JP2005325133A - 抗hla−dr抗体の利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、抗HLA-DRモノクローナル抗体を提供する。
【解決手段】 本発明は(a)HLA-DR発現癌細胞を担持した非ヒト動物において延命効果を示し、かつ(b)L243と比べ免疫反応に対する抑制活性が弱い、からなる性質を有するHLA-DRと結合する抗体又はその機能的断片、あるいは、マウス抗HLA-DRモノクローナル抗体L243(ATCC HB-55)と比べてL243と同等か又はL243より強い免疫抑制活性を示すHLA-DRと結合する抗体又はその機能的断片である。
【選択図】 なし

Description

本発明は免疫に関与する細胞膜分子であるHLA-DR(human leucocyte antigen - DR)を認識する抗HLA-DR抗体に関する。さらに本発明は、抗HLA-DR抗体を有効成分とする次の二項目の薬剤に関する:(1)HLA-DRを発現している細胞に起因する疾患に対する予防又は治療剤、特に悪性腫瘍治療剤、及び(2)HLA-DRを発現している細胞に起因する免疫反応に対する予防又は治療剤、特に慢性関節リウマチ治療剤。
細胞表面に発現する蛋白質に結合し、細胞に対して細胞死あるいは傷害性を誘導する作用を有する抗体を癌などの治療に用いることが試みられている。現在、細胞膜上に存在するレセプターであるCD20を標的としたキメラ抗体(Rituximab)、Her2/neuを標的としたヒト化抗体などのモノクローナル抗体が、悪性腫瘍を対象疾患として使用されており、その治療効果が認められている。抗体は、血中半減期が長く、抗原への特異性が高いという特徴を持ち、抗腫瘍剤として特に有用である。例えば、腫瘍特異的な抗原を標的とした抗体であれば、投与した抗体は腫瘍に集積することが推定されるので、補体依存性細胞傷害活性(CDC)や抗体依存的細胞性細胞傷害活性(ADCC)による、免疫システムの癌細胞に対する攻撃が期待できる。また、その抗体に放射性核種や細胞毒性物質などの薬剤を結合しておくことにより、結合した薬剤を効率よく腫瘍部位に送達することが可能となり、同時に、非特異的な他組織への該薬剤到達量が減少することで、副作用の軽減も見込むことができる。腫瘍特異的抗原に細胞死を誘導するような活性がある場合はアゴニスティックな活性を持つ抗体を投与することで、また、腫瘍特異的抗原が細胞の増殖及び生存に関与する場合は中和活性を持つ抗体を投与することで、腫瘍特異的な抗体の集積と、抗体の活性による腫瘍の増殖停止又は退縮が期待される。抗体は、上記のようにその特徴から抗腫瘍剤として適用するのに適切であると考えられる。
近年、Rituximabによって、B細胞リンパ腫において有意な抗腫瘍効果を発揮しており、副作用も限定されている。しかしながらRituximabはヒト−マウスのキメラタンパクであることから、Rituximabそのものの抗原性が高く、体内でマウス部位に対する抗体が産生され、効果が減弱する可能性もある。また、Rituximab単独では効果が低い癌もあり、抗がん剤との併用については現在臨床試験が行われている(非特許文献1および2参照)。よって、新たな抗原をターゲットとした抗腫瘍抗体が必要とされており、クラスII主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の一種であるHLA-DRに対するモノクローナル抗体には、Rituximabと異なる抗原を認識する抗体として臨床における抗腫瘍活性が期待される。
一方、クラスII主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子は、抗原ペプチド断片に結合し、これらの抗原ペプチド断片をヘルパー(CD4+)T細胞(「Th」細胞)に提示する(非特許文献3参照)。クラスII MHC分子に特異的なモノクローナル抗体は、インビトロにおいてTh細胞の免疫応答の非常に強力な選択的阻害剤であることが報告されている(非特許文献4参照)。このようなモノクローナル抗体は発見されて以来、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患の選択的免疫抑制治療に使用できる可能性のある薬物として考えられている。初期のインビボにおける研究により、これらモノクローナル抗体がTh細胞性異種及び自己免疫応答に対して与える有用な影響が明らかにされた(非特許文献5から8参照)。さらに霊長類における研究により、同種移植における移植片対宿主反応を抑制することが明らかにされた(非特許文献9および10参照)。
現在臨床的には臓器移植時の拒絶反応の抑制には、シクロスポリンAやFK506といった免疫抑制剤が用いられているが、これらの免疫抑制剤の問題点は免疫反応を非特異的に抑制してしまうため強い副作用が起こる。
以上より、抗体はその特徴から副作用の少ない免疫抑制剤として適用するのに適切であると考えられる。
McLaughlin P. et. al., J Clin Oncol.(1998),16, 2825-2833 Coiffier B. et. al., Blood (1998), 92, 1927-81 Babbin B. et al., Nature (1985), 317, 359-361 Baxevanis CN, et. al., Immunogenetics (1980), 11, 617-625 Rosenbaum JT. et al., J. Exp. Med.(1981), 154, 1694-1702 Waldor MK. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1983), 80, 2713-2717 Jonker M. et al., J. Autoimmun.(1988), 1, 399-414 Stevens HP. et. al., Transplant. Proc.(1990), 22,1783-1784 Billing R. & Chatterjee S.(1983), Transplant. Proc., 15, 649-650 Jonker M. et. al., Transplant Proc.(1991), 23, 264-265
免疫抑制活性が高く、それ自身の免疫原性の低いヒト抗体を用いた免疫抑制剤の開発についても未解決である。
本発明は、このような抗体を作製し、抗腫瘍剤又は免疫抑制剤として使用することを目的とする。
本発明者らは、ヒトHLA-DRに対する抗体の作製に関して鋭意研究した結果、HLA-DRを発現する癌細胞に非常に低濃度で抗腫瘍効果を示すモノクローナル抗体、及び、HLA-DRを介した免疫活性を特異的に抑制するモノクローナル抗体の取得に成功し、さらに該モノクローナル抗体の可変領域の配列を特定し、該モノクローナル抗体が結合するエピトープを決定し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
本発明は、その第1の態様において、及び及びマウス-マウスハイブリドーマにより産生されるHLA-DRと結合するモノクローナル抗体、例えばHD4、HD6、HD8又はHD10により産生される好ましくはヒト抗体であるモノクローナル抗体又はその機能的断片を提供する。HD4、HD6、HD8又はHD10により産生されるモノクローナル抗体のタイプはイムノグロブリンG(IgG)型である。ここで、ハイブリドーマHD8は、受託番号がFERM BP-7773として、ハイブリドーマHD10は受託番号がFERM BP-7774として、2001年10月11日付けで独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に国際寄託されている。ハイブリドーマHD4は受託番号がFERM BP-7771として、2001年10月11日付けで独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に国際寄託されている。ハイブリドーマHD6は、受託番号が FERM BP-7772として、2001年10月11日付けで独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に国際寄託されている。
本発明の実施形態において、本発明の抗体は上記ハイブリドーマが産生する抗体の可変領域を有する、抗体又はその機能的断片である。
本発明の別の実施形態において、本発明の抗体はサブクラスが改変された抗体も含み、ハイブリドーマHD8が産生する抗体であってサブクラスがIgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4である抗体若しくはその機能的断片、ハイブリドーマHD4が産生する抗体であってサブクラスがIgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4である抗体若しくはその機能断片、ハイブリドーマHD10が産生する抗体であってサブクラスがIgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4である抗体若しくはその機能的断片、又はハイブリドーマHD6が産生する抗体であってサブクラスがIgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4である抗体若しくはその機能的断片である。本発明のさらに別の実施形態において、本発明の抗体は重鎖定常領域のアミノ酸配列が改変された抗体又はその機能的断片であり、例えば重鎖定常域のEUナンバリングシステム(Sequences of proteins of immunological interest, NIH Publication No.91-3242 を参照)における331番目のアミノ酸をSerに置き換えた抗体又はその機能的断片である。
本発明の別の実施形態において、抗体又はその機能的断片はIgG1、IgG2、又はIgG4にサブクラスを組替えるか、さらに重鎖定常域のEUナンバリングシステムにおける331番目のアミノ酸をSerに置き換え、IgG1、IgG1Ser、IgG2、IgG2Ser又はIgG4に改変した結果、IgG1及びIgG1SerタイプのみがADCCを発現し、IgG1及びIgG2のみがCDC活性を発現する抗体又はその機能的断片である。
また、本発明の別の態様において、本発明はハイブリドーマHD4、HD6、HD8又はHD10が産生する抗体の可変領域を含む、HLA-DRと結合する抗体又はその機能的断片を提供する。本発明の実施形態において、本発明の抗体は配列番号21及び23に示されるアミノ酸配列のうち可変領域の成熟体部分のアミノ酸配列を有する、ハイブリドーマHD8が産生する抗体の可変領域を含む抗体又はその機能的断片である。本発明の別の実施形態において、本発明の抗体は配列番号17及び19に示されるアミノ酸配列のうち可変領域の成熟体部分のアミノ酸配列を有する、ハイブリドーマHD4が産生する抗体の可変領域を含む抗体又はその機能的断片である。
さらに、本発明の別の態様において、本発明はHLA-DRの特定のエピトープに結合し得る抗体又はその機能的断片である。本発明の実施形態において、本発明の抗体は、HLA-DRのβ鎖(DRB1*15011)の細胞外領域アミノ酸(配列番号147にアミノ酸配列、配列番号146に塩基配列を示す)について13-merペプチドを2アミノ酸ずつずらしてペプチドを作成し(配列番号147のアミノ酸配列のうち第29番目から第227番目の199アミノ酸について13-merペプチドを作成する)、該ペプチドをセルロース膜上にC末端から結合しN末端をアセチル化することからなるペプチドのうち、配列番号82で示されるペプチドと最も強力に結合する、HLA-DRに結合する抗体及びその機能的断片、HLA-DRのβ鎖(DRB1*15011)の細胞外領域アミノ酸について13-merペプチドを2アミノ酸ずつずらしてペプチドを作成し、該ペプチドをセルロース膜上にC末端から結合しN末端をアセチル化することからなるペプチドのうち、配列番号82、83及び84で示される3種類のペプチド総てと強力に結合する、HLA-DRに結合する抗体及びその機能的断片、並びにHLA-DRのβ鎖(DRB1*15011)の細胞外領域アミノ酸について13-merペプチドを2アミノ酸ずつずらしてペプチドを作成し、該ペプチドをセルロース膜状にC末端から結合しN末端をアセチル化したことからなる配列番号24から39で示されるのすべてのペプチドと有意に結合し、かつ配列番号40から43で示されるすべてのペプチドと有意に結合する、HLA-DRに結合する抗体又はその機能的断片である。
本発明はさらに、別の態様において、本発明の抗体又はその機能的断片は、腫瘍(例えばSCIDマウスに移植されたRaji細胞に由来するもの)の増殖を抑制することでマウス個体の生存率を延長させることができる抗体又はその機能的断片を提供する。腫瘍を担持する被検動物(例えばリンパ腫細胞担癌マウスモデル等の担癌実験動物、体重20gとする)に本発明の抗体又はその機能的断片を投与する量は、0.1μg/body〜1μg/body又は5μg/kg〜50μg/kgである。例えば、投与量として1μg/body又は50μg/kg、好ましくは0.1μg/body又は5μg/kgが挙げられる。
本発明の実施形態において、本発明の抗体は以下の性質(a)及び(b):
(a)6週齢のSCIDマウスに抗アシアロGM1抗血清を10μl/マウス個体で静脈内投与し、抗アシアロGM1抗血清投与翌日にバーキットリンパ腫細胞Raji(ATCC CCL-86)を5×106/マウス個体で静脈内投与し、Raji投与5日後に投与量50μg/kg体重から5μg/kg体重で投与した場合のマウスの生存率が、ヒト抗HSA抗体を同量投与した場合の生存率よりも高いという性質;及び
(b)10% FCSを含むRPMI1640培地を用いて8μg/mLに調製した抗体50μLと10% FCSを含むRPMI1640培地を用いて2×105個/mLに調製した第1のヒトドナー由来成熟樹状細胞浮遊液50μLとを96穴プレートのウェル中で混合し、4℃で30分間放置し、次いで10% FCSを含むRPMI1640培地を用いて1×10個/mLに調製した前記第1のヒトドナーと組織適合抗原が異なる第2のヒトドナー由来の純度99%以上のT細胞浮遊液100μLを混合し、37℃、5%CO2存在下で5日間培養し、さらに3Hチミジンを1.0μCi/ウェルで添加して、さらに37℃、5%CO2存在下で16〜20時間培養した後、細胞へ取り込まれた3Hチミジンを回収し該3Hチミジンをシンチレーターで測定し、3Hチミジンの細胞への取り込みを指標として免疫抑制活性を測定した場合の免疫抑制活性が同濃度のマウス抗HLA-DRモノクローナル抗体L243(ATCC HB-55)を用いた場合の免疫抑制活性と比べて弱いという性質;
を有する、HLA-DRと結合する抗体及びその機能的断片である。
本発明はさらに、別の態様において、マウス抗HLA-DRモノクローナル抗体L243(ATCC HB-55)と比べてL243と同等か又はL243より強い免疫抑制活性を示す、HLA-DRを認識する抗体又はその機能的断片を提供する。本発明の実施形態において、本発明の抗体は10% FCSを含むRPMI1640培地を用いて8μg/mLに調製した抗体50μLと10% FCSを含むRPMI1640培地を用いて2×105個/mLに調製した第1のヒトドナー由来成熟樹状細胞浮遊液50μLとを96穴プレートのウェル中で混合し、4℃で30分間放置し、次いで10% FCSを含むRPMI1640培地を用いて1×10個/mLに調製した前記第1のヒトドナーと組織適合抗原が異なる第2のヒトドナー由来の純度99%以上のT細胞浮遊液100μLを混合し、37℃、5%CO2存在下で5日間培養し、さらに3Hチミジンを1.0μCi/ウェルで添加して、さらに37℃、5%CO2存在下で16〜20時間培養した後、細胞へ取り込まれた3Hチミジンを回収し該3Hチミジンをシンチレーターで測定し、3Hチミジンの細胞への取り込みを指標として免疫抑制活性を測定した場合の免疫抑制活性が同濃度のマウス抗HLA-DRモノクローナル抗体L243(ATCC HB-55)を用いた場合の免疫抑制活性と比べて同等又は強いという性質を有する、抗体又はその機能的断片を提供する。
本発明はさらに、別の態様において、ハイブリドーマHD8(受託番号 FERM BP-7773)、ハイブリドーマHD10(受託番号 FERM BP-7774)、ハイブリドーマHD4(受託番号 FERM BP-7771)及びHD6(受託番号 FERM BP-7772)からなる群から選択されるハイブリドーマの保有する核酸であって、前記ハイブリドーマが産生する抗体の可変領域を含む抗体をコードする核酸又は該抗体の機能的断片をコードする核酸又は該抗体の機能的断片をコードする核酸、該核酸によりコードされるタンパク質、前記核酸を有する発現ベクター、該発現ベクターを有する大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞及び植物細胞並びに哺乳動物からなる群から選ばれる宿主を提供する。本発明の実施形態において、本発明の抗体は、可変領域が配列番号17および19で示されるアミノ酸配列のうち可変領域の成熟体部分のアミノ酸配列を有する可変領域を含む前記抗体をコードする核酸又は該抗体の機能的断片をコードする核酸であり、可変領域が配列番号21および23で示されるアミノ酸配列のうち可変領域の成熟体部分のアミノ酸配列を有する可変領域を含む前記抗体をコードする核酸又は該抗体の機能的断片をコードする核酸であり、サブクラスがIgG1でありEUナンバリングシステムにおける331番目のアミノ酸がSerへ置換された抗体HD8である抗体HD8G1Ser、サブクラスがIgG2でありEUナンバリングシステムにおける331番目のアミノ酸がSerへ置換された抗体HD8である抗体HD8G2Ser及びサブクラスがIgG2でありEUナンバリングシステムにおける331番目のアミノ酸がSerへ置換された抗体HD4である抗体HD4G2Serからなる群から選択される抗体をコードする核酸又は該抗体の機能的断片をコードする核酸である。
本発明はさらに、別の態様において、ハイブリドーマHD8(受託番号 FERM BP-7773)、ハイブリドーマHD10(受託番号 FERM BP-7774)、ハイブリドーマHD4(受託番号 FERM BP-7771)及びHD6(受託番号 FERM BP-7772)からなる群から選択されるハイブリドーマから抗HLA-DRモノクローナル抗体をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を有する発現ベクターを構築し、該発現ベクターを宿主に導入して該モノクローナル抗体を発現せしめ、得られる宿主、宿主の培養上清又は宿主の分泌物から抗HLA-DRモノクローナル抗体を採取することを含む、抗HLA-DRモノクローナル抗体の製造方法を提供する。
本発明はさらに、別の態様において、上記抗体又はその機能的断片を有効成分として含有する、腫瘍の予防、治療又は診断剤を提供する。
予防又は治療可能な腫瘍の例は、白血病(慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病を含む)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、T細胞系リンパ腫、B細胞系リンパ腫、バーキットリンパ腫、悪性リンパ腫、びまん性リンパ腫、濾胞性リンパ腫を含む)、骨髄腫(多発性骨髄腫を含む)、乳癌、大腸癌、腎臓癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、食道癌、肝臓癌、頭頚部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、きょう膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、甲状肉腫及びウィルムス腫瘍からなる群から選ばれる少なくとも1つである。
本発明はさらに、別の態様において、本発明の抗体又はその機能的断片を有効成分として含有する免疫抑制剤を提供し、さらに本発明の抗体又はその機能的断片を有効成分として含有する自己免疫疾患又はアレルギーの予防、治療又は診断剤を提供する。
本発明の実施形態において、予防又は治療剤は臓器移植時における免疫抑制剤(膵島移植や腎臓などの移植時における拒絶反応、GVHDの予防又は治療剤)、あるいは自己免疫疾患(例えば、リウマチ、動脈硬化治療薬、多発性硬化症、全身性エリトマトーデス、特発性血小板減少症、クローン病など)治療剤、喘息などアレルギー治療剤の予防又は治療のためのものである。本発明のさらに別の実施形態において、本発明の抗体又はその機能的断片は、Raji細胞が移植された担癌SCIDマウスにおいて、腫瘍移植5日後に前記抗体又はその機能的断片の投与量5mg/kg以下で延命効果が認められることを特徴とする。
本発明は、さらに配列番号17及び19にそれぞれ示される、ハイブリドーマHD4の産生する抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、配列番号21及び23にそれぞれ示される、ハイブリドーマHD8の産生する抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の、マチュア部分のアミノ酸配列を有する抗体又はその機能的断片を含む。
上記抗体又はその機能的断片は、例えば、配列番号16及び18にそれぞれ示される、ハイブリドーマHD4から単離された核酸配列にコードされる重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、配列番号20及び22にそれぞれ示される、ハイブリドーマHD8から単離された核酸配列にコードされる重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の、マチュア部分のアミノ酸配列を有するものである。
本発明により、HLA-DRを発現している細胞に起因する疾患に対する予防又は治療剤、特に悪性腫瘍治療薬としてほぼすべてのHLA-DR多型を有する患者に有用である分子が提供された。
さらに、HLA-DRが関与する免疫活性を抑制することによる免疫抑制薬、特にリウマチ治療薬として有用である分子が提供された。
以下、本発明を詳細に説明する。
抗HLA-DRモノクローナル抗体に、免疫反応に対して抑制活性があることも報告されている。初期のインビボにおける研究により、抗HLA-DRモノクローナル抗体がTh細胞性異種及び自己免疫応答に対して与える有用な影響が明らかにされた[Rosenbaum JT. et al., J. Exp. Med.(1981), 154, 1694-1702; Waldor MK. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1983), 80, 2713-2717; Jonker M. et al., J. Autoimmun.(1988), 1, 399-414; Stevens HP. et. al., Transplant. Proc.(1990), 22,1783-1784参照]。さらに霊長類における研究により、同種移植における移植片対宿主反応を抑制することが明らかにされた[Billing R. & Chatterjee S.(1983), Transplant. Proc., 15, 649-650; Jonker M. et. al., Transplant Proc.(1991), 23, 264-265]。しかしながら、これら報告されている抗体はマウス抗体である。最近になって、プロテインデザインラボラトリー社が1D10というマウス抗HLA-DR抗体を用いて、彼らのもつヒト化技術により可変部位以外を遺伝子組換えによりヒト抗体の配列にしたヒト化HLA-DR抗体が開発され[Sheri AK. et. al., Int. J. Cancer(2001), 93, 556-565参照]、米国で臨床試験を実施している。
本発明の新規ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体は完全ヒト抗体であり、マウス抗体では常に問題となるマウスの配列に対する抗原性については、すでに回避されている。
該抗体としてはイムノグロブリンG(IgG)、同A(IgA)、同E(IgE)及び同M(IgM)のいずれの型も好適に用いられうるが、通常はIgGがより好適である。
以下、本発明で用いる語句の意味を明らかにすることにより、本発明を詳細に説明する。
1.HLA-DR及びその抗体
本発明の抗体は、クラスIIの主要組織特異性複合体(MHC)のひとつであるHLA-DRに対する抗体、すなわちHLA-DRを認識し結合する抗体、HLA-DRに反応性を有する抗体である。
本発明における「HLA-DRと結合する抗体」とは、ヒトHLA-DR又はその一部に反応性を有する抗体又は抗体の一部であり、これらの抗体の機能的断片も含む。「機能的断片」とは、抗体の一部分(部分断片)であって、抗体の抗原への作用を1つ以上保持するものを意味し、具体的にはF(ab')2、Fab'、Fab、Fv、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、及びこれらの重合体等が挙げられる[D.J.King., Applications and Engineering of Monoclonal Antibodies.,
1998 T.J.International Ltd]。あるいは、「機能的断片」は、抗体の断片であって抗原と結合しうる断片である。本発明の抗体の機能的断片は、HLA-DRと結合し、抗腫瘍効果を示し、又は強い免疫抑制活性を示す。
本発明で「ヒト抗体」とは、ヒト由来の抗体遺伝子の発現産物である抗体を意味する。ヒト抗体は、後述のようにヒト抗体遺伝子座を導入し、ヒト由来抗体を産生する能力を有するトランスジェニック動物に抗原を投与することにより得ることができる。該トランスジェニック動物としてマウスが挙げられ、ヒト抗体を産生し得るマウスの作出方法は、国際公開WO02/43478号公報に記載されている。
本発明の抗体としては、例えば、後述の実施例に記載される、ヒトHLA-DRの発現する癌細胞に低濃度で抗腫瘍効果を示す各種の抗体、を挙げることができる。
本発明の抗体には、抗体を構成する重鎖及び/又は軽鎖の各々のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する重鎖及び/又は軽鎖からなるモノクローナル抗体も包含される。本発明の抗体のアミノ酸配列中に、前記のようなアミノ酸の部分的改変(欠失、置換、挿入、付加)は、そのアミノ酸配列をコードする塩基配列を部分的に改変することにより導入することができる。この塩基配列の部分的改変は、既知の部位特異的変異導入法(site specific mutagenesis)を用いて定法により導入することができる[Proc Natl Acad Sci USA., 1984 Vol81:5662]。ここで、抗体とは、イムノグロブリンを構成する重鎖可変領域及び重鎖定常領域、並びに軽鎖の可変領域及び軽鎖の定常領域を含む全ての領域が、イムノグロブリンをコードする遺伝子に由来するイムノグロブリンである。
本発明の抗体は、いずれのイムノグロブリンクラス及びアイソタイプを有する抗体をも包含する。
本発明の抗HLA-DR抗体は、下記のような製造方法によって製造することができる。即ち、例えば、ヒトHLA-DR、その一部又はその一部と抗原の抗原性を高めるための適当なキャリア物質(例えば、牛血清アルブミン等)との結合物を、必要に応じて免疫賦活剤(フロインドの完全又は不完全アジュバント等)とともに、ヒト抗体産生トランスジェニックマウスなどの非ヒト哺乳動物に免疫する。あるいは、ヒトHLA-DRα鎖及びβ鎖をコードする遺伝子を導入し、HLA-DRを細胞表面に過剰に発現している動物細胞を投与することにより、免疫感作を行うことができる。モノクローナル抗体は、免疫感作動物から得た抗体産生細胞と、自己抗体産生能のない骨髄腫系細胞(ミエローマ細胞)を融合することにより得られるハイブリドーマを培養し、免疫に用いた抗原に対して特異的親和性を示すモノクローナル抗体を産生するクローンを選択することによって取得することができる。
本発明の抗体は、当業者に周知である遺伝子工学的改変(例えば、欧州特許EP314161公報を参照のこと)により異なるサブクラスのものに変換されたものも包含する。すなわち、本発明の抗体の可変部をコードするDNAを用いて遺伝子工学的手法を用いて元のサブクラスとは異なるサブクラスの抗体を得ることができる。例えば、本発明の抗体のサブクラスをIgG2又はIgG4に変換することにより、Fcレセプターに対する結合度の低い抗体を取得することができる。逆に、本件発明の抗体のサブクラスをIgG1又はIgG3に変換することにより、Fcレセプターに対する結合度の高い抗体を取得することができる。さらに、本発明の抗体の定常領域のアミノ酸配列を遺伝子工学的に改変すること、あるいはそのような配列を有する定常領域配列と結合することにより、Fcレセプターに対する結合度を変化させること(Janeway CA. Jr. and Travers P.(1997),Immunobiology, Third Edition, Current Biology Ltd./Garland Phulishing Inc.参照)、あるいは補体に対する結合度を変化させること(Mi-Hua Tao, et al. 1993. J.Exp.Med参照)は可能であり、本発明の抗体は、これらの定常領域のアミノ酸配列を改変した抗体も包含する。ここで、アミノ酸配列の改変とはアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列をいう。例えば、重鎖定常部分のEUナンバリングシステム(Sequences of proteins of immunological interest, NIH Publication No.91-3242 を参照)における331番目のプロリン(P)をコードする配列CCCをセリン(S)をコードするTCCに変異させプロリンをセリンに置換することにより補体に対する結合度を変化させることができる。仮に抗癌剤について考えた場合、抗体単独で細胞死誘導活性がない場合は、Fcレセプターを介した抗体依存性細胞障害活性(ADCC)や補体依存性細胞傷害活性(CDC)による抗腫瘍活性を有する抗体が望ましいが、抗体単独で細胞死誘導活性がある場合はFcレセプターとの結合度が低い抗体がより望ましい場合もある。また免疫抑制剤について考えた場合、T細胞と抗原提示細胞の結合のみを立体的に阻害する場合などADCC活性或いはCDC活性を有さない抗体が望ましい。また、ADCC活性或いはCDC活性が毒性の原因となりうる場合、毒性の原因となる活性をFc部分の変異あるいはサブクラスを変更することにより回避した抗体が望ましい場合もある。
本発明の抗体は、IgG1、IgG2、若しくはIgG4にサブクラスを組替えた改変抗体、又はさらにIgG1若しくはIgG2にサブクラスを組替えた改変抗体の重鎖定常域のEUナンバリングシステムにおける331番目のアミノ酸をSerに置き換えIgG1SerもしくはIgG2Serとした改変抗体、すなわちIgG1、IgG1Ser、IgG2、IgG2Ser又はIgG4に改変した結果、IgG1及びIgG1SerタイプのみがADCCを発現し、IgG1及びIgG2のみがCDC活性を発現する抗体をも含む。
また、本発明の抗体に、ヨード、イットリウム、インジウム、テクネチウム等の放射性核種[J.W.Goding, Momoclonal Antibodies: principles and practice., 1993 Academic Press]、緑膿菌毒素、ジフテリアトキシン、リシンのような細菌毒素、及びメトトレキセート、マイトマイシン、カリキアマイシンなどの化学療法剤[D.J.King, Applications and Engineering of Monoclonal Antibodies., 1998 T.J.International Ltd.; M.L.Grossbard., Monoclonal Antibody-BasedTherapy of Cancer., 1998 Marcel Dekker Inc]、さらに、Maytansinoid等のプロドラッグ[Chari et al., Cancer Res., 1992 Vol.52:127; Liu et al., Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 1996 Vol.93:8681]などを結合させることにより癌などの疾患の治療効果をさらに増強することも可能である。
本発明において、モノクローナル抗体の製造にあたっては、下記の作業工程を包含する。すなわち、(1)免疫原として使用する、生体高分子の精製及び/又は抗原タンパク質を細胞表面に過剰に発現している細胞の作製、(2)抗原を動物に注射することにより免疫した後、血液を採取しその抗体価を検定して脾臓等の摘出の時期を決定してから、抗体産生細胞を調製する工程、(3)骨髄腫細胞(ミエローマ)の調製、(4)抗体産生細胞とミエローマとの細胞融合、(5)目的とする抗体を産生するハイブリドーマ群の選別、(6)単一細胞クローンへの分割(クローニング)、(7)場合によっては、モノクローナル抗体を大量に製造するためのハイブリドーマの培養、又はハイブリドーマを移植した動物の飼育、(8)このようにして製造されたモノクローナル抗体の生理活性及びその認識特異性の検討、あるいは標識試薬としての特性の検定、等である。
以下、抗HLA-DRモノクローナル抗体の作製法を上記工程に沿って詳述するが、該抗体の作製法はこれに制限されず、例えば脾細胞以外の抗体産生細胞及びミエローマを使用することもできる。
(1) 抗原の精製
抗原としては、HLA-DRα鎖及びβ鎖をコードするDNAを動物細胞用発現ベクターに組み込み、該発現ベクターを動物細胞に導入し、取得した形質転換株そのものを使用できる。因みに、HLA-DR α鎖及びβ鎖の一次構造は公知である[Steven GE, et al., (2000) The HLA FactsBook, Academic Press発行参照]ので、当業者に周知の方法により、HLA-DRのアミノ酸配列からペプチドを化学合成し、これを抗原として使用することもできる。
また、免疫原としては、ヒトHLA-DRのα鎖及びβ鎖全長をL929細胞に導入し、細胞表面にHLA-DRヘテロダイマーを過剰に発現している細胞も有効である。pEF-neo-HLA-DRα及びpEF-neo-HLA-DRβは、それぞれ、ヒトHLA-DRα鎖タンパク質をコードするDNA及びヒトHLA-DRβ鎖タンパク質をコードするDNAを、動物細胞用発現ベクターpEF-neoに組み込むことにより作製できる。pEF-neoは改変pEF-BOS[Mizushima S. & Nagata S., Nucleic Acids Res (1990), 18, 5332参照]にneomycin耐性遺伝子を組み込んだベクターである。ただし、HLA-DRをコードするDNA、ベクター、宿主等はこれらに限定されない。。
具体的には、pEF-neo-HLA-DRα及びpEF-neo-HLA-DRβでL929細胞を形質転換して得られた形質転換株を培養し、pEF-neoベクターが挿入された細胞に獲得されるネオマイシン耐性の形質及びヤギ抗HLA-DRポリクローナル抗体(DAKO社製)を用いたHLA-DR発現の確認とを指標に、ヒトHLA-DRをその細胞表面に過剰に発現しているL929細胞を作製することができる。
(2)抗体産生細胞の調製工程
(1)で得られた抗原と、フロインドの完全若しくは不完全アジュバント、又はカリミョウバンのような助剤とを混合し、免疫原として実験動物に免疫する。実験動物としては、ヒト由来の抗体を産生する能力を有するトランスジェニックマウスが最も好適に用いられるが、そのようなマウスは富塚らの文献[Tomizuka. et al., Proc Natl Acad Sci USA., 2000 Vol 97:722]に記載されている。
マウス免疫の際の免疫原投与法は、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、皮内注射、筋肉内注射、足蹠注射などいずれでもよいが、腹腔内注射、足蹠注射又は静脈内注射が好ましい。
免疫は、一回、又は、適当な間隔で(好ましくは2週間から4週間間隔で)複数回繰返し行うことができる。その後、免疫した動物の血清中の抗原に対する抗体価を測定し、抗体価が十分高くなった動物を抗体産生細胞の供給原として用いれば、以後の操作の効果を高めることができる。一般的には、最終免疫後3〜5日後の動物由来の抗体産生細胞を、後の細胞融合に用いることが好ましい。
ここで用いられる抗体価の測定法としては、放射性同位元素免疫定量法(以下「RIA法」という)、固相酵素免疫定量法(以下「ELISA法」という)、蛍光抗体法、受身血球凝集反応法など種々の公知技術があげられるが、検出感度、迅速性、正確性、及び操作の自動化の可能性などの観点から、RIA法又はELISA法がより好適である。
本発明における抗体価の測定は、例えばELISA法によれば、以下に記載するような手順により行うことができる。まず、ヒト抗体に対する抗体をELISA用96穴プレート等の固相表面に吸着させ、さらに抗原が吸着していない固相表面を抗原と無関係なタンパク質、例えばウシ血清アルブミン(BSA)により覆い、該表面を洗浄後、一次抗体として段階希釈した試料(例えばマウス血清)に接触させ、上記抗原に試料中の抗HLA-DR抗体を結合させる。さらに二次抗体として酵素標識されたヒト抗体に対する抗体を加えてヒト抗体に結合させ、洗浄後該酵素の基質を加え、基質分解に基づく発色による吸光度の変化等を測定することにより、抗体価を算出する。
(3)ミエローマの調製工程
ミエローマとしては、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ又はヒト等の哺乳動物に由来する自己抗体産生能のない細胞を用いることが出来るが、一般的にはマウスから得られた株化細胞、例えば8-アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)ミエローマ株P3X63Ag8U.1(P3-U1)[Yelton, D.E. et al. Current Topics in Microbiology and Immunology, 81, 1-7(1978)]、P3/NSI/1-Ag4-1(NS-1) [Kohler, G. et al. European J. Immunology, 6, 511-519 (1976)]、Sp2/O-Ag14(SP-2)[Shulman, M. et al. Nature, 276, 269-270 (1978)]、P3X63Ag8.653(653)[Kearney, J. F. et al. J. Immunology, 123, 1548-1550(1979)]、P3X63Ag8(X63)[Horibata, K. and Harris, A. W. Nature, 256, 495-497 (1975)]などを用いることが好ましい。これらの細胞株は、適当な培地、例えば8-アザグアニン培地[グルタミン、2-メルカプトエタノール、ゲンタマイシン及びウシ胎児血清(以下「FCS」という)を加えたRPMI-1640培地に8-アザグアニンを加えた培地] 、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove's Modified Dulbecco's Medium;以下「IMDM」という)、又はダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle Medium;以下「DMEM」という)で継代培養するが、細胞融合の3〜4日前に正常培地(例えば、10% FCSを含むDMEM培地)で継代培養し、融合当日に2×107以上の細胞数を確保しておく。
(4)細胞融合
抗体産生細胞は、形質細胞、及びその前駆細胞であるリンパ球であり、これは個体のいずれの部位から得てもよく、一般には脾、リンパ節、骨髄、扁桃、末梢血、又はこれらを適宜組み合わせたもの等から得ることができるが、脾細胞が最も一般的に用いられる。
最終免疫後、所定の抗体価が得られたマウスから抗体産生細胞が存在する部位、例えば脾臓を摘出し、抗体産生細胞である脾細胞を調製する。この脾細胞と工程(3)で得られたミエローマを融合させる手段として現在最も一般的に行われているのは、細胞毒性が比較的少なく融合操作も簡単な、ポリエチレングリコールを用いる方法である。この方法は、例えば以下の手順よりなる。
脾細胞とミエローマとを無血清培地(例えばDMEM)、又はリン酸緩衝生理食塩液(以下「PBS」という)でよく洗浄し、脾細胞とミエローマの細胞数の比が5:1〜10:1程度になるように混合し、遠心分離する。上清を除去し、沈澱した細胞群をよくほぐした後、撹拌しながら1mLの50%(w/v)ポリエチレングリコール(分子量1000〜4000)を含む無血清培地を滴下する。その後、10mLの無血清培地をゆっくりと加えた後遠心分離する。再び上清を捨て、沈澱した細胞を適量のヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(以下「HAT」という)液及びヒトインターロイキン-6(以下「IL-6」という)を含む正常培地(以下「HAT培地」という)中に懸濁して培養用プレート(以下「プレート」という)の各ウェルに分注し、5%炭酸ガス存在下、37℃で2週間程度培養する。途中適宜HAT培地を補う。
(5)ハイブリドーマ群の選択
上記ミエローマ細胞が、8-アザグアニン耐性株である場合、すなわち、ヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)欠損株である場合、融合しなかった該ミエローマ細胞、及びミエローマ細胞どうしの融合細胞は、HAT含有培地中では生存できない。一方、抗体産生細胞どうしの融合細胞、あるいは、抗体産生細胞とミエローマ細胞とのハイブリドーマは生存することができるが、抗体産生細胞どうしの融合細胞には寿命がある。従って、HAT含有培地中での培養を続けることによって、抗体産生細胞とミエローマ細胞とのハイブリドーマのみが生き残り、結果的にハイブリドーマを選択することができる。
コロニー状に生育してきたハイブリドーマについて、HAT培地からアミノプテリンを除いた培地(以下「HT培地」という)への培地交換を行う。以後、培養上清の一部を採取し、例えば、ELISA法により抗HLA-DR抗体価を測定する。ただし、ELISA用の抗原として上記融合タンパク質を用いる場合は、ヒトIgGのFc領域に特異的に結合する抗体を産生するクローンを選択しないように、該クローンを除外する操作が必要である。そのようなクローンの有無は、例えばヒトIgGのFc領域を抗原としたELISA等により確認することができる。
以上、8-アザグアニン耐性の細胞株を用いる方法を例示したが、その他の細胞株もハイブリドーマの選択方法に応じて使用することができ、その場合使用する培地組成も変化する。
(6)クローニング工程
(2)の記載と同様の方法で抗体価を測定することにより、特異的抗体を産生することが判明したハイブリドーマを、別のプレートに移しクローニングを行う。このクローニング法としては、プレートの1ウェルに1個のハイブリドーマが含まれるように希釈して培養する限界希釈法、軟寒天培地中で培養しコロニーを回収する軟寒天法、マイクロマニュピレーターによって1個づつの細胞を取り出し培養する方法、セルソーターによって1個の細胞を分離する「ソータクローン」などが挙げられるが、限界希釈法が簡便であり、よく用いられる。
抗体価の認められたウェルについて、例えば限界希釈法によるクローニングを2〜4回繰返し、安定して抗体価の認められたものを抗HLA-DRモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
なお、本発明のヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体の産生細胞であるマウス−マウスハイブリドーマHD8、HD10、HD4及びHD6は、2001年10月11日付けで独立行政法人産業技術総合研究所(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に国際寄託されている。ハイブリドーマHD8は受託番号がFERM BP-7773として、ハイブリドーマHD10は受託番号がFERM BP-7774として、ハイブリドーマHD4は受託番号がFERM BP-7771として、ハイブリドーマHD6は受託番号がFERM BP-7772である。
(7)ハイブリドーマ培養によるモノクローナル抗体の調製
クローニングを完了したハイブリドーマは、培地をHT培地から正常培地に換えて培養される。大量培養は、大型培養瓶を用いた回転培養、スピナー培養、あるいはホローファイバーシステムを用いた培養で行われる。この大量培養における上清を、ゲルろ過等、当業者に周知の方法を用いて精製することにより、本発明の予防又は治療剤を有効成分として含有する抗HLA-DRモノクローナル抗体を得ることができる。また、同系統のマウス(例えばBALB/c)若しくはnu/nuマウス、ラット、モルモット、ハムスター又はウサギ等の腹腔内で該ハイブリドーマを増殖させることにより、本発明の予防又は治療剤を有効成分として含有する抗HLA-DRモノクローナル抗体を大量に含む腹水を得ることができる。精製の簡便な方法としては、市販のモノクローナル抗体精製キット(例えば、MAbTrap GIIキット;アマシャムファルマシアバイオテク社製)等を利用することもできる。
かくして得られるモノクローナル抗体は、ヒトHLA-DRに対して高い抗原特異性を有する。
(8)モノクローナル抗体の検定
かくして得られたモノクローナル抗体のアイソタイプ及びサブクラスの決定は以下のように行うことができる。まず、同定法としてはオクテルロニー(Ouchterlony)法、ELISA法、又はRIA法が挙げられる。オクテルロニー法は簡便ではあるが、モノクローナル抗体の濃度が低い場合には濃縮操作が必要である。一方、ELISA法又はRIA法を用いた場合は、培養上清をそのまま抗原吸着固相と反応させ、さらに二次抗体として各種イムノグロブリンアイソタイプ、サブクラスに対応する抗体を用いることにより、モノクローナル抗体のアイソタイプ、サブクラスを同定することが可能である。
さらに、タンパク質の定量は、フォーリンロウリー法、及び280nmにおける吸光度[1.4(OD280)=イムノグロブリン1mg/mL]より算出する方法により行うことができる。
モノクローナル抗体の認識エピトープの同定は以下のようにして行うことができる。まず、モノクローナル抗体の認識する分子の様々な部分構造を作製する。部分構造の作製にあたっては、公知のオリゴペプチド合成技術を用いてその分子の様々な部分ペプチドを作成する方法、遺伝子組換え技術を用いて目的の部分ペプチドをコードするDNA配列を好適な発現プラスミドに組み込み、大腸菌等の宿主内外で生産する方法等があるが、上記目的のためには両者を組み合わせて用いるのが一般的である。例えば、抗原タンパク質のC末端又はN末端から適当な長さで順次短くした一連のポリペプチドを当業者に周知の遺伝子組換え技術を用いて作製した後、それらに対するモノクローナル抗体の反応性を検討し、大まかな認識部位を決定する。
その後、さらに細かく、その対応部分のオリゴペプチド、又は該ペプチドの変異体等を、当業者に周知のオリゴペプチド合成技術を用いて種々合成し、本発明の予防又は治療剤が有効成分として含有するモノクローナル抗体のそれらペプチドに対する結合性を調べるか、又は該モノクローナル抗体と抗原との結合に対するペプチドの競合阻害活性を調べることによりエピトープを限定する。多種のオリゴペプチドを得るための簡便な方法として、市販のキット(例えば、SPOTsキット(ジェノシス・バイオテクノロジーズ社製)、マルチピン合成法を用いた一連のマルチピン・ペプチド合成キット(カイロン社製)等)を利用することもできる。
又ハイブリドーマ等の抗体産生細胞からヒトモノクローナル抗体をコードする遺伝子をクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主(例えば哺乳類細胞細胞株、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞など)に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体を調製することもできる(P.J.Delves., ANTIBODY PRODUCTION ESSENTIAL TECHNIQUES., 1997 WILEY、P.Shepherd and C.Dean., Monoclonal Antibodies., 2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS, J.W.Goding., Monoclonal Antibodies:principles and practice., 1993 ACADEMIC PRESS)。
本発明は、本発明の抗体を産生するハイブリドーマが保有する抗体の遺伝子配列を含む核酸、特に後述の本発明のハイブリドーマの産生する抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のマチュア部分に対応する核酸も包含する。ここで、核酸にはDNA及びRNAが含まれる。また、本発明は本発明の抗体を産生するハイブリドーマが保有する抗体の遺伝子配列を含む核酸において、重鎖あるいは軽鎖の可変領域の部分のフレーム部分(FR1、FR2、FR3及びFR4:Sequences of proteins of immunological interest, NIH Publication No.91-3242を参照)の塩基の1個以上の塩基が置換、欠失および/または付加により配列が改変され、配列が改変される前の核酸に相補的な核酸とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、HLA-DRと結合し、(a)HLA-DR発現癌細胞を担持した非ヒト動物において延命効果を示し、かつ(b)L243と比べ免疫反応に対する抑制活性が弱い、からなる性質を有するか、あるいは、マウス抗HLA-DRモノクローナル抗体L243(ATCC HB-55)と比べてL243と同等か又はL243より強い免疫抑制活性を示す抗体をコードする核酸も包含する。ここで、抗体とは、イムノグロブリンを構成する重鎖可変領域及び重鎖定常領域、並びに軽鎖の可変領域及び軽鎖の定常領域を含む全ての領域が、イムノグロブリンをコードする遺伝子に由来するイムノグロブリンである。また、ストリンジェントな条件とは、本発明の抗体をコードするDNA配列と90%以上の相同性、好ましくは95%以上の相同性、より好ましくは97%以上の相同性が配列間に存在するときのみハイブリダイゼーションが起こることを意味する。通常、完全ハイブリッドの融解温度より約5℃〜約30℃、好ましくは約10℃〜約25℃低い温度でハイブリダイゼーションが起こる場合をいう。ストリンジェントな条件については、J.Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Mannual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載されており、ここに記載の条件を使用し得る。
ハイブリドーマからモノクローナル抗体をコードする遺伝子を調製するには、モノクローナル抗体のL鎖V領域、L鎖C領域、H鎖V領域及びH鎖C領域をそれぞれコードするDNAをPCR法等により調製する方法が採用される。プライマーは、抗HLA-DR抗体遺伝子又はアミノ酸配列から設計したオリゴDNAを、鋳型としてはハイブリドーマから調製したDNAを使用することができる。これらのDNAを1つの適当なベクターに組み込み、これを宿主に導入して発現させるか、あるいはこれらのDNAをそれぞれ適当なベクターに組み込み、共発現させる。
ベクターには、宿主微生物で自律的に増殖し得るファージ又はプラスミドが使用される。プラスミド DNAとしては、大腸菌、枯草菌又は酵母由来のプラスミドなどが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージが挙げられる。
形質転換に使用する宿主としては、目的の遺伝子を発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、細菌(大腸菌、枯草菌等)、酵母、動物細胞(COS細胞、CHO細胞等)、昆虫細胞が挙げられる。
宿主への遺伝子の導入方法は公知であり、任意の方法(例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等)が挙げられる。また、後述の動物に遺伝子を導入する方法としては、マイクロインジェクション法、ES細胞にエレクトロポレーションやリポフェクション法を使用して遺伝子を導入する方法、核移植法などが挙げられる。
本発明において、抗HLA-DR抗体は、形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより得ることができる。「培養物」とは、(a)培養上清、(b)培養細胞若しくは培養菌体又はその破砕物、(c)形質転換体の分泌物のいずれをも意味するものである。形質転換体を培養するには、使用する宿主に適した培地を用い、静置培養法、ローラーボトルによる培養法などが採用される。
培養後、目的タンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することにより抗体を採取する。また、目的抗体が菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。その後、タンパク質の単離精製に用いられる各種クロマトグラフィーを用いた一般的な生化学的方法を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中から目的の抗体を単離精製することができる。
さらに、トランスジェニック動物作製技術を用いて、目的抗体の遺伝子が内在性遺伝子に組み込まれた動物宿主、例えばトランスジェニックウシ、トランスジェニックヤギ、トランスジェニックヒツジ又はトランスジェニックブタを作製し、そのトランスジェニック動物から分泌されるミルク中からその抗体遺伝子に由来するモノクローナル抗体を大量に取得することも可能である(Wright, G., et al. (1991) Bio/Technology 9, 830-834)。ハイブリドーマをインビトロで培養する場合には、培養する細胞種の特性、試験研究の目的及び培養方法等の種々条件に合わせて、ハイブリドーマを増殖、維持及び保存させ、培養上清中にモノクローナル抗体を産生させるために用いられるような既知栄養培地、あるいは既知の基本培地から誘導調製されるあらゆる栄養培地を用いて実施することが可能である。
(9) 抗体の性質
本発明の抗体は下記のa)及びb)の機能的特性を有するもので、それぞれの特性は例えば各項目に記載の方法により確認することができる:
a) SCIDマウス等の免疫不全マウスにHLA-DRを発現しているヒト癌細胞を移植し、本発明の抗体を投与したときのマウス生存率を調べた結果、マウスの生存日数が延長する。
b) 同種異系リンパ球混合による免疫反応への抑制活性がL243と比べて弱い。また、a)及びb)の特性は詳細には、
(a)6週齢のSCIDマウスに抗アシアロGM1抗血清を10μl/マウス個体で静脈内投与し、抗アシアロGM1抗血清投与翌日にバーキットリンパ腫細胞Raji(ATCC CCL-86)を5×106/マウス個体で静脈内投与し、Raji投与5日後に投与量5〜50μg/kg体重、好ましくは5μg/kg体重で1回投与した場合のマウスの生存率が、ヒト抗HSA抗体を同量投与した場合の90日後の生存率よりも高いという性質;及び
(b)10% FCSを含むRPMI1640培地を用いて8〜200μg/mL、好ましくは8μg/mLに調製した抗体50μLと10% FCSを含むRPMI1640培地を用いて2×105個/mLに調製した第1のヒトドナー由来成熟樹状細胞浮遊液50μLとを96穴プレートのウェル中で混合し4℃で30分間放置し、次いで10% FCSを含むRPMI1640培地を用いて1×10個/mLに調製した前記第1のヒトドナーと組織適合抗原が異なる第2のヒトドナー由来の純度99%以上のT細胞浮遊液100μLを混合し、37℃、5%CO2存在下で5日間培養し、さらに3Hチミジンを1.0μCi/ウェルで添加して、さらに37℃、5%CO2存在下で16〜20時間培養した後、細胞へ取り込まれた3Hチミジンを回収し該3Hチミジンをシンチレーターで測定し、3Hチミジンの細胞への取り込みを指標として免疫抑制活性を測定した場合の免疫抑制活性が同濃度のマウス抗HLA-DRモノクローナル抗体L243(ATCC HB-55)を用いた場合の免疫抑制活性と比べて弱いという性質である。
このような抗体として、例えばハイブリドーマHD4(受託番号FERM BP-7771)の産生する抗体、ハイブリドーマHD8(受託番号FERM BP-7773)の産生する抗体及びハイブリドーマHD10(受託番号FERM BP-7774)の産生する抗体が挙げられる。
前記 a)の性質は前記抗体が強い抗腫瘍活性を有することを意味する。
さらに、本発明の抗体は、同種異系リンパ球混合による免疫反応への抑制活性がL243と同等又はそれ以上の免疫抑制活性を有する、という機能的特性を有するもである。この特性は詳細には、10% FCSを含むRPMI1640培地を用いて8〜200μg/mL、好ましくは8μg/mLに調製した抗体50μLと10% FCSを含むRPMI1640培地を用いて2×105個/mLに調製した第1のヒトドナー由来成熟樹状細胞浮遊液50μLとを96穴プレートのウェル中で混合し4℃で30分間放置し、次いで10% FCSを含むRPMI1640培地を用いて1×10個/mLに調製した前記第1のヒトドナーと組織適合抗原が異なる第2のヒトドナー由来の純度99%以上のT細胞浮遊液100μLを混合し、37℃、5%CO2存在下で5日間培養し、さらに3Hチミジンを1.0μCi/ウェルで添加して、さらに37℃、5%CO2存在下で16〜20時間培養した後、細胞へ取り込まれた3Hチミジンを回収し該3Hチミジンをシンチレーターで測定し、3Hチミジンの細胞への取り込みを指標として免疫抑制活性を測定した場合の免疫抑制活性が同濃度のマウス抗HLA-DRモノクローナル抗体L243(ATCC HB-55)を用いた場合の免疫抑制活性と比べて同等又は強いという特性である。このような抗体として、例えばハイブリドーマHD6(受託番号FERM BP-7772)の産生する抗体が挙げられる。
本発明の上記の活性を有する抗体は、悪性腫瘍に対する予防又は治療剤に含有させるための成分或いは免疫抑制剤に含有させるための成分として有用である。
本発明の抗体は、驚くべきことに、0.1μg/マウス個体(5μg/kg体重)という低用量でマウス担癌モデルにおける腫瘍細胞増殖による生存率の低下を顕著に抑制し、マウスモデルにおいて延命効果を示す。本発明の抗体と同時にコントロールとしてヒト抗ヒト血清アルブミン(HSA)抗体を投与した場合に本発明の抗体を投与したマウスの生存率がコントロールマウスの生存率に比べ有意に向上した場合、延命効果を示すと判断できる。例えば、本発明の抗体及び抗HSA抗体をリンパ腫細胞を移植したマウス担癌モデル5匹ずつに投与した場合に、抗HSA抗体投与マウス群が死に絶えた時点で、本発明抗体を投与したマウスが少なくとも1匹生存していれば、マウス担癌モデルにおいて延命効果を示すといえる。
免疫抑制効果は、上述のように同種異系リンパ球混合(MLR)による免疫反応への抑制活性をみることにより評価でき、MLRは公知の方法で行うことができる。
また、本発明の抗体が認識するHLA-DRのエピトープは公知の方法により決定することができる。例えば、HLA-DRのβ鎖(DRB1*15011)の細胞外領域199アミノ酸(配列番号147に示すアミノ酸配列のうち第29番目から第227番目の199アミノ酸、配列番号146には配列番号147に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列を示す)について、13-merペプチドを1アミノ酸ずつずらしてペプチドを作成し(例えば、配列番号52から145に示されるアミノ酸配列を有するペプチド)、反応性をみた場合、本発明の抗体は配列番号82に示されるアミノ酸配列を有するペプチドともっとも強力に結合し、又は配列番号82、83及び84で示される3種類のペプチドの少なくとも一つと強力に結合する抗体である。ここで、「強力に結合」するとは、実施例17(2)で示される方法においてバックグラウンドに比して10倍以上の蛍光強度を示す結合のことである。本発明の抗体はHLA-DRのβ鎖の61番目から71番目のペプチドに反応性を有する。さらに、HLA-DRには約350種類の多型があることが知られている(EMBL-EBIのIMGT/HLAデータベースなど参照)。本発明の抗体はこれらの多型の実質的にほぼすべてを認識し得る。ここで、多型の実質的にほぼ全てを認識し得ることは、約350種類の多型のほぼ全部を含むペプチド群を作製し、このペプチド群のほぼすべてと反応するかどうかを測定することにより決定することができる。例えば、配列番号24から39に示す16種類のペプチドの12種類以上と反応した場合、その抗体はHLA-DRの実質的にほぼすべての多型を認識する抗体である。本発明の抗体は配列番号24から39で示されるすべてのペプチドと有意に結合し、かつ配列番号40から43で示されるすべてのペプチドと有意に結合する。ここで、「有意に結合」するとは、実施例17(3)で示される方法においてバックグラウンドに比して10%以上の蛍光強度を示す結合のことである。
2.医薬組成物
本発明のヒト抗HLA-DR抗体の精製された製剤を含有する製剤もまた、本発明の範囲内に含まれる。このような製剤は、好ましくは、抗体に加えて、生理学的に許容され得る希釈剤又はキャリアを含んでおり、他の抗体又は抗生物質のような他の薬剤との混合物であってもよい。適切なキャリアには、生理的食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水グルコース液、及び緩衝生理食塩水が含まれるが、これらに限定されるものではない。或いは、抗体は凍結乾燥(フリーズドライ)し、必要とされるときに上記のような緩衝水溶液を添加することにより再構成して使用してもよい。かかる予防又は治療剤は、種々の形態で投与することができ、それらの投与形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与、又は、注射剤、点滴剤、坐薬等による非経口投与を挙げることができる。
その投与量は、症状、年齢、体重などによって異なるが、通常、経口投与では、成人に対して、1日約0.01mg乃至1000mgであり、これらを1回、又は数回に分けて投与することができる。また、非経口投与では、1回約0.01mg乃至1000mgを皮下注射、筋肉注射又は静脈注射によって投与することができる。
本発明の抗体又は医薬組成物は、HLA-DRを発現している細胞に起因する可能性を有する種々の疾患又は症状の治療又は予防への適用が可能である。その疾患又は症状としては、各種悪性腫瘍、臓器移植時における免疫抑制剤(膵島移植や腎臓などの移植時における拒絶反応、GVHDの予防又は治療剤)として、あるいは自己免疫疾患(例えば、リウマチ、動脈硬化治療薬、多発性硬化症、全身性エリトマトーデス、特発性血小板減少症、クローン病など)治療剤、喘息などアレルギー治療剤が挙げられる。
例えば、下記のa)及びb)の機能的特性を有する本発明の抗体及び該抗体を含む医薬組成物は、各種悪性腫瘍の予防又は治療に用い得る。
a) SCIDマウス等の免疫不全マウスにHLA-DRを発現しているヒト癌細胞を移植し、本発明の抗体を投与したときのマウス生存率を調べた結果、マウスの生存日数が延長する。
b) 同種異系リンパ球混合による免疫反応への抑制活性がL243と比べて弱い。
また、同種異系リンパ球混合による免疫反応への抑制活性がL243と同等又はそれ以上の免疫抑制活性を有する本発明の抗体及び該抗体を含む医薬組成物は、リウマチ、移植片対宿主疾患(GvHD)の予防又は治療に用い得る。
本発明は、本発明の抗体又は医薬組成物を用いた上記疾患の予防又は治療法をも包含し、さらに本発明は本発明の抗体の上記疾患の予防又は治療剤の製造への使用をも包含する。
腫瘍の種類は、白血病(慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病を含む)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、T細胞系リンパ腫、B細胞系リンパ腫、バーキットリンパ腫、悪性リンパ腫、びまん性リンパ腫、濾胞性リンパ腫を含む)、骨髄腫(多発性骨髄腫を含む)、乳癌、大腸癌、腎臓癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、食道癌、肝臓癌、頭頚部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、きょう膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、甲状肉腫及びウィルムス腫瘍であり、本発明の抗体を適用する際の腫瘍は1種類に限られず、複数種類の腫瘍が併発したものでもよい。
3.製剤例
本発明の分子は、水又はそれ以外の薬理学的に許容し得る溶液に溶解した無菌性溶液又は懸濁液のアンプルとして使用に供される。また、無菌粉末製剤(本発明の分子を凍結乾燥するのが好ましい)をアンプルに充填しておき、使用時に薬理学的に許容し得る溶液で希釈してもよい。
以下、実施例を以て本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がその実施例に記載される態様のみに限定されるものではない。
実施例1 抗原の調製
ヒトHLA-DRが細胞膜上に過剰発現している細胞を得るため、ヒトHLA-DRα鎖及びβ鎖全長アミノ酸の発現プラスミドベクターを作製した。HLA-DRα鎖及びβ鎖をコードするDNAは、PCR法により作製した。
a)全長ヒトHLA-DRα鎖及びβ鎖発現ベクターの調製
鋳型PCRを行うにあたり、鋳型として用いたのは、ヒトHLA-DRα鎖及びβ鎖をコードするcDNAを保持するプラスミドベクターpEF-neo-HLA-DRα及びpEF-neo-HLA-DRβである。pEF-neo-HLA-DRα及びpEF-neo-HLA-DRβは以下の方法で作製された。完全長ヒトHLA-DRα鎖DNA及びHLA-DRβ鎖DNAを、その5’末端にEcoRI配列を、その3’末端にNotI配列と終止コドンを付加する為のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い修飾した。ヒト末梢血単核球由来cDNAを鋳型として、HLA-DRαについてはプライマーとして:5'-CCGGAATTCCCACCATGGCCATAAGTGGAGTCCCTGTG -3'(配列番号1)及び5'- AAAGCGGCCGCTCATTACAGAGGCCCCCTGCGTTCTGC -3'(配列番号2)を、HLA-DRβについてはプライマーとして:5'-CCGGAATTCCTGGTCCTGTCCTGTTCTCCAGCA-3'(配列番号3)及び5'- AAAGCGGCCGCTCATCAGCTCAGGAATCCTGTTGGCTG -3'(配列番号4)を合成し、LA-TaqDNAポリメラーゼ(ギブコ・ビーアールエル社製)を使用して、(94℃、15秒;55℃、30秒;72℃、60秒間)×30サイクルのPCR反応を行った。合成された配列を、EcoRI-NotI断片として単離し、同一酵素で解裂されていたpEF-neoベクター(改変pEF-BOS[Mizushima S. & Nagata S., Nucleic Acids Res (1990), 18, 5332参照]にneomycin耐性遺伝子を組み込んだベクター)に連結した。得られたプラスミドをpEF-neo-HLA-DRα及びpEF-neo-HLA-DRβと命名した。pEF-neo-HLA-DRαに組み込まれたHLA-DRαは、765bpのcDNAがコードされ、pEF-neo-HLA-DRβに組み込まれたHLA-DRβは、801bpのcDNAがコードされている。以下、実施例中のすべてのPCRの反応温度調節は、ジーンアンプPCRシステム9700;(株)パーキンエルマー・ジャパン社製を使用した。
b)ヒトHLA-DR発現細胞の作製
a)で作製したpEF-neo-HLA-DRα及びpEF-neo-HLA-DRβを、LipofectAMINE Plus(ギブコ・ビーアールエル社製)を用いて、L929細胞(American Type Culture Collection (ATCC) No.CCL-1)に導入した。遺伝子導入はマニュアルの方法にて行った。細胞培養用フラスコ(培養面積75cm2)中で37℃、5.0%炭酸ガス下で24時間培養した後、G418(ギブコ・ビーアールエル社製)を1mg/mLになるように加え、1週間培養した。次いで、R-phycoerythrin標識したマウス抗ヒトHLA-DR抗体(BDファーミンジェン社製)を用いたフローサイトメーター(FCM:ベクトンディキンソン社製)解析を行い、遺伝子導入された細胞でG418耐性の形質を獲得したもののうち、細胞膜表面上にHLA-DRを発現している細胞を選択的にソーティングした。
PCR用プライマー等のオリゴヌクレオチドの合成は、全てDNA自動合成機(モデル3948;(株)パーキンエルマー・ジャパン・アプライドバイオシステムズ事業部製)を用いて、そのマニュアルに従って行った[Matteucci,M.D. and Caruthers,M.H.(1981) J.Am.Chem.Soc.103,3185-3191 参照]。各オリゴヌクレオチドは合成終了後、支持体から開裂させ脱保護を行い、得られた溶液を乾固した後蒸留水に溶解し、使用するまで-20℃で凍結保存した。
実施例2 ヒト抗体産生マウスの作製
免疫に用いたマウスは、内因性Ig重鎖及びκ軽鎖破壊の両者についてホモ接合体の遺伝的背景を有しており、かつ、ヒトIg重鎖遺伝子座を含む14番染色体断片
(SC20)及びヒトIgκ鎖トランスジーン(KCo5)を同時に保持する。このマウスはヒトIg重鎖遺伝子座を持つ系統Aのマウスと、ヒトIgκ鎖トランスジーンを持つ系統Bのマウスとの交配により作製された。系統Aは、内因性Ig重鎖及びκ軽鎖破壊の両者についてホモ接合体であり、子孫伝達可能な14番染色体断片 (SC20)を保持するマウス系統であり、例えば富塚らの報告[Tomizuka. et al., Proc Natl Acad Sci USA., 2000 Vol97:722]に記載されている。また、系統Bは内因性Ig重鎖及びκ軽鎖破壊の両者についてホモ接合体であり、ヒトIgκ鎖トランスジーン(KCo5)を保持するマウス系統(トランスジェニックマウス)であり、例えばFishwildらの報告[Nat Biotechnol, (1996),l14:845]に記載されている。
系統Aの雄マウスと系統Bの雌マウス、あるいは系統Aの雌マウスと系統Bの雄マウスの交配により得られた、血清中にヒトIg重鎖及びκ軽鎖が同時に検出される個体[Ishida&Lonberg, IBC's 11th Antibody Engineering, Abstract 2000]を、以下の免疫実験に用いた。なお、前記ヒト抗体産生マウス(KMマウスと称する)は、契約を結ぶことによって、キリンビール株式会社より入手可能である。
実施例3 ヒトHLA-DRに対するヒトモノクローナル抗体の調製
本実施例におけるモノクローナル抗体の作製は、単クローン抗体実験操作入門(安東民衛ら著作、講談社発行 1991)等に記載されるような一般的方法に従って調製した。免疫原としてのヒトHLA-DRは、実施例1で調製したHLA-DR発現L929細胞を用いた。被免疫動物は、実施例2で作製したヒト免疫グロブリンを産生するヒト抗体産生マウスを用いた。
ヒトHLA-DRに対するヒトモノクローナル抗体の調製を目的として、ヒト抗体産生マウスに、実施例1で作製したHLA-DR発現L929細胞(5×106細胞/匹)を腹腔内に初回免疫した。初回免疫から以降、同細胞を2、4、8週間後に免疫した。以下に述べる脾臓及びリンパ節の取得3日前に、1×106細胞/マウス個体の細胞を尾静脈投与及び5ng/マウス個体のRecombinant Human IL-6(以下、IL-6、キリンビール社医薬探索研究所にて調製)を皮下投与した。
免疫されたマウスから脾臓及び/又はリンパ節を外科的に取得し、350mg/mL 炭酸水素ナトリウム、50単位/mL ペニシリン、50μg/mL ストレプトマイシンを含む無血清DMEM培地(ギブコ・ビーアールエル社製)(以下「無血清DMEM培地」という)10mL中に入れ、メッシュ(セルストレイナー:ファルコン社製)上でスパーテルを用いてつぶした。メッシュを通過した細胞懸濁液を遠心して細胞を沈澱させた後、この細胞を無血清DMEM培地で2回洗浄してから、無血清DMEM培地に懸濁して細胞数を測定した。一方、10% FCS(シグマ社製)を含むDMEM培地(ギブコ・ビーアールエル社製)(以下「血清入りDMEM培地」という)にて、37℃、5%炭酸ガス存在下で細胞濃度が1×106細胞/mLを越えないように培養したミエローマ細胞 SP2/0(ATCC No.CRL-1581)を同様に無血清DMEM培地で洗浄し、無血清DMEM培地に懸濁して細胞数を測定した。回収した細胞の懸濁液とマウスミエローマ懸濁液とを細胞数5:1で混合し、遠心後、上清を完全に除去した。このぺレットに、融合剤として50%(w/v) ポリエチレングリコール1500(ベーリンガーマンハイム社製)1mLを、ピペットの先でぺレットを撹拌しながらゆっくり添加した後、予め37℃に加温しておいた無血清DMEM培地1mLを2回に分けてゆっくり添加し、さらに7mLの無血清DMEM培地を添加した。遠心後、上清を除去して得られた融合細胞を、以下に記載する限界希釈法によるスクリーニングに供した。ハイブリドーマの選択は、10%FCS、IL-6(10ng/mL)及びヒポキサンチン(H)、アミノプテリン(A)、チミジン(T)(以下「HAT」という。:シグマ社製)を含有するDMEM培地中で培養することにより行った。さらに、HT(シグマ社製)、10%FCS、IL-6含有DMEM培地を用いて限界希釈法によりシングルクローンにした。培養は、96穴マイクロタイタープレート(ベクトンディッキンソン社製)中で行った。抗ヒトHLA-DRヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンの選択(スクリーニング)及び各々のハイブリドーマが産生するヒトモノクローナル抗体の特徴付けは、後述する酵素標識免疫吸着アッセイ(ELISA)及びFCMにより測定することにより行った。
ヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングは、実施例4及び5に述べるCell ELISAにより、ヒト免疫グロブリンγ鎖(hIgγ)及びヒト免疫グロブリン軽鎖κを有し、かつヒトHLA-DRに特異的な反応性を有するヒトモノクローナル抗体を産生する多数のハイブリドーマを得た。
実施例4 ヒト免疫グロブリン軽鎖κ(Igκ)を有する、ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体産生クローンの選択
バーキットリンパ腫細胞Daudi(ATCC No. CCL-213)を各ウェルに1×105個加えた後、ハイブリドーマ上清を加え、4℃で20分間インキュベートした。次いで、1%FCS入りのPBSで2回洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識されたヤギ抗ヒト免疫グロブリン軽鎖κ(Igκ)抗体(50μg/ウェル:DAKO社製)を加え、4℃で20分間インキュベートした。1%FCS入りPBSで2回洗浄し、TMB発色基質(DAKO社製)を各ウェルに100μLずつ加え、室温下で20分間インキュベートした。各ウェルに0.5M硫酸(100μL/ウェル)を加え、反応を止めた。波長450nm(参照波長570nm)での吸光度をマイクロプレートリーダー(1420 ARVO マルチラベルカウンター:WALLAC社製)で測定して陽性反応を示した抗体産生クローンを選択した。
実施例5 各モノクローナル抗体のサブクラス同定
Daudiを各ウェルに1×105個加えた後、ハイブリドーマ上清を加え、4℃で20分間インキュベートした。次いで、1%FCS入りのPBSで2回洗浄し、各ウェルにそれぞれ西洋ワサビペルオキシダーゼで標識されたヒツジ抗ヒトIgG1抗体、ヒツジ抗ヒトIgG2抗体、ヒツジ抗ヒトIgG3抗体又はヒツジ抗ヒトIgG4抗体(各2000倍希釈、50μL/ウェル、The Binding Site社製)を加え、室温下で1時間インキュベートした。1%FCS入りPBSで3回洗浄後、基質緩衝液(TMB、100μL/ウェル、DAKO社製)を各ウェルに加え、室温下で20分間インキュベートした。次いで、0.5M硫酸(100μL/ウェル)を加え、反応を止めた。波長450nm(参照波長570nm)での吸光度をマイクロプレートリーダー(1420 ARVO マルチラベルカウンター:WALLAC社製)で測定し、各クローンのサブクラスを決定した。どのサブクラスにも陽性反応のなかったクローンについては、IgGではないため選択から除外した。
結果のうち最終的に選択したクローンのみの結果を表1に示す。
Figure 2005325133
実施例6 正常ヒト単核球及び正常ヒト樹状細胞の取得方法
最初に正常ヒト末梢血由来単核球をFicoll(Ficoll-PaquePLUS: Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて定法に従って調製した。抗凝固剤としてクエン酸ナトリウム液を含んだ採血バッグ(テルモ社製)に採取した正常ヒト血液を遠心分離(600G、室温、5分)し、細胞分画と血漿を分離した。細胞分画をPBSで希釈してFicollに重層し、比重遠心(400G、室温、30分間)により単核細胞を分離した。中間層を単核球として抽出してPBSで2回洗浄したのち、さらにPBSで希釈して100Gで10分間遠心分離し、上清中に残留した血小板を除去した。以上の方法で正常ヒト末梢血由来単核球(PBMC)を取得した。
次に、取得したPBMCを磁気ビーズ付CD14抗体(ミルテニバイオテック(MB)社製)で30分間4℃で反応させ、MACS分離カラム(MB社製)を通してCD14陽性細胞のポジティブセレクションを行った。MACS分離カラムの使用方法は説明書に習って行った。得られたCD14陽性細胞をGM-CSF(最終濃度50ng/mL:キリンビール社医薬探索研究所にて調製)及びインターロイキン4(最終濃度200ng/mL:ジェンザイム社製)を含む10%FCS含有RPMI培地で5日から8日培養した。さらにその後、リポポリサッカライド(LPS:最終濃度40ng/mL:ディフコ社製)を添加して1晩培養し、成熟樹状細胞(成熟DC)として使用した。
実施例7 同種異系リンパ球混合による免疫反応に対する抑制活性
主要組織適合抗原(MHC)の異なる同種異系の移植においては、T細胞が非自己(組織不適合)のMHC分子複合体(アロ抗原)を認識することで活性化し拒絶反応を引き起こす。ヒトのMHCはHLA(human leukocyte antigen)と呼ばれ、HLA-A, B, Cの属するクラスI抗原と、HLA-DP, DQ, DRの属するクラスII抗原があり、さらにそれぞれの分子が多型性を有するため、ヒトのHLAの組み合せは数千通り可能となり、他人の間では組織不適合になる可能性がきわめて高くなっている。同種異系リンパ球混合培養は、組織適合抗原の異なる(以下便宜上ドナーA、ドナーBという)リンパ球を混合培養することで、アロ抗原に反応するT細胞の増殖をin vitroにおいて調べる試験である。
そこで、実施例4乃至5から選択されたハイブリドーマの培養上清を用いて同種異系リンパ球混合による免疫反応に対する抑制活性を測定した。実験例6記載の方法で正常ヒト末梢血単核球を取得した。ドナーA単核球はマイトマイシンCを含むRPMI1640培地(25μg/mL、37℃、30分)と反応させて細胞増殖を抑え、反応後3回以上RPMI1640培地で洗浄し、1×106/mLになるようにRPMI1640培地に懸濁した。ドナーB単核球は1×105個/ウェルになるように96穴プレートに分注し、遠心分離して培地を除いた後、培養上清を100μL/ウェルで添加し、4℃下で30分放置した。
次に、ドナーA単核球を100μL/ウェルでドナーBと培養上清が入った96穴プレートに分注し、37℃、4日間、5% CO2存在下で培養した後、3Hチミジン(Amersham Pharmacia Biotech社製)を1.0μCi/ウェルとなるように添加して、さらに37℃、16〜20時間、5% CO2存在下で培養した。Micro96 Harvester(SKATRON社製)を用いて細胞に取り込まれた3Hチミジンをグラスフィルターマット(Printed Filtermat:Wallac社製)に回収し、乾燥後シンチレーター(Betap;Scint:Wallac社製)によく浸し、パッケージング後、β線量を液体シンチレーションカウンター(1205BETAPLATE:Wallac社製)で活性測定した。
その結果、選抜した抗ヒトHLA-DR抗体の性質を表1に示す。それらのうち、HD8、HD10、HD4及びHD6は、平成13年(2001年)10月11日付けで独立行政法人産業技術総合研究所(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に国際寄託した。受託番号は、HD8はFERM BP-7773、HD10はFERM BP-7774、HD4はFERM BP-7771、HD6はFERM BP-7772である。
実施例8 各抗体の調製
実施例4乃至5から得られたハイブリドーマの培養上清からのヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体の精製は以下の方法で行った。ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体を含む培養上清をrmp Protein A(アマシャムファルマシアバイオテク社製)及び0.8×40cm カラム(バイオラッド社製)を用い、吸着緩衝液としてPBS、溶出緩衝液として0.02M グリシン緩衝液(pH 3)を用いてアフィニティー精製した。溶出画分は1M Tris (pH 9.0)を添加してpH7.2付近に調整した。調製された抗体溶液は、透析膜(10000カット、Spectrum Laboratories社製)を用いてPBSに置換し、孔径0.22μm のメンブランフィルターMILLEX-GV (ミリポア社製)でろ過滅菌し、精製ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体を得た。精製抗体の濃度は280nmの吸光度を測定し、1mg/mL を1.4 ODとして算出した。
ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体を含む培養上清の調製は以下の方法にて行った。まずヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを10ng/ml IL-6、10% Fetal Calf Serum(FCS:SIGMA社製)含有eRDF培地(極東製薬社製)に馴化した。次に、その一部を抗体精製を目的として、ウシインシュリン(5μg/mL、ギブコ・ビーアールエル社製)、ヒトトランスフェリン(5μg/mL、ギブコ・ビーアールエル社製)、エタノールアミン(0.01mM、シグマ社製)、亜セレン酸ナトリウム(2.5×10-5mM、シグマ社製)、1% Low IgG FCS(HyClone社製)含有eRDF培地(極東製薬社製)に馴化した。この馴化したハイブリドーマを凍結保存した。フラスコにて培養し、ハイブリドーマの生細胞率が90%になった時点で培養上清を回収した。回収した上清は、10μm と0.2μmのフィルター(ゲルマンサイエンス社製)に供し、ハイブリドーマ等の雑排物を除去した。
実施例9 精製ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体による同種異系リンパ球混合による免疫反応に対する抑制活性
同種異系リンパ球混合培養は、組織適合抗原の異なる(以下便宜上ドナーA、ドナーBという)リンパ球を混合培養することで、アロ抗原に反応するT細胞の増殖をin vitroにおいて調べる試験であるが、さらに、ドナーAの末梢血からin vitroで誘導した単球由来の成熟樹状細胞(DC)とドナーBの末梢血から分離したT細胞のみを混合培養することで、貪食細胞などによる抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を除外した条件下で同様のアロ抗原に対するT細胞の反応性を調べることができる。そこで、抗HLA-DRモノクローナル抗体の存在下で同種異系のDCとT細胞を用いた混合培養を行い、T細胞のアロ抗原反応性に対する抗HLA-DRモノクローナル抗体の作用を調べた。具体的には、丸底96ウェルプレート(Falcon社製)にドナーAの成熟DCを2×105個/mLになるように10% FCSを含むRPMI 1640培地(RPMI-10% FCS)に浮遊させた。抗HLA-DRモノクローナル抗体、陰性コントロールとしてヒトポリクローナルIgG(hIgG)及び陽性コントロールとしてマウス抗HLA-DRモノクローナル抗体L243(ATCC HB-55)は、200、40、8μg/mLになるようにRPMI-10% FCSで希釈した。また、ドナーBの末梢血より分離した純度99%以上のT細胞を1×106個/mLとなるようにRPMI-10% FCSに浮遊させた。最初に、ドナーA由来の成熟DCと抗HLA-DRモノクローナル抗体を各50μLずつ96穴プレート上で混合し、4℃で30分放置した。次に、ドナーB由来のT細胞100μLを混合し、37℃、5日間、5% CO2存在下で培養した後、3Hチミジン(Amersham Pharmacia Biotech社製)を1.0μCi/ウェルとなるように添加して、さらに37℃、16〜20時間、5% CO2存在下で培養した。Micro96 Harvester(SKATRON社製)を用いて細胞に取り込まれた3Hチミジンをグラスフィルターマット(Printed Filtermat:Wallac社製)に回収し、乾燥後シンチレーター(Betap; Scint:Wallac社製)によく浸し、パッケージング後、β線量を液体シンチレーションカウンター(1205BETAPLATE:Wallac社製)で活性測定した。
その結果を図1に示す。HD4、HD6、HD8、HD10はhIgG群と比較して用量依存的な免疫抑制活性を示したが、HD8、HD4及びHD10はL243と比して弱く、HD6は陽性コントロール抗体のL243と同等又はそれ以上の抑制活性を示した。
以上より、HD8、HD4及びHD10は免疫抑制活性の弱い抗体として、またHD6は免疫抑制剤としての可能性が示唆された。
実施例10 HLA-DR発現細胞に対する各モノクローナル抗体の反応試験
実施例1で作成したHLA-DR発現L929細胞に対する、実施例3で取得した精製各モノクローナル抗体の反応性の検討を、FCM解析で行った。2×107/mLの濃度で、L929細胞及びHLA-DR発現L929細胞を、0.1%アジ化ナトリウム及び1%牛胎児血清含有したPBS(Staining Medium、以下SM)に浮遊させ、96穴丸底プレートに100ml/ウェルで分注した。遠心分離(600G、4℃、2分)した後、上清を除去し、実施例3で培養したハイブリドーマの培養上清(50μl)を加えて撹拌した後、氷温下30分間静置してから、遠心分離(600G、4℃、2分)して上清を除去した。ペレットを100μl/ウェルのSMで2回洗浄した後、0.0125mg/mLのRPE蛍光標識ウサギ抗ヒトIgκ F(ab')2抗体(DAKO社製)30μLを加え、氷温下30分間インキュベートした。SMで2回洗浄した後、SMに懸濁し、FCMで各細胞の蛍光強度を測定した。
その結果は前述の表1に示す。いずれの抗体もHLA-DR発現L929細胞にのみ強い結合活性を有し、L929細胞への結合活性は認められなかったことから、HLA-DRと特異的に結合する抗体であることが判明した。
実施例11 マウス担癌モデルに対する精製ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体の効果
実施例8から得られた精製ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体の効果を、以下に記載する方法に従ってマウス担癌モデルを用いて検討した。
まず5週令のC.B-17/ICR-SCIDマウス(日本クレア(株)社製)を購入し、6週齢時に抗アシアロGM1抗血清(和光化学社製)を10μL/マウス個体で希釈して静脈内投与した。翌日、バーキットリンパ腫細胞Raji(ATCC CCL-86)を5×106/マウス個体で静脈内投与した。Raji移植より5日後、マウスの尾静脈内に精製ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体を0.1、1μg/マウス個体の用量で1回投与した。抗体の陰性コントロールとして、同量のヒト抗HSA抗体を使用した。移植後の生存率を約3ヶ月間以上観察した。
以上の実験の結果を図2に示す。精製ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体を0.1μg/マウス個体で投与した群では、90日後の生存数が1群あたり5匹中、HD8は3匹、HD10及びHD4は1匹であった(図2B)。一方、1.0μg/マウス個体で投与した群では、生存数が1群あたり5匹中、HD8は3匹、HD10は5匹、HD4は2匹であった(図2A)。陰性コントロールである抗HSA抗体投与群では、Raji移植後60日以内に全例死亡した。
抗体投与時のマウス体重は約20gであることから、0.1及び1μg/マウス個体は5及び50μg/kg体重になり、HD8は非常に低用量で抗腫瘍効果を発揮することが判明した。さらに実施例9の結果を総合すると、HD8は免疫抑制活性の弱く且つ抗腫瘍活性の強い抗体であり、副作用の少ない抗癌剤としての可能性が示唆された。
実施例12 モノクローナル抗体をコードする遺伝子の調製及び組換え抗体発現ベクターの構築
(1)HD4、HD8抗体遺伝子のcDNAクローニングと発現ベクター作製
ハイブリドーマHD4、HD8を10ng/mL IL-6(R&D Systems社製)、10% Fetal Bovine Serum(SIGMA社製)含有eRDF培地(極東製薬社製)で培養し、遠心分離により細胞を集めた後TRIZOL(ギブコビーアールエル社製)を添加し、取扱説明書にしたがってTotal RNAを抽出した。抗体cDNAの可変領域のクローニングは、SMART RACE cDNA amplification Kit(クローンテック社製)を用い、添付の説明書にしたがって行った。
5μgのtotal RNAを鋳型として、1st strand cDNAを作製した。
1)1st strand cDNA の合成
Total RNA 5μg/3μL
5’CDS 1μL
SMART oligo 1μL
上記組成の反応液を70℃で2分間インキュベートした後、
5×Buffer 2μL
DTT 1μL
DNTP mix 1μL
Superscript II 1μL
を加え42℃で1.5時間インキュベートした。
さらに、100μLのTricine Bufferを加えた後、72℃で7分間インキュベートし、1st strand cDNAを取得した。
2)PCRによる重鎖遺伝子、軽鎖遺伝子の増幅及び組換え抗体発現ベクターの構築
cDNAの増幅には、Takara社のZ-Taqを用いた。
cDNA 2μL
10xZ-Taq Buffer 5μL
dNTP mix 4μL
Z-Taq 1μL
プライマー1
プライマー2
上記組成の反応液を再蒸留水にて最終容量50μLとし、PCRに供した。
重鎖の増幅には、UMP(SMART RACE cDNA amplification Kit;クローンテック社製)とhh-6プライマー(5’-GGT CCG GGA GAT CAT GAG GGT GTC CTT-3’)(配列番号5)を用い、98℃1秒、68℃30秒のサイクルを30回繰り返した。さらに、この反応液1μLを鋳型とし、NUMP(SMART RACE cDNA amplification Kit;クローンテック社製)とhh-3 プライマー(5’-GTG CAC GCC GCT GGT CAG GGC GCC TG-3’)(配列番号6)を用いて、98℃1秒、68℃30秒のサイクルを20回繰り返した。この後、増幅したPCR産物をPCR purification kit(キアゲン社製)により精製し,hh-4(5’-GGT GCC AGG GGG AAG ACC GAT GG-3’)(配列番号7)をプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、HD4重鎖特異的プライマーtnHD4Sal(5’-ata tgt cga cCC AGC CCT GGG ATT TTC AGG TGT TTT C-3’)(配列番号8)と、HD8重鎖特異的プライマーtnHD8Sal(5’-ata tgt cga cTGG CTG ACC AGG GCA GTC ACC AGA G-3’)(配列番号9)を合成し、このプライマーを用いて反対方向からも配列を決定した。特異的プライマーとtnCHNhe(5’-gat ggg ccc ttg gtg cta gct gag gag acg g-3’)(配列番号10)を用いてPCRを行い(98℃1秒、60℃30秒、72℃30秒)、重鎖増幅cDNA断片をSalI、NheIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val Larkベクター(IDEC Pharmaceuticals, N5KG1(US patent 6001358)の改変ベクター)、に導入した。挿入された配列がdirect sequenceによって決定されたものと同一であることを、ベクターを鋳型として配列を決定することにより確認した。
軽鎖は、UMP(SMART RACE cDNA amplification Kit;クローンテック社製)とhk-2(5’-GTT GAA GCT CTT TGT GAC GGG CGA GC -3’)(配列番号11)プライマーを使って、98℃1秒、68℃30秒のサイクルを30回繰り返して増幅した。さらに、この反応液1μLを鋳型とし、NUMP(SMART RACE cDNA amplification Kit;クローンテック社製)とhk-6(5’-TGGC GGG AAG ATG AAG ACA GAT GGT G-3’)(配列番号12)を用いて、98℃1秒、68℃30秒のサイクルを20回繰り返した。この後、増幅したPCR産物をPCR purification kit(キアゲン社製)により精製し、hk-6プライマー(配列番号12)を用いて塩基配列を決定した。配列情報を基に、HD4軽鎖特異的プライマーtnHD4Bgl (5’-ata tag atc tGC TGC TCA GTT AGG ACC CAG AGG GAA CC-3’) (配列番号13)とHD8軽鎖特異的プライマーtnHD8Bgl (5’-ata tag atc tGG GAG TCA GAC CCA CTC AGG ACA CAG C-3’) (配列番号14)を合成し、このプライマーを用いて、反対方向からも配列を決定した。特異的プライマーとtnCkBsi(5’-aag aca gat ggt gca gcc acc gta cgt ttg at-3’)(配列番号15)を用いてPCRを行い(98℃1秒、60℃30秒、72℃30秒)、軽鎖増幅cDNA断片をBglII、BsiWIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val Larkベクターに導入した。挿入された配列がdirect sequenceによって決定されたものと同一であることを、ベクターを鋳型として配列を決定することにより確認した。
HD4の重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域をコードするDNA並びに重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列をそれぞれ以下に示す。
<HD4 重鎖可変領域>(配列番号16)
GTCGACCCAGCCCTGGGATTTTCAGGTGTTTTCAGGTGTTTTCATTTGGTGATCAGGACTGAACAGAGAGAACTCACCATGGAGTTTGGGCTGAGCTGGCTTTTTCTTGTGGCTATTTTAAAAGGTGTCCAGTGTGAGGTGCAACTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTTAGCAGCTATGCCATGACCTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCAGGTATTAGTGGTGGTGGTGATAGCACATACTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCCGTATATTACTGTGCGAGAGATCATGGTTCGGGGAGTTATTATCCCTACTGGTTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCAGCTAGC
<HD4 重鎖可変領域>(配列番号17)
MEFGLSWLFLVAILKGVQCEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMTWVRQAPGKGLEWVSGISGGGDSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDHGSGSYYPYWFDYWGQGTLVTVSSA
<HD4 軽鎖可変領域>(配列番号18)
AGATCTGCTGCTCAGTTAGGACCCAGAGGGAACCATGGAAACCCCAGCGCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAACTTGTGTTGACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCCGCTACTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGTGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTTGCAGTGTATTACTGTCAGCAGTATGGTAGCTCACCGCTCACTTTCGGCGGAGGGACCAAGGTGGAGATCAAACGTACG
<HD4 軽鎖可変領域>(配列番号19)
METPAQLLFLLLLWLPDTTGELVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSRYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPLTFGGGTKVEIKRT
重鎖DNAの翻訳開始点は、配列番号16の5'末端から79番目のアデニン(A)からはじまるATGコドンであり、抗体可変領域と定常領域の境界は5'末端から504番目のアデニン(A)と505番目のグアニン(G)間に位置する。アミノ酸配列において、重鎖可変領域は配列番号17のN末端から142番目のセリン(S)残基までであり、143番目のアラニン(A)以降が定常領域である。精製された重鎖蛋白質のN末端分析により、重鎖のシグナル配列は配列番号17のN末端より19番目のシステイン(C)までであり、成熟体のN末端は配列番号17の20番目のグルタミン酸(E)であることが明らかとなった。従って、配列番号17のアミノ酸配列中マチュア部分は20番目のグルタミン酸から142番目のセリンまでの部分である。
軽鎖DNAの翻訳開始点は、配列番号18の5'末端から35番目のAからはじまるATGコドンであり、可変領域は5'末端から418番目のアデニン(A)までである。アミノ酸配列において、可変領域は配列番号19のN末端から128番目のリジン(K)までである。精製された軽鎖蛋白質のN末端分析により、軽鎖のシグナル配列は配列番号19のN末端より20番目のグリシン(G)までであり、成熟体のN末端は配列番号19の21番目のグルタミン酸(E)であることが明らかとなった。従って、配列番号19のアミノ酸配列中、マチュア部分は21番目のグルタミン酸から128番目のリジンまでの部分である。
HD8重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域をコードするDNA並びに重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列をそれぞれ以下に示す。
<HD8 重鎖可変領域>(配列番号20)
GTCGACTGGCTGACCAGGGCAGTCACCAGAGCTCCAGACAATGTCTGTCTCCTTCCTCATCTTCCTGCCCGTGCTGGGCCTCCCATGGGGTGTCCTGTCACAGGTTCAGCTGCAGCACTCAGGTCCAGGACTGGTGAAGCCCTCGCAGACCCTCTCACTCACCTGTGCCATCTCCGGGGACAGTGTCTCTAGCAACAGTGCTTCTTGGAACTGGATCAGGCAGTCCCCATCGAGGGGCCTTGAGTGGCTGGGAAGGACATACTACAGGTCCAAGTGGTATAATGATTATGCAGTATCTGTGAAAAGTCGAATAGTCATCAACCCAGACACATCCAAGAACCAGTTCTCCCTGCAGCTGAACTCTGTGACTCCCGAGGACACGGCTGTGTATTACTGTGCGAGAGAAAATTTCTATGGTTCGGAGACTTGTCATAAGAAGTATTACTGCTACGGTATGGACGTCTGGGGCCAAGGGACCACGGTCACCGTCTCCTCAGCTAGC
<HD8 重鎖可変領域>(配列番号21)
MSVSFLIFLPVLGLPWGVLSQVQLQHSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNSASWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAVSVKSRIVINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARENFYGSETCHKKYYCYGMDVWGQGTTVTVSSAS
<HD8 軽鎖可変領域>(配列番号22)
AGATCTGGGAGTCAGACCCACTCAGGACACAGCATGGACATGAGGGTCCCCGCTCAGCTCCTGGGGCTTCTGCTGCTCTGGCTCCCAGGTGCCAGATGTGCCATCCAGTTGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCCGGGCAAGTCAGGGCATTAGCAGTGCTTTAGCCTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCTCCTAAACTCCTGATCTATGATGCCTCCAGTTTGGAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGCGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTGCAGCCTGAAGATTTTGCAACTTATTACTGTCAACAGTTTAATAGTTTCCCGCTCACTTTCGGCGGAGGGACCAAGGTGGAGATCAAACGTACG
<HD8 軽鎖可変領域>(配列番号23)
MDMRVPAQLLGLLLLWLPGARCAIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSALAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQFNSFPLTFGGGTKVEIKRTV
重鎖DNAの翻訳開始点は、配列番号20の5'末端から41番目のアデニン(A)からはじまるATGコドンであり、抗体可変領域と定常領域の境界は5'末端から496番目のアデニン(A)と497番目のグアニン(G)間に位置する。アミノ酸配列において、重鎖可変領域は配列番号21のN末端から152番目のセリン(S)残基までであり、153番目のアラニン(A)以降が定常領域である。精製された重鎖蛋白質のN末端分析により、重鎖のシグナル配列は配列番号21のN末端より20番目のセリン(S)までであり、成熟体のN末端は配列番号21の21番目のグルタミン(Q)であることが明らかとなった。従って、配列番号21のアミノ酸配列中、マチュア部分は21番目のグルタミンから152番目のセリンまでの部分である。
軽鎖DNAの翻訳開始点は、配列番号22の5'末端から34番目のAからはじまるATGコドンであり、可変領域は5'末端から420番目のアデニン(A)までである。アミノ酸配列において、可変領域は配列番号23のN末端から129番目のリジン(K)までである。精製された軽鎖蛋白質のN末端分析により、軽鎖のシグナル配列は配列番号23のN末端より22番目のシステイン(C)までであり、成熟体のN末端は配列番号23の23番目のアラニン(A)であることが明らかとなった。従って、配列番号23のアミノ酸配列中、マチュア部分は23番目のアラニンから129番目のリジンまでの部分である。
Figure 2005325133
実施例13 サブクラス組換え型ベクターの作成
HD4及びHD8については、各抗体の可変領域を以下の各種ベクターに組み込んだ。IgG1タイプにはN5KG1-Val Larkベクター、IgG4タイプにはN5KG4 Lark(いずれもIDEC Pharmaceuticals製で、US patent 6001358に記載されているN5KG1の改変ベクターである。N5KG1-Val LarkについてはN5KG1と同様にIgG1を保持したままの改変、N5KG4 LarkについてはIgG4タイプに組替えたものである。)、IgG2タイプにはN5KG1-Val Larkの重鎖定常配列部分をIgG2タイプに組替えたベクター(N5KG2)を用い、実施例12の方法と同様にベクターにHD4及びHD8の可変領域を組み込んだ。新たに、IgG1タイプ或いはIgG2タイプのベクターに組み込まれている重鎖定常部分のEUナンバリングシステムにおける331番目のプロリン(P)をコードする配列CCCをセリン(S)をコードするTCCに変異させた(Mi-Hua Tao, et al. 1993. J.Exp.Med)ベクターを作成(以下、順にN5KG1Ser、N5KG2Serと書く)し、実施例12の方法と同様にベクターにHD4及びHD8の可変領域を組み込んだ。以下に説明する図3及び表3中、例えばサブクラスをIgG1のHD4抗体はHD4IgG1又はHD4G1と記し、さらに重鎖定常部分のEUナンバリングシステムにおける331番目のプロリン(P)をコードする配列CCCをセリン(S)をコードするTCCに変異させた遺伝子の発現抗体はHD4IgG1Ser又はHD4G1Serと記する。
Figure 2005325133
実施例14 組換え型抗体の作製
実施例12及び13で構築した組換え型抗体発現ベクターを宿主細胞に導入し、組換え型抗体発現細胞を作製した。発現のための宿主細胞には、例えばCHO細胞の dhfr欠損株(ATCC CRL-9096)、CHO-Ras(Katakura Y., et al., Cytotechnology, 31: 103-109, 1999)、HEK293T(ATCC CRL-11268)などが用いられる。
宿主細胞へのベクターの導入はエレクトロポレーションやリポフェクションになどにより実施した。エレクトロポレーションは抗体発現ベクター約2μgを制限酵素で線状化し、Bio-Rad electrophoreterをもちいて350V、500μFの条件で、4×106個のCHO細胞に遺伝子を導入し、96well culture plateに播種した。リポフェクションは、LipofectAMINE Plus(ギブコ・ビーアールエル社製)を用いてマニュアルに従って実施した。ベクターの導入処理後、発現ベクターの選択マーカーに対応した薬剤を添加して培養を継続した。コロニーを確認した後、実施例4に示した方法によって、抗体発現株を選別した。選別した細胞からの抗体精製は、実施例8にしたがって行った。
実施例15 細胞傷害性活性の検討
抗体を介した細胞傷害性活性は、NK細胞或いは好中球などのキラー活性を有する細胞と抗体の存在下でターゲット細胞への傷害活性(抗体依存性細胞性細胞傷害活性(Antibody-Dependent Cellular Cytotoxicity)、以下、ADCC)、及び補体と抗体の存在下でターゲット細胞への傷害活性(補体依存性細胞傷害活性(Complement-Dependent Cytotoxicity)以下、CDC)の測定を実施した。抗体は、実施例8で作成したハイブリドーマ由来HD4及びHD8、実施例14で作成した各CHO細胞由来の組換え抗体を使用した。この際、コントロールとしてhIgGを用いた。
方法は簡単には、ターゲット細胞に放射性クロム(Cr51)を細胞質内に取り込ませ、細胞死により培養液中に遊離されるCr51量をγ線量で測定した。
具体的には、ターゲット細胞としてバーキットリンパ腫細胞株Raji(ATCC CCL-86)を106個を15μLのFetal Calf Serum (FCS)に懸濁し、50μL(37MBq/mL)のCr51ラベルされたクロム酸ナトリウム(パーキエルマー社製:以下Cr51と書く)を添加し、1時間37℃で培養した。次に、培地を10mL添加し、遠心して培地を捨てることを3回繰り返すことで、細胞内に取り込まれていないCr51を除いた。
ADCCアッセイは、Cr51ラベルしたターゲット細胞2000個に対して、実施例6記載の方法で取得した健常人末梢血単核球200000個を、丸底96ウェルプレート(Falcon社製)中で全体容量200μLで、各抗体濃度とともに37℃、5% CO2存在下で4時間培養した。
CDCアッセイは、Cr51ラベルしたターゲット細胞2000個に対して、最終濃度5%のヒト血清由来補体(SIGMA社製)を、丸底96ウェルプレート中で全体容量200μLで、各抗体濃度とともに37℃、5% CO2存在下で2時間培養した。
ADCC・CDCアッセイともに培養後、プレートを遠心して細胞を沈めた後、上清50μLを粉末シンチレーター含有の96穴プレート(LumaplateTM-96:パッカード社製)に移し、55℃、1.5時間で乾燥した。乾燥を確認後、専用カバー(TopSealTM-A:96-well Microplates:パッカード社製)でプレートをカバーし、シンチレーションカウンター(トップカウント:パッカード社製)でγ線量を測定した。
その結果を図3、表3に示す。CDC活性については、HD8IgG1Ser、HD8IgG2Ser、HD8IgG4、HD4G2Ser、HD4G4は活性が無く、HD8IgG1、HD8IgG2、HD4G1では活性を有していることを確認した。またADCC活性は、HD8IgG1、HD8IgG1Ser、HD4G1のみ活性を有していることを確認した。
実施例16 マウス担癌モデルに対する組換え型抗体の効果
実施例11と同様のモデルを使用し、HD8組換え型抗体のマウス担癌モデルを用いた薬理作用を検討した。
まず5週令のC.B-17/ICR-SCIDマウス(日本クレア(株)社製)を購入し、6週齢時に抗アシアロGM1抗血清(和光化学社製)を10μL/マウス個体で希釈して静脈内投与した。翌日、バーキットリンパ腫細胞Raji(ATCC No.CCL-86)を5×106/マウス個体で静脈内投与した。Raji移植より3日後、マウスの尾静脈内に各抗体を0.1或いは1ig/マウス個体の用量で1回投与した。移植後の生存数を観察した。
実施例14で作成したHD8G1Ser及びHD8G2Serについては0.1、1μg/マウス個体の用量で1回投与した。抗体の陰性コントロールとして実施例9で陰性コントロールとして使用したhIgG抗体を1μg/headの用量で投与した群を、陽性コントロールとしてHD8G1を1μg/マウス個体の用量で投与した群を設けた。
以上の実験の結果を図4に示す。陰性コントロールであるhIgG投与群では、Raji移植後16日以内に全例死亡した。20日後の生存数は、1μg/マウス個体においてはhIgG群以外6匹全例生存し(図4A)、0.1μg/マウス個体においてはHD8G2Ser群では6匹全例、HD8G1Ser群では2例生存していた(図4B)。25日後の生存数は、1μg/マウス個体においてはHD8G1Ser群は2匹、HD8G1は1匹、HD8G2Ser群は4匹生存し(図4A)、0.1μg/マウス個体においてはHD8G2Ser群のみ1匹生存していた(図4B)。
この結果、HD8組換え抗体であるHD8G1Ser及びHD8G2Serにおいても、HD8と同様に非常に低用量で抗腫瘍効果を発揮することが判明した。HD8G2SerはADCC・CDC両方の活性がないにもかかわらず、動物モデルにおいて薬効を示すことが判った。
実施例17 HD4、HD6及びHD8のエピトープ解析
定法に従ってウェスタン解析を実施することで、各抗体のエピトープ解析を実施した。簡単には、セルロース或いはPVDF膜はブロックエース(雪印社製)などでブロッキング後、各抗体を1次抗体として1μg/mLの濃度で、二次抗体としてHRP conjugated anti rabbit IgG(DAKO社製)を用いて0.5μg/mLの濃度で反応させ、HRP標識抗ヒト抗体(例:DAKO社製)と反応させ、化学発光試薬(例:ECLウェスタンブロッティング検出試薬:アマシャムバイオサイエンス社)を用いて、化学発光検出装置(例:LAS-1000:富士フィルム社製)で化学発光を検出した。
(1)HLA-DRを発現しているリンパ腫細胞株SKW6.4(ATCC TIB-215)より膜画分を抽出し、抗HLA-DR抗体(K28N:産生細胞名マウス-マウスハイブリドーマK28:受託番号 FERM BP-4577で1994年2月22日に独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに国際寄託されている)のアフィニティーカラムを用いてHLA-DRタンパクを精製した。取得したタンパクを4/20グラジエントゲル(第一化学薬品製)を用いて非還元条件で煮沸(95℃、5分)し、ゲル1枚あたり25mAの定電流で1.5hr泳動後、PVDF膜にゲル1枚あたり150mAの定電流で1hr転写した。次いで定法に従ってウェスタン解析を行った結果、HD4、HD6、HD8はすべて約30Kdaの位置にあるHLA-DRβ鎖を認識していることが判明した。
(2)次に、HLA-DRのβ鎖(DRB1*15011)の細胞外領域199アミノ酸(配列番号147に示すアミノ酸配列のうち第29番目から第227番目の199アミノ酸、配列番号146には配列番号147に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列を示す)について、13-merペプチドを2アミノ酸ずつずらして合計94種のペプチド(配列番号52から145)をセルロース膜上にC末端からスポット状に合成し、N末をアセチル化した(JERINI社:ドイツ)。以降の反応は定法のウェスタン解析(Reineke, U.ほか. (2001). “Epitope mapping with synthetic peptides prepared by SPOT synthesis.” Antibody Engineering (Springer Lab Manual) Eds.: Kontermann/Dubel, 433-459.など参照)を元に実施した。解析はLumiImagerTM(Boehringer-Mannheim社)を使用し、各スポットの発色強度を数値化した。
その結果を図5に示す。HD4(図5A)はアミノ酸61番目〜73番目に強い反応、17番目〜29番目、63番目〜75番目、65番目〜77番目に弱い反応を示し、配列番号8で示されるアミノ酸配列を有するペプチドと最も強力に結合した。HD6(図5B)は61番目〜73番目に強い反応、57番目〜69番目、59番目〜71番目に弱い反応を示し、配列番号8で示されるアミノ酸配列を有するペプチドと最も強力に結合した。HD8(図5C)は61番目〜73番目、63番目〜75番目、65番目〜77番目に非常に強い反応を示し、配列番号82、83及び84で示されるアミノ酸配列を有するペプチドの少なくとも一つと強力に結合した。一方、HLA-DRの立体構造(例:Dessen A et. Al., Immunity(1997), 7, 473-481参照)より、61番目〜73番目のアミノ酸は抗原提示するペプチドを保持する部位で、αへリックスを構成していることが判明している。
(3)HD4・HD6・HD8に共通して最も強い反応を示す13アミノ酸(61番目〜73番目)について、β鎖の多型を考慮し、現在知られている多型約350種類(EMBL-EBIのIMGT/HLAデータベースなど参照)のほぼ全部を含む16種類のペプチドを作成した。さらに各アミノ酸のアラニン(もともとアラニンの場合グアニジン)置換した12ペプチド(配列番号40〜配列番号51)について、同様の条件でウェスタンブロッティングを実施した。解析は、LAS2000及び解析ソフトImageGauge(富士写真フィルム株式会社)を使用して、各スポットの発色強度を数値化した。図6に28種類のペプチドの配列とHD4、HD6及びHD8との反応性を示す。各抗体が陽性反応を示した配列にはその強さに応じて+〜++++、陰性の場合は−で表示した。
陽性、陰性の判定は、以下の基準で行った。
バックグラウンドの5%未満:-
バックグラウンドの5%以上10%未満 :+/-
バックグラウンドの10%以上20%未満 :+
バックグラウンドの20%以上30%未満 :++
バックグラウンドの30%以上50%未満 :+++
バックグラウンドの50%以上:++++
HD8は、65、66、69、72番目のアミノ酸をアラニン置換した配列番号48〜51以外にはすべて陽性反応を示した。65,66,69,72番目のアミノ酸は発見されているHLA-DRβ鎖のほぼすべてのHLA-DRのβ鎖において保存されている(EMBL-EBIのIMGT/HLAデータベースなど参照)。さらに配列番号24〜39でメジャーな配列を含むほとんどのHLA-DRβ鎖配列を網羅していることから、HD8は実質的にほぼすべてのHLA-DRβ鎖に結合するPan-HLA-DR抗体である可能性が非常に高い。
さらに、HLA-DR陽性細胞株を用いて実施例10と同様の方法でHD8の反応性を検討したところ、ARH77(ATCC CRL-1621)、Daudi(ATCC CCL-213)、HS-Sultan(ATCC CRL-1484)、IM-9(ATCC CCL-159)、MC/CAR(ATCC CRL-8083)、Raji(ATCC CCL-86)、Ramos(ATCC CRL-1596)、RL(ATCC CRL-2261)、SKW6.4(ATCC TIB-215)、DRB1*15011/DRA*0101を強制発現させたL細胞(L細胞:ATCC CCL-1)、ヒト健常日本人の末梢血単核球5検体と反応することも確認しており、反応しないHLA-DRを発現している細胞には、現在のところ発見できていない。さらにカニクイザルにおいても15検体中15検体、チンパンジーは1検体中1検体に反応している。一方、B細胞系細胞株でHLA-DRを発現していないRPMI8226(ATCC CCL-155)には反応しなかった。
本明細書に引用されたすべての刊行物は、その内容の全体を本明細書に取り込むものとする。また、添付の請求の範囲に記載される技術思想及び発明の範囲を逸脱しない範囲内で本発明の種々の変形及び変更が可能であることは当業者には容易に理解されるであろう。本発明はこのような変形及び変更をも包含することを意図している。
精製ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体のMLRに対する免疫抑制活性を示す図である。 精製ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体の担ガンマウスモデルに対する延命効果を示す図であり、投与用量1μg/headの場合の効果を示す図である。 精製ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体の担ガンマウスモデルに対する延命効果を示す図であり、投与用量0.1μg/headの場合の効果を示す図である。 精製ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体の細胞依存性(ADCC)及び補体依存性(CDC)の細胞傷害活性を示す図であり、HD8G1Ser及びHD8G1のADCC活性を示す図である。 精製ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体の細胞依存性(ADCC)及び補体依存性(CDC)の細胞傷害活性を示す図であり、HD8G2CHO、HD8G1、HD8G1Ser及びHD8G4のCDC活性を示す図である。 精製ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体の細胞依存性(ADCC)及び補体依存性(CDC)の細胞傷害活性を示す図であり、HD8G1、HD8G2、HD8G2Ser、HD8G4、HD4G1、HD4G2Ser及びHD4G4のADCC活性を示す図である。 精製ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体の細胞依存性(ADCC)及び補体依存性(CDC)の細胞傷害活性を示す図であり、HD8G1、HD8G2、HD8G2Ser、HD8G4、HD4G1、HD4G2Ser及びHD4G4のCDC活性を示す図である。 マウス担癌モデルに対する本発明の抗体HD8G1Ser、HD8G2Ser及びHD8G1の延命効果を示す図であり、投与量0.1μg/匹の場合の結果を示す図である。 マウス担癌モデルに対する本発明の抗体HD8G1Ser、HD8G2Ser及びHD8G1の延命効果を示す図であり、投与量1.0μg/匹の場合の結果を示す図である。 HLA-DRβ鎖配列の合成ペプチドを用いた精製ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体エピトープ解析を示す図であり、HD4についての解析を示す図である。 HLA-DRβ鎖配列の合成ペプチドを用いた精製ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体エピトープ解析を示す図であり、HD6についての解析を示す図である。 HLA-DRβ鎖配列の合成ペプチドを用いた精製ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体エピトープ解析を示す図であり、HD8についての解析を示す図である。 HLA-DRβ鎖エピトープ配列部分の多型配列の合成ペプチドを用いた精製ヒト抗HLA-DRモノクローナル抗体エピトープ解析を示す図である。
配列番号1〜15-人工配列の説明:プライマー
配列番号24〜145-人工配列の説明:ペプチド

Claims (12)

  1. HLA-DRのβ鎖(DRB1*15011)の細胞外領域アミノ酸について13-merペプチドを2アミノ酸ずつずらしてペプチドを作成し、該ペプチドをセルロース膜上にC末端から結合しN末端をアセチル化することからなるペプチドのうち、配列番号82で示されるペプチドと最も強力に結合する、HLA-DRに結合する抗体又はその機能的断片を有効成分として含有する腫瘍の予防、治療又は診断剤。
  2. HLA-DRのβ鎖(DRB1*15011)の細胞外領域アミノ酸について13-merペプチドを2アミノ酸ずつずらしてペプチドを作成し、該ペプチドをセルロース膜上にC末端から結合しN末端をアセチル化することからなるペプチドのうち、配列番号82で示されるペプチドと最も強力に結合する、HLA-DRに結合する抗体又はその機能的断片を有効成分として含有する免疫抑制剤。
  3. HLA-DRのβ鎖(DRB1*15011)の細胞外領域アミノ酸について13-merペプチドを2アミノ酸ずつずらしてペプチドを作成し、該ペプチドをセルロース膜上にC末端から結合しN末端をアセチル化することからなるペプチドのうち、配列番号82で示されるペプチドと最も強力に結合する、HLA-DRに結合する抗体又はその機能的断片を有効成分として含有する自己免疫疾患又はアレルギーの予防、治療又は診断剤。
  4. 腫瘍が、白血病(慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病を含む)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、T細胞系リンパ腫、B細胞系リンパ腫、バーキットリンパ腫、悪性リンパ腫、びまん性リンパ腫、濾胞性リンパ腫を含む)、骨髄腫(多発性骨髄腫を含む)、乳癌、大腸癌、腎臓癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、食道癌、肝臓癌、頭頚部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、きょう膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、甲状肉腫及びウィルムス腫瘍からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1記載の腫瘍の予防、治療又は診断剤。
  5. HLA-DRのβ鎖(DRB1*15011)の細胞外領域アミノ酸について13-merペプチドを2アミノ酸ずつずらしてペプチドを作成し、該ペプチドをセルロース膜上にC末端から結合しN末端をアセチル化することからなるペプチドのうち、配列番号82、83及び84で示される3種類のペプチド総てと強力に結合する、HLA-DRに結合する抗体又はその機能的断片を有効成分として含有する腫瘍の予防、治療又は診断剤。
  6. HLA-DRのβ鎖(DRB1*15011)の細胞外領域アミノ酸について13-merペプチドを2アミノ酸ずつずらしてペプチドを作成し、該ペプチドをセルロース膜上にC末端から結合しN末端をアセチル化することからなるペプチドのうち、配列番号82、83及び84で示される3種類のペプチド総てと強力に結合する、HLA-DRに結合する抗体又はその機能的断片を有効成分として含有する免疫抑制剤。
  7. HLA-DRのβ鎖(DRB1*15011)の細胞外領域アミノ酸について13-merペプチドを2アミノ酸ずつずらしてペプチドを作成し、該ペプチドをセルロース膜上にC末端から結合しN末端をアセチル化することからなるペプチドのうち、配列番号82、83及び84で示される3種類のペプチド総てと強力に結合する、HLA-DRに結合する抗体又はその機能的断片を有効成分として含有する自己免疫疾患又はアレルギーの予防、治療又は診断剤。
  8. 腫瘍が、白血病(慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病を含む)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、T細胞系リンパ腫、B細胞系リンパ腫、バーキットリンパ腫、悪性リンパ腫、びまん性リンパ腫、濾胞性リンパ腫を含む)、骨髄腫(多発性骨髄腫を含む)、乳癌、大腸癌、腎臓癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、食道癌、肝臓癌、頭頚部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、きょう膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、甲状肉腫及びウィルムス腫瘍からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項5記載の腫瘍の予防、治療又は診断剤。
  9. HLA-DRのβ鎖(DRB1*15011)の細胞外領域アミノ酸について13-merペプチドを2アミノ酸ずつずらしてペプチドを作成し、該ペプチドをセルロース膜上にC末端から結合しN末端をアセチル化したことからなる配列番号24から39で示されるすべてのペプチドと有意に結合し、かつ配列番号40から43で示されるすべてのペプチドと有意に結合する、HLA-DRに結合する抗体又はその機能的断片を有効成分として含有する腫瘍の予防、治療又は診断剤。
  10. HLA-DRのβ鎖(DRB1*15011)の細胞外領域アミノ酸について13-merペプチドを2アミノ酸ずつずらしてペプチドを作成し、該ペプチドをセルロース膜上にC末端から結合しN末端をアセチル化したことからなる配列番号24から39で示されるすべてのペプチドと有意に結合し、かつ配列番号40から43で示されるすべてのペプチドと有意に結合する、HLA-DRに結合する抗体又はその機能的断片を有効成分として含有する免疫抑制剤。
  11. HLA-DRのβ鎖(DRB1*15011)の細胞外領域アミノ酸について13-merペプチドを2アミノ酸ずつずらしてペプチドを作成し、該ペプチドをセルロース膜上にC末端から結合しN末端をアセチル化したことからなる配列番号24から39で示されるすべてのペプチドと有意に結合し、かつ配列番号40から43で示されるすべてのペプチドと有意に結合する、HLA-DRに結合する抗体又はその機能的断片を有効成分として含有する自己免疫疾患又はアレルギーの予防、治療又は診断剤。
  12. 腫瘍が、白血病(慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病を含む)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、T細胞系リンパ腫、B細胞系リンパ腫、バーキットリンパ腫、悪性リンパ腫、びまん性リンパ腫、濾胞性リンパ腫を含む)、骨髄腫(多発性骨髄腫を含む)、乳癌、大腸癌、腎臓癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、食道癌、肝臓癌、頭頚部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、きょう膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、甲状肉腫及びウィルムス腫瘍からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項9記載の腫瘍の予防、治療又は診断剤。
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