JP2005323890A - 人工透析システムの給水配管の洗浄方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】逆浸透純水製造装置の上流に主に配置された配管内のバイオフィルムの除去、洗浄を行い、人工透析システムに配置された逆浸透純水製造装置に供給する上水(以下、原液という)のET濃度を低減し、患者に供給される透析液に含まれるET濃度をできるだけ低く抑え、患者の安全を図るとともに、ETFの使用期間(寿命)を高めて人工透析のコストを低減する。
【解決手段】人工透析システム中の逆浸透純水製造装置に原水を供給する配管の一端に、水を含む圧縮空気を供給する水含有圧縮空気供給装置を接続し、該水含有圧縮空気供給装置で配管内に水を含む高速の空気流を発生させ、配管内のバイオフィルムを含む付着物を除去する。
【選択図】 図2
【解決手段】人工透析システム中の逆浸透純水製造装置に原水を供給する配管の一端に、水を含む圧縮空気を供給する水含有圧縮空気供給装置を接続し、該水含有圧縮空気供給装置で配管内に水を含む高速の空気流を発生させ、配管内のバイオフィルムを含む付着物を除去する。
【選択図】 図2
Description
本発明は、人工透析システムの給水配管の洗浄方法に関する。
人工透析は、NaCl、KCl、CaCl2、MgCl2を所定濃度に溶解したA液と、NaHCO3を所定濃度に溶解したB液とを混合し、所定の濃度になるように純水で希釈した透析液を透析膜を介して患者の血液と接することによって、患者の血液中の老廃物や毒素を透析液中に移し、患者の血液を浄化するものである。
人工透析は医学的、化学的、機械的技術の進歩により著しく向上し、それによって多くの患者が生存し、それに伴って人工透析の著しい需要拡大がみられる。
一般に、エンドトキシン(ET)が人体に取り入れられたときには、発熱、白血球減少、血圧低下、ショック症状等の病的疾患を引き起こす。特に、人工透析の場合には多量の透析液が血液と長時間接触し、治療回数も多いため、慢性疾患も問題となり、特に透析液中のET濃度を低く保つことが必須となる。
そして、人工透析の場合、透析液に使用される溶解水や希釈水に含まれる水棲菌に由来するエンドトキシンが問題となる。
人工透析には多量の純水を必要とするが、その純水は逆浸透圧を利用した逆浸透純水製造装置で作られる。逆浸透純水製造装置では、ETは除去されると考えられていたが、近年になり、図1のグラフで示すように、完全には除去されず、逆浸透純水(RO水)中にもETが含まれ、その量は原水のETの約100分の1になっていることが判明した。
なお、図1のグラフは、著書「血液透析とエンドトキシン」 編者 竹沢 眞吾 発行所 株式会社東京医学社(発行:2002年7月25日)P111に掲載されている鈴江 信行および水口 潤による「エンドトキシン実測例」(非特許文献1)である。
図2は、特にETの除去を考慮した最近の代表的な人工透析システムの全体の構成を示すブロック図である。図2に示すように、多数のエンドトキシンカットフィルタ(ETF)がライン(配管)中に配置されて、ETの除去を行っている。ただし、EFTは特殊な膜を用い、ETを吸着し、または濾過して除去するもので、必ず性能の劣化が生じ、ETの濃度が高い場合には、その劣化も早かに起こる。このため、ETFは劣化を監視しながら交換している消耗品であり、人工透析の中で、かなり高いコストの割合を占めている。
著書「血液透析とエンドトキシン」 編者 竹沢 眞吾 発行所 株式会社東京医学社(発行:2002年7月25日)P111に掲載されている鈴江 信行および水口 潤による「エンドトキシン実測例」
著書「血液透析とエンドトキシン」 編者 竹沢 眞吾 発行所 株式会社東京医学社(発行:2002年7月25日)P111に掲載されている鈴江 信行および水口 潤による「エンドトキシン実測例」
人工透析で問題となっているETは、主に、水棲菌から生じるものであり、一度水棲菌が発生すると、殺菌しても、菌体より溶出するので、問題として残る。ETの含有量の少ない原水を安定して得るには、逆浸透純水製造装置までの配管、タンクなどを清浄に保つ必要がある。この場合、消毒による殺菌のみでは、菌体からのETの溶出があるので、十分でなく、菌体の集合物よりなる配管壁、タンク壁に付着しているバイオフィルムの除去が必要となる。
下部水槽、上部水槽は法令により定期的に壁面の付着物の除去および殺菌が行われている。しかし、発明者等が調査したところ、配管内のバイオフィルムの除去、洗浄に対しては有効な手段もなく、行われていないことが判った。
したがって、本発明の目的は、逆浸透純水製造装置の上流に主に配置された配管内のバイオフィルムの除去、洗浄を行い、人工透析システムに配置された逆浸透純水製造装置に供給する上水(以下、原液という)のET濃度を低減し、患者に供給される透析液に含まれるET濃度をできるだけ低く抑え、患者の安全を図るとともに、ETFの使用期間(寿命)を高めて人工透析のコストを低減することにある。
配管は、一般に、鉄、硬質塩化ビニールなどの材料からなり、内径は1〜5cmであり、長さは数10mである。
発明者等は、そのような配管のバイオフィルムを除去するために、配管内に水滴を含む高速の空気流を発生させれば、その水滴の配管の壁への衝突によってバイオフィルムが破壊、剥離されることを見出し、実際の人工透析設備に適用し、ET濃度減少の効果を見出し、本発明に至ったものである。
水滴を含む高速の空気流を発生するには、圧力タンクより配管内に高圧の空気を放出し、そのとき、水を混入することによって容易に作り出すことができ、空気流(常圧:約0.1MP)に対して容量比で水量を10分の1以下にするのが好ましい。
また、配管内に水滴を含む高速の空気流を作るには、高圧タンクの空気圧が高いほど、また、単位時間に放出する空気量が多いほど、高速の空気流となるので、高圧タンク(100リットル)のバルブを開閉してパルス的に空気流を発生させるのが効果的である。
発明者等の実験によれば、図3に示す3.75KWの空気圧縮機を備えた、水滴を含む空気流発生装置では、タンク圧0.2MP以上に保ちながら、0.1秒以上圧縮空気を放出するように空気バルブの開閉を繰返して洗浄を行えば、十分洗浄できることが判った。
本発明によると、従来困難であった原水供給管内のバイオフィルムが除去され、原水中のET濃度が低くなり、人口透析液のET濃度が極めて低くなり、ETによる患者の疾患が防げると共に、高価なETFの使用量と交換頻度を減少できるという大きな経済的効果が得られる。
本発明は、人工透析システム中の逆浸透純水製造装置に原水を供給する配管の一端に、水を含む圧縮空気を供給する水含有圧縮空気供給装置を接続し、該水含有圧縮空気供給装置で配管内に水を含む高速の空気流を発生させ、配管内のバイオフィルムを含む付着物を除去することを特徴とする人工透析システムの給水配管の洗浄方法である。
本発明の実施例を図面を参照して説明する。図2はETの除去するETFを含んだ最近の代表的な人工透析システムの全体の構成を示すブロック図である。図2に示す人工透析システム100は下記のように構成されている。
水道水(原水)は水道主管101からビルへの取り入れ管102を通して下部水槽103に取り入れられる。下部水槽103に収容された原水は揚水ポンプ104によって配管105(説明の便宜上、以下、第1配管という)を通して上部水槽106に汲み上げられる。
上部水槽106に汲み上げられた原水は配管(説明の便宜上、以下第2配管という)を通して逆浸透純水製造装置108に供給される。この逆浸透純水製造装置108は、イオン交換樹脂、活性炭、限外濾過器等からなり、原水から純水を製造する。
逆浸透純水製造装置108で製造された純水はエンドトキシンカットフィルタ(ETF)109を通してETを除去して逆浸透純水タンク110に蓄えられる。逆浸透純水タンク110に蓄えられた純水はETF109を通されて人工透析液製造装置111に供給される。人工透析液製造装置111において、NaCl、KCl、CaCl2、MgCl2を所定濃度に溶解したA液と、NaHCO3を所定濃度に溶解したB液とを混合し、所定の濃度になるように、人工透析液製造装置111に供給された純水で希釈して透析液が製造される。
透析液は人工透析液製造装置111から再びETF109を介して、配管112を通して、多数の患者監視装置113に供給され、さらにETFを通して人工透析器114に供給され、患者に供給される。
本実施例は、逆浸透純水製造装置108に配管(第1配管105、第2配管107)を通して供給される原水に含まれるETを除去し、人口透析液のET濃度を極めて低減させるものである。具体的には、配管に付着した、ETを発生させるバイオフィルムを粉砕して除去することによってETを減少させるものである。
通常、人工透析システムにおける下部水槽103、上部水槽106は約半年に一回その壁面に付着した付着物の除去および殺菌が行われる。本実施例では、その機会を捉えて行われた。
最初に、ビルへの取入管102の止水弁(図示せず)が閉じられ、下部水槽103と上部水槽106の水がそれぞれのドレーン管を通して抜かれる。次に、第1配管105と第2配管107の内壁に付着したバイオフィルムは、図3および図4を参照して後述する水を含む圧縮空気を供給する水含有圧縮空気供給装置によって粉砕され、除去される。この詳細な手順も後述する。
ここで、水含有圧縮空気供給装置(水を含む高速空気流発生装置)を図3および図4を参照して説明すると、図3において、空気取り入れ口15、空気フィルタ16、空気圧縮機17、圧縮空気タンク18は空気コンプレッサを構成している。ここで、空気圧縮機17は3.75KWのモータで駆動され、圧縮空気タンク18は約100リットルの容積を持つ。電磁弁ブロック19により圧縮空気の開閉を制御しており、すなわち、断続的に圧縮空気が排出されることになり、この制御はプログラムにより自動的に行われる。圧縮空気は水・空気混合噴射ノズル22に導入され、それとともに水がフレキシブル水道管20を通して水・空気混合噴射ノズル22に導入される。
図4は、水・空気混合噴射ノズルの詳細図である。図4において、内径12mmφのフレキシブル耐圧ホース21より水逆流防止弁24を経て水・空気混合噴射ノズル(洗浄ノズル)22に至る。水道水は、内径15mmφのホース20より、止水弁25を経て洗浄ノズルに至る。洗浄ノズル22は洗浄する配管の1つの透析廃液注入口8を気密状態で取付けできるように接続カップリング26が設けられている。
ここで、再び図2を参照すると、第1配管105は内径20mmの鉄パイプ製であり、通常の上水用の配管工事によって設置され、全長が約40mである。第1配管105の端部105Aの揚水ポンプ104との接続はOリングを含むフランジ(図2には図示せず)によってなされている。
前述のように、下部水槽103と上部水槽106の水をそれぞれのドレーン管を通して抜いた後、第1配管105の端部105Aと揚水ポンプ104の接続を外した。
次に、第1配管105の端部105Aと水含有圧縮空気供給装置の接続カップリング26を気密状態で接続した。図5はこの接続状態の構成を示す。揚水ポンプ104から第1配管105が取り外されノズル接続用継手27が付けられ、それを介してノズルの接続カップリング26と第1配管が気密に接続される。
次に、第1配管105の内壁のバイオフィルムを含む付着物の除去のための具体的な実験例を説明する。約0.4MPの水圧を有する上水道より、水道水を洗浄ノズル22に供し、止水弁25を全開した場合、洗浄ノズル22よりの流出量は、20リットル/minであることを確認した。
図5に示すようにセットした後、止水弁25を全開にして、10分間廃液配管内に流水した。一方、空気圧縮機の運転を始め、圧縮空気タンク18の圧力を0.8MPとした。電磁弁19の開閉はプログラム化が可能である。
電磁弁19を1秒開くと、圧縮空気タンク18の圧力は0.1MP減少し0.7MPになる。空気圧縮機を運転状態にしておけば、約2秒で圧縮空気タンク内の圧力は0.8MPに復帰する。つまり、3秒毎に1回電磁弁24を開くようにプログラムして、1分間圧縮空気と水(水を含む空気流)を配管105内に導入した。
圧縮空気と水を配管105内に導入すると同時に、配管105の他の端部105Bより水滴が上部水槽106内にシャワー状に激しく噴出した。上部水槽106に溜まった水には多くの鉄錆が認められた。さらに、10分間水を流し、その後上部水槽106の水をドレーン管により除去した。
同様の操作を5回繰り返したが、3回目より上部水槽106に溜まった水からは、異物は全く認められなかった。
次いで、第2配管107の内壁のバイオフィルムの除去を行った。逆浸透純水製造装置108への配管107への取付は、前述の第1配管105の端部105Aと揚水ポンプ104との接続と同様である。配管107の内径は15mmの硬質塩化ビニールでコーティングされた鉄製であり、通常の上水配管の手法で形成されている。配管107の端部107Aを逆浸透純水製造装置108から外し、配管107の端部107Aに、前述の第1配管105の端部105Aとの接続と同様に、接続カップリング26を気密状態で接続し、第1配管105の場合と同様に圧縮空気と水をノズル22から導入した。
導入した圧縮空気と水は第2配管107の他の端部107Bより上部水槽106内に噴出した。この場合には、上部水槽106に噴出された水中には異物は肉眼では確認できなかったが、第1配管105の場合と同様に、操作を5回繰り返した。
その後、図2に示すように配管を元に復帰して、ビルの取入管102の止水弁を開き、下部水槽103に原水を入れ、揚水ポンプ104を運転し、上部水槽106に原水を入れ、逆浸透純水製造装置108内の加圧ポンプ(図示せず)を運転し、やはり逆浸透純水製造装置108内の逆浸透ユニット(図示せず)の直前のドレーン配管108Dより排水しながら、上水を流し、逆浸透ユニットの直前までの給水系の安定を図った。
それと同時に、下部水槽への注入口a、上部水槽への注入口b、逆浸透純水製造装置のドレーン管108Dの出口cより水を採取し、ET濃度を測定した。その結果を図6に示す。
図6において、実線と点線は本発明の洗浄方法を適用する前の結果を示し、一点鎖線と二点鎖線は本発明の実施例の結果を示す。10分間の流水直後に上部水槽への注入口b、逆浸透純水製造装置のドレーン管108Dの出口cより採取した水のET濃度は異常値を示した。また、一点鎖線からわかるように、10分間流水安定後も比較的高い濃度を示した。その原因は、水棲菌を含むバイオフィルムの除去に伴い菌体が破壊してETが溶出したためと思われる。
しかし、二点鎖線からわかるように、12時間流水安定後は配管内壁のバイオフィルムが除去され、配管内壁に存在した水棲菌の菌体が著しく減少したため、逆浸透純水製造装置のドレーン管108Dの出口cにおける水中のET濃度の著しい減少が見られた。
なお、本発明の実施例は一例を示したものである。該当する配管の材質、長さ、径などは各設備によって異なる。また、使用期間、上水の状況によって、配管内の状況も異なり、それに適する洗浄条件も変化させる必要がある。
また、本実施例では、洗浄に使用した水は、上部水槽に集めたが、この場合、これは作業を容易にできるためであり、装置によっては、配管より噴出する水を下水に放流できる手段をとれば、配管の任意の個所を取り外し、本作業を行えばよい。
103 下部水槽
104 揚水ポンプ
105 第1配管
106 上部水槽
107 第2配管
108 逆浸透純水製造装置
26 接続カップリング
104 揚水ポンプ
105 第1配管
106 上部水槽
107 第2配管
108 逆浸透純水製造装置
26 接続カップリング
Claims (1)
- 人工透析システム中の逆浸透純水製造装置に原水を供給する配管の一端に、水を含む圧縮空気を供給する水含有圧縮空気供給装置を接続し、該水含有圧縮空気供給装置で配管内に水を含む高速の空気流を発生させ、配管内のバイオフィルムを含む付着物を除去することを特徴とする人工透析システムの給水配管の洗浄方法。
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JP2004145756A JP2005323890A (ja) | 2004-05-17 | 2004-05-17 | 人工透析システムの給水配管の洗浄方法 |
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Cited By (4)
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JP2007252396A (ja) * | 2006-03-20 | 2007-10-04 | Kitasato Gakuen | 医療用透析液の製造装置および製造方法 |
JP2008018153A (ja) * | 2006-07-14 | 2008-01-31 | Kitasato Gakuen | アルブミンとアルブミンに結合した生体分子の分離方法 |
JP2009078986A (ja) * | 2007-09-25 | 2009-04-16 | Kao Corp | 循環系のバイオフィルム生成抑制方法 |
JP2011217965A (ja) * | 2010-04-09 | 2011-11-04 | Nipro Corp | 透析用配管内の汚染防止方法 |
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2004
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