上記目的を達成するために、この発明の第1の局面によるスライドガラス供給装置は、複数枚のスライドガラスを収納可能で、かつ、収納されたスライドガラスを一枚ずつ取り出すための取出口を有するとともに、第1位置に配置される第1スライドガラス収納部と、複数枚のスライドガラスを収納可能で、かつ、収納されたスライドガラスを一枚ずつ取り出すための取出口を有するとともに、第2位置に配置される第2スライドガラス収納部と、第1スライドガラス収納部の取出口からスライドガラスを一枚ずつ取り出すとともに、第1位置と第2位置との間の供給位置にスライドガラスを供給するための第1取出手段と、第2スライドガラス収納部の取出口からスライドガラスを一枚ずつ取り出すとともに、供給位置にスライドガラスを供給するための第2取出手段と、第1取出手段および第2取出手段のいずれか一方を選択的に動作させる選択手段とを備えている。
この第1の局面によるスライドガラス供給装置では、上記のように、第1スライドガラス収納部および第2スライドガラス収納部をそれぞれ第1位置および第2位置に配置するとともに、第1位置と第2位置との間に供給位置を設け、選択手段により第1取出手段および第2取出手段のいずれか一方を選択的に動作させるように構成することによって、選択手段の選択動作を行うだけで第1スライドガラス収納部および第2スライドガラス収納部のいずれか一方から選択的にスライドガラスを供給位置に供給することができる。これによって、選択手段の選択動作を行うための1つの駆動源のみを用いて、スライドガラスをスライドガラス収納部から供給位置に供給することができるので、スライドガラス収納部からスライドガラスを取り出すための駆動機構を簡素化することができる。
上記第1の局面によるスライドガラス供給装置において、好ましくは、選択手段は、1つの駆動源と、駆動源の駆動力を第1取出手段および第2取出手段に伝達する駆動伝達手段とを含み、第1取出手段は、駆動伝達手段と係合可能な第1係合部を含み、第2取出手段は、駆動伝達手段と係合可能な第2係合部を含み、駆動伝達手段により第1係合部を介して第1取出手段を動作させるときに、第2取出手段の第2係合部は、駆動伝達手段との係合が解除されている。このように構成すれば、第1取出手段の第1係合部と駆動伝達手段とが係合して第1取出手段が動作状態にあるときは、第2取出手段の第2係合部と駆動伝達手段との係合が解除されて第2取出手段が非動作状態にある。これにより、選択手段の1つの駆動源により、容易に、第1取出手段および第2取出手段のいずれか一方を選択的に動作させることができる。
上記第1の局面によるスライドガラス供給装置において、好ましくは、選択手段は、1つの駆動源と、駆動源の駆動力を第1取出手段および第2取出手段に伝達する駆動伝達手段とを含み、第1取出手段は、駆動伝達手段と係合可能な第1係合部を含み、第2取出手段は、駆動伝達手段と係合可能な第2係合部を含み、駆動伝達手段により第2係合部を介して第2取出手段を動作させるときに、第1取出手段の第1係合部は、駆動伝達手段との係合が解除されている。このように構成すれば、第2取出手段の第2係合部と駆動伝達手段とが係合して第2取出手段が動作状態にあるときは、第1取出手段の第1係合部と駆動伝達手段との係合が解除されて第1取出手段が非動作状態にある。これにより、選択手段の1つの駆動源により、容易に、第1取出手段および第2取出手段のいずれか一方を選択的に動作させることができる。
上記第1の局面によるスライドガラス供給装置において、好ましくは、第1取出手段は、第1スライドガラス収納部のスライドガラスに当接してスライドガラスを取り出すための第1当接部を含み、第2取出手段は、第2スライドガラス収納部のスライドガラスに当接してスライドガラスを取り出すための第2当接部を含み、第1当接部は、第1スライドガラス収納部のスライドガラスに当接可能な第1当接位置と、第1スライドガラス収納部のスライドガラスに当接しない第1退避位置との間を移動可能であり、第2当接部は、第2スライドガラス収納部のスライドガラスに当接可能な第2当接位置と、第2スライドガラス収納部のスライドガラスに当接しない第2退避位置との間を移動可能である。このように構成すれば、第1当接部が第1当接位置にあるときに、第1取出手段は、第1スライドガラス収納部からスライドガラスを取り出すことができる。また、第2当接部が第2当接位置にあるときに、第2取出手段は、第2スライドガラス収納部からスライドガラスを取り出すことができる。
この場合、好ましくは、第1当接部は、第1位置側から供給位置に向かって移動するときは第1当接位置に位置するとともに、供給位置から第1位置側に向かって移動するときは第1退避位置に位置する。また、第2当接部は、第2位置側から供給位置に向かって移動するときは第2当接位置に位置するとともに、供給位置から第2位置側に向かって移動するときは第2退避位置に位置する。このように構成すれば、第1取出手段が第1位置側から供給位置に向かって移動するときに、第1取出手段の第1当接部は、第1スライドガラス収納部からスライドガラスを取り出すことができる。また、第1取出手段が供給位置から第1位置側に向かって移動するときに、第1取出手段の第1当接部が第1退避位置に移動するので、容易に、第1取出手段を第1位置側に移動させることができる。また、第2取出手段が第2位置側から供給位置に向かって移動するときに、第2取出手段の第2当接部は、第2スライドガラス収納部からスライドガラスを取り出すことができる。また、第2取出手段が供給位置から第2位置側に向かって移動するときに、第2取出手段の第2当接部が第2退避位置に移動するので、容易に、第2取出手段を第2位置側に移動させることができる。
上記第1の局面によるスライドガラス供給装置において、好ましくは、第1スライドガラス収納部は、第1スライドガラス収納部の取出口を塞ぐ第1シャッタ部材を含み、第2スライドガラス収納部は、第2スライドガラス収納部の取出口を塞ぐ第2シャッタ部材を含み、第1位置の近傍に配置され、第1スライドガラス収納部の載置時のガイドになるとともに、第1スライドガラス収納部の第1シャッタ部材を押し上げるための第1押し上げ部を有する第1ガイド部材と、第2位置の近傍に配置され、第2スライドガラス収納部の載置時のガイドになるとともに、第2スライドガラス収納部の第2シャッタ部材を押し上げるための第2押し上げ部を有する第2ガイド部材とをさらに備える。このように構成すれば、第1スライドガラス収納部を第1位置に載置しないときは、第1シャッタ部材が第1スライドガラス収納部の取出口を塞ぐので、第1スライドガラス収納部の取出口からスライドガラスが抜け落ちるのを防止することができる。また、第1位置の近傍に第1ガイド部材を設けることにより、容易に、第1スライドガラス収納部を第1位置に載置することができる。また、第1スライドガラス収納部を第1位置に載置するときに、第1ガイド部材の第1押し上げ部が第1スライドガラス収納部の第1シャッタ部材を押し上げることによって、第1スライドガラス収納部からスライドガラスを取り出すことが可能になる。また、第2スライドガラス収納部を第2位置に載置しないときは、第2シャッタ部材が第2スライドガラス収納部の取出口を塞ぐので、第2スライドガラス収納部の取出口からスライドガラスが抜け落ちるのを防止することができる。また、第2位置の近傍に第2ガイド部材を設けることにより、容易に、第2スライドガラス収納部を第2位置に載置することができる。また、第2スライドガラス収納部を第2位置に載置するときに、第2ガイド部材の第2押し上げ部が第2スライドガラス収納部の第2シャッタ部材を押し上げることによって、第2スライドガラス収納部からスライドガラスを取り出すことが可能になる。
上記第1の局面によるスライドガラス供給装置において、好ましくは、選択手段は、駆動源と、駆動源の駆動力を第1取出手段および第2取出手段に伝達する駆動伝達手段とを含み、第1取出手段が駆動伝達手段により動作されていない位置にあることを検知するための第1検知手段と、第2取出手段が駆動伝達手段により動作されていない位置にあることを検知するための第2検知手段とをさらに備える。このように構成すれば、第1検知手段および第2検知手段により、それぞれ、第1取出手段および第2取出手段が駆動伝達手段により動作されていない位置にあることを検知することができる。
上記第1の局面によるスライドガラス供給装置において、好ましくは、選択手段は、駆動源と、駆動源の駆動力を第1取出手段および第2取出手段に伝達する駆動伝達手段とを含み、第1取出手段は、駆動伝達手段と係合可能な第1係合部を含み、第2取出手段は、駆動伝達手段と係合可能な第2係合部を含み、第1取出手段を駆動伝達手段と係合する方向に付勢する第1付勢手段と、第2取出手段を駆動伝達手段と係合する方向に付勢する第2付勢手段とをさらに備える。このように構成すれば、容易に、第1付勢手段および第2付勢手段により第1取出手段および第2取出手段を駆動伝達手段と係合する方向に付勢することができる。
上記第1の局面によるスライドガラス供給装置において、好ましくは、選択手段は、駆動源と、駆動源の駆動力を第1取出手段および第2取出手段に伝達する駆動伝達手段とを含み、選択手段の駆動源は、駆動モータと、駆動モータにより直線駆動される駆動ベルトとを含み、選択手段の駆動伝達手段は、駆動ベルトにより直線的に移動される。このように構成すれば、容易に、選択手段の駆動伝達手段を直線的に移動させることができる。
この発明の第2の局面による標本作製装置は、請求項1〜9のいずれか1項に記載のスライドガラス供給装置を備える。このように構成すれば、スライドガラス供給装置を備えた標本作製装置において、スライドガラス収納部からスライドガラスを取り出すための駆動機構を簡素化することができる。
上記第2の局面による標本作製装置において、好ましくは、第1スライドガラス収納部および第2スライドガラス収納部から取り出されたスライドガラスを塗抹部に搬送するための搬送部をさらに備え、搬送部は、スライドガラスを保持するための保持部材を含む。このように構成すれば、容易に、搬送部の保持部材によりスライドガラスを塗抹部に搬送することができる。
この場合、好ましくは、保持部材は、スライドガラスを実質的に水平状態で保持するためのチャック部と、スライドガラスの保持を解除してスライドガラスを塗抹部に載置するときのガイドになるガイド部とを有する。このように構成すれば、スライドガラスをスライドガラス供給装置により供給された水平状態のまま塗抹部に搬送することができる。また、保持部材にガイド部を設けることにより、スライドガラスを塗抹部に載置する際のスライドガラスの位置ずれを抑制することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態による血液塗抹標本作製装置および搬送装置の全体構成を示した斜視図であり、図2は、図1に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置の内部構造を示した平面図である。また、図3および図4は、図2に示した血液塗抹標本作製装置に用いるカセットおよびスライドガラスを示した斜視図である。また、図5〜図18は、図2に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置の塗抹部のスライドガラス供給部および搬送部の構造を説明するための図であり、図19〜図24は、図2に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置のスライドガラスの供給動作および搬送動作を説明するための図である。まず、図1〜図4を参照して、本実施形態による血液塗抹標本作製装置100および搬送装置200の全体構成について説明する。なお、本実施形態では、本発明の標本作製装置を血液塗抹標本作製装置100に適用した例について説明する。
まず、本実施形態では、図1に示すように、血液塗抹標本作製装置100の前面に、搬送装置200が設置されている。この搬送装置200は、血液が収容された試験管151を収納する検体ラック150を血液塗抹標本作製装置100に自動的に搬送するために設けられている。また、血液塗抹標本作製装置100は、タッチパネルからなる表示操作部101と、起動スイッチ102と、電源スイッチ103と、カバー104とを含んでいる。また、血液塗抹標本作製装置100には、血液が収容された試験管151を搬送装置200側から血液塗抹標本作製装置100側に搬送するためのハンド部材160が設けられている。血液が収容された試験管151には、ゴム栓151aが装着されている。
また、血液塗抹標本作製装置100は、図2に示すように、吸引分注機構部1と、塗抹部2と、樹脂製のカセット3と、カセット収容部4と、カセット搬送部5と、スライドガラス挿入部6と、染色部7と、保管部8とを備えている。吸引分注機構部1は、ハンド部材160(図1参照)によって血液塗抹標本作製装置100側に搬送された試験管151から血液を吸引するとともに、吸引した血液をスライドガラス10に滴下する機能を有する。この吸引分注機構部1は、図2に示すように、試験管151から血液を吸引するためのピアサ(吸引針)1aと、吸引した血液をスライドガラス10に分注するためのピペット1bと、ピアサ1aおよびピペット1bに接続されるシリンジポンプ1cと、ピアサ1aとシリンジポンプ1cとの間の流路を開閉するためのバルブ1dと、ピペット1bとシリンジポンプ1cとの間の流路を開閉するためのバルブ1eとを含んでいる。
本実施形態では、塗抹部2は、図2に示すように、スライドガラス10を分注・塗抹位置90に供給するとともに、スライドガラス10に滴下された血液を塗抹して乾燥し、かつ、スライドガラス10に印字を行うために設けられている。この塗抹部2には、2つのスライドガラス収納部2aおよびスライドガラス取出機構2bを有するスライドガラス供給部2cと、搬送部2dと、引きガラス2eと、送りベルト2fと、ファン2gと、移動片2hおよび2jと、印字部2iと、ガイド溝2kとが設けられている。なお、2つのスライドガラス収納部2aは、本発明の「第1スライドガラス収納部」および「第2スライドガラス収納部」の一例であり、スライドガラス供給部2cは、本発明の「スライドガラス供給装置」の一例である。
スライドガラス供給部2cおよび搬送部2dは、スライドガラス取出機構2bを用いて、2つのスライドガラス収納部2aに収納されたスライドガラス10を取り出した後、送りベルト2f上に供給する機能を有する。送りベルト2fは、スライドガラス10を分注・塗抹位置90と乾燥位置91aおよび91bとに搬送するように構成されている。引きガラス2eは、分注・塗抹位置90でスライドガラス10に分注された血液を塗抹することができるように、スライドガラス10に当接する位置に移動可能で、かつ、スライドガラス10の長手方向に移動可能に構成されている。ファン2gは、乾燥位置91aおよび91bに搬送されたスライドガラス10の塗抹された血液を乾燥するために設けられている。移動片2hは、スライドガラス10を乾燥位置91bから印字部2iに移動させるために設けられている。印字部2iは、プリンタからなり、スライドガラス10のフロスト部10aに、検体番号、日付、受付番号、氏名などを印字するために設けられている。移動片2jは、印字後のスライドガラス10をガイド溝2kに沿ってスライドガラス挿入部6側に移動させて、カセット3に挿入するために設けられている。
ここで、図2および図5〜図18を参照して、本実施形態によるスライドガラス供給部2cを構成する2つのスライドガラス収納部2aおよびスライドガラス取出機構2bと、搬送部2dとの詳細構造について説明する。スライドガラス収納部2aは、図11および図12に示すように、複数枚(本実施形態では、最大100枚)のスライドガラス10を収納することが可能なように構成されている。このスライドガラス収納部2aは、互いに対向するように配置された一対の第1側面部材20と、一対の第1側面部材20を連結する第2側面部材21と、一対の第1側面部材20および第2側面部材21の底部を支持する一対の底部支持部材22と、第2側面部材21と対向するように配置されたスライド板23と、一対の第1側面部材20の互いに対向する面にそれぞれ取り付けられたシャッタ部材24とを含んでいる。すなわち、スライドガラス収納部2aは、上記した一対の第1側面部材20と、第2側面部材21と、スライド板23とによって側面部分が構成され、一対の底部支持部材22によって底面部分が構成されている。なお、シャッタ部材24は、本発明の「第1シャッタ部材」および「第2シャッタ部材」の一例である。
一対の第1側面部材20は、それぞれ、第1側面部材20の下端に形成され、スライドガラス10を1枚ずつ取り出すことが可能な一対の第1切欠き部20aと、第1側面部材20の下部の中央部に設けられ、シャッタ部材24を上方向に移動させる際の逃がし部となる第2切欠き部20bと、スライド板23が上下方向に移動可能に嵌め込まれる上下方向に延びる溝20cとを有している。なお、第1切欠き部20aは、本発明の「取出口」の一例である。第1切欠き部20aは、スライドガラス収納部2aに収納された複数枚のスライドガラス10のうち最下部に位置する1枚のスライドガラス10を、一対の第1切欠き部20aと一対の底部支持部材22とによって形成される領域を通過させてスライドガラス収納部2aから取り出すことが可能な形状に構成されている。すなわち、一対の第1切欠き部20aの切欠き深さは、スライドガラス10の1枚分の厚みよりも大きく、かつ、スライドガラス10の2枚分の厚みよりも小さくなるように構成されている。また、第2切欠き部20bは、後述するスライドガラス取出機構2bの載置台70に取り付けられるガイド部材71および72の押し上げ部71aおよび72aが入り込んで、第1側面部材20のシャッタ部材24を押し上げることが可能な逃がし形状に構成されている。
第2側面部材21には、図7および図11に示すように、使用者がスライドガラス収納部2aに収納されているスライドガラス10の枚数を視認することが可能なように縦長形状の長孔21aが設けられている。なお、スライドガラス収納部2aを本実施形態による血液塗抹標本作製装置100にセットする際は、図7に示すように、上記した第2側面部材21の長孔21aが装置の手前方向に位置するようにセットするのが好ましい。一対の底部支持部材22は、スライドガラス収納部2aに収納された複数枚のスライドガラス10を支持するために設けられているとともに、後述するスライドガラスの有無を検知するためのセンサ73の光を通過させるための貫通孔22aを有している。
スライド板23は、上記した一対の第1側面部材20の溝20cに沿って上下方向に移動可能なように構成されており、スライドガラス収納部2aに複数枚のスライドガラス10を一度に収納するために設けられている。シャッタ部材24は、第1側面部材20に取り付けられた2つの支柱24aに上下動可能に支持されるとともに、下部の両端に下方に向かって延びる2つのストッパ部24bを有している。この2つのストッパ部24bは、シャッタ部材24が下方向に移動したときに第1切欠き部20aと底部支持部材22とにより形成されるスライドガラス通過領域を遮断するとともに、シャッタ部材24が上方向に移動したときに第1切欠き部20aと底部支持部材22とにより形成されるスライドガラス通過領域の上方に退避してスライドガラス通過領域を遮断しないように構成されている。
スライドガラス取出機構2bは、図5〜図10に示すように、2つのスライドガラス収納部2aのいずれか一方から選択的にスライドガラス10を一枚ずつ取り出すことが可能なように構成されている。スライドガラス取出機構2bは、載置台70と、2つのガイド部材71および72と、スライドガラス収納部2aにスライドガラス10が収納されているか否かを検知するための2つの光反射型のセンサ73(図6参照)と、ラック74(図8参照)と、支持部材75と、選択機構部76(図10参照)と、2つの取出機構部77および78とを含んでいる。なお、ガイド部材71および72は、本発明の「第1ガイド部材」および「第2ガイド部材」の一例であり、選択機構部76は、本発明の「選択手段」の一例であり、取出機構部77および78は、本発明の「第1取出手段」および「第2取出手段」の一例である。
載置台70は、図5に示すように、2つのスライドガラス収納部2aを2つの載置位置95および96に載置するために設けられている。なお、載置位置95および96は、それぞれ、本発明の「第1位置」および「第2位置」の一例である。この載置台70は、図5および図6に示すように、載置台70の中央部分に形成された横長形状の開口部70aと、2つの載置位置95および96にそれぞれ開口部70aを挟むように形成された一対の位置決め用凹部70bおよび70cと、2つの載置位置95および96の間の供給位置97に開口部70aを挟むように形成された一対の搬送用凹部70dとを含んでいる。開口部70aには、開口部70aの長手方向(X方向)に沿った内周面から開口部70aの内部に向かって延びる一対の通路部70eが形成されている。この通路部70eは、後述する2つの取出機構部77および78の取出部材77eおよび78eの車輪部77mおよび78mの通路となる。一対の位置決め用凹部70bおよび70cは、2つのスライドガラス収納部2aを載置位置95および96に載置したときに、スライドガラス収納部2aの下部が嵌まり込むことによりスライドガラス収納部2aの位置決めを行うために設けられている。また、一対の位置決め用凹部70bおよび70cのうち、装置奥側に位置する2つの凹部には、貫通孔70fが設けられている。この貫通孔70fは、スライドガラス10の有無を検知するためのセンサ73の光を通過させるために設けられている。一対の搬送用凹部70dは、後述する搬送部2dの保持部材80が通過する際の逃がし部として機能する。
2つのガイド部材71および72は、図5および図6に示すように、載置位置95および96を囲むように載置台70の上面に取り付けられているとともに、平面的に見てコの字形状で、かつ、上端部が互いに離れるように外側に傾斜した形状に形成されている。この2つのガイド部材71および72は、スライドガラス収納部2aを載置台70の載置位置95および96に載置するときのガイドになる。また、ガイド部材71および72には、スライドガラス収納部2aのシャッタ部材24を押し上げるための押し上げ部71aおよび72aが形成されている。なお、押し上げ部71aおよび72aは、それぞれ、本発明の「第1押し上げ部」および「第2押し上げ部」の一例である。
スライドガラス10の有無を検知するための2つの光反射型のセンサ73は、それぞれ、載置位置95および96に形成されたの位置決め用凹部70bおよび70cの貫通孔70fに対応する載置台70の下面の位置に取り付けられている。ラック74は、図8および図9に示すように、ラック74の刃先が下方を向くように載置台70の下面に取付部材74aにより取り付けられている。支持部材75は、載置台70の下方に配置される選択機構部76を支持するために設けられている。
選択機構部76は、図5〜図10に示すように、2つの取出機構部77および78を駆動させるために設けられている。この選択機構部76は、駆動源としての1つのモータ76aと、モータ76aの駆動力により回転するプーリ76b(図9参照)と、プーリ76bとX方向に所定の間隔を隔てて設けられたプーリ76cと、プーリ76bおよび76cに装着された駆動ベルト76dと、取付片76eにより駆動ベルト76dに取り付けられた駆動伝達部材76fと、駆動伝達部材76fを直線的にX方向に移動させるためのレール76g(図10参照)およびスライダ76hと、所定の3つの位置に設けられた光透過型のセンサ76i(図5参照)および76jと、センサ76kとを含んでいる。なお、モータ76aは、本発明の「駆動源」の一例であり、駆動伝達部材76fは、本発明の「駆動伝達手段」の一例であり、センサ76iおよび76jは、それぞれ、本発明の「第1検知手段」および「第2検知手段」の一例である。
駆動伝達部材76fは、モータ76aで発生した駆動力を2つの取出機構部77および78に伝達するために設けられている。この駆動伝達部材76fは、図10に示すように、X方向に沿って直線的に移動可能に構成されている。また、駆動伝達部材76fは、図5および図7に示すように、駆動伝達部材76fの移動方向(X方向)に延びる長孔76lと、センサ76kにより検知される検知部76mとを有している。この駆動伝達部材76fの長孔76lは、図5に示すように、2つの取出機構部77および78(図10参照)のうちのいずれか一方にのみ駆動伝達部材76fの駆動力を伝達することができるように構成されている。図5に示すセンサ76iおよび76jは、支持部材75のX方向の両端近傍に取り付けられるとともに、センサ76kは、支持部材75のX方向の中央近傍に取り付けられている。センサ76iおよび76jは、2つの取出機構部77および78が駆動伝達部材76fによって駆動されているか否かを検知するために設けられている。また、センサ76kは、モータ76aの駆動力のオンオフを制御するために設けられている。
2つの取出機構部77および78は、載置台70に載置された2つのスライドガラス収納部2aからスライドガラス10を一枚ずつ取り出すために設けられている。この取出機構部77および78は、図5および図10に示すように、駆動伝達部材76fの長孔76lに入り込んで係合する係合部材77aおよび78aが取り付けられた支持部材77bおよび78bと、支持部材77bおよび78bを駆動伝達部材76fから離れる方向に付勢する引張りコイルバネ77cおよび78cと、支持部材77bおよび78bをレール76gに沿ってX方向に直線的に移動させるスライダ77dおよび78dと、支持部材77bおよび78bに取り付けられた取出部材77eおよび78eとを含んでいる。なお、係合部材77aおよび78aは、それぞれ、本発明の「第1係合部」および「第2係合部」の一例であり、引張りコイルバネ77cおよび78cは、それぞれ、本発明の「第1付勢手段」および「第2付勢手段」の一例である。
また、図5に示すように、支持部材77bおよび78bは、それぞれ、X方向の外端部に、センサ76iおよび76jによって検知される検知片77fおよび78fを有している。なお、検知片77fおよび78fは、それぞれ、本発明の「第1検知手段」および「第2検知手段」の一例である。引張りコイルバネ77cおよび78cは、一方端が支持部材77bおよび78bの係合部材77aおよび78aに取り付けられているとともに、他方端が支持部材75に取り付けられている。なお、図10に示すように、選択機構部76のスライダ76hと、2つの取出機構部77および78のスライダ77dおよび78dとが、1つの共通のレール76g上を移動することによって、各々のスライダ76h、77dおよび78dに対してそれぞれ別々のレールを用いる場合に比べて、部品点数が削減されるので、スライドガラス取出機構2bの選択機構部76を簡素化することが可能になる。
取出部材77e(78e)は、図13〜図15に示すように、一対のアーム部77g(78g)を有する本体部77h(78h)と、本体部77h(78h)の一対のアーム部77g(78g)に両端が取り付けられた軸77i(78i)と、軸77i(78i)を中心に回動可能に支持され、当接部77j(78j)を有する回動部材77k(78k)と、取出機構部77(78)の支持部材77b(78b)に取出部材77e(78e)を取り付けるための取付部材77l(78l)とを含んでいる。なお、当接部77jおよび78jは、それぞれ、本発明の「第1当接部」および「第2当接部」の一例である。本体部77h(78h)は、本体部77h(78h)の移動方向(X方向)に沿った一対の側面の所定の位置に取り付けられた4つの車輪部77m(78m)と、本体部77h(78h)の上面に取り付けられたゴム板77n(78n)と、本体部77h(78h)の下面に取り付けられた減衰機能を備えたピニオン77o(78o)とを有している。4つの車輪部77m(78m)は、載置台70の開口部70aの通路部70e上を開口部70aの長手方向(X方向)に沿って移動することにより、取出部材77e(78e)を一定の高さを維持しながら移動させるために設けられている。
ピニオン77o(78o)は、図8および図9に示すように、載置台70の裏面に取り付けられたラック74に下方から噛み合うように構成されている。ラック74とピニオン77o(78o)との減衰作用により、取出部材77e(78e)の移動時には本体部77h(78h)に常に移動方向と反対方向の力が働くので、本体部77h(78h)は、取付部材77l(78l)を追いかけるように移動される。回動部材77k(78k)は、当接部77j(78j)がゴム板77n(78n)の上面よりも上方に突出してスライドガラス収納部2aのスライドガラス10に当接する当接位置と、当接部77j(78j)がゴム板77n(78n)の上面よりも下方に入り込んでスライドガラス10に当接しない退避位置との間を回動可能に構成されている。また、回動部材77k(78k)の当接部77j(78j)のY方向の端部には、一対のローラ部材77p(78p)が回転可能に取り付けられている。このローラ部材77p(78p)は、ローラ部材77p(78p)の上部が当接部77j(78j)よりもわずかに上方に位置するように構成されている。
搬送部2dは、図5および図6に示すように、スライドガラス10を供給位置97から塗抹部2の送りベルト2fの上方まで搬送した後、送りベルト2f上に載置するために設けられている。この搬送部2dは、図5、図6および図8に示すように、スライドガラス10を保持する保持部材80と、保持部材80を載置台70の供給位置97と塗抹部2の送りベルト2fとの間を移動可能に支持する支持部材81と、保持部材80を支持部材81に取り付けるための取付部材82とを含んでいる。保持部材80は、図16〜図18に示すように、空気圧を利用したポンプ機構が内蔵された本体部80aと、本体部80aの長手方向(Y方向)の両端部分に取り付けられた一対の固定部80bと、軸80cを中心に固定部80bに回動可能に取り付けられた一対のチャック部80dと、一対のチャック部80dを互いに近づく方向に付勢する一対の引張りコイルバネ80eとを有している。
本体部80aは、図16および図22に示すように、本体部80aに内蔵されたポンプ機構により本体部80aの長手方向(Y方向)の両端側面からそれぞれ突出する一対のシリンジ80fを有している。この一対のシリンジ80fは、図22に示すように、本体部80aから突出してチャック部80dの所定の部分を押圧することにより、一対のチャック部80dを引張りコイルバネ80eの付勢力に抗して互いに離れる方向に移動させるために設けられている。固定部80bは、それぞれ、所定の方向に延びるとともに、先端部分に誘導片80gが形成された一対のガイド部80hを有している。このガイド部80hは、搬送部2dの保持部材80により保持されたスライドガラス10を塗抹部2の送りベルト2f上に載置するときのガイドになるように構成されている。誘導片80gは、保持部材80が載置台70の供給位置97に位置するときに、取出部材77eおよび78eにより供給位置97に移送されるスライドガラス10を本体部80aの下方の所定の位置に誘導するために設けられている。一対のチャック部80dは、先端部分が直角に折り曲げられた形状に形成されており、供給位置97に位置するスライドガラス10の長手方向(Y方向)の両端部を外側から挟み込むことによりスライドガラス10を水平状態で保持するために設けられている。
支持部材81は、図8に示すように、保持部材80を水平方向に移動させる駆動源としてのモータ81aと、モータ81aの駆動軸81b(図6参照)に取り付けられたプーリ81cと、プーリ81cとY方向に所定の間隔を隔てて設けられたプーリ81dと、プーリ81cおよび81dに装着された駆動ベルト81eと、取付部材82を駆動ベルト81eに取り付けるための取付片81fと、保持部材80を水平方向(Y方向)に直線的に移動させる直動ガイド81gとを含んでいる。
また、樹脂製のカセット3は、塗抹が施されたスライドガラス10および染色工程で用いる液体(染色液)を収容することが可能なように構成されている。具体的には、カセット3は、図3および図4に示すように、スライドガラス収納孔3aと、染色液吸引分注孔3bと、仕切部3cおよび3dと、スライドガラス支持部3eと、磁石に吸着可能な金属からなる2つの磁石吸着部材3fと、搬送ベルト係合部3gと、側面部3hおよび3iとを含んでいる。スライドガラス収納孔3aと、染色液吸引分注孔3bとは、内部で繋がっている。また、図2に示すように、カセット収容部4は、カセット3を搬入するために設けられており、送り込みベルト4aを含んでいる。また、カセット収容部4には、カセット収容部4の待機位置92のカセット3の数量が所定の数量(たとえば、10個)以下になることを検知するためのカセット残量検知センサ4bと、カセット収容部4の待機位置92の搬送路5cにカセット3が存在するか否かを検知するためのカセット有無検知センサ4cとが設けられている。
また、カセット搬送部5は、カセット収容部4から搬入されたカセット3をスライドガラス挿入部6および染色部7に搬送するために設けられている。このカセット搬送部5は、図2に示すように、水平方向に移動可能なカセット搬送部材5aと、カセット搬送部材5aを水平方向に移動させるための駆動ベルト5bと、カセット収容部4から供給されたカセット3を搬送するための搬送路5cとを含んでいる。カセット搬送部材5aは、カセット3の側面部3h(図3参照)を押しながら搬送する当接片51aおよび51bが形成された当接部材51を有している。この当接部材51は、カセット搬送部材5aがカセット3の搬送後にフレーム11に設けられた接触部材11aに接触することにより、カセット3に接触可能な作動位置からカセット3とは非接触となる退避位置に移動されるように構成されている。
図2に示したスライドガラス挿入部6は、塗抹および印字が施されたスライドガラス10をカセット3のスライドガラス収納孔3aに収納するために設けられている。このスライドガラス挿入部6には、カセット3を水平方向に配置してスライドガラス10を挿入可能な状態にするためのカセット方向移動部材6aと、カセット方向移動部材6aにより水平方向に配置されたカセット3の高さ方向の位置決めを行う位置決め部6bと、水平方向に配置されたカセット3の横方向の位置決めを行う2つの位置決め部6cと、スライドガラス挿入部6に位置するカセット3にスライドガラス10が収納されているか否かを検知するためのセンサ6dとが設けられている。カセット方向移動部材6aは、所定の方向に回動することにより水平方向位置と垂直方向位置とに移動可能に構成されている。
図2に示した染色部7は、カセット搬送部材5aにより搬送されたカセット3の染色液吸引分注孔3bに染色液を供給することにより、塗抹済みのスライドガラス10に染色を施すために設けられている。この染色部7は、カセット搬送部材5aにより搬送されたカセット3を染色部7の第2吸引排出部7dに送り込むための送り込み部材7aと、送り込み部材7aから送り込まれたカセット3を搬送するための搬送ベルト7bと、カセット3に対して染色液の供給および排出を行うための第1〜第5吸引排出部7c〜7gと、染色済のスライドガラス10を乾燥するためのファン7hと、カセット3を搬送ベルト7bから保管部8の搬送ベルト8b側へ送り出すための送り出し機構部7iと、第2吸引排出部7dにおいてスライドガラス10を乾燥するためのファン7jとを含んでいる。
また、図2に示した保管部8は、染色部7により染色されたスライドガラス10が収納されたカセット3を保管するために設けられている。この保管部8には、送り出し機構部7iにより染色部7の搬送ベルト7bから送り出されたカセット3を保管部8の搬送ベルト8bに送り込むための送り込み部材8aと、送り込み部材8aから送り込まれたカセット3を搬送するための搬送ベルト8bとが設けられている。
次に、図1〜図4、図6、図7、図11、図19〜図24を参照して、本実施形態による血液塗抹標本作製装置100の動作について説明する。まず、図11に示すように、スライドガラス収納部2aに複数枚のスライドガラス10を収納する。具体的には、使用者は、スライドガラス収納部2aのスライド板23を上方に移動させてスライド板23をスライドガラス収納部2aから取り外す。そして、スライドガラス収納部2aの側方から複数枚のスライドガラス10をフロスト部10aがスライド板23側に位置するようにスライドガラス収納部2aの内部に挿入する。この挿入作業を何度か繰り返してスライドガラス収納部2a内に規定の枚数(本実施形態では、最大100枚)のスライドガラス10を収納した後、再びスライド板23をスライドガラス収納部2aに取り付ける。これにより、スライドガラス収納部2aへのスライドガラス10の収納動作が完了する。このとき、第1側面部材20に取り付けられている一対のシャッタ部材24が下方向に移動して、第1切欠き部20aと一対の底部支持部材22とにより形成されるスライドガラス通過領域を遮断しているので、スライドガラス10がスライドガラス収納部2aより抜け落ちることはない。なお、装置の作動中にスライドガラス収納部2a内のスライドガラス10が無くなってしまった場合にも、上記した収納方法によりスライドガラス10をスライドガラス収納部2aに補充することが可能である。その場合、スライドガラス収納部2aを装置に載置した状態で、スライドガラス収納部2aのスライド板23を上方に移動させてスライドガラス10を補充すればよい。
次に、図7に示すように、血液塗抹標本作製装置100の載置台70の載置位置95および96に2つのスライドガラス収納部2aを載置する。この場合、スライドガラス収納部2aの第2側面部材21の長孔21aが装置の手前方向に位置するように載置するのが好ましい。また、載置台70にスライドガラス収納部2aを載置する際に、載置台70の載置位置95および96に取り付けられたガイド部材71および72の押し上げ部71aおよび72a(図6および図7参照)がスライドガラス収納部2aのシャッタ部材24を押し上げることにより、スライドガラス収納部2aからスライドガラス10を取り出すことが可能になる。
次に、図2に示したカセット収容部4によるカセット3の搬入動作と、カセット搬送部5によるスライドガラス挿入部6へのカセット3の搬送動作とが行われる。具体的には、まず、カセット収容部4にカセット3をセットする。これにより、カセット3の搬送ベルト係合部3g(図3参照)がカセット収容部4の送り込みベルト4aに係合された状態でカセット3が搬送されて、カセット待機位置92に送り込まれる。なお、カセット収容部4のカセット待機位置92のカセット3の数量が所定の数量(たとえば、10個)以下になった場合には、カセット残量検知センサ4bにより検知されて表示操作部101(図1参照)に、「カセットを補充してください」などの表示が行われる。カセット待機位置92のカセット3のうちの先頭のカセット3は、搬送路5cに配置される。この搬送路5cに配置されたカセット3は、カセット有無検知センサ4cにより検知されて1つずつカセット搬送部5によりスライドガラス挿入部6に搬送される。すなわち、カセット搬送部5を構成するカセット搬送部材5aの当接部材51の当接片51aおよび51bが、カセット3の側面部3hを押しながら移動することによって、カセット3は搬送路5cに沿ってスライドガラス挿入部6に搬送される。
図2に示したスライドガラス挿入部6では、まず、カセット3のスライドガラス収納孔3aにスライドガラス10が収納されているか否かがセンサ6dにより判断される。そして、カセット3にスライドガラス10が収納されていると判断された場合には、そのまま、カセット搬送部材5aの当接部材51の当接片51aおよび51bにより搬送路5cに沿ってカセット3が染色部7に移動される。この場合、カセット3は、染色処理が行われずに保管部8に移動される。なお、カセット3が染色部7まで移動されたときに、カセット搬送部材5aは搬送終了位置94まで移動される。また、スライドガラス挿入部6において、スライドガラス10が収納されていないと判断された場合には、以下の吸引分注動作を開始する。
吸引分注動作としては、まず、図1に示すように、起動スイッチ102が押されて血液塗抹標本作製装置100が起動した状態で、血液検体が収容された試験管151が収納された検体ラック150を搬送装置200の搬入部201にセットする。そして、表示操作部101に表示された自動吸引のスタートスイッチを押す。これにより、検体ラック150は、搬送装置200の取り出し部202に搬送される。この後、血液塗抹標本作製装置100のハンド部材160が、検体ラック150の血液が収容された試験管151を把持する。そして、ハンド部材160を上昇させることにより試験管151を持ち上げるとともに、ハンド部材160を回動させることにより試験管151を撹拌した後、図2に示す吸引分注機構部1に試験管151を配置する。そして、ピアサ1aを試験管151のゴム栓151aに突き刺して血液を吸引する。この吸引動作の際には、バルブ1dを開放状態(オン状態)にするとともに、バルブ1eを遮断状態(オフ状態)にする。血液の吸引動作を終了した後、バルブ1dを遮断状態(オフ状態)にするとともに、バルブ1eを開放状態(オン状態)にする。この後、ピペット1bを図2に示した分注・塗抹位置90に移動させた後、スライドガラス10に血液をピペット1bから滴下(分注)する。
上記した吸引分注機構部1による吸引分注動作と並行して、または、吸引分注動作の後、塗抹部2による塗抹動作が行われる。この塗抹部2では、スライドガラス10を分注・塗抹位置90(図2参照)に供給するとともに、スライドガラス10に滴下された血液を塗抹して乾燥し、かつ、スライドガラス10に印字を行う。具体的には、スライドガラス供給部2cの2つのスライドガラス収納部2aに収納されたスライドガラス10が、スライドガラス取出機構2bおよび搬送部2dにより、送りベルト2f上に供給される。
ここで、図8〜図10および図19〜図24を参照して、スライドガラス取出機構2bおよび搬送部2dによるスライドガラスの取出動作および搬送動作について詳細に説明する。具体的には、選択機構部76のモータ76a(図8および図9参照)を所定の方向に回転駆動させることにより、プーリ76bおよび駆動ベルト76dを介して駆動伝達部材76fを図10の矢印Aの方向に移動させる。この駆動伝達部材76fの移動に伴って、支持部材77bの係合部材77aが駆動伝達部材76fの長孔76lと係合することにより、支持部材77bは、図10の矢印Aの方向に移動されるので、支持部材77bに取り付けられた取出部材77eの取付部材77lも図10および図19の矢印Aの方向に移動する。なお、この駆動伝達部材76fにより支持部材77bに駆動力が伝達されたときは、支持部材78bの係合部材78aは、駆動伝達部材76fとの係合が解除された状態となり、支持部材78bが駆動されることはない。
また、このとき、載置台70のラック74と噛み合っている取出部材77eのピニオン77o(図8および図9参照)の減衰作用により、取出部材77eの本体部77hには移動方向(A方向)と反対方向の力が働く。これによって、本体部77hに取り付けられた回動部材77kが図19の矢印Bの方向に回動して当接部77jがスライドガラス収納部2aのスライドガラス10に当接可能な当接位置に移動する。そして、取出部材77eが図19の矢印Aの方向にさらに移動することにより、取出部材77eの当接部77jは、スライドガラス収納部2aの最下部に位置するスライドガラス10に横方向から当接する。そして、スライドガラス10を図19の矢印Aの方向に移動させてスライドガラス収納部2aの第1切欠き部20aと一対の底部支持部材22とにより形成されるスライドガラス通過領域を通過させることにより、図20に示すように、スライドガラス10をスライドガラス収納部2aから取り出す。
なお、取出部材77eの一対のローラ部材77pは、当接部77jより上方に位置するように形成されている。これにより、当接部77jがスライドガラス収納部2aの最下部のスライドガラス10に当接して移動するときに、一対のローラ部材77pは、上記最下部のスライドガラス10の1枚上のスライドガラス10の下面に接触し、回転しながら移動する。その結果、最下部のスライドガラス10を取り出すときに、一対のローラ部材77pが1枚上のスライドガラス10を上方に持ち上げることにより、最下部のスライドガラス10とその1枚上のスライドガラス10とが擦れ合うのが防止される。そして、スライドガラス収納部2aから取り出されたスライドガラス10は、図21に示すように、載置台70の供給位置97まで移動される。このとき、図22に示すように、供給位置97には、搬送部2dの保持部材80が待機している。そして、スライドガラス10が供給位置97に到達する前に、保持部材80の本体部80aに内蔵されたポンプ機構により本体部80aの側面から一対のシリンジ80fが突出される。これにより、チャック部80dが押圧されるので、一対のチャック部80dは、引張りコイルバネ80eの付勢力に抗して図22の矢印Cの方向に回動される。
そして、取出部材77eのゴム板77n上に載置されたスライドガラス10が保持部材80の誘導片80gによって所定の位置に誘導されながら保持部材80の本体部80aの下方に位置する供給位置97に到達すると、本体部80aの一対のシリンジ80fがポンプ機構に連動して本体部80aに格納される。これにより、一対のチャック部80dが引張りコイルバネ80eの付勢力によって図22の矢印Cの方向とは反対の方向に回動して、取出部材77e上のスライドガラス10の長手方向(Y方向)の両端部分を挟み込んでスライドガラス10を水平状態で保持する。
次に、スライドガラス10の保持部材80による保持が完了した後、取出部材77eは、供給位置97から元の位置に戻される。具体的には、選択機構部76のモータ76aを上記した所定の方向とは反対の方向に回転駆動させることにより、プーリ76b(図9参照)および駆動ベルト76dを介して駆動伝達部材76fを図10の矢印Aの方向とは反対の方向に移動させる。このとき、支持部材77bの係合部材77aと駆動伝達部材76fの長孔76lとの係合は解除されるが、取出機構部77の支持部材77bは、引張りコイルバネ77cによって供給位置97から遠ざかる方向に付勢されているので、支持部材77bおよび取出部材77eは駆動伝達部材76fを追いかけるようにして図10および図19の矢印Aの方向とは反対の方向に移動する。このとき、載置台70のラック74と噛み合っている取出部材77eのピニオン77o(図8および図9参照)の減衰作用により、取出部材77eの本体部77hには支持部材77bの移動方向と反対方向(図23の矢印Dの方向)の力が働く。これによって、本体部77hに取り付けられた回動部材77kが図23の矢印Eの方向に回動して当接部77jがスライドガラス収納部2aのスライドガラス10に当接しない退避位置に移動する。これにより、取出部材77eは、スライドガラス収納部2aの最下部のスライドガラス10に接触することなく初期位置に戻る。
駆動伝達部材76fが初期位置に戻ったことをセンサ76kが検知することによりモータ76aの駆動力は、オフ状態になる。そして、支持部材77bが初期位置に戻ったことをセンサ76iが検知することにより、搬送部2dの保持部材80が供給位置97から塗抹部2の送りベルト2fの方向に移動される。具体的には、モータ81aが所定の方向に回転駆動することにより、駆動軸81bおよびプーリ81cを介して駆動ベルト81eが図24の矢印Fの方向に移動されるので、取付部材82および取付片81fにより駆動ベルト81eに取り付けられた保持部材80は、塗抹部2の送りベルト2fの上方まで移動される。そして、本体部80aの一対のシリンジ80fがポンプ機構により突出してチャック部80dを押圧することにより、一対のチャック部80dを引張りコイルバネ80eの付勢力に抗して図24の矢印Gの方向に回動させる。これにより、スライドガラス10は、送りベルト2f上に載置される。この場合、スライドガラス10は、一対のガイド部80hにガイドされながら送りベルト2f上に載置されるので、スライドガラス10は、位置ずれがない状態で送りベルト2f上の所定の位置に載置される。
そして、送りベルト2fにより、スライドガラス10が分注・塗抹位置90に搬送される。なお、このスライドガラス10を分注・塗抹位置90に搬送する動作は、上記した吸引分注動作の前に行われている。この状態で、スライドガラス10にピペット1bを用いて血液の滴下(分注)が行われる。
一方、搬送部2dの保持部材80がスライドガラス10を送りベルト2f上に載置した後、本体部80aの一対のシリンジ80fがポンプ機構に連動して本体部80aに格納され、一対のチャック部80dが引張りコイルバネ80eの付勢力によって図24の矢印Gの方向とは反対の方向に回動する。そして、モータ81aを上記した所定の方向とは反対の方向に回転駆動することにより、保持部材80は、再び供給位置97に移動される。この状態で、次のスライドガラス10が取出部材77eおよび78eのいずれか一方により取り出されるまで待機状態になる。なお、駆動伝達部材76fが初期位置に位置するときに、モータ76aを上記した所定の方向とは反対の方向に回転駆動させた場合には、駆動伝達部材76fは、支持部材78bと係合して取出機構部78を駆動させることが可能である。これによって、載置台70の載置位置96に載置されたスライドガラス収納部2aからスライドガラス10を取り出すことが可能になる。なお、駆動伝達部材76fにより支持部材78bに駆動力が伝達されたときには、支持部材77bの係合部材77aは、駆動伝達部材76fとの係合が解除された状態になる。この場合、支持部材77が駆動されることはない。
その後、引きガラス2eが、スライドガラス10に当接するように移動されるとともに、スライドガラス10の長手方向に往復移動されることにより、分注・塗抹位置90でスライドガラス10に滴下された血液が塗抹される。この後、塗抹されたスライドガラス10は、送りベルト2fにより乾燥位置91aに搬送される。そして、乾燥位置91aにおいて、ファン2gにより、スライドガラス10の塗抹された血液が冷風乾燥される。このスライドガラス10の冷風乾燥は、隣接する2つの乾燥位置91aおよび91bで2回行われる。その後、移動片2hにより、塗抹済みのスライドガラス10が印字部2iに移動される。そして、印字部2iにおいて、スライドガラス10のフロスト部10aに、検体番号、日付、受付番号、氏名などが印字される。その後、移動片2jにより、印字後のスライドガラス10がガイド溝2kに沿ってスライドガラス挿入部6側に移動される。
上記した吸引分注動作および塗抹動作が終了した後、カセット3へのスライドガラス10の挿入動作が行われる。具体的には、カセット方向移動部材6aを所定の方向に回動させることにより、カセット3を垂直方向位置から水平方向位置(図2の2点鎖線の位置)に移動させてスライドガラス10を挿入可能な状態にする。この状態で、塗抹部2の移動片2jをガイド溝2kに沿って前進移動させることにより、塗抹済みのスライドガラス10をカセット3のスライドガラス収納孔3aに挿入する。これにより、カセット3に、塗抹済みのスライドガラス10が収納される。この後、カセット方向移動部材6aを上記所定の方向とは逆方向に回動させることにより、カセット3を元の垂直方向位置に戻す。そして、塗抹済みのスライドガラス10が収納されたカセット3が、カセット搬送部材5aの当接部材51の当接片51aおよび51bにより染色部7に搬送される。
染色部7では、まず、第1吸引排出部7cにより、カセット3のスライドガラス収納孔3aから塗抹済みのスライドガラス10を持ち上げるとともに、カセット3の染色液吸引分注孔3bにメタノールを分注する。そして、塗抹済みのスライドガラス10をカセット3に戻した後、塗抹済みのスライドガラス10が収納されたカセット3が1つずつ、送り込み部材7aにより搬送ベルト7bに載せられる。
そして、搬送ベルト7bにより、カセット3が第2吸引排出部7dに搬送される。このようにして、カセット3が送り込み部材7aを用いて第2吸引排出部7dに送り込まれる。
第2吸引排出部7dでは、カセット3のスライドガラス収納孔3aから塗抹済みのスライドガラス10を持ち上げるとともに、スライドガラス10の塗抹面にファン7jによる送風を約1秒〜約60秒間当てて塗抹面上の液体成分を蒸発させることによって乾燥させる。なお、第1吸引排出部7cにより塗抹済みのスライドガラス10がメタノールに浸漬されてから第2吸引排出部7dによりスライドガラス10が持ち上げられるまでの時間(浸漬時間)は、約20秒〜約120秒である。
次に、染色処理(メイグリュンワルド・ギムザ2重染色処理)が施される。まず、第2吸引排出部7dにおいて、カセット3の染色液吸引分注孔3bからメタノールが吸引されて排出された後、カセット3のスライドガラス収納孔3aにスライドガラス10を戻す。次にカセット3の染色液吸引分注孔3bからメイグリュンワルド液(主成分はメタノールで99%)が分注され、塗抹済みのスライドガラス10をメイグリュンワルド液に浸漬する。これにより、メイグリュンワルド・ギムザ2重染色処理が開始される。そして、カセット3が搬送ベルト7bにより搬送されながら、塗抹済みのスライドガラス10は、約1分〜約5分間、染色処理として、メイグリュンワルド液に浸漬される。そして、第3吸引排出部7eにより、カセット3の染色液吸引分注孔3bからメイグリュンワルド液が吸引されて排出された後、カセット3の染色液吸引分注孔3bにメイグリュンワルド希釈液が分注される。そして、カセット3が搬送ベルト7bにより搬送されながら、塗抹済みのスライドガラス10は、約1分〜約5分間、メイグリュンワルド希釈液に浸漬される。そして、第4吸引排出部7fにより、カセット3の染色液吸引分注孔3bからメイグリュンワルド希釈液が吸引されて排出された後、カセット3の染色液吸引分注孔3bにギムザ希釈液が分注される。そして、カセット3が搬送ベルト7bにより搬送されながら、塗抹済みのスライドガラス10は、約1分〜約20分間、ギムザ希釈液に浸漬される。
次に、第5吸引排出部7gにより、カセット3の染色液吸引分注孔3bからギムザ希釈液が吸引されて排出された後、カセット3の染色液吸引分注孔3bに対して洗浄液が分注および吸引されて染色済みのスライドガラス10が水洗される。その後、染色済みのスライドガラス10は、ファン7hにより乾燥される。
そして、ファン7hによる乾燥が行われた染色済みのスライドガラス10が収納されたカセット3は、図2に示した送り出し機構部7iにより、搬送ベルト7bから保管部8の搬送ベルト8b側へ順次送り出される。そして、保管部8の送り込み部材8aによりカセット3を保管部8の搬送ベルト8bに送り込む。これにより、送り込み部材8aから送り込まれたカセット3は、搬送ベルト8bにより保管部8に搬送されて保管される。
一方、カセット搬送部材5aは、図2に示した染色部7の搬送終了位置94までカセット3を搬送した後、搬送開始位置93に戻る。この場合、カセット搬送部材5aがフレーム11に設けられた接触部材11aに接触することにより、当接部材51は、カセット3に接触可能な作動位置からカセット3とは非接触となる退避位置に移動される。そして、搬送開始位置93に到着したカセット搬送部材5aの当接部材51は、再び退避位置から作動位置に戻る。これにより、カセット搬送部材5aは、次のカセット3を搬送可能な状態になる。そして、カセット搬送部材5aは、当接片51aおよび51bにより次のカセット3の側面部3hを押すことによって、次のカセット3をスライドガラス挿入部6まで搬送する。
本実施形態では、上記のように、2つのスライドガラス収納部2aを載置位置95および96に配置するとともに、載置位置95と載置位置96との間に供給位置97を設け、選択機構部76により取出機構部77および78のいずれか一方を選択的に動作させるように構成することによって、選択機構部76の選択動作を行うだけで2つのスライドガラス収納部2aのいずれか一方から選択的にスライドガラス10を供給位置97に供給することができる。これによって、選択機構部76の選択動作を行うための1つのモータ76aのみを用いて、スライドガラス10をスライドガラス収納部2aから供給位置97に供給することができるので、スライドガラス収納部2aからスライドガラス10を取り出すための駆動機構を簡素化することができる。
また、本実施形態では、上記のように、取出機構部77に設けられた当接部77jを、載置位置95側から供給位置97に向かって移動するときはスライドガラス収納部2aのスライドガラス10に当接可能な当接位置に位置するとともに、供給位置97から載置位置95側に移動するときは、スライドガラス収納部2aのスライドガラス10に当接しない退避位置に位置するように構成することによって、取出機構部77が載置位置95側から供給位置97に向かって移動するときに、取出機構部77の当接部77jは、スライドガラス収納部2aからスライドガラス10を取り出すことができる。また、取出機構部77が供給位置97から載置位置95側に向かって移動するときに、取出機構部77の当接部77jが退避位置に移動するので、容易に、取出機構部77を載置位置95側に移動させることができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、本発明の標本作製装置を、血液塗抹標本作製装置に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、血液塗抹標本作製装置以外の標本作製装置に適用してもよい。
また、上記実施形態では、本発明のスライドガラス供給装置を、塗抹部にスライドガラスを供給する場合に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、他の部分にスライドガラスを供給する機構に適用してもよい。
また、上記実施形態では、モータ76aの駆動力により取出機構部77(78)が移動することによって、間接的に、当接部77j(78j)がスライドガラス収納部2aのスライドガラス10に当接可能な当接位置に移動する機構を用いる例を示したが、本発明はこれに限らず、モータ76a以外の他の駆動源を用いることにより、直接的に、当接部77j(78j)がスライドガラス収納部2aのスライドガラス10に当接可能な当接位置に移動する機構を用いてもよい。