JP2005328664A - Pmモータの回転子構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】高速回転が可能であるとともに、定トルク運転及び定出力運転の限界点を高める。
【解決手段】回転子鉄心1の外周側から径方向に90度間隔でスロット1aを設け、d軸方向に対向した一対のd軸スロット1aには永久磁石2の内側に磁極鉄心4を取り付けたd軸ピース5を径方向摺動自在に収容し、q軸方向に対向した一対のq軸スロット1aにはd軸ピース5より質量が大きい一対のq軸鉄心6を径方向摺動自在に収容し、隣り合うd軸ピース5とq軸鉄心6とをリンク7により連結し、d軸ピース5とd軸スロット1aの底部との間の空隙8にd軸ピース5を回転子鉄心1の外周側へ付勢するコイルばね9を設ける。
【選択図】図1

Description

この発明は、PMモータ(永久磁石型同期電動機)に関し、特にその回転子構造に関するものである。
近年、インバータ駆動される電気自動車・電車等の産業用装置に使用されるPMモータにおいては、インバータ容量を上げることなく高回転速度を実現するモータの制御技術のニーズが高まっている。PMモータは、界磁を発生させるために外部からエネルギーを供給する必要がないため、永久磁石を使用しない電動機よりもエネルギー効率が高いという特徴がある。又、電動機のトルクは電動機の固定子電流と界磁の磁束量とにより決定される。
PMモータの最大回転数を上げるためには、永久磁石を組み込んだ回転子の回転により固定子巻線に発生する誘起電圧(逆起電力)を小さくする必要がある。電動機が低速度で回転している場合には、永久磁石による界磁により固定子巻線に誘起される電圧は小さいため、電動機の回転に及ぼす影響はほとんどない。しかし、電動機の回転が上昇して誘起電圧が電動機の電源電圧に等しくなると、電源から電動機への電流供給が不可能となるために、回転数を上げることができず、電動機の回転子のトルクは零に低下する。つまり、誘起電圧(逆起電力)が電源電圧と等しくなるときの電動機の回転数が最高回転数となる。
PMモータにおいては、固定子巻線に流す電流が低くても、回転子に設けた永久磁石による界磁(起磁力)を強くすれば電動機のトルクを大きくすることが可能である。ところが、界磁を強くすれば、電動機の最高回転数が低くなるという問題が生じる。近年、希土類磁石の高性能化により、PMモータへの希土類磁石の使用が盛んになってきている。しかし、高性能の希土類磁石を使用すると、低速域では高トルクを得ることができるが、電動機の最大回転数が極端に低くなるという問題がある。
このため、回転子巻線に電流を流して(界磁と逆方向に磁界をかけて)回転子に設けた永久磁石による界磁を減少させる弱め界磁制御が提案されており、この制御により電動機の最高回転数を上げることができる。弱め界磁制御を適用するPMモータとしては従来では例えばIPMモータ(埋め込み磁石型同期電動機)が用いられる。図12はIPMモータの回転子構造を示し、回転軸3に取り付けられた回転子鉄心1にはd軸方向に対向するとともに回転軸3の軸方向に貫通して一対の貫通孔20が設けられ、貫通孔20には一対の永久磁石2が埋め込まれている。
しかし、固定子巻線に電流を流して電気的に弱め界磁制御を行うという方法はその制御が複雑であり、しかも永久磁石の界磁と逆方向に磁界をかけるために、磁石が減磁される恐れがあるという問題があった。さらに、永久磁石による回転子の磁束を回転子に流す電流で制御するため、回転制御可能範囲が狭く、また固定子巻線に電流を流して界磁を制御するため、消費電力が増加するという問題もあった。
そこで、固定子コイルに流す電流を制御することなく弱め界磁制御を行うことができ、最高回転数を上げることができるPMモータが特許文献1〜5により提案された。
特開平11−275787号公報 特開平11−275788号公報 特開平11−275789号公報 特開2002−112474号公報 特開2002−204541号公報
特許文献1〜3においては、回転子本体にスリットを設け、このスリットに磁束通路部材を移動可能に設け、高速回転時には隣り合うポールピース部間を磁気的に短絡して弱め界磁制御をし、高速回転を可能としている。又、特許文献4においては、埋め込んだ永久磁石を移動可能とし、運転状況に応じて永久磁石の位置を変えて、モータ定数を制御し、高速回転を可能としている。さらに、特許文献5においては、回転子に第1回転子及び第2回転子を設け、電動機の回転速度に応じて各回転子の位相差を制御し、回転速度が上昇するに従って界磁を弱め、高速回転を可能にしている。
しかしながら、上記した各特許文献に示されたPMモータにおいては、高速回転は可能であるが、定トルク運転の限界点及び定出力運転の限界点が低いものであった。
この発明は上記のような課題を解決するために成されたものであり、高速回転が可能であるとともに、定トルク運転の限界点及び定出力運転の限界点を高めることができるPMモータの回転子構造を得ることを目的とする。
この発明の請求項1に係るPMモータの回転子構造は、回転軸に取り付けられた回転子鉄心の外周面から径方向に90度間隔で設けられた各スロットと、永久磁石の内側に磁極鉄心を取り付けて形成し、d軸方向に対向した一対のd軸スロットにそれぞれ径方向摺動自在に収容された一対のd軸ピースと、q軸方向に対向した一対のq軸スロットにそれぞれ径方向摺動自在に収容された前記d軸ピースより質量が大きい一対のq軸鉄心と、隣り合うd軸ピースとq軸鉄心とを連結するリンクと、d軸ピースとd軸スロットの底部との間の空隙に設けられとともに、d軸ピースを回転子鉄心の外周側に付勢するばねとを備えたものである。
請求項2に係るPMモータの回転子構造は、上記ばねを板ばねとしたものである。
請求項3に係るPMモータの回転子構造は、回転軸に取り付けられた回転子鉄心の外周面から径方向に90度間隔で設けられた各スロットと、永久磁石の内側に磁極鉄心を取り付けて形成し、d軸方向に対向した一対のd軸スロットにそれぞれ径方向摺動自在に収容された一対のd軸ピースと、q軸方向に対向した一対のq軸スロットにそれぞれ径方向摺動自在に収容し、且つd軸ピースより質量が大きい一対のq軸鉄心と、d軸ピースとd軸スロットの底部との間の空隙に設けられるとともに、d軸ピースを回転子鉄心の外周側に付勢するばねと、d軸スロットとq軸スロットの底部間を連通するよう設けられた連通孔と、d軸スロットの底部の空隙、q軸スロットの底部の空隙及び前記連通孔に充填された磁性流体とを備えたものである。
請求項4に係るPMモータの回転子構造は、q軸鉄心の摺動面に凸部を設けるとともに、q軸スロットの摺動面に凹部を設けて、q軸鉄心が摺動した時に回転子飛び出し防止のためのストッパ部を形成したものである。
請求項5に係るPMモータの回転子構造は、回転軸に取り付けられた回転子鉄心のd軸方向の外周面から径方向に対向して設けられた一対のスロットと、回転子鉄心のq軸方向に対向するとともに回転軸の軸方向に貫通して設けられた一対の貫通孔と、永久磁石の内側に磁極鉄心を取り付けて形成し、一対のスロットにそれぞれ径方向摺動自在に収容された一対のd軸ピースと、一対の貫通孔にそれぞれ径方向摺動自在に収容し、且つd軸ピースより質量が大きい一対のq軸鉄心と、隣り合うd軸ピースとq軸鉄心とを連結するリンクと、d軸ピースとスロットの底部との間の空隙に設けられるとともに、d軸ピースを回転子鉄心の外周側へ付勢するばねとを備え、各スロット及び各貫通孔の内端側及び各貫通孔の外端側によりストッパ部を形成したものである。
請求項6に係るPMモータの回転子構造は、回転軸に取り付けられた回転子鉄心のd軸方向の外周面から径方向に対向して設けられた一対のスロットと、回転子鉄心のq軸方向に対向するとともに回転軸の軸方向に貫通して設けられた一対の貫通孔と、永久磁石の内側に磁極鉄心を取り付けて形成し、一対のスロットにそれぞれ径方向摺動自在に収容された一対のd軸ピースと、一対の貫通孔にそれぞれ径方向摺動自在に収容し、且つd軸ピースより質量が大きい一対のq軸鉄心と、隣り合うd軸ピースとq軸鉄心とを連結するリンクと、貫通孔の外端部とq軸鉄心との間の空隙に設けられるとともに、q軸鉄心を回転子鉄心の径方向内側に付勢する板ばねとを備えたものである。
請求項7に係るPMモータの回転子構造は、回転軸に取り付けられた回転子鉄心の外周面から径方向に90度間隔で且つ軸方向に貫通して設けられた各貫通孔と、永久磁石の内側に磁極鉄心を取り付けて形成し、d軸方向に対向した一対のd軸貫通孔にそれぞれ径方向摺動自在に収容された一対のd軸ピースと、q軸方向に対向した一対のq軸貫通孔にそれぞれ径方向摺動自在に収容し、且つd軸ピースより質量が大きい一対のq軸鉄心と、隣り合うd軸ピースとq軸鉄心とを連結するリンクと、d軸ピースとd軸貫通孔の内端との間の空隙に設けられるとともに、d軸ピースを回転子鉄心の外周側に付勢するばねと、d軸ピースがd軸貫通孔の外端側と当接しないようにq軸鉄心側に形成したストッパ部とを備えたものである。
請求項8に係るPMモータの回転子構造は、d軸ピースの磁極鉄心に永久磁石に対して直角に細長いスリットを設けたものである。
請求項9に係るPMモータの回転子構造は、d軸ピースの磁極鉄心に永久磁石を保護する保護部を設けたものである。
請求項10に係るPMモータの回転子構造は、回転軸又は回転子鉄心に、d軸ピ−スの磁極鉄心及びq軸鉄心と係合してd軸ピース及びq軸鉄心の軸方向への飛び出しを防止する飛び出し防止部材を設けたものである。
以上のようにこの発明の請求項1によれば、高速回転時にはd軸ピースの径方向への移動により弱め界磁制御が行われ、端子電圧及び誘起電圧成分が減少し、最高回転数が上昇する。従って、定トルク運転限界点及び低出力運転限界点を高めることができる。
請求項2によれば、d軸ピースとd軸スロットの底部との間の空隙に設けるばねを板ばねとしており、この空隙の大きさを小さくすることができ、永久磁石の磁束を有効に利用することができる。
請求項3によれば、d軸スロットの底部の空隙、q軸スロットの底部の空隙及びその連通孔に磁性流体を充填したので、リンクを設けなくても高速回転時の弱め界磁制御が行われ、また永久磁石の磁束を有効に利用することができる。
請求項4によれば、q軸鉄心とq軸スロットとの摺動部に凹凸によるストッパ部を設けたので、d軸ピース及びq軸鉄心の飛び出しが防止され、又これらの損傷が防止される。
請求項5によれば、回転子鉄心に設けたスロットの内端側及び貫通孔の内外端側によりストッパ部を設けたので、d軸ピース及びq軸鉄心の飛び出しや損傷が防止され、また構造を簡単にすることができる。
請求項6によれば、d軸ピースとスロットの底部との間の空隙にばねを設けないので、この空隙を小さくすることができ、永久磁石の磁束を有効に利用することができる。
請求項7によれば、IPMモータにおいて、d軸ピースがd軸貫通孔の外端側と当接しないようq軸鉄心側にストッパ部を設けたので、d軸ピースの破損を防止することができる。
請求項8によれば、d軸ピースの磁極鉄心に細長いスリットを設けており、q軸鉄心より質量が小さいことが要求されるd軸ピースの質量を容易に小さくすることができる。又、スリットを永久磁石に対して直角に設けたので、永久磁石の磁束の通流に悪影響を与えることはない。
請求項9によれば、d軸ピースの磁極鉄心の両側部に永久磁石の両側部を保護する保護部を設けており、永久磁石がスロット又は貫通孔との摺動により損傷することを防止することができる。
請求項10によれば、回転軸又は回転子鉄心に、d軸ピース及びq軸鉄心の飛び出しを防止する飛び出し防止部材を設けたので、これらの飛び出しは防止され、損傷も防止される。
実施最良形態1
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面とともに説明する。図1(a)〜(c)はこの発明の実施最良形態1によるPMモータの回転子構造の通常状態時(低速回転時)、高速回転時の側面図及び図1(a)の一部拡大図を示し、回転軸3に取り付けられた回転子鉄心1には外周面から径方向に90度間隔でスロット1aが設けられ、対向する二対のスロット1aのうちのd軸方向に対向した一対のd軸スロット1aには永久磁石2の内側に磁極鉄心4を貼り付けた一対のd軸ピース5が径方向摺動自在に収容され、q軸方向に対向した他の一対のq軸スロット1aにはd軸ピース5より質量が大きいq軸鉄心6が径方向摺動自在に収容されている。そして、隣り合うd軸ピース5とq軸鉄心6とはリンク7により移動可能に連結される。又、d軸ピース5とd軸スロット1aの底部との間の空隙8には、d軸ピース5を回転子鉄心1の外周側に付勢するコイルばね9が設けられている。なお、d軸ピース5及びq軸鉄心6が摺動自在に収容されたスロット1aの角部はそれぞれのストッパ部1bとなる。このような構成において、回転子鉄心1、回転軸3、d軸ピース5、q軸鉄心6、リンク7及びコイルばね9により回転子10が形成され、回転子10と固定子11との間にはギャップ12が設けられる。
上記構成において、図1(a)に示す通常状態時においては、d軸ピ−ス5はコイルばね9の押圧力により固定子11とのギャップ12側へ押圧されているが、図1(b)に示すロータの高速回転時においては、d軸ピース5より質量が大きいq軸鉄心6が遠心力によりギャップ12側へ引っ張られて径方向外側に移動し、q軸鉄心6とリンク7により連結されているd軸ピース5はコイルばね8の押圧力に抗して径方向内側に引き込まれる。
次に、実施最良形態1の作用効果について説明する。上記モータの電圧方程式は(1)式のように示される。
Figure 2005328664
ここで、Vdはd軸電圧、Vqはq軸電圧、ωはロータ回転角速度、Ld(ω)はd軸インダクタンス、Lq(ω)はq軸インダクタンス、λ(ω)は永久磁石2の磁束、idはd軸電流、iqはq軸電流、Rlは巻線抵抗であり、λ(ω)、Ld(ω)、Lq(ω)はコイルばね9のばね定数、d軸ピース5及びq軸鉄心6の質量、回転子10と固定子11とのギャップ12の大きさ、磁束密度との関係により決定されるωの関数である。
回転数が上昇すると図1(b)に示すように永久磁石2が回転軸3側に移動し、永久磁石2と回転子鉄心1の外周とのギャップ13が大きくなるので、永久磁石2の磁束λは回転数が上昇するに従って減少する。そのために(1)式において、Vdが減少し、モータの電圧が減少する。
又、上記モータのトルクTは(2)式で示される。
T=pλ×iq+p(Ld−Lq)×ip×iq (2)
ここで、pは極対数である。図1(a)の通常状態ではd軸インダクタンスLdが大きくてLd≒Lqとなる。回転数が上昇すると、図1(b)に示すように永久磁石2のギャップ13が広くなるので、永久磁石2の磁束λが減少し、pλ×iqが減少するので、トルクTが減少する。しかし、磁極鉄心4と回転子鉄心1の外周とのギャップ14も広くなり、Ldが減少し、一方ではq軸鉄心6と回転子鉄心1の外周とのギャップ15が小さくなってq軸インダクタンスLqが増加するので、p(Ld−Lq)×id×iqのリラクタンストルク成分が大きくなり、pλ×iq項の減少分を補う。
実施最良形態1においては、高速回転時には、d軸ピース5が回転軸3方向に移動するため、モータの弱め界磁制御が行われ、その回転数ー電圧・トルク特性は図2に示すようになる。即ち、従来のモータの端子電圧はイ、実施最良形態1のモータの端子電圧はロに示すようになり、実施最良形態1では端子電圧を(1)式に示すように減少させることができる。又、従来のPMモータの誘起電圧成分はハ、提案モータ即ち実施最良形態1のモータの誘起電圧成分はニとなり、実施最良形態1では誘起電圧成分が減少するので、最大回転数を上げることができる。さらに、従来モータのトルクはホ、実施最良形態1のモータのトルクはヘに示すようになり、実施最良形態1ではトルクは(2)式に示すように増大する。
この結果、従来のモータの定トルク運転限界点はト、実施最良形態1のモータの定トルク運転限界点はチに示すようになり、実施最良形態1では定トルク運転限界点を高めることができる。又、従来モータの定出力運転限界点はリ、実施最良形態1のモータの定出力運転限界点はヌに示すようになり、実施最良形態1のモータの定出力運転限界点を高めることができる。
実施最良形態2
図3(a)は実施最良形態1によるPMモータの回転子構造の一部拡大側面図、図3(b)は実施最良形態2によるPMモータの回転子構造の一部拡大側面図であり、実施最良形態1ではコイルばね9を用いたので、d軸ピース5と回転子鉄心1のd軸スロット1aの底部との空隙8が大きくなり、永久磁石2の磁束λが小さくなる。そこで、実施最良形態2においては、図3(b)に示すようにコイルばね9に代えて板ばね16を用いており、空隙8が小さくなり、永久磁石2の磁束を有効に利用することができる。
実施最良形態3
図4は実施最良形態3によるPMモータの回転子構造の側面図を示し、d軸ピース5が収容されたd軸スロット1aとq軸鉄心6が収容されたq軸スロット1aの底部間にはこの間を連通する連通孔17が設けられ、連通孔17によって連通されたd軸ピース5とd軸スロット1aの底部との間の空隙8、q軸鉄心6とq軸スロット1aの底部との間の空隙18及び連通孔17には磁性流体(液状の磁性体)19が充填される。なお、実際には回転子鉄心1の中心には回転軸3が設けられているので、連通孔17は回転子鉄心1にこの回転軸3を避けた形で形成される。
実施最良形態3においては、空隙8,18及び連通孔17には磁性流体19が充填されており、空隙8,18の容積の和は常に等しいので、高速回転時に遠心力によりq軸鉄心6が径方向外側に移動すると、d軸ピース5は径方向内側に移動し、弱め界磁制御が行われる。従って、リンク7は省略できる。しかも、空隙8に磁性流体19が充填されているので、永久磁石2の磁束を有効に利用することができる。
実施最良形態4
図5は実施最良形態4によるPMモータの回転子構造の要部側面図を示し、q軸鉄心6とq軸スロット1aとの摺動部においてq軸鉄心6に凸部6aを設けるとともに、q軸スロット1aに凸部6aと係合する凹部1cを設け、両者の係合によりストッパ部を形成する。なお、スロット1aの角部からなるストッパ部1bもストッパの役目をする。
実施最良形態4においては、q軸鉄心6側に凹部1c及び凸部6aからなるストッパ部を設けたので、d軸ピース5及びq軸鉄心6の飛び出しが防止され、また永久磁石2等の損傷を防止することができる。又、スロット1aの角部からなるストッパ部1bによってもこれらの効果を奏することができる。
実施最良形態5
図6は実施最良形態5によるPMモータの回転子構造の側面図を示し、回転子鉄心1のd軸方向の外周面から径方向に対向して一対のスロット1aを設けるとともに、回転子鉄心1のq軸方向に対向して一対の貫通孔20を回転軸3の軸方向に貫通して設け、各スロット1aには径方向摺動自在に一対のd軸ピース5を収容し、各貫通孔20には一対のq軸鉄心6を径方向摺動自在に収容する。又、隣り合うd軸ピース5とq軸鉄心6とをリンク7により連結し、空隙8にはd軸ピース5を回転子鉄心1の外周側へ付勢するコイルばね9を設ける。そして、d軸スロット1aの内端側の角部からなるストッパ部1b、各貫通孔20の内端側の角部からなるストッパ部20a、及び各貫通孔20の外端側からなるストッパ部20bを形成する。
実施最良形態5においても、ストッパ部1b,20a,20bによりd軸ピース5及びq軸鉄心6が係止され、これらの飛び出しや損傷を防止することができる。又、ストッパ部1b,20a,20bはスロット1aの内端側及び貫通孔20の内外端側により形成されるので、構造が簡単になる。
実施最良形態6
図7は実施最良形態6によるPMモータの回転子構造の側面図を示し、空隙8にばね9,16を設けると、空隙8が大きくなり、永久鉄心2の磁束を有効に利用できない。そこで、実施最良形態6においては、空隙8にはばねを設けない。その代わりに、貫通孔20の外端部とq軸鉄心6との間の空隙21に板ばね22を設ける。板ばね22は、q軸鉄心6を回転子鉄心1の径方向内側に付勢する。その他の構成は実施最良形態5と同様である。
上記構成において、通常状態時においては、q軸鉄心6は板ばね22により貫通孔20の径方向内側へ押圧され、d軸ピース5はギャップ12側へ押圧されているが、高速回転時にはq軸鉄心6は遠心力により板ばね22の押圧力に抗して径方向外側に摺動し、d軸ピース5はスロット1a内を径方向内側に摺動し、弱め界磁制御が行われる。
実施最良形態6においては、貫通孔20の外端部とq軸鉄心6との間の空隙21に板ばね22を設け、d軸ピース5とスロット1aの底部との間の空隙8にはばねを設けないので、空隙8を小さくすることができ、永久磁石2の磁束を有効に利用できる。その他の効果は実施最良形態5と同様である。
実施最良形態7
図8(a),(b)は実施最良形態7によるIPMモータの回転子構造の側面図及びそのA部拡大図を示し、回転子鉄心1には90度間隔で軸方向に貫通した貫通孔20を設け、d軸方向に対向した一対のd軸貫通孔20には径方向摺動自在に一対のd軸ピース5を収容し、q軸方向に対向した一対のq軸貫通孔20には径方向摺動自在に一対のq軸鉄心6を収容する。隣り合うd軸ピース5とq軸鉄心6とをリンク7により連結するとともに、d軸貫通孔20の内端部とd軸ピース5との間の空隙23にはコイルばね9を設ける。又、貫通孔20の内端側の角部にはストッパ部20aが形成され、貫通孔20の外端部にもストッパ部20bが形成されている。ストッパ部20aは、通常状態時にコイルばね9に押圧されたd軸ピース5が貫通孔20の外端部との間に0.1〜0.5mmの空隙24を形成するよう調整されている。
実施最良形態7においては、通常状態時にd軸ピース5がコイルばね9に押圧されても、q軸鉄心6がストッパ部20aに係止されるので、d軸ピース5と貫通孔20の外端との間には空隙24が形成され、d軸ピース5とd軸貫通孔20の外端とは当接しない。このため、IPMモータにおいても、d軸ピース5の損傷を防止することができる。なお、ストッパ部20aはその他の構造によって形成してもよい。
実施最良形態8
図9は実施最良形態8によるPMモータの回転子構造の要部側面図を示し、d軸ピース5の磁極鉄心4に永久磁石2に対して直角方向に複数の細長いスリット4aを設けている。その他の構成は上記各実施最良形態と同様である。
実施最良形態8においては、磁極鉄心4に永久磁石2に対して直角に複数の細長いスリット4aを設けており、q軸鉄心6より質量が小さいことが要求されるd軸ピース5の質量を容易に小さくすることができる。しかも、スリット4aは永久磁石2に対して直角に設けられているので、永久磁石2の磁束の通流に悪影響を与えない。
実施最良形態9
図10は実施最良形態9によるPMモータの回転子構造の要部側面図を示し、d軸ピース5の磁極鉄心4の両側部に永久磁石2を保護する保護部4bを設けている。その他の構成は上記各実施最良形態と同様である。
実施最良形態9においては、磁極鉄心4の両側部に永久磁石2を保護する保護部4bを設けたので、永久磁石2がスロット1a又は貫通孔20との摺動により損傷することを防止することができる。
実施最良形態10
図11(a),(b)は実施最良形態10によるPMモータの回転子構造の側面図及び正面図を示し、25は回転子鉄心1又は回転軸3に取り付けられた十字板状の飛び出し防止部材であり、d軸ピース5の磁極鉄心4の軸方向両端面及びq軸鉄心6の軸方向両端面と係合する。飛び出し防止部材25と永久磁石2が接触すると磁気的干渉が生じるので、飛び出し防止部材25のd軸方向の寸法Bは永久磁石2が最も径方向内側に位置したときの内径より小さくする。飛び出し防止部材25のq軸方向の寸法Cは磁気的干渉を考慮する必要がないので、CはBより大きくする。
実施最良形態10においては、d軸ピース5及びq軸鉄心6の軸方向への飛び出しを防止する飛び出し防止部材25を設けたので、これらの軸方向への飛び出しは防止され、その損傷も防止される。
この発明の実施最良形態1によるPMモータの回転子構造の通常状態時、高速回転時の側面図及び図1(a)の一部拡大図である。 実施最良形態1によるPMモータの回転数ー電圧・トルク特性図である。 実施最良形態1及び実施最良形態2によるPMモータの回転子構造の一部拡大側面図である。 実施最良形態3によるPMモータの回転子構造の側面図である。 実施最良形態4によるPMモータの回転子構造の要部側面図である。 実施最良形態5によるPMモータの回転子構造の側面図である。 実施最良形態6によるPMモータの回転子構造の側面図である。 実施最良形態7によるIPMモータの回転子構造の側面図及びそのA部拡大図である。 実施最良形態8によるPMモータの回転子構造の要部側面図である。 実施最良形態9によるPMモータの回転子構造の要部側面図である。 実施最良形態10によるPMモータの回転子構造の側面図及び正面図である。 従来のIPMモータの回転子構造の側面図である。
符号の説明
1…回転子鉄心
1a…スロット
1b,20a,20b…ストッパ部
1c…凹部
2…永久磁石
3…回転軸
4…磁極鉄心
4a…スリット
4b…保護部
5…d軸ピース
6…q軸鉄心
6a…凸部
7…リンク
8,18,21,23,24…空隙
9…コイルばね
10…回転子
11…固定子
12…ギャップ
16,22…板ばね
17…連通孔
19…磁性流体
20…貫通孔
25…飛び出し防止部材

Claims (10)

  1. 回転軸に取り付けられた回転子鉄心の外周面から径方向に90度間隔で設けられた各スロットと、永久磁石の内側に磁極鉄心を取り付けて形成し、d軸方向に対向した一対のd軸スロットにそれぞれ径方向摺動自在に収容された一対のd軸ピースと、q軸方向に対向した一対のq軸スロットにそれぞれ径方向摺動自在に収容された前記d軸ピースより質量が大きい一対のq軸鉄心と、隣り合うd軸ピースとq軸鉄心とを連結するリンクと、d軸ピースとd軸スロットの底部との間の空隙に設けられるとともに、d軸ピースを回転子鉄心の外周側に付勢するばねとを備えたことを特徴とするPMモータの回転子構造。
  2. 上記ばねを板ばねとしたことを特徴とする請求項1記載のPMモータの回転子構造。
  3. 回転軸に取り付けられた回転子鉄心の外周面から径方向に90度間隔で設けられた各スロットと、永久磁石の内側に磁極鉄心を取り付けて形成し、d軸方向に対向した一対のd軸スロットにそれぞれ径方向摺動自在に収容された一対のd軸ピースと、q軸方向に対向した一対のq軸スロットにそれぞれ径方向摺動自在に収容し、且つd軸ピースより質量が大きい一対のq軸鉄心と、d軸ピースとd軸スロットの底部との間の空隙に設けられるとともに、d軸ピースを回転子鉄心の外周側に付勢するばねと、d軸スロットとq軸スロットの底部間を連通するよう設けられた連通孔と、d軸スロットの底部の空隙、q軸スロットの底部の空隙及び前記連通孔に充填された磁性流体とを備えたことを特徴とするPMモータの回転子構造。
  4. q軸鉄心の摺動面に凸部を設けるとともに、q軸スロットの摺動面に凹部を設けて、q軸鉄心が摺動した時に回転子飛び出し防止のためのストッパ部を形成したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のPMモータの回転子構造。
  5. 回転軸に取り付けられた回転子鉄心のd軸方向の外周面から径方向に対向して設けられた一対のスロットと、回転子鉄心のq軸方向に対向するとともに回転軸の軸方向に貫通して設けられた一対の貫通孔と、永久磁石の内側に磁極鉄心を取り付けて形成し、一対のスロットにそれぞれ径方向摺動自在に収容された一対のd軸ピースと、一対の貫通孔にそれぞれ径方向摺動自在に収容し、且つd軸ピースより質量が大きい一対のq軸鉄心と、隣り合うd軸ピースとq軸鉄心とを連結するリンクと、d軸ピースとスロットの底部との間の空隙に設けられるとともに、d軸ピースを回転子鉄心の外周側へ付勢するばねとを備え、各スロット及び各貫通孔の内端側及び各貫通孔の外端側によりストッパ部を形成したことを特徴とするPMモータの回転子構造。
  6. 回転軸に取り付けられた回転子鉄心のd軸方向の外周面から径方向に対向して設けられた一対のスロットと、回転子鉄心のq軸方向に対向するとともに回転軸の軸方向に貫通して設けられた一対の貫通孔と、永久磁石の内側に磁極鉄心を取り付けて形成し、一対のスロットにそれぞれ径方向摺動自在に収容された一対のd軸ピースと、一対の貫通孔にそれぞれ径方向摺動自在に収容し、且つd軸ピースより質量が大きい一対のq軸鉄心と、隣り合うd軸ピースとq軸鉄心とを連結するリンクと、貫通孔の外端部とq軸鉄心との間の空隙に設けられるとともに、q軸鉄心を回転子鉄心の径方向内側に付勢する板ばねとを備えたことを特徴とするPMモータの回転子構造。
  7. 回転軸に取り付けられた回転子鉄心の外周面から径方向に90度間隔で且つ軸方向に貫通して設けられた各貫通孔と、永久磁石の内側に磁極鉄心を取り付けて形成し、d軸方向に対向した一対のd軸貫通孔にそれぞれ径方向摺動自在に収容された一対のd軸ピースと、q軸方向に対向した一対のq軸貫通孔にそれぞれ径方向摺動自在に収容し、且つd軸ピースより質量が大きい一対のq軸鉄心と、隣り合うd軸ピースとq軸鉄心とを連結するリンクと、d軸ピースとd軸貫通孔の内端との間の空隙に設けられるとともに、d軸ピースを回転子鉄心の外周側に付勢するばねと、d軸ピースがd軸貫通孔の外端側と当接しないようにq軸鉄心側に形成したストッパ部とを備えたことを特徴とするPMモータの回転子構造。
  8. d軸ピースの磁極鉄心に永久磁石に対して直角に細長いスリットを設けたことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のPMモータの回転子構造。
  9. d軸ピースの磁極鉄心に永久磁石を保護する保護部を設けたことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載のPMモータの回転子構造。
  10. 回転軸又は回転子鉄心に、d軸ピ−スの磁極鉄心及びq軸鉄心と係合してd軸ピース及びq軸鉄心の軸方向への飛び出しを防止する飛び出し防止部材を設けたことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載のPMモータの回転子構造。
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