JP2005314526A - 配向の制御されたミクロ相分離構造膜の製法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ブロック共重合体の薄膜を電極表面上に作製した電極を電気化学セルに装着して、電界を印加することによって、ミクロ相分離構造の作製と構造の配向制御を可能にした。基板上にポリマーを塗布しこのポリマーの融点より10〜100℃低い温度でこのポリマーの膜に1×105〜3×107V/mの電界を印加して該ポリマーを電界方向に配向させるミクロ相分離構造膜の製法である。このポリマーは、親水性ポリマー成分(A)及び疎水性ポリマー成分(B)が共有結合によって結合した、分子量分布(Mw/Mn)が1.3以下であるブロック共重合体である。
【選択図】なし
Description
一方、ミクロ相分離構造の基板に対する配向制御は、基板のシェアリング、電場印加、有機溶媒雰囲気下での熱処理に挙げる3例がこれまでに報告されているが(非特許文献2〜4)、いずれも膜厚に制限があり、基板表面から膜・空気界面までの完全な配向制御は達成していない。
即ち、本発明は、基板上にポリマーを塗布しこのポリマーの融点より10〜100℃低い温度でこのポリマーの膜に1×105〜3×107V/mの電界を印加して該ポリマーを電界方向に配向させるミクロ相分離構造膜の製法であって、該ポリマーが、親水性ポリマー成分(A)及び疎水性ポリマー成分(B)が共有結合によって結合した、分子量分布(Mw/Mn)が1.3以下であるブロック共重合体である配向の制御されたミクロ相分離構造膜の製法である。
親水性高分子鎖Aとして、例えば、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、オリゴ(エチレンオキシド)やクラウンエーテルやクリプタンド又は糖鎖を側鎖に有するポリ(メタクリレート)又はポリ(アクリレート)等、好ましくはポリ(エチレンオキシド)メチルエーテルが挙げられる。
疎水性高分子鎖Bとして、例えば、メソゲン側鎖、長鎖アルキル側鎖又は疎水性側鎖を有するポリ(メタクリレート)、ポリ(アクリレート)、ポリ(スチレン)、ビニルポリマー等が挙げられる。
E−(Y1−F)n−Y2−G
で表される構造単位を1つ以上有するものが挙げられる。
式中、E、F及びGは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ピラジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイルであり、を表わし、Y1及びY2は、同一であっても異なっていてもよく、単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH2)4−、−CH2CH2CH2O−、−OCH2CH2CH2−、−CH=CH−CH2CH2−、−CH2CH2−CH=CH−、−N=N−、−CH=CH−C(=O)O−又は−OC(=O)−CH=CH−を表わし、nは0〜3の整数を表す。
長鎖アルキル側鎖とは、炭素数が好ましくは6〜22個のアルキル側鎖をいう。
疎水性側鎖としては、例えば脂肪族側鎖等が挙げられる。
このブロック共重合体の分子量は、好ましくは5000〜100000、より好ましくは10000〜50000である。
しかし、従来その配向についての制御することができなかった。例えば、後述の比較例1(図1)に示すように、このようなブロック共重合体を溶媒に溶解させ膜を形成させると、このブロック共重合体は自己集合化してミクロ相分離構造を形成するが、その配向はランダムであり、小さなブロックごとに勝手な方向に配向し、膜としての有用性を考えることはできなかった。
基板としては、疎水性物質からなる基板や表面を疎水化処理した基板が好ましく用いられる。例えばポリエステル、ポリイミド、雲母板、シリコンウエハ、石英板、ガラス板等の基板や、これらの基板表面をカーボン蒸着処理やシリル化処理等の疎水化処理を施した基板が好ましく用いられる。
基板上にこのブロック共重合体を塗布する方法として、ブロック共重合体を適当な溶媒に溶解させて基板上に塗布し溶媒を乾燥させる方法が一般的である。この溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、四塩化炭素、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、二塩化エチレン、塩化メチル等が挙げられる。溶液中のブロック共重合体の濃度は0.1〜5質量%程度が好ましい。
このブロック共重合体の膜の膜厚は約30nm〜約10μmが好ましい。
一旦塗布したブロック共重合体を加熱して固化した後に、再度加熱して配向処理を行ってもよいし、基板上にこのブロック共重合体を塗布すると同時に配向処理と加熱とを同時に行ってもよい。
この加熱温度は、ブロック共重合体の融点(通常120〜140℃)より10〜100℃低い温度の範囲が好ましく、より好ましくは50〜80℃である。ブロック共重合体の融点は示差走査熱量測定の方法で測定する。
また、電界は1×105〜3×107V/mの間の一定の電界をかけてもよく、その電界の方向(+/-)もいずれでもよい。また、電界の最高値を1×105〜3×107V/mとして、電界をその+方向若しくは−方向又はその両方向に交互に掃引(具体的には、印加する電位を掃引)させてもよい。後述の実施例3からも明らかであるが、このように電界の方向を切り替えて印加するとより配向が明瞭になるため好ましい。
簡便な方法として、基板を電極として膜を形成し、その膜の上に電解液を塗布し、電極基板と電解液との間に所望の電圧を印加する方法がある。
電極基板としては、電気伝導性のある電極材料であれば良く、白金、ステンレス、金などの金属板、グラファイト、インジウムスズ酸化物を被覆したガラスやプラスティックフィルム、シリコンウエハ等を用いることができるが、ITOガラス電極基板が好ましい。
電解液としては、溶媒に水またはテトラヒドロフラン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒を用い、これに溶質として塩化カリウム、塩化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ナトリウム、硫酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、硝酸ナトリウムなどの電解質を溶解させたものを用いることができる。
一般的な電気化学セルだけでなく、走査型プローブ顕微鏡のチップなどの微小電極を用いた微小な領域に選択的に電界を印加できる特殊な電気化学セルを用いることができる。
例えば、親水性表面をもつ磁性酸化鉄微粒子を共重合体の溶液に分散させ、この分散液をスライドガラスやPETフィルム等に塗布し、室温で乾燥させることにより、この共重合体の層構造の親水性部分にこの微粒子が集合した層構造を有する膜を得ることができる。
製造例1
ポリ(エチレンオキシド)メチルエーテル(分子量5000)を親水性高分子鎖A、含アゾベンゼン液晶性側鎖を有する重合度が114のポリメタクリレートを疎水性高分子鎖Bとするブロック共重合体を合成した。合成は、銅錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法により行った。
得られたブロック共重合体は下記一般式(化1)
製造例1で得た共重合体をトルエンに3質量%となるように溶解して共重合体溶液を得、この共重合体溶液を高配向性グラファイト、透明導電性インジウムスズオキシド(ITO)ガラス電極基板、及びITO-ポリエチレンテレフタレラートフィルムに1 cm2当たり0.1 mL滴下した。その直後、30 mLのトルエンが入ったサンプル瓶が設置された内容量2 Lのデシケーターに移し、5時間静置した。次いで、得られたキャスト膜を50〜80℃の温度で5〜48時間加熱し、ブロック共重合体薄膜を得た。膜厚は1.5μmであった。
このブロック共重合体薄膜について、原子間力プローブ顕微鏡(AFM)観察を行った。その結果を図1に示す。ミクロ相分離構造は主に膜面内配向であった。
実施例1〜3で得た電気化学的修飾が施されたブロック共重合体薄膜のうち、高配向性グラファイト及びITOガラス電極を基板とした試料については、原子間力プローブ顕微鏡観察を行った。その結果を図3及び図4に示す。いずれも比較例1で観察された面内配向型のミクロ相分離構造(図1)が消失していることが分かった。
試験例2
実施例3で得た試料について原子間力プローブ顕微鏡観察を行った。その結果を図5及び図6に示す。ミクロ相分離構造は膜厚方向に垂直配向したものであった。この面外配向は、電極反応を施した中央部で顕著に観察された。
観察の結果、直径8 nm のpEO(ポリエチレンオキシド)ドットが六方格子型に配列することがわかった。
別途に行ったSAXS 測定により、本ポリマーの最安定相分離構造は、六方格子型シリンダーであることがわかっている。このことは、観察されたドットがpEO 六方格子型シリンダーの(001)面に由来するナノパターンであることを示唆している。
試験例3
実施例1〜3で得た電気化学的修飾が施されたブロック共重合体薄膜のITO-PETフィルムを基板とした試料について、0.5〜1質量%濃度の四酸化ルテニウム水溶液にかざすことによってその親水性領域を染色した。この薄膜をフィルム基板と共に熱硬化型エポキシ樹脂で包埋し、ウルトラマイクロトームを用いて膜断面の超薄切片を作製し、膜断面透過型電子顕微鏡で観察した。得られた透過型電子顕微鏡写真を図7に示す。基板とブロック共重合体界面からブロック共重合体と空気界面に至る面外配向が観察された。
Claims (8)
- 基板上にポリマーを塗布しこのポリマーの融点より10〜100℃低い温度でこのポリマーの膜に1×105〜3×107V/mの電界を印加して該ポリマーを電界方向に配向させるミクロ相分離構造膜の製法であって、該ポリマーが、親水性ポリマー成分(A)及び疎水性ポリマー成分(B)が共有結合によって結合した、分子量分布(Mw/Mn)が1.3以下であるブロック共重合体である配向の制御されたミクロ相分離構造膜の製法。
- 電界の最高値を1×105〜3×107V/mとして、電界をその+方向若しくは−方向又はその両方向に交互に掃引させる請求項1に記載の製法。
- 前記温度範囲が50〜80℃である請求項1又は2に記載の製法。
- 前記電界を基板にほぼ垂直に印加する請求項1〜3のいずれか一項に記載の製法。
- 前記電界を、基板を電極として、ポリマーの膜の上に電解液を塗布し、電極基板と電解液との間に所望の電圧を加えることにより印加する請求項4に記載の製法。
- 前記ブロック共重合体が下記一般式(化1)
- 基板上に前記ポリマーを塗布する際に、無機セラミックス微粒子、有機遷移金属錯体結晶、貴金属微粒子、及び金属酸化物微粒子等を該ポリマーと共存させておく請求項1〜6のいずれか一項に記載の製法。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の製法により製造された配向の制御されたブロック共重合体から成るミクロ相分離構造膜。
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