JP2005329570A - 流動状物質の充填装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】シート材の厚さや充填室の真空圧が変わる毎に調整を必要とせず、シート材表面に設けられた孔内に流動状物質を容易かつ確実に充填することができる流動状物質の充填装置を提供する。
【解決手段】充填ヘッド100hが、シート材11表面に対向する天板101tと、シート材11表面に当接し、シート材11表面に供給された流動状物質20を孔内に擦り込むスキージパッキン32を一方の端面に備え、天板101tとともに第1の密閉空間を形成する側壁ケース101sと、天板101tと側壁ケース101sとの間に介装され、第1の密閉空間の密閉を保持しつつ、天板101tと側壁ケース101sとの上下方向への相対変位を許容するシール部材o2とを備える充填装置100とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、シート材表面に設けられた孔内に流動状物質を充填する、流動状物質の充填装置に関するものである。
シート材表面に設けられた孔内に、流動状物質である導電ペーストを充填する流動状物質の充填装置および充填方法が、例えば、特開2003−182023号公報(特許文献1)に開示されている。
図3と図4を用いて、従来の導電ペーストの充填方法と充填装置を説明する。
図3(a)〜(c)に、導電ペーストの被充填材である、表面に孔が設けられたシート材を示す。図3(a)は、シート材11,(11a)の上面図であり、図3(b)は、導電ペースト充填前のシート材11の一部分を拡大して詳細構造を示した斜視図である。また、図3(c)は、導電ペースト充填後のシート材11aの一部分を拡大して示した斜視図である。
図3(a)〜(c)に示すシート材11,11aは、多層回路基板の製造に用いられるシート材で、流動状物質である導電ペースト20が、ブラインドビアとなる孔11h内に充填される。
図3(b)において、符号12は、熱可塑性樹脂からなる樹脂シートである。樹脂シート12としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂65〜35重量%とポリエーテルイミド樹脂35〜65重量%とからなる厚さ25〜75μmの樹脂シートが用いられる。樹脂シート12の一方の面には、導体パターン13が形成されている。この導体パターン13は、樹脂シート12の一方の面に、銅箔やアルミニウム箔等の導体箔を貼着けて、この導体箔をパターニングしたものである。
また、樹脂シート12と導体パターン13を挟んで、ポリエチレンテレフタレートからなる保護フィルム14,15が貼り付けられている。この保護フィルム14,15は、導電ペーストの充填工程において、樹脂シート12と導体パターン13が傷つくのを防止すると共に、樹脂シート12と導体パターン13が導電ペースト20によって汚れるのを防止する。シート材11は、全体の厚さが150〜250μmで、柔軟性に富んでいる。
シート材11の表面には、多層回路基板の層間接続を行うべき位置に、保護フィルム14と樹脂シート12を貫通して、導体パターン13を底面とする直径100μm程度の微細孔(ブラインドビア)11hが設けられている。このブラインドビア11hは、図3(b)の上側より、炭酸ガスレーザを照射して形成する。
図3(b)に示すシート材11の孔11h内に、後述する流動状物質の充填方法および充填装置を用いて、流動状物質である導電ペースト20を充填する。導電ペースト20は、銀−錫からなる金属粒子にバインダ樹脂や有機溶剤を加え、これを混練してペースト化したものである。
図3(c)は、導電ペースト20を孔11hに充填した後、保護フィルム14,15を剥がした状態のシート材11aを示している。この導体パターン13を底面とする孔11h内に導電ペースト20が充填されたシート材11aを複数枚積層し、加熱・加圧して相互に貼り付けることで、多層回路基板が製造される。
尚、図3(a)に示すように、一枚の大きなシート材11には、同じ導体パターン(図示省略)と孔11hパターンからなる回路パターン11pが繰り返し形成されており、上記の積層・貼り付け後に各回路パターン11pを切り出して、個々の多層回路基板とする。
図4(a),(b)に、従来の導電ペーストの充填装置90を示す。図4(a)は、充填装置90の正面方向から見た要部の断面図であり、図4(b)は、充填装置90の側面方向から見た要部の断面図である。
図4(a),(b)に示す充填装置90は、導電ペースト20をシート材11の孔内に充填するための充填ヘッド90hと、充填ヘッド90hをシート材11表面に対して水平方向に移動させる移動手段(図示省略)とを備える。充填ヘッド90hは大型であり、図4(a)に示す充填が必要なシート材11の両端範囲をカバーして、図4(b)の白抜き両端矢印で示した方向で移動し、導電ペースト20の充填を行う。
充填ヘッド90hには、充填室91が設けられている。充填室91は、ボルトb1とOリングo1により気密的に連結固定された側壁ケース91sとキャップ91tで構成され、シート材11表面に当接することにより形成される密閉空間からなる。側壁ケース91sの下部端面には、シート材11の表面に当接することによって密閉空間を形成するためのスキージパッキン32が保持されている。また、充填ヘッド90hの進行方向の前後には、図4(b)に示すように、充填室91に隣接して2つの排気室92a,92bが設けられている。排気室92a,92bも、それぞれ、パッキン42a,42bを介してシート材11表面に当接することにより形成される密閉空間からなる。尚、図中の符号91e,92ae,92beは、それぞれ、充填室91と排気室92a,92bの排気ポートである。
導電ペースト20は、所定の圧力に減圧された充填室91に保持され、攪拌翼31により均一に攪拌される。攪拌翼31の下部には、シート材11表面を傷つけないように、ゴム材からなる攪拌リップ31aが保持される。攪拌翼31は、ペースト撹拌モータ31mが偏芯部を有する撹拌駆動シャフト31sを回転することで、公転運動する。側壁ケース91s下部端面に保持されたスキージパッキン32には、図4(b)に示すように、充填ヘッド90hの進行方向に直交する方向で、導電ペースト20の充填を行うためのスキージ部32a,32bが構成されている。このスキージ部32a,32bにより、充填ヘッド90hの移動に伴って、導電ペースト20がシート材11表面に設けられた孔内に擦り込まれる。
従来の充填装置90においては、図4(a)に示すように、側壁ケース91sが昇降プレート53pにボルトb2で固定され、昇降プレート53p端部に連結されたリニアベアリング53bが、直動ガイドのスライドブロック53tに設けられたガイドシャフト53sに勘合されている。また、ガイドローラ53rが、ギャップ調整手段53gを介して、昇降プレート53pに固定されている。
特開2003−182023号公報
図4(a),(b)の充填装置90においては、側壁ケース91sとキャップ91tがボルトb1とOリングo1により気密的に連結固定されているため、充填室91の減圧時には、大気圧が図4(b)に両端矢印で示した減圧作用面積S0に対して下向きに印加される。この充填室91の減圧時の大気圧による下向きの力は、昇降プレート53pおよびギャップ調整手段53gを介して、ガイドローラ53rにより支えられている。
導電ペースト20の充填においては、スキージパッキン32のスキージ部32a,32bにおける潰し量の設定が重要である。スキージ部32a,32bの潰し量が小さすぎると、導電ペースト20の充填が不十分となる。一方、スキージ部32a,32bの潰し量が大きすぎると、次の図5(a),(b)のシート材11,11aの断面図に示す問題が発生する。尚、図5(a),(b)において、図3(a)〜(c)および図4(a),(b)と同様の部分については、同じ符号を付した。
図5(a)に示すように、シート材11の保護フィルム14表面の孔11h周りには、レーザ照射によって孔11hを形成する際に、表面が盛り上がった土手部14tが形成される。スキージ部32aの潰し量が大きすぎると、樹脂シート12に保護フィルム14を貼り付けている糊14nが導電ペースト20中に押しだされる。このため、図5(b)に示すように、保護フィルム14を剥離する際に、導電ペースト20が保護フィルム14と共に持ち去られる不具合が発生する。
図4(a),(b)に示す充填装置90では、スキージ部32a,32bの潰し量の設定は、ギャップ調整手段53gにより行う。しかしながら、シート材11の厚さが変わったり、上記のように孔11h周りの土手部14tの高さが変わったりすると、スキージ部32a,32bの潰し量も変化する。また、充填室91や排気室92a,92bの真空圧が変化すると、スキージ部32a,32bに印加される押圧荷重も変化するため、これによってもスキージ部32a,32bの潰し量が変化する。このため、シート材の厚さや充填室等の真空圧が変わる毎に、ギャップ調整手段53gを調整し直す必要がある。
本発明は、上記した従来の充填装置における問題を除去するためになされたもので、シート材の厚さや充填室の真空圧が変わる毎に調整を必要とせず、シート材表面に設けられた孔内に流動状物質を容易かつ確実に充填することができる流動状物質の充填装置を提供することを目的としている。
請求項1に記載の発明は、シート材表面に設けられた孔内に流動状物質を充填する流動状物質の充填装置であって、前記流動状物質を前記孔内に充填する充填ヘッドと、当該充填ヘッドを前記シート材表面に対して水平方向に移動させる移動手段とを備え、前記充填ヘッドが、前記シート材表面に対向する天板と、前記シート材表面に当接し、前記シート材表面に供給された流動状物質を前記孔内に擦り込むスキージパッキンを一方の端面に備え、前記天板とともに第1の密閉空間を形成する側壁ケースと、前記天板と前記側壁ケースとの間に介装され、前記第1の密閉空間の密閉を保持しつつ、前記天板と前記側壁ケースとの上下方向への相対変位を許容するシール部材とを備えることを特徴としている。
これによれば、一方の端面にスキージパッキンを備える側壁ケースが、天板に対して変位可能に保持されているため、シート材の厚さの変化を上下移動で吸収することができる。また、充填室の真空圧に拘わらず、スキージパッキンに印加される押圧荷重を適宜制御することが可能になる。このため、シート材の厚さや充填室の真空圧が変わる毎に調整を必要とせず、シート材表面に設けられた孔内に流動状物質を容易かつ確実に充填することができる。
請求項2に記載の発明は、前記第1の密閉空間において、前記シール部材で形成される減圧作用面積が、前記スキージパッキンで形成される減圧作用面積に較べて、大きく設定されてなることを特徴としている。
側壁ケースが天板に対して変位可能に保持された上記充填装置においては、充填室の減圧時に、(大気圧−真空圧)×(天板付近のシール部材で形成される減圧作用面積)の力が側壁ケースに上向きに作用し、(大気圧−真空圧)×(シート材付近のスキージパッキンで形成される減圧作用面積)の力が側壁ケースに下向きに作用する。従って、(天板付近のシール部材で形成される減圧作用面積)と(シート材付近のスキージパッキンで形成される減圧作用面積)を等しく設定した場合には、上記の上向きと下向きの力が打ち消しあって、側壁ケースには充填室の減圧時に加わる大気圧の力が作用しない。
一方、(天板付近のシール部材で形成される減圧作用面積)を(シート材付近のスキージパッキンで形成される減圧作用面積)に較べて上記のように大きく設定した場合には、充填室の減圧時に加わる大気圧の力は、側壁ケースに上向きに作用する。従って、この充填室の減圧による上向きの力と変位可能に保持された側壁ケースの重量を好適にバランスさせることで、スキージパッキンに印加される押圧荷重を、容易かつ確実に制御することが可能になる。
請求項3に記載の発明は、前記充填ヘッドが、前記スキージパッキンに所定の押圧荷重を印加するための押圧荷重制御手段を有することを特徴としている。この押圧荷重制御手段により、シート材の厚さや充填室の真空圧に拘わらず、スキージパッキンに印加する押圧荷重を適宜設定することができる。
前記押圧荷重制御手段は、例えば請求項4に記載のように、荷重調整シリンダとすることができる。
請求項5に記載の発明は、前記充填ヘッドが、前記押圧荷重を計測するためのロードセルを有し、前記ロードセルにより計測された押圧荷重を前記押圧荷重制御手段にフィードバックして、押圧荷重制御手段の押圧荷重を制御することを特徴としている。
これにより、従来の充填装置のように充填室の真空圧が変わる毎に高さ調整を必要とせず、スキージパッキンに印加される押圧荷重を自動で精度良く制御することができる。このため、シート材表面に設けられた孔内に流動状物質を容易かつ確実に充填することができ、生産性を向上することができる。
請求項6に記載の発明は、前記シート材の平面形状が略矩形であり、前記充填ヘッドが、前記略矩形のシート材における一方の両端範囲をカバーして、前記略矩形のシート材におけるもう一方の両端方向で直線移動することを特徴としている。
これによれば、充填ヘッドが略矩形のシート材における一方の両端範囲をカバーするため、上記のように充填ヘッドをもう一方の両端方向に直線移動させるだけでシート材の全面を走査して、流動状物質を孔内に充填することができる。従って、流動状物質の充填時間を短縮でき、生産性を向上することができる。
請求項7に記載の発明は、前記充填ヘッドが、前記充填室に隣接して設けられ、前記側壁ケースの一方の端面に備えられたパッキンを介して、前記シート材表面に当接することによって第2の密閉空間を形成する第1排気室を有することを特徴としている。
これによれば、第2の密閉空間である第1排気室を充填室より高真空に減圧し、当該第1排気室内に位置するシート材表面の孔の内部を高真空に排気する。しかる後に、移動手段により内部が高真空に排気された孔を充填室に移動させて、流動状物質を孔内に充填することができる。これによって、流動状物質の充填時に孔内への空気の巻き込みを防止することができ、流動状物質を孔内に確実に充填することができる。
請求項8に記載の発明は、前記第2の密閉空間における前記パッキンで形成される減圧作用面積と、前記第1の密閉空間における前記スキージパッキンで形成される減圧作用面積との和が、前記第1の密閉空間における前記シール部材で形成される減圧作用面積にほぼ等しく設定されてなることを特徴としている。
これによれば、充填室と第1排気室の減圧時に、減圧時に加わる大気圧の上向きの力と下向きの力が打ち消しあって、側壁ケースには充填室と第1排気室の減圧時に加わる大気圧の力が作用しない。これによって、スキージパッキンに印加される押圧荷重を、容易かつ確実に制御することが可能になる。
請求項9に記載の発明は、前記充填ヘッドが、前記充填室に隣接して、前記第1排気室と反対側に設けられ、前記側壁ケースの一方の端面に備えられたパッキンを介して、前記シート材表面に当接することによって第3の密閉空間を形成する第2排気室を有することを特徴としている。
これによれば、充填ヘッドをシート材に対して往復動作させて流動状物質を充填する場合、充填ヘッドの往復動作に合わせて、第1排気室と第2排気室の圧力を、充填ヘッドの進行方向の前方と後方で上記の高真空と大気圧に切り替えて、流動状物質の充填を行う。これにより、往復動作による充填の場合にも上記空気の巻き込みを防止することができ、また往復運動で充填することにより偏りがなく確実に流動状物質を孔内に充填することができる。
請求項10と11に記載のように、上記した流動状物質の充填装置は、前記流動状物質が導電ペーストであり、前記シート材が多層回路基板の製造に用いられるシート材である場合に好適である。
これにより、シート材表面に設けられた孔内への導電ペーストの充填作業が容易で確実になり、多層回路基板を生産性よく製造することができる。
請求項12に記載のように、前記シール部材としては、前記天板と前記側壁ケースとの間に介装され、前記天板と前記側壁ケースとの少なくとも一方の上下方向に広がるシール面に摺接するOリングが好適である。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図に基づいて説明する。
図1(a),(b)に、本発明の流動状物質(導電ペースト)の充填装置100を示す。図1(a)は、充填装置100の正面方向から見た要部の断面図であり、図1(b)は、充填装置100の側面方向から見た要部の断面図である。尚、図1(a),(b)に示す充填装置100において、図4(a),(b)に示す充填装置90と同様の部分については同じ符号を付して、その説明は省略する。
図1(a),(b)に示す充填装置100は、導電ペースト20をシート材11の孔内に充填するための充填ヘッド100hと、充填ヘッド100hをシート材11表面に対して水平方向に移動させる移動手段(図示省略)とを備える。充填ヘッド100hは大型であり、図1(a)に示すように平面形状が略矩形のシート材11における一方の両端範囲をカバーして、図1(b)の白抜き両端矢印で示したように略矩形のシート材11におけるもう一方の両端方向で直線移動し、導電ペースト20の充填を行う。このように、充填装置100では、充填ヘッド100hが略矩形のシート材11における一方の両端範囲をカバーするため、上記のように充填ヘッド100hをもう一方の両端方向に直線移動させるだけでシート材11の全面を走査して、導電ペースト20を孔内に充填することができる。従って、導電ペースト20の充填時間を短縮でき、生産性を向上することができる。
図1(a),(b)に示す充填装置100の充填ヘッド100hには、充填室101が設けられている。充填室101は、支柱を介して直動ガイドのスライドブロック53tに固定された、シート材11表面に対向する天板101tと、天板101tに対して変位可能に保持された側壁ケース101sで構成されている。天板101tと側壁ケース101sは、Oリングo2を介して気密的に連結され、シート材11表面に当接することにより密閉空間を形成する。側壁ケース101sの下部端面には、密閉空間の形成と導電ペースト20を充填するためのスキージパッキン32が保持されている。充填室101内は、排気ポート101eを介して、例えば0.06Mpa(絶対圧)の所定の圧力に減圧される。
充填ヘッド100hの進行方向の前後には、図1(b)に示すように、充填室101に隣接して2つの排気室102a,102bが設けられている。排気室102a,102bも、それぞれ、パッキン42a,42bを介してシート材11表面に当接することにより形成された密閉空間からなる。尚、図中の符号102ae,102beは、それぞれ、排気室102a,102bの排気ポートである。
充填ヘッド100hの進行方向の前方に位置する排気室102a,102bのいずれか一方は、充填室101より高真空(例えば0.01Mpa)に減圧されて、当該排気室内に位置するシート材表面の孔の内部を高真空に排気する。しかる後に、移動手段(図示省略)によりスライドブロック53tを駆動して、充填ヘッド100hの進行方向の前方に位置する排気室で内部が高真空に排気された孔を充填室101に移動させて、導電ペースト20を孔内に充填する。これによって、導電ペースト20の充填時に孔内への空気の巻き込みを防止することができ、導電ペースト20を孔内に確実に充填することができる。
導電ペースト20は、所定の圧力に減圧された充填室101に保持され、攪拌翼31により均一に攪拌される。攪拌翼31の下部には、シート材11表面を傷つけないように、ゴム材からなる攪拌リップ31aが保持される。攪拌翼31は、ペースト撹拌モータ31mが偏芯部を有する撹拌駆動シャフト31sを回転することで、公転運動する。側壁ケース101s下部端面に保持されたスキージパッキン32には、図1(b)に示すように、充填ヘッド100hの進行方向に直交する方向で、導電ペースト20の充填を行うためのスキージ部32a,32bが構成されている。このスキージ部32a,32bにより、充填ヘッド100hの移動に伴って、シート材11表面に供給された導電ペースト20がシート材11表面に設けられた孔内に擦り込まれる。
充填ヘッド100hの進行方向の後方に位置する排気室102a,102bのいずれか一方は、大気圧に設定される。これによって、孔内に充填した導電ペースト20が再び孔から吸い上げられるのを防止することができる。
図1(b)の白抜き両端矢印で示したように、充填ヘッド100hをシート材11に対して往復動作させて導電ペースト20を充填する場合は、充填ヘッド100hの往復動作に合わせて、排気室102a,102bの圧力を、充填ヘッド100hの進行方向の前方と後方で上記のように高真空と大気圧に切り替えて、導電ペースト20の充填を行う。これにより、充填ヘッド100hの往復動作による充填の場合にも、上記空気の巻き込みを防止することができ、また往復運動で充填することにより、偏りがなく確実に導電ペースト20を孔内に充填することができる。
図1(a),(b)に示す充填装置100では、一方の端面にスキージパッキン32を備える側壁ケース101sが、天板101tに対して変位可能に保持されている。このため、シート材11の厚さの変化を上下移動で吸収することができる。また、後述するように、充填室101の真空圧に拘わらず、スキージパッキン32に印加される押圧荷重を適宜制御することが可能になる。従って、従来の図4(a),(b)に示す充填装置90のように、シート材11の厚さや充填室101の真空圧が変わる毎に高さ調整を必要とせず、シート材11表面に設けられた孔内に導電ペースト20を容易かつ確実に充填することができる。
側壁ケース101sが天板101tに対して変位可能に保持された上記の構造を有する充填装置100では、充填室101の減圧時に、(大気圧−真空圧)×(天板101t付近のOリングo2で形成される減圧作用面積S1)の力が側壁ケース101sに上向きに作用し、(大気圧−真空圧)×(シート材11付近のスキージパッキン32,32a,32bで形成される減圧作用面積S2)の力が側壁ケース101sに下向きに作用する。従って、(天板101t付近のOリングo2で形成される減圧作用面積S1)と(シート材11付近のスキージパッキン32,32a,32bで形成される減圧作用面積S2)を等しく設定した場合には、上記の上向きと下向きの力が打ち消しあって、側壁ケース101sには充填室101の減圧時に加わる大気圧の力が作用しない。一方、(天板101t付近のOリングo2で形成される減圧作用面積S1)を(シート材11付近のスキージパッキン32,32a,32bで形成される減圧作用面積S2)に較べて大きく設定した場合には、充填室101の減圧時に加わる大気圧の力は、側壁ケース101sに上向きに作用する。
より詳細には、図1(a),(b)の充填装置100においては、充填室101だけでなく、充填ヘッド100hの進行方向前方の排気室102aもしくは排気室102bも減圧される。このため、図1(a),(b)の充填装置100では、図1(b)に両端矢印で示した排気室102aもしくは排気室102bの密閉空間における(パッキン42a,42bで形成される減圧作用面積S3)と、充填室101の密閉空間における(スキージパッキン32,32a,32bで形成される減圧作用面積S2)との和が、充填室101の密閉空間における(Oリングo2で形成される減圧作用面積S1)にほぼ等しく設定されている。
これにより、充填室101と排気室102aもしくは排気室102bの減圧時に、減圧時に加わる大気圧の上向きの力と下向きの力が打ち消しあって、側壁ケース101sには充填室101と排気室102aもしくは排気室102bの減圧時に加わる大気圧の力が作用しない。これによって、スキージパッキン32a,32bに印加される押圧荷重を、容易かつ確実に制御することが可能になる。
充填装置100においては、図1(a)に示すように、荷重調整シリンダ63sからなる押圧荷重制御手段が、天板101tに取り付けられている。この荷重調整シリンダ63sに圧力エアを供給して、ロッド63r、プレート63pおよび側壁ケース101sを介して、スキージパッキン32に所定の押圧荷重を印加することができる。これによって、シート材11の厚さや充填室101の真空圧に拘わらず、スキージパッキン32に印加する押圧荷重を適宜設定することができる。荷重調整シリンダ63sの圧力設定には、電空レギュレータのような電気信号で押圧荷重を設定出来る機器を用いることが好ましい。これにより、より柔軟、簡便に押圧荷重を設定することができる。充填装置100では、上記のように充填室101と排気室102a,102bの減圧作用面積を適宜設定することで、充填室101と排気室102a,102bの減圧によりスキージパッキン32に荷重が発生しないようにし、荷重調整シリンダ63sで、直接スキージ部32a,32bに例えば2000Nの押圧荷重を発生させる構成としている。尚、押圧荷重制御手段は、荷重調整シリンダ63sに限らず、モータ等による荷重印加手段であってもよい。
図2(a),(b)に、本発明の別の流動状物質(導電ペースト)の充填装置110,120を示す。図2(a),(b)は、それぞれ、充填装置110,120の正面方向から見た要部の断面図である。尚、図2(a),(b)に示す充填装置110,120において、図1(a),(b)に示す充填装置100と同様の部分については同じ符号を付した。
図2(a),(b)に示す充填装置110,120においては、いずれも、充填ヘッド110h,120hに、押圧荷重を計測するためのロードセル63ca,63cbが設けられている。図2(a)の充填装置110では、ロードセル63caがスキージパッキン32c上に設置され、図2(b)の充填装置120では、ロードセル63cbがロッド63rcとプレート63pの間に設置されている。
これらのロードセル63ca,63cbにより計測された押圧荷重は、押圧荷重制御手段である荷重調整シリンダ63sにフィードバックされて、荷重調整シリンダ63sの押圧荷重が制御される。これにより、従来の図4(a),(b)に示す充填装置90のように、充填室101の真空圧が変わる毎に高さ調整を必要とせず、スキージパッキン32c,32に印加される押圧荷重を自動で精度良く制御することができる。このため、シート材11表面に設けられた孔内に導電ペースト20を容易かつ確実に充填することができ、生産性を向上することができる。
尚、上記した充填装置100,110,120は、いずれも導電ペースト20をシート材11表面に設けられた孔内に充填する充填装置であった。この充填装置100,110,120により、シート材11表面に設けられた孔内への導電ペースト20の充填作業が容易で確実になり、多層回路基板を生産性よく製造することができる。しかしながらこれに限らず、本発明の充填装置は、任意の流動状物質をシート材表面に設けられた孔内に充填する場合に適用可能である。
本発明の流動状物質の充填装置で、(a)は、充填装置の正面方向から見た要部の断面図であり、(b)は、充填装置の側面方向から見た要部の断面図である。 本発明における別の流動状物質の充填装置で、(a),(b)は、それぞれ、充填装置の正面方向から見た要部の断面図である。 (a)は、シート材の上面図であり、(b)は、導電ペースト充填前のシート材の一部分を拡大して詳細構造を示した斜視図である。また、(c)は、導電ペースト充填後のシート材の一部分を拡大して示した斜視図である。 従来の流動状物質の充填装置で、(a)は、充填装置の正面方向から見た要部の断面図であり、(b)は、充填装置の側面方向から見た要部の断面図である。 (a),(b)はシート材の断面図で、従来の問題点を説明する図である。
符号の説明
90,100,110,120 充填装置
90h,100h 充填ヘッド
91,101 充填室
91t キャップ
101t 天板
91s,101s 側壁ケース
b1,b2 ボルト
o1,o2 Oリング
32 スキージパッキン
32a,32b スキージ部
92a,92b,102a,102b 排気室
42a,42b パッキン
91e,92ae,92be,101e,102ae,102be 排気ポート
53t スライドブロック
53g ギャップ調整手段
63s 荷重調整シリンダ
63c ロードセル
11 シート材
20 導電ペースト

Claims (12)

  1. シート材表面に設けられた孔内に流動状物質を充填する流動状物質の充填装置であって、
    前記流動状物質を前記孔内に充填する充填ヘッドと、当該充填ヘッドを前記シート材表面に対して水平方向に移動させる移動手段とを備え、
    前記充填ヘッドが、
    前記シート材表面に対向する天板と、
    前記シート材表面に当接し、前記シート材表面に供給された流動状物質を前記孔内に擦り込むスキージパッキンを一方の端面に備え、前記天板とともに第1の密閉空間を形成する側壁ケースと、
    前記天板と前記側壁ケースとの間に介装され、前記第1の密閉空間の密閉を保持しつつ、前記天板と前記側壁ケースとの上下方向への相対変位を許容するシール部材とを備えることを特徴とする流動状物質の充填装置。
  2. 前記第1の密閉空間において、前記シール部材で形成される減圧作用面積が、前記スキージパッキンで形成される減圧作用面積に較べて、大きく設定されてなることを特徴とする請求項1に記載の流動状物質の充填装置。
  3. 前記充填ヘッドが、
    前記スキージパッキンに所定の押圧荷重を印加するための押圧荷重制御手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の流動状物質の充填装置。
  4. 前記押圧荷重制御手段が、荷重調整シリンダであることを特徴とする請求項3に記載の流動状物質の充填装置。
  5. 前記充填ヘッドが、前記押圧荷重を計測するためのロードセルを有し、
    前記ロードセルにより計測された押圧荷重を前記押圧荷重制御手段にフィードバックして、押圧荷重制御手段の押圧荷重を制御することを特徴とする請求項3または4に記載の流動状物質の充填装置。
  6. 前記シート材の平面形状が略矩形であり、
    前記充填ヘッドが、前記略矩形のシート材における一方の両端範囲をカバーして、前記略矩形のシート材におけるもう一方の両端方向で直線移動することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の流動状物質の充填装置。
  7. 前記充填ヘッドが、
    前記充填室に隣接して設けられ、前記側壁ケースの一方の端面に備えられたパッキンを介して、前記シート材表面に当接することによって第2の密閉空間を形成する第1排気室を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の流動状物質の充填装置。
  8. 前記第2の密閉空間における前記パッキンで形成される減圧作用面積と、前記第1の密閉空間における前記スキージパッキンで形成される減圧作用面積との和が、前記第1の密閉空間における前記シール部材で形成される減圧作用面積にほぼ等しく設定されてなることを特徴とする請求項7に記載の流動状物質の充填装置。
  9. 前記充填ヘッドが、
    前記充填室に隣接して、前記第1排気室と反対側に設けられ、前記側壁ケースの一方の端面に備えられたパッキンを介して、前記シート材表面に当接することによって第3の密閉空間を形成する第2排気室を有することを特徴とする請求項7または8に記載の流動状物質の充填装置。
  10. 前記流動状物質が、導電ペーストであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の流動状物質の充填装置。
  11. 前記シート材が、多層回路基板の製造に用いられるシート材であることを特徴とする請求項10に記載の流動状物質の充填装置。
  12. 前記シール部材は、前記天板と前記側壁ケースとの間に介装され、前記天板と前記側壁ケースとの少なくとも一方の上下方向に広がるシール面に摺接するOリングであることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか一項に記載の流動状物質の充填装置。
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