の測定は、表層については最表面から0.005mm、内層については0.04mmより深い領域にて測定することができる。
 前記ベルト層のコードを構成するフィラメントの製造方法は、特に限定されない。該フィラメントは、例えば、鉄鉱石を精錬、伸線して得たものでもよく、廃鉄スクラップを精錬、伸線して得たものでもよく、或いは、タイヤから取り出したスチールをリサイクルして得たものでもよい。
 また、前記ベルト層においては、典型的には、複数本のコードが並列に引き揃えられる。かかるコードは、一般的には、スチールコードである。また、かかるコードの構造としては、特に制限はない。
 前記ベルト層のコードは、N本のフィラメントを撚り合わせてなる1×N構造(ここで、Nは2~6から選択される整数である)であることが好ましい。ベルト層のコードが、N本のフィラメントを撚り合わせてなる1×N構造を有すると、タイヤの耐カット性と低燃費性とを効果的に両立することができる。特に、タイヤロードインデックスが100未満のタイヤにおいては、上記コードは1×2構造であることがより好ましく、タイヤロードインデックスが100以上のタイヤにおいては、上記コードは1×5構造であることがより好ましい。
 また、上記1×N構造の場合において、当該コードは、フィラメント同士が接触せずに互いに間隔を設けて撚り合わされてなる1×Nオープン構造とすることができる。オープン構造のコードは、フィラメント同士が互いに接触しながら撚り合わされたコードに比べ、耐疲労性に優れる。なお、1×Nオープン構造のコードは、フィラメント同士の間に未加硫ゴムを挟み、一緒に撚り合わせて形成してもよく、あるいは、フィラメントの表面に未加硫ゴムを被覆してから、これらを撚り合わせて形成してもよい。
 前記ベルト層におけるコードの打ち込み密度は、60本/dm以上95本/dm以下であることが好ましい。この場合、タイヤの耐カット性と低燃費性とを効果的に両立することができる。
 前記ベルト層のコードの径は、0.5mm以上1.0mm以下であることが好ましい。この場合、タイヤの耐カット性と低燃費性とを効果的に両立することができる。
 前記コーティングゴムとしては、スチールコードを被覆できる一般的なゴム組成物であれば特に限定がない。ゴム成分としては、ジエン系ゴムが挙げられ、特には天然ゴム又はイソプレンゴムが好ましい。天然ゴムは、改質されたものであってもよい。改質天然ゴムの場合、例えば窒素含有量が0.1~0.3質量%の改質天然ゴムであることが好ましい。また、前記改質天然ゴムが、遠心分離プロセス、酵素処理又は尿素処理によってたんぱく質が除去されたものであることが好ましい。また、前記改質天然ゴムのリン含有量が、200ppmを超え、900ppm以下であることが好ましい。また、該コーティングゴムには、コーティングゴムとしての接着性や耐久性等の性能に影響しない範囲であれば、カーボンブラック等の充填剤を配合してもよい。該カーボンブラックとしては、HAFクラスのカーボンブラックが好ましく、また、コーティングゴムにおけるカーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して50~70質量部とすることができる。カーボンブラックは、再生カーボンブラックでもよい。また、コーティングゴムは、上述した成分以外に、例えば、加硫促進剤、硫黄、亜鉛華等の架橋系薬品;コバルト塩を含むコバルト化合物等の接着促進剤;老化防止剤;オイル;樹脂;等を適宜含有することができる。老化防止剤としては、6PPD等のアミン系老化防止剤、o-MBp14等のビスフェノール系老化防止剤などが挙げられ、これら老化防止剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 本明細書において 、「再生カーボンブラック」とは、リサイクルに供された廃棄物である原材料から回収して得られるカーボンブラックを指す。上記リサイクルに供された廃棄物としては、使用済ゴム及び使用済タイヤに代表される、カーボンブラックを含むゴム製品(特には、加硫ゴム製品)、廃油等が挙げられる。「再生カーボンブラック」は、石油や天然ガスなどの炭化水素を原材料から直接製造されるカーボンブラック、すなわち、リサイクル品ではないカーボンブラックとは異なる。なお、ここでの「使用済」とは、実際に使用された後で廃棄されたものだけではなく、製造されたものの実際には使用されずに廃棄されたものも含む。
<タイヤの製造方法>
 本実施形態のタイヤは、適用するタイヤの種類に応じ、未加硫のゴム組成物や、未加硫のトリート(コードをゴムで被覆したコード-ゴム複合体)等を用いて成形後に加硫して得てもよく、或いは、未加硫のゴム組成物の代わりに予備加硫工程等を経た半加硫ゴムを用いて成形後、さらに本加硫して得てもよい。
 なお、本実施形態のタイヤのトレッドゴム層及びベルト層以外の部材は、特に限定されず、公知の部材を使用することができる。
 また、本実施形態のタイヤは、好ましくは空気入りタイヤであり、空気入りタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
 以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
<ゴム成分の分析方法>
 スチレン-ブタジエンゴムのガラス転移温度(Tg)及び結合スチレン量は、以下の方法で測定した。また、天然ゴム(イソプレン骨格ゴム)及びスチレン-ブタジエンゴムのSP値(溶解度パラメータ)は、Fedors法に従って、算出した。
(1)ガラス転移温度(Tg)
 合成したスチレン-ブタジエンゴムを試料として、TAインスツルメンツ社製DSC250を用い、ヘリウム50mL/分の流通下、-100℃から20℃/分で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とした。
(2)結合スチレン量
 合成したスチレン-ブタジエンゴムを試料として、試料100mgを、クロロホルムで100mLにメスアップし、溶解して測定サンプルとした。スチレンのフェニル基による紫外線吸収波長(254nm付近)の吸収量により、試料100質量%に対しての結合スチレン量(質量%)を測定した。なお、測定装置として、島津製作所社製の分光光度計「UV-2450」を用いた。
<樹脂成分の分析方法>
 樹脂成分の軟化点、重量平均分子量は、以下の方法で測定した。また、樹脂成分のSP値(溶解度パラメータ)は、Fedors法に従って、算出した。
(3)軟化点
 樹脂成分の軟化点は、JIS-K2207-1996(環球法)に準拠して測定した。
(4)重量平均分子量
 以下の条件で、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、樹脂成分の平均分子量を測定し、ポリスチレン換算の重量平均分子量を算出した。
・カラム温度:40℃
・注入量:50μL
・キャリアー及び流速:テトラヒドロフラン 0.6mL/min
・サンプル調製:樹脂成分約2.5mgをテトラヒドロフラン10mLに溶解
<ゴム組成物の調製>
 表1に示す配合処方に従って、各成分を配合して混練し、実施例及び比較例のゴム組成物を調製した。なお、各実施例及び比較例における天然ゴム、SBR及び樹脂成分の配合量は、表3に示す通りである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000026
*1 天然ゴム: TSR#20、SP値=8.20(cal/cm1/2
*2 SBR: 下記の方法で合成したヒドロカルビルオキシシラン化合物変性スチレン-ブタジエンゴム、Tg=-65℃、SP値=8.65(cal/cm1/2
*3 充填剤: シリカ、東ソーシリカ株式会社製、商品名「ニップシールAQ」
*4 樹脂成分: 水添C系樹脂、Eastman社製、商品名「登録商標Impera E1780」、軟化点=130℃、重量平均分子量(Mw)=909g/mol、SP値=8.35(cal/cm1/2
*5 シランカップリング剤: エボニックデグッサ社製、商品名「Si75」
*6 老化防止剤: 大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック6C」
*7 ワックス: 日本精蝋株式会社製、商品名「オゾエース0701」
*8 加硫促進剤A: 大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーDM-P」
*9 加硫促進剤B: 三新化学工業株式会社製、商品名「サンセラーNS-G」
<SBR(*2)の合成方法>
 乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3-ブタジエン67.5g及びスチレン7.5gになるように加え、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.6mmolを加え、0.8mmolのn-ブチルリチウムを加えた後、50℃で1.5時間重合を行った。この際の重合転化率がほぼ100%となった重合反応系に対し、変性剤としてN,N-ビス(トリメチルシリル)-3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアミンを0.72mmol添加し、50℃で30分間変性反応を行った。その後、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール5質量%溶液2mLを加えて反応を停止させ、常法に従い乾燥してSBR(変性SBR)を得た。
 得られたSBR(変性SBR)のミクロ構造を測定した結果、結合スチレン量が10質量%であり、また、ガラス転移温度(Tg)は、-65℃であった。
<ベルト層の作製>
 表2に示す構造及び径のコードをコーティングゴムで被覆して、ベルト層を作製する。各ベルト層における、コードの打ち込み密度は、表2に示す通りである。得られたベルト層の強度と、コード単体の強度を以下の方法で測定する。
(5)コード単体の強度の評価
 コード単体の破断強度を引張試験機で測定する。評価結果は、従来コード単体の強度を100として、指数表示する。指数値が大きい程、コード単体の強度が高いことを示す。
(6)ベルト層の強度の評価
 使用したコード単体の強度と、ベルト層におけるコードの打ち込み密度から、ベルト層の強度を計算する。評価結果は、従来コードを用いたベルト層の強度を100として、指数表示する。指数値が大きい程、ベルト層の強度が高いことを示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000027
*10 従来コード: フィラメント5本を撚り合わせてなる1×5構造のコード、コードを構成するフィラメントの直径=0.225mm、該フィラメントの引張強度=3400MPa
*11 UTグレードコード: フィラメント5本を撚り合わせてなる1×5構造のコード、コードを構成するフィラメントの直径=0.225mm、該フィラメントの引張強度=3900MPa
<加硫ゴムの作製及び評価>
 得られた実施例及び比較例のゴム組成物を加硫し、加硫ゴム試験片を得た。得られた加硫ゴム試験片に対して、以下の方法で、耐カット性、ウェット制動性、低燃費性を評価した。結果を表3に示す。
(7)耐カット性の評価
 試験片の貯蔵弾性率(E’)を、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を用いて、温度30℃、歪1%、周波数52Hzの条件で測定した。評価結果は、比較例1の貯蔵弾性率(E’)を100として、算出する。得られた貯蔵弾性率(E’)の算出値と、ベルトの強度の指数から、下記式:
  耐カット性の指数=貯蔵弾性率(E’)の算出値+ベルトの強度の指数-100
に従って、耐カット性の指数を算出する。該耐カット性の指数は、換言すると、貯蔵弾性率(E’)の算出値の向上幅と、ベルト強度の指数の向上幅と、100との合計であり、ここで、各算出値及び指数が基準に対して低下している場合は、向上幅は、負の値となる。耐カット性の指数値が大きい程、耐カット性に優れることを示す。
(8)ウェット制動性の評価
 ポータブル・フリクション・テスターを用いて、湿潤アスファルト路面に対する試験片の摩擦係数を測定した。評価結果は、比較例1の摩擦係数を100として、指数表示した。指数値が大きい程、摩擦係数が大きく、ウェット制動性に優れることを示す。
(9)低燃費性の評価
 試験片の損失正接(tanδ)を、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を用いて、温度50℃、歪1%、周波数52Hzの条件で測定した。評価結果は、比較例1のtanδの逆数を100として、指数表示した。指数値が大きい程、tanδが小さく、低燃費性に優れることを示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000028
*1、*2、*4 表1に同じ
*10、*11 表2に同じ
 表3から、本発明に従う実施例1及び2は、比較例1に比べて、耐カット性、ウェット制動性及び低燃費性が総合的に向上していることが分かる。
 1:タイヤ、 2:ビード部、 3:サイドウォール部、 4:トレッド部、 5:カーカス、 6:ベルト、 6A,6B:ベルト層、 7:ビードコア、 8:トレッドゴム層

Claims (7)

  1.  トレッド部の最表面に位置するトレッドゴム層と、該トレッドゴム層のタイヤ径方向内側に位置するベルト層と、を具えるタイヤであって、
     前記トレッドゴム層は、ゴム成分と、樹脂成分と、充填剤と、を含み、
     前記ゴム成分が、イソプレン骨格ゴムと、スチレン-ブタジエンゴムと、を含み、
     前記スチレン-ブタジエンゴムの少なくとも一種は、ガラス転移温度が-40℃未満であり、
     前記樹脂成分は、前記イソプレン骨格ゴムとのSP値の差が1.40(cal/cm1/2以下であり、
     前記トレッドゴム層は、下記の式(A):
       前記樹脂成分/前記イソプレン骨格ゴムの質量比率≧0.5 ・・・ (A)
     を満たし、
     前記ベルト層が、フィラメントを撚り合わせてなる構造を有するコードを含み、
     前記ベルト層のコードを構成するフィラメントが、当該フィラメントの直径をX(mm)とし、当該フィラメントの引張強度をY(MPa)としたときに、下記の式(B):
       4000-2000X≦Y≦4500-2000X ・・・ (B)
     を満たすことを特徴とする、タイヤ。
  2.  前記樹脂成分は、軟化点が110℃より高く、ポリスチレン換算の重量平均分子量が200~1600g/molである、請求項1に記載のタイヤ。
  3.  前記樹脂成分が、水添C系樹脂、水添C-C系樹脂、水添ジシクロペンタジエン系樹脂、及び水添テルペン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のタイヤ。
  4.  前記スチレン-ブタジエンゴムが、窒素原子を含む官能基とアルコキシ基とを有する変性剤で変性されている、請求項1に記載のタイヤ。
  5.  前記ベルト層のコードが、N本のフィラメントを撚り合わせてなる1×N構造(ここで、Nは2~6から選択される整数である)である、請求項1に記載のタイヤ。
  6.  前記ベルト層におけるコードの打ち込み密度が、60本/dm以上95本/dm以下である、請求項1に記載のタイヤ。
  7.  前記ベルト層のコードの径が、0.5mm以上1.0mm以下である、請求項1に記載のタイヤ。
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